スラブの部分大圧下を行うための連続鋳造機用ロールスタンド
【課題】鋳片から受ける反力を軽減しつつポロシティー減少させることができるとともに、鋳造方向の下流に進むにつれて上ロールと下ロールとの面間距離を簡易に小さくすることができる。
【解決手段】連続鋳造機の水平経路部に設置されたロールスタンドは、上フレーム11aと、下フレーム11bと、6対のロール対を有している。上フレーム11aに取り付けられたロール412,414,416には、凸部43b,43d,43fが取り付けられている。ロール412,414,416には、それぞれ凸部が2個ずつ取り付けられている。凸部43b,43d,43fは、それぞれ、ロール412,414,416の一端から130mm以上離れた位置に設けられている。凸部43b,43d,43fの外径は、これらの順に大きくなっている。
【解決手段】連続鋳造機の水平経路部に設置されたロールスタンドは、上フレーム11aと、下フレーム11bと、6対のロール対を有している。上フレーム11aに取り付けられたロール412,414,416には、凸部43b,43d,43fが取り付けられている。ロール412,414,416には、それぞれ凸部が2個ずつ取り付けられている。凸部43b,43d,43fは、それぞれ、ロール412,414,416の一端から130mm以上離れた位置に設けられている。凸部43b,43d,43fの外径は、これらの順に大きくなっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラブ用連続鋳造機の水平部に設置されるロールスタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
鋼の連続鋳造工程においては、溶鋼の凝固末期に、鋳片を鋳造方向に圧下することにより、鋳片内部に発生したポロシティーを減少させている。このとき、鋳片を幅方向全体にわたって圧下した場合は、二次冷却などにより凝固が速い鋳片幅端部から大きな反力を受けるため、ロールや軸受けに負荷がかかる。この結果、ロールや軸受けなどの強度を高めることが必要となる。このような点を考慮して、特許文献1においては、必要な領域のみ優先的に圧下できるように、固相率が0.7以下の幅領域(鋳片の中央付近に配置される領域)のロール胴部の直径を、鋳片の幅方向両端部に配置されるロール胴部の直径より大きくしたロールを用いて、鋳片を圧下している。また、このロールを、鋳片の固相率が0.3以降となる位置から完全凝固位置まで鋳造方向に並設させることにより、ポロシティーを徐々に減少させている。
【0003】
特許文献2,3には、ポロシティーの減少を目的としたものではないが、中心偏析を減少させることを目的とし、局部的に鋳片を圧下する技術が開示されている。
【0004】
特許文献2に開示された方法は、未凝固部を含んだ鋳片をバルジングさせた後に、鋳片の厚み方向に離れた凝固界面の鋳片幅両端部を圧着させることを目的として、ロール胴部の両端部近傍のロール径がロール胴部の中央部のロール径より大きいロールを用いる方法である。上記ロールを用いる前に、ロール胴部のロール径が一定であるフラットロールを用いて、鋳片幅中央部の凝固界面を圧着させるが、ロール胴部の両端部近傍のロール径が中央部のロール径より大きいロールによる圧下は、フラットロールでは圧着させることができなかった凝固界面の鋳片幅両端部を圧着させること、及び、両側の凝固界面の間に存在する濃化溶鋼を鋳造方向の下流へ排出することを目的としているため、該ロールは溶鋼の凝固完了前の最終部にのみ配置される。
【0005】
特許文献3に開示された方法は、鋳片幅方向に同じ圧下量を加えることができるように、連続鋳造工程の最終凝固部において、圧下量が不足する鋳片の1/4幅位置及び3/4幅位置より鋳片端部側に相当する位置に大径部が形成されたロールを有する一対のロール対を用いて鋳片を圧下する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08‐257715号公報
【特許文献2】特開2001‐334353号公報
【特許文献3】特開平06−218510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
溶鋼の凝固末期においては、鋳片の凝固にともなって鋳片の体積(厚み)が減少するため、鋳造方向の下流へ進むにつれてロール対を構成する上下ロールの面間距離を短くすることが必要となる。鋳造方向に並設されたロールが全て同じロール径である場合、ロール対毎に上下ロールの面間距離を調整することが必要となる。また、複数対のロールが1つのロールスタンドにまとめて設けられている場合は、上下ロールを保持する上下スタンドをそれぞれ傾斜させることにより、上下ロールの面間距離を調整することが必要となる。しかしながら、この上下ロールの面間距離の調整は、非常に複雑な調整を要する。
【0008】
特許文献1においては、ロール胴部の中央付近の直径を両端部の直径より大きくしたロールが、鋳造方向に並設されていることが開示されている。しかし、並設されたロールについては、固相率が0.7以下の幅領域(鋳片の中央部分)に相当するロール胴部の直径を、幅方向両端部直径より大きくするように調整されているだけであることから、鋳造方向に並設された複数列のロール(ロール径)は、全て同じロール(ロール径)であると考えられる。したがって、特許文献1に開示された方法では、鋳造方向の下流へ進むにつれて上下ロールの面間距離を小さくするために、ロール対ごとにロール面間距離を調整したり、上下ロールを保持する上下スタンドを傾斜させたりすることが必要であると考えられる。
【0009】
また、特許文献2においては、ロール胴部のロール径が一定であるフラットロールの下流に、ロール胴部の両端部近傍のロール径がロール胴部の中央部のロール径より大きいロールが配置されることが開示されている。しかし、フラットロールの下流に配置された上述のロールは、鋳片の凝固が完了する前の最終位置に1つだけ配置させておけばよいことから、特許文献2においては、上述のロールを除いたら、フラットロールが鋳造方向に並設されていると考えられる。また、特許文献2においては、このフラットロールのロール径について着目していないため、鋳造方向に並設されたフラットロールは、全て同径のロールであると考えられる。
【0010】
さらに、特許文献3においては、圧下量が不足する鋳片幅位置に大径部を配置させたロールを用いているが、このロールは、あくまで一対のロール対にのみ用いられればよいことが開示されている。したがって、特許文献3においては、上述の大径部が形成されたロールを除いて、鋳造方向に、同径のフラットロールが並設されていると考えられる。また、上述の大径部が形成されたロールが鋳造方向に並設されていたとしても、これらのロールは同外径のロールであると考えられる。
【0011】
以上から、特許文献2,3においても、同外径のロールが、鋳造方向に並設されていると考えられるため、鋳造方向の下流へ進むにつれて上下ロールの面間距離を短くするためには、上下ロール自体の面間距離を調整したり、上下フレームを傾斜させたりする複雑な距離調整を要する。
【0012】
そこで、本発明の目的は、鋳片から受ける反力を軽減しつつポロシティーを減少させることができるとともに、複雑な上下ロールの面間距離調整を行うことなく、鋳造方向の下流に進むにつれて上下ロール面間距離を簡易に短くすることができる、スラブの連続鋳造機のロールスタンドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、スラブの連続鋳造機の水平部に設置されるロールスタンドであって、前記ロールスタンドには、互いに対向する上ロール及び下ロールからなるロール対が鋳造方向に2対以上並設されており、前記上ロール及び前記下ロールは、ロールの軸方向に2〜4分割されている。また、前記上ロール及び前記下ロールの少なくとも一方のロールに、前記上ロール及び前記下ロールより大きな外径を有する大径凸部が設けられている。2つ以上の前記大径凸部が、ロールの軸方向に2〜4分割された1列のロールに、鋳片の幅方向に離れて設けられており、前記ロールの軸方向に2〜4分割された1列のロールに設けられた、前記2つ以上の大径凸部のうち、鋳片の幅方向について最も外側に設けられた大径凸部が、その大径凸部に最も近いロールの一端から、下記(1)式を満たす距離Xだけ離れて配置されている。
130mm≦X ・・・(1)
また、上流側ロールに設けられた上流側大径凸部の鋳片の幅方向に関する中心線と、前記上流側ロールより下流に位置する下流側ロールに設けられた下流側大径凸部の鋳片の幅方向に関する中心線とがそれぞれ一致しており、上流側大径凸部の外径が、下流側大径凸部の外径より小さい。
【0014】
本発明によると、ポロシティーが発生しやすい位置、言い換えると、鋳片の幅両端のそれぞれから幅中央に向けて130mm以上離れた幅位置に、大径凸部が複数箇所に配置されているため、ポロシティーが発生しやすい鋳片の幅位置を効果的に圧下することができる。これにより、ポロシティーを減少させることができる。また、鋳片の凝固が速く且つポロシティーが殆ど存在しない鋳片の幅方向についての位置に、大径凸部が配置されない。よって、その位置が圧下されないことから、圧下時に鋳片から受ける反力を軽減することができる。
また、上流側大径凸部の外径が、下流側大径凸部の外径より小さいため、鋳造方向の下流に進むにしたがって、互いに対向する上ロールと下ロールとの面間距離を簡易に短くすることができる。
さらに、上流側大径凸部と下流側大径凸部とが、鋳片の幅方向に関する中心線が一致するように配置されているため、大径凸部による圧下位置が、鋳片の幅方向に蛇行することを防ぐことができる。また、大径凸部が分割ロールに設けられているため、大径凸部の一端から分割ロールの一端までの距離を短くすることができる。これらにより、圧下の際に、軸受けやロールへ掛かる負荷を軽減することができる。
【0015】
また、本発明において、前記大径凸部は、前記大径凸部が設けられたロールのうちの前記大径凸部が設けられていない部分であるロール胴部と平行な平坦部を有しており、前記平坦部の鋳片の幅方向に関する幅Wについて、上流側大径凸部の平坦部の幅が、下流側大径凸部の平坦部の幅より大きく、上流側大径凸部の平坦部の幅Wiと、前記上流側大径凸部の直近に配置された下流側大径凸部の平坦部の幅Wi+1とが下記(2)式を満たすことが好ましい。
Wi−Wi+1≧10mm (但し、iは自然数) ・・・(2)
【0016】
下流に位置する鋳片は上流に位置する鋳片よりも凝固が進行しているため、下流に進むにしたがって、必要な圧下力が増す。上記構成によると、鋳片を圧下する、下流側大径凸部の平坦部の表面積が上流側大径凸部の平坦部の表面積より小さくなることから、下流側大径凸部による圧下圧力を上流側大径凸部による圧下圧力より大きくすることができる。よって、下流に進むにしたがって圧下圧力を増加させることができる。
また、大径凸部の圧下により、鋳片表面に凹部が形成され、この凹部によって、圧下量を計測することができる。上記構成によると、上流側大径凸部の平坦部の幅Wiと、上流側大径凸部の直近に配置された下流側大径の平坦部の幅Wi+1 とが10mm以上異なることから、各大径凸部による圧下量を正確に判定することができる。これにより、各大径凸部による圧下不足及び圧下不足の原因を予測でき、ひいては、そのような製品への対応を迅速に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、ポロシティーが発生しやすい位置に、大径凸部が配置されているため、ポロシティーが発生しやすい鋳片の幅位置を確実に圧下しポロシティーを減少させることができるとともに、鋳片の凝固が速く且つポロシティーが殆ど存在しない鋳片幅位置に大径凸部が配置されていないため、圧下時に鋳片からロールが受ける反力を軽減することができる。また、1つのロールスタンド内において、上流側大径凸部の外径が下流側大径凸部の外径より小さいため、鋳造方向の下流に進むにつれて互いに対向する上ロールと下ロールとの面間距離を簡易に短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】連続鋳造機の全体概略図である。
【図2】ロールスタンドの構成を示す図である。
【図3】ロールスタンドに設けられた反基準側のロールの構成を示す図である。
【図4】ロールスタンドに設けられた一対のロールの構成を示す図である。
【図5】(a)は、図4に示すロール一端部の拡大図であり。(b)は、(a)に示す凸部の一部拡大図である。
【図6】鋳片の断面図である。
【図7】鋳片の幅方向についての一端からの距離に対するUT不良発生比率を示す図である。
【図8】実施例で用いた条件を示す図である。
【図9】実施例で用いた条件を示す図である。
【図10】(a)〜(c)は、実施例の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
(連続鋳造機)
図1に示すように、スラブ用の連続鋳造機100は、タンディッシュ1と、タンディッシュ1から浸漬ノズル2を介して注湯された溶鋼を冷却し、所定形状の凝固シェル(凝固殻)を形成する鋳型3と、2次冷却帯に設けられた複数のロール対4とを備えている。ロール対4は、鋳型3の直下から鋳造経路Qに沿って並設されており、図示しないロールスタンドに設けられている。
【0021】
ロール対4は、鋳造経路Qを挟んで対向するように配置されたロール41,42により構成されている。ロール(上ロール)41は、鋳造経路Qの反基準側(連続鋳造される鋳片の上側に対応した側)に配置されている。また、ロール(下ロール)42は、基準側(連続鋳造される鋳片の下側に対応した側)に配置されている。ロール41,42は、それぞれ、ロールの軸方向(鋳片の幅方向)に2〜4分割されている。また、1つのロールスタンドには、約4〜8列のロール41,42が鋳造方向に並設されている。このロールスタンドが、鋳型3の直下から鋳造経路Qに沿って複数並設されている。また、冷却スプレー5が、鋳造方向に隣り合う2列のロール41の間及び鋳造方向に隣り合う2列のロール42の間にそれぞれ設けられている。冷却スプレー5は、鋳型3から引き抜かれた凝固シェル(鋳造経路Qを搬送される凝固シェル)に対して、所定流量の冷却水を噴霧する。
【0022】
鋳造経路Qは、略鉛直方向に延在した垂直経路部と、垂直経路部から下流側へ円弧状に延在した円弧経路部と、円弧経路部の下流に設けられているとともに水平方向に延在した水平経路部(水平部)と、円弧経路部と水平経路部とを滑らかに接続した矯正経路部とを有する。
【0023】
タンディッシュ1に保持された溶鋼は、浸漬ノズル2を介して鋳型3へ注湯され、その後、鋳型3内において冷却される。これにより、鋳型3内では、凝固シェルが形成されるとともに、内部に未凝固部を有する鋳片が形成される。鋳型3内の鋳片は、鋳造経路Qを通過して、複数のロール対4に挟持されながら且つ冷却スプレー5から噴霧される冷却水により冷却されながら、下流側へ送られる。凝固シェルは、鋳片内部へ向かって徐々に凝固成長していき、最終的に、内部まで完全に凝固した鋳片が形成される。
