スライドファスナー用ストリンガーおよびその製造方法
【課題】 ファスナーテープの一側縁に形成した経糸排除領域にファスナーエレメントを成形してファスナーストリンガーを一連の製造工程によって簡単に作製する。
【解決手段】 合成繊維糸からなる経糸２および緯糸３により織成してファスナーテープ１を作製し、このテープ１は一側縁５から経糸２複数本おいた内側に水溶性繊維糸４を経糸２として複数本配して織り込み、このテープ１をファスナーストリンガーを製造する過程における染色工程において水溶性繊維糸４を溶解して経糸排除領域１２を形成し、この経糸排除領域１２を利用してファスナーエレメント１３を成形してファスナーストリンガーを特別な加工を加えることなく簡単な一連の製造工程によって作製する。
【解決手段】 合成繊維糸からなる経糸２および緯糸３により織成してファスナーテープ１を作製し、このテープ１は一側縁５から経糸２複数本おいた内側に水溶性繊維糸４を経糸２として複数本配して織り込み、このテープ１をファスナーストリンガーを製造する過程における染色工程において水溶性繊維糸４を溶解して経糸排除領域１２を形成し、この経糸排除領域１２を利用してファスナーエレメント１３を成形してファスナーストリンガーを特別な加工を加えることなく簡単な一連の製造工程によって作製する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
この発明は、スライドファスナーにおけるファスナーエレメントを装着する部分に間隙部分を形成したファスナーテープにファスナーエレメントを成形したスライドファスナーの素材であるファスナーストリンガーおよびそのファスナーストリンガーを製造するための製造方法に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、ファスナーテープの側縁に沿って貫通孔を設け、この貫通孔部分に熱可塑性樹脂製のファスナーエレメントを射出成形加工によって取り付けたスライドファスナーが知られている。例えば図１０に示すように、ポリエステル繊維糸またはポリエステル繊維と天然繊維との混紡糸を経糸と緯糸に用いてファスナーテープを織成し、このテープの所定位置に超音波加工によって等間隔で貫通孔を穿孔し、貫通孔の内周面は溶着凝固面として形成され、この貫通孔にポリアミド樹脂のファスナーエレメントを射出成形加工によって形成し、ファスナーエレメントの上下脚部は貫通孔を介して連結されたスライドファスナーが知られている。
【特許文献１】実公昭６１−３５０４９号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００３】
前述の図１０に示すスライドファスナーは、ファスナーテープに熱可塑性樹脂のファスナーエレメントを射出成形加工によって取り付けるものであり、その手順、工程が複雑で作製に時間を要し、面倒である。たとえばファスナーテープには必ず合成繊維糸を用いなければならない。また貫通孔を穿孔するのに、特殊な装置が必要であり、溶着凝固させるのに時間がかかり、かつファスナーエレメントを射出成形する際には、位置合わせを正確に行わなければならないから面倒であるなど問題点がある。
【０００４】
この発明は、上述の問題点を考慮して発明されたものであり、請求項１記載の発明は、ファスナーテープに用いる糸は必ずしも合成繊維糸を用いる必要がなく、綿糸であってもよい。ファスナーテープの一側縁から一定の位置内側で所定の幅で経糸を除去した空隙部分すなわち緯糸のみが残存する目の粗い経糸排除領域を形成し、この経糸排除領域に熱可塑性樹脂または亜鉛合金などの金属のファスナーエレメントを成形したスライドファスナー用ストリンガーを提供することが主たる目的である。
【０００５】
請求項２乃至５記載の発明は、それぞれ請求項１記載の発明の目的に加え、熱可塑性樹脂または亜鉛合金などの金属のファスナーエレメントをファスナーテープに体裁よくかつ強固に成形加工によって取付けたスライドファスナー用ストリンガーを提供することが目的である。
【０００６】
請求項６記載の発明は、ファスナーテープの一側縁に沿った部位に経糸として水溶性繊維糸を織り込む織成工程、織成されたテープを熱処理して形態の安定化を図るヒートセット工程、テープを染色するとともに、水溶性繊維糸を溶解して経糸排除領域を形成する染色工程、経糸の排除領域に熱可塑性樹脂または亜鉛合金などの金属から形成するファスナーエレメントを成形する成形工程からなるスライドファスナー用ストリンガーの製造方法を提供することが主たる目的である。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
前記の目的を達成するため、この発明のうち請求項１記載の発明は、ファスナーテープ１の一側縁５から経糸複数本おいた内側に経糸２を除去した経糸排除領域１２を設け、この排除領域１２に熱可塑性樹脂または亜鉛合金などの金属のファスナーエレメント１３を成形したスライドファスナー用ストリンガーを主な構成とするものである。
【０００８】
請求項２記載の発明は、請求項１記載の発明の構成に加え、ファスナーテープ１の一側縁５と経糸を除去した経糸排除領域１２との間にファスナーエレメント固定用の芯紐６を配設したスライドファスナー用ストリンガーである。
【０００９】
請求項３記載の発明は、請求項２記載の発明の構成に加え、ファスナーエレメント固定用の芯紐６と経糸を除去した経糸排除領域１２との間に係止２を介在したスライドファスナー用ストリンガーである。
【００１０】
