説明

スロッシング抑制装置

【課題】 大型の液体貯槽内でスロッシングを有効に抑制することができる装置であって、既存の貯槽にも適用が可能な装置を提供する。
【解決手段】 円筒状の壁体1を有する液体貯槽内の壁体近傍における液面下に、流動抵抗付与部材11を保持する。流動抵抗付与部材は、ほぼ水平に保持された網状体11bを有し、浮体12によって浮力が付与されるとともに、ワイヤからなる拘束部材14によって基礎版13に係留され、所定の深さに保持される。これによりスロッシング発生時の鉛直方向への液体流動に抵抗を付与する。流動抵抗付与部材は、穴あき板、複数の棒状部材、格子状部材等であっても良い。上記ワイヤに代えて又はワイヤとともに、ダンパによる粘性抵抗が付与されたリンク機構を用いることもできる。また、液体貯留量の変動にともなって流動抵抗付与部材を保持する高さが変更されるように構成することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水、石油類等の液体を貯留する大型の円筒型貯槽内で、地震等の水平力が作用したときに液面が揺動するいわゆるスロッシング現象を抑制する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原油や重油等の石油類を貯留する容器として円筒型の貯槽が広く採用されている。このような貯槽内に液体が貯留されている状態で地震が発生すると、図13に示すように、水平方向の地震動によって液面が揺動し、円筒状の壁体近くでは液面の上昇及び下降が繰り返される。大型の貯槽内における液面揺動の固有周期は一般に長周期となるが、地震動が長周期成分を含む場合には液面の揺動が成長し、液面の昇降量が大きくなる。そして、壁体の上部が解放されている貯槽では、上昇した液面が壁体の頂部より高くなると、貯留する液体は貯槽外へ大量に溢れ出すことになる。また、貯槽が液面上に浮き屋根を有する場合には、液面の上昇とともに浮き屋根が大きく持ち上げられ、屋根が破壊されるおそれも生じる。このような事態になると、貯留する液体が浮き屋根上に漏出し、石油類等の可燃性の液体では火災が発生する危険も生じてしまう。
【0003】
このようなスロッシング現象を抑制する手段としては、特許文献1及び特許文献2に開示されるものがある。
特許文献1に記載の技術は、円筒型貯槽の壁体の内周面に沿って螺旋状の誘導フインを設けるものである。上記誘導フインは壁体から貯槽の内側にほぼ水平に張り出し、螺旋状に連続した板状部材である。これにより、スロッシング発生時の壁体付近に生じる上下方向の液体移動を螺旋状に旋回する上昇流又は下降流とし、壁体又は誘導フインによって液体の流れに抵抗を付与してエネルギの減衰を図るものである。
【0004】
また、特許文献2に記載の技術は、貯槽内の液面付近にドーム屋根から支持された制振部材を支持するものである。制振部材は壁体の内周面付近に水平状態で支持される環状の部材であり、液位に合わせて上下方向に位置の調整が可能となっている。そして、液位検出手段で検出された位置情報に基づいて制振部材を移動し、貯留される液体の自由液面に接触する状態に保持するものである。
【特許文献1】特開昭56―106773号公報
【特許文献2】実開平6―6297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来から知られている上記技術では次のような問題点がある。
特許文献1に記載の技術では、有効にスロッシングを抑制しようとすると誘導フインを壁体から大きな幅で内側に張り出す必要がある。特に内径の大きい円筒型の貯槽では誘導フインの幅が小さいとほとんどスロッシングを抑制することができない。誘導フインの幅を大きくすると、部材は大きく強固なものとする必要があり、工事費が大幅に増大する。また、既存の貯槽にこのような誘導フインを追加で取り付けることは難しい。
【0006】
また、特許文献2に記載の技術では、制振部材をドーム屋根から支持しており、変動する液面から作用する鉛直方向の力に抵抗するために屋根の構造を強固なものとしなければならない。そして、この技術は浮き屋根を備える貯槽には適用することができない。
【0007】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な構造で貯槽内のスロッシングを有効に抑制することができるとともに、既存の貯槽にも適用が可能なスロッシング抑制装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に係る発明は、 円筒状の壁体を有する液体貯槽内の前記壁体近傍における液面下に保持され、前記壁体付近で上方へ移動する液体に抵抗を付与する流動抵抗付与部材と、 該流動抵抗付与部材を液体中に浮揚させる浮体と、 一端が前記流動抵抗付与部材又は前記浮体に連結され、他端が前記液体貯槽の壁体、底版又は底版上に設けられた基礎板に連結され、前記流動抵抗付与部材を液面下の所定の深さに維持するとともに、液面の低下時には該流動抵抗付与部材の下降を許容する拘束部材とを有するスロッシング抑制装置を提供する。
【0009】
この装置では、流動抵抗付与部材は浮体によって浮き上がる方向への力が付与されるとともに、拘束部材によって所定の高さより浮上するのが拘束される。したがって、流動抵抗付与部材は貯槽内の液面下における所定の深さに支持される。又、貯槽内に貯留される液体量が減少し液面が低下した場合には、浮体の下降とともに流動抵抗付与部材も下降し、液面上に浮き屋根等があっても、この浮き屋根の下降を阻害することもない。
【0010】
貯槽内でスロッシングが生じたときには、図13に示すように貯槽内の中央部では液面付近で水平方向に液体が流動し、液面が上昇している部分の壁体の近くでは、壁面に沿った上昇流となる。また、液面が下降している部分では壁面付近で下降流が生じる。そして、壁体近くに生じる上昇流と交錯するように流動抵抗付与部材が支持されており、液体の流動に抵抗が付与される。これにより液体の運動エネルギが減衰され、スロッシングが抑制される。液面が下降している部分では、拘束部材が柔軟に変形する線材や鎖状部材であると、液体の下方への流動とともに流動抵抗付与部材も下降し、液体の流動に対して抵抗を付与することができないが、スロッシング発生時のように液面の変動速度が大きい時には流動抵抗付与部材の移動を制限するような機構を拘束部材が備えることにより、液面が下降する部分でも液体の流動に抵抗を付与し、スロッシングの減衰を効率よく行うことができる。
【0011】
なお、上記拘束部材として柔軟に変形する線材や鎖状部材を用いると、貯留液体量の減少によって液面が下降したときに、流動抵抗付与部材は浮体ともに下降し、拘束部材に緩みが生じる。この状態では拘束部材に張力が生じる高さまで流動抵抗付与部材が上昇しないと流動する液体に抵抗を付与することができないことになり、拘束部材の緩みを解消する手段を備えるのが望ましい。しかし、液面が低下している時にはスロッシングが大きく成長することは少なく、液体が壁体を越えて溢れ出すおそれも少ない。したがって、貯留液体量が減少しているときに拘束部材にゆるみが生じるような構成であっても、スロッシングによって液体が溢れ出すのを防止する効果を奏するものである。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のスロッシング抑制装置において、 上記流動抵抗付与部材は、網状部材、穴あき板、間隔をあけて配置された複数の棒状部材、格子状部材、分割された複数の平板から選択される1又は複数の部材を有するものとする。
