説明

スプロケットおよびチェーン伝動装置

【課題】内リンクプレートの内側面に対して生じがちなスプロケット歯の外側面の接触抵抗を抑制するとともに次数音を減少させ、さらに、チェーンの安定したチェーン軌道を維持するスプロケットおよびこのスプロケットを用いたチェーン伝動装置を提供すること。
【解決手段】ローラチェーン110の横ズレを内リンクプレート111、111の相互間で規制しながら噛み合う標準スプロケット歯121と、この標準スプロケット歯121の歯幅L1より狭い歯幅L2で形成されて内リンクプレート111と非接触状態で噛み合う狭幅スプロケット歯122とで構成されているスプロケット120。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チェーンに噛み合うスプロケットおよびこのスプロケットを用いたチェーン伝動装置に関し、特に、標準スプロケット歯と狭幅スプロケット歯とをスプロケット外周部に配置したスプロケットとこのスプロケットを用いたチェーン伝動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、チェーン伝動装置500は、図9および図10に示すように、多数の内リンクプレート511と外リンクプレート512とを連結ピン513で相互に連結したローラチェーン510と該ローラチェーン510を掛け回して噛み合う同一の歯幅で形成された複数のスプロケット歯523を備えたスプロケット520とで構成されているのが知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平7−49101号公報(明細書2頁、図3参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来のチェーン伝動装置500は、スプロケット520のスプロケット歯523がローラチェーン510のローラ515と噛み合ってローラチェーン510を周回させる際に、スプロケット歯523が一対の内リンクプレート511、511の相互間にわずかなクリアランスを介して入り込むため、スプロケット歯523の外側面523sと内リンクプレート511の内側面511sとの間に接触抵抗が生じてチェーン駆動に要する動力エネルギーの効率が低下するおそれがあるという問題があった。
【0005】
また、走行するローラチェーン510に生じがちなチェーン幅方向の横ズレまたは蛇行等のチェーン方向の噛み合い位置のズレに起因して、一対の内リンクプレート511、511の相互間に順次入り込んだ同一の歯幅を有するスプロケット歯523が内リンクプレート511毎に接触して接触音を発生させるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明者は、前述したような従来の問題を解決するために、スプロケット歯523の外側面523sと内リンクプレート511の内側面511sの接触状態に着目して鋭意研究を重ねた結果、同一の歯幅を有するスプロケット歯523の外側面523sと内リンクプレート511の内側面511sとの間でスプロケット歯523の歯数倍の周波数を持つ次数音が発生しているとの知見が得られ、この知見をもとに従来の問題を解決した。
【0007】
すなわち、本発明の目的は、内リンクプレートの内側面に対して生じがちなスプロケット歯の外側面の接触抵抗を抑制するとともに次数音を減少させ、さらに、チェーンの安定したチェーン軌道を維持するスプロケットおよびこのスプロケットを用いたチェーン伝動装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本請求項1に係るスプロケットは、チェーンの横ズレを内リンクプレートの相互間で規制しながら噛み合う標準スプロケット歯と、該標準スプロケット歯の歯幅より狭い歯幅で形成されて内リンクプレートと非接触状態で噛み合う狭幅スプロケット歯とで構成されていることにより、前述した課題を解決するものである。
【0009】
本請求項2に係るスプロケットは、請求項1に記載のスプロケットの構成に加えて、前記標準スプロケット歯と狭幅スプロケット歯とが、前記スプロケット外周部に交互に配置されていることにより、前述の課題を更に解決するものである。
【0010】
