スライバ継ぎ装置
【課題】各スライバの端部を必要な強度で安定して繋ぐ。
【解決手段】一対のスライバS,S’の端部S11,S11’を挟んで交互に摺動して揉み繋ぐ一対のピーシング部材1,1’を備えており、各ピーシング部材1,1’の双方が、各スライバ端部S11,S11’を挟む面1a,1a’に、揉み絡みを防止するための絡み防止用溝部10,10’を備え、絡み防止用溝部10,10’は、挟み面1a,1a’の中央部に摺動方向1b,1b’に延設されてなる。
【解決手段】一対のスライバS,S’の端部S11,S11’を挟んで交互に摺動して揉み繋ぐ一対のピーシング部材1,1’を備えており、各ピーシング部材1,1’の双方が、各スライバ端部S11,S11’を挟む面1a,1a’に、揉み絡みを防止するための絡み防止用溝部10,10’を備え、絡み防止用溝部10,10’は、挟み面1a,1a’の中央部に摺動方向1b,1b’に延設されてなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空ケンスからの旧スライバと満管ケンスからの新スライバとを継ぐスライバ継ぎ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紡績機は、背後にケンスを配置して、ケンスからスライバを供給して紡績する。そして、供給しているスライバのケンスが略空になると(空ケンス)、所定の台車が、スライバが満たされたケンス(満管ケンス)と交換する。交換の際に、台車に設けられたスライバ継ぎ装置が、空ケンスからのスライバ(旧スライバ)の端部と満管ケンスからのスライバ(新スライバ)の端部とを継ぐ。これにより、紡績機は、連続してスライバを供給できる。スライバ継ぎ装置は、各スライバの端部同士を繋ぐための一対のピーシング部材を備える(特許文献1、図10等の符号h3,h3’)。
【0003】
ピーシング部材は、各スライバの端部を挟んで交互に摺動することにより揉み繋ぐ。ピーシング部材は、各スライバ端部を挟んで揉む面(挟み面)が平ら(フラット)である。そのため、各スライバ端部の全体が均一に揉まれるので、スライバの繊維本数によっては、繋ぎ目部分の強度が不足したり不安定になることがある。これにより、スライバの繋ぎ目部分が、ドラフト装置で均等にドラフトされなかったり、紡績装置のスピンドル内部で詰まる問題がある。
【特許文献1】特開平9−105036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明が解決する課題は、各スライバの端部を必要な強度で安定して繋ぐことが可能なスライバ継ぎ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明に係るスライバ継ぎ装置は、一対のスライバの端部を挟んで交互に摺動して揉み繋ぐ一対のピーシング部材を備える。
各ピーシング部材の双方が、各スライバ端部を挟む面に、揉み絡みを防止するための絡み防止用溝部を備える。
絡み防止用溝部は、挟み面の中央部に摺動方向に延設されてなる。
【0006】
好ましくは、各ピーシング部材のいずれか一方が、挟み面における絡み防止用溝部の両側部分に絡み用溝部を備える。
【0007】
好ましくは、各ピーシング部材が、挟み面における絡み防止用溝部の両側部分に抵抗部材を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、上記の通り、各ピーシング部材の双方が、各スライバ端部を挟む面に、揉み繋ぎを防止するための絡み防止用溝部を備える。さらに、絡み防止用溝部は、各ピーシング部材の挟み面の中央部に摺動方向に延設されている。これにより、各ピーシング部材で各スライバを挟んでも、絡み防止用溝部で空間部分が形成される。よって、各スライバ端部は、この空間部分(絡み防止用溝部)では、揉まれないので、絡みつき難くい。そして、各スライバ端部は、絡み防止用溝部(空間部分)の両側で、揉まれて絡みつく。
【0009】
すなわち、スライバ端部の繊維方向は、絡み防止用溝部(空間部分)では糸道方向のままで、絡み防止用溝部の両側で揉まれて、糸道直交方向に絡まる。従って、各スライバ端部は、その先端が、互いのスライバ端部に絡みつくことになり、スライバの繊維本数に拘らず、継ぎ強度が著しく向上して非常に安定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づいて、本発明に係るスライバ継ぎ装置について説明する。
【0011】
[スライバ継ぎ台車の動作]
図1は、精紡システムを示す平面図である。図2及び図3は、精紡システムを示す正面図である。図1の通り、精紡システムは、ロータ式オープンエンド精紡機3を備える。精紡機3は、複数の精紡ユニット30を備える。図2の通り、各精紡ユニット30は、スライバSを収納したケンスCが配置される。精紡ユニット30は、ケンスCから引き出されるスライバSを加撚しながら綾振りしつつパッケージ32に巻き上げる。
【0012】
精紡システムは、スライバ継ぎ台車4を備える。図1の通り、スライバ継ぎ台車4は、精紡機3の周囲を案内レール43に沿って巡回する。図2の通り、案内レール43は、天井に設けられている。スライバ継ぎ台車4は、上部に搬送装置42を備える。搬送装置42は、案内レール43に連結する。スライバ継ぎ台車4は、吊下げ式の搬送装置42によって搬送される。
【0013】
精紡システムは、制御部5を備える。制御部5は、紡績機3及びスライバ継ぎ台車4の動作を制御する。精紡システムは、ケンスCが略空になったことを検出するための稼働時間管理装置やセンサー等からなる検出装置(図示略)を備える。検出装置が検出すると、制御部5は、紡績機3及びスライバ継ぎ台車4に指令を出し、以下の動作をする。
【0014】
