説明

スプレー発泡硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物及びスプレー発泡硬質ポリウレタンフォームの製造方法

【課題】HFC化合物と水を発泡剤として使用し、低密度であって断熱性に優れた硬質ポリウレタンフォームを形成することができ、かつ貯蔵安定性の良好なポリオール組成物並びに該ポリオール組成物を使用した硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供する。
【解決手段】ポリオール化合物100重量部は、水酸基価100〜450mgKOH/gの芳香族エステルポリオール35〜70重量部と水酸基価250〜900mgKOH/gのポリエーテルポリオール20〜50重量部とを含むものであり、低分子量グリコールは、エチレングリコールと第3級アミノ基含有グリコールとを含有し、低分子量グリコール中のエチレングリコールが10〜50モル%であり、前記低分子量グリコールの配合量がポリオール化合物/低分子量グリコール=98/2〜92/8(重量比)であるポリオール組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高断熱性、難燃性の硬質ポリウレタンフォームを形成するスプレー発泡の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物並びに該ポリオール組成物を使用した硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
硬質ポリウレタンフォームは、断熱材、軽量構造材等として周知の材料である。係る硬質ポリウレタンフォームは、ポリオール化合物、発泡剤を必須成分として含有するポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合し、発泡、硬化させることにより形成される。硬質ポリウレタンフォームの製造方法の一つとしてスプレー発泡法がある。スプレー発泡法においては、高い断熱性を必要とする用途において、CFC化合物に代えてHCFC−141bが使用されていた(特許文献1)。
【0003】
特許文献1において使用されているが、なおオゾン層破壊係数を有するHCFC−141bに代えて、水を発泡剤としたスプレー発泡硬質ポリウレタンフォームも公知である(特許文献2)。
【0004】
特許文献1に開示された硬質ポリウレタンフォームは、ポリオール化合物として芳香族エステルポリオールとポリエーテルポリオールを併用するものである。
【0005】
また特許文献2に開示された硬質ポリウレタンフォームは、発泡剤として上記HCFC−141bを使用した場合に発生する横滑り現象を解消することを目的とし、エチレンジアミンを開始剤とするポリオール化合物をポリオール化合物の1成分として使用することを特徴とするものである。
【0006】
【特許文献1】特開平8−53565号公報
【特許文献2】特開平10−87774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2に開示された硬質ポリウレタンフォームは水を発泡剤とするものであり、またポリオール化合物としてエチレンジアミンを開始剤とするポリオール化合物と共に使用するポリオール化合物はポリエーテルポリオール化合物であるため、難燃性が十分ではなく、建築物に求められる難燃3級をクリアするものではない。また発泡剤として水を使用するために、経時変化によりフォームが収縮して寸法変化すること、断熱性能が十分でないこと、基材との接着性が十分でないことなどの問題も有する。
【0008】
これに対して特許文献1に開示の硬質ポリウレタンフォームは、芳香族エステルポリオールをポリオール化合物の主成分として使用しているために難燃性に優れたものである。しかるに特許文献1にて使用の発泡剤のHCFC−141bに代えてオゾン層破壊係数の小さなHFC化合物を使用すると、HFC化合物がポリオールに対して溶解度が劣ること並びにHFC−245faは沸点が低いことにより、スプレー発泡によるフォーム形成における反応初期にHFC化合物の揮散する量が多く、低密度のフォームを形成することが難しい。低密度化のために発泡剤であるHFC化合物の添加量を多くすると、コストが高くなるとともにポリオール組成物の蒸気圧が上昇するために収容容器の開封時に揮散する量が多く、貯蔵安定性に問題を有する。
【0009】
本発明は、HFC−245fa,HFC−365mfaなどのHFC化合物と水を発泡剤として使用し、低密度であって断熱性に優れた硬質ポリウレタンフォームを形成することができ、かつ貯蔵安定性の良好なポリオール組成物並びに該ポリオール組成物を使用した硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のポリオール組成物は、ポリオール化合物、発泡剤、整泡剤、低分子量グリコール及び触媒を含み、スプレー装置によりポリイソシアネート成分と混合し、反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するポリオール組成物であって、
