説明

スルホアルキルエーテルシクロデキストリン組成物

SAE-CD組成物が、それを作製および使用する方法と共に提供される。SAE-CD組成物はスルホアルキルエーテルシクロデキストリンおよび100ppm未満のリン酸塩を含み、SAE-CD組成物は1cm光路長を有するセル中で、溶液1mL当たり300mgのSAE-CD組成物を含有する水溶液について245nm〜270nmの波長で紫外/可視分光光度法により決定される0.5A.U.未満の薬物分解剤の吸収を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン(「SAE-CD」)組成物を含む組成物、ならびにそれを調製および使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
スルホアルキルエーテルシクロデキストリン(「SAE-CD」)誘導体は、スルホアルキルエーテル官能基で誘導体化されたポリアニオン性、親水性、水溶性のシクロデキストリンである。アニオン性スルホアルキルエーテル置換基によって、非誘導体化シクロデキストリンと比べて水溶性および安全性が劇的に改善される。一般に、スルホアルキルエーテル置換シクロデキストリンによる薬物の可逆的で非共有結合的な複合体化によって、薬学的有効成分の溶解性の増加が、いくつかの場合では水溶液中の薬物の安定性の増加が可能になる。
【0003】
約7の平均置換度を有するスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンは現在CAPTISOL(登録商標)(CyDex Pharmaceuticals, Inc.、カンザス州レネクサ)として販売されている。CAPTISOL(登録商標)は以下の化学構造を有する:

式中、Rは(-H)21-nまたは(-CH2CH2CH2CH2SO3-Na+)nであり、nは6〜7.1である。
【0004】
スルホアルキルエーテル置換シクロデキストリンは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,134,127号(特許文献1)、第5,376,645号(特許文献2)、および第6,153,746号(特許文献3)に例えば開示されている方法に従って製造することができる。スルホネート官能基を含有するSAE-CD誘導体またはシクロデキストリン誘導体は、Parmerterら(米国特許第3,426,011号(特許文献4)); Gadelleら(米国特許第5,578,719号(特許文献5)); Joullieら(米国特許第5,760,015号(特許文献6)および第5,846,954号(特許文献7)); Buchananら(米国特許第6,610,671号(特許文献8)および第6,479,467号(特許文献9)); Perrierら(米国特許第6,524,595号(特許文献10)); Uchiyamaら(米国特許第5,512,665号(特許文献11)); Lammers et al., Recl. Trav. Chim. Pays-Bas 91:733 (1972)(非特許文献1); Staerke 23:167 (1971)(非特許文献2); Qu et al., J. Inclusion Phenom. Macro. Chem. 43:213 (2002)(非特許文献3); Yoshinaga、日本特許第JP05001102号(特許文献12); 米国特許第5,241,059号(特許文献13); PCT国際公開第WO 01/40316号(特許文献14)、Adam et al., J. Med. Chem. 45:1806 (2002)(非特許文献4); ならびにTarver et al., Bioorg. Med. Chem. 10:1819 (2002)(非特許文献5)に従って作製することもできる。
【0005】
したがって、SAE-CD組成物中に存在する不純物によって、活性薬剤組成物の有効期間および効力が減少することがある。活性炭に対する曝露(例えば活性炭との混合)によってシクロデキストリンまたはSAE-CD組成物から不純物を除去することができる。活性炭によるシクロデキストリン含有水溶液および水性懸濁液の処理は公知である。例えば米国特許第4,738,923号(特許文献15)、第5,393,880号(特許文献16)、および第5,569,756号(特許文献17)を参照。しかし、より高い純度を有するSAE-CD組成物が引き続き要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,134,127号
【特許文献2】米国特許第5,376,645号
【特許文献3】米国特許第6,153,746号
【特許文献4】米国特許第3,426,011号
【特許文献5】米国特許第5,578,719号
【特許文献6】米国特許第5,760,015号
【特許文献7】米国特許第5,846,954号
【特許文献8】米国特許第6,610,671号
【特許文献9】米国特許第6,479,467号
【特許文献10】米国特許第6,524,595号
【特許文献11】米国特許第5,512,665号
【特許文献12】日本特許第JP05001102号
【特許文献13】米国特許第5,241,059号
【特許文献14】WO 01/40316
【特許文献15】米国特許第4,738,923号
【特許文献16】米国特許第5,393,880号
【特許文献17】米国特許第5,569,756号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Lammers et al., Recl. Trav. Chim. Pays-Bas 91:733 (1972)
【非特許文献2】Staerke 23:167 (1971)
【非特許文献3】Qu et al., J. Inclusion Phenom. Macro. Chem. 43:213 (2002)
【非特許文献4】Adam et al., J. Med. Chem. 45:1806 (2002)
【非特許文献5】Tarver et al., Bioorg. Med. Chem. 10:1819 (2002)
【発明の概要】
【0008】
発明の簡単な概要
本発明は、SAE-CD組成物からリン酸塩と薬物分解性不純物との両方を実質的に除去することが、高安定性製剤を与えるために活性薬剤と容易に混合可能な組成物を与えることを実証する。
【0009】
本発明はスルホアルキルエーテルシクロデキストリンおよび100ppm未満のリン酸塩を含むSAE-CD組成物を対象とし、SAE-CD組成物は1cm光路長を有するセル中で、溶液1mL当たり300mgのSAE-CD組成物を含有する水溶液について245nm〜270nmの波長で紫外/可視分光光度法により決定される0.5A.U.未満の薬物分解剤の吸収を有する。
【0010】
本発明は、賦形剤とSAE-CD組成物とを含む組成物であって、SAE-CD組成物がスルホアルキルエーテルシクロデキストリンおよび100ppm未満のリン酸塩を含み、SAE-CD組成物が1cm光路長を有するセル中で、溶液1mL当たり300mgのSAE-CD組成物を含有する水溶液について245nm〜270nmの波長で紫外/可視分光光度法により決定される0.5A.U.未満の薬物分解剤の吸収を有する組成物を対象とする。
【0011】
本発明は、1つまたは複数の活性薬剤とSAE-CD組成物とを含む組成物であって、SAE-CD組成物がスルホアルキルエーテルシクロデキストリンおよび100ppm未満のリン酸塩を含み、SAE-CD組成物が1cm光路長を有するセル中で、溶液1mL当たり300mgのSAE-CD組成物を含有する水溶液について245nm〜270nmの波長で紫外/可視分光光度法により決定される0.5A.U.未満の薬物分解剤の吸収を有する組成物を対象とする。
【0012】
いくつかの態様では、SAE-CD組成物は1cm光路長を有するセル中で、溶液1mL当たり500mgのSAE-CD組成物を含有する水溶液について320nm〜350nmの波長で紫外/可視分光光度法により決定される0.2A.U.未満の色形成剤の吸収を有する。
【0013】
いくつかの態様では、SAE-CD組成物は
20ppm未満のスルホアルキル化剤;
0.5重量%未満の非誘導体化シクロデキストリン;
1重量%未満のアルカリ金属ハロゲン化物塩; および
0.25重量%未満の加水分解されたスルホアルキル化剤
をさらに含む。
【0014】
いくつかの態様では、SAE-CD組成物は1cm光路長を有するセル中で、溶液1mL当たり500mgのSAE-CD組成物を含有する水溶液について245nm〜270nmの波長で紫外/可視分光光度法により決定される0.5A.U.未満の薬剤分解剤の吸収を有する。
【0015】
いくつかの態様では、スルホアルキルエーテルシクロデキストリンは式(1)の化合物である:

式中、pは4、5、または6であり、R1は各出現時に-OHまたは-SAE-Tより独立して選択され; -SAE-は各出現時に-O-(C2〜C6アルキレン)-SO3-基より独立して選択され、-Tは各出現時に薬学的に許容されるカチオンより独立して選択され、但し、少なくとも1つのR1は-OHであり、かつ少なくとも1つのR1は-SAE-Tである。
【0016】
いくつかの態様では、-SAE-は各出現時に-O-(C4アルキレン)-SO3-基であり、かつ-Tは各出現時にNa+である。
【0017】
いくつかの態様では、SAE-CD組成物は
50ppm未満のリン酸塩;
10ppm未満のスルホアルキル化剤;
0.2重量%未満の非誘導体化シクロデキストリン;
0.5重量%未満のアルカリ金属ハロゲン化物塩; および
0.1重量%未満の加水分解されたスルホアルキル化剤を含み;
SAE-CD組成物は1cm光路長を有するセル中で、溶液1mL当たり500mgのSAE-CD組成物を含有する水溶液について245nm〜270nmの波長で紫外/可視分光光度法により決定される0.5A.U.未満の薬物分解剤の吸収を有し、かつ、
SAE-CD組成物は1cm光路長を有するセル中で、溶液1mL当たり500mgのSAE-CD組成物を含有する水溶液について320nm〜350nmの波長で紫外/可視分光光度法により決定される0.2A.U.未満の色形成剤の吸収を有する。
【0018】
いくつかの態様では、SAE-CD組成物は
10ppm未満のリン酸塩;
2ppm未満のスルホアルキル化剤;
0.1重量%未満の非誘導体化シクロデキストリン;
0.2重量%未満のアルカリ金属ハロゲン化物塩; および
0.08重量%未満の加水分解されたスルホアルキル化剤を含み;
SAE-CD組成物は1cm光路長を有するセル中で、溶液1mL当たり500mgのSAE-CD組成物を含有する水溶液について245nm〜270nmの波長で紫外/可視分光光度法により決定される0.25A.U.未満の薬物分解剤の吸収を有し、かつ、
SAE-CD組成物は1cm光路長を有するセル中で、溶液1mL当たり500mgのSAE-CD組成物を含有する水溶液について320nm〜350nmの波長で紫外/可視分光光度法により決定される0.1A.U.未満の色形成剤の吸収を有する。
【0019】
いくつかの態様では、SAE-CD組成物は
5ppm未満のリン酸塩;
2ppm未満のスルホアルキル化剤;
0.1重量%未満のアルカリ金属ハロゲン化物塩; および
0.05重量%未満の加水分解されたスルホアルキル化剤
を含む。
【0020】
本発明はまた、賦形剤とSAE-CD組成物とを含む組成物であって、SAE-CD組成物が7の平均置換度を有するスルホブチルエーテルシクロデキストリンおよび100ppm未満のリン酸塩を含み、SAE-CD組成物が1cm光路長を有するセル中で、溶液1mL当たり500mgのSAE-CD組成物を含有する水溶液について245nm〜270nmの波長で紫外/可視分光光度法により決定される0.5A.U.未満の薬物分解剤の吸収を有する組成物を対象とする。
【0021】
本発明はまた、1つまたは複数の活性薬剤とSAE-CD組成物とを含む組成物であって、SAE-CD組成物が7の平均置換度を有するスルホブチルエーテルシクロデキストリンおよび100ppm未満のリン酸塩を含み、SAE-CD組成物が1cm光路長を有するセル中で、溶液1mL当たり500mgのSAE-CD組成物を含有する水溶液について245nm〜270nmの波長で紫外/可視分光光度法により決定される0.5A.U.未満の薬物分解剤の吸収を有する組成物を対象とする。
【0022】
いくつかの態様では、SAE-CD組成物は、
約250ppb未満のスルホアルキル化剤;
約0.1重量%未満、0.08重量%未満、または0.5重量%未満の非誘導体化シクロデキストリン;
200ppm未満、150ppm未満、100ppm未満、50ppm未満、20ppm、10ppm未満、5ppm未満、または2ppm未満のリン酸塩;
1重量%未満、0.5重量%未満、0.2重量%未満、0.1重量%未満、0.08重量%未満、または0.05重量%未満のアルカリ金属ハロゲン化物塩;
1重量%未満、0.5重量%未満、0.25重量%未満、0.1重量%未満、0.08重量%未満、または0.05重量%未満の加水分解されたスルホアルキル化剤;
1mL当たり約500mgのSAE-CDを含有する水溶液について紫外分光光度計を使用して決定されかつ紫外分光光度法によって245nm〜270nmで測定される約0.5未満、約0.25未満、0.2未満、約0.15未満、約0.1未満、および0.05未満の吸光度単位(「A.U.」)の薬物分解剤;
1mL当たり約500mgのSAE-CDを含有する水溶液について紫外/可視分光光度計によって決定されかつ320nm〜350nmで測定される約0.2未満、約0.1未満、0.05未満、約0.01未満のA.U.の薬物分解剤、
を含み得る。
【0023】
SAE-CD組成物は、非誘導体化α-、β-、もしくはγ-シクロデキストリンの直接の誘導体化、または既に調製されたシクロデキストリン誘導体のさらなる誘導体化によって調製することができる。そのような誘導体化方法としては、水溶性シクロデキストリン誘導体の調製用の化学合成工程の公知の順序の改変が挙げられる。好適な方法を本明細書に記載する。
【0024】
いくつかの態様では、SAE-CD組成物は1cm光路長を有するセル中で、溶液1mL当たり500mgのSAE-CD組成物を含有する水溶液について320nm〜350nmの波長で紫外/可視分光光度法により決定される0.2A.U.未満の色形成剤の吸収を有する。
【0025】
いくつかの態様では、SAE-CD組成物は1つまたは複数の賦形剤をさらに含む。
【0026】
本発明はまた、スルホアルキルエーテルシクロデキストリンを含むSAE-CD組成物を調製するための方法であって、以下を含む方法を対象とする:
(a)水性媒体中でシクロデキストリンとスルホアルキル化剤とをアルカリ化剤の存在下で混合することで、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン、1つまたは複数の望まれない成分、および1つまたは複数の薬物分解性不純物を含む水性反応環境を形成する工程;
(b)1つまたは複数の望まれない成分を水性環境から除去するために1つまたは複数の分離を実行することで、スルホアルキルエーテルシクロデキストリンおよび1つまたは複数の薬物分解性不純物を含む部分精製水溶液を形成する工程であって、1つまたは複数の分離が限外濾過、ダイアフィルトレーション、遠心分離、抽出、溶媒沈殿、および透析より選択されるプロセスを含む工程; ならびに
(c)リン酸塩を含まない活性炭で部分精製水溶液を処理することでスルホアルキルエーテルシクロデキストリンおよび100ppm未満のリン酸塩を含むSAE-CD組成物を与える工程であって、SAE-CD組成物が1cm光路長を有するセル中で、溶液1mL当たり300mgのSAE-CD組成物を含有する水溶液について245nm〜270nmの波長で紫外/可視分光光度法により決定される0.5A.U.未満の薬物分解剤の吸収を有する工程。
【0027】
本発明はまた、賦形剤と、スルホアルキルエーテルシクロデキストリンを含むSAE-CD組成物とを含む組成物を調製するための方法であって、以下の工程を含む方法を対象とする:
(a)水性媒体中でシクロデキストリンとスルホアルキル化剤とをアルカリ化剤の存在下で混合することで、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン、1つまたは複数の望まれない成分、および1つまたは複数の薬物分解性不純物を含む水性反応環境を形成する工程;
(b)1つまたは複数の望まれない成分を水性環境から除去するために1つまたは複数の分離を実行することで、スルホアルキルエーテルシクロデキストリンおよび1つまたは複数の薬物分解性不純物を含む部分精製水溶液を形成する工程であって、1つまたは複数の分離が限外濾過、ダイアフィルトレーション、遠心分離、抽出、溶媒沈殿、および透析より選択されるプロセスを含む工程;
(c)リン酸塩を含まない活性炭で部分精製水溶液を処理することでスルホアルキルエーテルシクロデキストリンおよび100ppm未満のリン酸塩を含むSAE-CD組成物を与える工程であって、SAE-CD組成物が1cm光路長を有するセル中で、溶液1mL当たり300mgのSAE-CD組成物を含有する水溶液について245nm〜270nmの波長で紫外/可視分光光度法により決定される0.5A.U.未満の薬物分解剤の吸収を有する工程; ならびに
(d)SAE-CD組成物と賦形剤とを組み合わせる工程。
【0028】
本発明はまた、1つまたは複数の活性薬剤とスルホアルキルエーテルシクロデキストリンを含むSAE-CD組成物とを含む組成物を調製するための方法であって、以下の工程を含む方法を対象とする:
(a)水性媒体中でシクロデキストリンとスルホアルキル化剤とをアルカリ化剤の存在下で混合することで、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン、1つまたは複数の望まれない成分、および1つまたは複数の薬物分解性不純物を含む水性反応環境を形成する工程;
(b)1つまたは複数の望まれない成分を水性環境から除去するために1つまたは複数の分離を実行することで、スルホアルキルエーテルシクロデキストリンおよび1つまたは複数の薬物分解性不純物を含む部分精製水溶液を形成する工程であって、1つまたは複数の分離が限外濾過、ダイアフィルトレーション、遠心分離、抽出、溶媒沈殿、および透析より選択されるプロセスを含む工程;
(c)リン酸塩を含まない活性炭で部分精製水溶液を処理することでスルホアルキルエーテルシクロデキストリンおよび100ppm未満のリン酸塩を含むSAE-CD組成物を与える工程であって、SAE-CD組成物が1cm光路長を有するセル中で、溶液1mL当たり300mgのSAE-CD組成物を含有する水溶液について245nm〜270nmの波長で紫外/可視分光光度法により決定される0.5A.U.未満の薬物分解剤の吸収を有する工程; ならびに
(d)SAE-CD組成物と1つまたは複数の活性薬剤とを組み合わせる工程。
【0029】
本発明はまた、以下の工程を含む方法を対象とする: 水性媒体中でシクロデキストリンとスルホアルキル化剤とをアルカリ化剤の存在下で混合することで、SAE-CD、1つまたは複数の望まれない成分、および1つまたは複数の薬物分解性不純物を含む水性反応環境を形成する工程; 1つまたは複数の望まれない成分を水性環境から除去するために1つまたは複数の分離および/または精製を実行することで、SAE-CDおよび1つまたは複数の薬物分解性不純物を含む部分精製水溶液を形成する工程; ならびに活性炭で部分精製水溶液を繰り返し処理することでその中の1つまたは複数の薬物分解性不純物を排除するかまたはその量を実質的に減少させ、かつSAE-CDを含む水性組成物を形成する工程。本方法は、SAE-CDの形成後または混合の完了後に水性反応環境中に存在する過剰のスルホアルキル化剤がもしあればそれを任意で分解または除去する工程をさらに含み得る。本方法は反応を任意で停止させる工程をさらに含み得る。
【0030】
本発明はまた、上記方法により調製される生成物を対象とする。
【0031】
いくつかの態様では、本発明の方法におけるスルホアルキルエーテルシクロデキストリンは式(1)の化合物である:

式中、pは4、5、または6であり、R1は各出現時に-OHまたは-SAE-Tより独立して選択され; -SAE-は各出現時に-O-(C2〜C6アルキレン)-SO3-基より独立して選択され、-Tは各出現時に薬学的に許容されるカチオンより独立して選択され、但し、少なくとも1つのR1は-OHであり、かつ少なくとも1つのR1は-SAE-Tである。
【0032】
いくつかの態様では、-SAE-は各出現時に-O-(C4アルキレン)-SO3-基であり、かつ-Tは各出現時にNa+である。
【0033】
いくつかの態様では、処理工程は以下を含む:
リン酸塩を含まない粒子状または粉末状の活性炭を部分精製水溶液に混合しながら添加すること、活性炭を溶液から分離すること、ならびに溶液中の薬物分解剤の量が標的レベルに減少するまで該添加および該分離を少なくとも1回繰り返すこと; あるいは
溶液中の薬物分解剤の量が標的レベルに減少するまで流通装置内でリン酸塩を含まない活性炭の塊を通じて部分精製水溶液の通過および再循環を行うこと。
【0034】
いくつかの態様では、実行工程は2回以上の通過および再循環を含み、各通過は異なる塊の活性炭による。
【0035】
いくつかの態様では、実行工程中に存在する活性炭はスルホアルキルエーテルシクロデキストリンの約12重量%であり、かつ実行工程は少なくとも約2時間行われる。
【0036】
いくつかの態様では、混合工程はシクロデキストリンを含む水性アルカリ組成物を与えること、および該組成物にスルホアルキル化剤を添加することを含む。いくつかの態様では、混合工程はスルホアルキル化剤組成物を与えること、および該組成物にシクロデキストリンを含む水性アルカリ組成物を添加することを含む。
【0037】
混合工程は以下を含み得る: 水性反応媒体中で非置換シクロデキストリン出発原料と所定の置換度を実現するために十分な量のアルキルスルトンとを塩基の存在下で組み合わせることで、シクロデキストリンのスルホアルキル化を実現すること; スルホアルキル化中に、残留未反応シクロデキストリンが非置換シクロデキストリン出発原料の原重量に対して0.5重量%未満のレベルに達するようにシクロデキストリンを消費するために十分な時間、塩基性であるが約9と約11との間のレベルに反応媒体のpHを維持すること; スルホアルキル化の完了を実現するために十分な量で塩基を添加すること; ならびに該完了の後、溶液の重量に対して20ppm未満または2ppm未満のレベルまで残留アルキルスルトンの破壊を実現するために十分な量および条件下でさらなる塩基を添加すること。
【0038】
いくつかの態様では、混合工程は以下を含み得る: 水性反応媒体中で非置換シクロデキストリン出発原料と所定の置換度を実現するために十分な量のアルキルスルトンとをアルカリ金属水酸化物の存在下で組み合わせること; 残留未反応シクロデキストリンが0.5重量%未満または0.1%未満になるまで約8〜約11のpHでシクロデキストリンのスルホアルキル化を実行すること; 置換度を達成するために十分な量でさらなる水酸化物を添加し、かつスルホアルキル化を完了まで進行させること; ならびに該完了の後、溶液の重量に対して20ppm未満または2ppm未満のレベルまで残留アルキルスルトンの破壊を実現するために十分な量および条件下でさらなる水酸化物を添加すること。
【0039】
混合の終了後に許容されない量のスルホアルキル化剤が反応環境中に存在する場合、過剰のスルホアルキル化剤の分解が必要になることがある。分解は、反応環境を少なくとも60℃、60℃〜85℃、または60℃〜80℃の高温に少なくとも6時間、または6時間〜72時間曝露させることで、スルホアルキル化剤をその場で分解し、かつ水性液体中のスルホアルキル化剤の量を減少させるかまたはそれを排除することによって実行することができる。
【0040】
分解を行った後、あるいは混合後であるが分離および/または1つもしくは複数の精製の前に反応停止を実行することができる。一般に、反応停止は、アルカリ性SAE-CD含有溶液に酸性化剤を添加することでpHを約5〜約9、または約6〜約8、または約6.5〜約7.5に調整することを含む。
【0041】
いくつかの態様では、本方法は、1つまたは複数の望まれない成分を水性環境から除去するために1つまたは複数の分離を実行することで、スルホアルキルエーテルシクロデキストリンおよび1つまたは複数の薬物分解性不純物を含む部分精製水溶液を形成する工程であって、1つまたは複数の分離が限外濾過、ダイアフィルトレーション、遠心分離、抽出、溶媒沈殿、および透析より選択されるプロセスを含む、工程を含む。
【0042】
分離は、濾過媒体を通じて水性反応環境を濾過することで懸濁した固体を除去しかつ濾液を保持すること; または水性反応環境を遠心分離しかつ上清を分離および保持すること; または懸濁した固体もしくは不純物を抽出することを含み得る。
【0043】
精製は、反応環境またはそれから得られる液体を透析することを含み得る。透析はダイアフィルトレーション、限外濾過、および/またはナノ濾過によって実行可能である。
【0044】
いくつかの態様では、本方法は分離および/または精製のうち1つまたは複数を繰り返す工程を含む。繰り返し処理(すなわち2回以上の処理)工程は以下を含み得る: 顆粒状または粉末状の活性炭および/または他の不活性材料を部分精製水溶液に混合しながら添加すること、活性炭を溶液から分離すること、ならびに溶液中の薬物分解剤の量が標的レベル以下に減少するまで各添加および分離を少なくとも1回または2回以上繰り返すこと; あるいは溶液中の薬物分解剤の量が標的レベル以下に減少するまで流通装置内で活性炭の塊を通じて部分精製水溶液の通過および再循環を行うこと。繰り返し処理によって部分精製溶液中の色形成剤、タンパク質、鉱物、アミノ酸、金属、および炭素吸収性化合物などの1つまたは複数の他の望まれない成分を同時に除去することができる。
【0045】
本発明はまた、リン酸で活性化されていない活性炭を使用しかつ活性炭による複数の処理をプロセス中で使用することを除けば、SAE-CDを調製するこれらのおよび他の公知の方法に従って、SAE-CDのグレードを調製する方法を提供する。活性炭は広い表面積、すなわち小さい粒径を有し、かつプロセスはバッチ式または連続式のフォーマットで実行可能である。活性炭は粉末状でも、顆粒状でも、または流通装置内に封入されていてもよい。
【0046】
本発明はまた、SAE-CDおよび1つまたは複数の他の成分を含む水性液体中のスルホアルキル化剤の量を減少させるための熱的方法であって、水性液体を少なくとも25℃、または25℃〜75℃の高温に少なくとも5分間、または5分間〜200分間曝露させることで、スルホアルキル化剤をその場で除去し、かつ水性液体中のスルホアルキル化剤の量を減少させるかまたはそれを排除する工程を含む方法を提供する。
【0047】
いくつかの態様では、本発明はSAE-CD組成物を調製する方法であって、以下の工程を含む方法を提供する: 水性アルカリ性媒体中で、置換基前駆体に対する少なくとも1つの非誘導体化ヒドロキシル部分を含む最初のシクロデキストリンの曝露を、単峰性、二峰性、三峰性、または多峰性の置換プロファイルを有するシクロデキストリン誘導体組成物を含む環境の形成を可能にするために十分な期間、十分な温度、および十分な溶液pHで行い、また非所望の成分を除去するために環境を任意で加工することでSAE-CD組成物を形成する工程。本発明で使用されるシクロデキストリン出発原料としては、非誘導体化シクロデキストリン、既に誘導体化されたシクロデキストリン、およびその組み合わせを挙げることができる。
【0048】
いくつかの態様では、本発明はSAE-CD組成物を調製する方法であって、以下の工程を含む方法を提供する: 置換基前駆体を含む第1の液体組成物を与える工程; シクロデキストリン(非誘導体化または誘導体化)を含むアルカリ性の第2の液体組成物を与える工程; ならびに第1の液体組成物に対する第2の液体組成物の添加を、単峰性、二峰性、三峰性、または多峰性の置換プロファイルを有するシクロデキストリン誘導体組成物を含む環境の形成を可能にするために十分な期間、十分な温度、および十分な溶液pHで行い、また望まれない成分を除去するために環境を任意で加工することで組み合わせ組成物を形成する工程。いくつかの態様では、第2の液体組成物は、ボーラスで、少しずつ、滴下により、半連続的に、または連続的に、第1の液体組成物に添加される。いくつかの態様では、第1の液体組成物と第2の液体組成物との両方がアルカリ性である。
【0049】
いくつかの態様では、本発明はSAE-CD組成物を調製する方法であって、以下の工程を含む方法を提供する: 置換基前駆体に対する中性〜アルカリ性の水性媒体中のシクロデキストリン出発原料の曝露を、SAE-CD、1つまたは複数の望まれない成分、および1つまたは複数の薬物分解性成分を含む水性反応環境を与えるために十分な温度および期間で行う工程; 環境中の任意の未反応の置換基前駆体があればそれを分解する工程; 環境を1つまたは複数の分離および/または精製に供することで、SAE-CDおよび1つまたは複数の薬物分解性成分を含む部分精製水性液体を形成する工程; ならびに液体中に存在する薬物分解性成分を除去するかまたはその量を減少させるために液体を活性炭で少なくとも2回処理することで、SAE-CDを含む水性組成物を形成する工程。
【0050】
置換基前駆体は漸増的にまたはボーラスで添加することができ、置換基前駆体はアルカリ性であってもよい水性媒体に対するシクロデキストリン出発原料の曝露の前、途中、または後に添加することができる。pHを所望の範囲内に維持するために、必要に応じてさらなるアルカリ性材料または緩衝材料を添加することができる。誘導体化反応は周囲温度〜高温で実行することができる。誘導体化が所望の程度まで進行した時点で、酸の添加によって反応を停止させてもよい。反応環境をさらに加工することで(例えば溶媒沈殿、濾過、遠心分離、蒸発、濃縮、乾燥、クロマトグラフィー、透析、および/または限外濾過)、望まれない材料を除去し、標的組成物を形成する。最終加工後に、組成物は固体、液体、半固体、ゲル、シロップ、ペースト、粉末、凝集体、顆粒、ペレット、圧縮材料、再構成可能な固体、懸濁液、ガラス、結晶塊、非晶質塊、微粒子、ビーズ、乳濁液、または湿潤塊の形態であり得る。
【0051】
いくつかの態様では、SAE-CD組成物は個々の置換度が異なる複数の個々のSAE-CD誘導体を含み、したがってSAE-CD組成物の平均置換度はこの化学種の個々の置換度から本明細書に記載のように算出される。個々のシクロデキストリン誘導体種は、同一の置換基を有するがシクロデキストリン分子当たりの置換基の数が異なることがあるか、またはシクロデキストリン分子当たりの数が異なるかまたは同一である異なる置換基を含むことがある。
【0052】
SAE-CD誘導体のシクロデキストリンはα-、β-、もしくはγ-シクロデキストリン、またはその組み合わせを含み得る。
【0053】
また、スルホアルキルエーテル(SAE)置換基による誘導体化の位置異性を所望に応じて変動させることもでき、したがって、存在する置換基の大多数をシクロデキストリンの一級ヒドロキシル基または二級ヒドロキシル基の一方もしくは両方に優先的に位置づけることができる。一態様では、置換基の一次分布はC-3>C-2>C-6であり、一方他の態様では、置換基の一次分布はC-2>C-3>C-6である。本明細書に記載のように、置換基の置換パターンは1H-NMRまたは13C-NMRによって決定することができる。
【0054】
いくつかの態様では、SAE-CD組成物は、約10%以下の各々の非誘導体化シクロデキストリンを含む。非誘導体化シクロデキストリンは、組成物に添加されることもあり、シクロデキストリン出発原料の不完全な除去により組成物中に存在することもあり、その組み合わせであることもある。
【0055】
いくつかの態様では、SAE-CD組成物は、50%以上、50%、または50%未満の誘導体化されるヒドロキシル部分を含むスルホアルキルエーテルシクロデキストリンを含み、スルホアルキルエーテルシクロデキストリンのすべての置換基は同様のアルキレン(アルキル)基を含み、またはスルホアルキルエーテルシクロデキストリンの置換基は異なるアルキレン(アルキル)基を含む。
【0056】
本発明のSAE-CD組成物は、シクロデキストリン誘導体が有用性を与える実質的にあらゆる公知の方法またはプロセスに使用することができる。本組成物は、その出発シクロデキストリン誘導体組成物が使用される同一のプロセスまたは方法に使用することができる。本発明の組み合わせ組成物の好適な使用としては、薬学的または非薬学的製剤中での使用が挙げられる。本発明の組み合わせ組成物は、それによって調剤される1つまたは複数の化合物の可溶化、安定化、矯味、懸濁化、固定化、精製、または抽出に使用することができる。SAE-CD組成物と1つまたは複数の治療上有効な薬剤とを含む活性な組み合わせ組成物は、1つまたは複数の治療上有効な薬剤に対して治療応答性がある症状、疾患、または障害の処置(診断、予防、治癒、寛解、軽減、発症の減少、頻度の減少)に使用することができる。
【0057】
いくつかの態様では、活性薬剤の少なくとも一部がスルホアルキルエーテルシクロデキストリンと複合体化する。
【0058】
本発明の組成物は、その開示全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,134,127号、第5,376,645号、第6,046,177号、第5,914,122号、第5,874,418号、第7,034,013号、第6,869,939号、および第6,133,248号; 米国特許出願公開第2005/0164986号、第2005/0186267号、第2007/0175472号、第2005/0250738号、第2007/0020299号、第2007/0202054号、第2007/0020298号、第2008/0194519号、第2006/0258537号、第2007/0020196号; 米国特許出願第60/914,555号および第60/952,771号; ならびに国際特許出願第PCT/US05/38933号、第PCT/US06/62346号、第PCT/US07/71758号、第PCT/US07/71748号、第PCT/US07/72442号、第PCT/US07/72387号、および第PCT/US07/78465号に開示されているものなどの組成物、製剤、方法、およびシステムにおいて使用することができる。本発明のSAE-CDは、SAE-CDの他の公知のグレード、特に低い純度を有する公知のグレードの好適な代替物として使用することもでき、それによってより大きな安定性、例えばより大きな薬物安定性を有する組成物および製剤が得られる。
【0059】
本発明は、本明細書に開示されている各種の局面および態様の組み合わせおよびサブコンビネーションを含む。本発明のこれらのおよび他の局面は、以下の詳細な説明、実施例、特許請求の範囲、および添付の図面を参照する際に明らかになるであろう。
【0060】
本明細書に組み入れられかつ本明細書の一部を形成する添付の図面は、本発明の1つまたは複数の態様を図示するものであり、前記説明と共に、本発明の原理を説明しかつ当業者が本発明を実施および使用できるようにするためにさらに役立つ。以下の図面は図示のみを目的として与えられるものであり、したがって、本発明の範囲を限定するようには意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
本発明の1つまたは複数の態様を添付の図面を参照してここで説明する。図面では、同様の参照番号は同一のまたは機能的に同様の要素を示し得る。さらに、参照番号の最も左側の桁によって、参照番号が最初に現れる図面を同定することができる。
【図1】単一の炭素処理後のSAE-CD組成物を含有する溶液の紫外/可視走査(190nm〜400nm)のグラフ表示を与えるものであり、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン濃度は1重量%から60重量%まで変動する。
【図2】2回目の炭素処理後のSAE-CD組成物を含有する溶液の紫外/可視走査(190nm〜400nm)のグラフ表示を与えるものであり、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン濃度は1重量%から60重量%まで変動する。
【図3】60℃の温度で0、24、72、96、および168時間の熱分解および苛性分解の後にSBE6.6-β-CD溶液の紫外/可視走査(190nm〜400nm)のグラフ表示であって、β-シクロデキストリンの分解ならびに245nm〜270nmの波長で吸収を有する薬物分解性不純物および/または320nm〜350nmの波長で吸収を有する色形成剤の形成を実証するグラフ表示を与える。
【図4】70℃の温度に48時間曝露し、続いて様々な量の活性炭で処理した後のSAE-β-CDを含有する溶液の紫外走査(190nm〜400nm)のグラフ表示を与える。
【図5】API安定性に対するSBE6.6-β-CD溶液の初期の紫外/可視吸収の効果のグラフ表示を与える。
【発明を実施するための形態】
【0062】
発明の詳細な説明
本明細書では、本発明の特徴を包含する1つまたは複数の態様を開示する。開示された態様は本発明を単に例示するものである。本発明の範囲は開示された態様に限定されない。本発明は本明細書に添付される特許請求の範囲によって定義される。
【0063】
本明細書で行われる空間的記述(例えば「上側」「下側」「上」「下」「上部」「下部」など)に対する言及は、説明および例証のみを目的とするものであり、任意の配向または様式で空間的に配列可能な、本発明の任意の方法のプロセス、設備、組成物、および生成物について非限定的であるものとして解釈すべきである。
【0064】
本発明のSAE-CD組成物は、構造的に関連するシクロデキストリン誘導体組成物を含有する他の組成物に対する予期しない利点を与える。「構造的に関連する」とは、組成物中のシクロデキストリン誘導体の置換基が、それと比較されるシクロデキストリン誘導体の置換基と本質的に同一であることを例えば意味する。例示的な利点としては、組み合わせ組成物が活性薬剤などの中性分子、カチオン性分子、またはアニオン性分子を安定化させる能力の改善を挙げることができる。
【0065】
「シクロデキストリン誘導体組成物」は、特定の置換基について平均置換度(「ADS」)を有する組成物である。シクロデキストリン誘導体組成物は、同一である各化学種の特定の置換基について個々の置換度が異なるシクロデキストリン誘導体種の分布を含む。
【0066】
本発明の組成物は、液剤、固体製剤、懸濁液剤、コロイド剤、ペレット剤、ビーズ剤、顆粒剤、フィルム剤、散剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、ペースト剤、スティック剤、錠剤、カプセル剤、浸透圧デバイス、分散液剤、乳剤、パッチ剤、または任意の他の種類の製剤であり得る。
【0067】
いくつかの態様では、SAE-CD組成物は式1の水溶性シクロデキストリン誘導体を含む:

式中、pは4、5、または6であり;
R1は各出現時に-OHまたは-SAE-Tより独立して選択され;
-SAE-は-O-(C2〜C6アルキレン)-SO3-基であり、ここで少なくとも1つのSAEは独立して-O-(C2〜C6アルキレン)-SO3-基、gが2〜6、または2〜4である-O-(CH2)gSO3-基(例えば-OCH2CH2CH2SO3-または-OCH2CH2CH2CH2SO3-)であり;
-Tは各出現時に薬学的に許容されるカチオンからなる群であって、H+、アルカリ金属(例えばLi+、Na+、K+)、アルカリ土類金属(例えばCa+2、Mg+2)、アンモニウムイオン、ならびに(C1〜C6)-アルキルアミン、ピペリジン、ピラジン、(C1〜C6)-アルカノールアミン、エチレンジアミン、および(C4〜C8)-シクロアルカノールアミンのカチオンなどのアミンカチオンを例えば特に含む群より独立して選択され;
但し、少なくとも1つのR1はヒドロキシル部分であり、少なくとも1つのR1は-SAE-Tである。
【0068】
誘導体化シクロデキストリン分子の少なくとも1つのR1が-SAE-Tである場合、-SAE-T部分に関する置換度は少なくとも1であると理解される。-SAE-という用語がスルホアルキル-(アルキルスルホン酸)-エーテル部分を示すように使用される場合、特記なき限り-SAE-部分はカチオン(-T)を含むと理解される。したがって、「SAE」および「-SAE-T」という用語は本明細書で適宜互換的に使用することができる。
【0069】
さらなる例示的なSAE-CD誘導体としては以下が挙げられる。

SEEはスルホエチルエーテルを示し、SPEはスルホプロピルエーテルを示し、SBEはスルホブチルエーテルを示し、SPtEはスルホペンチルエーテルを示し、SHEはスルホヘキシルエーテルを示し、xは平均置換度を示す。その塩(「T」をカチオンとして有する)が存在すると理解される。
【0070】
SAE-CD組成物は、異なる塩の形態で存在し得るアニオン性置換基で誘導体化されているシクロデキストリンを含む。好適な対イオンとしては、カチオン性有機原子または分子、およびカチオン性無機原子または分子が挙げられるがそれに限定されない。SAE-CD組成物は単一種類の対イオンまたは異なる対イオンの混合物を含み得る。SAE-CD組成物の特性は、存在する対イオンの独自性を変更することで修正可能である。例えば、スルホアルキルエーテルシクロデキストリンの第1の塩の形態は、スルホアルキルエーテルシクロデキストリンの異なる第2の塩の形態よりも大きい水分活性減少力を与えることができる。同様に、第1の置換度を有するスルホアルキルエーテルシクロデキストリンは、異なる置換度を有する第2のスルホアルキルエーテルシクロデキストリンよりも大きい水分活性減少力を有し得る。
【0071】
いくつかの態様では、スルホアルキルエーテルシクロデキストリンは、本発明のSAE-CD組成物がそれから調製される対応するシクロデキストリンよりも大きい水溶性を有する。例えば、いくつかの態様では、非誘導体化シクロデキストリン、例えばWACKER BIOCHEM CORP.(Adrian, MI)および他の供給源から例えば市販されているα-、β-、またはγ-シクロデキストリンが出発原料として利用される。非誘導体化シクロデキストリンは、本発明のSAE-CD組成物に比べて限定された水溶性を有する。例えば、非誘導体化α-CD、β-CD、γ-CDは飽和時にそれぞれ約145g/L、18.5g/L、および232g/Lの水溶性を有する。
【0072】
水溶性シクロデキストリン誘導体組成物を加工することで非誘導体化シクロデキストリンの大部分(例えば50%超)または他の混入物を除去してもよい。
【0073】
本明細書で使用する「置換基前駆体」は、「スルホアルキル化剤」という用語と互換的に使用され、スルホアルキルエーテル置換基によるシクロデキストリンのヒドロキシル基の誘導体化に好適な薬剤または薬剤の組み合わせおよび反応条件を意味する。置換基前駆体とシクロデキストリン分子上に存在するヒドロキシル基の酸素原子とが反応することで、-OH基をスルホアルキルエーテル基に変換することができる。本発明での使用に好適な例示的なスルホアルキル化剤としては、アルキルスルトン(例えば1,4-ブタンスルトン、1,5-ペンタンスルトン、1,3-プロパンスルトンなど)が挙げられるがそれに限定されない。
【0074】
本明細書で使用する「アルキレン」および「アルキル」という用語(例えば-O-(C2〜C6-アルキレン)SO3-基またはアルキルアミンカチオンにおける)は、直鎖状、環状、および分岐状で飽和および不飽和(すなわち1つまたは複数の二重結合を含有する)の二価のアルキレン基および一価のアルキル基をそれぞれ含む。同様に、本文書における「アルカノール」という用語は、アルカノール基の直鎖状、環状、および分岐状で飽和および不飽和のアルキル成分であって、ヒドロキシル基がアルキル部分上の任意の位置に位置しうるアルキル成分を含む。「シクロアルカノール」という用語は非置換のまたは置換されている(例えばメチルもしくはエチルで)環状アルコールを含む。
【0075】
本発明のシクロデキストリン誘導体は、官能基によるその置換度、官能基中の炭素数、分子量、基剤シクロデキストリン中に存在するグルコピラノース単位の数、および/または置換パターンが異なり得る。さらに、官能基によるシクロデキストリンの誘導体化は、制御されているが全く同じではない様式で生じる。このため、置換度は実際にはシクロデキストリン当たりの官能基の平均数を表す数である(例えば、SBE7-β-CDはシクロデキストリン当たり平均7つの置換を有する)。したがって、それは約7の平均置換度(「ADS」)を有する。さらに、シクロデキストリンのヒドロキシル基の置換の位置化学は、ヘキソース環の特定のヒドロキシル基の置換に関して変動し得る。このため、異なるヒドロキシル基の置換が誘導体化シクロデキストリンの製造中に生じやすく、特別な誘導体化シクロデキストリンが優先的だが独占的または特異的ではない置換パターンを有する。上記に鑑み、特別な誘導体化シクロデキストリン組成物の分子量はバッチ毎に変動し得る。
【0076】
所与のシクロデキストリン誘導体組成物中で、そのシクロデキストリン誘導体の置換基は同一であり得る。例えば、SAE部分は、シクロデキストリン誘導体組成物中での各出現時に同一種類のアルキレン(アルキル)基を有し得る。そのような態様では、SAE部分中のアルキレン基は、シクロデキストリン誘導体組成物中での各出現時にエチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシルであり得る。
【0077】
シクロデキストリン誘導体組成物は複数の個々の化学種の分布を含み、各化学種は個々の置換度(IDS)を有する。特別な組成物中のシクロデキストリン種の各々の含有量は、キャピラリー電気泳動を使用して定量化することができる。分析方法(例えば荷電したシクロデキストリン誘導体についてのキャピラリー電気泳動)は、わずか5%以上の個々のシクロデキストリン誘導体種しか有さない組成物間を識別する上で十分に感受性がある。
【0078】
シクロデキストリン分子は、誘導体化に利用可能な3v+6個のヒドロキシル基を含み得るものであり、ここでvは典型的には約4〜約10である。v=4(α-CD)では、「y」(置換度)は1〜17であり得る。v=5(β-CD)では、「y」(置換度)は1〜20であり得る。v=6(γ-CD)では、「y」(置換度)は1〜23であり得る。一般に、「y」は1〜3v+g、1〜2v+g、または1〜1v+gの整数でありえ、ここで「g」は0〜5の整数である。
【0079】
置換度(「DS」)とは、シクロデキストリン分子に連結したスルホアルキルエーテル置換基の数、言い換えればシクロデキストリン1モル当たりの置換基のモル数を意味する。したがって、各置換基は個々のシクロデキストリン誘導体種についてそれ自体のDSを有する。置換基の平均置換度(「ADS」)は、本発明のシクロデキストリン誘導体組成物中のシクロデキストリン誘導体の分布においてシクロデキストリン分子当たりに存在する置換基の総数の尺度である。したがって、SAE4-CDは4のADS(シクロデキストリン分子当たり)を有する。
【0080】
本発明のシクロデキストリン誘導体組成物は、異なる個々のシクロデキストリン誘導体種または分子の分布を含む。より具体的には、SAE-CD誘導体組成物は複数のSAE-CD種を含み、各々はSAE置換基に関して特定の個々の置換度を有する。その結果として、SAE-CD誘導体組成物のSAEのADSは、該組成物中の個々の分子の集団の個々のDS(IDS)値の平均を表す。例えば、SAE5.2-CD組成物は複数のSAEx-CD分子の分布を含み、x(SAE基のDS)は個々のシクロデキストリン分子について1から10まで、または1から11まで変動し得る。しかし、SAE-CD分子の集団は、xの平均値(SAE基のADS)が5.2になるものである。
【0081】
シクロデキストリン誘導体組成物の平均置換度(「ADS」)は、個々の置換度に基づいて式(I)に従って算出することができる:

式中、「PAC」はピーク面積カウントを意味し;
「MT」は移動時間を意味し; かつ
「SCA」は補正された面積の合計を意味する。
これらの値は例えばキャピラリー電気泳動を使用して得ることができる。補正された面積はPAC x MTの積である。個々の置換度(「IDS」)は、補正された面積の合計で割った補正された面積である[IDS=(PACxMT)/SCA]。
【0082】
SAE-CD組成物中に存在する個々のシクロデキストリン誘導体間の変動は、複合体化平衡定数K1:1の変化につながることがあり、それによって、例えば活性薬剤と複合体を形成するSAE-CD組成物の所要のモル比濃度に影響が及ぶことがある。平衡定数は温度依存性および/またはpH依存性である場合もあり、したがって、製造、貯蔵、輸送、使用などの間に生じ得るような温度および/またはpHの増減中に活性薬剤が可溶化した状態にとどまる、SAE-CD組成物対活性薬剤の比の許容度が必要である。平衡定数は他の賦形剤(例えば緩衝剤、保存剤、抗酸化剤)の存在によって変動することもある。したがって、上記の変数を代償するために、誘導体化シクロデキストリン対活性薬剤の比を、本明細書に開示される比から変動させることができる。
【0083】
組み合わせ組成物の形成に使用するSAE-CD組成物は高いADSから低いADSまで独立して有し得る。また、シクロデキストリン誘導体組成物は広いまたは狭い「スパン」も有し得るものであり、スパンとはSAE-CD組成物中の所与の置換度を有する個々の化学種の数を意味する。例えば、単一の特定の個々の置換度を有する単一化学種のシクロデキストリン誘導体を含むシクロデキストリン誘導体組成物は1のスパンを有し、その場合、シクロデキストリン誘導体の個々の置換度はそのシクロデキストリン誘導体組成物のADSと同等である。例えば1のスパンを有するSAE-CD誘導体の電気泳動図は、置換度について1つのSAE-CD種しか有さないはずである。2のスパンを有するシクロデキストリン誘導体組成物は、その個々の置換度が異なる2つの個々のシクロデキストリン誘導体種を含み、例えばその電気泳動図は、置換度が異なる2つの異なるシクロデキストリン誘導体種を示すと考えられる。同様に、3のスパンを有するシクロデキストリン誘導体組成物のスパンは、その個々の置換度が異なる3つの個々のシクロデキストリン誘導体種を含む。本発明の組み合わせ組成物は、各々それ自体のADSを有する2つ以上の異なるシクロデキストリン誘導体組成物を含むため、組み合わせ組成物のスパンは少なくとも4であり、このことは各出発シクロデキストリン誘導体組成物が少なくとも2のスパンを有することを意味する。
【0084】
いくつかの態様では、シクロデキストリン出発原料は、シクロデキストリンを形成するグルコピラノース残基のC-2位およびC-3位上の二級ヒドロキシル基、ならびにそのC-6位上の一級ヒドロキシルを含む。これらのヒドロキシル部分の各々は置換基前駆体による誘導体化に利用可能である。使用する合成の方法論に応じて、利用可能なヒドロキシルの位置の間で置換基部分をランダムにまたは多少秩序立った様式で分布させることができる。本発明のいくつかの態様は、置換基部分の少数がC-6位に位置し、置換基部分の大多数がC-2位および/またはC-3位に位置する、シクロデキストリン誘導体分子を含む。本発明のさらに他の態様は、置換基部分がC-2位、C-3位、およびC-6位の間で実質的に均一に分布している、シクロデキストリン誘導体分子を含む。
【0085】
本発明の組み合わせ組成物は、方法I、すなわち非誘導体化α-、β-、もしくはγ-シクロデキストリンの直接誘導体化、または方法II、すなわち既に調製されたシクロデキストリン誘導体のさらなる誘導体化によって調製することができる。
【0086】
以下の例ではSAE-CD組成物を調製するためのいくつかの方法を詳述する。一般に、中性〜アルカリ性の水性媒体中の非誘導体化シクロデキストリン出発原料を置換基前駆体に曝露させる。置換基前駆体は漸増的にまたはボーラスとして添加することができ、置換基前駆体はアルカリ性であってもよい水性媒体に対するシクロデキストリン出発原料の曝露の前、途中、または後に添加することができる。pHを所望の範囲内に維持するために、必要に応じてさらなるアルカリ性材料または緩衝材料を添加することができる。誘導体化反応は周囲温度〜高温で実行することができる。誘導体化が所望の程度まで進行した時点で、酸の添加によって反応を停止させてもよい。反応環境をさらに加工することで(例えば溶媒沈殿、濾過、遠心分離、蒸発、濃縮、乾燥、クロマトグラフィー、透析、および/または限外濾過)、所望しない材料を除去し、標的組成物を形成する。最終加工後に、組成物は固体、液体、半固体、ゲル、シロップ、ペースト、粉末、凝集体、顆粒、ペレット、圧縮材料、再構成可能な固体、懸濁液、ガラス、結晶塊、非晶質塊、粒子、ビーズ、乳濁液、または湿潤塊の形態であり得る。
【0087】
本発明は、所定の置換度を任意で有するスルホアルキルエーテルシクロデキストリンを含むSAE-CD組成物を作製する方法であって、以下の工程を含む方法を提供する: 非置換シクロデキストリン出発原料と所定の置換度を実現するために十分な量のアルキルスルトンとをアルカリ金属水酸化物の存在下で組み合わせる工程; 残留未反応シクロデキストリンが0.5重量%未満または0.1%未満になるまで9〜11のpHの範囲内でシクロデキストリンのスルホアルキル化を実行する工程; 置換度を達成するために十分な量でさらなる水酸化物を添加し、かつスルホアルキル化を完了まで進行させる工程; ならびにさらなる水酸化物を添加して任意の残留スルトンを破壊する工程。
【0088】
さらなる水酸化物を添加する工程は、水性粗生成物中の残留スルトンのレベルが20ppm未満または2ppm未満に減少する量の水酸化物の使用によって、またそのような条件(すなわちさらなる水酸化物の添加量、温度、スルトン加水分解を実行する時間の長さ)下で実行することができる。
【0089】
反応環境または部分精製水溶液が未反応のスルホアルキル化剤を含むことがあり得る。このスルホアルキル化剤は、さらなるアルカリ化剤を添加するか、またはこの薬剤を含有する溶液を加熱することでその場で分解することができる。混合の終了後に許容されない量のスルホアルキル化剤が反応環境中に存在する場合、過剰のスルホアルキル化剤の分解が必要になる。このスルホアルキル化剤は、さらなるアルカリ化剤を添加するか、またはこの薬剤を含有する溶液を加熱することでその場で分解することができる。
【0090】
分解は、反応環境を少なくとも60℃、少なくとも65℃、または60℃〜85℃、60℃〜80℃、もしくは60℃〜95℃の高温に少なくとも6時間、少なくとも8時間、8時間〜12時間、6時間〜72時間、または48時間〜72時間曝露させることで、スルホアルキル化剤をその場で分解し、かつ水性液体中のスルホアルキル化剤の量を減少させるかまたはそれを排除することによって実行することができる。
【0091】
本明細書に記載のように反応を行った後、反応を停止させるためにスルホアルキルエーテルシクロデキストリンを含有する水性媒体を約7のpHに中和することができる。特にさらなる精製を実行しなければならない場合、粘度を低減させるために次にこの溶液を水で希釈することができる。塩(例えば水酸化ナトリウムを塩基として使用した場合はNaCl)および他の低分子量副生成物などの反応副生成物の溶液をパージするために、限外濾過ユニット上でのダイアフィルトレーションを含むがそれに限定されないさらなる精製を使用することができる。この生成物は限外濾過によってさらに濃縮可能である。次に、活性炭によるこの生成物溶液の処理を、その色を改善し、バイオバーデンを減少させ、1つまたは複数の薬物分解性不純物を実質的に除去するために行うことができる。凍結乾燥、噴霧乾燥、または真空ドラム乾燥などの好適な乾燥技術によってこの生成物を単離することができる。
【0092】
反応液は、非置換α-、β-、またはγ-シクロデキストリン出発原料を塩基、通常は水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、または水酸化カリウムなどの水酸化物の水溶液に溶解させることで最初に調製することができる。所定または所望の置換度を達成するために、塩基は触媒量(すなわちシクロデキストリンに対する1:1未満のモル比)で存在する。すなわち、塩基は、シクロデキストリン分子中の誘導体化しようとする各ヒドロキシルについて1モル当量未満の量で存在する。温度が上昇するに従ってシクロデキストリンは水溶液にますます可溶性になるため、完全な溶解を確実にするには塩基およびシクロデキストリンを含有する水性反応混合物を約50℃の温度に上昇させるべきである。スルホアルキル化反応全体を通じて攪拌を一般に使用する。
【0093】
溶解の完了後に、アルキルスルトンを添加してスルホアルキル化反応を開始する。アルキルスルトンの一部は反応中に加水分解および/またはそうでなければ破壊/分解されてスルホアルキル化反応に利用できなくなるため、一般に、反応全体を通じて添加されるアルキルスルトンの全量は、反応を完了させるために必要なシクロデキストリンの量に対する化学量論的量を超過する。所望の置換度のために使用するアルキルスルトンの正確な量は試験の使用を通じて決定することができる。反応の完了に必要なアルキルスルトンの全量を反応を開始させる前に添加することができる。系が水性であるため、反応は一般に50℃と100℃との間の温度で実行される。特殊な圧力設備を必要としないように、反応を100℃未満の温度で実行することができる。一般に、65℃〜95℃の温度が好適である。
【0094】
反応の初期フェーズ(本明細書ではpH制御フェーズと呼ぶ)中に、pHをモニタリングし、それを少なくとも塩基性にまたは約8〜約11のpHに維持するように注意を払うべきである。pHのモニタリングは標準的pHメーターを使用することで好都合に実現することができる。pHの調整は水酸化物の水溶液、例えば10〜15%溶液を添加することで実現することができる。初期pH制御フェーズ中に、未反応シクロデキストリンは、0.5重量%未満または0.1重量%未満の未反応シクロデキストリンが溶液中にとどまる程度まで反応する。したがって、実質的にシクロデキストリンの初期供給量全体が、部分置換によって、但し所望の所定置換度未満まで反応する。0.5%未満または0.1%未満の残留シクロデキストリン出発原料という所望の終点が達成されるまで、残留シクロデキストリンを例えば下記のようにHPLCによってこの初期フェーズ全体を通じてモニタリングすることができる。濃縮水酸化物を反応媒体に連続的にまたは小さい漸増量としての別個の量で添加することで、pHを維持および/または上昇させることができる。小さい漸増量での添加が特に好適である。
【0095】
少ない残留シクロデキストリンとの組み合わせで所望の置換度を生成する手順において特別な量の反応物質を組み合わせ可能であることがわかるようにスルホアルキル化手順を標準化または最適化すると、初期pH制御の全体または途中ではなく最後にこの手順を単純にチェックすることで、残留(未反応)シクロデキストリン出発原料の低いレベルが達成されたことを確実にすることができる。以下の表では、反応器に供給されるブタンスルトンの量とSAE-CDの得られる平均置換度との間の関係を開示する。

