説明

スロープ開閉補助装置

【課題】室内の有効スペースを広げつつ、外観品質を高めることができるスロープ開閉補助装置を提供する。
【解決手段】ガススプリング42の伸張方向に働く伸張力F1を、付勢機構91を構成する補助リンク53によってスロープ24の引き上げ方向81に作用させることができる。このため、スロープ24引上時には、その引き上げを補助する一方、スロープ24を回動して車室外Oへ延出する際には、スロープ24の荷重Wを軽減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロープの開閉操作を補助するスロープ開閉補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図8の(a)に示すように、後部室801にスロープ802が設けられた車両803が知られている。
【0003】
このスロープ802は、基端部が車体811に回動自在に支持されており、前記後部室801のフロア面812に対して起立した格納状態813と、傾倒して車室外Oに延出した展開状態814とを形成できるように構成されている。
【0004】
これにより、この展開状態814において、前記フロア面812と路面との間に傾斜面を形成し、前記後部室801への車椅子の乗降を容易に行えるように構成されている。
【0005】
前記スロープ802は、重量があるため、補助装置無しで開閉するには力を要する。このため、前記スロープ802の開閉操作を補助する為に、スロープ開閉補助装置821が用いられている。
【0006】
このスロープ開閉補助装置821としては、前記フロア面812に設けられたマウントブラケット831と、該マウントブラケット831と前記スロープ802との間に張設された引っ張りスプリング832とによって構成されている。
【0007】
これにより、前記スロープ802を起立して格納する際には、前記引っ張りスプリング832によるスプリング力で前記スロープ802の引き上げを補助するとともに、スロープ展開時には、当該スロープ802が急降下しないように補助できるように構成されている。
【0008】
このようなスロープ開閉補助装置821にあっては、レバー比を稼ぐために、大きなマウントブラケット831をフロア面812に設けなければならなかった。また、高い補助力を得る為に、線径やコイル径の大きな引っ張りスプリング832を用いなければならず、引っ張りスプリング832が大型化し邪魔になるとともに、見栄えの低下を招いていた。
【0009】
そこで、本願出願によって、図8の(b)に示すようなスロープ開閉補助装置901を案出するに至った(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
簡単に説明すると、後部室911のフロア面912にマウントブラケット913を立設するとともに、該マウントブラケット913の基端部にステイ914を回動自在に支持する。これにより、このステイ914が車両前方F側に傾倒した状態と、前記マウントブラケット913に沿って起立した状態とを形成可能に構成する。
【0011】
そして、前記ステイ913の自由端部と前記スロープ921との間に引っ張りスプリング922を張設し、前記スロープ921を傾倒して展開する際に、傾倒した前記ステイ914が起立した時点から前記引っ張りスプリング922の付勢力を作用させ、前記前記スロープ921の傾倒を補助する一方、起立して格納する際には、起立した前記ステイ914が傾倒するまで前記引っ張りスプリング922の付勢力を作用させることで、前記スロープ921の引き上げを補助できるように構成されている。
【0012】
これにより、前記引っ張りスプリング922の小型化を図りつつ、適切な箇所でのスロープ操作を補助できるように構成されている。
【特許文献1】特願2007−068457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、このようなスロープ開閉補助装置901にあっては、可倒式のステイ914を用いる都合上、当該ステイ914を傾倒する為のスペースを後部室911内に確保しなければならなかった。
【0014】
また、前記格納時には、前記引っ張りスプリング922が後部室911内に入り込むため、このスペースも確保しなければならず、室内空間の有効利用の阻害要因となっていた。
【0015】