請求項４記載の発明は、請求項１記載の発明の構成に加え、熱可塑性樹脂または亜鉛合金などの金属を成形したファスナーエレメント１３は噛合頭部１４と脚部１５とを一体に形成し、噛合頭部１４はファスナーテープ１の一側縁５から外側に配し、脚部１５は経糸を除去した経糸排除領域１２を表裏に貫いて設けたスライドファスナー用ストリンガーである。
【００１１】
請求項５記載の発明は、請求項１記載の発明の構成に加え、ファスナーエレメント１３の脚部１５は経糸を除去した経糸排除領域１２に残存する緯糸３を表裏面で跨るように形成し、脚部１５の先端部１６をファスナーテープ１の内側の経糸２に付着させたスライドファスナー用ストリンガーである。
【００１２】
請求項６記載の発明は、所定寸法の幅のファスナーテープ１における一側縁５から内側へ入った部位の経糸２として水溶性繊維糸４例えば水溶性ビニロンから形成した経糸２を複数本配して織成する織成工程Ａ、該ファスナーテープ１を熱処理するヒートセット工程Ｂ、ファスナーテープ１を染色するとともに水溶性繊維糸４を溶解して経糸を除去した経糸排除領域１２を形成する染色工程Ｃ、該経糸排除領域１２に熱可塑性樹脂または亜鉛合金などの金属のファスナーエレメント１３を成形する成形工程Ｄからなるスライドファスナー用ストリンガーの製造方法を主な構成とするものである。
【発明の効果】
【００１３】
この出願の発明の効果として、請求項１記載の発明は、ファスナーテープの一側縁から経糸複数本おいた内側に経糸を除去した経糸排除領域を設け、該排除領域にファスナーエレメントを成形したことによって、スライドファスナーの素材であるファスナーストリンガーを簡単に作製することができ、しかもファスナーエレメントをファスナーテープに強固に取り付け品質のよいファスナーストリンガーに仕上げることができる効果がある。
【００１４】
請求項２記載の発明は、請求項１記載の発明の効果に加え、ファスナーテープの一側縁と経糸排除領域との間に芯紐を配したことによって、ファスナーテープの側縁へ熱可塑性樹脂または亜鉛合金などの金属からなるファスナーエレメントを強固に成形固定することができる効果がある。
【００１５】
請求項３記載の発明は、請求項２記載の発明の効果に加え、芯紐と経糸排除領域との間に経糸を介在したことによって、ファスナーテープの側縁へ配した芯紐が目ずれを惹起せず安定した状態で保持でき、熱可塑性樹脂または亜鉛合金などの金属のファスナーエレメントを的確に成形し、強度のあるファスナーストリンガーに仕上げることができる効果がある。
【００１６】
請求項４記載の発明は、請求項１記載の発明の効果に加え、ファスナーエレメントは噛合頭部と脚部とを一体に形成し、噛合頭部はファスナーテープの一側縁から外側に配し、脚部は経糸排除領域を貫設したことによって、ファスナーエレメントの噛合頭部と脚部とが一体で噛合頭部がファスナーテープの外側に正確に位置させるため、脚部をファスナーテープの経糸を除去した排除領域において表裏に貫通する形に成形し、的確に保持できる効果がある。
【００１７】
請求項５記載の発明は、請求項１記載の発明の効果に加え、脚部は経糸排除領域に残存する緯糸を表裏面で跨乗し、脚部先端部を経糸に付着させたことによって、ファスナーエレメントの脚部が整然と配された緯糸に密着させ、かつ先端は排除領域に面した経糸に密着し、脚部の移動を防ぎ頑丈なファスナーストリンガーに仕上げることができる効果がある。
【００１８】
請求項６記載の発明は、所定幅のファスナーテープの一側縁に沿って経糸として水溶性繊維糸を配して織成する織成工程、該テープを熱処理するヒートセット工程、テープを染色すると同時に水溶性繊維糸を溶解して経糸排除領域を形成する染色工程、該排除領域を利用してファスナーエレメントを成形する成形工程から形成したことによって、ファスナーテープの一側縁から内側へ入った部位に経糸排除領域を簡単に形成し、この排除領域へ熱可塑性樹脂または亜鉛合金などの金属を成形してファスナーエレメントを形成した堅牢で安定したエレメントを取り付けたスライドファスナー用ストリンガーを特別な加工装置を用いることなく、通常用いる装置を利用して簡単に製造できる工程より達成できる効果があるなど、この発明が奏する効果はきわめて顕著である。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１９】
この発明におけるスライドファスナー用ストリンガーおよびその製造方法について説明すると、スライドファスナー用ストリンガーは、図１に示すようにポリエステル繊維あるいはポリアミド繊維のマルチフィラメントを経糸２および緯糸３に用い、緯糸３はダブルピックでニードル織成によってファスナーテープ１を作製する。このファスナーテープ１は一側縁５から経糸２複数本おいた内側に経糸２がない部分、すなわち経糸２を除去した経糸排除領域１２を形成し、この経糸排除領域は複数本の経糸２を除去し緯糸３のみが残存する。経糸排除領域１２にはポリアミド、ポリアセタールなどの熱可塑性樹脂を用いて射出成形加工によってファスナーエレメント１３の脚部１５を残存する緯糸３上に表裏密着する形に一定ピッチで成形して図７に示すファスナーストリンガーを作製する。また経糸排除領域１２に亜鉛合金またはアルミニウム合金などの金属を用いてダイカスト成形加工によってファスナーエレメント１３を形成しファスナーストリンガーを作製する。なお、一側縁５から経糸排除領域１２間に存在する複数本の経糸２は、経糸排除領域１２に成形するファスナーエレメント１３によって被覆し成形されるので、十分な取り付け強度によって固定される。
【００２０】
ファスナーテープ１に経糸排除領域１２を形成する手段は、ファスナーテープ１を図２に示すようにテープ１の一側縁５から経糸２を複数本おいた内側に、経糸２として水溶性繊維糸４、例えば水溶性ビニロンを複数本配して織成する。また図４，６に示す芯紐６を配したタイプのファスナーテープ１を織成することもできる。織成されたファスナーテープ１は製造過程における染色工程において水溶性繊維糸４としての経糸が染色液中に溶解して取り除かれ経糸排除領域１２が形成される。
