説明

スルホバシンBを有効成分として含む抗炎症剤

【課題】スルホバシンBの新規用途に関する。
【解決手段】以下の式(I)で示されるスルホバシンB又は薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物を有効成分として含む抗炎症剤による。スルホバシンBは、in vitroの実験系においてマクロファージ増殖抑制活性を有し、in vitro及びin vivoの実験系においてTNF産生抑制活性及び転写因子NF-κBの核内移行抑制活性を有し、in vivoの実験系において抗炎症作用を発揮しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホバシンBを有効成分として含む抗炎症剤に関する。
【背景技術】
【0002】
海洋性天然物と総称される化合物群は、それらの特異な構造や新規生理活性物質が数多く見出されるため、有用生物活性物質資源として注目されている。海洋性細菌の一種、クリセオバクテリウム(Chryserobacterium sp.)より単離されたスルホバシンA, B(sulfobacon A, B)は、スフィンゴシン骨格の1位水酸基がスルホン酸基によって置換された異常セラミドであり、合成されたスルホバシンA, Bについて報告がある(非特許文献1、2)。しかしながら、スルホバシンA, Bが抗炎症作用を有することは、全く報告されていない。
【0003】
炎症反応とは、身体組織の傷害に反応して、異物を排除しようとする防御反応であり、細胞からさまざまな伝達物質が放出され、腫れや痛み、発熱などを伴う反応をいう。炎症性疾患とは炎症反応による伝達物質によっておこる病気の総称であり、代表的なものに肺炎、膵炎、炎症性腸炎、皮膚炎、関節炎、筋炎、血管炎などが挙げられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Tetrahedron Letters 39 (1998) 6931-6934
【非特許文献2】J. Chem., Perkin Trans. 1 (1999) 2467-2477
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、スルホバシンBの新規用途を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、in vivoの実験系においてスルホバシンBが、抗炎症作用を発揮しうることを確認した。さらに、スルホバシンBはin vitroの実験系においてマクロファージ増殖抑制活性を有し、in vitro及びin vivoの実験系においてTNF産生抑制活性を有することから、スルホバシンBが抗炎症剤の有効成分として機能しうることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち本発明は、以下よりなる。
1.以下の式(I)で示されるスルホバシンB又は薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物を有効成分として含む抗炎症剤。
【化1】

【発明の効果】
【0008】
本発明の抗炎症剤は、特にマクロファージの産生抑制作用及び炎症性サイトカインであるTNF-αの産生抑制作用及び転写因子NF-κBの核内移行抑制作用による抗炎症作用を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】スルホバシンBによるマクロファージ細胞増殖に及ぼす作用を示す図である。(実施例2)
【図2】培養細胞系におけるスルホバシンBによるLPSのTNF-α誘導に及ぼす作用を示す図である。(実施例3)
【図3】培養細胞系におけるスルホバシンBによるLPSのNF-κB核内移行に及ぼす作用をウエスタンブロッティングにて確認した結果を示す写真図である。(実施例4)
【図4】マウスを使ったスルホバシンBによるLPSのTNF-α誘導に及ぼす作用を示す図である。(実施例5)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、以下の式(I)で示されるスルホバシンB又は薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物を有効成分として含む抗炎症剤に関する。
【0011】
【化1】

【0012】
式(I)で示されるスルホバシンBの薬学的に許容しうる塩は、化合物(I)の無毒性塩を意味する。このような塩としては、例えば、無機塩基との塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性又は酸性アミノ酸との塩などが挙げられる。無機塩基との塩の好適な例としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩;アンモニウム塩などが挙げられる。有機塩基との塩の好適な例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N−ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩が挙げられる。無機酸との塩の好適な例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などとの塩が挙げられる。有機酸との塩の好適な例としては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などとの塩が挙げられる。塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、アルギニン、リジン、オルニチンなどとの塩が挙げられる。酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩が挙げられる。