【0024】
本実施形態に係る連続鋳造機によると、例えば、幅が2400mm以下であり且つ厚みが230〜400mmであるスラブ鋳片を鋳造することができる。なお、スラブの鋼種は、特に限定されない。また、本実施形態では、図1に垂直曲げ型の連続鋳造機100を示しているが、連続鋳造機の型式は、垂直曲げ型のものに限られず、曲げ型の連続鋳造機を用いてもよい。
【0025】
連続鋳造機100では、鋳造経路Qの水平経路部で、溶鋼の凝固が完了する。本発明の目的は、水平経路部での圧下により、鋳片に存在するポロシティーを減少させるとともに、水平経路部において、鋳造方向の下流に進むにしたがって1対のロール41,42の面間距離を簡易に短くすることであることから、以下に、この目的を達成するためのロールスタンドの構成について説明する。
【0026】
(鋳造経路Qの水平経路部(水平部)に設置されたロールスタンド)
図2には、鋳造経路Qの水平経路部に設けられたロールスタンド(以下、「ロールスタンド」と呼ぶことがある)の側面図が示されている。図3には、図2に示すロールスタンドに設けられた反基準側のロール(鋳造される鋳片の上側に対応した側に配置されたロール)の構成が示されている。図4には、図2に示すロールスタンドに設けられた一対のロールの構成が示されている。なお、図2〜4には、鋳造経路Qの水平経路部に設けられた複数のロールスタンドのうち1つのロールスタンドを示しているが、鋳造経路Qの水平経路部に設けられた複数のロールスタンドは、図2〜4に示すロールスタンドと略同様な構成を有しているため、説明を省略する。
【0027】
図2に示すように、ロールスタンド10は、鋳片(水平経路部)を挟んで、互いに対向するように配置された上フレーム11a及び下フレーム11bと、鋳造方向に並設された6対のロール対を有している。上フレーム11aは、水平経路部の上側(反基準側)に配置されており、下フレーム11bは、水平経路部の下側(基準側)に配置されている。上フレーム11aには、鋳造方向に所定のピッチで配列された6列の反基準側のロール411,412,413,414,415,416(図1に示すロール41に対応)が取り付けられている。また、下フレーム11bには、鋳造方向に所定のピッチで配列された6列の基準側のロール421,422,423,424,425,426(図1に示すロール42に対応)が設置されている。
【0028】
なお、図2〜4においては、上フレーム11aに設置された6列の基準側ロール41を上流から順にロール411,412,・・・,416とし、下フレーム11bに設置された6列のロール42を上流から順にロール421,422・・・,426とし、ロール411,421、ロール412,422、・・・、ロール416,426により、それぞれ一対のロール対が構成されているものとする。また、上述したように、ロール411,・・・,416,412,・・・,416は、ロールの軸方向(鋳片の幅方向)に2〜4分割されている。本実施形態では、ロール411,412,・・・,416,421,422,・・・,426をそれぞれ構成する分割ロールを、ロールの軸方向に関する一端から他端へ向けて(図3において、同列の3本のロールの左端から右端へ)順に、次のように示している。ロール411を構成する分割ロールを、分割ロール411a,411b,411cとし、ロール412を構成する分割ロールを分割ロール412a,412b,412cとし、ロール413を構成する分割ロールを分割ロール413a,413b,413cとし、・・・、ロール422を構成する分割ロールを分割ロール422a,422b,422cとし、・・・(以下、省略する)と示す(図3,4参照)。
【0029】
図2に示すように、反基準側のロール411,412,413,414,415,416は、軸箱12aを介して、上フレーム11aに取り付けられている。また、基準側のロール421,422,423,424,425,426は、軸箱12bを介して、下フレーム11bに取り付けられている。軸箱12a,12bには、図示しない軸受けが収納されている。上フレーム11aと下フレーム11bとは、互いに略平行になるように配置されているとともに、4本の油圧シリンダ13を介して締結されている。油圧シリンダ13に駆動油を注入することにより、上フレーム11aを、上昇させたり下降させたりすることができる。なお、下フレーム11bは可動せず、固定されている。また、反基準側のロール412,414,416には、それぞれ、凸部(大径凸部)43b,43d,43fが2個ずつ取り付けられている(図3参照)。
【0030】
スラブの連続鋳造のときは(水平経路部において鋳片を圧下するときは)、4本の油圧シリンダ13に、それぞれ同量の駆動油を注入することにより、上フレーム11aを、下フレーム11bに対して略平行な状態を維持しながら下降させる。本実施形態では、後述するように、ロール412,414,416に取り付けられた凸部43b,43d,43fの外径がそれぞれ異なるため、上フレーム11aを、下フレーム11bに対して略平行な状態を維持しながら下降させることにより、互いに対向する基準側のロールと反基準側のロールとの面間距離を、鋳造方向の下流に進むにつれて簡易に短くすることができる。
【0031】
(ロール)
ロール411,412,・・・,416、及びロール421,422,・・・,426は、軸方向(鋳片の幅方向)に2〜4分割されている。そして、分割ロールの両端には、それぞれ、軸箱12aが設けられている(図3参照)。分割ロールを用いることにより、ロールの撓みを防止したり、軸受けに係る負荷を軽減したりすることができる。
【0032】
図3に示すように、ロール412,414,416(分割ロール412a,412c,414a,414c,416a,416b)には、それぞれ凸部43b,43d,43fが設けられている。凸部43b,43d,43fを設けるロールに分割ロールを用いることにより、凸部の一端から凸部が設けられたロールの一端までの距離を短くすることができることから、圧下時の軸受けへの負荷を軽減することができる。
【0033】
なお、ロール41,42の分割数は、特に限定されないが、スラブ鋳片の幅と鋳片の圧下が必要な位置(凸部を設ける位置)との関係から3〜4分割であることが好ましい。また、本実施の形態においては、ロール41の軸方向に関する長さが鋳片(スラブ)の幅と略同じ長さであるロール41,42が用いられている。
【0034】
(凸部(大径凸部))
図3に示すように、ロール412には、2個の凸部43bが鋳片の幅方向に離れて設けられている(図4参照)。また、ロール414には、2個の凸部43dが鋳片の幅方向に離れて設けられている。また、ロール416には、2個の凸部43fが鋳片の幅方向に離れて設けられている。2個の凸部43bは、それぞれ、ロール412の両端から距離Xiだけ離れた位置に配置されている。言い換えると、凸部43bと、それと最も近いロール412の一端とは、距離Xiだけ離れている。また、2個の凸部43dは、それぞれ、ロール414の両端から距離Xi+1だけ離れた位置に配置されている。また、2個の凸部43fは、それぞれ、ロール416の両端から距離Xi+2だけ離れた位置に配置されている。凸部43d,43fについても、凸部43bと同様に、凸部43b,43fと、それと最も近いロール414,416の一端とは、それぞれ距離Xi+1,Xi+2だけ離れている。
【0035】
凸部43b,43d,43fは、それぞれ、ロール412,414,416の外径よりも大きな外径を有するとともに、ロール41(412,414,416)と略同外径の中空が形成された短尺円筒状部材である。また、図2に示すように、凸部43b,43d,43fの外径は、これらの順に大きくなっており、下流に位置するロールに取り付けられた凸部の外径は、上流に位置するロールに取り付けられた凸部の外径より大きい。なお、凸部43b,43d,43fの外径は、ロールスタンド10に設けられた1対のロール対(互いに対向する基準側のロールと反基準側のロールと)の面間距離などに基づいて調整される。
【0036】
また、図3に示すように、凸部43b,43d,43fは、それぞれ、ロール412,414,416に取り付けられたとき、ロール412,414,416の胴部(ロール412,414,416の胴部のうち凸部43b,43d,43fが取り付けられていない部分)と平行な平坦部44b,44d,44fを有している(図3,4参照)。図3では、鋳片の幅方向について、凸部43bの平坦部の幅をWiと示し,凸部43dの平坦部の幅をWi+1と示し、凸部43fの平坦部の幅をWi+2と示している。これらの幅は、Wi>Wi+1>Wi+2となっている。また、本実施形態では、WiとWi+1との差、及びWi+1とWi+2との差が、それぞれ10mm以上ある。このように、凸部43b,43d,43fの外径及び幅は、それぞれ異なっている。
【0037】
凸部43b,43d,43fは、鋳片の幅方向について、略同じ位置に配置されている。そして、略同じ位置に配置された凸部43b,43d,43fは、それぞれの鋳片の幅方向に関する中心(図3に示す一点鎖線)が鋳造方向に一致するように、配置されている。
【0038】
次に、図5を用いて、凸部の形状を説明する。図5(a)は、図4の点線で囲まれた領域の拡大模式図であり、図5(b)は、図5(a)に示す点線で囲まれた領域の拡大模式図である。なお、図5(a),(b)では、ロール412及び凸部43bだけを示し、凸部43d,43fを省略している。図5(a)に示すように、凸部43bの平坦部44bの両端には、エッジ部45bが形成されている。また、図5(b)に示すように、エッジ部45bは、それぞれ、滑らかなR加工(曲率半径:R)が施されているとともに、切り欠き(切り欠き角度:θ)が形成されている。エッジ部45bにR加工及び切り欠きを形成することにより、鋳片の圧下時に、鋳片表面に疵が発生することを防ぐことができる。なお、図5において、「W」,「R」及び「θ」は、以下を示している。
W:鋳片の幅方向についての凸部の平坦部の幅
R:エッジ部に施されたR加工の曲率半径
θ:エッジ部の切り欠き角度
【0039】
本実施形態では、エッジ部45dに施されたR加工の曲率半径Rが10mm以上且つ25mm以下であり、且つ、切り欠き角度が30°以上である。
【0040】
凸部43b,43d,43fは、鋳片を直接圧下するものであるから、ロール41,42と略同等な強度及び硬度を有する材料からなることが好ましい。
【0041】
なお、図5では、凸部43bの拡大図のみを示し、凸部43d,43fの拡大図を省略しているが、凸部43d,43fのエッジ部にも、凸部43bのエッジ部45bと同様に、R加工が施されているとともに、切り欠きが形成されている。
【0042】
続いて、凸部が配置される位置、凸部の外径及び凸部のエッジ部について詳細に説明する。
【0043】
(凸部が配置される位置(1))
本発明は、鋳片の幅方向について、ポロシティーが発生しやすい位置に、凸部を配置し、凸部による圧下によってポロシティーを減少させることを目的としている。そこで、以下において、鋳片の幅方向についての凸部を配置する位置を説明する。
【0044】
連続鋳造においては、溶鋼の凝固速度が鋳片の幅方向に均一でなく、溶鋼の凝固が遅い部位に、ポロシティーが発生する。溶鋼の凝固速度が鋳片の幅方向に均一とならない理由は、主に、浸漬ノズルから鋳型へ吐出される溶鋼の吐出流及び凝固シェルの冷却による干渉が挙げられる。
【0045】
上記理由を、図6を参照しつつ、詳細に説明する。図6(a),(b)には、鋳型内の鋳片の断面図が示されている。スラブの連続鋳造では、上述したように、浸漬ノズルから鋳型へ溶鋼が注湯され、溶鋼は、鋳型内において所定形状の凝固シェルを形成しながら下流へと引き抜かれる。浸漬ノズルから鋳型へ吐出された溶鋼流は、鋳型内の凝固シェルの特定の箇所に衝突するため、その衝突箇所では溶鋼の凝固が遅くなる。例えば、スラブの連続鋳造機には、一般的に、2孔式の浸漬ノズルが用いられる。この浸漬ノズルは、有底円筒形状であって、一対の対向する吐出孔が浸漬ノズルの内底よりも若干上方に形成されている。この浸漬ノズルが用いられた場合、浸漬ノズルの2つの吐出孔から吐出した溶鋼流は、それぞれ、鋳型内で形成された凝固シェルの特定の2つの箇所に衝突する。それによって、図6(a)に示すように、鋳片内部の2つの領域Aで、溶鋼の凝固が遅くなる。
【0046】
また、鋳型内では、未凝固の溶鋼がその静圧によりバルジングする。これにより、鋳片の幅方向について、未凝固部の中央付近(図6(b)に示す領域b)が鋳型と良好に接触し、冷却されやすくなるが、未凝固部の両端部(図6(b)に示す領域a)は、鋳型との接触が十分でなくなる。したがって、未凝固部の両端部(領域a)では、未凝固部(鋳片)の中央付近(領域b)よりも、溶鋼の凝固が遅くなる。このような、鋳型内での溶鋼の凝固の不均一は、2次冷却帯における、鋳片の幅方向についての溶鋼の凝固の不均一により、さらに助長される。
【0047】
そして、上記未凝固部の端部(図6(b)に示す領域a)と、上述した浸漬ノズルから吐出される溶鋼流の衝突箇所(図6(a)に示す領域A)とが一致した場合、鋳片のその幅方向位置では、溶鋼の凝固が非常に遅くなることから、発生するポロシティーの量が多くなる。
【0048】
なお、鋳片の幅方向についての両端部(図6(a)に示す領域C、図6(b)に示す領域c)、詳細には、鋳片の幅方向についての両端から鋳片の厚みの1/2の範囲では、溶鋼の凝固が、上面、下面及び側面から内側に向けて進行する。一方、鋳片の両端からそれぞれ鋳片の厚みの1/2幅を除いた領域では、溶鋼の凝固が、上面及び下面のみから内部へ進行する。したがって、鋳片の幅方向についての両端部(図6(a)に示す領域C、図6(b)に示す領域c)では、溶鋼の凝固が速く、ポロシティーが殆ど存在しない。
【0049】
また、上述した理由から、ポロシティーは、鋳片の幅方向についての中央を挟んで互いに反対側(幅中央を中心とした左右対称の位置)に発生しやすいことが推測される。
【0050】
以上の点を考慮したら、浸漬ノズルから鋳型へ吐出される溶鋼流の流速及びその溶鋼量、鋳片の厚み及び幅、並びに、二次冷却条件(冷却スプレーからの冷却水の量、凝固速度など)などの境界条件をもとに、鋳片の幅方向について、溶鋼の凝固が遅くなる位置、言い換えると、鋳片の幅方向について、ポロシティーが発生しやすい位置を推測できる。
【0051】
なお、上述したように、鋳造経路Qの水平経路部では、溶鋼の凝固が完了することから、溶鋼の凝固が先行して進行している。溶鋼の凝固が進行した箇所には、ポロシティーが殆ど存在していないとともに、この箇所を圧下したら、鋳片から受ける反力により、ロール及び軸受けなどに掛かる負荷が大きくなる。したがって、凸部を、溶鋼の凝固が遅い鋳片の幅方向位置、言い換えると、ポロシティーが存在する位置にのみ配置させれば、ポロシティーを効果的に減少させることができるとともに、鋳片から受ける反力を軽減することが可能となる。
