説明

スーパーカレンダー

【課題】 印刷適正に優れ、高い平滑性と高光沢とを備えた紙に対する要望に応えるために、高温ソフトニップ化を果たすスーパーカレンダーを提供する。
【解決手段】 弾性ロール21と金属ロール22とを鉛直方向に交互に適宜本数配設し、一部の金属ロール22には、該金属ロール22の外部から該金属ロール22の表面を局部的に加熱できる加熱手段を設ける。他の金属ロール22は、内部に熱媒体を流通させるヒートロールとする。弾性ロール21を樹脂ロールによって構成し、一部に樹脂ロール21を連続して配したリバースニップ部23fを設ける。最上部のトップロール24に対して加圧装置27を配して、それぞれのロール21、22により構成されるニップ部の圧力を発生させ、調整する。また、弾性ロール21の端部を冷却する端部冷却手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、抄紙された紙の白紙外観を向上させるために、巻取紙を巻き戻しながら、該紙に平滑性や光沢を付与するスーパーカレンダーに関する。
【背景技術】
【0002】
製紙工場では、抄紙された紙をドライヤで乾燥した後に、必要な平滑性や光沢を付与したり、紙シートの厚みの調整を行う表面処理を施す装置として、カレンダー装置が一般に用いられている。この種のカレンダー装置の代表的なものとして、チルドニップカレンダーやソフトニップカレンダー、スーパーカレンダーなどがある。
【0003】
前記チルドニップカレンダーとソフトニップカレンダーは抄紙機のドライヤに後続して付設されて、オンラインで紙シートの表面性を改質する装置である。チルドニップカレンダーは、金属製のチルドロール同士で一対以上のニップを構成するものである。また、ソフトニップカレンダーは金属製のチルドロールと弾性を有するショアD硬度が90度前後の樹脂ロールとから構成され、樹脂ロールの周面上に一対のみのニップを構成したものである。他方、スーパーカレンダーは、抄紙機とは別個にオフラインで設けられる装置で、弾性を有するショアD硬度80度前後のコットンロールとチルドロールとを垂直方向に交互に配列し、これらのロールで紙シートを高圧多ニップ処理する構成としたもので、グラビア印刷紙のような高平滑な紙の製造に使用されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、紙ウェブをカレンダー掛けするスーパーカレンダー及びつや消し質紙ウェブを製造するためのカレンダー掛け配置に関するものとして、多重ニップカレンダーの少なくとも一つのカレンダー掛けニップが、重合体ロール及びシューロールまたはカレンダー掛けベルトの間に形成される拡張ニップであるようにした、多重ニップカレンダー及びカレンダー掛け装置が開示されている。
【0005】
図4に従来のスーパーカレンダー装置によるニップ部の構造の概略を示してある。スーパーカレンダー装置1は、抄紙機で抄造されてロールに巻き取られた巻取紙P1から巻き戻された紙シートLを巻き直して巻取紙Pとする。この間に、紙シートLは、コットンロール2とチルドロール3とより構成されるカレンダー部1を通過する。なお、コットンロール2及びチルドロール3には、上側に位置したものから順にa〜fの添え字を付してある。コットンロール2とチルドロール3とは交互に配されて、これらによりニップ部4a〜4kが構成されている。すなわち、11段のニップ部4を有しており、このうち第8段目のニップ部4hは、コットンロール2dとコットンロール2eとにより構成されるリバースニップであり、紙シートLの両面が同じ条件となるようにして表裏差をなくすようにしてある。なお、リバースニップ後のニップ数が少ないのは、ロール重量によるニップ圧の上昇を考慮してのことである。最上段のトップロール5には、図示しないロール加圧装置により鉛直方向に荷重がかけられてニップ部4のニップ圧を調整する。トップロールには、一般的にスイミング機能を有する金属製のスイミングロールが用いられる。また、最下段のボトムロール6は荷重を受けるとともに、これも一般的にスイミング機能を有する金属製のスイミングロールが用いられている。さらに、ロール損傷の原因である紙切れ時の巻込み防止のため、定常運転紙切れ信号、非常停止信号により、自動的に全ロールを急降下させロール間に隙間を設けるようにした装置であるラピドロップ7が具備されている。
【0006】
前記チルドロール3はヒートロールとされており、内部に昇温させた油を供給してチルドロール3の内部から加熱して、該チルドロール3の表面を昇温させている。
【0007】
また、コットンロール2及びチルドロール3のそれぞれには、フライロール8を組み合わせてあり、紙シートLに適宜な大きさの張力が付与されるようにしてある。
