スロッシング評価システム、スロッシング評価プログラム及び記録媒体
【課題】適切なスロッシング対策が行えるスロッシング評価システム、スロッシング評価プログラム及び記録媒体を提供すること。
【解決手段】液体を収容する複数のタンク41について地震によるスロッシングを評価するスロッシング評価システムであって、リアルタイムの地震発生情報に基づき複数のタンク41についてそれぞれスロッシングによる液面の波高値を算出する第一評価を行い、地震計16の検出信号に基づき複数のタンク41についてそれぞれスロッシングによる液面の波高値を算出する第二評価行い、第一評価により算出された波高値に関する情報をタンクの管理機関に送信すると共に、第二評価により算出された波高値が第一評価により算出された波高値と異なる場合に第二評価により算出された波高値に基づき波高値に関する情報を修正して管理機関に送信する。
【解決手段】液体を収容する複数のタンク41について地震によるスロッシングを評価するスロッシング評価システムであって、リアルタイムの地震発生情報に基づき複数のタンク41についてそれぞれスロッシングによる液面の波高値を算出する第一評価を行い、地震計16の検出信号に基づき複数のタンク41についてそれぞれスロッシングによる液面の波高値を算出する第二評価行い、第一評価により算出された波高値に関する情報をタンクの管理機関に送信すると共に、第二評価により算出された波高値が第一評価により算出された波高値と異なる場合に第二評価により算出された波高値に基づき波高値に関する情報を修正して管理機関に送信する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油タンクなどのスロッシングを評価するスロッシング評価システム、スロッシング評価プログラム及び記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、石油タンクなどのスロッシングを計測する装置として、例えば特開2000−9516号公報に記載されるように、液体を貯蔵したタンク内の液面の高さを計測しその液面レベル値を出力する液面計測器と、地震が発生したことを検知し地震検知信号を出力する地震検知器と、地震検知信号の出力タイミングに同期してその液面レベル値を記録保存する記録器と、記録保存された液面レベル値から地震時の液面変位を推定する解析器とを備えたものが知られている。この装置は、記録保存された液面レベル値に基づいて液面変位を推定することにより、地震発生時のスロッシング現象による貯蔵タンク内の液面の上昇を精度よく推定しようとするものである。
【特許文献1】特開2000−9516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような装置あっては、多数のタンクが設置されるタンク基地において適切なスロッシング対策が行えないという問題点がある。例えば、タンク基地に設置される多数のタンクの全てについて液面変位を推定するためには、全てのタンクに液面計測器を設置する必要がある。このため、液面変位を推定するのに多大なコストを要し、スロッシング推定が容易には行えない。また、石油タンク基地などにおいて、液面変位を精度よく推定できたとしても、地震波の到達前にスロッシングを推定しなければ、スロッシング対策を適切に行うことが困難である。
【0004】
そこで本発明は、適切なスロッシング対策が行えるスロッシング評価システム、スロッシング評価プログラム及び記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明に係るスロッシング評価システムは、液体を収容する複数のタンクについて地震によるスロッシングを評価するスロッシング評価システムであって、遠隔地で発生した地震の地震発生情報をリアルタイムで取得する地震情報取得手段と、前記タンクにおける地震による震動を検出する地震検出手段と、前記地震発生情報に基づいて速度応答スペクトルを算出し、その速度応答スペクトルを用いて前記複数のタンクについてそれぞれスロッシングによる液面の波高値を算出する第一評価手段と、前記地震検出手段の検出信号に基づいて速度応答スペクトルを算出し、その速度応答スペクトルを用いて前記複数のタンクについてそれぞれスロッシングによる液面の波高値を算出する第二評価手段と、前記第一評価手段により算出された波高値に関する情報を前記タンクの管理機関に送信すると共に、前記第二評価手段により算出された波高値が前記第一評価手段により算出された波高値と異なる場合に前記第二評価手段により算出された波高値に基づき前記波高値に関する情報を修正して前記タンクの管理機関に送信する送信手段とを備えて構成されている。
【0006】
また本発明に係るスロッシング評価プログラムは、複数のタンクにおける地震によるスロッシング評価処理をコンピュータに実行させるスロッシング評価プログラムであって、遠隔地で発生した地震におけるリアルタイムの地震発生情報に基づいて速度応答スペクトルを算出し、その速度応答スペクトルを用いて前記複数のタンクについてそれぞれスロッシングによる液面の波高値を算出する第一評価処理と、前記タンクの敷地内に設置される地震計の検出信号に基づいて速度応答スペクトルを算出し、その速度応答スペクトルを用いて前記複数のタンクについてそれぞれスロッシングによる液面の波高値を算出する第二評価処理と、前記第一評価処理により算出された波高値に関する情報を前記タンクの管理機関に送信すると共に、前記第二評価処理により算出された波高値が前記第一評価処理により算出された波高値と異なる場合に前記第二評価処理により算出された波高値に基づき前記波高値に関する情報を修正して前記タンクの管理機関に送信する送信処理とを前記コンピュータに実行させることを特徴とする。また本発明に係る記録媒体は、このスロッシング評価プログラムを記録したことを特徴とするものである。
【0007】
これらの発明によれば、リアルタイムの地震発生情報に基づいて速度応答スペクトルを算出しその速度応答スペクトルを用いてタンク内の液面の波高値を算出してスロッシング評価が行われる。このため、タンクに地震波が到達する前にスロッシング評価が行え、スロッシングに対する対策を事前に始動することができる。また、複数のタンクについて同時にスロッシングに関する評価を行うため、石油タンク基地のように多数のタンクが設置されている場合などタンクの状態を一括管理することができ、管理作業が効率よく行える。また、複数のタンクごとに地震計を設置することなく、スロッシングによるタンク内における波高値を算出することができ、低コストで評価システムを構築することができる。さらに、リアルタイムの地震発生情報に基づいてスロッシングについて一次評価するほか、現実の震動を検知して二次評価を行うことにより、一次評価の修正が可能であり、適切なスロッシングの対応が可能となる。
【0008】
また本発明に係るスロッシング評価システムは、前記タンクに設けられ、前記第一評価手段により前記波高値が所定値を超えると評価されたときに起動し、前記波高値が低くなるように前記タンクのスロッシング周期を変更させるスロッシング防止手段を備えたことを特徴とする。
【0009】
また本発明に係るスロッシング評価プログラムは、前記第一評価処理によって前記波高値が前記所定値を超えると評価されたときに、前記タンクのスロッシング周期を変更させるスロッシング防止手段に対して起動信号を送信してスロッシングを低減させるスロッシング防止処理を前記コンピュータに実行させることを特徴とする。また本発明に係る記録媒体は、このスロッシング評価プログラムを記録したことを特徴とするものである。
【0010】
これらの発明によれば、リアルタイムの地震発生情報に基づいてタンクの波高値を算出してスロッシング評価を行い、波高値が所定値を超えると評価されたときにスロッシング防止手段を起動して波高値が低くなるようにタンクのスロッシング周期を変えることができる。このため、地震波がタンクに到達する前に予めスロッシング周期を変更して、スロッシングによる液面が高くなることを防止することができる。
【0011】
また本発明に係るスロッシング評価システムは、前記送信手段が、前記波高値に関する情報として少なくともタンク波高値情報及び溢流タンク情報を送信することを特徴とする。
【0012】
また本発明に係るスロッシング評価プログラムは、前記送信処理が、前記波高値に関する情報として少なくともタンク波高値情報及び溢流タンク情報を送信することを特徴とする。また本発明に係る記録媒体は、このスロッシング評価プログラムを記録したことを特徴とするものである。
【0013】
これらの発明によれば、タンク波高値情報及び溢流タンク情報を管理機関に送信することにより、管理機関側ではタンクのスロッシング対策を講ずるべき順位を容易に決定でき、緊急事態の際にスロッシングに対する対策措置を効率よく効果的に実行できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、地震発生の際に適切なスロッシング対策を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は本発明の実施形態に係るスロッシング評価システムの構成概要図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係るスロッシング評価システム1は、スロッシング評価対象となる複数のタンクのスロッシング評価を行うシステムであり、制御部10、地震発生情報取得部12、液高情報入力部14、地震計16、データ入力部18、モニタ20、スピーカ22、通信部24及びスロッシング防止部26を備えて構成されている。スロッシング評価対象となる複数のタンクは、例えば石油タンク基地を構成するものであり、タンク内に石油などの液体が収容されている。
