説明

スペクトルCT画像システムの較正用ファントム

【課題】スペクトル計算機式断層写真法(CT)システムを様々な物質及び様々な濃度について正確に較正するためのファントムを提供する。
【解決手段】ファントム(72)が、内容積(76)を包囲すると共に、内部に形成された複数の通路(78、80)を有する外被(74)を含んでおり、各々の通路(78、80)が内容積(76)から流動について隔離されている。第一及び第二の挿入体(92〜104)が含まれており、これらの挿入体は、複数の通路(78、80)の第一の通路(78、80)に配置されるように構成されており、既知の物質密度を有する物質を含んでいる。物質は、ヨード、ハイドロキシアパタイト(HAP)、リン酸三カルシウム(TCP)、体脂肪、脂質プラーク、塩化ナトリウム(NaCl)、金(Au)、及び鉄(Fe)から選択される。挿入体(92〜104)の物質は、異なる物質、又は異なる密度の同じ物質であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の各実施形態は一般的には、CT撮像に関し、さらに具体的には、スペクトルCT画像システムの較正用ファントムに関する。
【背景技術】
【0002】
典型的には、CTイメージング・システムでは、X線源が患者又は手荷物のような被検体又は物体へ向けてファン(扇形)形状のビームを放出する。以下では、「被検体」及び「対象」「物体」等の用語は、撮像されることが可能な任意の物体を含むものとする。ビームは被検体によって減弱された後に放射線検出器のアレイに入射する。検出器アレイにおいて受光される減弱後のビーム放射線の強度は典型的には、被検体によるX線ビームの減弱量に依存する。検出器アレイの各々の検出器素子が、各々の検出器素子によって受光される減弱後のビームを示す別個の電気信号を発生する。電気信号はデータ処理システムへ伝送されて解析され、最終的に画像を形成する。
一般的には、X線源及び検出器アセンブリは、撮像平面内で被検体を中心としてガントリの周りを回転する。X線源は典型的には、焦点においてX線ビームを放出するX線管を含んでいる。検出器アセンブリは典型的には、複数の検出器モジュールで構成されている。検出器素子の各々における受光されたX線ビームの強度を表わすデータが、一定範囲のガントリ角度にわたって収集される。データは最終的に処理されて、画像を形成する。
【0003】
従来の計算機式断層写真法(CT)システムは、多色スペクトルを有するX線を放出する。被検体の各々の物質のX線減弱は、放出されるX線のエネルギに依存する。CT投影データが多数のX線エネルギ・レベル又はスペクトルにおいて取得される場合には、データは、撮像されている被検体又は物体に関する従来のCT画像には含まれない付加的情報を含む。例えば、スペクトルCTデータを用いて、選択された単色エネルギと等価のX線減弱係数による新たな画像を形成することができる。かかる単色画像は、恰も被検体からの投影データを単色X線ビームによって収集することによりCT画像が形成されているかのようにボクセルの強度値が割り当てられている画像データを含んでいる。
【0004】
エネルギ感知型走査の主な目的は、異なる色エネルギ状態での2以上の走査を利用することにより、画像の内部の情報(コントラスト分離及び物質特異性等)を強調する診断用CT画像を得ることである。エネルギ感知型走査を達成する多くの手法が提案されており、かかる走査は、(1)時間的に逐次的に連続して取得されて、被検体の周りの多数回のガントリ回転を必要とする走査、又は(2)管が例えば80kVp電位及び140kVp電位において動作するようにして回転角度の関数としてインタリーブされて取得されて、被検体の周りの一回転を必要とする走査の何れかを2以上取得することを含んでいる。
高周波発生器が、交互のビュー毎に高周波電磁エネルギ投射源のkVp電位を切り換えることを可能にした。結果として、2以上のエネルギ感知型走査のデータを、従来のCT技術の場合に典型的に生ずる数秒間隔で行なわれる2回の別個の走査ではなく、時間的にインタリーブされた態様で得ることができる。インタリーブされた投影データはさらに、例えば何らかの形態の補間を用いて、各々のエネルギ・レベルにおいて同じ経路長が画定されるように位置合わせされ得る。スペクトルCTデータは、各組織のさらに十分な識別を容易にして、例えばカルシウムを含む組織及びヨードを含む組織のように各物質を区別することを容易にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7774040号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スペクトルCTシステムが正確な物質密度画像を与えることが重要である。