説明

スポーク状ホイールディスクの製造方法及びスポーク状ホイール

【課題】生産性や歩留まりを向上し、リムとの溶接不良を低減したスポーク状ホイールディスクの製造方法を提供する。
【解決手段】ほぼ円形の板状ブランク100にスポーク部の補強部11の基となる隆起部110を、ボルト孔10eより外周側に同心円上に複数個形成する予成形工程と、隆起部に複数の飾り穴素孔200を開口し、隣接する飾り穴素孔同士の間にスポーク部素形部100bを形成する開口工程と、飾り穴素孔が開口された板状ブランクの外周部をホイール軸方向とほぼ平行となるよう垂直に折り曲げてディスクフランジ10cを形成し、得られた飾り穴の外縁でディスクフランジの上端縁を構成させるディスクフランジ成形工程と、スポーク部素形部に補強部を設けてスポーク部10bを形成するスポーク部成形工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、農耕用車両、産業用車両等の車両に用いるスポーク状ホイールディスク及びスポーク状ホイールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スチールホイールは安価で低コストであるため広く普及しているが、アルミホイールに比べて意匠性が劣るという問題がある。そこで、近年、細いスポーク部と大きな飾り穴とを有し、アルミホイールに似た外観を呈するスチールホイールが開発されている(特許文献1〜3参照)。
このうち、特許文献1には、スポークを一体形成し全周にリング部を有する打ち抜きディスクをリムに溶接し、上記リング部をリムのショルダ部に溶接する際、リムの空気軸(バルブ穴)と干渉しないようリング部に切り欠きを設けることが記載されている。
又、特許文献2には、ディスクの飾り穴の周縁をしごいて立壁を設けて強度を確保することで飾り穴の間のスポーク幅を細くし、かつ周方向に形成したディスクフランジをリムと溶接することが記載されている。
特許文献3には、一体の金属シートからディスク部を形成し、ディスク部が複数のスポーク装置と各スポーク装置の外端を連結するリング状のディスクエッジを備えたことが記載されている。そして、この文献には、スポーク装置は2本のスポークバー(補強リブ)から形成され、ディスクエッジをリムウェル(ドロップ部)の内周に接合することが記載されている。
【0003】
一方、従来の(飾り穴の小さい)ディスクは、例えば正方形の鋼板の四隅を円形に打ち抜いたものを絞り加工(プレス加工)してディスクフランジを形成することで製造される(特許文献4、5参照)。この場合、鋼板の円形に打ち抜かれた部分がディスクフランジ端縁となり、鋼板のそれ以外の端部分は水抜きとなる凹部に形成される。
【0004】
【特許文献1】特開2004−1704号公報
【特許文献2】特開2005−119355号公報
【特許文献3】欧州特許第1262333号明細書(特許請求の範囲1、3項)
【特許文献4】特許3460764号公報(図3)
【特許文献5】特開2005−35330号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3に記載されたような細いスポーク部と大きな飾り穴を一体成形してディスクを製造する場合、ディスクの曲面加工後に飾り穴を開口しようとすると、ディスクの平面部とディスクフランジに共に穴を開ける裏抜き(ディスクの裏面からの穴開け)加工が必要となり、余分な工程が増えて生産性が低くなる。
一方、特許文献5には、予め飾り穴を開口したディスク用ブランク材を曲げてフランジ部を加工することが記載されているが、この技術は飾り穴(熱放射孔)が比較的小さくてディスク外縁付近まで達しておらず(特許文献5の図2)、アルミホイールのようにスポーク部の間が大きく開口する意匠が得られない。
そして、飾り穴がディスク外周縁付近まで達するよう、予め飾り穴を開口したブランク材を飾り穴部分で曲面加工すると、絞り加工により周方向の材料余りが生じ、さらに飾り穴部分の外周で材料の幅が他より狭く強度が低いため、この部分が曲げ加工時に変形してしまい、ディスクフランジ部端縁がうねるようになることがある。この場合、飾り穴の変形による見栄えの低下、嵌合強度不足、組立て精度低下などの不良の発生や、ディスクの歩留まりが低下したり、飾り穴部分でリング部を溶接すると溶接不良が生じるという不具合がある。