スライバ継ぎ台車4は、スライバS’が満たされたケンス(「満管ケンス」という)Fを搭載して巡回する。スライバ継ぎ台車4は、満管ケンスFに隣接する載置スペース44を有する(図1)。載置スペース44は、空ケンスEを載置するスペースである。スライバ継ぎ台車4は、制御部5からの指令に基づき、スライバSが空になりかけているケンス(「空ケンス」という)Eの精紡ユニット30(「対象精紡ユニット」という)で停止する(図1(a))。
【0015】
対象精紡ユニット30は、精紡動作を停止して、空ケンスEからのスライバSの供給を停止する。図2の通り、精紡ユニット30は、下部にベルトコンベア式のケンス交換装置31を備える。スライバ継ぎ台車4も同様に、下部にベルトコンベア式のケンス交換装置40を備える。図1(a)及び図2の通り、各ケンス交換装置31,40は、対象精紡ユニット30の空ケンスEをスライバ継ぎ台車4の載置スペース44に移送する。
【0016】
スライバ継ぎ台車4は、スライバ継ぎ装置41を備える。後述で詳説するが、スライバ継ぎ装置41は、満管ケンスFからのスライバ(「新スライバ」という)S’の端部を把持する(図2)。そして、スライバ継ぎ装置41は、空ケンスEからのスライバ(「旧スライバ」という)Sを引き寄せフックt10で引き寄せて、旧スライバS(空ケンスEは図3手前側)と新スライバS’(満管ケンスFは図3奥側)と継ぐ。
【0017】
旧スライバSと新スライバS’とのスライバ継ぎ動作が終了した後、スライバ継ぎ装置41は、スライバ継ぎされたスライバを排出フック(図示略)で紡績ユニット30の方向へ移動する。この移動と同期して、図1(b)の通り、スライバ継ぎ台車4は、若干前進して、ケンス交換装置31,40により、空ケンスEの排出位置(対象精紡ユニット位置)に満管ケンスFを搬入する。
【0018】
[スライバ継ぎの動作]
図4〜図14は、継ぎ装置によるスライバ継ぎ動作を説明するための斜視図である。図4は、スライバ継ぎ装置41の待機状態を示す。スライバ継ぎ装置41は、継ぎ本体h1を備える。継ぎ本体h1は、一対のピーシング部材1,1’を備える。ピーシング部材1,1’は、後述で詳説するが、板状部材からなる。ピーシング部材1,1’の上方及び下方に、ローラ対部h20,h20aを備える。ローラ対部h20,h20aは、ピーシング部材1,1’が新旧スライバS,S’を挟む位置で、これらS,S’を挟持する。
【0019】
ローラ対部h20,h20aは、従動ローラh21,h21aと回転ローラh22,h22aとを備える。回転ローラh22,h22aは、継ぎ本体h1に固定され、回転駆動する。従動ローラh21,h21aは、待機する際には、回転ローラh22,h22aとL字状となる90°の位置(実線の位置)に配置する。そして、スライバを挟持する際には、従動ローラh21,h21aは、二点鎖線の位置に移動する。
【0020】
回転ローラh22,h22aと二点鎖線で示す従動ローラh21,h21aとの間の両端部でピーシング部材1,1’側に(それそれが対向するように)、センサーh23,h23a及びh24,h24aが備えられる。センサーh23,h24及びセンサーh23a,h24aは、一方が発光器で、他方が受光器である。
【0021】
ローラ対部h20の上方に、半月ローラ対部h30が備えられる。半月ローラ対部h30は、半月ローラh31,h32からなる。半月ローラh31,h32は、回転ローラh22の軸の直交方向に並列される。半月ローラ対部h30は、半月ローラh31,h32が回転駆動する。半月ローラ対部h30は、先端側が半月状であり、待機状態では、各半月ローラh31,h32の弦側が互いに向かい合う。そのため、半月ローラ対部h30には隙間ができる。
【0022】
半月ローラ対部h30の上方には、挟持部材h40が備えられる。ローラ対部h20、半月ローラ対部h30及び挟持部材h40は、上下方向の一直線上に配備される。挟持部材h40は、固定部材h42と可動部材h41からなる。固定部材h42は、継ぎ本体h1に固定され、可動部材h41は、軸h43を中心に回転自在である。
【0023】
図5の通り、この待機状態から、サクションアームb1が、下方にある満管ケンスFから新スライバS’の端部を吸引口b2で吸引、把持する。その後、サクションアームb1が、略垂直な上方位置へ回動する(矢印方向b3)(図2)。
【0024】
図6の通り、この状態から、従動ローラh21,h21aは、移動して(矢印方向h50、h51)並列し、回転ローラh22,h22aに付勢される。そして、サクションアームb1に案内された新スライバS’が、従動ローラh21a,h21と回転ローラh22a,h22で挟持される。
【0025】
図7の通り、ローラ対部h20,h20aは、回転ローラh22,h22aが回転し(矢印方向h53,h55)、これにより、従動ローラh21,h21aが従動回転する(矢印方向h54,h56)。それに伴い、回転ローラh22,h22aと従動ローラh21,h21aに挟持される新スライバS’は、各ローラ対部h20,h20a間において、上方側は矢印方向h64に、下方側は矢印方向h65にそれぞれ引っ張られる。そして、新スライバS’は、各ローラ対部h20,h20a間で引きちぎられ、切断される。
【0026】
切断された上方側の新スライバS’は、センサ−h23,h24が新スライバS’の端部を検出した後、回転ローラh22が所定回転し続けて、吸引口b2に吸い込まれ、ダストボックス(図示略)に吸引される。そして、従動ローラh21は、移動して(矢印方向h52)、二点鎖線の待機位置に戻る。
【0027】
一方、センサ−h23a,h24aが、切断された下方側の新スライバS’の端部を検出すると、回転ローラh22aの駆動が停止する。そして、回転ローラh22aと従動ローラh21aが、新スライバS’端部を挟持した状態で停止する。これにより、新スライバS’は、スライバ継ぎ端部が形成され、スライバ継ぎ位置に配置される。
【0028】