【0013】
式(I)で示されるスルホバシンB又はその溶媒和物は、公知の方法、例えば非特許文献1及び2に示す方法、又は今後開発されるあらゆる方法により合成することができる。
【0014】
本発明において炎症とは、肺炎、膵炎、炎症性腸炎、皮膚炎、関節炎、筋炎、血管炎などのいわゆる炎症性疾患により発生する症状のみならず、腫瘍やアレルギー性疾患などの、いわゆる炎症性疾患には含まれない疾患などであっても、それらに起因して身体組織に障害を生じた結果、炎症反応がおこり、腫れや痛み、発熱などを伴う症状が起こる場合も包含される。したがって、本発明の抗炎症剤は、いわゆる炎症性疾患に対してのみならず、あらゆる炎症症状を伴う場合に使用することができる。本発明は、これらの症状に対する治療方法にも及ぶ。
【0015】
炎症の過程は、血漿の酵素系の産物、脂質メディエーター(プロスタグランジン及びロイコトリエンといったアラキドン酸代謝物質)、炎症細胞から放出される血管作用性メディエーター、特にサイトカインの間の複雑な相互作用によって推進され、調節される。上記、脂質メディエーターに加えて、サイトカインもやはり炎症反応で重大な役割を果たす。それらは炎症の進展の開始時に生成され、炎症過程の最終的な転帰ならびにその解消の原因となる。傷害又は感作が生じると、炎症細胞(マスト細胞、好塩基球、内皮細胞、マクロファージ及び好中球)からサイトカインが放出される。この過程で多様なサイトカインの放出が活性化され、それには炎症性インターロイキン(IL-1、IL-6、IL-8、IL-12)及び腫瘍壊死因子(TNF-α)が含まれる。炎症の過程には抗炎症性サイトカインもの産生も含め、多くのサイトカインが関与する。本発明の抗炎症剤は、特にマクロファージの増殖抑制作用及び炎症性サイトカインであるTNF-αの産生抑制作用が含まれる。
【0016】
NF-κBは転写因子の一種であり、免疫応答に関与するともいわれている。NF-κBが活性化されると、さまざまなタンパク質の転写を活性化し、TNF-αなどのサイトカインや、ケモカイン、接着分子、サイクリンなどの発現量が増加し、これらによって生体防御機構が作用する。生体内では、通常厳密にNF-κBの発現は制御されているものの、炎症性サイトカインなど、ストレスを伴う外部刺激を受けると活性化されて核内に移行し、その制御下にある遺伝子の発現を誘導し、その結果、免疫応答や細胞死が回避されるといった生体防御機構が働く。これらの反応は、通常一過性のものであるが、ウイルスや紫外線、アレルゲンなどの化学物質による一部の特殊な刺激はNF-κBの恒常的又は過剰な活性化を引き起こし、アレルギー疾患や炎症性疾患、悪性腫瘍などを誘発する原因のひとつとなっている。
【0017】
本発明は、スルホバシンBを有効成分とする薬剤に関し、その投与量は適宜決定することができる。例えばヒトに投与する場合、投与量や投与方法は適宜決定することができる。好ましい投与量は、スルホバシンBとして、成人(体重60 kg)あたり、通常、10〜200 mg/日であり、好ましくは15〜135 mg/日であり、さらに好ましくは30〜60 mg/日(例えば45 mg/日)である。投与期間は、特に限定されるものではなく、例えば、1〜1000日、好ましくは3〜300日である。投与量及び投与期間は、炎症の治療効果と患者の状態を勘案しながら、適宜設定することができる。
【0018】
本発明のスルホバシンBを有効成分として含む薬剤は、薬学的に許容しうる添加剤を混和し製剤化して使用することができる。上記添加剤としては、一般に医薬に使用される、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、矯味矯臭剤、乳化剤、界面活性剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤、吸収促進剤等を挙げることができ、所望により、これらを適宜組み合わせて使用することもできる。
【0019】
以下に上記添加剤の例を挙げる。賦形剤としては、例えば乳糖、白糖、ブドウ糖、コーンスターチ、マンニトール、ソルビトール、デンプン、α化デンプン、デキストリン、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウムが挙げられる。
【0020】