本請求項3に係るスプロケットは、請求項1に記載のスプロケットの構成に加えて、前記スプロケット外周部で連接して隣り合う2歯の標準スプロケット歯と狭幅スプロケット歯が、前記スプロケット外周部にそれぞれ交互に配置されていることにより、前述の課題を更に解決するものである。
【0011】
本請求項4に係るスプロケットは、請求項1に記載のスプロケットの構成に加えて、前記標準スプロケット歯と狭幅スプロケット歯とが、前記スプロケット外周部に不規則に配置されていることにより、前述の課題を更に解決するものである。
【0012】
本請求項5に係るチェーン伝動装置は、多数の内リンクプレートと外リンクプレートとを連結ピンで相互に連結したチェーンと該チェーンを掛け回して噛み合う複数のスプロケットとで構成されるチェーン伝動装置において、前記複数のスプロケットのうち少なくとも1つが、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のスプロケットであることにより、前述の課題を更に解決するものである。
【発明の効果】
【0013】
すなわち、本請求項1に係る発明のスプロケットは、チェーンの横ズレを内リンクプレートの相互間で規制しながら噛み合う標準スプロケット歯を備えていることにより、チェーンとスプロケットの噛み合い始めに標準スプロケット歯がチェーンの内リンクプレート間に入り込み標準スプロケット歯の外側面が内リンクプレートの内側面に接触してチェーンの横ズレを規制するため、チェーンがチェーン幅方向にスライドしたり標準スプロケット歯に対して傾斜したりすることなく安定したチェーン軌道を確保することができる。
また、標準スプロケット歯の歯幅より狭い歯幅で形成されて内リンクプレートと非接触状態で噛み合う狭幅スプロケット歯を備えていることにより、スプロケット外周部に狭幅スプロケット歯を設けた分だけ標準スプロケット歯の外側面と内リンクプレートの内側面との間のスプロケット1回転あたりの接触頻度が低下するため、従来のような同一の歯幅に形成されたスプロケット歯のみを設けたスプロケットと比較すると、標準スプロケット歯と内リンクプレートとの間で生じがちな接触抵抗を軽減してチェーン駆動に要する動力エネルギーを高効率化するとともに標準スプロケット歯の外側面と内リンクプレートの内側面との接触により生じる次数音の発生頻度(周波数)を減少することができる。
【0014】
本請求項2に係る発明のスプロケットは、請求項1に記載のスプロケットが奏する効果に加えて、標準スプロケット歯と狭幅スプロケット歯とがスプロケット外周部に交互に配置されていることにより、スプロケット外周部に配置された複数のスプロケット歯のうち半数のスプロケット歯を標準スプロケット歯にしてチェーンに生じがちなチェーン幅方向の噛み合い位置のズレを規制するとともに残り半数のスプロケット歯を狭幅スプロケット歯にして狭幅スプロケット歯の外側面と内リンクプレートの内側面との間の接触を回避するため、従来のような同一の歯幅に形成されたスプロケット歯のみを備えたスプロケットと比較すると、安定したチェーン軌道を維持したまま標準スプロケット歯の外側面と内リンクプレートの内側面との間で生じがちな接触抵抗を低減するとともに標準スプロケット歯と内リンクプレートとの接触に起因する次数音の発生頻度を半減することができる。
【0015】
本請求項3に係る発明のスプロケットは、請求項1に記載のスプロケットが奏する効果に加えて、スプロケット外周部で連接して隣り合う2歯の標準スプロケット歯と狭幅スプロケット歯がスプロケット外周部にそれぞれ交互に配置されていることにより、スプロケット外周部に配置されたスプロケット歯のうち2/3のスプロケット歯を標準スプロケット歯にしてチェーンに生じがちなチェーン幅方向の噛み合い位置のズレを規制するとともに残り1/3のスプロケット歯を狭幅スプロケット歯にして狭幅スプロケット歯の外側面と内リンクプレートの内側面との間の接触を回避するため、従来のような同一の歯幅に形成されたスプロケット歯のみを備えたスプロケットと比較すると、安定したチェーン軌道を維持したまま標準スプロケット歯の外側面と内リンクプレートの内側面との間で生じがちな接触抵抗を低減するとともに標準スプロケット歯と内リンクプレートとの接触に起因する次数音の発生頻度を2/3に減少することができる。
【0016】
