スリット式レオメータ
【課題】流体の法線応力差及び粘度を測定する。
【解決手段】改良型レオメータプレートは、平滑検出面(12)と平滑面(12)に干渉しないモノリシック集積型小型圧力センサとを有する。平滑面(12)により形成される圧力検出ダイアフラムは、平滑面に対する局所圧に呼応して撓み、プレート(16、17)間でせん断される材料の非摂動的局所圧の測定が可能となる。圧力センサはプレートのサイズに比べて十分に小さいため、測定される圧力は局所的特性を示すものと考えられる。複数のウェル(凹部)(13)は膜(10)で被覆され、ウェル(13)上の膜(10)の撓みを測定するようウェル(13)内には圧力センサが配置されている。容量型センサ或いは他のセンサを用いることができる。このレオメータプレートは、寸法が一定でないスリットを有するスリット式レオメータの一部として用いることができる。
【解決手段】改良型レオメータプレートは、平滑検出面(12)と平滑面(12)に干渉しないモノリシック集積型小型圧力センサとを有する。平滑面(12)により形成される圧力検出ダイアフラムは、平滑面に対する局所圧に呼応して撓み、プレート(16、17)間でせん断される材料の非摂動的局所圧の測定が可能となる。圧力センサはプレートのサイズに比べて十分に小さいため、測定される圧力は局所的特性を示すものと考えられる。複数のウェル(凹部)(13)は膜(10)で被覆され、ウェル(13)上の膜(10)の撓みを測定するようウェル(13)内には圧力センサが配置されている。容量型センサ或いは他のセンサを用いることができる。このレオメータプレートは、寸法が一定でないスリットを有するスリット式レオメータの一部として用いることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2001年10月31日出願の米国仮出願第60/335,375号(発明の名称「レオメータ用圧力検出装置」)の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は圧力測定装置の分野に関し、詳細には、流れがせん断流や制限流である場合における流体の局所圧を測定するためのレオメータプレート等の装置に関する。
【背景技術】
【0003】
法線応力差及び粘度は、プラスチックや他の液体の重要な特性であり、これらの液体を効率的に処理する上で特徴付けや考慮が必要な特性である。法線応力差を測定する一方法として、せん断条件下でのレオメータプレートに対する流体の局所圧を測定することが挙げられる。流体は、1枚の固定プレートと回転コーン或いは回転プレートとの間でせん断変形する。固定プレートはスプリングに接続されており、スプリングはせん断変形する液体の法線応力差に呼応して撓む。しかし、この方法においては、スプリングの撓みによって、固定プレートと回転コーンとの間のギャップが変化する。法線応力差を正確に測定するためには、測定時にこのギャップを一定に保つ必要がある。このギャップの変化を最小限に抑えるために、十分に堅いスプリングが用いられてきた。しかし、堅いスプリングを用いる場合、小さな撓みを正確に検出するための非常に精密な検出回路が必要となる。サーボシステムを用いてこのような撓みを自動的に補正する場合もある。しかし、特に動的制御システムの下では、サーボシステムのフィードバック制御の有限応答時間が不確実性の原因となる。検出回路の精度によってレオメータプレートのサイズの下限値が設定され、これによってスプリングの撓み量が定まる。即ち、法線応力差測定の精度は、レオメータプレートのサイズと検出回路の精度とに依存する。
【0004】
別の方法においては、スプリングが取り付けられたレオメータプレートを用いてプレートに対する液体の圧力下でのプレートの変位を測定するのではなく、2個以上の圧力センサが取り付けられた固定レオメータプレートを用いて、プレート上の圧力センサが配置された場所においてせん断時に液体から発生する圧力を測定することができる。この代替方法は、ラマチャンドラン,S(Ramachandran, S)及びE.B.クリアチャンセン(E. B. Chriatiansen)、AIChe 1985、31、162;ソン−ギ バク(Seong-Gi Back)、Ph.D.論文、ユタ大学、1991;及びS.G.バク(S. G. Baek)、J,J,マグダ(J, J, Magda)、S.セメントワラ(S. Cementwala)、J.of Rheology、1993、37(5)、935に記載されている。これらの文献に記載されているように、個々の圧力変換器は固定プレートに設けられている。しかし、個々の圧力変換器の検出ダイアフラムは、固定プレート表面と面一となるように取り付け、変換器によって生じる表面粗さによって流れが乱れることのないようにしなければならない。従って、個々の変換器の取り付けは慎重に行い、表面粗さを最小にする必要がある。しかし、一般に、センサを個々にプレート表面に取り付けながらこのような表面粗さを完全に無くすることは不可能であるため、表面粗さによる多少の影響は常に存在する。
【0005】
上述したタイプのレオメータにおいては、回転コーンと固定プレートとの間の正確な距離を設定し、測定時にその距離を保つことが精度の面で重要となる。現行のレオメータにおいては、この距離は機械的に設定される。先ず、コーンをプレートに接触するまで降下させる。次いで、コーンをその接触点から特定の距離だけ上昇させ、ギャップを形成する。しかし、一般のレオメータには、測定時にコーンの位置をモニターするための手段が備わっていない。
【0006】
測定対象の液体にせん断を生じさせる回転コーンを備えたレオメータプレートを用いる代わりに、液体を流路に強制的に供給し、流路の壁面に加わる圧力をレオメータプレート上の圧力と同様に測定することができる。通常、液体を所定の寸法の流路に強制的に供給し、流路壁面に加わる圧力を壁面に設けた圧力変換器によって測定する。ここでも、壁面をできるだけ平滑に保つことが重要である。所定の寸法の流路を用いることによって、液体の見掛けの粘度測定値が得られる。次いで、この液体を、上記流路の寸法とは異なる所定の寸法を有する流路を備えた第二の装置へ強制的に供給すれば、得られた圧力測定値を第一の測定値と比較して正確な粘度を計算することができる。
【0007】
米国特許第5,983,727号(特許文献1)には、装置表面に対する液体の圧力を測定するための装置が記載されている。この装置は、内部に凹部を有する実装構造を有する。この凹部上には弾性膜が延在し、また、凹部には少なくとも1個の変換器が取り付けられており、膜上の複数の選択領域での膜の撓みを検出するようになっている。しかし、膜上の複数の領域での撓みを測定するためには、或いは、同一の凹部内の数個のセンサから得られた膜の様々な領域の測定値を互いに分離するためには、比較的複雑なセンサが必要となる。
【特許文献1】米国特許第5,983,727号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、レオメータプレートにモノリシック集積型圧力変換器を設けることにより、レオメータプレートの表面粗さを実質的に排除することができる。レオメータプレートは、測定対象の圧力を発生する液体が作用する、単一の実質的に平滑な表面を形成する。このような構成において、法線応力差測定の精度は、変換器の分解能にのみ依存し、レオメータプレートのサイズには依存しない。また、このような構成により、小型のプレートを用いて法線応力差測定値を得ることが可能である。小型のプレートを用いた場合、遠心力が低下し破損しにくくなることにより不安定な流れの発生が防止されるため、せん断速度をより高くすることができる。また、試料の必要量が少なくて済む。
【0009】
マイクロファブリケーションプロセスやマイクロマシニングプロセスの進歩により、高感度固体容量型圧力変換器や読み出し回路の小型化が実現可能となる。容量型圧力変換器の場合、コンデンサの寸法(ギャップ、サイズ)や偏向膜の剛性を変えることによって幅広い感度を有するように調整することができる。読み出し回路は重要な要素であり、静電容量測定については次の3種のアプローチがある。即ち、J.M.マクリーリー(J. M. McCreary)及びD.A.シーラー(D. A. Sealer)、集積回路コンデンサアレイのための精密なコンデンサ測定技法(Precision Capacitor Measurement Techniques for Integrated Circuit Capacitor Arrays)、IEEE Trans.Instrum.And Meas.、Vol.IM−28、11〜17ページ、1979年3月と、ワタナベ(Watanabe)及びG.C.テメス(G. C. Temes)、スイッチトキャパシタデジタル容量ブリッジ(Switched-Capacitor Digital Capacitance Bridge)、IEEE Trans.Instrum.and Meas.、Vol.IM−33、247〜251ページ、1984年12月とに記載の容量ブリッジ;F.クルンメナッハー(F. Krummenacher)、周波数コンバータに対する高分解能キャパシタンス(High Resolution Capacitance To Frequency Converter)、IEEE Journal of Solid State Circuits、Vol.SC−20、No.3、1985年6月と、M.スミス(M. Smith)、L.バウマン(L. Bowman)及びJ.メインドル(J. Meindl)、容量型圧力センサICの解析、設計及び性能(Analysis, Design and Performance of a Capacitive Pressure Sensor IC)、IEEE Trans.On Biomedical Eng.、Vol.BME−33、No.2、163〜174ページ、1986年2月とに記載の緩和発振器;及びG.J.イェー(G. J. Yeh)、I.デンド(I. Dendo)及びW.H.コー(W. H. Ko)、容量型変換器のためのスイッチトキャパシタインタフェース回路(Switched Capacitor Interface Circuit for Capacitive Transducers)、Transducers 5、p.60〜63、1985年6月に記載スイッチトキャパシタである。これらの引用文献を、本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【0010】
本発明の好ましい実施形態において、レオメータプレートはその内部に形成された複数の空洞を有し、レオメータプレートの平滑測定面が空洞上に延在して空洞の一端を形成するようになっており、この空洞の一端は、空洞上の平滑面に加わる圧力に呼応してわずかに変形する。各空洞には、単一の単純な容量型圧力センサを形成し、空洞の一端の撓みの測定値、ひいては空洞上の平滑面に対して試験中に液体から加わる圧力の測定値が得られるようにする。必要に応じ、空洞と圧力センサとをレオメータプレート全体に亘って配置するが、空洞の位置及び数は、レオメータプレートを用いて行う特定の試験の際に所望の測定値が得られるように選択する。レオメータプレートは、固定的に一体化され所望の空洞やセンサを形成するように製造された2以上の材料層から構成してもよい。
【0011】