【００２１】
スライドファスナー用ストリンガーの製造方法は、最初に図２に示すファスナーテープ１を経糸２と緯糸３とによりダブルピックでニードル織成し、このときファスナーテープ１の側縁５から経糸２を複数本おいた内側に経糸２として水溶性繊維糸４を複数本配して織成する。この織成工程においては図４，６に示す芯紐６を用いたタイプのファスナーテープ１を織成することもできる。次に織成されたファスナーテープ１を乾熱によって熱処理するヒートセット工程でファスナーテープ１における目ずれなどを防ぎ形態の安定化を図る。この後ファスナーテープ１は染色工程に送られ、染色液の中へファスナーテープ１を通して水溶性繊維糸４を染色液中に溶解させ、ファスナーテープ１に経糸２が存在しない経糸排除領域１２を形成する。
【００２２】
経糸排除領域１２を形成したファスナーテープ１は次に成形工程へ送られ、経糸排除領域１２にポリアセタール、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂を用いて射出成形加工によってファスナーエレメント１３を一定ピッチで成形して図７に示すファスナーストリンガーを作製する。また成形工程においては排除領域１２に亜鉛合金またはアルミニウム合金などの金属を用いてダイカスト成形加工によってファスナーエレメント１３を形成してファスナーストリンガーを作製することもできる。この発明のファスナーストリンガーの製造方法は、図８に示すように、織成工程、ヒートセット工程、染色工程、成形工程を経てファスナーストリンガーが作製される。作製されたファスナーストリンガーは所定の長さにカットし、左右のファスナーストリンガーに上下止め具または開き具を取り付け、スライダーを挿通して、各種タイプのスライドファスナーに仕上げるものである。
【実施例１】
【００２３】
図１に示す実施例１のスライドファスナー用ストリンガーは、ポリエステル繊維またはポリアミド繊維のマルチフィラメント糸から形成した経糸２と緯糸３とによって織成する。緯糸３はダブルピックのニードル織成でファスナーテープ１を作製し、ファスナーテープ１は側縁５から経糸２複数本おいた内側に緯糸３のみが存在する経糸排除領域１２を経糸２複数本を除去した緯糸３残存部分を設ける。この経糸排除領域１２にポリアセタールまたはポリアミドなどの熱可塑性樹脂を用いて適宜形状のファスナーエレメント１３を射出成形する。ファスナーエレメント１３は噛合頭部１４がファスナーテープ１の側縁５から外側へ突出し、脚部１５および脚部先端部１６が経糸排除領域１２に存在する緯糸３および経糸排除領域１２に面した経糸２を表裏から密着する形で成形し固定して図７に示すファスナーストリンガーを形成する。
【００２４】
ファスナーテープ１は、図２に示すように経糸２およびダブルピックの緯糸３は太さが３３０デシテックスで適宜の織組織、例えば杉綾組織で織成する。ファスナーテープ１の側縁５から経糸２数本おいた内側に１２２０デシテックスの水溶性ビニロンからなる水溶性繊維糸４を複数本経糸として配したものである。この水溶性繊維糸４は７０℃の水中で溶解できるので、ファスナーテープ１を染色する段階で溶解する。
【実施例２】
【００２５】
図３に示す実施例２のスライドファスナー用ストリンガーは、ポリエステル繊維またはポリアミド繊維のマルチフィラメント糸から形成した経糸２と緯糸３とによって織成する。緯糸３はダブルピックのニードル織成でファスナーテープ１を作製し、ファスナーテープ１は側縁５に径の太い芯紐６を織り込む。芯紐６は芯部に数本のポリエステル繊維またはポリアミド繊維のマルチフィラメント糸を用い、その周囲を同種のマルチフィラメント糸で編組して芯紐６を作製する。ファスナーテープ１はこの芯紐６に隣接して緯糸３のみが存在する経糸排除領域１２を経糸２複数本に相当する部分に設ける。この経糸排除領域１２にポリアセタールまたはポリアミドなどの熱可塑性樹脂を用いて適宜形状のファスナーエレメント１３を射出成形する。
【００２６】
ファスナーエレメント１３は噛合頭部１４がファスナーテープ１の外縁５から外側へ突出し、脚部１５は芯紐６を包囲し、かつ脚部１５および先端部１６が経糸排除領域１２に存在する緯糸３および係止排除領域１２に面した経糸２を表裏から密着する形で成形し固定して、図７に示すファスナーストリンガーを形成する。ファスナーテープ１は図４に示すように、側縁５に配した芯紐６に隣接して水溶性繊維糸４の水溶性ビニロンを複数本経糸として配したものである。
【実施例３】
【００２７】
図５に示す実施例３のスライドファスナー用ストリンガーは、ポリエステル繊維またはポリアミド繊維のマルチフィラメント糸から形成した経糸２と緯糸３とによって織成する。緯糸３はダブルピックのニードル織成によってファスナーテープ１を作製し、ファスナーテープ１は側縁５に径の細い芯紐６を表裏両面へ織り込む、芯紐６は芯部に１本のポリエステル繊維またはポリアミド繊維のマルチフィラメント糸を用い、その周囲を同種のマルチフィラメント糸で編組して芯紐６を作製する。ファスナーテープ１は、この芯紐６に隣接して経糸２を配し、この経糸２に隣接して緯糸３のみが存在する経糸排除領域１２を経糸２複数本に相当する部分に設ける。この経糸排除領域１２にポリアセタールまたはポリアミドなどの熱可塑性樹脂を用いて適宜形状のファスナーエレメント１３を射出成形する。ファスナーエレメント１３は噛合頭部１４がファスナーテープ１の側縁５から外側へ突出し、脚部１５は芯紐６を包囲し、かつ脚部１５および先端部１６が経糸排除領域１２に存在する緯糸３および経糸排除領域１２に面した内側の経糸２を表裏から密着する形で成形し固定して図７に示すファスナーストリンガーを形成する。ファスナーテープ１は図６に示すように側縁５の表裏に配した芯紐６に隣接して水溶性繊維糸４の水溶性ビニロンを複数本経糸として配したものである。
