説明

スリーブ印刷版の製造方法及びスリーブ印刷版

【課題】効率良く低コストでスリーブ印刷版を製造可能なスリーブ印刷版の製造方法及びスリーブ印刷版を提供する。
【解決手段】円筒状をなすスリーブ体31と、このスリーブ体31の外周面に配設され、被印刷物に印刷する画像パターンが形成された版本体33と、を備え、印刷装置のシリンダに装着されて使用されるスリーブ印刷版30の製造方法であって、シート材40を丸めて、シート材40の一方の端部41と他方の端部42とを接合してスリーブ体31を得る工程と、スリーブ体31の外周面の少なくとも一部に、レーザー加工によって版本体33を形成する工程と、を有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状をなすスリーブ体の外周面に、被印刷物に印刷する画像パターンを備えた版本体が設けられ、印刷装置のシリンダに装着されて使用されるスリーブ印刷版の製造方法及びこのスリーブ印刷版に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前述のスリーブ印刷版は、例えば特許文献1に記載されているように、フレキソ印刷、凸版印刷の分野において広く使用されている。また、特許文献2に記載されているように、缶等の円筒物に対するオフセット印刷の分野においても、スリーブ印刷版が適用されている。
このスリーブ印刷版においては、画像パターン(版本体)の周方向位置がスリーブ体上で予め設定されているので、スリーブ体と版胴との位置合わせを行うことで画像パターンの見当合わせを行うことができ、画像パターンの交換作業に掛かる時間と労力を大幅に削減することが可能となる。
【0003】
従来のスリーブ印刷版は、通常、繊維強化プラスチック(FRP)製のスリーブ体と、このスリーブ体の外周面に配設され、例えばレーザー光による彫刻が可能な感光性樹脂からなり画像パターンが形成された版本体と、で構成されている。ここで、スリーブ体の肉厚は約1mm程度とされ、円筒形状を保持する構成とされている。
このようなスリーブ印刷版は、円筒面を有する固定台に強化繊維を巻き付けて、溶融したプラスチック樹脂を塗布して硬化させることを繰り返し行うことによって、繊維強化プラスチック(FRP)製のスリーブ体を製出し、このスリーブ体の外周面全体に版材を配設することによって製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−326938号公報
【特許文献2】特開2006−272682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のスリーブ印刷版の製造方法においては、円筒面を有する固定台に強化繊維を巻き付けて、溶融したプラスチック樹脂を塗布して硬化させることを繰り返し行っていたため、スリーブ体を製出するまでに多くの時間と労力を要していた。このため、スリーブ印刷版の生産効率が低く、製造コストが高くなっていた。
また、スリーブ体の外周面全体にプラスチック樹脂又はゴム材からなる版材を塗布して硬化させ、この版材に版本体を形成する必要があり、このスリーブ印刷版を製作するのにさらに時間と労力が必要であった。
【0006】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであって、効率良く低コストでスリーブ印刷版を製造可能なスリーブ印刷版の製造方法及びスリーブ印刷版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題を解決するために、本発明に係るスリーブ印刷版の製造方法は、円筒状をなすスリーブ体と、このスリーブ体の外周面に配設され、被印刷物に印刷する画像パターンが形成された版本体と、を備え、印刷装置のシリンダに装着されて使用されるスリーブ印刷版の製造方法であって、シート材を丸めて、該シート材の一方の端部と他方の端部とを接合して前記スリーブ体を得る工程と、前記スリーブ体の外周面の一部に、レーザー加工によって前記版本体を形成する工程と、を有していることを特徴としている。
【0008】
この構成のスリーブ印刷版の製造方法によれば、シート材を丸めて、該シート材の一方の端部と他方の端部とを接合して前記スリーブ体を得る工程を備えているので、従来のように、強化繊維を巻き付けて、溶融したプラスチック樹脂を塗布して硬化させることを繰り返し行う必要がなくなり、スリーブ印刷版を低コストで製作することができる。
また、前記スリーブ体の外周面の少なくとも一部に、レーザー加工によって前記版本体を形成する工程を有しているので、スリーブ体の外周面に版材を配設する必要がなく、スリーブ印刷版の製作コストを大幅に削減することができる。