【0052】
次に、図7を用いて、鋳造されたスラブ鋳片のポロシティーが発生する幅方向についての位置と、その発生量との関係を示す一例を説明する。
【0053】
図7には、鋳片の幅一端からの距離(鋳片の幅方向についての一端から他端へ向けての距離)と、UT不良発生比率との関係を示している。UT不良(UT欠陥)は、鋳造された鋳片を圧延して得られた製品(以下、最終製品と呼ぶ)に発生する欠陥であり、鋳造された鋳片に残存したポロシティーに起因して生じるものである。したがって、UT不良発生比率が大きいことは、鋳造された鋳片に残存したポロシティーの量が多いことを示す。また、UT不良発生比率が1%を超える部位は、その部位において、最終製品の品質に実用上の問題が生じる。したがって、鋳片の全ての幅方向についてのUT不良発生比率が1%以下であることが好ましい。
【0054】
以下に、図7に示す例で得られたスラブ鋳片の連続鋳造の条件を説明する。本例では、厚みが280mmであり且つ幅が2100mmであるスラブ鋳片を鋳造した。この連続鋳造に用いた連続鋳造機において、水平経路部に設置されたロールスタンドは、上フレームと、下フレームと、鋳造方向に並設された複数のロール対を有していた。ロール対を構成するロールは、ロール胴部の外径が一定のフラットロールであった。また、ロールスタンドに設けられたロールは、全て同じ外径のロールであった。したがって、鋳片を圧下するときは、上フレーム及び下フレームの少なくとも一方を傾斜させることにより、鋳造方向の下流に進むにしたがって、互いに対向する基準側のロール(上フレームに取り付けられたロール)と反基準側のロール(下フレームに取り付けられたロール)との面間距離が短くなるように調整した。なお、本例で用いた連続鋳造機のその他の構成は、本実施形態の連続鋳造機の構成と略同様であるため、説明を省略する。
【0055】
図7から、本例では、鋳片の幅方向に関する一端から、180mm以上且つ400mm以下である領域(幅220mm)、740mm以上且つ800mm以下である領域(幅60mm)、1100mm以上且つ1180mm以下である領域(幅80mm)、及び、1740mm以上且つ1940mm以下である領域(幅200mm)の4つの幅領域において、UT不良発生比率が1%を超えていた。一方、上記4つの領域を除く鋳片の幅領域には、ポロシティーが殆ど発生していないことが分かる。また、図7から、上記幅領域で、UT不良発生比率が1%を超えた理由は、上述した、浸漬ノズルから鋳型へ吐出される溶鋼の吐出流及び凝固シェルの冷却による干渉の影響を受けていることが推測される。
【0056】
したがって、上記例では、水平経路部に設置されるロールスタンドにおいて、上記4つの鋳片の幅方向についての領域に凸部を配置すれば、それらの領域に発生したポロシティーを減少させることができることから、鋳片の全ての幅方向についてUT不良発生比率を1%以下とすることが可能となる。
【0057】
詳細には、平坦部の幅が240mmである凸部を、鋳片の軸方向に関する一端から170mm離れた位置に配置させる。また、平坦部の幅が80mmである凸部を、鋳片の軸方向に関する一端から720mm離れた位置に配置させる。また、平坦部の幅が100mmである凸部を、鋳片の軸方向に関する一端から1100mm離れた位置に配置させる。また、平坦部の幅が220mmである凸部を、鋳片の軸方向に関する一端から1720mm離れた位置に配置させる。これにより、上記領域に発生したポロシティーを確実に減少させることができる。また、上記領域を除く鋳片の幅領域、言い換えると、溶鋼の凝固が進行した部位に、凸部を配置させないことにより、圧下時に受ける鋳片からの反力を軽減することが可能となる。なお、上述したように、ポロシティーの発生量が多い位置は、鋳片の幅方向について中央を挟んで互いに反対側(幅中央を中心とした左右対称)の位置であることが推測されるため、本例においては、平坦部の幅が240mmである凸部を、鋳片の軸方向に関する両端から170mm離れた位置に配置させ、平坦部の幅が80mmである凸部を、鋳片の軸方向に関する一端から720mm離れた位置に配置させ、且つ、平坦部の幅が100mmである凸部を、鋳片の軸方向に関する一端から1100mm離れた位置に配置させることによっても、上記領域に発生したポロシティーを確実に減少させることができるとともに、圧下時に受ける鋳片からの反力を軽減することができる。
【0058】
以上に説明した理由及び例から、凸部を、鋳片の幅方向に関する両端からそれぞれ幅中央に向けて130mm以上離れた位置であり、且つ、鋳片の幅方向に関する両端からそれぞれ幅中央に向けて600mm以内の位置に配置する。上記範囲の位置は、浸漬ノズルから鋳型へ吐出される溶鋼の吐出流及び凝固シェルの冷却による干渉の影響を受けやすいことから、溶鋼の凝固が遅く、ポロシティーが発生しやすい。したがって、この範囲の鋳片の幅方向についての位置に凸部を配置させることにより、ポロシティーを効果的に減少させることができる。
【0059】
なお、鋳片の幅方向に関する両端からそれぞれ130mm未満の領域、言い換えると、鋳片の幅方向についての両端からそれぞれ鋳片の厚みの1/2までの領域では、上述したように、溶鋼の凝固が、上面、下面及び側面から内部へ進行するため、溶鋼の凝固が速い。したがって、この領域には、ポロシティーが殆ど存在していないため、圧下の必要性が低い。また、この領域では、溶鋼の凝固が進行していることから、この範囲を圧下した際に、鋳片から受ける反力が大きい。したがって、この領域に凸部を配置しないことにより、ロール及び軸受けなどに掛かる負荷を低減することが可能になる。
【0060】
また、鋳片の幅方向に関する両端からそれぞれ幅中央に向けて600mmを越える領域、言い換えると、鋳片の幅方向についての中央付近では、溶鋼の凝固が、比較的、進行している。これは、上述したように、鋳型内で、未凝固の溶鋼がバルジングすることにより、鋳片の幅方向についての中央付近が、鋳型と良好に接触し、溶鋼の凝固が迅速に進行するためである。したがって、この領域では、ポロシティーの発生量が比較的少ないため、圧下の必要性が比較的低い。また、この領域では、溶鋼の凝固が比較的進行していることから、この範囲を圧下した際に、鋳片から受ける反力が大きい。したがって、この領域に凸部を配置しないことにより、ロール及び軸受けなどに掛かる負荷を低減することが可能になる。
【0061】
なお、鋳片の幅と、ロールの軸方向についての長さとは、略同じ長さであることから、凸部を、ロールの軸方向についての両端からそれぞれ中央に向けて130mm以上離れた位置に配置し、且つ、ロールの軸方向についての両端からそれぞれ中央に向けて600mm以内の距離に配置することにより、上述の効果が得られる。
【0062】
したがって、凸部をロールに取り付けるとき、凸部と、その凸部に最も近いロールの一端との距離X(図3に示す Xi,Xi+1,Xi+2)が下記式を満たす距離だけ離して、凸部を配置させる。
130mm≦X≦600mm・・・(1)
なお、ポロシティーは、鋳片の幅方向についての中央を挟んで互いに反対側(幅中央を中心とした左右対称)の位置に発生することが推測されるから、上記Xは、X≦(鋳片の幅の1/2)とする。
【0063】
また、本実施形態では、図3に示す距離Xi,Xi+1,Xi+2が、上記(1)式を満たすように、凸部が配置されている。
【0064】
なお、1本のロールに設けられる凸部の個数は、ポロシティーが発生する位置、言い換えると、上述した、浸漬ノズルから鋳型への溶鋼の吐出量及びその流速、鋳片の厚み及び幅、並びに、二次冷却条件(冷却スプレーからの冷却水の量、凝固速度など)に応じて決めることができるが、上述したように、ポロシティーは、鋳片の幅中央を挟んで互いに反対側(幅中央を中心とした左右対称)の位置に多く発生することが推測されるから、1本のロールに2個以上の凸部を設けるとともにそれらの凸部をロールの軸方向(鋳片の幅方向)に離して設ける。
【0065】
(凸部の幅(1))
上述したように、ポロシティーが発生する鋳片の幅領域に凸部を配置させることにより、ポロシティーを確実に減少させることができるが、圧下時に受ける鋳片からの反力を軽減するためには、ポロシティーの発生量が多い領域だけに凸部を配置させればよい。したがって、凸部の平坦部の幅Wを、ポロシティーの発生量が多い領域の幅に対応するように、調整することにより、圧下時に受ける鋳片からの反力を確実に軽減することができる。ポロシティーが発生しやすい鋳片の幅領域は、上述したように、浸漬ノズルから鋳型への溶鋼の吐出量及びその流速、鋳片の厚み及び幅、並びに、二次冷却条件(冷却スプレーからの冷却水の量、凝固速度など)に応じて決まるが、これらの条件及び図7に示す例を考慮したら、ポロシティーの発生量が多い領域の幅は、約80mm以上であり且つ約400mm以内であることが推測される。そこで、凸部の平坦部の幅Wを、80mm以上且つ400mm以上とする。これにより、ポロシティーを確実に減少することができるとともに、鋳片から受ける反力を確実に軽減することが可能となる。
【0066】
本実施形態では、図3に示す、凸部43bの幅Wi、凸部43dの幅Wi+1及び凸部43fの幅Wi+2が、80mm以上且つ400mm以上となっている。
【0067】
(凸部が配置される位置(2))
図3に示すように、凸部43b,43d,43fの鋳片の幅方向に関する中心(図3に示す一点鎖線)は、それぞれ鋳造方向に一致している。異なる列のロールに設けられた凸部の鋳片の幅方向に関する中心が鋳造方向に一致していない場合は、圧下位置が鋳片の幅方向に蛇行するため、軸受けに掛かる負荷が大きくなる。そこで、図3に示すように、異なる列のロールに設けられた凸部の鋳片の幅方向に関する中心、言い換えると、上流側に位置するロールに設けられた凸部の鋳片の幅方向に関する中心と、下流側に位置するロールに設けられた凸部の鋳片の幅方向に関する中心とを鋳造方向に略一致させれば、圧下位置が鋳片の幅方向に蛇行しないことから、軸受けに掛かる負荷を軽減することができる。
【0068】
(凸部が配置される位置(3))
図3に示すロールスタンドにおいては、凸部により鋳片が圧下される。したがって、凸部がロールスタンド内の上流側又は下流側などの特定の箇所に集中して配置されている場合は、圧下の際、ロールスタンド内の特定のロール、特定の軸受け、及び特定の油圧シリンダーに集中的に荷重が掛かる。例えば、図3に示すロールスタンドにおいて、鋳造方向の上流側のロール411,412,413に凸部が配置された場合、そのロールスタンドでは、鋳造方向の上流側に配置された、ロール411,412,413、軸受け、及び油圧シリンダーに集中して荷重が掛かる。よって、これを防ぐために、凸部を鋳造方向に均一に配置することが好ましい。また、凸部を鋳造方向に均一に配置することにより、鋳片の圧下時に、上フレーム及び下フレームが受ける反力を上フレーム全体及び下フレーム全体に分散させることができるため、特定の圧下シリンダーに掛かる負荷を低減することができる。凸部を、鋳造方向に均一に配置させる配列として、例えば、図3に示すように、ロールスタンド10に設けられた2,4,6列目のロール412,414,416に、それぞれ、凸部43b,43d,43fを設ける。また、ロールスタンド10において、全てのロール411,412,413,414,415,416に凸部を設けたり、1,3,5列目のロール411,413,415に凸部を設けたりすることによっても、凸部を鋳造方向に均一に配置することができる。
【0069】
(凸部の径)
溶鋼の凝固が進行するにつれて鋳片の体積(厚み)が減少するため、溶鋼の凝固末期となる鋳造経路Qの水平経路部では、鋳造方向の下流に進むにしたがって、互いに対向する反準側のロール41と基準側のロール42との面間距離を短くすることが必要である(図1参照)。互いに対向するロールの面間距離を調整する方法として、例えば、ロールスタンドを構成する上フレームと下フレームとの少なくとも一方を傾斜させる方法が挙げられるが、この方法は、非常に複雑な調整を要する。本実施形態においては、図2に示すように、ロール412,414,416にそれぞれ取り付けられた凸部43b,43d,43fの外径が、これらの順に大きくなっている。したがって、上フレーム11aを、下フレーム11bに対して略平行な状態を維持しながら下降させることにより、互いに対向する基準側のロールと反基準側のロールとの面間距離を、鋳造方向の下流に進むにつれて簡易に短くすることができる。よって、上フレーム11aと下フレーム11bとの少なくとも一方を傾斜させるという複雑な調整が不要となる。
【0070】
詳細には、鋳造方向に配置された複数の凸部において、上流側に配置されたロールに取り付けられる凸部の外径をdi、そのロールより下流側に配置されたロールに取り付けられる凸部の外径をdi+1、その下流側に配置されたロールより下流側に配置されたロールに取り付けられる凸部の外径をdi+2、・・・と示す場合、下記式を満たす。
di<di+1<di+2<・・・(但し、iは自然数)
【0071】
本実施形態では、図2に示すように、凸部43bの外径<凸部43dの外径<凸部43fの外径となっている。したがって、上フレーム11aを、下フレーム11bに対して略平行な状態を維持しながら下降させるだけにより、鋳造方向の下流へ進むにしたがって、簡易にロールの面間距離を短くすることができる。なお、凸部43b,43d,43fの外径は、上記要件を満たす限り特に限定されず、鋳片の形状(幅及び厚みなど)、鋼種及び操業条件などに応じて、当業者により適切な外径に設定可能なものである。
【0072】
(凸部の平坦部の幅)
溶鋼の凝固末期となる鋳造経路Qの水平経路部では、鋳造方向の下流に進むにしたがって、溶鋼の凝固が進行しているから、圧下力を増加させることが必要となる。本実施形態においては、凸部43b,43d,43fによって、鋳片が圧下されるため、凸部43b,43d,43fの表面積を調整することにより、圧下圧力を調整することができる。詳細には、凸部43b,43d,43fの平坦部44b,44d,44fの幅を小さくすることにより、凸部43b,43d,43fの平坦部44b,44d,44fの表面積が小さくなるから、圧下圧力を増加させることができる。
【0073】
凸部43b,43d,43fの幅は、鋳造方向についての下流で最低限必要な圧下力をもとに決定することができる。なお、下流に位置するロールに取り付けられた凸部の幅と、上流側に配置されたロールに取り付けられた凸部の幅とは、同幅としてもよいが、上述したように、下流側では、上流側よりも溶鋼の凝固が進行していることから、上流側よりも大きな圧下圧力が必要となる。そこで、下流側に配置されたロールに取り付けられる凸部の幅を、上流側に配置されたロールに取り付けられる凸部の幅よりも小さくする。
【0074】
