説明

スリット弁付き倒立容器

【課題】 本発明は、倒立容器の倒立待機状態でスリット弁を設けた開口部をキャップで塞ぐ構成であっても、「エア噛み」の発生を防止することにより、高い安全性を発揮するすると共に良好な使用状況を得ることのできるスリット弁付き倒立容器を得ることを目的とするものである。
【解決手段】 スクイズ容器体1の口筒部3にスリット弁10を組付け、容器体1をスクイズ変形させてスリット弁10から粘稠性内容物Nを吐出させるスリット弁付き倒立容器において、スリット弁10の直下に、内容物Nの出入りが自在で、かつ正立姿勢で内容物Nの一部が貯留する貯留体16を設け、内容物Nを吐出させる倒立姿勢に反転させた際に、速やかに貯留体16の貯留内容物Nをスリット弁10の内側に満たして「エア噛み」発生を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器体内の圧力に応じて開閉するスリット弁を備えたスリット弁付き倒立容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軟質弾性材製の有頂筒体の頂板部分にスリットを設け、圧力が作用した時に、スリットが開いて内容物を吐出させるようにしたスリット弁が知られている。このスリット弁をボトル状の容器体の開口部分に組付け、容器体を倒立させた状態で押圧してスクイズ変形させて内圧を高めると、この高められた内圧によりスリット弁が開き、収納された内容物を吐出させることができる。
【0003】
また、収納される内容物が、シャンプー、リンス、化粧液、液体洗剤さらにはドレッシング等の粘稠性を有するものである場合、この内容物を吐出させるべく容器体を正立姿勢から倒立姿勢した際に、容器体の下位に位置していた粘稠性内容物が容器体の開口部まで流下移動してくるまでに時間がかかり、内容物を吐出できるまで、待たされることになる。そこで、容器体を倒立姿勢で待機させ、常に内容物を容器体の開口部間近に位置させ、内容物を待ち時間無しに吐出させることができるようにした倒立容器が考えられている。
【0004】
しかしながら、この倒立容器は、容器体を倒立させた待機状態から、内容物を吐出させるべく、容器体を正立姿勢にしてキャップを開放している間に、内容物が流下して開口部から離れてしまうので、この離れた内容物が開口部まで流下して来るのを待たなければならない、と云う不満があった。
【0005】
また、上記した倒立容器の開口部にスリット弁を取り付け、粘稠性内容物の「液切れ」の悪さを、スリット弁による「液切り」の良さで改良したものが知られているが、内容物がスリット弁に到達する前に容器体を押圧操作すると、スリット弁が「プッシュ」と音を立てて空開きする所謂「エア噛み」を発生し、場合によっては、スリット弁に付着していた内容物を飛散し、周囲を汚すことがあった。
【0006】
この不満を解消する従来技術として特開平08−282690号公報に示された技術は、容器体の開口部にスリット弁を設け、このスリット弁を設けた開口部を開閉する蓋体を開放姿勢にした状態で、容器体を倒立姿勢に保持できるように構成したものである。この従来技術にあっては、蓋体を開放した状態で容器体を倒立姿勢に保持して待機させることができるので、容器体を倒立した待機状態からそのまま内容物の吐出が可能であり、もって内容物の不要な流下を生じさせないことができる、と云う利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平08−282690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した従来技術にあっては、容器体を倒立させた待機状態では、スリット弁が露出した状態となっているので、スリット弁に対して、内容物の重量が開弁方向に開弁力として作用する状態となるため、スリット弁からの内容物の滲み出し状の漏出や、容器体に対するわずかな外力の作用により、内容物の不要な吐出が発生してしまう、と云う問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、倒立容器の倒立待機状態でスリット弁を設けた開口部をキャップで塞ぐ構成であっても、「エア噛み」の発生を防止することを技術的課題とし、もって高い安全性を発揮するすると共に良好な使用状況を得ることのできるスリット弁付き倒立容器を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記技術的課題を解決する本発明の主たる構成は、