前記発泡剤はHFC化合物と水からなり、
前記触媒はイソシアヌレート基形成触媒を含有するものであり、
前記ポリオール化合物100重量部は、水酸基価100〜450mgKOH/gの芳香族エステルポリオール35〜70重量部と水酸基価250〜900mgKOH/gのポリエーテルポリオール20〜50重量部とを含むものであり、
前記低分子量グリコールは、アルキレングリコールと第3級アミノ基含有グリコールとを含有し、前記低分子量グリコール中のアルキレングリコールが10〜50モル%であり、前記低分子量グリコールの配合量がポリオール化合物/低分子量グリコール=98/2〜92/8(重量比)であることを特徴とする。
【0011】
係る構成のポリオール組成物はHFC化合物と水を発泡剤として使用し、低密度であって断熱性、寸法安定性に優れた硬質ポリウレタンフォームを形成することができ、かつ貯蔵安定性の良好なポリオール組成物である。本発明のポリオール組成物を使用すると、密度が26kg/m以下の硬質ポリウレタンフォームを形成することができる。
【0012】
ポリオール化合物/低分子量グリコールの配合比が98/2より大きくて低分子量グリコールの配合比が少ない場合には低密度のフォームを形成することが難しく、配合量が92/8を超えて低分子量グリコールの配合比が多いとフォームと基材との接着性が低下する。難燃性の観点より、芳香族エステルポリオールの配合量は40重量部以上であることがより好ましく、45重量部以上であることがさらに好ましい。
【0013】
上記のスプレー発泡硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物においては、前記ポリエーテルポリオールは水酸基価250〜550mgKOH/g、官能基数が2〜4のマンニッヒポリオールと水酸基価600〜900mgKOH/gの脂肪族アミンポリオールであり、前記マンニッヒポリオール/脂肪族アミンポリオール(重量比)が5/1〜2/1であることが好ましい。
【0014】
係る構成のポリオール組成物を使用し、スプレー発泡により形成した硬質ポリウレタンフォームは、低密度でありつつ難燃3級に適合すると共に基材との接着性が優れたものである。
【0015】
別の本発明はポリオール化合物、発泡剤、整泡剤、低分子量グリコール及び触媒を含むポリオール組成物とポリイソシアネート成分とをスプレー装置により混合して反応性組成物とし、前記反応性組成物を発泡、硬化させて硬質ポリウレタンフォームとする硬質ポリウレタンフォームの製造方法であって、
前記発泡剤はHFC化合物と水からなり、
前記触媒はイソシアヌレート基形成触媒を含有するものであり、
前記ポリオール化合物100重量部は、水酸基価100〜450mgKOH/gの芳香族エステルポリオール35〜70重量部と水酸基価250〜900mgKOH/gのポリエーテルポリオール20〜50重量部とを含むものであり、
前記低分子量グリコールは、アルキレングリコールと第3級アミノ基含有グリコールとを含有し、前記低分子量グリコール中のアルキレングリコールが10〜50モル%であり、前記低分子量グリコールの配合量がポリオール化合物/低分子量グリコール=98/2〜92/8(重量比)であることを特徴とする。
【0016】
係る構成の製造方法によれば、HFC化合物と水を発泡剤として使用し、低密度であって断熱性、寸法安定性に優れた硬質ポリウレタンフォームを形成することができる。本発明の製造方法によれば、密度が26kg/m以下の硬質ポリウレタンフォームを製造することができる。
【0017】
上記のスプレー発泡硬質ポリウレタンフォームの製造方法においては、前記ポリオール組成物を構成する前記ポリエーテルポリオールは、水酸基価250〜550mgKOH/g、官能基数が2〜4のマンニッヒポリオールと水酸基価600〜900mgKOH/gの脂肪族アミンポリオールであり、前記マンニッヒポリオール/脂肪族アミンポリオール(重量比)が5/1〜2/1であることが好ましい。
【0018】
係る構成の硬質ポリウレタンフォームの製造方法によれば、低密度でありつつ難燃3級に適合すると共に基材との接着性に優れた硬質ポリウレタンフォームを製造することができる。
【0019】
上述のスプレー発泡硬質ポリウレタンフォームの製造方法においては、前記ポリオール組成物とポリイソシアネート成分との混合におけるNCO基/OH基の当量比が1.5〜2.5であることが好ましい。
【0020】
係る構成の製造方法によれば、形成される硬質ポリウレタンの分子中にイソシアヌレート結合が形成され、フォームの難燃性が向上し、より確実に難燃3級に適合する硬質ポリウレタンフォームを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物並びに硬質ポリウレタンフォームの製造方法においては、ポリオール組成物を構成するポリオール化合物100重量部は、水酸基価100〜450mgKOH/gの芳香族エステルポリオールを35〜70重量部と水酸基価250〜900mgKOH/gのポリエーテルポリオールを20〜50重量部とを含むものである。
