スロッシング抑制装置
【課題】地震波等による揺動エネルギーをより効果的に吸収することにより、スロッシングを抑制することができ、しかも簡単な構造で、かつ低コストでこれを実現する。
【解決手段】貯留容器2内の液体3のスロッシングを抑制するスロッシング抑制装置1であって、液体3の液面に浮遊させる平板状の浮体12と、浮体12の表面又は底面に対して略平行方向に弾性伸縮自在に張設されたバネ17と、バネ17の少なくとも一端に取り付けられた錘18とを有する同調型振動系13とを備える。
【解決手段】貯留容器2内の液体3のスロッシングを抑制するスロッシング抑制装置1であって、液体3の液面に浮遊させる平板状の浮体12と、浮体12の表面又は底面に対して略平行方向に弾性伸縮自在に張設されたバネ17と、バネ17の少なくとも一端に取り付けられた錘18とを有する同調型振動系13とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油タンク、上水道用タンク、農業用水用タンク、工業用水道用タンク等の各種液体貯留タンクあるいは貯液槽などの液体を収容した貯留容器内に設けられ、当該液体によるスロッシングを抑制するためのスロッシング抑制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体が入った貯留容器が地震波等により揺動すると、液体表面に大波が立ち、この大波が容器の壁面や屋根を衝撃するスロッシング現象が発生する。このようなスロッシングによる震災例として、(1)新潟地震(1964年6月16日)による石油タンク火災、(2)日本海中部地震(1983年5月26日)による石油タンク火災、(3)十勝沖地震(2003年9月26日)による石油タンク火災等が知られている。
【0003】
地震の入力値(速度応答スペクトル(cm/sec.))に伴ってスロッシング波高は大きくなり、震災例をみると地震の周期が長く(長周期地震動)内容液のスロッシング周期と近いことから共振を起こしたと考えられる。特に、貯留容器と液体とによって定まる固有振動数と、地震等の振動数とが一致すると、共振現象により激しいスロッシングが生じ、貯留容器が破損することもありえる。この激しいスロッシング現象を防止ないしは抑制するための方法が従来において提案されてきた。
【0004】
また、複数の流体流通孔を有する上下の多孔板を貯留槽内壁に固定し、上下の多孔板間に複数の金属製球体を転動可能に配置して、液体の移動に伴う金属製球体の移動によって液体の移動エネルギーを吸収しスロッシングを抑制するようにする方法も知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、内容液表面に袋を設置し、袋内に圧力空気を注入することで内容液の圧力を高めることによりスロッシング振動数を高めてタンクと共振しないようにする方法も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
また、浮屋根式タンクにおいて浮屋根に板状体とスプリングによる抵抗体を取り付け、スロッシングを防止する方法が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【0007】
また、浮き屋根にバネを介して錘を吊り下げることで、貯蔵タンクの固有周期が短周期化するとともに、浮き屋根の揺動エネルギーをバネと液体の抵抗を受け上下運動を行う錘によって吸収する技術も開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
【特許文献1】実開平6−76191号公報
【特許文献2】特開平8−26388号公報
【特許文献3】特開平9−142575号公報
【特許文献4】特開2005−330011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、この特許文献1の開示技術では、地震時に金属製球体が液体貯留層の横方向一方に偏り、或いは他方に偏る場合がある。このため金属製球体が偏った場合には、それ以外の部分についてはエネルギー吸収効果が小さくなるという問題がある。また、金属製球体であるので、貯留容器内壁の金属製内壁面と衝突した場合に、金属音が生じ騒音公害を生じ、適用地域が限定される。また、上下の多孔板は加工費用も高くなるという問題点もある。
【0009】
また、特許文献2の開示技術では、上水、農水のような容器では水位変動(高水位〜低水位)を毎日繰り返すため適用し難く、袋の反力を貯留容器が負担するため補強が伴う。更に圧力により内容液の振動数を高めると貯留容器と共振する恐れもある。
【0010】
また、特許文献3の開示技術では、固定屋根式タンクにはそのまま適用できず、適用範囲が限定されるとともに費用が高くつくという問題点がある。
【0011】
また、特許文献4の開示技術では、錘が液体の抵抗を受け、現位置を保持しようとしているが揺動エネルギーに釣り合うには巨大な抵抗面積を持つ錘が必要となり不経済であり、その揺動エネルギーを屋根が負担する必要がある。
【0012】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、地震波等による揺動エネルギーをより効果的に吸収することにより、スロッシングを抑制することができ、しかも簡単な構造で、かつ低コストでこれを実現可能なスロッシング抑制装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明を適用したスロッシング抑制装置は、上述した課題を解決するために、貯留容器内の液体のスロッシングを抑制するスロッシング抑制装置において、上記液体の液面に浮遊させる平板状の浮体と、上記浮体の表面又は底面に対して略平行方向に弾性伸縮自在に張設された弾性伸縮体と、上記弾性伸縮体の少なくとも一端に取り付けられた錘とを有する同調型振動系とを備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明を適用したスロッシング抑制装置は、上述した課題を解決するために、貯留容器内の液体のスロッシングを抑制するスロッシング抑制装置において、上記液体の液面に浮遊させる平板状の浮体と、上記浮体の略中心底面に吊り下げられ、又は略中心表面に倒立させた振り子からなる同調型振動系とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明を適用したスロッシング抑制装置は、上述した構成を有するために、地震が発生すると、液体の液位が変動し、これに追随して浮体が傾いて錘が振動することになる。このとき液体に伝達された振動のエネルギーは、このバネと錘とを有する同調型振動系に移動し、錘の振動を介して当該エネルギーを吸収することが可能となる。
【0016】
その結果、地震により液体へと伝達された振動エネルギーは、低減されることになり、液体における液位の変動量を抑えることが可能となる。その結果、液体が周壁から超えてしまうことを防止することが可能となり、スロッシングをより効果的に抑制することが可能となる。しかも本発明では、あくまでバネと錘等を中心とした同調型振動系を新設又は既設の浮屋根に設ければ所期の効果を奏することから、装置を構成する上での労力の軽減を大幅に低減させ、コストも抑えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態として、貯留容器内の液体によるスロッシングを抑制するためのスロッシング抑制装置について、図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0018】
第1の実施の形態としてのスロッシング抑制装置1は、例えば図1に示すように貯留容器2に対して適用される。このスロッシング抑制装置1は、貯留容器2内に貯留された液体3の液面に浮遊させる浮体12と、浮体12の底面12bに設けた同調型振動系13とを備えている。
【0019】
貯留容器2は、底板21と、底板21の周囲において立設されている周壁22とを備えている。この貯留容器2は、断面円形で構成されているが、これに限定されるものではなく、いかなる断面形状で構成されていてもよい。この貯留容器2は、例えば、石油タンク、上水道用タンク、農業用水用タンク、工業用水道用タンク等の各種液体貯留タンク等に適用される。この貯留容器2は、貯留される液体3の液面高さが最大Hとなるように調整される。
【0020】