本発明の好ましい製造方法としては、表面マイクロマシニング或いはバルクマイクロマシニングのいずれか一方、或いはこれらの組合せが挙げられる。バルクマイクロマシニングを用いた好ましい方法では、弾性材料から成るプレート(或いは膜)を用いる。この好ましい方法においては、化学エッチング、プラズマエッチング或いはこれらの組合せによって、少なくとも2個のウェルをプレート(膜)内に形成する。更に、ウェルを有する膜を基板と接合し、ウェルによってプレート内に空洞が形成されるようにする。各空洞には容量型圧力センサを形成する。必要に応じ、化学エッチング、プラズマエッチング、化学的機械的研磨(CMP)或いはこれらの組合せにより膜を更に薄くして、センサの感度を調整する。表面マイクロマシニングを用いた場合、各圧力センサは基板上に直接組立てられる。しかし、この場合、レオメータプレートの液体接触側面の十分な平滑性を確保するために平坦化が必要となる。
【0012】
他の好ましい方法においては、化学エッチング、プラズマエッチング或いはこれらの組合せにより、少なくとも2個のウェルを下部基板に形成する。更に、この基板を平坦な上部プレート(膜)と接合し、ウェルによってプレート内に空洞が形成されるようにする。各空洞には容量型変換器を形成する。接合後、化学エッチング、プラズマエッチング、電気化学エッチング、化学的機械的研磨(CMP)或いはこれらの組合せによりプレートを更に薄くして、変換器の感度を調整する。
【0013】
表面マイクロマシニングを用いた好ましい方法においては、少なくとも2個のウェルを基板に形成する。各ウェルはコンダクタを有し、コンダクタはコンデンサの下側半分を構成する。コンデンサの下側半分の上に別のコンダクタを蒸着することによりコンデンサの上側半分を形成するが、その際、下側半分と上側半分との間に犠牲層を設ける。更に、犠牲層を化学エッチング或いはプラズマエッチングにより除去し、空洞を形成する。次いで、基板を更に均一に被覆して平坦化する。
【0014】
本発明のレオメータプレートは固定プレートとして用い、回転コーンと併用して測定対象のせん断応力を発生させてもよく、或いはスリット式レオメータ装置内の流路壁として用いてもよい。また、本発明は新規の小型スリット式レオメータ装置をも包含する。このレオメータ装置は、寸法の異なる複数の段から成るスリット(或いは流路)を有し、2個以上の装置間を切り換えることなく単一の装置を用いて正確な粘度が測定できるようになっている。
【0015】
本発明のレオメータプレートには、近接センサ或いは距離センサを設けてプレートに対するコーンの位置を電子的に検出し、接触点を独立して測定する必要の無いようにすることができる。このようなセンサにより測定時のコーンの位置を更に連続的にモニターすることができ、よって、測定精度が大幅に改善される。
【0016】
本発明の主な目的は、従来必要とされていた個々の圧力変換器や細長い圧力変換器を取り付ける工程を排除するために、モノリシック集積型圧力センサを備えたレオメータプレートを提供することである。これによって、プレートの表面が平滑になり、液体からプレートに加わる圧力への影響が無くなる。また、圧力測定センサの小型化によってレオメータプレートの小型化が可能となる。オンチップ或いはニアオンチップ(near on-chip)読み出し回路、アナログ−デジタルコンバータ(ADC)、ホストプロセスコントローラとの通信用入力/出力インタフェース(I/O)、及び、必要に応じ、ホストプロセスコントローラとの無線通信用テレメトリ回路を設け、SN比を最小限に抑えることにより測定精度を向上させることができる。温度センサをレオメータプレート内に設けて温度変化を測定することもでき、複数の温度センサを配置してレオメータプレートに沿った温度勾配を測定することもできる。また、近接センサをレオメータプレート内に設けてレオメータプレートとコーンとの間のギャップを検出し且つ連続的にモニターすることもできる。更に、付加的なオンチップデータ解析回路及びシステムを設けることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
明確な非摂動状態下での液体の局所圧を測定し正確な法線応力差を測定するために、液体が作用する平滑なレオメータプレートを設け、プレート内に複数の圧力センサを間隔を置いて配置して圧力センサ位置での圧力を測定することが好ましい。液体が作用し得る平滑面を提供するために、本発明のレオメータプレートは、膜(例えば、シリコンウェハで形成された膜)を用いて構成しプレートの平滑面を維持するようにしており、モノリシック集積型圧力センサを有する。容量型圧力センサ等の各種圧力センサを用いることができる。容量型圧力センサを有する本発明のレオメータプレートの実施形態を図1〜6に示す。一体的に構成されたプレートは、上部ウェハ(膜)10(図2、3及び4)と、下部ウェハ(或いは基板)11とを有する。上部膜10は、好ましくは平滑上面12を有するシリコンウェハであり、その下側に複数のウェル(或いは凹部)13を形成するように処理され、これによってウェル(凹部)13上に上部膜材料から成る薄状弾性部分14が設けられると共に、ウェル(凹部)13間に厚状支持部分15が設けられる。化学エッチャント、プラズマエッチャント或いはこれらの組み合わせを用い制御された方法でウェルを形成するようにエッチングされ得る、シリコン以外の各種材料(例えば、砒化ガリウム)を上部ウェハに用いてもよい。測定する液体に応じて、上部平滑面12をある種の材料で被覆し、液体と平滑面との化学的或いは物理的相互作用及び/又は液体による平滑面の浸食に耐えるようにしてもよい。下部ウェハ11は、コーニング社製パイレックスウェハ#7740やBOROFLOATウェハ(ショット社製)等のガラス材料で形成することができる。下部ウェハを形成する材料は、半導体や微小電気機械システム(MEMS)において基板として用いられる程度に十分な剛性を有している必要がある。
【0018】
薄状部14は、上部ウェハ10の薄状部14の平滑面12に対する非摂動的局所圧(local unpreturbed pressures)に呼応してわずかに撓んだり変形するのに十分な弾性を有する。薄状部14の撓みや変形を検出、測定するために、各ウェル(凹部)13にコンデンサを形成するが、このコンデンサは、凹部13内の薄状部14上に設けられたコンデンサプレート16と凹部13の対向側で下部ガラスウェハ11上に設けられたもう一方のコンデンサプレート17とから成り、上部ウェハと下部ウェハを接合する際に形成される。これらのウェハを接合する際、上記ウェルによって、接合ウェハから構成されるレオメータプレート内に空洞が形成される。薄状部14の撓みの変化に応じてコンデンサプレート16、17間の距離が変化し、その結果、コンデンサプレートによって形成されたコンデンサの静電容量が変化する。静電容量の値と各コンデンサの静電容量の変化を測定することにより、薄状部14の各測定面の撓み量が求まる。この撓みは液体から薄状部へ加わる圧力によって生じ、また、撓み量はこの圧力に比例するため、上で求められる撓み量によって液体から各薄状部14へ加わる圧力が求まる。
【0019】
上部ウェハ10内のウェル(凹部)13は、フォトリソグラフィープロセスと、それに引き続く湿式化学エッチング、乾式プラズマエッチング或いはこれらの組合せとを用いて形成することができる。一旦ウェルが形成されれば、コンデンサプレート16形成用導電性フィルムと、接触パッド18と、各コンデンサプレート16から延びて各接触パッド18に接続するリード線19(図1、3、4及び6)とを上部ウェハ10の下面に蒸着する。必要に応じ、薄状部14とコンデンサプレート16とを絶縁する目的で誘電層20(図3及び4)を形成してもよい。但し、誘電層20は、コンデンサプレート16を蒸着する前に上部ウェハ10の薄状部14に形成しなければならない。また、図示していないが、誘電層20は、上部ウェハ10の下側全体を覆って、上部ウェハの下側に蒸着した各種リード線や他の部品からウェハを構成するシリコンを絶縁するように形成するのが好ましい。図1〜6に示した実施形態において、4枚1組のコンデンサプレート16は、各リード線19により全て並列に各接触パッド18に接続されている(図1及び6)。
【0020】
コンデンサプレート16を測定回路に接続するために、接続孔21を下部ウェハ11を貫通するように設ける(図4)。リード線を既知の方法で接触パッド18に接続し、適当な孔21を経由させて外部回路へ接続することもできるが、好ましくは、図示するように、孔21を導電性材料22でめっきして下部ウェハ11の内部表面に接点23を形成し、上部ウェハと下部ウェハとを接合する際にこの接点と上部ウェハの接触パッド18とが電気的接触を成すようにする。また、めっきによって下部ウェハ11の底部に電気的接触パッド24も形成されるが、このパッドにはワイアや他のリード線を接続して所望の回路に接続することができる。レオメータプレートの製造においては、上部ウェハと下部ウェハとを接合する前に下部ウェハ11の内部表面に導電性材料22と接点23を設け、スパッタリング等による導電性材料の付加的蒸着はこれらウェハの接合後に行い、孔21内と接触パッド18上とに付加的な導電性材料を蒸着して接触パッド18への良好な電気的接触を確保し、下部ウェハ11の底部へ接触パッド24を形成する。
【0021】
下部ウェハ11上にコンデンサプレート17を形成する導電性フィルムを、各コンデンサプレート17から延在するリード線25と共に下部ウェハ11の内部表面上に蒸着する。孔21の場合と同様に、リード線25は孔27の内部接点26に接続される。孔27は内部導電性材料28と外部接触パッド29を有する。各コンデンサプレート17はリード線25によってそれぞれ別々の孔27へ接続される(図1及び5)。接触パッド30を上部ウェハ10に設けてリード線25の末端と接点26とに電気的接触を成すように配置し、このリード線と接点との良好な電気的接触を確保することもできる。
【0022】
孔21の場合と同様に、接地導体35は孔37の内部接点36から延在する。接触パッド38を上部ウェハ10に設けて接地導体35の末端と接点36とに電気的接触を成すように配置し、この接地導体と接点との良好な電気的接触を確保することもできる。この接地導体の存在により装置内の電気的ノイズは減少する。
【0023】
また、各孔44の各接点43に接続しているリード線41及び42を基準コンデンサ40に設けることも一般に好ましい。基準コンデンサ40は一対のコンデンサプレートとこのプレート間に設けた誘電層によって構成され、誘電層はいずれか一方のプレートに蒸着されるが、ここでは下部ウェハ11の内部表面上に蒸着されるものとして示す。或いは、基準コンデンサの一部を下部ウェハの内部表面に蒸着し、他の部分を上部ウェハの下側に蒸着してもよい。接触パッド45を上部ウェハ10に設けてリード線41及び42の末端と各接点43とに電気的接触を成すように配置し、このリード線と接点との良好な電気的接触を確保することもできる。基準コンデンサの静電容量は流体圧力の変化には影響されにくいが、容量型センサと同様に温度変化に影響されやすく、よって、この静電容量は装置内の温度変化に起因する容量変化の基準となる。
【0024】
薄状部14の動きに伴う凹部(ウェル)13内の圧力変化を防ぐために、下部ガラスウェハ11に空気流路50を設けて(図1、2及び5)、ウェル13全てを大気につながっている空気孔51に接続することができる。
【0025】