【実施例４】
【００２８】
前記各実施例で示したスライドファスナー用ストリンガーを製造する方法について説明すると、ファスナーストリンガーの製造方法は図８に示す製造工程に基づいて作製できる。最初に織成工程においては、ポリエステル繊維またはポリアミド繊維のマルチフィラメント糸から形成された３３０デシテックスの経糸２を所定のファスナーテープ１の幅１３〜１６ｍｍに整経し、この際側縁５の経糸２から複数本内側へ入った部位に１２２０デシテックスの水溶性繊維糸４例えば水溶性ビニロンを配し、また側縁５に径の太い芯紐６例えば芯部に数本のポリエステル繊維またはポリアミド繊維のマルチフィラメント糸を用い、その周囲に同種のマルチフィラメント糸によって編組した芯紐６を配するか、または側縁５に径の細い芯紐６例えば芯部に１本のポリエステル繊維またはポリアミド繊維のマルチフィラメント糸の周りを同種のマルチフィラメント糸によって編組した芯紐６を上下に配し、整径された経糸２および水溶性繊維糸４また芯紐６にニードル織成によるダブルピックで経糸２と同種の緯糸３を緯入れして、適宜の織組織例えば杉綾組織によって図２，４，６に示すようにファスナーテープ１を織成する。
【００２９】
織成されたファスナーテープ１は、次の工程のヒートセット工程に送られ、ここで１８０℃前後の乾熱によって熱処理し、ファスナーテープ１の糸の風合いをよくし、かつ形態の安定化を図る。その後ファスナーテープ１は染色工程に送られ、１３０℃前後の染色液でファスナーテープ１は染色され、同時に水溶性ビニロンからなる水溶性繊維糸４に染色液に溶けて、例えば図９に示すように図６に示したファスナーテープ１に織り込まれた水溶性繊維糸４が溶解して緯糸３のみが残存する経糸排除領域１２が形成されたファスナーテープ１が染色される。
【００３０】
染色されたファスナーテープ１は、ファスナーエレメント１３を成形するため、成形工程へ送られる。成形工程ではファスナーテープ１に形成された経糸排除領域１２に対して、ポリアセタールまたはポリアミドなどの熱可塑性樹脂を射出成形手段によって、各種の形状のファスナーエレメント１３を成形して図７に示す樹脂製のファスナーストリンガーを作製する。
【００３１】
また成形工程では、ファスナーテープ１に形成された経糸排除領域１２へ亜鉛合金またはアルミニウム合金などの金属をダイカスト成形手段によってファスナーエレメント１３を成形して金属製のファスナーストリンガーを作製することもできる。
【００３２】
ファスナーストリンガーは最後は、所定長さにカットされ、カットされた前後に上下止め具を装着するか、開き具を装着して左右のファスナーストリンガーを組み合わせてスライダーを挿通してスライドファスナーを完成させる。
【産業上の利用可能性】
【００３３】
この発明のスライドファスナー用ストリンガーは、熱可塑性樹脂などをテープ側縁に対して射出成形してファスナーエレメントを形成し、エレメントは脚部がテープを貫通する状態であり、堅牢なスライドファスナーに仕上げられ、衣服は勿論、力が加わる商品バッグその他各種のケースなどのスライドファスナーとして活用する。
【図面の簡単な説明】
【００３４】
【図１】ファスナーテープで経糸排除領域にファスナーエレメントを成形した状態の正面図である。
【図２】水溶性繊維糸を配したファスナーテープの正面図である。
【図３】ファスナーテープで経糸排除領域にファスナーエレメントを成形した状態の正面図である。
【図４】芯紐を配したファスナーテープの正面図である。
【図５】ファスナーテープで経糸排除領域にファスナーエレメントを成形した状態の正面図である。
【図６】他の芯紐を配したファスナーテープの正面図である。
【図７】ファスナーストリンガーの正面図である。
【図８】ファスナーストリンガーの製造工程を示す工程図である。
【図９】ファスナーテープの経糸排除領域を示す正面図である。
【図１０】公知のファスナーテープの正面図である。
【符号の説明】
【００３５】
１ ファスナーテープ
２ 経糸
３ 緯糸
４ 水溶性繊維糸
５ 側縁
６ 芯紐
１２ 経糸排除領域
１３ ファスナーエレメント
１４ 噛合頭部
１５ 脚部
１６ 脚部先端部
【技術分野】
【０００１】
この発明は、スライドファスナーにおけるファスナーエレメントを装着する部分に間隙部分を形成したファスナーテープにファスナーエレメントを成形したスライドファスナーの素材であるファスナーストリンガーおよびそのファスナーストリンガーを製造するための製造方法に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、ファスナーテープの側縁に沿って貫通孔を設け、この貫通孔部分に熱可塑性樹脂製のファスナーエレメントを射出成形加工によって取り付けたスライドファスナーが知られている。例えば図１０に示すように、ポリエステル繊維糸またはポリエステル繊維と天然繊維との混紡糸を経糸と緯糸に用いてファスナーテープを織成し、このテープの所定位置に超音波加工によって等間隔で貫通孔を穿孔し、貫通孔の内周面は溶着凝固面として形成され、この貫通孔にポリアミド樹脂のファスナーエレメントを射出成形加工によって形成し、ファスナーエレメントの上下脚部は貫通孔を介して連結されたスライドファスナーが知られている。
【特許文献１】実公昭６１−３５０４９号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００３】