そして、前記引っ張りスプリング922は短くなるものの、当該引っ張りスプリング922が後部室911に延在するため、見栄えが悪いという問題も残存する。
【0016】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、室内の有効スペースを広げつつ、外観品質を高めることができるスロープ開閉補助装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するために本発明の請求項1のスロープ開閉補助装置にあっては、車体に支持されたスロープを起立した状態と車室外へ延出するように傾倒した状態との間で回動操作する際に当該スロープの回動操作を補助するスロープ開閉補助装置において、シリンダから延出したロッドが突出方向へ付勢された付勢部材を備え、該付勢部材の伸張方向に働く伸張力を前記スロープの引き上げ方向に作用させる付勢機構を備えている。
【0018】
すなわち、このスロープ開閉補助装置では、シリンダから延出したロッドが突出方向へ付勢された付勢部材を備えており、この付勢部材の伸張方向に働く伸張力を、付勢機構によって前記スロープの引き上げ方向に作用させることができる。
【0019】
このため、前記スロープを引き上げて回動する際には、その引き上げが補助され、前記スロープを回動して車室外へ延出する際には、前記スロープの荷重が軽減される。
【0020】
このとき、スロープ操作時の補助力は、前記シリンダからのロッドの突出量が変化する前記付勢部材によって付与されており、引っ張りスプリングを用いること無く、前記スロープ操作を補助することができる。
【0021】
また、車室内に大型のマウントブラケットを設けるとともに該マウントブラケットと前記スロープとの間に大型の引っ張りスプリングを設けたり、車室内に可倒式のステイを設けるとともに該ステイと前記スロープとの間に引っ張りスプリングを設ける従来と比較して、車室内での構成が簡素化される。
【0022】
また、請求項2のスロープ開閉補助装置においては、前記付勢機構は、前記付勢部材と、該付勢部材からの前記伸張力を伝達するリンクとを備え、該リンクに加えられた前記伸張力を前記引き上げ方向の付勢力として伝達する。
【0023】
すなわち、前記付勢部材からの伸張力は、リンクに加えられ、該リンクに加えられた前記伸張力は、前記引き上げ方向の付勢力として伝達される。
【0024】
さらに、請求項3のスロープ開閉補助装置では、前記付勢部材の一端部を前記車体に支持するとともに、当該付勢部材の他端部を前記リンクを介して前記スロープに支持し、前記付勢部材の前記伸張力が前記リンクを介して前記引き上げ方向に作用するように前記スロープへの前記リンクの支持位置を前記スロープの回転中心より自由端部側に設定した。
【0025】
すなわち、前記付勢部材は、その一端部が前記車体に支持されており、当該付勢部材の他端部は、前記リンクを介して前記スロープに支持されている。そして、前記付勢部材の前記伸張力が前記リンクを介して前記引き上げ方向に作用するように、前記スロープへの前記リンクの支持位置が前記スロープの回転中心より自由端部側に設定されている。
【0026】
このため、前記付勢部材が伸張する際には、その伸張力が前記リンクを介して、前記スロープの回転中心より自由端部側に伝達され、このリンクから伝達される力によって前記スロープには、前記引き上げ力が付与される。
【0027】
加えて、請求項4のスロープ開閉補助装置にあっては、前記付勢部材の一端部を前記スロープの裏面に支持し、当該付勢部材の他端部を前記スロープの裏面に支持されたリンクに支持する一方、該リンクの自由端部側の部位と前記車体との間にワイヤを延設し、前記付勢部材からの前記伸張力で前記リンクに回転力を付与した際に前記ワイヤに生ずる張力を前記引き上げ方向に作用させて前記付勢機構を構成した。
【0028】
すなわち、前記付勢部材は、その一端部が前記スロープの裏面に支持されており、当該付勢部材の他端部は、前記スロープの裏面に支持されたリンクに支持されている。そして、このリンクの自由端部側の部位と前記車体との間には、ワイヤが延設されており、前記付勢部材からの前記伸張力で前記リンクに回転力を付与した状態において、前記ワイヤに生ずる張力は、前記引き上げ方向に作用する。
【0029】
このため、前記付勢部材が伸張する際には、その伸張力が前記リンクを介して、前記ワイヤに伝達され、当該ワイヤに生ずる張力が、前記スロープを引き上げる引き上げ力として作用する。
【0030】