浮体12は、例えば、所定板厚からなる薄肉構造の平板状で構成される。この浮体12は、例えば鋼板からなる二重構造で、上下の鋼板二重板に挟まれた空間の浮力により、液体3の液面上において浮遊可能とされている。一重構造の鋼板の場合は、浮き構造を付加することで浮遊可能とできる。液体3の比重より軽い材料により構成されてもよい。浮体12は、貯留容器2に貯留されている液体3の増減に伴う液面高さの変動に伴い、貯留容器2内を上下動するようになっている。この浮体12は、断面略円形で構成され、その直径は、貯留容器2の直径よりも短くなるように構成されている。このため、浮体12の外周と、周壁22との間が離間することになる。地震等の急激な液面の変動により浮体12と周壁22が衝突するのを防止する観点から、浮体12と、周壁22との間に図示しない弾性シール部材を介装させるようにしてもよい。
【0021】
なお、この浮体12は、例えば浮屋根と兼用とされていてもよい。この浮屋根は、貯留容器2内に貯留されている液体3の蒸発を抑制するとともに、液体3への雨水や異物の混入を防止するために設けられている。特に貯留容器2が石油タンクに適用される場合には、原油やナフサ等の液体3がこれに貯留されることになるが、これらが外気に直接的に接触するのを防止することができ、火災の発生などの危険を回避することが可能となる。
【0022】
このとき、浮体12は、新設の浮屋根と兼用とされていてもよいし、既に浮屋根として用いられているものに対して新たにこれを浮体12として適用するようにしてもよい。
【0023】
同調型振動系13は、浮体12の表面12aに対して略平行方向に弾性伸縮自在に張設されたバネ17と、バネ17の少なくとも一端に取り付けられた錘18と、バネ17の他端に取り付けられた柱19と有している。
【0024】
バネ17は、一端が自由端としての役割を果たすとともに、他端が固定端として柱19に支持されることにより、当該一端が浮体12の底面12bに対して略平行方向に弾性伸縮自在となるように構成されている。本発明においては、この自由端としての一端に上記錘18を取り付ける。その結果、この錘18は、バネ17の伸縮動作に伴って、浮体12の底面12bに対して略平行方向に振動することになる。この図1の例では、2本のバネ17の長手方向が互いに一直線状となるように配置し、固定端を外周側に、また自由端を中心付近となるようにし、その自由端にそれぞれ錘18を取り付けている。なお、このバネ17の具体的な例としては、弾性伸縮可能な材料であればいかなるもので構成されていてもよく、例えば、金属性のバネで構成されていてもよいし、その代替としてゴム等で構成されていてもよいことは勿論である。
【0025】
錘18は、例えば球形状、円筒形状、矩形状で構成されている。錘18の材質は、例えば鋼鉄製であってもよいが、液体3の比重より重い材料であり、また液体3に対する腐食性等の相性を考慮した上で好適なものが選定されることになる。この錘18にはバネ17を取り付けるための図示しない取付金具が設けられている。錘18は、浮体12の略中心に位置するように設けられることが望ましい。
【0026】
図2は、本発明を適用したスロッシング抑制装置1において、同調型振動系13を、浮体12の表面12aに設けた形態を示している。即ち、同調型振動系13を構成するバネ17と、錘18と、柱19とは、それぞれ表面12a上に設けられる。この図2において、上述した図1と同一の構成について同一の符号を付すことにより、以下での説明を省略する。
【0027】
バネ17は、一端が浮体12の表面12aに対して略平行方向に弾性伸縮自在となるように構成されている。その結果、この錘18は、バネ17の伸縮動作に伴って、浮体12の表面12aに対して略平行方向に振動することになる。
【0028】
即ち、本発明を適用したスロッシング抑制装置1は、あくまで同調型振動系13は、浮体12の表面12a又は底面12bの何れかにおいて設けられていればよい。
【0029】
ちなみに、上述した同調型振動系13においては、地震による加震方向が図1(b)に示す方向である場合を仮定したものである。かかる加震方向へと振動が伝達され、これに対応するために当該加震方向と平行となるようにバネ17が延長した、最もシンプルな形態を例示したものである。
【0030】
次に、本発明を適用したスロッシング抑制装置1の動作について、同調型振動系13を浮体12の底面12bに設けた場合を例にとり、詳細に説明をする。
【0031】
本発明を適用したスロッシング装置1は、上述した構成を備えることにより、図3(a),(b)に示すように液体3に対して振動が伝わったときに、錘18がこれに追随するようにして、浮体12の底面12bに対して略平行方向に振動する。例えば図3(a)に示すように、地震等により液体3の液位が変動し、左下がりとなるように変化した場合には、これに伴って浮体12が左下に傾き、錘18がこれに追随して左側へと移動することになる。また図3(b)に示すように、液位が右下がりとなるように変化した場合には、これに伴って浮体12が右下に傾き、錘18がこれに追随して右側へと移動することになる。
【0032】
地震等による振動が液体3に伝わった場合には、その液体3の液位は、図3(a)と図3(b)の状態が繰り返し起きることになる。これに伴って錘18は、左側、右側へと繰り返し振動することになる。特に錘18は両側からバネ17により固定されていることから、錘18が左側に寄った場合には、右側へと引っ張ろうとする力が作用し、錘18が右側に寄った場合には、左側へと引っ張ろうとする力が作用することになる。これが繰り返し実行されることにより、バネ17により錘18を振動させることが可能となる。
【0033】
実際に、地震が発生すると、液体3の液位が変動し、これに追随して浮体12が傾いて錘18が振動することになる。このとき液体3に伝達された振動のエネルギーは、このバネ17と錘18とを有する同調型振動系13に移動し、錘18の振動を介して当該エネルギーを吸収することが可能となる。
【0034】
その結果、地震により液体3へと伝達された振動エネルギーは、低減されることになり、液体3における液位の変動量を抑えることが可能となる。その結果、液体3が周壁22から超えてしまうことを防止することが可能となり、スロッシングをより効果的に抑制することが可能となる。しかも本発明では、あくまでバネ17と錘18等を中心とした同調型振動系13を新設又は既設の浮屋根に設ければ所期の効果を奏することから、装置を構成する上での労力の軽減を大幅に低減させ、コストも抑えることが可能となる。
【0035】
特に、同調型振動系13を浮体12の表面12aに設けることにより、浮体12の裏面12bにこれを設ける場合と比較して、液体3による流体抵抗を受けることは無くなる。同調型振動系13を浮体12の裏面12bに設ける場合には、仮に液体3の液面が貯留容器2の底板21付近まで低下した場合に、これを機能させることができなくなる場合もあるが、同調型振動系13を浮体12の表面12aに設ける場合には、かかる水深による影響を受けることも無くなる。
【0036】
なお、貯留容器2内の液体3におけるスロッシングの一次固有振動数fは、円筒形の場合、以下の式で表される。
f:固有振動数、ω:一次円振動数、g:重力加速度、R:貯留容器2の内径、H:液体3の高さ
【0037】
即ち、このスロッシング固有振動数は、貯留容器2内径と、液体3の高さHにも支配されることになる。液体3の高さHは、上述した最高液面高さHとすることが望ましい。このとき、その液面高さが最大Hのときの固有振動数fに合わせて、上述したバネ17のバネ定数や錘18の重さ等、振動を規定する物理的パラメータを設定する。これにより、スロッシングの危険度が最も高い、最大液面高さHまで液体3が貯留容器2内に満たされている場合に、本発明を適用したスロッシング抑制装置1による振動エネルギー吸収量を最も高くすることができる。
【0038】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば図4に示すように、バネ17の本数や配置、錘18の個数や配置はいかなるものであってもよい。図4(a)は、1個の錘18を浮体12中心に位置させた上で、バネ17(柱19)を120°間隔で配置した例を示している。また、図4(b)は、1個の錘18を浮体128中心に位置させた上で、バネ17(柱19)を90°間隔で配置した例を示している。更に図4(c)は、90°間隔でそれぞれ設置された各バネ17と、4個の錘18により構成したものである。即ち、この図4(c)の形態においては、浮体12の中心から柱19へと延長されているバネ17の中間において錘18を介在させている。