従って本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、スポーク部と大きな飾り穴を一体形成したホイールディスクを製造する際に、生産性や品質を向上させ、リム部との溶接不良を低減したスポーク状ホイールディスク及びスポーク状ホイールの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明のスポーク状ホイールディスクの製造方法は、ほぼ円形の板状ブランクにスポーク部の補強部の基となる隆起部を、ボルト孔より外周側に同心円上に複数個形成する予成形工程と、前記隆起部に複数の飾り穴素孔を開口し、隣接する前記飾り穴素孔同士との間にスポーク部素形部を形成する開口工程と、
前記飾り穴素孔が開口された前記板状ブランクの外周部をホイール軸方向とほぼ平行となるよう垂直に折り曲げてディスクフランジを形成し、得られた飾り穴の外縁で前記ディスクフランジの上端縁を構成させるディスクフランジ成形工程と、
前記スポーク部素形部に前記補強部を設けて前記スポーク部を形成するスポーク部成形工程とを有する。
【0007】
このようにすると、飾り穴素孔を成形する前に、スポーク部の補強部の基となる隆起部の成形を行うので、スポーク部およびディスクフランジ部の成形が、無理なくできる。また、ブランクに飾り穴素孔を開口した後にディスクフランジの成形を行うので、ディスクの平面部とディスクフランジ部に後から穴を開ける裏抜きが不要となり、生産性が高くなる。
【0008】
前記板状ブランクの外周縁のうち前記飾り穴素孔に対向する部分を、前記板状ブランクの外周縁のうち前記スポーク部素形部の先端部に対向する部分を通る第1基準円より径方向内側に実質的に凹ませて前記ディスクフランジ成形工程を行ってもよい。
【0009】
このようにすると、ディスクフランジ成形時に、ブランクのうち強度が弱い部分(飾り穴に対向するブランク外周縁)の変形を打ち消すようにブランク形状を規定しているので、飾り穴に対向するブランク外周縁が曲げ加工で変形してディスクフランジ端縁がうねることがなく、ディスクの歩留まりが向上するとともに、嵌合強度不足、組立て精度低下などの不良の発生を防止できる。
【0010】
前記飾り穴素孔の外縁のうち中央部を含む部分を、前記飾り穴素孔の外縁のうち最も外側に位置する部分を通る第2基準円より径方向内側に実質的に凹ませて前記ディスクフランジ成形工程を行ってもよい。
【0011】
このようにすると、ディスクフランジ成形時に、強度が弱い前記飾り穴素孔の外縁の余分な変形を打ち消すようにブランク形状を規定しているので、飾り穴素孔の外縁が曲げ加工で変形してうねることがなく、飾り穴の変形による見栄えの低下、嵌合強度不足、組立て精度低下などの不良の発生、ディスクの歩留まり低下や、飾り穴近傍の嵌合部で溶接した際に溶接不良が生じるのを防止できる。また、外観も向上できる。
【0012】
本発明のスポーク状ホイールは、前記スポーク状ホイールディスクの製造方法によって製造されたスポーク状ホイールディスクのディスクフランジの外周面を、リムの内周面に嵌合溶接してなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スポーク部と大きな飾り穴を一体形成したスポーク状ホイールディスクを製造する際に生産性や歩留まりを向上し、嵌合強度不足、組立て精度低下などの不良の発生を防止できるとともに製造が容易となる。また、外観も向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明ではスチールホイールを例示するが、本発明はスチールホイールの他、円形状板材の外周を絞り加工等によって折り返してフランジを形成して、ディスクに成形できる材料(例えば、チタン、チタン合金)を対象とすることができる。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係るスポーク状ホイールディスクの製造方法の一例を示す工程図である。
まず、ほぼ円形に打ち抜いたスチール板状ブランク100に、ディスクの中心となるハブ穴10dと、ハブ穴10dより外周側でハブにホイールを取付けるための複数のボルト孔10eを同心円上に開口し、さらに、スポーク部の補強部11の基となる複数の隆起部110を、ボルト孔10eより外周側に同心円上に形成する(図1(a))。隆起部110は、スポークの数に対応した個数(図1はスポークが5個の場合を示しており、以下、スポークが5個の場合について説明する。)だけ近接して形成され、隣接する隆起部110、110の間には、隆起部110に相対して径方向に延びる谷部113が形成される。なお、隆起部110は、後述するスポーク部の中央部13に対して補強部11が立ち上がる方向に凸になるように形成される。
【0016】
ハブ穴10dやボルト孔10eは孔抜きパンチによって開口することができ、隆起部110はプレスによる絞り加工で成形することができる。又、本発明の一連の工程は、例えばトランスファープレスでブランクを順に複数の金型に搬送して行うことができる。