【0008】
【特許文献1】特表2003−528228
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、前記チルドニップカレンダーとソフトニップカレンダー、スーパーカレンダーのそれぞれの間には明確な相違が見られる。抄紙機で乾燥された直後の紙シートの厚さは不均一であるが、カレンダー装置のニップ部を通過して処理されることにより、表面状態がどのように変化するかを紙シートの流れに直交する断面について考えると、次のようなことが言える。
【0010】
金属製のチルドロールによりニップを構成するチルドニップカレンダーでは、紙シート表面の凸部が押さえられ平坦になるが、凹部では金属製のチルドロールの表面に接触しても加圧されず、結局、紙シートの厚さは均一になるが密度は均一とならない。また、ソフトニップカレンダーでは、ニップに抄紙機で乾燥された直後で厚さが不均一な紙シートが通過すると、金属製チルドロール面に接する紙シート表面は、ロールの平滑な面によって平坦に変形する。ところが、チルドロール側が平坦に処理される際に、その紙シート裏面側に当たる弾性ロール側の紙シート表面には、その本来の凹凸に加えてチルドロール側の凹凸が加えられて複雑な凹凸が現れる。しかし、弾性ロールは、その弾性によって凹凸に対応した形で変形することが可能であるから、紙表面の凹部も加圧処理することができる。このため、紙シートは厚さが不均一であるが、密度が均一となり、チルドロール側の紙シートの表面には、ロール表面の平滑が転写されて平滑性と光沢とが付与される。すなわち、印刷適性と印刷面感においては、密度が均一なソフトニップカレンダーによる処理の方が、インクの吸収、定着が均一となり、密度が不均一となるチルドニップカレンダーによる処理よりも優れている。
【0011】
また、スーパーカレンダーは、前記コットンロール2とチルドロール3とにより高圧多ニップ処理するものであり、紙の厚さの均一性と密度の均一性とのいずれも優れているため、グラビア印刷紙のように高平滑な紙を製造する場合に適している。しかし、コットンロール2の上下にはチルドロール3が接触してニップ部4を構成しているため、コットンロール2の1回転当たり2度の線圧を受けることになり、ショアD硬度75〜80度と低いコットンロールでは、線圧を受ける箇所の弾性変形が大きく、短時間での線圧の繰り返しは、熱応力ヒステリシスから原形に復帰することができずに破損する等のトラブルが起こり易い。このため、スーパーカレンダーは、原紙を抄く抄紙機の速度よりも小さい速度で処理する必要があり、オフラインで設備されている。
【0012】
ソフトニップカレンダーに使用される弾性ロールは、金属ロールの表面に耐熱性合成樹脂層を設けたものであって、樹脂層の厚さは、放熱性を考慮して10mm前後とされ、ショアD硬度85〜95度とコットンロールの場合よりも高めにして弾性変形量を小さくし、さらに、樹脂ロールの円周上に1箇所だけチルドロールとニップを構成する構造として、弾性変形後の原形復元に時間をとり、弾性ロール樹脂層の寿命を延ばすことによりオンラインで稼働できるようにしている。
【0013】
しかしながら、ソフトニップカレンダーによる処理品は、チルドニップカレンダーによる処理品よりも優れた表面性を有するが、ニップ処理回数が少なく、また樹脂ロールの硬度がコットンロールよりも高いため、スーパーカレンダーによる処理品である紙シートの表面性には遠く及ばない。
【0014】
近年では、より平滑性が高く、高光沢の用紙に対する需要が増加しており、従来のスーパーカレンダーの設備能力では不十分であり、スーパーカレンダーの増設等の必要性が生じている。しかし、新たなカレンダー装置の設置スペースの確保は困難であり、上記需要に迅速に対応し難い状況にある。
【0015】
そこで、この発明は、既設のスーパーカレンダー装置を改良することにより、高温ソフトニップ化を図って、平滑性の高い高光沢の紙を得られ、紙厚の確保と幅方向の紙厚の均一化を図ることができるスーパーカレンダーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係るスーパーカレンダーは、巻取紙から巻き戻された紙シートを、樹脂ロールと金属ロールとを一部にリバースニップ部を設けて交互に配して構成されるニップ部を通過させて、該紙シートに平滑性と光沢とを付与するスーパーカレンダーにおいて、前記金属ロールの一部を、高温に調整可能な調温ロールとしたことを特徴としている。
【0017】