【0096】
例えば初期供給量のシクロデキストリン出発原料と塩基とを組み合わせた後であるがアルキルスルトンを添加する前に、反応媒体の初期pHが11を超えることがあることに留意する。しかし、アルキルスルトンを添加して反応が開始した後でpHは速やかに低下し、このため塩基を添加して約8〜約11の塩基性pHを維持することが必要になる。
【0097】
pH制御段階中に残留未反応シクロデキストリンのレベルが所望のレベル、例えば0.5重量%未満に達すると、さらなる塩基を添加してpHを11超、例えば12を超えるレベルに上昇させることで反応を完了させることができる。反応が、かなりの速度であるが、未反応アルキルスルトンがシクロデキストリンと反応するよりむしろ速やかに加水分解される程には速くない速度で進行するように、pHを少なくとも12にすることができる。反応のこの後者のフェーズの間、所定の置換度に達するまでシクロデキストリン分子のさらなる置換を実現することができる。典型的には、反応全体を通じて添加される水酸化物の全量は、アルキルスルトンの使用量に対して化学量論的に必要な量プラス10〜20%モル過剰のオーダーである。10〜20%過剰を超える添加も実行可能である。先に記した反応終点はHPLCによって検出可能である。好適な温度は65℃〜95℃である。典型的には、HPLCシステムは、アンペロメトリック電気化学検出(PAD)を用いるアニオン交換分析用カラムを使用する。溶出は、二相系、例えば25mM(ミリモル)水酸化ナトリウム水溶液である溶媒Aおよび250mM水酸化ナトリウム中の1M硝酸ナトリウムである溶媒Bを使用するグラジエントによるものであり得る。
【0098】
スルホアルキル化反応が完了し、低い残留シクロデキストリン終点に到達すると、さらなる水酸化物を添加して任意の残留スルトンを破壊および/または分解することができる。さらなる水酸化物を典型的にはシクロデキストリンに対して0.5〜3モル当量の量で添加し、反応媒体を65℃〜95℃で典型的には6時間〜72時間加熱し続ける。
【0099】
残留スルトンの破壊後に、得られた粗生成物を、希釈し、ダイアフィルトレーションして塩などの低分子量成分の生成物を減少させるかまたは取り除き、濃縮し、炭素処理し、かつ、含水量の補正について通常はシクロデキストリン出発原料の10重量%未満のレベルにまで乾燥させることによってさらに処理して、最終生成物を生成することができる。
【0100】
pHを最初にモニタリングすることで、スルホアルキルエーテル誘導体化反応が進行する際にそれが約8〜約11にとどまることを確実にする。この初期段階で、スルホアルキル化を容易にするための水酸化物の添加は段階式または段階的であり得る。反応のpHをモニタリングすることで、シクロデキストリン出発原料の初期ストック全体がシクロデキストリン分子当たり平均少なくとも1つのスルホアルキル置換を実現する程度まで本質的に反応するように反応を制御できることを確実にする。したがって、シクロデキストリン反応物質全体がプロセスの初めに消費され、そのため、化学量論的量または過剰量の塩基全体とシクロデキストリンおよびアルキルスルトンとを最初に組み合わせて、非制御的に反応を進行させることを特徴とするプロセスによって生成される粗生成物に対する、粗生成物中の残留(未反応)シクロデキストリンのレベルが低くなる。シクロデキストリン出発原料の供給量全体が部分的に反応した後、残りの水酸化物を添加することで、スルホアルキル置換を所定で所望の程度まで完結させることにより反応を完了させることができる。シクロデキストリンの初期供給量が第1のpH制御フェーズで消費された後、水酸化物添加の速度は重要ではない。したがって、水酸化物は連続的にまたは別個の段階で添加する(例えば溶液として)ことができる。さらに、反応速度が商業的に有用であるように、反応媒体のpHを約12を超えて維持すべきである。
【0101】
初期pH制御は、反応混合物からのある種の副生成物を減少させるための手段を与える。例えば、反応が進行するに従って、酸がスルホアルキル化の結果として生成され、また反応混合物のpHが減少する(すなわちより酸性になる)傾向にある。一方、反応媒体が酸性になると反応がかなり遅延するかまたは停止するため、反応液は塩基性に維持される。したがって、必要に応じて水酸化物水溶液を添加することで、反応媒体のpHを少なくとも8のレベルに維持すべきである。他方、pHがある種のレベル、例えば12を超えるpHを超える場合、反応によって高レベルの4-ヒドロキシアルキルスルホネートおよびビス-スルホアルキルエーテルなどの副生成物が生成され、したがって、アルキルスルトン出発原料が消費されることがある。反応溶液のpHをモニタリングしかつpHを8〜12または8〜11に維持することで、反応は比較的低レベルの副生成物を生成する間に進行し、比較的低レベルの上記の副生成物を含有する比較的清浄な反応混合物が与えられる。
【0102】
「化学量論的に十分な」量で与えられる反応物質などに対する上記の言及は、対象となるシクロデキストリンを所望の置換度まで完全に誘導体化するために必要な反応物質の量に関するものである。本明細書で使用する「アルカリ金属水酸化物」とは、LiOH、NaOH、KOHなどを意味する。非経口投与に好適な生成物を生成することを望む場合はNaOHを使用することができる。
【0103】
置換度は、より低い置換度を望むかまたはより高い置換度を望むかのいずれかに応じて、対応してより少ない量またはより多い量のアルキルスルトンを使用することで制御することができる。一般に、達成可能な置換度は平均4.5〜7.5、5.5〜7.5、または6〜7.1である。
【0104】
本明細書の方法の粗生成物、すなわち残留アルキルスルトンの破壊後に得られる生成物は、塩基を最初に単一の供給量で添加するプロセスで生成されるものよりも低レベルの残留シクロデキストリンを含有し、また本発明のさらなる特徴として提供される。典型的には、本発明の方法によって生成される粗生成物は、0.5重量%未満または0.1%未満の残留シクロデキストリンを含有する。以下で説明するように、この粗生成物は、非常に低い残留アルキルスルトンレベルを含むという点でも有利である。
【0105】
典型的には、残留アルキルスルトンの破壊後に得られる粗シクロデキストリン生成物水溶液は限外濾過によって精製され、限外濾過は、低分子量不純物を通過させる半透膜に粗生成物を接触させるプロセスである。この膜を通過する不純物の分子量はその膜の分子量カットオフに依存する。本発明では、1,000ダルトン(「Da」)の分子量カットオフを有する膜を典型的に使用する。ダイアフィルトレーションおよび/または限外濾過は、500Da〜2,000Da、500Da〜1,500Da、750Da〜1,250Da、もしくは900Da〜1,100Da、または約1,000Daの分子量カットオフを有する濾過膜によって実行することができる。次に、保持液中の所望の生成物を活性炭でさらに処理することで、薬物分解性不純物を実質的に除去する。粗シクロデキストリン生成物水溶液(すなわち残留アルキルスルトンの破壊後であるが精製前に得られるもの)は、溶液の重量に対して2ppm未満、1ppm未満、250ppb未満の残留アルキルスルトンを含有するという点で有利である。粗溶液は残留アルキルスルトンを本質的に含有しないこともある。
【0106】
最終商品をこの時点で、例えば活性炭を除去するための濾過、それに続く水の蒸発(例えば蒸留、噴霧乾燥、凍結乾燥などを通じて)によって単離することができる。本発明によって生成される最終生成物は、非常に低い残留レベル、例えば乾燥(すなわち10重量%未満の水を含有する)最終生成物の重量に対して2ppm未満、1ppm未満、250ppb未満のアルキルスルトンを含有するか、または残留アルキルスルトンを本質的に含有しないという点で有利である。したがって、250ppb未満のアルキルスルトンを含有する最終生成物が本発明のさらなる特徴として提供される。所望の置換度へのスルホアルキル化の完了後に、既に記載のアルカリ加水分解処理によって、すなわち、乾燥生成物中の未反応スルトンの量を2ppm未満、1ppm未満、または250ppb未満の所望のレベルに減少させるために十分な量および条件下で追加の水酸化物溶液を添加することによって、アルキルスルトンが減少する。
【0107】
本発明の方法での使用に好適な活性炭は、リン酸塩を含まないことがあり、粉末もしくは顆粒、またはそれから生成される懸濁液もしくはスラリーであり得る。一般に、リン酸塩を含まない活性炭は、リン酸を使用して活性化されなかったかまたはそうでなければリン酸に曝露されなかった炭素である。
【0108】
多種多様な活性炭が利用可能である。例えば、Norit-Americasは、DARCO(登録商標)、HYDRODARCO(登録商標)、NORIT(登録商標)、BENTONORIT(登録商標)、PETRODARCO(登録商標)、およびSORBONORIT(登録商標)などの商標で150を超える異なるグレードおよび種類の活性炭を販売している。これらの炭素は粒径、用途、活性化方法、および有用性が異なる。例えば、いくつかの活性炭は色および/または香りの除去用に最適化されている。他の活性炭はタンパク質、ミネラル、および/もしくはアミノ酸部分の除去用、または溶液の浄化用に最適化されている。
【0109】
本発明に係る使用に好適な活性炭としては、亜炭由来であり蒸気で活性化されたDARCO(登録商標)4X12、12X20、または20x40顆粒(Norit Americas, Inc.、Amersfoort, NE); DARCO(登録商標)S 51 HF(亜炭由来、蒸気で活性化、粉末); および木材由来であり塩化亜鉛で活性化されたSHIRASAGI(登録商標)DC-32粉末状または顆粒状炭素(武田薬品工業(株)、大阪、日本)が挙げられるがそれに限定されない。
【0110】
スルホアルキルエーテルシクロデキストリンを精製するために先行技術で使用される、リン酸で活性化された炭素は、本発明での使用には一般に不適であり、DARCO(登録商標)KB-G、DARCO(登録商標)KB-B、およびDARCO(登録商標)KB-WJ、ならびにNORIT(登録商標)CASPおよびNORIT(登録商標)CN1が挙げられる。
【0111】
活性炭の添加比は溶液中のSAE-CD、色形成剤、および薬物分解剤の量または濃度、ならびに使用される活性炭の物理特性に最終的に依存する。一般に、シクロデキストリン対活性炭の重量比は処理サイクル当たり重量比で5:1〜10:1、6:1〜9:1、7:1〜9:1、8:1〜9:1、8.3:1〜8.5:1、8.4:1〜8.5:1、または8.44:1である。
【0112】
本明細書で使用する「処理サイクル」とは、所定量のシクロデキストリン組成物と所定量の活性炭との接触を意味する。処理サイクルは、単一の処理または複数の(再循環)通過処理として行うことができる。
【0113】
本明細書に包含される実施例は、SAE-CDのプロセス中環境または溶液に存在する1つまたは複数の薬物分解性成分および1つまたは複数の色形成成分を除去する上での異なるグレード、ロット、供給源、および種類の活性炭の効率を評価および比較するために使用する手順を詳述する。一般に、プロセス中環境または溶液は活性炭および120分間の攪拌によって処理する。緩い形態、粒子状形態、または粉末形態の活性炭を使用する場合、濾過媒体を通じて炭素を含有する液体を濾過することでそれを除去することによって浄化された溶液を与えることができる。
【0114】
濾過膜としてはナイロン、TEFLON(登録商標)、PVDF、または別の適合性のある材料を挙げることができる。SAE-CDを含有する溶液中のSAE-CDから分離される化学種の粒径または分子量に従って、必要に応じて濾過膜の孔径を変動させることができる。
【0115】
本明細書の実施例では、本発明の水性反応環境上で1つまたは複数の分離および/または精製を実行するための手順を詳述する。反応溶液を水溶液で希釈し、ダイアフィルトレーションに供し、ダイアフィルトレーション中に保持液の体積は実質的に一定に維持される。ダイアフィルトレーションは1,000Daフィルター上で実行することができ、1つまたは複数の望まれない成分はこのフィルターを通過するが、SAE-CD組成物中に存在するスルホアルキルエーテルの大部分は濾液と共に通過するよりむしろ保持液中に保持される。次に、保持液の体積を減少させて保持液を濃縮することで限外濾過を実行する。約1,000Daの分子量カットオフを有するフィルターも限外濾過に使用可能である。保持液はSAE-CDを含み、SAE-CDは次に本明細書に記載の活性炭で処理することができる。
【0116】
1つまたは複数の望まれない成分としては、低分子量不純物(すなわち約500Da以下の分子量を有する不純物)、水溶性および/または水不溶性イオン(すなわち塩)、加水分解されたスルホアルキル化剤、5-(ヒドロキシメチル)-2-フルアルデヒド、未反応シクロデキストリン出発原料、分解シクロデキストリン種(例えば未反応シクロデキストリン、部分反応シクロデキストリン、および/またはSAE-CDから形成される分解および/または開環した化学種)、未反応スルホアルキル化剤(例えば1,4-ブタンスルトン)、ならびにその組み合わせを挙げることができるがそれに限定されない。
【0117】
いくつかの態様では、本発明の組成物は1つまたは複数の薬物分解剤を実質的に含まない。1つまたは複数の薬物分解剤の存在は、特に紫外/可視 (「紫外/可視(vis)」)分光光度法によって決定することができる。本明細書で使用する「薬物分解剤」とは、水溶液中で有効成分を分解する化学種、部分などを意味する。いくつかの態様では、薬物分解性種は、スペクトルの紫外/可視領域内の吸収、例えば245nm〜270nmの波長での吸収最大を有する。
【0118】
任意の特別な理論に拘束されるものではないが、薬物分解剤、薬物分解性種、または薬物分解性部分としては、反応混合物中で副生成物および/または分解生成物として生成される化学種などであるがそれに限定されない1つまたは複数の低分子量種(例えば1,000Da未満の分子量を有する化学種)を挙げることができる。したがって、薬物分解性種としてはグリコシド部分、開環シクロデキストリン種、還元糖、グルコース分解生成物(例えば3,4-ジデオキシグルコソン-3-エン; 2-フルアルデヒド、5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒドなどのカルボニル含有分解物)、ならびにその組み合わせが挙げられるがそれに限定されない。
【0119】
「複合体化した」とは「包接複合体または包含複合体の一部であること」を意味し、すなわち、「複合体化」治療薬剤はスルホアルキルエーテルシクロデキストリンとの包接複合体または包含複合体の一部である。「大部分」という用語は重量比またはモル基準で50%以上であることを意味する。したがって、本発明に係る製剤は、その約50重量%超がスルホアルキルエーテルシクロデキストリンと複合体化している活性薬剤を含有し得る。複合体化している活性薬剤の実際の割合は、特定のシクロデキストリンと特定の活性薬剤との複合体化を特徴づける複合体化平衡結合定数に従って変動する。本発明はまた、活性薬剤がシクロデキストリンと複合体化していない態様、または活性薬剤の少数部分のみがスルホアルキルエーテルシクロデキストリンと複合体化している態様を含む。スルホアルキルエーテルシクロデキストリンが正に帯電した化合物と1つまたは複数のイオン結合を形成可能であることに留意すべきである。このイオン会合は、正に帯電した化合物が包含複合体化によってシクロデキストリンと複合体化しているか否かにかかわらず生じ得る。
【0120】
特に、本発明のSAE-CD組成物は、種々の異なる原料を可溶化および/または安定化させかつ特別な用途向けの製剤を調製するために使用可能である。本SAE-CD組成物は、組成物中の他の成分の溶解性の向上、ならびに/または化学安定性、熱化学安定性、加水分解安定性、および/もしくは光化学安定性の向上を与えることができる。例えば、SAE-CD組成物は水性媒体中の活性薬剤を安定化させるために使用可能である。SAE-CD組成物は水性媒体中の活性薬剤の溶解性を増加させるために使用することもできる。
【0121】
本発明のSAE-CD組成物は1つまたは複数の活性薬剤を含む。本発明の組成物に含まれる1つまたは複数の活性薬剤は、広範囲の水溶性、バイオアベイラビリティー、および親水性を有し得る。本発明にとって特に好適である活性薬剤は、水溶性、難水溶性、わずかに水溶性、中程度に水溶性、水溶性、非常に水溶性、疎水性、および/または親水性の治療薬剤を含む。本発明の組成物中に存在する1つまたは複数の活性薬剤が各出現時に任意の公知の活性薬剤および本明細書に開示されている活性薬剤より独立して選択されることを当業者は理解するであろう。1つまたは複数の活性薬剤がスルホアルキルエーテルシクロデキストリンと複合体を形成するかまたはスルホアルキルエーテルシクロデキストリンとイオン会合を形成する必要はない。
【0122】
一般に、活性薬剤としては、動物およびヒトに対して全身的または局部的な1つまたは複数の効果を生む生理活性物質または薬理活性物質が挙げられる。活性薬剤としては駆除剤、除草剤、殺虫剤、抗酸化剤、植物生長促進剤、滅菌剤、触媒、化学試薬、食品、栄養素、化粧品、ビタミン、不妊阻害剤、妊娠促進剤、微生物、調味料、甘味料、洗浄剤、薬学的に有効な活性薬剤、ならびに薬学用途、獣医学用途、園芸用途、家庭用途、食物用途、調理用途、農業用途、化粧品用途、工業用途、洗浄用途、菓子用途、および調味用途向けの他のそのような化合物も挙げられる。活性薬剤はその中性形態、イオン形態、塩形態、塩基形態、酸形態、天然形態、合成形態、ジアステレオマー形態、異性体形態、鏡像異性的に純粋な形態、ラセミ形態、水和物形態、キレート形態、誘導体形態、類似体形態、または他の一般的な形態で存在し得る。
【0123】
薬学的に有効な代表的な活性薬剤としては、栄養素および栄養剤、血液作用剤、内分泌作用剤および代謝作用剤、心血管作用剤、腎臓作用剤および尿生殖器作用剤、呼吸器作用剤、中枢神経系作用剤、消化器作用剤、抗真菌剤、抗感染症剤、生物学的薬剤および免疫学的薬剤、皮膚科用薬剤、眼科用薬剤、抗悪性腫瘍剤、ならびに診断薬剤が挙げられる。例示的な栄養素および栄養剤としてはミネラル、微量元素、アミノ酸、脂肪作用剤、酵素、およびキレート化剤が挙げられる。例示的な血液作用剤としては造血剤、抗血小板剤、抗凝血剤、クマリン誘導体およびインダンジオン誘導体、血液凝固剤、血栓溶解剤、抗鎌状化剤、血流動態学的薬剤、抗血友病剤、止血剤、血漿増補液、ならびにヘミンが挙げられる。例示的な内分泌作用剤および代謝作用剤としては性ホルモン、子宮作用剤、ビスホスホネート、抗糖尿病剤、グルコース上昇剤、コルチコステロイド、副腎皮質ステロイド、副甲状腺ホルモン、甲状腺薬剤、成長ホルモン、脳下垂体後葉ホルモン、オクトレオチド酢酸塩、イミグルセラーゼ、サケカルシトニン、フェニル酪酸ナトリウム、無水ベタイン、システアミン酒石酸水素塩、安息香酸ナトリウムおよびフェニル酢酸ナトリウム、ブロモクリプチンメシル酸塩、カベルゴリン、痛風用薬剤、ならびに解毒剤が挙げられる。本発明のSAE-CD組成物での使用に好適な抗真菌剤としてはポサコナゾール、ボリコナゾール、クロトリマゾール、ケトコナゾール、オキシコナゾール、セルタコナゾール、テトコナゾール(tetconazole)、フルコナゾール、イトラコナゾール、およびミコナゾールが挙げられるがそれに限定されない。本発明のSAE-CD組成物での使用に好適な統合失調症治療剤としてはクロザピン、プロクロルペラジン、ハロペリドール、チオリダジン、チオチキセン、リスペリドン、トリフロペラジン塩酸塩、クロルプロマジン、アリピプラゾール、ロキサピン、ロキシタン、オランザピン、クエチアピンフマル酸塩、リスペリドン、およびジプラシドンが挙げられるがそれに限定されない。
【0124】
例示的な心血管作用剤としては向知性剤、抗不整脈剤、カルシウムチャネル遮断剤、血管拡張剤、抗アドレナリン剤/交感神経遮断剤、レニンアンジオテンシン系アンタゴニスト、降圧剤組み合わせ、褐色細胞腫用薬剤、高血圧緊急用薬剤、抗高脂血症剤、抗高脂血症用組み合わせ製品、ショック時に使用する昇圧剤、カリウム除去用樹脂、エデト酸二ナトリウム、心停止液、動脈管開存症用薬剤、および硬化剤が挙げられる。例示的な腎臓作用剤および尿生殖器作用剤としては間質性膀胱炎剤、セルロースリン酸ナトリウム、抗性交不能剤、アセトヒドロキサム酸(aha)、尿生殖器洗浄剤、シスチン枯渇剤、尿アルカリ化剤、尿酸性化剤、抗コリン剤、尿コリン作動剤、ポリマーリン吸着剤、膣用製剤、および利尿剤が挙げられる。例示的な呼吸器作用剤としては気管支拡張剤、ロイコトリエン受容体アンタゴニスト、ロイコトリエン形成阻害剤、呼吸吸入用製品、鼻腔うっ血除去剤、呼吸酵素、肺サーファクタント、抗ヒスタミン剤、非麻薬性鎮咳剤、および去痰剤が挙げられる。例示的な中枢神経系作用剤としてはCNS刺激剤、麻薬性アゴニスト鎮痛剤、麻薬性アゴニスト-アンタゴニスト鎮痛剤、中枢性鎮痛剤、アセトアミノフェン、サリチル酸塩、非麻薬性鎮痛剤、非ステロイド性抗炎症剤、片頭痛用剤、制吐剤/抗めまい剤、抗不安剤、抗うつ剤、統合失調症治療剤、コリンエステラーゼ阻害剤、非バルビツレート系の鎮静剤および睡眠剤、非処方箋睡眠補助剤、バルビツレート系の鎮静剤および睡眠剤、全身麻酔剤、注射用局部麻酔剤、抗痙攣剤、筋弛緩剤、抗パーキンソン病剤、アデノシンリン酸、コリン作動性筋刺激剤、ジスルフィラム、喫煙抑制剤、リルゾール、ヒアルロン酸誘導体、ならびにボツリヌストキシンが挙げられる。例示的な消化器作用剤としてはピロリ菌(H pylori)薬、ヒスタミンH2アンタゴニスト、プロトンポンプ阻害剤、スクラルファート、プロスタグランジン、制酸剤、消化器抗コリン剤/鎮痙剤、メサラミン、オルサラジンナトリウム、バルサラジド二ナトリウム、スルファサラジン、セレコキシブ、インフリキシマブ、テガセロッドマレイン酸塩、緩下剤、止痢剤、抗膨満剤、リパーゼ阻害剤、GI刺激剤、消化酵素、胃酸性化剤、利胆剤、胆石可溶化剤、口および喉の生成物、全身脱臭剤、および肛門直腸用製剤が挙げられる。例示的な抗感染症剤としてはペニシリン、セファロスポリンおよび関連抗生物質、カルバペネム、モノバクタム、クロラムフェニコール、キノロン、フルオロキノロン、テトラサイクリン、マクロライド、スペクチノマイシン、ストレプトグラミン、バンコマイシン、オキサロジノン(oxalodinones)、リンコサミド、経口および非経口アミノグリコシド、コリスチメタートナトリウム、ポリミキシンb硫酸塩、バシトラシン、メトロニダゾール、スルホンアミド、ニトロフラン、メテナミン、葉酸アンタゴニスト、抗真菌剤、抗マラリア製剤、抗結核剤、抗アメーバ剤、抗ウイルス剤、抗レトロウイルス剤、ハンセン病治療剤、抗原虫剤、駆虫剤、ならびにcdc抗感染症剤が挙げられる。例示的な生物学的薬剤および免疫学的薬剤としては免疫グロブリン、モノクローナル抗体剤、アンチベニン、能動免疫用薬剤、アレルゲン性抽出物、免疫的薬剤、および抗リウマチ剤が挙げられる。例示的な皮膚科用薬剤としては局所抗ヒスタミン製剤、局所抗感染症剤、抗炎症剤、抗乾癬剤、抗脂漏製品、アルニカ、収斂剤、洗浄剤、カプサイシン、破壊剤、乾燥剤、酵素製剤、局所免疫調節剤、角質溶解剤、肝臓誘導体複合体、局所局部麻酔剤、ミノキシジル、エフロールニチン塩酸塩、光化学療法剤、色素剤、局所ツタウルシ生成物、局所ピリミジンアンタゴニスト、ジンクピリチオン、レチノイド、レキシノイド(rexinoids)、殺疥癬虫剤/殺シラミ剤、創傷治癒剤、皮膚軟化剤、保護剤、日焼け止め、軟膏基剤およびローション基剤、擦剤およびリニメント剤、包帯剤および顆粒剤、ならびに生理洗浄液が挙げられる。例示的な眼科用薬剤としては緑内障用剤、マスト細胞安定剤、眼科用消毒剤、眼科用光線療法剤、眼球潤滑剤、人工涙液、眼科用高浸透圧製剤、およびコンタクトレンズ製品が挙げられる。例示的な抗悪性腫瘍剤としてはアルキル化剤、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害剤、エピポドフィロトキシン、抗生物質、ホルモン、酵素、放射性薬剤、白金配位錯体、アントラセンジオン、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、イミダゾテトラジン誘導体、細胞保護剤、dnaトポイソメラーゼ阻害剤、生物応答調節剤、レチノイド、レキシノイド、モノクローナル抗体、タンパク質-チロシンキナーゼ阻害剤、ポルフィマーナトリウム、ミトタン(o, p'-ddd)、および三酸化ヒ素が挙げられる。例示的な診断薬剤としてはインビボ診断補助剤、インビボ診断生物製剤、および放射線不透過性薬剤が挙げられる。
【0125】
先に列挙した活性薬剤は網羅的であると考えるべきではなく、本発明の範囲内にある考慮される多くの態様の単なる例示である。多くの他の活性薬剤を本発明の製剤によって投与することができる。
【0126】
本発明の製剤を使用して2つ以上の異なる活性薬剤を送達することができる。活性薬剤の特別な組み合わせを本発明の製剤において与えることができる。活性薬剤のいくつかの組み合わせとしては、1)第1の治療クラスからの第1の薬物、および同一の治療クラスからの異なる第2の薬物; 2)第1の治療クラスからの第1の薬物、および異なる治療クラスからの異なる第2の薬物; 3)第1の種類の生物活性を有する第1の薬物、およびほぼ同一の生物活性を有する異なる第2の薬物; ならびに4)第1の種類の生物活性を有する第1の薬物、および異なる第2の種類の生物活性を有する異なる第2の薬物が挙げられる。活性薬剤の例示的な組み合わせを本明細書に記載する。
【0127】
本発明の製剤中に含有される活性薬剤はその薬学的に許容される塩として存在することがある。本明細書で使用する「薬学的に許容される塩」とは、活性薬剤を必要に応じて酸および/または塩基と反応させてイオン結合対を形成することによって活性薬剤が修飾されている、開示された化合物の誘導体を意味する。薬学的に許容される塩の例としては、無毒の無機酸または有機酸から例えば形成されるある化合物の従来型の無毒の塩または四級アンモニウム塩が挙げられる。好適な無毒の塩としては塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルホン酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸、および当業者に公知の他の酸などの無機酸から誘導されるものが挙げられる。この塩はアミノ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、および当業者に公知の他の酸などの有機酸からも調製される。本発明での使用に好適な薬学的に許容される塩は、塩基性基または酸性基を含む活性薬剤を使用して従来の化学的方法によって調製することができる。好適な付加塩はRemington's Pharmaceutical Sciences(17th ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, 1985)に見られ、その関連する開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0128】
本発明はまた、活性薬剤を安定化させるための方法であって、以下の工程を含む方法を対象とする: スルホアルキルエーテルシクロデキストリンおよび100ppm未満のリン酸塩を含むSAE-CD組成物を与える工程であって、SAE-CD組成物が1cm光路長を有するセル中で、溶液1mL当たり300mgのSAE-CD組成物を含有する水溶液について245nm〜270nmの波長で紫外/可視分光光度法により決定される0.5A.U.未満の薬物分解剤の吸収を有する工程; ならびにSAE-CD組成物と活性薬剤とを組み合わせる工程。
【0129】
活性薬剤を安定化させる方法であって、1つまたは複数の活性薬剤とスルホアルキルエーテルシクロデキストリンおよび100ppm未満のリン酸塩を含むSAE-CD組成物とを含む組成物が乾燥溶液、湿潤溶液、吸入可能な組成物、非経口組成物、固溶体、固体混合物、顆粒状物、ゲル、および当業者に公知の他の活性薬剤組成物として存在する方法を行うことができる。
【0130】
いくつかの態様では、活性薬剤を安定化させる方法は、1つまたは複数の活性薬剤とスルホアルキルエーテルシクロデキストリンおよび100ppm未満のリン酸塩を含むSAE-CD組成物とを含む組成物を約80℃の温度に約120分間維持した後に約2%以下、約1.5%以下、約1%以下、または約0.5%以下の薬物分解性不純物を与える。
【0131】
同様に、いくつかの態様では、活性薬剤を安定化させる方法は、1つまたは複数の活性薬剤とスルホアルキルエーテルシクロデキストリンおよび100ppm未満のリン酸塩を含むSAE-CD組成物とを含む組成物を約80℃の温度に約120分間維持した後に、活性薬剤アッセイにおいて約98%以上、約98.5%以上、約99%以上、または約99.5%以上の活性薬剤を与える。
【0132】
一般に、SAE-CDは活性薬剤の安定化に十分な量で存在する。十分な量とは約0.1:1〜約10:1、約0.5:1〜約10:1、約0.8:1〜約10:1、または約1:1〜約5:1のモル比(SAE-CD:活性薬剤)のことであり得る。
【0133】
組み合わせ組成物中のシクロデキストリンは、それを含有する製剤中に存在する活性薬剤などの別の原料と結合する必要はない。しかし、シクロデキストリンが別の原料と結合する場合、そのような結合は包含複合体化、イオン対形成、水素結合、および/またはファンデルワールス相互作用の結果として形成され得る。
【0134】
アニオン性誘導体化シクロデキストリンは、酸でイオン化可能な薬剤と複合体化するかまたはそうでなければ結合することができる。本明細書で使用する、酸でイオン化可能な薬剤という用語は、酸の存在下でイオン化されるかまたはイオン化されている任意の化合物を意味するように採用される。酸でイオン化可能な薬剤は、酸に曝露される際にまたは酸性媒体中に置かれた際にイオン化する少なくとも1個の酸でイオン化可能な官能基を含む。例示的な酸でイオン化可能な官能基としては一級アミン、二級アミン、三級アミン、四級アミン、芳香族アミン、不飽和アミン、一級チオール、二級チオール、スルホニウム、ヒドロキシル、エノール、および化学分野の当業者に公知の他の官能基が挙げられる。
【0135】
酸でイオン化可能な薬剤が包含複合体化形成で結合する程度に対する、酸でイオン化可能な薬剤が非共有イオン結合で結合する程度は、1H-NMR、13C-NMR、または円二色性などの方法を例えば使用しかつ酸でイオン化可能な薬剤およびアニオン性誘導体化シクロデキストリンの相溶解度データの分析によって分光測定的に決定することができる。当業者は、これらの従来の方法を使用して溶液中に生じる各種類の結合の量を概算することで、化学種間の結合が非共有イオン結合または包含複合体形成によって主に生じているか否かを決定できるであろう。非共有イオン結合が包含複合体形成よりも優位である条件下では、相溶解度データがその条件下での化学種間の著しい結合を示しているにもかかわらず、NMRまたは円二色性によって測定される包含複合体形成の量は減少し、さらに、相溶解度データから決定される酸でイオン化可能な薬剤の固有の溶解度は、その条件下で予測されるよりも一般に高い。
【0136】
本明細書で使用する「非共有イオン結合」という用語は、アニオン種とカチオン種との間に形成される結合を意味する。結合は非共有結合性であるため、この2つの種は一緒になって塩またはイオン対を形成する。アニオン性誘導体化シクロデキストリンはイオン対のアニオン種を与え、酸でイオン化可能な薬剤はイオン対のカチオン種を与える。アニオン性誘導体化シクロデキストリンは多価であるため、SAE-CDは、1つまたは複数の酸でイオン化可能であるかまたはそうでなければカチオン性の薬剤と共にイオン対を形成することができる。
【0137】
本発明の液体製剤を再構成用の固体製剤に変換することができる。本発明に係る再構成可能な固体組成物は、活性薬剤、誘導体化シクロデキストリン、および任意で少なくとも1つの他の薬学的賦形剤を含む。再構成可能な組成物を水性液体によって再構成することで、保存される液体製剤を形成することができる。本組成物は、固体誘導体化シクロデキストリンと活性薬剤を含有する固体との混合物(包含複合体の存在は最小限から非存在までである)、および任意で少なくとも1つの固体薬学的賦形剤を含み得るものであり、活性薬剤の大部分は再構成前には誘導体化シクロデキストリンと複合体化しない。あるいは、本組成物は誘導体化シクロデキストリンと活性薬剤との固体混合物を含み得るものであり、活性薬剤の大部分は再構成前に誘導体化シクロデキストリンと複合体化している。また、再構成可能な固体組成物は誘導体化シクロデキストリンおよび活性薬剤を含み得るものであり、活性薬剤の実質的に全部または少なくとも大部分は誘導体化シクロデキストリンと複合体化している。
【0138】
再構成可能な固体組成物は、以下のプロセスのいずれかに従って調製することができる。本発明の液体製剤を最初に調製し、次に凍結乾燥(lyophilization)(凍結乾燥(freeze-drying))、噴霧乾燥、噴霧凍結乾燥、貧溶媒沈殿、無菌噴霧乾燥、超臨界流体もしくは近超臨界流体を利用する各種プロセス、または再構成用の固体を作製するための当業者に公知の他の方法によって固体を形成する。
【0139】
本発明の製剤中に含まれる液体媒体は水性液体担体(例えば水)、含水アルコール、水性有機溶媒、非水性液体担体、およびその組み合わせを含み得る。
【0140】
本発明の製剤は、従来型の保存剤、消泡剤、抗酸化剤、緩衝剤、酸性化剤、アルカリ化剤、増量剤、着色剤、複合体化促進剤、凍結保護物質、電解質、グルコース、乳化剤、油、可塑剤、溶解性向上剤、安定剤、浸透圧調整剤、香料、甘味料、吸着剤、抗粘着剤、結合剤、希釈剤、直接圧縮賦形剤、崩壊剤、流動促進剤、潤滑剤、不透明化剤(opaquant)、研磨剤、錯化剤、芳香、製剤中での使用について当業者に公知の他の賦形剤、およびその組み合わせからなる群より選択される1つまたは複数の薬学的賦形剤を含み得る。
【0141】
本明細書で使用する「吸着剤」という用語は、物理的または化学的(化学吸着)手段によってその表面上に他の分子を保持可能な薬剤を意味するよう意図されている。そのような化合物としては、粉末活性炭および当業者に公知の他の材料が例として挙げられるがそれに限定されない。
【0142】