通常、液体の粘度はその温度に応じて変化する。多くの場合、試験対象の試料液体の温度は高く、試料の各部分で温度が異なる。従って、レオメータプレートの温度とプレート内のあらゆる温度勾配を測定することによって、測定値の精度を向上させることができる。通常、レオメータプレートの温度は、温度センサの位置においてプレートに接触している試料の温度を示す。熱電対やサーミスタ、トランジスタ等の各種温度センサを用いることができるが、これらはウェハ10或いは11のいずれか一方にポリシリコンを蒸着することによって形成することができる。或いは、上述のように、基準コンデンサの静電容量は温度変化に伴って変化するため、基準コンデンサ40同様のコンデンサを温度センサとして用いることができる。例えば、温度センサ55及び56を下部ウェハ11の内部表面に形成し、リード線57を用いて温度センサ55及び56各々の両側を孔59の接点58に接続する(図1及び5)。接触パッド60(図1及び6)を上部ウェハ10に設けてリード線57の末端と接点58とに電気的接触を成すように配置し、このリード線と接点との良好な電気的接触を確保することもできる。通常、これら温度センサの内の1個(ここではセンサ55)をレオメータプレートの中心に向かって配置し、他の温度センサを中心から外側へ向かって半径方向に配置して、存在し得る全ての半径方向温度勾配を検出し測定できるようにする。
【0026】
上述のように、各種コンデンサプレート、導電性リード線、接触パッド、絶縁層等を上部ウェハ10の下面或いは下部ウェハ11の内部表面のいずれか一方に蒸着する。一旦各種層を蒸着すれば、低温ガラス接合法や共晶接合法、微小電子機械システムにおいて通常用いられている他の方法等の静電気的方法によって、上部ウェハ10と下部ウェハ11とを接合する。必要に応じて、酸化物フィルム65をコンデンサプレート16及び/又はコンデンサプレート17に蒸着してプレート16、17間に絶縁層を設け、過度の圧力下での直接接触や短絡を防ぐことができる。同様の酸化物絶縁層を他の部品にも蒸着して、ウェハ接合の際に、一方のウェハ上の部品を他方のウェハ上の部品から絶縁することができる。
【0027】
本発明のレオメータプレートの主な用途の1つに、固定プレートと回転コーンとを有するレオメータでの使用が挙げられる。このようなレオメータを図11に概略的に示す。固定レオメータプレート69は本発明の円形プレートであり、図1に示すようにプレート全体に亘って圧力センサが配置されており、プレートはベース70によって支持されている。回転コーン71はシャフト72によって支持されており、シャフトはコーンを回転させるためのモータ或いは他の手段に接続されている。また、コーン71はプレート70に対して上下動可能なように取り付けられている。試料73はコーン71と固定プレート69との間に置かれる。試験時には、コーン71を回転させながら、固定プレート69内の圧力センサより圧力測定値を得る。この種のレオメータにおいては、コーンとプレートとの間の正確な距離を設定し、測定時にその距離を保つことが精度の面で重要となる。この種の一般に用いられているレオメータにおいては、先ず、コーンをプレートに接触するまで降下させる。次いで、コーンをその接触点から特定の距離だけ上昇させ、所望のギャップを形成する。本発明のレオメータプレートにおいては、近接センサ74をプレート内に設けて(好ましくはプレートの中心に設けて)、コーンのプレートからの距離を測定できることが見出された。このようにして、コーンをプレートから所望の距離に容易に且つ正確にセットすることができる。更に、この距離をモニターし、コーン71の位置を連続的に調整して、コーンの位置をプレートから所望の距離に維持することができ、現在得られる測定値に比べてより正確な測定値を得ることができる。
【0028】
本発明のレオメータプレートに各種近接センサを組み込んで、この距離の測定に用いることができる。容量型センサを用いることもできるが、この場合、上述の容量型圧力センサとは異なるやり方で配置する必要のあることが分った。また、近接センサはレオメータプレートの中心に配置するのが好ましい。図1及び3に示すように、上部ウェハ10を処理して2個のコンダクタ75及び76を形成するが、これらは、コンダクタ75を囲む絶縁層77とコンダクタ76を囲む絶縁層78とによって、上部ウェハの残りの部分から電気的に絶縁される。これらのコンダクタによってコンデンサの2枚のプレートが形成され、これらのプレートは、ウェハ10内の圧力検出用コンデンサを構成するプレートに対して垂直に配置される。図3の方向から見ると、上記コンダクタは上部ウェハ10を貫いて垂直に延在する。静電容量は回転コーンのレオメータプレートからの距離に比例して変化する。リード線80によってコンダクタ75は接触パッド81に接続され、リード線82によってコンダクタ76は接触パッド83に接続される。上部ウェハと下部ウェハとを接合する際に、接触パッド81及び83は接点84と孔85とに接触し電気的に接続する。
【0029】
本発明において、上部ウェハには様々な材料を用いることができ、また、上部ウェハは各種サイズをとり得るが、上部薄状部の厚さが少なくとも約7ミクロンとなりウェルの深さが少なくとも約5ミクロンとなり得るように、上部ウェハは厚さが少なくとも約12ミクロンである必要がある。上部ウェハがシリコンで形成される場合、上部薄状部のとり得る厚さの範囲は約7ミクロン〜約300ミクロンであり、ウェルのとり得る深さの範囲は約5ミクロン〜約300ミクロンである。ガラスウェハを下部ウェハに用いる場合、下部ウェハの厚さを少なくともミリメートル程度にして、組立てられたレオメータプレートに剛性を付与する必要がある。当然のことながら、レオメータプレートの寸法は用いる材料と構造形態によって決まるが、寸法を決める重要な要素としては、薄状部が予想される測定対象圧力の下で変形するのに十分な弾力性を有すること、用いるセンサ構造(センサ)のための空間が設けられるようにウェルの寸法を決めること、そして、組立てられたレオメータプレートが、特定の状況下での使用を考えた場合に要求される剛性や感度を有することが挙げられる。上述の上部ウェハの厚さが所望の値より大きい場合には、上部ウェハと下部ウェハとを一体化した後に、湿式化学エッチング、乾式プラズマエッチング、化学的機械的研磨、或いはこれらの方法の組合せによって上部ウェハを所望の厚さまで薄くすることが好ましい。各容量型圧力変換器のサイズは、レオメータプレートの長さの1/4未満であることが好ましい。また、レオメータプレート自身のサイズは変わり得る。図11に示すようなレオメータに用いるプレートとしては、直径が約1インチの円形プレートが好ましいが、直径が最大約4インチのプレートを用いることもできる。
【0030】
一例として、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)ウェハを用いて上部ウェハ10を形成した。この例におけるSOIウェハは、厚さ400μmのハンドルシリコンと、厚さ12μmのデバイスシリコンと、これらのシリコン間に埋められた厚さ2μmの酸化物層とから構成される。フォトリソグラフィーとエッチングを順に行って、ウェル12をデバイスシリコンに形成した。既知の方法でデバイスシリコン上に金属を蒸着してパターンを形成した後、SOIウェハを処理済のパイレックス7740ウェハに静電気的に接合した。次いで、ハンドルシリコンと酸化物層をエッチングによって除去した。上部ウェハ形成に必要なプロセスは、用いられるシリコンウェハの種類に応じて変わり得る。他の例においては、エピタキシャル成長高ドープp++シリコンから成るシリコンウェハを用いる。p++シリコンをSF6/C4F8プラズマエッチャーを用いてエッチングしウェルを形成する。次に、シリコンウェハを処理済みのパイレックスウェハに接合する。次いで、KOH溶液或いはエチレンジアミンピロカテコール(EDP)溶液を用いて余分なシリコンを除去する。或いは、エピタキシャル成長薄状n型シリコンを上部に有するp型シリコンウェハを用いて上部ウェハを形成する。n型シリコンをエッチングしてウェルを形成し、次いで処理済のパイレックスウェハに接合する。その後、余分なp型シリコンを電気化学エッチングによって除去する。
【0031】
SOIウェハを上部ウェハに用いる場合、容量型近接センサを構成する2個のコンダクタを導電性コアとしてSOIウェハのデバイスシリコン内に形成する。導電性コアは、導電性コアとデバイスシリコンとの間に形成された酸化物層によってデバイスシリコンから電気的に絶縁されている。導電性コアは高ドープのポリシリコンであってもよい。
【0032】
センサや変換器の感度及び測定可能な圧力範囲は、特定のプレートにおいて均一であってもよく、或いは所望の方法で調整してもよい。例えば、プレートの一端に近接したセンサの感度を他端に近接したセンサの感度に比べて高くすることができ、また、円形プレートの場合には、プレート中心に配置されたセンサの感度をプレートの外側近くに配置されたセンサの感度に比べて高くすることも低くすることもできる。センサは、中心から外側へ或いは一端から他端へと動き漸進的に変えることができる。変形可能な薄状部の厚さを変えることや、ウェルのサイズを変えて薄状部のサイズを増大或いは減少させることによって、或いは他の適切な方法を用いることによってセンサの感度を変えることができる。圧力範囲が均一でない場合、様々な感度を有しフルスケールの圧力が測定可能なセンサを単一プレートで用いることは、実施可能な試験条件の範囲を拡大するうえで非常に効率的である。
【0033】
図11に示すようなレオメータに用いる場合には、レオメータプレートの形状は円形であるのが好ましい。しかし、レオメータプレートの形状は長方形であってもよく、各種用途においては、図7に示すように、長方形のプレートが好ましい。図7は下部ウェハ88の内部表面を示すが、この下部ウェハは図5の下部ウェハ11と構造上類似している。上部ウェハは下部ウェハ88と同様の長方形形状を有し、図6の上部ウェハ10と構造上類似している。具体的には示さないが、このようなウェハは図5及び6のウェハの特徴を全て備えている。従って、この特徴についてのより詳細な説明は行わない。ここでも、圧力センサのサイズはプレートの長手方向の長さの1/4未満であるのが好ましい。
【0034】
単一の上部ウェハにウェルを形成してこの上部ウェハの薄状部及び支持部分が単一部品として形成されるようにするのではなく、2枚の上部ウェハを実質的に平坦なウェハ90と開口部92が貫通するように設けられたスペーサウェハ91とから形成して、平坦ウェハ90を底部ウェハ93から間隔を置いて配置し、開口部92に相当するウェルをスペーサ91内に形成することができる。これによって、図1〜6に示すレオメータプレートと実質的に同じ構造を有するレオメータプレートが形成される。平坦ウェハ90にはシリコンウェハを用いることができ、下部ウェハ93には図1〜6で説明したようにガラスウェハを用いることができる。スペーサ91はシリコン、ガラス或いは他の材料で形成することができ、これによって平坦ウェハ90に対する所望の支持部分が提供される。このスペーサは、化学気相成長(CVD)法、蒸着法、スパッタ法或いはこれらの方法の組合せによって平坦ウェハ90或いは下部ウェハ93のいずれか一方に蒸着した材料から構成される。絶縁層94とコンデンサプレート95は平坦ウェハ90に蒸着され、コンデンサプレート96と絶縁酸化物層97は下部ウェハ93に蒸着される。コンデンサプレートの接合及び他の特徴については図1〜6に示したものと同様である。
【0035】