【0009】
ここで、前記シート材は、2以上の異なる硬度のプラスチック樹脂又はゴム材が積層された構成とすることが好ましい。
この場合、例えばシート材の一方の端部と他方の端部とを接合して製出されたスリーブ体の内層を硬度の硬い樹脂とし、外層を硬度の低いゴム材とすることによって、レーザ加工によって形成される版本体を適正な硬さのものとすることができる。また、内層によってスリーブ印刷版の剛性を確保し、スリーブ印刷版が伸びるように変形して内径が変化することを防止できる。なお、版本体を形成する部分のみを多層構造としたシート材を用いることもできる。
【0010】
また、前記シート材の一方の端部と他方の端部とが超音波接合又はレーザー溶接によって接合されていることが好ましい。
シート材の一方の端部と他方の端部とを超音波接合又はレーザー溶接によって接合することによって、接合部分のみを局所的に加熱して融着させることが可能となり、他の部分への熱影響を抑えることができる。また、超音波接合又はレーザー溶接は、短時間で接合が完了するため、スリーブ体を大量生産することが可能となり、さらなる製造コストの削減を図ることができる。
【0011】
また、本発明のスリーブ印刷版は、円筒状をなすスリーブ体と、このスリーブ体の外周面に配設され、被印刷物に印刷する画像パターンが形成された版本体と、を備え、印刷装置のシリンダに装着されて使用されるスリーブ印刷版であって、前記スリーブ体は、シート材の一方の端部と他方の端部とを接合することによって構成され、その周方向の一部に接合部を有しており、前記スリーブ体の外周面には、レーザー加工によって前記版本体が形成されていることを特徴としている。
【0012】
この構成のスリーブ印刷版は、前述したように、強化繊維を巻き付けて溶融したプラスチック樹脂を塗布して硬化させることを繰り返し行う必要がなく、低コストで製作することができる。よって、スリーブ印刷版の寿命延長を図るために、スリーブ体の強度を必要以上に高くする必要がない。
また、スリーブ体が強化繊維を備えておらず丸めるように変形可能なシート材から構成されているので、スリーブ印刷版を潰すようにして変形させることが可能となり、保管スペース等を小さく抑えることができる。
【0013】
ここで、2つの前記版本体が周方向に対向するように配設されており、前記接合部が、2つの前記版本体の間に配置されている構成を採用することが好ましい。
この場合、スリーブ体の接合部が2つの版本体の間に配置されるので、接合部が非印刷部に配置されることになり、印刷の品質に直接影響することがない。また、接合部の外周側部分は版本体よりも径方向内方に後退していればよく、平滑に仕上げる必要はない。このため、接合部の外周面を研磨する工程を省略でき、製造コストの低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、効率良く低コストでスリーブ印刷版を製造可能なスリーブ印刷版の製造方法及びスリーブ印刷版を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態であるスリーブ印刷版の斜視図である。
【図2】図1に示すスリーブ印刷版を軸線方向から見た図である。
【図3】本発明の実施形態であるスリーブ印刷版の製造方法を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態であるスリーブ印刷版が使用される印刷装置の概略図である。
【図5】本発明の実施形態であるスリーブ印刷版が装着される版胴を示す斜視図であるである。
【図6】本発明の第2の実施形態であるスリーブ印刷版を製造するのに使用されるシート材の説明図である。
【図7】本発明の第2の実施形態であるスリーブ印刷版の斜視図である。
【図8】図7に示すスリーブ印刷版を軸線方向から見た図である。
【図9】本発明の第3の実施形態であるスリーブ印刷版を製造するのに使用されるシート材の説明図である。
【図10】本発明の第3の実施形態であるスリーブ印刷版の斜視図である。
【図11】図10に示すスリーブ印刷版を軸線方向から見た図である。
【図12】本発明の他の実施形態であるスリーブ印刷版の接合部の説明図である。
【図13】本発明の他の実施形態であるスリーブ印刷版の接合部の説明図である。
【図14】本発明の他の実施形態であるスリーブ印刷版の接合部の説明図である。
【図15】本発明の他の実施形態であるスリーブ印刷版の接合部の説明図である。
【図16】本発明の他の実施形態であるスリーブ印刷版の接合部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態について添付した図面を参照して説明する。
