説明

スポット溶接機

【課題】この発明は数値制御技術にもとずくロボット化が達成できるスポット溶接機を提案する。
【解決手段】下部電極として働く板状電極110と、その上で上部電極として働き2次元の平面移動する溶接ガン130とから成って、この板状電極110の上に縦移動できる門型枠120を配置し、門型枠120に溶接ガンの通電経路300を設け、この通電経路300に少なくとも2つの開閉装置330、340を介在させて、門型枠120ならびに溶接ガン130が支障なく移動できるように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスポット溶接機に係り、詳しくは、下部電極として働く板状電極上においてその縦方向に移動できる門型枠を介在させて上部電極として働く溶接ガンを相対的に2次元の平面方向に移動させて金属材などの被溶接材を溶接打点毎に移動させることなく溶接できるスポット溶接機であって、しかも、この溶接ガンなどの移動をコンピュ−タなどの電子計算制御機器における位置制御ユニットにより追跡制御しながら、被溶接材上の溶接打点に相当する位置に位置決めでき、予め入力した溶接により溶接打点を加圧通電して溶接できるスポット溶接機に係る。
【0002】
なかでも、このスポット溶接機は、溶接ガンの2次元移動に伴って溶接電源からの例えば通電ケ−ブルなどの可撓性通電材をほとんど用いることなく、構造的にコンパクト化し、自動、ロボット化に当っての溶接ガンの位置決めなどの操作が安定するスポット溶接機である。
【0003】
なお、この明細書において自動溶接あるいは溶接作業のロボット、被溶接物のセット、溶接作業とは人手がほとんど介在しないことであるが、操作を切換えると一部又は全部も人手によって溶接することもできる。
【背景技術】
【0004】
例えば、圧延鋼板、アルミニウムおよびその合金材、およびZnめっき鋼板などの被溶接材などを接合する場合に、少なくとも2枚またはそれ以上の被溶接材などを重ね、これを上下から一対の電極で挾んで加圧、通電して溶接するスポット溶接が用いられる。この溶接は電気エネルギを溶接熱源として利用することから、電気溶接ともいわれるが、溶接機構は圧接とあり融接であり、最も普及されている溶接の一つである。自動車産業のほか金属加工、板金加工の分野でも広く利用されている。
【0005】
スポット溶接は、ナゲットといわれる一つの溶接部の形成に要する時間は僅か数秒であり、このナゲットが重ね合わせた被溶接材の間で空気中の酸素によるアタック(酸化)をうけることなく形成される。このため、不活性ガスなどのシ−ルドガスや添加材などを必要としない。また、この利点から、被溶接材などの材質に応じて、溶接電流、加圧力などの溶接条件を一度設定すると、ロボットなどを用いて溶接ができるともいわれている。このところから、安定溶接作業、そのロボット化乃至自動化の技術が数多く開発され、枚挙にいとまがない。現在多数提案されている技術のほとんどがスポット溶接技術の改善よりむしろロボット化である。
【0006】
一方、スポット溶接機は用途に応じて大きく分けると、大型の自動車ボディなどの量産用専用機と多品種小ロッドの板金加工用の小型のものとがある。ほとんどが一定の場所に据付けられ上下の電極が固定されている定置型といわれるものである。
【0007】
前者の専用機は自動車工業の発達に合わせて技術的改善を積み重ねたものである。具体的には、モデルチェンジにかかわらず、基本的構造は変わることのない自動車ボディの製造などの専用の量産機として開発されたものであり、溶接作業の無人化、ロボット化の目的をもって開発されたもので、溶接技術というよりはむしろロボット技術である。板金加工用のものは、ほとんどが定置型スポット溶接機に代表されるように、ほとんどが改善されておらず、自動化、ロボット化という技術改善は全く見当らない。
【0008】
すなわち、スポット溶接機は原理的にみると、大型の自動車ボディ専用溶接機であれ、バッチ式の定置型の溶接機であれ全く一致し、2枚の被溶接材などを重ね合わせ、これらを固定されている上下一対の棒状電極ではさみ加圧通電する型式のものである。2枚の被溶接材をはさみ加圧力と溶接電流とを加えるのは一対の溶接電極は銅などの棒状材である。それによって通電する電流を絞って高めるとともに加圧力を高め、局部的に加圧、溶融して溶接するものである。形成される溶接部はナゲットといわれ、それ故に、上下の電極はともに棒状であり、電極先端部を絞ることによって通電面積を絞り、加圧力と電流量を高めることも一致している。
【0009】
このような溶接部形成原理は変わることがなく改善されていることもないことから自動車ボディなどの製造ラインの一部として組込まれる大型スポット溶接機であっても、改善されているところは、溶接作業の合理化の上から溶接すべき部品の搬送や溶接作業などに用いられる治具の分野の開発や、溶接作業のロボット化、自動化の面の改善に限られている。これに反し、定置型スポット溶接機は所謂板金加工などの用途に供され、バッチ方式であることもあって、ロボット化、自動化による溶接作業の合理化の提案はなく、必要とされる治具の開発や改善も行なわれていない。
【0010】
また、金属枠や金属箱などの容器を金属板を切断加工接合してつくる板金加工の分野では、内部に溶接すべき溶接打点があることが多い。溶接ガンを側方から差し込める場合を除くと、このような溶接打点は棒状の溶接ガンによっては外部から直接打つことができない。
【0011】