図1〜6に示すように上部ウェハにウェルを形成したり、或いは図8に示すようにスペーサを設けるのではなく、下部ウェハ100(図9)を湿式化学エッチング、乾式プラズマエッチング或いはこれらの組合せによって処理し、ウェル101を下部ウェハ内に形成することができる。下部ウェハ100内のウェル101にコンデンサプレート102を蒸着し、もう一方のコンデンサプレート103を上部ウェハ104に蒸着することによってコンデンサを形成するが、好ましくは、絶縁層105をコンデンサプレート103と上部ウェハ104との間に設ける。上部ウェハ104の厚さは、レオメータプレート全体に亘って均一であり、液体と直接接触する表面は十分に平滑である。上部ウェハ104は下部ウェハ100に接合している。酸化物フィルム(或いは他の絶縁フィルム)106を蒸着して、短絡を防止し絶縁を図ることができる。上部ウェハと下部ウェハとを接合一体化した後、化学的機械的研磨、湿式化学エッチング、乾式プラズマエッチング、電気化学エッチング或いはこれらの方法の組合せによって上部ウェハ104を所望の厚さまで薄くすることが好ましい。コンデンサプレートの接合及び他の特徴については図1〜6に示したものと同様である。
【0036】
読み出し回路、信号発生器、ADC回路、I/Oコントローラ、温度センサ及び/又はテレメトリ回路等の各種回路や回路部品を上記ウェハの一方の内部或いは表面上に設けることは一般に好ましいが、このような回路はウェハ上にそれぞれ別々に取り付けることもできるし、或いはウェハから回路へ延在するコンダクタを用いてウェハから回路を引き離すこともできる。図1〜6で説明したように、各種コンデンサプレート、基準コンデンサ、接地導体、温度センサ及び近接センサ線は全て下部ウェハ11内の孔を経由して、下部ウェハ11の底部に形成された接触パッドに電気的に接続されている。これらの接触パッドはユーザーにとって容易に入手可能である。これらの接触パッドへのワイアの接続は、はんだ付け等によって容易に行うことができ、このワイアによってウェハ上の各種部品を各種所望の回路へ接続することができる。上述の各種回路やレオメータプレート上のセンサからの信号を処理するのに必要な各種回路については全てよく知られているため、これ以上の説明は行わない。
【0037】
上述の実施形態においては容量型圧力センサについて説明してきたが、他の様々な種類の圧力センサを用いることもできる。例えば、ファブリー・ペロー干渉計圧力センサ等の光学センサを、図10に示すような容量型圧力センサの代わりに用いることができる。上述した各容量型圧力センサの代わりにファブリー・ペロー光学圧力センサを用いる。光学的空洞110を下部ガラスウェハ(基板)111にエッチングによって形成し、次いで、空洞の底部に部分的に透明な層112を蒸着する。上部ウェハ(膜)113は反射鏡114を有するが、これは空洞の他端側で上部膜に蒸着されている。上部膜とガラス基板とを静電気的に接合して(陽極接合)一体化する。光ファイバ115を基板内に取り付けて光を部分的透明層112に指向させるようにする。光の一部は部分的透明層112を通過して空洞110内に入り反射鏡114へ向かい、また、光の一部は部分的透明層112で反射されて光ファイバへ戻る。部分的透明層を通過した光は反射鏡114によって反射され、反射した光は部分的透明層を通過し、部分的透明層から直接反射した光と共に干渉パターンを形成する。この干渉パターンからの光は上記光ファイバ或いは別の光ファイバを経由して検出器へ伝達される。干渉パターンは反射鏡の位置によって影響を受け、その位置に応じて変化する。反射鏡の位置は空洞上部の膜に加わる圧力の指標となる。従って、光ファイバへ戻った光の強度はレオメータプレート上の液体の圧力の指標となる。ここでも、圧力センサのサイズはレオメータプレートのサイズの1/4未満であるのが好ましい。圧力センサの感度はセンサプレートの一端に向かってより低くなることが好ましい。また、光発生回路及び光検出回路についてはよく知られているため、ここではその説明は行わない。
【0038】
図12及び13は本発明のスリット式レオメータを示す。レオメータ本体は下部120と上部121から構成される。下部120は少なくとも2つの凹部を有し(図面では3つの凹部122、123及び124が示されている)、これらの凹部は深さhがそれぞれ異なるが(図13)、幅は一定である。これらの凹部によって液体流路が形成される。上部121は本発明のレオメータプレートであり、一連の圧力センサ125を有し(図12)、更に、図13に示すようにウェル126を有する。ウェルは間隔をおいて配置されるが、その際、凹部122、123及び124の各々に少なくとも2個のセンサ125が配置され少なくとも異なる2箇所で圧力を測定できるようにする。各凹部は、その内部で十分に発達した流れが確保される程に十分長い。センサは、十分に発達した流れの圧力を測定できるように配置する。レオメータプレート121は、図13において最もよく示されるように、図1〜11に示すレオメータプレートとは向きが逆になっている。先の実施形態において上部ウェハとして記載されたものが、ここではレオメータプレートの底部を形成するように配置されたウェハ121aであり、測定面が下方の液体流路に面している。また、先の実施形態において基板として記載されていたものが、ここではレオメータプレートの上部且つレオメータ本体の上部を形成するように配置された121bである。これからも明らかなように、本発明のレオメータプレートはいかなる向きでも用いることができる。
【0039】
下部120用の好ましい材料としては、シリコン、ガラス、或いは十分な剛性を有し半導体や微小電子機械プロセスに用いられ、そして湿式化学エッチングや乾式プラズマエッチング、熱間エンボス加工、或いはこれらの組合せによって処理し得る他の材料があげられる。必要に応じて、下部120を複数の層から構成し、流路122、123及び124を形成することもできる。この長方形流路の2つの側面の影響を最小限に抑えるために、流路の幅はギャップhよりもかなり大きくなっているが、この幅は流路122、123及び124の全てにおいてギャップの10倍より大きいことが好ましい。上部121と下部120はそれぞれ別々に組立て、その後、静電気的接合(陽極接合)法、低温ガラス接合法、共晶接合法、或いは材料や設計に応じた他の方法によって接合一体化する。
【0040】
図14及び15は下部130と上部131から構成されるスリット式レオメータを示す。下部は少なくとも2つの凹部を有し(図面では3つの凹部132、133及び134が示されている)、この凹部は幅wがそれぞれ異なるが深さは一定である。この凹部によって液体流路が形成される。上部131は本発明のレオメータプレートであり、一連の圧力センサ135を有し(図14)、また、図15に示すようにウェル136を有する。ウェルは間隔をおいて配置されるが、その際、凹部132、133及び134の各々に少なくとも2個のセンサ135が配置され少なくとも異なる2箇所で圧力を測定できるようにする。各凹部は、その内部で十分に発達した流れが確保される程に十分長い。センサは、十分に発達した流れの圧力を測定できるように配置する。これらの流路は、各流路においてギャップに対する幅wの比率が10よりも十分大きくなるように構成される。
【0041】
上記各スリット式レオメータの使用時には、スリット式レオメータ内の凹部から成る流路に試験対象の液体を流すための手段を用いて液体の流れを発生させる。このような手段として、ポンプや他の被験液加圧源を用いることができる。液体が流れる際に、圧力センサの位置において液体から発生する圧力を各センサで測定し、得られた測定値から液体の見掛けの粘度と正確な粘度を既知の方法で求める。
【0042】
寸法の異なる凹部によって形成される大小の流路の向きは、図12と14とでは逆に示されている。しかし、スリットや流路内での液体の流れ方には違いが無い。見掛けの粘度を求めるために測定する重要な流れ特性は、特定の寸法を有する一凹部内で2個のセンサにより検出される圧力の差である。寸法の異なる複数の凹部内で得た測定値を比較することによって、液体の正確な粘度が求まる。寸法の異なる2種の凹部を用いた場合でもかなり正確な粘度が示されるが、存在する凹部の数が多いほど精度はより向上する。また、二以上の凹部が存在すれば、種々のせん断速度における粘度測定を1度で行うことができる。しかし、精度の向上は、凹部を増やすための費用の増大によって相殺される。本発明のスリット式レオメータの一体化された凹部においては、凹部を増やすための費用は、サイズの異なるスリットを有する別々の装置を用いた先行技術の場合に比べて少なくて済むが、それでも凹部を増やせばそれだけ費用が増大する。一般に、凹部の数を2〜3とすれば、通常必要な範囲内で優れた精度を得ることができる。
【0043】
上述の実施形態においては、上部ウェハ及び下部ウェハ上の各種部品の配置や相対サイズに関して幾分概略的に説明してきたが、各種部品やトレース(traces)をいかなる既知の方法や開発された方法によっても形成でき且つ配置できることは理解されるであろう。各種部品やトレースはウェハの表面に蒸着してもよく、或いはウェハ内に埋め込んでもよい。
【0044】
ここでは、本発明を実際に実施するための最良の態様として目下考えられる実施形態を参照して本発明について説明してきたが、ここに開示した発明思想から逸脱することなく本発明を様々な実施形態に適応させるに当り、各種変更を行い得るものと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
発明を実施するための現在考えられる最良の態様を、添付図面を参照して説明する。
【図1】図1は本発明の組立型レオメータプレートを上から見た平面図であるが、該プレートの液体接触平滑面を恣意的に上部表面とみなしたものであり、組立型レオメータプレートが透明であると仮定して該プレートを構成する各種内部部品を示す。
【図2】図2は図1の線2−2に沿った部分縦断面図である。
【図3】図3は図1の線3−3に沿った部分縦段面図である。
【図4】図4は図1の線4−4に沿った部分縦段面図である。
【図5】図5は図1のレオメータプレートの下部ウェハ(基板)の上から見た平面図である。
【図6】図6は図1のレオメータプレートの上部ウェハ(膜)の底面図である。
【図7】図7は図1の平面図と同様の上面平面図であるが、レオメータプレートの他の設計を示す。
【図8】図8は図2の縦断面図と同様の部分縦断面図であるが、センサ構造が異なる実施形態を示す。
【図9】図9は図2の縦断面図と同様の部分縦断面図であるが、プレート構造が異なる実施形態を示す。
【図10】図10は図2の縦断面図と同様の部分縦断面図であるが、センサ構造が異なる実施形態を示す。
【図11】図11は本発明のレオメータプレートを用いたレオメータの概略側面図であり、本発明のレオメータプレートをレオメータプレートから間隔を置いて配置されたコーンと共に用いる方法、また、コーンとレオメータプレートとの間で試料を試験する方法を示す。
【図12】図12は本発明のレオメータプレートを一構成要素として備えたスリット式レオメータの斜視図である。
【図13】図13は図12のスリット式レオメータの縦断面図である。
【図14】図14はスリット式レオメータの他の実施形態の上から見た平面図である。
【図15】図15は図14のスリット式レオメータの縦断面図である。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2001年10月31日出願の米国仮出願第60/335,375号(発明の名称「レオメータ用圧力検出装置」)の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は圧力測定装置の分野に関し、詳細には、流れがせん断流や制限流である場合における流体の局所圧を測定するためのレオメータプレート等の装置に関する。
【背景技術】
【0003】