結合剤としては、例えばポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、シェラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、マクロゴールが挙げられる。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、ポリエチレングリコール、コロイドシリカが挙げられる。崩壊剤としては、結晶セルロース、寒天、ゼラチン、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウムが挙げられる。着色剤としては三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、カルミン、カラメル、β−カロチン、酸化チタン、タルク、リン酸リボフラビンナトリウム、黄色アルミニウムレーキ等、医薬品に添加することが許可されているものが挙げられる。
【0021】
矯味矯臭剤としては、ココア末、ハッカ脳、芳香散、ハッカ油、竜脳、桂皮末が挙げられる。乳化剤又は界面活性剤としては、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、モノステアリン酸グリセリン、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。溶解補助剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、安息香酸ベンジル、エタノール、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリソルベート80、ニコチン酸アミドが挙げられる。懸濁化剤としては、前記界面活性剤のほか、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子が挙げられる。
【0022】
等張化剤としては、ブドウ糖、塩化ナトリウム、マンニトール、ソルビトールが挙げられる。緩衝剤としてはリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩などの緩衝液が挙げられる。防腐剤としてはメチルパラベン、プロピルパラベン、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸が挙げられる。抗酸化剤としては硫酸塩、アスコルビン酸、α−トコフェロールが挙げられる。安定化剤としては一般に医薬に使用されるものが挙げられる。吸収促進剤としては一般に医薬に使用されるものが挙げられる。また、必要に応じて、ビタミン類、アミノ酸等の成分を配合してもよい。
【0023】
また、上記製剤としては、錠剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤、シロップ剤、トローチ剤、吸入剤等の経口剤;坐剤、軟膏剤、眼軟膏剤、テープ剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、パップ剤、ローション剤等の外用剤又は注射剤を挙げることができる。上記経口剤は、上記添加剤を適宜組み合わせて製剤化することができる。なお、必要に応じてこれらの表面をコーティングしてもよい。上記外用剤は、上記添加剤のうち、特に賦形剤、結合剤、矯味矯臭剤、乳化剤、界面活性剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤又は吸収促進剤を適宜組み合わせて製剤化することができる。上記注射剤は、上記添加剤のうち、特に乳化剤、界面活性剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤又は吸収促進剤を適宜組み合わせて製剤化することができる。
【実施例】
【0024】
本発明の理解を深めるために、以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではないことは明らかである。
【0025】
(実施例1)スルホバシンBによる抗炎症作用
本実施例では、TPA (12-O-tetradecanoylphorbol-13-acetate)誘発慢性炎症に対するスルホバシンBの炎症抑制効果を確認した。
200 mg又は500 mgのスルホバシンBをマウス耳に塗布して30分後、TPA (0.5 mg)を投与した。TPA投与7時間後の浮腫重量を測定し、炎症性浮腫抑制効果を確認した。その結果、塗布量200 mgの場合で、48 %の阻害効果が確認され、塗布量500 mgの場合で、81.5 %の阻害効果が確認された(表1)。
【0026】
【表1】

【0027】
(実施例2)スルホバシンBによるマクロファージ増殖に及ぼす作用
本実施例では、マウスマクロファージ様細胞株RAW264.7細胞を用いて、マロファージ様細胞の増殖に及ぼすスルホバシンBの作用を確認した。
【0028】
RAW264.7細胞をDMEM培地中で37℃、24時間培養した。培地を10、20、40、60、80又は100μMのスルホバシンBを含むDMEM培地に交換し、37℃で24時間培養した。細胞増殖はWST-1法により測定した。その結果、添加したスルホバシンBの濃度依存的に、マクロファージ様細胞の増殖が抑制されることを確認した(図1)。
【0029】
細胞生存率の判定は、同仁化学研究所のCell Counting Kitを用いた。Cell Counting Kitに含まれるテトラゾリウム塩WST-1(2-(4-Iodophenyl)-3-(4-nitrophenyl)-5-(2,4-disulfophenyl)-2H-tetrazolium, monosodium salt)が細胞内脱水素酵素により還元され、高感度水溶性ホルマザンを生成し、このホルマザンの450 nmの吸光度(O.D.)を直接測定することにより、容易に生細胞数を計測できる。本実験では、以下の式で細胞生存率を算出した。
