説明

スリットスクリーン、及び、スリットスクリーンを備えたスクリーン装置

【課題】保持部材での保持状態を良好なものとできるだけでなく、精選部を通過した後の液体の流動状態を良好なものとする。
【解決手段】幅広部から徐々に幅寸法が減少する傾斜部8、続いて最も幅寸法の小さい細首部9を介して細首部9よりも幅広の係止部10に至る横断面形状の縦長部材5を複数並設して保持部材6で保持することにより、隣接する縦長部材5の間にV字状部26と精選部27を形成し、縦長部材5に沿って並設方向に移動する攪拌羽根3により、V字状部26で繊維原料液への加圧及び除圧を繰り返し、精選部27を介して繊維原料液を精選する。縦長部材5のうち、隣接する縦長部材5は、いずれか一方に第1隆起部19、残る他方に第2隆起部23を、幅方向に直交する方向に位置をずらせてそれぞれ備えることにより、隣接する縦長部材5の間に同一又は略同一間隔の通路である安定領域30を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリットスクリーン、及び、スリットスクリーンを備えたスクリーン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維原料液(製紙原料)を濾過して所望品質の繊維原料を取り出す精選処理を行うためのスクリーン装置が公知である。この種のスクリーン装置は、濾過網であるスクリーンバスケットと、その内部を回転する攪拌羽根を有する攪拌器とを備えている。そして、スクリーンバスケットには、例えば、複数の縦長部材を並設し、隣接する縦長部材の間にスリット状の間隙を形成したスリットスクリーンが知られている。
【0003】
従来、スリットスクリーンとして、隣接する長手形状部材の間に隙間を形成し、この隙間の近傍に凹所を形成することにより、前記隙間に繊維原料中の異物や繊維等が詰まりにくくすると共に、前記隙間で選別された良繊維中に異物が混入するのを防止するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
前記各長手形状部材は、リング状の保持部材によって、隣接するもの同士に所望寸法の隙間を形成できるように保持する必要がある。しかしながら、その保持形状が断面略三角形状であるため、溶接等の手段を採用せざるを得ないため、加工精度を高めるには限界があり、隙間を所望寸法とすることは難しい。
【0005】
また、他のスリットスクリーンとして、リング状の保持部材の内周に沿って所定間隔で、その軸心方向と平行な溝状の保持凹部を複数形成し、この保持凹部に縦長部材をそれぞれ差し込んで保持するようにした差し込み方式のものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、差し込み方式では、保持凹部に保持した縦長部材が脱落しないように、保持凹部に保持される係止部側の断面積を大きくする必要がある。このため、隣接する保持凹部の間の距離が短くなり十分な強度を確保できないという問題がある。
【0007】
このため、先に次のようなスリットスクリーンを開発し、特許を受けている。すなわち、幅広部から徐々に幅寸法が減少し、細首部を介して該細首部よりも幅広の係止部に至る横断面形状を有する縦長部材を、隣接して配設されるものの間で、幅広部から細首部までの寸法が相違する、少なくとも2種類で構成し、保持部材により各縦長部材の幅広部を所定の間隙を介して整列させた状態で各係止部を保持できるようにしたスリットスクリーンである(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
但し、この方式では、縦長部材に2種類用意する必要があり、しかもその形状の違いから保持部材への差し込み状態で、調整作業、特に精選部の間隙寸法(0.10mm以下)を高精度に形成するための調整作業に多大な時間を費やすこともある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4376151号公報