以上から、鋳造方向に配置された複数の凸部において、上流側に配置されたロールに取り付けられる凸部の幅をWi(但し、iは自然数)、そのロールより下流側に配置されたロールに取り付けられる凸部の幅をWi+1、その下流側に配置されたロールより下流側に配置されたロールに取り付けられる凸部の幅Wi+2、・・・と示す場合、下記式を満たす。
Wi>Wi+1>Wi+2>・・・
【0075】
また、凸部の圧下により、鋳片の表面に凹形状が形成される。この凹形状から圧下量を計測することができる。上流に配置された凸部の幅と下流に配置された凸部の幅とが異なれば、鋳造方向に配置された各凸部による凹形状の相違が明確化するため、圧下量が不足した位置及び圧下不足の原因を判別しやすくなるとともに、圧下不足による製品へ迅速に対応することができる。
【0076】
以上の点を考慮したら、上流に位置するロールに配置された凸部の幅Wiと、これに直近する下流に位置するロールに配置された凸部の幅Wi+1とが、下記式を満たすことが好ましい。
Wi−Wi+1≧10mm (但し、iは自然数であり、i=1,2,3・・・)
【0077】
本実施形態においては、凸部43bの幅(図3に示すWi)、凸部43dの幅(図3に示すWi+1)及び凸部43fの幅(図3に示すWi+2)が、凸部43bの幅>凸部43dの幅>凸部43fの幅となっている。
また、凸部43bの幅−凸部43dの幅≧10mm、且つ、凸部43dの幅−凸部43fの幅≧10mmとなっている。
【0078】
(凸部のエッジ部)
上述したように、圧下後は、凸部により鋳片表面に凹形状が形成されるため、凸部のエッジ部が尖っている場合は、最終製品に凹形状に起因する表面疵が残存することがある。そこで、凸部のエッジ部に、R加工を施したり、切り欠きを形成したりすることにより、鋳片の表面疵を減少させる。一方、エッジ部のR加工された部位及び切り欠かれた部位は、凸部の平坦部と同様に、圧下時に、鋳片から反力を受けるため、R加工における半径Rが大きすぎる場合は、R部に対して鋳片から受ける反力が大きくなり、切り欠き角度θが小さすぎる場合は、切り欠き面に対して鋳片から受ける反力が大きくなる。したがって、R加工における曲率半径Rを10mm以上且つ25mm未満とすることが好ましい。また、切り欠き角度θを30°以上とすることが好ましい。
【0079】
以上に述べたように、本実施形態に係る連続鋳造機100によると以下の効果を奏する。2つの凸部43bが、ポロシティーが発生しやすい位置、言い換えると、ロール412の両端のそれぞれから幅中央に向けて距離Xiだけ離れた位置に配置されている。また、2つの凸部43dが、ロール414の両端のそれぞれから幅中央に向けて距離Xi+1だけ離れた位置に配置されている。また、2つの凸部43fが、ロール416の両端のそれぞれから幅中央に向けて距離Xi+2だけ離れた位置に配置されている。したがって、ポロシティーが存在する鋳片の幅方向についての位置を、凸部43b,43d,43fにより効果的に圧下することができる。これにより、ポロシティーを減少させることができる。また、鋳片の凝固が速く且つポロシティーが殆ど存在しない鋳片の幅方向についての位置に、大径凸部が配置されないため、その位置が圧下されない。よって、圧下時に鋳片から受ける反力を軽減することができる。
【0080】
また、凸部43b,43d,43fの平坦部44b,44d,44fの幅Wi,Wi+1,Wi+2が、ポロシティーの発生量が多い領域の幅に対応する大きさに形成されていることから、ポロシティーを確実に減少することができるとともに、鋳片から受ける反力を確実に軽減することができる。
【0081】
さらに、1つのロールスタンド10内において、凸部43bの外径>凸部の外径43d>凸部43fの外径となっているため、上フレーム11aを、下フレーム11bに対して略平行な状態を維持しながら下降させることにより、鋳造方向の下流に進むしたがって、互いに対向する基準側のロールと半基準側のロールとの面間距離を簡易に短くすることができる。
【0082】
そして、鋳片の同じ幅位置に配置された凸部43b,43d,43fが、それらの中心線が一致するように配置されているため、凸部43b,43d,43fによる圧下位置が、鋳片の幅方向に蛇行しない。これにより、軸受12a,12b及びロール412,414,416などへ掛かる負荷を軽減することができる。また、凸部43b,43d,43fが分割ロール412a,412c,414a,414c,416a,416cに設けられているため、凸部の一端から分割ロールの一端までの距離を短くすることができる。これにより、鋳片の圧下の際に軸受けやロールへ掛かる負荷を軽減することができる。
【0083】
また、凸部43b,43d,43fの平坦部44b,44d,44fの幅Wi,Wi+1,Wi+2が、Wi>Wi+1>Wi+2であるため、平坦部44b,44d,44fの順に、それらの表面積が小さくなっている。これにより、下流に進むにしたがって圧下力を増加させることができる。
【0084】
さらに、平坦部44bの幅Wiと、平坦部44dの幅Wi+1と、平坦部44fの幅Wi+2とが、Wi−Wi+1≧10mm及びWi+1−Wi+2≧10mmを満たすことから、凸部43b,43d,43fのそれぞれによる圧下量を正確に判定することができる。これにより、凸部43b,43d,43fのそれぞれによる圧下不足及び圧下不足の原因を予測でき、ひいては、そのような製品への対応を迅速に行うことができる。
【実施例】
【0085】
次に、本発明に係る実施例を説明する。
【0086】
表1,2に示す境界条件及び図8,9に示す物性値をもとに、伝熱・凝固解析を行い、凸部を配置する位置に対するロールが受ける反力(以下、「ロール反力」と呼ぶ)、凸部のエッジ部の切り欠き角度θに対するロール反力、及び凸部のエッジ部の曲率半径(R)に対するロール反力を求めた。なお、本実施例に係る連続鋳造機の構成は、表1,2に示す境界条件、凸部を配置する位置、切り欠き角度θ及び曲率半径(R)を除いて、上述した本実施形態にかかる連続鋳造機と略同様な構成の連続鋳造機であるため、説明を省略する。
【0087】
<解析方法>
(手順1)
表1に示すスラブの各種伝熱境界条件、表2に示す中炭素鋼の固相密度、液相密度及び凝固潜熱並びに図8(a),(b)に示す条件(「工業用炉設計便覧」、社団法人 新日本鋳鍛造協会、P.71)を用いて、伝熱・凝固解析を行った。伝熱・凝固計算には、「CASTEM」(「(株)神戸製鋼所技報」、1987年、Vol.37、No.4、P.99‐100、及び「(株)神戸製鋼所技報」、1985年、Vol.35、No.2、P.75)を用いた。上記解析により、図8(c)に示す温度分布(固相率と温度との関係)を算出した。
【0088】
なお、二次冷却の熱伝達係数(α)は、次の三塚‐Hoogendoomの式(日本鉄鋼協会 特別報告書、No.29、鋼材の強制冷却、p.19)を用いて算出した。
logα=2.358+0.663logW−0.00147θS
ここで、Wは水量密度(l/m2・min)であり、θsは鋳片表面温度(℃)である。水量密度Wには、連続鋳造機の各部位に分配される水量をノズルの本数で除した値を用いた。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
(手順2)
次に、図8(c)に示す温度分布、図9(a),(b)に示す条件及び表1に示す各種伝熱境界条件を用いて、弾塑性解析を行い、圧下時にロールが鋳片から受ける反力(以下、ロール反力と示す)を求めた。解析には、汎用されている「ABAQUS」を用いた。この結果を図10(a)〜(c)に示す。
【0092】
なお、上記弾塑性解析においては、スラブ鋳片の幅方向についての中央を中心に左右対称とした1/2モデルにより算出した。また、水平経路部の圧下を実施する前に、スラブ中心部に、直径3mmの球形状のポロシティーが存在すると仮定した。さらに、ロールスタンドに設置されたロールは剛体からなるものとし、ロールの移動及び回転を考慮して解析した。以下に、上記伝熱凝固解析及び弾組成解析の条件を示す。
<伝熱凝固解析及び弾組成解析の条件>
・1つのロールスタンドに設置されたロール列数:6列
・ロールピッチ(鋳造方向に並設された隣り合うロールの面間距離):270mm
・凸部の配置:1つのロールスタンドにおいて、凸部を、鋳造方向の上流から下流へ2,4,6列目のロールに設置した。また、2,4,6列目の各ロールに、凸部を2個ずつ取り付けた。1列のロールに取り付けられた2個の凸部は、鋳片の幅方向に離れて設けられていた。
・スラブ鋳片の鋳造方向に関する断面:(厚み)250〜400mm×(幅)1000〜2400mm
【0093】
図10(a)には、ロールの一端から凸部までの距離に対するロール反力を示している。図10(b)には、凸部のエッジ部の切り欠き角度(θ)に対するロール反力を示している。図10(c)は、凸部のエッジ部の曲率半径(R)に対するロール反力を示している。
【0094】
また、以下に、図10(a)〜(c)の各解析条件を示す。
(図10(a))
図10(a)には、凸部の両エッジ部にR加工が施されたとき(切り欠きが形成されていないとき)の解析の結果が示されている。なお、以下の解析条件において、圧下量は、「凸部の外径」と「ロールの外径」との差を示す。
<解析条件>
・鋳片幅:2100mm
・圧下量:18mm
・凸部の平坦部の幅W:100mm
・凸部のエッジ部の曲率半径(R):10mm
(図10(b))
図10(b)には、凸部の両エッジ部に、R加工が施されているとともに切り欠きが形成されたときの解析の結果が示されている。
<解析条件>
・鋳片幅:2100mm
・圧下量:18mm
・凸部の平坦部の幅W:100mm
・凸部のエッジ部の曲率半径(R):10mm
・エッジ部の切り欠き幅:5mm/片側(10mm/両側)
・ロールの一端から凸部の鋳片の幅方向についての中心までの距離:215mm
(図10(c))
図10(c)には、凸部の両エッジ部に、R加工が施されているとともに切り欠きが形成されてたときの解析の結果が示されている。
<解析条件>
・鋳片幅:2100mm
・圧下量:18mm
・凸部の平坦部の幅W:100mm
・切り欠き角度(θ):30°
・エッジ部の切り欠き幅:5mm/片側(10mm/両側)
・ロールの一端から凸部の鋳片の幅方向についての中心までの距離:215mm
【0095】
なお、連続鋳造機に、一般的に用いられる軸受け(24024形(外径180mm×内径120mm×幅60mm)の基本静ラジアル定格荷重(Cor)は、70tonfである。よって、ロール両端に設けられた軸受けが損傷しない合計荷重の上限を、70kgfとし、ロール反力が70kgfを超える場合は、軸受けがロール反力(荷重)に耐えられず、損傷すると推測した。なお、ロール両端に設けられた軸受けにそれぞれ均等に荷重が掛かかれば、安全係数が2となる。したがって、この場合、ロール反力が70kgfであれば、1つの軸受け(ロールの一端に設けられた軸受け)に掛かる荷重は35kgfとなる。
【0096】
<解析結果>
図10(a)から、ロール一端から凸部までの距離が130mm未満であるときは、ロール反力が70kgfを超えるため、軸受けが損傷することが推測される。このため、ロール一端から凸部までの距離を130mm以上とすることにより、軸受けの損傷を防ぐことができる。
【0097】
図10(b)から、凸部のエッジ部の切り欠き角度が30°未満であるときは、ロール反力が70kgfを超えるため、軸受けが損傷することが推測される。このため、凸部のエッジ部の切り欠き角度を30°以上とすることにより、軸受けの損傷を防ぐことができる。
【0098】
図10(c)から、凸部のエッジ部の曲率半径(R)が25mmを超えるときは、ロール反力が70kgfを超えるため、軸受けが損傷することが推測される。このため、凸部のエッジ部の曲率半径(R)を25mm未満とすることにより、軸受けの損傷を防ぐことができる。
【0099】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態及び実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施の形態においては、反基準側のロール412,414,416に凸部43b,43d,43fが設けられているが、基準側のロールにも凸部が設けられていたり、基準側のロールにのみ凸部が設けられていたりしてもよい。
【0100】
また、本実施の形態においては、1つのロールスタンドに6列のロールを設けたが、1つのロールスタンドに設けるロールは、6列のロールに限られず、例えば、2〜8列のロールとしてもよい。また、これに合わせて、凸部を設けるロール列数は、本実施の形態に示すような、3列に限られず、例えば、2〜8列としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、スラブ用連続鋳造機を構成するロールスタンドに適用される。
【符号の説明】
【0102】
1 タンディッシュ
2 浸漬ノズル
3 鋳型
10 ロールスタンド
11a 上フレーム
11b 下フレーム
12a,12b 軸箱
13 油圧シリンダ
43b,43d,43f 凸部(大径凸部)
44b,44d,44f 平坦部
45b,45d,45f エッジ部
41,411,412,413,414,415,416 ロール(上ロール)
42,421,422,423,424,425,426 ロール(下ロール)
411a,411b,411c,412a,412b,412c,413a,413b,413c,414a,414c,416a,416b 分割ロール
100 連続鋳造機
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラブ用連続鋳造機の水平部に設置されるロールスタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
鋼の連続鋳造工程においては、溶鋼の凝固末期に、鋳片を鋳造方向に圧下することにより、鋳片内部に発生したポロシティーを減少させている。このとき、鋳片を幅方向全体にわたって圧下した場合は、二次冷却などにより凝固が速い鋳片幅端部から大きな反力を受けるため、ロールや軸受けに負荷がかかる。この結果、ロールや軸受けなどの強度を高めることが必要となる。このような点を考慮して、特許文献1においては、必要な領域のみ優先的に圧下できるように、固相率が0.7以下の幅領域(鋳片の中央付近に配置される領域)のロール胴部の直径を、鋳片の幅方向両端部に配置されるロール胴部の直径より大きくしたロールを用いて、鋳片を圧下している。また、このロールを、鋳片の固相率が0.3以降となる位置から完全凝固位置まで鋳造方向に並設させることにより、ポロシティーを徐々に減少させている。
【0003】
特許文献2,3には、ポロシティーの減少を目的としたものではないが、中心偏析を減少させることを目的とし、局部的に鋳片を圧下する技術が開示されている。
【0004】
