説明

スルホン化ブロックコポリマーの改善された製造方法、このようなブロックコポリマーからの膜の製造方法および膜構造

本発明は、スルホン化ブロックコポリマーの改善された製造方法、およびこのようなブロックコポリマーからの膜の製造方法に関する。詳細には、本発明は、スルホン化されにくい少なくとも2つのポリマー末端ブロックと、スルホン化されやすい少なくとも1つのポリマー内側ブロックとを有するスルホン化ブロックコポリマーの改善された製造方法に関し、この場合のスルホン化剤は、CからC硫酸アシルである。この改善されたプロセスでは、CからC硫酸アシルから形成される残留カルボン酸を、残留カルボン酸と残留カルボン酸に対して少なくとも0.9:1のモル比のCからCアルコールとを接触させることにより、CからCアルキルエステルに転化させ、その結果として、改善されたスルホン化ブロックコポリマー溶液を得る。本発明は、様々な膜および他の物品を調製するためのこのようなスルホン化ブロックコポリマーの使用にさらに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホン化ブロックコポリマーの改善された製造方法に、およびこのようなブロックコポリマーからの膜の製造方法に関する。詳細には、本発明は、スルホン化されにくい少なくとも2つのポリマー末端ブロックと、スルホン化されやすい少なくとも1つのポリマー内側ブロックとを有するスルホン化ブロックコポリマーの改善された製造方法に関し、この場合のスルホン化剤は、CからC硫酸アシルである。この改善されたプロセスでは、硫酸アシルから形成される残留カルボン酸をCからCアルキルエステルに転化させ、その結果として、改善されたスルホン化ブロックコポリマー溶液を得る。本発明は、様々な膜および他の物品を作製するためのこのようなスルホン化ブロックコポリマー溶液の使用に、さらに関する。
【背景技術】
【0002】
ここ数年にわたって、芳香族含有ポリマー(例えば、スチレン系ブロックコポリマー)に、これらの特性を変更および改善するべく、多くの改良が加えられてきた。1つのこのような改良がポリマーのスルホン化である。このようなスルホン化ポリマーとしては、多くの他の特許および特許出願の中でもUS3,577,357;US3,642,953;US3,870,841;US6,110,616;US5,239,010;US5,516,831;US5,468,574;US7,169,850;US4,505,827;US4,492,785;およびUS Pub.App.2007/0021569に開示されているものが挙げられる。スルホン化されやすい単位を含有するポリマーを重合し、および所望される場合には水素化すると、スルホン化剤を使用してこれをスルホン化することができる。スルホン化されやすいポリマーにスルホン酸基を組み込むために用いることができる多数の公知化学的試薬および経路があるが、ゲル化を伴わずにポリマーをスルホン化する難しさは、当分野において広く理解されている。ポリマーのゲル化は、化学的ゲル化に起因する場合もあり、物理的ゲル化に起因する場合もあり、またはこれらの組み合わせに起因する場合もある。ポリマーのゲル化につながることに加えて、望ましくない化学的架橋は、ポリマーの沈殿および/または加工困難につながる場合もある。一方、物理的ゲル化は、非共有結合性架橋に起因し得る。物理的ゲル化は、適切な溶剤条件によって一般に中断させることができる。例えば、Liら,Reactive & Functional Polymers,56:189(2003)には、トルエン中のスルホン化ポリ[スチレン]−ブロック[2−[(ペルフルオロノネニル)オキシ]エチルメタクリラート]の「不溶性」が、「系中のイオン双極子の分子間会合の結果として生ずる、ブロックコポリマーにおける物理的に架橋した網様構造」のためであると記載されている。これは、極性補助溶剤の添加によってこのポリマーを容易に溶解することができることを教示している。
【0003】
この文献は、スルホン架橋基の有意な量を形成することなく芳香族含有ポリマーをスルホン化するための、無水カルボン酸とスルホン酸から容易に調製することができる、様々な硫酸アシルの使用を教示している。化学的ゲル化は、硫酸アシルの使用によって減少させるまたは制御することはできるが、物理的ゲル化またはポリマー沈殿は、ポリマースルホン化にとって深刻な問題を依然として提起する。物理的ゲル化またはポリマー沈殿を減少させるために、この文献に開示されている硫酸アシル法のために選ばれる反応媒質は、一般に、ジクロロエタンなどのハロゲン化溶剤である。ハロゲン化溶剤は、未スルホン化ポリマーおよび硫酸アシル試薬(例えば、硫酸アセチル)に溶解性をもたらすばかりでなく、結果として得られるスルホン化ポリマーを、沈殿または使用不能にするゲル化なしに可溶性形態(例えば、均質な液体)で維持もすると、断言されている。しかし、ハロゲン化溶剤の使用は、環境、健康および安全性の立場から非常に望ましくない。ハロゲン化溶剤中に比べて非ハロゲン化脂肪族溶剤中で同等またはこれ以上のスルホン酸組み込みレベルで芳香族含有ブロックコポリマーを有効にスルホン化することができる方法が、非常に望ましい。非ハロゲン化脂肪族溶剤の利点としては、例えば、(a)ハロゲン化溶剤に付随する実質的な環境的懸念に悩まされないこと;(b)出発ブロックコポリマーの調製に概して使用されること、これにより、スルホン化前にポリマーを単離し、再び溶解する必要なく、ポリマーをスルホン化することができること;ならびに/または(c)フィルム、膜、コーティングなどへのスルホン化ポリマーの後の下流での加工に適する溶剤であることが挙げられる。C2−C8硫酸エステル、特にC2からC4硫酸エステルなどの低級硫酸アシルは、高級硫酸アシルまたは他のスルホン化試薬に勝る多くの利点を有する。これらの低級硫酸アシルは、他の硫酸アシルと同様に、極わずかしかスルホンを形成せずに芳香族環をスルホン化することができ、その結果、実質的な化学的ゲル化を伴わずに進行することができる。
【0004】
一定のスチレン含有ブロックコポリマーの低級C2からC4スルファートでのスルホン化プロセスは、共通の発明者を有する2007年1月19日出願のpatent application Serial Number60/885,804において教示されている。US Pub App.60/885,804のプロセスの結果として得られるポリマーは、同じく共通の発明者を含む、先行US Pub.App.2007/0021569において開示され、特許請求の範囲に記載されている。
【0005】
しかし、C2からC8硫酸アシルをスルホン化剤として使用すると、残留カルボン酸が副生成物として形成される。スルホン化ポリマー溶液中のイソ酪酸などの残留カルボン酸は、物品または最終使用用途品を作るためにこの溶剤を除去するとき、結果として得られたポリマー組成物から除去することが難しい。例えば、このような残留カルボン酸の存在は、スルホン化ポリマーからポリマーの流延により膜を形成することが望まれるとき、有意な問題となる。このような残留酸は、膜内に残存し、時間をかけてゆっくりと蒸発して内部応力をもたらす。この内部応力は、亀裂を作ることによって流延膜の壊損をもたらす。加えて、このような残留カルボン酸を含有する溶液から流延された膜は、この残留酸の匂いがし、この匂いは不快である。必要とされているのは、C2からC8硫酸アシルをスルホン化剤に使用するときの深刻な問題に対する解決策である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第3,577,357号明細書
【特許文献2】米国特許第3,642,953号明細書
【特許文献3】米国特許第3,870,841号明細書
【特許文献4】米国特許第6,110,616号明細書
【特許文献5】米国特許第5,239,010号明細書
【特許文献6】米国特許第5,516,831号明細書
【特許文献7】米国特許第5,468,574号明細書
【特許文献8】米国特許第7,169,850号明細書
【特許文献9】米国特許第4,505,827号明細書
【特許文献10】米国特許第4,492,785号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2007/0021569号明細書
【特許文献12】米国特許出願第60/885,804号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Liら,Reactive & Functional Polymers,56:189(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、(1)ポリマー沈殿および使用不能にするゲル化が実質的に無い;(2)高いスルホン化度に効率的に達することができる;(3)硫酸イソブチリルなどの低級硫酸アシルをスルホン化試薬として使用する;および(4)ポリマー組成物から流延した結果として得られるいずれの膜においても悪臭および内部応力を生じさせる結果とならない、非ハロゲン化脂肪族溶剤中でスルホン化芳香族含有ポリマーを生産するための方法が、当分野において依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
今般記載する技術は、ポリマーへのスルホン酸の高いまたは増加された組み込みレベルで、しかしイソ酪酸などの残留カルボン酸の低減された量でスルホン化を達成するこができる、非ハロゲン化溶剤中での芳香族含有ブロックコポリマーのスルホン化に一般に関する。今般記載する技術は、テキサス州、ヒューストンのKraton Polymers LLCによるU.S.Published Patent Application2007/0021569に記載されているものなどのスルホン化ポリマーの生産に特に有用である。U.S.Published Patent Application2007/0021569の開示は、この全体が参照により本明細書に組み込まれている。スルホン化ブロックコポリマーを調製するための総合プロセスは、Stepan Companyによって2007年1月19日に出願されたU.S.Patent Application Serial Number60/885,804に開示されている。U.S.Patent Application Serial Number60/885,804の開示も、この全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0010】
一つの態様において、今般記載する技術は、非ハロゲン化脂肪族溶剤中でスルホン化ブロックポリマーを調製するためのプロセスを提供するものであり、このプロセスは、
A−B−A、A−B−A−B−A、(A−B−A)nX、(A−B)nX、A−D−B−D−A、A−B−D−B−A、(A−D−B)nX、(A−B−D)nX、A−B−B−B−A、(A−B−B)nXまたはこれらの混合の一般配置を有する前駆体ブロックポリマーを提供する段階(この場合、nは、2から30の整数であり、およびXは、カップリング剤残基であり、ならびにそれぞれのAブロックは、スルホン化されにくいポリマーブロックであり、それぞれのDブロックは、スルホン化されにくいポリマーブロックであり、およびそれぞれのBブロックは、スルホン化されやすいポリマーブロックであり、前記A、DおよびBブロックにはオレフィン不飽和が実質的に無い。);
前記前駆体ブロックポリマーとC2からC8硫酸アシルを、少なくとも1つの非ハロゲン化脂肪族溶剤をさらに含む反応混合物中で反応させて、スルホン化ブロックポリマーを形成する段階(この場合、前駆体ブロックポリマーの初期濃度は、反応混合物の総重量に基づいてこの前駆体ブロックポリマーの限界濃度より低い、または反応混合物の総重量に基づいてこの前駆体ブロックポリマーの限界濃度より約0.1重量%から約0.1重量%下の範囲内であり、この時点では、結果として、スルホン化ブロックコポリマーが得られ、残留カルボン酸が形成される。);およびその後、前記残留カルボン酸をC1からC4アルコールまたはこの混合物と少なくとも0.9:1のアルコールの残留カルボン酸に対するモル比で反応させて、カルボン酸の対応するアルキルエステルを形成する、および有機酸の残留レベルをこの溶液の総重量に基づいて2.0重量%未満、好ましくは1.0重量%未満に減少させる段階
を含む。
【0011】
C1からC4アルコールの残留カルボン酸に対するモル比は、少なくとも0.9:1、好ましくは0.9:1から4:1、さらに好ましくは0.9:1から2:1である。
【0012】
好ましくは、前駆体ブロックポリマーの初期濃度は、この反応混合物の総重量に基づいて約1.0重量%から約30重量%、または約3.0重量%から約20重量%の範囲である。少なくとも一部の実施形態では、この反応混合物にポリマー沈殿が実質的に無いおよび使用不能にするゲル化が無いような様式でスルホン化反応を行うことができる。または、スルホン化反応は、この反応生成物(即ち、非ハロゲン化脂肪族溶剤中の結果として得られたスルホン化ポリマー)にポリマー沈殿が実質的に無いおよび使用不能にするゲル化が無い様式で行われる。または、本技術による反応混合物と反応生成物の両方に、ポリマー沈殿が実質的に無く、使用不能にするゲル化が無い。一部の実施形態によると、本技術の反応混合物にはハロゲン化溶剤が実質的に無い。
【0013】
本技術の一部の実施形態に従って使用されるスルホン化試薬は、炭素原子数約2から約8、または炭素原子数約3から約8、または炭素原子数約3から約5のアシル基を含む。一つの好ましい例は、硫酸イソブチリルである。例えば、スルホン化反応を行うのと同じ温度で、または代替的に約20℃から約65℃の様々な温度で行われる、インサイチュー反応で硫酸アシルを得ることができる。または、反応混合物への添加前に別の反応から硫酸アシルを得ることができる。少なくとも一部の実施形態において、反応混合物中の硫酸アシルのスルホン化されやすい繰り返し単位に対するモル比は、約0.1から約2.0、または約0.1から約1.5、または約0.1から約1.3である。
【0014】
好ましくは、スルホン化ブロックポリマーは、約0.4meq/gより大きい、または約0.6meq/gより大きい、または1.0meq/gより大きい、または1.4meq/gより大きいスルホン化度を有する。一部の実施形態によると、Bブロックは、前記Bブロック中のスルホン化されやすいモノマーの単位に基づき、約10から約100mol%、または約20から約95mol%、または約30から約90mol%の程度までスルホン化される。
【0015】
非ハロゲン化脂肪族溶剤は、前駆体ポリマーまたはポリマー混合物のための溶媒であってスルホン化反応を妨げない、いずれの化合物であってもよい。典型的な例としては、炭素数約5から12の線状、分岐または環式飽和炭化水素、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、シクロヘプタン、シクロオクタン、イソペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、イソヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、n−ノナン、n−デカンまたはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。約70から約220℃の沸点範囲を有する脂肪族炭化水素混合物も挙げられる。少なくとも一部の実施形態において、非ハロゲン化脂肪族溶剤は、第一の非ハロゲン化脂肪族溶剤および第二の非ハロゲン化脂肪族溶剤を含む。好ましくは、第一の非ハロゲン化脂肪族溶剤は、前駆体ポリマーのための溶剤(例えば、シクロヘキサンまたはメチルシクロヘキサン)であり、第二の非ハロゲン化溶剤は、これが、他方の溶剤と混和性であるが、プロセス温度範囲では前駆体ポリマーのスルホン化されやすいブロックにとって貧溶剤でありおよびまたスルホン化反応を妨げないように、選択される。前駆体ポリマーのスルホン化されやすいブロックがポリスチレンである場合、ポリスチレンにとって貧溶剤である適する溶剤は、炭素原子数約12以下の線状および分岐脂肪族炭化水素、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、2−エチルヘキサン、イソオクタン、ノナン、デカン、パラフィン系オイル、混合パラフィン系溶剤などである。
【0016】
もう一つの態様において、今般記載する技術は、反応混合物中でミセルを形成する段階を含む、非ハロゲン化脂肪族溶剤中でスルホン化ブロックポリマーを調製するためのプロセスを提供するものである。このプロセスによるスルホン化反応は、反応混合物および/または反応生成物におけるスルホン化ブロックポリマー沈殿が実質的に無いならびに実質的なゲル化が無い様式で行うことができる。
【0017】
もう一つの態様において、本発明のプロセスによって調製されるスルホン化ブロックコポリマー、残留カルボン酸のエステルおよび少なくとも1つの非ハロゲン化脂肪族溶剤は、液体組成物を構成し、この場合、スルホン化ブロックコポリマーの濃度は、この液体組成物の総重量に基づいて2重量%から30重量%、または5から20重量%である。
【0018】
本発明のスルホン化ブロックコポリマーは、スルホン化されやすい1つ以上の内部ブロックとスルホン化されにくい外側ブロックとを有するスルホン化ブロックコポリマーを使用することによって、多種多様な用途にとって十分な湿潤強度を維持しながら高い水輸送特性を達成することを可能にする。本発明のこれらのスルホン化飽和ブロックコポリマーは、水輸送、湿潤強度、寸法安定性およびこれまで達成できなかった加工性をはじめとする、特性のバランスを示す。スルホン化をブロックコポリマーの1つ以上の内部ブロックに制限すると、外側のブロックの疎水性が維持され、それ故、含水中央またはゴム相が存在する状態でこれらの団結性が保持されることを発見した。スルホン化を内部または内側ブロックに選択的に向ける手段は、例えば、外側ブロックにおけるパラ−tert−ブチルスチレンなどのパラ置換スチレン系モノマーの使用による。スチレン環上のパラ位の大きなアルキル置換基は、スルホン化に対する環の反応性を低下させ、その結果、スルホン化をポリマーの内部または内側ブロックの1つ以上に向ける。
