説明

スートブロワ

【課題】スートブロワの各パイプ内に溜まったドレンを確実に排出することができるスートブロワを提供すること。
【解決手段】フィードパイプ1の外側にランスパイプ2を抜き差し可能に配置した2重管構造を有し、フィードパイプ1に供給した蒸気をランスパイプ2に導入し、ランスパイプ先端のノズル2aからボイラの伝熱管に蒸気を吹き付けて伝熱管に付着した飛灰を除去するスートブロワにおいて、フィードパイプ1内にドレン排出パイプ6を設け、その先端6aは、スートブロワの暖機及びスートブロワ内のドレン排出のためにフィードパイプ先端のノズル2aをボイラB内のボイラ外壁B1近傍に位置させた状態においてランスパイプ2の下部領域に連通し、基端6bはフィードパイプ1外に連通するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラの伝熱管に蒸気を吹き付けて伝熱管に付着した飛灰を除去するスートブロワに関し、とくに、フィードパイプの外側にランスパイプを抜き差し可能に配置した2重管構造を有し、フィードパイプに供給した蒸気をランスパイプに導入し、ランスパイプ先端のノズルからボイラの伝熱管に蒸気を吹き付けて伝熱管に付着した飛灰を除去する、いわゆる長抜差型のスートブロワに関する。
【0002】
なお、本発明において「飛灰」とは、ボイラ内に浮遊しボイラの伝熱管に付着する煤、灰、ダストなどを総称するものである。
【背景技術】
【0003】
ボイラ、とくに廃棄物処理設備で使用されるボイラには、高温の排ガスとともに多量の飛灰が到来し、ボイラの伝熱管に飛灰が付着するので、ボイラの運転を効率的かつ安全に行うためには、伝熱管に付着した飛灰を定期的又は必要に応じて除去する必要がある。
【0004】
このような付着物の除去には、一般的にランスパイプを使用したスートブロワが使用されるが、ボイラの伝熱管に付着した飛灰を除去するには、長尺のランスパイプを備えた長抜差型のスートブロワが使用される。
【0005】
図3は、従来の長抜差型のスートブロワの基本構成と動作を示す説明図である。図3(a)に示すように、長抜差型のスートブロワは、フィードパイプ1の外側にランスパイプ2を抜き差し可能に配置した2重管構造を有する。このうちフィードパイプ1は固定され、ランスパイプ2は、その長手方向に沿って進退可能(抜き差し可能)であるとともに、長手方向の軸周りに回転可能である。そして、ランスパイプ2の基端とフィードパイプ1の外周面との間は、シール部材3によってシールされている。
【0006】
フィードパイプ1の基端には入口弁4が取り付けられており、この入口弁4を開くことにより、主蒸気ライン5からフィードパイプ1に蒸気が供給される。フィードパイプ1に供給された蒸気は、ランスパイプ2に導入され、ランスパイプ先端のノズル2aから噴射される。
【0007】
実際にボイラの伝熱管に蒸気を吹き付けて伝熱管に付着した飛灰を除去する際には、図3(c)に示すように、ランスパイプ2を前進させてボイラB内に差し込み、ランスパイプ2を回転させながら、ノズル2aから蒸気を噴射する。また、飛灰の除去作業が終わったら、図3(a)に示すように、ボイラB外の待機位置までランスパイプ2を後退させ、入口弁4を閉じて蒸気の供給を停止する。
【0008】
このように、長抜差型のスートブロワは、待機時にはランスパイプをボイラ外の待機位置に位置させ、蒸気の供給を停止するので、待機時に、フィードパイプ1やランスパイプ2が冷却され、各パイプ内にドレンが残留する。また、次回起動時には完全に冷却された状態にて蒸気が供給されるため、フィードパイプ1及びランスパイプ2が蒸気にて暖機される間に多量のドレンが発生する。このドレンがボイラ内に噴射され、ドレンアタックが発生して伝熱管等が損傷する。
【0009】
このドレンアタックの発生を防止するために、特許文献1には、図3(a)の待機位置から図3(c)のブロー位置の途中にある、図3(b)の中間停止位置、すなわちランスパイプ先端のノズル2aをボイラB内のボイラ外壁B1近傍に位置させた状態でフィードパイプ1に低圧蒸気を供給し、フィードパイプ1及びランスパイプ2内のドレンを上記中間停止位置にてノズル2aから排出するとともに、スートブロワを暖機する技術が開示されている。
【0010】
しかし、本発明者が行った試験によると、図3(b)に示すような中間停止位置で低圧蒸気を供給しても、フィードパイプ1とランスパイプ2とが重なり合った部分に溜まったドレンは排出されず、図3(b)に示すようにドレンDとして溜まったままであることがわかった。したがって、図3(b)の中間停止位置から図3(c)のブロー位置までランスパイプ1を前進させて蒸気を供給すると、図3(b)の中間停止位置で排出されなかったドレンDが、ノズル2aから噴射され、トレンアタックが発生する。