また、請求項5のスロープ開閉補助装置においては、前記付勢部材をガススプリングで構成した。
【0031】
これにより、前記シリンダから延出したロッドが突出方向へ付勢された前記付勢部材は、一般的に車両のバックドア等で使用されるガススプリングで構成される。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように本発明の請求項1のスロープ開閉補助装置にあっては、シリンダからのロッドの突出量が変化する付勢部材を用いることによって、引っ張りスプリングを用いること無く、スロープ操作時の補助力を付与することができ、スロープ操作を補助することができる。
【0033】
このため、車室内に大型のマウントブラケットを設け、該マウントブラケットと前記スロープとの間に大型の引っ張りスプリングを設けたり、車室内に可倒式のステイを設け、該ステイと前記スロープとの間に引っ張りスプリングを設ける従来と比較して、車室内での構成を簡素化することができる。
【0034】
これにより、可倒式のステイを用いる都合上、ステイを傾倒する為のスペースを車室内に確保したり、大型の引っ張りスプリングが入り込む為のスペースを車室内に確保しなければならなかった従来と比較して、有効スペースを広げることができ、車室内空間を有効利用することができる。
【0035】
そして、前記引っ張りスプリングが室内に延在する従来と比較して、外観品質を高めることもできる。
【0036】
また、請求項2のスロープ開閉補助装置においては、前記付勢部材からの伸張力をリンクに加えるとともに、該リンクに加えられた前記伸張力を、前記引き上げ方向の付勢力として伝達することができる。
【0037】
さらに、請求項3のスロープ開閉補助装置では、前記付勢部材の一端部を車体に支持し、当該付勢部材の他端部を前記リンクを介して前記スロープに支持するとともに、前記付勢部材の前記伸張力が前記リンクを介して前記引き上げ方向に作用するように前記スロープへの前記リンクの支持位置が、前記スロープの回転中心より自由端部側に設定されている。
【0038】
このため、前記付勢部材が伸張する際の伸張力を、前記リンクを介して、前記スロープの回転中心より自由端部側に伝達することができ、このリンクから伝達された力により前記スロープに前記引き上げ力を付与することができる。
【0039】
加えて、請求項4のスロープ開閉補助装置にあっては、前記付勢部材の一端部を前記スロープの裏面に支持し、当該付勢部材の他端部を前記スロープの裏面に支持されたリンクに支持するとともに、当該リンクの自由端部側の部位と前記車体との間に、ワイヤが延設することによって、前記付勢部材からの前記伸張力で前記リンクに回転力を付与した状態で前記ワイヤに生ずる張力を前記引き上げ方向に作用させることができる。
【0040】
そして、前記付勢部材及び前記リンクは、前記スロープの裏面に設けられている。このため、前記付勢部材及び前記リンクを車室内に設ける場合と比較して、車室内での有効スペースをさらに広げ、車室内空間を有効に利用することができる。
【0041】
また、前記付勢部材及び前記リンクが車室内に配置される場合と比較して、外観品質をさらに高めることができる。
【0042】
また、請求項5のスロープ開閉補助装置においては、前記シリンダから延出したロッドが突出方向へ付勢された前記付勢部材を、一般的に車両のバックドア等で使用されるガススプリングで構成したため、大量生産によるコストメリットを受けることができ、部材調達費を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
(第一の実施の形態)
【0044】
以下、本発明の第一の実施の形態を図に従って説明する。
【0045】
図1は、本実施の形態にかかるスロープ開閉補助装置1を示す図であり、該スロープ開閉補助装置1を備えた車両2が示されている。
【0046】
この車両2は、バックドア11(一部のみ図示)で開閉されるバックドア開口部12を備えており、該バックドア開口部12は、車室外Oと車室内Iとを連通するように開設されている。
【0047】
この車両2の車体21を構成するフロア22後部には、図2にも示すように、前記バックドア開口部12へ向かうに従って低くなるように傾斜したフロアスロープ23が形成されており、該フロアスロープ23の後端部には、矩形板状に形成されたスロープ24の基端部がヒンジ25を介して回動自在に支持されている。
【0048】