次いで、図8の通り、旧スライバSは、引き寄せフックt10により、スライバ継ぎ位置まで移送される(図3)。継ぎ本体h1は、適当数の車輪h2を備え、スライバ継ぎ台車4に配設されたレールv1に沿って往復動可能である。そして、継ぎ本体h1が、移動する(矢印方向h66)。
【0029】
旧スライバSは、挟持部材h40の固定部材h42と可動部材h41の挟持位置、及び半月ローラ対部h30の半月ローラh31,h32の弦側が向かい合った隙間位置、さらに、ローラ対部h20の回転ローラh22と従動ローラh21の挟持位置に配置される。
【0030】
図9の通り、この状態から、挟持部材h40の可動部材h41は、移動して(矢印方向h67)、固定部材h42と可動部材h41間で旧スライバSを挟持する。そして、ローラ対部h20は、従動ローラh21が移動して(矢印方向h51)、回転ローラh22と従動ローラh21で旧スライバSを挟持する。
【0031】
図10の通り、この状態から、ローラ対部h20は、回転ローラh22が回転し(矢印方向h57)、従動ローラh21が従動回転する(矢印方向h58)。それに伴い、ローラ対部h20及び挟持部材h40に挟持されている旧スライバSは、ローラ対部h20と挟持部材h40間で引っ張られる。そして、旧スライバSは、ローラ対部h20と挟持部材h40間で引きちぎられ、切断する。切断された上方側の不要の旧スライバSは、旧スライバS端部をセンサ−h23,h24が検知すると、ローラ対部h20が所定回転し続け、空ケンス内に落下し(矢印方向59)排出される。そして、継ぎ本体h1は、移動する(矢印方向h68)。
【0032】
図11の通り、この状態から、挟持部材h40は、可動部材h41が移動して(矢印方向h69)、旧スライバSを解放する。解放された旧スライバSの端部は、旧スライバSの弛みおよび自重により、ローラ対部h20方向に落下する。
【0033】
次いで、半月ローラ対部h30は、半月ローラh31が矢印方向h61に、半月ローラh32が矢印方向h60にそれぞれ回転する。これにより、半月ローラ対部h30は、半月ローラh31と半月ローラh32の弧部が旧スライバSを挟持して、旧スライバSの端部を矢印方向h62に搬送する。そして、旧スライバSは、矢印方向h57に回転している回転ローラh22と矢印方向h58に回転している従動ローラh21とによって、確実に搬送される。そして、旧スライバSの端部は、回転ローラh22と従動ローラh21に挟持される。そして、半月ローラ対部h30は、半月ローラh31と半月ローラh32の弦部が向かい合う待機状態になると停止し、旧スライバSを解放する。
【0034】
図12の通り、次いで、ローラ対部h20は、回転ローラh22が所定回転する(矢印方向h57)。ローラ対部h20aは、回転ローラh22aが所定回転する(矢印方向h55)。そして、ローラ対部h20に挟持されている旧スライバSの端部は、矢印方向h62へ搬送される。一方、ローラ対部h20aに挟持されている新スライバS’の端部は、矢印方向h63へ搬送される。
【0035】
このようにして、新旧スライバS,S’の端部は、ピ−シング部1,1’に搬送される。尚、ピ−シング部1,1’に送られる新旧スライバS,S’の端部は、衝突しないように配置される。回転ローラh22,h22aの回転制御によって、新旧スライバS’,Sは、接合時の継ぎ目が均一になるような所定長さが、ピ−シング部1,1’に送られる。
【0036】
図13の通り、ピーシング部材1,1’は、ピンh4を介して摺動部材h5,h5’に連結されている。待機状態において、ピーシング部材1,1’は、ピンh4,h4’に設けられたコイルスプリング等の適当なバネ部材により、互いに離反する方向に付勢されている(開いている)。継ぎ本体h1は、案内ブロックh6,h6’を備える。案内ブロックh6,h6’は、軸方向にガイド溝h7を備える。摺動部材h5,h5’は、ガイド溝h7に挿着される。
【0037】
継ぎ本体h1は、レバーh10を備える。レバーh10は、垂直方向に立設する軸h9を中心に回転可能である。継ぎ本体h1は、ロッドh8,h8’を備える。ロッドh8,h8’は、一端が摺動部材h5,h5’に連結し、他端がレバーh10の両端部に連結している。ピーシング部材1,1’は、背面側(挟み面の反対側)に押え部材h11を備える。押え部材h11は、適当数の回転ローラh12,h13を介してピーシング部材1,1’を押圧する。押え部材h11は、継ぎ本体h1に立設する軸h14,h14’を中心に回転移動する。
【0038】
そして、所定の駆動装置(図示略)が、押え部材h11を、軸h14,h14’を中心に、互いに接近する方向へ回動する。これにより、押え部材h11が、回転ローラh12,h13を介して各ピーシング部材1,1’を互いに接近する方向に移動する(閉じる)。そして、ピーシング部材1,1’が、新旧スライバS,S’の端部を挟持する。
【0039】
その後、所定の駆動装置(図示略)が、レバーh10を、軸h9を中心に揺動運動する。これにより、摺動部材h5,h5’が、案内ブロックh6,h6’のガイド溝h7に沿って摺動する。そして、ピーシング部材1,1’が、糸道方向(縦方向)S10に直交する摺動方向(横方向)1b,1b’に交互に摺動してすり合わせ、ピーシング部材1,1’間に挟持されている新旧スライバS,S’の端部を揉んで接合する。押え部材h11は、回転ローラh12,h13が配設されているので、ピーシング部材1,1’をスムーズにすり合わせる。
【0040】
旧スライバSと新スライバS’とのスライバ継ぎが終了した後に、図14の通り、ピーシング部材1,1’を元の待機状態のように開くとともに、ローラ対部h20,h20aの新旧スライバS,S’を解放する操作を含め、全ての部材を待機位置に戻す。以上により、スライバ継ぎ工程が終了する。
【0041】
[ピーシング部材の説明]