【0019】
スルホン化しにくい末端ブロックを有するスルホン化ブロックコポリマーの重要な特徴は、過剰な水の存在下でさえこれらの固体性を維持する固体の物体または物品にこれらを形成することができることである。固体は、この固有重量の応力下では流動しない材料と考えられる。本発明のポリマーを流延して固体膜にすることができる。これらの膜は、水蒸気を効率的に輸送し、その上、過剰な水の存在下でさえ固体である。水中のこれらの膜の固体特性は、水に沈めながら引張応力下でのこれらの耐流動性を試験することによって立証することができる。ASTM D412に概説されている方法による単純引張試験を、膜に対して、この膜を水浴に沈めながら行うことができ;この測定値をこの材料の湿潤強度の測度を考えることができる。この試験は、過剰水中で平衡させた膜に対して有効に用いられる。断面積1平方インチあたり100ポンドより大きい湿潤引張強度を示す材料は、強い固体である。重要なこととして、これらは、過剰な水の存在下でさえ強い固体である。明らかに、このような材料は水に溶けない。水溶性材料は、上で概説したASTM D412の一部変更手順を用いて評価したとき、測定可能な強度を有さない。さらに、このような材料は、水に分散されない。ポリマーの水性分散液は、上で論じたようなASTM D412の一部変更手順を用いて試験したとき、測定可能な強度を有さない。本発明のポリマー膜は、過剰な水と接触させたとき、水に溶けず、および分散液を形成しない。本新規開示ポリマー膜は、良好な水蒸気輸送特性を有し、および水と平衡させたときに100psiより大きい引張強度を有する。これらは、湿潤時でさえ固体である。
【0020】
内側ブロックに関して選択的にスルホン化された本発明のブロックコポリマーの顕著な特徴は、水と平衡させたときでさえの強度、水蒸気輸送挙動、寸法安定性および加工性をはじめとする、これまで達成できなかった特性の有用なバランスを有する物体にこれらを形成することができることである。疎水性ブロックおよびブロックコポリマー鎖の末端のこれらの位置が、これらのポリマーおよびこれらから形成される物体の湿潤強度、寸法安定性および加工性の一因となる。このコポリマーの内側に位置するスルホン化ブロック(単数または複数)が有効な水蒸気輸送を可能にする。これらの総合特性がユニークな材料を生じさせる。上述のことの結果として、本発明のスルホン化ブロックコポリマーを、先行技術スルホン化ポリマーが水中でのこのようなポリマーの弱さのため不十分であると証明された多種多様な用途において、より有効に利用することができる。元来「水溶性」または「水分散性」であるスルホン化ブロックコポリマーは、本明細書に開示する用途に十分な引張強度を有さないことに留意されたい。
【0021】
または、本発明は、少なくとも2つの末端ブロックAと少なくとも1つの内側ブロックBとを有する前駆体ブロックコポリマー(この場合、それぞれのAブロックは、スルホン化されにくいポリマーブロックであり、およびそれぞれのBブロックは、スルホン化されやすいポリマーブロックである。)とC2からC8硫酸アシルとを、少なくとも1つの非ハロゲン脂肪族溶剤をさらに含む反応混合物中で反応させて残留カルボン酸を含有するスルホン化ブロックコポリマーの溶液を形成する、スルホン化ブロックコポリマーを調製するためのプロセスの改善を含み、この改善は、この残留カルボン酸と残留カルボン酸に対して少なくとも0.9:1のモル比のC1からC4アルコールまたはこの混合物とを、その後、反応させる場合、この残留カルボン酸の対応するアルキルエステルを形成すること、およびこの溶液の総重量に基づいて2.0重量%未満に残留カルボン酸の残留レベルを低下させることを含む。
【0022】
本発明の一つの態様において、スルホン化ブロックポリマーを調製するためのプロセスは、反応混合物におけるポリマー沈殿が実質的に無いおよび使用不能にするゲル化が無い様式で行われる。さらに、前駆体ブロックポリマーの初期濃度は、反応混合物の総重量に基づいて約1.0重量%からこの前駆体ブロックポリマーの制限濃度より約0.1重量%低い濃度までの範囲、または反応混合物の総重量に基づいて約3.0重量%からこの前駆体ブロックポリマーの制限濃度より約0.1重量%低い濃度までの範囲内である。
【0023】
一般に、スルホン化ブロックコポリマーにおいて、末端ブロックのmol百分率は、このブロックコポリマーが水に不溶性であり水に非分散性であるために十分なものである。前記ブロックコポリマーにおいて、末端ブロックのmol%は、15%より大きい、好ましくは20%より大きいことがある。他の場合には、末端ブロックのmol%が、20%より大きく70%未満、好ましくは20%より大きく50%未満であることがある。末端ブロックの疎水性単位は、このブロックコポリマーの不溶性の一因となる。さらに、末端ブロックmol%が、より低い値に近づく場合には、BブロックばかりでなくAブロックを含む内側ブロックに疎水性モノマー単位を組み込むことによってこのブロックコポリマー全体の疎水性を調整することができる。
【0024】
本発明に関する本出願全体を通して、以下の用語は、以下の意味を有する。「スルホン化されにくい」は、ブロックのスルホン化が、あったとしても極わずかにしか発生しないことを意味する。「スルホン化されやすい」は、言及するブロックにおいてスルホン化が発生する可能性が非常に高いことを意味する。末端ブロックに関する本発明に関して用いる場合の「スルホン化されにくい」という表現および内側ブロックに関する「スルホン化されやすい」という表現は、スルホン化が、このコポリマーの内側ブロックにおいて主として発生するので、このブロックコポリマーの全スルホン化度を基準にして、内側ブロックにおいて発生するスルホン化度が、末端ブロックにおいて発生するスルホン化度より高くなることを表現するものとする。内側ブロックにおけるスルホン化度は、このブロックコポリマーの全総合スルホン化の少なくとも85%である。代替実施形態において、内側ブロックにおけるスルホン化度は、全スルホン化の少なくとも90%であり、この実施形態における好ましい量は、全スルホン化の少なくとも95%である。一部の実施形態において、末端ブロックは、スルホン化を示さないことがある。本明細書全体を通して、末端ブロックおよび内側ブロックに関する論述があることに留意されたい。多くの場合、「A」によって表される末端ブロックおよび「B」によって表される内側ブロックに関する構造を用いる。別の指示がない限り、このような論述は、「A」末端ブロックと「B」内側ブロックとを含有する本発明のスルホン化ブロックコポリマーにのみに限定されると解釈されず、それよりむしろ、スルホン化されにくい末端ブロックが「A」、「A1」、「A2」または「D」ブロックによって表され、スルホン化されやすい内側ブロックが「B」、「B1」、「B2」、「E」または「F」ブロックによって表される、本発明の実施形態のすべての構造を代表する論述であると解釈される。さらに、一部の場合、1つより多くの内側ブロックがスルホン化されやすいことがあることに留意されたい。これらの場合、これらのブロックが同じであることもあり、またはこれらが異なることもある。
【0025】
加えて、「有意な不飽和レベルを含有しない」という用語は、このブロックコポリマーの残留オレフィン不飽和が、ポリマーのグラムあたりの炭素−炭素二重結合が2.0ミリ当量未満、好ましくは、ブロックコポリマーのグラムあたりの炭素−炭素二重結合が0.2ミリ当量未満であることを意味する。これは、例えば、前記スルホン化ブロックコポリマー中に存在する任意の共役ジエンポリマー成分について、二重結合の少なくとも90%が水素化によって還元される、好ましくは、二重結合の少なくとも95%が水素化によって還元される、およびさらにいっそう好ましくは、二重結合の少なくとも98%が水素化によって還元されるように、このような共役ジエンが水素化されるはずであることを意味する。
【0026】
さらにもう一つの態様において、本発明は、本発明のスルホン化ブロックコポリマーを含む組成物から少なくとも一部は成る物品を含む。詳細には、本発明は、例えば、燃料電池、燃料電池用のプロトン交換膜、燃料電池用の電極接合体を含む電極接合体において使用するためのスルホン化ポリマーセメント中の金属含浸炭素粒子の分散液、布地、コーティング布、外科用品および器具、水処理膜、濾過膜、空気調整膜、熱回収膜、脱塩膜、接着剤、個人向け衛生用品、高吸収性物品、高吸収材用の結合剤および防汚塗料などの物品を考えている。このような物品の特定の例としては、スルホン化ブロックコポリマーを含む組成物から一部は成る選択的、透過性膜が挙げられるが、これに限定されない。他の用途としては、繊維、チューブ、布地、シート、織および不織布用コーティングならびに積層体が挙げられる。具体的な用途としては、潜在的に危険な物質の取扱いに関与するファースト・リスポンダー、消防士、化学および生物学研究者、農業労働者、医療従業員ならびに軍人用の通気性防護服および手袋;競技および娯楽用の服;テンティング;工業的、医学的および水浄化用途のための選択膜;ならびに家屋の壁の内側および床と基礎の間の湿気の蓄積を避けるシステムが挙げられるが、これらに限定されない。他の具体的な用途は、おむつまたは失禁用製品における高吸収材または高吸収性結合剤としての使用を含めて、個人衛生における用途である。さらに他の具体的な用途としては、船舶用塗料および防汚塗料が一般に挙げられる。さらに他の用途としては、ポリスルホン脱塩膜上のコーティングなどの膜用のコーティングが挙げられる。
【0027】
さらにもう一つの態様において、本発明は、膜を作製するためのプロセスを含み、このプロセスは、
(a)本発明のスルホン化ブロックコポリマーと残留カルボン酸のエステルと非ハロゲン化脂肪族溶剤とを含む組成物を(好ましくは高湿環境で)除去可能な基材の表面に塗布する段階、
(b)組成物を伸展させて除去可能な基材上に均一な厚さの層を形成する段階、
(c)組成物から溶剤を蒸発させて、結果として固体膜を生じさせる段階、および
(d)除去可能な基材から固体膜を除去する段階
を含む。
【0028】
さらにもう一つの態様において、本発明は、二層膜を作製するためのプロセスを含み、このプロセスは、
(a)本発明のスルホン化ブロックコポリマーと残留カルボン酸のエステルと非ハロゲン化脂肪族溶剤とを含む組成物を多孔質基材に塗布する段階、
(b)組成物を伸展させて多孔質基材の表面に均一な厚さの層を形成する段階、および
(c)組成物から溶剤を蒸発させて、結果として固体膜を生じさせる段階
を含む。
【0029】
さらにもう一つの態様において、本発明は、本発明のプロセスによって調製されたスルホン化ブロックコポリマー組成物から形成される物品を含み、前記組成物は、
(a)水素化前に、一般配置A−B−A、A−B−A−B−A、(A−B−A)X、(A−B)X、A−D−B−D−A、A−B−D−B−A、(A−D−B)X、(A−B−D)X、A−B−B−B−A、(A−B−B)Xまたはこれらの混合を有する、スルホン化ブロックコポリマー(この場合、nは、2から約30の整数であり、およびXは、カップリング剤残基であり、ならびに
(i)それぞれのAブロックは、スルホン化されにくいポリマーブロックであり、それぞれのDブロックは、スルホン化されにくいポリマーブロックであり、およびそれぞれのBブロックは、スルホン化されやすいポリマーブロックであり、前記A、DおよびBブロックは、有意なオレフィン不飽和レベルを含有しない;
(ii)それぞれのAブロックは、1,000と60,000の間のピーク分子量を独立して有し、それぞれのDブロックは、1,000と50,000の間のピーク分子量を独立して有し、およびそれぞれのBブロックは、10,000と300,000の間のピーク分子量を独立して有する;
(iii)それぞれのAブロックは、重合された(i)パラ置換スチレンモノマー、(ii)エチレン、(iii)炭素原子数3から18のαオレフィン、(iv)1,3−シクロジエンモノマー、(v)水素化前に35mol%未満のビニル含量を有する共役ジエンのモノマー、(vi)アクリル酸エステル、(vii)メタクリル酸エステルおよび(viii)これらの混合物から選択される1つ以上のセグメントを含む;
(iv)それぞれのBブロックは、重合された(i)非置換スチレンモノマー、(ii)オルト置換スチレンモノマー、(iii)メタ置換スチレンモノマー、(iv)α−メチルスチレン、(v)1,1−ジフェニルエチレン、(vi)1,2−ジフェニルエチレンおよび(vii)これらの混合物から選択される1つ以上のビニル芳香族モノマーのセグメントを含む;
(v)それぞれのDブロックは、20℃未満のガラス転移温度および1000と50,000の間のピーク分子量を有するポリマーを含み、前記Dブロックは、(i)20mol%と80mol%の間のビニル含量を水素化前に有する、イソプレン、1,3−ブタジエンから選択される、重合または共重合共役ジエン、(ii)重合アクリラートモノマー、(iii)シリコーンポリマー、(iv)重合イソブチレンおよび(v)これらの混合物(この場合、重合1,3−ブタジエンまたはイソプレンを含有するいずれのセグメントも後に水素化される。)からなる群から選択される;および
(vi)それぞれのBブロック中の、非置換スチレンモノマー、オルト置換スチレンモノマー、メタ置換スチレンモノマー、α−メチルスチレン、1,1−ジフェニルエチレンおよび1,2−ジフェニルエチレンである、ビニル芳香族芳香族モノマーのmol%は、10mol%と100mol%の間である。)と;
(b)残留カルボン酸のC1からC4アルキルエステル約0.08から約35重量%と;
(c)残留カルボン酸2.0重量%未満(前記重量%はブロックコポリマー組成物の総重量に基づく。)と
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、残留イソ酪酸約3.1重量%を含有するスルホン化ブロックコポリマー組成物から形成した先行技術膜の写真を示す図である。
【図2】図2は、残留イソ酪酸約0.5重量%未満とイソ酪酸エチル、即ち、エタノールとイソ酪酸の反応によって形成されたイソ酪酸のエチルエステル、約3重量%とを含有する、本発明のプロセスによって形成した膜の写真を示す図である。
【図3】図3は、酪酸メチルを形成するためのメタノールの反応進行度を、メタノールの本発明によるイソ酪酸に対するモル比の関数として示す図である。
【図4】図4は、メタノール、シクロヘキサンおよびイソ酪酸メチルの相対濃度を蒸発の関数として示す図である。
【図5】図5は、エタノール、シクロヘキサンおよびイソ酪酸エチルの相対濃度を蒸発の関数として示す図である。
【図6】図6は、乾燥環境(低い相対湿度)での膜ハンドキャストを示す図である。
【図7】図7は、高湿環境(高い相対湿度)での膜ハンドキャストを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明のブロックコポリマーを含有するスルホン酸を調製するために必要なベースポリマーは、アニオン重合、抑制アニオン重合(moderated anionic polymerization)、カチオン重合、チーグラー・ナッタ重合およびリビングまたは安定なフリーラジカル重合をはじめとする、多数の異なるプロセスによって製造することができる。アニオン重合は、下の詳細な説明の中で説明し、および参照する特許に記載されている。スチレン系ブロックコポリマーを製造するための抑制アニオン重合プロセスは、例えば、U.S.Patent No.6,391,981、6,455,651および6,492,469に開示されており、これらの特許は参照により本明細書に組み込まれている。ブロックコポリマーを調製するためのカチオン重合プロセスは、例えば、U.S.Patent No.6,515,083および4,946,899に開示されており、これらの特許は参照により本明細書に組み込まれている。ブロックコポリマーを製造するために用いることができるリビングチーグラー・ナッタ重合は、G.W.Coates、P.D.HustadおよびS.ReinartzによってAngew.Chem.Int.Ed.,2002,41,2236−2257において最近総説され;H.ZhangおよびK.Nomuraによるその後の出版物(JACS Communications,2005)には、スチレンブロックコポリマーを特に製造するためのリビングZ−N技術の使用が記載されている。ニトロキシド媒介リビングラジカル重合化学の分野における広範な研究が総説されている;C.J.Hawker,A.W.Bosman,and E.Harth,Chemical Reviews,101(12),pp.3661−3688(2001)参照。この総説において概説されているように、リビングまたは安定なフリーラジカル技術を用いてスチレン系ブロックコポリマーを製造することができる。本発明のポリマーにとって、ニトロオキシド媒介重合法は、好ましいリビングまたは安定なフリーラジカル重合プロセスであるが、アニオンプロセス全般には好ましくない。
【0032】
1.ポリマー構造
本発明の重要な態様の一つは、スルホン化ブロックコポリマーの構造に関する。一つの実施形態において、本発明によって製造されるこれらのブロックコポリマーは、それぞれのAブロックがスルホン化されにくいポリマーブロックであり、およびそれぞれのBブロックがスルホン化されやすいポリマーブロックである、少なくとも2つのポリマー末端または外側ブロックAと少なくとも1つの飽和ポリマー内側ブロックBとを有する。
【0033】