【0018】
制御部10は、システム全体の制御処理を行うものであり、例えばCPU、ROM、RAMを含むコンピュータを主体として構成されている。地震発生情報取得部12は、遠隔地で発生した地震の地震発生情報をリアルタイムで取得する地震情報取得手段であり、地震発生情報を制御部10に入力する。地震発生情報は、少なくとも震源地及び地震規模(マグニチュード)を含む情報であり、遅くとも地震の主要動(P波)がタンクに到達する前に制御部10に入力されることが望ましい。
【0019】
制御部10は、地震発生情報に基づいて速度応答スペクトルを算出し、その速度応答スペクトルを用いて複数のタンクについてそれぞれスロッシングによる液面の波高値を算出する第一評価手段として機能するものである。また、地震計16の検出信号に基づいて速度応答スペクトルを算出し、その速度応答スペクトルを用いて前記複数のタンクについてそれぞれスロッシングによる液面の波高値を算出する第二評価手段としても機能する。
【0020】
地震発生情報取得部12としては、例えば、インターネット回線や専用回線などを通じてリアルタイム地震発生情報を取得するものが用いられる。ここでいうリアルタイムとは、地震発生と同時のほか、地震発生からほぼ同時を含むものであり、例えば地震発生から数十秒経過以内の時間も含むものである。
【0021】
液高情報入力部14は、各タンクに収容される液体の液面高さ情報を制御部10に入力するものである。この液高情報入力部14としては、タンクに設置される液高検知センサの出力を取得して制御部10に液面高さ情報を入力するものでもよいし、タンクへの液体の注入量及び排出量から算出される液面高さ情報を入力するものでもよい。また、液高情報入力部14としては、インターネット回線や専用回線などを通じて液面高さ情報を制御部10に入力するものでもよいし、キーボードやマウスなどの操作により制御部10に液面高さ情報を入力するものであってもよい。また、インターネット回線や専用回線などを通じて液面高さ情報を制御部10に入力する場合、サーバを用意し、そのサーバに液面高さ情報を蓄積しておき、サーバから制御部10に液面高さ情報を入力してもよい。
【0022】
地震計16は、タンクにおける地震による震動を検出する地震検出手段であり、タンクが設置される敷地内に設けられる。地震計16により検出された検出信号は、制御部10に入力される。データ入力部18は、制御部10に各種の情報データやスロッシング評価処理における設定変更情報などを入力するものである。モニタ20は、スロッシング評価に関する画像、データなどを表示する出力手段である。スピーカ22は、スロッシング評価に関する音声情報を出力する出力手段である。
【0023】
通信部24は、システム外部との通信を行う通信手段であり、地震発生時おいてスロッシング評価に関するスロッシング評価情報をタンクの管理機関に送信する送信手段としても機能する。
【0024】
スロッシング防止部26は、各タンクに設けられ、スロッシングによるタンク内の波高値を低く抑えるようにタンクのスロッシング周期を変更させるスロッシング防止手段である。具体的な構造については、後述する。
【0025】
制御部10、データ入力部18、モニタ20及びスピーカ22については、パーソナルコンピュータにより構成することができる。制御部10としてパソコン本体部を用い、データ入力部18としてキーボードやマウスを用い、モニタ20及びスピーカ22としてパソコンに付属のものをそのまま用いればよい。この場合、制御部10には、スロッシング評価プログラムを読み込ませることが必要となる。例えば、スロッシング評価プログラムを記録したCD−ROMなどの記録媒体を用意し、その記録媒体をパソコン本体などにセットし、コンピュータシステムにスロッシング評価プログラムを導入すればよい。また、スロッシング評価プログラムのコンピュータシステムへの導入は、記録媒体を介さずに、インターネットなどの通信によって行ってもよい。
【0026】
次に、本実施形態に係るスロッシング評価プログラム及び記録媒体について説明する。
【0027】
図2は、スロッシング評価プログラム32が記録されている記録媒体30の構成を示した図である。記録媒体30としては、例えば磁気ディスク、光ディスク、CD−ROM、コンピュータに内蔵されたメモリなどスロッシング評価プログラムを記録できそのスロッシング評価プログラムをコンピュータが読み取り可能としたものであれば、いずれのものであってもよい。
【0028】
記録媒体30は、プログラムを記録するプログラム領域31と、データを記録するデータ領域32を備えている。データ領域32には、過去の地震データなどを収録した地震記録データベース33が格納されている。
【0029】
プログラム領域31には、スロッシング評価プログラム34が記録されている。スロッシング評価プログラム34は、処理を統括するメインモジュール35、地震情報に基づいてスロッシング評価を行うためのスロッシング評価モジュール36及びスロッシング評価結果に基づいてスロッシング結果情報などを出力する出力モジュール37を備えている。
【0030】
次に、本実施形態に係るスロッシング評価プログラムの実行によるスロッシング評価システム1の動作について説明する。
【0031】
図3〜9は、スロッシング評価システム1におけるモニタ表示の説明図である。図10は、スロッシング評価システム1におけるスロッシング周期の演算処理を示すフローチャートである。図11は、スロッシング評価システム1における地震発生時の一次評価処理を示すフローチャートである。図12は、スロッシング評価システム1における地震発生時の二次評価処理を示すフローチャートである。図10〜12の各制御ルーチンは、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0032】
図3に示すように、スロッシング評価システム1を起動すると、モニタ20には、タンク画像40と各種の操作ボタン50が表示される。タンク画像40は、スロッシング評価対象となる複数のタンク41を示す画像である。操作ボタン50は、例えば、終了ボタン51、最大値表示ボタン52、波形表示ボタン53、速度応答スペクトル表示ボタン54、スロッシング周期表示ボタン55、波高値表示ボタン56及び過去地震データ選択ボタン57により構成される。
【0033】
終了ボタン51をクリックすることにより、スロッシング評価プログラムを終了することができる。過去地震データ選択ボタン57により過去の地震データを一つ選択し、最大値表示ボタン52をクリックすると、図4に示すように、選択した地震における地震データ42が表示される。例えば、地震データ42として、東西方向、南北方向及び鉛直方向における加速度の最大値、並びに震度が表示される。
【0034】
また、波形表示ボタン53をクリックすることにより、図5に示すように、選択した地震における波形データ43が表示される。波形データ43としては、例えば、東西方向、南北方向及び鉛直方向における加速度の時間変化グラフが表示される。このグラフの縦軸はガル(Gal)、横軸は時間である。
【0035】
また、速度応答スペクトル表示ボタン54をクリックすることにより、図6に示すように、選択した地震における速度応答スペクトル44が表示される。速度応答スペクトルデータ44としては、例えば、東西方向、南北方向及びその合成状態の速度応答スペクトルが表示される。この速度応答スペクトルのグラフにおける縦軸は応答速度であり、横軸は周期である。
【0036】
また、スロッシング周期表示ボタン55をクリックすることにより、図7に示すように、選択した地震における各タンク41のスロッシング周期45が表示される。スロッシング周期45は、各タンク41上に表示することが好ましい。この場合、視覚的に各タンク41のスロッシング周期を一目で把握することができる。
【0037】
また、波高値表示ボタン56をクリックすることにより、図8に示すように、選択した地震における各タンク41の波高値46が表示される。ここで、波高値46は、静止液面からの水位上昇量を意味する。この波高値46は、各タンク41上に表示することが好ましい。この場合、視覚的に各タンク41の波高値46を一目で把握することができる。また、所定値を超える波高値46については、所定値を超えないものと異なる色彩で表示することが好ましい。
【0038】
また、タンク41の一つをクリックすることにより、図9に示すように、そのタンク41の指定表示47及びタンク情報48が表示される。指定表示47は、タンク41上に示されるマークであり、例えば色彩を付したマークが用いられる。タンク情報48は、タンク41の内径データ、現在の液面高さデータ及び一次固有周期データ(スロッシング周期データ)により構成される。
【0039】
次に、図10を参照して、スロッシング評価システム1におけるスロッシング周期の演算処理を説明する。
【0040】
