説明

スプール用ケース

【課題】ケース内に収容したスプールから長尺体を容易に引き出すことができ、必要に応じてその引き出す長尺体に張力を簡単に付与できるうえ、安価に実施でき、しかも、引き出し過ぎた長尺体をスプールへ抵抗なく簡単に巻き戻せるようにする。
【解決手段】筒状胴部(3)とその胴部両端に延設した一対のフランジ部(4)とを備え、両フランジ部(4・4)間で胴部(3)の周囲に長尺体(6)の巻装部(5)を設けたスプール(2)を収容するケースである。スプール(2)を収容部(7)に胴部(3)の周方向へ回転自在に収容する。収容部(7)の外面に長尺体(6)を引き出すための引出口(11)を開口する。収容部(7)内のスプール(2)側へ弾性偏位可能な制動部(17)を備える。制動部(17)を、その弾性力で復帰してスプール(2)の自在回転を許容する解除姿勢(C)と、その弾性力に抗して偏位することでスプール(2)の回転を制御する制動姿勢(B)とに切換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣糸や手芸糸、金属線などの糸条体のほか、包装用テープなどの帯状体を巻きつけておくスプールを収容するためのケースに関し、さらに詳しくは、ケース内に収容したスプールから長尺体を容易に引き出すことができるうえ、必要に応じてその引き出す長尺体に張力を簡単に付与できて、所望の長さの長尺体を容易に引き出すことができ、しかも安価に実施でき、引き出し過ぎた長尺体をスプールへ抵抗なく簡単に巻き戻せる、スプール用ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、釣糸などの長尺体が巻回されるスプールとしては、例えば、円筒状の胴部とこの胴部の両側端から径方向外側へ延設した一対のフランジ部とを備え、この両フランジ部間で上記の胴部の周囲に、上記の長尺体が巻回される巻装部を形成したものがある。これらのスプールは、紙製や合成樹脂製のケースに収容して展示し販売されることが多い。
【0003】
上記のスプールは、通常、ケースから取り出したのち、鉛筆など任意の支軸を上記の胴部に挿通することで回転自在に支持され、この状態でそのスプールから長尺体が引き出される。これに対し、ケース内にスプールを胴部の周方向へ回転自在に収容するとともに、そのケースに長尺体の引出口を開口し、そのケース内に収容した状態で、スプールから長尺体を引き出すように構成したものがある(例えば、特許文献1参照、以下、従来技術1という。)。
【0004】
上記の従来技術1では、スプールに巻回された長尺体を引き出す際に、その長尺体に張力(テンション)を付与することができないので、例えば釣糸をスプールから引き出してリールなどに巻き替える場合などに、その長尺体に巻き癖がついてしまう虞がある。また、長尺体を引き出す際に、スプールが使用者の意図に反して回転して、長尺体を過剰に引き出してしまい易い問題もある。そこでこれを解消するため、ケース内のスプールの回転を制御できるようにしたものが提案されている(例えば、特許文献2参照、以下、従来技術2という。)。
【0005】
即ち、この従来技術2は、上記のスプールの胴部の内周面に、軸線方向視において多角形状を呈する多角形部を形成しておき、ケース内には周方向に沿って延びるアーム状の弾性手段を設け、この弾性手段を上記の多角形部に当接させるとともに、胴部を外周面側へ付勢することで、スプールの回転を制限するようにしてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−070746号公報
【特許文献2】特開2008−094568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の従来技術2では、スプールの回転に対し常に抵抗が加えられているので、引き出した長尺体に所定の張力を加えることができ、また、スプールが使用者の意図に反して過剰に回転してしまうことがなく、長尺体を引き出し過ぎてしまうことが防止される。
しかしながら、この従来技術2では、スプールの胴部内周面に多角形部を備える必要があり、一般的な円筒状の胴部を備えたスプールでは対応できず、特殊な形状のスプールが必要となって安価に実施できない問題がある。しかもスプールは、上記の弾性手段により常に回転抵抗を受けるため、引き出し過ぎた長尺体を巻き戻す場合にもその回転抵抗を生じるので、その巻き戻し操作が容易でない。また、弾性手段の先端が上記の多角形部の角部を通過する際に衝撃を受けるので、スプールが回転する際にその衝撃による振動を生じることから、長尺体を滑らかに引き出せるとは言い難い問題もある。