【0022】
芳香族エステルポリオールは、芳香族ジカルボン酸グリコールエステルであり、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸から選択される少なくとも1種とエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、平均分子量が150〜500のポリオキシエチレングリコール等のグリコールとのグリコールに基づく水酸基末端を有するエステルポリオールが例示される。
【0023】
芳香族エステルポリオールの水酸基価が100未満の場合には、得られる硬質ポリウレタンフォームの脆性が大きくなり、450を超える場合にはポリオール組成物中の配合量を70重量部以上にしても難燃性が十分でない場合がある。芳香族エステルポリオールの水酸基価は100mgKOH/g以上、400mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0024】
ポリエーテルポリオールとしては、硬質ポリウレタンフォームの分野において公知のポリエーテルポリオールを使用することができる。これらの公知の中でもポリエーテルポリオールとして、水酸基価250〜550mgKOH/g、官能基数が2〜4のマンニッヒポリオールと水酸基価600〜900mgKOH/gの脂肪族アミンポリオールを使用することが好ましく、マンニッヒポリオール/脂肪族アミンポリオール(重量比)は5/1〜2/1の範囲であることが好ましい。
【0025】
マンニッヒポリオールの配合比が大きすぎると脂肪族アミンポリオールの配合比が小さくなりすぎてフォームと基材の接着性が低下する場合があり、脂肪族アミンポリオールの配合比が大きくなりすぎると難燃性が低下する場合がある。
【0026】
マンニッヒポリオールは、フェノール及び/又はそのアルキル置換誘導体、ホルムアルデヒド及びアルカノールアミンのマンニッヒ反応により得られた活性水素化合物又はこの化合物にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドの少なくとも1種を開環付加重合させることによって得られる水酸基価250〜550mgKOH/g、官能基数が2〜4のポリオール化合物である。係るポリオール化合物の市販品としては、例えばDK−3810(第一工業製薬)などがあり、使用可能である。マンニッヒポリオールの水酸基価は、250〜450mgKOH/gであることがより好ましい。
【0027】
脂肪族アミンポリオールとしては、アルキレンジアミン系ポリオールや、アルカノールアミン系ポリオールが例示される。これらのポリオール化合物は、アルキレンジアミンやアルカノールアミンを開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドの少なくとも1種を開環付加させた末端水酸基の多官能ポリオール化合物である。アルキレンジアミンとしては、公知の化合物が限定なく使用できる。具体的にはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ネオペンチルジアミン等の炭素数が2〜8のアルキレンジアミンの使用が好適である。アルキレンジアミン系ポリオールにおいては、開始剤であるアルキレンジアミンは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが例示される。アルキレンジアミンを開始剤としたポリオール化合物の官能基数は4であり、アルカノールアミンを開始剤としたポリオール化合物の官能基数は3である。これらの中でもエチレンジアミンを開始剤とするポリエーテルポリオール(EDAポリオール)の使用が、基材と形成されるフォームの接着性が良好であり、好ましい。
【0028】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物を構成する低分子量グリコールはアルキレングリコールと第3級アミノ基含有グリコールを含有する。アルキレングリコールは分子量が120以下で、側鎖を有していてもよく、具体的にはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオールが例示される。これらの中でもエチレングリコールの使用が最も好ましい。第3級アミノ基含有グリコールは、分子量170以下であるN−アルキルジアルカノールアミンを使用する。N−アルキルジアルカノールアミンとしては、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミンの少なくとも1種の使用が好ましい。