スクイズ変形可能なボトル状容器体の口筒部内に、容器体を開閉するキャップ体によりスリット弁を組付け、容器体を押圧してスリット弁から粘稠性内容物を吐出させるスリット弁付き倒立容器であること、
キャップ体は、容器体の倒立姿勢を支持可能に構成されていること、
容器体の口筒部内に組付いたスリット弁の直下に、内容物の出入りが自在で、かつ容器体の正立姿勢で内容物の一部を残留状に貯留する貯留体を設けたこと、
にある。
【0011】
容器体が倒立した待機状態では、スリット弁を組付けた容器体の口筒部はキャップ体により閉鎖されており、例え容器体に外力が押圧力として作用しても、スリット弁の閉状態を確保維持し、内容物の不正な漏出や吐出の発生を防止する。また、内容物は口筒部側である上部側、すなわち貯留体が位置している側に流下しているので、貯留体内には内容物が入り込んでいる。この待機状態から、キャップ体を開放させるため、容器体を正立状態に反転させると、内容物は自重により容器体の底部側である下部側に流下するが、この際、内容物の一部が、貯留体内に残留してスリット弁間近に位置することになる。
【0012】
このため、キャップ体を開いてから、容器体を正立姿勢から倒立姿勢に反転させると、容器体の下部に流下していた内容物のスリット弁への到達に先立って、貯留体内に位置している内容物が、速やかにスリット弁に到達して、このスリット弁の内側を満たすことになる。それゆえ、容器体の下部に流下していた内容物のスリット弁への到達に先立って、容器体をスクイズ変形させて内容物の吐出操作を行っても、貯留体内に位置していた内容物が吐出され尽くすまでは、「エア噛み」の発生は阻止される。
【0013】
このように、貯留体に貯留される内容物の量は、容器体の下部に位置していた内容物がスリット弁に流下到達するまでの間、スリット弁の内側を満たし続けることができればよいのであるが、この貯留体に貯留される内容物の量の値は、基本的には内容物の粘稠性程度に従って設定される。すなわち、内容物の粘稠性が高い場合には、その流下速度が遅いので、貯留体に貯留される内容物の量は大きい傾向に、反対に内容物の粘稠性が低い場合には、その流下速度が速いので、貯留体に貯留される内容物の量は少ない傾向に設定される。
【0014】
本発明の別の構成は、上記した主たる構成に、貯留体は、上端部分を組付き用の固定リングとした有底筒状に構成され、固定リングよりも下の有底筒部分を、上端部に内容物の出入口である窓孔を開設した貯留筒とした、ことを加えたものである。
【0015】
貯留体を、内容物の出入り自在な窓孔を有する有底筒状に構成したものにあっては、容器体を倒立させた待機状態で、貯留体が位置している容器体の上部内は内容物で満たされるので、貯留体内には内容物が窓孔を通って侵入している。それゆえ、容器体を倒立姿勢から正立姿勢に反転させると、この貯留体内に侵入していた内容物は、窓孔を通して流出するものの、一部は必ず、窓孔よりも下位に位置する貯留筒内に残留状に位置することになる。
【0016】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成に、貯留体を内容物の出入り自在な窓孔を有する有底筒状にしたことを加えた構成に、窓孔を、貯留筒と固定リングの間に形成される幅狭な隙間状に構成し、窓孔の下方に位置する貯留筒の筒壁部分を、撓み変形し易い変形筒壁部とした、ことを加えたものである。
【0017】
窓孔を幅狭な隙間状とし、窓孔の下方に位置する貯留筒の筒壁部分を、撓み変形し易い変形筒壁部としたものにあっては、窓孔を内容物が通過し難いので、容器体を倒立姿勢から正立姿勢に反転した際に、貯留筒内に確実にかつ十分に内容物が貯留されることになり、また正立姿勢から倒立姿勢に反転させて容器体の胴部を押圧した際に、窓孔を通ってスリット弁側に移動する空気の圧力により、変形筒壁部が撓み変形して、窓孔を形成している隙間を拡幅すると共に、この拡幅変形により変形筒壁部の変形により、内部の貯留内容物が押し出されて、速やかにスリット弁に到達する。
【0018】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成に、貯留体における内容物の貯留量を、内容物の1回の吐出量に従って設定した、ことを加えたものである。
【0019】
