説明

スプール用ケース

【課題】ケース内に収容した状態でスプールから長尺体を引き出すことができ、引き出し過ぎた長尺体をケース内のスプールへ簡単に巻き戻すことができるようにする。
【解決手段】筒状胴部(3)と胴部(3)両端に延設した一対のフランジ部(4)とを備え、両フランジ部(4・4)間で胴部(3)の周囲に長尺体(6)の巻装部(5)を設けたスプール(2)を収容するケースである。スプール(2)を収容部(7)に、胴部(3)の周方向へ回転自在に収容する。スプール(2)の一方のフランジ部(4a)に平行な第1側面(8)と、他方のフランジ部(4b)に平行な第2側面(9)と、両フランジ部(4)の外周縁の略全周を取り囲む周側面(10)とを有する。収容部(7)の外面に引出口(11)を開口する。第2側面(9)のうち、胴部(3)近傍と対面する部位に回転操作窓(18)を開口する。回転操作窓(18)の外周縁に、フランジ部(4)の外周縁を、収容部(7)から離脱不能に係止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣糸や手芸糸、金属線などの糸条体のほか、包装用テープなどの帯状体を巻きつけておくスプールを収容するためのケースに関し、さらに詳しくは、ケース内に収容した状態でスプールから長尺体を引き出すことができ、しかも、引き出し過ぎた長尺体をケース内のスプールへ簡単に巻き戻すことができる、スプール用ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、釣糸などの長尺体が巻回されるスプールとしては、例えば、円筒状の胴部とこの胴部の両側端から径方向外側へ延設した一対のフランジ部とを備え、この両フランジ部間で上記の胴部の周囲に、上記の長尺体が巻回される巻装部を形成したものがある。これらのスプールは、紙製や合成樹脂製のケースに収容して展示し販売されることが多い。
【0003】
上記のスプールは、通常、ケースから取り出したのち、鉛筆など任意の支軸を上記の胴部に挿通することで回転自在に支持され、この状態でそのスプールから長尺体が引き出される。これに対し、ケース内にスプールを胴部の周方向へ回転自在に収容するとともに、そのケースに長尺体の引出口を開口し、そのケース内に収容した状態で、スプールから長尺体を引き出すようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照、以下、従来技術1という。)。
【0004】
しかし上記の従来技術1では、スプールの全体がケースの外周面で覆われているため、使用者はそのスプールを直接操作することができない。このため、スプールから長尺体を引き出し過ぎた場合、このスプールを回転させることができず、スースから取り出さないと長尺体をスプールに巻き戻すことができない問題がある。
【0005】
一方、スプールのフランジ部の一部を外部へ露出させたスプール用ケースが提案されている(例えば、特許文献2参照、以下、従来技術2という。)。この従来技術2では、ケースから外部へ露出しているフランジ部の外周縁等を使用者が操作することで、ケースに対しスプールを回転させ、これにより長尺体をスプールの巻装部へ巻き戻すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−070746号公報
【特許文献2】特開2003−164245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の従来技術2では、一対のフランジ部間に形成した巻装部がケースの外側に露出していることから、この巻装部に巻回された長尺体をケースの外周面で保護することができない問題がある。
【0008】
本発明の技術的課題は上記の問題点を解消し、ケース内に収容した状態でスプールから長尺体を引き出すことができ、しかも、引き出し過ぎた長尺体をケース内のスプールへ簡単に巻き戻すことができる、スプール用ケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の課題を解決するために、例えば、本発明の実施の形態を示す図1から図5に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