【0008】
本発明の技術的課題は上記の問題点を解消し、ケース内に収容したスプールから長尺体を容易に引き出すことができるうえ、必要に応じてその引き出す長尺体に張力を簡単に付与できて、所望の長さの長尺体を容易に引き出すことができ、しかも安価に実施でき、引き出し過ぎた長尺体をスプールへ抵抗なく簡単に巻き戻せる、スプール用ケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の課題を解決するために、例えば、本発明の実施の形態を示す図1から図8に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
即ち本発明はスプール用ケースに関し、筒状胴部(3)とその胴部(3)両端から径方向外側へそれぞれ延設した一対のフランジ部(4)とを備え、その両フランジ部(4・4)間で胴部(3)の周囲に長尺体(6)が巻回される巻装部(5)を設けたスプール(2)を収容するためのケースであって、上記のスプール(2)を上記の胴部(3)の周方向へ回転自在に収容する収容部(7)と、その収容部(7)に収容されたスプール(2)側へ弾性偏位可能な制動部(17)とを備え、上記の収容部(7)の外面に上記の長尺体(6)を引き出すための引出口(11)を開口し、上記の制動部(17)を、その弾性力で復帰して上記のスプール(2)が自在に回転することを許容する解除姿勢(C)と、その弾性力に抗してスプール(2)側へ偏位することでそのスプール(2)の回転を制御する制動姿勢(B)とに切換え可能に構成したことを特徴とする。
【0010】
上記のスプールから長尺体を引き出す際、上記の制動部をその弾性力に抗して制動姿勢に切り換えることにより、スプールは制動部による抵抗を受けて回転が制御され、長尺体は適切な張力を付与されながらスプールから引出口を介して引き出される。上記の制動部は、制動姿勢への切換えをやめると、その弾性力で解除姿勢に切り換わる。従って長尺体に張力を付与しないで引き出す場合や、引き出し過ぎた長尺体をスプールへ巻き戻す場合は、上記の制動部をその弾性力で解除姿勢に戻して、スプールを抵抗なく回転させる。
【0011】
ここで、上記の長尺体とは、上記の胴部へ捲回可能な糸条体や帯状体をいう。この糸条体とは、例えば釣糸や手芸糸などの繊維製品のほか、金属線などをも含む。また上記の帯状体とは、装飾や包装などに用いられるリボンやテープなどをいう。これらの長尺体は、太さや幅が特定の寸法のものに限定されず、合成樹脂製のほか天然繊維製や金属製、紙製などであってもよく、特定の材質に限定されない。
【0012】
上記の制動部は、特定の部位に形成する必要はないが、収容部に収容されたスプールの胴部内に配置すると、スプール用ケースを把持した状態で制動部をその弾性力に抗して制動姿勢へ容易に切り替えることができて好ましい。
【0013】
例えば、上記の収容部の内面に円筒状のガイド筒を固定して、そのガイド筒の内部を外部空間へ両端の開口を介して開放し、このガイド筒へ上記のスプールの胴部を外嵌することによりそのスプールを回転自在に案内し、上記の制動部を上記のガイド筒の周方向の一部で構成し、この制動部をそのガイド筒の拡径方向へ偏位させることで上記の制動姿勢に切り換えるように構成することができる。この場合、使用者はガイド筒内へ指先を挿入してスプール用ケースを把持するが、その手指を握り締めるだけで、制動部を制動姿勢へ容易に切り換えることができる。そしてその制動部が制動姿勢に切り換えられると、ガイド筒の他の部位に対し制動部の部位で外径が拡がった状態となり、制動部が胴部の内周面に摺接して、スプールの胴部に回転抵抗が付与される。
【0014】
また上記の制動部は、上記の収容部の内面に固定された円筒体または部分円筒体で構成して、この円筒体または部分円筒体を収容部内へ収容されたスプールの胴部内に配置し、この円筒体または部分円筒体の内部を、その両端の開口を介して外部空間に開放することができる。この場合も、使用者はその円筒体内または部分円筒体内へ指先を挿入し、親指側を周側面に沿わせてスプール用ケースを把持し、その手指を握り締めるだけで制動部を制動姿勢へ容易に切り換えることができる。そして、その制動部が制動姿勢に切り換わると、上記のスプールはその円筒体または部分円筒体と上記の周側面との間に挟持され、スプールの回転に対し抵抗が生じるので、引き出した長尺体に張力が付与される。