貯留体における内容物の貯留量を、内容物の1回の吐出量に従って設定したものにあっては、この貯留量を、内容物の1回の吐出量に略等しい値、もしくはそれ以上に設定することにより、容器体の下部側に流下した内容物の上部側への流下復帰までの時間の長短に関わりなく、確実に「エア噛み」の発生を防止することができる。例えば、内容液の量が少なくなって、容器体の下部側に流下した内容物の上部側への流下復帰までの時間が長くなる場合であっても、「エア噛み」発生を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の主たる構成にあっては、容器体を正立姿勢から倒立姿勢に反転させた際に、貯留体内に位置している内容物が、速やかにスリット弁の内側を満たすので、「エア噛み」の発生を阻止することができ、これによりスリット弁付き倒立容器の良好な使用状況を得ることができる。
【0021】
貯留体を、内容物の出入り自在な窓孔を有する有底筒状に構成したものにあっては、貯留体内に内容物が必ず貯留させることができるので、「エア噛み」発生の確実な阻止作用を得ることができる。
【0022】
窓孔を幅狭な隙間状とし、窓孔の下方に位置する貯留筒の筒壁部分を、撓み変形し易い変形筒壁部としたものにあっては、貯留筒内に確実にかつ十分に内容物を貯留することができ、また貯留筒内の内容物を、速やかにスリット弁に到達させることができるので、貯留体に貯留された内容物による「エア噛み」防止動作を、安定して確実なものとする。
【0023】
貯留体における内容物の貯留量を、内容物の1回の吐出量に従って設定したものにあっては、内容物の粘稠性の大小の違いや、内容物の量の減少等に関わりなく、「エア噛み」発生を確実に防止することができ、これにより安全な使用状況を確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態例を示す、要部を縦断した正面図である。
【図2】図1の実施形態例に使用されたスリット弁の全体斜視図である。
【図3】図1の実施形態例を倒立待機させた際の、要部縦断面図である。
【図4】図1の実施形態例に正立させた際の、要部縦断面図である。
【図5】図4図示状態で外キャップを取り去った、要部縦断面図である。
【図6】図1の実施形態例の内容物吐出動作時の、要部縦断面図である。
【図7】使用する貯留体の他の実施形態例を示す、全体斜視図である。
【図8】図7に示した貯留体の、半縦断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態例を、図面を参照しながら説明する。
図1〜図6は、本発明の一実施形態例を示すもので、図1は、本発明のスリット弁付き倒立容器の、要部を縦断図示しており、ボトル状にブロー成形された合成樹脂製のスクイズ性を有する容器体1と、この容器体1の口筒部3に密に組付けられるキャップ体4とから構成されている。容器体1(図1参照)は、有底筒状の胴部2の上端に、上方に縮径したテーパ筒状の肩部を介して円筒状の口筒部3を起立連設して構成され、軟質ポリエチレン樹脂等によりスクイズ変形可能に成形されている。
【0026】
キャップ体4(図1参照)は、主体キャップ5と、スリット弁10と、貯留体16と、そして外キャップ20とから構成されている。主体キャップ5は、口筒部3に外装して螺合する組付き筒6の上端に連設したリング板状の頂壁7の内周端から、途中の縮径段部を介して口筒片8を起立設すると共に、口筒部3に密嵌入するシール筒9を垂下設して構成されている。スリット弁10(図1および図2参照)は、軟質弾性材製の有頂筒体で、起立筒13の上端に、球弧殻状に湾曲して陥没した頂板11を連設し、この頂板11に、十字線状のスリット12を形成し、起立筒13の下端には外鍔状の組付き鍔14を連設して構成している。このスリット弁10は、起立筒13を口筒片8内に位置させた状態で、組付き鍔14を、口筒片8の縮径段部と、嵌着固定された取付けリング15との間で強固に挟持することにより、主体キャップ5に対する組付けが達成されている。
【0027】
貯留体16(図1参照)は、有底筒形状に構成され、その大部分を貯留筒17としており、上端部分である固定リング19を、主体キャップ5の、スリット弁10の組付いた口筒片8の下方のシール筒9に嵌入固定することにより、口筒部3内のスリット弁10直下に位置することになる。固定リング19が連設されている貯留筒17の上端部で、シール筒9から口筒部3内に露出した部分には、内容物Nの出入りの自在な窓孔18が開設してあり、この窓孔18よりの下位の貯留筒17部分が、シャンプー、リンス、化粧液、液体洗剤さらにはドレッシング等の粘稠性を有する内容物Nの貯留部分となっている。
【0028】
この貯留体16の固定リング19と貯留筒17との間には、固定リング19から貯留筒17に向かって縮径する段部が形成されている。この段部を形成することにより、貯留筒17と口筒部3との間に形成される内容物Nの通路となる隙間の幅を大きくすることできる。
【0029】