従って、スペクトルCTシステムは、様々な物質画像についての精度仕様を満たすように較正される必要がある。物質領域についての公知の較正方法は、多様な物質毎に個別の物質ファントムを作製して、各々のファントムを別個に分析することを含んでいる。これら個別の物質ファントムは一般的には、貯蔵することができないため較正の直前に作製されて較正の後に廃棄される。一つの物質について作製されるファントムは、同じ物質について異なる時刻に又は異なる技術者によって作製されるファントムとは変化している場合がある。加えて、異なる患者寸法についてかかるファントムを用いてスペクトルCTシステムを較正することが困難な場合がある。
【0007】
スペクトル式以外のCTイメージング・システム用のX線ファントム又はCTファントムは、長時間を耐えるように作製され得る。かかるファントムは典型的には、ヨード、脂肪、水及びカルシウム等のような臨床関連物質のX線減弱をハンスフィールド単位(HU)について模擬するように構成された合成物質を含んでいる。しかしながら、これらの合成物質ファントムは、スペクトルCTイメージング・システムでは同じ物質を正確に模擬することができない。例えば、カルシウムのHU範囲をシミュレートするためにポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又は類似の物質が画像領域において用いられている。物質領域では、PTFEはカルシウムを模擬することができない。
【0008】
従って、上述の欠点を克服するスペクトルCT用のファントムを設計することができると望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一観点によれば、ファントムが、内容積を包囲すると共に、内部に形成された複数の通路を有する外被を含んでおり、各々の通路が内容積から流動について隔離されている。第一の挿入体が含まれており、この第一の挿入体は、複数の通路の第一の通路に配置されるように構成されており、既知の物質密度のヨード、ハイドロキシアパタイト(HAP)、リン酸三カルシウム(TCP)、体脂肪、脂質プラーク、塩化ナトリウム(NaCl)、金(Au)、及び鉄(Fe)の一つを有する第一の物質を含んでいる。また、第二の挿入体が含まれており、この第二の挿入体は、複数の通路の第二の通路に配置されるように構成されており、既知の物質密度のヨード、ハイドロキシアパタイト(HAP)、リン酸三カルシウム(TCP)、体脂肪、脂質プラーク、塩化ナトリウム(NaCl)、金(Au)、及び鉄(Fe)の一つを有する第二の物質を含んでいる。既知の物質密度の第二の物質は、第一の物質と同じ物質であって異なる物質密度の物質、及び第一の物質とは異なる物質であって既知の物質密度の物質の一方である。
【0010】
もう一つの観点によれば、装置が、内部に形成された一対のスロットを有すると共に、これら一対のスロットから気密封止された内容積を有する外被を含んでいる。第一の物質挿入体が、一対のスロットの一方に配置されるように構成されており、既知の密度のヨード、ハイドロキシアパタイト(HAP)、リン酸三カルシウム(TCP)、体脂肪、脂質プラーク、塩化ナトリウム(NaCl)、金(Au)、及び鉄(Fe)から成る群から選択される第一の物質を含んでいる。第二の物質挿入体が、一対のスロットの他方に配置されるように構成されており、既知の密度のヨード、ハイドロキシアパタイト(HAP)、リン酸三カルシウム(TCP)、体脂肪、脂質プラーク、塩化ナトリウム(NaCl)、金(Au)、及び鉄(Fe)から成る群から選択される第二の物質を含んでいる。第二の物質は、第一の物質とは別個の物質及び第一の物質と同じ物質の一方である。
【0011】
さらにもう一つの観点によれば、スペクトルCT撮像の較正用ファントムが、容積を包囲すると共に、内部に形成された複数の通路を有する密閉容器を含んでおり、容積はこれら複数の通路から気密封止されている。第一の挿入体が、複数の通路の第一の通路に配置されるように構成されており、既知の密度のヨード、ハイドロキシアパタイト(HAP)、リン酸三カルシウム(TCP)、体脂肪、脂質プラーク、塩化ナトリウム(NaCl)、金(Au)、及び鉄(Fe)の一つを含む第一の物質を含んでいる。第二の挿入体が、複数の通路の第二の通路に配置されるように構成されており、第一の物質とは異なる物質であって既知の密度の第二の物質を含み、ヨード、ハイドロキシアパタイト(HAP)、リン酸三カルシウム(TCP)、体脂肪、脂質プラーク、塩化ナトリウム(NaCl)、金(Au)、及び鉄(Fe)の一つを含んでいる。開口を内部に有する外殻が、外被を収容するように構成されている。
