説明

スライド式アームレスト

【課題】 従来技術では、帯状スプリングのエッジ等が露出すると見栄えが悪いので、カバー等を設けているが、移動距離と板状スプリングの伸長が同等となるので、カバー等で覆う範囲も広くなってしまい、外観の向上が容易でないという問題があった。
【解決手段】 肘掛本体1と、第1のベース2と第2のベース3と、基体4と、付勢手段6と、変速駆動手段5とを備え、第1のベース2と肘掛本体1とを一体とし、基体4に取り付けられた第2のベース3が付勢手段6で第1始点から第1終点まで駆動されて第1の距離だけ移動可能とし、第1のベース2が第2のベース3に対して第2始点から第2終点までの第2の距離だけ移動可能とし、変速駆動手段5が、基体4と第2のベース3との間の動きを、第2のベース3と第1のベース2との間の動きに増速して伝達し、第2の距離が第1の距離より大となるスライド式アームレスト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車のシート間に備え付けられたアームレストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車の乗員にとって便利な車両の内装部品が増加している。例えば、座席の間に設けられている中央のコンソールは、肘掛けとしても使える蓋が付いた収納区画を備える代表的な装備である。座席が前後方向に位置調整できるのに応じて、肘掛けも同様に調整できることが望ましい。
従来技術としては、少なくとも1つのガイドと少なくとも1つのガイド溝の一方を有するカバーと、前記少なくとも1つのガイドと前記少なくとも1つのガイド溝の他方を有するベースと、を備え、前記少なくとも1つのガイドと前記少なくとも1つのガイド溝の間の摺動可能な係合によって、前記カバーと前記ベースが互いに摺動可能に係合されている肘掛け(例えば、特許文献1参照)や、車両にほぼ鉛直姿勢で設けられる偏平状のケースと、前記ケース内に昇降可能に収容されて、最上昇位置ではケースの上端部に設けられた姿勢保持部により規制される水平姿勢位置まで回転可能なテーブル本体と、前記ケース内に収容されるとともにテーブル本体に回転可能に連結されて、テーブル本体の昇降動作に応じて前記ケース内で昇降動作するスライダと、前記ケースに設けられてテーブル本体に上向きの助勢力を付与する助勢力付与手段と、前記テーブル本体とスライダとの間に設けられて、前記テーブル本体が鉛直姿勢位置から水平姿勢位置まで回転する際の回転助勢力を付与する回転助勢力付与手段と、前記ケースに設けられるとともに、鉛直姿勢のテーブル本体の押圧操作に応じてロック,アンロック動作し、ロック時には前記スライダの一部と係合してテーブル本体を格納状態に保持する一方、アンロック時には前記スライダとの係合状態を解除するロック手段とから構成されている車両用テーブル装置(例えば、特許文献2参照)が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−534537号公報(特許請求の範囲の欄、発明の詳細な説明の欄、及び図1、図2を参照)
【特許文献2】実開平5−78631号公報(実用新案登録請求の範囲の欄、考案の詳細な説明の欄、及び図1〜図11を参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術である特許文献1は、カバー組み立て体を、ベース組み立て体に対して摺動可能にして、肘掛に使用可能なコンソールボックスの蓋を前後に位置調整可能にしている。スライドレール方式としては、手動で動かしている。また適宜の摺動抵抗を与えて、操作性を向上している。しかし、操作する者の予測、または感覚と実際の蓋の操作時の抵抗とがマッチしない場合があり、操作性の向上が容易でない。適宜の摺動抵抗を設計者側で設定しようとしても、実際は操作開始時の動き出しには力を要し、動き出してしまうと動作の継続には動き出し時ほどの力が必要なくなるので、動き出しから所望の停止位置に選択的に停止できるように設定することが難しい。すなわち、実際の使用場面では、操作する者は予測よりも動き出しの抵抗が大きいと思えば、さらに大きな力が必要と判断して、より大きい操作力を加えて動くようにする。ここで、一旦動き出すと急に操作力が要らなくなり、蓋の抵抗が軽く感じられることがある。操作力の加減がうまくできず、強く押しすぎて(勢い余って)、一気に終点まで高速で動かしてしまい、終点のストッパに勢いよく当ててしまって操作する者を慌てさせることがある。なお、終点から始点に戻す場合も同様のことが言える。
また、特許文献2は、帯状スプリングを用いた駆動機構(リトラクタ)を使用して、長い移動距離の物体(テーブル)を付勢させて動作させるものである。帯状スプリングのエッジ等が露出すると、見栄えが悪いので、好ましくはカバー等を設定している。しかし、移動距離と板状スプリングの伸長が同等となるので、カバー等で覆う範囲も広くなってしまい、外観の向上が容易でないという問題がある。
本発明は、上記の問題を解決したコンパクトな機構で付勢され、操作性の良いスライド式アームレストを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決することができる本発明の第1発明は、請求項1に記載された通りのスライド式アームレストであり、次のようなものである。
肘掛本体と、第1のベースと第2のベースと、基体と、付勢手段と、変速駆動手段とを備え、第1のベースと肘掛本体とを一体とし、基体に取り付けられた第2のベースが付勢手段で第1始点から第1終点まで駆動されて第1の距離だけ移動可能とし、第1のベースが第2のベースに対して第2始点から第2終点までの第2の距離だけ移動可能とし、変速駆動手段が、基体と第2のベースとの間の動きを、第2のベースと第1のベースとの間の動きに増速して伝達し、第2の距離が第1の距離より大となる構成である。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係るスライド式アームレストは、上記説明のような構成を有するので、以下に記載する効果を奏する。
(1)第2のベースに対して、スプリング等の駆動手段を用いることによって肘掛本体の可動範囲より短い距離で可動することが可能である。