図10のS10に示すように、まずタンク液面高さの読み込みが行われる。タンク液面高さの読み込みは、液面情報入力部14から入力される液面情報データに基づいて行われ、各タンク41についてそれぞれ行われる。
【0041】
そして、S12に移行し、スロッシング周期の演算が行われる。スロッシング周期の演算は、タンク41に収容する液体のスロッシング周期を演算する処理であり、タンク41の内径と液面高さに基づいて行われる。例えば、次の式(1)を用いて、スロッシング周期Tsが算出される。
【0042】
Ts=2π・((D/3.68・g)・coth(3.68・H/D))1/2 …(1)
この式(1)において、Dはタンク内径、Hはタンク液面高さ、gは重力加速度である。このスロッシング周期の演算は、各タンク41についてそれぞれ行われる。
【0043】
このスロッシング周期演算処理によれば、タンク内径D及びタンク41の液面高さHによりタンク41ごとのスロッシング周期を算出することができる。特に、タンク41の液体貯蔵量に応じてタンク液面高さHの情報を随時更新することにより、タンク41のスロッシング周期を正確に取得することができる。
【0044】
なお、このスロッシング周期の演算処理は、所定の時間間隔又は所定の日数間隔で行ってもよいし、後述する地震発生時の一次評価処理又は二次評価処理の際に行ってもよい。
【0045】
次に、図11を参照して、スロッシング評価システム1における地震発生時の一次評価処理について説明する。
【0046】
図11のS20に示すように、まず、緊急地震情報が入力されたか否かが判断される。緊急地震情報は、リアルタイム地震発生情報であり、地震発生情報部12を通じて制御部10に入力される。緊急地震情報が入力されていないと判断されたときには、制御処理を終了する。一方、緊急地震情報が入力されたと判断されたときには、速度応答スペクトルの算出処理が行われる(S22)。
【0047】
速度応答スペクトルの算出処理は、発生した地震によりタンク41に加わる震動の速度応答スペクトルを予測演算する処理である。この速度応答スペクトルの算出処理として、まず、緊急地震情報に含まれる震源地データと地震規模データに基づいて震動波形が予測演算される。震動波形は、例えば図5の波形データ43に示すように、震動による加速度の時間変化として予測される。そして、予測演算された震動波形に基づいて速度応答スペクトルが算出される。例えば、震動波形を1自由度振動系応答解析することにより、速度応答スペクトルが算出される。速度応答スペクトルは、例えば図6の速度応答スペクトルデータ44に示すように、横軸を周期、縦軸を応答速度としたデータとして算出される。
【0048】
そして、S24に移行し、スロッシング周期の演算処理が行われる。スロッシング周期の演算は、タンク41に収容する液体のスロッシング周期を演算する処理であり、タンク41の内径と液面高さに基づいて行われる。例えば、上述した図10のS12と同様に行われ、各タンク41についてそれぞれ行われる。なお、このS24では、図10のS12に行われたスロッシング周期をそのまま読み込んで用いてもよい。
【0049】
そして、S26に移行し、タンク41における液面の波高値の演算処理が行われる。この波高値演算処理は、地震震動によるタンク41の液面の最大波高値を予測演算する処理である。この波高値は、タンク内径、地震震動の速度応答スペクトル及びタンク41のスロッシング周期に基づいて算出される。例えば、次の式(2)を用いて、液面の波高値Xが算出される。
【0050】
X=0.268・D・Sv・(1/Ts) …(2)
この式(2)において、Dはタンク内径、Svは速度応答スペクトル、Tsはスロッシング周期である。この波高値の演算は、各タンク41についてそれぞれ行われる。
【0051】
そして、S28に移行し、スロッシング情報出力処理が行われる。スロッシング情報出力処理は、スロッシングによる波高値に関する情報をタンク41の管理機関に送信出力する処理である。このスロッシング情報出力処理として、例えば電子メールにより波高値に関するデータの転送が行われる。具体的には、管理担当者の携帯電話に向けて、地震発生の警告情報、最大波高値情報、溢流タンクの情報の全部又は一部が送信される。また、関係機関のパソコンに向けて、地震発生の警告情報、地震規模の表示情報、最大波高値情報、速度応答スペクトル情報、溢流タンクの情報の全部又は一部が送信される。
【0052】
そして、S30に移行し、演算された波高値が所定値より大きいか否かが判断される。所定値は、制御部10に予め設定される設定値であり、例えばタンク41において溢流のおそれがあるか否かを考慮して設定される。演算された波高値が所定値より大きくないと判断されたときには、制御処理を終了する。
【0053】
一方、演算された波高値が所定値より大きいと判断されたときには、スロッシング防止処理が行われる(S32)。スロッシング防止処理は、タンク41に設置されるスロッシング防止部26を起動させて、タンク41のスロッシング周期を波高値が低くなるように変更させる処理である。このスロッシング防止処理は、S30にて波高値が所定値を超えると判断されたタンク41のみに対して行うことが望ましい。このスロッシング防止処理により、タンク41のスロッシング周期が変更されて、スロッシングによる波高値が低く抑えられる。
【0054】
このように、リアルタイム地震発生情報に基づいてスロッシングに関する一次評価処理を行うことにより、迅速にタンク41の液面の波高値の状態を知ることができ、スロッシングに対する迅速な対応が可能となる。特に、100〜300km離れた遠隔地で発生した地震について一次評価処理を行う場合、地震の主要動(P波)がタンク41に到達する前にタンク41の波高値、溢流の有無を知ることができ、タンク41の作業員の避難又は消化体制の準備などスロッシングに対して適切に対応することができる。
【0055】
次に、図12を参照して、スロッシング評価システム1における地震発生時の二次評価処理について説明する。
【0056】
図12のS40に示すように、まず、地震波形の読み込みが行われる。この地震波形の読み込みは、地震計16の検出信号に基づいて行われる。そして、S42に移行し、地震波形値が所定の加速度値以上であるか否かが判断される。地震波形値が所定の加速度値以上でないと判断されたときには、制御処理を終了する。
【0057】
一方、地震波形値が所定の加速度値以上であると判断されたときには、速度応答スペクトルの算出処理が行われる(S44)。速度応答スペクトルの算出処理は、発生した地震によりタンク41に加わる震動の速度応答スペクトルを演算する処理である。例えば、震動波形を1自由度振動系応答解析することにより、速度応答スペクトルが算出される。速度応答スペクトルは、例えば図6の速度応答スペクトルデータ44に示すように、横軸を周期、縦軸を応答速度としたデータとして算出される。
【0058】
そして、S46に移行し、スロッシング周期の演算処理が行われる。スロッシング周期の演算は、タンク41に収容する液体のスロッシング周期を演算する処理であり、タンク41の内径と液面高さに基づいて行われる。例えば、上述した図10のS12と同様に行われ、各タンク41についてそれぞれ行われる。なお、このS24では、図10のS12に行われたスロッシング周期をそのまま読み込んで用いてもよい。
【0059】
そして、S48に移行し、タンク41における液面の波高値の演算処理が行われる。この波高値演算処理は、地震震動によるタンク41の液面の最大波高値を予測演算する処理である。この波高値演算処理は、図11のS26と同様に行われる。
【0060】
そして、S50に移行し、スロッシング情報の変更が必要か否かが判断される。例えば、S48にて算出された波高値が図11のS26にて算出された一次評価の波高値に対し所定値以上異なる場合にスロッシング情報の変更が必要であると判断され、S48にて算出された波高値が図11のS26にて算出された一次評価の波高値に対し所定値以上異なっていない場合にスロッシング情報の変更が必要でないと判断される。このS50にてスロッシング情報の変更が必要でないと判断されたときには、制御処理を終了する。
【0061】
一方、スロッシング情報の変更が必要であると判断されたときには、スロッシング情報出力処理が行われる(S52)。このスロッシング情報出力処理は、一次評価におけるスロッシングによる波高値に関する情報を修正して、二次評価におけるスロッシングによる波高値に関する情報をタンク41の管理機関に送信出力する処理である。このスロッシング情報出力処理として、例えば電子メールにより波高値に関するデータの転送が行われる。具体的には、管理担当者の携帯電話に向けて、地震発生の警告情報、最大波高値情報、溢流タンクの情報の全部又は一部が送信される。また、関係機関のパソコンに向けて、地震発生の警告情報、地震規模の表示情報、最大波高値情報、速度応答スペクトル情報、溢流タンクの情報の全部又は一部が送信される。
【0062】
このとき、溢流危険度の高いタンクをランク付けして溢流タンクの情報を送信することが好ましい。この場合、消化体制などの災害対策を準備する上で有効である。
【0063】