好ましい構造は、一般配置A−B−A、(A−B)(A)、(A−B−A)、(A−B−A)X、(A−B)X、A−B−D−B−A、A−D−B−D−A、(A−D−B)(A)、(A−B−D)(A)、(A−B−D)X、(A−D−B)X、A−B−B−B−A、(A−B−B)Xまたはこれらの混合を有し、この場合、nは、2から約30の整数であり、Xは、カップリング剤残基であり、ならびにA、BおよびDは、本明細書において前に定義したとおりである。さらに、指定A−B−B−B−Aは、A−B−B1−B−Aと等価であり得る。
【0034】
最も好ましい構造は、線状A−B−A、(A−B)2X、(A−B−D)nX 2Xおよび(A−D−B)nX 2X構造または放射状構造(A−B)nXおよび(A−D−B)nXであり、この場合のnは、3から6である。このようなブロックコポリマーは、アニオン重合、カチオン重合またはチーグラー・ナッタ重合によって概して製造される。好ましくは、ブロックコポリマーは、アニオン重合によって製造される。いずれの重合においても、ポリマー混合物は、任意の線状および/または放射状ポリマーに加えて、A−Bジブロックコポリマーの一定量を含むことは理解される。
【0035】
Aブロックは、重合された(i)パラ置換スチレンモノマー、(ii)エチレン、(iii)炭素原子数3から18のαオレフィン、(iv)1,3−シクロジエンモノマー、(v)水素化前に35mol%未満のビニル含量を有する共役ジエンのモノマー、(vi)アクリル酸エステル、(vii)メタクリル酸エステルおよび(viii)これらの混合物から選択される1つ以上のセグメントを含む。Aセグメントが1,3−シクロジエンまたは共役ジエンのポリマーである場合、これらのセグメントは、重合後に水素化される。
【0036】
パラ置換スチレンモノマーは、パラ−エチルスチレン、パラ−n−プロピルスチレン、パラ−イソ−プロピルスチレン、パラ−n−ブチルスチレン、パラ−sec−ブチルスチレン、パラ−イソ−ブチルスチレン、パラ−t−ブチルスチレン、パラ−デシルスチレンの異性体、パラ−ドデシルスチレンの異性体、および上述のモノマーの混合物から選択される。好ましいパラ置換スチレンモノマーは、パラ−t−ブチルスチレンモノマーである。モノマーは、個々の源に依存して、モノマーの混合物である場合もある。パラ置換スチレンモノマーの総合純度は、所望のパラ置換スチレンモノマーの少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、およびさらにいっそう好ましくは少なくとも98重量%であることが望ましい。
【0037】
Aブロックがエチレンのポリマーであるとき、上に特記したようにG.W.Coatesらによる総説報文における参照箇所において教示されているようなチーグラー・ナッタプロセスによってエチレンを重合することが有用であり得、この報文の開示は、参照により本明細書に組み込まれている。U.S.Patent No.3,450,795において教示されているようなアニオン重合技術を用いてエチレンブロックを製造することが好ましく、この特許の開示は、参照により本明細書に組み込まれている。このようなエチレンブロックについてのブロック分子量は、一般に、約1,000と約60,000の間である。Aブロックが、炭素原子数3から18のαオレフィンのポリマーであるとき、このようなポリマーは、上に特記したようにG.W.Coatesらによる総説報文における参照箇所において教示されているようなチーグラー・ナッタプロセスによって調製される。好ましくは、αオレフィンは、プロピレン、ブチレン、ヘキサンまたはオクテンであり、プロピレンが最も好ましい。このようなαオレフィンブロックについてのブロック分子量は、一般に、約1,000と約60,000の間である。
【0038】
Aブロックが、1,3−シクロジエンモノマーの水素化ポリマーであるとき、このようなモノマーは、1,3−シクロヘキサジエン、1,3−シクロヘプタジエンおよび1,3−シクロオクタジエンから成る群より選択される。好ましくは、シクロジエンモノマーは、1,3−シクロヘキサジエンである。このようなシクロジエンモノマーの重合は、U.S.Patent No.6,699,941に開示されており、この特許の開示は、参照により本明細書に組み込まれている。水素化されていない重合シクロジエンブロックは、スルホン化されやすいから、シクロジエンモノマーを使用する際にはAブロックを水素化する必要がある。
【0039】
Aブロックが、水素化前に35mol%未満のビニル含量を有する共役非環式ジエンの水素化ポリマーであるとき、共役ジエンは、1,3−ブタジエンであることが好ましい。水素化前のポリマーのビニル含量は、35mol%未満、好ましくは30mol%未満である必要がある。一定の実施形態において、水素化前のポリマーのビニル含量は、25mol%未満、さらにいっそう好ましくは20mol%未満、および15mol%未満であることさえあるが、水素化前のポリマーのより有利なビニル含量の1つは、10mol%未満である。このように、Aブロックは、ポリエチレンのものに似ている結晶性構造を有する。このようなAブロック構造は、U.S.Patent No.3,670,054および4,107,236に開示されており、これらの特許の開示は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0040】
Aブロックは、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルのポリマーである場合もある。これらのポリマーブロックは、U.S.Patent No.6,767,976に開示されている方法に従って製造することができ、この特許の開示は、参照により本明細書に組み込まれている。メタクリル酸エステルの具体的な例としては、第一アルコールとメタクリル酸のエステル、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル、メタクリル酸トリフルオロメチル、メタクリル酸トリフルオロエチル;第二アルコールとメタクリル酸のエステル、例えば、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸シクロヘキシルおよびメタクリル酸イソボルニル;ならびに第三アルコールとメタクリル酸のエステル、例えば、メタクリル酸tert−ブチルが挙げられる。アクリル酸エステルの具体的な例としては、第一アルコールとアクリル酸のエステル、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、アクリル酸トリフルオロメチル、アクリル酸トリフルオロエチル;第二アルコールとアクリル酸のエステル、例えば、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸シクロヘキシルおよびアクリル酸イソボルニル;ならびに第三アルコールとアクリル酸のエステル、例えば、アクリル酸tert−ブチルが挙げられる。必要な場合には、原料として他のアニオン重合性モノマーの1つ以上を(メタ)アクリル酸エステルと共に本発明において使用することができる。場合により使用することができるアニオン重合性モノマーの例としては、メタクリル酸またはアクリル酸モノマー、例えば、メタクリル酸トリメチルシリル、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−tert−ブチルメタクリルアミド、アクリル酸トリメチルシリル、N−イソプロピルアクリルアミドおよびN−tert−ブチルアクリルアミドが挙げられる。さらに、2つ以上のメタクリル酸またはアクリル酸構造、例えばメタクリル酸エステル構造またはアクリル酸エステル構造を分子内に有する多官能性アニオン重合性モノマー(例えば、エチレングリコールジアクリラート、エチレングリコールジメタクリラート、1,4−ブタンジオールジアクリラート、1,4−ブタンジオールジメタクリラート、1,6−ヘキサンジオールジアクリラート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラートおよびトリメチロールプロパントリメタクリラート)を使用することができる。
【0041】
アクリル酸またはメタクリル酸エステルポリマーブロックを製造するために用いる重合プロセスでは、モノマー1つだけ、例えば(メタ)アクリル酸エステルを使用する場合があり、またはこれらの2つ以上を併用する場合がある。モノマー2つ以上を併用するとき、モノマーの組み合わせ、および重合系にモノマーを添加するタイミング(例えば、2つ以上のモノマーの同時添加、もしくは所定の時間間隔での別々の添加)などの条件を選択することによって、ランダム、ブロック、テーパードブロックなどの共重合方式から選択される任意の共重合方式を果たすことができる。
【0042】
Aブロックは、Bブロックについて述べたビニル芳香族モノマー15mol%以下を含有する場合もある。一部の実施形態において、Aブロックは、Bブロックについて述べたビニル芳香族10mol%以下を含有する場合があり、好ましくは、これらは、5mol%以下しか含有しない、および特に好ましくは2mol%以下しか含有しない。しかし、最も好ましい実施形態では、Aブロックは、Bブロックについて述べたビニルモノマーを含有しない。従って、Aブロックにおけるスルホン化レベルは、Aブロックにおける全モノマーの0から15mol%までであり得る。これらの範囲がこれらと共に列挙するmol%のすべての組み合わせを含み得ることに留意されたい。
【0043】
飽和Bブロックに関しては、それぞれのBブロックが、非置換スチレンモノマー、オルト置換スチレンモノマー、メタ置換スチレンモノマー、α−メチルスチレンモノマー、1,1−ジフェニルエチレンモノマー、1,2−ジフェニルエチレンモノマーおよびこれらの混合物から選択される1つ以上の重合ビニル芳香族モノマーのセグメントを含む。すぐ前で述べたモノマーおよびポリマーに加えて、Bブロックは、このようなモノマーと、20mol%と80mol%の間のビニル含量を有する、1,3−ブタジエン、イソプレンおよびこれらの混合物から選択される、共役ジエンとの水素化コポリマーを含む場合もある。水素化されたジエンを有するこれらのコポリマーは、ランダムコポリマーである場合もあり、テーパードコポリマーである場合もあり、ブロックコポリマーである場合もあり、または制御分布コポリマーである場合もある。従って、2つの好ましい構造があり、一方の構造は、Bブロックが水素化されており、および共役ジエンとこの段落で述べたビニル芳香族モノマーとのコポリマーを含み、もう一方の構造は、Bブロックが、モノマーの性質ゆえに飽和されている非置換スチレンモノマーブロックであり、および追加の水素化プロセス段階を必要としない。制御分布構造を有するBブロックは、U.S.Patent No.7,169,848に開示されており、この特許の開示は、参照により本明細書に組み込まれている。この‘848特許は、本発明において特許請求の範囲に記載する構造ではないが、スルホン化ブロックコポリマーの調製も開示している。スチレンブロックを含むBブロックを本明細書に記載する。一つの好ましい実施形態において、飽和Bブロックは、不飽和スチレンブロックである。そのときポリマーは別の水素化段階を必要としないからである。
【0044】
加えて、本発明のもう一つの態様は、20℃未満のガラス転移温度を有する少なくとも1つの耐衝撃性改良因子Bブロックを含むことである。耐衝撃性改良因子ブロックDの一つのこのような例は、20mol%と80mol%の間の水素化前のビニル含量と1,000と50,000の間のピーク分子量とを有する、イソプレン、1,3−ブタジエンおよびこれらの混合物から選択される共役ジエンの水素化ポリマーまたはコポリマーを含む。もう一つの例は、1,000から50,000のピーク分子量を有するアクリラートまたはシリコーンポリマーである。さらにもう一つの例において、Dブロックは、1,000から50,000のピーク分子量を有するイソブチレンのポリマーである。
【0045】
それぞれのAブロックは、約1,000と約60,000の間のピーク分子量を独立して有し、およびそれぞれのBブロックは、約10,000と約300,000の間のピーク分子量を独立して有する。好ましくは、それぞれのAブロックは、2,000と50,000の間、さらに好ましくは3,000と40,000の間、およびさらにいっそう好ましくは3,000と30,000の間のピーク分子量を有する。好ましくは、それぞれのBブロックは、15,000と250,000の間、さらに好ましくは20,000と200,000の間、およびさらにいっそう好ましくは30,000と100,000の間のピーク分子量を有する。これらの範囲がこれらと共に列挙するピーク分子量のすべての組み合わせを含み得ることに留意されたい。本明細書において用いる場合、用語「分子量」は、ポリマーの、またはコポリマーのブロックの、g/molでの真の分子量を指す。本明細書および特許請求の範囲において言及する分子量は、ASTM 3536に従って行われるものなどの、ポリスチレン較正標準を使用するゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。GPCは、ポリマーを分子サイズに従って分離する周知の方法であり、最大分子量が最初に溶離される。市販のポリスチレン分子量標準物質を使用してこのクロマトグラフを較正する。このように較正したGPCを用いて測定したポリマーの分子量がスチレン当量分子量である。ポリマーのスチレン含量とジエンセグメントのビニル含量がわかっているとき、スチレン当量分子量を真の分子量に変換することができる。用いる検出器は、好ましくは、紫外線−屈折率併用検出器である。本明細書に明示する分子量は、真の分子量に変換される、GPCトレースのピークで測定したものであり、「ピーク分子量」と一般に呼ばれる。
【0046】
好ましくは、スルホン化ポリマーは、約8mol%から約80mol%、好ましくは約10mol%から約60mol%のAブロック、さらに好ましくは15mol%より多くのAブロック、およびさらにいっそう好ましくは約20から約50mol%のAブロックを有する。
【0047】
スルホン化ブロックコポリマー中の、非置換スチレンモノマー、オルト置換スチレンモノマー、メタ置換スチレンモノマー、α−メチルスチレンモノマー、1,1−ジフェニルエチレンモノマーおよび1,2−ジフェニルエチレンモノマーである、ビニル芳香族モノマーの相対量は、約5から約90mol%、好ましくは約5から約85mol%である。代替実施形態において、この量は、約10から約80mol%、好ましくは約10から約75mol%、さらに好ましくは約15から約75mol%であり、約25から約70mol%が最も好ましい。これらの範囲がこれらと共に列挙するmol%のすべての組み合わせを含み得ることに留意されたい。
【0048】
飽和Bブロックについては、一つの好ましい実施形態において、それぞれのBブロック中の、非置換スチレンモノマー、オルト置換スチレンモノマー、メタ置換スチレンモノマー、α−メチルスチレンモノマー、1,1−ジフェニルエチレンモノマーおよび1,2−ジフェニルエチレンモノマーである、ビニル芳香族モノマーのmol%は、約10から約100mol%、好ましくは約25から約100mol%、さらに好ましくは約50から約100mol%、さらにいっそう好ましくは約75から約100mol%、および最も好ましくは100mol%である。これらの範囲がこれらと共に列挙するmol%のすべての組み合わせを含み得ることに留意されたい。
【0049】
スルホン化のレベルについては、典型的なレベルは、それぞれのBブロックが1つ以上のスルホン酸官能基を含有する場合のレベルである。スルホン化の好ましいレベルは、それぞれのBブロック中の、非置換スチレンモノマー、オルト置換スチレンモノマー、メタ置換スチレンモノマー、α−メチルスチレンモノマー、1,1−ジフェニルエチレンモノマーおよび1,2−ジフェニルエチレンモノマーである、ビニル芳香族モノマーのmol%に基づいて、10から100mol%、さらに好ましくは約20から95mol%、およびさらにいっそう好ましくは約30から90mol%である。スルホン化のこの範囲がこれと共に列挙するmol%のすべての組み合わせを含み得ることに留意されたい。スルホン化のレベルを、例えば、2回の別個の滴定(「二段滴定法」)によって分析して、スチレンポリマースルホン酸、硫酸、非高分子量副生成物スルホン酸(2−スルホイソ酪酸)、および非スルホン化副生成物イソ酪酸のレベルを決定することができる。それぞれの滴定のために、反応生成物溶液の約5グラムのアリコートをテトラヒドロフラン約100mLに溶解し、水2mLおよびメタノール2mLを添加する。第一の滴定では、この溶液をメタノール中の0.1Nシクロヘキシルアミンで電位差滴定して、2つの終点を得る;第一の終点は、サンプル中のすべてのスルホン酸基と、硫酸の第一の酸性プロトンに対応し、ならびに第二の終点は、硫酸の第二の酸性プロトンに対応する。第二の滴定では、この溶液を約3.5:1のメタノール:水中の0.14N水酸化ナトリウムで電位差滴定して、3つの終点を得る:第一の終点は、サンプル中のすべてのスルホン酸基と、硫酸の第一および第二の酸性プロトンに対応し;第二の終点は、2−スルホイソ酪酸のカルボン酸に対応し;ならびに第三の終点は、イソ酪酸に対応する。
【0050】
2.ポリマーを調製するための総合アニオン性プロセス
ポリマーを調製するプロセスに関して、アニオン重合プロセスは、リチウム開始剤を用いて溶液状態で適するモノマーを重合することを含む。重合ビヒクルとして使用する溶剤は、形成するポリマーのリビングアニオン鎖末端と反応しない、市販の重合ユニットにおいて容易に取り扱われる、および生成物ポリマーに適切な溶解特性をもたらす、任意の炭化水素であり得る。例えば、イオン化し得る水素原子が一般には無い非極性脂肪族炭化水素は、特に適する溶剤になる。環式アルカン、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンおよびシクロオクタン(これらのすべてが比較的非極性である。)が使用されることが多い。他の適する溶剤は、当業者に公知であるし、および所定のプロセス条件セット(考慮される主因子の1つは重合温度である。)において有効に機能するようにこれらを選択することができる。