【特許文献2】特開平8−226090号公報
【特許文献3】特許第3386799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、差し込み方式を採用して、保持部材による縦長部材の保持状態を高精度なものとすることができるだけでなく、精選部通過後の液体の流動状態を安定させることができ、しかも、十分な強度を有するスリットスクリーン、及び、スリットスクリーンを備えたスクリーン装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
複数の縦長部材を保持部材に形成した各保持凹部に差し込んで保持することにより並設し、隣接する縦長部材の間にV字状部と精選部を形成し、前記縦長部材に沿って並設方向に移動する攪拌羽根により、前記V字状部で繊維原料液への加圧及び除圧を繰り返し、前記精選部を介して繊維原料液を精選するスリットスクリーンであって、
前記各縦長部材は同一形状であり、幅方向のいずれか一方に第1隆起部、残る他方に第2隆起部を、幅方向に直交する方向に位置をずらせてそれぞれ備え、
隣接する縦長部材の間には、
前記精選部を通過した液体が流動する位置に配置され、徐々に間隔を広げる解放領域と、
前記解放領域を通過後の液体が流動する位置に配置され、隣接する縦長部材の対向部分の一方に形成される第1隆起部、及び、残る他方に形成される第2隆起部とにより得られる、同一又は略同一間隔を有する安定領域と、
を形成したものである。
【0012】
この構成により、精選部でリジェクトの通過を阻止し、アクセプトを含む液体を解放領域から安定領域へと流動させることができる。安定領域では、隣接する縦長部材の一方の第1隆起部と、他方の第2隆起部との位置が液体の流動方向に位置をずらせて形成されている。このため、これに対応して保持部材に形成される各保持凹部のうち、隣接するものの最短距離を十分に取ることができる。したがって、縦長部材を保持部材の保持凹部に差し込んで保持する方式にあっては、保持部材の強度を高めることが可能となる。しかも、安定領域では、隣接する縦長部材の間隔が同一又はほぼ同一に形成されているため、液体の流動状態は安定する。したがって、液体はスムーズに流動し、繊維の乱れや絡みを防止することができる。この結果、縦長部材の振動等も抑えることができ、縦長部材自体を長寿命化させることが可能となる。さらに、解放領域及び安定領域での液体のスムーズな流動により、精選部での精選状態をも安定させることができ、精選の処理能力を向上させることが可能となる。
【0013】
前記各縦長部材は、幅広部から徐々に幅寸法が減少する傾斜部、続いて最も幅寸法の小さい細首部を介して該細首部よりも幅広の係止部に至る横断面形状を有し、
前記解放領域は前記傾斜部によって形成し、
前記細首部によって、前記解放領域と前記安定領域の間に中間領域を形成するのが好ましい。
【0014】
この構成により、アクセプトを含む液体の流動状態をより一層安定させることができ、繊維の乱れや絡みをさらに適切に防止することが可能となる。
【0015】
前記縦長部材の第1隆起部は、前記攪拌羽根の移動方向側に隣接する縦長部材に向かって、前記攪拌羽根の移動方向とは反対方向に隣接する縦長部材から突出させるのが好ましい。
【0016】
この構成により、攪拌羽根を移動させて繊維原料液への加圧及び除圧を繰り返すことにより各縦長部材に力が作用したとしても、第1隆起部によって十分な強度が確保されているので、振動等の発生を抑制することができ、損傷に至ることがない。
【0017】
前記保持部材は、前記縦長部材を円筒状に保持するリング状であり、
前記縦長部材の細首部は、前記保持部材の中心から延び、前記縦長部材を2等分又はほぼ2等分する平面に対して平行な第1平坦面と第2平坦面とを有し、
前記中間領域は、前記縦長部材の第2平坦面と、前記攪拌羽根の移動方向側に隣接する縦長部材の第1平坦面との間に平行又は略平行な流路で構成すればよい。
【0018】