前述の図１０に示すスライドファスナーは、ファスナーテープに熱可塑性樹脂のファスナーエレメントを射出成形加工によって取り付けるものであり、その手順、工程が複雑で作製に時間を要し、面倒である。たとえばファスナーテープには必ず合成繊維糸を用いなければならない。また貫通孔を穿孔するのに、特殊な装置が必要であり、溶着凝固させるのに時間がかかり、かつファスナーエレメントを射出成形する際には、位置合わせを正確に行わなければならないから面倒であるなど問題点がある。
【０００４】
この発明は、上述の問題点を考慮して発明されたものであり、請求項１記載の発明は、ファスナーテープに用いる糸は必ずしも合成繊維糸を用いる必要がなく、綿糸であってもよい。ファスナーテープの一側縁から一定の位置内側で所定の幅で経糸を除去した空隙部分すなわち緯糸のみが残存する目の粗い経糸排除領域を形成し、この経糸排除領域に熱可塑性樹脂または亜鉛合金などの金属のファスナーエレメントを成形したスライドファスナー用ストリンガーを提供することが主たる目的である。
【０００５】
請求項２乃至５記載の発明は、それぞれ請求項１記載の発明の目的に加え、熱可塑性樹脂または亜鉛合金などの金属のファスナーエレメントをファスナーテープに体裁よくかつ強固に成形加工によって取付けたスライドファスナー用ストリンガーを提供することが目的である。
【０００６】
請求項６記載の発明は、ファスナーテープの一側縁に沿った部位に経糸として水溶性繊維糸を織り込む織成工程、織成されたテープを熱処理して形態の安定化を図るヒートセット工程、テープを染色するとともに、水溶性繊維糸を溶解して経糸排除領域を形成する染色工程、経糸の排除領域に熱可塑性樹脂または亜鉛合金などの金属から形成するファスナーエレメントを成形する成形工程からなるスライドファスナー用ストリンガーの製造方法を提供することが主たる目的である。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
前記の目的を達成するため、この発明のうち請求項１記載の発明は、ファスナーテープ１の一側縁５から経糸複数本おいた内側に経糸２を除去した経糸排除領域１２を設け、この排除領域１２に熱可塑性樹脂または亜鉛合金などの金属のファスナーエレメント１３を成形したスライドファスナー用ストリンガーを主な構成とするものである。
【０００８】
請求項２記載の発明は、請求項１記載の発明の構成に加え、ファスナーテープ１の一側縁５と経糸を除去した経糸排除領域１２との間にファスナーエレメント固定用の芯紐６を配設したスライドファスナー用ストリンガーである。
【０００９】
請求項３記載の発明は、請求項２記載の発明の構成に加え、ファスナーエレメント固定用の芯紐６と経糸を除去した経糸排除領域１２との間に係止２を介在したスライドファスナー用ストリンガーである。
【００１０】
請求項４記載の発明は、請求項１記載の発明の構成に加え、熱可塑性樹脂または亜鉛合金などの金属を成形したファスナーエレメント１３は噛合頭部１４と脚部１５とを一体に形成し、噛合頭部１４はファスナーテープ１の一側縁５から外側に配し、脚部１５は経糸を除去した経糸排除領域１２を表裏に貫いて設けたスライドファスナー用ストリンガーである。
【００１１】
請求項５記載の発明は、請求項１記載の発明の構成に加え、ファスナーエレメント１３の脚部１５は経糸を除去した経糸排除領域１２に残存する緯糸３を表裏面で跨るように形成し、脚部１５の先端部１６をファスナーテープ１の内側の経糸２に付着させたスライドファスナー用ストリンガーである。
【００１２】
請求項６記載の発明は、所定寸法の幅のファスナーテープ１における一側縁５から内側へ入った部位の経糸２として水溶性繊維糸４例えば水溶性ビニロンから形成した経糸２を複数本配して織成する織成工程Ａ、該ファスナーテープ１を熱処理するヒートセット工程Ｂ、ファスナーテープ１を染色するとともに水溶性繊維糸４を溶解して経糸を除去した経糸排除領域１２を形成する染色工程Ｃ、該経糸排除領域１２に熱可塑性樹脂または亜鉛合金などの金属のファスナーエレメント１３を成形する成形工程Ｄからなるスライドファスナー用ストリンガーの製造方法を主な構成とするものである。
【発明の効果】
【００１３】
この出願の発明の効果として、請求項１記載の発明は、ファスナーテープの一側縁から経糸複数本おいた内側に経糸を除去した経糸排除領域を設け、該排除領域にファスナーエレメントを成形したことによって、スライドファスナーの素材であるファスナーストリンガーを簡単に作製することができ、しかもファスナーエレメントをファスナーテープに強固に取り付け品質のよいファスナーストリンガーに仕上げることができる効果がある。
【００１４】
請求項２記載の発明は、請求項１記載の発明の効果に加え、ファスナーテープの一側縁と経糸排除領域との間に芯紐を配したことによって、ファスナーテープの側縁へ熱可塑性樹脂または亜鉛合金などの金属からなるファスナーエレメントを強固に成形固定することができる効果がある。
【００１５】
請求項３記載の発明は、請求項２記載の発明の効果に加え、芯紐と経糸排除領域との間に経糸を介在したことによって、ファスナーテープの側縁へ配した芯紐が目ずれを惹起せず安定した状態で保持でき、熱可塑性樹脂または亜鉛合金などの金属のファスナーエレメントを的確に成形し、強度のあるファスナーストリンガーに仕上げることができる効果がある。
【００１６】
請求項４記載の発明は、請求項１記載の発明の効果に加え、ファスナーエレメントは噛合頭部と脚部とを一体に形成し、噛合頭部はファスナーテープの一側縁から外側に配し、脚部は経糸排除領域を貫設したことによって、ファスナーエレメントの噛合頭部と脚部とが一体で噛合頭部がファスナーテープの外側に正確に位置させるため、脚部をファスナーテープの経糸を除去した排除領域において表裏に貫通する形に成形し、的確に保持できる効果がある。