従来のスーパーカレンダーのヒートロール(80〜90℃)よりも高温(約150℃)である調温ロールを配することで、高温ソフトニップ化したものである。そして、樹脂ロールと金属ロールとを組み合わせることにより、ソフトニップカレンダーと同様に、紙シートの密度が均一化されて、高平滑と高光沢が付与され、印刷適性や印刷面感等の優れた表面性を備えさせることができるようになる。
【0018】
また、請求項2の発明に係るスーパーカレンダーは、前記金属ロールの一部であって、前記調温ロール以外の金属ロールの表面を加熱する加熱手段を、該金属ロールの外部に設けたことを特徴としている。
【0019】
前記加熱手段により金属ロール表面を外部から加熱することにより、該金属ロールの内部から加熱する場合に比べて、金属ロール表面の温度を高くすることができる。したがって、紙シートをより高温に接触することになり、高平滑で高光沢を付与することができる。
【0020】
また、請求項3の発明に係るスーパーカレンダーは、前記加熱手段は、前記金属ロールを、該金属ロールの軸方向に沿って局部的に加熱温度を変更できるものであることを特徴としている。
【0021】
すなわち、紙シートの幅方向に加熱温度を調整することができるようにしたものである。金属ロールの内部に高温油を流通させて内部から温度を上昇させる場合には、金属ロールの内部を区画する等の構造にして各区画ごとに高温油の流量を調整する必要があるので、金属ロールの構造が複雑となるとともに、内部からの加熱では応答性が不良である。これに対して、外部から加熱して金属ロール表面を昇温する場合には、金属ロールの外周面に対向させて適宜数の加熱手段を配設し、該加熱手段をコントロールすることにより該当する部位の温度を容易に、しかも応答性を良好にして調整することができる。
【0022】
また、請求項4の発明に係るスーパーカレンダーは、前記加熱手段は、キャリコイルであることを特徴としている。
【0023】
キャリコイルは、電磁誘導作用により金属ロールのに表面に渦電流を発生させて、金属ロール表面を発熱させるもので、局部的にロール表面を発熱させることができる。
【0024】
金属ロールの表面を外部から加熱する手段としては、キャリコイルの他に熱冷風を吹き付ける熱冷風方式があり、キャリコイル以外の方法であっても構わないが、キャリコイルであれば、金属ロールによる応答が迅速となって、温度調整を迅速に行うことができる。しかも、キャリコイルへ供給する高周波電圧を変化させることにより、金属ロールの発熱量を容易に調整できる。このため、キャリコイルによる加熱手段が好ましい。
【0025】
また、請求項5の発明に係るスーパーカレンダーは、前記樹脂ロールには、該樹脂ロールの端部を冷却する端部冷却手段を配してあることを特徴としている。
【0026】
紙シートをニップする部分では樹脂ロコールと金属ロールとが直接接触することがないのに対して、紙シートが通過しない部分、すなわち樹脂ロールの端部では金属ロールと直接接触することになる。このため、樹脂ロールの端部では、金属ロールにより加熱されて温度が上昇し、紙シートが通過する部分とで温度差が生じてしまう。このため、樹脂ロールの端部を冷却する端部冷却手段を設けたものである。
【0027】
端部冷却手段としては、例えば特開2000−73291号に開示されている水と空気とを端部に吹き付ける2流体ノズルによる方法等がある。
【0028】
また、請求項6の発明に係るスーパーカレンダーは、前記樹脂ロールと金属ロールとのニップ部の圧力を調整する加圧手段を、最上段のトップスイミングロールに対して配設し、該加圧手段により各ニップ部の圧力を生じさせることを特徴としている。
【0029】
すなわち、樹脂ロールと金属ロールとを鉛直方向に交互に配したその最上段のスイミング機能を有する金属製をトップスイミングロールに加圧するようにしたものである。樹脂ロールと金属ロールとを組み合わせることにより、高温ソフトニップ化が果たされるため、従来のスーパーカレンダーに比べてニップ部の段数を減じることができる。例えば、従来では10段のニップ構成とする必要があるのに対して、高温ソフトニップ化とすることにより7段のニップ構成で同等品を得ることができる。また、平滑性が高く、高光沢の紙を製造する場合には、ニップ構成を例えば8段としても、従来よりも少ない段数でよい。このため、樹脂ロールと金属ロールのそれぞれに加圧装置を配することなく、最上段のロールに設けた加圧手段で各ニップ部の圧力を生じさせ、調整するようにしたものである。
【発明の効果】
【0030】
この発明に係るスーパーカレンダーによれば、紙シートを高温によりニップすることができると共に、樹脂ロールと調温ロールとの組み合わせによりソフトニップすることができる。このため、紙シートの密度が均一化されて、高平滑と高光沢が付与され、印刷適性や印刷面感等の優れた表面性を備えさせることができるようになる。
【0031】