本実施形態であるスリーブ印刷版30は、図1及び図2に示すように、軸線Oに沿って延びる円筒状をなすスリーブ体31と、このスリーブ体31の外周面に刻設された凸版33(版本体)と、を備えている。
スリーブ体31は、その肉厚tが軸線O方向及び周方向で一定とされ、0.1mm≦t≦1.2mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、t=0.6mmとされている。
【0017】
このスリーブ体31は、ショア(A)硬度が30〜100のプラスチック樹脂、本実施形態では、レーザー光による彫刻が可能な感光性樹脂で構成されている。なお、ショア(A)硬度が30〜100とされたスリーブ体31を構成するプラスチック樹脂としては、例えばポリウレタン、メタクリレート等が挙げられる。スリーブ体31の材質は、盛られるインキの特性、被印刷物の性状等を考慮して選択することが好ましい。
【0018】
そして、このスリーブ体31には、図1及び図2に示すように、周方向の一部に接合部35が設けられている。つまり、このスリーブ体31は、図3に示すように、シート材40の一方の端部41と他方の端部42とを接合することによって構成されているのである。
【0019】
なお、本実施形態では、接合部35は軸線Oに平行に延びる直線状に形成されている。
この接合部35においては、その内周面側には段差が生じておらず、スリーブ体31の内周面は滑らかな円筒面とされている。一方、接合部35の外周面側には、僅かな(例えば0.7μm程度)の凹凸が生じていてもよい。
また、このスリーブ体31には、接合部35とは軸線Oを挟んで対向する位置に、後述するオフセット印刷装置Aのシリンダ61との相対位置を合わせるための位置合わせ用切欠部36が形成されている。
【0020】
スリーブ体31の外周面に刻設された凸版33(版本体)は、レーザー光による彫刻によってスリーブ体31の外周面に直接形成されており、被印刷物に印刷する画像パターンを備えている。本実施形態では、図1及び図2に示すように、2つの凸版33、33が軸線Oを挟んで対向する位置に刻設されている。
【0021】
そして、この凸版33、33は、周方向において接合部35及び位置合わせ用切欠部36との間に配設されており、本実施形態では、図2に示すように、凸版33と接合部35、凸版33と位置合わせ用切欠部36とが90°間隔に、つまり、凸版33、33、接合部35及び位置合わせ用切欠部36が周方向において等間隔に配設されているのである。
【0022】
次に、このスリーブ印刷版30の製造方法について説明する。
まず、長尺のシート素材(図示なし)を所定長さに裁断し、シート材40を得る。なお、裁断を行う場合には、超音波カッタを用いることが好ましい。超音波カッタによって裁断することにより、切断面が滑らかとなり、その後の接合を良好に行うことができる。
このようにして得られたシート材40を、図3に示すように、オフセット印刷装置Aのシリンダ61の外径よりも僅かに小さな外径とされた保持部材50に巻き付ける。
【0023】
そして、シート材40の一方の端部41と他方の端部42を当接させ、あるいは、一部を重ね合わせ、シート材40の一方の端部41及び他方の端部42に超音波発振器51のプローブ52を当てて超音波を付与していく。すると、超音波による摩擦熱によってシート材40の一方の端部41と他方の端部42とが局部的に加熱されて溶着される。これにより、接合部35を有するスリーブ体31が製出される。なお、付与する超音波の周波数としては、15〜100kHz程度とすることが好ましい。
【0024】
ここで、シート材40の一方の端部41と他方の端部42とを、レーザー溶接によって接合してもよい。この場合、一方の端部41と他方の端部42とに、例えばレーザー吸収剤を塗布した後に当接させ、当接させた部分に、例えばCOレーザーを照射する。すると、シート材40の一方の端部41と他方の端部42とが局部的に加熱されて溶着されることになる。なお、レーザー吸収剤の選択によって、より扱い易い固体レーザーや半導体レーザーを使用することも可能となる。
【0025】
このようにして得られたスリーブ体31の外周面に、レーザー加工機55によってレーザー光を照射し、画像パターンを有する凸版33を形成する。本実施形態においては、前述のように2つの凸版33、33が軸線Oを挟んで対向する位置に配設されており、これらの凸版33、33が、接合部35に対して周方向に90°離れた位置となるように、周方向位置が調整される。
なお、凸版33は、接合部35よりも径方向外方に突出するように形成されている。
【0026】
最後に、接合部35に対して軸線Oを挟んで対向する位置に、スリーブ体31の端面に開口する位置合わせ用切欠部36を形成し、本実施形態であるスリーブ印刷版30が製出される。