即ち本発明はスプール用ケースに関し、筒状胴部(3)とその胴部(3)両端から径方向外側へそれぞれ延設した一対のフランジ部(4)とを備え、その両フランジ部(4・4)間で胴部(3)の周囲に長尺体(6)が巻回される巻装部(5)を設けたスプール(2)を収容するためのケースであって、上記のスプール(2)を上記の胴部(3)の周方向へ回転自在に収容する収容部(7)と、その収容部(7)へ収容されたスプール(2)の一方のフランジ部(4a)に平行な第1側面(8)と、他方のフランジ部(4b)に平行な第2側面(9)と、両フランジ部(4)の外周縁の略全周を取り囲む周側面(10)とを有し、上記の収容部(7)の外面に上記の長尺体(6)を引き出すための引出口(11)を開口し、上記の第2側面(9)のうち、上記の胴部(3)およびその近傍と対面する部位に回転操作窓(18)を開口し、この回転操作窓(18)の外周縁に、上記のフランジ部(4)の外周縁の少なくとも一部を収容部(7)から離脱不能に係止したことを特徴とする。
【0010】
上記のスプールは、収容部内に周方向へ回転自在に収容されているので、このスプールの巻装部に巻回された長尺体は、そのスプールをケース内に収容した状態で、上記の引出口から容易に引き出される。また上記のスプールから長尺体が過剰に引き出された場合には、上記の回転操作窓から露出している胴部の近傍に指先や任意の棒の端部などを押し当て、そのスプールを回転させることにより、その長尺体がスプールの巻装部へ巻き戻される。しかも、周側面がスプールの両フランジ部の外周縁の略全周を取り囲んでいるので、両フランジ部間に形成された巻装部はこの周側面に覆われており、巻装部に巻回された長尺体は収容部内に収容されて保護されている。
【0011】
ここで、上記の長尺体とは、上記の胴部へ捲回可能な糸条体や帯状体をいう。この糸条体とは、例えば釣糸や手芸糸などの繊維製品のほか、金属線などをも含む。また上記の帯状体とは、装飾や包装などに用いられるリボンやテープなどをいう。これらの長尺体は、太さや幅が特定の寸法のものに限定されず、合成樹脂製のほか天然繊維製や金属製、紙製などであってもよく、特定の材質に限定されない。
【0012】
上記のスプールは、フランジ部の外周縁に沿って案内部を設けたり、周側面の内面で案内することにより、収容部内で回転自在に構成してもよい。しかし、上記の第1側面の内面に円筒状のガイド筒を固定して、このガイド筒へ上記のスプールの胴部を外嵌することによりそのスプールを回転自在に案内すると、スプールをきわめて円滑に安定よく回転させることができてより好ましい。
【0013】
また上記のスプール用ケースの形状は特定のものに限定されないが、上記の第1側面を含むケース本体と、上記の第2側面を含む蓋部とを備え、この蓋部をケース本体へ着脱可能に蓋して、そのケース本体と蓋部との間に前記の収容部を形成した場合には、スプールを収容部内へ容易に収容できて好ましく、特に、スプールの胴部内へガイド筒等を挿入して回転自在に案内する場合は、スプールの胴部へガイド筒等を容易に挿入できるので好ましい。
さらにこの場合、上記のケース本体と蓋部とを、周側面に設けたヒンジ部を介して互いに連結し、このヒンジ部で屈曲させることにより、その蓋部をケース本体へ着脱可能に蓋して、そのケース本体と蓋部との間に前記の収容部を形成すると、ケース本体と蓋部とを一層容易に取り扱うことができてより好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上記のように構成され作用することから、次の効果を奏する。
【0015】
(1)上記のスプールは、収容部内に周方向へ回転自在に収容してあるので、そのスプールをケース内に収容した状態で、このスプールの巻装部に巻回された長尺体を、上記の引出口から容易に引き出すことができる。
【0016】
(2)スプールの胴部およびその近傍は、上記の回転操作窓から露出しているので、その露出している胴部の近傍に指先等を押し当てて移動させることで、そのスプールを簡単に回転させることができる。従って、スプールから長尺体を引き出し過ぎた場合は、回転操作窓を介してスプールを回転させることにより、その長尺体をスプールの巻装部へ簡単に巻き戻すことができる。
【0017】
(3)しかもスプールの両フランジ部は、外周縁の略全周が周側面で取り囲まれているので、両フランジ部間に形成された巻装部をこの周側面で覆うことができ、巻装部に巻回された長尺体を収容部内に収容して確実に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態を示す、スプール用ケースの斜視図である。
【図2】実施形態の、スプール用ケースの一部破断正面図である。
【図3】図2のIII−III線矢視断面図である。
【図4】図3のA部の拡大断面図である。
【図5】実施形態の、スプール用ケースの一部破断背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1から図3に示すように、このスプール用ケース(1)は、釣糸用スプール(2)を収容するためのケースである。このスプール(2)は、円筒状に形成された胴部(3)と、この胴部(3)の両側端から径方向外側へ延設した一対のフランジ部(4)とを備える。この両フランジ部(4・4)間で上記の胴部(3)の周囲に巻装部(5)が形成してあり、この巻装部(5)に長尺体である釣糸(6)が巻回される。
