説明

セキュリティデバイス

セキュリティデバイスが、レンチキュラー集束要素(2)のアレイを備えるレンチキュラーデバイスを有し、対応する画像細片の対(A,B)のアレイの上方に、第1の観察方向では、各対からの第1の画像細片(A)がレンチキュラー集束要素(2)のそれぞれにより見られるように、第1の観察方向とは異なる第2の観察方向では、各対からの第2の画像細片(B)がレンチキュラー集束要素(2)のそれぞれにより見られるように、レンチキュラー集束要素が置かれる。第1の色の第1の画像を定める部分と第2の色の第2の画像を定める部分とをそれぞれ画像細片の各対のうちの一方(A)が有し、第2の色の第1の画像を定める部分と第1の色の第2の画像を定める部分とをそれぞれ画像細片の各対のうちの他方(B)が有し、それによって、デバイスを傾けたときに第1の画像と第2の画像の間で色の切換えが見られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティデバイスに関し、例えば、紙幣、小切手、パスポート、IDカード、内容証明書(certificate of authenticity)、収入印紙、および価値または個人情報を保証するための他の文書などの貴重品用のセキュリティデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの様々な光学的セキュリティデバイスが知られている。その中で最も一般的なものはホログラムデバイスや他の回折性デバイスであり、それらはクレジットカードなどによく見られる。しかしながら、偽造者はますます洗練されてきており、訓練されていない観察者が本物のデバイスと区別するのが困難な、ホログラフィーのようなデバイスを作成することができる。薄膜干渉構造や、多層ポリマー構造、液晶構造を使用して角度に依存した色付きの反射を発生させることもよく知られている。薄膜干渉構造を利用するセキュリティデバイスの例が米国特許第4186943号や米国特許出願公開第20050029800号に記載されており、多層ポリマー構造を利用するセキュリティデバイスの例が欧州特許出願公開第1047549号に記載されている。これらの材料の問題は、通常費用がかかり、可能な色の範囲が材料の根本的な光学的特徴によって制限されているということである。例えば、液晶材料では、液晶膜からの反射光が波長の狭い帯域(それは、液晶膜のらせん構造のピッチの関数である)にわたるという事実により、セキュリティデバイスが利用可能な色の範囲が実質的にきれいなスペクトル色に制限される。加えて、入射角を垂直入射から増加させたときに、液晶膜が示す、長波長の色から短波長の色への、例えば赤色から緑色へのカラーシフトが常にある。
【0003】
例えば、米国特許第4892336号に記載されているように、いわゆるレンチキュラーデバイスをセキュリティデバイスとして使用できることも知られている。典型的には、これらのレンチキュラーデバイスで使用されるマイクロプリントは、スレッドなどのデバイスを異なる角度で見ると異なる色が認識されるように、異なる色の細片を備える。この手法の問題のうちの1つは、微小レンズとマイクロプリントの間で非常に精密な位置合わせが必要になるということである。実際、米国特許第4892336号には、この精密な位置合わせの必要性を、そのためにそうしたセキュリティデバイスを偽造するのが非常に困難になるという点で、その発明の利点の1つとして前面に押し出している。他方、セキュリティデバイスが商業的に有用であるためには、本物のデバイスは製造するのが比較的容易でなければならない。というのは、そうでないと、生産コストが法外に高くなるからである。
【0004】
米国特許第4765656号にも、レンチキュラースクリーンを使用して作られたセキュリティデバイスが記載されており、この場合、既にin situでデバイス内にできている微小レンズを介したレーザ直接描画により、微小画像が形成される。この手法は、レンズと画像の間の正確な位置合わせを実現するものの、やはり大量生産の技法には適していない。
【0005】
従来のレンチキュラーデバイス別の例が、国際公開第03/052680号に記載されている。
【0006】
米国特許第4402150号には、潜像効果をベースとするレンチキュラーデバイスが記載されている。したがって、垂直または直角に見ると、デバイスはのっぺりした、例えば赤色の外観を示すが、他の角度で見ると、色付きの背景を背にして記号が識別される。
【0007】
豪州特許第764842号には、ある観察角度では透明だが、別の角度では画像が見えるレンチキュラーデバイスが記載されている。
【0008】
米国特許第5301981号には、1組の不透明な線を下面に有するレンチキュラー膜が記載されている。その膜は、画像などの上に付着されて、画像などが写真複写されないようにする。というのは、直角な入射角では図が不透明に見えるが、鋭角では下に重なる情報を見ることができるからである。
【発明の概要】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、セキュリティデバイスが、レンチキュラー集束要素のアレイを備えるレンチキュラーデバイスを有し、対応する画像細片の対のアレイの上方に、第1の観察方向では、各対からの第1の画像細片がレンチキュラー集束要素のそれぞれにより見られるように、第1の観察方向とは異なる第2の観察方向では、各対からの第2の画像細片がレンチキュラー集束要素のそれぞれにより見られるように、レンチキュラー集束要素が置かれ、第1の色の第1の画像を定める部分と第2の色の第2の画像を定める部分とをそれぞれ画像細片の各対のうちの一方が有し、第2の色の第1の画像を定める部分と第1の色の第2の画像を定める部分とをそれぞれ画像細片の各対のうちの他方が有し、それによって、デバイスを傾けたときに第1の画像と第2の画像の間で色の切換えが見られることを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、セキュリティデバイスを製造する方法が、レンチキュラー集束要素のアレイを透明基材の一方の側に設けるステップと、対応する画像細片の対のアレイを透明基材の他方の側に設けるステップとを含み、第1の観察方向では、各対からの第1の画像細片がレンチキュラー集束要素のそれぞれにより見られるように、第1の観察方向とは異なる第2の観察方向では、各対からの第2の画像細片がレンチキュラー集束要素のそれぞれにより見られるように、画像細片およびレンチキュラー集束要素がレンチキュラーデバイスを定め、第1の色の第1の画像を定める部分と第2の色の第2の画像を定める部分とをそれぞれ画像細片の各対のうちの一方が有し、第2の色の第1の画像を定める部分と第1の色の第2の画像を定める部分とをそれぞれ画像細片の各対のうちの他方が有し、それによって、デバイスを傾けたときに第1の画像と第2の画像の間で色の切換えが見られることを特徴とする。
【0011】
この発明で、検証が容易な、単純だがセキュアなセキュリティデバイスを提供する。これは、集束要素と画像細片の間の位置合わせにかかわらず、観察者が第1の画像と第2の画像の間で単純な色の切換えを見ることになるからである。
【0012】
「色」という用語は回折色にまで拡張されることを、すなわち第1の色と第2の色は、異なる回折効果を有し、色が角度とともに、ただし様々なやり方で変化し得るということを理解されたい。
【0013】
単純な画像の切換えによりある程度の安全性を確保することができるが、好ましい例では、第1のレンチキュラーデバイスと同じ構造を有する第2のレンチキュラーデバイスであって、ただし、第1の画像細片が第2の色の第1の画像の部分と第1の色の第2の画像の部分をそれぞれ定め、ある組の画像細片の各対のうちの他方が第1の色の第1の画像を定める部分と第2の色の第2の画像を定める部分とをそれぞれ有するように、その組の画像細片の各対が形成されている第2のレンチキュラーデバイスを、セキュリティデバイスはさらに備える。
【0014】
この構成で、それぞれが色の切換えを実現し、それらの色の切換え自体が相補的である2つのレンチキュラーデバイスが設けられる。このデバイスは、2つのデバイス間の相補的な色の切換えを観察することによって検証され、特定の角度で特定の色が現れる必要がないので、レンチキュラー集束要素と画像細片の間で位置合わせをする必要性が低くなる。
【0015】
第1および第2のレンチキュラーデバイスは、間隔を空けることができ、例えばレンチキュラーデバイス、ホログラム、モアレ拡大デバイスなどの他の光学的に変動するデバイスにより分離することができるが、互いに隣接して置くと都合よい。
【0016】
今までは、色の切換えの観点で本発明を記載してきた。本発明の第3の態様によれば、、レンチキュラー集束要素のアレイを備えるレンチキュラーデバイスを有するセキュリティデバイスであって、対応する細片の対のアレイの上方に、第1の観察方向では、各対からの第1の細片がレンチキュラー集束要素のそれぞれにより見られるように、第1の観察方向とは異なる第2の観察方向では、各対からの第2の細片がレンチキュラー集束要素のそれぞれにより見られるように、レンチキュラー集束要素が置かれ、第1の画像を定める1つまたは複数の不透明部分と第2の画像または背景を定める1つまたは複数の透明部分とをそれぞれ細片の各対のうちの一方が有し、第1の画像を定める1つまたは複数の透明部分と第2の画像または背景を定める1つまたは複数の不透明部分とをそれぞれ細片の各対のうちの他方が有し、それによって、デバイスを傾けたときに第1の画像と第2の画像または背景との間で見かけ上の切換えが見られることを特徴とするセキュリティデバイスを提供する。