【0013】
この装置では、スロッシングによって上下方向に生じる液体の流動が流動抵抗付与部材と交錯し、網状部材の網目、穴あき板の穴、棒状部材の間、格子状部材の格子目、複数の板状部材の部材間を通過する。このとき、液体の流れは攪乱され、液体の流動に対する抵抗となる。そして、網状部材の網目の大きさ及び網を構成する線材の太さ、穴あき板の穴の大きさ及び間隔を調整することによって、流体の移動に付与する抵抗の大きさを調整することができる。また、棒状部材、格子状部材、板状部材の部材間隔、部材の太さ又は大きさ等を調整することによって同様に抵抗の大きさを調整することができる。このように流体の移動に付与する抵抗の大きさを調整することによって、流体のスロッシングの減衰効率、及び流動抵抗付与部材に必要な構造強度を適切に設定することができ、貯槽の規模や貯留液体の種類等に応じて効率よくスロッシングを抑制することができる。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載のスロッシング抑制装置において、 前記拘束部材によって保持される前記流動抵抗付与部材の位置を、該貯槽内に貯留する液体量に応じて調整する位置調整手段を有するものとする。
【0015】
貯槽内に貯留される液体の量は常に一定ではなく、管路を通じて液体の注入・排出が行われる。このように貯留量が変化して液面が変動すると、スロッシングの状態も変化し、液体の流動が生じる範囲も変化する。本請求項に係るスロッシング抑制装置では、液面の変化に対応して位置調整手段が流動抵抗付与部材の高さ方向の位置を調整するものとなっており、液面の高さに応じて適切な位置に流動抵抗付与部材が保持され、有効にスロッシングが抑制される。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載のスロッシング抑制装置において、 前記拘束部材は柔軟に変形する線材又は鎖状部材であり、 前記位置調整手段は、前記拘束部材の一端を巻き取り又は引き出すことができる巻き取り装置を含むものであり、 該巻き取り装置は、貯留液体量の変動による液面変動に対応して前記拘束部材の巻き取り又は引き出しを行い、所定速度以上の液面変動が生じたときには拘束部材の巻き取り及び引き出しをロックするものとする。
【0017】
このスロッシング抑制装置では、流動抵抗付与部材は、浮体によって上方へ浮き上がろうとする力が付与されており、これを拘束部材の引張力によって拘束して所定の位置に保持されている。そして、貯槽内の液面がゆっくりと変動したとき、例えば液体を貯槽から排出することによって液面が下降したときには、拘束部材を巻き取ることによって流動抵抗付与部材を下降させることができる。これにより、液面がやや下降した位置にあるときにも流動抵抗付与部材を適切な位置に移動させて貯留液体のスロッシングを有効に抑制することができる。また、液体が貯槽内に注入されることによってゆっくりと液面が上昇したときには、拘束部材を引き出し、流動抵抗付与部材を上昇させて適切な位置に保持することができる。
【0018】
スロッシングが発生したときは、貯留液体量の変動時における液面の上昇又は下降速度よりはるかに大きい速度で液面が上下する。したがって、このように大きな速度で液面が変動するときには上記拘束部材の巻き取り装置をロックし、拘束部部材の巻き取り及び引き出しが生じないようにして流動抵抗付与部材の上下方向の位置を拘束する。これにより、スロッシングにともなう上下方向の液体流動に対して流動抵抗付与部材が干渉し、液体の移動に対する抵抗を付与することになる。
【0019】
なお、巻き取り装置をロックする機構は、液面の位置を検知するセンサからの信号によってロックするものでも良いし、拘束部材の巻き取り又は引き出しの速度を検知してロックするものであってもよい。また、速度を検知するセンサからの電気信号によって制御されるものでも良いし、拘束部材等の動作と機械的に連動してロックする機構を備えるものでも良い。
【0020】
請求項5に係る発明は、請求項3に記載のスロッシング抑制装置において、 前記浮体は、線材又は鎖状部材によって前記流動抵抗付与部材を吊支持した状態で浮揚するものであり、 前記拘束部材は柔軟に変形する線材又は鎖状部材であり、 前記位置調整手段は、前記拘束部材の一端を巻き取り又は引き出すことができる巻き取り装置を含むものであり、 該巻き取り装置は、前記拘束部材に所定値以上の引張力が作用するときに該拘束部材を引き出し、前記所定値又はこれより小さい第2の所定値より引張力が小さいときに前記拘束部材を巻き取るものであり、該拘束部材の巻き取り及び引き出し動作に粘性抵抗を付与するダンパを備えるものとする。
【0021】
このスロッシング抑制装置では、浮体が流動抵抗付与部材を吊支持した状態で浮揚することによって拘束部材には引張力が作用し、この引張力によって巻き取り装置から拘束部材が引き出されるように設定することができる。そして、浮体が液面に到達してそれ以上の浮揚力が作用しなくなると、拘束部材の引き出しは停止する。このとき浮体は液面上に浮いた状態又は液面上に浮遊する浮き屋根に当接した状態となっているが、流動抵抗付与部材はこの浮体から吊支持されているので液面下の適切な位置に保持することができる。したがって、貯槽内の液体貯留量が増加して液面が上昇しても流動抵抗付与部材は適切な位置に保持される。一方、貯留量が減少して液面が下降すると、浮体と一体となった流動抵抗付与部材も下降し、拘束部材の引張力は作用しなくなって緩みが生じる。このように引張力が低下したときには、拘束部材を巻き取り装置が巻き取るように設定することができる。
【0022】
そして、スロッシングが発生したときには、液面の変動は液体貯留量が変化するときより大きな速度で生じ、浮体と流動抵抗付与部材とがこの速度で上昇しようとすると、ダンパが作用して拘束部材の引き出しに粘性抵抗を付与する。したがって、液体の流動に対して、流動抵抗付与部材は移動が拘束され、液体の上方への流動に抵抗を付与することになる。なお、液体貯留量が変化するときには、液面の変動が極めてゆっくりと生じるため、上記ダンパの粘性抵抗は拘束部材の引き出し及び巻き取りをほとんど拘束することはない。
【0023】
請求項6に係る発明は、請求項3に記載のスロッシング抑制装置において、 前記浮体は、線材又は鎖状部材によって前記流動抵抗付与部材を吊支持した状態で浮揚するものであり、 前記拘束部材は柔軟に変形する線材又は鎖状部材であり、 前記位置調整手段は、前記拘束部材の一端を巻き取り又は引き出すことができる巻き取り装置であり、 該巻き取り装置は、前記拘束部材に所定値以上の引張力が作用するときに該拘束部材を引き出し、前記所定値又はこれより小さい第2の所定値より引張力が小さいときに前記拘束部材を巻き取るものであり、該拘束部材の巻き取り及び引き出しの速度が所定速度以上となったときに該動作を停止するロック機構を備えるものとする。
【0024】
このスロッシング抑制装置では、請求項5に係る装置と同様に、液体貯留量の変動により液面が上昇又は下降しても、流動抵抗付与部材は液面下の適切な位置に浮体から吊支持される。そして、スロッシングが生じたときには、拘束部材の巻き取り及び引き出しがロックされ、壁体近くで上昇する液体の移動に対して流動抵抗付与部材が抵抗し、スロッシングを減衰させる。