【0020】
上記のスプール用ケース(1)は、上記のスプール(2)を上記の胴部(3)の周方向へ回転自在に収容する収容部(7)を内部に備える。その収容部(7)の周囲は、この収容部(7)に収容されたスプール(2)の一方のフランジ部(4a)と平行な第1側面(8)と、他方のフランジ部(4b)と平行な第2側面(9)と、両フランジ部(4)の外周縁の略全周を取り囲む周側面(10)とからなる。上記の第1側面(8)と第2側面(9)は、周縁が略正方形に形成されており、周側面(10)は両側面(8・9)の周縁間に形成された4つの面からなる。この周側面(10)の1つに引出口(11)が開口してあり、この引出口(11)を介して、上記の巻装部(5)から上記の釣糸(6)が引き出される。なお、上記の両フランジ部(4)の外周縁のうち、この引出口(11)に対応する部分は外部空間に露出していてもよい。従って、上記の周側面(10)で取り囲まれる両フランジ部(4)の外周縁の「略全周」とは、上記の引出口(11)に対応する部位を除く全周をいう。
【0021】
図1と図3に示すように、上記の第1側面(8)と、その周縁に延設された、周側面(10)のうちの第1側面(8)側の半部とは、ケース本体(12)を構成している。また上記の第2側面(9)と、その周縁に延設された、周側面(10)のうちの第2側面(9)側の半部は、蓋部(13)を構成している。そしてこのケース本体(12)と蓋部(13)は、周側面(10)の中間部に設けたヒンジ部(14)を介して互いに連結してある。上記の蓋部(13)は、このヒンジ部(14)を屈曲させることにより、ケース本体(12)へ着脱可能に蓋することができ、この蓋した状態で、そのケース本体(12)と蓋部(13)との間に前記の収容部(7)が形成される。
【0022】
上記の収容部(7)の内面を構成する第1側面(8)の内面中央部には、円筒状のガイド筒(15)が固定してあり、そのガイド筒(15)の内部は、両端の開口(16)を介して外部空間へ開放してある。上記の収容部に収容されたスプール(2)は、その胴部(3)が上記のガイド筒(15)に外嵌され、これによりそのスプール(2)が収容部(7)内で回転自在に案内される。
【0023】
このガイド筒(15)のうち、前記の引出口(11)を形成した周側面(10)とは反対側の周側面(10)の一端にあるコーナー部と対応する、1/4部分円筒体は、軸心方向の切れ目で他の円筒部分と切り離されており、制動部(17)を構成している。この制動部(17)は、拡径方向へ、即ち、スプール(2)の胴部(3)の内周面側へ弾性偏位可能であり、図4の実線に示すように、その弾性力で復帰して上記のスプール(2)が自在に回転することを許容する解除姿勢(C)と、図4の仮想線に示すように、その弾性力に抗してスプール(2)側へ偏位することでそのスプール(2)の回転を制御する制動姿勢(B)とに、切り換えることができる。
【0024】
図5に示すように、上記の第2側面(9)は、上記のスプール(2)の胴部(3)およびその近傍と対面する部位に、その胴部(3)の全周に亘って回転操作窓(18)を大きく開口してある。この回転操作窓(18)は略正方形に形成してあり、その一辺の長さは、上記のフランジ部(4)の外径よりも短い。従って、このフランジ部(4)の外周縁の一部は、この回転操作窓(18)の外周縁により、収容部(7)から離脱不能に係止されている。なお、この実施形態では略正方形の回転操作窓(18)を開口したが、本発明では円形など、他の形状の回転操作窓を開口したものであってもよい。例えば、この回転操作窓を円形に形成した場合は、その外周縁によりフランジ部(4)の外周縁の全部が収容部(7)から離脱不能に係止される。
【0025】
上記のスプール(2)から釣糸(6)を引き出す場合、使用者は上記のガイド筒(15)内へ指先を挿入してスプール用ケース(1)を把持し、巻装部(5)に巻回されている釣糸(6)を引出口(11)から引き出す。このとき、釣糸(6)に張力を付与する場合は、その手指を握り締めて制動部(17)を制動姿勢(B)に切り換える。これにより、制動部(17)がガイド筒(15)の他の部位に比べて拡径し、胴部(3)の内周面に摺動する。この結果、収容部(7)内のスプール(2)に回転抵抗が加えられ、釣糸(6)に所望の張力が付与される。これに対し張力の付与が必要ない場合は、上記の手指を緩めるだけで、上記の制動部(17)がその弾性力で解除姿勢(C)に切り換わり、これによりスプール(2)が自由に回転して、釣糸(6)が抵抗なく引き出される。
【0026】