これにより、前記スロープ24は、前記ヒンジ25による回転中心31を中心に回動できるように構成されており、図2中破線で示したように、当該スロープ24を車室内Iに起立した格納状態32を形成することで、前記スロープ24を前記車室内Iに格納できるように構成されている。また、前記スロープ24を前記格納状態32から回動し、前記バックドア開口部12から車室外Oへ延出して傾倒することにより、当該スロープ24で前記フロアスロープ23と路面との間に傾斜面を形成した展開状態33を形成できるように構成されており、この展開状態33において前記フロアスロープ23と前記路面との間に形成された傾斜面を利用することによって、当該車両2への車椅子の乗降を補助できるように構成されている。
【0049】
そして、当該車両2には、図1にも示したように、前記スロープ24の回動操作を補助する前記スロープ開閉補助装置1が左側部側に設けられている。
【0050】
すなわち、前記フロアスロープ23の後端部には、図2に示したように、支持ブラケット41が固定されており、該支持ブラケット41には、図3にも示すように、ガススプリング42のシリンダ43から延出したロッド44先端の先端支持部45が下部回転軸46を介して回動自在に支持されている(図3の(b)参照)。このガススプリング42は、上方へ向けて起立するように配置されており、当該ガススプリング42の端部を構成する前記シリンダ43の上端部には、上端支持部47が突設されている。
【0051】
この上端支持部47には、上部回転軸51を介して(図3の(b)参照)、支持リンク52の基端部と補助リンク53の基端部とが回動自在に支持されており、各リンク52,53は、それぞれ独立して回動できるように構成されている。前記両リンク52,53は、図2及び図3に示したように、長板状に形成されており、前記支持リンク52の長さ寸法は、前記補助リンク53の長さ寸法より短く設定されている。
【0052】
前記フロアスロープ23には、図2に示したように、前記支持ブラケット41より車両前方F側であって、当該支持ブラケット41の近接位置に、縦長形状のステイ61が立設されており、該ステイ61は、前記ガススプリング42に沿って起立している。前記ステイ61の先端部には、図2及び図3に示したように、前記支持リンク52の先端部がステイ回転軸62を介して回動自在に支持されており(図3の(b)参照)、当該ステイ61への支持位置は、図4にも示すように、前記展開状態33において、前記ガススプリング42の前記上端支持部47より低位置となるように設定されている。
【0053】
また、このガススプリング42の前記上端支持部47に支持された前記補助リンク53の先端部は、図3に示したように、前記スロープ24の側面に設けられたスロープ回転軸71に回動自在に支持されており、このスロープ回転軸71による支持位置72は、図2及び図4に示したように、前記スロープ24の前記回転中心31より自由端部側へずれた位置に設定されている。
【0054】
この補助リンク53と前記支持リンク52とは、図4に示したように、前記展開状態33において、前記ガススプリング42の前記上端支持部47を挿通した前記上部回転軸51で連結された連結部分が上方へ突出したへの字状を成すように構成されている。
【0055】
前記ガススプリング42は、前記シリンダ43内に収容されたピストンが当該シリンダ43内のガス圧を受けることによって、当該ピストンより延出した前記ロッド44が突出する突出方向へ向けて付勢されており、当該ロッド44が前記突出方向へ付勢されてなる本発明の付勢部材が当該ガススプリング42によって構成されている。
【0056】
そして、前記展開状態33において、図4に示したように、前記先端支持部45が前記フロアスロープ23に支持された前記ガススプリング42が長さ方向に伸張しようとする伸張方向75へ向けた伸張力F1が、前記補助リンク53を引き上げる方向に作用するように構成されており、当該補助リンク53の前記スロープ24への前記支持位置72が前記スロープ24の前記回転中心31より自由端部側に設定されいることから、前記伸張力F1が前記補助リンク53を介して、前記スロープ24を前記格納状態32へ向けて引き上げる引き上げ方向81に作用するように構成されている。
【0057】
これにより、付勢部材としての前記ガススプリング42が伸張方向に働く前記伸張力F1を、前記スロープ24に伝達し、当該スロープ24を前記引き上げ方向81に引き上げる補助力F2として作用させる付勢機構91が構成されている。