すなわち、複雑な形状の構造物の内部に溶接打点がある場合には、上下の電極の間に溶接打点をはさんで溶接する定置型溶接機では溶接できない。どうしても溶接しようとするときは、作業者自からが手によって被溶接材そのものを内部に棒状の溶接ガンを侵入できる位置に保持し、その姿勢で溶接することになる。この作業はきわめて重筋労働である。多数の作業者が必要になる。また、上下の電極の先端の溶接チップは絞られており、このような溶接チップで所謂板金の被溶接物に加圧力を加えると、どうしても溶接打点に溶接きずや溶接あとなどが残り、除去作業がきわめてはん雑であり、溶接コストがかさむ。
【0012】
このところから、先に、本発明者らは、先に、上下から被溶接材をはさむ一対の電極のうちの下部電極として働く一方の電極を板状電極として構成し、この下部電極の表面のいずれのところも電極として働くことのできる溶接機を提案した。この溶接機は小ロッドで複雑な形状の構造物、なかでも、内部に溶接すべき溶接打点があるような構造物であっても、その溶接打点の位置に応じて、それに合致する溶接姿勢が選択でき、下部電極は作業用テ−ブルとしても利用できることから、溶接にともなう加工や組立てなどの作業も併せて達成できるスポット溶接機である。(特許第3445636号明細書参照)
【0013】
このスポット溶接機1は、図6に示すとおりであって、下部の電極2として平坦な導電性の板状材から成る板状電極あるいはシ−ト状電極を働かせ、上部の電極として棒状の溶接ガン3を働かさせる溶接機である。この板状電極2は表面のいずれのところでも下部の電極として働くことができるほか、その上で金属材などの被溶接物Wの加工、組立もできる利点をもつものである。このスポット溶接機1は、板状電極2上におかれた被溶接物Wに向って棒状の溶接ガン3を縦向き姿勢で下降させて被溶接物Wを板状電極2と棒状の溶接ガン3との間にはさみ溶接するものである。この溶接機1は板状電極2の表面全体を下部電極として働かさせるものであるため、溶接ガン3は伸縮自在の支持ビ−ム4および支持ア−ム5により支持し、板状電極2の表面全体にわたって溶接ガン3が自由に平行移動できるように構成されている。支持ア−ム5の伸縮によって溶接ガン3を移動させて溶接打点に達したところで溶接ガン3を下降させて溶接できる。
【0014】
このスポット溶接機1であると、板状電極2の表面は下部電極として働かさせるほか、作業面としても利用できる。このため、一つの被溶接材に多数の溶接打点があっても、被溶接材は動かすことなく、置いたままで支持ア−ム5の伸縮操作によって溶接ガン3を移動させて溶接できる。板状電極の表面全体にわたって冷却水通路を設けることができ、冷却能力もきわめて大きい。溶接時の加圧力も板状電極2の表面で分散して局部的に支持できるため、溶接跡も残らない。さらに、溶接ガン3は横向き姿勢でてこ機構の一つの部品を成しているところから、加圧力を高められて圧接されることから、強度の高い溶接継手を得ることができる。
【0015】
一方、このような板状電極を用いる溶接機の開発にともなって、このスポット溶接機は小ロッドといわれていた板金業界にとどまらず、大型の配電盤や、電子機器や家電製品のハウジングなどのように、内部の溶接が必要とされるものの製造にも使用されるようになっている。しかし、先に提案した溶接機は上部電極として働く溶接ガン3が旋回自在の支持ア−ム5を組み合わせて各支持ア−ム5を旋回伸縮させることによって棒状の溶接ガン3が板状電極2の上で自由に2次元又は3次元で移動できるように構成されているところに特長がある。これと反対に、機構は大型化し、それに伴って大径の水冷ケ−ブルなどの冷却機構や通電機構や溶接ガンが付設される。とくにスポット溶接などの抵抗溶接では電流そのものが熱源となるため、大電流を通電する。このことから、水冷ケ−ブルは大径で高重量のものとなり、このような水冷ケ−ブルが溶接ガンに付設されて移動することになると、取扱いがはん雑で、しかも水冷ケ−ブルの切断などの大きな事故も発生し易い。
【0016】
これらを支持ア−ム5、5の旋回自在の組み合わせにより支持されることになって、個々の支持ア−ムの運動などを一定のル−ルにもとずいて連続化や自動化することがきわめてむづかしい。さらに、板状電極2はその表面のいずれのところも電極として働かせることができるのにもかかわらず、上で溶接ガン3の3次元移動に構造的、機能的などの障害が残るため、他の工作機械などと同様に自動化又はロボット化がはばまれ、この要求の改善が必ずしも十分でなかった。
【特許文献1】特許第3445636号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は上記欠点の解決を目的として提案されたものであって、板状電極の表面を下部電極として働かさせ、被溶接物を取付ける加工台、所謂テ−ブルとしても利用する一方、この加工テ−ブルを成す板状電極上で上部電極として働く溶接ガンを3次元的に移動させ、しかも、この移動の際に板状電極上でその縦軸方向に制御しつつ移動する門型枠を介し、溶接ガンを移動させて溶接ガンを位置決めし、一方において溶接ガンの3次元移動に伴う溶接電源からの通電態様の変更を所定のプログラムにより達成できるスポット溶接機を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