外キャップ20(図1参照)は、待機状態時に容器の閉鎖を確保すると共に、容器の倒立待機時の脚部を提供するもので、平板状(図示実施例では、やや周端部がせり上がっている)の天板21の下面に、主体キャップ5の口筒片8に着脱可能に外嵌係合する嵌着筒片23と、この嵌着筒片23の外側に位置して、主体キャップ5の上面周端部に嵌着当接する支持筒片24とを、それぞれ垂下設して構成され、天板21の中央部分は、外キャップ20が主体キャップ5に装着された待機状態で、スリット弁10の頂板11の上面に軽く接触、もしくはきわめて近接して、スリット弁10の閉鎖機能を低下させる変形の発生を防止する、球弧殻状に陥没した押さえ部22となっている。
【0030】
次に、図示した一実施形態例の動作を順に説明する。
内容物Nを収納した容器を、外キャップ20を脚部として倒立姿勢の支持した待機状態(図3参照)では、スリット弁10および貯留体16を組付けた容器体1の上部内は内容物Nで満たされた状態にある。この倒立待機状態において、スリット弁10のスリット12を形成した頂板11には、内容物Nの重量が「開」方向に作用することになるが、この頂板11は、外キャップ20の押さえ部22により押さえられて、「開」方向に変形するのを阻止されているので、スリット弁10は、内容物Nを漏出させることなく、確実で安定した閉鎖状態を維持することができる。
【0031】
この倒立待機状態から容器体1を正立姿勢に反転(図4参照)させると、容器体1の上部内に位置していた内容物Nは、矢印で示すように、容器体1の下部側に自重により流下するが、この際、貯留筒17内には内容物Nの一部が残留状に貯留される。なお、貯留筒17は、単純な有底筒状であるので、図3に示した倒立待機状態時に、この貯留筒17内に空気が残留する状態となる場合があるが、容器体1の正立反転時には、少なくともスリット弁10および固定リング19にかけての部分に位置していた内容物Nが貯留筒17内に流下するので、貯留筒17内には内容物Nが確実に貯留されることになる。
【0032】
この容器体1の正立姿勢状態では、内容物Nが容器体1の下部に流下して、スリット弁10には内容物Nからの圧力が加わらない状態となっているので、この状態で外キャップ20を取外し(図5参照)ても、スリット弁10が不正に開いて内容物Nを漏出もしくは吐出する恐れはない。それゆえ、この容器体1の正立姿勢状態で外キャップ20を安全に取外して、スリット弁10を「開弁」動作可能な状態にする。
【0033】
この容器体1を正立姿勢から倒立姿勢に反転させる(図6参照)と、内容物Nが矢印で示したように流下して、スリット弁10の内側を満たすので、この状態で容器体1の胴部2を押圧してスクイズ変形させて内圧を高めることにより、スリット弁10が開いて内容物Nの吐出を得ることができる。この容器体1を正立姿勢から倒立姿勢に反転させた当初においては、容器体1の下部に位置している内容物Nが、容器体1の上部に到達するのに先立って、貯留筒17内の内容物Nが速やかにスリット弁10内を満たすので、例え容器体1の下部に位置していた内容物Nがスリット弁10内に到達する前に、吐出操作を行ったとしても、「エア噛み」を生じることなく、安全な内容物Nの吐出操作を得ることができる。
【0034】
貯留体16に貯留された内容物Nは、容器体1が倒立姿勢に反転された際に、容器体1の下部に位置した内容物Nに先立って、スリット弁10内に到達して、容器体1の下部の内容物Nがスリット弁10に到達するまでの間、「エア噛み」の発生を防止するのであるが、容器体1の下部に位置した内容物Nがスリット弁10に到達する時間は、内容物Nの粘稠程度や内容物Nの残量によって変化して一定しないものである。例えば、内容物Nの粘稠程度が高い場合や、内容物Nの残量が少なくなった場合には長くなる傾向となる。
【0035】
そこで、この容器体1の下部に位置している内容物Nがスリット弁10に到達する時間が一定しないことに対応することができるように、1回の吐出操作により吐出される内容物Nの量が略一定しているような場合には、貯留体16に貯留される内容物Nの量を、この1回の吐出操作により吐出される内容物Nの量に従って設定しておくと有効である。すなわち、貯留体16に貯留される内容物Nの量を、1回の吐出操作により吐出される内容物Nの量と略等しいか、これよりも多く設定しておくことにより、1回の吐出操作により吐出される内容物Nの量の全ては、速やかにスリット弁10に到達することのできる貯留体17の貯留内容物Nで補うことができ、「エア噛み」の発生を確実に無くすことができる。
【0036】