【0058】
このとき、前記ガススプリング42は、前記支持リンク52を介して、前記ステイ61に支持されており、当該ガススプリング42の不用意な前記スロープ24側への倒れが防止されるように構成されている。
【0059】
また、図3に示した格納状態32では、前記補助リンク53の支持位置72を構成する回転中心が前記スロープ24の回転中心31より車両前方F側に位置することで、前記ガススプリング42による補助力F2が作用しないように構成されており、この際には、前記ガススプリング42の伸張力F1は、各リンク52,53の遊びによるガタ止めとして機能するように構成されている。
【0060】
この格納状態32から前記スロープ24を回動して展開する際には、前記補助リンク53の支持位置72を構成する回転中心が前記スロープ24の回転中心31より車両後方R側に位置した時点から、前記ガススプリング42による補助力F2が前記スロープ24を引き上げる補助力F2として作用するように構成されており、当該スロープ開閉補助装置1による補助が開始されるように構成されている。
【0061】
以上の構成にかかる本実施の形態において、このスロープ開閉補助装置1では、シリンダ43から延出したロッド44が突出方向へ付勢される付勢部材としてのガススプリング42を備えており、このガススプリング42の伸張方向に働く伸張力F1を、前記付勢機構91によって前記スロープ24の引き上げ方向81に作用させることができる。
【0062】
このため、前記スロープ24を引き上げて回動する際には、その引き上げを補助できる一方、前記スロープ24を回動して車室外Oへ延出する際には、当該スロープ24の荷重Wを軽減することができる。
【0063】
このとき、スロープ操作時の補助力F2は、前記シリンダ43からの前記ロッド44の突出量が変化する前記ガススプリング42によって付与されており、車体21とスロープ24との間に引っ張りスプリングを延設すること無く、スロープ操作を補助することができる。
【0064】
このため、車室内Iに大型のマウントブラケットを設け、該マウントブラケットと前記スロープ24との間に大型の引っ張りスプリングを設けたり、車室内Iに可倒式のステイを設け、該ステイと前記スロープ24との間に引っ張りスプリングを設ける従来と比較して、車室内Iでの構成を簡素化することができる。
【0065】
これにより、可倒式のステイを用いる都合上、ステイを傾倒する為のスペースを車室内Iに確保したり、大型の引っ張りスプリングが入り込む為のスペースを車室内Iに確保しなければならなかった従来と比較して、有効スペースを広げることができ、車室内I空間を有効利用することができる。
【0066】
そして、前記引っ張りスプリングが車室内Iに延在する従来と比較して、外観品質を高めることもできる。
【0067】
そして、本実施の形態では、付勢部材としてのガススプリング42からの伸張力F1を補助リンク53に加えるとともに、該補助リンク53に加えられた前記伸張力F1を、当該補助リンク53によって、前記引き上げ方向81の付勢力として前記スロープ24に伝達することができる。
【0068】
具体的に説明すると、前記付勢部材を構成する前記ガススプリング42は、シリンダ43から延出したロッド44先端の先端支持部45が支持ブラケット41を介して車体21のフロアスロープ23に支持されており、当該ガススプリング42の前記シリンダ43の上端部に設けられた上端支持部47は、前記補助リンク53を介して前記スロープ24に支持されている。
【0069】
そして、前記ガススプリング42の前記伸張力F1が前記補助リンク53を介して前記引き上げ方向81に作用するように、前記スロープ24への前記補助リンク53の支持位置72が前記スロープ24の回転中心31より自由端部側に設定されている。
【0070】
このため、前記ガススプリング42が伸張する際には、その伸張力F1が前記補助リンク53を介して、前記スロープ24の回転中心31より自由端部側に伝達され、この補助リンク53から伝達される補助力F2によって、前記スロープ24に前記引き上げ力を付与することができる。
【0071】
そして、前記シリンダ43から延出した前記ロッド44が突出方向へ付勢された付勢部材は、一般的に車両のバックドア等で使用されるガススプリング42で構成されている。
【0072】
このため、大量生産によるコストメリットを受けることができ、部材調達費を抑えることができる。これにより、低コスト化を図ることができる。