【0051】
本発明のブロックコポリマーを調製するための出発原料としては、上で述べた初期仕込みモノマーが挙げられる。アニオン重合のための他の重要な出発原料としては、1つ以上の重合開始剤が挙げられる。本発明において、このような開始剤としては、例えば、アルキルリチウム化合物、例えばs−ブチルリチウム、n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、アミルリチウムなど、ならびに他の有機化合物(m−ジイソプロペニルベンゼンのジ−sec−ブチルリチウム付加体などの二官能性開始剤(di−initiator)を含む。)が挙げられる。他のこのような二官能性開始剤は、U.S.Patent No.6,492,469に開示されており、それぞれが参照により本明細書に組み込まれている。様々な重合開始剤のうち、s−ブチルリチウムが好ましい。開始剤は、(モノマーおよび溶剤を含む)重合混合物中で、所望のポリマー鎖1本あたり1開始剤分子に基づいて計算した量で使用することができる。リチウム開始剤プロセスは周知であり、例えば、U.S.Patent No.4,039,593およびRe27,145に記載されており、これらの記載は参照により本明細書に組み込まれている。
【0052】
本発明のブロックコポリマーを調製するための重合条件は、アニオン重合に一般に用いられるものに概して類似している。本発明では、好ましくは約−30℃から約150℃、さらに好ましくは約10℃から約100℃、および最も好ましくは、工業制限にかんがみて、約30から約90℃で重合を行う。重合は、不活性雰囲気で、好ましくは窒素中で行い、およびまた約0.5から約10barの範囲内の圧力下で遂行することができる。この共重合は、約12時間未満を一般に必要とし、ならびに温度、モノマー成分の濃度、および所望されるポリマーの分子量に依存して、約5分から約5時間で遂行することができる。モノマー2つ以上を併用するとき、ランダム、ブロック、テーパードブロック、制御分布ブロックなどの共重合形式から選択される任意の共重合形式を利用することができる。
【0053】
アニオン重合プロセスをアルキルアルミニウム、アルキルマグネシウム、アルキル亜鉛またはこれらの組み合わせなどのルイス酸の添加によって抑制できることは理解される。重合プロセスに対する添加されるルイス酸の効果(affects)は、1)リビングポリマー溶液の粘度を低下させること(これによって、より高いポリマー濃度で作動する、従ってより少ない溶剤を使用するプロセスが可能になる。)、2)リビングポリマー鎖末端の熱安定性を向上させること(これは、より高温での重合を可能にし、およびまたポリマー溶液の粘度を低下させ、これによってより少ない溶剤の使用が可能になる。)、および3)反応速度を遅くすること(これは、標準的なアニオン重合プロセスにおいて使用されていたものと同じ反応熱除去技術を用いながら、より高い温度での重合を可能にする。)である。アニオン重合技術を抑制するためにルイス酸を使用することの加工上の恩恵は、U.S.Patent No.6,391,981、6,455,651および6,492,469に開示されており、これらの特許は、参照により本明細書に組み込まれている。関連情報は、U.S.Patent No.6,444,767および6,686,423に開示されており、それぞれが参照により本明細書に組み込まれている。このような抑制アニオン重合プロセスによって製造されたポリマーは、従来のアニオン重合プロセスを用いて調製されたものと同じ構造を有することができ、従って、このプロセスは、本発明のポリマーの製造に有用であり得る。ルイス酸で抑制されたアニオン重合プロセスについては、100℃と150℃の間の反応温度が好ましい。これらの温度では、非常に高いポリマー濃度での反応の実施を利用できるからである。ルイス酸の化学量論的過剰量を使用できるが、殆どの場合、過剰なルイス酸の付加的費用を正当化するほどの加工改善の恩恵はない。抑制アニオン重合技術でのプロセス性能の改善を達成するために、リビングアニオン鎖末端1molあたりルイス酸約0.1から約1molを使用することが好ましい。
【0054】
放射状(分岐)ポリマーの調製は、「カップリング」と呼ばれる後重合段階を必要とする。上記放射型の式において、nは、2から約30、好ましくは約2から約15、およびさらに好ましくは2から6の整数であり、ならびにXは、カップリング剤の残分または残基である。様々なカップリング剤が当分野において公知であり、これらを本発明の結合ブロックコポリマーの調製に使用することができる。これらとしては、例えば、ジハロアルカン、ハロゲン化ケイ素、シロキサン、多官能性エポキシド(cpoxide)、シリカ化合物、一価アルコールとカルボン酸のエステル(例えば、安息香酸メチルおよびアジピン酸ジメチル)、およびエポキシ化油が挙げられる。例えば、U.S.Patent No.3,985,830、4,391,949および4,444,953ならびにCanada Patent No.716,645(それぞれが参照により本明細書に組み込まれている。)に開示されているようにポリアルケニルカップリング剤を用いて星形ポリマーを調製することができる。適するポリアルケニルカップリング剤としては、ジビニルベンゼン、および好ましくはm−ジビニルベンゼンが挙げられる。テトラ−アルコキシシラン、例えばテトラ−メトキシシラン(TMOS)およびテトラ−エトキシシラン(TEOS)、トリ−アルコキシシラン、例えばメチルトリメトキシシラン(MTMS)、脂肪族ジエステル、例えばアジピン酸ジメチルおよびアジピン酸ジエチル、ならびにジグリシジル芳香族エポキシ化合物、例えば、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンの反応から誘導されるジグリシジルエーテルが好ましい。
【0055】
3.水素化ブロックコポリマーを調製するためのプロセス
述べたように、一部の事例では、即ち(1)B内側ブロック内にジエンがあるとき、(2)Aブロックが1,3−シクロジエンのポリマーであるとき、(3)耐衝撃性改良因子ブロックDがあるとき、および(4)Aブロックが、35mol%未満のビニル含量を有する共役ジエンのポリマーであるとき、ブロックコポリマーを選択的に水素化して任意のエチレン性不飽和を除去する必要がある。水素化は、最終ポリマーの熱安定性、紫外線安定性、酸化安定性、および従って、耐候性を一般に改善し、ならびにAブロックまたはDブロックのスルホン化の任意の機会を低下させる。
【0056】
水素化は、先行技術分野において公知の幾つかの水素化または選択的水素化プロセスのいずれによって行うこともできる。例えば、このような水素化は、例えば、U.S.Patent No.3,595,942、3,634,549、3,670,054、3,700,633、およびRe27,145において教示されているものなどの方法を用いて遂行することができ、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれている。これらの方法は、エチレン性不飽和を含有するポリマーを水素化するように機能し、および適する触媒の作用に基づく。このような触媒、または触媒前駆体は、適切な還元剤、例えば、アルキルアルミニウム、または元素周期表のI−A、II−AおよびIII−B族から選択される金属、特にリチウム、マグネシウムもしくはアルミニウムのハロゲン化物と化合している、VIII族金属、例えばニッケルまたはコバルトを好ましくは含む。この調製は、適切な溶剤または希釈剤中、約20℃から約80℃の温度で遂行することができる。有用である他の触媒としては、チタン系の触媒系が挙げられる。
【0057】
共役ジエン二重結合の少なくとも約90%が還元されており、およびアレーン二重結合のゼロ%と10%の間が還元されているような条件下で、水素化を行うことができる。好ましい範囲は、還元される共役ジエン二重結合少なくとも約95%であり、およびさらに好ましくは、共役ジエン二重結合の約98%が還元される。水素化が完了したら、この溶液をスルホン化することができる。
【0058】
4.スルホン化ポリマーを製造するためのプロセス
ポリマーを重合、および所望される場合には、水素化すると、今般記載する技術のプロセスによって非ハロゲン化溶剤中で硫酸アシルなどのスルホン化試薬を使用してこれをスルホン化することができる。
【0059】
一般に、今般記載する技術のプロセスは、硫酸アシルを使用してシクロヘキサンもしくはメチルシクロヘキサンなどの非ハロゲン化溶剤中で、またはこのような溶剤と脂肪族溶剤、例えばヘプタン、オクタンなどとの混合物中で、上に記載したような構造のスチレンブロックコポリマーをスルホン化することができる。本技術の反応系におけるスルホン化ポリマーは、良好なスルホン化転化を達成するために適切な溶解度を示す。本技術の一部の好ましい実施形態において、反応系にはハロゲン化溶剤が実質的に無い。本技術の方法に従って、スルホン化の少なくとも初期段階の間、前駆体ポリマー濃度をこの前駆体ポリマーの限界濃度より下に維持することによって、反応混合物、反応生成物、または両方におけるポリマー沈殿および/または使用不能にするゲル化が実質的に無い様式で、高いスチレンスルホン化レベルを達成することができる。
【0060】
一般に、ポリマー濃度は、ハロゲン化溶剤が好ましくは実質的にない反応混合物の総重量に基づいて、約1重量%から約30重量%、または約1重量%から約20mol%、または約1重量%から約15重量%、または約1重量%から約12重量%、または約1重量%から約10重量%の範囲内に入る。
【0061】
前駆体の濃度の範囲がこれと共に列挙する重量%のすべての組み合わせを含み得ることに留意されたい。例えば、構造(psBS−EB−S)nのものであって、約42%のスチレン含量および約43%のパラ−tert−ブチルスチレン含量を有するブロックコポリマーのスルホン化は、約5.0から10.0%のポリマー濃度、および好ましくはそれより高いポリマー濃度で適便に行われる。
【0062】
少なくとも一部の実施形態において、ポリマー濃度をこの限界濃度より下で維持することによって、ゲル化につながる高濃度状態と比較して低減された副生成物カルボン酸濃度を有する反応混合物が得られる結果となり得る。さらに、本技術の方法によってポリマー沈殿または使用不能にするゲル化を伴わずに達成することができるスチレン単位スルホン化度は、非ハロゲン化脂肪族溶剤中でのポリスチレンスルホン化について文献に報告されているものを意外にもはるかに上回る。
【0063】
今般記載する技術の方法を実施する際に、硫酸アシルの生成のために任意の公知の方法を用いることができる。アシル基は、C2からC8、またはC3からC8、またはC3からC5、線状、分岐または環式カルボン酸、酸無水物、もしくは酸塩化物、またはこれらの組み合わせから好ましくは誘導される。好ましくは、これらの化合物は、非芳香族炭素−炭素二重結合、ヒドロキシル基、またはスルホン化反応条件下で硫酸アシルと反応性であるまたは容易に分解する、任意の他の官能基を含有しない。例えば、カルボニル官能基からの脂肪族第4級炭素をα位に有するアシル基(例えば無水トリメチル酢酸から誘導された硫酸アシル)は、ポリマースルホン化反応中に容易に分解するようであり、および今般記載する技術では好ましくは避けるべきものである。芳香族カルボン酸、酸無水物、および酸塩化物、例えば、無水安息香酸および無水フタル酸から誘導されるものも、本技術における硫酸アシルの生成のために有用なアシル基の範囲に含まれる。さらに好ましくは、アシル基は、プロピオニル、n−ブチリルおよびイソブチリルから成る群より選択される。さらにいっそう好ましくは、アシル基は、イソブチリルである。硫酸イソブチリルは、高いポリマースルホン化度および比較的最小限の副生成物形成度をもたらすことができることを発見した。
【0064】
無水カルボン酸と硫酸からの硫酸アシルの形成は、次の一般式によって表すことができる:
【0065】
【化1】

【0066】
硫酸アシルは、スルホン化反応の過程でゆっくりと分解されて、次の一般式のα−スルホン化カルボン酸を生じさせる:
【0067】
【化2】

【0068】
今般記載する技術の一つの実施形態では、非ハロゲン化脂肪族溶剤中のポリマーの溶液に添加する前に別の「予備生成」反応で行われる反応において、無水カルボン酸と硫酸から硫酸アシル試薬を得る。この予備生成反応は、溶剤を用いて行ってもよいし、または溶剤を用いずに行ってもよい。硫酸アシルを予備生成するために溶剤を使用するとき、この溶剤は、好ましくは非ハロゲン化溶剤である。または、硫酸アシル試薬を非ハロゲン化脂肪族溶剤中のポリマーの溶液中でのインサイチュー反応で得ることができる。本技術のこの実施形態によると、酸無水物の硫酸に対するモル比は、約0.8から約2、および好ましくは約0.8から約1.4であり得る。この好ましい方法において使用される硫酸は、約93%より高い濃度を好ましくは有し、さらに好ましくは約95%より高い濃度を有する。発煙硫酸強度が、反応混合物の意図しない炭化を回避するまたは最小限にするために十分低いのであれば、硫酸アシルを生成するためのインサイチュー反応において硫酸の代替として発煙硫酸を使用できることは、当業者には理解される。
【0069】
本技術のもう一つの実施形態において、脂肪族溶剤中のポリマーの溶液に添加する前に別の「予備生成」反応で行われる反応において、無水カルボン酸と発煙硝酸から硫酸アシル試薬を得ることができ、この場合、発煙硫酸強度は、遊離三酸化硫黄約1%から約60%、または遊離三酸化硫黄約1%から約46%、または遊離三酸化硫黄約10%から約46%の範囲内であり、および酸無水物の、発煙硫酸中に存在する硫酸に対するモル比は、約0.9から約1.2である。
【0070】
または、硫酸、発煙硫酸、または三酸化硫黄の任意の組み合わせとの反応によって無水カルボン酸から硫酸アシル試薬を調製することもできる。さらに、クロロ硫酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、またはこれらの任意の組み合わせとの反応によってカルボン酸から硫酸アシル試薬を調製することができる。さらに、硫酸との反応によってカルボン酸塩化物から硫酸アシル試薬を調製することもできる。または、カルボン酸、酸無水物、および/または酸塩化物の任意の組み合わせから硫酸アシルを調製することができる。
【0071】
硫酸アシルでのポリマースチレン系繰り返し単位のスルホン化は、次の一般式によって表すことができる:
【0072】
【化3】

【0073】
ポリマー溶液中に存在するスチレン繰り返し単位のモル数に対して使用することができる硫酸アシル試薬の量は、非常に低い高スルホン化ポリマー生成物レベルから、高い重度スルホン化ポリマー生成物レベルにわたり得る。硫酸アシルのモル量は、所定の方法から生じさせることができる硫酸アシルの理論量として定義することができ、この量は、反応における制限試薬によって決まる。本技術の一部の実施形態による硫酸アシルのスチレン繰り返し単位に対するモル比は、約0.1から約2.0、好ましくは約0.1から約1.5、およびさらにいっそう好ましくは約0.1から約1.3であり得る。
【0074】
今般記載する技術の少なくとも一部の実施形態によると、ブロックポリマー中のスルホン化されやすいビニル芳香族モノマーのスルホン化度は、スルホン化ポリマー1グラムあたりスルホン酸約0.4ミリ当量(meq)より大きく、またはスルホン化ポリマー1グラムあたりスルホン酸約0.6meqより大きく、またはスルホン化ポリマー1グラムあたりスルホン酸約1.0meqより大きく、またはスルホン化ポリマー1グラムあたりスルホン酸約1.4meqより大きい。例えば、上で説明した前駆体ポリマーを、今般記載する技術の方法に従ってスルホン化した後、典型的なスルホン化レベルは、それぞれのBブロックが1つ以上のスルホン酸官能基を含有するレベルである。好ましいスルホン化レベルは、それぞれのBブロック中の、非置換スチレンモノマー、オルト置換スチレンモノマー、メタ置換スチレンモノマー、α−メチルスチレン、1,1−ジフェニルエチレンモノマー、1,2−ジフェニルエチレンモノマーまたはこれらの混合物であり得る、ビニル芳香族芳香族モノマーのmol%に基づいて、約10から約100mol%、または約20から95mol%、または約30から約90mol%、およびまたは約40から約70mol%である。スルホン化の範囲がこれと共に列挙するmol%のすべての組み合わせを含み得ることに留意されたい。
【0075】
スルホン化ポリマーのスルホン化レベルまたはスルホン化度は、当業者に公知であるようなNMRおよび/もしくは滴定法、ならびに/または下の実施例において説明するおよび当業者に理解され得るような2回の別個の滴定を用いる方法によって、測定することができる。例えば、本技術の方法から得られる溶液は、63℃でH NMRによって分析することができる。H NMRスペクトルにおける芳香族シグナルの積分から、スチレンスルホン化百分率を計算することができる。もう一つの例については、2回の別個の滴定(「二段滴定法」)によって反応生成物を分析して、スチレン系ポリマースルホン酸、硫酸および非高分子量副生成物スルホン酸(例えば2−スルホーアルキルカルボン酸)のレベルを決定することができ、その後、質量バランスに基づいてスチレンスルホン化度を計算することができる。または、アルコールと水の混合溶剤中のNaOH飽和溶液でのテトラヒドロフランに再び溶解した乾燥ポリマーサンプルの滴定によって、スルホン化レベルを決定することができる。この最後の場合、副生成物の酸の厳密な除去が、好ましくは保証される。
【0076】