特許文献2に開示された方法は、未凝固部を含んだ鋳片をバルジングさせた後に、鋳片の厚み方向に離れた凝固界面の鋳片幅両端部を圧着させることを目的として、ロール胴部の両端部近傍のロール径がロール胴部の中央部のロール径より大きいロールを用いる方法である。上記ロールを用いる前に、ロール胴部のロール径が一定であるフラットロールを用いて、鋳片幅中央部の凝固界面を圧着させるが、ロール胴部の両端部近傍のロール径が中央部のロール径より大きいロールによる圧下は、フラットロールでは圧着させることができなかった凝固界面の鋳片幅両端部を圧着させること、及び、両側の凝固界面の間に存在する濃化溶鋼を鋳造方向の下流へ排出することを目的としているため、該ロールは溶鋼の凝固完了前の最終部にのみ配置される。
【0005】
特許文献3に開示された方法は、鋳片幅方向に同じ圧下量を加えることができるように、連続鋳造工程の最終凝固部において、圧下量が不足する鋳片の1/4幅位置及び3/4幅位置より鋳片端部側に相当する位置に大径部が形成されたロールを有する一対のロール対を用いて鋳片を圧下する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08‐257715号公報
【特許文献2】特開2001‐334353号公報
【特許文献3】特開平06−218510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
溶鋼の凝固末期においては、鋳片の凝固にともなって鋳片の体積(厚み)が減少するため、鋳造方向の下流へ進むにつれてロール対を構成する上下ロールの面間距離を短くすることが必要となる。鋳造方向に並設されたロールが全て同じロール径である場合、ロール対毎に上下ロールの面間距離を調整することが必要となる。また、複数対のロールが1つのロールスタンドにまとめて設けられている場合は、上下ロールを保持する上下スタンドをそれぞれ傾斜させることにより、上下ロールの面間距離を調整することが必要となる。しかしながら、この上下ロールの面間距離の調整は、非常に複雑な調整を要する。
【0008】
特許文献1においては、ロール胴部の中央付近の直径を両端部の直径より大きくしたロールが、鋳造方向に並設されていることが開示されている。しかし、並設されたロールについては、固相率が0.7以下の幅領域(鋳片の中央部分)に相当するロール胴部の直径を、幅方向両端部直径より大きくするように調整されているだけであることから、鋳造方向に並設された複数列のロール(ロール径)は、全て同じロール(ロール径)であると考えられる。したがって、特許文献1に開示された方法では、鋳造方向の下流へ進むにつれて上下ロールの面間距離を小さくするために、ロール対ごとにロール面間距離を調整したり、上下ロールを保持する上下スタンドを傾斜させたりすることが必要であると考えられる。
【0009】
また、特許文献2においては、ロール胴部のロール径が一定であるフラットロールの下流に、ロール胴部の両端部近傍のロール径がロール胴部の中央部のロール径より大きいロールが配置されることが開示されている。しかし、フラットロールの下流に配置された上述のロールは、鋳片の凝固が完了する前の最終位置に1つだけ配置させておけばよいことから、特許文献2においては、上述のロールを除いたら、フラットロールが鋳造方向に並設されていると考えられる。また、特許文献2においては、このフラットロールのロール径について着目していないため、鋳造方向に並設されたフラットロールは、全て同径のロールであると考えられる。
【0010】
さらに、特許文献3においては、圧下量が不足する鋳片幅位置に大径部を配置させたロールを用いているが、このロールは、あくまで一対のロール対にのみ用いられればよいことが開示されている。したがって、特許文献3においては、上述の大径部が形成されたロールを除いて、鋳造方向に、同径のフラットロールが並設されていると考えられる。また、上述の大径部が形成されたロールが鋳造方向に並設されていたとしても、これらのロールは同外径のロールであると考えられる。
【0011】
以上から、特許文献2,3においても、同外径のロールが、鋳造方向に並設されていると考えられるため、鋳造方向の下流へ進むにつれて上下ロールの面間距離を短くするためには、上下ロール自体の面間距離を調整したり、上下フレームを傾斜させたりする複雑な距離調整を要する。
【0012】
そこで、本発明の目的は、鋳片から受ける反力を軽減しつつポロシティーを減少させることができるとともに、複雑な上下ロールの面間距離調整を行うことなく、鋳造方向の下流に進むにつれて上下ロール面間距離を簡易に短くすることができる、スラブの連続鋳造機のロールスタンドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、スラブの連続鋳造機の水平部に設置されるロールスタンドであって、前記ロールスタンドには、互いに対向する上ロール及び下ロールからなるロール対が鋳造方向に2対以上並設されており、前記上ロール及び前記下ロールは、ロールの軸方向に2〜4分割されている。また、前記上ロール及び前記下ロールの少なくとも一方のロールに、前記上ロール及び前記下ロールより大きな外径を有する大径凸部が設けられている。2つ以上の前記大径凸部が、ロールの軸方向に2〜4分割された1列のロールに、鋳片の幅方向に離れて設けられており、前記ロールの軸方向に2〜4分割された1列のロールに設けられた、前記2つ以上の大径凸部のうち、鋳片の幅方向について最も外側に設けられた大径凸部が、その大径凸部に最も近いロールの一端から、下記(1)式を満たす距離Xだけ離れて配置されている。
130mm≦X ・・・(1)
また、上流側ロールに設けられた上流側大径凸部の鋳片の幅方向に関する中心線と、前記上流側ロールより下流に位置する下流側ロールに設けられた下流側大径凸部の鋳片の幅方向に関する中心線とがそれぞれ一致しており、上流側大径凸部の外径が、下流側大径凸部の外径より小さい。
【0014】
本発明によると、ポロシティーが発生しやすい位置、言い換えると、鋳片の幅両端のそれぞれから幅中央に向けて130mm以上離れた幅位置に、大径凸部が複数箇所に配置されているため、ポロシティーが発生しやすい鋳片の幅位置を効果的に圧下することができる。これにより、ポロシティーを減少させることができる。また、鋳片の凝固が速く且つポロシティーが殆ど存在しない鋳片の幅方向についての位置に、大径凸部が配置されない。よって、その位置が圧下されないことから、圧下時に鋳片から受ける反力を軽減することができる。
また、上流側大径凸部の外径が、下流側大径凸部の外径より小さいため、鋳造方向の下流に進むにしたがって、互いに対向する上ロールと下ロールとの面間距離を簡易に短くすることができる。
さらに、上流側大径凸部と下流側大径凸部とが、鋳片の幅方向に関する中心線が一致するように配置されているため、大径凸部による圧下位置が、鋳片の幅方向に蛇行することを防ぐことができる。また、大径凸部が分割ロールに設けられているため、大径凸部の一端から分割ロールの一端までの距離を短くすることができる。これらにより、圧下の際に、軸受けやロールへ掛かる負荷を軽減することができる。
【0015】
また、本発明において、前記大径凸部は、前記大径凸部が設けられたロールのうちの前記大径凸部が設けられていない部分であるロール胴部と平行な平坦部を有しており、前記平坦部の鋳片の幅方向に関する幅Wについて、上流側大径凸部の平坦部の幅が、下流側大径凸部の平坦部の幅より大きく、上流側大径凸部の平坦部の幅Wiと、前記上流側大径凸部の直近に配置された下流側大径凸部の平坦部の幅Wi+1とが下記(2)式を満たすことが好ましい。
Wi−Wi+1≧10mm (但し、iは自然数) ・・・(2)
【0016】
下流に位置する鋳片は上流に位置する鋳片よりも凝固が進行しているため、下流に進むにしたがって、必要な圧下力が増す。上記構成によると、鋳片を圧下する、下流側大径凸部の平坦部の表面積が上流側大径凸部の平坦部の表面積より小さくなることから、下流側大径凸部による圧下圧力を上流側大径凸部による圧下圧力より大きくすることができる。よって、下流に進むにしたがって圧下圧力を増加させることができる。
また、大径凸部の圧下により、鋳片表面に凹部が形成され、この凹部によって、圧下量を計測することができる。上記構成によると、上流側大径凸部の平坦部の幅Wiと、上流側大径凸部の直近に配置された下流側大径の平坦部の幅Wi+1 とが10mm以上異なることから、各大径凸部による圧下量を正確に判定することができる。これにより、各大径凸部による圧下不足及び圧下不足の原因を予測でき、ひいては、そのような製品への対応を迅速に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、ポロシティーが発生しやすい位置に、大径凸部が配置されているため、ポロシティーが発生しやすい鋳片の幅位置を確実に圧下しポロシティーを減少させることができるとともに、鋳片の凝固が速く且つポロシティーが殆ど存在しない鋳片幅位置に大径凸部が配置されていないため、圧下時に鋳片からロールが受ける反力を軽減することができる。また、1つのロールスタンド内において、上流側大径凸部の外径が下流側大径凸部の外径より小さいため、鋳造方向の下流に進むにつれて互いに対向する上ロールと下ロールとの面間距離を簡易に短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】連続鋳造機の全体概略図である。
【図2】ロールスタンドの構成を示す図である。
【図3】ロールスタンドに設けられた反基準側のロールの構成を示す図である。
【図4】ロールスタンドに設けられた一対のロールの構成を示す図である。
【図5】(a)は、図4に示すロール一端部の拡大図であり。(b)は、(a)に示す凸部の一部拡大図である。
【図6】鋳片の断面図である。
【図7】鋳片の幅方向についての一端からの距離に対するUT不良発生比率を示す図である。
【図8】実施例で用いた条件を示す図である。
【図9】実施例で用いた条件を示す図である。
【図10】(a)〜(c)は、実施例の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
(連続鋳造機)
図1に示すように、スラブ用の連続鋳造機100は、タンディッシュ1と、タンディッシュ1から浸漬ノズル2を介して注湯された溶鋼を冷却し、所定形状の凝固シェル(凝固殻)を形成する鋳型3と、2次冷却帯に設けられた複数のロール対4とを備えている。ロール対4は、鋳型3の直下から鋳造経路Qに沿って並設されており、図示しないロールスタンドに設けられている。
【0021】
ロール対4は、鋳造経路Qを挟んで対向するように配置されたロール41,42により構成されている。ロール(上ロール)41は、鋳造経路Qの反基準側(連続鋳造される鋳片の上側に対応した側)に配置されている。また、ロール(下ロール)42は、基準側(連続鋳造される鋳片の下側に対応した側)に配置されている。ロール41,42は、それぞれ、ロールの軸方向(鋳片の幅方向)に2〜4分割されている。また、1つのロールスタンドには、約4〜8列のロール41,42が鋳造方向に並設されている。このロールスタンドが、鋳型3の直下から鋳造経路Qに沿って複数並設されている。また、冷却スプレー5が、鋳造方向に隣り合う2列のロール41の間及び鋳造方向に隣り合う2列のロール42の間にそれぞれ設けられている。冷却スプレー5は、鋳型3から引き抜かれた凝固シェル(鋳造経路Qを搬送される凝固シェル)に対して、所定流量の冷却水を噴霧する。
【0022】
鋳造経路Qは、略鉛直方向に延在した垂直経路部と、垂直経路部から下流側へ円弧状に延在した円弧経路部と、円弧経路部の下流に設けられているとともに水平方向に延在した水平経路部(水平部)と、円弧経路部と水平経路部とを滑らかに接続した矯正経路部とを有する。
【0023】
タンディッシュ1に保持された溶鋼は、浸漬ノズル2を介して鋳型3へ注湯され、その後、鋳型3内において冷却される。これにより、鋳型3内では、凝固シェルが形成されるとともに、内部に未凝固部を有する鋳片が形成される。鋳型3内の鋳片は、鋳造経路Qを通過して、複数のロール対4に挟持されながら且つ冷却スプレー5から噴霧される冷却水により冷却されながら、下流側へ送られる。凝固シェルは、鋳片内部へ向かって徐々に凝固成長していき、最終的に、内部まで完全に凝固した鋳片が形成される。
【0024】
本実施形態に係る連続鋳造機によると、例えば、幅が2400mm以下であり且つ厚みが230〜400mmであるスラブ鋳片を鋳造することができる。なお、スラブの鋼種は、特に限定されない。また、本実施形態では、図1に垂直曲げ型の連続鋳造機100を示しているが、連続鋳造機の型式は、垂直曲げ型のものに限られず、曲げ型の連続鋳造機を用いてもよい。
【0025】
連続鋳造機100では、鋳造経路Qの水平経路部で、溶鋼の凝固が完了する。本発明の目的は、水平経路部での圧下により、鋳片に存在するポロシティーを減少させるとともに、水平経路部において、鋳造方向の下流に進むにしたがって1対のロール41,42の面間距離を簡易に短くすることであることから、以下に、この目的を達成するためのロールスタンドの構成について説明する。
【0026】
(鋳造経路Qの水平経路部(水平部)に設置されたロールスタンド)
図2には、鋳造経路Qの水平経路部に設けられたロールスタンド(以下、「ロールスタンド」と呼ぶことがある)の側面図が示されている。図3には、図2に示すロールスタンドに設けられた反基準側のロール(鋳造される鋳片の上側に対応した側に配置されたロール)の構成が示されている。図4には、図2に示すロールスタンドに設けられた一対のロールの構成が示されている。なお、図2〜4には、鋳造経路Qの水平経路部に設けられた複数のロールスタンドのうち1つのロールスタンドを示しているが、鋳造経路Qの水平経路部に設けられた複数のロールスタンドは、図2〜4に示すロールスタンドと略同様な構成を有しているため、説明を省略する。
【0027】
図2に示すように、ロールスタンド10は、鋳片(水平経路部)を挟んで、互いに対向するように配置された上フレーム11a及び下フレーム11bと、鋳造方向に並設された6対のロール対を有している。上フレーム11aは、水平経路部の上側(反基準側)に配置されており、下フレーム11bは、水平経路部の下側(基準側)に配置されている。上フレーム11aには、鋳造方向に所定のピッチで配列された6列の反基準側のロール411,412,413,414,415,416(図1に示すロール41に対応)が取り付けられている。また、下フレーム11bには、鋳造方向に所定のピッチで配列された6列の基準側のロール421,422,423,424,425,426(図1に示すロール42に対応)が設置されている。
【0028】