【0073】
(第二の実施の形態)
【0074】
図5は、本発明の第二の実施の形態を示す図であり、第一の実施の形態と同一又は同等部分に付いては同符号を付して説明を割愛するとともに、異なる部分に付いてのみ説明する。
【0075】
すなわち、前記ガススプリング42の前記上端支持部47に支持された前記支持リンク52には、当該支持リンクの長さ方向に延在する長穴95が設けられており、該長穴95には、前記ステイ61に設けられて支持軸96がスライド自在に支持されている。
【0076】
これにより、ガススプリング42が長くなり、レイアウトできない場合にも、対応することができる。
【0077】
このとき、前記スロープ24を持ち上げて格納する際には、格納間際において、前記ガススプリング42による補助機能が働かないようにすることができる。
【0078】
ここで、この格納間際では、前記スロープ24を持ち上げる力より、車両前方Fへ押し込む力を要する。このため、この構造を採用することによって、格納間際において、不必要となる補助力F2の働きを抑えることができる。
【0079】
(第三の実施の形態)
【0080】
以下、本発明の第三の実施の形態を図に従って説明する。
【0081】
図6及び図7は、本実施の形態にかかるスロープ開閉補助装置101を示す図であり、第一の実施の形態と異なる部分に付いてのみ説明する。
【0082】
すなわち、この車両111の車体112を構成するフロア113後部には、バックドア開口部114へ向かうに従って低くなるように傾斜したフロアスロープ115が形成されており、該フロアスロープ115の後端部には、矩形板状に形成されたスロープ116の基端部がヒンジ117を介して回動自在に支持されている。
【0083】
これにより、前記スロープ116は、前記ヒンジ117による回転中心121を中心に回動できるように構成されており、図6に示したように、当該スロープ116を車室内Iに起立した格納状態122を形成することで、前記スロープ116を前記車室内Iに格納できるように構成されている。
【0084】
また、前記スロープ116を前記格納状態122から回動し、図7に示したように、前記バックドア開口部114から車室外Oへ延出して傾倒することにより、当該スロープ116で前記フロアスロープ115と路面との間に傾斜面を形成した展開状態131を形成できるように構成されており、この展開状態131において、前記フロアスロープ115と前記路面との間に形成された傾斜面を利用することによって、当該車両111への車椅子の乗降を補助できるように構成されている。
【0085】
そして、当該車両111には、図6及び図7に示したように、前記スロープ116の回動操作を補助する前記スロープ開閉補助装置101が設けられている。
【0086】
すなわち、前記スロープ116のスロープ裏面141には、付勢部材としてのガススプリング142のシリンダ143から延出したロッド144先端の先端支持部145が下部回転軸146を介して回動自在に支持されている。このガススプリング142は、当該スロープ116の中心側へ向かうに従って自由端部側へ向けて斜めに配置されており、当該ガススプリング142の端部を構成する前記シリンダ143の上端部には、上端支持部147が突設されている。
【0087】
この上端支持部147は、上部回転軸151を介して、回動リンク152の中途部に回動自在に支持されており、当該回動リンク152は、その基端部が前記スロープ裏面141に回転軸153を介して回動自在に支持されている。
【0088】
この回動リンク152の自由端部には、ワイヤ161の一端が係止されており、該ワイヤ161は、一部がケーシング162で覆われている。このケーシング162は、当該スロープ116の縁部に沿って折曲されており、前記車体112の前記フロアスロープ115へ向けて延出している。このフロアスロープ115には、ワイヤ係止ブラケット163が設けられており、該ワイヤ係止ブラケット163には、前記ワイヤ161の他端が係止されている。
【0089】
前記ガススプリング142は、前記シリンダ143内に収容されたピストンが当該シリンダ143内のガス圧を受けることによって、当該ピストンより延出した前記ロッド144が突出する突出方向へ向けて付勢されており、当該ロッド144が前記突出方向へ付勢されてなる本発明の付勢部材が当該ガススプリング142によって構成されている。
【0090】