一方、スプール(2)から釣糸(6)を引き出し過ぎた場合は、上記の回転操作窓(18)から露出している胴部(3)の近傍に、指先や任意の棒の端部などを押し当て、スプール(2)を胴部(3)の周方向へ回転させる。胴部(3)の近傍は全周に亘って上記の回転操作窓(18)から外部空間に露出しているので、スプール(2)を容易に連続回転させることができ、これにより、釣糸(6)をスプール(2)の巻装部(5)へ素早く巻き戻すことができる。
【0027】
上記の実施形態で説明したスプール用ケースは、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、各部の形状や構造、寸法、材質などをこれらの実施形態のものに限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0028】
例えば上記の実施形態では、ガイド筒の一部を拡径することで、スプールの回転を制御するように構成した。しかし本発明では、例えば、円筒状または部分円筒状の制動部と周側面とでスプールを挟持することで、スプールの回転を制御するように構成してもよく、あるいは制動部を省略したものであってもよい。
【0029】
また上記の実施形態では、ケース本体の周側面に吊下具(20)を備えるが、蓋部側に吊下具を設けてもよく、あるいはこの吊下具を省略したものであってもよい。
さらに、上記の実施形態では長尺体が釣糸である場合について説明したが、本発明に用いる上記の長尺体は、他の糸条体や、巻装部と同じ幅の或いはこれよりも狭い幅の帯状体等であってもよいことは、言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のスプール用ケースは、ケース内に収容した状態でスプールから長尺体を引き出すことができ、しかも、引き出し過ぎた長尺体をケース内のスプールへ簡単に巻き戻すことができるので、特に釣糸用スプールに好適であるが、手芸糸や包装用テープなど、他の長尺体に用いるスプールにも好適である。
【符号の説明】
【0031】
1…スプール用ケース
2…スプール(釣糸用スプール)
3…胴部
4…フランジ部
4a…一方のフランジ部
4b…他方のフランジ部
5…巻装部
6…長尺体(釣糸)
7…収容部
8…第1側面
9…第2側面
10…周側面
11…引出口
12…ケース本体
13…蓋部
14…ヒンジ部
15…ガイド筒
18…回転操作窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状胴部(3)とその胴部(3)両端から径方向外側へそれぞれ延設した一対のフランジ部(4)とを備え、その両フランジ部(4・4)間で胴部(3)の周囲に長尺体(6)が巻回される巻装部(5)を設けたスプール(2)を収容するためのケースであって、
上記のスプール(2)を上記の胴部(3)の周方向へ回転自在に収容する収容部(7)と、その収容部(7)へ収容されたスプール(2)の一方のフランジ部(4a)に平行な第1側面(8)と、他方のフランジ部(4b)に平行な第2側面(9)と、両フランジ部(4)の外周縁の略全周を取り囲む周側面(10)とを有し、
上記の収容部(7)の外面に上記の長尺体(6)を引き出すための引出口(11)を開口し、
上記の第2側面(9)のうち、上記の胴部(3)およびその近傍と対面する部位に回転操作窓(18)を開口し、この回転操作窓(18)の外周縁に、上記のフランジ部(4)の外周縁の少なくとも一部を収容部(7)から離脱不能に係止したことを特徴とする、スプール用ケース。
【請求項2】
上記の第1側面(8)の内面に円筒状のガイド筒(15)を固定して、このガイド筒(15)へ上記のスプール(2)の胴部(3)を外嵌することによりそのスプール(2)を回転自在に案内する、請求項1に記載のスプール用ケース。
【請求項3】
上記の第1側面(8)を含むケース本体(12)と、上記の第2側面(9)を含む蓋部(13)とを備え、
上記のケース本体(12)と蓋部(13)とを、上記の周側面(10)に設けたヒンジ部(14)を介して互いに連結し、このヒンジ部(14)を屈曲させることにより、その蓋部(13)をケース本体(12)へ着脱可能に蓋して、そのケース本体(12)と蓋部(13)との間に前記の収容部(7)を形成した、請求項1または請求項2に記載のスプール用ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−279317(P2010−279317A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136985(P2009−136985)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(506269149)株式会社ワイ・ジー・ケー (21)
【Fターム(参考)】