法線応力差及び粘度は、プラスチックや他の液体の重要な特性であり、これらの液体を効率的に処理する上で特徴付けや考慮が必要な特性である。法線応力差を測定する一方法として、せん断条件下でのレオメータプレートに対する流体の局所圧を測定することが挙げられる。流体は、1枚の固定プレートと回転コーン或いは回転プレートとの間でせん断変形する。固定プレートはスプリングに接続されており、スプリングはせん断変形する液体の法線応力差に呼応して撓む。しかし、この方法においては、スプリングの撓みによって、固定プレートと回転コーンとの間のギャップが変化する。法線応力差を正確に測定するためには、測定時にこのギャップを一定に保つ必要がある。このギャップの変化を最小限に抑えるために、十分に堅いスプリングが用いられてきた。しかし、堅いスプリングを用いる場合、小さな撓みを正確に検出するための非常に精密な検出回路が必要となる。サーボシステムを用いてこのような撓みを自動的に補正する場合もある。しかし、特に動的制御システムの下では、サーボシステムのフィードバック制御の有限応答時間が不確実性の原因となる。検出回路の精度によってレオメータプレートのサイズの下限値が設定され、これによってスプリングの撓み量が定まる。即ち、法線応力差測定の精度は、レオメータプレートのサイズと検出回路の精度とに依存する。
【0004】
別の方法においては、スプリングが取り付けられたレオメータプレートを用いてプレートに対する液体の圧力下でのプレートの変位を測定するのではなく、2個以上の圧力センサが取り付けられた固定レオメータプレートを用いて、プレート上の圧力センサが配置された場所においてせん断時に液体から発生する圧力を測定することができる。この代替方法は、ラマチャンドラン,S(Ramachandran, S)及びE.B.クリアチャンセン(E. B. Chriatiansen)、AIChe 1985、31、162;ソン−ギ バク(Seong-Gi Back)、Ph.D.論文、ユタ大学、1991;及びS.G.バク(S. G. Baek)、J,J,マグダ(J, J, Magda)、S.セメントワラ(S. Cementwala)、J.of Rheology、1993、37(5)、935に記載されている。これらの文献に記載されているように、個々の圧力変換器は固定プレートに設けられている。しかし、個々の圧力変換器の検出ダイアフラムは、固定プレート表面と面一となるように取り付け、変換器によって生じる表面粗さによって流れが乱れることのないようにしなければならない。従って、個々の変換器の取り付けは慎重に行い、表面粗さを最小にする必要がある。しかし、一般に、センサを個々にプレート表面に取り付けながらこのような表面粗さを完全に無くすることは不可能であるため、表面粗さによる多少の影響は常に存在する。
【0005】
上述したタイプのレオメータにおいては、回転コーンと固定プレートとの間の正確な距離を設定し、測定時にその距離を保つことが精度の面で重要となる。現行のレオメータにおいては、この距離は機械的に設定される。先ず、コーンをプレートに接触するまで降下させる。次いで、コーンをその接触点から特定の距離だけ上昇させ、ギャップを形成する。しかし、一般のレオメータには、測定時にコーンの位置をモニターするための手段が備わっていない。
【0006】
測定対象の液体にせん断を生じさせる回転コーンを備えたレオメータプレートを用いる代わりに、液体を流路に強制的に供給し、流路の壁面に加わる圧力をレオメータプレート上の圧力と同様に測定することができる。通常、液体を所定の寸法の流路に強制的に供給し、流路壁面に加わる圧力を壁面に設けた圧力変換器によって測定する。ここでも、壁面をできるだけ平滑に保つことが重要である。所定の寸法の流路を用いることによって、液体の見掛けの粘度測定値が得られる。次いで、この液体を、上記流路の寸法とは異なる所定の寸法を有する流路を備えた第二の装置へ強制的に供給すれば、得られた圧力測定値を第一の測定値と比較して正確な粘度を計算することができる。
【0007】
米国特許第5,983,727号(特許文献1)には、装置表面に対する液体の圧力を測定するための装置が記載されている。この装置は、内部に凹部を有する実装構造を有する。この凹部上には弾性膜が延在し、また、凹部には少なくとも1個の変換器が取り付けられており、膜上の複数の選択領域での膜の撓みを検出するようになっている。しかし、膜上の複数の領域での撓みを測定するためには、或いは、同一の凹部内の数個のセンサから得られた膜の様々な領域の測定値を互いに分離するためには、比較的複雑なセンサが必要となる。
【特許文献1】米国特許第5,983,727号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、レオメータプレートにモノリシック集積型圧力変換器を設けることにより、レオメータプレートの表面粗さを実質的に排除することができる。レオメータプレートは、測定対象の圧力を発生する液体が作用する、単一の実質的に平滑な表面を形成する。このような構成において、法線応力差測定の精度は、変換器の分解能にのみ依存し、レオメータプレートのサイズには依存しない。また、このような構成により、小型のプレートを用いて法線応力差測定値を得ることが可能である。小型のプレートを用いた場合、遠心力が低下し破損しにくくなることにより不安定な流れの発生が防止されるため、せん断速度をより高くすることができる。また、試料の必要量が少なくて済む。
【0009】
マイクロファブリケーションプロセスやマイクロマシニングプロセスの進歩により、高感度固体容量型圧力変換器や読み出し回路の小型化が実現可能となる。容量型圧力変換器の場合、コンデンサの寸法(ギャップ、サイズ)や偏向膜の剛性を変えることによって幅広い感度を有するように調整することができる。読み出し回路は重要な要素であり、静電容量測定については次の3種のアプローチがある。即ち、J.M.マクリーリー(J. M. McCreary)及びD.A.シーラー(D. A. Sealer)、集積回路コンデンサアレイのための精密なコンデンサ測定技法(Precision Capacitor Measurement Techniques for Integrated Circuit Capacitor Arrays)、IEEE Trans.Instrum.And Meas.、Vol.IM−28、11〜17ページ、1979年3月と、ワタナベ(Watanabe)及びG.C.テメス(G. C. Temes)、スイッチトキャパシタデジタル容量ブリッジ(Switched-Capacitor Digital Capacitance Bridge)、IEEE Trans.Instrum.and Meas.、Vol.IM−33、247〜251ページ、1984年12月とに記載の容量ブリッジ;F.クルンメナッハー(F. Krummenacher)、周波数コンバータに対する高分解能キャパシタンス(High Resolution Capacitance To Frequency Converter)、IEEE Journal of Solid State Circuits、Vol.SC−20、No.3、1985年6月と、M.スミス(M. Smith)、L.バウマン(L. Bowman)及びJ.メインドル(J. Meindl)、容量型圧力センサICの解析、設計及び性能(Analysis, Design and Performance of a Capacitive Pressure Sensor IC)、IEEE Trans.On Biomedical Eng.、Vol.BME−33、No.2、163〜174ページ、1986年2月とに記載の緩和発振器;及びG.J.イェー(G. J. Yeh)、I.デンド(I. Dendo)及びW.H.コー(W. H. Ko)、容量型変換器のためのスイッチトキャパシタインタフェース回路(Switched Capacitor Interface Circuit for Capacitive Transducers)、Transducers 5、p.60〜63、1985年6月に記載スイッチトキャパシタである。これらの引用文献を、本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【0010】
本発明の好ましい実施形態において、レオメータプレートはその内部に形成された複数の空洞を有し、レオメータプレートの平滑測定面が空洞上に延在して空洞の一端を形成するようになっており、この空洞の一端は、空洞上の平滑面に加わる圧力に呼応してわずかに変形する。各空洞には、単一の単純な容量型圧力センサを形成し、空洞の一端の撓みの測定値、ひいては空洞上の平滑面に対して試験中に液体から加わる圧力の測定値が得られるようにする。必要に応じ、空洞と圧力センサとをレオメータプレート全体に亘って配置するが、空洞の位置及び数は、レオメータプレートを用いて行う特定の試験の際に所望の測定値が得られるように選択する。レオメータプレートは、固定的に一体化され所望の空洞やセンサを形成するように製造された2以上の材料層から構成してもよい。
【0011】
本発明の好ましい製造方法としては、表面マイクロマシニング或いはバルクマイクロマシニングのいずれか一方、或いはこれらの組合せが挙げられる。バルクマイクロマシニングを用いた好ましい方法では、弾性材料から成るプレート(或いは膜)を用いる。この好ましい方法においては、化学エッチング、プラズマエッチング或いはこれらの組合せによって、少なくとも2個のウェルをプレート(膜)内に形成する。更に、ウェルを有する膜を基板と接合し、ウェルによってプレート内に空洞が形成されるようにする。各空洞には容量型圧力センサを形成する。必要に応じ、化学エッチング、プラズマエッチング、化学的機械的研磨(CMP)或いはこれらの組合せにより膜を更に薄くして、センサの感度を調整する。表面マイクロマシニングを用いた場合、各圧力センサは基板上に直接組立てられる。しかし、この場合、レオメータプレートの液体接触側面の十分な平滑性を確保するために平坦化が必要となる。
【0012】
他の好ましい方法においては、化学エッチング、プラズマエッチング或いはこれらの組合せにより、少なくとも2個のウェルを下部基板に形成する。更に、この基板を平坦な上部プレート(膜)と接合し、ウェルによってプレート内に空洞が形成されるようにする。各空洞には容量型変換器を形成する。接合後、化学エッチング、プラズマエッチング、電気化学エッチング、化学的機械的研磨(CMP)或いはこれらの組合せによりプレートを更に薄くして、変換器の感度を調整する。
【0013】
表面マイクロマシニングを用いた好ましい方法においては、少なくとも2個のウェルを基板に形成する。各ウェルはコンダクタを有し、コンダクタはコンデンサの下側半分を構成する。コンデンサの下側半分の上に別のコンダクタを蒸着することによりコンデンサの上側半分を形成するが、その際、下側半分と上側半分との間に犠牲層を設ける。更に、犠牲層を化学エッチング或いはプラズマエッチングにより除去し、空洞を形成する。次いで、基板を更に均一に被覆して平坦化する。
【0014】
本発明のレオメータプレートは固定プレートとして用い、回転コーンと併用して測定対象のせん断応力を発生させてもよく、或いはスリット式レオメータ装置内の流路壁として用いてもよい。また、本発明は新規の小型スリット式レオメータ装置をも包含する。このレオメータ装置は、寸法の異なる複数の段から成るスリット(或いは流路)を有し、2個以上の装置間を切り換えることなく単一の装置を用いて正確な粘度が測定できるようになっている。
【0015】