これにより、前記ガススプリング142からの前記伸張力で前記回動リンク152に回転力160を付与できるように構成されており、この際に前記ワイヤ161に生ずる張力を、前記スロープ116を引き上げ方向171に作用させ、当該スロープ116の引き上げを補助できるように構成されている。
【0091】
そして、前記展開状態131において、図7に示したように、前記下端支持部145が前記スロープ裏面141に支持された前記ガススプリング142が長さ方向に伸張しようとする伸張方向へ向けた伸張力が、前記ワイヤ161に張力181を付与し、該ワイヤ161が当該スロープ116を引き上げる方向に作用するように構成されており、当該スロープ116は、前記格納状態122へ向けて引き上げる前記引き上げ方向171に力が生ずるように構成されている。
【0092】
これにより、付勢部材としての前記ガススプリング142が伸張方向に働く前記伸張力を、前記スロープ116に伝達し、当該スロープ116を前記引き上げ方向171へ引き上げる補助力として作用させる付勢機構191が構成されている。
【0093】
一方、前記格納状態122から前記展開状態131へ移行する際には、図6に示したように、前記スロープ116を傾倒するに従って前記ワイヤ161が引張され、前記回動リンク152を回動する。すると、前記ガススプリング142は、前記ロッド144が後退され、その際の反力が当該スロープ116を前記引き上げ方向171に作用するように構成されている。
【0094】
以上の構成にかかる本実施の形態において、このスロープ開閉補助装置101では、シリンダ143から延出したロッド144が突出方向へ付勢される付勢部材としてのガススプリング142を備えており、このガススプリング142の伸張方向に働く伸張力を、前記付勢機構191によって前記スロープ116の引き上げ方向171に作用させることができる。
【0095】
このため、前記スロープ116を引き上げて回動する際には、その引き上げを補助できる一方、前記スロープ116を回動して車室外Oへ延出する際には、当該スロープ116の荷重Wを軽減することができる。
【0096】
このとき、スロープ操作時の補助力は、前記シリンダ143からの前記ロッド144の突出量が変化する前記ガススプリング142によって付与されており、車体112とスロープ116との間に引っ張りスプリングを延設すること無く、スロープ操作を補助することができる。
【0097】
このため、車室内Iに大型のマウントブラケットを設け、該マウントブラケットと前記スロープ116との間に大型の引っ張りスプリングを設けたり、車室内Iに可倒式のステイを設け、該ステイと前記スロープ116との間に引っ張りスプリングを設ける従来と比較して、車室内Iでの構成を簡素化することができる。
【0098】
これにより、可倒式のステイを用いる都合上、ステイを傾倒する為のスペースを車室内Iに確保したり、大型の引っ張りスプリングが入り込む為のスペースを車室内Iに確保しなければならなかった従来と比較して、有効スペースを広げることができ、車室内I空間を有効利用することができる。
【0099】
そして、前記引っ張りスプリングが車室内Iに延在する従来と比較して、外観品質を高めることもできる。
【0100】
そして、本実施の形態では、付勢部材としてのガススプリング142からの伸張力を回動リンク152に加えるとともに、該回動リンク152に加えられた前記伸張力を当該回動リンク152の回転力に変換することで、前記引き上げ方向171の付勢力として前記スロープ166に作用させることができる。
【0101】
具体的に説明すると、付勢部材を構成するガススプリング42の一端部を前記スロープ裏面141に支持し、当該ガススプリング42の他端部を前記スロープ裏面141に支持された回動リンク152に支持するとともに、当該回動リンク152の自由端部側の部位と前記車体112との間に、ワイヤ161を延設することによって、前記ガススプリング42からの前記伸張力で前記回動リンク152に回転力160を付与した状態で前記ワイヤ161に生ずる張力を前記引き上げ方向171に作用させることができる。
【0102】
そして、前記ガススプリング42及び前記回動リンク152は、前記スロープ裏面141に設けられている。このため、前記ガススプリング42及び前記回動リンク152を車室内Iに設ける場合と比較して、車室内Iでの有効スペースをさらに広げ、車室内I空間を有効に利用することができる。