【0039】
このような図4に示す形態においても同様に、地震により液体3の液位が変動した場合に、これに追随して浮体12が傾き、錘18が振動することになる。このとき、錘18は、120°間隔、又は90°間隔でバネ17に接続されていることから、あらゆる方向から地震による振動が伝わってきた場合においてもこれに対応する方向へ錘18を振動させることができる。これにより、あらゆる方向からの振動に対する液位の変動を抑制することができ、スロッシング抑制効果を全方向に亘って発揮させることが可能となる。
【0040】
また、本発明においては、浮体12についても上述したように、断面円形状の平板で構成される場合に限定されるものではない。例えば図5に示すように浮体41、42を適用するようにしてもよい。
【0041】
浮体41は、断面略円形状の平板40に対して、4箇所に亘って開口部43を形成させたものである。この開口部43の数、配置、形状、大きさはいかなるものであってもよい。
【0042】
浮体42は、平板で構成する代替として、骨組形状としたものである。即ち、この浮体42は、外周に配される円形状の外筋44と、内周に配される円形状の内筋45と、この外筋44と内筋45を連結するための連結筋46とを備えている。これらの骨組みを構成する外筋44、内筋45、連結筋46はそれぞれ木材により構成されていてもよいし、その他液体3の比重より軽い材料により構成されてもよいし、液体3の比重より重い金属材料を用いる場合、中空の円形や矩形とすることで浮力をもつ構成としてもよい。
【0043】
特に、貯留容器2に飲料水としての液体3が貯留されている場合であって、しかもその直上に固定屋根が設けられており、雨水等が入らない構造とされている場合には、浮屋根を液面に浮遊させる必要も無くなる。かかる場合には浮屋根のように平板状にする必要も無くなることから、浮体41の如く開口部43を設け、或いは浮体42の如く骨組構造とすることにより、材料を節減することができ、ひいてはコストを低減させることも可能となる。特に浮体42の如く骨組構造とすることにより、固定屋根や周壁に設けられた人孔から資材を投入して組み立てれば既存の貯留容器2を分解することなく設置することも可能となる。
【0044】
また、本発明においては、図6に示すように、錘18の振動をレール51により案内するようにしてもよい。錘18は、柱19から延長されてきたバネ17に接続され、その結果、バネ17を介して柱19間を振動することになるが、その振動方向は柱19間を直線で結んだ方向となる。レール51は、図6(a)に示すように、その長手方向が、柱19を直線で結んだ方向に沿って浮体12上に設けられる。ちなみに、この例では、レール51は浮体12上に完全に固定された状態としている。
【0045】
図6(c)は、図6(a),(b)のA−A´断面図である。錘18の底面には、嵌合凹部18aが開削されている。この嵌合凹部18aはレール51に嵌合可能なサイズ、形状で構成されているが、錘18がレール51により案内されて移動自在可能とするために、嵌合凹部18aの断面は、レール51の断面よりも若干広めに設定されている。
【0046】
このようなレール51を設けることにより、錘18は、レール51により案内することが可能となることから、振動方向が反れてしまうのを防止し、一直線上で振動することが可能となる。錘18による一直線上でコンスタントな振動を実現することができれば、振動エネルギーを効率的に吸収することも可能となる。ちなみに、このレール51は浮体12の表面12aに設けられている場合以外に、裏面12bにおいて設けられていてもよい。なお、このレール51の代替として、浮体12の表面12aにおいて図示しない溝を形成させ、これに錘18を遊嵌させてもよく、錘18を一直線上で安定した状態で振動させることにより上述した所期の効果を得ることが可能となる。
【0047】
このとき、図7に示すように、レール51の長手方向が加震方向となるように自動的に調整できる支持体52を設けるようにしてもよい。支持体52は、浮体12のほぼ中心に設けられ、その上端にはレール51が支持されている。このとき、レール51が支持体52を中心軸として回転可能となるような形状が、この支持体52に対して具現化されている必要がある。このため、支持体52は、例えば上端に軸を形成させ、その軸を介してレール51を回転可能に支持するようにしてもよい。
【0048】
ここで図7(a)に示す加震方向へ地震による振動が伝わった場合には、加震される前に図中点線方向に向いていたレール51が加震方向へと回転する。そのメカニズムとして、地震による振動が伝わると、浮体12は、加震方向に振動し、これに伴って錘18も加震方向へ移動しようとする。その結果、レール51に対しては、錘18が加震方向へ移動しようとする力が作用し、レール51自体が支持体52を中心として、その長手方向が加震方向となるように回転することになる。かかる状態の下で錘18はレール51に案内されて加震方向に振動を繰り返すことになる。
【0049】
このように、錘18を、加震方向へ自動的に合わせて、しかも一直線上で振動させることができるため、振動エネルギーをより効率的に吸収することも可能となる。特に本発明では、かかる加震方向への回転動作を、支持体52を設けるのみで極めて簡易な構成で自動的に実現することができることから、装置のコストを大幅に低減することも可能となる。
【0050】
なお本発明においては、平板状の浮体12の代替として、図8に示すように断面湾曲形状となるように形成された浮体53、54を適用するようにしてもよい。図8(a)に示す浮体53は上に凸となるように断面を湾曲させた形状としている。また、図8(b)に示す浮体54は下に凸となるように断面を湾曲させた形状としている。
【0051】
浮体53は、上に凸となるように湾曲させることにより、錘18の振動に対するバネ17の復元力が作用する方向に対して反対方向の力を付加することができる。このため湾曲させない場合に比べて、小さな錘18によって固有周期を長周期化することができる。錘18の軽量化により、浮体12への荷重が低減される。浮体53は鋼板からなる二重構造としてもよく、上の鋼板を湾曲させ、下の鋼板を平板としてもよい。二重構造とすることで、必要な浮力を確保する空間を得ることができる。
【0052】
浮体54は、下に凸となるように湾曲させることにより、一重構造であっても浮力を得ることができる。
【0053】
次に、本発明における第2の実施の形態としてのスロッシング抑制装置について、図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0054】
図9(a)は、第2の実施の形態を適用したスロッシング抑制装置7の構成を示している。このスロッシング抑制装置7は、液体3の液面に浮遊させる浮体12と、浮体12の底面から張設されたワイヤー60、並びにワイヤー60の下端に取り下げられた振り子61からなる同調型振動系64とを備えている。このスロッシング装置7において、上述したスロッシング装置1と同一の構成要素、部材については同一の符号を付すことにより上述した説明を引用し、以下での説明を省略する。
【0055】
ワイヤー60は、金属系、炭素繊維系等の非伸縮材料で構成されたロープ等である。このワイヤー60は、一端が図9に示すように浮体12の底面12bの複数箇所に取り付けられ、他端が浮体12の略中心底面において集結させた上で振り子61が取り付けられる。浮体12の略中心底面に1本のワイヤー60を用いて振り子61を取り付けてもよい。ちなみに、このワイヤー60の長さは、低減すべき振動エネルギーの固有振動数に応じて予め調整されている。
【0056】
振り子61は、錘18と同様に、例えば鋼鉄製の球形状、円筒形状、矩形状で構成される。但し、この振り子61は、液体3の比重より重い材料で構成されている必要がある。振り子61は、浮体12の略中心において集結されたワイヤー60の下端に取り付けられていることから、結果として、浮体12の略中心底面に吊り下げられた状態とされる。
【0057】