【0027】
次に、本実施形態であるスリーブ印刷版30の使用例について説明する。本実施形態であるスリーブ印刷版30は、円筒状をなす缶の外周面に印刷を施す缶の印刷装置(オフセット印刷装置A)に使用される。オフセット印刷装置Aの概略を図4に示す。
オフセット印刷装置Aは、複数配置されたインク付着機構Bと、缶移動機構Cとで概略構成されている。
【0028】
インク付着機構Bは、インクを供給するインカーユニット1と、このインカーユニット1に接触してインクを写し取った後、缶胴20の外周面に接触して該インクを印刷する(付着させる)ブランケット9を複数枚備えるブランケットホイール8とから構成される。
インカーユニット1は、インク源2と、インク源2に接触してインクを受けるダクティングロール3と、このダクティングロール3に接続して複数のローラからなる中間ローラ4と、この中間ローラ4に接続するゴムローラ5と、このゴムローラ5に接続する版胴60とからなり、版胴60の外周面には、凸版33を備えたスリーブ印刷版30が配設されている。ブランケットホイール8の外周面には、ブランケット9が複数枚備えられており、このブランケット9は、版胴60の外周面に配設されたスリーブ印刷版30の凸版33に接触するとともに、缶胴20に接触する構成とされている。
【0029】
缶移動機構Cは、缶胴20を取り入れる缶シュータ10と、この缶シュータ10から供給された缶胴20を回転自在に保持するマンドレル11と、このマンドレル11に装着された缶胴20を、順次、インク付着機構B方向に回転移動させるマンドレルターレット12とで構成されている。
【0030】
版胴60は、図5に示すように、円柱状をなし、印刷装置Aのシャフト部70に片持ち状態で回転自在に支持されるシリンダ61を有しており、このシリンダ61の外周側に、本実施形態であるスリーブ印刷版30が嵌着される。ここで、スリーブ印刷版30の内径とシリンダ61の外径とは略同一に設定されている。なお、シリンダ61の外周面にはエア孔62が複数形成されており、シリンダ61の端面に形成された導入孔63からエアを供給してエア孔62から噴出させることにより、スリーブ印刷版30の内径を押し広げてシリンダ61への着脱を行うように構成されている。ここで、シリンダ61には、位置合わせピン64が突設されており、この位置合わせピン64にスリーブ印刷版30の位置合わせ用切欠部36が係合され、スリーブ印刷版30とシリンダ61との周方向位置及び軸線O方向位置が決定される。
【0031】
このようにしてスリーブ印刷版30が配設されたオフセット印刷装置Aにおいては、各々のインカーユニット1のインク源2から各々異なった色のインクが、ダクティングロール3、中間ローラ4、ゴムローラ5を介して、版胴60の外周面に配設された凸版33に付着させられ、これら各色のインクが、回転するブランケットホイール8上のブランケット9にパターンとして乗せられ、このパターンがマンドレル11に保持された缶胴20に接触しながら印刷される。
【0032】
前述のような構成とされた本実施形態であるスリーブ印刷版30によれば、ショア(A)硬度が30〜100のプラスチック樹脂からなるシート材40の一方の端部41と他方の端部42とを接合することによって円筒状のスリーブ体31を構成しているので、従来のように、強化繊維を固定台に巻き付けて、溶融したプラスチック樹脂を塗布して硬化させることを繰り返し行う必要がなくなり、このスリーブ印刷版30を低コストで製作することができる。
【0033】
また、このように構成されたスリーブ体31の外周面に、レーザー加工によって凸版33が直接刻設されているので、スリーブ体31の外周面に、別途版材を設ける必要がなく、溶融樹脂等を塗布して硬化させる工程を省略でき、スリーブ印刷版30の製作コストを大幅に削減することができる。
さらに、スリーブ体31が強化繊維を備えておらず丸めるように変形可能なシート材40から構成されているので、スリーブ印刷版30を潰すようにして変形させることが可能となり、保管スペース等を小さく抑えることができる。
【0034】
また、シート材40の一方の端部41と他方の端部42とを超音波接合又はレーザー溶接によって接合して接合部35を形成しているので、接合部分のみを局所的に加熱して融着させることが可能となり、他の部分への熱影響を抑えることができる。また、超音波接合又はレーザー溶接は、短時間で接合が完了するため、スリーブ体31(スリーブ印刷版30)を大量生産することが可能となり、さらなる製造コストの削減を図ることができる。
【0035】