前記縦長部材は、第1隆起部から先端側に連なる平坦面と、第2隆起部の先端側の湾曲面とを備えることにより、隣接する縦長部材の間に安定領域に連なり、徐々に間隔を広げる拡張領域を形成するのが好ましい。
【0019】
この構成により、拡張領域の働きにより安定領域からの液体の流れを良好なものとして、安定領域での流動状態をスムーズなものとすることができる。
【0020】
また、本発明は、前記課題を解決するための手段として、
円筒状のスリットスクリーンと、該スリットスクリーンに沿って回転する攪拌羽根を有するロータとを備え、繊維原料液を精選するスクリーン装置であって、
前記いずれかの構成のスリットスクリーンを備えたものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、縦長部材を同一形状とし、幅方向のいずれか一方に第1隆起部、残る他方に第2隆起部を、幅方向に直交する方向に位置をずらせて形成し、保持部材の保持凹部に差し込んで保持するようにしたので、同一又は略同一間隔の安定領域を得ることができ、しかも保持部材による保持状態を強固なものとすることができる。この結果、リジェクト除去後のアクセプトを含む液体の流れをスムーズで安定したものとすることができ、アクセプトの繊維の乱れや辛みを防止することが可能となる。また、縦長部材の振動原因を抑制し、長寿命化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係るスリットスクリーンの部分断面正面図である。
【図2】図1のスリットスクリーンの平面図である。
【図3】図1のスリットスクリーンに使用される縦長部材の斜視図である。
【図4】図2の部分拡大図である。
【図5】図4の縦長部材の拡大図である。
【図6】図4の保持部材の拡大図である。
【図7】他の実施形態に係るスリットスクリーンの一部を示す平面図である。
【図8】他の実施形態に係る縦長部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0024】
図1は、本実施形態に係るスリットスクリーン1を示す。このスリットスクリーン1は、図2に示すように、スクリーン機本体2内に収容して使用され、内部には攪拌羽根3を有するロータ4が配設されている。
【0025】
スリットスクリーン1は、図1及び図4に示すように、縦長部材5を複数並設して筒状とし、これらを縦長部材5の長手方向に所定間隔で配設した複数の保持部材6で保持したもので、隣接する縦長部材5の間に形成される精選部27により、繊維原料液中の良質繊維(アクセプト)と異物(リジェクト)とを精選分離する。
【0026】
縦長部材5は、全て同一形状であり、ステンレス鋼(SUS304,SUS316等)を押出加工等することにより形成される。この縦長部材5は、図3及び図5に示すように、幅広部7と、幅広部7から徐々に幅が狭くなる傾斜部8から細首部9を介して、さらにこの細首部9よりも幅広の係止部10に至る横断面形状を有する。以下、縦長部材5の詳細について、図5を参照して説明する。
【0027】
幅広部7は、ロータ4の攪拌羽根3が移動する内面側に位置する傾斜前面11を有している。傾斜前面11は、縦長部材5を後述する保持部材6の保持凹部32に装着した状態で、保持部材6の中心から延びる直線(図5中、1点鎖線で示す中心線L1)に直交する直線(垂直線L2)に対して傾斜している。傾斜前面11の傾斜方向は、矢印R2の方向(攪拌羽根3の回転方向R1とは逆方向:以下、反回転方向R2)に向かうに従って徐々に攪拌羽根3の移動軌跡から離間する方向(外径側に向かう方向)である。
【0028】
傾斜部8は、傾斜前面11の両端縁の円弧面を介して連なる部分で、傾斜前面11の一端側円弧面(第1円弧面12)に連なる第1傾斜面13、及び、それに続く第2傾斜面14と、傾斜前面11の他端側円弧面(第2円弧面15)に連なる第3傾斜面16とを有する。
【0029】
細首部9は、縦長部材5の中心線の両側にそれぞれ形成される第1平坦面17と第2平坦面18とで構成されている。各平坦面17、18は、前記中心線を通る平面に平行で、第2平坦面18は第1平坦面17のほぼ2倍の長さを有する。