本発明のレオメータプレートには、近接センサ或いは距離センサを設けてプレートに対するコーンの位置を電子的に検出し、接触点を独立して測定する必要の無いようにすることができる。このようなセンサにより測定時のコーンの位置を更に連続的にモニターすることができ、よって、測定精度が大幅に改善される。
【0016】
本発明の主な目的は、従来必要とされていた個々の圧力変換器や細長い圧力変換器を取り付ける工程を排除するために、モノリシック集積型圧力センサを備えたレオメータプレートを提供することである。これによって、プレートの表面が平滑になり、液体からプレートに加わる圧力への影響が無くなる。また、圧力測定センサの小型化によってレオメータプレートの小型化が可能となる。オンチップ或いはニアオンチップ(near on-chip)読み出し回路、アナログ−デジタルコンバータ(ADC)、ホストプロセスコントローラとの通信用入力/出力インタフェース(I/O)、及び、必要に応じ、ホストプロセスコントローラとの無線通信用テレメトリ回路を設け、SN比を最小限に抑えることにより測定精度を向上させることができる。温度センサをレオメータプレート内に設けて温度変化を測定することもでき、複数の温度センサを配置してレオメータプレートに沿った温度勾配を測定することもできる。また、近接センサをレオメータプレート内に設けてレオメータプレートとコーンとの間のギャップを検出し且つ連続的にモニターすることもできる。更に、付加的なオンチップデータ解析回路及びシステムを設けることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
明確な非摂動状態下での液体の局所圧を測定し正確な法線応力差を測定するために、液体が作用する平滑なレオメータプレートを設け、プレート内に複数の圧力センサを間隔を置いて配置して圧力センサ位置での圧力を測定することが好ましい。液体が作用し得る平滑面を提供するために、本発明のレオメータプレートは、膜(例えば、シリコンウェハで形成された膜)を用いて構成しプレートの平滑面を維持するようにしており、モノリシック集積型圧力センサを有する。容量型圧力センサ等の各種圧力センサを用いることができる。容量型圧力センサを有する本発明のレオメータプレートの実施形態を図1〜6に示す。一体的に構成されたプレートは、上部ウェハ(膜)10(図2、3及び4)と、下部ウェハ(或いは基板)11とを有する。上部膜10は、好ましくは平滑上面12を有するシリコンウェハであり、その下側に複数のウェル(或いは凹部)13を形成するように処理され、これによってウェル(凹部)13上に上部膜材料から成る薄状弾性部分14が設けられると共に、ウェル(凹部)13間に厚状支持部分15が設けられる。化学エッチャント、プラズマエッチャント或いはこれらの組み合わせを用い制御された方法でウェルを形成するようにエッチングされ得る、シリコン以外の各種材料(例えば、砒化ガリウム)を上部ウェハに用いてもよい。測定する液体に応じて、上部平滑面12をある種の材料で被覆し、液体と平滑面との化学的或いは物理的相互作用及び/又は液体による平滑面の浸食に耐えるようにしてもよい。下部ウェハ11は、コーニング社製パイレックスウェハ#7740やBOROFLOATウェハ(ショット社製)等のガラス材料で形成することができる。下部ウェハを形成する材料は、半導体や微小電気機械システム(MEMS)において基板として用いられる程度に十分な剛性を有している必要がある。
【0018】
薄状部14は、上部ウェハ10の薄状部14の平滑面12に対する非摂動的局所圧(local unpreturbed pressures)に呼応してわずかに撓んだり変形するのに十分な弾性を有する。薄状部14の撓みや変形を検出、測定するために、各ウェル(凹部)13にコンデンサを形成するが、このコンデンサは、凹部13内の薄状部14上に設けられたコンデンサプレート16と凹部13の対向側で下部ガラスウェハ11上に設けられたもう一方のコンデンサプレート17とから成り、上部ウェハと下部ウェハを接合する際に形成される。これらのウェハを接合する際、上記ウェルによって、接合ウェハから構成されるレオメータプレート内に空洞が形成される。薄状部14の撓みの変化に応じてコンデンサプレート16、17間の距離が変化し、その結果、コンデンサプレートによって形成されたコンデンサの静電容量が変化する。静電容量の値と各コンデンサの静電容量の変化を測定することにより、薄状部14の各測定面の撓み量が求まる。この撓みは液体から薄状部へ加わる圧力によって生じ、また、撓み量はこの圧力に比例するため、上で求められる撓み量によって液体から各薄状部14へ加わる圧力が求まる。
【0019】
上部ウェハ10内のウェル(凹部)13は、フォトリソグラフィープロセスと、それに引き続く湿式化学エッチング、乾式プラズマエッチング或いはこれらの組合せとを用いて形成することができる。一旦ウェルが形成されれば、コンデンサプレート16形成用導電性フィルムと、接触パッド18と、各コンデンサプレート16から延びて各接触パッド18に接続するリード線19(図1、3、4及び6)とを上部ウェハ10の下面に蒸着する。必要に応じ、薄状部14とコンデンサプレート16とを絶縁する目的で誘電層20(図3及び4)を形成してもよい。但し、誘電層20は、コンデンサプレート16を蒸着する前に上部ウェハ10の薄状部14に形成しなければならない。また、図示していないが、誘電層20は、上部ウェハ10の下側全体を覆って、上部ウェハの下側に蒸着した各種リード線や他の部品からウェハを構成するシリコンを絶縁するように形成するのが好ましい。図1〜6に示した実施形態において、4枚1組のコンデンサプレート16は、各リード線19により全て並列に各接触パッド18に接続されている(図1及び6)。
【0020】
コンデンサプレート16を測定回路に接続するために、接続孔21を下部ウェハ11を貫通するように設ける(図4)。リード線を既知の方法で接触パッド18に接続し、適当な孔21を経由させて外部回路へ接続することもできるが、好ましくは、図示するように、孔21を導電性材料22でめっきして下部ウェハ11の内部表面に接点23を形成し、上部ウェハと下部ウェハとを接合する際にこの接点と上部ウェハの接触パッド18とが電気的接触を成すようにする。また、めっきによって下部ウェハ11の底部に電気的接触パッド24も形成されるが、このパッドにはワイアや他のリード線を接続して所望の回路に接続することができる。レオメータプレートの製造においては、上部ウェハと下部ウェハとを接合する前に下部ウェハ11の内部表面に導電性材料22と接点23を設け、スパッタリング等による導電性材料の付加的蒸着はこれらウェハの接合後に行い、孔21内と接触パッド18上とに付加的な導電性材料を蒸着して接触パッド18への良好な電気的接触を確保し、下部ウェハ11の底部へ接触パッド24を形成する。
【0021】
下部ウェハ11上にコンデンサプレート17を形成する導電性フィルムを、各コンデンサプレート17から延在するリード線25と共に下部ウェハ11の内部表面上に蒸着する。孔21の場合と同様に、リード線25は孔27の内部接点26に接続される。孔27は内部導電性材料28と外部接触パッド29を有する。各コンデンサプレート17はリード線25によってそれぞれ別々の孔27へ接続される(図1及び5)。接触パッド30を上部ウェハ10に設けてリード線25の末端と接点26とに電気的接触を成すように配置し、このリード線と接点との良好な電気的接触を確保することもできる。
【0022】
孔21の場合と同様に、接地導体35は孔37の内部接点36から延在する。接触パッド38を上部ウェハ10に設けて接地導体35の末端と接点36とに電気的接触を成すように配置し、この接地導体と接点との良好な電気的接触を確保することもできる。この接地導体の存在により装置内の電気的ノイズは減少する。
【0023】
また、各孔44の各接点43に接続しているリード線41及び42を基準コンデンサ40に設けることも一般に好ましい。基準コンデンサ40は一対のコンデンサプレートとこのプレート間に設けた誘電層によって構成され、誘電層はいずれか一方のプレートに蒸着されるが、ここでは下部ウェハ11の内部表面上に蒸着されるものとして示す。或いは、基準コンデンサの一部を下部ウェハの内部表面に蒸着し、他の部分を上部ウェハの下側に蒸着してもよい。接触パッド45を上部ウェハ10に設けてリード線41及び42の末端と各接点43とに電気的接触を成すように配置し、このリード線と接点との良好な電気的接触を確保することもできる。基準コンデンサの静電容量は流体圧力の変化には影響されにくいが、容量型センサと同様に温度変化に影響されやすく、よって、この静電容量は装置内の温度変化に起因する容量変化の基準となる。
【0024】
薄状部14の動きに伴う凹部(ウェル)13内の圧力変化を防ぐために、下部ガラスウェハ11に空気流路50を設けて(図1、2及び5)、ウェル13全てを大気につながっている空気孔51に接続することができる。
【0025】
通常、液体の粘度はその温度に応じて変化する。多くの場合、試験対象の試料液体の温度は高く、試料の各部分で温度が異なる。従って、レオメータプレートの温度とプレート内のあらゆる温度勾配を測定することによって、測定値の精度を向上させることができる。通常、レオメータプレートの温度は、温度センサの位置においてプレートに接触している試料の温度を示す。熱電対やサーミスタ、トランジスタ等の各種温度センサを用いることができるが、これらはウェハ10或いは11のいずれか一方にポリシリコンを蒸着することによって形成することができる。或いは、上述のように、基準コンデンサの静電容量は温度変化に伴って変化するため、基準コンデンサ40同様のコンデンサを温度センサとして用いることができる。例えば、温度センサ55及び56を下部ウェハ11の内部表面に形成し、リード線57を用いて温度センサ55及び56各々の両側を孔59の接点58に接続する(図1及び5)。接触パッド60(図1及び6)を上部ウェハ10に設けてリード線57の末端と接点58とに電気的接触を成すように配置し、このリード線と接点との良好な電気的接触を確保することもできる。通常、これら温度センサの内の1個(ここではセンサ55)をレオメータプレートの中心に向かって配置し、他の温度センサを中心から外側へ向かって半径方向に配置して、存在し得る全ての半径方向温度勾配を検出し測定できるようにする。
【0026】
上述のように、各種コンデンサプレート、導電性リード線、接触パッド、絶縁層等を上部ウェハ10の下面或いは下部ウェハ11の内部表面のいずれか一方に蒸着する。一旦各種層を蒸着すれば、低温ガラス接合法や共晶接合法、微小電子機械システムにおいて通常用いられている他の方法等の静電気的方法によって、上部ウェハ10と下部ウェハ11とを接合する。必要に応じて、酸化物フィルム65をコンデンサプレート16及び/又はコンデンサプレート17に蒸着してプレート16、17間に絶縁層を設け、過度の圧力下での直接接触や短絡を防ぐことができる。同様の酸化物絶縁層を他の部品にも蒸着して、ウェハ接合の際に、一方のウェハ上の部品を他方のウェハ上の部品から絶縁することができる。
【0027】