さらに、スリーブ印刷版30に、シリンダ61の位置合わせピン64に係合される位置合わせ用切欠部36が設けられ、この位置合わせ用切欠部36と接合部35とが軸線Oを挟んで対向配置するように構成され、これら位置合わせ用切欠部36と接合部35と2つの凸版33、33とが、周方向に等間隔に配設されているので、接合部35や位置合わせ用切欠部36が非印刷部に配置されることになり、接合部35及び位置合わせ用切欠部36が印刷の品質に直接影響することがない。
【0036】
さらに、接合部35の内周面側には段差が生じておらず、スリーブ体31の内周面が滑らかな円筒面とされているので、シリンダ61に装着した際に、シリンダ61の円筒面に均一に密着することになる。また、このスリーブ印刷版30を着脱する際に、シリンダ61のエア孔62からエアを噴出した際のエア漏れがなく、スリーブ印刷版30の内径を確実に押し広げることができ、シリンダ61への着脱を容易に行うことができる。
【0037】
また、接合部35の外周面側には、僅かな(例えば0.7μm程度)の凹凸が生じていても、凸版33が接合部35よりも径方向外方に突出するように形成されていれば、この凹凸が印刷に影響を与えることはない。よって、接合部35の外周側部分を必要以上に平滑に仕上げる必要はなく、スリーブ体31の外周面を研磨する工程を省略して、スリーブ印刷版30の製造コストのさらなる削減を図ることができる。
【0038】
次に、本発明の第2の実施形態について図6から図8を参照して説明する。
この第2の実施形態であるスリーブ印刷版130においては、シート材140は、図6に示すように、2つの異なる硬度のプラスチック樹脂及びゴム材が積層された構成とされている。
詳述すると、シート材140は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等のプラスチック樹脂からなる第1層143と、ショア(A)硬度が30〜100であってレーザー光による彫刻が可能な感光性樹脂からなる第2層144と、を備えている。
【0039】
このシート材140の一方の端部141と他方の端部142とが接合され、円筒状のスリーブ体131が形成される。このとき、スリーブ体131の内周側に第1層143が位置され、スリーブ体131の外周側に第2層144が位置される。
こうして形成されたスリーブ体131の外周面、つまり第2層144の表面に、レーザー光による彫刻によって凸版133が直接形成される。
このようにして、図7及び図8に示すスリーブ印刷版130が製作される。
【0040】
このような構成とされた第2の実施形態であるスリーブ印刷版130によれば、シート材140の一方の端部141と他方の端部142とを接合して製出されたスリーブ体131の内周側を硬度が硬いポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等のプラスチック樹脂からなる第1層143とし、スリーブ体131の外周側を硬度の低い感光性樹脂からなる第2層144とすることによって、レーザ加工によって形成される凸版133を適正な硬さのものとすることができ、印刷を良好に行うことができる。また、第1層143によってスリーブ印刷版130自体の剛性を確保し、伸び等の変形を防止することができる。
【0041】
次に、本発明の第3の実施形態について図9から図11を参照して説明する。
この第3の実施形態であるスリーブ印刷版230を構成するシート材240においては、図9に示すように、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等のプラスチック樹脂からなる第1層243と、ショア(A)硬度が30〜100であってレーザー光による彫刻が可能な感光性樹脂からなる第2層244と、を備えており、第2層244が部分的に形成されている。
【0042】
このシート材240の一方の端部241と他方の端部242とが接合されることにより、円筒状のスリーブ体231が形成される。このとき、スリーブ体231の内周側に第1層243が位置され、スリーブ体231の外周側の一部に第2層244が位置されることになる。すると、図10及び図11に示すように、第2層244の部分のみが径方向外方に突出することになる。
こうして形成されたスリーブ体231の外周面のうち第2層244の表面に、レーザー光による彫刻によって凸版233が直接形成される。
このようにして、図10及び図11に示すスリーブ印刷版230が製作される。
【0043】
このような構成とされた第3の実施形態であるスリーブ印刷版230によれば、シート材240の一方の端部241と他方の端部242とを接合して製出されたスリーブ体231の内周側に硬度が硬いポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等のプラスチック樹脂からなる第1層243が配置されるので、この第1層243によってスリーブ印刷版230自体の剛性を確保し、伸び等の変形を防止することができる。