【0025】
請求項7に係る発明は、請求項1に記載のスロッシング抑制装置において、 複数の棒状エレメントを回動可能に連結し、前記流動抵抗付与部材と底版又は底版上に設けられた基礎板とを連結するリンク機構を、前記拘束部材として又は前記拘束部材とともに備え、 該リンク機構は、その動作に粘性抵抗を付与するダンパを有するものとする。
【0026】
上記リンク機構は変形することによって流動抵抗付与部材が下降することを許容し、液体貯留量の変動にともなって液面がゆっくりと低下したときに浮き屋根の下降を阻害しない。つまり、ダンパは流動抵抗付与部材の下降に抵抗しない。
また、スロッシングが発生して液面が比較的大きい速度で変動するときには、リンク機構の変形に粘性抵抗が付与されて流動抵抗付与部材の上昇及び下降を拘束し、液体の上方への流動のみでなく下方への流動に対しても抵抗を付与することができる。したがって、効率よくスロッシングを減衰させることができる。
さらに、リンク機構が所定の位置以上に伸長するのを規制するストッパを設けておくことにより、このリンク機構を拘束部材として用いることもでき、浮体によって浮揚しようとする流動抵抗付与部材を液面下の所定の高さに保持することができる。
【0027】
請求項8に係る発明は、 円筒状の壁体を有する液体貯槽内の前記壁体近傍における液面下に保持され、前記壁体付近で上方へ移動する液体に抵抗を付与する流動抵抗付与部材と、 該流動抵抗付与部材を液体中に浮揚させる浮体と、 一端が前記流動抵抗付与部材又は浮体に連結されるとともに、液体貯槽の底部に位置が固定された掛け回し部材及び前記壁体の上部で位置が固定された掛け回し部材のそれぞれに掛け回され、他端が液面上に浮遊する浮き屋根の上面に連結された線材又は鎖状部材であって、該線材又は鎖状部材の中間部に、伸縮可能な弾性部材が介挿された連結部材と、 前記弾性部材より流動抵抗付与部材側の連結部材に、該連結部材の軸線方向への移動に対する粘性抵抗を付与するダンパ、又は該連結部材の軸線方向への移動が所定速度以上となったときに、前記弾性部材より流動抵抗付与部材側の連結部材が軸線方向へ移動するのを拘束するロック機構とを備えるスロッシング抑制装置を提供するものである。
【0028】
このスロッシング抑制装置では、流動抵抗付与部材には浮体の浮力によって上方への揚力が作用するとともに、連結部材の引張力によって上方への移動が所定の位置で拘束され、液面下の所定の位置に保持される。そして、連結部材は掛け回し部材に掛け回されて、浮き屋根に連結されているので液体貯留量の変動によってゆっくりと液面が変動し、浮き屋根が上方また下降するとこれに連動して流動抵抗付与部材も上昇又は下降する。したがって、流動抵抗付与部材は液面が変動しても液面下の適切な位置に保持される。
【0029】
また、スロッシングが生じたときには、液面の揺動にともなって浮き屋根が上昇及び下降を繰り返すが、流動抵抗付与部材は連結部材に作用する粘性抵抗又は連結部材がロックされることによって位置はほとんど変動せず、液体の上下方向への流動に対して抵抗を付与する。また、浮き屋根が大きな速度で上昇及び下降を繰り返すことによって浮き屋根に結合された連結部材は引張され、弛緩されるが、弾性部材によって吸収され、大きな引張力が流動抵抗部材側に伝達されるのが回避される。
【0030】
請求項9に係る発明は、 円筒状の壁体を有する液体貯槽内の前記壁体近傍における液面下に保持され、前記壁体付近で上下方向へ移動する液体に抵抗を付与する流動抵抗付与部材と、 複数の棒状エレメントが回動可能に連結され、前記流動抵抗付与部材と底版又は底版上に設けられた基礎板とを連結するリンク機構と、 該リンク機構の動作に粘性抵抗を付与するダンパと、 該貯槽内の浮き屋根と前記流動抵抗付与部材とを連結し、該貯槽内の貯留液体量が変動したときにも前記流動抵抗付与部材を液面下の所定の深さに保持する連結部材と、 該貯槽内の液体にスロッシングが発生したときに、前記浮き屋根と前記流動抵抗付与部材との間の前記連結部材による拘束を解放するトリガ装置とを有するスロッシング抑制装置を提供する。
【0031】
このスロッシング抑制装置では、流動抵抗付与部材は浮き屋根と連結されて保持されており、流動抵抗付与部材と底版又は底版上に設けられた基礎板との間はリンク機構によって連結されているので、貯留液体の量が変動して浮き屋根がゆっくりと上昇又は下降したときに、これにともなって流動抵抗付与部材も上昇又は下降する。つまり、リンク機構は変形して流動抵抗付与部材の上昇又は下降を拘束することはない。また、リンク機構に粘性抵抗を付与するダンパも、液面の変動がゆっくりであるために抵抗することはない。
【0032】
一方、スロッシングが発生したときには、液面揺動による液面の上昇及び下降が、液体貯留量が変動するときの液面変動よりはるかに大きな速度で生じる。そして、これを検知したときにトリガ装置が作動し、浮き屋根と流体抵抗付与部材との間の拘束が解放されるので、浮き屋根は液面の揺動にともなって揺動を繰り返すが、流動抵抗付与部材は粘性抵抗が作用するリンク機構によって拘束され、位置はわずかしか変動しない。したがって、壁体近くで発生する液体の上方への流動及び下方への流動に対して流動抵抗付与部材が交錯し、液体の移動に抵抗が付与される。
【0033】
なお、上記トリガ装置は、液面の変動を検知するセンサを有し、液面の変動速度を検知したときに、この電気信号に基づいて連結部材の拘束を解放するものであっても良いし、地震動を検知したときに解放するものであっても良い。また、連結部材に大きな引張力又は圧縮力が作用したときに機械的に拘束を解放するもの等、様々な機構のものを採用することができる。
【0034】
請求項10に係る発明は、 円筒状の壁体を有する液体貯槽内の前記壁体近傍における液面下に保持され、前記壁体付近で上下方向へ移動する液体に抵抗を付与する流動抵抗付与部材と、 複数の棒状エレメントが回動可能に連結され、前記流動抵抗付与部材と底版又は底版上に設けられた基礎板とを連結するリンク機構と、 該リンク機構の動作に粘性抵抗を付与するダンパと、 該貯槽内の浮き屋根と前記流動抵抗付与部材とを連結し、該貯槽内の貯留液体量が変動したときにも前記流動抵抗付与部材を液面下の所定の深さに保持する連結バネ部材と、を有し、 前記連結バネ部材は、該貯槽内の液体にスロッシングが発生したときに、前記浮き屋根と前記流動抵抗付与部材との間隔が変動するのを許容するものであるスロッシング抑制装置を提供する。
【0035】
このスロッシング抑制装置では、流動抵抗付与部材は浮き屋根と連結バネ部材によって連結され、浮き屋根の下方に所定の間隔で保持される。そして、流動抵抗付与部材と底版又は底版上に設けられた基礎板との間はリンク機構によって連結されているが、貯留液体の量が変動して浮き屋根がゆっくりと上昇又は下降したときには、リンク機構がこれにともなって変形し、流動抵抗付与部材は浮き屋根にともなって上昇又は下降する。つまり、リンク機構はゆっくりと変形するために粘性抵抗が作用せず、流動抵抗付与部材の上昇又は下降を拘束することはない。したがって、連結バネ部材は大きく変形することはなく、流動抵抗付与部材と浮き屋根との間隔はほぼ一定に保持される。
【0036】