いずれかの特定の理論に拘束されるものではないが、ポリマーが、溶剤からスチレンスルホン酸部分を隔離するミセル(溶液中の凝集体)を形成し、その結果、そうしなければゲル化につながり得るポリマー会合性増粘様挙動を防止するまたは最小にするメカニズムによって、ポリマー沈殿または使用不能にするゲル化を伴わずに非ハロゲン化溶剤中で良好なスルホン化レベルを獲得することができると考えられる。このような隔離の重要性は、反応媒質から単離すると、このスルホン化ポリマー生成物が同じ非ハロゲン化脂肪族溶剤には再び溶解しないが、より極性が高い溶剤、または溶剤ブレンド、例えばテトラヒドロフラン(THF)、またはキシレンとイソプロピルアルコールの混合物には容易に溶解するということによって例証される。スルホン化ポリマーミセルおよび/または(凝集体)の形成の証拠は、光散乱に基づく粒径分析によって得られた。出発ポリマー組成および溶剤選択に依存して、一部の事例では、希釈条件下での光散乱によって判断すると、スルホン化前の初期ポリマー溶液にはミセルが大抵は無く、その後、スルホン化変換における比較的早期にこのような凝集体を形成する。他の事例では、初期ポリマー溶液は、最小限の光散乱プロフィール変化で直接スルホン化する凝集化学種から主として成り得る。さらに一部の他の事例では、初期ポリマー溶液は、ミセルと非凝集ポリマーの混合物から成り得る。ブロックの異なる溶解度に基づくブロックコポリマーからのミセル形成は、当分野において周知である。例えば、J.Noolandi and K.M.Hong,Macromolecules(16),page 1443,1983およびJ.R.Quintana,M.Villacampa,M.Munoz,A.Andrio and I.Katime,Macromolecules,(25),page 3125 and 3129,1992を参照のこと。ミセル溶液からの光散乱については、A.S.Yeung and C.W.Frank,Polymer.31,pages 2089−2100 and 2101−2111(1990)を参照のこと。
【0077】
今般記載する技術は、非ハロゲン化溶剤を使用して反応混合物を形成する。本技術の少なくとも一部の実施形態によると、反応混合物にはハロゲン化溶剤が実質的に無い。非ハロゲン化溶剤は、約5から約12個の炭素を有する線状、分岐、および環式芳香族炭化水素であり得る。適する非ハロゲン化溶剤の例としては、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、シクロヘプタン、シクロオクタン、イソペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、イソヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、ノナン、デカンおよびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。約70から約220℃の沸点範囲を有する脂肪族炭化水素も挙げられる。好ましい非ハロゲン化溶剤は、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、シクロヘプタン、シクロオクタン、またはこれらの混合物である。さらに好ましい非ハロゲン化溶剤は、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、またはこれらの混合物である。
【0078】
本技術の少なくとも一部の実施形態について、ポリマーミセル(凝集体)は、単一非ハロゲン化溶剤を使用したときでさえ、スルホン化前に予備形成できることを発見した。本技術の少なくとも一部の他の実施形態について、第一の非ハロゲン化脂肪族溶剤中の前駆体ポリマーの溶液への第二の非ハロゲン化脂肪族溶剤の添加は、ポリマーミセルおよび/または凝集体の「予備形成」をもたらし得るまたは助長し得ることをさらに発見した。この場合、好ましくは、スルホン化されることとなる前駆体ポリマーは、例えばシクロヘキサンであり得る第一の非ハロゲン化溶剤に実質的に可溶性であり、およびスルホン化されやすいブロックは、例えば約70から約220℃の沸点範囲を有するn−ヘプタンまたは他の脂肪族炭化水素であり得る第二の非ハロゲン化溶剤に実質的に不溶性である。一部の事例では、これらの予備形成ポリマーミセルは、第二の溶剤の添加なしに達成できるものより相当に高い濃度での実質的なポリマーのゲル化を伴わないポリマーのスルホン化を可能にすることができる。加えて、このアプローチは、一部の事例では、ポリマースルホン化変換率および副生成物の最少化の点から、C硫酸アシル(硫酸プロピル)などのより極性の高い硫酸アシルの使用効果を実質的に改善することができる。言い換えると、このアプローチは、より極性の高いスルホン化試薬の使用効果を改善することができる。
【0079】
今般記載する技術の硫酸アシルと芳香族含有ポリマー(例えば、スチレン系ブロックコポリマー)とのスルホン化反応は、約20℃から約150℃、または約20℃から約100℃、または約20℃から約80℃、または約30℃から約70℃、または約40℃から約60℃の範囲の反応温度で(例えば、約50℃で)行うことができる。この反応時間は、反応温度に依存して、1分未満からおおよそ24時間以上の範囲であり得る。無水カルボン酸と硫酸のインサイチュー反応を利用する一部の好ましい硫酸アシル実施形態において、反応混合物の初期温度は、所期のスルホン化反応温度とほぼ同じであり得る。または、初期温度は、所期の後続スルホン化反応温度より低い場合がある。代替実施形態では、約0.5から約2時間、または約1から約1.5時間、約20℃から約40℃で(例えば、約30℃で)硫酸アシルをインサイチューで生成させることができ、その後、この反応混合物を約40℃から約65℃に加熱して、反応の完了を促進することができる。一部の事例では、ゆっくりとしたHSO添加を考慮に入れて、より低い温度での生成が有用である、その後、反応混合物を加熱するために待つ必要がない。
【0080】
今般記載する技術の一部の実施形態において、非ハロゲン化脂肪族溶剤中での芳香族含有ポリマーのスルホン化は、回分反応器または半回分反応器において芳香族含有ポリマーとスルホン化試薬を接触させることによって行うことができる。本技術の一部の他の実施形態において、例えば、連続攪拌タンク反応器または一連の2機以上の連続攪拌タンク反応器の使用によって可能にすることができる連続反応で、スルホン化を行うことができる。
【0081】
本技術の方法は、U.S.Pub Patent Application2007/0021569に記載されているような膜およびコーティングの形成に使用効果があるスルホン化スチレンブロックコポリマーの調製に有用である。一部の実施形態において、本プロセスの結果として生ずるスルホン化ポリマーの溶液を、このポリマーを単離することなく使用して、膜、コーティングまたは他の物品を、直接形成することができ、またはこの物品の性能を改善するための少量成分を添加して形成することができる。今般記載する技術の方法は、他の種類のポリマーを、スチレンを含有するものであろうと、他の芳香族官能基を含有するものであろうと、不飽和であろうと、またはスルホン化試薬に対して別様に反応性であろうと、特に、これらのポリマーが、非ハロゲン化脂肪族溶剤から沈殿しないように、または非ハロゲン化脂肪族溶剤中で使用不能にするゲル化を示さないように、これらが、分子内「圧潰」または分子間凝集によって溶剤から離してスルホン酸基を隔離することができる場合、スルホン化するために利用できることも考えられる。
【0082】
5.スルホン化ポリマーを中和するためのプロセス
本発明のもう一つの実施形態は、改質されたブロックコポリマーの塩基での「中和」である。これは、高温でポリマーの改善された安定性またはポリマーの強化された強度が必要とされるときは所望であり得る。スルホン化ブロックコポリマーの中和は、酸部分の腐食性を低下させる傾向もあり、ブロックコポリマーにおける相分離の駆動力を強化し、炭化水素溶剤に対する耐性を改善し、および多くの場合、スルホン化反応の副生成物からのスルホン化ポリマーの回収を改善する。中和は、U.S.Patent No.5,239,010および5,516,831に、ならびにUS Pub.App.No.2007/0021569において教示されており、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれている。
【0083】
6.スルホン化ポリマー溶液とCからCアルコールの反応
本発明の重要な態様の一つは、CからC硫酸アシルでのブロックコポリマーのスルホン化中に形成される非スルホン化残留カルボン酸、例えば、硫酸イソブチリル生成および反応から形成されるイソ酪酸に関する。生成され得る非スルホン化残留カルボン酸の量は、この溶液の総重量に基づいて、一般に、約0.08から30重量%の範囲である。スルホン化後の溶液中の非スルホン化残留カルボン酸の量が、スルホン化段階中のこの溶液の総重量に基づいて、2.0重量%未満、好ましくは1.0重量%未満であることが重要である。そうでなければ、このスルホン化ブロックコポリマー溶液から製造された膜または製品中に十分な残留カルボン酸が存在し、これは内部応力をもたらし、悪臭も放つ。この残留カルボン酸のレベルを、CからC硫酸アシルと前駆体ブロックコポリマーの反応によって形成された溶液をCからCアルコールと反応させることによって、容易に低下させることができることが判明した。CからCアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノールおよびイソブタノールが挙げられ、メタノールおよびエタノールが好ましい。メタノールは、最も速く反応し、結果として最も揮発性の高いエステルを生じさせるので、最も有効で好ましいことが判明した。残留カルボン酸をエステルに転化させる。このようなエステルは、対応する酸より揮発性が高く、そのため形成プロセス中にこれらをより容易に除去することができる。さらに、例えばイソ酪酸メチルおよびエチルは芳香添加剤として使用されることが多いので、エステルは、不快な臭気もたらさないが、この酸は、より不快な臭気として一般に知覚される。硫酸イソブチリルをスルホン化剤として利用し、メタノールをCからCアルコールとして利用する、エステルを形成するための反応を下に示す:
【0084】
【化4】

【0085】
アルコールの残留カルボン酸に対するモル比が、少なくとも0.9:1、好ましくは0.9:1から4:1、およびさらに好ましくは0.9:1から2:1であることが重要である。図3に示すように、少なくとも約90%エステル化を達成するには、このモル比が少なくとも約1:1でなければならない。エステル化反応は、水を生じさせ、平衡に達し、この平衡は、アルコールの残留カルボン酸のモル比に依存する。追加の水は、エステル化反応の平衡を所望のエステルから遠くへシフトさせる場合があるので、この反応において使用するアルコールは、含水量が低いことが重要である。好ましくは、アルコールは、重量で5%未満のHO、さらに好ましくは重量で1%未満のHOを含有する。メタノールのイソ酪酸に対するモル比が1.5:1であるおよびこれより高いとき、エステル化レベルは、約98%である。使用すべきアルコールの量の選択は、必要とされる残留酸エステル化度にばかりでなく、フィルムおよび他の物品への下流の加工において所望される特性(即ち、フィルム形成における溶剤の役割、適正な相分離など)にも、およびアルコール処理溶液の特性、特に腐食性にも依存することがある。
【0086】
他の条件に関して、反応のための温度は、約10℃から約150℃である場合があり、または約20℃から約100℃である場合があり、およびまたは約20℃から約70℃である場合もある。エステル化反応が完了に近づくために必要な時間は、温度条件に依存し、温度が高いほど反応は速く進行する。好ましくは、エステル化反応が行われるために見込まれる時間量は、フィルムなどへのポリマー溶液のさらなる加工の前にこの反応が最大転化率に確実に達しているために十分な量である。
【0087】
7.膜を製造するためのプロセス
新規組成物は、卓越した性能特性を有する膜の製造に特に適する。このような膜としては、(1)自立膜、(2)膜が布地を含有する複合材、(3)スルホン化ポリマーが支持体上の薄層である膜、および(4)コーティングが挙げられる。これらの膜は、様々な用途に用いることができる。
【0088】
本発明は、上で説明した膜を製造するための様々なプロセスを提供する。自立膜のために好ましいプロセスは、a)本発明のスルホン化ブロックコポリマーとカルボン酸のエステルと非ハロゲン化脂肪族溶剤とを含む溶液を調製する段階、およびb)これ自体公知のプロセス、例えば流延、ドクタリング、噴霧または遠心プロセスによってこの溶液を成形して、膜を生じさせる段階を含む。詳細には、本発明は、膜を調製するためのプロセスに関し、このプロセスは、
(a)本発明のスルホン化ブロックコポリマーと残留カルボン酸のエステルと非ハロゲン化溶剤とを含む流体組成物を、好ましくは高湿環境で、除去可能な基材の表面に塗布する段階、
(b)流体組成物を伸展させて除去可能な基材上に均一な厚さの層を形成する段階、
(c)流体組成物から溶剤を蒸発させて、結果として固体膜を生じさせる段階、および
(d)除去可能な基材から固体膜を除去する段階
を含む。
【0089】
または、本発明は、少なくとも2つの層を含有する膜を調製するためのプロセスに関し、このプロセスは、
(a)本発明のスルホン化ブロックコポリマーとイソ酪酸のエステルと非ハロゲン化脂肪族溶剤との流体組成物を多孔質基材の表面に塗布する段階、
(b)流体溶液を伸展させて多孔質基材層の表面に均一な厚さの層を形成する段階、および
(c)流体組成物から溶剤を蒸発させて、結果として膜を生じさせる段階
を含む。
【0090】
膜の形状としては、多種多様な形状、例えば、平坦な形状、管形状、丸形状、または予備成形品と一致した形状が挙げられる。唯一の要件は、膜の厚みが適度に均一であることである。
【0091】
膜を製造するためのもう一つの方法は、多孔質基材を流体溶液に通して引き抜く段階、およびこの含浸された基材から過剰な溶剤を蒸発させる段階を含む。好ましい実施形態において、多孔質基材は、発泡ポリ(テトラフルオロ)エチレンおよび繊維マットから成る群より選択される。多層膜は、多孔質である場合もあり、または稠密である場合もある。
【0092】
新規自立膜は、少なくとも約5μm、好ましくは約300μm以下の厚さを通常有する。燃料電池での用途についての膜の厚さは、一般に、少なくとも約5μmである。自立していない用途については、このような膜が、少なくとも約0.1μm、約200μm以下の厚さを有する。
【0093】
所望の膜厚に依存して、異なる粘度を有するポリマー溶液を使用することが望ましい。5から50μmの厚さの膜については、(適切な溶剤中のポリマーの溶液を用いて80℃で測定して)500から2000mPasの粘度を有するポリマー溶液を使用することが好ましい。10から100μmの厚さの膜については、(適切な溶剤中のポリマーの溶液を用いて80℃で測定して)1500から5000mPasの粘度を有するポリマー溶液を使用することが好ましい。
【0094】
新規膜は、沸騰水に対する卓越した耐性も特徴とする。例えば、新規膜は、100℃の沸騰水中での処理を72時間した後、機械的に安定なままであることが見出されている。前記新規膜は、好ましくは、2重量%未満、最も好ましくは0.5重量%未満の残留溶剤含量を有する。
【0095】
新規膜は、水が存在する(または他の極性溶剤、例えばアルコールもしくはエステルが存在する)雰囲気での流延の恩恵を受ける可能性を秘めていることが見出されている。水を使用するとき、好ましい条件としては、10%より高い、好ましくは40%より高い相対湿度が挙げられる。いずれかの特定の理論に拘束されるものではないが、雰囲気中の湿気は、流延中にスルホン化ブロックを弛緩させて、より均一な膜をもたらすようである。
【0096】
8.結果として生ずるスルホン化ポリマーの特性
上で述べたブロックコポリマーのうちの1つの内側セグメント、例えば飽和トリブロックコポリマーの内側セグメントに関する選択的スルホン化の直接的結果として、本発明のポリマーは、物理的特性のユニークなバランスを有し、このバランスがこれらを様々な用途において並はずれて有用なものにする。本発明のスルホン化ブロックコポリマーは架橋していないので、これらのコポリマーを流延して膜またはコーティングにすることができる。流延プロセスにおいて、これらのコポリマーは、自己集合してミクロ相分離構造を形成する傾向がある。スルホナート基は、分相またはイオンチャネルになる。これらのチャネルが、膜の両面間の距離にわたる連続構造を形成するとき、これらは、驚くべき水およびプロトン輸送能力を有する。これは、末端セグメントの分離の結果として形成される相の団結性であり、この団結性が膜に強度を備えさせる。末端セグメントはスルホナート官能基を殆どまたは全く有さないので、これらは、水の付加によりならびにメタノールにより可塑化されにくい。この効果は、良好な湿潤強度を有する膜の生成を可能にする効果である。膜の硬度および可撓度は、2つの方法で容易に調整することができる。前駆体ブロックコポリマーの内側セグメント(Bブロック)のスチレン含量を低レベルから100重量%に増加させることができる。内側セグメントのスチレン含量を増加させるにつれて、製品スルホン化ブロックコポリマー膜は、より高い硬度およびより低い可撓度になる。または、前駆体ブロックコポリマーの末端セグメント(Aブロック)含量を約10重量%から約90重量%に増加させることができ、このポリマーの末端ブロック含量を増加させるにつれて、結果として生ずるスルホン化ブロックコポリマー膜がより高い硬度およびより低い可撓度になるという効果を伴う。これより低い末端ブロック含量では、膜は弱すぎる。約90重量%より高い末端ブロック含量では、製品膜は、不良な輸送特性を有する。これらを、これらの最終形態で1回、化学的にまたは熱的に架橋することもできる。
【0097】