(2)距離が小である第1の距離を付勢手段の動作距離とすることができるので、付勢手段が小さくなり、隠蔽する範囲を小さくすることができる。付勢手段はその分強いものを適用できるため、初動安定性が増すものである。
(3)戻し操作は長いストロークで比較的軽い動作となるので、操作性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のスライド式アームレストの一実施例を示す要部断面概略斜視図である。
【図2】本発明のスライド式アームレストを構成する部品を分解して示す概略斜視図である。
【図3】本発明のスライド式アームレストの作動を説明する説明図であり、(a)はアームレスト可動前の状態を示す要部拡大断面図、(b)はアームレスト可動後の状態を示す要部拡大断面図である。
【図4】図1のA−A線断面図である。
【図5】図1のB−B線断面図である。
【図6】本発明のスライド式アームレストの第2実施例を示すもので、(a)は一部切り欠き断面斜視図、(b)は(a)のC−C線断面図である。
【図7】本発明のスライド式アームレストの第3実施例を示すもので、(a)は概略斜視図、(b)は(a)のD−D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
肘掛本体と、第1のベースと第2のベースと、基体と付勢手段と、変速駆動手段とを備え、第1のベースと肘掛本体とを一体とし、基体に取り付けられた第2のベースが付勢手段で第1始点から第1終点まで駆動されて第1の距離だけ移動可能とし、第1のベースが第2のベースに対して第2始点から第2終点までの第2の距離だけ移動可能とし、変速駆動手段が、基体と第2のベースとの間の動きを、第2のベースと第1のベースとの間の動きに増速して伝達し、第2の距離が第1の距離より大となるスライド式アームレストである。
【実施例1】
【0009】
以下に、本発明の一実施例を添付図面で詳細に説明する。
図1は本発明のスライド式アームレストの一実施例を示す要部断面概略斜視図、図4は図1のA−A線断面図、図5は図1のB−B線断面図であり、
図2に示すように肘掛本体1、第1のベース2、第2のベース3、基体4、変速駆動手段であるギア5、付勢手段であるスプリング6、ネジ7によって構成されている。
図1〜図5に示すように、肘掛本体1が第1のベース2にネジ7等の取り付け金具により締結されており、肘掛本体1は第1のベース2と共に可動する。その下には第2のベース3が設置され、これには、変速駆動手段であるギア5が組み込まれており、第1のベース2に設けられた、ラックギア8(図5参照)と噛み合っている。また、ギア5はさらに基体4に設けられたラックギア9と噛み合っている(図5参照)。これを付勢手段であるスプリング6、ネジ7により構成されている。
ここで、本発明のスライド式アームレストの作動を図3に基づいて説明する。
図3(a)に示されている通り、第1のベース2が一体となっている肘掛本体1の下に後方にスプリング6が取り付けられ、ギア5を備えた第2のベース3が設置され、その下に基体4が設置されている。
図3(b)に示されるように、このスライド式アームレストを可動させると、スプリング6が伸び、基体4に取り付けられた第2のベース3が第1の距離10だけ移動する。と同時に、ギア5によって増幅された距離である第2の距離11を肘掛本体1と第1のベース2が移動するものである。
つまり、スプリング6を介して第2のベース3を可動させると、ギア5の上下二段のギア5のギア比により、第1のベース2はより大きな距離を動く(例えば、ギア比が2:1の場合、2倍の距離(ストローク)になる。)ものである。
このことにより、第2のベース3に対して、スプリング6を介してギヤ5等の駆動力を伝達する手段を用いることによって、肘掛本体1の可動範囲より短い距離でスプリング6の伸縮動作をさせることが可能である。
したがって、スプリング6をバネ定数を強め(大きめ)にした伸縮ストロークの短いものにすることもでき、スプリング6を収納し動作させる場所を小さくでき、スプリング6をカバーする部分もコンパクトにでき、見栄え良く装置全体を設計することが容易になる。
また、肘掛本体1を大きく動かす操作でスプリング6に抗して肘掛本体1を初期位置に戻すことができるので、操作荷重が小さくなり、体の横にあって力の掛けにくい位置にある肘掛本体1を無理なく操作することができるので、女性やシルバー世代の運転者・乗員にとっても好ましい肘掛装置を提供することができる。
【0010】
また、図6のように、ギア5をさらに増やし、長尺の肘掛本体1に対応し、かつギア5が増えたことにより肘掛本体1のスライド時に左右の位置同期がより行い易く、円滑な動きをさせることができる。
また、図7は、本発明のスライド式アームレストの他の実施例であり、ギア5を中央に配置することにより、部品点数を減らすことができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0011】
全ての種類の車両のアームレストに利用することができる。
【符号の説明】
【0012】
1・・・・肘掛本体
2・・・・第1のベース
3・・・・第2のベース
4・・・・基体
5・・・・ギア
6・・・・スプリング
7・・・・ネジ
8・・・・ラックギア
9・・・・ラックギア
10・・・・第1の距離
11・・・・第2の距離


【特許請求の範囲】
【請求項1】
肘掛本体と、第1のベースと第2のベースと、基体と、付勢手段と、変速駆動手段とを備え、第1のベースと肘掛本体とを一体とし、基体に取り付けられた第2のベースが付勢手段で第1始点から第1終点まで駆動されて第1の距離だけ移動可能とし、第1のベースが第2のベースに対して第2始点から第2終点までの第2の距離だけ移動可能とし、変速駆動手段が、基体と第2のベースとの間の動きを、第2のベースと第1のベースとの間の動きに増速して伝達し、第2の距離が第1の距離より大となることを特徴とするスライド式アームレスト。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−250682(P2012−250682A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127084(P2011−127084)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】