【0017】
次に、各隆起部110の中心に、それぞれ頂点がハブ穴10d側を向く略三角形の飾り穴素孔200を開口すると共に、板状ブランク100の外周縁100eを以下の形状に加工する(図1(b))。飾り穴素孔200を開口する際、隣接する飾り穴素孔200,200の間には、ブランク100の中心から外周に放射状に延びる5個の長片状のスポーク部素形部100bが形成され、スポーク部素形部100bの中央部には前記谷部113が径方向に延びる。
外周縁100eと飾り穴素孔200は、孔抜きパンチによって形成することができる。
【0018】
ここで板状ブランクの外周縁100eのうち飾り穴素孔200に対向する外周縁部分100eaは、それ以外の外周縁部分(スポーク部素形部100bの先端部に対向する外周縁100eb)が通る第1基準円C1より径方向内側に凹んでいる。より詳しくは、外周縁部分100eaを、隣接する外周縁100ebの端部同士をほぼ直線上に結ぶよう形成し、外周縁100ebが位置する第1基準円C1より径方向内側に外周縁部分100eaを位置させる。従って、板状ブランクの外周縁100eは全体として略5角形をなす。
なお、スポーク部素形部100bの先端部とは、スポーク部素形部100bの幅方向端部の2つの延長線が、ブランクの外周縁と接する部分の間の領域として規定される。
【0019】
又、飾り穴素孔の外縁(飾り穴素孔の外周のうちブランクの外周縁側の部分)のうち中央部を含む部分200eは、前記飾り穴素孔の外縁のうち最も外側に位置する部分200fを通る第2基準円C2より径方向内側に凹んでいる。より詳しくは、外縁200eは、第2基準円C2より径方向内側にあって、外周縁部分100eaと径方向に一定の間隔(幅)を保持するよう位置する。従って、外縁200eは、外周縁部分100eaとほぼ平行の直線状になっている。なお、飾り穴素孔の外縁のうち最も外側に位置する部分200fは、飾り穴素孔の隅部近傍となっている。
【0020】
次に、図1(b)の形状に加工された板状ブランク100の外周縁100eをホイール軸方向とほぼ平行となるよう垂直に折り曲げてディスクフランジ10cを形成する(図1(c))。このディスクフランジ成形工程では、折り曲げ位置外周端R(out)が飾り穴素孔の外縁200eの端部と同じ半径上にあるか、外縁200eの端部より径方向内側にあるようにする。つまり、折り曲げ位置外周端R(out)は、図1(b)の第2基準円C2と同一円周上または、第2基準円C2より径方向内側の位置にある。
なお、基準円C1、C2はいずれも板状ブランク100の中心と同心の円である。
【0021】
これにより、得られた飾り穴20xの外縁が曲面接続部Rの外周側に位置し、かつディスクフランジ10cの上端縁を構成するようになる。
このように、ディスクフランジの折り曲げ位置を飾り穴素孔の近傍(又は飾り穴素孔の一部を含む)位置とすることで、得られた飾り穴20の外縁がディスク素形10xの外縁まで達し、飾り穴が大きくなるので意匠性が高まる。なお、ディスクフランジ10c形成後の板状ブランクを便宜上、ディスク素形と称する。ディスク素形は最終的に得られるディスクとほぼ同一形状であるが、スポーク部の補強部やその他の最終加工が行われていない。又、飾り穴20xは最終的に得られる飾り穴20と若干大きさが異なるので、符号を変えている。
【0022】
なお、以下の説明で「外側」とは、ホイールを車両に取付けた際、ホイールの軸方向から見て外側となる部分をいい、「内側」とは内側となる部分をいう。但し、トラックのダブルタイヤのように、2個のホイールを軸方向に連結して使用する場合、内側に位置するホイールの「外側」と「内側」は上記の通りであるが、外側に位置するホイールの「外側」と「内側」は上記と逆になる。これは、ダブルタイヤの場合、外側に位置するホイールの表裏を逆にして内側ホイールと連結するためである。例えば、内側ホイールの場合、図2の上側部分が外側となるが、外側ホイールの場合は図2の下側部分が外側となる。
また、リム及びディスクの径方向については、「内周」又は「外周」と表記する。
【0023】
ここで、ディスクフランジ成形に供する板状ブランク100の形状を図1(b)のものとした理由について説明する。上記したように、本発明においては飾り穴20がディスクの外周に達するよう、フランジの折り曲げ位置外周端R(out)を飾り穴素孔200の近傍(又は飾り穴素孔の一部を含む)位置とする。飾り穴素孔200に対向するブランクの外周縁部分100eaの材料の幅(図1(b)の幅α)は、他の外周縁部分100ebの材料の幅(図1(b)の幅β)に比べて狭く強度が低くなり、ディスクフランジ成形工程で外周縁部分100eaが変形し延びる。また、ディスクフランジ成形工程は絞り成形であるため、ディスクフランジ10cの周方向に材料余りが生じる。このため、ディスクフランジ端縁がうねるようになる。