【0017】
本発明の第4の態様によれば、セキュリティデバイスを製造する方法であって、レンチキュラー集束要素のアレイを透明基材の一方の側に設けるステップと、対応する細片の対のアレイを透明基材の他方の側に設けるステップとを含み、第1の観察方向では、各対からの第1の細片がレンチキュラー集束要素のそれぞれにより見られるように、第1の観察方向とは異なる第2の観察方向では、各対からの第2の細片がレンチキュラー集束要素のそれぞれにより見られるように、細片およびレンチキュラー集束要素がレンチキュラーデバイスを定め、第1の画像を定める1つまたは複数の不透明部分と第2の画像または背景を定める1つまたは複数の透明部分とをそれぞれ細片の各対のうちの一方が有し、第1の画像を定める1つまたは複数の透明部分と第2の画像または背景を定める1つまたは複数の不透明部分とをそれぞれ細片の各対のうちの他方が有し、それによって、デバイスを傾けたときに第1の画像と第2の画像または背景との間で見かけ上の切換えが見られることを特徴とする方法を提供する。
【0018】
本発明のこれらの態様では、不透明な、典型的には反射性または金属性のものと、透明画像および背景との間の単純な切換えが実現される。透明のビューでは、セキュリティデバイスが取り付けられた物品に関する下に重なる情報を見ることができる。
【0019】
典型的には、第1の画像は、記号、文字、またはグラフ状の図案のうちの1つを備え、好ましくは、セキュア文書をそれから識別または認証することができる情報を提供する。一方、第2の画像は、第1の画像に対する背景を、または好ましくは別の画像を備えてもよく、その別の画像は第1の画像と同じでもよい。
【0020】
典型的には、レンチキュラー集束要素はシリンドリカルレンズを備えるが、微小ミラーを備えることもできる。レンチキュラー集束要素についての周期性、したがって最大基礎直径は、好ましくは5〜200μm、より好ましくは10〜60μm、さらにより好ましくは20〜40μmの範囲内である。レンチキュラー集束要素についてのFナンバーは、好ましくは0.25〜16、より好ましくは0.5〜2の範囲内である。
【0021】
2つの画像細片しか必要とされないので、レリーフ構造を使用して画像細片を定めることも可能であるが、基材上に簡単にこれらの画像細片を印刷することができる。これにより、はるかに薄いデバイスを構成することが可能になり、このことは、セキュリティ文書で使用するときに特に有益である。
【0022】
レリーフ構造はエンボス加工または注型硬化(cast−curing)により形成することができる。言及した2つのプロセスのうちでは、注型硬化により複製の忠実度がより高くなる。
【0023】
以下でより詳細に記載するように、多様な異なるレリーフ構造を使用することができる。しかしながら、画像細片は、回折格子の区域として画像をエンボス加工/注型硬化することにより簡単に作り出すことができる。画像の異なる部分は、格子のピッチまたは向きを異ならせて領域同士に異なる回折色を与えることを利用して、区別することができる。代替の(および/またはさらに差異を生じさせる)画像構造は、モスアイ(moth−eye)(例えば、国際公開第2005/106601号参照)などの反射防止構造、0次回折構造、アステカ(Aztec)構造(例えば、国際公開第2005/115119号参照)として知られている段状表面のレリーフ光学構造、または単純な散乱構造である。ほとんどの用途の場合、明るさおよびコントラストを高めるために、これらの構造を部分的または完全に金属化することができる。
【0024】
典型的には、レリーフまたは印刷により形成される各画像細片の幅は、100ミクロン未満、好ましくは50ミクロン未満、最も好ましくは5〜25ミクロンの範囲内である。
【0025】
画像細片の対は、レンチキュラー集束要素と位置合わせされている必要はないが、同様の周期性をもつべきである。
【0026】
セキュリティデバイスは、画像構造の一部または別の層として金属化層を備えてもよい。好ましくは、そうした層は、いくつかの場所で選択的に非金属化されている。加えて、そのデバイスは、金属化層の上にレジスト層をさらに備えてもよい。金属化層および/またはレジスト層は、好ましくは証印として構成される。
【0027】
デバイスを機械読取り可能なように構成することも好ましい。このことは、いくつかのやり方で実現することができる。例えば、デバイスの少なくとも1つの層(オプションで別個の層として)が、機械読取り可能な材料をさらに備えてもよい。好ましくは、機械読取り可能な材料は、マグネタイトなどの磁性材料である。機械読取り可能な材料には、外的刺激に対する反応性があってもよい。さらに、機械読取り可能な材料が層内に形成されるとき、この層は透明でもよい。
【0028】
セキュリティデバイスは、多くの異なる用途で、例えば、価値のあるものに取り付けて使用することができる。好ましくは、セキュリティデバイスは、セキュリティ文書に付着されるか、またはセキュリティ文書内に実質的に含まれる。したがって、セキュリティデバイスは、そうした文書の表面に取り付けてもよいし、または部分的に文書内に埋め込んでもよい。セキュリティデバイスは、セキュリティ文書用に色々な異なる形態をとることができ、これらの形態には、限定的でない例として、セキュリティスレッドや、セキュリティファイバ、セキュリティパッチ、セキュリティストリップ、セキュリティストライプ、セキュリティフォイルが含まれる。
【0029】
では、添付の図面を参照して、本発明によるセキュリティデバイスおよび方法のいくつかの例を記載し、既知のデバイスと対比する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】既知のレンチキュラーデバイスを通した概略断面図である。
【図2】図1の既知のレンチキュラーデバイスの修正形態を上から見た斜視図である。
【図3】異なる傾斜角での図2のデバイスの外観を示す。
【図4a】異なる傾斜角で見たときの、本発明によるデバイスの第1の例の外観を示す。
【図4b】図4aに示した例の構造を概略的に示す。
【図5】図4のデバイスの構造の詳細を拡大した形で示す。
【図6a】レンズと画像細片の間の位置合わせの程度を異ならせた場合の、関連技術のデバイスの例を示す。
【図6b】第1の例と同様だがシリンドリカルレンズと画像細片の間の位置合わせがそれぞれの場合で異なる、本発明によるデバイスのさらに4つの例の外観を示す。
【図6c】画像と背景の間に中間領域がある修正した例を示す。
【図6d】中間領域を実現する1つのやり方を概略的に示す。
【図6e】図6cに示したデバイスの、異なる観察角度での外観を示す。
【図6f】中間領域を実現するための別の方法を概略的に示す。
【図6g】図6fの方法を使用して構成したデバイスの外観を示す。
【図6h】中間領域を実現する第3の方法を概略的に示す。
【図6i】図6hの方法を使用して構成したセキュリティデバイスの、異なる観察角度での外観を示す。
【図7a】図6bと同様だが、相補的な色の切換え効果を示す2つのレンチキュラーデバイスが並んで設けられているデバイスのさらに別の例を示す図である。
【図7b】図7aの例を修正したものを示す。
【図8】視差運動を見せるさらに別のレンチキュラーデバイスが組み込まれた別の例を示す。
【図9】図8に示したデバイスの一部を通した概略断面図である。
【図10】レンチキュラーデバイスと組み合わせたホログラフィー生成構造を組み込んだセキュリティデバイスの別の例を示す。
【図11】図10に示したデバイスの一部を通した概略断面図である。
【図12】本発明による画像細片を定めるレリーフ構造の様々な例を示す。
【図13a】本発明によるセキュリティデバイスを製造する方法の第1の例における連続する段階を示す。
【図13b】本発明によるセキュリティデバイスを製造する方法の第1の例における連続する段階を示す。
【図14】図13に示した方法の修正版を示す。
【図15a】図13の方法の代替方法を示す。
【図15b】図13の方法の代替方法を示す。
【図16a】本発明によるさらに別のセキュリティデバイスの外観を示す。
【図16b】本発明によるさらに別のセキュリティデバイスの概略の断面を示す。
【図17a】金属性領域と透明領域を利用する本発明の代替の例を示す。
【図17b】金属性領域と透明領域を利用する本発明の代替の例を示す。
【図18】図17に示した種類のデバイスを形成するための方法を示す。
【図19】図6および図7に示したデバイスをセキュリティスレッドとして使用したものを示す。
【図20】図19に示したセキュリティスレッドの、ある観察角度での外観を示す。
【図21】図19に示したセキュリティスレッドの、別の観察角度での外観を示す。
【図22】図8および図9に示したものの代替の例を異なる観察角度で示す。
【図23】図8および図9に示したものの代替の例を異なる観察角度で示す。
【図24】モアレ拡大構造を示す。
【図25】微小ミラーを利用するデバイスを示す。
【図26】図6aと同様だが、背景の代わりに第2の画像を利用したものの図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