すなわち、本発明は溶接電源に下部電極として接続される板状電極上で上部電極として接続される溶接ガンを2次元の平面移動させ、この板状電極上における被溶接物の溶接打点に向って昇降させてスポット溶接するスポット溶接機において、溶接ガンを昇降自在に搭載し、板状電極上に設けられ、その縦方向に移動する門型枠を設けること、この門型枠を介して溶接電源から溶接ガンへの通電経路を構成し、この通電経路を縦移動経路にわたり板状電極の側縁に沿って設けられ、溶接電源の一方の電極に接続される縦通電板と、この縦通電板に開閉自在に接続され門型枠とともに縦移動経路にわたり移動する縦開閉装置と、この縦開閉装置に接続され、門型枠内において溶接ガンが縦移動経路に直交する方向に移動する横移動経路にわたって延在する横通電板とから構成すること、この横通電板に開閉自在に接続され溶接ガンに接続される横開閉装置を設けることから成っている。
【発明の効果】
【0019】
したがって、溶接ガンは門型枠を介して移動でき、通電経路は、門型枠と一体に構成されているために、板状電極上での溶接ガンの移動にともなって通電経路そのものが移動することはない。このため、溶接ガンの移動に容易に数値制御技術が適用でき、自動化、ロボット化が達成できる。
【0020】
また、通電経路には少なくとも2つの縦横の開閉装置が介在しているため、門型枠や門型枠上での溶接ガンの移動に全く支障がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
そこで、本発明の好適な一つの実施例について図面によって説明すると、つぎのとおりである。
【0022】
なお、図1は本発明に係るスポット溶接機の一つの好適な実施態様を原理的に示す説明図である。
【0023】
図2は図1に示す本発明に係るスポット溶接機における縦開閉装置の一例の説明図である。
【0024】
図3は図1に示す本発明に係るスポット溶接機の横開閉装置の一例の側面からみた説明図である。
【0025】
図4は図1に示すスポット溶接機による一つの溶接作業態様を例示するフロ−シ−トである。
【0026】
図5は被溶接物内部の溶接打点を自動的に溶接する際の説明図である。
【0027】
図6は図5の一部の断面を拡大して示す拡大断面図である。
【0028】
図7は図1に示すスポット溶接機の一つの端面側からの側面図である。
【0029】
図8は図7に示すスポット溶接機の平面図である。
【0030】
図9は先に出願人が提案した従来例に係るスポット溶接機の説明図である。
【0031】
まず、図1、図2および図3において符号100は本発明の一つの実施例に係るスポット溶接機、110は下部電極として働く板状電極、120は門型枠、130は上部電極として働く棒状の溶接ガン、140はこの溶接ガン130をその軸線を中心として旋回させる旋回装置、170は溶接ガン130を門型枠120上で横方向に横移動させる横方向走行装置、200は電子計算制御機器(例えば、コンピュ−タなど)、310は縦通電板、320は横通電板、330は縦開閉装置、340は横開閉装置を示す。
【0032】
この構成のスポット溶接機100は、図9に示す先に提案した従来例のスポット溶接機1に較べると、板状電極110は従来例の板状電極2、溶接ガン130は従来例の横向き溶接ガンに対応するが、本発明に係るスポット溶接機100は、このところを除いて以下のとおり相違し、この相違する構成により新規な効果を発揮するものである。
【0033】
まず、スポット溶接機100は、下部電極として働く板状電極110の上で上部電極として働く溶接ガン130を2次元方向、つまり、板状電極110の縦軸方向とそれに直交する幅方向(横方向)に平面移動させるよう構成され、これに併せて、例えば電動モ−タなどの加圧装置150により下降させることによって被溶接物Wを加圧溶接する。板状電極110には溶接電源Eの一方の電極が接続され、その表面はことごとく電極として溶接に関与できる。すなわち、スポット溶接するときには、溶接ガン130により板状電極110上の被溶接物Wを局部的に加圧した板状電極の一部が下部電極として働く。また、被溶接物W内に溶接ガン130で溶接すべき溶接打点があるときであっても、図6に示す構造の溶接ガン130を用いると、被溶接物Wを動かすことなく内部の溶接打点を連続的に溶接できる。
【0034】
このように板状電極と棒状の溶接ガンを単に組み合わせた溶接機は、先に述べたとおり、板金作業などに相当普及し広く使われている。すなわち、先に提案した溶接機は、図9に示すように、溶接ガン3を板状電極2上で平面移動させるために少なくとも2つの分割ア−ム51、52からなる支持ア−ム5を用いて支持し、各分割ア−ム51、52をその組み合わせ部で旋回させ全体として自由に伸長又は収縮できるよう構成している。この支持ア−ム5の構造によって板状電極2上で平面移動させる。しかし、このようなア−ム式平面移動機構であると、溶接ガン130が自由に位置決めできるが、僅かに側方から外力が加わったときや加圧力を高めたときの反力をうけて溶接ガン130の位置が動き、必ずしも安定した溶接が望めないし、これをロボット化することはむづかしい。
【0035】
このようなところから、本発明はア−ム式の平面移動機構を用いることなく改善し、門型枠120を設け、この門型枠120に溶接ガン130を搭載し、溶接ガン130そのものを2次元に移動させることなく門型枠120を縦移動させ、縦移動する門型枠120に沿って溶接ガン130は横移動させる。このように門型枠120の縦移動と溶接ガン130の横移動とを組み合わせ、溶接ガン130を板状電極110上で縦横の2次元方向に移動させる。とくに、門型枠120を基準として移動であり、溶接ガン130の支持手段が構造的に門型の枠体であるため、高出力の加圧装置なども支持でき、溶接時の加圧力を高めることができる。このため、被溶接物Wが薄板のものに限られることなく、従来のスポット溶接の観念を打ち破って厚物といわれるものまでも溶接できる。