本明細書で使用する「アルカリ化剤」という用語は、生成物安定性のためのアルカリ性媒体を与えるために使用される化合物を意味するよう意図されている。そのような化合物としてはアンモニア溶液、炭酸アンモニウム、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、水酸化カリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、有機アミン塩基、アルカリ性アミノ酸、およびトロラミン、ならびに当業者に公知の他の化合物が例として挙げられるがそれに限定されない。
【0143】
本明細書で使用する「酸性化剤」という用語は、生成物安定性のための酸性媒体を与えるために使用される化合物を意味するよう意図されている。そのような化合物としては酢酸、酸性アミノ酸、クエン酸、フマル酸および他のα-ヒドロキシ酸、塩酸、アスコルビン酸、リン酸、硫酸、酒石酸、および硝酸、ならびに当業者に公知の他の化合物が例として挙げられるがそれに限定されない。
【0144】
本明細書で使用する「抗粘着剤」という用語は、製作中に打錠機内のパンチおよびダイに固体投与製剤成分が付着することを防止する薬剤を意味するよう意図されている。そのような化合物としてはステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸カルシウム、ベヘン酸ググリセリル、ポリエチレングリコール、硬化植物油、鉱油、ステアリン酸、および当業者に公知の他の材料が例として挙げられるがそれに限定されない。
【0145】
本明細書で使用する「結合剤」という用語は、固体投与製剤中の粉末粒子の接着を引き起こすために使用される物質を意味するよう意図されている。そのような化合物としては、アラビアゴム、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリ(ビニルピロリドン)、圧縮性糖、エチルセルロース、ゼラチン、液体グルコース、メチルセルロース、ポビドン、およびアルファ化デンプン、ならびに当業者に公知の他の材料が例として挙げられるがそれに限定されない。
【0146】
必要であれば結合剤を剤形に含めることもできる。例示的な結合剤としてはアラビアゴム、トラガカント、ゼラチン、デンプン、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース材料、アルギン酸およびその塩、ポリエチレングリコール、グアーガム、多糖、ベントナイト、糖、転化糖、ポロキサマー(PLURONIC(商標)F68、PLURONIC(商標)F127)、コラーゲン、アルブミン、ゼラチン、非水性溶媒中のセルロース系材料、その組み合わせ、ならびに当業者に公知の他の結合剤が挙げられる。他の結合剤としては例えばポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン-ポリプロピレン共重合体、ポリエチレンエステル、ポリエチレンソルビタンエステル、ポリエチレンオキシド、その組み合わせ、および当業者に公知の他の材料が挙げられる。
【0147】
本明細書で使用する従来型の保存剤は、バイオバーデンが増加する速度を少なくとも減少させるために使用されるが、バイオバーデンを定常的に維持するかまたは混入後のバイオバーデンを減少させる化合物である。そのような化合物としては塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、チメロサール、メタクレゾール、ミリスチルγ塩化ピコリニウム、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、チモール、およびメチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、またはブチルパラベン、ならびに当業者に公知の他の化合物が例として挙げられるがそれに限定されない。いくつかの保存剤はシクロデキストリン誘導体と相互作用して保存剤の有効性を減少させることがあると理解される。それにもかかわらず、保存剤の選択ならびに保存剤およびシクロデキストリン誘導体の濃度を調整することで、十分に保存された製剤を見出すことができる。
【0148】
本明細書で使用する「希釈剤」または「充填剤」という用語は、液体剤形または固体剤形の製剤において所望のバルク特性、流動特性、および圧縮特徴を作り出すために充填剤として使用される不活性物質を意味するよう意図されている。そのような化合物としては液体媒体(例えば水、アルコール、溶媒など)、リン酸水素カルシウム、カオリン、乳糖、ブドウ糖、炭酸マグネシウム、スクロース、マンニトール、結晶セルロース、粉末セルロース、沈降炭酸カルシウム、ソルビトール、およびデンプン、ならびに当業者に公知の他の材料が例として挙げられるがそれに限定されない。
【0149】
本明細書で使用する「直接圧縮賦形剤」という用語は、圧縮固体剤形中で使用される化合物を意味するよう意図されている。そのような化合物としては、リン酸水素カルシウムおよび当業者に公知の他の材料が例として挙げられるがそれに限定されない。
【0150】
本明細書で使用する「抗酸化剤」という用語は、酸化を阻害し、したがって酸化プロセスによる製剤の劣化を防止するために使用される薬剤を意味するよう意図されている。そのような化合物としてはアセトン、メタ重亜硫酸カリウム、亜硫酸カリウム、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、クエン酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、チオグリコール酸、EDTA、ペンテテート、およびメタ重亜硫酸ナトリウム、ならびに当業者に公知の他の化合物が例として挙げられるがそれに限定されない。
【0151】
本明細書で使用する「緩衝剤」という用語は、希釈または酸もしくはアルカリの添加時にpHの変化に抵抗するために使用される化合物を意味するよう意図されている。そのような化合物としては酢酸、酢酸ナトリウム、アジピン酸、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、クエン酸、グリシン、マレイン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸、乳酸、酒石酸、メタリン酸カリウム、リン酸カリウム、酢酸二水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、トリス、酒石酸ナトリウム、ならびに無水クエン酸ナトリウムおよびクエン酸ナトリウム二水和物、ならびに当業者に公知の他の化合物が例として挙げられるがそれに限定されない。
【0152】
複合体化促進剤を本発明の製剤に添加することができる。そのような薬剤が存在する場合、シクロデキストリン/活性薬剤の比を変化させることができる。複合体化促進剤は、活性薬剤とシクロデキストリンとの複合体化を促進させる1つまたは複数の化合物である。好適な複合体化促進剤としては、特別な薬剤とシクロデキストリンとの複合体化を促進させるために保存溶液中で典型的に使用される1つまたは複数の薬理学的に不活性の水溶性ポリマー、ヒドロキシ酸、および他の有機化合物が挙げられる。
【0153】
CDに基づく保存剤を含有する製剤の性能を改善するために、親水性ポリマーを複合体化促進剤、溶解性向上剤、および/または水分活性減少剤として使用することができる。Loftssonはシクロデキストリン(非誘導体化または誘導体化)の性能および/または特性を向上させるための該シクロデキストリンとの組み合わせ使用に好適ないくつかのポリマーを開示した。好適なポリマーはPharmazie 56:746 (2001); Int. J. Pharm. 212:29 (2001); Cyclodextrin: From Basic Research to Market, 10th Int'l Cyclodextrin Symposium, Ann Arbor, MI, US, May 21-24, p. 10-15 (2000); PCT国際公開第WO99/42111号; Pharmazie 53:733 (1998); Pharm. Technol. Eur. 9:26 (1997); J. Pharm. Sci. 85:1017 (1996); 欧州特許出願第0579435号; Proc. of the 9th Int'l Symposium on Cyclodextrins, Santiago de Comostela, ES, May 31-June 3, 1998, pp. 261-264 (1999); S.T.P. Pharma Sciences 9:237 (1999); Amer. Chem. Soc. Symposium Series 737 (Polysaccharide Applications):24-45 (1999); Pharma. Res. 15:1696 (1998); Drug Dev. Ind. Pharm. 24:365 (1998); Int. J. Pharm. 163:115 (1998); Book of Abstracts, 216th Amer. Chem. Soc. Nat'l Meeting, Boston, Aug. 23-27 CELL-016 (1998); J. Controlled Release 44:95 (1997); Pharm. Res. (1997) 14(11), S203; Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 37:1199 (1996); Proc. of the 23rd Int'l Symposium on Controlled Release of Bioactive Materials 453-454 (1996); Drug Dev. Ind. Pharm. 22:401 (1996); Proc. of the 8th Int'l Symposium on Cyclodextrins, Budapest, HU, Mar. 31-Apr. 2, 1996, pp. 373-376 (1996); Pharma. Sci. 2:277 (1996); Eur. J. Pharm. Sci. 4S:S144 (1996); 3rd Eur. Congress of Pharma. Sci. Edinburgh, Scotland, UK September 15-17, 1996; Pharmazie 51:39 (1996); Eur. J. Pharm. Sci. 4S:S143 (1996); 米国特許第5,472,954号および第5,324,718号; Int. J. Pharm. 126:73 (1995); Abstracts of Papers of the Amer. Chem. Soc. 209:33-CELL (1995); Eur. J. Pharm. Sci. 2:297 (1994); Pharm. Res. 11:S225 (1994); Int. J. Pharm. 104:181 (1994); ならびにInt. J. Pharm. 110:169 (1994)に開示されており、これらの全開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0154】
他の好適なポリマーは、薬学的製剤の分野で一般的に使用される周知の賦形剤であり、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th ed., pp. 291-294, A.R. Gennaro (editor), Mack Publishing Co., Easton, PA (1990); A. Martin et al., Physical Pharmacy. Physical Chemical Principles in Pharmaceutical Sciences, 3d ed., pp. 592-638 (Lea & Febinger, Philadelphia, PA (1983); A.T. Florence et al., Physicochemical Principles of Pharmacy, 2d ed., pp. 281-334, MacMillan Press, London, UK (1988)に例えば含まれており、これらの開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。さらに他の好適なポリマーとしては水溶性天然ポリマー、水溶性半合成ポリマー(セルロースの水溶性誘導体などの)、および水溶性合成ポリマーが挙げられる。天然ポリマーとしてはイヌリン、ペクチン、アルギン誘導体(例えばアルギン酸ナトリウム)、および寒天などの多糖、ならびにカゼインおよびゼラチンなどのポリペプチドが挙げられる。半合成ポリマーとしてはメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ならびにヒドロキシエチル-エチルセルロースおよびヒドロキシプロピルエチルセルロースなどの他の混合エーテルなどのその混合エーテル、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ならびにカルボキシメチルセルロースおよびその塩、特にカルボキシメチルセルロースナトリウムが挙げられる。合成ポリマーとしてはポリオキシエチレン誘導体(ポリエチレングリコール)、ならびにポリビニル誘導体(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、およびポリスチレンスルホン酸)、ならびにアクリル酸の各種共重合体(例えばカルボマー)が挙げられる。水溶性、薬学的許容性、および薬学的不活性の基準を満たす、本明細書で名前が挙げられていない他の天然、半合成、および合成ポリマーも同様に本発明の範囲内であると考えられる。
【0155】
本明細書で使用する芳香とは、検出可能な香り、匂い、または香気を生成する比較的揮発性の高い物質または物質の組み合わせのことである。例示的な芳香としては米国食品医薬品局が安全であるとして一般に許容しているものが挙げられる。
【0156】
本明細書で使用する「流動促進剤」という用語は、固体の塊の流動性を改善するために固体投与製剤中で使用される薬剤を意味するよう意図されている。そのような化合物としてはコロイダルシリカ、コーンスターチ、タルク、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、コロイダルケイ素、第三リン酸カルシウム、ケイ素ヒドロゲル、および当業者に公知の他の材料が例として挙げられるがそれに限定されない。
【0157】
本明細書で使用する「潤滑剤」という用語は、圧縮中に摩擦を減少させるために固体投与製剤中で使用される物質を意味するよう意図されている。そのような化合物としてはステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、タルク、鉱油、ステアリン酸、およびステアリン酸亜鉛、ならびに当業者に公知の他の材料が例として挙げられるがそれに限定されない。
【0158】
本明細書で使用する「不透明化剤」という用語は、コーティングを不透明にするために使用される化合物を意味するよう意図されている。不透明化剤は単独でまたは着色剤との組み合わせで使用可能である。そのような化合物としては二酸化チタン、タルク、および当業者に公知の他の材料が例として挙げられるがそれに限定されない。
【0159】
本明細書で使用する「研磨剤」という用語は、固体剤形に魅力的な光沢を付与するために使用される化合物を意味するよう意図されている。そのような化合物としてはカルナウバロウ、白ロウ、および当業者に公知の他の材料が例として挙げられるがそれに限定されない。
【0160】
本明細書で使用する「崩壊剤」という用語は、より容易に分散または溶解するより小さな粒子に固体の塊が分裂することを促進するために固体剤形中で使用される化合物を意味するよう意図されている。例示的な崩壊剤としてはコーンスターチ、バレイショデンプン、そのアルファ化デンプンおよび加工デンプンなどのデンプン、甘味料、粘土、ベントナイト、結晶セルロース(例えばAVICEL(登録商標))、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、セルロースポラクリリン(polacrilin)カリウム(例えばAMBERLITE(登録商標))、アルギン酸塩、デンプングリコール酸ナトリウム、ガム、寒天、グアー、ローカストビーン、カラヤ、ペクチン、トラガカント、クロスポビドン、および当業者に公知の他の材料が例として挙げられるがそれに限定されない。
【0161】
本明細書で使用する「安定剤」という用語は、治療薬の治療活性を減少させる可能性がある物理的、化学的、または生化学的プロセスに対して治療薬を安定化させるために使用される化合物を意味するよう意図されている。好適な安定剤としてはアルブミン、シアル酸、クレアチニン、グリシンおよび他のアミノ酸、ナイアシンアミド、ナトリウムアセチルトリプトファネート、酸化亜鉛、スクロース、グルコース、乳糖、ソルビトール、マンニトール、グリセリン、ポリエチレングリコール、カプリル酸ナトリウム、およびサッカリンナトリウム、ならびに当業者に公知の他の安定剤が例として挙げられるがそれに限定されない。
【0162】
本明細書で使用する「浸透圧調整剤」という用語は、液体製剤の浸透圧を調整するために使用可能な1つまたは複数の化合物を意味するよう意図されている。好適な浸透圧調整剤としてはグリセリン、乳糖、マンニトール、ブドウ糖、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、ソルビトール、トレハロース、および当業者に公知の他の浸透圧調整剤が挙げられる。一態様では、液体製剤の浸透圧は血液または血漿の浸透圧とほぼ同じである。
【0163】
本明細書で使用する「消泡剤」という用語は、液体製剤の表面上に形成される発泡を防止するかまたはその量を減少させる1つまたは複数の化合物を意味するよう意図されている。好適な消泡剤としてはジメチコン、シメチコン、オクトキシノール、および当業者に公知の他の消泡剤が挙げられる。
【0164】
本明細書で使用する「増量剤」という用語は、固体生成物にバルクを添加し、かつ/または凍結乾燥中に製剤の特性を制御することを支援するために使用される化合物を意味するよう意図されている。そのような化合物としてはデキストラン、トレハロース、スクロース、ポリビニルピロリドン、乳糖、イノシトール、ソルビトール、ジメチルスルホキシド、グリセリン、アルブミン、ラクトビオン酸カルシウム、および当業者に公知の他の化合物が例として挙げられるがそれに限定されない。
【0165】
本明細書で使用する「凍結保護物質」という用語は、凍結乾燥中に物理的または化学的分解から活性治療薬を保護するために使用される化合物を意味するよう意図されている。そのような化合物としてはジメチルスルホキシド、グリセリン、トレハロース、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、および当業者に公知の他の化合物が例として挙げられるがそれに限定されない。
【0166】
本明細書で使用する「乳化剤(emulsifier)」または「乳化剤(emulsifying agent)」という用語は、外相内の内相の液滴を安定化させるために乳濁液の相成分のうち1つまたは複数に添加される化合物を意味するよう意図されている。そのような化合物としてはレシチン、ポリオキシルエチレン-ポリオキシプロピレンエーテル、ポリオキシルエチレン-ソルビタンモノラウレート、ポリソルベート、ソルビタンエステル、ステアリルアルコール、チロキサポール、トラガカント、キサンタンガム、アラビアゴム、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ベントナイト、カルボマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、コレステロール、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、オクトキシノール、オレイルアルコール、ポリビニルアルコール、ポビドン、プロピレングリコールモノステアレート、ラウリル硫酸ナトリウム、および当業者に公知の他の化合物が例として挙げられるがそれに限定されない。
【0167】
溶解性向上剤を本発明の製剤に添加することができる。溶解性向上剤は、液体製剤中にある場合の活性薬剤の溶解性を向上させる1つまたは複数の化合物である。そのような薬剤が存在する場合、シクロデキストリン/活性薬剤の比を変化させることができる。好適な溶解性向上剤としては、特別な薬剤の溶解性を向上させるために非経口溶液中で典型的に使用される1つまたは複数の有機溶媒、清浄剤、石鹸、界面活性剤、および他の有機化合物が挙げられる。
【0168】
好適な有機溶媒としては例えばエタノール、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポロキサマー、および当業者に公知の他の有機溶媒が挙げられる。
【0169】
本発明のSAE-CD組成物を含む製剤は、油(例えば固定油、ピーナッツ油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油など)、脂肪酸(例えばオレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸など)、脂肪酸エステル(例えばオレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピルなど)、脂肪酸グリセリド、アセチル化脂肪酸グリセリド、およびその組み合わせを含み得る。本発明のSAE-CD組成物を含む製剤は、アルコール(例えばエタノール、イソプロパノール、ヘキサデシルアルコール、グリセリン、プロピレングリコールなど)、グリセリンケタール(例えば2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノールなど)、エーテル(例えばポリ(エチレングリコール)450など)、石油炭化水素(例えば鉱油、ワセリンなど)、水、界面活性剤、懸濁化剤、乳化剤、およびその組み合わせも含み得る。
【0170】
薬学的製剤の分野で使用される化合物が一般に種々の機能または目的に役立つことを理解すべきである。したがって、本明細書で名前が挙げられる化合物が1回のみ言及されるかまたは本明細書中の2つ以上の用語を定義するために使用される場合、その目的または機能はその名前が挙げられた目的または機能に単に限定されると解釈されるべきではない。
【0171】
本発明のSAE-CD組成物を含む製剤は、生物学的塩、塩化ナトリウム、塩化カリウム、および他の電解質も含み得る。
【0172】
いくつかの活性薬剤は酸化分解に供されるため、本発明に係る液体製剤は実質的に酸素を含まないことがある。例えば、液体製剤を含有する容器のヘッドスペースは、ヘッドスペースを不活性ガス(例えば窒素、アルゴン、二酸化炭素など)でパージするかまたは液体製剤に不活性ガスを吹き込むことで、酸素を含まないか、実質的に酸素を含まないか、または酸素が減少するようになり得る。長期貯蔵では、酸化分解に供される活性薬剤を含有する液体製剤は、酸素を含まないかまたは酸素が減少した環境中に貯蔵することができる。製剤から酸素を除去することで好気性微生物に対する製剤の保存が向上し、一方、製剤に酸素を添加することで嫌気性微生物に対する保存が向上する。
【0173】
「薬学的に許容される」という語句は、正しい医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を伴わずに、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用する上で好適であり、妥当な損益比に相応している、化合物、原料、組成物、および/または剤形を意味するように本明細書で使用される。
【0174】
本明細書で使用する「患者」または「対象」という用語は、哺乳動物、例えばネコ、イヌ、マウス、モルモット、ウマ、ウシ、雌ウシ、ヒツジ、非ヒト、およびヒトなどの温血動物を意味するように採用される。
【0175】
本発明の製剤は有効量で存在する活性薬剤を含む。「有効量」という用語は、所要または所望の応答を引き出すために十分な活性薬剤の量(amount)または量(quantity)、言い換えれば対象に投与する際に相当の生物学的応答を引き出すために十分な量を意味する。
【0176】
本発明の組成物は、再構成可能な固体、錠剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤、パッチ剤、浸透圧デバイス、スティック剤、坐剤、植込錠、ガム、発泡性組成物、注射用液剤、点眼液剤もしくは点鼻液剤、または吸入可能な散剤もしくは溶液剤などの剤形用の製剤中に存在し得る。
【0177】
本発明はまた、1つまたは複数の活性薬剤と、スルホアルキルエーテルシクロデキストリンおよび100ppm未満のリン酸塩を含むSAE-CD組成物とを含む液体製剤を調製する方法を提供する。第1の方法は、SAE-CD組成物を含む第1の水溶液を形成する工程; 1つまたは複数の活性薬剤を含む第2の溶液または懸濁液を形成する工程; および第1の溶液と第2の溶液とを混合して液体製剤を形成する工程を含む。同様の第2の方法は、第2の溶液の形成を伴わずに、第1の溶液に直接1つまたは複数の活性薬剤を添加する工程を含む。第3の方法は、1つまたは複数の活性薬剤を含有する溶液/懸濁液に直接SAE-CD組成物を添加する工程を含む。第4の方法は、粉末状または粒子状のSAE-CD組成物に1つまたは複数の活性薬剤を含む溶液を添加する工程を含む。第5の方法は、粉末状または粒子状のSAE-CD組成物に直接1つまたは複数の活性薬剤を添加する工程、および得られた混合物を第2の溶液に添加する工程を含む。第6の方法は、上記方法のいずれかによって液体製剤を作り出す工程、および次に凍結乾燥、噴霧乾燥、無菌噴霧乾燥、噴霧凍結乾燥、貧溶媒沈殿、超臨界流体もしくは近超臨界流体を利用するプロセス、または再構成用の粉末を作製するための当業者に公知の別の方法によって固体原料を単離する工程を含む。
【0178】
液体製剤を調製する方法の特定の態様としては以下が挙げられる: 1)本方法が0.1μm以上の孔径を有する濾過媒体を使用して製剤を滅菌濾過する工程をさらに含む態様; 2)液体製剤が放射線照射または高圧蒸気殺菌法によって滅菌される態様; 3)本方法が溶液から固体を単離する工程をさらに含む態様; 4)溶液が窒素もしくはアルゴンまたは他の不活性な薬学的に許容されるガスでパージされ、したがって溶液中に溶解しておりかつ/または溶液と表面接触している酸素のかなりの部分が除去される態様。
【0179】
本発明はまた、1つまたは複数の活性薬剤、SAE-CD組成物、および任意で少なくとも1つの他の薬学的賦形剤を含む、再構成可能な固体薬学的組成物を提供する。この組成物を水性液体で再構成して保存液体製剤を形成する際に、対象にそれを注射投与、点滴投与、局所投与、吸入投与、または経口投与することができる。
【0180】
再構成可能な固体薬学的組成物のいくつかの態様としては以下が挙げられる: 1)薬学的組成物がSAE-CD組成物と1つまたは複数の活性薬剤を含む固体との混合物、および任意で少なくとも1つの固体薬学的賦形剤を含み、活性薬剤の大部分が再構成前にはスルホアルキルエーテルシクロデキストリンと複合体化しない態様; ならびに/あるいは2)本組成物がSAE-CD組成物と1つまたは複数の活性薬剤との固体混合物を含み、1つまたは複数の活性薬剤の大部分が再構成前にスルホアルキルエーテルシクロデキストリンと複合体化する態様。
【0181】
本発明の組成物は、薬学的剤形、薬学的組成物、または他のそのような原料の組み合わせにおいて使用することができる。これらのSAE-CD組成物は、限定されないが、分析用試薬、食料および化粧品の補助剤および/または添加剤、ならびに環境浄化剤としても有用である。
【0182】
上記の説明および以下の実施例を考慮して、当業者は特許請求される本発明を過度の実験なしに実施できるであろう。本発明に係る分子、組成物、および製剤の調製用のある種の手順を詳述する以下の実施例を参照すれば、前述の事項がよりよく理解されるであろう。これらの実施例に対して行われるすべての言及は例証を目的とする。以下の実施例は網羅的であると考えるべきではなく、本発明が想定する多くの態様のうちいくつかのみを単に例証するものである。
【0183】
実施例
実施例1
単峰性の分布プロファイルを有するSBE2.0-β-CD組成物の調製
アルカリ性水性媒体中に存在する非誘導体化β-CD出発原料をSBE前駆体で誘導体化させて2の平均置換度を有するSBE-β-CDを形成する以下の手順によって、SBE2-β-CD組成物を調製した。非誘導体化β-CDを6.5当量の3.6N NaOH水溶液に溶解させ、50℃に加熱し、完全に溶解するまで攪拌した。次に反応温度を70℃〜75℃に増加させた。次に2当量のスルホアルキル化剤(1,4-ブタンスルトン)を20分間かけて添加した。添加したスルホアルキル化剤の全当量はSAE-CD生成物の置換度に比例していた。pHを4時間モニタリングし、pHは12未満には決して低下しなかった。第2の部分の2.7当量の3.5M NaOHを供給し、反応を70℃で少なくともさらに16時間続けた。反応混合物を冷却し、水で希釈した(全反応体積の約2分の1)。溶液を7M HClでpH6.5〜7.5に中和し、0.45μmフィルターを通じて濾過した。溶液を限外濾過によって1000 MWCO膜を使用して精製した。濾液が4-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸および/またはビス(4-スルホブチル)エーテル二ナトリウムが存在しないことまたは実質的に存在しないことを示す限外濾過の終点をキャピラリー電気泳動によって決定し、透過試料にほとんどまたは全くイオンが存在しない限外濾過の終点をモル浸透圧濃度によって決定した。溶液を活性炭(シクロデキストリン1グラム当たり活性炭0.12 g)でさらに処理し、0.22μmフィルターを通じて濾過し、中和した(pH6.5〜7)。得られた溶液を回転式の蒸発によって30mmHg未満の真空下、50℃〜60℃で約50%溶液に濃縮した。溶液を凍結乾燥させてSBE2.0-β-CDを白色固体として得た。
【0184】
実施例2
単峰性の分布プロファイルを有するSBE3.1-β-CD組成物の調製
アルカリ性水性媒体中に存在する非誘導体化β-CD出発原料をSBE前駆体で誘導体化させてSBE-β-CDを形成する以下の手順によって、SBE3.1-β-CD組成物を調製した。非誘導体化β-CDを6.5当量の3.6N NaOH水溶液に溶解させ、50℃に加熱し、完全に溶解するまで攪拌した。次に反応温度を70℃〜75℃に増加させた。3当量の1,4-ブタンスルトンを15分間かけて添加した。添加した当量の量は最終生成物の置換度に比例していた。pHを最初の4時間モニタリングし、pHは12未満には決して低下しなかった。第2の部分の2.7当量の3.5M NaOHを供給し、反応を70℃で少なくともさらに16時間続けた。反応混合物を冷却し、水で希釈した(全反応体積の約2分の1)。溶液を7M HClでpH6.5〜7.5に中和し、0.45μmフィルターを通じて濾過した。溶液を限外濾過によって1000 MWCO膜を使用して精製した。濾液が4-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸および/またはビス(4-スルホブチル)エーテル二ナトリウムが存在しないことまたは実質的に存在しないことを示す限外濾過の終点をキャピラリー電気泳動によって決定し、透過試料にほとんどまたは全くイオンが存在しない限外濾過の終点をモル浸透圧濃度によって決定した。溶液を炭素(シクロデキストリン1グラム当たり炭素0.12グラム)でさらに処理し、0.22μmフィルターを通じて濾過し、中和した(pH6.5〜7)。得られた溶液を回転式の蒸発によって30mmHg未満の真空下、50℃〜60℃で約50%溶液に濃縮した。溶液を凍結乾燥させてSBE3.1-β-CD組成物を白色固体として得た。
【0185】
実施例3
単峰性の分布プロファイルを有するSBE4.1-β-CD組成物の調製
アルカリ性水性媒体中に存在する非誘導体化β-CD出発原料をSBE前駆体で誘導体化させてSBE-β-CDを形成する以下の手順によって、SBE4.1-β-CD組成物を調製した。非誘導体化β-CDを6.5当量の3.6N NaOH水溶液に溶解させ、50℃に加熱し、完全に溶解するまで攪拌した。溶解が完了すると、反応温度を70℃〜75℃に増加させた。4当量の1,4-ブタンスルトンを20分間かけて添加した。添加した当量の量は最終生成物の置換度に比例していた。pHを最初の4時間モニタリングし、pHは12未満には決して低下しなかった。第2の部分の2.7当量の3.5M NaOHを供給し、反応を70℃で少なくともさらに16時間続けた。反応混合物を冷却し、水で希釈した(全反応体積の約2分の1)。溶液を7M HClでpH6.5〜7.5に中和し、0.45μmフィルターを通じて濾過した。溶液を限外濾過によって1000 MWCO膜を使用して精製した。濾液が4-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸および/またはビス(4-スルホブチル)エーテル二ナトリウムが存在しないことまたは実質的に存在しないことを示す限外濾過の終点をキャピラリー電気泳動によって決定し、透過試料にほとんどまたは全くイオンが存在しない限外濾過の終点をモル浸透圧濃度によって決定した。溶液を炭素(シクロデキストリン1グラム当たり炭素0.12グラム)でさらに処理し、0.22μmフィルターを通じて濾過し、中和した(pH6.5〜7.5)。得られた溶液を回転式の蒸発によって30mmHg未満の真空下、50℃〜60℃で約50%溶液に濃縮した。溶液を凍結乾燥させてSBE4.1-β-CDを白色固体として得た。
【0186】
実施例4
単峰性の分布プロファイルを有するSBE4.7-β-CD組成物の調製