そして、S54に移行し、演算された波高値が所定値より大きいか否かが判断される。所定値は、制御部10に予め設定される設定値であり、例えばタンク41において溢流のおそれがあるか否かを考慮して設定される。具体的には、所定値として、静止液面からタンク41の天井面までの距離に対応する値が設定される。演算された波高値が所定値より大きくないと判断されたときには、制御処理を終了する。
【0064】
一方、演算された波高値が所定値より大きいと判断されたときには、スロッシング防止処理が行われる(S56)。スロッシング防止処理は、タンク41に設置されるスロッシング防止部26を起動させて、タンク41のスロッシング周期を波高値が低くなるように変更させる処理である。このスロッシング防止処理は、S30にて波高値が所定値を超えると判断されたタンク41のみに対して行うことが望ましい。このスロッシング防止処理により、タンク41のスロッシング周期が変更されて、スロッシングによる波高値が低く抑えられる。
【0065】
ここで、スロッシング防止部26の一例を示す。図13に示すように、例えば、スロッシング防止部26として、タンク41の内径を変えることでスロッシング周期を変更するものが用いられる。このスロッシング防止部26は、下部を回転可能に取り付けられたパイプ26aにシート材26bを付して構成されている。地震発生前では、パイプ26aは、内壁に沿って直立した状態となっており、シート材26bは畳まれた状態となっている。このとき、パイプ26aは、その上部に設けられるリリース部26cにより支持されて倒れない状態に維持されている。
【0066】
そして、地震が発生し波高値が所定値を超えると判断されたときには、リリース部26cがパイプ26aを解放し、パイプ26aがタンク底面に向けて倒れていく。これにより、シート材26bが扇状に展開される。このシート材26bの展開により、タンク41の内部が仕切られて、タンク内径が変更された状態となる。従って、スロッシング周期が変化し、地震震動によるスロッシングが低減され、液面41aの波高値が低く抑えられる。
【0067】
なお、スロッシング防止部26としては、図13のようなタイプのものに限られるものでなく、タンク41のスロッシング周期を変更できるものであれば、いずれのタイプのものであってもよい。
【0068】
このように、現実の地震波形に基づいてスロッシングに関する二次評価処理を行うことにより、より正確にタンク41の液面の波高値の状態を知ることができる。このため、一次評価による波高値の推定ズレを修正し、スロッシングに対する適切な対応が可能となる。
【0069】
以上のように、本実施形態に係るスロッシング評価システム、スロッシング評価プログラム及び記録媒体によれば、リアルタイムの地震発生情報に基づいて速度応答スペクトルを算出し、その速度応答スペクトルを用いてタンク41内の液面の波高値を算出してスロッシング一次評価が行われる。このため、タンク41に地震波が到達する前にスロッシング評価が行え、スロッシングに対する対策を事前に始動することができる。
【0070】
また、複数のタンク41について同時にスロッシングに関する評価を行うため、石油タンク基地のように多数のタンク41が設置されている場合などタンクの状態を一括管理することができ、管理作業が効率よく行える。
【0071】
また、複数のタンク41ごとに地震計を設置することなく、スロッシングによるタンク41内における波高値を算出することができ、低コストで評価システムを構築することができる。
【0072】
また、リアルタイムの地震発生情報に基づいてスロッシングについて一次評価するほか、現実の震動を検知して二次評価を行うことにより、一次評価の修正が可能であり、適切なスロッシングの対応が可能となる。
【0073】
また、リアルタイムの地震発生情報に基づいてタンク41の波高値を算出してスロッシング評価を行い、波高値が所定値を超えると評価されたときにスロッシング防止部26を起動して波高値が低くなるようにタンク41のスロッシング周期を変えることができる。このため、地震波がタンク41に到達する前に予めスロッシング周期を変更して、スロッシングによる液面が高くなることを防止することができる。
【0074】
また、地震発生時において、タンク41の波高値が所定値を超えると評価されたときに、タンク波高値情報及び溢流タンク情報を管理機関に送信することにより、管理機関側ではタンクのスロッシング対策を講ずるべき順位を容易に決定でき、緊急事態の際にスロッシングに対する対策措置を効率よく効果的に実行できる。例えば、タンク41の波高値情報を送信し、溢流タンク情報を送信することにより、どのタンク41を優先して消化体制を採ればよいかの判断が容易となる。また、タンク41の作業員に対し安全な避難経路を容易に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施形態に係るスロッシング評価システムの構成概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係るスロッシング評価プログラムを記録した記録媒体の構成概要図である。
【図3】図1のスロッシング評価システムにおけるモニタ表示の説明図である。
【図4】図1のスロッシング評価システムにおけるモニタ表示の説明図である。
【図5】図1のスロッシング評価システムにおけるモニタ表示の説明図である。
【図6】図1のスロッシング評価システムにおけるモニタ表示の説明図である。
【図7】図1のスロッシング評価システムにおけるモニタ表示の説明図である。
【図8】図1のスロッシング評価システムにおけるモニタ表示の説明図である。
【図9】図1のスロッシング評価システムにおけるモニタ表示の説明図である。
【図10】図1のスロッシング評価システムにおけるスロッシング周期演算処理のフローチャートである。
【図11】図1のスロッシング評価システムにおけるスロッシング一次評価処理のフローチャートである。
【図12】図1のスロッシング評価システムにおけるスロッシング二次評価処理のフローチャートである。
【図13】図1のスロッシング評価システムにおけるスロッシング防止部の概要説明図である。
【符号の説明】
【0076】
1…スロッシング評価システム
10…制御部
12…地震発生情報取得部
14…液高情報入力部
16…地震計
18…データ入力部
20…モニタ
22…スピーカ
24…通信部
26…スロッシング防止部
41…タンク
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油タンクなどのスロッシングを評価するスロッシング評価システム、スロッシング評価プログラム及び記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、石油タンクなどのスロッシングを計測する装置として、例えば特開2000−9516号公報に記載されるように、液体を貯蔵したタンク内の液面の高さを計測しその液面レベル値を出力する液面計測器と、地震が発生したことを検知し地震検知信号を出力する地震検知器と、地震検知信号の出力タイミングに同期してその液面レベル値を記録保存する記録器と、記録保存された液面レベル値から地震時の液面変位を推定する解析器とを備えたものが知られている。この装置は、記録保存された液面レベル値に基づいて液面変位を推定することにより、地震発生時のスロッシング現象による貯蔵タンク内の液面の上昇を精度よく推定しようとするものである。
【特許文献1】特開2000−9516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような装置あっては、多数のタンクが設置されるタンク基地において適切なスロッシング対策が行えないという問題点がある。例えば、タンク基地に設置される多数のタンクの全てについて液面変位を推定するためには、全てのタンクに液面計測器を設置する必要がある。このため、液面変位を推定するのに多大なコストを要し、スロッシング推定が容易には行えない。また、石油タンク基地などにおいて、液面変位を精度よく推定できたとしても、地震波の到達前にスロッシングを推定しなければ、スロッシング対策を適切に行うことが困難である。
【0004】
そこで本発明は、適切なスロッシング対策が行えるスロッシング評価システム、スロッシング評価プログラム及び記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明に係るスロッシング評価システムは、液体を収容する複数のタンクについて地震によるスロッシングを評価するスロッシング評価システムであって、遠隔地で発生した地震の地震発生情報をリアルタイムで取得する地震情報取得手段と、前記タンクにおける地震による震動を検出する地震検出手段と、前記地震発生情報に基づいて速度応答スペクトルを算出し、その速度応答スペクトルを用いて前記複数のタンクについてそれぞれスロッシングによる液面の波高値を算出する第一評価手段と、前記地震検出手段の検出信号に基づいて速度応答スペクトルを算出し、その速度応答スペクトルを用いて前記複数のタンクについてそれぞれスロッシングによる液面の波高値を算出する第二評価手段と、前記第一評価手段により算出された波高値に関する情報を前記タンクの管理機関に送信すると共に、前記第二評価手段により算出された波高値が前記第一評価手段により算出された波高値と異なる場合に前記第二評価手段により算出された波高値に基づき前記波高値に関する情報を修正して前記タンクの管理機関に送信する送信手段とを備えて構成されている。
【0006】