【００１７】
請求項５記載の発明は、請求項１記載の発明の効果に加え、脚部は経糸排除領域に残存する緯糸を表裏面で跨乗し、脚部先端部を経糸に付着させたことによって、ファスナーエレメントの脚部が整然と配された緯糸に密着させ、かつ先端は排除領域に面した経糸に密着し、脚部の移動を防ぎ頑丈なファスナーストリンガーに仕上げることができる効果がある。
【００１８】
請求項６記載の発明は、所定幅のファスナーテープの一側縁に沿って経糸として水溶性繊維糸を配して織成する織成工程、該テープを熱処理するヒートセット工程、テープを染色すると同時に水溶性繊維糸を溶解して経糸排除領域を形成する染色工程、該排除領域を利用してファスナーエレメントを成形する成形工程から形成したことによって、ファスナーテープの一側縁から内側へ入った部位に経糸排除領域を簡単に形成し、この排除領域へ熱可塑性樹脂または亜鉛合金などの金属を成形してファスナーエレメントを形成した堅牢で安定したエレメントを取り付けたスライドファスナー用ストリンガーを特別な加工装置を用いることなく、通常用いる装置を利用して簡単に製造できる工程より達成できる効果があるなど、この発明が奏する効果はきわめて顕著である。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１９】
この発明におけるスライドファスナー用ストリンガーおよびその製造方法について説明すると、スライドファスナー用ストリンガーは、図１に示すようにポリエステル繊維あるいはポリアミド繊維のマルチフィラメントを経糸２および緯糸３に用い、緯糸３はダブルピックでニードル織成によってファスナーテープ１を作製する。このファスナーテープ１は一側縁５から経糸２複数本おいた内側に経糸２がない部分、すなわち経糸２を除去した経糸排除領域１２を形成し、この経糸排除領域は複数本の経糸２を除去し緯糸３のみが残存する。経糸排除領域１２にはポリアミド、ポリアセタールなどの熱可塑性樹脂を用いて射出成形加工によってファスナーエレメント１３の脚部１５を残存する緯糸３上に表裏密着する形に一定ピッチで成形して図７に示すファスナーストリンガーを作製する。また経糸排除領域１２に亜鉛合金またはアルミニウム合金などの金属を用いてダイカスト成形加工によってファスナーエレメント１３を形成しファスナーストリンガーを作製する。なお、一側縁５から経糸排除領域１２間に存在する複数本の経糸２は、経糸排除領域１２に成形するファスナーエレメント１３によって被覆し成形されるので、十分な取り付け強度によって固定される。
【００２０】
ファスナーテープ１に経糸排除領域１２を形成する手段は、ファスナーテープ１を図２に示すようにテープ１の一側縁５から経糸２を複数本おいた内側に、経糸２として水溶性繊維糸４、例えば水溶性ビニロンを複数本配して織成する。また図４，６に示す芯紐６を配したタイプのファスナーテープ１を織成することもできる。織成されたファスナーテープ１は製造過程における染色工程において水溶性繊維糸４としての経糸が染色液中に溶解して取り除かれ経糸排除領域１２が形成される。
【００２１】
スライドファスナー用ストリンガーの製造方法は、最初に図２に示すファスナーテープ１を経糸２と緯糸３とによりダブルピックでニードル織成し、このときファスナーテープ１の側縁５から経糸２を複数本おいた内側に経糸２として水溶性繊維糸４を複数本配して織成する。この織成工程においては図４，６に示す芯紐６を用いたタイプのファスナーテープ１を織成することもできる。次に織成されたファスナーテープ１を乾熱によって熱処理するヒートセット工程でファスナーテープ１における目ずれなどを防ぎ形態の安定化を図る。この後ファスナーテープ１は染色工程に送られ、染色液の中へファスナーテープ１を通して水溶性繊維糸４を染色液中に溶解させ、ファスナーテープ１に経糸２が存在しない経糸排除領域１２を形成する。
【００２２】
経糸排除領域１２を形成したファスナーテープ１は次に成形工程へ送られ、経糸排除領域１２にポリアセタール、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂を用いて射出成形加工によってファスナーエレメント１３を一定ピッチで成形して図７に示すファスナーストリンガーを作製する。また成形工程においては排除領域１２に亜鉛合金またはアルミニウム合金などの金属を用いてダイカスト成形加工によってファスナーエレメント１３を形成してファスナーストリンガーを作製することもできる。この発明のファスナーストリンガーの製造方法は、図８に示すように、織成工程、ヒートセット工程、染色工程、成形工程を経てファスナーストリンガーが作製される。作製されたファスナーストリンガーは所定の長さにカットし、左右のファスナーストリンガーに上下止め具または開き具を取り付け、スライダーを挿通して、各種タイプのスライドファスナーに仕上げるものである。
【実施例１】
【００２３】
図１に示す実施例１のスライドファスナー用ストリンガーは、ポリエステル繊維またはポリアミド繊維のマルチフィラメント糸から形成した経糸２と緯糸３とによって織成する。緯糸３はダブルピックのニードル織成でファスナーテープ１を作製し、ファスナーテープ１は側縁５から経糸２複数本おいた内側に緯糸３のみが存在する経糸排除領域１２を経糸２複数本を除去した緯糸３残存部分を設ける。この経糸排除領域１２にポリアセタールまたはポリアミドなどの熱可塑性樹脂を用いて適宜形状のファスナーエレメント１３を射出成形する。ファスナーエレメント１３は噛合頭部１４がファスナーテープ１の側縁５から外側へ突出し、脚部１５および脚部先端部１６が経糸排除領域１２に存在する緯糸３および経糸排除領域１２に面した経糸２を表裏から密着する形で成形し固定して図７に示すファスナーストリンガーを形成する。