従って、外周縁部分100eaの周方向の材料余りや変形伸びを打ち消すよう、予め外周縁部分100eaを板状ブランク100の内側(第1基準円C1より径方向内側)に位置させることで、ディスクフランジ10c形成後にディスクフランジ下端10c(in)(ディスクフランジが最も延びた先端)がどの部分でも軸方向にほぼ同じ高さとなる。
同様に、フランジ成形時に強度が低い飾り穴素孔の外縁200eの余分な変形を打ち消すように外縁200eの形状を規定すれば、飾り穴素孔の外縁200eが曲げ加工で変形してうねることがなくなる。
【0024】
特に、この実施形態では、外周縁部分100eaと外縁200eの形状をいずれも上記したように規定しているので、外縁200eが外周縁部分100eaから径方向に一定の間隔(幅)となり、ディスクフランジ10c上端10c(out)と下端10c(in)がそれぞれ軸方向にほぼ同じ高さとなる。
周方向の材料余りや変形伸びを打ち消すような外周縁部分100ea及び/又は飾り穴素孔の外縁200eの形状は、例えばFEM解析等のシミュレーションや予備的な実験によって決めることができる。
【0025】
ディスクフランジ成形は、公知の加工によって行うことができ、例えば所定のダイと絞りパンチを用いることができる。又、折り曲げ加工後にさらにディスクフランジ部をしごき加工して延伸してもよい。
【0026】
次に、ディスク素形10xのスポーク部素形部100bにプレス加工や曲げ加工を行って、長手方向に向かって延びる補強部11、11を設けてスポーク部10bを形成する(図1(d))。又、この工程で他の加工も行い、最終的なディスク10を製造する。
ここで、図2に示す第1補強部11aおよび第2補強部11bからそれぞれなる補強部11、11をスポーク部10bの幅方向端部に形成し、第2補強部11bがディスク10の外側(図1の紙面上側)に向かって立ち上がる(隆起する)ようにする。又、ディスクのハブ取付け部10a(ボルト孔10eを囲む領域)の外周縁に、スポーク部10bの第2補強部11bに連続する立ち上がり部14及び立ち上がり部14につながる接続部15を形成し、これらの一体化したリブが飾り穴20の2辺とその頂点を囲むようにする。なお、接続部15はハブ取付け部10aとほぼ平行に延び、隣接するスポーク部の第1補強部11aの間を接続する。
【0027】
スポーク部の幅方向端部の補強部11、11で囲まれたスポーク部の幅方向中央部13は、補強部11よりホイール内側に凹んで位置している。
又、折曲げによって形成された曲面接続部Rは始端から外周側へ向かって幅が広がってディスクフランジ部10cに接続される。ディスクフランジ10cはホイールの軸方向に沿って延び、当該軸方向において、後述するリムとの嵌合溶接面を形成すると共に、各スポーク部10bを連結して強度を確保する機能を有する。
【0028】
図2はディスク10の斜視図である。図2において、ディスク10のハブ取付け部10aはほぼ平面をなすが、スポーク部10bはハブ取付け部10aから外側に湾曲した後、ハブ取付け部10aとほぼ平行に延び、曲面接続部Rで内側に湾曲してディスクフランジ10cにつながっている。
【0029】
以上のように、本発明においては、飾り穴素孔を成形する前に、スポーク部の補強部の基となる隆起部の成形を行うので、スポーク部およびディスクフランジ部の成形が、無理なくできる。また、ブランクに飾り穴素孔を開口した後にディスクフランジ成形を行うので、ディスクの平面部とディスクフランジに後から穴を開ける裏抜きが不要となり、生産性が高くなる。又、飾り穴部分の外周縁が曲げ加工時に大きく変形してディスクフランジ端縁がうねることがないので、ディスクの歩留まりが向上するとともに、嵌合強度不足、組立て精度低下などの不良の発生を防止できる。
又、本発明において、板状ブランクの外周縁のうち飾り穴素孔に対向する部分100eaを、第1基準円より径方向内側に凹ませたブランクを用いてディスクフランジ成形工程を行った場合、ディスクフランジの下端10c(in)がうねることがなくなる。又、飾り穴素孔の外縁のうち中央部を含む部分を、第2基準円より径方向内側に凹ませたブランクを用いてディスクフランジ成形工程を行った場合、飾り穴素孔の外縁200eが曲げ加工で変形してうねることがなくなる。さらに、板状ブランクの外周縁と飾り穴素孔の外縁をいずれも上記した形状に規定すれば、ディスクフランジの下端10c(in)と上端10c(out)がそれぞれ軸方向にほぼ同じ高さとなり、ディスクフランジ10c自体の幅も均一となる。
【0030】