既知のレンチキュラーデバイスを図1〜図3に示す。図1は、画像A〜Gを観察するのに使用される既知のレンチキュラーデバイスを通した断面を示す。シリンドリカルレンズのアレイ2が透明基材4上に配置されている。各画像はいくつかの、例えば10個の細片にセグメント化されており、レンチキュラーアレイの各レンズ2の下には、画像A〜Gの特定のセグメント化された領域に対応する1組の画像細片がある。3つの組を図1に示す。第1のレンズの下の細片は画像A〜Gの第1のセグメントにそれぞれ対応し、次のレンズの下の細片は画像A〜Gの第2のセグメントにそれぞれ対応し、その後も同様である。各レンズ2は、1つの観察位置から各レンズ2を通して1つの細片だけを見ることができるように細片の面内で焦点を合わせるように構成される。いかなる観察角度でも、画像(A,B,Cなど)のうちの1つに対応する細片のみが、対応するレンズを通して見えることになる。図示したように、直線上からは画像Dの各細片が見えるのに対し、軸線から数度傾けたときには画像CまたはEからの細片が見えることになる。
【0032】
細片は画像の薄片として構成され、すなわち細片Aはすべて1つの画像からの薄片であり、B,Cなどについても同様である。結果として、デバイスを傾けたときに、一続きの画像が見えることになる。それらの画像は関連付けられることもあるし、関連付けられないこともある。最も単純なデバイスは、デバイスを傾けたときに互いの間で反転する2つの画像を有するであろう。あるいは、それらの画像は、画像が動くように見えるように細片間で横方向にずらされて、レンチキュラーアニメーション効果を生じさせる一続きの画像であってもよい。同様に、画像から画像への変化によって、より複雑なアニメーション(画像の一部が言わば連続的に変化する)、モーフィング(1つの画像がわずかなステップで別の画像に変形する)、またはズーミング(画像が次第に大きくなるかまたは小さくなる)を生じさせることもできるであろう。
【0033】
図2は、レンチキュラーデバイスを斜視図で示すが、簡単にするため、レンズにつき2つの画像細片だけをそれぞれA,Bでラベル付けして示している。図2に示したデバイスの、観察者に対する外観を、図3に示す。このように、上部を前方に傾けて(ビューTTF(top tilted forward))デバイスを配置すると画像細片Aが見えるが、底部を前方に傾けて(ビューBTF(bottom tilted forward))デバイスを配置すると画像細片Bが見えることになる。
【0034】
図4aおよび図4bは、本発明によるセキュリティデバイスの第1の例を示す。このデバイスでは、以前と同様に、透明基材4の上にシリンドリカルレンズのアレイ2が設けられており、その基材4の他方の側には、画像細片の対A,Bが設けられ、各レンズの焦点距離に位置している。この場合、細片A,Bは各レンズ2と位置合わせされている。図4bでわかるように、デバイスを右から見ると、各レンズ2を通して星形の領域に画像細片Aが見え、デバイスを左から見ると、星形の領域に画像細片Bが見えることになる。その結果としてのデバイスの見た目を図4aに示す。ここで、ビューAはデバイスを図4bでの右から観察することに対応し、ビューBはデバイスを図4bでの左から観察することに対応する。
【0035】
本発明によるセキュリティデバイスの典型的な厚さは、レンズ高さが1〜50ミクロン、より好ましくは5〜25ミクロンで、2〜100ミクロン、より好ましくは20〜50ミクロンである。レンチキュラー集束要素についての周期性、したがって最大基礎直径は、好ましくは5〜200μm、より好ましくは10〜60μm、さらにより好ましくは20〜40μmの範囲内である。レンチキュラー集束要素についてのFナンバーは、好ましくは0.25〜16、より好ましくは0.5〜2の範囲内である。
【0036】
記号10(この場合は星の形)が背景12を背にして見えるというのがデバイスの見た目であることが、図4aで見えるであろう。ビューAでは記号10が赤色などの第1の色を、背景12が青色などの第2の色をもち、ビューBではそれらの色が切り換えられるかまたは反転されて、星形10が第2の色(青色)を、背景12が第1の色(赤色)をもつように、記号10と基材12の色は選ばれる。
【0037】
この色の切換えを実現するやり方を図5に示す。この図では、星形記号10の一部を背景12の一部とともに示す。画像細片のA,Bのうちのいくつかを、A1,B1,A2,B2などのようにラベル付けした。図4bに示すように、対応するレンズ2の下で画像細片A,Bの各対が位置合わせされている。
【0038】
反射率が異なる色または領域の任意の対を使用することができるが、簡単にするために、この例では、図5に示すように色を「黒色」および「白色」という。
【0039】
まず画像細片A1を考えると、その細片は背景領域12では黒色だが記号領域10では白色に変わることがわかるであろう。これに対し、画像細片B1は、背景領域12では白色であり、記号領域10では黒色である。記号の線と背景の線の間におけるこの横方向の半分のシフトは、図4aで観察され示された効果が実現されることを意味する。
【0040】
この例では、基材4は、典型的には、透明なポリマーの材料、例えば二軸延伸のPETやポリプロピレンであり、自らを支える、その後物品に付着されるであろうラベルの形とすることができ、あるいは、物品と一体化した部分とすることができる。したがって、そのデバイスによりセキュリティスレッドの一部を形成することができ、または、基材4は価値のある文書、例えば紙幣などの物品自体の基材であってもよい。この場合、そのデバイスは紙幣の透明なウィンドウに設けられることになる。
【0041】
レンチキュラー集束要素についての周期性、したがって最大基礎直径は、好ましくは5〜200μm、より好ましくは10〜60μm、さらにより好ましくは20〜40μmの範囲内である。レンチキュラー集束要素についてのFナンバーは、好ましくは0.25〜16、より好ましくは0.5〜2の範囲内である。それらは、典型的には紫外線注型硬化の複製または熱エンボス加工により形成される。
【0042】
この例では、細片AおよびBでの画像要素は、基材4の下面上へのオフセット平版印刷や、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷を含む(ただしこれらに限定されない)任意の適当な印刷技法によって印刷される。したがって、まず、第1の色の細片AおよびBの画像要素が印刷され、それから続けて第2の色を重ね刷りすることにより、細片AおよびBでの第2の色の画像要素がそれぞれ形成されることになる。この第2の色は、第1の色と並んでいるところでは不明瞭になる。細片に画像要素を設ける他の方法を以下で記載する。
【0043】
今述べた例では、画像細片A,Bはレンズ2と位置合わせされている。画像細片とレンズを正確に位置合わせすることにより、どの角度で異なるビューが見られるかが既知であるように、すなわち、図4aに関しては、前方に傾けたときに常に黒色の星形が見え、後方に傾けたときに常に黒色の背景が見えるように、デバイスを構成することが可能になる。しかしながら、位置合わせは本質的ではなく、図6bは画像細片が位置合わせされていない例を示す。この場合、異なるビューが生じる角度はレンズの下の細片の位置に依存し、図6bはこの位置に依存する4つの可能な変形例を示す。例えば、変形例Aは、位置合わせが正確であり2つの画像細片が1つのレンズの下に位置する場合についてのものである。過渡的な状態(TI)が2つの切換え位置の間に存在し、この場合、これが傾きのない状態である。変形例Dも位置合わせが正確な場合についてのものであるが、この場合は、画像細片が変形例Aでの位置に対して逆さまになっている。変形例B,Cは変形例A,Dの間の中間位置を示し、ここでは細片の一部だけが1つのレンズの下に位置する。本発明の利点は、位置合わせがどのようなものでも、観察者は画像と背景の間の相補的な切換えを常に目にするということである。これは、画像も背景もなく、したがって画像と背景領域の間に相補的な切換えがない関連技術とは対照的である。この場合、認証は1つの領域の切換えとこれが起こる角度に完全に依拠する。
【0044】
図6aは、画像細片と微小レンズの間の位置合わせの程度を異ならせた場合の、関連技術の例を示す。図6bと同様に、変形例AおよびBは、位置合わせが正確であり、2つの画像細片が1つのレンズの下に位置し、前方に傾けることにより(TTF)ある色が見られ、後方に傾けることにより(BTF)別の色が見られる場合についてのものである。デバイスを傾けていないときは、2つの色の間で過渡的な状態(TI)が見られる。しかしながら、位置合わせが正確でない変形例BおよびCについては、ある色から別の色への切換えは、傾けていない位置からデバイスを著しく傾けたときだけ起こり、したがって、認証者により見られないこともある。
【0045】
図26は、図6bに示したものと同様の実施形態だが、図6bで背景を形成する画像要素が図26では代わりに第2の画像を形成するものを示す。したがって、第1の観察角度21での図26のデバイスは、赤色の星形記号と青色の数字5を表示する。図示したようにデバイスを異なる観察角度、例えば24に傾けると、2つの画像が逆さまになって、星形記号が青色で数字5が赤色になる。図6bの例と同様に、デバイスは2つのビューAおよびBを備え、ビューAを形成する細片内の画像要素は、星形の領域では赤色、数字の5の領域では青色であり、逆に、ビューBを形成する細片内の画像要素は、星形の領域では青色、数字5の領域では赤色である。
【0046】
ぼんやりした過渡的な、すなわち切換えの画像(TI)があることは望ましくないことがあり、したがって、さらなる実施形態では、星形と背景の間に境界領域などの中間領域が作成され、これを図6cに示す。前景領域(FR)は星形の内側の領域であり、背景領域(BR)は星形の外側の領域であり、中間領域(IR)は星形と背景の間である。図6dは、この中間領域での画像細片を示す。反射率が異なる色または領域の任意の対を使用することができるが、簡単にするために、この例では、図6dに示すように色を「黒色」および「白色」という。