アルカリ性水性媒体中に存在する非誘導体化β-CD出発原料をSBE前駆体で誘導体化させてSBE-β-CDを形成する以下の手順によって、SBE4.7-β-CD組成物を調製した。非誘導体化β-CDを11当量の3.8N NaOH水溶液に溶解させ、加熱し、完全に溶解するまで攪拌した。溶解が完了すると、反応温度を70℃〜80℃に増加させた。6当量の1,4-ブタンスルトンを20分間かけて添加した。pHを最初の4時間モニタリングし、pHは13未満には決して低下しなかった。反応を70℃で少なくともさらに16時間続けた。反応混合物を冷却し、水で希釈した(全反応体積の約2分の1)。溶液を8.4M HClでpH6.5〜7.5に中和し、0.45μmフィルターを通じて濾過した。溶液を限外濾過によって1000 MWCO膜を使用して精製した。濾液が4-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸および/またはビス(4-スルホブチル)エーテルビス(4-スルホブチル)エーテルが存在しないことまたは実質的に存在しないことを示す限外濾過の終点をキャピラリー電気泳動によって決定し、透過試料にほとんどまたは全くイオンが存在しない限外濾過の終点をモル浸透圧濃度によって決定した。溶液を0.22μmフィルターを通じて濾過し、中和した(pH6.5〜7.5)。得られた溶液を回転式の蒸発によって30mmHg未満の真空下、50℃〜60℃で約50%溶液に濃縮した。溶液を凍結乾燥させてSBE4.7-β-CD固体の白色固体を得た。
【0187】
実施例5
単峰性の分布プロファイルを有するSBE6.2-β-CD組成物の調製
アルカリ性水性媒体中に存在する非誘導体化β-CD出発原料をSBE前駆体で誘導体化させてSBE-β-CDを形成する以下の手順によって、SBE6.2-β-CD組成物を調製した。非誘導体化β-CDを11当量の3.7N NaOH水溶液に溶解させ、50℃に加熱し、完全に溶解するまで攪拌した。溶解が完了すると、反応温度を70℃〜75℃に増加させた。次に6.8当量の1,4-ブタンスルトンを35分間かけて添加した。pHを最初の4時間モニタリングし、pHは12.9未満には決して低下しなかった。反応を70℃で少なくともさらに16時間続けた。反応混合物を冷却し、水で希釈した(全反応体積の約2分の1)。溶液を7M HClでpH6.5〜7.5に中和し、0.45μmフィルターを通じて濾過した。溶液を限外濾過によって1000 MWCO膜を使用して精製した。濾液が4-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸および/またはビス(4-スルホブチル)エーテル二ナトリウムが存在しないことまたは実質的に存在しないことを示す限外濾過の終点をキャピラリー電気泳動によって決定し、透過試料にほとんどまたは全くイオンが存在しない限外濾過の終点をモル浸透圧濃度によって決定した。溶液を活性炭(シクロデキストリン1グラム当たり活性炭0.12グラム)でさらに処理し、0.22μmフィルターを通じて濾過し、中和した(pH6.5〜7)。得られた溶液を回転式の蒸発によって30mmHg未満の真空下、50℃〜60℃で約50%溶液に濃縮した。溶液を凍結乾燥させてSBE6.2-β-CDを固体白色固体として得た。
【0188】
実施例6
単峰性の分布プロファイルを有するSBE6.8-β-CD組成物の調製
アルカリ性水性媒体中に存在する非誘導体化β-CD出発原料をSBE前駆体で誘導体化させてSBE-β-CDを形成する以下の手順によって、SBE6.8-β-CD組成物を調製した。非誘導体化β-CDを6.5当量の3.7N NaOH水溶液に溶解させ、50℃に加熱し、完全に溶解するまで攪拌した。溶解が完了すると、反応温度を70℃〜75℃に増加させた。次に8.7当量の1,4-ブタンスルトンを40分間かけて添加した。pHを最初の4時間モニタリングし、pHは8.6未満には決して低下しなかった。第2の部分の4.4当量の3.9M NaOHを供給し、反応を70℃で少なくともさらに16時間続けた。反応混合物を冷却し、水で希釈した(全反応体積の約2分の1)。溶液を7M HClで6.5と7.5との間に中和し、0.45μmフィルターを通じて濾過した。溶液を限外濾過によって1000 MWCO膜を使用して精製した。濾液が4-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸および/またはビス(4-スルホブチル)エーテル二ナトリウムが存在しないことまたは実質的に存在しないことを示す限外濾過の終点をキャピラリー電気泳動によって決定し、透過試料にほとんどまたは全くイオンが存在しない限外濾過の終点をモル浸透圧濃度によって決定した。溶液を炭素(シクロデキストリン1グラム当たり炭素0.12グラム)でさらに処理し、0.22μmフィルターを通じて濾過し、中和した(pH6.5〜7)。得られた溶液を回転式の蒸発によって30mmHg未満の真空下、50℃〜60℃で約50%溶液に濃縮した。溶液を凍結乾燥させてSBE6.8-β-CDを白色固体として得た。
【0189】
実施例7
単峰性の分布プロファイルを有するSBE4.2-γ-CD組成物の調製
アルカリ性水性媒体中に存在する非誘導体化γ-CD出発原料をSBE前駆体で誘導体化させてSBE-γ-CDを形成する以下の手順によって、SBE4.2-γ-CD組成物を調製した。非誘導体化γ-CDを6.5当量の3.9N NaOH水溶液に溶解させ、70℃に加熱し、完全に溶解するまで攪拌した。溶解が完了すると、反応温度を70℃〜75℃に増加させた。次に4.2当量の1,4-ブタンスルトンを110分間かけて添加した。pHを最初の4時間モニタリングし、pHは12.6未満には決して低下しなかった。第2の部分の4.2当量の6.3M NaOHを供給し、反応を70℃で少なくともさらに16時間続けた。反応混合物を冷却し、水で希釈した(全反応体積の約3分の1)。溶液を炭素(シクロデキストリン1グラム当たり炭素0.07グラム)でさらに処理し、2.5M HClでpH6〜6.5に中和し、0.45μmフィルターを通じて濾過した。溶液を限外濾過によって650 MWCO膜を使用して精製した。濾液が4-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸および/またはビス(4-スルホブチル)エーテル二ナトリウムが存在しないことまたは実質的に存在しないことを示す限外濾過の終点をキャピラリー電気泳動によって決定し、透過試料にほとんどまたは全くイオンが存在しない限外濾過の終点をモル浸透圧濃度によって決定した。溶液を0.22μmフィルターを通じて濾過し、中和した(pH6〜6.5)。得られた溶液を回転式の蒸発によって30mmHg未満の真空下、50℃〜60℃で約50%溶液に濃縮した。溶液を凍結乾燥させてSBE4.2-γ-CDを白色固体として得た。
【0190】
実施例8
単峰性の分布プロファイルを有するSBE4.8-γ-CD組成物の調製
アルカリ性水性媒体中に存在する非誘導体化γ-CD出発原料をSBE前駆体で誘導体化させてSBE-γ-CDを形成する以下の手順によって、SBE4.8-γ-CD組成物を調製した。非誘導体化γ-CDを6.5当量の4N NaOH水溶液に溶解させ、70℃に加熱し、完全に溶解するまで攪拌した。溶解が完了すると、反応温度を70℃〜75℃に増加させた。次に4.5当量の1,4-ブタンスルトンを103分間かけて添加した。pHを最初の4時間モニタリングし、pHは12.4未満には決して低下しなかった。第2の部分の4.3当量の6.3M NaOHを供給し、反応を70℃で少なくともさらに16時間続けた。反応混合物を冷却し、水で希釈した(全反応体積の約3分の1)。溶液を炭素(シクロデキストリン1グラム当たり炭素0.11グラム)でさらに処理し、2.5M HClでpH6〜6.5で中和し、0.45μmフィルターを通じて濾過した。溶液を限外濾過によって650 MWCO膜を使用して精製した。濾液が4-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸および/またはビス(4-スルホブチル)エーテル二ナトリウムが存在しないことまたは実質的に存在しないことを示す限外濾過の終点をキャピラリー電気泳動によって決定し、透過試料にほとんどまたは全くイオンが存在しない限外濾過の終点をモル浸透圧濃度によって決定した。溶液を0.22μmフィルターを通じて濾過し、中和した(pH6〜6.5)。得られた溶液を回転式の蒸発によって30mmHg未満の真空下、50℃〜60℃で約50%溶液に濃縮した。溶液を凍結乾燥させてSBE4.8-γ-CDを白色固体として得た。
【0191】
実施例9
単峰性の分布プロファイルを有するSBE5.8-γ-CD組成物の調製
アルカリ性水性媒体中に存在する非誘導体化γ-CD出発原料をSBE前駆体で誘導体化させてSBE-γ-CDを形成する以下の手順によって、SBE5.8-γ-CD組成物を調製した。γ-CDを6.5当量の4N NaOH水溶液に溶解させ、70℃に加熱し、完全に溶解するまで攪拌した。溶解が完了すると、反応温度を70℃〜75℃に増加させた。次に5.8当量の1,4-ブタンスルトンを77分間かけて添加した。pHを最初の4時間モニタリングし、pHは11.5未満には決して低下しなかった。第2の部分の4当量の6.3M NaOHを供給し、反応を70℃で少なくともさらに16時間続けた。反応混合物を冷却し、水で希釈した(全反応体積の約3分の1)。溶液を2.5M HClでpH7〜7.25に中和し、活性炭(シクロデキストリン1グラム当たり活性炭0.08グラム)で処理し、0.45μmフィルターを通じて濾過した。溶液を限外濾過によって500 MWCO膜を使用して精製した。濾液が4-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸および/またはビス(4-スルホブチル)エーテル二ナトリウムが存在しないことまたは実質的に存在しないことを示す限外濾過の終点をキャピラリー電気泳動によって決定し、透過試料にほとんどまたは全くイオンが存在しない限外濾過の終点をモル浸透圧濃度によって決定した。溶液を0.22μmフィルターを通じて濾過した。得られた溶液を回転式の蒸発によって30mmHg未満の真空下、50℃〜60℃で約50%溶液に濃縮した。溶液を凍結乾燥させてSBE5.8-γ-CDを白色固体として得た。
【0192】
実施例10
単峰性の分布プロファイルを有するSBE6.1-γ-CD組成物の調製
アルカリ性水性媒体中に存在する非誘導体化γ-CD出発原料をSBE前駆体で誘導体化させてSBE-γ-CDを形成する以下の手順によって、SBE6.1-γ-CDを調製した。γ-CDを6.2当量の4N NaOH水溶液に周囲温度で溶解させ、完全に溶解するまで攪拌した。次に6.5当量の1,4-ブタンスルトンを添加した。pHを最初の4時間モニタリングし、pHは11未満には決して低下しなかった。第2の部分の3.8当量の6.3M NaOHを供給し、反応を70℃で少なくともさらに16時間続けた。溶液を4.9M HClでpH6〜6.5に中和し、活性炭(シクロデキストリン1グラム当たり活性炭0.08グラム)で処理し、0.45μmフィルターを通じて濾過した。溶液を限外濾過によって500 MWCO膜を使用して精製した。濾液が4-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸および/またはビス(4-スルホブチル)エーテル二ナトリウムが存在しないことまたは実質的に存在しないことを示す限外濾過の終点をキャピラリー電気泳動によって決定し、透過試料にほとんどまたは全くイオンが存在しない限外濾過の終点をモル浸透圧濃度によって決定した。溶液を中和し(pH6〜6.5)、0.22μmフィルターを通じて濾過した。得られた溶液を回転式の蒸発によって30mmHg未満の真空下、50℃〜60℃で約50%溶液に濃縮した。溶液を凍結乾燥させてSBE6.1-γ-CDを白色固体として得た。
【0193】
実施例11
二峰性の分布プロファイルおよび4.6のAP-ADSを有するSBE-β-CDの調製
β-シクロデキストリンを6.5当量の3.6N NaOHに溶解させる以下の手順を使用して、例示的な二峰性のSBE-β-CD(AP-ADS 4.6)を作製した。この溶液を6.5当量の1,4-ブタンスルトンと4.4当量の4.2N NaOHとの攪拌混合物に70℃〜75℃で30分間かけて添加した。反応を70℃で少なくともさらに16時間続けた。反応混合物を冷却し、水で希釈した(全反応体積の約2分の1)。溶液を7.3M HClでpH6.5〜7.5に中和し、0.45μmフィルターを通じて濾過した。溶液を限外濾過によって1000 MWCO膜を使用して精製した。濾液が4-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸および/またはビス(4-スルホブチル)エーテル二ナトリウムが存在しないことまたは実質的に存在しないことを示す限外濾過の終点をキャピラリー電気泳動によって決定し、透過試料にほとんどまたは全くイオンが存在しない限外濾過の終点をモル浸透圧濃度によって決定した。溶液を炭素(シクロデキストリン1グラム当たり炭素0.12グラム)でさらに処理し、0.22μmフィルターを通じて濾過し、中和した(pH6〜7)。得られた溶液を回転式の蒸発によって30mmHg未満の真空下、50℃〜60℃で約50%溶液に濃縮した。溶液を凍結乾燥させてAP-ADS 4.62の二峰性のSBE-β-CD白色固体を得た。
【0194】
実施例12
二峰性の分布プロファイルおよび6.6のAP-ADSを有するSBE-β-CDの調製
β-シクロデキストリンを12.6当量の3.7N NaOHに溶解させる以下の手順を使用して、例示的な二峰性のSBE-β-CD(AP-ADS 6.6)を作製した。この溶液を6.5当量の攪拌1,4-ブタンスルトンに70℃〜75℃で30分間かけて添加した。反応を70℃で少なくともさらに16時間続けた。反応混合物を冷却し、水で希釈した(全反応体積の約2分の1)。溶液を7.3M HClでpH6.5〜7.5に中和し、0.45μmフィルターを通じて濾過した。溶液を限外濾過によって1000 MWCO膜を使用して精製した。濾液が4-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸および/またはビス(4-スルホブチル)エーテル二ナトリウムが存在しないことまたは実質的に存在しないことを示す限外濾過の終点をキャピラリー電気泳動によって決定し、透過試料にほとんどまたは全くイオンが存在しない限外濾過の終点をモル浸透圧濃度によって決定した。溶液を炭素(シクロデキストリン1グラム当たり炭素0.12グラム)でさらに処理し、0.22μmフィルターを通じて濾過し、中和した(pH6〜7)。得られた溶液を回転式の蒸発によって30mmHg未満の真空下、50℃〜60℃で約50%溶液に濃縮した。溶液を凍結乾燥させてAP-ADS 6.6の二峰性のSBE-β-CD白色固体を得た。
【0195】
実施例13
二峰性の分布プロファイルおよび6.9のAP-ADSを有するSBE-β-CDの調製
β-シクロデキストリンを10.9当量の3.8N NaOHに溶解させる以下の手順を使用して、例示的な二峰性のSBE-β-CD(AP-ADS 6.9)を作製した。この溶液を6.5当量の攪拌1,4-ブタンスルトンに70℃〜75℃で65分間かけて添加した。反応を70℃で少なくともさらに16時間続けた。反応混合物を冷却し、炭素(シクロデキストリン1グラム当たり炭素0.12グラム)で処理した。溶液を濾過し、水で希釈した(全反応体積の約20分の1)。溶液を8.25M HClでpH6〜7にさらに中和し、0.45μmフィルターを通じて濾過した。溶液を限外濾過によって650 MWCO膜を使用して精製した。濾液が4-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸および/またはビス(4-スルホブチル)エーテル二ナトリウムが存在しないことまたは実質的に存在しないことを示す限外濾過の終点をキャピラリー電気泳動によって決定し、透過試料にほとんどまたは全くイオンが存在しない限外濾過の終点をモル浸透圧濃度によって決定した。得られた溶液を回転式の蒸発によって30mmHg未満の真空下、50℃〜60℃で約50%溶液に濃縮した。溶液を凍結乾燥させてAP-ADS 6.9の二峰性のSBE-β-CD白色固体を得た。
【0196】
実施例14
二峰性の分布プロファイルおよび3.8のAP-ADSを有するSBE-γ-CDの調製
γ-シクロデキストリンを12.5当量の3.7N NaOHに溶解させる以下の手順を使用して、例示的な二峰性のSBE-γ-CD(AP-ADS 3.8)を作製した。この溶液を4.25当量の攪拌1,4-ブタンスルトンに65℃〜72℃で30分間かけて添加した。反応を70℃で少なくともさらに16時間続けた。反応混合物を冷却し、8.9M HClでpH6.5〜7.5に中和した。溶液を水で希釈した(全反応体積の約2分の1)。得られた溶液を0.45μmフィルターを通じて濾過した。溶液を限外濾過によって1000 MWCO膜を使用して精製した。濾液が4-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸および/またはビス(4-スルホブチル)エーテル二ナトリウムが存在しないことまたは実質的に存在しないことを示す限外濾過の終点をキャピラリー電気泳動によって決定し、透過試料にほとんどまたは全くイオンが存在しない限外濾過の終点をモル浸透圧濃度によって決定した。溶液を炭素(シクロデキストリン1グラム当たり炭素0.12グラム)でさらに処理し、0.22μmフィルターを通じて濾過し、中和した(pH6〜7)。得られた溶液を回転式の蒸発によって30mmHg未満の真空下、50℃〜60℃で約50%溶液に濃縮した。溶液を凍結乾燥させてAP-ADS 3.8の二峰性のSBE-γ-CD白色固体を得た。
【0197】
実施例15
二峰性の分布プロファイルおよび6.5のAP-ADSを有するSBE-γ-CDの調製
γ-シクロデキストリンを12.5当量の3.7N NaOHに溶解させる以下の手順を使用して、例示的な二峰性のSBE-γ-CD(AP-ADS 6.5)を作製した。この溶液を6.5当量の攪拌1,4-ブタンスルトンに67℃〜74℃で35分間かけて添加した。反応を70℃で少なくともさらに16時間続けた。反応混合物を冷却し、8.5M HClでpH6.5〜7.5に中和した。溶液を水で希釈した(全反応体積の約2分の1)。得られた溶液を0.45μmフィルターを通じて濾過した。溶液を限外濾過によって1000 MWCO膜を使用して精製した。濾液が4-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸および/またはビス(4-スルホブチル)エーテル二ナトリウムが存在しないことまたは実質的に存在しないことを示す限外濾過の終点をキャピラリー電気泳動によって決定し、透過試料にほとんどまたは全くイオンが存在しない限外濾過の終点をモル浸透圧濃度によって決定した。溶液を炭素(シクロデキストリン1グラム当たり炭素0.12グラム)でさらに処理し、0.22μmフィルターを通じて濾過し、中和した(pH6〜7)。得られた溶液を回転式の蒸発によって30mmHg未満の真空下、50℃〜60℃で約50%溶液に濃縮した。溶液を凍結乾燥させてAP-ADS 6.5の二峰性のSBE-γ-CD白色固体を得た。
【0198】
実施例16
二峰性の分布プロファイルおよび6.9のAP-ADSを有するSBE-γ-CDの調製
γ-シクロデキストリンを12.5当量の3.7N NaOHに溶解させる以下の手順を使用して、例示的な二峰性のSBE-γ-CD(AP-ADS 6.9)を作製した。この溶液を10当量の攪拌1,4-ブタンスルトンに66℃〜73℃で38分間かけて添加した。反応を70℃で少なくともさらに16時間続けた。反応混合物を冷却し、8.5M HClでpH6.5〜7.5に中和した。溶液を水で希釈した(全反応体積の約2分の1)。得られた溶液を0.45μmフィルターを通じて濾過した。溶液を限外濾過によって1000 MWCO膜を使用して精製した。濾液が4-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸および/またはビス(4-スルホブチル)エーテル二ナトリウムが存在しないことまたは実質的に存在しないことを示す限外濾過の終点をキャピラリー電気泳動によって決定し、透過試料にほとんどまたは全くイオンが存在しない限外濾過の終点をモル浸透圧濃度によって決定した。溶液を炭素(シクロデキストリン1グラム当たり炭素0.12グラム)でさらに処理し、0.22μmフィルターを通じて濾過し、中和した(pH6〜7)。得られた溶液を回転式の蒸発によって30mmHg未満の真空下、50℃〜60℃で約50%溶液に濃縮した。溶液を凍結乾燥させてAP-ADS 6.9の二峰性のSBE-γ-CD白色固体を得た。
【0199】
実施例17
活性薬剤の溶解度の決定
薬学的活性薬剤に対する各種のスルホアルキルエーテルシクロデキストリン組成物の可溶化効果の比較による評価を以下のように決定した。選択した各シクロデキストリンの0.04M原液を精製水によって調製した。溶液の透明性を目視または機器によって決定した。透明溶液は、肉眼での目視において少なくとも透明である。二つ組で試験する薬学的に活性な各薬剤を2mLまたは4mLのSAE-CD水溶液と組み合わせた。
【0200】
薬学的に活性な薬剤を、その予測される溶解度を超える量で秤量し、TEFLON(登録商標)で裏打ちしたねじ蓋付きバイアル内に置いた。活性薬剤は少なくとも3mg/mLの量で存在した。次に各バイアルを適量のシクロデキストリン溶液(2mLまたは4mLのいずれか)で満たした。バイアルをボルテックスし、超音波処理することで固体の流体による湿潤を促進した。次にバイアルを平衡化用のラブクエーク(lab quake)またはローラーミキサー上に置いた。バイアルを周期的に目視で点検することで、固体が十分に湿潤しかつ流体と接触していることを確実にした。次にバイアル内の流体を周期的に試料採取して、溶液中に存在する薬学的に活性な薬剤の濃度を決定した。典型的には試料を24時間間隔で測定した。
【0201】
活性薬剤の溶解度を決定するためのバイアルの試料採取を、バイアルから1mLの溶液をデカントし、任意で遠心分離することで行った。次に取り出した上清を0.22μmシリンジフィルターを使用して濾過し、移動相で標準曲線内の適切な濃度に希釈した。次に試料をHPLCで分析して、可溶化した薬物誘導体の濃度を決定した。
【0202】
実施例18
含水量の決定
以下の手順を使用してシクロデキストリン誘導体の含水量を評価した。各250mgについて二つ組でBrinkmanカールフィッシャー電量計(Brinkman Instruments Co.,IL)を使用して決定を行った。既知重量の固体シクロデキストリンをカールフィッシャー電量計に添加し、試料中の水の全量を測定する。次に、存在する水の全量を固体の割合に変換して試料の含水量パーセントを得る。
【0203】
実施例19
キャピラリー電気泳動による分析
以下の手順を使用してキャピラリー電気泳動によってSAE-CD誘導体組成物を分析した。紫外吸光度検出器を組み合わせたBeckman P/ACE 2210キャピラリー電気泳動システム(Beckman instruments, Inc., Fullereton, CA)を使用して、SBE-β-CDおよびSBE-γ-CD誘導体の溶液を分析した。石英ガラス毛細管(内径50μm、全長57cm、および有効長50cmを有する)を使用して、30mM安息香酸および100mM TRIS(トリス-ヒドロキシメチル-アミノメタノール)のpH調整ランニングバッファーによって、25℃で分離を行った。
【0204】
各注入前に以下の洗浄順序で毛細管を処理した: 水、0.01N NaOH、およびランニングバッファー。検出器を214nmに設定した。電圧を30kVとした。試料を20秒、0.5psiでの圧力注入によって導入した。
【0205】
実施例20
単峰性の分布プロファイルを有するα-CD誘導体組成物は、β-CDまたはγ-CDの代わりにα-CDを使用することを除き、実施例1〜10のいずれかまたは本明細書で引用される文献の方法のいずれかに従って調製することができる。アルカリ性水性媒体中のα-シクロデキストリンSBE前駆体で誘導体化させてSBE-α-CDを形成する以下の手順を使用して例示的なSBE-α-CDを作製する。α-CDをNaOH水溶液に溶解させ、70℃に加熱し、完全に溶解するまで攪拌する。溶解が完了すると、反応温度を70℃〜75℃に増加させる。次に1,4-ブタンスルトンを少なくとも30分間かけて添加した。pHを最初の4時間モニタリングし、反応を70℃で少なくともさらに16時間続ける。反応混合物を冷却し、水で希釈する(全反応体積の約3分の1)。溶液を炭素(シクロデキストリン1グラム当たり炭素0.07グラム)でさらに処理し、HClでpH6〜6.5で中和し、0.45μmフィルターを通じて濾過する。溶液を限外濾過によって650 MWCO膜を使用して精製する。濾液が4-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸および/またはビス(4-スルホブチル)エーテル二ナトリウムが存在しないことまたは実質的に存在しないことを示す限外濾過の終点をキャピラリー電気泳動によって決定し、透過試料にほとんどまたは全くイオンが存在しない限外濾過の終点をモル浸透圧濃度によって決定する。溶液を0.22μmフィルターを通じて濾過し、中和する(pH6〜6.5)。得られた溶液を回転蒸発によって30mmHg未満真空下50℃〜60℃で約50%溶液に濃縮する。溶液を凍結乾燥させてSBE-α-CD白色固体を得る。
【0206】
実施例21
二峰性の分布プロファイルを有する組み合わせ組成物の調製
単峰性または二峰性の分布プロファイルを有するシクロデキストリン誘導体組成物の先に調製したバッチを水性アルカリ性液体媒体中に置く。容器中のアルカリ性でもよい液体媒体中に置換基前駆体を置く。それぞれ二峰性または三峰性の分布プロファイルを有する組み合わせ組成物を含む反応環境を形成するために十分な期間、十分な温度、および十分なpHで、滴下により、少しずつ、半連続的に、または連続的に、シクロデキストリン誘導体組成物を含有するアルカリ性媒体を、置換基前駆体を含有する媒体に添加する。例えば、誘導体化組成物の溶解したバッチを置換基前駆体に少なくとも30分間かけて添加する。pHを最初の4時間モニタリングし、反応を70℃で少なくともさらに16時間続ける。反応混合物を冷却し、水で希釈する(全反応体積の約3分の1)。組み合わせ組成物を任意でさらに精製して望まれない成分を除去しかつ/または望まれる成分を添加する。例えば、溶液を炭素(シクロデキストリン1グラム当たり炭素0.07グラム)でさらに処理し、HClでpH6.5〜7.5で中和し、0.45μmフィルターを通じて濾過する。溶液を限外濾過によって650 MWCO膜を使用して精製する。濾液が4-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸および/またはビス(4-スルホブチル)エーテル二ナトリウムが存在しないことまたは実質的に存在しないことを示す限外濾過の終点をキャピラリー電気泳動によって決定し、透過試料にほとんどまたは全くイオンが存在しない限外濾過の終点をモル浸透圧濃度によって決定する。溶液を0.22μmフィルターを通じて濾過し、中和する(pH6〜6.5)。得られた溶液を回転蒸発によって30mmHg未満真空下50℃〜60℃で約50%溶液に濃縮する。溶液を凍結乾燥させてSBE-α-CD白色固体を得る。
【0207】
実施例22
SBE6.6-β-CDの合成
アルカリ性水性媒体中に存在するβ-シクロデキストリンをSBE前駆体で誘導体化させてSBE6.6-β-CDを形成する以下の手順に従ってSBE6.6-β-CD組成物を合成した。61.8kgの水酸化ナトリウムを433kgの水に供給して12.5%w/w溶液にすることで水酸化ナトリウム水溶液を調製した。反応器の内容物を40℃〜50℃に加熱した後、30〜60分間にわたる270kgのβ-CDの添加を開始した。反応温度を65℃〜95℃に調整した後、30〜60分間にかけて259kgの1,4-ブタンスルトンを添加した。次の6時間にわたって、溶液のpHを水酸化ナトリウム水溶液を使用して9を超えて維持した。反応後、20%溶液としてのさらなる13.5kgの水酸化ナトリウムを反応液に供給した。1,4-ブタンスルトンの残留レベルが十分に低くなるまで内容物を70℃〜80℃に維持した。内容物を30℃未満に冷却し、反応溶液を塩酸水溶液によってpH6.5〜7.5に調整した。このプロセスによって350〜450kgのSAE-CDを得た。
【0208】
実施例23
SBE6.6-β-CDのダイアフィルトレーションおよび限外濾過
実施例22のSBE6.6-β-CDを以下の手順で精製した。反応溶液を800kgの水で希釈した。溶液を移し、500kgの水でさらに希釈した。少なくとも750ft2の膜面積を有する1000 MWCO渦巻き状再生セルロース膜を用い、かつ循環液(returnate)の試料が25ppm以下の塩化ナトリウムを有するまで一定の溶液体積(±1%)を維持する、Millipore Helicon自動限外濾過システムを使用してダイアフィルトレーションを開始した。適切な溶液質量が達成されるまで溶液を限外濾過によって濃縮した。
【0209】
実施例24
本発明のSBE6.6-β-CD炭素加工
実施例23のダイアフィルトレーションおよび限外濾過の後、SBE6.6-β-CDを以下の手順で炭素精製した。カラムに32kg(出発量のβ-シクロデキストリンの約11〜12重量%(11.8〜12重量%))のSHIRASAGI(登録商標)DC32顆粒状活性炭を供給し、洗浄試料が一定の伝導率を有するまでカラムを徹底的に水洗した。SBE6.6-β-CD対活性炭の比を約8.4:1〜8.5:1(約8.44:1)とした。洗浄した時点で、この炭素を通じて反応溶液を少なくとも2時間通過(再循環)させて第1の処理サイクルを完了した。
【0210】
第2のカラムに32kg(出発量のβ-シクロデキストリンの約11〜12重量%)のSHIRASAGI(登録商標)DC32顆粒状活性炭を供給し、洗浄試料が一定の伝導率を有するまでカラムを徹底的に水洗した。洗浄した時点で、この炭素を通じて反応溶液を少なくとも2時間通過させて第2の処理サイクルを完了した。
【0211】
実施例25
SBE6.6-β-CDの濃縮および単離
実施例24で調製した炭素処理SBE6.6-β-CD溶液を以下の手順を使用して濃縮および単離した: SBE6.6-β-CD溶液を0.65μmおよび0.22μmのフィルターを通じて濾過した後、50%w/wのSBE6.6-β-CD濃度を有する溶液が得られるまで、70rpm〜100rpmで攪拌しながら-0.6bar〜-0.7barの減圧下、65℃〜72℃の温度で濃縮した。濃縮溶液を60℃未満に冷却し、次に0.65μmおよび0.22μmのフィルターを通じて濾過した。次に濾過溶液を、流動化噴霧乾燥(「FSD」)システムを使用して、170℃の入口温度、20barの初期圧力、ならびに125℃、105℃、および100℃の設定温度をそれぞれ有するチャンバ1〜3によって噴霧乾燥させた。
【0212】
実施例26
D2O溶液中、Bruker AVANCE(登録商標)400または500機器上での1H-NMR、13C-NMR、COSY-NMR、およびHMQCによるシクロデキストリン置換パターンの決定
置換パターンの決定は、その関連する開示が参照により本明細書に組み入れられるWO2005/042584号の実施例6の方法に従って実行する。
【0213】
実施例27
SBE6.6-β-CDの比較炭素処理
例示的なSBE6.6-β-CDを以下の手順で炭素精製した: カラムに32kg(出発量の実施例22のβ-シクロデキストリンの約11〜12重量%(11.8〜12重量%))のSHIRASAGI(登録商標)DC32顆粒状活性炭を供給し、洗浄試料が一定の伝導率を有するまでカラムを徹底的に水洗した。洗浄した時点で、この炭素を通じて反応溶液を少なくとも2時間通過させた。
【0214】
実施例28
SBE6.6-β-CDの不純物分析I
実施例27および24に従って活性炭でそれぞれ1回または2回のいずれかで処理したSBE6.6-β-CD試料を、実施例25に記載のプロセスで濃縮および単離した。次に、紫外/可視分光光度法によって分析した。この分析は、適量のSBE6.6-β-CDを水に溶解させて(例えば0.1g〜6gのSBE6.6-β-CD、含水量について補正、10mLの水に溶解)1%〜60%w/wの誘導体化シクロデキストリンを含有する溶液を与えることによって行った。
【0215】
炭素処理シクロデキストリン溶液を、240nm/分の速度および1.0nmのスリット幅で190nmから400nmまで走査するPerkin Elmer Lambda 35紫外/可視分光光度計で分析した。分析前に試料を水に対してブランク化した。1回および2回の炭素処理後の各種濃度のSBE6.6-β-CD溶液の紫外/可視吸収スペクトルをそれぞれ図1および図2にグラフで示し、これらの図は紫外法で分析した1回または2回の炭素処理後のSBE6.6-β-CDのロットのグラフ表示を与える。図1を参照すると、データは、SBE6.6-β-CD溶液を活性炭で1回のみ処理する場合、スペクトルの紫外/可視領域内に吸収を有する高濃度の不純物が存在することを示している。図2を参照すると、データは、第2の炭素処理によって紫外/可視吸収性不純物のレベルが少なくとも5倍以上減少することを示している。
【0216】
実施例29
SBE6.6-β-CDの不純物分析II
比色計分析法
SBE6.6-β-CD試料をHunter Labs比色計によって以下の手順を使用して分析した: 15グラムのSBE6.6-β-CD(含水量について補正)を30mLの水に溶解させることで50%w/w溶液を調製した。調製した溶液を、Hunter Lab ULTRASCAN(登録商標)比色計でHunter Labs汎用ソフトウェアバージョン4.10を使用して分析した。この機器を米国薬局方(USP)に適合する色溶液である硫酸第二銅CS、塩化第二鉄CS、および塩化コバルトCSに対して標準化した。試料を1cm Hunterキュベットに添加した。DE値が大きいほど、溶液の色がよく目に見える。したがって、SBE6.6-β-CDロット番号17CX01.HQ00025は目に見える色を最も多く含んでおり、一方、SBE6.6-β-CDロット番号17CX01.HQ00029は目に見える色を最も少なく含んでいた。SBE6.6-β-CDロット番号17CX01.HQ00041はロット番号17CX01.HQ00029よりもわずかに多かったが、スペクトルの紫外領域内に吸収を有する不純物を約5倍少ない量で含有していた。以下の表は、Hunter比色計によって分析した1回または2回の炭素処理したSAE-CDロットの分析から得られるデータを含む。