前駆体ブロックコポリマーの構造を調整することにより、驚くべき湿潤強度、膜を横断する水および/またはプロトン輸送の十分に制御されたおよび高い速度、有機および非極性液体およびガスに対する異例の遮断特性、調整可能な可撓性および弾性、制御されたモジュラス、ならびに酸化および熱安定性を有するスルホン化ポリマー膜を調製することができる。膜は、メタノール輸送に対する良好な耐性、およびメタノールの存在下での特性の良好な保持を有すると予想される。これらの膜は架橋されていないので、溶剤にこれらを再び溶解して得られた溶液を再び流延することによってこれらを再成形または再加工することができ;様々なポリマー溶融プロセスを用いてこれらを再使用または再成形することもできる。
【0098】
これらの均一にミクロ相分離した材料の興味深い特徴は、1つの相は水を容易に吸収するが、第二の相は、はるかに極性の低い熱可塑性物質であることである。様々な間接法、2、3の名を挙げるとマイクロ波または高周波放射線への暴露のいずれかを用いて、スルホン化相中の水を加熱することができ;このようにして加熱した水は、熱可塑性相に、軟化させるためにまたはこの相内を流動するために十分な熱を輸送することができる。このようなメカニズムは、熱可塑性相の直接加熱を必要としないポリマー「溶接」または成形作業の基礎になる。このようなプロセスは、全部分の加熱を必要としないので非常に効率的であり、広い範囲にわたって強度を制御できるので速く、照射領域しか熱くならず、結果として部品全体の温度はより低くなるので安全である。このようなプロセスは、布片からの物品の組み立てによく適する。布片を縫い合わせるのではなく、これらを互いに「溶接」することができる、縫い目の穴が無い。電子部品組み立ておよびビル建設にもこれを使用することができる。関連概念では、本発明のポリマーから調製したフィルム(配合接着フィルムを含む。)を、使い捨て接着剤として利用し、その後、水での処理によって除去することができる。
【0099】
本発明のブロックコポリマーは、多くの有意で予想外の特性を有する。例えば、本発明によるスルホン化ブロックコポリマーは、ASTM E 96/E 96M−05(この全体が参照により本明細書に組み込まれている。)に基づく重量倒立カップ法(gravimetric inverted cup method)と25℃および50%相対湿度の外部条件を用いて、1日につきmあたり1,000gより大きい水蒸気輸送値を有する。水蒸気輸送は、好ましくは1日につきmあたり1,000gより大きく、湿潤引張強度は、ASTM D412に従って100psiより大きく、好ましくは500psiより大きく、および100重量%未満の膨潤性である。
【0100】
9.最終使用、化合物および用途
本発明によるスルホン化ブロックコポリマーは、様々な用途および最終使用に用いることができる。選択的にスルホン化された内側ブロックを有するこのようなポリマーは、良好な湿潤強度、良好な水およびプロトン輸送特性、良好な耐メタノール性、容易なフィルムまたは膜形成、遮断特性、可撓性および弾性の制御、調整可能な硬度、ならびに熱/酸化安定性の組み合わせが重要である用途において有用性を見いだせる。本発明の一つの実施形態において、本発明のスルホン化ブロックコポリマーは、電気化学的用途において、例えば、燃料電池(セパレータ相)、燃料電池用のプロトン交換膜、電極接合体において使用するためのスルホン化ポリマーセメント中の金属含浸炭素粒子の分散液(燃料電池のためのものを含む。)、水電解装置(電解質)、酸電池(電解質セパレータ)、スーパーキャパシタ(電解質)、金属回収プロセスのための分離セル(電解質バリア)、センサ(特に、湿度検出用)などにおいて使用される。本発明のスルホン化ブロックコポリマーは、脱塩膜、多孔質膜上のコーティング、高吸収材、個人向け衛生用品、水性ゲルとして、および接着剤としても使用される。加えて、本発明のブロックコポリマーは、防護服および通気性布地用途において使用され、この場合の膜、コート布、布積層体は、様々な環境要因(風、雨、雪、化学薬品、生物製剤)からの保護バリアを提供する一方で、膜または布地の一方の面から他方の面に水を迅速に輸送する、例えば、発汗による湿気を着用者の皮膚の表面からこの膜または布地に、およびこの膜または布地から着用者の皮膚表面に逃すことができる、これらの能力の結果として、一定の快適さ水準を提供する。このような膜および布地から作られた完全包囲スーツは、煙、化学物質漏れ、または様々な化学もしくは生物製剤に曝される可能性がある緊急事態の現場でファースト・リスポンダーを防護する。同様の要求が、バイオハザードに曝されるリスクがある医学的用途、特に外科手術において生じる。医療環境において有用であり得る他の用途は、これらのタイプの膜から作製した外科用手袋およびドレープである。これらのタイプの膜から作製した物品は、ポリスチレンスルホン酸がHIV(ヒト免疫不全ウイルス)およびHSV(単純疱疹ウイルス)に対する阻害剤として作用することが述べられているU.S.Patent No.6,537,538、6,239,182、6,028,115、6,932,619および5,925,621に報告されているように、抗菌および/または抗ウイルスおよび/または抗生物特性を有する。個人向け衛生用途では、発汗による水蒸気を輸送する一方で他の体液の漏れ出しに対するバリアとなり、湿潤環境においてこの強度特性を依然として維持する本発明の膜または布地は、有利である。おむつおよび成人用失禁用構造におけるこれらのタイプの材料の使用は、既存の技術に対する改善になる。裏布の上へのスルホン化ポリマーの溶液流延、または裏布と外布の間にスルホン化ポリマーを積層することによって布地を作ることができる。
【0101】
本発明のスルホン化ブロックコポリマーを吸収性物品において、および詳細には高吸収性材料と共に、使用することもできる。詳細には、水を含有するおよび/または水を高吸収性粒子に分配するためにスルホン化ブロックコポリマーを使用することができる。例えば、高吸収性粒子をスルホン化ブロックコポリマーのフィルムで覆うことができる。他の実施形態において、本発明の材料は、細菌増加に対して耐性である。使い捨ての吸収性パーソナルケア製品における、高吸収材として一般に知られている、水膨潤性で一般に水不溶性の吸収性材料の使用は、公知である。このような吸収性材料は、例えば、おむつ、トレーニングパンツ、成人用失禁用製品、および女性用ケア用品などの吸収性製品において、このような製品の吸収能を増加させ、その上、これらの全体の大きさを縮小するために、一般に利用される。このような吸収性材料は、繊維マトリックス、例えば木材パルプフラフのマトリックスに混入された高吸収性粒子(SAP)の複合材として一般に存在する。木材パルプフラフのマトリックスは、フラフのグラムあたり液体約6グラムの吸収能を一般に有する。高吸収性材料(SAM)は、SAMのグラムあたり液体少なくとも10グラムの、望ましくはSAMのグラムあたり液体少なくとも20グラムの、および多くの場合、SAMのグラムあたり液体約40グラムまでの吸収能を一般に有する。
【0102】
本発明の一つの実施形態において、高吸収性材料は、架橋ポリアクリル酸のナトリウム塩を含む。適する高吸収性材料としては、Dow AFA−177−140およびDrytech 2035(両方とも、ミシガン州ミッドランドのDow Chemical Companyから入手可能);Favor SXM−880(ノースカロライナ州グリーンズボロのStockhausen,Inc.から入手可能);Sanwet IM−632(ニューヨーク州ニューヨークのTomen Americaから入手可能);ならびにHysorb P−7050(バージニア州ポーツマスのBASF Corporationから入手可能)が挙げられるが、これらに限定されない。望ましくは、本発明の吸収性複合材は、1つ以上のタイプの繊維材料を含有する繊維マトリックスを場合により含有する、本発明のスルホン化ブロックコポリマーとの組み合わせで上記高吸収性材料を含有する。
【0103】
携帯用水輸送および保管装置のためのコーティングなどの用途は、湿潤環境におけるこれらのポリマーの良好な機械的特性と生物活性種の増殖を阻止するこれらの傾向の組み合わせを利用する。内側セグメントが選択的にスルホン化されたブロックコポリマーのこの特徴は、排水(下水と工業廃水の両方)パイプおよび処理施設に有効に利用することができる。同様に、本発明のポリマーは、建築材料の表面でのカビの成長を抑制するために使用することができる。これらのポリマーは、より大きな生物の成長を十分に抑制することができ、例えば、様々な海洋用途において付着物の発生の防止に有用である。U.S.Patent No.6,841,601に記載されているように湿度交換セルの構成に選択的スルホン化ブロックコポリマーの自己集合特性を用いることは公知である。この用途において、本発明のポリマーは、良好な湿潤強度を有するおよび補強を必要としない膜要素の製造を可能にする。これは、膜エネルギー回収装置の構成を簡単にすることができる。不織ハウスラップ材料、例えばDuPontによって供給されているTYVEK(登録商標)は、風および天候の作用を家屋の外面に浸透させないために、家屋建築の際に現在使用されている。一部の環境において、この技術は、家屋の壁を通して水蒸気を十分に輸送できず、この結果、カビの成長条件が家屋の壁の中で発生することとなる。本発明のポリマーから作製される集成体は、同等に良好な遮断性能と共に、家屋の壁から水蒸気を有効に逃すことができる利点を提供する。同様に、水蒸気を輸送できるカーペットの裏材料が必要とされている。この要求は、高湿および雨量過多な時期にコンクリートを流れる水が有意となり得るコンクリートスラブ工法を用いる家屋では重要である。カーペット裏地が等速で水蒸気を輸送しない場合、カーペットの裏とスラブの表面の間での凝集水の蓄積は問題であり得る。本発明のポリマーに基づくポリマーコーティングで裏打ちしたカーペットは、この問題を克服することができる。
【0104】
本発明のスルホン化ポリマーは、難燃性材料として、特に、進行する火の道筋にある可燃性物品に噴霧するために使用することもできる。このようなスルホン化ポリマーは、従来の炭化水素ポリマーと相溶性でない傾向がある従来の難着火性材料のための優れた「担体」になり得る。
【0105】
さらに、本発明のスルホン化ブロックコポリマーを膜として使用して、環境から湿気を集めることもできる。従って、このような膜を使用して、良質の水がすぐに供給されない状況で大気から新鮮な水を収集することができる。
【0106】
さらに、本発明のコポリマーは、本コポリマーの特性に悪影響を及ぼさない他の成分と配合することができる。本発明のブロックコポリマーは、オレフィンポリマー、スチレンポリマー、粘着性樹脂、親水性ポリマーおよびエンジニアリング熱可塑性樹脂をはじめとする、非常に様々な他のポリマーと、ポリマー液、例えばイオン性液体、天然油、香水と、ならびにフィラー、例えばナノクレー、カーボンナノチューブ、フラーレン、ならびに従来のフィラー、例えばタルク、シリカなどと、ブレンドすることができる。
【0107】
加えて、本発明のスルホン化ポリマーは、Kraton Polymer LLCから入手できるスチレンブロックコポリマーなどの従来のスチレン/ジエンおよび水素化スチレン/ジエンブロックコポリマーとブレンドすることができる。これらのスチレンブロックコポリマーとしては、線状S−B−S、S−I−S、S−EB−S、S−EP−Sブロックコポリマーが挙げられる。イソプレンおよび/またはブタジエンと共にスチレンに基づく放射状ブロックコポリマー、ならびに選択的に水素化された放射状ブロックコポリマーも挙げられる。
【0108】
オレフィンポリマーとしては、例えば、エチレンホモポリマー、エチレン/α−オレフィンコポリマー、プロピレンホモポリマー、プロピレン/α−オレフィンコポリマー、ハイインパクトポリプロピレン、ブチレンホモポリマー、ブチレン/α−オレフィンコポリマー、および他のαオレフィンコポリマーまたは共重合体が挙げられる。代表的なポリオレフィンとしては、例えば、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超または超低密度ポリエチレン(ULDPEまたはVLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)および高圧低密度ポリエチレン(LDPE)をはじめとする、実質的に線状のエチレンポリマー、均一に分岐した線状エチレンポリマー、不均一に分岐した線状エチレンポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。下文に含める他のポリマーとしては、エチレン/アクリル酸(EEA)コポリマー、エチレン/メタクリル酸(EMAA)アイオノマー、エチレン/酢酸ビニル(EVA)コポリマー、エチレン/ビニルアルコール(EVOH)コポリマー、エチレン/環状オレフィンコポリマー、ポリプロピレンホモポリマーおよびコポリマー、プロピレン/スチレンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリブチレン、エチレン一酸化炭素共重合体(例えば、エチレン/一酸化炭素(ECO)コポリマー、エチレン/アクリル酸/一酸化炭素ターポリマーなど)が挙げられる。下文に含めるさらに他のポリマーは、ポリ塩化ビニル(PVC)およびPVCと他の材料のブレンドである。
【0109】
スチレンポリマーとしては、例えば、結晶ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、ミディアムインパクトポリスチレン、スチレン/アクリロニトリルコポリマー、スチレン/アクリロニトリル/ブタジエン(ABS)ポリマー、シンジオタクチックポリスチレン、スルホン化ポリスチレンおよびスチレン/オレフィンコポリマーが挙げられる。代表的なスチレン/オレフィンコポリマーは、実質的にランダムなエチレン/スチレンコポリマー、好ましくは少なくとも20、さらに好ましくは25重量%以上の共重合スチレンモノマーを含有するものである。
【0110】
本明細書および特許請求の範囲のために、用語「エンジニアリング熱可塑性樹脂」は、例えば熱可塑性ポリエステル、熱可塑性ポリウレタン、ポリ(アリールエーテル)およびポリ(アリールスルホン)、ポリカーボネート、アセタール樹脂、ポリアミド、ハロゲン化熱可塑性樹脂、ニトリルバリア樹脂、ポリ(メチルメタクリラート)および環状オレフィンコポリマーなどの様々なポリマーを包含し、ならびにU.S.Patent No.4,107,131においてさらに定義されており、この特許の開示は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0111】
粘着性樹脂としては、ポリスチレンブロック相溶性樹脂およびゴム相溶性樹脂が挙げられる。ポリスチレンブロック相溶性樹脂は、クマロン−インデン樹脂、ポリインデン樹脂、ポリ(メチルインデン)樹脂、ポリスチレン樹脂、ビニルトルエン−αメチルスチレン樹脂、αメチルスチレン樹脂およびポリフェニレンエーテル、特に、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)から成る群より選択することができる。このような樹脂は、例えば、商標「HERCURES」、「ENDEX」、「KRISTALEX」、「NEVCHEM」および「PICCOTEX」で販売されている。水素化(内側)ブロックと相溶性の樹脂は、相溶性C5炭化水素樹脂、水素化C5炭化水素樹脂、スチレン化C5樹脂、C5/C9樹脂、スチレン化テルペン樹脂、完全水素化または部分水素化C9炭化水素樹脂、ロジンエステル、ロジン誘導体およびこれらの混合物から成る群より選択することができる。これらの樹脂は、例えば、商標「REGALITE」、「REGALREZ」、「ESCOREZ」および「ARKON」で販売されている。
【0112】
親水性ポリマーとしては、利用可能な電子対を有するものとして特性づけされる高分子塩基が挙げられる。このような塩基の例としては、高分子アミン、例えば、ポリエチレンアミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルピリジンなど;窒素含有材料の高分子類似体、例えば、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ナイロン、ABS、ポリウレタンおよびこれらに類するもの;酸素含有化合物の高分子類似体、例えば、高分子エーテル、エステルおよびアルコール;ならびにグリコール、例えばポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールなど、ポリテトラヒドロフラン、エステル(ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、脂肪族ポリエステルなどを含む。)、ならびにアルコール(ポリビニルアルコールを含む。)、多糖類、ならびにデンプンと併せたときの酸−塩基水素結合性相互作用が挙げられる。利用することができる他の親水性ポリマーとしては、スルホン化ポリスチレンが挙げられる。イオン性液体である親水性液体を本発明のポリマーと併用して、膨潤した導電性フィルムまたはゲルを形成することができる。U.S.Patent No.5,827,602および6,531,241(これらの開示は参照により本明細書に組み込まれている。)に記載されているものなどのイオン性液体は、以前に流延した膜を膨潤させることにより、または膜、フィルムコーティングもしくは繊維を流延する前に溶剤系に添加することにより、スルホン化ポリマーに導入することができる。このような併用は、固体電解質または透水性膜としての有用性を見出すことができる。
【0113】
追加の成分として使用することができる例示的材料としては、限定ではないが、
1)顔料、酸化防止剤、安定剤、界面活性剤、ワックスおよび流動促進剤;
2)微粒子、フィラーおよび油;ならびに
3)組成物の加工性および取扱いを向上させるために添加される溶剤および他の材料
が挙げられる。
【0114】