【特許文献1】特開平11−63466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、スートブロワの各パイプ内に溜まったドレンを確実に排出することができるスートブロワを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、フィードパイプの外側にランスパイプを抜き差し可能に配置した2重管構造を有し、フィードパイプに供給した蒸気をランスパイプに導入し、ランスパイプ先端のノズルからボイラの伝熱管に蒸気を吹き付けて伝熱管に付着した飛灰を除去するスートブロワにおいて、フィードパイプ内にドレン排出パイプを設け、その先端は、スートブロワの暖機及びスートブロワ内のドレン排出のためにフィードパイプ先端のノズルをボイラ内のボイラ外壁近傍に位置させた状態においてランスパイプの下部領域に連通し、基端はフィードパイプ外に連通することを特徴とする。
【0013】
このような構成とすることで、スートブロワの暖機及びスートブロワ内のドレン排出のためにフィードパイプ先端のノズルをボイラ内のボイラ外壁近傍に位置させた状態(以下、この状態の位置を「中間停止位置」という。)において、低圧蒸気を供給すると、フィードパイプとランスパイプとが重なり合った部分に溜まり、ランスパイプ先端のノズルからは排出されないドレンは、ランスパイプ内の内圧によって、ドレン排出パイプの先端からドレン排出パイプ内を経由して、ドレン排出パイプの基端から排出される。その他のドレンは、ランスパイプ先端のノズルから排出される。したがって、スートブロワの各パイプ内に溜まったドレンを確実に排出することができ、ドレンアタックの発生、及びドレンアタックによるボイラの伝熱管の損傷を防止できる。
【0014】
本発明において、ドレン排出パイプの先端は、中間停止位置においてランスパイプの基端部分の下部領域に連通するようにすることが好ましい。これによって、フィードパイプとランスパイプとが重なり合った部分に溜まったドレンを、ドレン排出パイプを経由してより確実に排出することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スートブロワの各パイプ内に溜まったドレンを確実に排出することができ、ドレンアタックの発生、及びドレンアタックによるボイラの伝熱管の損傷を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
図1は、本発明のスートブロワの構成と動作を示す説明図、図2は、図1(b)のA−A断面図である。
【0018】
本発明のスートブロワの基本構成は、図3で説明した従来の長抜差型のスートブロワと同じで、フィードパイプ1の外側にランスパイプ2を抜き差し可能に配置した2重管構造を有する。このうちフィードパイプ1は固定され、ランスパイプ2は、その長手方向に沿って進退可能(抜き差し可能)であるとともに、長手方向の軸周りに回転可能である。なお、ランスパイプ2の基端とフィードパイプ1の外周面との間は、シール部材3によってシールされている。
【0019】
フィードパイプ1の基端には入口弁4が取り付けられており、この入口弁4を開くことにより、主蒸気ライン5からフィードパイプ1に蒸気が供給される。フィードパイプ1に供給された蒸気は、ランスパイプ2に導入され、ランスパイプ先端のノズル2aから噴射される。
【0020】
実際にボイラの伝熱管に蒸気を吹き付けて伝熱管に付着した飛灰を除去する際には、図1(c)に示すように、ランスパイプ2を前進させてボイラB内に差し込み、ランスパイプ2を回転させながら、ノズル2aから蒸気を噴射する。また、飛灰の除去作業が終わったら、図1(a)に示すように、ボイラB外の待機位置までランスパイプ2を後退させ、入口弁4を閉じて蒸気の供給を停止する。
【0021】
また、本発明のスートブロワにおいても、図1(a)の待機位置から図1(c)のブロー位置までランプパイプ2を前進させる途中で、スートブロワの暖機及びスートブロワ内のドレン排出のために、図1(b)の中間停止位置において一時停止させ、低圧蒸気をフィードパイプ1に供給する。この低圧蒸気は、入口弁4の開度を通常動作時よりも小さくすることによって供給しても良いし、図示していないが、入口弁4を跨ぐようにバイパスラインを設け、このバイパスラインに開閉弁と減圧手段を設け、このバイパスラインを経由して供給してもよい。なお、低圧蒸気を供給する代わりに、入口弁4を全開して通常圧の蒸気を供給するようにしてもよい。
【0022】
ここで、図1(b)に示す中間停止位置とは、上述のとおり、スートブロワの暖機及びスートブロワ内のドレン排出のためにフィードパイプ先端のノズル2aをボイラB内のボイラ外壁B1近傍に位置させた状態における位置のことであり、言い換えれば、ノズル2aからドレンを噴射したとしても、それによって発生するドレンアタックがボイラの伝熱管に実質的な損傷を与えないような位置のことである。具体的には、ノズル2aからボイラ外壁B1の内面との距離Lが、150mm〜300mm程度の範囲である。
【0023】