【００２４】
ファスナーテープ１は、図２に示すように経糸２およびダブルピックの緯糸３は太さが３３０デシテックスで適宜の織組織、例えば杉綾組織で織成する。ファスナーテープ１の側縁５から経糸２数本おいた内側に１２２０デシテックスの水溶性ビニロンからなる水溶性繊維糸４を複数本経糸として配したものである。この水溶性繊維糸４は７０℃の水中で溶解できるので、ファスナーテープ１を染色する段階で溶解する。
【実施例２】
【００２５】
図３に示す実施例２のスライドファスナー用ストリンガーは、ポリエステル繊維またはポリアミド繊維のマルチフィラメント糸から形成した経糸２と緯糸３とによって織成する。緯糸３はダブルピックのニードル織成でファスナーテープ１を作製し、ファスナーテープ１は側縁５に径の太い芯紐６を織り込む。芯紐６は芯部に数本のポリエステル繊維またはポリアミド繊維のマルチフィラメント糸を用い、その周囲を同種のマルチフィラメント糸で編組して芯紐６を作製する。ファスナーテープ１はこの芯紐６に隣接して緯糸３のみが存在する経糸排除領域１２を経糸２複数本に相当する部分に設ける。この経糸排除領域１２にポリアセタールまたはポリアミドなどの熱可塑性樹脂を用いて適宜形状のファスナーエレメント１３を射出成形する。
【００２６】
ファスナーエレメント１３は噛合頭部１４がファスナーテープ１の外縁５から外側へ突出し、脚部１５は芯紐６を包囲し、かつ脚部１５および先端部１６が経糸排除領域１２に存在する緯糸３および係止排除領域１２に面した経糸２を表裏から密着する形で成形し固定して、図７に示すファスナーストリンガーを形成する。ファスナーテープ１は図４に示すように、側縁５に配した芯紐６に隣接して水溶性繊維糸４の水溶性ビニロンを複数本経糸として配したものである。
【実施例３】
【００２７】
図５に示す実施例３のスライドファスナー用ストリンガーは、ポリエステル繊維またはポリアミド繊維のマルチフィラメント糸から形成した経糸２と緯糸３とによって織成する。緯糸３はダブルピックのニードル織成によってファスナーテープ１を作製し、ファスナーテープ１は側縁５に径の細い芯紐６を表裏両面へ織り込む、芯紐６は芯部に１本のポリエステル繊維またはポリアミド繊維のマルチフィラメント糸を用い、その周囲を同種のマルチフィラメント糸で編組して芯紐６を作製する。ファスナーテープ１は、この芯紐６に隣接して経糸２を配し、この経糸２に隣接して緯糸３のみが存在する経糸排除領域１２を経糸２複数本に相当する部分に設ける。この経糸排除領域１２にポリアセタールまたはポリアミドなどの熱可塑性樹脂を用いて適宜形状のファスナーエレメント１３を射出成形する。ファスナーエレメント１３は噛合頭部１４がファスナーテープ１の側縁５から外側へ突出し、脚部１５は芯紐６を包囲し、かつ脚部１５および先端部１６が経糸排除領域１２に存在する緯糸３および経糸排除領域１２に面した内側の経糸２を表裏から密着する形で成形し固定して図７に示すファスナーストリンガーを形成する。ファスナーテープ１は図６に示すように側縁５の表裏に配した芯紐６に隣接して水溶性繊維糸４の水溶性ビニロンを複数本経糸として配したものである。
【実施例４】
【００２８】
前記各実施例で示したスライドファスナー用ストリンガーを製造する方法について説明すると、ファスナーストリンガーの製造方法は図８に示す製造工程に基づいて作製できる。最初に織成工程においては、ポリエステル繊維またはポリアミド繊維のマルチフィラメント糸から形成された３３０デシテックスの経糸２を所定のファスナーテープ１の幅１３〜１６ｍｍに整経し、この際側縁５の経糸２から複数本内側へ入った部位に１２２０デシテックスの水溶性繊維糸４例えば水溶性ビニロンを配し、また側縁５に径の太い芯紐６例えば芯部に数本のポリエステル繊維またはポリアミド繊維のマルチフィラメント糸を用い、その周囲に同種のマルチフィラメント糸によって編組した芯紐６を配するか、または側縁５に径の細い芯紐６例えば芯部に１本のポリエステル繊維またはポリアミド繊維のマルチフィラメント糸の周りを同種のマルチフィラメント糸によって編組した芯紐６を上下に配し、整径された経糸２および水溶性繊維糸４また芯紐６にニードル織成によるダブルピックで経糸２と同種の緯糸３を緯入れして、適宜の織組織例えば杉綾組織によって図２，４，６に示すようにファスナーテープ１を織成する。
【００２９】
織成されたファスナーテープ１は、次の工程のヒートセット工程に送られ、ここで１８０℃前後の乾熱によって熱処理し、ファスナーテープ１の糸の風合いをよくし、かつ形態の安定化を図る。その後ファスナーテープ１は染色工程に送られ、１３０℃前後の染色液でファスナーテープ１は染色され、同時に水溶性ビニロンからなる水溶性繊維糸４に染色液に溶けて、例えば図９に示すように図６に示したファスナーテープ１に織り込まれた水溶性繊維糸４が溶解して緯糸３のみが残存する経糸排除領域１２が形成されたファスナーテープ１が染色される。
【００３０】
染色されたファスナーテープ１は、ファスナーエレメント１３を成形するため、成形工程へ送られる。成形工程ではファスナーテープ１に形成された経糸排除領域１２に対して、ポリアセタールまたはポリアミドなどの熱可塑性樹脂を射出成形手段によって、各種の形状のファスナーエレメント１３を成形して図７に示す樹脂製のファスナーストリンガーを作製する。
【００３１】
また成形工程では、ファスナーテープ１に形成された経糸排除領域１２へ亜鉛合金またはアルミニウム合金などの金属をダイカスト成形手段によってファスナーエレメント１３を成形して金属製のファスナーストリンガーを作製することもできる。