一方、スロッシングが発生したときには、液面揺動による液面の上昇及び下降が、液体貯留量が変動するときの液面変動よりはるかに大きな速度で生じる。そして、浮き屋根と流動抵抗付与部材とは液面の揺動とともに上昇又は下降しようとするが、流動抵抗付与部材にはリンク機構に作用する粘性抵抗によって移動に抵抗力が付与される。このため、流動抵抗付与部材は、ほぼ同じ高さに保持されるとともに、浮き屋根と流動抵抗付与部材との間の連結バネ部材が伸縮し、浮き屋根が液面とともに揺動するのを拘束しない。このように流動抵抗付与部材は、スロッシングが発生した時にほぼ同じ高さに保持されるので、壁面近くで上昇する液体の流れ及び下降する液体の流れと交錯し、これらの流動に抵抗を付与することになってスロッシングが有効に減衰される。
【0037】
請求項11に係る発明は、請求項9又は請求項10に記載のスロッシング抑制装置において、 前記ダンパに代えて、前記流動抵抗付与部材の変位速度が所定の値以上となったときに該流動抵抗付与部材の変位を拘束するロック装置を有するものとする。
【0038】
このスロッシング抑制装置では、貯留液体量が変動して液面がゆっくりと上昇又は下降するときには、ロック装置が作動せず、流動抵抗付与部材は浮き屋根とともに上昇又は下降する。そして、スロッシングが発生し、液面が比較的大きな速度で変動するときにはロック装置が作動して流動抵抗付与部材の位置が拘束される。このとき浮き屋根は流動抵抗付与部材と相対的に変位するのが許容され、液面にしたがって揺動する。このように流動抵抗付与部材がスロッシング発生時にほぼ同じ高さに保持されることにより、壁体近くの上下方向の液体流動に抵抗を付与し、スロッシングを有効に減衰させることができる。
【発明の効果】
【0039】
以上説明したように、本願発明に係るスロッシング抑制装置では、スロッシング発生時に壁体近くで上昇する液体の流れ又は下降する液体の流れに対して流動抵抗付与部材が交錯し、液体の流動を攪乱して抵抗を付与する。これによって、液体の運動エネルギが減衰され、スロッシングを有効に抑制することができる。また、液体の貯留量が減少して液面がゆっくりと下降したときには流動抵抗付与部材も下降するものとなっており、貯留液体を全て排出して浮き屋根が所定の最下降位置にまで下降するのを阻害しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本願発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、請求項1又は請求項2に係る発明の一実施形態であるスロッシング抑制装置の概略平面図及び概略断面図である。また図2は、図1に示すスロッシング抑制装置の構造を示す拡大断面図である。
【0041】
この装置は、円筒型の壁体1と浮き屋根2と底版3とを有する鋼製貯槽内で、貯留液体にスロッシングが生じるのを抑制するものであり、浮き屋根2の下側の所定の深さに支持される流動抵抗付与部材11と、この流動抵抗付与部材11に浮力を付与する浮体12と、貯槽の底版上に設けられた基礎板13と、上記基礎板13と流動抵抗付与部材11又は浮体12とを連結し、浮上しようとする浮体12及び流動抵抗付与部材11を所定の深さに保持する拘束部材14とで主要部が構成されている。
【0042】
上記流動抵抗付与部材11は、鋼型材によって水平方向に形成された枠体11aと、これらの枠内に張設された網状部材11bを備えるものであり、この網状部材11bの網目を貯留液体が通過するときに流れが攪乱され、流動に対する抵抗が付与されるものとなっている。上記枠体11aは、壁体の内側に鋼型材を環状に連結した枠を二重に形成し、これらの間を水平な放射方向に連結したものであり、二重となった環状の枠間に網状部材11bが張設されている。そして、浮体12は上記環状の枠と放射方向に連結する部材との格点部分に組み込まれて一体となっており、環状の枠及び連結する部材が接合される鋼製の函体となっている。この函体内には空気が内包されており、液体中で大きな浮力が作用するものである。
【0043】
上記網状部材11bは、鋼からなるもの、合成繊維からなるもの等様々のものを用いることができ、剛性を有するものであっても良いし、柔軟に変形するものでもよい。この網状部材11bの網目の大きさ及び網を構成するそれぞれの部材の太さ等は、液体の流動に付与する抵抗の大きさに影響するものであり、貯槽の形状・寸法、貯留する液体の粘性、想定される地震動、流動抵抗付与部材の寸法等を考慮して決定することができる。
【0044】
上記基礎板13は、鋼からなり、底版3上に載置されている。この底版3は浮体12と浮体12によって浮力が付与された流動抵抗付与部材11を拘束部材14によって係留しておくものであり、浮体12と流動抵抗付与部材11に作用する浮揚力に対し充分に抵抗できる重量を有するものとなっている。また、スロッシングの発生時には、壁体1付近に生じる上方への液体流動によって流動抵抗付与部材11に上方への力が作用するので、この上揚力に対しては、基礎板の流体による抵抗力と基礎板の重量によって抵抗するものとなっている。つまり液体の流動に抵抗を付与することによる反力が作用するものであり、この上揚力が拘束部材14を介して伝達されたときにも、流動抵抗付与部材11が全く浮揚しないか、又はわずかしか浮揚しないように保持できるものとなっている。
【0045】
なお、この基礎板13は、底版3に接合しても良い。一般に底版3は鋼板で構成されており、上面には一様に水圧が作用している。したがって、水圧によって上揚力を抑えることができるが、集中して上揚力が作用すると、作用点の近くで底版に大きな変形が生じるおそれが生じる。このため、上記基礎版は、底版が変形するのを充分に補強するものであるのが望ましい。
【0046】
上記拘束部材14は、鋼ワイヤからなるものであり、流動抵抗付与部材11又は浮体12と基礎板13とを連結して流動抵抗付与部材11を浮き屋根2の下方における所定の高さに係留するものである。そして、柔軟に変形が可能であるため、流動抵抗付与部材11が下降するのを拘束することはなく、スロッシングによって液面が低下したとき、貯留液体の減少によって液面が下降したときには、流動抵抗付与部材11と基礎版13との間で緩みが生じて、流動抵抗付与部材11の下降を許容するものとなっている。
【0047】
上記のような装置では、流動抵抗付与部材11と浮体12とに作用する重力より浮力が大きく作用しており、液面まで浮上しようとするのを拘束部材14によって基礎板13に連結し、その引張力で所定の高さ以上に浮上するのが拘束される。したがって、流動抵抗付与部材11は浮き屋根2の下方で所定の高さに保持される。
【0048】
この貯槽内に貯留する液体が排出され、液体の貯留量が減少したときには液面上に浮遊する浮き屋根2が下降し、その下面が流動抵抗付与部材11に接触する。そして、さらに貯留量が減少すると、浮き屋根2は流動抵抗付与部材11と接触したまま下降し、浮き屋根2の下降限界位置まで到達する。このとき鋼ワイヤからなる拘束部材14は、流動抵抗付与部材11と基礎板13との間で緩みが生じ、変形して流動抵抗付与部材11の下降を許容する。また、貯槽内に液体が送り込まれ、貯留量が増加して液面が上昇するときには浮き屋根2とともに流動抵抗付与部材11も浮上し、拘束部材14に引張力が作用した位置で流動抵抗付与部材11が保持される。浮き屋根はさらに上昇し、貯留液体が満湛となったときの液面まで上昇が可能となっている。
【0049】
なお、このようなスロッシング抑制装置が設けられる貯槽は一般に円筒状の壁体の径が大きく、管路によって液体の排出又は注入が行われると、液面は極めてゆっくりと下降又は上昇し、上記浮き屋根2及び流動抵抗付与部材11の下降及び上昇も極めてゆっくりと生じる。