【0047】
まず画像細片A1を考えると、その細片は背景領域(BR)12では白色だが記号領域(FR)10では黒色に変わることがわかるであろう。しかしながら、その細片は、中間領域では半分黒色かつ半分白色である。これに対し、画像細片B1は、背景領域(BR)12では黒色、記号領域(FR)10では白色、中間領域ではA1の中間領域とは逆のパターンで半分白色かつ半分黒色である。したがって、記号領域と中間領域の線と、背景領域と中間領域の線の間には、横方向の4分の1のシフトがある。
【0048】
図6eは、図6dのグリッド構造をもつデバイスの振舞いを示す。この場合、IRに関連する黒色要素が小型レンズの下に集中している。垂直入射(中央のビュー)で、すなわち傾けずにデバイスを観察すると、中間領域が画像の暗い輪郭を与えるように見え、図6eに示すようにY断面の周りにデバイスを傾けると、図4aを参照して記載したやり方でデバイスが切り換わる。ビューAおよびBでは、IRは白色と黒色の間の過渡的な状態にある。あるいは、IRに関連する白色要素が小型レンズの下に集中し、したがって、過渡的な状態で画像の白色輪郭が与えられる。
【0049】
図6fは、傾けたときにIR領域の色が変化しないような、IRのさらに別の実施形態を示す。以前の例と同様に、記号領域と中間領域の線と、背景領域と中間領域の線の間には、横方向の4分の1のシフトがある。しかしながら、この例では、小型レンズの湾曲の軸を横切る方向に、IR領域の直線、すなわちグリッドのシステムが幅TWのサブグリッドシステムに分割されている。まず画像細片A1を考えると、IRにおける画像細片の上側半分は大部分が白色で幅TWの黒色領域をもち、細片の下側半分は大部分が黒色で幅TWの白色領域をもつ。細片B1は細片A1の逆である。サブグリッド領域の線とIRの残りの線の間には、横方向の半分のシフトがある。これは、IRでは両方の色が同時に視覚化され、TWが裸眼で視覚化できるよりも小さな寸法であれば観察者には色の混合が見えるということを意味する。TWの幅は、好ましくは、10〜100μm、さらにより好ましくは20〜50μmの範囲内である。
【0050】
図6gは、図6fのグリッド構造をもつデバイスの振舞いを示し、傾けたときに星形に対する境界線(IR)の色が固定されたままであることを示す。
【0051】
図6hおよび図6iは、この場合は黒色の一様な着色料がIRに設けられた代替の実施形態を示す。この場合、図6iに示すように、傾けたときにIRは黒色のままになる。
【0052】
図7aは、本発明によるセキュリティデバイスのさらに別の例を示す。この場合、本発明の例による2つのレンチキュラーデバイス20,22が並んで設けられており、どの特定の観察角度で視認しても対照的な色を見せることになる。したがって、第1の観察角度21で、デバイス20は青色の背景を背にして赤色の星形記号を表示し、一方デバイス22は赤色の背景を背にして青色の星形記号を表示する。図示したようにデバイスを異なる観察角度、例えば24に傾けると、各デバイスはそれぞれ色の切換えを見せて、デバイス20の星形記号が赤色の背景を背にした青色になり、デバイス22の星形記号が青色の背景を背にした赤色になる。
【0053】
色の切換えに注意することにより観察者がデバイスを検証する単純なやり方を第1の例が提供するのに対し、図7aのデバイスは、2つのデバイス間での相補的なカラーシフトを要求することによりさらに高い安全性を確保することができる。これにより、検証が容易である点と、検証されるフィーチャ(これは、2つのデバイス間での相補的なカラーシフトである)が画像細片と集束要素の間で正確な位置合わせを要しないという事実に照らして、非常に有益なデバイスが提供される。図19は、図6bおよび図7aで記載した概念をセキュリティスレッドに使用したものを示す。この場合、セキュリティ文書の1つおきのウィンドウで画像1と画像2が見えるように、スレッドまたはストリップの長軸に沿って画像1および2の領域ならびに相補的な背景領域が周期的に繰り返される。以前の実施形態と同様に、デバイスを傾けたときに画像とその相補的な切換えが見られる。このことを、デバイスを前方に傾けた場合について図20に示し、デバイスを後方に傾けた場合について図21に示す。前方に傾けてから後方に傾けると、各ウィンドウでの画像の反転が観察者に見えることがわかる。
【0054】
図7bは、図7aに示した例と同様だが、2つのレンチキュラーデバイスが異なる画像を表示する場合、すなわち赤色の背景を背にして青色の数字5を表示するレンチキュラーデバイス23でレンチキュラーデバイス22を置き換えた場合についてのさらに別の例を示す。デバイスの残りの部分は図7aに示したものと同じである。
【0055】
本発明によるセキュリティデバイスの別の例を、この場合、セキュリティスレッドの形で図8に示す。そのデバイスは、互いに接する5つのレンチキュラーデバイス30〜34を備える。デバイス31,33は、図4のデバイスに従って構成され、互いに対して(図7を参照して記載したように)相補的なカラーシフトを見せる。デバイス31,33のシリンドリカルレンズは鉛直に延びている。
【0056】
レンチキュラーデバイス30,32,34は従来の構造のものであり、鉛直に延びるシリンドリカルレンズの下にV字模様の形の画像を定める。5つのデバイスすべてについて、同じシリンドリカルレンズを使用することができる。デバイス30,32,34のシリンドリカルレンズの下の画像細片は、図8に示すようにセキュリティデバイスを左または右に傾けたときに画像が動く効果を与えるように設けられる。この傾けるプロセスの間、デバイス31,33の見た目も切り換えられる。
【0057】
図9は、図8のデバイスの一部を通した断面である。この例では、回折性のレリーフ構造を使用して、細片内の画像要素が生成される。図9でわかるように、そのデバイスは、透明基材4の上に(以前と同様に)シリンドリカルレンズ2の組を備える。デバイス31,33を定める各レンズの下には、図5に示した形態の2つの画像細片A,Bが設けられる。
【0058】
デバイス30,32,34に対応する各レンズの下には、V字模様が動く効果を定める複数の(この場合は6個の)画像細片A〜Fが設けられる。
【0059】
図8および図9に示したものの代替の例では、デバイス31,33のシリンドリカルレンズとデバイス30,32,34のシリンドリカルレンズは異なる方向に延びることができ、例えば、デバイス31および33のシリンドリカルレンズは水平に延び、デバイス30,32,34のシリンドリカルレンズは鉛直に延びることができる。このことを、図22と図23に示す。そうしたセキュリティデバイスを左または右に傾けると、すなわち軸1の周りに回転させると、デバイス30,32および34は画像が動く効果を与えるが、デバイス31,33の見た目は依然として変わらない。これに対し、観察者に対して近付いたり離れるようにセキュリティデバイスを傾けると、すなわち軸2の周りに回転させると、デバイス31,33は以前に記載した色の切換え効果を示すが、デバイス30,32,34の見た目は依然として変わらない。
【0060】
上述したいずれの実施形態でも、デバイス31および33についての細片AおよびBでの画像要素は、レリーフ構造により形成する必要はなく、従来の印刷技法により形成することもできる。これはデバイス30,32および34についても同様であるが、薄いデバイスでのレンチキュラーアニメーション効果には不可欠である小さな細片幅を実現するためには、レリーフ構造を使用することが非常に好ましい。
【0061】
図10および図11は、図8および図9と同様だが別の例を示す。この場合、図8に示したデバイス31,33と同じ形態をもつ2つのレンチキュラーデバイス31,33の周りに、ホログラフィー生成構造36,38,40が綴じ込まれる。
【0062】
典型的にはセキュリティスレッドであるこのデバイスを左右に傾ける(軸1の周りに回転させる)と、図10でわかるように、V字模様の画像が動く効果をホログラフィー生成構造が生じさせることになる。レンチキュラーデバイス31,33の見た目は依然として変わらない。
【0063】
しかしながら、観察者に対して近付いたり離れるようにデバイスを傾ける(軸2の周りに回転させる)と、レンチキュラーデバイス31,33はそれらの色の切換え効果を見せるが、ホログラフィー画像は依然として変わらない。
【0064】
図11でわかるように、レンチキュラーデバイス31,33は画像細片A,Bの組をレンズ2と位置合わせすることにより設けられ、一方、各デバイス36,38,40のホログラフィー微小構造50は基材4のレンズがない部分の下に置かれる。
【0065】
ホログラフィー生成構造36,38,40は、ホログラムまたはDOVID画像要素の形とすることができる。
【0066】
上述のように、画像細片A,Bなどは、基材、すなわちキャリア層4の上に印刷されている。しかしながら、画像細片はレリーフ構造としても形成することができる。これに適した色々な異なるレリーフ構造を図12に示す。例えば、図12のAは、エンボス加工された、またはくぼんだ線の形で細片の画像領域(IM)を示し、エンボス加工されていない線は細片の非画像領域(NI)に対応する。図12のBは、デボス加工された線、または隆起の形で細片の画像領域(IM)を示す。
【0067】
別の手法では、画像領域(IM)のレリーフ構造を、回折格子(図12のC)またはモスアイ/ファインピッチ格子(図12のD)の形にすることもできる。