顔料、酸化防止剤、安定剤、界面活性剤、ワックスおよび流動促進剤に関しては、これらの成分は、本発明のスルホン化ブロックコポリマーと共に組成物に利用するとき、この組成物の総重量に基づいて、10%以下で10%を含む量、即ち0から10%までの量で含めることができる。これらの成分のいずれか1つ以上が存在するとき、これらは、約0.001から約5%、およびさらにいっそう好ましくは約0.001から約1%の量で存在し得る。
【0115】
微粒子、フィラーおよび油に関しては、このような成分は、この組成物の総重量に基づいて、50%以下で50%を含む量、0から50%の量で存在し得る。これらの成分のいずれか1つ以上が存在するとき、これらは、約5から約50%、好ましくは約7から約50%の量で存在し得る。
【0116】
組成物の加工性および取扱いを向上させるために添加される溶剤および他の材料の量が、多くの場合、配合される個々の組成物ならびに添加される溶剤および/または他の材料に依存することは、通常の当業者には理解される。概して、このような量は、この組成物の総重量に基づいて50%を超えない。
【0117】
本発明のスルホン化ブロックコポリマーは、上述の物品のいずれかを製造するために使用することができ、および多くの場合、任意の形態数を呈し、例えば、フィルム、シート、コーティング、バンド、ストリップ、異形材、成形物、フォーム、テープ、布地、糸、フィラメント、チューブ、中空糸、リボン、繊維、多数の繊維または繊維ウェブの形態を呈する。このような物品は、例えば流延、射出成型、オーバーモールド、浸漬、押出(ブロックコポリマーが中和された形態であるとき)、回転成形、スラッシュ成形、紡糸(例えば、ブロックコポリマーが中和された形態であるときの静電紡糸)、フィルム製造、塗装または発泡などの様々なプロセスによって形成することができる。
【0118】
本出願人は、本発明のブロックコポリマーから流延されるフィルムの輸送特性を変える方法をさらに特許請求の範囲に記載する。極性溶剤および非極性溶剤から選択される2つ以上の溶剤を含む溶剤混合物を使用することにより、異なる保水メカニズムを明示する異なる構造を得ることができる。また、このことにより、本発明のブロックコポリマーを使用して、ブロックコポリマー一種類、即ち本発明のブロックコポリマーを利用する個々の用途のために輸送特性を微調整することができる。好ましくは、本発明の方法において利用される極性溶剤は、水、1から20個の炭素原子、好ましくは1から8個の炭素原子、さらに好ましくは1から4個の炭素原子を有するアルコール;1から20個の炭素原子、好ましくは1から8個の炭素原子、さらに好ましくは1から4個の炭素原子を有するエーテル(環状エーテルを含む。);カルボン酸のエステル(カルボン酸の中和中に形成されるエステルを含む。)、硫酸のエステル、アミド、カルボン酸、酸無水物、スルホキシド、ニトリル、および1から20個の炭素原子、好ましくは1から8個の炭素原子、さらに好ましくは1から4個の炭素原子を有するケトン(環状ケトンを含む。)から選択される。より具体的には、前記極性溶剤は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、置換および非置換フラン、オキセタン、ジメチルケトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、置換および非置換テトラヒドロフラン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、硫酸メチル、硫酸ジメチル、二硫化炭素、ギ酸、酢酸、スルホ酢酸、無水酢酸、アセトン、クレゾール、クレオソール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、シクロヘキサノン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、水およびジオキサンから選択され、極性溶剤のうち水、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、酢酸、スルホ酢酸、硫酸メチル、硫酸ジメチル、およびIPAが、さらに好ましい。アミン、例えば、数ある他のアミンの中でもジメチルアミン、トリエチルアミンおよびアニリンも含まれる。
【0119】
好ましくは、本発明の方法において利用される非極性溶剤は、トルエン、ベンゼン、キシレン、メシチレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロメタン、四塩化炭素、トリエチルベンゼン、メチルシクロヘキサン、イソペンタン、およびシクロペンタンから選択され、トルエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、ヘキサン、ヘプタン、イソペンタン、ノナン、デカンおよびジクロロエタンは、溶剤の混合物と共に、最も好ましい非極性溶剤である。約70から約220℃の沸点範囲を有する脂肪族炭化水素も含まれる。述べたように、この方法は、2つ以上の溶剤を利用する。これは、極性溶剤のみ、非極性溶剤のみ、または極性溶剤と非極性溶剤の組み合わせから選択される2つ、3つ、4つ以上の溶剤を使用する場合があることを意味する。溶剤の別の溶剤に対する比率は、大幅に異なることがある。例えば、2つの溶剤を有する溶剤混合物の場合、この比率は、99.99:0.01から0.01:99.9にわたり得る。フィルムを流延する条件は様々であり得る。好ましくは、フィルムは、空気中、10℃から200℃の温度で、好ましくは室温で、およびこのフィルムを容易に剥離することができる表面上に流延される。さらに好ましくは、膜は、高湿環境で流延される。または、流延溶液をポリマーにとっての非溶剤と接触させ、これによって溶剤を除去し、固体フィルムまたは物品を形成することができる。または、ポリマーと場合により湿潤剤との溶液に多孔質または無孔質物品を通すことにより、コーティングされた物品を調製することができる。その後、乾燥によって、またはこのポリマーにとっての非溶剤を用いて抽出することにより、溶剤を除去することができる。
【0120】
以下の実施例は、例証のみを目的とするものであり、いかなる点においても本発明の限定を目的とするものではなく、いかなる点においても本発明の限定と解釈してはならない。
【実施例1】
【0121】
構造(ptBS−EB−S)のSB−2と名付けたスチレンブロックコポリマーの調製
重量で42%のスチレン(S)および43%のパラ−tert−ブチルスチレン(即ち、p−t−ブチルスチレンまたはptBS)を含有する、構造(ptBS−EB−S)のSB−2と名付けたスチレンブロックコポリマーをこの実施例において調製した。この(ptBS−EB−S)ポリマーにおいて、内側ブロック内のスチレン含量を計算するためにSを内側ブロック「B」と考えた。
【0122】
SB−2ポリマーは、選択的水素化(A−D−B)Xブロックコポリマーであり、この場合、Aブロックは、p−t−ブチルスチレンのポリマーブロックであり、およびBブロックは、非置換スチレンのポリマーブロックである。Dと名付けたブロックは、水素化ブタジエン(EB)であり、およびXは、カップリング剤テトラメトキシシランのケイ素含有残基である。
【0123】
SB−2の調製において、s−ブチルリチウム(s−BuLi)を使用してシクロヘキサン中のp−t−ブチルスチレンのアニオン重合を開始して、約22,000g/molの推定分子量を有するAブロックを得た。この溶液の一部を、シクロヘキサンと1,2−ジエトキシプロパン110ppmとブタジエンが入っている第二反応器に移し、重合進行させて、28,000g/molの分子量を有する第二セグメント(ptBS−Bd−Li)を得た。このポリブタジエンセグメントは、約40重量%の1,2−付加含量を有した。スチレンモノマーをこのリビング(ptBS−Bd−Li)ジブロックコポリマー溶液に添加して、ポリスチレンのみから成る第三ブロック(Sブロック MW=25,000g/mol)を有するリビングトリブロックコポリマー(ptBS−Bd−S−Li)を生じさせた。テトラメトキシシランをカップリング剤として使用して、このリビングポリマー溶液をカップリングさせた(約Si/Li=0.41/1(mol/mol))。カップリングされた分岐((ptBS−Bd−S)3)(主成分)および線状((ptBS−Bd−S)2)ポリマーの混合物を得た。
【0124】
標準的なコバルト触媒を使用してこのポリマーを水素化して、カップリングされた分岐((ptBS−EB−S)3)(主成分)および線状((ptBS−EB−S)2)ポリマーの混合物である所望の(A−D−B)Xブロックコポリマーを得た。このポリマーの内側セグメントは、ポリスチレンのみを含有し、末端セグメントは、ポリ−p−t−ブチルスチレンのみを含有したので、これらのポリマーの内側セグメントは、末端セグメントよりはるかにスルホン化されやすかった。水素化Bdセグメント、EBポリマーブロックはスルホン化されにくく、ポリ−p−t−ブチルスチレン末端セグメントとスルホン化ポリスチレン中央セグメントの間の強化スペーサーブロックとしての役割を果たした。
【0125】
このSB−2ポリマーは、約42重量%のポリスチレン、約43重量%のポリ−p−t−ブチルスチレンおよび約15重量%の水素化ポリブタジエン(EB)を含有する。この生成物は、シクロヘキサン中のポリマーの溶液として得られる。50℃の真空オーブンの中で2時間、サンプルを乾燥させたときの重量差によって測定して、ポリマー固体は15.65重量%であると判定した。
【実施例2】
【0126】
図1の膜を形成するために使用したスルホン化ポリマーの調製
この実施例は、シクロヘキサン中の硫酸イソブチリルでのスチレンブロックコポリマーSB−2のスルホン化中に生成されるイソ酪酸のレベルを実証するものである。
【0127】
シクロヘキサン中のポリマー固体約34.7lbに対応する、実施例1のSB−2ポリマー水素化生成物約222lbを、ウォータージャケットを装備したN2フラッシュ済み500ガロンガラス内張り攪拌タンクに添加した。その後、シクロヘキサン約473lbをこの混合物に添加して、SB−2ポリマー約5重量%を含むポリマー溶液を得た。この反応器を3回Nで浄化し、その後、約15から20psiaのNで維持した。この溶液を約25から30℃に加熱しながら攪拌を開始し、その後、無水イソ酪酸約21.13lb(60.58モル)をこの溶液に添加し、続いて試薬グレードの硫酸(濃度約95%))約10.61lb(46.61モル)を添加した。試薬投入量に基づいて、ポリマー中のスチレン繰り返し単位に対する硫酸のモル比は、約0.73であり、無水イソ酪酸の硫酸に対するモル比は、約1.3であった。
【0128】
この反応混合物をおおよそ2時間、約30℃で攪拌し、その後、約2時間の間に約50℃に加熱し、その後、さらにおおよそ4時間、約50℃で維持した。その後、この反応混合物を約12時間放置して徐々に冷却し、その結果、わずかに青い不透明な外観を有し、目に見えるゲル化の形跡が一切ない、暗褐色で低粘度の液体を得た。
【0129】
この反応生成物を2回の別個の滴定(「二段滴定法」)によって分析して、スチレンポリマースルホン酸、硫酸、非高分子量副生成物スルホン酸(2−スルホイソ酪酸)および非スルホン化副生成物イソ酪酸のレベルを決定した。それぞれの滴定について、反応生成物溶液の約5グラムのアリコートをテトラヒドロフラン約100mLに溶解し、水約2mLおよびメタノール約2mLを添加した。第一の滴定では、調製した溶液をメタノール中の0.1Nシクロヘキシルアミンで電位差滴定して2つの終点を得た;第一の終点は、サンプル中のすべてのスルホン酸基と硫酸の第一の酸性プロトンに対応し、および第二の終点は、硫酸の第二の酸性プロトンに対応した。第二の滴定では、調製した溶液を約3.5:1のメタノール:水中の0.14N水酸化ナトリウムで電位差滴定して3つの終点を得た:第一の終点は、サンプル中のすべての硫酸基と硫酸の第一および第二の酸性プロトンに対応し;第二の終点は、2−スルホイソ酪酸のカルボン酸に対応し;ならびに第三の終点は、イソ酪酸に対応した。
【0130】
第二の滴定における2−スルホイソ酪酸のカルボン酸の選択的検出と共に、第一の滴定における硫酸の第二の酸性プロトンの選択的検出により、酸成分濃度を計算することができ、次の結果を得た:約0.1168mmol/gのポリマー硫酸、約0.01147mmol/gの硫酸、約0.0083mmol/gの2−スルホイソ酪酸、および約0.3537mmol/gのイソ酪酸。質量バランスに基づき、スチレンスルホン化度を計算して、約60.7mol%となった。これは、スルホン化ポリマーのグラムあたりスルホン酸2.05ミリ当量(2.05meq/g)に相当する。イソ酪酸としての残留非スルホン化カルボン酸を滴定結果から計算して、溶液の総重量に基づき3.12重量%となった。
【実施例3】
【0131】
図2の膜を形成するために使用したスルホン化ポリマーの調製
実施例2において調製した溶液を、イソ酪酸を基準にしてエタノール3モル当量と接触させ、その後、一晩、室温で攪拌して、イソ酪酸をイソ酪酸エチルにエステル化させた。イソ酪酸のものからイソ酪酸エチルの甘い/果物に似た臭いへの臭気の変化が観察された。実施例5、6に示す結果によると、イソ酪酸のおおよそ97.7%がイソ酪酸エチルに転化され、その結果、スルホン化ポリマー溶液のグラムあたりイソ酪酸0.01meq未満が得られた。
【実施例4】
【0132】
メタノールのイソ酪酸に対するモル比の関数としてのスルホン化ポリマー溶液におけるエステル化
これらの実施例は、メタノールでのスルホン化スチレンブロックコポリマー溶液の処理に基づくイソ酪酸エステル化度に対する、メタノールのイソ酪酸に対するモル比の影響を実証するものである。表Aにおけるそれぞれのサンプルについて、実施例1において説明したスルホン化ポリマー溶液約15gを、磁気攪拌棒を装備した1オンスのガラスジャーに添加した。このポリマー溶液は、イソ酪酸0.3542meq/gを含有した。よく攪拌しながら、無水メタノールの処方量を滴加し、ジャーにしっかりと蓋をし、その後、この反応容器を約18時間、50℃のオーブンの中に置いた。サンプルが室温に冷却された後、実施例2において説明したように0.14NのNaOHでの滴定によってアリコートを分析した。メタノールの添加の結果としてのポリマー溶液のわずかな希釈について補正して、平衡サンプル中のイソ酪酸の量を滴定結果から計算した。結果を表Aに要約する。
【0133】
【表1】

【0134】
まとめると、これらの実施例は、スルホン化ポリマー溶液中のイソ酪酸の量を基準にしてメタノール約1モル当量以上を添加することにより、イソ酪酸からイソ酪酸メチルへの90mol%より大きい転化率を達成できることを明示している。
【実施例5】
【0135】
エタノールのイソ酪酸に対するモル比の関数としてのスルホン化ポリマー溶液におけるエステル化
これらの実施例は、エタノールでのスルホン化スチレンブロックコポリマー溶液の処理に基づくイソ酪酸エステル化度に対する、エタノールのイソ酪酸に対するモル比の影響を実証するものである。メタノールの代わりに無水エタノールを使用して、実施例4において説明した実験をより小規模で繰り返した。結果を表Bに要約する。
【0136】
【表2】

【実施例6】
【0137】
スルホン化ポリマー溶液におけるアルコールでのイソ酪酸エステル化の動態
これらの実施例は、n−ヘプタンとシクロヘキサンの混合物中で調製したスルホン化ポリマー溶液の50℃のアルコールでの処理に基づく、時間の関数としてのイソ酪酸のイソ酪酸エステルへの転化を実証するものである。
【0138】
実施例1において説明したSB−2ポリマーを調製するために使用したものに匹敵する方法で、構造(ptBS−EB−S)のSB−7と名付けたスチレンブロックコポリマーを調製した。このSB−7ポリマーをシクロヘキサン中の約23.96重量%の粗溶液として得た。
【0139】
オーバーヘッド・メカニカル・スターラーとCa(SOを充填した乾燥管とストッパーと熱電対とを備えた5L四つ口丸底フラスコに、ポリマー固体約218.2gに相当する、シクロヘキサン中のスチレンブロックコポリマーSB−7約910.7gを添加した。この溶液を250RPMで攪拌しながら約50℃に加熱し、その後、n−ヘプタン約1998.6gをこの溶液に添加して、固体ベースでSB−7ポリマー約7.5%を含むポリマー溶液を得た。この溶液を再び約50℃に加熱し、その後、無水イソ酪酸約128.83g(0.814モル)をこの溶液に添加し、続いて、試薬グレード硫酸(濃度約95%)約64.67g(0.626モル)を添加した。試薬投入量に基づき、ポリマー中のスチレン繰り返し単位に対する硫酸のモル比は、約0.71であり、無水イソ酪酸の硫酸に対するモル比は、約1.3であった。
【0140】
この反応混合物をおおよそ5時間、約50℃で攪拌した。冷却すると、目に見えるゲル化の形跡のない暗褐色で低粘度の液体が得られた。実施例2において説明したような二段滴定法によってこの反応生成物を分析して次の結果を得た:約0.1640mmol/gのポリマースルホン酸、約0.0132mmol/gの硫酸、約0.0169mmol/gの2−スルホイソ酪酸、および約0.5020mmol/gのイソ酪酸。質量バランスに基づいて計算して、スチレンスルホン化度は、約57.82mol%であった。これは、スルホン化ポリマーのグラムあたりスルホン酸約1.97ミリ当量に相当する。イソ酪酸としての残留非スルホン化カルボン酸を滴定結果から計算して、溶液の総重量に基づき4.42重量%となった。
【0141】
それぞれの実施例について、オーバーヘッド・メカニカル・スターラーとCa(SO4)2を充填した乾燥管とストッパーと熱電対とを備えた500mL四つ口丸底フラスコに、SB−7のスルホン化反応生成物約95gを添加した。この溶液を250RPMで攪拌しながら約50℃に加熱し、その後、アルコールの処方量を約30秒にわたって滴加した。その後、この反応混合物を50℃で維持し、実施例2において説明したような0.14NのNaOHでの滴定による分析のために〜3gアリコートを定期的に除去した。アルコールの添加の結果としてのポリマー溶液のわずかな希釈について補正して、除去したアリコート中のイソ酪酸の量を滴定結果から計算した。結果を表Cに要約する。