また、このスーパーカレンダーの高温ソフトニップ化は、金属ロールを高温化することで、高平滑性と高光沢を得やすくすると共に、ロール段数を削減することができトータル線圧を小さくでき、紙厚の確保と幅方向の紙厚の均一化を図ることができる。さらに、スーパーカレンダーの増速が可能であり、生産性向上を図ることができる。
【0032】
また、請求項2の発明に係るスーパーカレンダーによれば、金属ロールの表面温度の調整は、該金属ロールの外部に設けた加熱手段によるから、該金属ロールの表面温度の調整を容易に行うことができ、所望の平滑性や光沢を備えた紙の製造に迅速に対応することができる。
【0033】
また、請求項3の発明に係るスーパーカレンダーによれば、紙シートの幅方向に対して金属ロールの表面温度を調整できるから、いわゆるキャリパー(紙厚)制御と共に、グロス(光沢)プロファイルを任意のばらつき内に収めるというマルチバリアブル制御を簡便に行うことができる。
【0034】
また、請求項4の発明に係るスーパーカレンダーによれば、金属ロールの表面温度の制御を、簡便に、しかも迅速に行うことができる。
【0035】
また、請求項5の発明に係るスーパーカレンダーによれば、樹脂ロールの表面温度に関して、紙が接触する部分と接触しない部分との差を小さくすることができる。
【0036】
また、請求項6の発明に係るスーパーカレンダーによれば、ニップ圧の発生と調整とを行う加圧手段を簡単な構造とすることができ、ニップ圧の調整作業を簡便に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係るスーパーカレンダーを具体的に説明する。図2にこの発明に係るスーパーカレンダー10の概略構造を示してある。抄紙機で抄かれた紙シートLは巻取紙P1に形成されて、このスーパーカレンダー10の上位に配されているアンワインダー装置11に供される。紙シートLは巻取紙P1から巻き戻されて、カレンダー部20を通過して、下位に配されたワインダー装置12において巻き取られて巻取紙P2に形成される。
【0038】
図1は前記カレンダー部20を簡略化した図であり、該カレンダー部20は弾性ロール21と金属ロール22とを鉛直方向に順次配して構成されている。なお、これらロール21、22については、上位に位置するものから順に、弾性ロール21a〜21e、金属ロール22a〜22cのように添え字を付してある。また、前記弾性ロール21aの上方にはトップロール24が配されており、前記弾性ロール21eの下方にはボトムロール25が配されている。これらのロール21、22、24、25間でニップ部23a〜23iが構成されている。また、弾性ロール21cと弾性ロール21dとは連続して配されており、これらの弾性ロール21c、21dにより構成されるニップ部23fはリバースニップ部とされている。
【0039】
前記弾性ロール21には、外周面に耐熱性の樹脂が被覆された樹脂ロールが用いられており、それぞれの弾性ロール21の端部には、図示しない端部冷却手段が対向して設けられている。この端部冷却手段は、例えば特開2000−73291号公報に開示された冷却水と冷却空気とを混合して弾性ロール21の端部に吹き付ける2流体ノズルなどが用いられる。
【0040】
前記金属ロール22のうち、最上位の金属ロール21aには、該金属ロール21aの表面を外部から加熱することができる加熱手段としてのキャリコイル26が配されている。このキャリコイル26は、金属ロール22aの表面に沿って適宜数の加熱コイルが配されており、該加熱コイルに高周波電流を通じることによる電磁誘導作用によって金属ロール22aの表面に渦電流を発生させて、金属ロール22aの表面に発熱を促すものである。このキャリコイル26は金属ロール22aの長手方向に沿って適宜台数が設けられており、それぞれのキャリコイル26の電流を調整できるようにしてあり、そのため、金属ロール22aの発熱が局部的となり、表面温度を部分ごとに調整することができるようにしてある。
【0041】
また、前記金属ロール22のうち、金属ロール22bと金属ロール22cとには、内部に高温油を流通させて加熱し、内部からの熱伝導により表面温度を上昇させる調温ロールとしてある。すなわち、前記高温油の温度を調整することにより、金属ロール22b、22cの表面温度が調整される。また、前記金属ロール22cをこのカレンダー装置10の駆動ロールとしてある。さらに、金属ロール22bと金属ロール22cとには、紙シートLと接触する部分に、該紙シートLの流れの上流側から臨ませたエアノズル29が設けられており、これら金属ロール22c、22bと紙シートLとの接触部に空気を吹き付けている。
【0042】