【0068】
図12のAおよびBの画像領域(IM)には、図12のEおよびFにそれぞれ示すように、さらに格子を設けることができる。
【0069】
図12のGは、画像領域IMに色消し効果を与える単純な散乱構造を使用したものを示す。
【0070】
さらに、上述のように、場合によっては、図12のAにおける画像領域(IM)の凹みにインクを与えることができ、または、図12のBにおけるデボス加工された領域もしくは隆起にインクを与えることができる。後者を図12のHに示す。そこでは、隆起の上にインク層100が設けられている。
【0071】
図12のIは、画像領域(IM)上でアステカ構造を使用したものを示す。
【0072】
加えて、画像区域と非画像区域、または画像領域と非画像領域は、異なる要素の種類の組合せによって定めることができる。例えば、画像区域をモスアイ構造から形成し、非画像区域を格子から形成することができる。また、さらには、画像区域と非画像区域を異なるピッチまたは向きの格子によって形成することもできる。
【0073】
隆起/凹みの高さまたは深さは、好ましくは0.5〜10μmの範囲内、より好ましくは1〜5μmの範囲内である。隆起/凹みの典型的な幅は、アートワークの性質によって定められることになるが、典型的には100μm未満、より好ましくは50μm未満、さらにより好ましくは25ミクロン未満であろう。画像細片の幅と、したがって隆起または凹みの幅は、必要とされる視覚的効果の種類に依存し、例えば、集束要素の直径が30μmであれば、15μm幅の画像細片を使用して、2つのビューA,Bの間で単純な切換え効果を実現することができる。あるいは、アニメーション効果を滑らかにするために、典型的には少なくとも3個であるが理想的には30個ものできるだけ多くのビューを有することが好ましく、この場合、画像細片(および関連する隆起または凹み)の幅は0.1〜6μmの範囲内とすべきである。
【0074】
他の例(図示せず)では、1つまたは複数のホログラフィー生成構造をモアレ拡大構造により置き換えることができ、その構造は2次元または1次元の構造とすることができる。2次元のモアレ拡大構造は、欧州特許出願公開第1695121号と国際公開第94/27254号により詳細に記載されている。モアレ拡大デバイスは、微小レンズと微小画像の組合せにより構成される。レンズアレイと画像アレイの間にわずかなピッチの不整合がある最も単純な場合には、一定倍率の一連の拡大画像が、レンズの垂直視差に起因する動きとともに見られる。1次元のモアレ拡大構造では、従来の2次元のモアレ拡大構造で使用される2次元の球面レンズアレイが、シリンドリカル小型レンズを繰り返した配置と置き換えられる。この結果、レンズの曲率またはレリーフがそれに沿って周期的に変動する唯一の軸内で、微小画像要素がモアレ拡大されることになる。その結果、微小画像は拡大軸に沿って大きく圧縮または縮小されるが、拡大軸に直交する軸に沿った微小画像要素のサイズまたは寸法は、観察者に見えるものと実質的に同じである。すなわち、拡大または引き伸ばしは起こらない。
【0075】
例えば、図24を参照して、モアレ拡大画像が直径2mmの円の配列で構成されるようにする非常に単純なシナリオを考える。さらに、微小レンズアレイに対する微小画像アレイの周期性と配列により50倍のモアレ拡大が実現されるように定めたものと仮定する。便宜的にレンズの湾曲の軸をx軸に選ぶと、微小画像アレイが楕円形の画像要素のマトリックスで構成され、(x軸と一致する)楕円の短軸が0.04mmの幅と2mmの高さをもつことになる。
【0076】
1次元のモアレシステムでは、シリンドリカル小型レンズの曲率が周期的に変動する軸に沿ってのみ視差運動が起こることを理解されたい。したがって、今述べた例では、デバイスを東西に傾けたときに、x軸に沿って円形画像の視差運動(および拡大)が起こる。デバイスを南北に傾けたときには視差運動が見られないことに留意されたい。逆に、シリンドリカルレンズシステムと微小画像アレイを90度だけ回転させた場合、デバイスを南北に傾けたときに、y軸に沿って視差運動が起こる。
【0077】
視差の軸がx軸もしくはy軸に対して45度か、または有利とみなすことができる角度の間の任意の角度になるように、微小レンズアレイと微小画像アレイを配置することも、もちろん可能である。
【0078】
1次元のモアレ拡大デバイスとレンチキュラー構造の組合せは、それらが両方ともレンチキュラーレンズアレイを備え、したがって、デバイスの両方の領域について同じレンズアレイを使用できるため、特に有利である。レンチキュラー構造と1次元のモアレ拡大構造の組合せの典型的な例では、レンチキュラー構造により単純な画像切換えを見せることができ、1次元のモアレ拡大鏡により視差運動の効果を示すことになる。
【0079】
さて、上述のデバイスを製造するための方法のいくつかの例を記載する。第1の例(図13)では、PET層などのキャリア層240を、注型硬化または熱成形の樹脂210で被覆する(ステップ1)。次いで、この樹脂210を、シリンドリカルレンズアレイ200に注型またはエンボス加工する(ステップ2)。
【0080】
次いで、キャリア240の他方の側を、注型硬化または熱成形の樹脂260で被覆し(ステップ3)、細片AおよびB内の画像要素に対応する凹み50を、注型またはエンボス加工により、レンズ200と位置合わせしてその樹脂層内に形成する(ステップ4)。
【0081】
例えば、PET240などの透き通ったポリマー薄膜のロールの第1の表面上を、紫外線硬化性ポリマーの層210で被覆する。適当な紫外線硬化性ポリマーには、ニュージャージー州のNorland Products,Inc.から入手可能な感光性樹脂のNOA61や、Cibaから入手可能なXymara OVDプライマー、Akzo−Nobelから入手可能なUV9206が含まれる。次いで、その膜を、微小レンズアレイ200用の原盤構造の陰画を含む第1のエンボス加工ローラと接触させる。エンボス加工ローラを接触させる際、紫外線硬化性ポリマー層210内に微小レンズアレイ構造200が複製される。構造を複製したら、紫外線放射を当てることにより紫外線硬化性ポリマー層を硬化させ、次いで、被覆膜をエンボス加工ローラから放す。次いで、NOA61などの紫外線硬化性ポリマーの層260を、膜240の反対側の第2の表面上に被覆する。次いで、その膜の第2の表面を、画像細片の画像要素用の原盤構造の陰画を含む第2のエンボス加工ローラと接触させる。エンボス加工ローラを接触させる際、透き通ったポリマー薄膜の第2の表面側の紫外線硬化性ポリマー層内に、画像構造が複製される。構造を複製したら、紫外線放射を当てることにより紫外線硬化性ポリマー層を硬化させ、次いで、被覆膜をエンボス加工ローラから放す。
【0082】
上記の注型用樹脂の着色版などの第1の不透明な着色料52か、または例えばLuminescenceによる60473Gなどのグラビアインキを使用して、一様に着色または染めたコーティングを層260のエンボス加工された表面に塗布する。これにより凹み50が充填され、全体層260上にコーティングが与えられる(ステップ5)。そのコーティング方法は、典型的には、グラビア印刷、平版印刷もしくはフレキソ印刷、またはアニロックスローラの使用による。
【0083】
ステップ6では、細片内の画像要素を形成する凹み50内だけに第1の着色料が残るように、ドクターブレードプロセスを使用して過剰な第1の着色料52を取り除く。
【0084】
ステップ7では、典型的には、平版印刷、フレキソ印刷またはグラビア印刷のプロセスを使用して、レンズ200を通して細片の非画像領域内には第2の着色料54が見え、画像領域には第1の着色料52が見えるように、上記の注型用樹脂の着色版などの着色もしくは染めたコーティングか、または例えばLuminescenceによる60473Gなどのグラビアインキの形で、第2の着色料54を樹脂層260上に被覆する。したがって、観察者は、異なるように着色された背景に、着色画像を見ることになる。
【0085】
図14は、その方法の修正形態を示す。この場合、ステップ1〜4は、図13を参照して前述したものである。しかしながら、ステップ5Aでは、アニロックスローラもしくは印刷ブランケットからのオフセット転写方法、または平版印刷、フレキソ印刷もしくはグラビア印刷を使用して、層260のくぼんでいない直線的な領域上に第1の着色料52が移される。
【0086】
次いで、ステップ6Aでは、第2の着色料54を層260上に、凹み50も充填するように、一様に被覆する(ステップ6A)。これは、グラビア印刷またはオフセット平版印刷のプロセスなどを使用して実行することができる。この場合、第2の着色料54が画像要素を画定し、第1の着色料52が非画像要素を画定し、したがって、着色背景領域を形成することになる。
【0087】
図15は、画像細片が回折性表面レリーフにより形成される代替の方法を示す。
【0088】
ステップ1では、キャリア層240を注型硬化または熱成形の樹脂層260で被覆する。
【0089】
図示したデバイスは細片AおよびBを有しており、それらはレンチキュラー切換えデバイスのビューAおよびBを表し、画像領域と非画像領域を備える。細片Aでは、ある格子構造Xにより画像領域が定められ、細片Bでは、別の異なる格子構造Yにより画像領域が定められる。次いで、前もって作り出しておいた格子構造X,Yを、樹脂層260の露出した表面内にエンボス加工することにより同時に形成する(ステップ2)。AおよびBの画像領域について2つの異なる格子構造を使用することにより、異なる回折性の色彩効果に起因する視覚的なコントラストが与えられる。この差は本質的なものではなく、画像領域は同じ回折性格子の構造によって定めることができる。非画像領域も、画像領域のものとは異なる格子構造によって定めることができる。それらの格子構造は、例えば、回転やピッチにより異ならせることができる。