本請求項4に係る発明のスプロケットは、請求項1に記載のスプロケットが奏する効果に加えて、標準スプロケット歯と狭幅スプロケット歯とがスプロケット外周部に不規則に配置されていることにより、スプロケット外周部に配置されたスプロケット歯の一部を標準スプロケット歯にしてチェーンに生じがちなチェーン幅方向の噛み合い位置のズレを規制し他のスプロケット歯を狭幅スプロケット歯にして狭幅スプロケット歯の外側面と内リンクプレートの内壁面との間の接触を回避するとともに標準スプロケット歯の外側面が内リンクプレートの内側面と接触するタイミングをランダムに分散するため、従来のような同一の歯幅に形成されたスプロケット歯のみを備えたスプロケットと比較すると、安定したチェーン軌道を維持したまま標準スプロケット歯の外側面と内リンクプレートの内側面との間で生じがちな接触抵抗を低減するとともに標準スプロケット歯と内リンクプレートとの接触に起因する接触音のピークを分散することができる。
【0017】
本請求項5に係る発明のチェーン伝動装置は、多数の内リンクプレートと外リンクプレートとを連結ピンで相互に連結したチェーンとこのチェーンを掛け回して噛み合う複数のスプロケットとで構成されるチェーン伝動装置において、複数のスプロケットのうち少なくとも1つが請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のスプロケットであることにより、狭幅スプロケット歯の外側面と内リンクプレートの内側面とが非接触状態を維持してスプロケットがチェーンを駆動するため、標準スプロケット歯の外側面と内リンクプレートの内側面との間におけるスプロケット1回転あたりの接触頻度を下げて標準スプロケット歯の外側面と内リンクプレートの内側面との接触により生じる次数音の発生頻度を減らしてチェーン伝動装置全体の接触音を減少することができ、さらに、狭幅スプロケット歯の外側面と内リンクプレートの内側面との間で接触抵抗の発生を回避するため、チェーン駆動に要する動力エネルギーを高効率化することができ、さらに、チェーンをスプロケットで駆動する際に、標準スプロケット歯が一対の内リンクプレート間に入り込み標準スプロケット歯の外側面が内リンクプレートの内側面に接触して標準スプロケット歯がチェーンの横ズレを規制するため、スプロケットの外周部に狭幅スプロケット歯を設けてもチェーン軌道を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施例であるチェーン伝動装置の全体斜視図。
【図2】図1に示すローラチェーンの組立分解図。
【図3】図1に示すスプロケットの正面図。
【図4】図1に示すスプロケットの一部拡大側面図。
【図5】図1に示すローラチェーンとスプロケットとの噛合状態を示す図。
【図6】図3に示すVI−VI線から視たチェーンとスプロケットとの噛合状態を示す図。
【図7】本発明の第2実施例に係るチェーン伝動装置で用いたスプロケットを示す平面図。
【図8】本発明の第3実施例に係るチェーン伝動装置で用いたスプロケットを示す平面図。
【図9】従来のチェーン伝動装置に用いられるスプロケットの平面図。
【図10】図9に示すX−X線から視たチェーンとスプロケットとの噛合状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るスプロケットは、チェーンの横ズレを内リンクプレートの相互間で規制しながら噛み合う標準スプロケット歯とこの標準スプロケット歯の歯幅より狭い歯幅で形成されて内リンクプレートと非接触状態で噛み合う狭幅スプロケット歯とで構成されて、内リンクプレートの内側面に対して生じがちなスプロケット歯の外側面の接触抵抗を抑制するとともに次数音を減少させ、さらに、チェーンの安定したチェーン軌道を維持するものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
【0020】
本発明に係るチェーン伝動装置は、内リンクプレートと外リンクプレートを連結ピンで相互に連結したチェーンとこのチェーンを掛け回して噛み合う複数のスプロケットとで構成されるチェーン伝動装置において、複数のスプロケットのうち少なくとも1つが請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のスプロケットからなり、内リンクプレートの内側面に対して生じがちなスプロケット歯の外側面の接触抵抗を抑制するとともに次数音を減少させ、さらに、チェーンの安定したチェーン軌道を維持するものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