次に、本発明のスポーク状ホイールを図3を参照して説明する。本発明のスポーク状ホイールは、上記したディスク10のディスクフランジ10cの外周面を、リム2の内周面に嵌合溶接してなる。
【0031】
図3において、リム2は略円筒状をなし、リム2の外側フランジの内側にはタイヤのビードを受ける外側ビードシートが形成されている。外側ビードシートより内側には最も小径のドロップ部2cが形成され、外側ビードシートと(外側の)ドロップ部2cはサイドウォール部2aを介して滑らかに接続されている。つまり、ドロップ部2cとサイドウォール部2aとは断面が半円状の湾曲部2bを介して接続されている。ドロップ部2cより内側にはサイドウォール部を介して内側ビードシートが形成され、内側ビードシートは内側フランジに接続されている。以下の説明では、「ドロップ部」は、ドロップ部の外側部分(外側ビードシートに接続する部分)をいう。そして、リム2の両端に形成された外側フランジ及び内側フランジの間にタイヤを収容する。
リム2は、例えば所定形状の圧延形鋼を円筒形に丸めて製造することができ、又は、鋼板を丸めて円筒形にした後、ロール成形等によって所定の断面形状としてもよいが、これらの方法に限られない。
【0032】
この実施形態では、リム2のドロップ部2cの内周面にディスクフランジ10aの外周面を嵌合し、嵌合部の外側部分を溶接して溶接部5を形成し、リム2とディスク10を接合するが、嵌合溶接部はリム2の内周面であればドロップ部2cに限定されない。
又、溶接方法は特に制限されず、例えば、レーザー溶接、プラズマ溶接、CO−アーク溶接、MAG溶接、サブマージアーク溶接、及びTIG溶接等を用いることができる。但し、溶接部分がホイール外面になる場合は、溶接ビード表面がきれいなレーザー溶接、プラズマ溶接、又はTIG溶接を用いることが外観上好ましい。特に、コスト、溶接強度信頼性、外観の点からは、ホットワイヤーTIG溶接又はサブマージアーク溶接が好ましい。
さらに、ディスクフランジ10cは、リムのドロップ部2cと平行となるようホイールの軸方向に延びていればよいが、ディスクフランジ10cをリム2にきつく嵌合させるため、ディスクフランジ10cの先端がやや拡径となるようにしてもよい。
【0033】
ここで、嵌合部の外側部分を溶接する場合、嵌合部の内側を溶接した場合に比べ、溶接部の強度が向上するので好ましい。この理由としては以下のことが考えられる。まず、回転中のディスクは楕円状にゆがむため、ディスクの径方向に、ディスク10とリム2の嵌合部を広げる(左右に開く)応力が作用する。このため、嵌合部の内側を溶接した場合、嵌合部を広げる応力は嵌合部の外側から溶接部に伝達し、この際、梃子の原理により溶接部に掛かる応力が高くなると考えられる。
一方、嵌合部の外側を溶接した場合、嵌合部を広げる応力は嵌合部の外側の溶接部に直接負荷されるだけであり、溶接部に掛かる応力は内側を溶接した場合に比べて低くなる。
【0034】
図4は、ディスクとリムの嵌合部の形態を示す斜視図である。本発明においては、飾り穴20がディスクの外縁まで広がっているので、スポーク部が直接リムに接続しているように見え、意匠性が向上する。
【0035】
図5はスポーク部の補強部の変形例を示す。図2及び図4に示す実施形態と異なり、図5の実施形態においては、スポーク部10b2の幅方向端部の補強部11y、11yで囲まれたスポーク部の幅方向中央部13yは、補強部11yよりホイール外側に突出している。
この変形例の場合も、予成形工程における隆起部110は、後述するスポーク部の中央部に対して補強部が立ち上がる方向に凸になるように形成される。但し、この変形例におけるスポーク部10b2は、図4に示すスポーク部10bと表裏を引っくり返したような位置関係にあるので、隆起部110はホイール内側に凸となる。
又、図6に示すように、ディスクフランジ10cが、対応するリム2の嵌合部分と平行な嵌合ディスクフランジ部10cpと、スポークの補強部11および飾り穴20と接続する接続ディスクフランジ部10ctとからなっていてもよい。この場合、接続ディスクフランジ部10ctの先端がスポークの補強部11および飾り穴20に向けて拡径しており、接続ディスクフランジ部10ctの先端にスポークの補強部11および飾り穴20が接続されている。
図7に示すように、ディスクフランジ10cが、対応するリム2の嵌合部分と平行な嵌合ディスクフランジ部10cpと、スポークの補強部11および飾り穴20と接続する接続ディスクフランジ部10ct2とからなっていてもよい。この場合、接続ディスクフランジ部10ct2の先端がスポークの補強部11および飾り穴20に向けて縮径しており、接続ディスクフランジ部10ctの先端にスポークの補強部11および飾り穴20が接続されている。