図15は、ピーシング部材を説明するための図である。図15(a)は、各ピーシング部材1,1’を開いた状態(スライバS,S’を挟んでいない状態)を示す図である。図15(b)は、各ピーシング部材1,1’を閉じた状態(スライバS,S’を挟んだ状態)を示す図である。
【0042】
各ピーシング部材1,1’は、同一長方形の板状部材である。各ピーシング部材1,1’は、スライバS,S’を挟むための挟み面1a,1a’を備える(図15(a))。各ピーシング部材1,1’は、挟み面1a,1a’が互いに対向することにより、スライバS,S’を挟む。スライバS,S’の端部S11,S11’を挟んだ状態において(図15(b))、各ピーシング部材1,1’は、スライバS,S’の糸道方向(縦方向)S10に直交する方向(横方向)1b,1b’に、交互に又は片方だけが摺動してすり合わせる。そして、前記の通り、各スライバS,S’が互いに絡み合って接合される(図13)。
【0043】
図15(c)は、図15(b)のI−I線断面図である。旧スライバSは、上方から下方に延びる。旧スライバSの端部S11は、挟み面1a,1a’の縦方向の略全部に配置される。また、新スライバS’は、下方から上方へ延びる。新スライバS’の端部S11’は、挟み面1a,1a’の縦方向の略全部に配置される。従って、各スライバS,S’の端部S11,S11’は、それぞれ重なって挟み面1a,1a’の縦方向の略全部に配置される。従って、旧スライバSの先端S12は、挟み面1a,1a’の下部に配置される。新スライバS’の先端S12’は、挟み面1a,1a’の上部に配置される。
【0044】
各ピーシング部材1,1’は、挟み面1a,1a’における糸道方向(縦方向)S10の中央部に、摺動方向(横方向)1b,1b’に延設された絡み防止用溝部10,10’を備える。絡み防止用溝部10,10’は、比較的深く形成されている。絡み防止用溝部10,10’は、各ピーシング部材1,1’が各スライバS,S’を挟んだ状態において、各スライバ端部S11,S11’の中央部に、各スライバS,S’を挟まない部分(空間部分10,10’)を形成する(図15(c))。従って、各スライバS,S’の端部S11,S11’は、絡み防止用溝部(空間部分)10,10’に配置される部分において、挟み面1a,1a’に挟まれないことになる。
【0045】
よって、各ピーシング部材1,1’が摺動しても、各スライバ端部S11,S11’の中央部分は、絡み防止用溝部(空間部分)10,10’で揉まれないので、絡まることなく、糸道方向S10のままである。そして、挟み面1a,1a’における絡み防止用溝部10,10’の上部及び下部で、各スライバS,S’が揉まれる。従って、各スライバS,S’は、絡み防止用溝部10,10’の上部及び下部に配置される各スライバ先端S12,S12’が、挟み面1a,1a’に挟まれて、揉まれて互いに絡まることになる。
【0046】
これにより、図15(d)の通り、各スライバS,S’は、端部S11,S11’の中央部では揉まれず絡まらず、糸道方向(縦方向)S10のままに配列されており、先端S12,S12’が揉まれて横方向になり互いのスライバS,S’に絡まる。従って、各スライバS,S’は、先端S12,S12’が互いのスライバ端部S11,S11’に絡みつくので、繊維部材の本数等に拘らず、継ぎ強度が著しく向上し非常に安定する。
【0047】
また、一方のピーシング部材1は、挟み面1aにおける絡み防止用溝部10の上方及び下方に、絡み用溝部11,11を備える。さらに、各ピーシング部材1,1’は、挟み面1a,1a’における絡み防止用溝部10,10’の上方及び下方に、ゴムシート等の所定の滑り及び粘着力を有する抵抗部材12,12’を備える。これにより、各スライバ端部S11,S11’は、挟み面1a,1a’における絡み防止用溝部10,10’の上方及び下方において、揉まれ易く絡まり易くなる。従って、スライバ先端S12,S12’が、互いのスライバS,S’に強く安定して絡まる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】精紡システムを示す平面図である。
【図2】精紡システムを示す正面図である。
【図3】精紡システムを示す正面図である。
【図4】継ぎ装置によるスライバ継ぎ動作を説明するための斜視図である。
【図5】図4に続く斜視図である。
【図6】図5に続く斜視図である。
【図7】図6に続く斜視図である。
【図8】図7に続く斜視図である。
【図9】図8に続く斜視図である。
【図10】図9に続く斜視図である。
【図11】図10に続く斜視図である。
【図12】図11に続く斜視図である。
【図13】図12に続く斜視図である。
【図14】図13に続く斜視図である。
【図15】ピーシング部材を説明するための図である。
【符号の説明】
【0049】
1,1’ ピーシング部材
10,10’ 絡み防止用溝部
11 絡み用溝部
12,12’ 抵抗部材
S10 糸道方向(縦方向)
1b,1b’ 摺動方向(横方向)
1a,1a’ 挟み面
S 旧スライバ
S’ 新スライバ
S11 旧スライバ端部
S11’ 新スライバ端部
S12 旧スライバ先端
S12’ 新スライバ先端
【技術分野】
【0001】
本発明は、空ケンスからの旧スライバと満管ケンスからの新スライバとを継ぐスライバ継ぎ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紡績機は、背後にケンスを配置して、ケンスからスライバを供給して紡績する。そして、供給しているスライバのケンスが略空になると(空ケンス)、所定の台車が、スライバが満たされたケンス(満管ケンス)と交換する。交換の際に、台車に設けられたスライバ継ぎ装置が、空ケンスからのスライバ(旧スライバ)の端部と満管ケンスからのスライバ(新スライバ)の端部とを継ぐ。これにより、紡績機は、連続してスライバを供給できる。スライバ継ぎ装置は、各スライバの端部同士を繋ぐための一対のピーシング部材を備える(特許文献1、図10等の符号h3,h3’)。