【0021】
本発明のスプロケットは、標準スプロケット歯と狭幅スプロケット歯を有したものであれば良く、標準スプロケット歯の歯数と狭幅スプロケット歯の歯数とを足したスプロケットの総歯数が偶数であっても奇数であっても構わない。例えば、スプロケット歯の総歯数が奇数である場合に、標準スプロケット歯と狭幅スプロケット歯とを交互に配置するときは、標準スプロケット歯または狭幅スプロケット歯のいずれかを2歯連続して配置しても構わない。
【0022】
本発明のチェーン伝動装置に用いるチェーンの具体的態様については、内リンクプレート、ブシュ、連結ピン、外リンクプレートからなるブシュチェーンであっても、内リンクプレート、ブシュ、連結ピン、外リンクプレート、ローラからなるローラチェーンであっても構わない。
【実施例】
【0023】
以下に、本発明の第1実施例であるチェーン伝動装置について、図面に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の第1実施例であるチェーン伝動装置の全体斜視図であり、図2は、図1に示すローラチェーンの組立分解図であり、図3は、図1に示すスプロケットの正面図であり、図4は、図1に示すスプロケットの一部拡大側面図であり、図5は、図1に示すローラチェーンとスプロケットとの噛合状態を示す図であり、図6は、図3に示すVI−VI線から視たチェーンとスプロケットとの噛合状態を示す図である。
【0024】
まず、本発明の第1実施例であるチェーン伝動装置100は、図1に示すように、多数の内リンクプレート111と外リンクプレート112とを連結ピン113で相互に連結したローラチェーン110と、このローラチェーン110を掛け回して噛み合うスプロケット120とで構成されている。
【0025】
上述したローラチェーン110は、図2に示すように、左右一対の内リンクプレート111、111と、この内リンクプレート111に圧入嵌合されたブシュ114と、このブシュ114に回転自在に嵌挿された連結ピン113と、この連結ピン113を圧入嵌合する左右一対の外リンクプレート112、112と、ブシュ114の外周に緩挿されたローラ115とで構成されている。
【0026】
上述したスプロケット120は、図3および図4に示すように、ローラチェーン110の横ズレを内リンクプレート111、111の相互間で規制しながら噛み合う標準スプロケット歯121を備えている。
これにより、図5に示すように、ローラチェーン110とスプロケット120の噛み合い始めの際に、標準スプロケット歯121が、ローラチェーン110の内リンクプレート111、111間に入り込んで、標準スプロケット歯121の外側面121sが、内リンクプレート111の内側面111sに接触して、ローラチェーン110の横ズレを規制している。
【0027】
また、スプロケット120は、図3乃至図6に示すように、標準スプロケット歯121の歯幅L1より狭い歯幅L2で形成されて、内リンクプレート111と非接触状態でローラ115と噛み合う狭幅スプロケット歯122を備えている。
これにより、スプロケット外周部120aに狭幅スプロケット歯122を設けた分だけ、標準スプロケット歯121の外側面121sと内リンクプレート111の内側面111sとの間のスプロケット1回転あたりの接触頻度が低下する。
【0028】
また、図3および図4に示すように、標準スプロケット歯121と狭幅スプロケット歯122とは、スプロケット外周部120aに交互に配置されている。
これにより、スプロケット外周部120aに配置された複数のスプロケット歯のうち半数のスプロケット歯を標準スプロケット歯121にして、ローラチェーン110に生じがちなチェーン幅方向の噛み合い位置のズレを規制するとともに、残り半数のスプロケット歯を狭幅スプロケット歯122にして、狭幅スプロケット歯122の外側面122sと内リンクプレート111の内側面111sとの間の接触を回避している。
【0029】