そして、前記トップロール24には、図1に示すように、加圧装置27が設けられており、該トップロール24を介してニップ部23a〜23iにおけるニップ圧を発生すると共に、圧力の大きさを調整するようにしてある。
【0043】
また、樹脂ロール21と金属ロール22のそれぞれ対応してフライロール28が設けられており、紙シートLはこれらフライロール28に案内されることにより、適宜な張力が付与されている。
【0044】
以上により構成されたこの発明の実施形態に係るスーパーカレンダー10の作用を、以下に説明する。
【0045】
前記巻取紙P1から巻き戻された紙シートLは、前記トップロール24と最上位の弾性ロール21aとの第1ニップ部23aに案内されてカレンダー部20に導かれる。弾性ロール21aを通過後は、フライロール28aに巻回されて、第2ニップ部23bに導かれ、弾性ロール21aと金属ロール22とによりニップ圧を受けることになる。
【0046】
このとき、前記金属ロール22aにはキャリコイル26が配されているから、該金属ロール22aの表面を局部的に温度を調整することができる。しかも、外部からの加熱によるものであるので、金属ロール22aの表面温度を高くすることができる。そして、紙シートLは、この金属ロール22の表面に接触することにより加熱されると共に、樹脂ロールである弾性ロール21aにニップされるから、平滑性と光沢とが付与され、密度が均一化される。
【0047】
前記第2ニップ部23bを通過した後は、フライロール28bを巻回して第3ニップ部23cに導かれる。この第3ニップ部23cでは、紙シートLは金属ロール22aと弾性ロール21bとにニップ圧を受けることになる。
【0048】
次いで、フライロール28cに案内されて、弾性ロール21bと調温ロールである金属ロール22bとにより構成される第4ニップ部23dに導かれる。この第4ニップ部23dでは、弾性ロール21bと調温ロール(金属ロール)22bとによりニップされて紙厚の調整が行われる。その後、フライロール28dに案内されて第5ニップ部23eに導かれ、調温ロール22bと弾性ロール21cとによりニップされて紙厚の調整が行われる。
【0049】
そして、フライロール28eに案内されて弾性ロール21cと弾性ロール21dとにより構成されるリバースニップ部である第6ニップ部23fに導かれた後、フライロール28fに案内されて第7ニップ部23gに導かれる。この第6ニップ部23fでは、紙シートLに対し弾性ロール21と金属ロール22との位置関係を反転させて、該第6ニップ部23fの上流側と下流側とのニップの条件を等しくして、表裏差をなくすようにする。
【0050】
第7ニップ部23gでは、紙シートLは弾性ロール21dと調温ロール(金属ロール)22cとによりニップされて紙厚の調整が行われ、さらにフライロール28gに案内されて第8ニップ部23hに導かれ、調温ロール22cと弾性ロール21eとによりニップされて紙厚が調整される。
【0051】
その後、フライロール28hに案内されて、弾性ロール21eとボトムロール25とによる第9ニップ部23iでニップされた後、前記ワインダー装置12に給送されて紙管に巻き取られて巻取紙P2とされる。
【0052】
前述したように、この発明の実施形態に係るスーパーカレンダーでは、金属ロール22に外部から加熱するキャリコイル26を具備させたものと、内部に高温油を通じヒートロールとしている。このため、従来のヒートロールのみによるキャリパー(紙厚)制御に比較して、幅方向に均一となるよう制御ができると共に、省エネルギーを図ることができる。これは、ヒートロールが基本的に幅方向の温度分布を均一化することが目的であって、ある特定の個所だけの幅方向の温度制御を行うことができないためであり、これを補うために、金属ロールの外部から局部的に加熱することで当該部分でロールを膨張させ、幅方向の均一なキャリパー制御が可能となるからである。さらに、外部から局部的に加熱することができる加熱手段による場合には、ロールの昇温を直ちにロール表面から行うのに対して、ヒートロールは油温により昇温すること、油温を調整するため水冷却を行うこと、および油配管からの熱損失があるため、トータルの熱損失が外部加熱装置に比べて大きいからでもある。
【0053】