【0003】
ピーシング部材は、各スライバの端部を挟んで交互に摺動することにより揉み繋ぐ。ピーシング部材は、各スライバ端部を挟んで揉む面(挟み面)が平ら(フラット)である。そのため、各スライバ端部の全体が均一に揉まれるので、スライバの繊維本数によっては、繋ぎ目部分の強度が不足したり不安定になることがある。これにより、スライバの繋ぎ目部分が、ドラフト装置で均等にドラフトされなかったり、紡績装置のスピンドル内部で詰まる問題がある。
【特許文献1】特開平9−105036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明が解決する課題は、各スライバの端部を必要な強度で安定して繋ぐことが可能なスライバ継ぎ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明に係るスライバ継ぎ装置は、一対のスライバの端部を挟んで交互に摺動して揉み繋ぐ一対のピーシング部材を備える。
各ピーシング部材の双方が、各スライバ端部を挟む面に、揉み絡みを防止するための絡み防止用溝部を備える。
絡み防止用溝部は、挟み面の中央部に摺動方向に延設されてなる。
【0006】
好ましくは、各ピーシング部材のいずれか一方が、挟み面における絡み防止用溝部の両側部分に絡み用溝部を備える。
【0007】
好ましくは、各ピーシング部材が、挟み面における絡み防止用溝部の両側部分に抵抗部材を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、上記の通り、各ピーシング部材の双方が、各スライバ端部を挟む面に、揉み繋ぎを防止するための絡み防止用溝部を備える。さらに、絡み防止用溝部は、各ピーシング部材の挟み面の中央部に摺動方向に延設されている。これにより、各ピーシング部材で各スライバを挟んでも、絡み防止用溝部で空間部分が形成される。よって、各スライバ端部は、この空間部分(絡み防止用溝部)では、揉まれないので、絡みつき難くい。そして、各スライバ端部は、絡み防止用溝部(空間部分)の両側で、揉まれて絡みつく。
【0009】
すなわち、スライバ端部の繊維方向は、絡み防止用溝部(空間部分)では糸道方向のままで、絡み防止用溝部の両側で揉まれて、糸道直交方向に絡まる。従って、各スライバ端部は、その先端が、互いのスライバ端部に絡みつくことになり、スライバの繊維本数に拘らず、継ぎ強度が著しく向上して非常に安定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づいて、本発明に係るスライバ継ぎ装置について説明する。
【0011】
[スライバ継ぎ台車の動作]
図1は、精紡システムを示す平面図である。図2及び図3は、精紡システムを示す正面図である。図1の通り、精紡システムは、ロータ式オープンエンド精紡機3を備える。精紡機3は、複数の精紡ユニット30を備える。図2の通り、各精紡ユニット30は、スライバSを収納したケンスCが配置される。精紡ユニット30は、ケンスCから引き出されるスライバSを加撚しながら綾振りしつつパッケージ32に巻き上げる。
【0012】
精紡システムは、スライバ継ぎ台車4を備える。図1の通り、スライバ継ぎ台車4は、精紡機3の周囲を案内レール43に沿って巡回する。図2の通り、案内レール43は、天井に設けられている。スライバ継ぎ台車4は、上部に搬送装置42を備える。搬送装置42は、案内レール43に連結する。スライバ継ぎ台車4は、吊下げ式の搬送装置42によって搬送される。
【0013】
精紡システムは、制御部5を備える。制御部5は、紡績機3及びスライバ継ぎ台車4の動作を制御する。精紡システムは、ケンスCが略空になったことを検出するための稼働時間管理装置やセンサー等からなる検出装置(図示略)を備える。検出装置が検出すると、制御部5は、紡績機3及びスライバ継ぎ台車4に指令を出し、以下の動作をする。
【0014】
スライバ継ぎ台車4は、スライバS’が満たされたケンス(「満管ケンス」という)Fを搭載して巡回する。スライバ継ぎ台車4は、満管ケンスFに隣接する載置スペース44を有する(図1)。載置スペース44は、空ケンスEを載置するスペースである。スライバ継ぎ台車4は、制御部5からの指令に基づき、スライバSが空になりかけているケンス(「空ケンス」という)Eの精紡ユニット30(「対象精紡ユニット」という)で停止する(図1(a))。
【0015】
対象精紡ユニット30は、精紡動作を停止して、空ケンスEからのスライバSの供給を停止する。図2の通り、精紡ユニット30は、下部にベルトコンベア式のケンス交換装置31を備える。スライバ継ぎ台車4も同様に、下部にベルトコンベア式のケンス交換装置40を備える。図1(a)及び図2の通り、各ケンス交換装置31,40は、対象精紡ユニット30の空ケンスEをスライバ継ぎ台車4の載置スペース44に移送する。
【0016】
スライバ継ぎ台車4は、スライバ継ぎ装置41を備える。後述で詳説するが、スライバ継ぎ装置41は、満管ケンスFからのスライバ(「新スライバ」という)S’の端部を把持する(図2)。そして、スライバ継ぎ装置41は、空ケンスEからのスライバ(「旧スライバ」という)Sを引き寄せフックt10で引き寄せて、旧スライバS(空ケンスEは図3手前側)と新スライバS’(満管ケンスFは図3奥側)と継ぐ。
【0017】
旧スライバSと新スライバS’とのスライバ継ぎ動作が終了した後、スライバ継ぎ装置41は、スライバ継ぎされたスライバを排出フック(図示略)で紡績ユニット30の方向へ移動する。この移動と同期して、図1(b)の通り、スライバ継ぎ台車4は、若干前進して、ケンス交換装置31,40により、空ケンスEの排出位置(対象精紡ユニット位置)に満管ケンスFを搬入する。