【0103】
また、前記ガススプリング42及び前記回動リンク152が車室内Iに配置される場合と比較して、外観品質をさらに高めることができる。
【0104】
そして、前述したスロープ開閉補助装置1をフロアスロープ23の側部に配設できない場合であっても対応することができる。
【0105】
なお、前記各実施の形態では、付勢部材としてガススプリングを用いた場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。
【0106】
例えば、前記付勢部材として圧縮バネを利用した機構で構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の第一の実施の形態を示す図である。
【図2】同実施の形態の要部を示す説明図である。
【図3】同実施の形態の格納状態を示す説明図で、(a)は側面図であり、(b)は(a)のA矢視図である。
【図4】同実施の形態の展開状態を示す説明図である。
【図5】本発明の第二の実施の形態を示す説明図である。
【図6】本発明の第三の実施の形態を示す説明図で、(a)は側面図であり、(b)は(a)のB矢視図である。
【図7】同実施の形態の展開状態を示す説明図で、(a)は側面図であり、(b)は(a)のC矢視図である。
【図8】(a)は、従来のスロープ開閉補助装置を示す説明図であり、(b)は他の従来例を示す図である。
【符号の説明】
【0108】
1 スロープ開閉補助装置
2 車両
21 車体
24 スロープ
31 回転中心
32 格納状態
33 展開状態
42 ガススプリング
43 シリンダ
44 ロッド
53 補助リンク
72 支持位置
75 伸張方向
81 引き上げ方向
91 付勢機構
101 スロープ開閉補助装置
111 車両
112 車体
116 スロープ
121 回転中心
122 格納状態
131 展開状態
142 ガススプリング
143 シリンダ
144 ロッド
152 回動リンク
160 回転力
161 ワイヤ
162 ケーシング
171 引き上げ方向
181 張力
191 付勢機構
F1 伸張力
F2 補助力
I 車室内
O 車室外

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に支持されたスロープを起立した状態と車室外へ延出するように傾倒した状態との間で回動操作する際に当該スロープの回動操作を補助するスロープ開閉補助装置において、
シリンダから延出したロッドが突出方向へ付勢された付勢部材を備え、該付勢部材の伸張方向に働く伸張力を前記スロープの引き上げ方向に作用させる付勢機構を備えたことを特徴とするスロープ開閉補助装置。
【請求項2】
前記付勢機構は、前記付勢部材と、該付勢部材からの前記伸張力を伝達するリンクとを備え、該リンクに加えられた前記伸張力を前記引き上げ方向の付勢力として伝達することを特徴とした請求項1記載のスロープ開閉補助装置。
【請求項3】
前記付勢部材の一端部を前記車体に支持するとともに、当該付勢部材の他端部を前記リンクを介して前記スロープに支持し、前記付勢部材の前記伸張力が前記リンクを介して前記引き上げ方向に作用するように前記スロープへの前記リンクの支持位置を前記スロープの回転中心より自由端部側に設定したことを特徴とする請求項1又は2記載のスロープ開閉補助装置。
【請求項4】
前記付勢部材の一端部を前記スロープの裏面に支持し、当該付勢部材の他端部を前記スロープの裏面に支持されたリンクに支持する一方、
該リンクの自由端部側の部位と前記車体との間にワイヤを延設し、前記付勢部材からの前記伸張力で前記リンクに回転力を付与した際に前記ワイヤに生ずる張力を前記引き上げ方向に作用させて前記付勢機構を構成したことを特徴とする請求項1又は2記載のスロープ開閉補助装置。
【請求項5】
前記付勢部材をガススプリングで構成したことを特徴とする請求項1から4にいずれが記載のスロープ開閉補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−64571(P2010−64571A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231635(P2008−231635)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000128544)株式会社オーテックジャパン (183)
【Fターム(参考)】