【0015】
上記のスプール用ケースの形状は特定のものに限定されないが、スプールの一方のフランジ部に平行な第1側面を含むケース本体と、他方のフランジ部に平行な第2側面を含む蓋部とを備え、この蓋部をケース本体へ着脱可能に蓋して、そのケース本体と蓋部との間に前記の収容部を形成した場合には、スプールを収容部内へ容易に収容できて好ましく、特に、スプールの胴部内へガイド筒等を挿入して回転自在に案内する場合は、スプールの胴部へガイド筒等を容易に挿入できるので好ましい。
さらにこの場合、上記のケース本体と蓋部とを、周側面に設けたヒンジ部を介して互いに連結し、このヒンジ部を屈曲させることにより、その蓋部をケース本体へ着脱可能に蓋して、そのケース本体と蓋部との間に前記の収容部を形成すると、ケース本体と蓋部とを一層容易に取り扱うことができてより好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上記のように構成され作用することから、次の効果を奏する。
【0017】
(1)使用者は、ケース内に収容したスプールから引出口を介して長尺体を容易に引き出すことができる。しかもその長尺体を引き出す際に、スプール用ケースを把持する手指を握り締めるなどにより、制動部を制動姿勢に切り換えることで、その長尺体に適切な張力を簡単に付与することができる。従って、使用者の意図に反して長尺体を過剰に引き出すことも防止でき、所望の長さの長尺体を容易に引き出すことができる。
【0018】
(2)上記の制動部は、制動姿勢への切換えを止めると、その弾性力で解除姿勢に切り換わるので、その制動部を解除姿勢へ簡単に戻すことができ、必要に応じてスプールを抵抗なく回転させることができる。この結果、長尺体に張力を付与しないで引き出す場合はスプールからその長尺体を素早く円滑に引き出すことができ、また、引き出し過ぎた長尺体をスプールへ抵抗なく簡単に巻き戻すことができる。
【0019】
(3)上記の収容部に収容されるスプールは、胴部の内周面を多角形など特殊な形状に形成する必要がなく、その内周面が円筒面であるものを適用することができる。この結果、汎用性に優れて安価に実施できるうえ、制動部を制動姿勢に切り換えた状態でも、制動部が当接するスプールの部位を滑らかに形成でき、張力を付与した状態でも長尺体を円滑に引き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態を示す、スプール用ケースの斜視図である。
【図2】第1実施形態の、スプール用ケースの一部破断正面図である。
【図3】図2のIII−III線矢視断面図である。
【図4】図3のA部の拡大断面図である。
【図5】第1実施形態の、スプール用ケースの一部破断背面図である。
【図6】本発明の第2実施形態を示す、スプール用ケースの一部破断斜視図である。
【図7】第2実施形態の、蓋部を開いた状態のスプール用ケースの斜視図である。
【図8】第2実施形態の、スプール用ケースの要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1から図3に示すように、このスプール用ケース(1)は、釣糸用スプール(2)を収容するためのケースである。このスプール(2)は、円筒状に形成された胴部(3)と、この胴部(3)の両側端から径方向外側へ延設した一対のフランジ部(4)とを備える。この両フランジ部(4・4)間で上記の胴部(3)の周囲に巻装部(5)が形成してあり、この巻装部(5)に長尺体である釣糸(6)が巻回される。
【0022】
上記のスプール用ケース(1)は、上記のスプール(2)を上記の胴部(3)の周方向へ回転自在に収容する収容部(7)を内部に備える。その収容部(7)の周囲は、この収容部(7)に収容されたスプール(2)の一方のフランジ部(4a)と平行な第1側面(8)と、他方のフランジ部(4b)と平行な第2側面(9)と、両フランジ部(4)の外周縁の略全周を取り囲む周側面(10)とからなる。上記の第1側面(8)と第2側面(9)は、周縁が略正方形に形成されており、周側面(10)は両側面(8・9)の周縁間に形成された4つの面からなる。この周側面(10)の1つに引出口(11)が開口してあり、この引出口(11)を介して、上記の巻装部(5)から上記の釣糸(6)が引き出される。なお、上記の両フランジ部(4)の外周縁のうち、この引出口(11)に対応する部分は外部空間に露出していてもよい。従って、上記の周側面(10)で取り囲まれる両フランジ部(4)の外周縁の「略全周」とは、上記の引出口(11)に対応する部位を除く全周をいう。