【0030】
係止部10は、細首部9の第1平坦面17に連なり、隣接する縦長部材5の第2平坦面側に向かって突出する第1隆起部19を備える。第1隆起部19は、第1平坦面17に連なる第4傾斜面20と、この第4傾斜面20に連なる第1湾曲面21とを備える。第1隆起部19からさらに先端側には、前記第1平坦面17とほぼ同一平面内に位置する第3平坦面22が形成されている。また、係止部10は、細首部9の第2平坦面18に連なり、隣接する縦長部材5の第3平坦面22側に向かって突出する第2隆起部23を備える。第2隆起部23は、第2平坦面18に連なる第5傾斜面24と、この第5傾斜面24に連なり、係止部10の先端部分を構成する第2湾曲面25とを備える。
【0031】
前記構成の縦長部材5では、後述する保持部材6に保持された状態で、隣接するもの同士の間に次のような領域を形成する。
【0032】
すなわち、縦長部材5(第1縦長部材5A)の幅広部7の傾斜前面11と、反回転方向R2に隣接する縦長部材5(第2縦長部材5B)の第1傾斜面13とで略V字状の空間(以下、V字状部26と称す。)が形成されている。V字状部26は、攪拌羽根3の移動に伴う加圧時に、高圧の渦流を発生させるためのものである。これにより、繊維原料液は後述する精選部27へと侵入する。
【0033】
また、第1縦長部材5Aの第2円弧面15と、第2縦長部材5Bの第1傾斜面13との間には隙間(厳密には、両面の最小間隙部分)が形成され、精選部27を構成している(ここでは、精選部27の最小間隙寸法を原料の目標品質に応じて0.10〜0.30mm(ここでは、0.25mm)に設定している。)。精選部27では、繊維原料液に含まれるアクセプト(良質繊維)のみを通過させ、このアクセプトよりも大きなリジェクト(異物)を残存させる。
【0034】
また、第1縦長部材5Aの第3傾斜面16と、第2縦長部材5Bの第2傾斜面14との間には、前記精選部27に連続し、隙間を徐々に拡大する解放領域28が形成されている。解放領域28は、精選部27を通過したアクセプトを含む液体の流れをスムーズなものとすると共に、逆洗時に繊維原料液がスリットスクリーン1内に還流しやすくする。
【0035】
また、第1縦長部材5Aの第2平坦面18と、第2縦長部材5Bの第1平坦面17との間には同一又はほぼ同一幅寸法の中間領域29が形成されている。そして、この中間領域29により、解放領域28通過後の液体の流動状態を安定させることが可能となっている。
【0036】
また、第1縦長部材5Aの第2隆起部23の第5傾斜面24と、第2縦長部材5Bの第1隆起部19の第1湾曲面21とはほぼ平行に形成されている。そして、第1縦長部材5Aの第2平坦面18と、第2縦長部材5Bの第1隆起部19との間の最短距離が、第1縦長部材5Aの第2隆起部23と、第2縦長部材5Bの第3平坦面22との間の最短距離と同一又はほぼ同一となるように形成されている(ここでは、その最短距離は1.55mmとしている。)。これにより、中間領域29に連なる領域に、第1隆起部19によって幅が狭くなった後、同じ又はほぼ同じ幅寸法を有する安定領域30が形成され、液体が受ける流動抵抗が抑えられており、流動状態が悪化することがない。つまり、中間領域29及び安定領域30の働きにより、繊維の乱れや絡みを防止することができ、精選部27での精選の処理能力を向上させることが可能となる。しかも、安定領域30では、第1隆起部19と第2隆起部23とが中心線L1に対して対称な位置にはなく、中心線L1に沿った方向にずれて形成されている。したがって、保持部材6で隣接する保持凹部32の間の距離を十分に大きく取ることができ、強度を向上させることが可能となる。この結果、縦長部材5の振動等も抑えて、縦長部材自体を長寿命化させることが可能となる。このように、前記構成により、液体の流動抵抗の増大を防止し、かつ、縦長部材の保持状態を安定させるという、差し込み方式では困難であった、相反する2つの要求を満足することが可能となる。