また本発明に係るスロッシング評価プログラムは、複数のタンクにおける地震によるスロッシング評価処理をコンピュータに実行させるスロッシング評価プログラムであって、遠隔地で発生した地震におけるリアルタイムの地震発生情報に基づいて速度応答スペクトルを算出し、その速度応答スペクトルを用いて前記複数のタンクについてそれぞれスロッシングによる液面の波高値を算出する第一評価処理と、前記タンクの敷地内に設置される地震計の検出信号に基づいて速度応答スペクトルを算出し、その速度応答スペクトルを用いて前記複数のタンクについてそれぞれスロッシングによる液面の波高値を算出する第二評価処理と、前記第一評価処理により算出された波高値に関する情報を前記タンクの管理機関に送信すると共に、前記第二評価処理により算出された波高値が前記第一評価処理により算出された波高値と異なる場合に前記第二評価処理により算出された波高値に基づき前記波高値に関する情報を修正して前記タンクの管理機関に送信する送信処理とを前記コンピュータに実行させることを特徴とする。また本発明に係る記録媒体は、このスロッシング評価プログラムを記録したことを特徴とするものである。
【0007】
これらの発明によれば、リアルタイムの地震発生情報に基づいて速度応答スペクトルを算出しその速度応答スペクトルを用いてタンク内の液面の波高値を算出してスロッシング評価が行われる。このため、タンクに地震波が到達する前にスロッシング評価が行え、スロッシングに対する対策を事前に始動することができる。また、複数のタンクについて同時にスロッシングに関する評価を行うため、石油タンク基地のように多数のタンクが設置されている場合などタンクの状態を一括管理することができ、管理作業が効率よく行える。また、複数のタンクごとに地震計を設置することなく、スロッシングによるタンク内における波高値を算出することができ、低コストで評価システムを構築することができる。さらに、リアルタイムの地震発生情報に基づいてスロッシングについて一次評価するほか、現実の震動を検知して二次評価を行うことにより、一次評価の修正が可能であり、適切なスロッシングの対応が可能となる。
【0008】
また本発明に係るスロッシング評価システムは、前記タンクに設けられ、前記第一評価手段により前記波高値が所定値を超えると評価されたときに起動し、前記波高値が低くなるように前記タンクのスロッシング周期を変更させるスロッシング防止手段を備えたことを特徴とする。
【0009】
また本発明に係るスロッシング評価プログラムは、前記第一評価処理によって前記波高値が前記所定値を超えると評価されたときに、前記タンクのスロッシング周期を変更させるスロッシング防止手段に対して起動信号を送信してスロッシングを低減させるスロッシング防止処理を前記コンピュータに実行させることを特徴とする。また本発明に係る記録媒体は、このスロッシング評価プログラムを記録したことを特徴とするものである。
【0010】
これらの発明によれば、リアルタイムの地震発生情報に基づいてタンクの波高値を算出してスロッシング評価を行い、波高値が所定値を超えると評価されたときにスロッシング防止手段を起動して波高値が低くなるようにタンクのスロッシング周期を変えることができる。このため、地震波がタンクに到達する前に予めスロッシング周期を変更して、スロッシングによる液面が高くなることを防止することができる。
【0011】
また本発明に係るスロッシング評価システムは、前記送信手段が、前記波高値に関する情報として少なくともタンク波高値情報及び溢流タンク情報を送信することを特徴とする。
【0012】
また本発明に係るスロッシング評価プログラムは、前記送信処理が、前記波高値に関する情報として少なくともタンク波高値情報及び溢流タンク情報を送信することを特徴とする。また本発明に係る記録媒体は、このスロッシング評価プログラムを記録したことを特徴とするものである。
【0013】
これらの発明によれば、タンク波高値情報及び溢流タンク情報を管理機関に送信することにより、管理機関側ではタンクのスロッシング対策を講ずるべき順位を容易に決定でき、緊急事態の際にスロッシングに対する対策措置を効率よく効果的に実行できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、地震発生の際に適切なスロッシング対策を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は本発明の実施形態に係るスロッシング評価システムの構成概要図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係るスロッシング評価システム1は、スロッシング評価対象となる複数のタンクのスロッシング評価を行うシステムであり、制御部10、地震発生情報取得部12、液高情報入力部14、地震計16、データ入力部18、モニタ20、スピーカ22、通信部24及びスロッシング防止部26を備えて構成されている。スロッシング評価対象となる複数のタンクは、例えば石油タンク基地を構成するものであり、タンク内に石油などの液体が収容されている。
【0018】
制御部10は、システム全体の制御処理を行うものであり、例えばCPU、ROM、RAMを含むコンピュータを主体として構成されている。地震発生情報取得部12は、遠隔地で発生した地震の地震発生情報をリアルタイムで取得する地震情報取得手段であり、地震発生情報を制御部10に入力する。地震発生情報は、少なくとも震源地及び地震規模(マグニチュード)を含む情報であり、遅くとも地震の主要動(P波)がタンクに到達する前に制御部10に入力されることが望ましい。
【0019】
制御部10は、地震発生情報に基づいて速度応答スペクトルを算出し、その速度応答スペクトルを用いて複数のタンクについてそれぞれスロッシングによる液面の波高値を算出する第一評価手段として機能するものである。また、地震計16の検出信号に基づいて速度応答スペクトルを算出し、その速度応答スペクトルを用いて前記複数のタンクについてそれぞれスロッシングによる液面の波高値を算出する第二評価手段としても機能する。
【0020】
地震発生情報取得部12としては、例えば、インターネット回線や専用回線などを通じてリアルタイム地震発生情報を取得するものが用いられる。ここでいうリアルタイムとは、地震発生と同時のほか、地震発生からほぼ同時を含むものであり、例えば地震発生から数十秒経過以内の時間も含むものである。
【0021】
液高情報入力部14は、各タンクに収容される液体の液面高さ情報を制御部10に入力するものである。この液高情報入力部14としては、タンクに設置される液高検知センサの出力を取得して制御部10に液面高さ情報を入力するものでもよいし、タンクへの液体の注入量及び排出量から算出される液面高さ情報を入力するものでもよい。また、液高情報入力部14としては、インターネット回線や専用回線などを通じて液面高さ情報を制御部10に入力するものでもよいし、キーボードやマウスなどの操作により制御部10に液面高さ情報を入力するものであってもよい。また、インターネット回線や専用回線などを通じて液面高さ情報を制御部10に入力する場合、サーバを用意し、そのサーバに液面高さ情報を蓄積しておき、サーバから制御部10に液面高さ情報を入力してもよい。
【0022】
地震計16は、タンクにおける地震による震動を検出する地震検出手段であり、タンクが設置される敷地内に設けられる。地震計16により検出された検出信号は、制御部10に入力される。データ入力部18は、制御部10に各種の情報データやスロッシング評価処理における設定変更情報などを入力するものである。モニタ20は、スロッシング評価に関する画像、データなどを表示する出力手段である。スピーカ22は、スロッシング評価に関する音声情報を出力する出力手段である。
【0023】
通信部24は、システム外部との通信を行う通信手段であり、地震発生時おいてスロッシング評価に関するスロッシング評価情報をタンクの管理機関に送信する送信手段としても機能する。
【0024】
スロッシング防止部26は、各タンクに設けられ、スロッシングによるタンク内の波高値を低く抑えるようにタンクのスロッシング周期を変更させるスロッシング防止手段である。具体的な構造については、後述する。
【0025】
制御部10、データ入力部18、モニタ20及びスピーカ22については、パーソナルコンピュータにより構成することができる。制御部10としてパソコン本体部を用い、データ入力部18としてキーボードやマウスを用い、モニタ20及びスピーカ22としてパソコンに付属のものをそのまま用いればよい。この場合、制御部10には、スロッシング評価プログラムを読み込ませることが必要となる。例えば、スロッシング評価プログラムを記録したCD−ROMなどの記録媒体を用意し、その記録媒体をパソコン本体などにセットし、コンピュータシステムにスロッシング評価プログラムを導入すればよい。また、スロッシング評価プログラムのコンピュータシステムへの導入は、記録媒体を介さずに、インターネットなどの通信によって行ってもよい。
【0026】
次に、本実施形態に係るスロッシング評価プログラム及び記録媒体について説明する。
【0027】