【0023】
図1と図3に示すように、上記の第1側面(8)と、その周縁に延設された、周側面(10)のうちの第1側面(8)側の半部とは、ケース本体(12)を構成している。また上記の第2側面(9)と、その周縁に延設された、周側面(10)のうちの第2側面(9)側の半部は、蓋部(13)を構成している。そしてこのケース本体(12)と蓋部(13)は、周側面(10)の中間部に設けたヒンジ部(14)を介して互いに連結してある。上記の蓋部(13)は、このヒンジ部(14)を屈曲させることにより、ケース本体(12)へ着脱可能に蓋することができ、この蓋した状態で、そのケース本体(12)と蓋部(13)との間に前記の収容部(7)が形成される。
【0024】
上記の収容部(7)の内面を構成する第1側面(8)の内面中央部には、円筒状のガイド筒(15)が固定してあり、そのガイド筒(15)の内部は、両端の開口(16)を介して外部空間へ開放してある。上記の収容部に収容されたスプール(2)は、その胴部(3)が上記のガイド筒(15)に外嵌され、これによりそのスプール(2)が収容部(7)内で回転自在に案内される。
【0025】
このガイド筒(15)のうち、前記の引出口(11)を形成した周側面(10)とは反対側の周側面(10)の一端にあるコーナー部と対応する、1/4部分円筒体は、軸心方向の切れ目で残りの円筒部分と切り離されており、制動部(17)を構成している。この制動部(17)は、拡径方向へ、即ち、スプール(2)の胴部(3)の内周面側へ弾性偏位可能であり、図4の実線に示すように、その弾性力で復帰して上記のスプール(2)が自在に回転することを許容する解除姿勢(C)と、図4の仮想線に示すように、その弾性力に抗してスプール(2)側へ偏位することでそのスプール(2)の回転を制御する制動姿勢(B)とに、切り換え可能である。
【0026】
図5に示すように、上記の第2側面(9)は、上記のスプール(2)の胴部(3)およびその近傍と対面する部位に、その胴部(3)の全周に亘って回転操作窓(18)を大きく開口してある。この回転操作窓(18)は略正方形に形成してあり、その一辺の長さは、上記のフランジ部(4)の外径よりも短い。従って、このフランジ部(4)の外周縁の一部は、この回転操作窓(18)の外周縁により、収容部(7)から離脱不能に係止されている。なお、この実施形態では略正方形の回転操作窓(18)を開口したが、本発明では円形など、他の形状の回転操作窓を開口したものであってもよい。例えば、この回転操作窓を円形に形成した場合は、その外周縁によりフランジ部(4)の外周縁の全部が収容部(7)から離脱不能に係止される。
【0027】
上記のスプール(2)から釣糸(6)を引き出す場合、使用者は上記のガイド筒(15)内へ指先を挿入してスプール用ケース(1)を把持し、巻装部(5)に巻回されている釣糸(6)を引出口(11)から引き出す。このとき、釣糸(6)に張力を付与する場合は、その手指を握り締めて制動部(17)を制動姿勢(B)に切り換える。これにより、制動部(17)がガイド筒(15)の他の部位に比べて拡径し、胴部(3)の内周面に摺動する。この結果、収容部(7)内のスプール(2)に回転抵抗が加えられ、釣糸(6)に所望の張力が付与される。これに対し張力の付与が必要ない場合は、上記の手指を緩めるだけで、上記の制動部(17)がその弾性力で解除姿勢(C)に切り換わり、これによりスプール(2)が自由に回転して、釣糸(6)が抵抗なく引き出される。
【0028】
一方、スプール(2)から釣糸(6)を引き出し過ぎた場合は、上記の回転操作窓(18)から露出している胴部(3)の近傍に、指先や任意の棒の端部などを押し当て、スプール(2)を胴部(3)の周方向へ回転させる。胴部(3)の近傍は全周に亘って上記の回転操作窓(18)から外部空間に露出しているので、スプール(2)を容易に連続回転させることができ、これにより釣糸(6)をスプール(2)の巻装部(5)へ素早く巻き戻すことができる。