【0037】
また、第1縦長部材5Aの第2湾曲面25と、第2縦長部材5Bの第3平坦面22との間には、第2湾曲面25によって徐々に間隔が広くなる拡張領域31が形成されている。
【0038】
保持部材6は、図1、図4及び図6に示すように、ステンレス鋼(SUS304,SUS316等)からなる板材をリング状としたもので、周方向に所定ピッチで保持凹部32が形成されている。保持凹部32は、レーザー加工又は放電加工(又はその両方)により高精度に形成することができる。保持凹部32は、縦長部材5を厚さ方向から圧入可能な形状で、傾斜部8に対応する傾斜溝33、細首部9に対応する幅狭溝34、及び係止部10に対応する係止溝35で構成されている。前記保持部材6では、縦長部材5を保持凹部32に圧入することにより、精選部27に所定の間隙寸法を形成しつつ円周方向に整列させる。
【0039】
攪拌羽根3は、円周方向に4箇所等分に設けられ、縦長部材5の長手方向に対して傾斜するように、連結棒36を介して中心部に設けたロータ4に連結されている。ロータ4は図示しないモータの駆動により回転し、攪拌羽根3を、その円弧部分が先頭となってスリットスクリーン1の内周面に沿って高速回転する。各攪拌羽根3は、回転方向(矢印R1で示す方向)側が円弧状に形成され、その外周面は、反回転方向(矢印R2で示す方向)側に向かってスリットスクリーン1の内周面と一定間隔(ここでは、5〜10mm)を有する加圧面37と、この加圧面37からさらに反回転方向R2に向かうに従って徐々にスリットスクリーン1の内周面から離れるように湾曲し、その先端側で内周面と交差する減圧面38とで構成されている。
【0040】
続いて、前記構成のスリットスクリーン1の製造方法を説明する。
【0041】
まず、保持部材6を図示しない治具によって所定間隔で位置決めする。このとき、各保持部材6間で保持凹部32の位置を一致させる。そして、各保持凹部32に縦長部材5を順次圧入し、筒状とする。これにより、スリットスクリーン1が完成する。保持凹部32への縦長部材5の取付状態では、前述のように、縦長部材5の第1隆起部19と第2隆起部23とが中心線L1に沿った方向にずれて形成されているため、保持部材6で隣接する保持凹部32の間の距離を大きく取って十分な強度が得られている。特に、第1隆起部10の働きにより、後述する一連の動作時に作用する力に対して十分な強度を発揮する。
【0042】
次に、前記構成のスリットスクリーン1を備えたスクリーン装置の動作について説明する。
【0043】
まず、スクリーン機本体2内に繊維原料液(例えば、紙パルプ繊維液)を順次供給する。そして、スリットスクリーン1内に配置したロータ4を高速回転させ(周速約15〜20m/s)、攪拌羽根3をスリットスクリーン1の内周面に沿って移動させる。これにより、スリットスクリーン1内に流入した繊維原料液は、作用する遠心力で渦巻状となると共に重力の影響を受ける。このため、比重の大きな異物は中心部へと集められる。そして、比重の大きな異物を除去された残る繊維原料液の一部がスリットスクリーン1側へと流動する。
【0044】
スリットスクリーン1で、V字状部26に流入した繊維原料液は攪拌羽根3の加圧面37が通過する際に加圧されて渦流となる。渦流となった繊維原料液は精選部27に向かう。精選部27では、ユーザーが希望するサイズ以下のアクセプト(良質繊維)のみを通過させ、リジェクトの通過は阻止される。
【0045】
精選部27を通過したアクセプトを含む液体は、解放領域28から中間領域29、次いで安定領域30を経て、拡張領域31を介して、スリットスクリーン1から外部へと流動する。前記液体は解放領域28から中間領域29へとスムーズに流れ、安定領域30に至る前に徐々に間隔が狭くなるものの、流動状態を悪化させるものではない。また、安定領域30は同一又はほぼ同一の幅寸法に形成されている。したがって、前記液体が受ける流動抵抗は小さく、流動状態を悪化させることなくスムーズに流れ、繊維の乱れや絡みが殆ど発生しない。