本発明のレオメータプレートの主な用途の1つに、固定プレートと回転コーンとを有するレオメータでの使用が挙げられる。このようなレオメータを図11に概略的に示す。固定レオメータプレート69は本発明の円形プレートであり、図1に示すようにプレート全体に亘って圧力センサが配置されており、プレートはベース70によって支持されている。回転コーン71はシャフト72によって支持されており、シャフトはコーンを回転させるためのモータ或いは他の手段に接続されている。また、コーン71はプレート70に対して上下動可能なように取り付けられている。試料73はコーン71と固定プレート69との間に置かれる。試験時には、コーン71を回転させながら、固定プレート69内の圧力センサより圧力測定値を得る。この種のレオメータにおいては、コーンとプレートとの間の正確な距離を設定し、測定時にその距離を保つことが精度の面で重要となる。この種の一般に用いられているレオメータにおいては、先ず、コーンをプレートに接触するまで降下させる。次いで、コーンをその接触点から特定の距離だけ上昇させ、所望のギャップを形成する。本発明のレオメータプレートにおいては、近接センサ74をプレート内に設けて(好ましくはプレートの中心に設けて)、コーンのプレートからの距離を測定できることが見出された。このようにして、コーンをプレートから所望の距離に容易に且つ正確にセットすることができる。更に、この距離をモニターし、コーン71の位置を連続的に調整して、コーンの位置をプレートから所望の距離に維持することができ、現在得られる測定値に比べてより正確な測定値を得ることができる。
【0028】
本発明のレオメータプレートに各種近接センサを組み込んで、この距離の測定に用いることができる。容量型センサを用いることもできるが、この場合、上述の容量型圧力センサとは異なるやり方で配置する必要のあることが分った。また、近接センサはレオメータプレートの中心に配置するのが好ましい。図1及び3に示すように、上部ウェハ10を処理して2個のコンダクタ75及び76を形成するが、これらは、コンダクタ75を囲む絶縁層77とコンダクタ76を囲む絶縁層78とによって、上部ウェハの残りの部分から電気的に絶縁される。これらのコンダクタによってコンデンサの2枚のプレートが形成され、これらのプレートは、ウェハ10内の圧力検出用コンデンサを構成するプレートに対して垂直に配置される。図3の方向から見ると、上記コンダクタは上部ウェハ10を貫いて垂直に延在する。静電容量は回転コーンのレオメータプレートからの距離に比例して変化する。リード線80によってコンダクタ75は接触パッド81に接続され、リード線82によってコンダクタ76は接触パッド83に接続される。上部ウェハと下部ウェハとを接合する際に、接触パッド81及び83は接点84と孔85とに接触し電気的に接続する。
【0029】
本発明において、上部ウェハには様々な材料を用いることができ、また、上部ウェハは各種サイズをとり得るが、上部薄状部の厚さが少なくとも約7ミクロンとなりウェルの深さが少なくとも約5ミクロンとなり得るように、上部ウェハは厚さが少なくとも約12ミクロンである必要がある。上部ウェハがシリコンで形成される場合、上部薄状部のとり得る厚さの範囲は約7ミクロン〜約300ミクロンであり、ウェルのとり得る深さの範囲は約5ミクロン〜約300ミクロンである。ガラスウェハを下部ウェハに用いる場合、下部ウェハの厚さを少なくともミリメートル程度にして、組立てられたレオメータプレートに剛性を付与する必要がある。当然のことながら、レオメータプレートの寸法は用いる材料と構造形態によって決まるが、寸法を決める重要な要素としては、薄状部が予想される測定対象圧力の下で変形するのに十分な弾力性を有すること、用いるセンサ構造(センサ)のための空間が設けられるようにウェルの寸法を決めること、そして、組立てられたレオメータプレートが、特定の状況下での使用を考えた場合に要求される剛性や感度を有することが挙げられる。上述の上部ウェハの厚さが所望の値より大きい場合には、上部ウェハと下部ウェハとを一体化した後に、湿式化学エッチング、乾式プラズマエッチング、化学的機械的研磨、或いはこれらの方法の組合せによって上部ウェハを所望の厚さまで薄くすることが好ましい。各容量型圧力変換器のサイズは、レオメータプレートの長さの1/4未満であることが好ましい。また、レオメータプレート自身のサイズは変わり得る。図11に示すようなレオメータに用いるプレートとしては、直径が約1インチの円形プレートが好ましいが、直径が最大約4インチのプレートを用いることもできる。
【0030】
一例として、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)ウェハを用いて上部ウェハ10を形成した。この例におけるSOIウェハは、厚さ400μmのハンドルシリコンと、厚さ12μmのデバイスシリコンと、これらのシリコン間に埋められた厚さ2μmの酸化物層とから構成される。フォトリソグラフィーとエッチングを順に行って、ウェル12をデバイスシリコンに形成した。既知の方法でデバイスシリコン上に金属を蒸着してパターンを形成した後、SOIウェハを処理済のパイレックス7740ウェハに静電気的に接合した。次いで、ハンドルシリコンと酸化物層をエッチングによって除去した。上部ウェハ形成に必要なプロセスは、用いられるシリコンウェハの種類に応じて変わり得る。他の例においては、エピタキシャル成長高ドープp++シリコンから成るシリコンウェハを用いる。p++シリコンをSF6/C4F8プラズマエッチャーを用いてエッチングしウェルを形成する。次に、シリコンウェハを処理済みのパイレックスウェハに接合する。次いで、KOH溶液或いはエチレンジアミンピロカテコール(EDP)溶液を用いて余分なシリコンを除去する。或いは、エピタキシャル成長薄状n型シリコンを上部に有するp型シリコンウェハを用いて上部ウェハを形成する。n型シリコンをエッチングしてウェルを形成し、次いで処理済のパイレックスウェハに接合する。その後、余分なp型シリコンを電気化学エッチングによって除去する。
【0031】
SOIウェハを上部ウェハに用いる場合、容量型近接センサを構成する2個のコンダクタを導電性コアとしてSOIウェハのデバイスシリコン内に形成する。導電性コアは、導電性コアとデバイスシリコンとの間に形成された酸化物層によってデバイスシリコンから電気的に絶縁されている。導電性コアは高ドープのポリシリコンであってもよい。
【0032】
センサや変換器の感度及び測定可能な圧力範囲は、特定のプレートにおいて均一であってもよく、或いは所望の方法で調整してもよい。例えば、プレートの一端に近接したセンサの感度を他端に近接したセンサの感度に比べて高くすることができ、また、円形プレートの場合には、プレート中心に配置されたセンサの感度をプレートの外側近くに配置されたセンサの感度に比べて高くすることも低くすることもできる。センサは、中心から外側へ或いは一端から他端へと動き漸進的に変えることができる。変形可能な薄状部の厚さを変えることや、ウェルのサイズを変えて薄状部のサイズを増大或いは減少させることによって、或いは他の適切な方法を用いることによってセンサの感度を変えることができる。圧力範囲が均一でない場合、様々な感度を有しフルスケールの圧力が測定可能なセンサを単一プレートで用いることは、実施可能な試験条件の範囲を拡大するうえで非常に効率的である。
【0033】
図11に示すようなレオメータに用いる場合には、レオメータプレートの形状は円形であるのが好ましい。しかし、レオメータプレートの形状は長方形であってもよく、各種用途においては、図7に示すように、長方形のプレートが好ましい。図7は下部ウェハ88の内部表面を示すが、この下部ウェハは図5の下部ウェハ11と構造上類似している。上部ウェハは下部ウェハ88と同様の長方形形状を有し、図6の上部ウェハ10と構造上類似している。具体的には示さないが、このようなウェハは図5及び6のウェハの特徴を全て備えている。従って、この特徴についてのより詳細な説明は行わない。ここでも、圧力センサのサイズはプレートの長手方向の長さの1/4未満であるのが好ましい。
【0034】
単一の上部ウェハにウェルを形成してこの上部ウェハの薄状部及び支持部分が単一部品として形成されるようにするのではなく、2枚の上部ウェハを実質的に平坦なウェハ90と開口部92が貫通するように設けられたスペーサウェハ91とから形成して、平坦ウェハ90を底部ウェハ93から間隔を置いて配置し、開口部92に相当するウェルをスペーサ91内に形成することができる。これによって、図1〜6に示すレオメータプレートと実質的に同じ構造を有するレオメータプレートが形成される。平坦ウェハ90にはシリコンウェハを用いることができ、下部ウェハ93には図1〜6で説明したようにガラスウェハを用いることができる。スペーサ91はシリコン、ガラス或いは他の材料で形成することができ、これによって平坦ウェハ90に対する所望の支持部分が提供される。このスペーサは、化学気相成長(CVD)法、蒸着法、スパッタ法或いはこれらの方法の組合せによって平坦ウェハ90或いは下部ウェハ93のいずれか一方に蒸着した材料から構成される。絶縁層94とコンデンサプレート95は平坦ウェハ90に蒸着され、コンデンサプレート96と絶縁酸化物層97は下部ウェハ93に蒸着される。コンデンサプレートの接合及び他の特徴については図1〜6に示したものと同様である。
【0035】
図1〜6に示すように上部ウェハにウェルを形成したり、或いは図8に示すようにスペーサを設けるのではなく、下部ウェハ100(図9)を湿式化学エッチング、乾式プラズマエッチング或いはこれらの組合せによって処理し、ウェル101を下部ウェハ内に形成することができる。下部ウェハ100内のウェル101にコンデンサプレート102を蒸着し、もう一方のコンデンサプレート103を上部ウェハ104に蒸着することによってコンデンサを形成するが、好ましくは、絶縁層105をコンデンサプレート103と上部ウェハ104との間に設ける。上部ウェハ104の厚さは、レオメータプレート全体に亘って均一であり、液体と直接接触する表面は十分に平滑である。上部ウェハ104は下部ウェハ100に接合している。酸化物フィルム(或いは他の絶縁フィルム)106を蒸着して、短絡を防止し絶縁を図ることができる。上部ウェハと下部ウェハとを接合一体化した後、化学的機械的研磨、湿式化学エッチング、乾式プラズマエッチング、電気化学エッチング或いはこれらの方法の組合せによって上部ウェハ104を所望の厚さまで薄くすることが好ましい。コンデンサプレートの接合及び他の特徴については図1〜6に示したものと同様である。
【0036】
読み出し回路、信号発生器、ADC回路、I/Oコントローラ、温度センサ及び/又はテレメトリ回路等の各種回路や回路部品を上記ウェハの一方の内部或いは表面上に設けることは一般に好ましいが、このような回路はウェハ上にそれぞれ別々に取り付けることもできるし、或いはウェハから回路へ延在するコンダクタを用いてウェハから回路を引き離すこともできる。図1〜6で説明したように、各種コンデンサプレート、基準コンデンサ、接地導体、温度センサ及び近接センサ線は全て下部ウェハ11内の孔を経由して、下部ウェハ11の底部に形成された接触パッドに電気的に接続されている。これらの接触パッドはユーザーにとって容易に入手可能である。これらの接触パッドへのワイアの接続は、はんだ付け等によって容易に行うことができ、このワイアによってウェハ上の各種部品を各種所望の回路へ接続することができる。上述の各種回路やレオメータプレート上のセンサからの信号を処理するのに必要な各種回路については全てよく知られているため、これ以上の説明は行わない。
【0037】