【0029】
上記の第1実施形態では、ガイド筒の一部を拡径することで、スプールの回転を制御するように構成した。しかし本発明では、制動部でスプールを挟持することで、スプールの回転を制御するように構成してもよい。
【0030】
即ち図6から図8に示す第2実施形態では、上記の第1実施形態と同様、第1側面(8)を含むケース本体(12)と、第2側面(9)を含む蓋部(13)とを備えており、このケース本体(12)と蓋部(13)との間に収容部(7)が形成され、この収容部(7)に釣糸用スプール(2)が回転自在に収容してある。また、スプール(2)のフランジ部(4)の外周縁を取り囲む周側面(10)に、釣糸(6)を引き出すための引出口(11)が開口してある。
【0031】
図7に示すように、上記の第1側面(8)と第2側面(9)には、それぞれ内面に部分円筒体(19)が固定してあり、この部分円筒体(19)の内部は、端部の開口(16)を介して外部空間へ開放してある。スプール(2)の胴部(3)は、この部分円筒体(19)に外嵌され、スプール(2)はこの部分円筒体(19)に沿って自由に回転することができる。
【0032】
上記の部分円筒体(19)の中間部は、拡径方向へ、即ち収容部(7)に収容されたスプール(2)側へ、弾性偏位可能であり、制動部(17)を構成している。ヒンジ部(14)など、その他の構成は上記の第1実施形態と同様であり、同様に作用するので説明を省略する。
【0033】
上記のスプール(2)から釣糸(6)を引き出す場合、使用者は上記の開口(16)から上記の部分円筒体(19)内へ指先を挿入し、親指側を周側面(10)に沿わせてスプール用ケース(1)を把持する。この状態で、上記のスプール(2)から引出口(11)を介して釣糸(6)を引き出すが、その釣糸(6)に張力を付与する場合は、手指を握り締めて、図8の仮想線に示すように制動部(17)を制動姿勢(B)に切り換える。これによりスプール(2)は周側面(10)側に押圧され、この周側面(10)と制動部(17)との間に挟持される。この結果、収容部(7)内のスプール(2)に回転抵抗が加えられて、引き出した釣糸(6)に所望の張力が付与される。張力の付与が必要ない場合は、上記の手指を緩めるだけで、上記の制動部(17)がその弾性力で、図8の実線に示す解除姿勢(C)に切り換わり、これによりスプール(2)が自由に回転して、釣糸(6)が抵抗なく引き出される。
【0034】
一方、スプール(2)から釣糸(6)を引き出し過ぎた場合は、上記の引出口(11)から外部空間に露出しているフランジ部(4)の外周縁や、上記の開口(16)から外部空間に露出している胴部(3)の内周面を操作して、上記のスプール(2)を胴部(3)の周方向へ回転させ、これにより釣糸(6)をスプール(2)の巻装部(5)へ簡単に巻き戻すことができる。
【0035】
上記の各実施形態で説明したスプール用ケースは、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、各部の形状や構造、寸法、材質などをこれらの実施形態のものに限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0036】
例えば上記の第1実施形態では、上記の制動部を、ガイド筒のうち、周側面のコーナー部と対応した部位に形成してあるので、スプール用ケースが小形である場合も、使用者は力を加えやすく、容易に張力を付与することができる。しかしこの第1実施形態においては、一つの周側面の中間部と対応する部位に制動部を形成してもよい。
また上記の第2実施形態では、制動部を部分円筒体で構成した。しかし本発明では、円筒体でこの制動部を構成することも可能である。
また上記の第1実施形態では、蓋部に回転操作窓を形成したが、本発明ではこれを省略してもよく、また、第2実施形態のものに回転操作窓を形成してもよい。
【0037】
なお、上記の第1実施形態では、スプールの胴部内にガイド筒を挿入した。しかし本発明では、収容部内へスプールを回転自在に収容するため、フランジ部の外周縁に沿って案内部を設けたり、周側面の内面でフランジ部の外周縁を案内したりしてもよい。
また上記の各実施形態では、ケース本体の周側面に吊下具(20)を備えるが、蓋部側に吊下具を設けてもよく、あるいはこの吊下具を省略したものであってもよい。