【0046】
その後、攪拌羽根3がさらに回転し、減圧面38が通過すると、スリットスクリーン1の内周面との間隙が大きくなり、前記V字状部26で繊維原料液が減圧状態となるので、精選部27の繊維原料液がスリットスクリーン1の内周側へと引き戻される。これにより、精選部27に残留するリジェクトはスムーズにスリットスクリーン1内へと還流して詰まりも解消され、いわゆる逆洗が行われる。
【0047】
このようにして精選部27を通過することなく、スリットスクリーン1の内周側へと回収されたリジェクトは、スリットスクリーン1内を下方に向かって移動し、図示しないパイプを介して回収された後、廃品処理される。
【0048】
このような一連の精選処理、すなわち攪拌羽根3による精選部27からのアクセプトの押し出し、及び、精選部27に残存するリジェクトの回収が行われると、縦長部材5に多大な力が作用する。前述の通り、縦長部材5には、第1隆起部19と第2隆起部23とが中心線Lに対して左右非対称に形成されており、保持部材6で隣接する保持凹部32の距離が十分に取られ、強度が向上している。しかも、最も力の作用しやすい部位に、第1隆起部19が形成されている。したがって、精選時、逆洗時等、縦長部材5に多大な力が作用しても、係止部10側を中心として回転方向に位置ずれしたり、又は、精選部27の間隔がずれたりする等の不具合を発生させることがない。また、縦長部材5に振動等が発生して損傷に至ることもない。
【0049】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0050】
例えば、前記実施形態では、繊維原料液をスリットスクリーン1の内側から外側に向かって押し出すように構成したが、図7に示すように、外側から内側に向かって圧入するように構成することも可能である。この場合、スリットスクリーン1は、縦長部材5の幅広部7が保持部材6の外周側で整列する構成とすると共に、ロータ4の攪拌羽根3をスリットスクリーン1の外周部で回転可能に構成する必要がある。
【0051】
また、前記実施形態では、スリットスクリーン1を筒状としたが、平板状としてもよい。
【0052】
また、前記実施形態では、第1隆起部19を第2隆起部23よりも内径側に形成するようにしたが、図8に示すように、第1隆起部19及び第2隆起部23を、中心線L1に対して左右対称な位置に形成することにより、第1隆起部19を外径側に、第2隆起部23を内径側にそれぞれ形成するようにすることも可能である。
【0053】
また、前記実施形態では、縦長部材5の幅広部7の幅寸法(直線L2に沿った方向の寸法)を3.2mmとしたが、幅広部7の間隔を狭くし(例えば、3mm)、かつ、保持部材6に形成する保持凹部32の円周方向のピッチ寸法を小さくすることにより、縦長部材5の本数を増やすようにしてもよい。これによれば、精選部27の開口面積を小さくして、より細かいアクセプトのみを通過可能とすることができる。
【0054】
逆に、縦長部材5の幅広部7の幅寸法を大きくし、かつ、保持部材6に形成する保持凹部32の円周方向のピッチ寸法を大きくすることにより、縦長部材5の本数を少なくするようにしてもよい。この場合、幅広部7の幅寸法の増加度合いに応じて、細首部9の幅寸法、第1隆起部19及び第2隆起部23の突出寸法、あるいは、全長(直線L1方向の寸法)を大きくすればよい。これによれば、精選部27の開口面積は大きくなるものの、保持部材6による縦長部材5の保持状態を安定させることができ、段ボール等の精選精度をそれほど要求されないが、スリットスクリーン1自体の強度を要求される繊維原料の精選に有効である。
【符号の説明】
【0055】
1…スリットスクリーン
2…スクリーン機本体
3…攪拌羽根
4…ロータ
5…縦長部材
6…保持部材
7…幅広部
8…傾斜部
9…細首部
10…係止部
11…傾斜前面
12…第1円弧面
13…第1傾斜面
14…第2傾斜面
15…第2円弧面
16…第3傾斜面
17…第1平坦面
18…第2平坦面
19…第1隆起部
20…第4傾斜面