図2は、スロッシング評価プログラム32が記録されている記録媒体30の構成を示した図である。記録媒体30としては、例えば磁気ディスク、光ディスク、CD−ROM、コンピュータに内蔵されたメモリなどスロッシング評価プログラムを記録できそのスロッシング評価プログラムをコンピュータが読み取り可能としたものであれば、いずれのものであってもよい。
【0028】
記録媒体30は、プログラムを記録するプログラム領域31と、データを記録するデータ領域32を備えている。データ領域32には、過去の地震データなどを収録した地震記録データベース33が格納されている。
【0029】
プログラム領域31には、スロッシング評価プログラム34が記録されている。スロッシング評価プログラム34は、処理を統括するメインモジュール35、地震情報に基づいてスロッシング評価を行うためのスロッシング評価モジュール36及びスロッシング評価結果に基づいてスロッシング結果情報などを出力する出力モジュール37を備えている。
【0030】
次に、本実施形態に係るスロッシング評価プログラムの実行によるスロッシング評価システム1の動作について説明する。
【0031】
図3〜9は、スロッシング評価システム1におけるモニタ表示の説明図である。図10は、スロッシング評価システム1におけるスロッシング周期の演算処理を示すフローチャートである。図11は、スロッシング評価システム1における地震発生時の一次評価処理を示すフローチャートである。図12は、スロッシング評価システム1における地震発生時の二次評価処理を示すフローチャートである。図10〜12の各制御ルーチンは、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0032】
図3に示すように、スロッシング評価システム1を起動すると、モニタ20には、タンク画像40と各種の操作ボタン50が表示される。タンク画像40は、スロッシング評価対象となる複数のタンク41を示す画像である。操作ボタン50は、例えば、終了ボタン51、最大値表示ボタン52、波形表示ボタン53、速度応答スペクトル表示ボタン54、スロッシング周期表示ボタン55、波高値表示ボタン56及び過去地震データ選択ボタン57により構成される。
【0033】
終了ボタン51をクリックすることにより、スロッシング評価プログラムを終了することができる。過去地震データ選択ボタン57により過去の地震データを一つ選択し、最大値表示ボタン52をクリックすると、図4に示すように、選択した地震における地震データ42が表示される。例えば、地震データ42として、東西方向、南北方向及び鉛直方向における加速度の最大値、並びに震度が表示される。
【0034】
また、波形表示ボタン53をクリックすることにより、図5に示すように、選択した地震における波形データ43が表示される。波形データ43としては、例えば、東西方向、南北方向及び鉛直方向における加速度の時間変化グラフが表示される。このグラフの縦軸はガル(Gal)、横軸は時間である。
【0035】
また、速度応答スペクトル表示ボタン54をクリックすることにより、図6に示すように、選択した地震における速度応答スペクトル44が表示される。速度応答スペクトルデータ44としては、例えば、東西方向、南北方向及びその合成状態の速度応答スペクトルが表示される。この速度応答スペクトルのグラフにおける縦軸は応答速度であり、横軸は周期である。
【0036】
また、スロッシング周期表示ボタン55をクリックすることにより、図7に示すように、選択した地震における各タンク41のスロッシング周期45が表示される。スロッシング周期45は、各タンク41上に表示することが好ましい。この場合、視覚的に各タンク41のスロッシング周期を一目で把握することができる。
【0037】
また、波高値表示ボタン56をクリックすることにより、図8に示すように、選択した地震における各タンク41の波高値46が表示される。ここで、波高値46は、静止液面からの水位上昇量を意味する。この波高値46は、各タンク41上に表示することが好ましい。この場合、視覚的に各タンク41の波高値46を一目で把握することができる。また、所定値を超える波高値46については、所定値を超えないものと異なる色彩で表示することが好ましい。
【0038】
また、タンク41の一つをクリックすることにより、図9に示すように、そのタンク41の指定表示47及びタンク情報48が表示される。指定表示47は、タンク41上に示されるマークであり、例えば色彩を付したマークが用いられる。タンク情報48は、タンク41の内径データ、現在の液面高さデータ及び一次固有周期データ(スロッシング周期データ)により構成される。
【0039】
次に、図10を参照して、スロッシング評価システム1におけるスロッシング周期の演算処理を説明する。
【0040】
図10のS10に示すように、まずタンク液面高さの読み込みが行われる。タンク液面高さの読み込みは、液面情報入力部14から入力される液面情報データに基づいて行われ、各タンク41についてそれぞれ行われる。
【0041】
そして、S12に移行し、スロッシング周期の演算が行われる。スロッシング周期の演算は、タンク41に収容する液体のスロッシング周期を演算する処理であり、タンク41の内径と液面高さに基づいて行われる。例えば、次の式(1)を用いて、スロッシング周期Tsが算出される。
【0042】
Ts=2π・((D/3.68・g)・coth(3.68・H/D))1/2 …(1)
この式(1)において、Dはタンク内径、Hはタンク液面高さ、gは重力加速度である。このスロッシング周期の演算は、各タンク41についてそれぞれ行われる。
【0043】
このスロッシング周期演算処理によれば、タンク内径D及びタンク41の液面高さHによりタンク41ごとのスロッシング周期を算出することができる。特に、タンク41の液体貯蔵量に応じてタンク液面高さHの情報を随時更新することにより、タンク41のスロッシング周期を正確に取得することができる。
【0044】
なお、このスロッシング周期の演算処理は、所定の時間間隔又は所定の日数間隔で行ってもよいし、後述する地震発生時の一次評価処理又は二次評価処理の際に行ってもよい。
【0045】
次に、図11を参照して、スロッシング評価システム1における地震発生時の一次評価処理について説明する。
【0046】
図11のS20に示すように、まず、緊急地震情報が入力されたか否かが判断される。緊急地震情報は、リアルタイム地震発生情報であり、地震発生情報部12を通じて制御部10に入力される。緊急地震情報が入力されていないと判断されたときには、制御処理を終了する。一方、緊急地震情報が入力されたと判断されたときには、速度応答スペクトルの算出処理が行われる(S22)。
【0047】
速度応答スペクトルの算出処理は、発生した地震によりタンク41に加わる震動の速度応答スペクトルを予測演算する処理である。この速度応答スペクトルの算出処理として、まず、緊急地震情報に含まれる震源地データと地震規模データに基づいて震動波形が予測演算される。震動波形は、例えば図5の波形データ43に示すように、震動による加速度の時間変化として予測される。そして、予測演算された震動波形に基づいて速度応答スペクトルが算出される。例えば、震動波形を1自由度振動系応答解析することにより、速度応答スペクトルが算出される。速度応答スペクトルは、例えば図6の速度応答スペクトルデータ44に示すように、横軸を周期、縦軸を応答速度としたデータとして算出される。
【0048】
そして、S24に移行し、スロッシング周期の演算処理が行われる。スロッシング周期の演算は、タンク41に収容する液体のスロッシング周期を演算する処理であり、タンク41の内径と液面高さに基づいて行われる。例えば、上述した図10のS12と同様に行われ、各タンク41についてそれぞれ行われる。なお、このS24では、図10のS12に行われたスロッシング周期をそのまま読み込んで用いてもよい。
【0049】
そして、S26に移行し、タンク41における液面の波高値の演算処理が行われる。この波高値演算処理は、地震震動によるタンク41の液面の最大波高値を予測演算する処理である。この波高値は、タンク内径、地震震動の速度応答スペクトル及びタンク41のスロッシング周期に基づいて算出される。例えば、次の式(2)を用いて、液面の波高値Xが算出される。
【0050】
X=0.268・D・Sv・(1/Ts) …(2)
この式(2)において、Dはタンク内径、Svは速度応答スペクトル、Tsはスロッシング周期である。この波高値の演算は、各タンク41についてそれぞれ行われる。
【0051】
そして、S28に移行し、スロッシング情報出力処理が行われる。スロッシング情報出力処理は、スロッシングによる波高値に関する情報をタンク41の管理機関に送信出力する処理である。このスロッシング情報出力処理として、例えば電子メールにより波高値に関するデータの転送が行われる。具体的には、管理担当者の携帯電話に向けて、地震発生の警告情報、最大波高値情報、溢流タンクの情報の全部又は一部が送信される。また、関係機関のパソコンに向けて、地震発生の警告情報、地震規模の表示情報、最大波高値情報、速度応答スペクトル情報、溢流タンクの情報の全部又は一部が送信される。
【0052】
そして、S30に移行し、演算された波高値が所定値より大きいか否かが判断される。所定値は、制御部10に予め設定される設定値であり、例えばタンク41において溢流のおそれがあるか否かを考慮して設定される。演算された波高値が所定値より大きくないと判断されたときには、制御処理を終了する。