【0142】
【表3】

【0143】
表Cにおけるデータは、4重量%過剰にイソ酪酸を含有するスルホン化ポリマー溶液中の残留イソ酪酸を、50℃で約1から3時間以内のメタノールまたはエタノールでのエステル化によって、1重量%未満に減少させることができることを明示している。さらに、これらのデータは、匹敵する化学量論を用いたとき、エタノールと比較してメタノールでのほうが速い反応が達成されることを明示している。加えて、これらのデータは、アルコールのイソ酪酸に対するmol比を増加させることが、結果として、より速い反応をもたらすことを明示している。
【実施例7】
【0144】
エステル化のためのアルコールの選択
スルホン化ポリマー溶液中の溶剤の相対除去速度を研究するために、モデル溶液を調製した。イソ酪酸に対して1.5モル過剰のアルコールを用いてこれらの溶液を調製した。これらの初期濃度を表Dに示す。メタノール、エタノール、イソ酪酸メチルおよびイソ酪酸エチルは、Sigma−Aldrichから購入し、受け取ったままの状態で使用した。これらの溶液を一晩混合し、ロータリーエバポレータを取り付けたフラスコに注入し、ゆっくりと50℃に加熱した。この溶剤混合物を減圧下で蒸発させた。減圧を定期的に解消し、溶剤混合物のアリコートを取り、H NMRで分析して組成を決定した。図4および図5は、それぞれ、イソ酪酸メチルおよびエチルモデル溶液の相対組成を溶剤除去の関数として示すものである。図4から、溶液の50%を除去する間にメタノールが除去されること、およびシクロヘキサンとイソ酪酸メチルの相対比率が溶液の蒸発中に比較的一定したままであることは、明らかである。図5から、残存する溶液の25%までしかエタノールが除去されないことは明らかであり、これは、エタノールのほうが、メタノールより除去が難しいことを示している。図5から、イソ酪酸エチルの相対濃度が、溶液の蒸発中に大きく増加することも明らかである。これは、イソ酪酸エチルが、イソ酪酸メチルよりはるかに除去が難しいこと、および蒸発中にシクロヘキサンに比べて濃縮されることを示している。
【0145】
【表4】

【実施例8】
【0146】
エステル化を伴わないスルホン化溶液からの膜の流延:
Coatema Coating Machinery GmbHによって製造された市販のフィルム流延ラインを使用して、エステル化を伴わないスルホン化ポリマー溶液(実施例2において調製したような、シクロヘキサン中の5.6重量%ポリマー)から膜を流延した。この流延ラインは、150μmのスペーサーを有するスロットダイを通してスルホン化ポリマーをポンプ輸送する、マイクロポンプから成る。Degussaによって製造されたシリコーンRC 1002でシリコーン処理した剥離紙上にこの溶液をコーティングした。ポンプ速度または剥離基材の速度のいずれかを変化させることによって、コーティング重量を変えた。剥離基材上に流延したスルホン化ポリマーを、40℃と60℃の間の温度に設定した2台の熱対流炉(それぞれ、長さ1.5m)に1m/分の速度で通した。この滞在時間および温度は、脂肪族溶剤を除去するために十分であった。その後、このコーティングされた基材を、ロールに巻き取る前に、試験中には使用しなかった2台の赤外加熱炉(それぞれ、長さ1.5m)に通した。最終膜厚は、ポンプ速度に依存して10μmと40μmの間で様々であった。「乾燥した」膜は、強いイソ酪酸臭を有し、これは、イソ酪酸が完全に除去されなかったことを示していた。2週間後、膜を巻出すと、膜に亀裂が入り、その後、空気と接触させると膜は破砕し、強いイソ酪酸臭を有し続けた。膜の検査は、膜の端が剥離基材にわずかに接着していることを示した。巻出し中、膜の接触に起因して膜から残留イソ酪酸が放出された。膜の剥離基材へのこのわずかな接着が収縮を制限して、図1に示すような膜の破砕をもたらした。
【実施例9】
【0147】
エステル化を伴うスルホン化溶液からの膜の流延
実施例8において使用したのと同じ溶液を3モル過剰のエタノールと接触させ、室温で一晩攪拌し、その結果、実施例3において説明したようにイソ酪酸をイソ酪酸エチルにエステル化することができた。イソ酪酸のものからイソ酪酸エチルの甘い/果物に似た臭いへの臭気の変化が観察された。実施例8の場合と同じ流延装置を用いて、エステル化後にスルホン化ポリマー溶液から膜を流延した。流延条件および剥離紙およびコーティングも前に述べた実施例を模倣した。この滞在時間および温度は、脂肪族溶剤を除去するために十分であった。最終膜厚は、ポンプ速度に依存して10μmと40μmの間で様々であった。乾燥した膜は、わずかなイソ酪酸エチル臭を有し、これは、イソ酪酸エチルが完全に除去されなかったことを示していた。2週間後、膜を巻出すと、膜の端での多少の弱い接着を除き、膜は剥離基材から容易に除去された。これらの自立膜は、寸法安定性であり、空気と接触したとき亀裂または破砕の形跡を示さず、ならびにイソ酪酸エチル臭をほとんど有さなかった。この実施例から、イソ酪酸のイソ酪酸エチルへの転化が膜の流延プロセスの改善となったことは明らかである。
【0148】
スロット・ダイ・コーティングをこの実施例では利用したが、反転ロールコーティングおよび当業者に公知の他のものなどのコーティング法を利用してもよい。スルホン化ポリマー溶液から溶剤を除去するために、当業者には公知の熱風対流以外の乾燥メカニズムを利用してもよい。同様に、他の剥離紙、ホイルなどならびに他の膜、例えば発泡PTFE、精密濾過膜および限外濾過膜、不織基材をはじめとする他の材料、ならびに当業者に公知の他の材料を、基材として利用してもよい。
【実施例10】
【0149】
乾燥環境でのエステル化を伴うスルホン化溶液からの膜のハンドキャスティング
低い相対湿度環境を確保するために乾燥窒素ガスを掃射した制御雰囲気ボックスの中で、ドクターブレードを使用して、表Eに記載するスルホン化ポリマー溶液を流延した。室温で一晩、溶剤を乾燥させた。図6に示すように、結果として生じた膜には亀裂が入っていた。
【実施例11】
【0150】
高湿環境でのエステル化を伴うスルホン化溶液からの膜のハンドキャスティング
実施例10において使用したのと同じ溶液(表Eに記載)を、制御雰囲気下のドクターブレードと水浴とを使用して流延した。制御雰囲気ボックス内の相対湿度は、おおよそ60%であった。実施例10でのように、溶剤を室温で一晩乾燥させた。図7に示すように、結果として生じた膜は、平坦であり、顕著な欠損の形跡を示さなかった。比較的高湿の環境での膜の流延のほうが、はるかに均質で欠損のない膜を生じさせるようである。
【0151】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも2つの末端ブロックAと少なくとも1つの内側ブロックBとを有する前駆体ブロックコポリマーであって、それぞれのAブロックがスルホン化されにくいポリマーブロックであり、およびそれぞれのBブロックがスルホン化されやすいポリマーブロックである、前駆体ブロックコポリマーを提供する段階;
(b)前駆体ブロックポリマーとC2からC8硫酸アシルを、少なくとも1つの非ハロゲン化脂肪族溶剤をさらに含む反応混合物中で反応させて、スルホン化ブロックポリマーを形成する(この時点では、結果としてスルホン化ブロックコポリマーと残留カルボン酸との溶液が形成される。)段階;および
(c)その後、C1からC4アルコールまたはこの混合物と少なくとも0.9:1のアルコールの残留カルボン酸に対するモル比で接触している残留カルボン酸を反応させて、カルボン酸の対応するアルキルエステルを形成する、および有機残留酸の残留レベルをこの溶液の総重量に基づき2.0重量%未満に減少させる段階
を含む、非ハロゲン化脂肪族溶剤中でスルホン化ブロックポリマーを調製するプロセス。
【請求項2】
からC硫酸アシルが、無水イソ酪酸または無水プロピオン酸と硫酸の反応によって形成される、硫酸イソブチリルまたは硫酸プロピオニルであり、および残留カルボン酸が、イソ酪酸またはプロピオン酸である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前駆体ブロックコポリマーの初期濃度が、この反応混合物の総重量に基づき約0.1重量%から約30重量%の範囲である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
スルホン化反応が、70℃と220℃の間の沸点範囲を有する炭化水素溶剤の溶剤混合物の存在下で行われる、請求項2に記載のプロセス。
【請求項5】
前駆体ブロックコポリマーが、一般配置A−B−A、A−B−A−B−A、(A−B−A)X、(A−B)X、A−D−B−D−A、A−B−D−B−A、(A−D−B)X、(A−B−D)X、(A−B−B)X、A−B−B−B−Aまたはこれらの混合を有し、この場合、Bブロックが、同じであるまたは異なることがあり、nが、2から30の整数であり、Xが、カップリング剤残基であり、およびそれぞれのDブロックが、スルホン化されにくいポリマーブロックであり、および前駆体ブロックコポリマーにオレフィン不飽和が実質的に無い、請求項2に記載のプロセス。
【請求項6】
アルコールの残留イソ酪酸に対するモル比が、0.9:1から4:1であり、および残留イソ酪酸を含有するスルホン化ブロックコポリマーの溶液が、0.1重量%未満のイソ酪酸を含有する、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記Aブロックが、パラ−t−ブチルスチレンのポリマーブロックであり、前記Bブロックが、非置換スチレンのポリマーブロックであり、および前記Dブロックが、イソプレンまたは1,3−ブタジエンのポリマーブロックであり、ブロックD中の縮合ブタジエン単位の20から80mol%が1,2−配置を有し、残留カルボン酸の前記エステルが、イソ酪酸のメチルまたはエチルエステルであり、および前記非ハロゲン化脂肪族溶剤が、70℃と220℃の間の沸点範囲を有する、請求項5に記載のプロセス。
【請求項8】
スルホン化ブロックコポリマーの濃度が、流体組成物の総重量に基づいて2重量%から30重量%である、請求項1に記載のプロセスによって調製された、スルホン化ブロックコポリマーと残留カルボン酸のエステルと少なくとも1つのハロゲン化脂肪族溶剤とを含む流体組成物。
【請求項9】
スルホン化ブロックコポリマーの組成が5から20重量%である、請求項8に記載の流体組成物。
【請求項10】
水素化前の前記スルホン化ブロックコポリマーが、一般配置(A−D−B)Xを有し、ならびに前記Aブロックが、パラ−t−ブチルスチレンのポリマーブロックであり、前記Bブロックが、非置換スチレンのポリマーブロックであり、および前記Dブロックが、イソプレンまたは1,3−ブタジエンのポリマーブロックであり、ブロックDの縮合ブタジエン単位の20から80mol%が1,2−配置を有し、残留カルボン酸の前記エステルが、イソ酪酸のメチルまたはエチルエステルであり、および前記非ハロゲン化脂肪族溶剤が、70℃と220℃の間の沸点範囲を有する、請求項8に記載の流体組成物。
【請求項11】
請求項1に記載のプロセスによって調製されたスルホン化ブロックコポリマー組成物を含む物品であって、前記スルホン化ブロックコポリマー組成物が、
(a)水素化前に、一般配置A−B−A、A−B−A−B−A、(A−B−A)X、(A−B)X、A−D−B−D−A、A−B−D−B−A、(A−D−B)X、(A−B−D)X、A−B−B−B−A、(A−B−B)Xまたはこれらの混合を有する、スルホン化ブロックコポリマー(nは、2から約30の整数であり、およびXは、カップリング剤残基であり、ならびに
(i)それぞれのAブロックは、スルホン化されにくいポリマーブロックであり、それぞれのDブロックは、スルホン化されにくいポリマーブロックであり、およびそれぞれのBブロックは、スルホン化されやすいポリマーブロックであり、前記A、DおよびBブロックは、有意なオレフィン不飽和レベルを含有しない;
(ii)それぞれのAブロックは、1,000と60,000の間のピーク分子量を独立して有し、それぞれのDブロックは、1,000と50,000の間のピーク分子量を独立して有し、およびそれぞれのBブロックは、10,000と300,000の間のピーク分子量を独立して有する;
(iii)それぞれのAブロックは、重合された(i)パラ置換スチレンモノマー、(ii)エチレン、(iii)炭素原子数3から18のαオレフィン、(iv)1,3−シクロジエンモノマー、(v)水素化前に35mol%未満のビニル含量を有する共役ジエンのモノマー、(vi)アクリル酸エステル、(vii)メタクリル酸エステルおよび(viii)これらの混合物から選択される1つ以上のセグメントを含む;
(iv)それぞれのBブロックは、重合された(i)非置換スチレンモノマー、(ii)オルト置換スチレンモノマー、(iii)メタ置換スチレンモノマー、(iv)α−メチルスチレン、(v)1,1−ジフェニルエチレン、(vi)1,2−ジフェニルエチレンおよび(vii)これらの混合物から選択される1つ以上のビニル芳香族モノマーのセグメントを含む;
(v)それぞれのDブロックは、20℃未満のガラス転移温度および1000と50,000の間のピーク分子量を有するポリマーを含み、前記Dブロックは、(i)20mol%と80mol%の間のビニル含量を水素化前に有する、イソプレン、1,3−ブタジエンから選択される、重合または共重合共役ジエン、(ii)重合アクリラートモノマー、(iii)シリコーンポリマー、(iv)重合イソブチレンおよび(v)これらの混合物(重合1,3−ブタジエンまたはイソプレンを含有するいずれのセグメントも後に水素化される。);および
(vi)それぞれのBブロック中の、非置換スチレンモノマー、オルト置換スチレンモノマー、メタ置換スチレンモノマー、α−メチルスチレン、1,1−ジフェニルエチレンおよび1,2−ジフェニルエチレンである、ビニル芳香族芳香族モノマーのmol%は、10mol%と100mol%の間である。)と;
(b)残留カルボン酸のC1からC4アルキルエステル約0.08から約4重量%と;
(c)残留カルボン酸2.0重量%未満(重量%はブロックコポリマー組成物の総重量に基づく。)と
を含む、物品。
【請求項12】
前記残留カルボン酸が、イソ酪酸またはプロピオン酸である、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
残留カルボン酸のC1からC4アルキルエステルが、イソ酪酸メチルまたはイソ酪酸エチルである、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
水素化前の前記スルホン化ブロックコポリマーが、一般配置(A−D−B)Xを有し、ならびにAブロックが、パラ−t−ブチルスチレンのポリマーブロックであり、前記Bブロックが、非置換スチレンのポリマーブロックであり、および前記Dブロックが、ブロックD中の縮合ブタジエン単位の20から80mol%が1,2−配置を有する、イソプレンまたは1,3−ブタジエンのポリマーブロックである、請求項12に記載の物品。
【請求項15】
(a)請求項1に記載のプロセスによって調製したスルホン化ブロックコポリマーと残留カルボン酸のエステルと非ハロゲン化脂肪族溶剤との流体組成物を基材および場合により他のプロセス補助物の表面に塗布する段階、
(b)流体組成物を伸展させて基材上に均一な厚さの層を形成する段階;および
(c)流体組成物から溶剤を蒸発させて、結果として固体膜を生じさせる段階
を含む、膜を調製するためのプロセス。
【請求項16】
段階(b)が、ダイまたはリバース・ロール・コーターによる流体組成物の伸展を含む、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
結果として生ずる層の厚さが、0.1マイクロメートルと1mmの間である、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記流体組成物が、多孔質基材上に伸展される、請求項15に記載のプロセス。
【請求項19】
前記多孔質基材が、微多孔質膜、発泡ポリ(テトラフルオロ)エチレンおよび繊維マットから成る群より選択される、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
段階(c)が流体組成物の加熱を含む、請求項15に記載のプロセス。
【請求項21】
前記流体組成物が、10%より高い相対湿度で水蒸気を含有する雰囲気で基材の表面に伸展される、請求項15に記載のプロセス。
【請求項22】
請求項15に記載のプロセスによって形成された膜。
【請求項23】
湿潤時に少なくとも100psiの引張強度を有する、請求項22に記載の膜。
【請求項24】
約0.4meq/gと約2.5meq/gの間のイオン交換容量を示す、請求項22に記載の膜。
【請求項25】
フラットシートの形状、チューブ、またはパーフォーム物品(perform article)の形状である、請求項22に記載の膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−520018(P2011−520018A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508665(P2011−508665)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/043145
【国際公開番号】WO2009/137678
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(510145211)クレイトン・ポリマーズ・ユー・エス・エル・エル・シー (10)
【出願人】(591066100)ステパン カンパニー (5)
【Fターム(参考)】