説明

セキュリティ文書を印刷する方法、及びセキュリティ文書

本発明は、特に、セキュリティ文書の表面に保護層を設けるラッカー塗布ステップと、前記ラッカー塗布ステップの後に、前記セキュリティ文書上に少なくとも1つの印刷要素(4)を印刷する印刷ステップとを有するセキュリティ文書(1)を印刷するための方法に関する。そのために、印刷ステップの前に、印刷要素を受け入れるために、少なくとも1つの粗い表面(3)が前記セキュリティ文書に形成される。表面(4)粗さにより、印刷インクは、UV硬化ラッカーのような保護コーティングをもつ文書により良く付着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行券及びセキュリティペーパー等のセキュリティ文書を印刷する方法に関する。これらセキュリッティ文書の作成方法は、特に保護層が前記セキュリティ文書の表面に設けられるラッカー塗布ステップ(a lacquering step)及び、少なくとも1つの印刷要素が前記セキュリティ文書に印刷される印刷ステップを有している。本発明は又、セキュリティ文書に関する。
【背景技術】
【0002】
銀行券とセキュリティペーパーを文書が受ける扱いに起因して起こる早期摩損から保護するために、寿命を延ばすために、保護層は製造工程の最終ステップにおいて、それらが印刷されるシート又はリールに設けられる。
【0003】
特許公開公報FR-A-523278には、この保護層が既に印刷物等に設けられることが開示されている。本出願において引用例として組込む特許EP-A0 256 170及びEP-A-0 860 296には、保護層を有する銀行券及びセキュリティペーパーが開示されている。米国公報US-A−6 227 572には、紙を変形してリリーフ要素が生成され、例えば、視覚障害者用に銀行券に点字表示を形成することが開示されている。少なくとも、これらリリーフの有る領域がラッカー層で強化されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記公報における例として説明されているように、銀行券又はセキュリティペーパーが製造される間で、ペーパーの両面に印刷が行われ、印刷の品質がチェックされた後、品質基準に適合する銀行券が番号付けされ、保護ラッカーが設けられる。次に、シートは、個別銀行券にカットされ、パケットが形成され、カウントされる等最終ステップを経る。各シートの両面に保護ラッカーを塗装する間に、或るシートは部分的に、又は全体的に汚れる可能性がある。このような場合、カウント済みの銀行券は使うことは出来ず、他のシート上で抜けた番号を再使用するか、又は、特別なシリーズを印刷する必要があり、これら新しいシートが正しい点にスタックの中に挿入され、一連のナンバーリングを持つ束を得る必要がある。
【0005】
これらの煩わしい費用のかかる作業を回避するために、保護層が設けられ、品質がチェックされ、汚れたシート又は銀行券が廃棄された後に、数字、又は他の印刷要素を銀行券及びセキュリティペーパーにプリントすることが提案されてきた。従って、特殊数字の印刷又は未使用番号の回復は、低品質な印刷の番号に限定される。
【0006】
特にUV硬化(UV-curable lacquer)層の場合、保護層を持つペーパー上に数字を印刷するために使われる印刷インクの付着と抵抗は小さいことが知られている。又、数字が印刷される銀行券の面の印刷が凹刻印刷(intaglio printing)で行われるときに、ペーパーは高い圧力を受け、滑らかになる。これは番号付けに使われるインクの付着を増長するものではない。
【0007】
本発明は、少なくとも1つの印刷要素を、ラッカーが塗布された銀行券及びセキュリティペーパー等のセキュリティ文書に印刷する方法を提案するものである。それは上記欠点を軽減する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による方法の特徴は、前記印刷ステップが前記ラッカー塗布ステップの後に実行され、前記印刷ステップの前に少なくとも1つの印刷要素を受取るため少なくとも1つの粗い領域が前記セキュリティ文書の上に形成される点である。
【0009】
アルファニュメリックの連続数、署名、発行日等のような印刷要素を受けいれる目的で形成された領域の粗さ(roughness)により、印刷インクはよく付着することができる。印刷要素は、セキュリティ文書にユニークな、他のどのような認証要素であってよい。例えば、バーコード又は特別な機械により読取り可能な他のデザイン。又、1つのセキュリティ文書と他の文書とは異なる要素を含む。
【0010】
1つの実施例によると、粗い領域はドット又はラインの網目スクリーン(a grid of dots or lines)を有している。
【0011】
1つの実施例によると、前記ラッカー塗布ステップの前後で、粗い領域を前記セキュリティ文書の表面の凸凹を局所的に増加させることにより形成される。
【0012】
他の好ましい実施例によると、前記粗い領域は凹刻印刷プロセスにより形成され、前記粗い領域を形成するための前記凹刻印刷プレートにはインクが塗布されたり、又は塗布されなかったりする。
【0013】
他の実施例によると、粗い領域は、前記ラッカー塗布ステップの前後で、スタンピングにより生成され、又は、基板又は保護層の表面の粗さを増加するための他の手段、例えば、局所的な化学的処理又は、文書の表面を打つレーザービームのようなビームを使った処理により生成される。
【0014】
1つの実施例によると、粗い領域のサイズは印刷されるべき印刷要素のサイズより大きい。
【0015】
1つの実施例によると、保護層はUV硬化ラッカー(UV-curable lacquer)により生成される。
【0016】
本発明は請求項11−14の内の1つに請求されたセキュリティ文書に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を銀行券の平面図を使って詳細に説明する。
【0018】
銀行券1は銀行券及びセキュリティペーパーの印刷の分野で用いられている従来の方法で両面に印刷されている。つまりオフセット印刷、凹刻印刷、Orloff印刷、スクリーン印刷等である。銀行券1の表側にパターン2の印刷を行う間、粗い領域3が生成される。これは、凹刻印刷プロセスで行うと有利である。凹刻印刷プレートは領域3に大きさとして同一な領域を含み、形状と深さが異なる複数の溝を備えている。それは、凹刻印刷プレートと印刷シリンダーとの間をペーパーが通過すると、ペーパー側に粗い領域を形成する。この領域は凹刻プレートにおける溝に対応するリリーフ状のラインとドットの網目スクリーンを含む。もし凹刻プレートの前記領域にインクが付着しないとしても、これらリリーフは実際には肉眼では見えないものであってよいが、それらはタッチで検知可能である。我々は図の中でこれらリリーフをドットと細かいラインで示した。種々の品質チェックを経た後リジェクトされない、これらのシートは、例えばUV硬化ラッカーのような保護層でカバーされている(他の方法として、熱硬化性ラッカーのようなタイプのラッカーであってよい)。ラッカーが硬化し、最終のチェックが行われ、保護層を設ける間に汚れたシートを廃棄した後、シートは従来の番号付け装置を通過する。同装置は個別的連続番号4(署名又は発行日等の他の印刷要素(図示しない))を汚れていない各銀行券1に付ける。保護層の存在にも拘らず、粗い領域3により印刷インクはよく付着することができる。