【0053】
一方、演算された波高値が所定値より大きいと判断されたときには、スロッシング防止処理が行われる(S32)。スロッシング防止処理は、タンク41に設置されるスロッシング防止部26を起動させて、タンク41のスロッシング周期を波高値が低くなるように変更させる処理である。このスロッシング防止処理は、S30にて波高値が所定値を超えると判断されたタンク41のみに対して行うことが望ましい。このスロッシング防止処理により、タンク41のスロッシング周期が変更されて、スロッシングによる波高値が低く抑えられる。
【0054】
このように、リアルタイム地震発生情報に基づいてスロッシングに関する一次評価処理を行うことにより、迅速にタンク41の液面の波高値の状態を知ることができ、スロッシングに対する迅速な対応が可能となる。特に、100〜300km離れた遠隔地で発生した地震について一次評価処理を行う場合、地震の主要動(P波)がタンク41に到達する前にタンク41の波高値、溢流の有無を知ることができ、タンク41の作業員の避難又は消化体制の準備などスロッシングに対して適切に対応することができる。
【0055】
次に、図12を参照して、スロッシング評価システム1における地震発生時の二次評価処理について説明する。
【0056】
図12のS40に示すように、まず、地震波形の読み込みが行われる。この地震波形の読み込みは、地震計16の検出信号に基づいて行われる。そして、S42に移行し、地震波形値が所定の加速度値以上であるか否かが判断される。地震波形値が所定の加速度値以上でないと判断されたときには、制御処理を終了する。
【0057】
一方、地震波形値が所定の加速度値以上であると判断されたときには、速度応答スペクトルの算出処理が行われる(S44)。速度応答スペクトルの算出処理は、発生した地震によりタンク41に加わる震動の速度応答スペクトルを演算する処理である。例えば、震動波形を1自由度振動系応答解析することにより、速度応答スペクトルが算出される。速度応答スペクトルは、例えば図6の速度応答スペクトルデータ44に示すように、横軸を周期、縦軸を応答速度としたデータとして算出される。
【0058】
そして、S46に移行し、スロッシング周期の演算処理が行われる。スロッシング周期の演算は、タンク41に収容する液体のスロッシング周期を演算する処理であり、タンク41の内径と液面高さに基づいて行われる。例えば、上述した図10のS12と同様に行われ、各タンク41についてそれぞれ行われる。なお、このS24では、図10のS12に行われたスロッシング周期をそのまま読み込んで用いてもよい。
【0059】
そして、S48に移行し、タンク41における液面の波高値の演算処理が行われる。この波高値演算処理は、地震震動によるタンク41の液面の最大波高値を予測演算する処理である。この波高値演算処理は、図11のS26と同様に行われる。
【0060】
そして、S50に移行し、スロッシング情報の変更が必要か否かが判断される。例えば、S48にて算出された波高値が図11のS26にて算出された一次評価の波高値に対し所定値以上異なる場合にスロッシング情報の変更が必要であると判断され、S48にて算出された波高値が図11のS26にて算出された一次評価の波高値に対し所定値以上異なっていない場合にスロッシング情報の変更が必要でないと判断される。このS50にてスロッシング情報の変更が必要でないと判断されたときには、制御処理を終了する。
【0061】
一方、スロッシング情報の変更が必要であると判断されたときには、スロッシング情報出力処理が行われる(S52)。このスロッシング情報出力処理は、一次評価におけるスロッシングによる波高値に関する情報を修正して、二次評価におけるスロッシングによる波高値に関する情報をタンク41の管理機関に送信出力する処理である。このスロッシング情報出力処理として、例えば電子メールにより波高値に関するデータの転送が行われる。具体的には、管理担当者の携帯電話に向けて、地震発生の警告情報、最大波高値情報、溢流タンクの情報の全部又は一部が送信される。また、関係機関のパソコンに向けて、地震発生の警告情報、地震規模の表示情報、最大波高値情報、速度応答スペクトル情報、溢流タンクの情報の全部又は一部が送信される。
【0062】
このとき、溢流危険度の高いタンクをランク付けして溢流タンクの情報を送信することが好ましい。この場合、消化体制などの災害対策を準備する上で有効である。
【0063】
そして、S54に移行し、演算された波高値が所定値より大きいか否かが判断される。所定値は、制御部10に予め設定される設定値であり、例えばタンク41において溢流のおそれがあるか否かを考慮して設定される。具体的には、所定値として、静止液面からタンク41の天井面までの距離に対応する値が設定される。演算された波高値が所定値より大きくないと判断されたときには、制御処理を終了する。
【0064】
一方、演算された波高値が所定値より大きいと判断されたときには、スロッシング防止処理が行われる(S56)。スロッシング防止処理は、タンク41に設置されるスロッシング防止部26を起動させて、タンク41のスロッシング周期を波高値が低くなるように変更させる処理である。このスロッシング防止処理は、S30にて波高値が所定値を超えると判断されたタンク41のみに対して行うことが望ましい。このスロッシング防止処理により、タンク41のスロッシング周期が変更されて、スロッシングによる波高値が低く抑えられる。
【0065】
ここで、スロッシング防止部26の一例を示す。図13に示すように、例えば、スロッシング防止部26として、タンク41の内径を変えることでスロッシング周期を変更するものが用いられる。このスロッシング防止部26は、下部を回転可能に取り付けられたパイプ26aにシート材26bを付して構成されている。地震発生前では、パイプ26aは、内壁に沿って直立した状態となっており、シート材26bは畳まれた状態となっている。このとき、パイプ26aは、その上部に設けられるリリース部26cにより支持されて倒れない状態に維持されている。
【0066】
そして、地震が発生し波高値が所定値を超えると判断されたときには、リリース部26cがパイプ26aを解放し、パイプ26aがタンク底面に向けて倒れていく。これにより、シート材26bが扇状に展開される。このシート材26bの展開により、タンク41の内部が仕切られて、タンク内径が変更された状態となる。従って、スロッシング周期が変化し、地震震動によるスロッシングが低減され、液面41aの波高値が低く抑えられる。
【0067】
なお、スロッシング防止部26としては、図13のようなタイプのものに限られるものでなく、タンク41のスロッシング周期を変更できるものであれば、いずれのタイプのものであってもよい。
【0068】
このように、現実の地震波形に基づいてスロッシングに関する二次評価処理を行うことにより、より正確にタンク41の液面の波高値の状態を知ることができる。このため、一次評価による波高値の推定ズレを修正し、スロッシングに対する適切な対応が可能となる。
【0069】
以上のように、本実施形態に係るスロッシング評価システム、スロッシング評価プログラム及び記録媒体によれば、リアルタイムの地震発生情報に基づいて速度応答スペクトルを算出し、その速度応答スペクトルを用いてタンク41内の液面の波高値を算出してスロッシング一次評価が行われる。このため、タンク41に地震波が到達する前にスロッシング評価が行え、スロッシングに対する対策を事前に始動することができる。
【0070】
また、複数のタンク41について同時にスロッシングに関する評価を行うため、石油タンク基地のように多数のタンク41が設置されている場合などタンクの状態を一括管理することができ、管理作業が効率よく行える。
【0071】
また、複数のタンク41ごとに地震計を設置することなく、スロッシングによるタンク41内における波高値を算出することができ、低コストで評価システムを構築することができる。
【0072】
また、リアルタイムの地震発生情報に基づいてスロッシングについて一次評価するほか、現実の震動を検知して二次評価を行うことにより、一次評価の修正が可能であり、適切なスロッシングの対応が可能となる。
【0073】
また、リアルタイムの地震発生情報に基づいてタンク41の波高値を算出してスロッシング評価を行い、波高値が所定値を超えると評価されたときにスロッシング防止部26を起動して波高値が低くなるようにタンク41のスロッシング周期を変えることができる。このため、地震波がタンク41に到達する前に予めスロッシング周期を変更して、スロッシングによる液面が高くなることを防止することができる。
【0074】
また、地震発生時において、タンク41の波高値が所定値を超えると評価されたときに、タンク波高値情報及び溢流タンク情報を管理機関に送信することにより、管理機関側ではタンクのスロッシング対策を講ずるべき順位を容易に決定でき、緊急事態の際にスロッシングに対する対策措置を効率よく効果的に実行できる。例えば、タンク41の波高値情報を送信し、溢流タンク情報を送信することにより、どのタンク41を優先して消化体制を採ればよいかの判断が容易となる。また、タンク41の作業員に対し安全な避難経路を容易に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施形態に係るスロッシング評価システムの構成概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係るスロッシング評価プログラムを記録した記録媒体の構成概要図である。
