説明

スリットスクリーン、及び、該スリットスクリーンを備えたスクリーン装置

【課題】 繊維原料液に含まれる異物の種類に拘わらず、摩耗しにくくて長寿命化を図ることができ、しかも目詰まりを起こしにくくする。
【解決手段】 複数の縦長部材5を並設し、隣接する縦長部材5の間に精選領域11を形成し、縦長部材5に沿って並設方向に移動する攪拌羽根3により、繊維原料液への加圧及び除圧を繰り返し、精選領域11を介して繊維原料液を精選する。精選領域11は、繊維原料液からアクセプトを通過させると共にリジェクトを残存させて精選する精選部18と、リジェクトが残存する側に形成され、繊維原料液に渦流を発生させる渦流発生部14と、精選部18よりも流路断面積が大きく、繊維原料液を渦流発生部14に至る前に粗選する粗選部16とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリットスクリーン、及び、該スリットスクリーンを備えたスクリーン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維原料液(製紙原料)を濾過して所望品質の繊維原料を取り出す精選処理を行うためのスクリーン装置が公知である。このスクリーン装置は、濾過網であるスクリーンバスケットと、その内部を回転する攪拌羽根を備えた攪拌器とを備えている。スクリーンバスケットには、例えば、複数の縦長部材を並設し、隣接する縦長部材の間にスリット状の間隙を形成したスリットスクリーンがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第3386799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記スリットスクリーンでは、攪拌羽根によって加圧された繊維原料液に含まれる不純物、例えば、粒子状の異物が、直接、間隙を構成する縦長部材に衝突し、摩耗させる恐れがある。前記間隙には高精度が要求されているので、たとえ1箇所でも摩耗すれば(例えば、8〜10μmの摩耗で)、最早そのスリットスクリーンは使用不能となる。近年、繊維原料液が粗悪化してきており、含有される異物によって前記摩耗の問題が顕在化してきている。
【0005】
また、前記スリットスクリーンでは、攪拌羽根が通過する際、繊維原料液が加圧されて精選が行われた後、減圧されて逆洗作用により間隙に残存したリジェクトが除去される。前述の通り、繊維原料液の粗悪化に伴い、粘着性を有する異物の含有量も増大しているので、逆洗作用によっては間隙に付着した異物を十分に除去できず、目詰まりを起こしやすいという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、繊維原料液に含まれる異物の種類に拘わらず、摩耗しにくくて長寿命化を図ることができ、しかも目詰まりを起こしにくくて除塵効果の高いスリットスクリーン及びこのスリットスクリーンを備えたスクリーン装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、複数の縦長部材を並設し、隣接する縦長部材の間に精選領域を形成し、前記縦長部材に沿って並設方向に移動する攪拌羽根により、繊維原料液への加圧及び除圧を繰り返し、前記精選領域を介して繊維原料液を精選するスリットスクリーンにおいて、前記精選領域は、繊維原料液からアクセプトを通過させると共にリジェクトを残存させて精選する精選部と、前記リジェクトが残存する側に形成され、前記繊維原料液に渦流を発生させる渦流発生部と、前記精選部よりも流路断面積が大きく、繊維原料液を前記渦流発生部に至る前に粗選濾過する粗選部とで構成したものである。
【0008】
この構成により、攪拌羽根による加圧時、繊維原料液は粗選部から渦流発生部へと侵入する。このとき、繊維原料液に含有されるリジェクトのうち、サイズの大きなものの侵入が阻止され、粗選が行われる。渦流発生部に侵入した繊維原料液は渦流状態となり、精選部でアクセプトのみを通過させ、精選が行われる。つまり、縦長部材の一部の形状を変更するだけで、粗選及び精選の2段階の処理が可能となる。また、前記粗選部でサイズの大きなリジェクトを除去されているので、精選部での精選能力を十分に発揮させることができ、精選性能が向上するばかりか、精選部の摩耗が抑制され、長寿命化を図ることが可能となる。しかも、粘着性を有する物質は、渦流発生部で滞留したり、渦流発生部に付着したりするので、精選部から流出しにくくなる。また、除圧時、渦流発生部で発生する渦流により、壁面に付着する粘着性を有する物質等が除去され、精選部よりも流路断面積の大きな粗選部を介して攪拌羽根側へと引き戻され、いわゆる逆洗が行われる。したがって、渦流発生部や精選部でのリジェクトの残留が防止され、目詰まり等の不具合も発生しない。