L=明度; 100が完全に白色、0が黒色;
a=正の場合は赤色度、0の場合は灰色、負の場合は緑色度を測定;
b=正の場合は黄色度、0の場合は灰色、負の場合は青色度を測定;
DE=標準からの差の合計√(ΔL2+Δa2+Δb2)
【0217】
実施例30
SBE6.6-β-CDの不純物分析III
例示的なSBE6.6-β-CD試料を紫外/可視分光光度法によって以下の手順を使用して分析した: 含水量について補正した54.1グラムのSBE6.6-β-CDを、100mLの水中12.5グラムの水酸化ナトリウムの苛性溶液に溶解させることで50%w/w SBE6.6-β-CD溶液を調製した。この初期溶液を、240nm/分の速度および1.0nmのスリット幅で190nmから400nmまで走査するPERKIN ELMER Lambda 35紫外/可視分光光度計で分析した。分析前に試料を水に対してブランク化した。溶液を60℃オーブン中に最大168時間置いた。溶液試料を24時間、72時間、96時間、および168時間の時点で分析した。
【0218】
図3は、SBE6.6-β-CD組成物に対する熱応力および苛性応力の結果のグラフ表示を与える。図3を参照すると、データは、24時間以内に245nm〜270nmの波長で著しい吸収が形成されたこと、ならびにこの吸収が熱応力および苛性応力の持続時間に応じて増加することを示す。168時間(7日)までに、245nm〜270nmの波長での吸収最大は、約230nmで最大を有する吸収と同じ大きさに増加した。320nm〜350nmの波長での吸収も曝露時間に従って増加することにも留意すべきである。データは、245nm〜270nmの波長で吸収を有する薬物分解性不純物および320nm〜350nmの波長で吸収を有する色形成剤の濃度が熱条件および/または苛性条件に対する曝露時間に応じて増加することを示す。
【0219】
実施例31
SBE6.6-β-CD製剤の安定性
活性炭による単一処理または二度の処理(それぞれ実施例27および24に従って)を経たSBE6.6-β-CDの各種ロットの安定性の比較評価において、グルココルチコステロイド(ブデソニド)および賦形剤(水)によって調剤し、HPLCによって検討した。一般的手順を以下に示す。
【0220】
SBE6.6-β-CD溶液(7.5%w/w、SBE6.6-β-CDロット番号17CX01.HQ00025、17CX01.HQ00029、および17CX01.HQ00041によって調剤)を、7.5グラムのSBE6.6-β-CD(含水量について補正)を100mLの水に溶解させることで調製した。グルココルチコステロイドを、予想される溶解度を超える量で、TEFLON(登録商標)で裏打ちしたねじ蓋付き容器に直接秤量した。約275μg/mLのグルココルチコイドステロイドをアンバーガラス容器中で2時間激しく攪拌した。攪拌時間の終わりに、グルココルチコステロイド溶液を0.22μmシリンジフィルターを使用して濾過した。
【0221】
高圧蒸気殺菌の前に対照溶液試料を取り出した。溶液のアリコートを4回の20分サイクルにおいて121℃で高圧蒸気殺菌した。次に試料をHPLCで分析して、アッセイ内容および加熱サイクル中に形成された不純物のレベルを決定した。SBE6.6-β-CDの溶液試料を調製し、240nm/分の速度および1.0nmのスリット幅で190nmから400nmまで走査するPERKIN ELMER Lambda 35紫外/可視分光光度計で分析して紫外線含有量を決定した。
【0222】
グルココルチコイドステロイドHPLC条件:

【0223】
SBE6.6-β-CD溶液の紫外線分析

【0224】
熱応力を加えたSBE6.6-β-CD/グルココルチコステロイドのアッセイおよび不純物分析

1 - 不純物BをグルココルチコステロイドのS-11-ケト誘導体と同定した。
2 - 「R-GS」はグルココルチコステロイドのR-鏡像異性体を意味する。
3 - 「S-GS」はグルココルチコステロイドのS-鏡像異性体を意味する。
* - ロット番号17CX01.HQ00025および17CX01.HQ00041は活性炭での単一処理を経た(実施例27を参照)一方、ロット番号17CX01.HQ00029は二度の活性炭処理を経た(実施例24を参照)。
a - 最初に測定(t=0)。
b - 121℃で80分間処理。
【0225】
研究結果は、少量の紫外活性薬物分解性不純物を含有するSBE6.6-β-CD組成物が、より安定なAPI製剤およびより少ないAPI分解を与えることを示す。より濃いSBE6.6-β-CD溶液の色の付加はより高いレベルのグルココルチコステロイド不純物を決定づけるものではない。さらに、グルココルチコステロイドの安定性を基準とすれば、SBE6.6-β-CDロット番号17CX01.HQ00041はSBE6.6-β-CDロット番号17CX01.HQ00025よりもグルココルチコステロイドの異性体の安定化において著しく優れていた。
【0226】
実施例32
トリアゾール抗真菌APIを伴うSBE6.6-β-CD製剤の安定性
活性炭による単一処理または二度の処理(それぞれ実施例27および24に従って)を経たSBE6.6-β-CD組成物を、トリアゾール抗真菌API(ポサコナゾール、Schering-Ploughから水性経口懸濁液として購入、ノキサフィル(NOXAFIL)(登録商標))と共に調剤し、API製剤の安定性をHunter比色計およびHPLCによる分析で決定した。調剤手順を以下に示す。
【0227】
トリアゾール抗真菌API(5mg/mL)およびSBE6.6-β-CD組成物(100mM、pH3)の水溶液試料を、SBE6.6-β-CDロット番号17CX01.HQ00044、17CX01.HQ00037、17CX01.HQ00035、17CX01.HQ00033、および17CX01.HQ00029を使用して調製した。すべての溶液試料を0.22μm PVDFフィルターを通じて濾過し、バイアルに分けた。初期溶液の一部の紫外/可視吸収を、240nm/分の速度および1.0nmのスリット幅で190nmから400nmまで走査するPERKIN ELMER Lambda 35紫外/可視分光光度計で1cm Hunter キュベットを使用して測定し、Hunter Labs ULTRASCAN(登録商標)比色計でHunter Labs汎用ソフトウェアバージョン4.10を使用して分析した。測定前に試料を水に対してブランク化した。次に試料の残り部分を60℃オーブン内に7日間置き、同一手順を使用して色の変化について再分析した。データを以下の表に示す。
【0228】
SBE6.6-β-CD初期溶液: 紫外/可視分析

【0229】
SBE6.6-β-CD溶液の色分析

L=明度; 100が完全に白色、0が黒色;
a=正の場合は赤色度、0の場合は灰色、負の場合は緑色度を測定;
b=正の場合は黄色度、0の場合は灰色、負の場合は青色度を測定;
DE=標準からの差の合計√(ΔL2+Δa2+Δb2)
【0230】
トリアゾールAPI/SBE6.6-β-CD溶液の色分析

L=明度; 100が完全に白色、0が黒色;
a=正の場合は赤色度、0の場合は灰色、負の場合は緑色度を測定;
b=正の場合は黄色度、0の場合は灰色、負の場合は青色度を測定;
DE=標準からの差の合計√(ΔL2+Δa2+Δb2)
【0231】
トリアゾールAPI/SBE6.6-β-CD - トリアゾールAPIアッセイ分析

【0232】
紫外線分析は、シクロデキストリン組成物を活性炭で2回処理する場合、初期SBE6.6-β-CD組成物中に存在する紫外活性不純物がはるかに少なくなることを実証した。SBE6.6-β-CD組成物単独およびトリアゾールAPI/SBE6.6-β-CD製剤試料のHunter色分析は、二度の活性炭処理を使用して加工したSBE6.6-β-CDロットのDE値がより小さいことを示した。7日間、60℃の応力試験の前後でトリアゾールAPIアッセイの内容にほとんど違いはない。したがって、活性炭で2回処理したSBE6.6-β-CD組成物では、不純物レベルがより低いことによって、トリアゾールAPI分解のレベルが減少し、また色形成剤の形成も減少する。
【0233】
実施例33
熱処理、次に炭素処理に供されるSBE6.6-β-CD DS
本発明の誘導体化シクロデキストリン組成物を加熱する効果を以下のように研究した。実施例22に従って調製したSBE6.6-β-CD組成物を水溶液に溶解させ、紫外/可視分光光度法を使用して分析した。具体的には、70グラムのSBE6.6-β-CDロット番号17CX01.HQ00044(含水量について補正)を230mLの水に溶解させることで30%w/w β-シクロデキストリン溶液を調製した。この初期溶液を、240nm/分の速度および1.0nmのスリット幅で190nmから400nmまで走査するPERKIN ELMER Lambda 35紫外/可視分光光度計で分析した。分析前に試料を水に対してブランク化した。溶液を攪拌しながら70℃に48時間加熱した。溶液を周囲温度に冷却し、分けた。分けた溶液の各々に、予め洗浄したSHIRASAGI(登録商標)DC32顆粒状活性炭を添加した。SBE6.6-β-CD溶液を3時間攪拌した後、活性炭を0.22μm PVDFフィルターを使用して濾過した。溶液を、240nm/分の速度および1.0nmのスリット幅で190nmから400nmまで走査するPERKIN ELMER Lambda 35紫外/可視分光光度計を使用して分析した。分析前に試料を水に対してブランク化した。
【0234】
データを図4にグラフで示す。図4を参照すると、溶液の紫外/可視吸収が、熱処理前

、熱処理の48時間後すぐ

、ならびに0.24%w/w

、10%w/w

、25%w/w

、および50%w/w

の添加率(SBE6.6-β-CDの濃度に対する)の活性炭に対する曝露後について示される。データは、SBE6.6-β-CD溶液を熱に48時間曝露させることで245nm〜270nmの波長での吸収最大が著しく増加した(約95%)ことを示す。しかし、活性炭での処理によってこの波長範囲内での吸収は減少する。したがって、245nm〜270nmの波長での吸収を有する薬物分解性不純物は加熱によって増加するが、炭素処理を通じて除去することができる。
【0235】
実施例34
SBE6.6-β-CD DSおよびAPIの安定性
単一または二度の炭素処理で加工した、統合失調症治療薬API(アリピプラゾール)を有するSBE6.6-β-CDの各種ロットの比較評価について紫外/可視分光光度法およびHPLC分析によって検討した。SBE6.6-β-CD/API製剤の安定性を評価するために使用する一般的手順を以下に示す。
【0236】
API(アリピプラゾール)試料を含む水溶液を7.5mg/mLのAPI濃度および150mg/mLのSBE6.6-β-CD濃度で調製した。溶解するまで酒石酸を水に添加し、次にSBE6.6-β-CDを酒石酸溶液に添加した。次にAPIを溶液に添加し、約10分間の添加中に溶解させた。混合物を約1時間攪拌し、熱処理し、次に滅菌フィルターを通じて濾過した。このプロセスをSBE6.6-β-CDの以下のロットを使用して行い、これらのロットの一部は活性炭での単一処理を経ており、他のものは活性炭での2回の処理を経た

。溶液サンプルを安定性チャンバ内に50℃で最大9週間置いた。試料を4週間の時点で取り出し、9週間の時点で再度取り出し、HPLC分析を行ってAPI分解の程度を決定した。
【0237】
水溶液試料を紫外/可視分光光度法によって以下の手順を使用して分析した。上記のSBE6.6-β-CDロット(含水量について補正)を水に溶解させることで30%w/w β-シクロデキストリン溶液を調製した。溶液を、240nm/分の速度および1.0nmのスリット幅で190nmから400nmまで走査するPERKIN ELMER Lambda 35紫外/可視分光光度計を使用して1cmキュベット中で分析した。分析前に試料を水に対してブランク化した。以下の表はこの研究のデータを含む。
【0238】
SBE6.6-β-CDロットの概要および紫外線含有量

【0239】
SAE-CDおよびAPIの不純物の分析

【0240】
データは、活性炭での単一処理のみを経たSBE6.6-β-CDロットによってAPIを調剤する際にAPIが著しく大きい分解を経ることを示す。SBE6.6-β-CDロット番号17CX01.HQ00025を含有するAPI製剤は最も大きい紫外活性不純物レベル(最大吸光度=0.44 A.U.)を有しており、APIは9週間後に合計1.42%の分解を経た。活性炭での2回の処理を経たSBE6.6-β-CDロットは、紫外活性不純物のレベルとAPI分解の程度との両方が多少なりともより低かった。50℃で9週間貯蔵時に生じたAPI分解の程度は、製剤中に存在する紫外活性不純物の濃度と相関していた。例えば、SBE6.6-β-CDロット番号17CX01.HQ00044を含むAPI製剤(最大吸収=0.05A.U.を有する紫外活性不純物を含む)は、50℃で9週間後に合計わずか0.35%の分解しか経なかった。
【0241】
図5は、245nm〜270nmの波長でのSBE6.6-β-CDロットの初期紫外/可視吸収と、4週間および9週間の時点で決定したAPI分解の程度との間の相関関係のグラフ表示を与える。図5を参照すると、データは、4週間

と9週間

の両方の時点で、API分解の程度が、SBE6.6-β-CD組成物中に存在する紫外/可視吸収性の薬物分解性不純物の濃度に従って増加することを示す。
【0242】
結語
これらの実施例は本発明の可能な態様を例証するものである。本発明の各種態様を上記で説明してきたが、限定ではなく例としてのみそれらを提示したことを理解すべきである。本発明の精神および範囲を逸脱することなく、形態および詳細に各種の変化を加えることができることは、関連分野の当業者には明らかであろう。したがって、本発明の広さおよび範囲は、上記の例示的な態様のいずれによっても限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲およびその等価物にのみ従って定義されるべきである。
【0243】
概要および要約書の項ではなく、詳細の説明の項が、特許請求の範囲を解釈するために使用されるよう意図されていることを認識すべきである。概要および要約書の項は、本発明者(ら)が想定する本発明の例示的な態様のすべてではなく1つまたは複数を開示できるものであり、したがって、本発明および添付の特許請求の範囲を限定するようには決して意図されていない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
賦形剤とSAE-CD組成物とを含む組成物であって、SAE-CD組成物がスルホアルキルエーテルシクロデキストリンおよび100ppm未満のリン酸塩を含み、SAE-CD組成物が1cm光路長を有するセル中で、溶液1mL当たり300mgのSAE-CD組成物を含有する水溶液について245nm〜270nmの波長で紫外/可視分光光度法により決定される0.5A.U.未満の薬物分解剤の吸収を有する組成物。
【請求項2】
SAE-CD組成物が1cm光路長を有するセル中で、溶液1mL当たり500mgのSAE-CD組成物を含有する水溶液について320nm〜350nmの波長で紫外/可視分光光度法により決定される0.2A.U.未満の色形成剤の吸収を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
SAE-CD組成物が
20ppm未満のスルホアルキル化剤;
0.5重量%未満の非誘導体化シクロデキストリン;
1重量%未満のアルカリ金属ハロゲン化物塩; および
0.25重量%未満の加水分解されたスルホアルキル化剤
をさらに含む、請求項1〜2のいずれか一項記載の組成物。
【請求項4】
SAE-CD組成物が1cm光路長を有するセル中で、溶液1mL当たり500mgのSAE-CD組成物を含有する水溶液について245nm〜270nmの波長で紫外/可視分光光度法により決定される0.5A.U.未満の薬物分解剤の吸収を有する、請求項1〜3のいずれか一項記載の組成物。
【請求項5】
スルホアルキルエーテルシクロデキストリンが式(1)の化合物である、請求項1〜4のいずれか一項記載の組成物:

式中、pは4、5、または6であり、R1は各出現時に-OHまたは-SAE-Tより独立して選択され;かつ、
-SAE-は各出現時に-O-(C2〜C6アルキレン)-SO3-基より独立して選択され、かつ、-Tは各出現時に薬学的に許容されるカチオンより独立して選択され、但し、少なくとも1つのR1は-OHであり、かつ少なくとも1つのR1は-SAE-Tである。
【請求項6】
-SAE-が各出現時に-O-(C4アルキレン)-SO3-基であり、かつ-Tが各出現時にNa+である、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
SAE-CD組成物が
50ppm未満のリン酸塩;
10ppm未満のスルホアルキル化剤;
0.2重量%未満の非誘導体化シクロデキストリン;
0.5重量%未満のアルカリ金属ハロゲン化物塩; および
0.1重量%未満の加水分解されたスルホアルキル化剤を含み;
SAE-CD組成物が1cm光路長を有するセル中で、溶液1mL当たり500mgのSAE-CD組成物を含有する水溶液について245nm〜270nmの波長で紫外/可視分光光度法により決定される0.5A.U.未満の薬物分解剤の吸収を有し、かつ、
SAE-CD組成物が1cm光路長を有するセル中で、溶液1mL当たり500mgのSAE-CD組成物を含有する水溶液について320nm〜350nmの波長で紫外/可視分光光度法により決定される0.2A.U.未満の色形成剤の吸収を有する、
請求項1〜6のいずれか一項記載の組成物。
【請求項8】
SAE-CD組成物が
10ppm未満のリン酸塩;
2ppm未満のスルホアルキル化剤;
0.1重量%未満の非誘導体化シクロデキストリン;
0.2重量%未満のアルカリ金属ハロゲン化物塩; および
0.08重量%未満の加水分解されたスルホアルキル化剤を含み;
SAE-CD組成物が1cm光路長を有するセル中で、溶液1mL当たり500mgのSAE-CD組成物を含有する水溶液について245nm〜270nmの波長で紫外/可視分光光度法により決定される0.25A.U.未満の薬物分解剤の吸収を有し、かつ、
SAE-CD組成物が1cm光路長を有するセル中で、溶液1mL当たり500mgのSAE-CD組成物を含有する水溶液について320nm〜350nmの波長で紫外/可視分光光度法により決定される0.1A.U.未満の色形成剤の吸収を有する、
請求項1〜7のいずれか一項記載の組成物。
【請求項9】
SAE-CD組成物が
5ppm未満のリン酸塩;
0.1重量%未満のアルカリ金属ハロゲン化物塩; および
0.05重量%未満の加水分解されたスルホアルキル化剤
を含む、請求項1〜8のいずれか一項記載の組成物。
【請求項10】
賦形剤とSAE-CD組成物とを含む組成物であって、SAE-CD組成物が7の平均置換度を有するスルホブチルエーテルシクロデキストリンおよび100ppm未満のリン酸塩を含み、SAE-CD組成物が1cm光路長を有するセル中で、溶液1mL当たり500mgのSAE-CD組成物を含有する水溶液について245nm〜270nmの波長で紫外/可視分光光度法により決定される0.5A.U.未満の薬物分解剤の吸収を有する組成物。
【請求項11】
賦形剤とスルホアルキルエーテルシクロデキストリンを含むSAE-CD組成物とを含む組成物を調製するための方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)水性媒体中でシクロデキストリンとスルホアルキル化剤とをアルカリ化剤の存在下で混合することで、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン、1つまたは複数の望まれない成分、および1つまたは複数の薬物分解性不純物を含む水性反応環境を形成する工程;
(b)1つまたは複数の望まれない成分を水性環境から除去するために1つまたは複数の分離を実行することで、スルホアルキルエーテルシクロデキストリンおよび1つまたは複数の薬物分解性不純物を含む部分精製水溶液を形成する工程であって、1つまたは複数の分離が限外濾過、ダイアフィルトレーション、遠心分離、抽出、溶媒沈殿、および透析より選択されるプロセスを含む工程;
(c)リン酸塩を含まない活性炭で部分精製水溶液を処理することでスルホアルキルエーテルシクロデキストリンおよび100ppm未満のリン酸塩を含むSAE-CD組成物を与える工程であって、SAE-CD組成物が1cm光路長を有するセル中で、溶液1mL当たり300mgのSAE-CD組成物を含有する水溶液について245nm〜270nmの波長で紫外/可視分光光度法により決定される0.5A.U.未満の薬物分解剤の吸収を有する工程; ならびに
(d)SAE-CD組成物と賦形剤とを組み合わせる工程。
【請求項12】
SAE-CD組成物が1cm光路長を有するセル中で、溶液1mL当たり500mgのSAE-CD組成物を含有する水溶液について320nm〜500nmの波長で紫外/可視分光光度法により決定される0.2A.U.未満の色形成剤の吸収を有する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
SAE-CD組成物が
50ppm未満のリン酸塩;
10ppm未満のスルホアルキル化剤;
0.2重量%未満の非誘導体化シクロデキストリン;
0.5重量%未満のアルカリ金属ハロゲン化物塩; および
0.1重量%未満の加水分解されたスルホアルキル化剤を含み;
SAE-CD組成物が1cm光路長を有するセル中で、溶液1mL当たり500mgのSAE-CD組成物を含有する水溶液について245nm〜270nmの波長で紫外/可視分光光度法により決定される0.5A.U.未満の薬物分解剤の吸収を有し、かつ、
SAE-CD組成物が1cm光路長を有するセル中で、溶液1mL当たり500mgのSAE-CD組成物を含有する水溶液について320nm〜350nmの波長で紫外/可視分光光度法により決定される0.2A.U.未満の色形成剤の吸収を有する、
請求項11〜12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
スルホアルキルエーテルシクロデキストリンが式(1)の化合物である、請求項11〜13のいずれか一項記載の方法:

式中、pは4、5、または6であり、かつR1は各出現時に-OHまたは-SAE-Tより独立して選択され;かつ、
-SAE-は各出現時に-O-(C2〜C6アルキレン)-SO3-基より独立して選択され、かつ-Tは各出現時に薬学的に許容されるカチオンより独立して選択され、但し、少なくとも1つのR1は-OHであり、かつ少なくとも1つのR1は-SAE-Tである。
【請求項15】
-SAE-が各出現時に-O-(C4アルキレン)-SO3-基であり、かつ-Tが各出現時にNa+である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
処理工程が以下を含む、請求項11〜15のいずれか一項記載の方法:
リン酸塩を含まない粒子状または粉末状の活性炭を部分精製水溶液に混合しながら添加すること、活性炭を溶液から分離すること、ならびに溶液中の薬物分解剤の量が標的レベルに減少するまで該添加および該分離を少なくとも1回繰り返すこと; あるいは
溶液中の薬物分解剤の量が標的レベルに減少するまで流通装置内でリン酸塩を含まない活性炭の塊を通じて部分精製水溶液の通過および再循環を行うこと。
【請求項17】
実行工程が2回以上の通過および再循環を含み、各通過が異なる塊の活性炭による、請求項11〜16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
実行工程中に存在する活性炭がスルホアルキルエーテルシクロデキストリンの約12重量%であり、かつ実行工程が少なくとも約2時間行われる、請求項11〜17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
請求項11〜18のいずれか一項記載の方法によって調製される生成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2010−539193(P2010−539193A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525119(P2010−525119)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/002572
【国際公開番号】WO2009/134347
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(501278788)サイデックス・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (18)
【Fターム(参考)】