【0050】
一方、上記のような貯槽内では、地震時特に長周期成分を含む地震動が生じたときにスロッシングが生じやすい。そして、スロッシングが生じたときには、図13に示すように貯槽内の中央部では液面付近で水平方向に液体が流動し、液面が上昇している部分の壁体の近くでは、壁面に沿った上昇流となる。このスロッシングの周期は、3秒から12秒程度であり、スロッシングによる液面の上昇又は下降高さは、0.5mから2m程度となる。
【0051】
このようなスロッシングが生じたときに、液面が上昇している部分では壁面付近で液体の上昇流が生じ、壁体付近でほぼ水平に保持された流動抵抗付与部材11がこの液体の流動に交錯する。従って、液体は流動抵抗付与部材11の網目を通過することになり、攪乱が生じる。これは液体の流動に抵抗を付与するものとなり、液体の運動エネルギが減衰されてスロッシングが抑制される。
【0052】
液面が下降している部分では、浮き屋根2が下降するとともに、液体の下方への流動が生じる。このとき拘束部材14は柔軟に変形して流動抵抗付与部材11の下降を拘束することはなく、流動抵抗付与部材11は、液体の流動にともなって下降する。このとき浮き屋根2の下降量が大きい場合、又は液体の貯留量がやや少なく、浮き屋根2と流動抵抗付与部材11とが接近していた場合には、流動抵抗付与部材11又は浮体12と接触することも考えられるが、流動抵抗付与部材11及び浮体12の下降に対して何ら抵抗するものはなく、浮き屋根2とともに下降し、相互間に大きな力が作用することはない。
【0053】
なお、上記浮き屋根2は、壁体1の内周面に沿って環状の梁2aを備えており、その内側には水平に連続する鋼板2bが設けられて液面を覆うようになっている。そして、環状の梁2aは中空になっており、この梁に充分な浮力が作用するものである。また、この環状の梁2aの外側面には、周方向に連続するように弾性部材2cが取り付けられ、金属の薄板2dによって被覆されている。これにより、浮き屋根2が昇降するときに、壁体1の内周面と浮き屋根2とが円滑に摺動するともに、貯留する液体を浮き屋根2の下側に密封した状態が維持されるものとなっている。
【0054】
図3は、請求項3又は請求項4に係る発明の一実施形態であるスロッシング抑制装置を示す概略断面図である。
この装置は図1及び図2に示す装置と同じ流動抵抗付与部材21、浮体22及び基礎板23を備えているが、これらを係留する拘束部材24の下端が、直接に基礎板23に連結されるのではなく、巻き取り装置25を介して基礎板23に連結されている。
【0055】
上記巻き取り装置25は、流動抵抗付与部材21の位置調整手段として機能するものであり、鋼ワイヤからなる拘束部材24の下端が滑車26を介して引き込まれ、ローラ25aの駆動によって巻き取り及び引き出しを行うものである。このローラ25aはモータによって駆動されるものとなっており、モータは電気信号によって制御される。つまり、液面センサ(図示しない)によって液面の高さが検知され、その信号に基づいて拘束部材24を巻き取り又は引き出して流動抵抗付与部材21が液面下の適切な高さとなるようにモータの駆動が制御される。
【0056】
この装置では、貯槽内に貯留される液体の量が変動して液面の高さつまり浮き屋根2の位置が変動したときに、上記巻き取り装置25が作動して流動抵抗付与部材21が液面下の所定の深さ保持される。したがって、貯留液体量にかかわらず流動抵抗付与部材21は常に適切な位置に保持され、スロッシングを有効に抑制することが可能となる。
【0057】
図4は、請求項3又は請求項5に係る発明の一実施形態であるスロッシング抑制装置を示す概略断面図である。
この装置では、流動抵抗付与部材31は第1の浮体37から吊材38を介して吊支持されている。つまり、流動抵抗付与部31材に固着された第2の浮体32も備えてはいるが、第2の浮体32と流動抵抗付与部材31とは、作用する浮力より重力が大きくなっており、第1の浮体37から吊材38を介して伝達される上揚力によって液体中で浮揚するものとなっている。そして、第1の浮体37は浮き屋根2の下面に当接して位置が拘束されており、流動抵抗付与部材31は吊材38の長さによって所定の深さに保持される。
【0058】
流動抵抗付与部材31と基礎板33とは、鋼ワイヤからなる拘束部材34によって連結されており、拘束部材34の下端部は巻き取り装置35を介して基礎板33に接合されている。この巻き取り装置35は、滑車36に巻き回された拘束部材34をローラ35aに巻き取るものとなっており、この巻き取り力が、第1の浮体37、第2の浮体32及び流動抵抗付与部材31に作用する上揚力、つまり作用する浮力から重力を差し引いた力より小さくなるように設定されている。また、第1の浮体37と第2の浮体32と流動抵抗付与部材31との上揚力が作用したときには鋼ワイヤが引き出され、流動抵抗付与部材31の上昇をさまたげないようになっている。さらに、上記鋼ワイヤの巻き取り及び引き出しには粘性抵抗を付与するものとなっており、巻き取る方向の力又は引き出す方向の力が作用しても急速な巻き取り又は引き出しが行われることはなく、ゆっくりと行われるものとなっている。
【0059】
上記巻き取りは、例えばローラ35aにバネ等による回転駆動力を付与することによって行うことができる。また、駆動用の浮体を設けて浮力を利用するものであっても良い。また、粘性抵抗を付与する機構は、例えばローラ35aの回転が粘性液体中に設けられた羽根車35bと連動するものとし、羽根車35bが粘性流体中で回転することによって粘性抵抗が付与されるものを採用することができる。
【0060】
この装置では、流動抵抗付与部材31を吊支持する第1の浮体37、吊材38及び巻き取り装置35が位置調整手段として機能するものであり、第1の浮体37は常に浮き屋根2に当接して流動抵抗付与部材31を浮き屋根2の下方に所定の間隔で保持する。そして、貯槽内の液体貯留量が増大して液面が上昇すると浮き屋根2が上昇し、これにともなって第1の浮体37及び流動抵抗付与部材31も上昇する。このとき、拘束部材34には上揚力によって引張力が作用し、巻き取り装置35から拘束部材34が引き出され、流動抵抗付与部材31が上昇するのを拘束しない。一方、液面が下降し、流動抵抗付与部材31が下降したときには拘束部材34の引張力が低減され、巻き取り装置が作動して拘束部材34を巻き取り、拘束部材34に緩みを生じることなく常に上揚力より小さい張力が拘束部材に作用するものとなる。
【0061】
スロッシングが発生したときには、液面が上昇する部分では浮き屋根2が上昇し、第1の浮体37及び流動抵抗付与部材31も上昇しようとするが、このときの上昇速度は、液体貯留量が増加するときの上昇速度よりはるかに大きく、拘束部材34の引き出しに粘性抵抗が作用して流動抵抗付与部材31は急速に上昇しない。したがって、壁体近くで生じる上方への液体流動に対して流動抵抗付与部材31が交錯し、流動に抵抗を付与することになる。これによってスロッシングが抑制される。
【0062】
なお、上記巻き取り装置35のローラ35aに粘性抵抗を付与する機構に代えて、拘束部材31が大きな速度で引き出されたときに引き出しを停止するロック装置を採用することもできる。これによりスロッシング発生時に液面が上昇し、流動抵抗付与部材が急速に上昇しようとしたときにロック装置が作動し、流動抵抗付与部材31の位置を拘束する。これによって上方への液体流動に対して抵抗が付与される。