【0030】
細胞生存率(%)=(試験区のO.D.−培地のみのウェルのO.D.)÷(対照区のO.D.−培地
のみのウェルのO.D.)×100
【0031】
(実施例3)培養細胞系におけるスルホバシンBによるLPS (Lipopolysaccharide)のTNF-α誘導に及ぼす作用
本実施例では、マウスマクロファージ様細胞株RAW264.7細胞を用いて、LPSのTNF-α誘導に及ぼすスルホバシンBの作用を確認した。
【0032】
まず、RAW264.7細胞をDMEM培地中で37℃、24時間培養した。培地を1、5又は10μMのスルホバシンBを含むDMEM培地に交換し、37℃、30分間インキュベーションした。次に100 ng/mlのLPSを含む培地に交換し、37℃、24時間インキュベーションした。その後、LPSによって誘導されたTNF-αの量を、ELISAの系で2回測定した。測定は、市販のキット(Bioscience製)を用いて測定した。陰性コントロールは、LPSを添加しない系とした。
【0033】
上記の結果、スルホバシンBで処理した系では濃度依存的にTNF-αの産生が抑制されることを確認した。一方、LPSのみで処理し、スルホバシンBで処理しない陽性コントロールや、スルホバシンBが1μMの系では高いTNF-αの産生が確認された(図2)。これにより、スルホバシンBの濃度依存的に、LPSによるTNF-αの産生誘導を抑制しうることを確認した。
【0034】
(実施例4)培養細胞系におけるスルホバシンBによるLPSのNF-κB核内移行に及ぼす作用
本実施例では、マウスマクロファージ様細胞株RAW264.7細胞を用いて、LPSのNF-κB核内移行に及ぼすスルホバシンBの作用を確認した。
【0035】
まず、RAW264.7細胞をDMEM培地中で37℃、24時間培養した。培地を10μMのスルホバシンBを含むDMEM培地に交換し、37℃、30分間インキュベーションした。次に100 ng/mlのLPSを培地に添加して、37℃、30分間インキュベーションした。その後、細胞を回収して核抽出をおこなった。抽出された核のタンパク質を10%のアクリルアミドゲルを使用したウエスタンブロッティング(western blotting)により、NF-κBの発現量を測定した。陰性コントロールは、LPSを添加しない系とした。
【0036】
上記の結果、スルホバシンBで処理した系ではNF-κBの核内移行が21%抑制されることを確認した。一方、LPSのみで処理し、スルホバシンBで処理しない陽性コントロールでは高いNF-κBの核内移行(陰性コントロールの2.4倍)が確認された(図3)。これにより、スルホバシンBは、LPSによるNF-κBの核内移行を抑制しうることを確認した。
【0037】
(実施例5)マウスを使ったスルホバシンBによるLPSのTNF-α誘導に及ぼす作用
本実施例では、マウスを用いて、LPSのTNF-α誘導に及ぼすスルホバシンBの作用を確認した。
【0038】
まず、スルホバシンBをトウモロコシ油に溶かし、5 mg/kg(1 匹あたり0.1 mg)でマウスに腹腔内投与した。30分後にLPSを250μg/kg(1 匹あたり5μg)腹腔内投与で刺激した。LPSを投与してから1 時間後にマウスの下大静脈より採血して、血清中のTNF-αの量をELISAの系で測定した。測定は、市販のキット(Bioscience製)を用いて行なった。陽性コントロールは、LPSのみ投与して1 時間後に採血した系とし、陰性コントロールは、LPSを投与せずに採血した系とした。
【0039】
上記の結果、スルホバシンBで処理した系ではマウス血中のTNF-αの産生が抑制されることを確認した。一方、LPSのみで処理し、スルホバシンBで処理しない陽性コントロールでは高いTNF-αの産生が確認された(図4)。これにより、スルホバシンBは、マウス体内において、LPSによるTNF-αの産生誘導を抑制しうることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上詳述したように、本発明の抗炎症剤は、特にマクロファージの増殖抑制作用、炎症性サイトカインであるTNF-αの産生抑制作用及び転写因子NF-κBの核内移行抑制作用による抗炎症作用を有し、スルホバシンBの新規用途を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)で示されるスルホバシンB又は薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物を有効成分として含む抗炎症剤。
【化1】


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−251950(P2011−251950A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127707(P2010−127707)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(504150450)国立大学法人神戸大学 (421)
【出願人】(507307374)学校法人神戸学院 (9)
【Fターム(参考)】