上述の実施形態においては容量型圧力センサについて説明してきたが、他の様々な種類の圧力センサを用いることもできる。例えば、ファブリー・ペロー干渉計圧力センサ等の光学センサを、図10に示すような容量型圧力センサの代わりに用いることができる。上述した各容量型圧力センサの代わりにファブリー・ペロー光学圧力センサを用いる。光学的空洞110を下部ガラスウェハ(基板)111にエッチングによって形成し、次いで、空洞の底部に部分的に透明な層112を蒸着する。上部ウェハ(膜)113は反射鏡114を有するが、これは空洞の他端側で上部膜に蒸着されている。上部膜とガラス基板とを静電気的に接合して(陽極接合)一体化する。光ファイバ115を基板内に取り付けて光を部分的透明層112に指向させるようにする。光の一部は部分的透明層112を通過して空洞110内に入り反射鏡114へ向かい、また、光の一部は部分的透明層112で反射されて光ファイバへ戻る。部分的透明層を通過した光は反射鏡114によって反射され、反射した光は部分的透明層を通過し、部分的透明層から直接反射した光と共に干渉パターンを形成する。この干渉パターンからの光は上記光ファイバ或いは別の光ファイバを経由して検出器へ伝達される。干渉パターンは反射鏡の位置によって影響を受け、その位置に応じて変化する。反射鏡の位置は空洞上部の膜に加わる圧力の指標となる。従って、光ファイバへ戻った光の強度はレオメータプレート上の液体の圧力の指標となる。ここでも、圧力センサのサイズはレオメータプレートのサイズの1/4未満であるのが好ましい。圧力センサの感度はセンサプレートの一端に向かってより低くなることが好ましい。また、光発生回路及び光検出回路についてはよく知られているため、ここではその説明は行わない。
【0038】
図12及び13は本発明のスリット式レオメータを示す。レオメータ本体は下部120と上部121から構成される。下部120は少なくとも2つの凹部を有し(図面では3つの凹部122、123及び124が示されている)、これらの凹部は深さhがそれぞれ異なるが(図13)、幅は一定である。これらの凹部によって液体流路が形成される。上部121は本発明のレオメータプレートであり、一連の圧力センサ125を有し(図12)、更に、図13に示すようにウェル126を有する。ウェルは間隔をおいて配置されるが、その際、凹部122、123及び124の各々に少なくとも2個のセンサ125が配置され少なくとも異なる2箇所で圧力を測定できるようにする。各凹部は、その内部で十分に発達した流れが確保される程に十分長い。センサは、十分に発達した流れの圧力を測定できるように配置する。レオメータプレート121は、図13において最もよく示されるように、図1〜11に示すレオメータプレートとは向きが逆になっている。先の実施形態において上部ウェハとして記載されたものが、ここではレオメータプレートの底部を形成するように配置されたウェハ121aであり、測定面が下方の液体流路に面している。また、先の実施形態において基板として記載されていたものが、ここではレオメータプレートの上部且つレオメータ本体の上部を形成するように配置された121bである。これからも明らかなように、本発明のレオメータプレートはいかなる向きでも用いることができる。
【0039】
下部120用の好ましい材料としては、シリコン、ガラス、或いは十分な剛性を有し半導体や微小電子機械プロセスに用いられ、そして湿式化学エッチングや乾式プラズマエッチング、熱間エンボス加工、或いはこれらの組合せによって処理し得る他の材料があげられる。必要に応じて、下部120を複数の層から構成し、流路122、123及び124を形成することもできる。この長方形流路の2つの側面の影響を最小限に抑えるために、流路の幅はギャップhよりもかなり大きくなっているが、この幅は流路122、123及び124の全てにおいてギャップの10倍より大きいことが好ましい。上部121と下部120はそれぞれ別々に組立て、その後、静電気的接合(陽極接合)法、低温ガラス接合法、共晶接合法、或いは材料や設計に応じた他の方法によって接合一体化する。
【0040】
図14及び15は下部130と上部131から構成されるスリット式レオメータを示す。下部は少なくとも2つの凹部を有し(図面では3つの凹部132、133及び134が示されている)、この凹部は幅wがそれぞれ異なるが深さは一定である。この凹部によって液体流路が形成される。上部131は本発明のレオメータプレートであり、一連の圧力センサ135を有し(図14)、また、図15に示すようにウェル136を有する。ウェルは間隔をおいて配置されるが、その際、凹部132、133及び134の各々に少なくとも2個のセンサ135が配置され少なくとも異なる2箇所で圧力を測定できるようにする。各凹部は、その内部で十分に発達した流れが確保される程に十分長い。センサは、十分に発達した流れの圧力を測定できるように配置する。これらの流路は、各流路においてギャップに対する幅wの比率が10よりも十分大きくなるように構成される。
【0041】
上記各スリット式レオメータの使用時には、スリット式レオメータ内の凹部から成る流路に試験対象の液体を流すための手段を用いて液体の流れを発生させる。このような手段として、ポンプや他の被験液加圧源を用いることができる。液体が流れる際に、圧力センサの位置において液体から発生する圧力を各センサで測定し、得られた測定値から液体の見掛けの粘度と正確な粘度を既知の方法で求める。
【0042】
寸法の異なる凹部によって形成される大小の流路の向きは、図12と14とでは逆に示されている。しかし、スリットや流路内での液体の流れ方には違いが無い。見掛けの粘度を求めるために測定する重要な流れ特性は、特定の寸法を有する一凹部内で2個のセンサにより検出される圧力の差である。寸法の異なる複数の凹部内で得た測定値を比較することによって、液体の正確な粘度が求まる。寸法の異なる2種の凹部を用いた場合でもかなり正確な粘度が示されるが、存在する凹部の数が多いほど精度はより向上する。また、二以上の凹部が存在すれば、種々のせん断速度における粘度測定を1度で行うことができる。しかし、精度の向上は、凹部を増やすための費用の増大によって相殺される。本発明のスリット式レオメータの一体化された凹部においては、凹部を増やすための費用は、サイズの異なるスリットを有する別々の装置を用いた先行技術の場合に比べて少なくて済むが、それでも凹部を増やせばそれだけ費用が増大する。一般に、凹部の数を2〜3とすれば、通常必要な範囲内で優れた精度を得ることができる。
【0043】
上述の実施形態においては、上部ウェハ及び下部ウェハ上の各種部品の配置や相対サイズに関して幾分概略的に説明してきたが、各種部品やトレース(traces)をいかなる既知の方法や開発された方法によっても形成でき且つ配置できることは理解されるであろう。各種部品やトレースはウェハの表面に蒸着してもよく、或いはウェハ内に埋め込んでもよい。
【0044】
ここでは、本発明を実際に実施するための最良の態様として目下考えられる実施形態を参照して本発明について説明してきたが、ここに開示した発明思想から逸脱することなく本発明を様々な実施形態に適応させるに当り、各種変更を行い得るものと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
発明を実施するための現在考えられる最良の態様を、添付図面を参照して説明する。
【図1】図1は本発明の組立型レオメータプレートを上から見た平面図であるが、該プレートの液体接触平滑面を恣意的に上部表面とみなしたものであり、組立型レオメータプレートが透明であると仮定して該プレートを構成する各種内部部品を示す。
【図2】図2は図1の線2−2に沿った部分縦断面図である。
【図3】図3は図1の線3−3に沿った部分縦段面図である。
【図4】図4は図1の線4−4に沿った部分縦段面図である。
【図5】図5は図1のレオメータプレートの下部ウェハ(基板)の上から見た平面図である。
【図6】図6は図1のレオメータプレートの上部ウェハ(膜)の底面図である。
【図7】図7は図1の平面図と同様の上面平面図であるが、レオメータプレートの他の設計を示す。
【図8】図8は図2の縦断面図と同様の部分縦断面図であるが、センサ構造が異なる実施形態を示す。
【図9】図9は図2の縦断面図と同様の部分縦断面図であるが、プレート構造が異なる実施形態を示す。
【図10】図10は図2の縦断面図と同様の部分縦断面図であるが、センサ構造が異なる実施形態を示す。
【図11】図11は本発明のレオメータプレートを用いたレオメータの概略側面図であり、本発明のレオメータプレートをレオメータプレートから間隔を置いて配置されたコーンと共に用いる方法、また、コーンとレオメータプレートとの間で試料を試験する方法を示す。
【図12】図12は本発明のレオメータプレートを一構成要素として備えたスリット式レオメータの斜視図である。
【図13】図13は図12のスリット式レオメータの縦断面図である。
【図14】図14はスリット式レオメータの他の実施形態の上から見た平面図である。
【図15】図15は図14のスリット式レオメータの縦断面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
本体内に設けられ、それぞれが異なる寸法を有し、直列に連結一体化されて本 体内に流路を形成している、複数の凹部と、
凹部内に流体の流れを発生させるための手段と、
各凹部に接合された複数の圧力センサとを有し、各凹部に接合された圧力センサの各々の位置において、凹部内の液体から凹部に加わる圧力の指標が得られる、スリット式レオメータ。
【請求項2】
少なくとも2個の凹部を有する、請求項1に記載のスリット式レオメータ。
【請求項3】
各凹部に少なくとも2個の圧力センサが接合されている、請求項1に記載のスリット式レオメータ。
【請求項4】
凹部の高さがそれぞれ異なる、請求項1に記載のスリット式レオメータ。
【請求項5】
凹部の幅がそれぞれ異なる、請求項1に記載のスリット式レオメータ。
【請求項1】
本体と、
本体内に設けられ、それぞれが異なる寸法を有し、直列に連結一体化されて本 体内に流路を形成している、複数の凹部と、
凹部内に流体の流れを発生させるための手段と、
各凹部に接合された複数の圧力センサとを有し、各凹部に接合された圧力センサの各々の位置において、凹部内の液体から凹部に加わる圧力の指標が得られる、スリット式レオメータ。
【請求項2】
少なくとも2個の凹部を有する、請求項1に記載のスリット式レオメータ。
【請求項3】
各凹部に少なくとも2個の圧力センサが接合されている、請求項1に記載のスリット式レオメータ。
【請求項4】
凹部の高さがそれぞれ異なる、請求項1に記載のスリット式レオメータ。
【請求項5】
凹部の幅がそれぞれ異なる、請求項1に記載のスリット式レオメータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−286802(P2008−286802A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159808(P2008−159808)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【分割の表示】特願2003−540610(P2003−540610)の分割
【原出願日】平成14年10月31日(2002.10.31)
【出願人】(504171846)レオセンス,インコーポレイテッド (1)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【分割の表示】特願2003−540610(P2003−540610)の分割
【原出願日】平成14年10月31日(2002.10.31)
【出願人】(504171846)レオセンス,インコーポレイテッド (1)
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