図9(b)は、同調型振動系66を浮体12の表面12a上に配設した例を示している。この図9(b)は、いわゆる逆さ振り子としての構成を具体化したものであって、弾性率の高い金属線65を複数本に亘って浮体12の表面12aへと取り付け、これを浮体12の中心付近に集結させてその先端を鉛直上方へと突出させている。この突出させた金属線65の先端に振り子61を取り付ける。浮体12の略中心表面に1本の金属線65を用いて振り子61を取り付けてもよい。その結果、金属線65の弾性変形に伴って振り子61を振動させることが可能となる。
【0058】
次に、本発明を適用したスロッシング抑制装置7の動作について、同調型振動系64を浮体12の底面12bに設けた場合を例にとり、詳細に説明をする。
【0059】
本発明を適用したスロッシング抑制装置7は、上述した構成を備えることにより、図10(a),(b)に示すように液体3に対して振動が伝わったときに、振り子61がこれに追随するようにして振動する。例えば図10(a)に示すように、地震等により液体3の液位が変動し、左下がりとなるように変化した場合には、これに伴って振り子61も左へと揺れることになる。また図10(b)に示すように、液位が右下がりとなるように変化した場合には、これに伴って振り子61も右へと揺れることになる。これが繰り返し実行されることにより、地震による液位の変動に応じて振り子61を左右に振動させることが可能となる。
【0060】
その結果、地震により液体3へと伝達された振動エネルギーは、低減されることになり、液体3における液位の変動量を抑えることが可能となる。その結果、液体3が周壁22から超えてしまうことを防止することが可能となり、スロッシングをより効果的に抑制することが可能となる。しかも本発明では、あくまで振り子61とワイヤー60を中心とした同調型振動系64を新設又は既設の浮屋根に設ければ所期の効果を奏することから、装置を構成する上での労力の軽減を大幅に低減させ、コストも抑えることが可能となる。特に、この振り子61は、加震方向がいかなる方向であってもその加震方向へ向けて揺動することが可能となる。即ち、この振り子61を利用したスロッシング抑制装置7は、加震方向による制限を受けないという利点もある。また、振り子61とワイヤー60又は金属線65は、浮体12の中心近傍のみに配置しても所期の作用効果を発揮することができる。
【0061】
また、逆さ振り子とした図9(b)の構成とすることにより、振り子61の復元力と反対方向の力が作用するため、振り子の固有周期を長周期化することができるという利点がある。
【0062】
なお、同調型振動系64を浮体12の表面12aに設けた場合についても、逆さ振り子と同様の動作を発揮し得ることから、上述と同様の効果を得ることが可能となる。
【0063】
図11は、先端に振り子61を取り付けた金属線65に対して、更にバネ17を取り付けたスロッシング抑制装置8の構成例を示している。金属線65の下端には図示しない移動手段が設けられ、この移動手段により金属線自体65が表面12a上を移動自在とすることができる。そしてこの金属線65には、バネ17が複数方向から接続されている。金属線65は浮体12の表面に移動手段を設けず固定してもよい。
【0064】
このようなスロッシング抑制装置8では、逆さ振り子とバネ17とを組み合わせた構成からなる。このため、地震により振動エネルギーが伝達された場合には、振り子61が取り付けられた金属線65自体をバネ17により、加震方向へ振動させることが可能となる。また、金属線65の先端に取り付けられた振り子61も加震方向へと揺動させることが可能なる。このため、振動エネルギーの吸収効果をより向上させることが可能となる。また、振り子61を利用するため、いかなる加震方向であっても、その方向へ振り子61を揺動させて、振動エネルギーを吸収することが可能となる。
【実施例1】
【0065】
以下、本発明を適用したスロッシング抑制装置1の効果を確認するために行った実験結果について説明をする。
【0066】
実験系は、図12に示すように、外径600mm、内径580mm、内容液高さ500mm、周壁高さが800mmからなるアクリル製円筒タンク模型81に、スロッシング抑制装置7に対応する模型83を設置した。
【0067】
この模型83は、振動系としての振り子として、振り子長さによって容易に固有振動数を変化させることができるものを用いた。液面に硬質発泡スチロール製の平板84(浮体12に対応する)を浮かべ、平板84下面に糸85を3本を取り付け、先端を束ね三角錐を形成した。その先端に糸を取り付け、振り子状に錘86を吊り下げた。錘86は平板84の中心に合致するように調整した。
【0068】
平板84は、直径580mm、厚さ10mm、質量266gである。錘86は、直径49.6mm、質量500gの鋼球である。糸85により形成される三角錐は、長さ6.4cm、振子長は12.7cmである。
【0069】
このような模型83をタンク模型81に貯留した液体の液面に浮かべ、さらにこのタンク模型83を図示しない振動台82に設置し、2galの正弦波による加振とした。抑制装置がない状態での1次スロッシングの固有振動数は1.244Hz、その時の最大波高は6.7cmであった。振動台実験は1.15Hz〜1.35Hzまで0.01Hz刻みのスポット加振を行った。その結果、波高は、1.2cmであった。比較のため平板84のみを液体に浮かべて、同一条件の下で振動台実験を行ったところ、波高は4cmであった。このため、本発明を適用することにより、波高は2.8cmも低減できたことが示されている。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】第1の実施の形態としてのスロッシング抑制装置の構成図である。
【図2】本発明を適用したスロッシング抑制装置において、同調型振動系を、浮体の表面に設けた形態を示す図である。
【図3】本発明を適用したスロッシング抑制装置の動作について説明するための図である。
【図4】本発明を適用したスロッシング抑制装置の第1の実施の形態の他の構成例を示す図である。
【図5】(a)は、断面略円形状の平板に対して、4箇所に亘って開口部を形成させた例を示す図である。(b)は、平板で構成する代替として、骨組形状とした例を示す図である。
【図6】錘の振動をレールにより案内する構成について説明するための図である。
【図7】レールの長手方向が加震方向となるように自動的に調整できる支持体を設けた例を示す図である。
【図8】平板状の浮体の代替として、断面湾曲形状となるように形成された浮体を適用する例について説明するための図である。
【図9】本発明を適用したスロッシング抑制装置の第2の実施の形態の構成図である。
【図10】本発明を適用したスロッシング抑制装置の第2の実施の形態の動作について説明するための図である。
【図11】先端に振り子を取り付けた金属線に対して、更にバネを取り付けたスロッシング抑制装置の構成図である。
【図12】本発明を適用したスロッシング抑制装置の効果を確認するために行った実験系について説明するための図である。
【符号の説明】
【0071】
1 スロッシング抑制装置
2 貯留容器
3 液体
12 浮体
13 同調型振動系
17 バネ
18 錘
19 柱
21 底板
22 周壁
51 レール
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油タンク、上水道用タンク、農業用水用タンク、工業用水道用タンク等の各種液体貯留タンクあるいは貯液槽などの液体を収容した貯留容器内に設けられ、当該液体によるスロッシングを抑制するためのスロッシング抑制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体が入った貯留容器が地震波等により揺動すると、液体表面に大波が立ち、この大波が容器の壁面や屋根を衝撃するスロッシング現象が発生する。このようなスロッシングによる震災例として、(1)新潟地震(1964年6月16日)による石油タンク火災、(2)日本海中部地震(1983年5月26日)による石油タンク火災、(3)十勝沖地震(2003年9月26日)による石油タンク火災等が知られている。
【0003】
地震の入力値(速度応答スペクトル(cm/sec.))に伴ってスロッシング波高は大きくなり、震災例をみると地震の周期が長く(長周期地震動)内容液のスロッシング周期と近いことから共振を起こしたと考えられる。特に、貯留容器と液体とによって定まる固有振動数と、地震等の振動数とが一致すると、共振現象により激しいスロッシングが生じ、貯留容器が破損することもありえる。この激しいスロッシング現象を防止ないしは抑制するための方法が従来において提案されてきた。
【0004】