【0063】
以上に説明した図1から図4までに示す装置では、流動抵抗付与部材が壁体の内側で環状に連続したものとなっているが、図5に示すように流動抵抗付与部材41が周方向に複数に分割されたものであってもよい。また、流動抵抗付与部材に浮力を付与する浮体が格点に設けられた函体となっているが、図6に示すように、枠体を中空の管部材51で形成し、この管部材に浮力が作用するものを採用することもできる。さらに流動抵抗付与部材は一層からなるものであるが、図7に示すように、2層以上を重ねて用いることもできる。このとき複数の層の流動抵抗付与部材61a,61bはそれぞれの層が鋼ワイヤ62によって連結され、それぞれが間隔を保持して所定の高さに支持されるものとする。
【0064】
図8は、請求項7係る発明の一実施形態であるスロッシング抑制装置を示す概略断面図である。
この装置は、図1に示す装置と同じ流動抵抗付与部材71と浮体72と基礎板73とを有しており、拘束部材として、複数のエレメント74aを回動ピン74bにより回動可能に接合してエレメント74aが平行四辺形を形成する平行リンク機構74が用いられている。この平行リンク機構74の変形によって流動抵抗付与部材71の上昇及び下降が許容される。そして、所定の高さ以上には流動抵抗付与部材71が上昇しないようにストッパ(図示しない)が設けられている。また、平行リンク機構74の平行四辺形の格点を対角線上で結ぶ位置にダンパ75が設けられている。このダンパ75は、例えば、粘性流体を収容したシリンダ75a中でオリフィスを有するピストン75bの往復動が可能となったものを用いることができ、格点間の距離が接近又は離隔する動作に粘性抵抗を付与するものとなっている。したがって、平行リンク機構74の四辺形が変形して流動抵抗付与部材71が上昇又は下降するのに粘性抵抗を付与することができるものである。
【0065】
このような装置では、浮体72に作用する浮力で流動抵抗付与部材71が液体中で浮揚し、平行リンク機構74に設けられたストッパが作用する位置で保持される。そして、液体の貯留量が減少して浮き屋根2が下降したときには、流動抵抗付与部材71及び浮体72は浮き屋根2と当接され、浮き屋根2がゆっくりと下降するのにともなって下降する。このとき液面の下降はゆっくりと生じるためダンパ75は流動抵抗付与部材71の下降に抵抗しない。
【0066】
一方、スロッシングが生じたときには、液面の揺動にともなって液体が壁面近くで上下方向に流動する。このとき平行リンク機構74に取り付けられたのダンパ75が作用して流動抵抗付与部材71の位置が大きくは変動せず、液体の上下方向の流動に対して交錯して抵抗を付与することになる。また、拘束部材を鋼ワイヤ等の線材で構成したときには下降する液体の流動に対しては、抵抗を付与することができないが、平行リンク機構74を用いることにより液体が下降する場合にもダンパが作用し、液体の下方への流動に対して抵抗を付与することができ、スロッシングを効率よく抑制することができる。
【0067】
なお、上記実施形態では、平行リンク機構74は拘束部材として機能するものであり、平行リンク機構74によって流動抵抗付与部材71の位置を規制するものであるが、図2,図3又は図4に示す装置のように拘束部材として鋼ワイヤを用いた装置に、ダンパをともなう平行リンク機構を付加して用いても良い。この場合には、平行リンク機構の伸長を規制するストッパを設けず、流動抵抗付与部材の位置は鋼ワイヤからなる拘束部材によって保持する。このような平行リンク機構を用いることにより、下降する液体の流動に対しても抵抗を付与することが可能となる。また、図3又は図4に示す装置と組み合わせることによって鋼ワイヤによる流動抵抗付与部材の位置の調整を併せて行うことも可能となる。
【0068】
図9は、図4に示すスロッシング抑制装置の鋼ワイヤからなる拘束部材34及び巻き取り装置35に代えて、ダンパ85を有する平行リンク機構84を拘束部材として用いた例を示すものである。
このような装置では、液体貯留量の変動にともなって浮き屋根2が上昇又は下降したときに、浮体87及びこれに吊支持された流動抵抗付与部材81が浮き屋根2にともなって上昇又は下降する。このとき上昇又は下降の速度がゆっくりであるため、平行リンク機構84に取り付けられたダンパ85は平行リンク機構84の変形にほとんど抵抗しない。そして、スロッシングが発生したときには、ダンパ85が平行リンク機構84の変形に粘性抵抗を付与し、流動抵抗付与部材81は大きく変位することなくほぼ同じ位置に保持される。これにより壁体1近くで生じる上方への液体流動及び下方への流動に対して抵抗を付与することができ、有効にスロッシングを抑制することができる。
【0069】
図10は、請求項8に係る発明の一実施形態であるスロッシング抑制装置を示す概略断面図である。
この装置は、液体の流動に抵抗を付与する流動抵抗付与部材91と、この流動抵抗付与部材91を浮揚させる浮体92と、貯槽の底版3上に設けられた基礎板93と、この基礎板93上に取り付けられた第1の滑車95と、貯槽の壁体1の頂部に取り付けられた第2の滑車96と、上記流動抵抗付与部材91の下面に一端が接合され、第1の滑車95及び第2の滑車96に巻き回され、浮き屋根2の上面に他端が接合された連結部材94と、第1の滑車95の回転に粘性抵抗を付与するダンパ97とを備えている。
【0070】
上記流動抵抗付与部材91は、図1に示す装置と同様に、枠体91aとこの枠体に張設された網状部材91bとを有するものであり、枠体91aの格点部分に組み込まれた浮体92によって浮揚するものとなっている。また、基礎板93も図1に示す装置と同様のものが用いられており、充分な重量を有するか又は底版3に固着されている。
【0071】
上記連結部材94は、鋼ワイヤからなるものであり、流動抵抗付与部材91に一端が接合され、貯槽内の液体中で鉛直下方に張設されて第1の滑車95に巻き回されている。そして液体中を鉛直上方に引張され、浮き屋根2に設けられた貫通孔(図示しない)に挿通されて第2の滑車96に巻き回されている。そして再び鉛直下方に引き回され、浮き屋根2の上面に他端が接合されている。また、この連結部材94は、第1の滑車95と第2の滑車96との間でつるまきバネ94aが鋼ワイヤと直列に接続されており、この連結部材に大きな引張力が作用すると伸長するようになっている。
【0072】
上記ダンパ97は、第1の滑車95に粘性抵抗を付与することによってこの滑車の回転とともに軸線方向に移動する連結部材94に粘性抵抗を付与するものとなっている。つまり、連結部材94がその軸線方向にゆっくりと移動するときには抵抗が作用しないが、連結部材94がその軸線方向に急速に移動しようとするとこれに抵抗を付与し、連結部材94の移動を極めて緩慢なものとする。
【0073】
このような装置では、浮揚力が付与された流動抵抗付与部材91が連結部材94の引張力によって位置が拘束され、浮き屋根2の下方の所定深さで液体中に浮遊した状態となる。そして、貯槽内の液体量が変動したとき、例えば液体貯留量が増加して液面及び浮き屋根2が上昇したときには連結部材94が緩み、その分だけ流動抵抗付与部材91が上方へ浮上する。したがって、流動抵抗付与部材91は液面が上昇しても液面下の所定の深さに保持される。また、液体貯留量が減少して液面が下降したときも同様に流動抵抗付与部材91が下降し、浮き屋根2が底版近くまで下降するのを許容する。また、このように液体の貯留量が変動するときには液面が極めてゆっくりと変動し、ダンパ97は連結部材94の移動に抵抗しない。