図6、図7のディスクフランジ10cの製造は、いずれも図1(c)の工程または図1(d)の工程の中で行っても良いし、図1(c)の工程の直後または図1(d)の工程の直後に行っても良い。
【0036】
本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、ブランクの外周縁部分及び飾り穴素孔の外縁の形状は、変形伸びを打ち消してフランジ成形後にディスクフランジ上端及び下端がそれぞれ軸方向にほぼ同じ高さとなる限り、フランジ成形の加工の程度によって応じてこれらの形状を変更することができる。
又、スポーク部や飾り穴の形状は限定されず、これらの個数も複数であれば制限はない。又、スポーク部の補強部の形状や個数も限定されない。さらに、スポーク部に軽量化のための穴が開口していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係るスポーク状ホイールディスクの製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】ディスクを示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車両用スチールホイールの一例を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態のディスクによるスポーク状ホイールディスクを示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態の変形例のディスクによるスポーク状ホイールディスクを示す斜視図である。
【図6】リムとディスクの嵌合部の別の実施形態を示す断面図である。
【図7】リムとディスクの嵌合部のさらに別の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0038】
10 ディスク
10a ハブ取付け部
10b、10b2 スポーク部
10c ディスクフランジ
11、11y 補強部
11a、11a2 第1補強部
11b、11b2 第2補強部
13、13y スポーク部の幅方向中央部
14 立上がり部
15 接合部
20 飾り穴
100 板状ブランク
100b スポーク部素形部
100e 板状ブランクの外周縁
100ea 飾り穴素孔に対向する外周縁部分
110 隆起部
200 飾り穴素孔
200e 飾り穴素孔の外縁のうち中央部を含む部分
C1 第1基準円
C2 第2基準円

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼ円形の板状ブランクにスポーク部の補強部の基となる隆起部を、ボルト孔より外周側に同心円上に複数個形成する予成形工程と、前記隆起部に複数の飾り穴素孔を開口し、隣接する前記飾り穴素孔同士との間にスポーク部素形部を形成する開口工程と、
前記飾り穴素孔が開口された前記板状ブランクの外周部をホイール軸方向とほぼ平行となるよう垂直に折り曲げてディスクフランジを形成し、得られた飾り穴の外縁で前記ディスクフランジの上端縁を構成させるディスクフランジ成形工程と、
前記スポーク部素形部に前記補強部を設けて前記スポーク部を形成するスポーク部成形工程と
を有するスポーク状ホイールディスクの製造方法。
【請求項2】
前記板状ブランクの外周縁のうち前記飾り穴素孔に対向する部分を、前記板状ブランクの外周縁のうち前記スポーク部素形部の先端部に対向する部分を通る第1基準円より径方向内側に実質的に凹ませて前記ディスクフランジ成形工程を行う請求項1に記載のスポーク状ホイールディスクの製造方法。
【請求項3】
前記飾り穴素孔の外縁のうち中央部を含む部分を、前記飾り穴素孔の外縁のうち最も外側に位置する部分を通る第2基準円より径方向内側に実質的に凹ませて前記ディスクフランジ成形工程を行う請求項1または2に記載のスポーク状ホイールディスクの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のスポーク状ホイールディスクの製造方法によって製造されたスポーク状ホイールディスクのディスクフランジの外周面を、リムの内周面に嵌合溶接してなるスポーク状ホイール。

【図1】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−113799(P2009−113799A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268178(P2008−268178)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)