また、複数の流体流通孔を有する上下の多孔板を貯留槽内壁に固定し、上下の多孔板間に複数の金属製球体を転動可能に配置して、液体の移動に伴う金属製球体の移動によって液体の移動エネルギーを吸収しスロッシングを抑制するようにする方法も知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、内容液表面に袋を設置し、袋内に圧力空気を注入することで内容液の圧力を高めることによりスロッシング振動数を高めてタンクと共振しないようにする方法も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
また、浮屋根式タンクにおいて浮屋根に板状体とスプリングによる抵抗体を取り付け、スロッシングを防止する方法が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【0007】
また、浮き屋根にバネを介して錘を吊り下げることで、貯蔵タンクの固有周期が短周期化するとともに、浮き屋根の揺動エネルギーをバネと液体の抵抗を受け上下運動を行う錘によって吸収する技術も開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
【特許文献1】実開平6−76191号公報
【特許文献2】特開平8−26388号公報
【特許文献3】特開平9−142575号公報
【特許文献4】特開2005−330011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、この特許文献1の開示技術では、地震時に金属製球体が液体貯留層の横方向一方に偏り、或いは他方に偏る場合がある。このため金属製球体が偏った場合には、それ以外の部分についてはエネルギー吸収効果が小さくなるという問題がある。また、金属製球体であるので、貯留容器内壁の金属製内壁面と衝突した場合に、金属音が生じ騒音公害を生じ、適用地域が限定される。また、上下の多孔板は加工費用も高くなるという問題点もある。
【0009】
また、特許文献2の開示技術では、上水、農水のような容器では水位変動(高水位〜低水位)を毎日繰り返すため適用し難く、袋の反力を貯留容器が負担するため補強が伴う。更に圧力により内容液の振動数を高めると貯留容器と共振する恐れもある。
【0010】
また、特許文献3の開示技術では、固定屋根式タンクにはそのまま適用できず、適用範囲が限定されるとともに費用が高くつくという問題点がある。
【0011】
また、特許文献4の開示技術では、錘が液体の抵抗を受け、現位置を保持しようとしているが揺動エネルギーに釣り合うには巨大な抵抗面積を持つ錘が必要となり不経済であり、その揺動エネルギーを屋根が負担する必要がある。
【0012】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、地震波等による揺動エネルギーをより効果的に吸収することにより、スロッシングを抑制することができ、しかも簡単な構造で、かつ低コストでこれを実現可能なスロッシング抑制装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明を適用したスロッシング抑制装置は、上述した課題を解決するために、貯留容器内の液体のスロッシングを抑制するスロッシング抑制装置において、上記液体の液面に浮遊させる平板状の浮体と、上記浮体の表面又は底面に対して略平行方向に弾性伸縮自在に張設された弾性伸縮体と、上記弾性伸縮体の少なくとも一端に取り付けられた錘とを有する同調型振動系とを備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明を適用したスロッシング抑制装置は、上述した課題を解決するために、貯留容器内の液体のスロッシングを抑制するスロッシング抑制装置において、上記液体の液面に浮遊させる平板状の浮体と、上記浮体の略中心底面に吊り下げられ、又は略中心表面に倒立させた振り子からなる同調型振動系とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明を適用したスロッシング抑制装置は、上述した構成を有するために、地震が発生すると、液体の液位が変動し、これに追随して浮体が傾いて錘が振動することになる。このとき液体に伝達された振動のエネルギーは、このバネと錘とを有する同調型振動系に移動し、錘の振動を介して当該エネルギーを吸収することが可能となる。
【0016】
その結果、地震により液体へと伝達された振動エネルギーは、低減されることになり、液体における液位の変動量を抑えることが可能となる。その結果、液体が周壁から超えてしまうことを防止することが可能となり、スロッシングをより効果的に抑制することが可能となる。しかも本発明では、あくまでバネと錘等を中心とした同調型振動系を新設又は既設の浮屋根に設ければ所期の効果を奏することから、装置を構成する上での労力の軽減を大幅に低減させ、コストも抑えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態として、貯留容器内の液体によるスロッシングを抑制するためのスロッシング抑制装置について、図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0018】
第1の実施の形態としてのスロッシング抑制装置1は、例えば図1に示すように貯留容器2に対して適用される。このスロッシング抑制装置1は、貯留容器2内に貯留された液体3の液面に浮遊させる浮体12と、浮体12の底面12bに設けた同調型振動系13とを備えている。
【0019】
貯留容器2は、底板21と、底板21の周囲において立設されている周壁22とを備えている。この貯留容器2は、断面円形で構成されているが、これに限定されるものではなく、いかなる断面形状で構成されていてもよい。この貯留容器2は、例えば、石油タンク、上水道用タンク、農業用水用タンク、工業用水道用タンク等の各種液体貯留タンク等に適用される。この貯留容器2は、貯留される液体3の液面高さが最大Hとなるように調整される。
【0020】
浮体12は、例えば、所定板厚からなる薄肉構造の平板状で構成される。この浮体12は、例えば鋼板からなる二重構造で、上下の鋼板二重板に挟まれた空間の浮力により、液体3の液面上において浮遊可能とされている。一重構造の鋼板の場合は、浮き構造を付加することで浮遊可能とできる。液体3の比重より軽い材料により構成されてもよい。浮体12は、貯留容器2に貯留されている液体3の増減に伴う液面高さの変動に伴い、貯留容器2内を上下動するようになっている。この浮体12は、断面略円形で構成され、その直径は、貯留容器2の直径よりも短くなるように構成されている。このため、浮体12の外周と、周壁22との間が離間することになる。地震等の急激な液面の変動により浮体12と周壁22が衝突するのを防止する観点から、浮体12と、周壁22との間に図示しない弾性シール部材を介装させるようにしてもよい。
【0021】
なお、この浮体12は、例えば浮屋根と兼用とされていてもよい。この浮屋根は、貯留容器2内に貯留されている液体3の蒸発を抑制するとともに、液体3への雨水や異物の混入を防止するために設けられている。特に貯留容器2が石油タンクに適用される場合には、原油やナフサ等の液体3がこれに貯留されることになるが、これらが外気に直接的に接触するのを防止することができ、火災の発生などの危険を回避することが可能となる。
【0022】
このとき、浮体12は、新設の浮屋根と兼用とされていてもよいし、既に浮屋根として用いられているものに対して新たにこれを浮体12として適用するようにしてもよい。
【0023】
同調型振動系13は、浮体12の表面12aに対して略平行方向に弾性伸縮自在に張設されたバネ17と、バネ17の少なくとも一端に取り付けられた錘18と、バネ17の他端に取り付けられた柱19と有している。
【0024】
バネ17は、一端が自由端としての役割を果たすとともに、他端が固定端として柱19に支持されることにより、当該一端が浮体12の底面12bに対して略平行方向に弾性伸縮自在となるように構成されている。本発明においては、この自由端としての一端に上記錘18を取り付ける。その結果、この錘18は、バネ17の伸縮動作に伴って、浮体12の底面12bに対して略平行方向に振動することになる。この図1の例では、2本のバネ17の長手方向が互いに一直線状となるように配置し、固定端を外周側に、また自由端を中心付近となるようにし、その自由端にそれぞれ錘18を取り付けている。なお、このバネ17の具体的な例としては、弾性伸縮可能な材料であればいかなるもので構成されていてもよく、例えば、金属性のバネで構成されていてもよいし、その代替としてゴム等で構成されていてもよいことは勿論である。