【００３２】
ファスナーストリンガーは最後は、所定長さにカットされ、カットされた前後に上下止め具を装着するか、開き具を装着して左右のファスナーストリンガーを組み合わせてスライダーを挿通してスライドファスナーを完成させる。
【産業上の利用可能性】
【００３３】
この発明のスライドファスナー用ストリンガーは、熱可塑性樹脂などをテープ側縁に対して射出成形してファスナーエレメントを形成し、エレメントは脚部がテープを貫通する状態であり、堅牢なスライドファスナーに仕上げられ、衣服は勿論、力が加わる商品バッグその他各種のケースなどのスライドファスナーとして活用する。
【図面の簡単な説明】
【００３４】
【図１】ファスナーテープで経糸排除領域にファスナーエレメントを成形した状態の正面図である。
【図２】水溶性繊維糸を配したファスナーテープの正面図である。
【図３】ファスナーテープで経糸排除領域にファスナーエレメントを成形した状態の正面図である。
【図４】芯紐を配したファスナーテープの正面図である。
【図５】ファスナーテープで経糸排除領域にファスナーエレメントを成形した状態の正面図である。
【図６】他の芯紐を配したファスナーテープの正面図である。
【図７】ファスナーストリンガーの正面図である。
【図８】ファスナーストリンガーの製造工程を示す工程図である。
【図９】ファスナーテープの経糸排除領域を示す正面図である。
【図１０】公知のファスナーテープの正面図である。
【符号の説明】
【００３５】
１ ファスナーテープ
２ 経糸
３ 緯糸
４ 水溶性繊維糸
５ 側縁
６ 芯紐
１２ 経糸排除領域
１３ ファスナーエレメント
１４ 噛合頭部
１５ 脚部
１６ 脚部先端部
【特許請求の範囲】
【請求項１】
ファスナーテープ１の一側縁５から経糸複数本おいた内側に経糸２を除去した経糸排除領域１２を設け、該排除領域１２にファスナーエレメント１３を成形してなることを特徴とするスライドファスナー用ストリンガー。
【請求項２】
ファスナーテープ１の側縁５と経糸排除領域１２との間に芯紐６を配してなる請求項１記載のスライドファスナー用ストリンガー。
【請求項３】
芯紐６と経糸排除領域１２との間に経糸２を介在してなる請求項２記載のスライドファスナー用ストリンガー。
【請求項４】
ファスナーエレメント１３は噛合頭部１４と脚部１５とを一体に形成し、噛合頭部１４はファスナーテープ１の一側縁５から外側に配し、脚部１５は経糸排除領域１２を貫設してなる請求項１記載のスライドファスナー用ストリンガー。
【請求項５】
脚部１５は経糸排除領域１２に残存する緯糸３を表裏面で跨乗し、脚部先端部１６を経糸２に付着させてなる請求項１記載のスライドファスナー用ストリンガー。
【請求項６】
所定幅のファスナーテープ１の一側縁５に沿って経糸２として水溶性繊維糸４を配して織成する織成工程Ａ、該テープ１を熱処理するヒートセット工程Ｂ、ファスナーテープ１を染色すると同時に水溶性繊維糸４を溶解して経糸排除領域１２を形成する染色工程Ｃ、該経糸排除領域１２を利用してファスナーエレメント１３を成形する成形工程Ｄからなることを特徴とするスライドファスナー用ストリンガーの製造方法。
【請求項１】
ファスナーテープ１の一側縁５から経糸複数本おいた内側に経糸２を除去した経糸排除領域１２を設け、該排除領域１２にファスナーエレメント１３を成形してなることを特徴とするスライドファスナー用ストリンガー。
【請求項２】
ファスナーテープ１の側縁５と経糸排除領域１２との間に芯紐６を配してなる請求項１記載のスライドファスナー用ストリンガー。
【請求項３】
芯紐６と経糸排除領域１２との間に経糸２を介在してなる請求項２記載のスライドファスナー用ストリンガー。
【請求項４】
ファスナーエレメント１３は噛合頭部１４と脚部１５とを一体に形成し、噛合頭部１４はファスナーテープ１の一側縁５から外側に配し、脚部１５は経糸排除領域１２を貫設してなる請求項１記載のスライドファスナー用ストリンガー。
【請求項５】
脚部１５は経糸排除領域１２に残存する緯糸３を表裏面で跨乗し、脚部先端部１６を経糸２に付着させてなる請求項１記載のスライドファスナー用ストリンガー。
【請求項６】
所定幅のファスナーテープ１の一側縁５に沿って経糸２として水溶性繊維糸４を配して織成する織成工程Ａ、該テープ１を熱処理するヒートセット工程Ｂ、ファスナーテープ１を染色すると同時に水溶性繊維糸４を溶解して経糸排除領域１２を形成する染色工程Ｃ、該経糸排除領域１２を利用してファスナーエレメント１３を成形する成形工程Ｄからなることを特徴とするスライドファスナー用ストリンガーの製造方法。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【公開番号】特開２００６−３４４９１（Ｐ２００６−３４４９１Ａ）
【公開日】平成１８年２月９日（２００６．２．９）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００４−２１６９８７（Ｐ２００４−２１６９８７）
【出願日】平成１６年７月２６日（２００４．７．２６）
【出願人】（０００００６８２８）ＹＫＫ株式会社 (263)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１８年２月９日（２００６．２．９）
【国際特許分類】
【出願日】平成１６年７月２６日（２００４．７．２６）
【出願人】（０００００６８２８）ＹＫＫ株式会社 (263)
【Ｆターム（参考）】
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