21…第1湾曲面
22…第3平坦面
23…第2隆起部
24…第5傾斜面
25…第2湾曲面
26…V字状部
27…精選部
28…解放領域
29…中間領域
30…安定領域
31…拡張領域
32…保持凹部
33…傾斜溝
34…幅狭溝
34…係止溝
35…連結棒
36…加圧面
37…減圧面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の縦長部材を保持部材に形成した各保持凹部に差し込んで保持することにより並設し、隣接する縦長部材の間にV字状部と精選部を形成し、前記縦長部材に沿って並設方向に移動する攪拌羽根により、前記V字状部で繊維原料液への加圧及び除圧を繰り返し、前記精選部を介して繊維原料液を精選するスリットスクリーンであって、
前記各縦長部材は同一形状であり、幅方向のいずれか一方に第1隆起部、残る他方に第2隆起部を、幅方向に直交する方向に位置をずらせてそれぞれ備え、
隣接する縦長部材の間には、
前記精選部を通過した液体が流動する位置に配置され、徐々に間隔を広げる解放領域と、
前記解放領域を通過後の液体が流動する位置に配置され、隣接する縦長部材の対向部分の一方に形成される第1隆起部、及び、残る他方に形成される第2隆起部とにより得られる、同一又は略同一間隔を有する安定領域と、
を形成したことを特徴とするスリットスクリーン。
【請求項2】
前記各縦長部材は、幅広部から徐々に幅寸法が減少する傾斜部、続いて最も幅寸法の小さい細首部を介して該細首部よりも幅広の係止部に至る横断面形状を有し、
前記解放領域は前記傾斜部によって形成し、
前記細首部によって、前記解放領域と前記安定領域の間に中間領域を形成したことを特徴とする請求項1に記載のスリットスクリーン。
【請求項3】
前記保持部材は、前記縦長部材の長手方向に沿って所定間隔で配設され、並設される各縦長部材に対応する位置に保持凹部をそれぞれ形成され、
前記縦長部材の第1隆起部は、前記攪拌羽根の移動方向側に隣接する縦長部材に向かって、前記攪拌羽根の移動方向とは反対方向に隣接する縦長部材から突出させたことを特徴とする請求項1又は2に記載のスリットスクリーン。
【請求項4】
前記保持部材は、前記縦長部材を円筒状に保持するリング状であり、
前記縦長部材の細首部は、前記保持部材の中心から延び、前記縦長部材を2等分又はほぼ2等分する平面に対して平行な第1平坦面と第2平坦面とを有し、
前記中間領域は、前記縦長部材の第2平坦面と、前記攪拌羽根の移動方向側に隣接する縦長部材の第1平坦面との間に平行又は略平行な流路で構成したことを特徴とする請求項2又は3に記載のスリットスクリーン。
【請求項5】
前記縦長部材は、第1隆起部から先端側に連なる平坦面と、第2隆起部の先端側の湾曲面とを備えることにより、隣接する縦長部材の間に安定領域に連なり、徐々に間隔を広げる拡張領域を形成したことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のスリットスクリーン。
【請求項6】
円筒状のスリットスクリーンと、該スリットスクリーンに沿って回転する攪拌羽根を有するロータとを備え、繊維原料液を精選するスクリーン装置であって、
前記請求項1から5のいずれか1項に記載のスリットスクリーンを備えたことを特徴とするスクリーン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−226036(P2011−226036A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99036(P2010−99036)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【特許番号】特許第4617397号(P4617397)
【特許公報発行日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(501427478)協和工機株式会社 (4)
【Fターム(参考)】