【0025】
錘18は、例えば球形状、円筒形状、矩形状で構成されている。錘18の材質は、例えば鋼鉄製であってもよいが、液体3の比重より重い材料であり、また液体3に対する腐食性等の相性を考慮した上で好適なものが選定されることになる。この錘18にはバネ17を取り付けるための図示しない取付金具が設けられている。錘18は、浮体12の略中心に位置するように設けられることが望ましい。
【0026】
図2は、本発明を適用したスロッシング抑制装置1において、同調型振動系13を、浮体12の表面12aに設けた形態を示している。即ち、同調型振動系13を構成するバネ17と、錘18と、柱19とは、それぞれ表面12a上に設けられる。この図2において、上述した図1と同一の構成について同一の符号を付すことにより、以下での説明を省略する。
【0027】
バネ17は、一端が浮体12の表面12aに対して略平行方向に弾性伸縮自在となるように構成されている。その結果、この錘18は、バネ17の伸縮動作に伴って、浮体12の表面12aに対して略平行方向に振動することになる。
【0028】
即ち、本発明を適用したスロッシング抑制装置1は、あくまで同調型振動系13は、浮体12の表面12a又は底面12bの何れかにおいて設けられていればよい。
【0029】
ちなみに、上述した同調型振動系13においては、地震による加震方向が図1(b)に示す方向である場合を仮定したものである。かかる加震方向へと振動が伝達され、これに対応するために当該加震方向と平行となるようにバネ17が延長した、最もシンプルな形態を例示したものである。
【0030】
次に、本発明を適用したスロッシング抑制装置1の動作について、同調型振動系13を浮体12の底面12bに設けた場合を例にとり、詳細に説明をする。
【0031】
本発明を適用したスロッシング装置1は、上述した構成を備えることにより、図3(a),(b)に示すように液体3に対して振動が伝わったときに、錘18がこれに追随するようにして、浮体12の底面12bに対して略平行方向に振動する。例えば図3(a)に示すように、地震等により液体3の液位が変動し、左下がりとなるように変化した場合には、これに伴って浮体12が左下に傾き、錘18がこれに追随して左側へと移動することになる。また図3(b)に示すように、液位が右下がりとなるように変化した場合には、これに伴って浮体12が右下に傾き、錘18がこれに追随して右側へと移動することになる。
【0032】
地震等による振動が液体3に伝わった場合には、その液体3の液位は、図3(a)と図3(b)の状態が繰り返し起きることになる。これに伴って錘18は、左側、右側へと繰り返し振動することになる。特に錘18は両側からバネ17により固定されていることから、錘18が左側に寄った場合には、右側へと引っ張ろうとする力が作用し、錘18が右側に寄った場合には、左側へと引っ張ろうとする力が作用することになる。これが繰り返し実行されることにより、バネ17により錘18を振動させることが可能となる。
【0033】
実際に、地震が発生すると、液体3の液位が変動し、これに追随して浮体12が傾いて錘18が振動することになる。このとき液体3に伝達された振動のエネルギーは、このバネ17と錘18とを有する同調型振動系13に移動し、錘18の振動を介して当該エネルギーを吸収することが可能となる。
【0034】
その結果、地震により液体3へと伝達された振動エネルギーは、低減されることになり、液体3における液位の変動量を抑えることが可能となる。その結果、液体3が周壁22から超えてしまうことを防止することが可能となり、スロッシングをより効果的に抑制することが可能となる。しかも本発明では、あくまでバネ17と錘18等を中心とした同調型振動系13を新設又は既設の浮屋根に設ければ所期の効果を奏することから、装置を構成する上での労力の軽減を大幅に低減させ、コストも抑えることが可能となる。
【0035】
特に、同調型振動系13を浮体12の表面12aに設けることにより、浮体12の裏面12bにこれを設ける場合と比較して、液体3による流体抵抗を受けることは無くなる。同調型振動系13を浮体12の裏面12bに設ける場合には、仮に液体3の液面が貯留容器2の底板21付近まで低下した場合に、これを機能させることができなくなる場合もあるが、同調型振動系13を浮体12の表面12aに設ける場合には、かかる水深による影響を受けることも無くなる。
【0036】
なお、貯留容器2内の液体3におけるスロッシングの一次固有振動数fは、円筒形の場合、以下の式で表される。
f:固有振動数、ω:一次円振動数、g:重力加速度、R:貯留容器2の内径、H:液体3の高さ
【0037】
即ち、このスロッシング固有振動数は、貯留容器2内径と、液体3の高さHにも支配されることになる。液体3の高さHは、上述した最高液面高さHとすることが望ましい。このとき、その液面高さが最大Hのときの固有振動数fに合わせて、上述したバネ17のバネ定数や錘18の重さ等、振動を規定する物理的パラメータを設定する。これにより、スロッシングの危険度が最も高い、最大液面高さHまで液体3が貯留容器2内に満たされている場合に、本発明を適用したスロッシング抑制装置1による振動エネルギー吸収量を最も高くすることができる。
【0038】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば図4に示すように、バネ17の本数や配置、錘18の個数や配置はいかなるものであってもよい。図4(a)は、1個の錘18を浮体12中心に位置させた上で、バネ17(柱19)を120°間隔で配置した例を示している。また、図4(b)は、1個の錘18を浮体128中心に位置させた上で、バネ17(柱19)を90°間隔で配置した例を示している。更に図4(c)は、90°間隔でそれぞれ設置された各バネ17と、4個の錘18により構成したものである。即ち、この図4(c)の形態においては、浮体12の中心から柱19へと延長されているバネ17の中間において錘18を介在させている。
【0039】
このような図4に示す形態においても同様に、地震により液体3の液位が変動した場合に、これに追随して浮体12が傾き、錘18が振動することになる。このとき、錘18は、120°間隔、又は90°間隔でバネ17に接続されていることから、あらゆる方向から地震による振動が伝わってきた場合においてもこれに対応する方向へ錘18を振動させることができる。これにより、あらゆる方向からの振動に対する液位の変動を抑制することができ、スロッシング抑制効果を全方向に亘って発揮させることが可能となる。
【0040】
また、本発明においては、浮体12についても上述したように、断面円形状の平板で構成される場合に限定されるものではない。例えば図5に示すように浮体41、42を適用するようにしてもよい。
【0041】
浮体41は、断面略円形状の平板40に対して、4箇所に亘って開口部43を形成させたものである。この開口部43の数、配置、形状、大きさはいかなるものであってもよい。
【0042】
浮体42は、平板で構成する代替として、骨組形状としたものである。即ち、この浮体42は、外周に配される円形状の外筋44と、内周に配される円形状の内筋45と、この外筋44と内筋45を連結するための連結筋46とを備えている。これらの骨組みを構成する外筋44、内筋45、連結筋46はそれぞれ木材により構成されていてもよいし、その他液体3の比重より軽い材料により構成されてもよいし、液体3の比重より重い金属材料を用いる場合、中空の円形や矩形とすることで浮力をもつ構成としてもよい。
【0043】
特に、貯留容器2に飲料水としての液体3が貯留されている場合であって、しかもその直上に固定屋根が設けられており、雨水等が入らない構造とされている場合には、浮屋根を液面に浮遊させる必要も無くなる。かかる場合には浮屋根のように平板状にする必要も無くなることから、浮体41の如く開口部43を設け、或いは浮体42の如く骨組構造とすることにより、材料を節減することができ、ひいてはコストを低減させることも可能となる。特に浮体42の如く骨組構造とすることにより、固定屋根や周壁に設けられた人孔から資材を投入して組み立てれば既存の貯留容器2を分解することなく設置することも可能となる。