【0090】
次いで、格子表面のレリーフ構造の上に、反射コーティング層60を設ける(ステップ3)。この反射コーティングは、金属化層かまたは高屈折率層とすることができる。高屈折率の、典型的には無機の材料を使用することは、当技術分野でよく知られており、米国特許第4856857号に記載されている。高屈折率層に適した材料の典型的な例には、硫化亜鉛や、二酸化チタン、二酸化ジルコニウムが含まれる。蒸着被覆した金属の反射強化層を透明な高屈折率層と置き換えることは、セキュア文書の(典型的には開口またはウィンドウとして知られている)透明な領域上に本発明のセキュリティデバイスを付けるときに、特に有益である。
【0091】
次いで、キャリア層240の他方の側を、注型硬化または熱成形の樹脂210で被覆し(ステップ4)、それから、細片AおよびBと位置合わせされるように、1組のシリンドリカルレンズ200を層210内にエンボス加工する(ステップ5)。
【0092】
上述の例では、レンチキュラー集束要素としてシリンドリカルレンズを使用した。しかしながら、それらを微小ミラーにより置き換えられることを理解されたい。
【0093】
図25は、集束要素として微小ミラーを利用する本発明のセキュリティデバイスの典型的な断面を示す。この例では、前述したように1組のシリンドリカルレンズを注型し、次いで、裏面上に金属層を蒸着被覆することにより、一続きの微小ミラー600が熱成形樹脂610内に形成される。レンチキュラーデバイスは、デバイスの頂面上に形成された4つの画像細片A〜Dを備え、その頂面では、浮出し領域(隆起)上に印刷することによりこれらの細片の画像領域が作り出されている。
【0094】
本発明のセキュリティデバイスは、検出可能な材料を任意の層に導入することにより、または別個の機械読取り可能な層を導入することにより、機械読取り可能にすることができる。外的刺激に反応する検出可能な材料には、これらに限定されないが、蛍光材料や、燐光材料、赤外線吸収材料、熱変色性材料、フォトクロミック材料、磁性材料、エレクトロクロミック材料、導電性材料、ピエゾクロミック材料が含まれる。
【0095】
本発明のセキュリティデバイスは、任意の所望の印刷画像や、金属性層などの別のセキュリティフィーチャを備えてもよく、それらは不透明か、半透明か、または覆われていてもよい。そうした金属性層は、既知の非金属化プロセスにより作られた陰画または陽画の証印を含んでもよい。
【0096】
セキュリティデバイスには、薄膜干渉要素や、液晶材料、フォトニック結晶材料などの別の光学的に変動する材料を含めることができる。そうした材料は、膜状の層の形で、または印刷により塗布するのに適した色素材料として存在してもよい。
【0097】
図16aおよび図16bは、本発明のセキュリティデバイスの中に組み込まれた非金属化画像の形の第2のセキュリティフィーチャを示す。図16aに示したセキュリティスレッドは、相補的なレンチキュラー切換えデバイスを備える領域400と、非金属化されている証印を備える領域410とを有する。小型レンズアレイ440の間にレリーフ構造430を形成する画像を備える層の上に、金属化層420が塗布されている。金属層420により、2つの利点が与えられる。まず、レリーフ構造430により形成された画像要素の明るさおよびコントラストを金属化層420により改善することができ、これは、回折性のレリーフ構造を使用して画像要素を形成する場合は特に当てはまる。次に、金属化層420により、反射光、ただしより好ましくは透過光で見ることができる、非金属化された証印を作成することが可能になる。図示した例では、非金属化された証印410をレンチキュラー効果のためのデバイスと別個の領域に示しているが、代替の実施形態では、2つの効果を重ね合わせることができる。
【0098】
部分的に金属化/非金属化された膜であって、制御されはっきり定められた区域に金属が存在しない膜を生成する1つのやり方は、米国特許第4652015号に記載されているものなどのレジスト・エッチング技法を使用して、領域を選択的に非金属化することである。同様の効果を実現するための他の技法が知られており、例えば、マスクを通してアルミニウムを真空蒸着することができ、または、プラスチックキャリアとアルミニウムの複合材の細片からエキシマレーザを使用してアルミニウムを選択的に取り除くことができる。あるいは、Eckartにより販売されているMetalstar(登録商標)インクなどの、見た目が金属性である金属効果インクを印刷することにより、金属性領域を設けてもよい。
【0099】
金属性層があることは、機械読取り可能な暗い磁性層の存在を隠すのに使用することができる。磁性材料がデバイス内に組み込まれていれば、その磁性材料を任意の模様で利用することができるが、一般的な例には、磁気トラムライン(magnetic tramline)を使用するか、または磁性ブロックを使用して、コード化された構造を形成することが含まれる。適当な磁性材料には、酸化鉄顔料(FeまたはFe)や、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉄、ニッケル、コバルト、およびこれらの合金が含まれる。この文脈では、「合金」の用語には、ニッケル・コバルトや、鉄・アルミニウム・ニッケル・コバルトなどの材料が含まれる。フレークニッケル材料を使用することができ、加えて、鉄フレーク材料が適当である。典型的なニッケルフレークは、横の寸法が5〜50ミクロンの範囲内で、厚さが2ミクロン未満である。典型的な鉄フレークは、横の寸法が10〜30ミクロンの範囲内で、厚さが2ミクロン未満である。
【0100】
代替の機械読取り可能な実施形態では、デバイス構造内の任意の位置に、透明な磁性層を組み込むことができる。所定のサイズでありかつ磁性層が透明のままの濃度で分布した磁性材料の粒子の分布を含む適当な透明な磁性層が、国際公開第03091953号や国際公開第03091952号に記載されている。
【0101】
さらに別の例では、本発明のセキュリティデバイスを、セキュリティ文書の透明な領域に組み込まれるように、その文書内に組み込んでもよい。セキュリティ文書は、紙やポリマーを含む任意の従来の材料から形成された基材を有してもよい。これらの種類の基材のそれぞれにおいて透明な領域を形成するための技法が、当技術分野で知られている。例えば、国際公開第8300659号には、基材の両側に不透明なコーティングを備える透明基材から形成されたポリマー紙幣が記載されている。透明な領域を形成するために、基材の両側の局所的な領域ではその不透明なコーティングは省かれる。
【0102】
欧州特許第1141480号には、紙の基材に透明な領域を作る方法が記載されている。紙の基材に透明な領域を作るための他の方法は、欧州特許第0723501号や、欧州特許第0724519号、欧州特許第1398174号、国際公開第03054297号に記載されている。
【0103】
本発明のさらに別の態様では、第1の画像と第2の画像の間のコントラストが、画像要素のうちの1つを被覆しないままにすることにより実現される。図5を参照して、まず画像細片A1を考えると、この例では、その細片は背景領域12では黒色であるが、記号領域10では被覆されないままになる。これに対し、画像細片B1は、背景領域12では被覆されず、記号領域10では黒色である。記号の線と背景の線の間におけるこの横方向の半分のシフトは、図4aに示したやり方でデバイスを傾けたときに黒色から無色への相補的な切換えが起こることを意味する。デバイスの残りの層が実質的に透明であれば、黒色から透明への相補的な切換えを見ることができる。
【0104】
さらなる例では、上記の例で記載した黒色画像を金属性材料などの高反射性材料で置き換えることができる。図5を参照してまず画像細片A1を考えたときに、この例では、その細片は背景領域12では金属性だが記号領域10では被覆されないままになるように、ここでも相補的な画像領域は被覆されないままになる。これに対し、画像細片B1は、背景領域12では被覆されず、記号領域10では金属性である。記号の線と背景の線の間におけるこの横方向の半分のシフトは、図17aに示したやり方でデバイスを傾けたときに金属性から無色への相補的な切換えが起こることを意味する。デバイスの残りの層が実質的に透明であれば、金属性から透明への相補的な切換えを見ることができる。
【0105】
図17aを参照して記載したように、高反射性の画像要素を使用することにより、ある観察角度で高反射性であり、別の角度で実質的に透明に見える領域をもつデバイスを作成することが可能になる。このことを図17bに断面で示す。その図は、一方の側の上に微小レンズ510のアレイが形成され、反対側に、金属化された画像要素と被覆されていない背景の非画像要素とをそれぞれ備える1組の細片AおよびBが形成された透明なポリマーのキャリア層500を備えるセキュリティデバイスを示す。これは、図17aに示したデバイスについての星形の領域内の場合、すなわちE−E線に沿った断面である。図17aの背景領域に着目すると、被覆されていない画像要素と金属化された背景の非画像要素を備える相補的な細片AおよびBの組がある。
【0106】