【0074】
一方、地震時等において貯槽内の液体にスロッシングが生じたときには、液面の揺動とともに浮き屋根2は壁体1の近くが上昇及び下降を繰り返す。これにともない、連結部材94は浮き屋根2が下降したときにこの浮き屋根との接合端で下方へ引き下ろされ、上昇したときには弛緩する。しかし、ダンパ97はこのような連結部材94の移動に対して粘性抵抗を付与し、移動を抑制する。このため、浮き屋根2の上昇及び下降による連結部材94の移動はつるまきバネ94aによって吸収され、つるまきバネ94aより流動抵抗付与部材91側の鋼ワイヤはほとんど移動せず、流動抵抗付与部材91はほとんど位置を変えることなく液体中に保持される。このような流動抵抗付与部材91は、スロッシング発生時に壁体近くで上方へ流動する液体と交錯することになる。液体が網状部材91bの網目を通過することにより流れが攪乱され、流動に抵抗が付与されてスロッシングを減衰させる。
【0075】
図11は、請求項9に係る発明の一実施形態であるスロッシング抑制装置を示す概略断面図である。
この装置は、図8に示す装置と同じ流動抵抗付与部材101、基礎板103、平行リンク機構104及びダンパ105を備えるものであるが、流動抵抗付与部材101に浮力を付与する浮体102が、この浮体102と流動抵抗付与部材101とに作用する重力と浮力とがほぼつり合う程度に調整されている。そして、流動抵抗付与部材101から上方に鋼棒106が立ち上げられ浮き屋根2に設けられた貫通孔に挿通されて上方に突き出している。浮き屋根2には、上記鋼棒106を保持して液面の上昇時に流動抵抗付与部材101を引き上げ、液面の下降時には押し下げるとともに、所定値以上の圧縮力又は引張力が作用したときには上記保持を解放するトリガ装置107が設けられている。
【0076】
この装置では、浮き屋根2と流動抵抗付与部材101とが鋼棒106によって連結されているので、流動抵抗付与部材101は浮き屋根2の下方で所定の深さに保持され、液体貯留量が変動して液面の上昇又は下降があっても、浮き屋根2との間隔は変動しない。そして、スロッシングが発生したときには、浮き屋根2の鋼棒106を保持している部分が急速に上昇又は下降するが、平行リンク機構104に取り付けられたダンパ105が粘性抵抗を付与し、流動抵抗付与部材101の下降又は上昇が抑制される。このため鋼棒106には圧縮力又は引張力が作用し、トリガ装置107が作動して鋼棒106の保持を解放する。これにより浮き屋根2は液面とともに揺動するが、流動抵抗付与部材101はほぼ一定の位置に保持され、壁体1近くで上昇又は下降する液体の流動に抵抗を付与することになる。
【0077】
図12は、請求項10に係る発明の一実施形態であるスロッシング抑制装置を示す概略断面図である。
この装置は、図11に示す装置と同じ流動抵抗付与部材111、基礎板113、平行リンク機構114及びダンパ115を備えるものであり、流動抵抗付与部材111に浮力を付与する浮体112も、図11に示す装置と同様に、浮体112と流動抵抗付与部材111とに作用する重力と浮力とがほぼつり合う程度に調整されている。そして、流動抵抗付与部材111と浮き屋根2との間は、鋼棒に代えてつるまきバネ116によって連結され、流動抵抗付与部材111が所定の高さに保持されている。
【0078】
この装置では、浮き屋根2と流動抵抗付与部材111とがつるまきバネ116によって連結されているので、流動抵抗付与部材111は浮き屋根2の下方で所定の深さに保持される。そして、液体貯留量が変動して液面が上昇又は下降するときには、上昇及び下降が極めてゆっくりと生じるため、ダンパ115は平行リンク機構114の変形に抵抗を付与することはない。したがって、流動抵抗付与部材111は柔軟に変形が可能なつるまきバネ116によって浮き屋根2と連結されていてもほぼ同じ間隔を保持したまま浮き屋根2とともに上昇又は下降する。そして、貯槽内の液体が全て排出されたときには、平行リンク機構114の変形によって浮き屋根2が下限位置にまで下降することを許容する。
【0079】
一方、スロッシングが発生したときには、浮き屋根2は比較的大きな速度で上昇及び下降を繰り返すが、このような揺動に対しては平行リンク機構114に取り付けられたダンパ115が粘性抵抗を付与し、流動抵抗付与部材111の下降又は上昇が抑制される。このため流動抵抗付与部材111と浮き屋根2とを連結するつるまきバネ116が伸縮し、浮き屋根2は液面とともに揺動するが流動抵抗付与部材111はほぼ同じ位置に保持される。これにより壁体1近くで生じる上方又は下方への液体の流動に対して流動抵抗付与部材11が交錯し、液体の流動に抵抗を付与し、スロッシングを有効に減衰させる。
【0080】
なお、図11及び図12に示すスロッシング抑制装置では、平行リンク機構の動作に粘性抵抗を付与するダンパを用いているが、これに代えて平行リンク機構の変形を拘束するロック機構を備えるものでも良い。このロック機構は、例えば、上記ダンパと同様に、平行四辺形の対角線上にある二つの格点間に伸縮が可能なロッドを配置し、これらの格点間の距離が急速に変動しようとしたときにこれらのロッドの伸縮を拘束して格点間の距離が変動しないようにロックするものを用いることができる。これによりリンク機構は変形が拘束され、流動抵抗付与部材の位置が上下に変動しなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】請求項1又は請求項2に係る発明の一実施形態であるスロッシング抑制装置を示す概略平面図及び概略断面図である。
【図2】図1に示すスロッシング抑制装置の断面図である。
【図3】請求項3又は請求項4に係る発明の一実施形態であるスロッシング抑制装置を示す概略断面図である。
【図4】請求項3又は請求項5に係る発明の一実施形態であるスロッシング抑制装置を示す概略断面図である。
【図5】図1から図4までに示すスロッシング抑制装置の流動抵抗付与部材に代えて用いることができる流動抵抗付与部材の他の例を示す概略平面図である。
【図6】図1から図4までに示すスロッシング抑制装置の流動抵抗付与部材に代えて用いることができる流動抵抗付与部材の他の例を示す概略平面図である。
【図7】図1から図4までに示すスロッシング抑制装置の流動抵抗付与部材に代えて用いることができる流動抵抗付与部材の他の例を示す概略断面図である。
【図8】請求項1、請求項2又は請求項7に係る発明の一実施形態であって、拘束部材としてリンク機構を用いたスロッシング抑制装置を示す概略断面図である。
【図9】請求項1、請求項2又は請求項7に係る発明の他の実施形態であって、拘束部材としてリンク機構を用いたスロッシング抑制装置を示す概略断面図である。
【図10】請求項8に係る発明の一実施形態であるスロッシング抑制装置を示す概略断面図である。
【図11】請求項9に係る発明の一実施形態であるスロッシング抑制装置を示す概略断面図である。
【図12】請求項10に係る発明の一実施形態であるスロッシング抑制装置を示す概略断面図である。
【図13】円筒型の貯槽でスロッシング生じたときの液面の状態及び液体の流動の状態を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0082】