【0044】
また、本発明においては、図6に示すように、錘18の振動をレール51により案内するようにしてもよい。錘18は、柱19から延長されてきたバネ17に接続され、その結果、バネ17を介して柱19間を振動することになるが、その振動方向は柱19間を直線で結んだ方向となる。レール51は、図6(a)に示すように、その長手方向が、柱19を直線で結んだ方向に沿って浮体12上に設けられる。ちなみに、この例では、レール51は浮体12上に完全に固定された状態としている。
【0045】
図6(c)は、図6(a),(b)のA−A´断面図である。錘18の底面には、嵌合凹部18aが開削されている。この嵌合凹部18aはレール51に嵌合可能なサイズ、形状で構成されているが、錘18がレール51により案内されて移動自在可能とするために、嵌合凹部18aの断面は、レール51の断面よりも若干広めに設定されている。
【0046】
このようなレール51を設けることにより、錘18は、レール51により案内することが可能となることから、振動方向が反れてしまうのを防止し、一直線上で振動することが可能となる。錘18による一直線上でコンスタントな振動を実現することができれば、振動エネルギーを効率的に吸収することも可能となる。ちなみに、このレール51は浮体12の表面12aに設けられている場合以外に、裏面12bにおいて設けられていてもよい。なお、このレール51の代替として、浮体12の表面12aにおいて図示しない溝を形成させ、これに錘18を遊嵌させてもよく、錘18を一直線上で安定した状態で振動させることにより上述した所期の効果を得ることが可能となる。
【0047】
このとき、図7に示すように、レール51の長手方向が加震方向となるように自動的に調整できる支持体52を設けるようにしてもよい。支持体52は、浮体12のほぼ中心に設けられ、その上端にはレール51が支持されている。このとき、レール51が支持体52を中心軸として回転可能となるような形状が、この支持体52に対して具現化されている必要がある。このため、支持体52は、例えば上端に軸を形成させ、その軸を介してレール51を回転可能に支持するようにしてもよい。
【0048】
ここで図7(a)に示す加震方向へ地震による振動が伝わった場合には、加震される前に図中点線方向に向いていたレール51が加震方向へと回転する。そのメカニズムとして、地震による振動が伝わると、浮体12は、加震方向に振動し、これに伴って錘18も加震方向へ移動しようとする。その結果、レール51に対しては、錘18が加震方向へ移動しようとする力が作用し、レール51自体が支持体52を中心として、その長手方向が加震方向となるように回転することになる。かかる状態の下で錘18はレール51に案内されて加震方向に振動を繰り返すことになる。
【0049】
このように、錘18を、加震方向へ自動的に合わせて、しかも一直線上で振動させることができるため、振動エネルギーをより効率的に吸収することも可能となる。特に本発明では、かかる加震方向への回転動作を、支持体52を設けるのみで極めて簡易な構成で自動的に実現することができることから、装置のコストを大幅に低減することも可能となる。
【0050】
なお本発明においては、平板状の浮体12の代替として、図8に示すように断面湾曲形状となるように形成された浮体53、54を適用するようにしてもよい。図8(a)に示す浮体53は上に凸となるように断面を湾曲させた形状としている。また、図8(b)に示す浮体54は下に凸となるように断面を湾曲させた形状としている。
【0051】
浮体53は、上に凸となるように湾曲させることにより、錘18の振動に対するバネ17の復元力が作用する方向に対して反対方向の力を付加することができる。このため湾曲させない場合に比べて、小さな錘18によって固有周期を長周期化することができる。錘18の軽量化により、浮体12への荷重が低減される。浮体53は鋼板からなる二重構造としてもよく、上の鋼板を湾曲させ、下の鋼板を平板としてもよい。二重構造とすることで、必要な浮力を確保する空間を得ることができる。
【0052】
浮体54は、下に凸となるように湾曲させることにより、一重構造であっても浮力を得ることができる。
【0053】
次に、本発明における第2の実施の形態としてのスロッシング抑制装置について、図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0054】
図9(a)は、第2の実施の形態を適用したスロッシング抑制装置7の構成を示している。このスロッシング抑制装置7は、液体3の液面に浮遊させる浮体12と、浮体12の底面から張設されたワイヤー60、並びにワイヤー60の下端に取り下げられた振り子61からなる同調型振動系64とを備えている。このスロッシング装置7において、上述したスロッシング装置1と同一の構成要素、部材については同一の符号を付すことにより上述した説明を引用し、以下での説明を省略する。
【0055】
ワイヤー60は、金属系、炭素繊維系等の非伸縮材料で構成されたロープ等である。このワイヤー60は、一端が図9に示すように浮体12の底面12bの複数箇所に取り付けられ、他端が浮体12の略中心底面において集結させた上で振り子61が取り付けられる。浮体12の略中心底面に1本のワイヤー60を用いて振り子61を取り付けてもよい。ちなみに、このワイヤー60の長さは、低減すべき振動エネルギーの固有振動数に応じて予め調整されている。
【0056】
振り子61は、錘18と同様に、例えば鋼鉄製の球形状、円筒形状、矩形状で構成される。但し、この振り子61は、液体3の比重より重い材料で構成されている必要がある。振り子61は、浮体12の略中心において集結されたワイヤー60の下端に取り付けられていることから、結果として、浮体12の略中心底面に吊り下げられた状態とされる。
【0057】
図9(b)は、同調型振動系66を浮体12の表面12a上に配設した例を示している。この図9(b)は、いわゆる逆さ振り子としての構成を具体化したものであって、弾性率の高い金属線65を複数本に亘って浮体12の表面12aへと取り付け、これを浮体12の中心付近に集結させてその先端を鉛直上方へと突出させている。この突出させた金属線65の先端に振り子61を取り付ける。浮体12の略中心表面に1本の金属線65を用いて振り子61を取り付けてもよい。その結果、金属線65の弾性変形に伴って振り子61を振動させることが可能となる。
【0058】
次に、本発明を適用したスロッシング抑制装置7の動作について、同調型振動系64を浮体12の底面12bに設けた場合を例にとり、詳細に説明をする。
【0059】
本発明を適用したスロッシング抑制装置7は、上述した構成を備えることにより、図10(a),(b)に示すように液体3に対して振動が伝わったときに、振り子61がこれに追随するようにして振動する。例えば図10(a)に示すように、地震等により液体3の液位が変動し、左下がりとなるように変化した場合には、これに伴って振り子61も左へと揺れることになる。また図10(b)に示すように、液位が右下がりとなるように変化した場合には、これに伴って振り子61も右へと揺れることになる。これが繰り返し実行されることにより、地震による液位の変動に応じて振り子61を左右に振動させることが可能となる。
【0060】
その結果、地震により液体3へと伝達された振動エネルギーは、低減されることになり、液体3における液位の変動量を抑えることが可能となる。その結果、液体3が周壁22から超えてしまうことを防止することが可能となり、スロッシングをより効果的に抑制することが可能となる。しかも本発明では、あくまで振り子61とワイヤー60を中心とした同調型振動系64を新設又は既設の浮屋根に設ければ所期の効果を奏することから、装置を構成する上での労力の軽減を大幅に低減させ、コストも抑えることが可能となる。特に、この振り子61は、加震方向がいかなる方向であってもその加震方向へ向けて揺動することが可能となる。即ち、この振り子61を利用したスロッシング抑制装置7は、加震方向による制限を受けないという利点もある。また、振り子61とワイヤー60又は金属線65は、浮体12の中心近傍のみに配置しても所期の作用効果を発揮することができる。
【0061】
また、逆さ振り子とした図9(b)の構成とすることにより、振り子61の復元力と反対方向の力が作用するため、振り子の固有周期を長周期化することができるという利点がある。
【0062】