【0036】
また、溶接ガン130の門型枠120による支持移動機構であると、従来例のア−ム式平面移動機構のように組み合わされた分割ア−ム51、52に取付けられた大型化した水冷ケ−ブルなどを取付ける必要がなく、とくに、分割ア−ム51、52とともに水冷ケ−ブルを伸縮させる必要もないことから、伸縮時に水冷ケ−ブルのあばれにより作業事故を起こす危険も除去できる。
【0037】
すなわち、門型枠120を介在させ、その縦方向の直線移動、つまり、縦移動を基準とすると、それに直交する溶接ガン130の横移動は門型枠120の縦移動に対する直交性は確実に維持できる。この直交性の維持によって数値制御技術の利用によるロボット化が達成でき、板状電極110上の被溶接物Wに対する溶接ガン130の位置決めは正確に達成できる。溶接ガン130の移動経路などは数値をコ−ド化して電子計算制御機器200に入力しておくことができ、ほとんど人手によらずに溶接が達成できる。なお、図示を省略するが、板状電極110上で直交する縦軸、横軸に合わせて取付治具に合わせ被溶接物Wをセットすれば、ロボット化が達成できる。
【0038】
門型枠120およびそれに取付けた溶接ガン130を縦横方向に移動するよう設け、これに伴って、これらの移動にともなって溶接ガン130を門型枠120から下降させて溶接するために、溶接ガン130への通電経路300は縦通電板310と横通電板320とを組み合わせて構成し、両通電板310、320の間に縦開閉装置330を介在させる。これに併せて、横通電板320と溶接ガン130との間に横開閉装置340を設ける。
【0039】
すなわち、図1に示すとおり、板状電極110の側縁に沿って縦通電板310を設ける。一方、縦通電板310に対し直交させて横通電板320を設ける。縦通電板310に溶接電源Eの一方の極を接続すると共に、それに平面的にみて直交する横通電板を縦開閉装置330を介して接続し、上部電極として働く溶接ガン130への通電経路300を構成する。このように縦通電板310と横通電板320とから成る通電経路300に縦および横の開閉装置330、340を組み合わせて構成すると、従来例のように大径でしかも長い水冷ケ−ブルを用いる必要がない。門型枠120の縦移動や溶接ガン130の横移動の間は溶接電源Eから縦通電板310および横通電板320を経ての通電は遮断され、横通電板320から溶接ガン130への通電は遮断される。この遮断の間に門型枠120や溶接ガン130はそれぞれ移動し、溶接ガン130の位置決めできる。
【0040】
更に詳しくのべると、溶接電源Eは下部電極の板状電極110に接続する一方、上部電極として縦通電板310に導通している。縦通電板310に縦開閉装置330を介して接続される横通電板320は門型枠120の橋絡部に沿って設けられる。横通電板320の一つの端子は門型枠120の脚部を通って下端の縦開閉装置330まで延長されている。したがって、門型枠120が縦移動するときにはそれとともに移動する門型枠120の脚部の下端部に設けられる縦開閉装置330が縦通電板310に接続している。このため、門型枠120が縦移動し位置決めが完了したところで縦開閉装置330がオンになり、このときに横通電板320は通電される。
【0041】
このように溶接ガン130との間で縦通電板310や横通電板320と組み合わされる縦横の両開閉装置330、340は移動時の通電を遮断し、加圧溶接時の通電を達成するものである。このところからすると、電気式スイッチ装置であってもその目的が達成できる。しかしながら、スポット溶接そのものが局部的に大電流を流しかつ高い圧力を加えることが必要である。とくに、薄物のほかに厚物(なかでも1〜3mm程度)の溶接への適用も可能にするため、図2および図3に示す通り、当接部材を当接または離間して開閉できる機械式開閉装置として構成する。
【0042】
要するに、抵抗溶接は局部的に溶接点を絞って電流量や加圧力を高めて圧接融接する溶接である。このような大電流のオンオフには、電気式開閉装置を適用することができない。
【0043】
これに反し、図2および図3に示すように、縦や横の開閉装置330、340が縦通電板310や横通電板320に対し、その当接部331、341が当接または離間するよう、機械式のものとして構成すると支障なく溶接電流のオンオフを達成できる。すなわち、縦通電板310や横通電板320に対する当接部331、341の当接、離間によって、溶接電流のオン、オフを達成するものであり、この当接部331、341の当接、離間には大きな力を要するため、液圧シリンダ332、342により駆動させる。したがって、液圧シリンダ332、342であると、強力な液圧で駆動することができ、大電流の下では当接部331や341の各々の相手方の各通電板310、320への吸着力が強くなりがちであるが、液圧シリンダなどであると安定して当接力又は離間力をあたえることができ、正確なオンオフが達成できる。
【0044】
なお、当接部331、341の固定された相手材への当接は均一に当って通電されるのが好ましく、このために当接部331、341にはばねその他の伸縮材を介在させるか、フロ−ティングジョイント(商品名)といわれるジョイント部材を介在させ、液圧シリンダ332、342のピストンロッドに当接部331、341を取付けることもできる。
【0045】