また、スーパーカレンダーの高温ソフトニップカレンダー化では、処理開始時のヒートロールを高温にして紙をロールでニップする際、ニップした時点で紙がヒートロールに貼り付いて、紙シートLが破断する現象が発生する。これは、スーパーカレンダーは各ロールを駆動できないため、ニップした時点でロールが停止しており、かつ、高温のためである。これに対して、高温ソフトニップカレンダーでは、ニップの時もニップでない時も、各ロールを駆動できるので、このようなヒートロールへの貼り付きは発生しない。スーパーカレンダーの高温ソフトニップ化では、この対応策として、スーパーカレンダー処理開始時のロール温度を若干低く(60℃程度)し、ニップ後低速で紙シートLを送りながら、ロールを昇温させている。所定温度まで昇温する間(10〜20分)では、損紙が発生することになり操業性の低下を招いている。本発明のスーパーカレンダーの高温ソフトニップ化では、前記エアノズル29によって、紙シートLへエア吹き付けを行うことで、紙シートLのヒートロールへの付着を防止することができ、操業性の向上が図られる。
【0054】
出願人は、実機における既存のスーパーカレンダーを本発明に係るスーパーカレンダーに改良して、改良の前後における各段のニップ圧力を測定して比較した。その結果を図3に示してある。既存のスーパーカレンダーでは、ニップ段数が11段であるのに対して、本発明に係るスーパーカレンダーでは既設のスーパーカレンダーの上2段を省略する構造とすることができた。したがって、本発明に係るスーパーカレンダーではニップ段数が9段となる。また、それぞれのニップ圧力は図3の通りであり、トータルのニップ圧力が小さくなり、同質の紙を製造する場合に、省エネルギー化を図れることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0055】
この発明に係るスーパーカレンダーでは、高温ソフトニップカレンダー化することにより、平滑性が高く、高光沢の紙を製造することができると共に、ニップ段数を減じることができて、省エネルギー化に寄与できる。しかも、既設のスーパーカレンダーを容易に改良できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】この発明に係るスーパーカレンダーのカレンダー部について、その概略の構成を説明する図である。
【図2】この発明に係るスーパーカレンダーの概略構造を示す側面図である。
【図3】既設のスーパーカレンダーを、この発明に係るスーパーカレンダーに改良した場合に、改良の前後におけるニップ圧を比較する表である。
【図4】従来のスーパーカレンダーのカレンダー部の概略構成を説明する図で、図1に相当している。
【符号の説明】
【0057】
1、P2 巻取紙
L 紙シート
10 スーパーカレンダー
11 アンワインダー装置
12 ワインダー装置
20 カレンダー部
21a〜21e 弾性ロール
22a〜22e 金属ロール
23a〜23i ニップ部
24 トップロール
25 ボトムロール
26 キャリコイル(加熱手段)
27 加圧手段
28 フライロール
29 エアノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取紙から巻き戻された紙シートを、樹脂ロールと金属ロールとを一部にリバースニップ部を設けて交互に配して構成されるニップ部を通過させて、該紙シートに平滑性と光沢とを付与するスーパーカレンダーにおいて、
前記金属ロールの一部を、高温に調整可能な調温ロールとしたことを特徴とするスーパーカレンダー。
【請求項2】
前記金属ロールの一部であって、前記調温ロール以外の金属ロールの表面を加熱する加熱手段を、該金属ロールの外部に設けたことを特徴とする請求項1に記載のスーパーカレンダー。
【請求項3】
前記加熱手段は、前記金属ロールを、該金属ロールの軸方向に沿って局部的に加熱温度を変更できるものであることを特徴とする請求項2に記載のスーパーカレンダー。
【請求項4】
前記加熱手段は、キャリコイルであることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のスーパーカレンダー。
【請求項5】
前記樹脂ロールには、該樹脂ロールの端部を冷却する端部冷却手段を配してあることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のスーパーカレンダー。
【請求項6】
前記樹脂ロールと金属ロールとのニップ部の圧力を調整する加圧手段を、最上段のトップスイミングロールに対して配設し、該加圧手段により各ニップ部の圧力を生じさせることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のスーパーカレンダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−56409(P2007−56409A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−243949(P2005−243949)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】