【0018】
[スライバ継ぎの動作]
図4〜図14は、継ぎ装置によるスライバ継ぎ動作を説明するための斜視図である。図4は、スライバ継ぎ装置41の待機状態を示す。スライバ継ぎ装置41は、継ぎ本体h1を備える。継ぎ本体h1は、一対のピーシング部材1,1’を備える。ピーシング部材1,1’は、後述で詳説するが、板状部材からなる。ピーシング部材1,1’の上方及び下方に、ローラ対部h20,h20aを備える。ローラ対部h20,h20aは、ピーシング部材1,1’が新旧スライバS,S’を挟む位置で、これらS,S’を挟持する。
【0019】
ローラ対部h20,h20aは、従動ローラh21,h21aと回転ローラh22,h22aとを備える。回転ローラh22,h22aは、継ぎ本体h1に固定され、回転駆動する。従動ローラh21,h21aは、待機する際には、回転ローラh22,h22aとL字状となる90°の位置(実線の位置)に配置する。そして、スライバを挟持する際には、従動ローラh21,h21aは、二点鎖線の位置に移動する。
【0020】
回転ローラh22,h22aと二点鎖線で示す従動ローラh21,h21aとの間の両端部でピーシング部材1,1’側に(それそれが対向するように)、センサーh23,h23a及びh24,h24aが備えられる。センサーh23,h24及びセンサーh23a,h24aは、一方が発光器で、他方が受光器である。
【0021】
ローラ対部h20の上方に、半月ローラ対部h30が備えられる。半月ローラ対部h30は、半月ローラh31,h32からなる。半月ローラh31,h32は、回転ローラh22の軸の直交方向に並列される。半月ローラ対部h30は、半月ローラh31,h32が回転駆動する。半月ローラ対部h30は、先端側が半月状であり、待機状態では、各半月ローラh31,h32の弦側が互いに向かい合う。そのため、半月ローラ対部h30には隙間ができる。
【0022】
半月ローラ対部h30の上方には、挟持部材h40が備えられる。ローラ対部h20、半月ローラ対部h30及び挟持部材h40は、上下方向の一直線上に配備される。挟持部材h40は、固定部材h42と可動部材h41からなる。固定部材h42は、継ぎ本体h1に固定され、可動部材h41は、軸h43を中心に回転自在である。
【0023】
図5の通り、この待機状態から、サクションアームb1が、下方にある満管ケンスFから新スライバS’の端部を吸引口b2で吸引、把持する。その後、サクションアームb1が、略垂直な上方位置へ回動する(矢印方向b3)(図2)。
【0024】
図6の通り、この状態から、従動ローラh21,h21aは、移動して(矢印方向h50、h51)並列し、回転ローラh22,h22aに付勢される。そして、サクションアームb1に案内された新スライバS’が、従動ローラh21a,h21と回転ローラh22a,h22で挟持される。
【0025】
図7の通り、ローラ対部h20,h20aは、回転ローラh22,h22aが回転し(矢印方向h53,h55)、これにより、従動ローラh21,h21aが従動回転する(矢印方向h54,h56)。それに伴い、回転ローラh22,h22aと従動ローラh21,h21aに挟持される新スライバS’は、各ローラ対部h20,h20a間において、上方側は矢印方向h64に、下方側は矢印方向h65にそれぞれ引っ張られる。そして、新スライバS’は、各ローラ対部h20,h20a間で引きちぎられ、切断される。
【0026】
切断された上方側の新スライバS’は、センサ−h23,h24が新スライバS’の端部を検出した後、回転ローラh22が所定回転し続けて、吸引口b2に吸い込まれ、ダストボックス(図示略)に吸引される。そして、従動ローラh21は、移動して(矢印方向h52)、二点鎖線の待機位置に戻る。
【0027】
一方、センサ−h23a,h24aが、切断された下方側の新スライバS’の端部を検出すると、回転ローラh22aの駆動が停止する。そして、回転ローラh22aと従動ローラh21aが、新スライバS’端部を挟持した状態で停止する。これにより、新スライバS’は、スライバ継ぎ端部が形成され、スライバ継ぎ位置に配置される。
【0028】
次いで、図8の通り、旧スライバSは、引き寄せフックt10により、スライバ継ぎ位置まで移送される(図3)。継ぎ本体h1は、適当数の車輪h2を備え、スライバ継ぎ台車4に配設されたレールv1に沿って往復動可能である。そして、継ぎ本体h1が、移動する(矢印方向h66)。
【0029】
旧スライバSは、挟持部材h40の固定部材h42と可動部材h41の挟持位置、及び半月ローラ対部h30の半月ローラh31,h32の弦側が向かい合った隙間位置、さらに、ローラ対部h20の回転ローラh22と従動ローラh21の挟持位置に配置される。
【0030】
図9の通り、この状態から、挟持部材h40の可動部材h41は、移動して(矢印方向h67)、固定部材h42と可動部材h41間で旧スライバSを挟持する。そして、ローラ対部h20は、従動ローラh21が移動して(矢印方向h51)、回転ローラh22と従動ローラh21で旧スライバSを挟持する。
【0031】
図10の通り、この状態から、ローラ対部h20は、回転ローラh22が回転し(矢印方向h57)、従動ローラh21が従動回転する(矢印方向h58)。それに伴い、ローラ対部h20及び挟持部材h40に挟持されている旧スライバSは、ローラ対部h20と挟持部材h40間で引っ張られる。そして、旧スライバSは、ローラ対部h20と挟持部材h40間で引きちぎられ、切断する。切断された上方側の不要の旧スライバSは、旧スライバS端部をセンサ−h23,h24が検知すると、ローラ対部h20が所定回転し続け、空ケンス内に落下し(矢印方向59)排出される。そして、継ぎ本体h1は、移動する(矢印方向h68)。
【0032】