【0019】
その後、シートは、番号付け印刷、カッティング、束(たば)形成等のために、慣用の最終装置に運搬される。
【0020】
領域3は、より大きな領域をカバーし(数十ミリメータで十分である)、番号印刷の不正確さを考慮して、番号又は印刷要素の周辺に拡大される。
【0021】
上記の通り、複数の印刷要素、例えば、連続番号、署名、発行日又は、活版印刷で印刷することが望ましい、その他の要素を、銀行券のようなセキュリティ文書上に印刷することができる。
【0022】
粗い領域3を生成するために、凹刻印刷プレートを使うことは好ましい。しかし、別の方法として、粗い領域はスタンピングにより、局所的な化学的処理により、又は、例えばレーザービームのような、セキュリティ文書の表面を打つビームにより形成される。この操作は、保護層の形成の前後で独立に行うことができる。重要なことは、印刷要素が印刷される前に、保護層に印刷インクをよく付着することのできる粗い領域を形成することである。特に、凹刻印刷のときに、領域3を生成することは、追加のステップを不要とするという意味で、特に有利である。上記の通り、凹刻印刷プレート上に適当な領域を設けるだけで十分である。
【0023】
本発明は、図1を使って説明したように、基板を有するセキュリティ文書に関する。その基板の面は、プリント、前記基板に付加する保護層を有する基板、及び前記保護層に付加される印刷要素が印刷される粗い領域を有する。
【0024】
粗い面は、ラッカー塗布の前に前記基板の表面上に生成される凹凸で形成される。これら凹凸はラッカー塗布の後に、前記保護層表面に形成される。別の方法として、粗い面は、ラッカー塗布の後に前記保護層表面上に生成される凹凸で形成される。上記のとおり、凹凸は点及び/又はラインの網目スクリーンから構成されることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来の技術で両面を印刷された銀行券である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀行券及び貴重なペーパー等のセキュリティ文書の印刷方法であって、
特に、セキュリティ文書の表面に保護層を設けるラッカー塗布ステップと、前記セキュリティ文書上に少なくとも1つの印刷要素を印刷する印刷ステップとを有し、前記印刷ステップは前記塗布ステップの後に行われ、少なくとも1つの印刷要素を受け入れる目的で、前記セキュリティ文書上に少なくとも1つの粗い領域を印刷ステップの前に形成すること、
を特徴とする印刷方法。
【請求項2】
前記印刷要素がアルファニュメリックの連続数、署名、発行日であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
粗い領域は、点及び/又はラインのスクリーン格子からなる凹凸であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記粗い領域は、ラッカー塗布ステップの前後で、前記セキュリティ文書の表面の凹凸を局所的に大きくすることにより形成されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記粗い領域は、保護層を設ける前後で、スタンピングにより形成されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記粗い領域は、保護層を設ける前後で、化学的処理により形成されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記粗い領域は、保護層を設ける前後で、前記文書の表面を打つビームを使う処理により形成されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記粗い領域は、保護層を設ける前後で、前記粗い領域を形成するための区域にインクが付けられる又は付けられない凹刻印刷プレートを使用する凹刻印刷プロセスにより形成されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項9】
粗い領域のサイズは印刷されるべき印刷要素のサイズより大きいことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記保護層はUV硬化ラッカーにより生成されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
特に銀行券又はセキュリティペーパー等セキュリティ文書であって、
基板を含み、
その基板面はプリントと、前記基板に設けられる保護層、及び、前記保護層に付着する印刷要素が印刷される粗い領域とを有するセキュリティ文書。
【請求項12】
粗い面は、ラッカー塗布の前に前記基板の表面上に生成される凹凸で形成され、前記保護層表面に形成されることを特徴とする請求項11に記載の文書。
【請求項13】
粗い面は、前記保護層表面上に直接設けられた凹凸により構成されることを特徴とする請求項11に記載の文書。
【請求項14】
粗い面は、点及び/又はラインの網目スクリーンから構成される凹凸であることを特徴とする請求項11乃至13の何れか一項に記載の文書。

【図1】
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【公表番号】特表2008−510639(P2008−510639A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−529017(P2007−529017)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【国際出願番号】PCT/IB2005/002453
【国際公開番号】WO2006/021856
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(502065583)カーベーアー−ジオリ ソシエテ アノニム (33)
【Fターム(参考)】