【0009】
前記精選領域は、前記攪拌羽根で加圧された繊維原料液が前記粗選部に至る前に、前記繊維原料液に渦流を発生させる第2の渦流発生部をさらに備えるのが好ましい。
【0010】
この構成により、粗選部から渦流発生部に侵入させる繊維原料液を、第2の渦流発生部で加圧状態とすることができるので、粗選部での粗選能力を十分に向上させることが可能となる。また、渦流発生部へと侵入した繊維原料液は、第2の渦流発生部を設けない場合に比べて渦流の流速を大きくすることができ、精選部での精選性能をも十分に向上させることが可能となる。
【0011】
前記精選領域は、前記攪拌羽根で加圧された繊維原料液が衝突するリジェクト分解部をさらに備えるのが好ましい。
【0012】
この構成により、繊維原料液がリジェクト分解部に衝突して乱流状態となり、繊維原料液に含まれる結束繊維や繊維くず玉が砕解する。そして、攪拌羽根の回転方向側に隣接する縦長部材との間へと流動し、粗選部を介して渦流発生部へと侵入する。したがって、精選されることなく廃棄されていた繊維を精選してアクセプトを得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、精選領域に粗選部及び精選部を形成するようにしたので、簡単な構成であるにも拘わらず、粗選及び精選の2段階の処理を行うことが可能となる。また、粗選部と精選部の間に渦流発生部を形成したので、精選部に繊維原料液に含まれるリジェクトが直接衝突することが防止され、精選部の摩耗を抑制し、長寿命化を図ることが可能となる。さらに、逆洗時には、渦流発生部により発生させた渦流により残留するリジェクトをスムーズに回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。
【0015】
図1は本実施形態に係るスリットスクリーン1を示す。このスリットスクリーン1は、図2に示すように、スクリーン機本体2内に収容して使用され、内部には攪拌羽根3を有するロータ4が配設される。
【0016】
スリットスクリーン1は、図1及び図3に示すように、縦長部材5を複数並設して筒状とし、これらを複数の保持部材6で保持したもので、隣接する縦長部材5の間に形成される精選領域11により、繊維原料液中の良質繊維(アクセプト)と異物(リジェクト)とを精選分離する。
【0017】
縦長部材5は、ステンレス鋼(SUS304,SUS316等)を押出加工等することにより形成され、図3及び図4に示すように、幅広部7から徐々に幅寸法が減少する傾斜側面8を経て、さらに細首部9を介してこの細首部9よりも幅広の係止部10に至る横断面形状を有する。
【0018】
幅広部7は、隣接する縦長部材5の傾斜側面8と対向する部分に第1円弧凹部12が形成されている。平坦面に対向する傾斜側面8には第2円弧凹部13が形成されている。そして、第1円弧凹部12及び第2円弧凹部13により第1渦流発生部14を構成している。第1渦流発生部14は、後述するように、粗選部16を介して流入した繊維原料液を渦流とし、精選部18への加圧状態を回復させ、良好な精選環境を提供する。
【0019】
前記第1円弧凹部12は、第1突出部15を介して後述する第2渦流発生部19に連続している。第1突出部15は円弧状に突出し、隣接する縦長部材5の傾斜側面8、詳しくは第2円弧凹部13の一方の縁部とで粗選部16を構成する。粗選部16の間隙寸法は、後述する精選部18の間隙寸法よりも大きく、繊維原料液に含まれる繊維のうち、サイズの大きいリジェクトの通過を阻止可能な値となっている。
【0020】
また、第1円弧凹部13は第2突出部17を介して傾斜側面8に連続している。第2突出部17は、前記第1突出部15と同様に円弧状に突出し、隣接する縦長部材5の傾斜側面8、詳しくは第2円弧凹部13の他方の縁部とで精選部18を構成する。精選部18の間隙寸法は、ユーザーが希望するサイズのアクセプト(良質繊維)のみを通過可能な値となっている。なお、前記第2突出部17の対向部分に平坦面(第2円弧凹部13の他方の縁部)を設けたのは、縦長部材5の傾斜角度を変更する等して多少位置ずれしたとしても、精選部18の間隙寸法を所望の値に維持するためである。
【0021】
また、幅広部7には、その端面(スリットスクリーン1の内周面)に、第2渦流発生部19及びリジェクト分解部20がそれぞれ形成されている。
【0022】
第2渦流発生部19は、円弧状の凹曲面で構成され、後述する攪拌羽根3の加圧面28が通過する際、繊維原料液に渦流を発生させる。そして、この渦流により繊維原料液を加圧し、粗選部16から侵入させることが可能となっている。
【0023】