図11の通り、この状態から、挟持部材h40は、可動部材h41が移動して(矢印方向h69)、旧スライバSを解放する。解放された旧スライバSの端部は、旧スライバSの弛みおよび自重により、ローラ対部h20方向に落下する。
【0033】
次いで、半月ローラ対部h30は、半月ローラh31が矢印方向h61に、半月ローラh32が矢印方向h60にそれぞれ回転する。これにより、半月ローラ対部h30は、半月ローラh31と半月ローラh32の弧部が旧スライバSを挟持して、旧スライバSの端部を矢印方向h62に搬送する。そして、旧スライバSは、矢印方向h57に回転している回転ローラh22と矢印方向h58に回転している従動ローラh21とによって、確実に搬送される。そして、旧スライバSの端部は、回転ローラh22と従動ローラh21に挟持される。そして、半月ローラ対部h30は、半月ローラh31と半月ローラh32の弦部が向かい合う待機状態になると停止し、旧スライバSを解放する。
【0034】
図12の通り、次いで、ローラ対部h20は、回転ローラh22が所定回転する(矢印方向h57)。ローラ対部h20aは、回転ローラh22aが所定回転する(矢印方向h55)。そして、ローラ対部h20に挟持されている旧スライバSの端部は、矢印方向h62へ搬送される。一方、ローラ対部h20aに挟持されている新スライバS’の端部は、矢印方向h63へ搬送される。
【0035】
このようにして、新旧スライバS,S’の端部は、ピ−シング部1,1’に搬送される。尚、ピ−シング部1,1’に送られる新旧スライバS,S’の端部は、衝突しないように配置される。回転ローラh22,h22aの回転制御によって、新旧スライバS’,Sは、接合時の継ぎ目が均一になるような所定長さが、ピ−シング部1,1’に送られる。
【0036】
図13の通り、ピーシング部材1,1’は、ピンh4を介して摺動部材h5,h5’に連結されている。待機状態において、ピーシング部材1,1’は、ピンh4,h4’に設けられたコイルスプリング等の適当なバネ部材により、互いに離反する方向に付勢されている(開いている)。継ぎ本体h1は、案内ブロックh6,h6’を備える。案内ブロックh6,h6’は、軸方向にガイド溝h7を備える。摺動部材h5,h5’は、ガイド溝h7に挿着される。
【0037】
継ぎ本体h1は、レバーh10を備える。レバーh10は、垂直方向に立設する軸h9を中心に回転可能である。継ぎ本体h1は、ロッドh8,h8’を備える。ロッドh8,h8’は、一端が摺動部材h5,h5’に連結し、他端がレバーh10の両端部に連結している。ピーシング部材1,1’は、背面側(挟み面の反対側)に押え部材h11を備える。押え部材h11は、適当数の回転ローラh12,h13を介してピーシング部材1,1’を押圧する。押え部材h11は、継ぎ本体h1に立設する軸h14,h14’を中心に回転移動する。
【0038】
そして、所定の駆動装置(図示略)が、押え部材h11を、軸h14,h14’を中心に、互いに接近する方向へ回動する。これにより、押え部材h11が、回転ローラh12,h13を介して各ピーシング部材1,1’を互いに接近する方向に移動する(閉じる)。そして、ピーシング部材1,1’が、新旧スライバS,S’の端部を挟持する。
【0039】
その後、所定の駆動装置(図示略)が、レバーh10を、軸h9を中心に揺動運動する。これにより、摺動部材h5,h5’が、案内ブロックh6,h6’のガイド溝h7に沿って摺動する。そして、ピーシング部材1,1’が、糸道方向(縦方向)S10に直交する摺動方向(横方向)1b,1b’に交互に摺動してすり合わせ、ピーシング部材1,1’間に挟持されている新旧スライバS,S’の端部を揉んで接合する。押え部材h11は、回転ローラh12,h13が配設されているので、ピーシング部材1,1’をスムーズにすり合わせる。
【0040】
旧スライバSと新スライバS’とのスライバ継ぎが終了した後に、図14の通り、ピーシング部材1,1’を元の待機状態のように開くとともに、ローラ対部h20,h20aの新旧スライバS,S’を解放する操作を含め、全ての部材を待機位置に戻す。以上により、スライバ継ぎ工程が終了する。
【0041】
[ピーシング部材の説明]
図15は、ピーシング部材を説明するための図である。図15(a)は、各ピーシング部材1,1’を開いた状態(スライバS,S’を挟んでいない状態)を示す図である。図15(b)は、各ピーシング部材1,1’を閉じた状態(スライバS,S’を挟んだ状態)を示す図である。
【0042】
各ピーシング部材1,1’は、同一長方形の板状部材である。各ピーシング部材1,1’は、スライバS,S’を挟むための挟み面1a,1a’を備える(図15(a))。各ピーシング部材1,1’は、挟み面1a,1a’が互いに対向することにより、スライバS,S’を挟む。スライバS,S’の端部S11,S11’を挟んだ状態において(図15(b))、各ピーシング部材1,1’は、スライバS,S’の糸道方向(縦方向)S10に直交する方向(横方向)1b,1b’に、交互に又は片方だけが摺動してすり合わせる。そして、前記の通り、各スライバS,S’が互いに絡み合って接合される(図13)。
【0043】
図15(c)は、図15(b)のI−I線断面図である。旧スライバSは、上方から下方に延びる。旧スライバSの端部S11は、挟み面1a,1a’の縦方向の略全部に配置される。また、新スライバS’は、下方から上方へ延びる。新スライバS’の端部S11’は、挟み面1a,1a’の縦方向の略全部に配置される。従って、各スライバS,S’の端部S11,S11’は、それぞれ重なって挟み面1a,1a’の縦方向の略全部に配置される。従って、旧スライバSの先端S12は、挟み面1a,1a’の下部に配置される。新スライバS’の先端S12’は、挟み面1a,1a’の上部に配置される。
【0044】