なお、図2〜4においては、上フレーム11aに設置された6列の基準側ロール41を上流から順にロール411,412,・・・,416とし、下フレーム11bに設置された6列のロール42を上流から順にロール421,422・・・,426とし、ロール411,421、ロール412,422、・・・、ロール416,426により、それぞれ一対のロール対が構成されているものとする。また、上述したように、ロール411,・・・,416,412,・・・,416は、ロールの軸方向(鋳片の幅方向)に2〜4分割されている。本実施形態では、ロール411,412,・・・,416,421,422,・・・,426をそれぞれ構成する分割ロールを、ロールの軸方向に関する一端から他端へ向けて(図3において、同列の3本のロールの左端から右端へ)順に、次のように示している。ロール411を構成する分割ロールを、分割ロール411a,411b,411cとし、ロール412を構成する分割ロールを分割ロール412a,412b,412cとし、ロール413を構成する分割ロールを分割ロール413a,413b,413cとし、・・・、ロール422を構成する分割ロールを分割ロール422a,422b,422cとし、・・・(以下、省略する)と示す(図3,4参照)。
【0029】
図2に示すように、反基準側のロール411,412,413,414,415,416は、軸箱12aを介して、上フレーム11aに取り付けられている。また、基準側のロール421,422,423,424,425,426は、軸箱12bを介して、下フレーム11bに取り付けられている。軸箱12a,12bには、図示しない軸受けが収納されている。上フレーム11aと下フレーム11bとは、互いに略平行になるように配置されているとともに、4本の油圧シリンダ13を介して締結されている。油圧シリンダ13に駆動油を注入することにより、上フレーム11aを、上昇させたり下降させたりすることができる。なお、下フレーム11bは可動せず、固定されている。また、反基準側のロール412,414,416には、それぞれ、凸部(大径凸部)43b,43d,43fが2個ずつ取り付けられている(図3参照)。
【0030】
スラブの連続鋳造のときは(水平経路部において鋳片を圧下するときは)、4本の油圧シリンダ13に、それぞれ同量の駆動油を注入することにより、上フレーム11aを、下フレーム11bに対して略平行な状態を維持しながら下降させる。本実施形態では、後述するように、ロール412,414,416に取り付けられた凸部43b,43d,43fの外径がそれぞれ異なるため、上フレーム11aを、下フレーム11bに対して略平行な状態を維持しながら下降させることにより、互いに対向する基準側のロールと反基準側のロールとの面間距離を、鋳造方向の下流に進むにつれて簡易に短くすることができる。
【0031】
(ロール)
ロール411,412,・・・,416、及びロール421,422,・・・,426は、軸方向(鋳片の幅方向)に2〜4分割されている。そして、分割ロールの両端には、それぞれ、軸箱12aが設けられている(図3参照)。分割ロールを用いることにより、ロールの撓みを防止したり、軸受けに係る負荷を軽減したりすることができる。
【0032】
図3に示すように、ロール412,414,416(分割ロール412a,412c,414a,414c,416a,416b)には、それぞれ凸部43b,43d,43fが設けられている。凸部43b,43d,43fを設けるロールに分割ロールを用いることにより、凸部の一端から凸部が設けられたロールの一端までの距離を短くすることができることから、圧下時の軸受けへの負荷を軽減することができる。
【0033】
なお、ロール41,42の分割数は、特に限定されないが、スラブ鋳片の幅と鋳片の圧下が必要な位置(凸部を設ける位置)との関係から3〜4分割であることが好ましい。また、本実施の形態においては、ロール41の軸方向に関する長さが鋳片(スラブ)の幅と略同じ長さであるロール41,42が用いられている。
【0034】
(凸部(大径凸部))
図3に示すように、ロール412には、2個の凸部43bが鋳片の幅方向に離れて設けられている(図4参照)。また、ロール414には、2個の凸部43dが鋳片の幅方向に離れて設けられている。また、ロール416には、2個の凸部43fが鋳片の幅方向に離れて設けられている。2個の凸部43bは、それぞれ、ロール412の両端から距離Xiだけ離れた位置に配置されている。言い換えると、凸部43bと、それと最も近いロール412の一端とは、距離Xiだけ離れている。また、2個の凸部43dは、それぞれ、ロール414の両端から距離Xi+1だけ離れた位置に配置されている。また、2個の凸部43fは、それぞれ、ロール416の両端から距離Xi+2だけ離れた位置に配置されている。凸部43d,43fについても、凸部43bと同様に、凸部43b,43fと、それと最も近いロール414,416の一端とは、それぞれ距離Xi+1,Xi+2だけ離れている。
【0035】
凸部43b,43d,43fは、それぞれ、ロール412,414,416の外径よりも大きな外径を有するとともに、ロール41(412,414,416)と略同外径の中空が形成された短尺円筒状部材である。また、図2に示すように、凸部43b,43d,43fの外径は、これらの順に大きくなっており、下流に位置するロールに取り付けられた凸部の外径は、上流に位置するロールに取り付けられた凸部の外径より大きい。なお、凸部43b,43d,43fの外径は、ロールスタンド10に設けられた1対のロール対(互いに対向する基準側のロールと反基準側のロールと)の面間距離などに基づいて調整される。
【0036】
また、図3に示すように、凸部43b,43d,43fは、それぞれ、ロール412,414,416に取り付けられたとき、ロール412,414,416の胴部(ロール412,414,416の胴部のうち凸部43b,43d,43fが取り付けられていない部分)と平行な平坦部44b,44d,44fを有している(図3,4参照)。図3では、鋳片の幅方向について、凸部43bの平坦部の幅をWiと示し,凸部43dの平坦部の幅をWi+1と示し、凸部43fの平坦部の幅をWi+2と示している。これらの幅は、Wi>Wi+1>Wi+2となっている。また、本実施形態では、WiとWi+1との差、及びWi+1とWi+2との差が、それぞれ10mm以上ある。このように、凸部43b,43d,43fの外径及び幅は、それぞれ異なっている。
【0037】
凸部43b,43d,43fは、鋳片の幅方向について、略同じ位置に配置されている。そして、略同じ位置に配置された凸部43b,43d,43fは、それぞれの鋳片の幅方向に関する中心(図3に示す一点鎖線)が鋳造方向に一致するように、配置されている。
【0038】
次に、図5を用いて、凸部の形状を説明する。図5(a)は、図4の点線で囲まれた領域の拡大模式図であり、図5(b)は、図5(a)に示す点線で囲まれた領域の拡大模式図である。なお、図5(a),(b)では、ロール412及び凸部43bだけを示し、凸部43d,43fを省略している。図5(a)に示すように、凸部43bの平坦部44bの両端には、エッジ部45bが形成されている。また、図5(b)に示すように、エッジ部45bは、それぞれ、滑らかなR加工(曲率半径:R)が施されているとともに、切り欠き(切り欠き角度:θ)が形成されている。エッジ部45bにR加工及び切り欠きを形成することにより、鋳片の圧下時に、鋳片表面に疵が発生することを防ぐことができる。なお、図5において、「W」,「R」及び「θ」は、以下を示している。
W:鋳片の幅方向についての凸部の平坦部の幅
R:エッジ部に施されたR加工の曲率半径
θ:エッジ部の切り欠き角度
【0039】
本実施形態では、エッジ部45dに施されたR加工の曲率半径Rが10mm以上且つ25mm以下であり、且つ、切り欠き角度が30°以上である。
【0040】
凸部43b,43d,43fは、鋳片を直接圧下するものであるから、ロール41,42と略同等な強度及び硬度を有する材料からなることが好ましい。
【0041】
なお、図5では、凸部43bの拡大図のみを示し、凸部43d,43fの拡大図を省略しているが、凸部43d,43fのエッジ部にも、凸部43bのエッジ部45bと同様に、R加工が施されているとともに、切り欠きが形成されている。
【0042】
続いて、凸部が配置される位置、凸部の外径及び凸部のエッジ部について詳細に説明する。
【0043】
(凸部が配置される位置(1))
本発明は、鋳片の幅方向について、ポロシティーが発生しやすい位置に、凸部を配置し、凸部による圧下によってポロシティーを減少させることを目的としている。そこで、以下において、鋳片の幅方向についての凸部を配置する位置を説明する。
【0044】
連続鋳造においては、溶鋼の凝固速度が鋳片の幅方向に均一でなく、溶鋼の凝固が遅い部位に、ポロシティーが発生する。溶鋼の凝固速度が鋳片の幅方向に均一とならない理由は、主に、浸漬ノズルから鋳型へ吐出される溶鋼の吐出流及び凝固シェルの冷却による干渉が挙げられる。
【0045】
上記理由を、図6を参照しつつ、詳細に説明する。図6(a),(b)には、鋳型内の鋳片の断面図が示されている。スラブの連続鋳造では、上述したように、浸漬ノズルから鋳型へ溶鋼が注湯され、溶鋼は、鋳型内において所定形状の凝固シェルを形成しながら下流へと引き抜かれる。浸漬ノズルから鋳型へ吐出された溶鋼流は、鋳型内の凝固シェルの特定の箇所に衝突するため、その衝突箇所では溶鋼の凝固が遅くなる。例えば、スラブの連続鋳造機には、一般的に、2孔式の浸漬ノズルが用いられる。この浸漬ノズルは、有底円筒形状であって、一対の対向する吐出孔が浸漬ノズルの内底よりも若干上方に形成されている。この浸漬ノズルが用いられた場合、浸漬ノズルの2つの吐出孔から吐出した溶鋼流は、それぞれ、鋳型内で形成された凝固シェルの特定の2つの箇所に衝突する。それによって、図6(a)に示すように、鋳片内部の2つの領域Aで、溶鋼の凝固が遅くなる。
【0046】
また、鋳型内では、未凝固の溶鋼がその静圧によりバルジングする。これにより、鋳片の幅方向について、未凝固部の中央付近(図6(b)に示す領域b)が鋳型と良好に接触し、冷却されやすくなるが、未凝固部の両端部(図6(b)に示す領域a)は、鋳型との接触が十分でなくなる。したがって、未凝固部の両端部(領域a)では、未凝固部(鋳片)の中央付近(領域b)よりも、溶鋼の凝固が遅くなる。このような、鋳型内での溶鋼の凝固の不均一は、2次冷却帯における、鋳片の幅方向についての溶鋼の凝固の不均一により、さらに助長される。
【0047】
そして、上記未凝固部の端部(図6(b)に示す領域a)と、上述した浸漬ノズルから吐出される溶鋼流の衝突箇所(図6(a)に示す領域A)とが一致した場合、鋳片のその幅方向位置では、溶鋼の凝固が非常に遅くなることから、発生するポロシティーの量が多くなる。
【0048】
なお、鋳片の幅方向についての両端部(図6(a)に示す領域C、図6(b)に示す領域c)、詳細には、鋳片の幅方向についての両端から鋳片の厚みの1/2の範囲では、溶鋼の凝固が、上面、下面及び側面から内側に向けて進行する。一方、鋳片の両端からそれぞれ鋳片の厚みの1/2幅を除いた領域では、溶鋼の凝固が、上面及び下面のみから内部へ進行する。したがって、鋳片の幅方向についての両端部(図6(a)に示す領域C、図6(b)に示す領域c)では、溶鋼の凝固が速く、ポロシティーが殆ど存在しない。
【0049】
また、上述した理由から、ポロシティーは、鋳片の幅方向についての中央を挟んで互いに反対側(幅中央を中心とした左右対称の位置)に発生しやすいことが推測される。
【0050】
以上の点を考慮したら、浸漬ノズルから鋳型へ吐出される溶鋼流の流速及びその溶鋼量、鋳片の厚み及び幅、並びに、二次冷却条件(冷却スプレーからの冷却水の量、凝固速度など)などの境界条件をもとに、鋳片の幅方向について、溶鋼の凝固が遅くなる位置、言い換えると、鋳片の幅方向について、ポロシティーが発生しやすい位置を推測できる。
【0051】
なお、上述したように、鋳造経路Qの水平経路部では、溶鋼の凝固が完了することから、溶鋼の凝固が先行して進行している。溶鋼の凝固が進行した箇所には、ポロシティーが殆ど存在していないとともに、この箇所を圧下したら、鋳片から受ける反力により、ロール及び軸受けなどに掛かる負荷が大きくなる。したがって、凸部を、溶鋼の凝固が遅い鋳片の幅方向位置、言い換えると、ポロシティーが存在する位置にのみ配置させれば、ポロシティーを効果的に減少させることができるとともに、鋳片から受ける反力を軽減することが可能となる。
【0052】
次に、図7を用いて、鋳造されたスラブ鋳片のポロシティーが発生する幅方向についての位置と、その発生量との関係を示す一例を説明する。
【0053】
図7には、鋳片の幅一端からの距離(鋳片の幅方向についての一端から他端へ向けての距離)と、UT不良発生比率との関係を示している。UT不良(UT欠陥)は、鋳造された鋳片を圧延して得られた製品(以下、最終製品と呼ぶ)に発生する欠陥であり、鋳造された鋳片に残存したポロシティーに起因して生じるものである。したがって、UT不良発生比率が大きいことは、鋳造された鋳片に残存したポロシティーの量が多いことを示す。また、UT不良発生比率が1%を超える部位は、その部位において、最終製品の品質に実用上の問題が生じる。したがって、鋳片の全ての幅方向についてのUT不良発生比率が1%以下であることが好ましい。
【0054】
以下に、図7に示す例で得られたスラブ鋳片の連続鋳造の条件を説明する。本例では、厚みが280mmであり且つ幅が2100mmであるスラブ鋳片を鋳造した。この連続鋳造に用いた連続鋳造機において、水平経路部に設置されたロールスタンドは、上フレームと、下フレームと、鋳造方向に並設された複数のロール対を有していた。ロール対を構成するロールは、ロール胴部の外径が一定のフラットロールであった。また、ロールスタンドに設けられたロールは、全て同じ外径のロールであった。したがって、鋳片を圧下するときは、上フレーム及び下フレームの少なくとも一方を傾斜させることにより、鋳造方向の下流に進むにしたがって、互いに対向する基準側のロール(上フレームに取り付けられたロール)と反基準側のロール(下フレームに取り付けられたロール)との面間距離が短くなるように調整した。なお、本例で用いた連続鋳造機のその他の構成は、本実施形態の連続鋳造機の構成と略同様であるため、説明を省略する。
【0055】
図7から、本例では、鋳片の幅方向に関する一端から、180mm以上且つ400mm以下である領域(幅220mm)、740mm以上且つ800mm以下である領域(幅60mm)、1100mm以上且つ1180mm以下である領域(幅80mm)、及び、1740mm以上且つ1940mm以下である領域(幅200mm)の4つの幅領域において、UT不良発生比率が1%を超えていた。一方、上記4つの領域を除く鋳片の幅領域には、ポロシティーが殆ど発生していないことが分かる。また、図7から、上記幅領域で、UT不良発生比率が1%を超えた理由は、上述した、浸漬ノズルから鋳型へ吐出される溶鋼の吐出流及び凝固シェルの冷却による干渉の影響を受けていることが推測される。
【0056】
したがって、上記例では、水平経路部に設置されるロールスタンドにおいて、上記4つの鋳片の幅方向についての領域に凸部を配置すれば、それらの領域に発生したポロシティーを減少させることができることから、鋳片の全ての幅方向についてUT不良発生比率を1%以下とすることが可能となる。