以上の基本構成において本発明のスートブロワでは、中間停止位置において低圧蒸気を供給してもランスパイプ先端のノズル2aからは排出されず、フィードパイプ1とランスパイプ2とが重なり合った部分に溜まったままとなるドレンDを排出するために、フィードパイプ1内にドレン排出パイプ6を設けている。そして、ドレン排出パイプの先端6aは、図2に示すようにフィードパイプ1を貫通し、ランスパイプ2の下側領域、より具体的にはフィードパイプ1とランスパイプ2とが重なり合った部分の下側領域に連通している。また、ドレン排出パイプの基端6bは、図1(b)に示すようにフィードパイプ1の基端部分を貫通し、フィードパイプ1外に連通している。
【0024】
このように、図1(b)の中間停止位置において、先端6aがランスパイプ2の下側領域に連通し、基端6bがフィードパイプ1外に連通するドレン排出パイプ6をフィードパイプ1内に設けることで、この中間停止位置でフィードパイプ1に低圧蒸気を供給すると、フィードパイプ1とランスパイプ2とが重なり合った部分に溜まり、ランスパイプ先端のノズル2aからは排出されないドレンは、ランスパイプ2内の内圧によって、図1(b)に矢印で示すようにドレン排出パイプの先端6aからドレン排出パイプ6内を経由して、ドレン排出パイプの基端6bからフィードパイプ1外に排出される。その他のドレンは、ランスパイプ先端のノズル2aから排出される。したがって、本発明のスートブロワでは、各パイプ内に溜まったドレンを確実に排出することができ、ドレンアタックの発生、及びドレンアタックによるボイラの伝熱管の損傷を防止できる。
【0025】
本発明において、ドレン排出パイプの先端6aは、図1(b)に示すように、中間停止位置においてランスパイプ2の基端部分の下側領域に連通するように設けることが好ましい。これによって、フィードパイプ1とランスパイプ2とが重なり合った部分に溜まったドレンを、ドレン排出パイプ6を経由してより確実に排出することができる。
【0026】
また、フィードパイプ1とランスパイプ2とが重なり合った部分に溜まったドレンが完全に排出されたか否かの判断は、例えば、ドレン排出パイプの先端6a位置のランスパイプ1の部分の温度を計測し、これが飽和蒸気温度に達したか否かによって行うことができる。したがって本発明では、ドレン排出パイプの先端6a位置のランスパイプ1の部分の温度が飽和蒸気温度に達するまで、図1(b)の中間停止位置でドレン排出を継続し、飽和蒸気温度に達したら、ランスパイプ2を図1(c)のように前進させてノズル2aから蒸気を噴射するようにすることができる。これによって、ブロー位置においてノズル2aからドレンが噴き出すことを確実に防止でき、ドレンアタックの発生を防止できる。
【0027】
また、ドレン排出パイプの先端6a位置のランスパイプ1の部分の温度を計測してドレンが完全に排出されたか否かを判断する方法に代えて、ドレン排出パイプの基端6b部分からドレンが排出されているか否かを直接的に確認するようにしてもよい。その調整は、図1(b)の中間停止位置における低圧蒸気の供給をタイマーの設定により時間管理し、所定時間が経過したら中間停止位置におけるドレン排出を終了するように調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のスートブロワの構成と動作を示す説明図である。
【図2】図1(b)のA−A断面図である。
【図3】従来の長抜差型のスートブロワの基本構成と動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0029】
1 フィードパイプ
2 ランスパイプ
2a ノズル
3 シール部材
4 入口弁
5 主蒸気ライン
6 ドレン排出パイプ
6a ドレン排出パイプの先端
6b ドレン排出パイプの基端
B ボイラ
B1 ボイラ外壁
D ドレン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィードパイプの外側にランスパイプを抜き差し可能に配置した2重管構造を有し、フィードパイプに供給した蒸気をランスパイプに導入し、ランスパイプ先端のノズルからボイラの伝熱管に蒸気を吹き付けて伝熱管に付着した飛灰を除去するスートブロワにおいて、
フィードパイプ内にドレン排出パイプを設け、その先端は、スートブロワの暖機及びスートブロワ内のドレン排出のためにランスパイプ先端のノズルをボイラ内のボイラ外壁近傍に位置させた状態においてランスパイプの下部領域に連通し、基端はフィードパイプ外に連通することを特徴とするスートブロワ。
【請求項2】
前記ドレン排出パイプの先端は、スートブロワの暖機及びスートブロワ内のドレン排出のためにランスパイプ先端のノズルをボイラ内のボイラ外壁近傍に位置させた状態においてランスパイプの基端部分の下部領域に連通する請求項1に記載のスートブロワ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−145050(P2010−145050A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324361(P2008−324361)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【Fターム(参考)】