ここで、図17aのデバイスの下側端部を前方に傾けたとき(BTF)の星形をもつ領域を考えると、被覆されていない領域Bが見え、デバイスは透明に見える。デバイスの上側端部を前方に傾ける(TTF)と、金属化された領域Aが見え、デバイスは高反射性かつ金属性に見える。
【0107】
金属性細片(A)の幅と被覆されていない細片(B)の幅が同じでなく、好ましくは金属性細片の幅の、被覆されていない細片の幅に対する比が25〜35:75〜65であれば、金属性から透明への切換えが最適化される、ということが認められた。
【0108】
マスクを介して薄い金属性層を真空蒸着することにより、または被覆されていない領域を非金属化プロセスで形成することにより、金属性領域を形成することもできる。あるいは、レンズを使用して金属を光除去することにより、金属化された線の組を生成してもよい。印刷された金属性インクを使用して金属性領域を作成することも可能である。
【0109】
図18は、非金属化する方法の一例を示す。ステップ1では、注型硬化プロセスを使用して、樹脂層530に凹み520を形成する。凹み520は、最終的なデバイスで金属化されていない領域に対応する。ステップ2では、好ましくは真空蒸着プロセスにより、樹脂層の表面全体をアルミニウム層540で覆う。ステップ3では、くぼんでいない領域をレジスト層560で被覆し、これは、典型的には平版印刷またはグラビア印刷のプロセスを使用して行う。ステップ4では、その構造を濃厚な水酸化ナトリウム溶液などの金属腐食液に浸漬し、レジストにより被覆されていない領域内のアルミニウムを取り除く。次いで、残りのレジスト560を取り除くと、金属性領域と非金属性領域を備えるデバイスが残る。
【0110】
図17aは画像領域または背景領域を備えるデバイスを示しているが、これは本質的ではなく、デバイスは、被覆されていない透明領域により分離された金属性の線の一様なグリッドを備えてもよい。そうしたデバイスは、傾けたときに透明から金属性に一様に切り換わることになるであろう。
【0111】
金属性から透明に切り換わるそうしたデバイスを、ある観察角度でデバイスが金属性に見えるときに他の証印が隠されており、別の観察角度ではデバイスが透明に見え、下に重なる証印が現れるように、セキュア文書上の他の証印の上に付けることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンチキュラー集束要素のアレイを備えるレンチキュラーデバイスを有するセキュリティデバイスであって、対応する画像細片の対のアレイの上方に、第1の観察方向では、各対からの第1の画像細片が前記レンチキュラー集束要素のそれぞれにより見られるように、前記第1の観察方向とは異なる第2の観察方向では、各対からの第2の画像細片が前記レンチキュラー集束要素のそれぞれにより見られるように、前記レンチキュラー集束要素が置かれ、第1の色の第1の画像を定める部分と第2の色の第2の画像を定める部分とをそれぞれ画像細片の各対のうちの一方が有し、前記第2の色の前記第1の画像を定める部分と前記第1の色の前記第2の画像を定める部分とをそれぞれ画像細片の各対のうちの他方が有し、それによって、前記デバイスを傾けたときに前記第1の画像と前記第2の画像の間で色の切換えが見られることを特徴とするセキュリティデバイス。
【請求項2】
前記第1の画像と前記第2の画像の間に延びる中間領域をさらに備え、前記中間領域では、互いに並んで延びる前記第1の色の区域と前記第2の色の区域により形成された中間区画を各画像細片が有する、請求項1に記載のセキュリティデバイス。
【請求項3】
1つより多くの中間区画が前記中間領域に形成され、前記第1の色と前記第2の色の配置が互いに相補的であるように前記中間区画のうちの少なくとも2つが配置される、請求項2に記載のセキュリティデバイス。
【請求項4】
前記第1の画像と前記第2の画像の間に延びる中間領域をさらに備え、前記中間領域では各画像細片が中間区画を有し、各中間区画が同じ色、好ましくは前記第1の色または前記第2の色である、請求項1に記載のセキュリティデバイス。
【請求項5】
前記第1のレンチキュラーデバイスと同じ構造を有する第2のレンチキュラーデバイスであって、ただし、前記第1の画像細片が前記第2の色の前記第1の画像の部分と前記第1の色の前記第2の画像の部分をそれぞれ定め、画像細片の各対のうちの他方が前記第1の色の前記第1の画像を定める部分と前記第2の色の前記第2の画像を定める部分とをそれぞれ有するように画像細片の各対が形成されている第2のレンチキュラーデバイスをさらに備える、請求項1から4のいずれか1項に記載のセキュリティデバイス。
【請求項6】
前記第1および第2のレンチキュラーデバイスが互いに隣接して置かれている、請求項5に記載のセキュリティデバイス。
【請求項7】
前記第1の画像に対する背景を前記第2の画像が備える、請求項1から6のいずれか1項に記載のセキュリティデバイス。
【請求項8】
レンチキュラー集束要素のアレイを備えるレンチキュラーデバイスを有するセキュリティデバイスであって、対応する細片の対のアレイの上方に、第1の観察方向では、各対からの第1の細片が前記レンチキュラー集束要素のそれぞれにより見られるように、前記第1の観察方向とは異なる第2の観察方向では、各対からの第2の細片が前記レンチキュラー集束要素のそれぞれにより見られるように、前記レンチキュラー集束要素が置かれ、第1の画像を定める1つまたは複数の不透明部分と第2の画像または背景を定める1つまたは複数の透明部分とをそれぞれ細片の各対のうちの一方が有し、前記第1の画像を定める1つまたは複数の透明部分と前記第2の画像または背景を定める1つまたは複数の不透明部分とをそれぞれ細片の各対のうちの他方が有し、それによって、前記デバイスを傾けたときに前記第1の画像と前記第2の画像または背景との間で見かけ上の切換えが見られることを特徴とするセキュリティデバイス。
【請求項9】
前記第1の画像と前記第2の画像または背景との間に延びる中間領域をさらに備え、前記中間領域では、互いに並んで延びる不透明な区域と透明な区域により形成された中間区画を各画像細片が有する、請求項8に記載のセキュリティデバイス。
【請求項10】
1つより多くの中間区画が前記中間領域に形成され、不透明な区域と透明な区域の配置が互いに相補的であるように前記中間区画のうちの少なくとも2つが配置される、請求項9に記載のセキュリティデバイス。
【請求項11】
前記第1のレンチキュラーデバイスと同じ構造を有する第2のレンチキュラーデバイスであって、ただし、前記第1の画像を定める1つまたは複数の透明部分と前記第2の画像または背景を定める1つまたは複数の不透明部分とをそれぞれ前記第1の画像細片が有し、前記第1の画像を定める1つまたは複数の不透明部分と前記第2の画像または背景を定める1つまたは複数の透明部分とをそれぞれ画像細片の各対のうちの他方が有するように細片の各対が形成されている第2のレンチキュラーデバイスをさらに備える、請求項8から10のいずれか1項に記載のセキュリティデバイス。
【請求項12】
前記不透明部分が金属性である、請求項8から11のいずれか1項に記載のセキュリティデバイス。
【請求項13】
前記第1の画像が記号、文字、またはグラフ状の図案のうちの1つを備える、請求項1から12のいずれか1項に記載のセキュリティデバイス。
【請求項14】
前記画像細片が前記レンチキュラー集束要素に対して位置合わせされている、請求項1から13のいずれか1項に記載のセキュリティデバイス。
【請求項15】
前記画像細片がインクにより定められる、請求項1から14のいずれか1項に記載のセキュリティデバイス。
【請求項16】
前記画像細片がレリーフ構造により定められる、請求項1から14のいずれか1項に記載のセキュリティデバイス。
【請求項17】
前記レリーフ構造が基材内にエンボス加工または注型硬化される、請求項16に記載のセキュリティデバイス。
【請求項18】
前記レリーフ構造が回折性格子の構造を備える、請求項16または17に記載のセキュリティデバイス。
【請求項19】
各画像細片の幅が100ミクロン未満、好ましくは50ミクロン未満、最も好ましくは5〜25ミクロンの範囲内である、請求項1から18のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項20】
前記レンチキュラー集束要素がシリンドリカルレンズまたは微小ミラーを備える、請求項1から19のいずれか1項に記載のセキュリティデバイス。
【請求項21】
前記レンチキュラー集束要素のアレイが、5〜200ミクロン、好ましくは10〜60ミクロン、最も好ましくは20〜40ミクロンの範囲内の周期性を有する、請求項1から20のいずれか1項に記載のセキュリティデバイス。
【請求項22】
熱エンボス加工または注型硬化の複製プロセスにより前記レンチキュラー集束要素が形成されている、請求項1から21のいずれか1項に記載のセキュリティデバイス。
【請求項23】
前記レンチキュラーデバイスとは異なるホログラフィー構造が設けられた基材内または基材上に前記画像細片も設けられる、請求項1から22のいずれか1項に記載のセキュリティデバイス。
【請求項24】
モアレ拡大に適した微小画像が設けられた基材内または基材上に前記画像細片も設けられ、前記微小画像の上方に置かれたモアレ拡大レンズアレイをさらに備える、請求項1から23のいずれか1項に記載のセキュリティデバイス。
【請求項25】
前記レンチキュラー集束要素と同一面内または同一面上に前記モアレ拡大レンズアレイが設けられる、請求項24に記載のセキュリティデバイス。
【請求項26】
前記モアレ拡大レンズアレイを構成するように、前記微小画像の上方に前記レンチキュラー集束要素が延びている、請求項25に記載のセキュリティデバイス。