リジェクト分解部20は、前記第2渦流発生部19に連続する平坦面21と、この平坦面21に連続する円弧面22とで構成され、後述する攪拌羽3根の加圧面28が通過する際、繊維原料液を乱流状態とする。これにより、繊維原料液に含まれる結束繊維や繊維くず玉が砕解され、粗選部16を通過可能な状態となる。
【0024】
前記各円弧凹部12、13は、例えば、図8に示すように、V字凹部23に形成することも可能である。この構成によれば、V字凹部23を構成する壁面が衝突する異物等によって摩耗したとしても、渦流を発生させる機能を保持させることができ、長期に亘って使用することが可能である。
【0025】
保持部材6は、縦長部材5の細首部9及び係止部10をスリットスクリーン1の半径方向に対して矢印R2の方向側に傾斜して保持できるように保持凹部23が形成されている。
【0026】
保持部材6は、図1及び図3に示すように、ステンレス鋼(SUS304,SUS316等)からなる板材をリング状としたもので、周方向に所定ピッチで保持凹部23が形成されている。保持凹部23は、レーザー加工又は放電加工(又はその両方)により高精度に形成することができる。保持凹部23は、縦長部材5を厚さ方向から圧入可能な形状で、細首部9に対応する幅狭溝24、及び係止部10に対応する係止溝25で構成されている。なお、幅狭溝の入口部分には、縦長部材5の一方の傾斜側面8に対応する傾斜面26が形成されている。前記保持部材6では、縦長部材5を保持凹部23に圧入することにより、精選部18に所定の間隙寸法を形成しつつ円周方向に整列させる。
【0027】
攪拌羽根3は、円周方向に4箇所等分に設けられ、縦長部材5の長手方向に対して傾斜するように、連結棒27を介して中心部に設けたロータ4に連結されている。ロータ4は図示しないモータの駆動により回転し、攪拌羽根3を、その円弧部分が先頭となってスリットスクリーン1の内周面に沿って高速回転する。各攪拌羽根3は、回転方向(矢印R1で示す方向)側が円弧状に形成され、その外周面は、反回転方向(矢印R2で示す方向)側に向かってスリットスクリーン1の内周面と一定間隔(ここでは、5〜10mm)を有する加圧面28と、この加圧面28からさらに反回転方向に向かうに従って徐々にスリットスクリーン1の内周面から離れるように湾曲し、その先端側で内周面と交差する減圧面29とで構成されている。
【0028】
続いて、前記構成のスリットスクリーン1の製造方法を説明する。
【0029】
まず、保持部材6を図示しない治具によって所定間隔で位置決めする。このとき、各保持部材6間で保持凹部23の位置を一致させる。そして、各保持凹部23に縦長部材5を順次圧入し、筒状とする。これにより、各縦長部材5の間には、繊維原料液の良質繊維と異物とを精選分離するための精選領域11が形成され、スリットスクリーン1が完成する。
【0030】
次に、前記構成のスリットスクリーン1を備えたスクリーン装置の動作について説明する。
【0031】
すなわち、スクリーン機本体1内に繊維原料液を供給し、スリットスクリーン1の内周面に沿って攪拌羽根3を回転移動させると、加圧された繊維原料液がリジェクト分解部20に衝突して乱流となり、繊維原料液に含まれる結束繊維や繊維くず玉を砕解させる。砕解された繊維を含む繊維原料液は、スリットスクリーン1の内周面に沿って、次の隣り合う縦長部材5の間に形成される第1渦流発生部14へと流動する。
【0032】
第1渦流発生部14では、繊維原料液が加圧されて渦流となる。これにより、繊維原料液は加圧状態となり、粗選部16の間隙寸法よりも小さい繊維のみを第2渦流発生部19へと侵入させる(粗選濾過)。このとき、第1渦流発生部14で渦流状態となった繊維原料液が粗選部16を構成する壁面に衝突する。そして、繊維原料液に含まれる重量が大きくて粗い異物、特に硬質の異物により、従来のスリットスクリーン1のように摩耗する恐れがある。しかしながら、たとえ粗選部16を構成する壁面が摩耗したとしても、精選する繊維の最終サイズには何等影響がない。
【0033】
第1渦流発生部14では、第1及び第2逃がし凹部12及び13により十分な空間が形成されているため、粗選部16を通過した繊維原料液が再び渦流状態となる。このため、繊維原料液を十分に加圧し直して精選部18での精選をスムーズに行うことが可能となる。また、第1渦流発生部14に流入した繊維原料液に含まれる異物のうち、粘着性を有するものは滞留したり、壁面に付着したりするので、精選部18からスリットスクリーン1の外周へと流出しにくい。
【0034】