以上要するに、本発明は、図1にその原理が示されるとおり、溶接電源Eからの溶接ガン130への通電は縦通電板310と横通電板320とから成って、これらに縦横の開閉装置330、340を組み合わせて構成するものである。この通電経路300であると、縦通電板310は板状電極110の側部に一体として溶接ガン130を搭載する門型枠120の縦移動の範囲内に延在させることができる。横通電板320は門型枠120に一体として取付けて溶接ガン130の横移動経路にわたり門型枠120に延在させることができる。とくに、これら通電経路300は溶接機そのものの中に組み込まれていることから、溶接ガンを2次元方向に平面移動させるときにも、それに伴っての溶接ガン130への通電系が全く移動せずに溶接できる。この構造から成るため、板状電極110上で溶接打点を順次に溶接する場合、数値化された溶接打点の位置、溶接ガン移動経路などの数値情報により、電子計算制御機器200からの指令により、門型枠120および溶接ガン130を縦、横に移動させ、それぞれの開閉装置330、340により電流の遮断、通電を通って自動的に溶接が達成できる。
【0046】
次に、以上の通りの構成の本発明についてその作用および効果を確かめるために、スポット溶接機100を自動化機として構成し、その作動態様を説明する。
【0047】
まず、図4は、図1、図2および図3に示すスポット溶接機100の使用態様のフロ−シ−トであって、このフロ−シ−トに示すとおり、被溶接物Wを上下からはさんでスポット溶接し、溶接ガン130の位置決め、溶接作業の各工程制御は数値化してコンピュ−タなどの電子計算制御機器200内に入力し、この位置制御ユニット210および溶接操作ユニット220からの指令により溶接をほとんど人手によらずに達成できる。
【0048】
すなわち、スポット溶接機100は先にのべたとおり構成され、具体的には一例を示すと、図7および図8に示す通り構成できる。このスポット溶接機100は、図1で原理的に示すものと同等で例えばコンピュ−タなどの電子計算制御機器200、なかでも各操作ユニット210、220からの指令によって溶接ガン130を作動させて溶接できる。電子計算制御機器200には予め操作ボックス250より経て被溶接材の材質、板厚、加圧力などを入力しておき、例えば図5および図6に示す被溶接物Wを溶接するときには、各溶接打点の位置、溶接ガン130の移動経路などに関する命令をうけて溶接ガン130は図5のような経路をとおって人手によることなく作動し、各溶接打点のところに位置決めされ、溶接ガン130が下降して溶接作業が行なわれる。
【0049】
溶接ガン130は、図7および図9に示すとおり、門型枠120が介在し、下部電極として働く板状電極110に対し、とくにその中心軸と平行な縦方向、それに直交する横方向、つまり2次元方向にして位置決めされ、下降されて溶接し、さらに旋回して、例えばコ−ナ部などを移動する。
【0050】
すなわち、電子計算制御機器200は少なくとも2つのユニット210、220とから成って、1つのユニット210からの指令によって門型枠120が縦移動、溶接ガン130が門型枠120に沿って横移動する。また、溶接ガン130は上下方向に昇降し、軸芯を中心として旋回する。他のユニット220の指定によって所定の溶接条件のもとでの指定が溶接機の溶接電源E、コントロ−ラ180(具体的にはプロマブルコントロ−ラ若しくはタイマ−)に与えられ、その溶接条件のもとで溶接が行なわれる。
【0051】
更に具体的に説明すると、図4に示すとおり、これら位置決め、溶接操作に関する情報は、操作ボックス250や手動操作ボックス260、さらに、入力手段として用いる入力コンピュ−タ251などから入力される。これら入力情報は、溶接すべき被溶接材の材質、形状、板厚などの溶接条件に直接関与するもののほか、被溶接材の形状(主として外部の形状)、さらに溶接打点の位置、一連の溶接打点への溶接ガン130の移動経路などのデ−タであり、それにもとずいて各ユニット毎にそれぞれのプログラムが作成され、また、記憶させる。位置決め後に溶接をはじめるときには、これら記憶されているプログラムの中から溶接すべき材料の材質、厚さなど入力デ−タを目安としてそれに合わせた溶接条件にしたがって溶接される。また、この溶接に先立って溶接すべき溶接打点への移動は、電子計算制御機器200内で位置制御ユニット210によるプログラムにもとずく指令により溶接機本体100における溶接ガン130やそれを搭載する門型枠120の各起動モ−タ211、212、220、230、240を回転起動し、この結果として溶接ガン130は、移動し、人手によらずに順次に被溶接物Wの各溶接打点に順次に位置決めされる。
【0052】
また、この溶接で使用されるスポット溶接機100は、具体的に図7および図8に示されるとおり、板状電極110と溶接ガン130とから成って、板状電極110は、平坦な導電板(好ましくは、銅板あるいはその合金板)から成っている。構造は図6に示す先に本発明者が提案したものと同等であるが、次のとおり構成するところで相違する。
【0053】
溶接電源Eにおけるコントロ−ラ180には溶接操作ユニット220から指令が与えられ、各溶接における開始、終了が制御でき、板状電極110上において溶接ガン130そのものを2次元方向に移動され、板状電極110上の門型枠120をその縦軸方向に移動し、この門型枠120の縦移動によって溶接ガン130は縦移動できる。
【0054】
板状電極110にまたがって配置される門型枠120の橋絡部には溶接ガン130が搭載され、門型枠120の縦移動は溶接ガン130の縦移動として電子計算制御機器200における位置制御ユニット210からの指令により制御される。門型枠120はアングル材を門型に枠組みして構成でき、このように構成すると安定して溶接ガン130やその昇降モ−タなど保持でき、溶接ガン130ならびにその通電機器が大型化したときには、2つの門型枠を平行に並べこれを一体として走行できるように構成できる。