【0012】
他の様々な特徴及び利点が、以下の詳細な説明及び図面から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図面は、本発明を実施するために現状で思量される好ましい各実施形態を示す。
【図1】CTイメージング・システムの見取り図である。
【図2】図1に示すシステムのブロック概略図である。
【図3】CTシステム検出器アレイの一実施形態の遠近図である。
【図4】検出器の一実施形態の遠近図である。
【図5】本発明の一実施形態によるスペクトルCTファントムの遠近図である。
【図6】本発明の一実施形態による図5のスペクトルCTファントムの平面図である。
【図7】本発明のもう一つの実施形態による図5のスペクトルCTファントムの平面図である。
【図8】本発明のもう一つの実施形態による図5のスペクトルCTファントムの平面図である。
【図9】非侵襲型小包検査システムと共に用いられるCTシステムの見取り図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の動作環境を64スライス型計算機式断層写真法(CT)システムに関連して説明する。但し、当業者には、本発明が他のマルチ・スライス型構成での利用にも同等に適用可能であることが認められよう。さらに、本発明をX線の検出及び変換に関連して説明する。但し、当業者はさらに、本発明が他の高周波電磁エネルギの検出及び変換にも同等に適用可能であることを認められよう。本発明を「第三世代」CTスキャナに関連して説明するが、本発明は他のCTシステムでも同等に適用可能である。
【0015】
加えて、本発明の幾つかの実施形態は、例えば二重エネルギ・データのような多重エネルギ・データを解析するためのシステム、方法、及びコンピュータ命令を提供する。幾つかの多重エネルギ・データは、例えばフォトン計数システムのようなスペクトル・イメージング・システムにおいて用いられ得る。多重エネルギ・データの一形式である二重エネルギ・データは、単色画像、物質密度画像、及び/又は実効Z画像として具現化され得る。本書に記載される実施形態の多くは二重エネルギ・データに関連して議論されているが、当業者には認められるように、これらの実施形態は二重エネルギ・データに限定されず、他の形式の多重エネルギ・データに関連して用いられることもできる。また、本書で議論される実施形態の多くは、画像において選択され得る関心領域を記載しているが、当業者には認められるように、画像において関心容積を選択することもできる。
【0016】
図1には、CTイメージング・システム10が、「第三世代」CTスキャナに典型的なガントリ12を含むものとして示されている。ガントリ12はX線源14を有し、X線源14は、ガントリ12の反対側に位置する検出器アセンブリ又はコリメータ16へ向けてX線のビームを投射する。図2を参照すると、検出器アセンブリ16は、複数の検出器18及びデータ取得システム(DAS)20によって形成されている。複数の検出器18は、患者24を通過した投射X線22を感知し、DAS20は後続の処理のためにデータをディジタル信号へ変換する。各々の検出器18が、入射X線ビームの強度を表わし従って患者24を通過した減弱後のビームを表わすアナログ電気信号を発生する。X線投影データを取得するための1回の走査の間に、ガントリ12及びガントリ12に装着されている構成部品は回転中心26の周りを回転する。
【0017】
ガントリ12の回転及びX線源14の動作は、CTシステム10の制御機構28によって制御される。制御機構28は、X線制御器30とガントリ・モータ制御器32とを含んでおり、X線制御器30はX線源14に電力信号及びタイミング信号を供給し、ガントリ・モータ制御器32はガントリ12の回転速度及び位置を制御する。画像再構成器34が、標本化されてディジタル化されたX線データをDAS20から受け取って高速再構成を実行する。再構成された画像はコンピュータ36への入力として印加され、コンピュータ36は大容量記憶装置38に画像を記憶させる。
【0018】