1:壁体、 2:浮き屋根、 3:底版、 11,21,31,41,61,71,81,91,101,111:流動抵抗付与部材、 11a,91a:枠体、 11b,91b:網状部材、 12,22,72,87,92,102,112:浮体、 13,23,33,73,83,93,103,113:基礎板、 14,24,34:拘束部材、 25,35,97:巻き取り装置、 25a,35a:ローラ、 26,36:滑車、 35b:羽根車、 32:第2の浮体、 37:第1の浮体、 38:吊材、 51:管部材、 62:連結部材、 74,84,104,114:平行リンク機構、 75,85,105,115:ダンパ、 75a:シリンダ、 75b:ピストン、 94:連結部材、 94a:つるまきバネ、 95:第1の滑車、 96:第2の滑車、 106:鋼棒、 107:トリガ装置、 116:つるまきバネ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の壁体を有する液体貯槽内の前記壁体近傍における液面下に保持され、前記壁体付近で上方へ移動する液体に抵抗を付与する流動抵抗付与部材と、
該流動抵抗付与部材を液体中に浮揚させる浮体と、
一端が前記流動抵抗付与部材又は前記浮体に連結され、他端が前記液体貯槽の壁体、底版又は底版上に設けられた基礎板に連結され、前記流動抵抗付与部材を液面下の所定の深さに維持するとともに、液面の低下時には該流動抵抗付与部材の下降を許容する拘束部材とを有することを特徴とするスロッシング抑制装置。
【請求項2】
上記流動抵抗付与部材は、網状部材、穴あき板、間隔をあけて配置された複数の棒状部材、格子状部材、分割された複数の平板から選択される1又は複数の部材を有するものであることを特徴とする請求項1に記載のスロッシング抑制装置。
【請求項3】
前記拘束部材によって保持される前記流動抵抗付与部材の位置を、該貯槽内に貯留する液体量に応じて調整する位置調整手段を有することを特徴とする請求項1に記載のスロッシング抑制装置。
【請求項4】
前記拘束部材は柔軟に変形する線材又は鎖状部材であり、
前記位置調整手段は、前記拘束部材の一端を巻き取り又は引き出すことができる巻き取り装置を含むものであり、
該巻き取り装置は、貯留液体量の変動による液面変動に対応して前記拘束部材の巻き取り又は引き出しを行い、所定速度以上の液面変動が生じたときには拘束部材の巻き取り及び引き出しをロックするものであることを特徴とする請求項3に記載のスロッシング抑制装置。
【請求項5】
前記浮体は、線材又は鎖状部材によって前記流動抵抗付与部材を吊支持した状態で浮揚するものであり、
前記拘束部材は柔軟に変形する線材又は鎖状部材であり、
前記位置調整手段は、前記拘束部材の一端を巻き取り又は引き出すことができる巻き取り装置を含むものであり、
該巻き取り装置は、前記拘束部材に所定値以上の引張力が作用するときに該拘束部材を引き出し、前記所定値又はこれより小さい第2の所定値より引張力が小さいときに前記拘束部材を巻き取るものであり、該拘束部材の巻き取り及び引き出し動作に粘性抵抗を付与するダンパを備えることを特徴とする請求項3に記載のスロッシング抑制装置。
【請求項6】
前記浮体は、線材又は鎖状部材によって前記流動抵抗付与部材を吊支持した状態で浮揚するものであり、
前記拘束部材は柔軟に変形する線材又は鎖状部材であり、
前記位置調整手段は、前記拘束部材の一端を巻き取り又は引き出すことができる巻き取り装置であり、
該巻き取り装置は、前記拘束部材に所定値以上の引張力が作用するときに該拘束部材を引き出し、前記所定値又はこれより小さい第2の所定値より引張力が小さいときに前記拘束部材を巻き取るものであり、該拘束部材の巻き取り及び引き出しの速度が所定速度以上となったときに該動作を停止するロック機構を備えることを特徴とする請求項3に記載のスロッシング抑制装置。
【請求項7】
複数の棒状エレメントを回動可能に連結し、前記流動抵抗付与部材と底版又は底版上に設けられた基礎板とを連結するリンク機構を、前記拘束部材として又は前記拘束部材とともに備え、
該リンク機構は、その動作に粘性抵抗を付与するダンパを有することを特徴とする請求項1に記載のスロッシング抑制装置。
【請求項8】
円筒状の壁体を有する液体貯槽内の前記壁体近傍における液面下に保持され、前記壁体付近で上方へ移動する液体に抵抗を付与する流動抵抗付与部材と、
該流動抵抗付与部材を液体中に浮揚させる浮体と、
一端が前記流動抵抗付与部材又は前記浮体に連結されるとともに、液体貯槽の底部に位置が固定された掛け回し部材及び前記壁体の上部で位置が固定された掛け回し部材のそれぞれに掛け回され、他端が液面上に浮遊する浮き屋根の上面に連結された線材又は鎖状部材であって、該線材又は鎖状部材の中間部に、伸縮可能な弾性部材が介挿された連結部材と、
前記弾性部材より流動抵抗付与部材側の連結部材に、該連結部材の軸線方向への移動に対する粘性抵抗を付与するダンパ、又は該連結部材の軸線方向への移動が所定速度以上となったときに、前記弾性部材より流動抵抗付与部材側の連結部材が軸線方向へ移動するのを拘束するロック機構とを備えることを特徴とするスロッシング抑制装置。
【請求項9】
円筒状の壁体を有する液体貯槽内の前記壁体近傍における液面下に保持され、前記壁体付近で上下方向へ移動する液体に抵抗を付与する流動抵抗付与部材と、
複数の棒状エレメントが回動可能に連結され、前記流動抵抗付与部材と底版又は底版上に設けられた基礎板とを連結するリンク機構と、
該リンク機構の動作に粘性抵抗を付与するダンパと、
該貯槽内の浮き屋根と前記流動抵抗付与部材とを連結し、該貯槽内の貯留液体量が変動したときにも前記流動抵抗付与部材を液面下の所定の深さに保持する連結部材と、
該貯槽内の液体にスロッシングが発生したときに、前記浮き屋根と前記流動抵抗付与部材との間の前記連結部材による拘束を解放するトリガ装置とを有することを特徴とするスロッシング抑制装置。
【請求項10】
円筒状の壁体を有する液体貯槽内の前記壁体近傍における液面下に保持され、前記壁体付近で上下方向へ移動する液体に抵抗を付与する流動抵抗付与部材と、
複数の棒状エレメントが回動可能に連結され、前記流動抵抗付与部材と底版又は底版上に設けられた基礎板とを連結するリンク機構と、
該リンク機構の動作に粘性抵抗を付与するダンパと、
該貯槽内の浮き屋根と前記流動抵抗付与部材とを連結し、該貯槽内の貯留液体量が変動したときにも前記流動抵抗付与部材を液面下の所定の深さに保持する連結バネ部材と、を有し
前記連結バネ部材は、該貯槽内の液体にスロッシングが発生したときに、前記浮き屋根と前記流動抵抗付与部材との間隔が変動するのを許容するものであることを特徴とするスロッシング抑制装置。
【請求項11】
前記ダンパに代えて、前記流動抵抗付与部材の変位速度が所定の値以上となったときに該流動抵抗付与部材の変位を拘束するロック装置を有することを特徴とする請求項9又は請求項10に記載のスロッシング抑制装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−8147(P2006−8147A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184644(P2004−184644)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】