なお、同調型振動系64を浮体12の表面12aに設けた場合についても、逆さ振り子と同様の動作を発揮し得ることから、上述と同様の効果を得ることが可能となる。
【0063】
図11は、先端に振り子61を取り付けた金属線65に対して、更にバネ17を取り付けたスロッシング抑制装置8の構成例を示している。金属線65の下端には図示しない移動手段が設けられ、この移動手段により金属線自体65が表面12a上を移動自在とすることができる。そしてこの金属線65には、バネ17が複数方向から接続されている。金属線65は浮体12の表面に移動手段を設けず固定してもよい。
【0064】
このようなスロッシング抑制装置8では、逆さ振り子とバネ17とを組み合わせた構成からなる。このため、地震により振動エネルギーが伝達された場合には、振り子61が取り付けられた金属線65自体をバネ17により、加震方向へ振動させることが可能となる。また、金属線65の先端に取り付けられた振り子61も加震方向へと揺動させることが可能なる。このため、振動エネルギーの吸収効果をより向上させることが可能となる。また、振り子61を利用するため、いかなる加震方向であっても、その方向へ振り子61を揺動させて、振動エネルギーを吸収することが可能となる。
【実施例1】
【0065】
以下、本発明を適用したスロッシング抑制装置1の効果を確認するために行った実験結果について説明をする。
【0066】
実験系は、図12に示すように、外径600mm、内径580mm、内容液高さ500mm、周壁高さが800mmからなるアクリル製円筒タンク模型81に、スロッシング抑制装置7に対応する模型83を設置した。
【0067】
この模型83は、振動系としての振り子として、振り子長さによって容易に固有振動数を変化させることができるものを用いた。液面に硬質発泡スチロール製の平板84(浮体12に対応する)を浮かべ、平板84下面に糸85を3本を取り付け、先端を束ね三角錐を形成した。その先端に糸を取り付け、振り子状に錘86を吊り下げた。錘86は平板84の中心に合致するように調整した。
【0068】
平板84は、直径580mm、厚さ10mm、質量266gである。錘86は、直径49.6mm、質量500gの鋼球である。糸85により形成される三角錐は、長さ6.4cm、振子長は12.7cmである。
【0069】
このような模型83をタンク模型81に貯留した液体の液面に浮かべ、さらにこのタンク模型83を図示しない振動台82に設置し、2galの正弦波による加振とした。抑制装置がない状態での1次スロッシングの固有振動数は1.244Hz、その時の最大波高は6.7cmであった。振動台実験は1.15Hz〜1.35Hzまで0.01Hz刻みのスポット加振を行った。その結果、波高は、1.2cmであった。比較のため平板84のみを液体に浮かべて、同一条件の下で振動台実験を行ったところ、波高は4cmであった。このため、本発明を適用することにより、波高は2.8cmも低減できたことが示されている。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】第1の実施の形態としてのスロッシング抑制装置の構成図である。
【図2】本発明を適用したスロッシング抑制装置において、同調型振動系を、浮体の表面に設けた形態を示す図である。
【図3】本発明を適用したスロッシング抑制装置の動作について説明するための図である。
【図4】本発明を適用したスロッシング抑制装置の第1の実施の形態の他の構成例を示す図である。
【図5】(a)は、断面略円形状の平板に対して、4箇所に亘って開口部を形成させた例を示す図である。(b)は、平板で構成する代替として、骨組形状とした例を示す図である。
【図6】錘の振動をレールにより案内する構成について説明するための図である。
【図7】レールの長手方向が加震方向となるように自動的に調整できる支持体を設けた例を示す図である。
【図8】平板状の浮体の代替として、断面湾曲形状となるように形成された浮体を適用する例について説明するための図である。
【図9】本発明を適用したスロッシング抑制装置の第2の実施の形態の構成図である。
【図10】本発明を適用したスロッシング抑制装置の第2の実施の形態の動作について説明するための図である。
【図11】先端に振り子を取り付けた金属線に対して、更にバネを取り付けたスロッシング抑制装置の構成図である。
【図12】本発明を適用したスロッシング抑制装置の効果を確認するために行った実験系について説明するための図である。
【符号の説明】
【0071】
1 スロッシング抑制装置
2 貯留容器
3 液体
12 浮体
13 同調型振動系
17 バネ
18 錘
19 柱
21 底板
22 周壁
51 レール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留容器内の液体のスロッシングを抑制するスロッシング抑制装置において、
上記液体の液面に浮遊させる平板状の浮体と、
上記浮体の表面又は底面に対して略平行方向に弾性伸縮自在に張設された弾性伸縮体と、上記弾性伸縮体の少なくとも一端に取り付けられた錘とを有する同調型振動系とを備えること
を特徴とするスロッシング抑制装置。
【請求項2】
上記浮体は、上記同調型振動系における錘が嵌合され、これを案内するためのレールが形成されていること
を特徴とする請求項1記載のスロッシング抑制装置。
【請求項3】
上記レールは、浮体の略中心を軸として回転自在とされていること
を特徴とする請求項2記載のスロッシング抑制装置。
【請求項4】
上記浮体は、上に凸又は下に凸となるように湾曲されてなること
を特徴とする請求項1記載のスロッシング抑制装置。
【請求項5】
貯留容器内の液体のスロッシングを抑制するスロッシング抑制装置において、
上記液体の液面に浮遊させる平板状の浮体と、
上記浮体の略中心底面に吊り下げられ、又は略中心表面に倒立させた振り子からなる同調型振動系とを備えること
を特徴とするスロッシング抑制装置。
【請求項6】
上記浮体は、開口部が形成され、又は平板状とする代替として骨組形状とされていること
を特徴とする請求項1又は5記載のスロッシング抑制装置。
【請求項1】
貯留容器内の液体のスロッシングを抑制するスロッシング抑制装置において、
上記液体の液面に浮遊させる平板状の浮体と、
上記浮体の表面又は底面に対して略平行方向に弾性伸縮自在に張設された弾性伸縮体と、上記弾性伸縮体の少なくとも一端に取り付けられた錘とを有する同調型振動系とを備えること
を特徴とするスロッシング抑制装置。
【請求項2】
上記浮体は、上記同調型振動系における錘が嵌合され、これを案内するためのレールが形成されていること
を特徴とする請求項1記載のスロッシング抑制装置。
【請求項3】
上記レールは、浮体の略中心を軸として回転自在とされていること
を特徴とする請求項2記載のスロッシング抑制装置。
【請求項4】
上記浮体は、上に凸又は下に凸となるように湾曲されてなること
を特徴とする請求項1記載のスロッシング抑制装置。
【請求項5】
貯留容器内の液体のスロッシングを抑制するスロッシング抑制装置において、
上記液体の液面に浮遊させる平板状の浮体と、
上記浮体の略中心底面に吊り下げられ、又は略中心表面に倒立させた振り子からなる同調型振動系とを備えること
を特徴とするスロッシング抑制装置。
【請求項6】
上記浮体は、開口部が形成され、又は平板状とする代替として骨組形状とされていること
を特徴とする請求項1又は5記載のスロッシング抑制装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−143575(P2009−143575A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320150(P2007−320150)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(500171811)日鉄パイプライン株式会社 (34)
【出願人】(503361813)学校法人 中村産業学園 (26)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(500171811)日鉄パイプライン株式会社 (34)
【出願人】(503361813)学校法人 中村産業学園 (26)
【Fターム(参考)】
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