コンピュータ36はまた、キーボード、マウス、音声作動式コントローラ、又は他の任意の適当な入力装置のような何らかの形態の操作者インタフェイスを有するコンソール40を介して、操作者から命令及び走査用パラメータを受け取る。付設されている表示器42によって、操作者は、再構成された画像及びコンピュータ36からのその他のデータを観察することができる。操作者が供給した命令及びパラメータはコンピュータ36によって用いられて、DAS20、X線制御器30及びガントリ・モータ制御器32に制御信号及び情報を供給する。加えて、コンピュータ36は、電動テーブル46を制御するテーブル・モータ制御器44を動作させて、患者24及びガントリ12を配置する。具体的には、テーブル46は患者24を図1のガントリ開口48を通して全体として又は部分的に移動させる。
【0019】
図3に示すように、検出器アセンブリ16は、コリメート用ブレード又はプレート52を間に配置したレール50を含んでいる。プレート52は、X線22のビームが例えば検出器アセンブリ16に配置された図4の検出器18に入射する前にX線22をコリメートするように配置されている。一実施形態では、検出器アセンブリ16は57個の検出器18を含んでおり、各々の検出器18が64×22個のピクセル素子54のアレイ寸法を有している。結果として、検出器アセンブリ16は64列の横列及び912列の縦列(22×57個の検出器)を有し、ガントリ12の各回の回転によって64枚の同時スライスのデータを収集することを可能にしている。
【0020】
図4を参照すると、検出器18はDAS20を含んでおり、各々の検出器18が、パック56として構成されている多数の検出器素子54を含んでいる。検出器18は、検出器素子54に対してパック56の内部に配置されたピン58を含んでいる。パック56は、複数のダイオード62を有する背面照射型ダイオード・アレイ60の上に配置されている。次に、背面照射型ダイオード・アレイ60は多層基材64の上に配置されている。スペーサ66が多層基材64の上に配置されている。検出器素子54は背面照射型ダイオード・アレイ60に光学的に結合され、次に背面照射型ダイオード・アレイ60は多層基材64に電気的に結合されている。軟質(フレックス)回路68が、多層基材64の面70及びDAS20に取り付けられている。検出器18は、ピン58の利用によって検出器アセンブリ16の内部に配置される。
【0021】
一実施形態の動作では、検出器素子54の内部に入射するX線がフォトンを発生し、フォトンがパック56を横断することによりアナログ信号を発生して、この信号が背面照射型ダイオード・アレイ60の内部のダイオードにおいて検出される。発生されるアナログ信号は、多層基材64を通り、フレックス回路68を通ってDAS20まで運ばれて、ここでアナログ信号がディジタル信号へ変換される。
【0022】
図5には、本発明の一実施形態によるスペクトルCT画像の較正用ファントム72が示されている。ファントム72は、中空の内容積76を有する外被(ハウジング)又は密閉容器(エンクロージャ)74を含んでいる。一実施形態では、内容積76には水が充填されている。外被74に形成されている複数のスロット78〜80が、内部への物質挿入体86の配置を可能にしている。スロット78〜80は外被74の内部まで部分的に延在していてもよいし、外被74を全て貫通して延在していてもよい。図示のように、スロット78は第一の表面又は側88から第二の表面又は側90まで外被74を貫通して延在しており、スロット80は第一の側88から第二の側90へ向かっているが貫通せずに外被74の内部まで部分的にのみ延在している。内容積76は、周囲環境から気密封止されており、またスロット78〜80の各々から流動について隔離されている。
【0023】
物質挿入体86は、患者の撮像時に典型的に見出される物質に関連する物質を含む固体挿入体である。例えば、物質挿入体86は、ヨード、ハイドロキシアパタイト(HAP)若しくはリン酸三カルシウム(TCP)、体脂肪若しくは脂質プラーク、塩化ナトリウム(NaCl)、又は金(Au)若しくは鉄(Fe)のような他の生体指標物質のような臨床関連物質を含み得る。但し、これら列挙された物質は利用され得る複数の物質を網羅している訳ではなく、本発明の各実施形態はかかる物質に限定されない。
【0024】
これら臨床関連物質は母材に浮遊(懸濁)させられて保存されて、固体挿入体86を形成することができる。母材は一例では、ポリマー又はエポキシ母材であってよい。好適実施形態では、母材は、浮遊した臨床関連物質に干渉したり反応したりしない中性の封入物質(encapsulant)である。ポリマー又はエポキシ母材は、内部に浮遊した臨床関連物質が特性を経時的に失わないことを保証する。さらにまた、固体挿入体86での臨床関連物質の濃度(例えばmg/cc)は既知であり、較正時に考慮されることができる。