【0055】
また、門型枠120は図7および図8に示すとおり、縦通電板310を板状電極110に沿わせる。一方、横通電板320を門型枠120の側面に沿わせ、両通電板は門型枠の脚部で接続し、2つの縦および横の開閉装置330、340を介在させて接続されている。
【0056】
このように溶接電源Eの一方の極が溶接ガン130に接続する通電経路を構成すると、大電流(溶接に必要な)が送電でき、上部電極の溶接ガン130は支障なく移動できる。なかでも、溶接ガン130の移動に伴う負荷が大巾に軽減できるため、その駆動モ−タとしてやや駆動力が低いサ−ボモ−タも使用でき、要するに、大径で重い水冷ケ−ブルを使用することなく、移動荷重の節減によって位置決め精度を大巾に高めることができる。
【0057】
更に詳しく説明すると、図9に示す従来例においては、溶接ガン3とその附属設備は大径で高重量の水冷ケ−ブルともに移動させることになる。この移動は正確に位置決めすることがきわめてむづかしい。これに対し、本発明においては、門型枠120を介在させて電子計算制御機器200による制御をできるようにしてあるため、溶接ガン130の板状電極110上で精度を高く位置決めできる。
【0058】
これに伴って、溶接ガン130は搭載させる門型枠120を板状電極110と直交する幅方向にわたって厳格平行に移動させる必要があり、併せて、門型枠120の両端、つまり両脚部は常に平行で同程度づつ移動されていることが必要である。この点、介在させる枠が2つの脚部をもつ門型であると、2つの脚部を個別的に例えばサ−ボモ−タにより駆動し、これらの駆動力、すなわち、サ−ボモ−タ間の回転角度の制御を電子計算制御機器200で所定の制御プログラムのもとで行なうことができ、支障なく門型枠120を平行かつ同程度づつ移動変位させることができる。
【0059】
また、門型枠120が板状電極110上でその縦軸に直交する横軸方向に平行に縦移動できることから、この門型枠120に沿って横移動する溶接ガン130は板状電極110に対し横移動することとなり、溶接ガン130の縦、横の移動変位を検出し、これを電子計算制御機器200で検出監視すると電子計算制御機器200においてその位置制御ユニット210で追跡することができ、溶接ガン130を位置決めすることができる。
【0060】
この位置決めされた溶接打点の溶接は電子計算制御機器200、なかでも、溶接操作ユニット220からの指令により開始され、溶接機100において溶接ガン130を下降させ、溶接が終了すると溶接機100から完了信号が電子計算制御機器200に発せられる。それにもとずいて溶接ガン130は上昇し、次の溶接打点のところに移動し、溶接がくり返される。
【0061】
なお、この場合、一つの溶接打点毎の溶接完了は、被溶接材の材質、形状などに応じた溶接条件毎に下降時の負荷にもとずく電流値に対応する基準値を設定しておき、この電流値の変化を電子計算制御機器200に入力しておくと、その値が予め設定した基準値に達したときに電子計算制御機器200、なかでもその溶接操作ユニット220からの指令により一つの溶接打点の溶接を完了させる。
【0062】
また、以上のとおり、板状電極110上において溶接ガン130の移動を追跡しつつ監視修正処理しての溶接ガン130の位置決めは、板状電極110と門型枠120との側面に沿わせた縦通電板300および横通電板400への溶接電源Eからの通電は遮断したオフ状態で行なわれる。このため、位置決め完了後は直ちに電子計算制御機器200における溶接操作ユニット220からの指令を介設したそれぞれの縦横の開閉装置330と340に送り、溶接電源Eの一方の極と溶接ガン130とを通電させる。
【0063】
この場合、各開閉装置330、340は図2および図3に示すとおり機械式のものから構成するため、溶接時の大電流の通電にも耐え、ほこりの多い悪環境であっても、故障が少ない。
【0064】
以上のとおり、図1、図2、図3および図7、図8に示す本発明溶接機であると、板状電極110上に被溶接材を置きその溶接打点の位置およびそれらの移動経路などに基いた組まれたプログラムにより門型枠120および溶接ガン130を人手によらずに移動させて位置決めしてから、各溶接打点を順次に溶接し、位置決めのときには、溶接電源と通電板との間に介設される開閉装置330、340をオフ状態で行なわれ、溶接のときはオン状態で行なわれる。このような操作は図4に示すフロ−シ−トを実施できる。
【0065】
まず、門型枠120の縦移動は、縦方向移動装置160により行なう。次に、溶接ガン130の横移動は門型枠120上で横方向走行装置170より行なう。次に、門型枠120に搭載される溶接ガン130は昇降加圧装置150より垂直に昇降する。次に、溶接ガン130は旋回装置140により門型枠120上で旋回される。
【0066】
このように構成されていると、溶接ガン130は、図4に示すように、電子計算制御機器200における位置制御ユニット210からの指令により、板状電極110上で板状電極110の縦方向および縦方向に直交する横方向に移動し、垂直方向に昇降し、さらに、軸芯を中心として旋回する。
【0067】
以上の通り、板状電極110の上において電子計算制御機器200の指令により門型枠120を介して溶接ガン130は縦、横方向に移動、軸芯を中心としての回転など行なわれるが、これらの移動、回転などの変位はサ−ボモ−タ211(門型枠の一方の脚の縦移動)、212(門型枠の他方の脚の縦移動)、220(溶接ガンの横移動)、230(溶接ガンの昇降移動)、240(溶接ガンの軸芯を中心とする回転)によって達成される。なお、図4では、門型枠の縦移動は、門型枠120の両脚部121、121で行なわれるため、これを2つに分けて示している。