内容物Nの吐出が終了したならば、主体キャップ5に外キャップ20を装着して、容器体1を外キャップ20により倒立保持した図3に示した待機状態にし、次の吐出操作に備える。
【0037】
図7および図8は、貯留体17の他の実施例を示すもので、窓孔18を、貯留筒17と固定リング19の間に形成される幅狭な半リング状の隙間状に構成し、窓孔18の下方に位置する貯留筒17の筒壁部分を、肉薄にして撓み変形し易い変形筒壁部17aに形成されている。
【0038】
この容器体1の倒立姿勢から正立姿勢への反転に際して、貯留筒17より上の内容物Nの窓孔18の通過が行われ難い傾向となるので、貯留筒17より上の内容物Nが貯留筒17内に流入するのを確実に達成させることになり、これにより貯留体16は十分な量の内容物Nを貯留することになる。
【0039】
また、容器体1を正立姿勢から倒立姿勢に反転させて胴部2を押圧すると、窓孔18を通ってスリット弁10側に移動する空気の圧力が、変形筒壁部17aを撓み変形させて、窓孔18を形成している隙間を拡幅して内容物Nの通過を良くする。この時、窓孔18の拡幅変形に伴う変形筒壁部17aの内側への変形により、貯留筒17内部の貯留内容物が、スリット弁10側に押し出される。胴部2に対する押圧を止めると、変形筒壁部17aの内側への変形が反転して戻るので、窓孔18は内容物Nの通過が行われ難い傾向に復帰する。
【0040】
なお、本発明は上記した実施形態例に限定されるものではなく、例えば主体キャップ5と外キャップ20の組合わせ物を、ヒンジキャップ構造とすることができ、またスリット弁10のスリット12は十字線状ではなく、一本線状や三本線状とすることも可能であり、さらに貯留筒17の筒壁部分を肉薄にして変形筒壁部17aを形成するのではなく、貯留体16全体を撓み変形し易い材料で成形することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上説明したように、本発明のスリット弁付き倒立容器は,粘稠性を有する内容物Nを、スリット弁10を「開弁」させて吐出させる際に、「エア噛み」の発生を確実に防止することができるものであり、粘稠性内容物Nを吐出するスリット弁付き倒立容器に対して幅広い利用展開が期待される。
【符号の説明】
【0042】
1 ;容器体
2 ;胴部
3 ;口筒部
4 ;キャップ体
5 ;主体キャップ
6 ;組付き筒
7 ;頂壁
8 ;口筒片
9 ;シール筒
10;スリット弁
11;頂板
12;スリット
13;起立筒
14;組付き鍔
15;取付けリング
16;貯留体
17;貯留筒
17a;変形筒壁部
18;窓孔
19;固定リング
20;外キャップ
21;天板
22;押さえ部
23;嵌着筒片
24;支持筒片
N ;内容物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクイズ変形可能なボトル状容器体(1)の口筒部(3)内に、前記容器体(1)を開閉するキャップ体(4)によりスリット弁(10)を組付け、前記容器体(1)を押圧してスリット弁(10)から粘稠性内容物(N)を吐出させるスリット弁付き倒立容器において、前記キャップ体(4)は容器体(1)の倒立姿勢を支持可能に構成され、前記スリット弁(10)の直下に、前記内容物(N)の出入りが自在で、かつ前記容器体(1)の正立姿勢で内容物(N)の一部を残留状に貯留する貯留体(16)を設けたことを特徴とするスリット弁付き倒立容器。
【請求項2】
貯留体(16)は、上端部分を組付き用の固定リング(19)とした有底筒状に構成され、前記固定リング(19)よりも下の有底筒部分を、上端部に内容物(N)の出入口である窓孔(18)を開設した貯留筒(17)とした請求項1に記載のスリット弁付き倒立容器。
【請求項3】
窓孔(18)を、貯留筒(17)と固定リング(19)の間に形成される幅狭な隙間状に構成し、前記窓孔(18)の下方に位置する貯留筒(17)の筒壁部分を、撓み変形し易い変形筒壁部(17a)とした請求項2に記載のスリット弁付き倒立容器。
【請求項4】
貯留体(16)における内容物(N)の貯留量を、前記内容物(N)の1回の吐出量に従って設定した請求項1〜3のいずれか1項に記載のスリット弁付き倒立容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−95481(P2013−95481A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239762(P2011−239762)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】