【0025】
一実施形態では、固体物質挿入体86は、互いに互換であって対応するスロット78の任意のものに配置されるように類似の寸法を有して、較正のために多様な異なるファントムの組み合わせを作製することができる。このように、ファントム72は特定の較正パラメータについて特殊構成され得る。もう一つの実施形態では、挿入体86の1又は複数の寸法が他の挿入体86とは異なっていて、較正のために相対的に多量又は少量のそれぞれの臨床関連物質を作製するようにしてもよい。
【0026】
図6に示すように、一実施形態によれば、第一の組み合わせの複数の挿入体92〜104がファントム外被74に配置されている。挿入体92〜104は、第一の配置方式に従って配置されている。この例では、挿入体92〜94は、HAP又はTCPのような既知の密度のカルシウム物質を有するカルシウム挿入体であり、挿入体96は、既知の密度の水及びNaClを有する軟組織挿入体であり、挿入体98は、既知の密度の脂肪又は油脂を有する脂肪/油脂挿入体である。挿入体100〜104はこの例では、ヨード系造影剤を様々な既知濃度又は密度で含んでいる。このファントム構成を用いたスペクトルCTイメージング・システムの較正は、4種の異なる物質についての較正と、物質の一つの3種の異なる既知濃度についての較正とを同時に行なうこと含んでいる。
【0027】
図7は、本発明のもう一つの実施形態による第二の配置方式での物質挿入体92〜104の組み合わせの配置を示す。図示のように、挿入体92〜104は、図6に示したものに関して再配置されている。単に様々なスロット78、80の間で物質挿入体92〜104を再配置するのを可能にすることに加えて、挿入体の異なる組み合わせを外被74に配置することができる。例えば、単一のみの形式の物質挿入体を外被74に配置することが望ましい場合がある。この場合には、単一の物質形式の1又は複数の挿入体をスロット78、80に配置することができる。代替的には、各々のスロット78、80を、挿入体の各々毎に異なる物質を含む物質挿入体の組み合わせで充填することが望ましい場合がある。
【0028】
また、図7には、開口108を有する外殻106が外被74の周囲に配置されているのが示されている。外殻106は外被74から着脱自在であり、特定の患者寸法をシミュレートするようにX線を減弱させる。様々な寸法及び形状の複数の外殻106を、外被74に着脱自在に係合するように構成して、スペクトルCTイメージング・システムを複数の患者寸法に基づいて較正することを図ることができる。
【0029】
本発明の各実施形態は、外被74又は物質挿入体92〜104及び通路78、80について任意の形状を含んでいる。すなわち、外被74又は物質挿入体92〜104及び通路78、80の断面形状は図5〜図7では正円筒として図示されているが、本発明の各実施形態は他の長円形状又は多角形形状を含み得る。例えば、図8に示すように、外被74、物質挿入体92〜104、及び通路78は長円断面形状を有するものとして示されており、通路80及び挿入体94は方形断面形状を有するものとして示されている。図8に示すような挿入体92〜104の任意のものがそれぞれの通路78、80によって、外被74を通して部分的にのみ延在していてもよいし、完全に延在していてもよいものと思量される。
【0030】
本発明の各実施形態は、較正を含めた特定応用向けの用途のための異なる物質濃度モジュール/挿入体の交換を考慮している。本書に記載されるファントムは、同時に異なる物質についてスペクトルCTシステムの定量的な精度及び品質を評価することを考慮している。
【0031】
本発明の各実施形態はスペクトルCT画像システムと共に利用可能であるとして記載されているが、当業者は、本書に記載される発明のこれらの実施形態がX線検出に基づいた任意のイメージング・システムの較正に適用可能であることを認められよう。すなわち、本書に記載される発明の各実施形態はまた、X線システム又はCTシステムにおいてハンスフィールド単位に基づいた較正のために用いられ得る。
【0032】
図9を参照すると、小包/手荷物検査システム110が、小包又は手荷物を通過させ得る開口114を内部に有する回転式ガントリ112を含んでいる。回転式ガントリ112は、高周波電磁エネルギ源116と、図3又は図4に示されるものと同様のシンチレータ・セルで構成されたシンチレータ・アレイを有する検出器アセンブリ118とを収容している。また、コンベヤ・システム120が設けられており、コンベヤ・システム120は、構造124によって支持されて走査のために小包又は手荷物126を自動的に且つ連続的に開口114に通すコンベヤ・ベルト122を含んでいる。物体126をコンベヤ・ベルト122によって開口114に送り込み、次いで撮像データを取得し、コンベヤ・ベルト122によって開口114から小包126を除去することを、制御された連続的な態様で行なう。結果として、郵便物検査官、手荷物積み降ろし員及び他の警備人員が、爆発物、刃物、銃及び密輸品等について小包126の内容を非侵襲的に検査することができる。