【0029】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物には、必要に応じて架橋剤を配合してもよい。係る架橋剤としては、トリエタノールアミン、グリセリン、トリメチロールプロパン等の非芳香族多価アルコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)、ビスフェノールAに2〜6モルのエチレンオキサイドないしプロピレンオキサイドを付加した化合物、キシリレングリコールなどの芳香族多価アルコールが例示できる。これらの中でも芳香族多価アルコールの使用が好ましい。
【0030】
本発明のポリオール組成物及び硬質ポリウレタンフォームの製造方法において使用する発泡剤は、HFC化合物である。HFC化合物としては、HFC−245fa、HFC−365mfcの少なくとも1種が使用可能である。係る発泡剤の使用により、優れた断熱性を有する硬質ポリウレタンフォームを得ることができる。HFC−245faとHFC−365mfcを併用することも好ましく、併用する場合においては、HFC−245fa/HFC−365mfcの比率は、95/5〜60/40であることが好ましい。HFC化合物の添加量は、ポリオール化合物合計100重量部に対して20〜50重量部であることが好ましく、20〜45重量部であることがより好ましい。
【0031】
また発泡剤として、さらに水を添加することが好ましい。水の添加により、ポリオール組成物の発泡剤の蒸気圧を低下させることができる。水の添加量は、ポリオール化合物の合計100重量部に対して0.5〜5重量部であることが好ましく、0.5〜3重量部であることがより好ましい。
【0032】
本発明においては、低沸点の発泡剤であるHFC−245faの蒸気圧降下剤として、沸点が100℃以上、より好ましくは120℃以上の、活性水素基を有さず、水100重量部に対して40重量部以上、より好ましくは50重量部以上、さらに好ましくは自由な比率で溶解する親水性有機溶剤をポリオール組成物に添加することが好ましい。係る構成によれば、特に夏場の施工においても密度の安定した硬質ポリウレタンフォームを形成することができる。親水性有機溶剤としては、常温で液状のポリエチレングリコール(平均分子量150〜800)のジメチルエーテル、ε−カプロラクトン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、N−メチルピロリドン等を例示することができる。親水性有機溶剤の添加量は、HFC−245fa100重量部に対して、5〜40重量部であることが好ましい。
【0033】
触媒としては、少なくともイソシアヌレート基形成触媒を使用する。イソシアヌレート基形成触媒(三量化触媒)としては、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム(オクチル酸カリウム)、等の炭素数1〜20の有機カルボン酸アルカリ金属塩、及びN−(2−ヒドロキシプロピル)−N−(2−ヒドロキシエチル)−N,N−ジメチルアンモニウム・オクチル酸塩、テトラアルキルアンモニウムモノカルボン酸塩、N−ヒドロキシアルキル−N,N,N−トリアルキルアンモニウム塩等、特開平9−104734号公報に開示された化合物やDabco TMR,Dabco TMR−2(エアプロダクツ)等の第4級アンモニウム塩触媒から選択される少なくとも1種の化合物を使用する。
【0034】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物並びに硬質ポリウレタンフォームの製造方法においては、イソシアヌレート結合形成触媒に加えて第3級アミン触媒を使用する。第3級アミン触媒はウレタン結合形成触媒ないし泡化触媒であり、具体的には、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンやN,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン(カオライザーNo.1)、N,N,N’,N’,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン(カオライザーNo.3)等のN−アルキルポリアルキレンポリアミン類、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン(ポリキャット−8)、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等を使用することができる。
【0035】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造に際しては、上記成分の他に、当業者に周知の整泡剤、難燃剤、着色剤、酸化防止剤等が使用可能である。
【0036】