【請求項27】
請求項1から26のいずれか1項に記載のセキュリティデバイスが設けられた物品。
【請求項28】
紙幣、小切手、パスポート、IDカード、内容証明書、収入印紙、および価値または個人情報を保証するための他の文書から選択される、請求項27に記載の物品。
【請求項29】
透明部分をもつ基材を備え、前記透明部分の両側に前記レンチキュラー集束要素と画像細片がそれぞれ設けられる、請求項28に記載の物品。
【請求項30】
セキュリティデバイスを製造する方法であって、レンチキュラー集束要素のアレイを透明基材の一方の側に設けるステップと、対応する画像細片の対のアレイを前記透明基材の他方の側に設けるステップとを含み、第1の観察方向では、各対からの第1の画像細片が前記レンチキュラー集束要素のそれぞれにより見られるように、前記第1の観察方向とは異なる第2の観察方向では、各対からの第2の画像細片が前記レンチキュラー集束要素のそれぞれにより見られるように、前記画像細片および前記レンチキュラー集束要素がレンチキュラーデバイスを定め、第1の色の第1の画像を定める部分と第2の色の第2の画像を定める部分とをそれぞれ画像細片の各対のうちの一方が有し、前記第2の色の前記第1の画像を定める部分と前記第1の色の前記第2の画像を定める部分とをそれぞれ画像細片の各対のうちの他方が有し、それによって、前記デバイスを傾けたときに前記第1の画像と前記第2の画像の間で色の切換えが見られることを特徴とする方法。
【請求項31】
前記第1の画像と前記第2の画像の間に延びる中間領域をさらに備え、前記中間領域では、互いに並んで延びる前記第1の色の区域と前記第2の色の区域により形成された中間区画を各画像細片が有する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
1つより多くの中間区画が前記中間領域に形成され、前記第1の色と前記第2の色の配置が互いに相補的であるように前記中間区画のうちの少なくとも2つが配置される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記第1のレンチキュラーデバイスと同じ構造を有する第2のレンチキュラーデバイスであって、ただし、前記第1の画像細片が前記第2の色の前記第1の画像の部分と前記第1の色の前記第2の画像の部分をそれぞれ定め、画像細片の各対のうちの他方が前記第1の色の前記第1の画像を定める部分と前記第2の色の前記第2の画像を定める部分とをそれぞれ有するように画像細片の前記対が形成されている第2のレンチキュラーデバイスを設けるステップをさらに含む、請求項30から32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記第1および第2のレンチキュラーデバイスが互いに隣接して置かれている、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記第1の画像に対する背景を前記第2の画像が備える、請求項30から34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
セキュリティデバイスを製造する方法であって、レンチキュラー集束要素のアレイを透明基材の一方の側に設けるステップと、対応する細片の対のアレイを前記透明基材の他方の側に設けるステップとを含み、第1の観察方向では、各対からの第1の細片が前記レンチキュラー集束要素のそれぞれにより見られるように、前記第1の観察方向とは異なる第2の観察方向では、各対からの第2の細片が前記レンチキュラー集束要素のそれぞれにより見られるように、前記細片および前記レンチキュラー集束要素がレンチキュラーデバイスを定め、第1の画像を定める1つまたは複数の不透明部分と第2の画像または背景を定める1つまたは複数の透明部分とをそれぞれ細片の各対のうちの一方が有し、前記第1の画像を定める1つまたは複数の透明部分と前記第2の画像または背景を定める1つまたは複数の不透明部分とをそれぞれ細片の各対のうちの他方が有し、それによって、前記デバイスを傾けたときに前記第1の画像と前記第2の画像または背景との間で見かけ上の切換えが見られることを特徴とする方法。
【請求項37】
前記第1の画像と前記第2の画像または背景との間に延びる中間領域をさらに備え、前記中間領域では、互いに並んで延びる不透明な区域と透明な区域により形成された中間区画を各画像細片が有する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
1つより多くの中間区画が前記中間領域に形成され、不透明な区域と透明な区域の配置が互いに相補的であるように前記中間区画のうちの少なくとも2つが配置される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記第1のレンチキュラーデバイスと同じ構造を有する第2のレンチキュラーデバイスであって、ただし、前記第1の画像を定める1つまたは複数の透明部分と前記第2の画像または背景を定める1つまたは複数の不透明部分とをそれぞれ前記第1の画像細片が有し、前記第1の画像を定める1つまたは複数の不透明部分と前記第2の画像または背景を定める1つまたは複数の透明部分とをそれぞれ画像細片の各対のうちの他方が有するように細片の前記対が形成されている第2のレンチキュラーデバイスを設けるステップをさらに含む、請求項36から38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記第1および第2のレンチキュラーデバイスが互いに隣接して置かれている、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記不透明部分が金属性である、請求項36から40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記第1の画像が記号、文字、またはグラフ状の図案のうちの1つを備える、請求項30から41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記細片が前記レンチキュラー集束要素に対して位置合わせされている、請求項30から42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記画像細片が前記基材上に印刷されている、請求項30から43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
基材内にエンボス加工または注型硬化されたレリーフ構造によって前記画像細片が定められる、請求項30から44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
請求項1から26のいずれか1項に記載のセキュリティデバイスを製造するための、請求項30から45のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図6e】
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【図6f】
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【図6g】
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【図6h】
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【図6i】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13a】
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【図13b】
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【図14】
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【図15a】
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【図15b】
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【図16a】
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【図16b】
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【図17a】
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【図17b】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2013−509312(P2013−509312A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535917(P2012−535917)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001993
【国際公開番号】WO2011/051668
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(598151304)ドゥ ラ リュ インターナショナル リミティド (20)
【Fターム(参考)】