【0033】
従って、一実施形態によれば、ファントムが、内容積を包囲すると共に、内部に形成された複数の通路を有する外被を含んでおり、各々の通路が内容積から流動について隔離されている。第一の挿入体が含まれており、この第一の挿入体は、複数の通路の第一の通路に配置されるように構成されており、既知の物質密度のヨード、ハイドロキシアパタイト(HAP)、リン酸三カルシウム(TCP)、体脂肪、脂質プラーク、塩化ナトリウム(NaCl)、金(Au)、及び鉄(Fe)の一つを有する第一の物質を含んでいる。また、第二の挿入体が含まれており、この第二の挿入体は、複数の通路の第二の通路に配置されるように構成されており、既知の物質密度のヨード、ハイドロキシアパタイト(HAP)、リン酸三カルシウム(TCP)、体脂肪、脂質プラーク、塩化ナトリウム(NaCl)、金(Au)、及び鉄(Fe)の一つを有する第二の物質を含んでいる。既知の物質密度の第二の物質は、第一の物質と同じ物質であって異なる物質密度の物質、及び第一の物質とは異なる物質であって既知の物質密度の物質の一方である。
【0034】
もう一つの実施形態によれば、装置が、内部に形成された一対のスロットを有すると共に、これら一対のスロットから気密封止された内容積を有する外被を含んでいる。第一の物質挿入体が、一対のスロットの一方に配置されるように構成されており、既知の密度のヨード、ハイドロキシアパタイト(HAP)、リン酸三カルシウム(TCP)、体脂肪、脂質プラーク、塩化ナトリウム(NaCl)、金(Au)、及び鉄(Fe)から成る群から選択される第一の物質を含んでいる。第二の物質挿入体が、一対のスロットの他方に配置されるように構成されており、既知の密度のヨード、ハイドロキシアパタイト(HAP)、リン酸三カルシウム(TCP)、体脂肪、脂質プラーク、塩化ナトリウム(NaCl)、金(Au)、及び鉄(Fe)から成る群から選択される第二の物質を含んでいる。第二の物質は、第一の物質とは別個の物質及び第一の物質と同じ物質の一方である。
【0035】
さらにもう一つの実施形態によれば、スペクトルCT撮像の較正用ファントムが、容積を包囲すると共に、内部に形成された複数の通路を有する密閉容器を含んでおり、容積はこれら複数の通路から気密封止されている。第一の挿入体が、複数の通路の第一の通路に配置されるように構成されており、既知の密度のヨード、ハイドロキシアパタイト(HAP)、リン酸三カルシウム(TCP)、体脂肪、脂質プラーク、塩化ナトリウム(NaCl)、金(Au)、及び鉄(Fe)の一つを含む第一の物質を含んでいる。第二の挿入体が、複数の通路の第二の通路に配置されるように構成されており、第一の物質とは異なる物質であって既知の密度の第二の物質を含み、ヨード、ハイドロキシアパタイト(HAP)、リン酸三カルシウム(TCP)、体脂肪、脂質プラーク、塩化ナトリウム(NaCl)、金(Au)、及び鉄(Fe)の一つを含んでいる。開口を内部に有する外殻が、外被を収容するように構成されている。
【0036】
この書面の記載は、最適な態様を含めて発明を開示し、また任意の装置又はシステムを製造して利用すること及び任意の組み込まれた方法を実行することを含めてあらゆる当業者が本発明を実施することを可能にするように実例を用いている。特許付与可能な発明の範囲は特許請求の範囲によって画定されており、当業者に想到される他の実例を含み得る。かかる他の実例は、特許請求の範囲の書字言語に相違しない構造要素を有する場合、又は特許請求の範囲の書字言語と非実質的な相違を有する等価な構造要素を含む場合には、特許請求の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0037】
10:CTイメージング・システム
12:ガントリ
14:X線源
16:検出器アセンブリ
18:複数の検出器
20:データ取得システム(DAS)
22:投射X線
24:患者
26:回転中心
28:制御機構
30:X線制御器
32:ガントリ・モータ制御器
34:画像再構成器
36:コンピュータ
38:大容量記憶装置
40:コンソール
42:表示器