このようにして得られた本発明の第1実施例であるチェーン伝動装置100は、ローラチェーン110の横ズレを内リンクプレート111、111の相互間で規制しながら噛み合う標準スプロケット歯121と標準スプロケット歯121の歯幅L1より狭い歯幅L2で形成されて内リンクプレート111と非接触状態で噛み合う狭幅スプロケット歯122とを備えていることにより、ローラチェーン110がチェーン幅方向にスライドしたり標準スプロケット歯121に対して傾斜したりすることなく安定したチェーン軌道を確保することができ、また、従来のような同一の歯幅に形成されたスプロケット歯のみを設けたスプロケットと比較すると、標準スプロケット歯121と内リンクプレート111との間で生じがちな接触抵抗を軽減してチェーン駆動に要する動力エネルギーを高効率化するとともに標準スプロケット歯121の外側面121sと内リンクプレート111の内側面111sとの接触により生じる次数音の発生頻度を減少させることができる。
【0030】
また、標準スプロケット歯121と狭幅スプロケット歯122とがスプロケット外周部120aに交互に配置されていることにより、従来のような同一の歯幅に形成されたスプロケット歯のみを備えたスプロケットと比較すると、安定したチェーン軌道を維持したまま標準スプロケット歯121の外側面121sと内リンクプレート111の内側面111sとの間で生じがちな接触抵抗を低減するとともに標準スプロケット歯121と内リンクプレート111との接触に起因する次数音の発生頻度を半減することができる等、その効果は甚大である。
【0031】
次に、本発明の第2実施例であるチェーン伝動装置について、図面に基づいて説明する。
ここで、図7は、本発明の第2実施例に係るチェーン伝動装置で用いたスプロケットを示す平面図である。
【0032】
そこで、本発明の第2実施例であるチェーン伝動装置200は、上述した第1実施例のチェーン伝動装置100と比較すると、スプロケットの具体的な形態が異なっており、その余の部品形態については、基本的に何ら変わることがないため、上述した実施例のチェーン伝動装置100と同一の部材について対応する200番台の符号を付すことにより、その重複する説明を省略する。
【0033】
すなわち、図7に示すように、スプロケット220のスプロケット外周部220aで連接して隣り合う2歯の標準スプロケット歯221、221と狭幅スプロケット歯222は、スプロケット外周部220aにそれぞれ交互に配置されている。
これにより、スプロケット220のスプロケット外周部220aに配置された複数のスプロケット歯のうち2/3のスプロケット歯を標準スプロケット歯221にして、チェーン210に生じがちなチェーン幅方向の噛み合い位置のズレを規制するとともに、残り1/3のスプロケット歯を狭幅スプロケット歯222にして、狭幅スプロケット歯222の外側面222sと内リンクプレート211の内側面211sとの間の接触を回避している。
【0034】
このようにして得られた本発明の第2実施例であるチェーン伝動装置200は、前述したチェーン伝動装置100が奏する効果に加えて、従来のような同一の歯幅に形成されたスプロケット歯のみを備えたスプロケットと比較すると、安定したチェーン軌道を維持したまま標準スプロケット歯221の外側面221sと内リンクプレート211の内側面211sとの間で生じがちな接触抵抗を低減するとともに標準スプロケット歯221と内リンクプレート211との接触に起因する次数音の発生頻度を2/3に減少することができる等、その効果は甚大である。
【0035】
次に、本発明の第3実施例であるチェーン伝動装置について、図面に基づいて説明する。
ここで、図8は、本発明の第3実施例に係るチェーン伝動装置で用いたスプロケットを示す平面図である。
【0036】
そこで、本発明の第3実施例であるチェーン伝動装置300は、上述した第1実施例のチェーン伝動装置100と比較すると、スプロケットの具体的な形態が異なっており、その余の部品形態については、基本的に何ら変わることがないため、上述した実施例のチェーン伝動装置100と同一の部材について対応する300番台の符号を付すことにより、その重複する説明を省略する。
【0037】
すなわち、図8に示すように、標準スプロケット歯321と狭幅スプロケット歯322とは、スプロケット320のスプロケット外周部320aに不規則に配置されている。