【0057】
詳細には、平坦部の幅が240mmである凸部を、鋳片の軸方向に関する一端から170mm離れた位置に配置させる。また、平坦部の幅が80mmである凸部を、鋳片の軸方向に関する一端から720mm離れた位置に配置させる。また、平坦部の幅が100mmである凸部を、鋳片の軸方向に関する一端から1100mm離れた位置に配置させる。また、平坦部の幅が220mmである凸部を、鋳片の軸方向に関する一端から1720mm離れた位置に配置させる。これにより、上記領域に発生したポロシティーを確実に減少させることができる。また、上記領域を除く鋳片の幅領域、言い換えると、溶鋼の凝固が進行した部位に、凸部を配置させないことにより、圧下時に受ける鋳片からの反力を軽減することが可能となる。なお、上述したように、ポロシティーの発生量が多い位置は、鋳片の幅方向について中央を挟んで互いに反対側(幅中央を中心とした左右対称)の位置であることが推測されるため、本例においては、平坦部の幅が240mmである凸部を、鋳片の軸方向に関する両端から170mm離れた位置に配置させ、平坦部の幅が80mmである凸部を、鋳片の軸方向に関する一端から720mm離れた位置に配置させ、且つ、平坦部の幅が100mmである凸部を、鋳片の軸方向に関する一端から1100mm離れた位置に配置させることによっても、上記領域に発生したポロシティーを確実に減少させることができるとともに、圧下時に受ける鋳片からの反力を軽減することができる。
【0058】
以上に説明した理由及び例から、凸部を、鋳片の幅方向に関する両端からそれぞれ幅中央に向けて130mm以上離れた位置であり、且つ、鋳片の幅方向に関する両端からそれぞれ幅中央に向けて600mm以内の位置に配置する。上記範囲の位置は、浸漬ノズルから鋳型へ吐出される溶鋼の吐出流及び凝固シェルの冷却による干渉の影響を受けやすいことから、溶鋼の凝固が遅く、ポロシティーが発生しやすい。したがって、この範囲の鋳片の幅方向についての位置に凸部を配置させることにより、ポロシティーを効果的に減少させることができる。
【0059】
なお、鋳片の幅方向に関する両端からそれぞれ130mm未満の領域、言い換えると、鋳片の幅方向についての両端からそれぞれ鋳片の厚みの1/2までの領域では、上述したように、溶鋼の凝固が、上面、下面及び側面から内部へ進行するため、溶鋼の凝固が速い。したがって、この領域には、ポロシティーが殆ど存在していないため、圧下の必要性が低い。また、この領域では、溶鋼の凝固が進行していることから、この範囲を圧下した際に、鋳片から受ける反力が大きい。したがって、この領域に凸部を配置しないことにより、ロール及び軸受けなどに掛かる負荷を低減することが可能になる。
【0060】
また、鋳片の幅方向に関する両端からそれぞれ幅中央に向けて600mmを越える領域、言い換えると、鋳片の幅方向についての中央付近では、溶鋼の凝固が、比較的、進行している。これは、上述したように、鋳型内で、未凝固の溶鋼がバルジングすることにより、鋳片の幅方向についての中央付近が、鋳型と良好に接触し、溶鋼の凝固が迅速に進行するためである。したがって、この領域では、ポロシティーの発生量が比較的少ないため、圧下の必要性が比較的低い。また、この領域では、溶鋼の凝固が比較的進行していることから、この範囲を圧下した際に、鋳片から受ける反力が大きい。したがって、この領域に凸部を配置しないことにより、ロール及び軸受けなどに掛かる負荷を低減することが可能になる。
【0061】
なお、鋳片の幅と、ロールの軸方向についての長さとは、略同じ長さであることから、凸部を、ロールの軸方向についての両端からそれぞれ中央に向けて130mm以上離れた位置に配置し、且つ、ロールの軸方向についての両端からそれぞれ中央に向けて600mm以内の距離に配置することにより、上述の効果が得られる。
【0062】
したがって、凸部をロールに取り付けるとき、凸部と、その凸部に最も近いロールの一端との距離X(図3に示す Xi,Xi+1,Xi+2)が下記式を満たす距離だけ離して、凸部を配置させる。
130mm≦X≦600mm・・・(1)
なお、ポロシティーは、鋳片の幅方向についての中央を挟んで互いに反対側(幅中央を中心とした左右対称)の位置に発生することが推測されるから、上記Xは、X≦(鋳片の幅の1/2)とする。
【0063】
また、本実施形態では、図3に示す距離Xi,Xi+1,Xi+2が、上記(1)式を満たすように、凸部が配置されている。
【0064】
なお、1本のロールに設けられる凸部の個数は、ポロシティーが発生する位置、言い換えると、上述した、浸漬ノズルから鋳型への溶鋼の吐出量及びその流速、鋳片の厚み及び幅、並びに、二次冷却条件(冷却スプレーからの冷却水の量、凝固速度など)に応じて決めることができるが、上述したように、ポロシティーは、鋳片の幅中央を挟んで互いに反対側(幅中央を中心とした左右対称)の位置に多く発生することが推測されるから、1本のロールに2個以上の凸部を設けるとともにそれらの凸部をロールの軸方向(鋳片の幅方向)に離して設ける。
【0065】
(凸部の幅(1))
上述したように、ポロシティーが発生する鋳片の幅領域に凸部を配置させることにより、ポロシティーを確実に減少させることができるが、圧下時に受ける鋳片からの反力を軽減するためには、ポロシティーの発生量が多い領域だけに凸部を配置させればよい。したがって、凸部の平坦部の幅Wを、ポロシティーの発生量が多い領域の幅に対応するように、調整することにより、圧下時に受ける鋳片からの反力を確実に軽減することができる。ポロシティーが発生しやすい鋳片の幅領域は、上述したように、浸漬ノズルから鋳型への溶鋼の吐出量及びその流速、鋳片の厚み及び幅、並びに、二次冷却条件(冷却スプレーからの冷却水の量、凝固速度など)に応じて決まるが、これらの条件及び図7に示す例を考慮したら、ポロシティーの発生量が多い領域の幅は、約80mm以上であり且つ約400mm以内であることが推測される。そこで、凸部の平坦部の幅Wを、80mm以上且つ400mm以上とする。これにより、ポロシティーを確実に減少することができるとともに、鋳片から受ける反力を確実に軽減することが可能となる。
【0066】
本実施形態では、図3に示す、凸部43bの幅Wi、凸部43dの幅Wi+1及び凸部43fの幅Wi+2が、80mm以上且つ400mm以上となっている。
【0067】
(凸部が配置される位置(2))
図3に示すように、凸部43b,43d,43fの鋳片の幅方向に関する中心(図3に示す一点鎖線)は、それぞれ鋳造方向に一致している。異なる列のロールに設けられた凸部の鋳片の幅方向に関する中心が鋳造方向に一致していない場合は、圧下位置が鋳片の幅方向に蛇行するため、軸受けに掛かる負荷が大きくなる。そこで、図3に示すように、異なる列のロールに設けられた凸部の鋳片の幅方向に関する中心、言い換えると、上流側に位置するロールに設けられた凸部の鋳片の幅方向に関する中心と、下流側に位置するロールに設けられた凸部の鋳片の幅方向に関する中心とを鋳造方向に略一致させれば、圧下位置が鋳片の幅方向に蛇行しないことから、軸受けに掛かる負荷を軽減することができる。
【0068】
(凸部が配置される位置(3))
図3に示すロールスタンドにおいては、凸部により鋳片が圧下される。したがって、凸部がロールスタンド内の上流側又は下流側などの特定の箇所に集中して配置されている場合は、圧下の際、ロールスタンド内の特定のロール、特定の軸受け、及び特定の油圧シリンダーに集中的に荷重が掛かる。例えば、図3に示すロールスタンドにおいて、鋳造方向の上流側のロール411,412,413に凸部が配置された場合、そのロールスタンドでは、鋳造方向の上流側に配置された、ロール411,412,413、軸受け、及び油圧シリンダーに集中して荷重が掛かる。よって、これを防ぐために、凸部を鋳造方向に均一に配置することが好ましい。また、凸部を鋳造方向に均一に配置することにより、鋳片の圧下時に、上フレーム及び下フレームが受ける反力を上フレーム全体及び下フレーム全体に分散させることができるため、特定の圧下シリンダーに掛かる負荷を低減することができる。凸部を、鋳造方向に均一に配置させる配列として、例えば、図3に示すように、ロールスタンド10に設けられた2,4,6列目のロール412,414,416に、それぞれ、凸部43b,43d,43fを設ける。また、ロールスタンド10において、全てのロール411,412,413,414,415,416に凸部を設けたり、1,3,5列目のロール411,413,415に凸部を設けたりすることによっても、凸部を鋳造方向に均一に配置することができる。
【0069】
(凸部の径)
溶鋼の凝固が進行するにつれて鋳片の体積(厚み)が減少するため、溶鋼の凝固末期となる鋳造経路Qの水平経路部では、鋳造方向の下流に進むにしたがって、互いに対向する反準側のロール41と基準側のロール42との面間距離を短くすることが必要である(図1参照)。互いに対向するロールの面間距離を調整する方法として、例えば、ロールスタンドを構成する上フレームと下フレームとの少なくとも一方を傾斜させる方法が挙げられるが、この方法は、非常に複雑な調整を要する。本実施形態においては、図2に示すように、ロール412,414,416にそれぞれ取り付けられた凸部43b,43d,43fの外径が、これらの順に大きくなっている。したがって、上フレーム11aを、下フレーム11bに対して略平行な状態を維持しながら下降させることにより、互いに対向する基準側のロールと反基準側のロールとの面間距離を、鋳造方向の下流に進むにつれて簡易に短くすることができる。よって、上フレーム11aと下フレーム11bとの少なくとも一方を傾斜させるという複雑な調整が不要となる。
【0070】
詳細には、鋳造方向に配置された複数の凸部において、上流側に配置されたロールに取り付けられる凸部の外径をdi、そのロールより下流側に配置されたロールに取り付けられる凸部の外径をdi+1、その下流側に配置されたロールより下流側に配置されたロールに取り付けられる凸部の外径をdi+2、・・・と示す場合、下記式を満たす。
di<di+1<di+2<・・・(但し、iは自然数)
【0071】
本実施形態では、図2に示すように、凸部43bの外径<凸部43dの外径<凸部43fの外径となっている。したがって、上フレーム11aを、下フレーム11bに対して略平行な状態を維持しながら下降させるだけにより、鋳造方向の下流へ進むにしたがって、簡易にロールの面間距離を短くすることができる。なお、凸部43b,43d,43fの外径は、上記要件を満たす限り特に限定されず、鋳片の形状(幅及び厚みなど)、鋼種及び操業条件などに応じて、当業者により適切な外径に設定可能なものである。
【0072】
(凸部の平坦部の幅)
溶鋼の凝固末期となる鋳造経路Qの水平経路部では、鋳造方向の下流に進むにしたがって、溶鋼の凝固が進行しているから、圧下力を増加させることが必要となる。本実施形態においては、凸部43b,43d,43fによって、鋳片が圧下されるため、凸部43b,43d,43fの表面積を調整することにより、圧下圧力を調整することができる。詳細には、凸部43b,43d,43fの平坦部44b,44d,44fの幅を小さくすることにより、凸部43b,43d,43fの平坦部44b,44d,44fの表面積が小さくなるから、圧下圧力を増加させることができる。
【0073】
凸部43b,43d,43fの幅は、鋳造方向についての下流で最低限必要な圧下力をもとに決定することができる。なお、下流に位置するロールに取り付けられた凸部の幅と、上流側に配置されたロールに取り付けられた凸部の幅とは、同幅としてもよいが、上述したように、下流側では、上流側よりも溶鋼の凝固が進行していることから、上流側よりも大きな圧下圧力が必要となる。そこで、下流側に配置されたロールに取り付けられる凸部の幅を、上流側に配置されたロールに取り付けられる凸部の幅よりも小さくする。
【0074】
以上から、鋳造方向に配置された複数の凸部において、上流側に配置されたロールに取り付けられる凸部の幅をWi(但し、iは自然数)、そのロールより下流側に配置されたロールに取り付けられる凸部の幅をWi+1、その下流側に配置されたロールより下流側に配置されたロールに取り付けられる凸部の幅Wi+2、・・・と示す場合、下記式を満たす。
Wi>Wi+1>Wi+2>・・・
【0075】
また、凸部の圧下により、鋳片の表面に凹形状が形成される。この凹形状から圧下量を計測することができる。上流に配置された凸部の幅と下流に配置された凸部の幅とが異なれば、鋳造方向に配置された各凸部による凹形状の相違が明確化するため、圧下量が不足した位置及び圧下不足の原因を判別しやすくなるとともに、圧下不足による製品へ迅速に対応することができる。
【0076】
以上の点を考慮したら、上流に位置するロールに配置された凸部の幅Wiと、これに直近する下流に位置するロールに配置された凸部の幅Wi+1とが、下記式を満たすことが好ましい。
Wi−Wi+1≧10mm (但し、iは自然数であり、i=1,2,3・・・)
【0077】
本実施形態においては、凸部43bの幅(図3に示すWi)、凸部43dの幅(図3に示すWi+1)及び凸部43fの幅(図3に示すWi+2)が、凸部43bの幅>凸部43dの幅>凸部43fの幅となっている。
また、凸部43bの幅−凸部43dの幅≧10mm、且つ、凸部43dの幅−凸部43fの幅≧10mmとなっている。
【0078】
(凸部のエッジ部)
上述したように、圧下後は、凸部により鋳片表面に凹形状が形成されるため、凸部のエッジ部が尖っている場合は、最終製品に凹形状に起因する表面疵が残存することがある。そこで、凸部のエッジ部に、R加工を施したり、切り欠きを形成したりすることにより、鋳片の表面疵を減少させる。一方、エッジ部のR加工された部位及び切り欠かれた部位は、凸部の平坦部と同様に、圧下時に、鋳片から反力を受けるため、R加工における半径Rが大きすぎる場合は、R部に対して鋳片から受ける反力が大きくなり、切り欠き角度θが小さすぎる場合は、切り欠き面に対して鋳片から受ける反力が大きくなる。したがって、R加工における曲率半径Rを10mm以上且つ25mm未満とすることが好ましい。また、切り欠き角度θを30°以上とすることが好ましい。
【0079】
以上に述べたように、本実施形態に係る連続鋳造機100によると以下の効果を奏する。2つの凸部43bが、ポロシティーが発生しやすい位置、言い換えると、ロール412の両端のそれぞれから幅中央に向けて距離Xiだけ離れた位置に配置されている。また、2つの凸部43dが、ロール414の両端のそれぞれから幅中央に向けて距離Xi+1だけ離れた位置に配置されている。また、2つの凸部43fが、ロール416の両端のそれぞれから幅中央に向けて距離Xi+2だけ離れた位置に配置されている。したがって、ポロシティーが存在する鋳片の幅方向についての位置を、凸部43b,43d,43fにより効果的に圧下することができる。これにより、ポロシティーを減少させることができる。また、鋳片の凝固が速く且つポロシティーが殆ど存在しない鋳片の幅方向についての位置に、大径凸部が配置されないため、その位置が圧下されない。よって、圧下時に鋳片から受ける反力を軽減することができる。