【0068】
また、図4において符号211、212、220、230、240はそれぞれ溶接機100の縦方向移動装置160、横方向移動装置170、昇降加圧装置150、旋回装置140を回転駆動する各サ−ボモ−タであり、溶接機100の一部として設けられている。これらサ−ボモ−タの回転角度にもとずいて電子計算制御機器200内の位置制御ユニット210により制御処理され、位置決めされる。
【0069】
また、図6に示すような被溶接物Wを溶接することもできる。この被溶接物Wは、上部に張り出し部W1があり内部にも突出部があって内部に溶接打点がある被溶接物W、例えば枠体や箱などの容器である。このような被溶接物Wは縦向き姿勢のままで棒状の溶接ガン130を下降させても、先端のチップがこの張り出し部W1に当って溶接できない。このような被溶接物Wであっても、溶接ガン130として、図6に示すように、一部に凹部133(コ字状凹部、その一部の図示は欠いている。)がある溶接チップ131を先端に具えるものを用いると溶接できる。すなわち、このような溶接ガン130であると、コ字状凹部133のところに被溶接物Wの張り出し部W1が吸収でき、図6のとおり、この部分に侵入させると、張り出し部W1によっておおわれている溶接打点も縦向き姿勢のままで溶接できる。このような溶接ガン130を用いる場合に、先端の溶接チップ131は溶接ガン130の軸心と一致させる必要があり、このような条件で加圧する場合には、加圧力を高めても支障がない。
【0070】
以上のとおり、本発明法によると、入力部からのデ−タ入力により自動的にほとんど人手によることなく溶接できるが、その一例を挙げると、図5に示すとおりである。
【0071】
まず、図5に示す被溶接物Wは図6で断面構造の一部が示されるものである。この被溶接物Wは枠組構造物で、この被溶接物Wは中央の開放部W2が開放され、この中央の開放部W2は先にのべた鋼板などを折り曲げた張り出し部W1に囲まれ、張り出し部W1によりわく取りされている。この構造の立体構造物、つまり、箱又は型枠を溶接するときには、板状電極110上におき、予め溶接ガン130の先端の溶接チップ131を凹部133のところに図6に示すように張り出し部W1を侵入させてその下の溶接打点の位置に当てながら順次に移動させる。このような各溶接打点の位置情報を電子計算制御機器200に入力し、溶接チップ131の移動軌跡と併せてプログラム化し記憶させる。すなわち、各溶接打点ごとに溶接ガン130を順次に移動させ、コ−ナ部に達したときに旋回させ、各溶接打点の位置情報などからなる溶接ガンの移動軌跡のプログラムを操作ボックス250を介し、電子計算制御機器200に入力しておく。
【0072】
続いて、この入力デ−タにもとずくプログラムを記憶し、これによって順次に溶接ガン130を移動させて順次に溶接打点で溶接する。コ−ナ部に達したときにはプログラムにもとずいて溶接ガン130を回転して方向を変えることになり、溶接打点列を順次に溶接する。
【0073】
このような情報にもとずくプログラムは被溶接物Wの形状や構造がその変化が大きく複雑になる。予め手動操作によってその形状に応じて溶接打点をトレ−スすることもできるが、形状の定まった箱などの容器はコンピュ−タ251に読み込ませてある3次元のキャドデ−タをそのまま入力でき、このようにすると、溶接作業の一層のロボット化も達成できる。
【0074】
すなわち、複数の溶接を連続的に達成するのには、図示は省略するが、板状電極110上に設けられている縦方向および横方向の基準スケ−ルに被溶接物Wを位置合わせする。この位置合わせしたプログラムの移動軌跡に基づいて溶接ガン130を連続的に移動させて複数の被溶接物の溶接を達成できる。
【0075】
更に、形状などの異なる被溶接物の溶接を同時に達成するときには、個々の被溶接物についてプログラムを予め作成し、これらを集合させて板状電極110上の位置情報をとって、これらを全体としてプログラム化し、これによって順次に溶接ガン130を移動させて溶接することもできる。
【0076】
なお、溶接に当って、溶接ガン130による被溶接物Wへの加圧と併せて昇降を達成する昇降加圧装置150は、図7に示すように、旋回装置140と一体化させて構成し、昇降モ−タ151にボ−ルナット機構152を介して、昇降モ−タ151の回転により溶接ガン130が昇降加圧できるように構成することもできる。また、昇降モ−タ151に代って直接エア−シリンダ(図示せず)から構成することもできるが、昇降モ−タ151であると、先に説明したとおり、加圧時の負荷が昇降モ−タ151の電流量の推移として検出でき、溶接の自動化が容易に達成できる。
【0077】
また、旋回装置140の中にサ−ボモ−タ240を設け、これによって溶接ガン130が中心軸芯を中心として旋回できるように構成できる。
【0078】
板状電極110は平坦な銅又はその合金の導電材料からなる板状材である。これには溶接電源Eの一方の極に接続し、下部電極として働く。板状電極110は板状のシ−ト状であり、シ−ト電極ともいわれ、全表面が電極として働くところに特徴がある。それ故に、その上においてX、Y、Z軸のほかにその溶接ガン130自体を自由に旋回でき、定置式スポット溶接機では不可能といわれた自動化、ロボット化が達成できる。
【0079】