このように、前記スリットスクリーン1を備えたスクリーン装置によれば、粗選部16に至る前にリジェクト分解部20によって結束繊維等を砕解しておくことができるので、精選されることなく廃棄される繊維量を抑制することができる。また、第2渦流発生部19により再度渦流を発生させるようにしているので、精選部18での精選効率を低下させることなく、良好な精選環境を提供できる。さらに、精選部18を通過するのは、粗選部16で粗選濾過され、第2渦流発生部19を通過した後の繊維原料液であるので、精選部18を構成する壁面に衝突する硬質の異物等が少なくなり、摩耗による劣化を防止し、長寿命化を果たすことができる。また、粘着性を有する異物が精選部18に付着することによる目詰まりを有効に防止することが可能となる。またさらに、粗選部16と精選部18による2段階の処理が可能となるので、従来のように複数の処理を実行するために、複数台のスクリーン装置を連接する必要もなくなり、設備を簡略化して設置スペースを大幅に抑制可能となる。
【0035】
なお、前記実施形態では、繊維原料液をスリットスクリーン1の内側から外側に向かって押し出すように構成したが、外側から内側に向かって圧入するように構成することも可能である。この場合、スリットスクリーン1は、縦長部材5の幅広部7が保持部材6の外周側で整列する構成とすると共に、ロータ4の攪拌羽根3をスリットスクリーン1の外周部で回転可能に構成する必要がある。
【0036】
また、前記実施形態では、スリットスクリーン1を筒状としたが、平板状としてもよい。
【0037】
また、前記実施形態では、保持部材6の保持凹部23に縦長部材5を圧入するようにしたが、挿通後、加締、接着、溶着等、他の手段によって固定するようにしても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施形態に係るスリットスクリーンの正面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1の攪拌羽根及びスリットスクリーンの一部を示す部分拡大図である。
【図4】他の実施形態に係る攪拌羽根及びスリットスクリーンの一部を示す部分拡大図である。
【符号の説明】
【0039】
1…スリットスクリーン
2…スクリーン本体
3…攪拌羽根
4…ロータ
5…縦長部材
6…保持部材
7…幅広部
8…傾斜側面
9…細首部
10…係止部
11…精選領域
12…第1円弧凹部
13…第2円弧凹部
14…第1渦流発生部
15…第1突出部
16…粗選部
17…第2突出部
18…精選部
19…第2渦流発生部
20…リジェクト分解部
21…平坦面
22…円弧面
23…保持凹部
24…幅狭溝
25…係止溝
26…傾斜面
27…連結棒
28…加圧面
29…減圧面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の縦長部材を並設し、隣接する縦長部材の間に精選領域を形成し、前記縦長部材に沿って並設方向に移動する攪拌羽根により、繊維原料液への加圧及び除圧を繰り返し、前記精選領域を介して繊維原料液を精選するスリットスクリーンにおいて、
前記精選領域は、
繊維原料液からアクセプトを通過させると共にリジェクトを残存させて精選する精選部と、
前記リジェクトが残存する側に形成され、前記繊維原料液に渦流を発生させる渦流発生部と、
前記精選部よりも流路断面積が大きく、繊維原料液を前記渦流発生部に至る前に粗選濾過する粗選部と、
で構成したことを特徴とするスリットスクリーン。
【請求項2】
前記精選領域は、前記攪拌羽根で加圧された繊維原料液が前記粗選部に至る前に、前記繊維原料液に渦流を発生させる第2の渦流発生部をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のスリットスクリーン。
【請求項3】
前記精選領域は、前記攪拌羽根で加圧された繊維原料液が衝突するリジェクト分解部をさらに備えたことを特徴とする請求項2に記載のスリットスクリーン。
【請求項4】
円筒状のスリットスクリーンと、該スリットスクリーンに沿って回転する攪拌羽根を有するロータとを備え、繊維原料液を精選するスクリーン装置において、
前記スリットスクリーンは、前記請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスリットスクリーンで構成したことを特徴とするスクリーン装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−348417(P2006−348417A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−175310(P2005−175310)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(501427478)協和工機株式会社 (4)
【Fターム(参考)】