整泡剤としては、硬質ポリウレタンフォームの技術分野において使用される公知の整泡剤が限定なく使用可能である。具体的には、B−8465(ゴールドシュミット)、SH−192,SH−193、S−824−02、SZ−1704(東レダウコーニングシリコン)等の整泡剤を使用することができる。整泡剤は2種以上を使用してもよい。
【0037】
本発明においては、さらに難燃剤を添加することも好ましい態様であり、好適な難燃剤としては、ハロゲン含有化合物、有機リン酸エステル類、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム等の金属化合物が例示される。
【0038】
有機リン酸エステル類は、可塑剤としての作用も有し、従って硬質ポリウレタンフォームの脆性改良の効果も奏することから、好適な添加剤である。またポリオール組成物の粘度低下効果も有する。かかる有機リン酸エステル類としては、リン酸のハロゲン化アルキルエステル、アルキルリン酸エステルやアリールリン酸エステル、ホスホン酸エステル等が使用可能であり、具体的にはトリス(β−クロロエチル)ホスフェート(CLP、大八化学製)、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート(TMCPP、大八化学製)、トリブトキシエチルホスフェート(TBXP,大八化学製)、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、ジメチルメチルホスホネート等が例示でき、これらの1種以上が使用可能である。有機リン酸エステル類の添加量はポリオール化合物の合計100重量部に対して40重量部以下であり、5〜40重量部であることが好ましい。
【0039】
ポリオール組成物と混合、反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するポリイソシアネート化合物としては、取扱の容易性、反応の速さ、得られる硬質ポリウレタンフォームの物理特性が優れていること、低コストであることなどから、液状MDIを使用する。液状MDIとしては、クルードMDI(c−MDI)(スミジュール44V−10,スミジュール44V−20,スミジュールH−420等(住化バイエルウレタン社製)、ミリオネートMR−200(日本ポリウレタン工業))、ウレトンイミン含有MDI(ミリオネートMTL;日本ポリウレタン工業製)、並びにこれらのポリイソシアネート化合物にポリオール化合物を加えて反応させるか或いは別途作成したプレポリマーを添加させて得られるプレポリマー変性ポリイソシアネート化合物等から適宜選択使用される。液状MDIに加えて、他のポリイソシアネート化合物を併用してもよい。併用するポリイソシアネート化合物としては、ポリウレタンの技術分野において公知のポリイソシアネート化合物は限定なく使用可能である。
【0040】
上述の硬質ポリウレタンフォームの製造方法においては、前記ポリオール組成物とポリイソシアネート成分との混合におけるイソシアネート基/活性水素基当量比(NCOインデックス)が1.0〜4.0、より好ましくは1.5〜3.5であり、さらに好ましくは1.5〜2.5である。NCOインデックスを1.5以上として、触媒が三量化触媒を含有するものとすることがより好ましい。
【実施例】
【0041】
(ポリオール組成物)
表1の上段に記載した組成にてポリオール組成物を調製した。使用した原料の内容、特性は以下の通りである。
a)ポリオールA
テレフタル酸を酸成分とし、ジエチレングリコールをグリコール成分として公知の方法により製造したエステルポリオール(東邦理化);
水酸基価=250mgKOH/g
b)ポリオールB
DK−3810(第一工業製薬);水酸基価=315mgKOH/g
c)ポリオールC
エチレンジアミンを開始剤とするポリエーテルポリオール化合物(旭硝子ウレタン製);
水酸基価=600mgKOH/g
d)低分子量グリコール
エチレングリコール(EG)
N−メチルジエタノールアミン(MDA)
e)TMCPP:リン系難燃剤(可塑剤)(大八化学工業)
f)整泡剤
SZ−1704(東レダウコーニングシリコン)
g)ポリイソシアネート成分:スミジュール44V−20(住化バイエルウレタン)。
【0042】
(実施例、比較例)
実施例、比較例は表1の上段に記載したポリオール化合物の配合にてポリオール組成物を調整した。ポリオール化合物、触媒以外の配合物は、ポリオール化合物の全量を100重量部として、難燃剤TMCPP(大八化学工業)20重量部であり、発泡剤のHFC化合物はHFC−245fa/HFC−365mfc=80/20(重量比)である。硬質ポリウレタンフォームは、ポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを表1に記載の容量比にてラボ用撹拌機にて混合し、面材であるクラフト紙を敷いた200mm×200mm×200mmのモールドに注型してフォームを製造した。以下に記載の評価を行い、結果を表1の下段に示した。
【0043】
(評価)
1)フォーム密度(kg/m