すなわち、元来板金加工などで金属容器の接合には、棒状の溶接ガンを下向きに押圧して各溶接打点を溶接することが行なわれている。このところを機械化するために先に提案したスポット溶接機では棒状の溶接ガンを伸縮自在の支持ア−ムに組み込んだものを提案している。しかし、この支持ア−ムではその伸縮を自動化又はロボット化することは機構的にも構造的にも複雑になり、その改善が求められている。
【0080】
このところから、本発明は、板状電極110が板状のシ−ト状電極とし、これを下部電極として働かさせることを前提とし、この板状電極110に門型枠120を介在させ、この門型枠120は縦方向移動装置160によって板状電極110の長さ方向に移動させるようにする。この長さ方向に移動する門型枠120には、板状電極110との間で被溶接物Wをはさみ上部電極として働く溶接ガン130が取付けられている。
【0081】
要するに、門型枠120の介在により、それを利用して溶接ガン130の2次元移動とともに高さ方向を含めて3次元移動のプログラム化が達成でき、さらに、溶接ガン130の移動に伴っての水冷ケ−ブルなどの移動もなく溶接作業の安全確実性が高められる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上のとおり、一般に板金加工といわれる分野で広く利用できるものである。なかでも、構造、形状が入り組んだ構造物の製造過程でその接合するスポット溶接の分野で利用できる。さらに、電子計算制御機器における位置決めプログラムと溶接プログラムに基づく指令および制御されるため、人手によらずに自動的に被溶接物の各溶接打点に溶接ガンを位置決めでき、溶接も達成でき、このようなところから広く金属材加工界に一般に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明に係るスポット溶接機の一つの好適な実施態様を原理的に示す説明図である。
【図2】図1に示す本発明に係るスポット溶接機における縦開閉装置の一例の説明図である。
【図3】図1に示す本発明に係るスポット溶接機の横開閉装置の一例の側面からみた説明図である。
【図4】図1に示すスポット溶接機による一つの溶接作業態様を例示するフロ−シ−トである。
【図5】被溶接物内部の溶接打点を自動的に溶接する際の説明図である。
【図6】図5の一部の断面を拡大して示す拡大断面図である。
【図7】図1に示すスポット溶接機の一つの端面側からの側面図である。
【図8】図7に示すスポット溶接機の平面図である。
【図9】先に出願人が提案した従来例に係るスポット溶接機の説明図である。
【符号の説明】
【0084】
100 スポット溶接機
110 板状電極
120 門型枠
130 溶接ガン
200 電子計算制御機器
300 通電経路
310 縦通電板
320 横通電板
330 縦開閉装置
340 横開閉装置
W 被溶接物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接電源に下部電極として接続される板状電極上で上部電極として接続される溶接ガンを2次元の平面移動させ、この板状電極上における被溶接物の溶接打点に向って昇降させてスポット溶接するスポット溶接機において、
前記溶接ガンを昇降自在に搭載し、前記板状電極上に設けられ、その縦方向に移動する門型枠を設けること、
この門型枠を介して溶接電源から溶接ガンへの通電経路を構成し、この通電経路を縦移動経路にわたり前記板状電極の側縁に沿って設けられ、前記溶接電源の一方の電極に接続される縦通電板と、
この縦通電板に開閉自在に接続され前記門型枠とともに前記縦移動経路にわたり移動する縦開閉装置と、
この縦開閉装置に接続され、前記門型枠内において前記溶接ガンが前記縦移動経路に直交する方向に移動する横移動経路にわたって延在する横通電板とから構成すること、
この横通電板に開閉自在に接続され前記溶接ガンに接続される横開閉装置を設けること、
を具えて成ることを特徴とするスポット溶接機。
【請求項2】
前記縦開閉装置を前記門型枠の脚部に取付けることを特徴とする請求項1記載のスポット溶接機。
【請求項3】
前記横開閉装置は前記円型枠の橋絡部分に設けることを特徴とする請求項1記載のスポット溶接機。
【請求項4】
前記溶接電源の一方の極を前記板状電極に接続し、他方の極を前記縦開閉装置を介して前記縦通電板に接続して成ることを特徴とする請求項1記載のスポット溶接機。
【請求項5】
前記縦開閉装置に遮断信号を送り前記門型枠に縦移動信号を送る電子制御機器を設けることを特徴とする請求項1又は2記載のスポット溶接機。
【請求項6】
前記横開閉装置に遮断信号を送り、前記溶接ガンに横移動信号を送る電子制御機器を設けることを特徴とする請求項1又は3記載のスポット溶接機。
【請求項7】
前記縦通電板および横通電板を銅又はその合金から成る板状材から構成することを特徴とする請求項1記載のスポット溶接機。
【請求項8】
前記門型枠に前記溶接ガンを設け、前記溶接ガンを前記横開閉装置に可撓性ケ−ブルを介して接続して成ることを特徴とする請求項1、3又は6記載のスポット溶接機。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−114253(P2008−114253A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−299562(P2006−299562)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(000143112)株式会社向洋技研 (41)
【Fターム(参考)】