【0080】
また、凸部43b,43d,43fの平坦部44b,44d,44fの幅Wi,Wi+1,Wi+2が、ポロシティーの発生量が多い領域の幅に対応する大きさに形成されていることから、ポロシティーを確実に減少することができるとともに、鋳片から受ける反力を確実に軽減することができる。
【0081】
さらに、1つのロールスタンド10内において、凸部43bの外径>凸部の外径43d>凸部43fの外径となっているため、上フレーム11aを、下フレーム11bに対して略平行な状態を維持しながら下降させることにより、鋳造方向の下流に進むしたがって、互いに対向する基準側のロールと半基準側のロールとの面間距離を簡易に短くすることができる。
【0082】
そして、鋳片の同じ幅位置に配置された凸部43b,43d,43fが、それらの中心線が一致するように配置されているため、凸部43b,43d,43fによる圧下位置が、鋳片の幅方向に蛇行しない。これにより、軸受12a,12b及びロール412,414,416などへ掛かる負荷を軽減することができる。また、凸部43b,43d,43fが分割ロール412a,412c,414a,414c,416a,416cに設けられているため、凸部の一端から分割ロールの一端までの距離を短くすることができる。これにより、鋳片の圧下の際に軸受けやロールへ掛かる負荷を軽減することができる。
【0083】
また、凸部43b,43d,43fの平坦部44b,44d,44fの幅Wi,Wi+1,Wi+2が、Wi>Wi+1>Wi+2であるため、平坦部44b,44d,44fの順に、それらの表面積が小さくなっている。これにより、下流に進むにしたがって圧下力を増加させることができる。
【0084】
さらに、平坦部44bの幅Wiと、平坦部44dの幅Wi+1と、平坦部44fの幅Wi+2とが、Wi−Wi+1≧10mm及びWi+1−Wi+2≧10mmを満たすことから、凸部43b,43d,43fのそれぞれによる圧下量を正確に判定することができる。これにより、凸部43b,43d,43fのそれぞれによる圧下不足及び圧下不足の原因を予測でき、ひいては、そのような製品への対応を迅速に行うことができる。
【実施例】
【0085】
次に、本発明に係る実施例を説明する。
【0086】
表1,2に示す境界条件及び図8,9に示す物性値をもとに、伝熱・凝固解析を行い、凸部を配置する位置に対するロールが受ける反力(以下、「ロール反力」と呼ぶ)、凸部のエッジ部の切り欠き角度θに対するロール反力、及び凸部のエッジ部の曲率半径(R)に対するロール反力を求めた。なお、本実施例に係る連続鋳造機の構成は、表1,2に示す境界条件、凸部を配置する位置、切り欠き角度θ及び曲率半径(R)を除いて、上述した本実施形態にかかる連続鋳造機と略同様な構成の連続鋳造機であるため、説明を省略する。
【0087】
<解析方法>
(手順1)
表1に示すスラブの各種伝熱境界条件、表2に示す中炭素鋼の固相密度、液相密度及び凝固潜熱並びに図8(a),(b)に示す条件(「工業用炉設計便覧」、社団法人 新日本鋳鍛造協会、P.71)を用いて、伝熱・凝固解析を行った。伝熱・凝固計算には、「CASTEM」(「(株)神戸製鋼所技報」、1987年、Vol.37、No.4、P.99‐100、及び「(株)神戸製鋼所技報」、1985年、Vol.35、No.2、P.75)を用いた。上記解析により、図8(c)に示す温度分布(固相率と温度との関係)を算出した。
【0088】
なお、二次冷却の熱伝達係数(α)は、次の三塚‐Hoogendoomの式(日本鉄鋼協会 特別報告書、No.29、鋼材の強制冷却、p.19)を用いて算出した。
logα=2.358+0.663logW−0.00147θS
ここで、Wは水量密度(l/m2・min)であり、θsは鋳片表面温度(℃)である。水量密度Wには、連続鋳造機の各部位に分配される水量をノズルの本数で除した値を用いた。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
(手順2)
次に、図8(c)に示す温度分布、図9(a),(b)に示す条件及び表1に示す各種伝熱境界条件を用いて、弾塑性解析を行い、圧下時にロールが鋳片から受ける反力(以下、ロール反力と示す)を求めた。解析には、汎用されている「ABAQUS」を用いた。この結果を図10(a)〜(c)に示す。
【0092】
なお、上記弾塑性解析においては、スラブ鋳片の幅方向についての中央を中心に左右対称とした1/2モデルにより算出した。また、水平経路部の圧下を実施する前に、スラブ中心部に、直径3mmの球形状のポロシティーが存在すると仮定した。さらに、ロールスタンドに設置されたロールは剛体からなるものとし、ロールの移動及び回転を考慮して解析した。以下に、上記伝熱凝固解析及び弾組成解析の条件を示す。
<伝熱凝固解析及び弾組成解析の条件>
・1つのロールスタンドに設置されたロール列数:6列
・ロールピッチ(鋳造方向に並設された隣り合うロールの面間距離):270mm
・凸部の配置:1つのロールスタンドにおいて、凸部を、鋳造方向の上流から下流へ2,4,6列目のロールに設置した。また、2,4,6列目の各ロールに、凸部を2個ずつ取り付けた。1列のロールに取り付けられた2個の凸部は、鋳片の幅方向に離れて設けられていた。
・スラブ鋳片の鋳造方向に関する断面:(厚み)250〜400mm×(幅)1000〜2400mm
【0093】
図10(a)には、ロールの一端から凸部までの距離に対するロール反力を示している。図10(b)には、凸部のエッジ部の切り欠き角度(θ)に対するロール反力を示している。図10(c)は、凸部のエッジ部の曲率半径(R)に対するロール反力を示している。
【0094】
また、以下に、図10(a)〜(c)の各解析条件を示す。
(図10(a))
図10(a)には、凸部の両エッジ部にR加工が施されたとき(切り欠きが形成されていないとき)の解析の結果が示されている。なお、以下の解析条件において、圧下量は、「凸部の外径」と「ロールの外径」との差を示す。
<解析条件>
・鋳片幅:2100mm
・圧下量:18mm
・凸部の平坦部の幅W:100mm
・凸部のエッジ部の曲率半径(R):10mm
(図10(b))
図10(b)には、凸部の両エッジ部に、R加工が施されているとともに切り欠きが形成されたときの解析の結果が示されている。
<解析条件>
・鋳片幅:2100mm
・圧下量:18mm
・凸部の平坦部の幅W:100mm
・凸部のエッジ部の曲率半径(R):10mm
・エッジ部の切り欠き幅:5mm/片側(10mm/両側)
・ロールの一端から凸部の鋳片の幅方向についての中心までの距離:215mm
(図10(c))
図10(c)には、凸部の両エッジ部に、R加工が施されているとともに切り欠きが形成されてたときの解析の結果が示されている。
<解析条件>
・鋳片幅:2100mm
・圧下量:18mm
・凸部の平坦部の幅W:100mm
・切り欠き角度(θ):30°
・エッジ部の切り欠き幅:5mm/片側(10mm/両側)
・ロールの一端から凸部の鋳片の幅方向についての中心までの距離:215mm
【0095】
なお、連続鋳造機に、一般的に用いられる軸受け(24024形(外径180mm×内径120mm×幅60mm)の基本静ラジアル定格荷重(Cor)は、70tonfである。よって、ロール両端に設けられた軸受けが損傷しない合計荷重の上限を、70kgfとし、ロール反力が70kgfを超える場合は、軸受けがロール反力(荷重)に耐えられず、損傷すると推測した。なお、ロール両端に設けられた軸受けにそれぞれ均等に荷重が掛かかれば、安全係数が2となる。したがって、この場合、ロール反力が70kgfであれば、1つの軸受け(ロールの一端に設けられた軸受け)に掛かる荷重は35kgfとなる。
【0096】
<解析結果>
図10(a)から、ロール一端から凸部までの距離が130mm未満であるときは、ロール反力が70kgfを超えるため、軸受けが損傷することが推測される。このため、ロール一端から凸部までの距離を130mm以上とすることにより、軸受けの損傷を防ぐことができる。
【0097】
図10(b)から、凸部のエッジ部の切り欠き角度が30°未満であるときは、ロール反力が70kgfを超えるため、軸受けが損傷することが推測される。このため、凸部のエッジ部の切り欠き角度を30°以上とすることにより、軸受けの損傷を防ぐことができる。
【0098】
図10(c)から、凸部のエッジ部の曲率半径(R)が25mmを超えるときは、ロール反力が70kgfを超えるため、軸受けが損傷することが推測される。このため、凸部のエッジ部の曲率半径(R)を25mm未満とすることにより、軸受けの損傷を防ぐことができる。
【0099】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態及び実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施の形態においては、反基準側のロール412,414,416に凸部43b,43d,43fが設けられているが、基準側のロールにも凸部が設けられていたり、基準側のロールにのみ凸部が設けられていたりしてもよい。
【0100】
また、本実施の形態においては、1つのロールスタンドに6列のロールを設けたが、1つのロールスタンドに設けるロールは、6列のロールに限られず、例えば、2〜8列のロールとしてもよい。また、これに合わせて、凸部を設けるロール列数は、本実施の形態に示すような、3列に限られず、例えば、2〜8列としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、スラブ用連続鋳造機を構成するロールスタンドに適用される。
【符号の説明】
【0102】
1 タンディッシュ
2 浸漬ノズル
3 鋳型
10 ロールスタンド
11a 上フレーム
11b 下フレーム
12a,12b 軸箱
13 油圧シリンダ
43b,43d,43f 凸部(大径凸部)
44b,44d,44f 平坦部
45b,45d,45f エッジ部
41,411,412,413,414,415,416 ロール(上ロール)
42,421,422,423,424,425,426 ロール(下ロール)
411a,411b,411c,412a,412b,412c,413a,413b,413c,414a,414c,416a,416b 分割ロール
100 連続鋳造機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラブの連続鋳造機の水平部に設置されるロールスタンドであって、
前記ロールスタンドには、互いに対向する上ロール及び下ロールからなるロール対が鋳造方向に2対以上並設されており、
前記上ロール及び前記下ロールは、ロールの軸方向に2〜4分割されており、
前記上ロール及び前記下ロールの少なくとも一方のロールに、前記上ロール及び前記下ロールより大きな外径を有する大径凸部が設けられており、
2つ以上の前記大径凸部が、ロールの軸方向に2〜4分割された1列のロールに、鋳片の幅方向に離れて設けられており、
前記ロールの軸方向に2〜4分割された1列のロールに設けられた、前記2つ以上の大径凸部のうち、鋳片の幅方向について最も外側に設けられた大径凸部が、その大径凸部に最も近いロールの一端から、下記(1)式を満たす距離Xだけ離れて配置されており、
130mm≦X ・・・(1)
上流側ロールに設けられた上流側大径凸部の鋳片の幅方向に関する中心線と、前記上流側ロールより下流に位置する下流側ロールに設けられた下流側大径凸部の鋳片の幅方向に関する中心線とがそれぞれ一致しており、
上流側大径凸部の外径が、下流側大径凸部の外径より小さいことを特徴とするスラブの部分大圧下を行うための連続鋳造機用ロールスタンド。
【請求項2】
前記大径凸部は、前記大径凸部が設けられたロールのうちの前記大径凸部が設けられていない部分であるロール胴部と平行な平坦部を有しており、
前記平坦部の鋳片の幅方向に関する幅Wについて、上流側大径凸部の平坦部の幅が、下流側大径凸部の平坦部の幅より大きく、
上流側大径凸部の平坦部の幅Wiと、前記上流側大径凸部の直近に配置された下流側大径凸部の平坦部の幅Wi+1とが下記(2)式を満たすことを特徴とする請求項1に記載のスラブの部分大圧下を行うための連続鋳造機用ロールスタンド。
Wi−Wi+1≧10mm (但し、iは自然数) ・・・(2)
【請求項1】
スラブの連続鋳造機の水平部に設置されるロールスタンドであって、
前記ロールスタンドには、互いに対向する上ロール及び下ロールからなるロール対が鋳造方向に2対以上並設されており、
前記上ロール及び前記下ロールは、ロールの軸方向に2〜4分割されており、
前記上ロール及び前記下ロールの少なくとも一方のロールに、前記上ロール及び前記下ロールより大きな外径を有する大径凸部が設けられており、
2つ以上の前記大径凸部が、ロールの軸方向に2〜4分割された1列のロールに、鋳片の幅方向に離れて設けられており、
前記ロールの軸方向に2〜4分割された1列のロールに設けられた、前記2つ以上の大径凸部のうち、鋳片の幅方向について最も外側に設けられた大径凸部が、その大径凸部に最も近いロールの一端から、下記(1)式を満たす距離Xだけ離れて配置されており、
130mm≦X ・・・(1)
上流側ロールに設けられた上流側大径凸部の鋳片の幅方向に関する中心線と、前記上流側ロールより下流に位置する下流側ロールに設けられた下流側大径凸部の鋳片の幅方向に関する中心線とがそれぞれ一致しており、
上流側大径凸部の外径が、下流側大径凸部の外径より小さいことを特徴とするスラブの部分大圧下を行うための連続鋳造機用ロールスタンド。
【請求項2】
前記大径凸部は、前記大径凸部が設けられたロールのうちの前記大径凸部が設けられていない部分であるロール胴部と平行な平坦部を有しており、
前記平坦部の鋳片の幅方向に関する幅Wについて、上流側大径凸部の平坦部の幅が、下流側大径凸部の平坦部の幅より大きく、
上流側大径凸部の平坦部の幅Wiと、前記上流側大径凸部の直近に配置された下流側大径凸部の平坦部の幅Wi+1とが下記(2)式を満たすことを特徴とする請求項1に記載のスラブの部分大圧下を行うための連続鋳造機用ロールスタンド。
Wi−Wi+1≧10mm (但し、iは自然数) ・・・(2)
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−30269(P2012−30269A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173867(P2010−173867)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
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