【図3】図1のスロッシング評価システムにおけるモニタ表示の説明図である。
【図4】図1のスロッシング評価システムにおけるモニタ表示の説明図である。
【図5】図1のスロッシング評価システムにおけるモニタ表示の説明図である。
【図6】図1のスロッシング評価システムにおけるモニタ表示の説明図である。
【図7】図1のスロッシング評価システムにおけるモニタ表示の説明図である。
【図8】図1のスロッシング評価システムにおけるモニタ表示の説明図である。
【図9】図1のスロッシング評価システムにおけるモニタ表示の説明図である。
【図10】図1のスロッシング評価システムにおけるスロッシング周期演算処理のフローチャートである。
【図11】図1のスロッシング評価システムにおけるスロッシング一次評価処理のフローチャートである。
【図12】図1のスロッシング評価システムにおけるスロッシング二次評価処理のフローチャートである。
【図13】図1のスロッシング評価システムにおけるスロッシング防止部の概要説明図である。
【符号の説明】
【0076】
1…スロッシング評価システム
10…制御部
12…地震発生情報取得部
14…液高情報入力部
16…地震計
18…データ入力部
20…モニタ
22…スピーカ
24…通信部
26…スロッシング防止部
41…タンク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する複数のタンクについて地震によるスロッシングを評価するスロッシング評価システムであって、
遠隔地で発生した地震の地震発生情報をリアルタイムで取得する地震情報取得手段と、
前記タンクにおける地震による震動を検出する地震検出手段と、
前記地震発生情報に基づいて速度応答スペクトルを算出し、その速度応答スペクトルを用いて前記複数のタンクについてそれぞれスロッシングによる液面の波高値を算出する第一評価手段と、
前記地震検出手段の検出信号に基づいて速度応答スペクトルを算出し、その速度応答スペクトルを用いて前記複数のタンクについてそれぞれスロッシングによる液面の波高値を算出する第二評価手段と、
前記第一評価手段により算出された波高値に関する情報を前記タンクの管理機関に送信すると共に、前記第二評価手段により算出された波高値が前記第一評価手段により算出された波高値と異なる場合に前記第二評価手段により算出された波高値に基づき前記波高値に関する情報を修正して前記タンクの管理機関に送信する送信手段と、
を備えたスロッシング評価システム。
【請求項2】
前記タンクに設けられ、前記第一評価手段により前記波高値が所定値を超えると評価されたときに起動し、前記波高値が低くなるように前記タンクのスロッシング周期を変更させるスロッシング防止手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のスロッシング評価システム。
【請求項3】
前記送信手段は、前記波高値に関する情報として少なくともタンク波高値情報及び溢流タンク情報を送信することを特徴とする請求項1又は2に記載のスロッシング評価システム。
【請求項4】
複数のタンクにおける地震によるスロッシング評価処理をコンピュータに実行させるスロッシング評価プログラムであって、
遠隔地で発生した地震におけるリアルタイムの地震発生情報に基づいて速度応答スペクトルを算出し、その速度応答スペクトルを用いて前記複数のタンクについてそれぞれスロッシングによる液面の波高値を算出する第一評価処理と、
前記タンクの敷地内に設置される地震計の検出信号に基づいて速度応答スペクトルを算出し、その速度応答スペクトルを用いて前記複数のタンクについてそれぞれスロッシングによる液面の波高値を算出する第二評価処理と、
前記第一評価処理により算出された波高値に関する情報を前記タンクの管理機関に送信すると共に、前記第二評価処理により算出された波高値が前記第一評価処理により算出された波高値と異なる場合に前記第二評価処理により算出された波高値に基づき前記波高値に関する情報を修正して前記タンクの管理機関に送信する送信処理と、
を前記コンピュータに実行させることを特徴とするスロッシング評価プログラム。
【請求項5】
前記第一評価処理によって前記波高値が前記所定値を超えると評価されたときに、前記タンクのスロッシング周期を変更させるスロッシング防止手段に対して起動信号を送信してスロッシングを低減させるスロッシング防止処理を前記コンピュータに実行させることを特徴とする請求項4に記載のスロッシング評価プログラム。
【請求項6】
前記送信処理は、前記波高値に関する情報として少なくともタンク波高値情報及び溢流タンク情報を送信することを特徴とする請求項5又は6に記載のスロッシング評価プログラム。
【請求項7】
請求項4〜6に記載のスロッシング評価プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項1】
液体を収容する複数のタンクについて地震によるスロッシングを評価するスロッシング評価システムであって、
遠隔地で発生した地震の地震発生情報をリアルタイムで取得する地震情報取得手段と、
前記タンクにおける地震による震動を検出する地震検出手段と、
前記地震発生情報に基づいて速度応答スペクトルを算出し、その速度応答スペクトルを用いて前記複数のタンクについてそれぞれスロッシングによる液面の波高値を算出する第一評価手段と、
前記地震検出手段の検出信号に基づいて速度応答スペクトルを算出し、その速度応答スペクトルを用いて前記複数のタンクについてそれぞれスロッシングによる液面の波高値を算出する第二評価手段と、
前記第一評価手段により算出された波高値に関する情報を前記タンクの管理機関に送信すると共に、前記第二評価手段により算出された波高値が前記第一評価手段により算出された波高値と異なる場合に前記第二評価手段により算出された波高値に基づき前記波高値に関する情報を修正して前記タンクの管理機関に送信する送信手段と、
を備えたスロッシング評価システム。
【請求項2】
前記タンクに設けられ、前記第一評価手段により前記波高値が所定値を超えると評価されたときに起動し、前記波高値が低くなるように前記タンクのスロッシング周期を変更させるスロッシング防止手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のスロッシング評価システム。
【請求項3】
前記送信手段は、前記波高値に関する情報として少なくともタンク波高値情報及び溢流タンク情報を送信することを特徴とする請求項1又は2に記載のスロッシング評価システム。
【請求項4】
複数のタンクにおける地震によるスロッシング評価処理をコンピュータに実行させるスロッシング評価プログラムであって、
遠隔地で発生した地震におけるリアルタイムの地震発生情報に基づいて速度応答スペクトルを算出し、その速度応答スペクトルを用いて前記複数のタンクについてそれぞれスロッシングによる液面の波高値を算出する第一評価処理と、
前記タンクの敷地内に設置される地震計の検出信号に基づいて速度応答スペクトルを算出し、その速度応答スペクトルを用いて前記複数のタンクについてそれぞれスロッシングによる液面の波高値を算出する第二評価処理と、
前記第一評価処理により算出された波高値に関する情報を前記タンクの管理機関に送信すると共に、前記第二評価処理により算出された波高値が前記第一評価処理により算出された波高値と異なる場合に前記第二評価処理により算出された波高値に基づき前記波高値に関する情報を修正して前記タンクの管理機関に送信する送信処理と、
を前記コンピュータに実行させることを特徴とするスロッシング評価プログラム。
【請求項5】
前記第一評価処理によって前記波高値が前記所定値を超えると評価されたときに、前記タンクのスロッシング周期を変更させるスロッシング防止手段に対して起動信号を送信してスロッシングを低減させるスロッシング防止処理を前記コンピュータに実行させることを特徴とする請求項4に記載のスロッシング評価プログラム。
【請求項6】
前記送信処理は、前記波高値に関する情報として少なくともタンク波高値情報及び溢流タンク情報を送信することを特徴とする請求項5又は6に記載のスロッシング評価プログラム。
【請求項7】
請求項4〜6に記載のスロッシング評価プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−29925(P2006−29925A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207793(P2004−207793)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(504271261)エイシンシステム株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(504271261)エイシンシステム株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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