200mm×200mm,深さ200mmのモールドを使用して自由発泡させ、得られた硬質ポリウレタンフォームよりスキン層を除いたコア層から100mm×100mm,厚さ100mmのフォームサンプルを切り出し、重量測定を行って密度(kg/m)を算出した。
【0044】
2)燃焼性(難燃性評価)
JIS A 1321に準拠して難燃性評価を行った。評価結果は、級別が難燃3級で表面試験の判定に適合するものを○、適合しないものを×として表示した。
【0045】
3)面材との接着性
図1に示したように、面材に幅5cmの切欠きを形成し、端部を剥離した面材をバネ秤で矢印(W)方向に引っ張って剥離強度を測定した。
【0046】
【表1】

【0047】
表1の結果より、本発明のポリオール組成物を使用したスプレー発泡硬質ポリウレタンフォームは、26kg/m以下という低密度であり、JIS A 1321規定の評価による難燃3級の規格をクリアするものであった。また基材との接着性にも優れたものであった。これに対して比較例のフォームは低密度ではあるが、難燃3級をクリアせず、面材との接着性が十分ではなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物、発泡剤、整泡剤、低分子量グリコール及び触媒を含み、スプレー装置によりポリイソシアネート成分と混合し、反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するポリオール組成物であって、
前記発泡剤はHFC化合物と水からなり、
前記触媒はイソシアヌレート基形成触媒を含有するものであり、
前記ポリオール化合物100重量部は、水酸基価100〜450mgKOH/gの芳香族エステルポリオール35〜70重量部と水酸基価250〜900mgKOH/gのポリエーテルポリオール20〜50重量部とを含むものであり、
前記低分子量グリコールは、アルキレングリコールと第3級アミノ基含有グリコールとを含有し、前記低分子量グリコール中のアルキレングリコールが10〜50モル%であり、前記低分子量グリコールの配合量がポリオール化合物/低分子量グリコール=98/2〜92/8(重量比)であることを特徴とするスプレー発泡硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項2】
前記ポリエーテルポリオールは水酸基価250〜550mgKOH/g、官能基数が2〜4のマンニッヒポリオールと水酸基価600〜900mgKOH/gの脂肪族アミンポリオールであり、前記マンニッヒポリオール/脂肪族アミンポリオール(重量比)が5/1〜2/1であることを特徴とする請求項1に記載のスプレー発泡硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項3】
ポリオール化合物、発泡剤、整泡剤、低分子量グリコール及び触媒を含むポリオール組成物とポリイソシアネート成分とをスプレー装置により混合して反応性組成物とし、前記反応性組成物を発泡、硬化させて硬質ポリウレタンフォームとする硬質ポリウレタンフォームの製造方法であって、
前記発泡剤はHFC化合物と水からなり、
前記触媒はイソシアヌレート基形成触媒を含有するものであり、
前記ポリオール化合物100重量部は、水酸基価100〜450mgKOH/gの芳香族エステルポリオール35〜70重量部と水酸基価250〜900mgKOH/gのポリエーテルポリオール20〜50重量部とを含むものであり、
前記低分子量グリコールは、アルキレングリコールと第3級アミノ基含有グリコールとを含有し、前記低分子量グリコール中のアルキレングリコールが10〜50モル%であり、前記低分子量グリコールの配合量がポリオール化合物/低分子量グリコール=98/2〜92/8(重量比)であることを特徴とするスプレー発泡硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項4】
前記ポリオール組成物を構成する前記ポリエーテルポリオールは、水酸基価250〜550mgKOH/g、官能基数が2〜4のマンニッヒポリオールと水酸基価600〜900mgKOH/gの脂肪族アミンポリオールであり、前記マンニッヒポリオール/脂肪族アミンポリオール(重量比)が5/1〜2/1であることを特徴とする請求項3に記載のスプレー発泡硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項5】
前記ポリオール組成物とポリイソシアネート成分との混合におけるNCO基/OH基の当量比が1.5〜3.0であることを特徴とする請求項3又は4に記載のスプレー発泡硬質ポリウレタンフォームの製造方法。

【公開番号】特開2009−114288(P2009−114288A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287559(P2007−287559)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】