44:テーブル・モータ制御器
46:電動テーブル
48:ガントリ開口
50:レール
52:コリメート用プレート
54:ピクセル素子
56:パック
58:ピン
60:背面照射型ダイオード・アレイ
62:複数のダイオード
64:多層基材
66:スペーサ
68:軟質(フレックス)回路
70:面
72:ファントム
74:外被
76:内容積
78、80:スロット
86:物質挿入体
88:第一の表面又は側
90:第二の表面又は側
92、94:カルシウム挿入体
96:軟組織挿入体
98:脂肪/油脂挿入体
100、102、104:ヨード系造影剤
106:外殻
108:開口
110:小包/手荷物検査システム
112:回転式ガントリ
114:開口
116:高周波電磁エネルギ源
118:検出器アセンブリ
120:コンベヤ・システム
122:コンベヤ・ベルト
124:構造
126:小包又は手荷物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容積(76)を包囲すると共に、内部に形成された複数の通路(78、80)を有する外被(74)であって、各々の通路(78、80)が前記内容積(76)から流動について隔離されている、外被(74)と、
前記複数の通路(78、80)の第一の通路(78、80)に配置されるように構成されており、既知の物質密度のヨード、ハイドロキシアパタイト(HAP)、リン酸三カルシウム(TCP)、体脂肪、脂質プラーク、塩化ナトリウム(NaCl)、金(Au)、及び鉄(Fe)の一つを有する第一の物質を含んでいる第一の挿入体(92〜104)と、
前記複数の通路(78、80)の第二の通路(78、80)に配置されるように構成されており、既知の物質密度のヨード、ハイドロキシアパタイト(HAP)、リン酸三カルシウム(TCP)、体脂肪、脂質プラーク、塩化ナトリウム(NaCl)、金(Au)、及び鉄(Fe)の一つを有する第二の物質を含んでいる第二の挿入体(92〜104)と
を備えたファントム(72)であって、
前記既知の物質密度の前記第二の物質は、前記第一の物質と同じ物質であって異なる物質密度の物質、及び前記第一の物質とは異なる物質であって既知の物質密度の物質の一方である、ファントム(72)。
【請求項2】
前記第一及び第二の挿入体(92〜104)は固体挿入体(92〜104)である、請求項1に記載のファントム(72)。
【請求項3】
前記第一及び第二の挿入体(92〜104)はエポキシを含んでいる、請求項2に記載のファントム(72)。
【請求項4】
前記第一及び第二の物質は前記エポキシに浮遊させられている、請求項3に記載のファントム(72)。
【請求項5】
前記第一の通路(78、80)は、前記外被(74)の第一の側から前記外被(74)の第二の側まで前記外被(74)を通して延在している、請求項1に記載のファントム(72)。
【請求項6】
前記第一の挿入体(92〜104)の断面形状は、前記第一の通路(78、80)の断面形状と一致するように構成されている、請求項1に記載のファントム(72)。
【請求項7】
前記第一の挿入体(92〜104)の前記断面形状は、前記外被(74)の断面形状とは別個である、請求項6に記載のファントム(72)。
【請求項8】
前記複数の通路(78、80)の第三の通路(78、80)に配置されるように構成されており、第一の濃度の前記第一の物質を含む第三の挿入体(92〜104)をさらに含んでおり、
前記第一の挿入体(92〜104)は第二の濃度の前記第一の物質を含んでおり、前記第一及び第二の濃度は異なっている、請求項1に記載のファントム(72)。
【請求項9】
前記第一の挿入体(92〜104)は前記第二の通路(78、80)に配置されるようにさらに構成されており、
前記第二の挿入体(92〜104)は前記第一の通路(78、80)に配置されるようにさらに構成されている、請求項1に記載のファントム(72)。
【請求項10】
前記外被(74)を収容するように構成されている開口(108)を有する外殻(106)をさらに含んでいる請求項1に記載のファントム(72)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−125567(P2012−125567A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−267429(P2011−267429)
【出願日】平成23年12月7日(2011.12.7)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】