さらに、上記の実施形態では長尺体が釣糸である場合について説明したが、本発明に用いる上記の長尺体は、他の糸条体や、巻装部と同じ幅の或いはこれよりも狭い幅の帯状体等であってもよいことは、言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のスプール用ケースは、ケース内に収容したスプールから長尺体を容易に引き出すことができるうえ、必要に応じてその引き出す長尺体に張力を簡単に付与できて、所望の長さの長尺体を容易に引き出すことができ、しかも安価に実施でき、引き出し過ぎた長尺体をスプールへ抵抗なく簡単に巻き戻せるので、特に釣糸用スプールの収容に好適であるが、手芸糸や包装用テープなど、他の長尺体に用いるスプールの収容にも好適である。
【符号の説明】
【0039】
1…スプール用ケース
2…スプール(釣糸用スプール)
3…胴部
4…フランジ部
4a…一方のフランジ部
4b…他方のフランジ部
5…巻装部
6…長尺体(釣糸)
7…収容部
8…第1側面
9…第2側面
10…周側面
11…引出口
12…ケース本体
13…蓋部
14…ヒンジ部
15…ガイド筒
16…開口
17…制動部
19…部分円筒体
B…制動姿勢
C…解除姿勢

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状胴部(3)とその胴部(3)両端から径方向外側へそれぞれ延設した一対のフランジ部(4)とを備え、その両フランジ部(4・4)間で胴部(3)の周囲に長尺体(6)が巻回される巻装部(5)を設けたスプール(2)を収容するためのケースであって、
上記のスプール(2)を上記の胴部(3)の周方向へ回転自在に収容する収容部(7)と、その収容部(7)に収容されたスプール(2)側へ弾性偏位可能な制動部(17)とを備え、
上記の収容部(7)の外面に上記の長尺体(6)を引き出すための引出口(11)を開口し、
上記の制動部(17)を、その弾性力で復帰して上記のスプール(2)が自在に回転することを許容する解除姿勢(C)と、その弾性力に抗してスプール(2)側へ偏位することでそのスプール(2)の回転を制御する制動姿勢(B)とに切換え可能に構成したことを特徴とする、スプール用ケース。
【請求項2】
上記の収容部(7)の内面に円筒状のガイド筒(15)を固定して、そのガイド筒(15)の内部を外部空間へ両端の開口(16)を介して開放し、このガイド筒(15)へ上記のスプール(2)の胴部(3)を外嵌することによりそのスプール(2)を回転自在に案内し、
上記の制動部(17)を上記のガイド筒(15)の周方向の一部で構成し、この制動部(17)をそのガイド筒(15)の拡径方向へ偏位させることで上記の制動姿勢(B)に切り換える、請求項1に記載のスプール用ケース。
【請求項3】
上記の制動部(17)を、上記の収容部(7)の内面に固定された円筒体または部分円筒体(19)で構成して、この円筒体または部分円筒体(19)を収容部(7)内へ収容されたスプール(2)の胴部(3)内に配置し、この円筒体または部分円筒体(19)の内部を、その両端の開口(16)を介して外部空間に開放した、請求項1に記載のスプール用ケース。
【請求項4】
上記の収容部(7)に収容されたスプール(2)の一方のフランジ部(4a)に平行な第1側面(8)を含むケース本体(12)と、他方のフランジ部(4b)に平行な第2側面(9)を含む蓋部(13)とを備え、
上記のケース本体(12)と蓋部(13)とを、上記の周側面(10)に設けたヒンジ部(14)を介して互いに連結し、このヒンジ部(14)を屈曲させることにより、その蓋部(13)をケース本体(12)へ着脱可能に蓋して、そのケース本体(12)と蓋部(13)との間に前記の収容部(7)を形成した、請求項1から3のいずれか1項に記載のスプール用ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−280488(P2010−280488A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136982(P2009−136982)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(506269149)株式会社ワイ・ジー・ケー (21)
【Fターム(参考)】