これにより、スプロケット320のスプロケット外周部320aに配置された複数のスプロケット歯の一部を標準スプロケット歯321にして、チェーン310に生じがちなチェーン幅方向の噛み合い位置のズレを規制し、他のスプロケット歯を狭幅スプロケット歯322にして、狭幅スプロケット歯322の外側面322sと内リンクプレート311の内壁面311sとの間の接触を回避するとともに標準スプロケット歯322の外側面322sが内リンクプレート311の内側面311sと接触するタイミングをランダムに分散している。
【0038】
このようにして得られた本発明の第3実施例であるチェーン伝動装置300は、前述したチェーン伝動装置100が奏する効果に加えて、従来のような同一の歯幅に形成されたスプロケット歯のみを備えたスプロケットと比較すると、安定したチェーン軌道を維持したまま標準スプロケット歯321の外側面321sと内リンクプレート311の内側面311sとの間で生じがちな接触抵抗を低減するとともに標準スプロケット歯321と内リンクプレート311との接触に起因する接触音のピークを分散することができる等、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0039】
100、200、300 ・・・ チェーン伝動装置
110、210、310 ・・・ ローラチェーン
111、211、311 ・・・ 内リンクプレート
111s、211s、311s・・・(内リンクプレートの)内側面
112 ・・・ 外リンクプレート
113 ・・・ 連結ピン
114 ・・・ ブシュ
115 ・・・ ローラ
120、220、320 ・・・ スプロケット
120a、220a、320a・・・スプロケット外周部
121、221、321 ・・・ 標準スプロケット歯
121s、221s、321s・・・(標準スプロケット歯の)外側面
122、222、322 ・・・ 狭幅スプロケット歯
122s、222s、322s・・・(狭幅スプロケット歯の)外側面
L1 ・・・ 標準スプロケット歯の歯幅
L2 ・・・ 狭幅スプロケット歯の歯幅
500 ・・・ チェーン伝動装置
510 ・・・ ローラチェーン
511 ・・・ 内リンクプレート
511s・・・ (内リンクプレートの)内側面
512 ・・・ 外リンクプレート
513 ・・・ 連結ピン
515 ・・・ ローラ
520 ・・・ スプロケット
523 ・・・ スプロケット歯
523s・・・ (スプロケット歯の)外側面



【特許請求の範囲】
【請求項1】
チェーンの横ズレを内リンクプレートの相互間で規制しながら噛み合う標準スプロケット歯と、該標準スプロケット歯の歯幅より狭い歯幅で形成されて内リンクプレートと非接触状態で噛み合う狭幅スプロケット歯とで構成されていることを特徴とするスプロケット。
【請求項2】
前記標準スプロケット歯と狭幅スプロケット歯とが、前記スプロケット外周部に交互に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のスプロケット。
【請求項3】
前記スプロケット外周部で連接して隣り合う2歯の標準スプロケット歯と狭幅スプロケット歯が、前記スプロケット外周部にそれぞれ交互に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のスプロケット。
【請求項4】
前記標準スプロケット歯と狭幅スプロケット歯とが、前記スプロケット外周部に不規則に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のスプロケット。
【請求項5】
多数の内リンクプレートと外リンクプレートとを連結ピンで相互に連結したチェーンと該チェーンを掛け回して噛み合う複数のスプロケットとで構成されるチェーン伝動装置において、
前記複数のスプロケットのうち少なくとも1つが、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のスプロケットであることを特徴とするチェーン伝動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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