また、凸版233(版本体)が刻設される部分のみに第2層244を配設したシート材240を使用しているので、第2層244の部分が径方向外方に突出し、凸版233(版本体)以外の非印刷部を除去するように加工する必要がなくなり、レーザー加工の工程を大幅に削減することができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、シート材の材質は、本実施形態に記載されたものに限定されることはなく、他のプラスチック樹脂、ゴム材等を適宜選択することができる。
【0045】
また、接合部を軸線Oに沿って延びるように直線状に形成したものとして説明したが、これに限定されることはなく、図12に示すように、接合部335を軸線Oに対して傾斜するように設けてもよいし、図13及び図14に示すように、一方の端部441、541に凹部を形成するとともに他方の端部442、542に凸部を形成して、これらの係合した状態で接合部435、535を形成してもよい。さらに、図15に示すように、スリーブ印刷版の厚さ方向において斜交するように接合部635を形成してもよい。また、第2の実施形態のようにシート材を多層構造とした場合には、図16に示すように、シート材の周端部の一部において第2層744を部分的に除去しておいて第1層743のみを接合して接合部735を形成してもよい。
【0046】
さらに、スリーブ印刷版をエアによって拡径してシリンダに着脱するものとして説明したが、装着するときのみエアを使用し、取り外す際にはスリーブ印刷版を切断して除去してもよい。特に、スリーブ体がFRP製ではないので、カッタ等でスリーブ印刷版を簡単に切断することができる。
【符号の説明】
【0047】
30、130、230、330、430、530、630、730 スリーブ印刷版
31、131、231 スリーブ体
33、133、233 凸版(版本体)
35、135、235、335、435、535、635、735 接合部
40、140、240 シート材
41、141、241、341、441、541、641、741 一方の端部
42、142、242、342、442、542、642、742 他方の端部
61 シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状をなすスリーブ体と、このスリーブ体の外周面に配設され、被印刷物に印刷する画像パターンが形成された版本体と、を備え、印刷装置のシリンダに装着されて使用されるスリーブ印刷版の製造方法であって、
シート材を丸めて、該シート材の一方の端部と他方の端部とを接合して前記スリーブ体を得る工程と、
前記スリーブ体の外周面の少なくとも一部に、レーザー加工によって前記版本体を形成する工程と、
を有していることを特徴とするスリーブ印刷版の製造方法。
【請求項2】
前記シート材は、2以上の異なる硬度のプラスチック樹脂又はゴム材が積層されて構成されていることを特徴とする請求項1に記載のスリーブ印刷版の製造方法。
【請求項3】
前記シート材の一方の端部と他方の端部とを超音波接合又はレーザー溶接して前記スリーブ体を得ることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスリーブ印刷版の製造方法。
【請求項4】
円筒状をなすスリーブ体と、このスリーブ体の外周面に配設され、被印刷物に印刷する画像パターンが形成された版本体と、を備え、印刷装置のシリンダに装着されて使用されるスリーブ印刷版であって、
前記スリーブ体は、シート材の一方の端部と他方の端部とを接合することによって構成され、その周方向の一部に接合部を有しており、
前記スリーブ体の外周面には、レーザー加工によって前記版本体が形成されていることを特徴とするスリーブ印刷版。
【請求項5】
2つの前記版本体が周方向に対向するように配設されており、前記接合部が、2つの前記版本体の間に配置されていることを特徴とする請求項4に記載のスリーブ印刷版。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2010−162879(P2010−162879A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273624(P2009−273624)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(305060154)ユニバーサル製缶株式会社 (219)
【Fターム(参考)】