各ピーシング部材1,1’は、挟み面1a,1a’における糸道方向(縦方向)S10の中央部に、摺動方向(横方向)1b,1b’に延設された絡み防止用溝部10,10’を備える。絡み防止用溝部10,10’は、比較的深く形成されている。絡み防止用溝部10,10’は、各ピーシング部材1,1’が各スライバS,S’を挟んだ状態において、各スライバ端部S11,S11’の中央部に、各スライバS,S’を挟まない部分(空間部分10,10’)を形成する(図15(c))。従って、各スライバS,S’の端部S11,S11’は、絡み防止用溝部(空間部分)10,10’に配置される部分において、挟み面1a,1a’に挟まれないことになる。
【0045】
よって、各ピーシング部材1,1’が摺動しても、各スライバ端部S11,S11’の中央部分は、絡み防止用溝部(空間部分)10,10’で揉まれないので、絡まることなく、糸道方向S10のままである。そして、挟み面1a,1a’における絡み防止用溝部10,10’の上部及び下部で、各スライバS,S’が揉まれる。従って、各スライバS,S’は、絡み防止用溝部10,10’の上部及び下部に配置される各スライバ先端S12,S12’が、挟み面1a,1a’に挟まれて、揉まれて互いに絡まることになる。
【0046】
これにより、図15(d)の通り、各スライバS,S’は、端部S11,S11’の中央部では揉まれず絡まらず、糸道方向(縦方向)S10のままに配列されており、先端S12,S12’が揉まれて横方向になり互いのスライバS,S’に絡まる。従って、各スライバS,S’は、先端S12,S12’が互いのスライバ端部S11,S11’に絡みつくので、繊維部材の本数等に拘らず、継ぎ強度が著しく向上し非常に安定する。
【0047】
また、一方のピーシング部材1は、挟み面1aにおける絡み防止用溝部10の上方及び下方に、絡み用溝部11,11を備える。さらに、各ピーシング部材1,1’は、挟み面1a,1a’における絡み防止用溝部10,10’の上方及び下方に、ゴムシート等の所定の滑り及び粘着力を有する抵抗部材12,12’を備える。これにより、各スライバ端部S11,S11’は、挟み面1a,1a’における絡み防止用溝部10,10’の上方及び下方において、揉まれ易く絡まり易くなる。従って、スライバ先端S12,S12’が、互いのスライバS,S’に強く安定して絡まる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】精紡システムを示す平面図である。
【図2】精紡システムを示す正面図である。
【図3】精紡システムを示す正面図である。
【図4】継ぎ装置によるスライバ継ぎ動作を説明するための斜視図である。
【図5】図4に続く斜視図である。
【図6】図5に続く斜視図である。
【図7】図6に続く斜視図である。
【図8】図7に続く斜視図である。
【図9】図8に続く斜視図である。
【図10】図9に続く斜視図である。
【図11】図10に続く斜視図である。
【図12】図11に続く斜視図である。
【図13】図12に続く斜視図である。
【図14】図13に続く斜視図である。
【図15】ピーシング部材を説明するための図である。
【符号の説明】
【0049】
1,1’ ピーシング部材
10,10’ 絡み防止用溝部
11 絡み用溝部
12,12’ 抵抗部材
S10 糸道方向(縦方向)
1b,1b’ 摺動方向(横方向)
1a,1a’ 挟み面
S 旧スライバ
S’ 新スライバ
S11 旧スライバ端部
S11’ 新スライバ端部
S12 旧スライバ先端
S12’ 新スライバ先端
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のスライバを継ぐスライバ継ぎ装置において、前記各スライバの端部を挟んで交互に摺動して揉み繋ぐ一対のピーシング部材を備えており、
前記各ピーシング部材の双方が、前記各スライバ端部を挟む面に、揉み絡みを防止するための絡み防止用溝部を備え、前記絡み防止用溝部は、前記挟み面の中央部に摺動方向に延設されてなることを特徴とするスライバ継ぎ装置。
【請求項2】
前記各ピーシング部材のいずれか一方が、前記挟み面における前記絡み防止用溝部の両側部分に絡み用溝部を備えることを特徴とする請求項1に記載のスライバ継ぎ装置。
【請求項3】
前記各ピーシング部材が、前記挟み面における前記絡み防止用溝部の両側部分に抵抗部材を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のスライバ継ぎ装置。
【請求項1】
一対のスライバを継ぐスライバ継ぎ装置において、前記各スライバの端部を挟んで交互に摺動して揉み繋ぐ一対のピーシング部材を備えており、
前記各ピーシング部材の双方が、前記各スライバ端部を挟む面に、揉み絡みを防止するための絡み防止用溝部を備え、前記絡み防止用溝部は、前記挟み面の中央部に摺動方向に延設されてなることを特徴とするスライバ継ぎ装置。
【請求項2】
前記各ピーシング部材のいずれか一方が、前記挟み面における前記絡み防止用溝部の両側部分に絡み用溝部を備えることを特徴とする請求項1に記載のスライバ継ぎ装置。
【請求項3】
前記各ピーシング部材が、前記挟み面における前記絡み防止用溝部の両側部分に抵抗部材を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のスライバ継ぎ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−46771(P2009−46771A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213340(P2007−213340)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】
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