説明

セグメント供給装置

【課題】吊り上げ位置からエレクター側へ供給されるセグメントの振れ動きを極力抑えることが可能なセグメント供給装置を提供する。
【解決手段】シールドトンネル1内で、トンネルの横断面の上下方向中心線位置Cとは異なる偏った吊り上げ位置Dに搬入されたセグメント6を、トンネル内に設置したホイストレール11,11に沿って走行するホイスト10,10により吊り上げてエレクターもしくはその近傍へ供給するためのセグメント供給装置において、ホイストに昇降自在に吊り下げられ、トンネルの横断面に沿って水平に支持されるレール14と、レールに往復移動自在に設けられ、セグメントを係止する吊りフック15と、吊りフックをセグメントの吊り上げ位置及びトンネルの上下方向中心線位置それぞれでロックするロック手段20とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り上げ位置からエレクター側へ供給されるセグメントの振れ動きを極力抑えることが可能なセグメント供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シールドトンネル内に搬入したセグメントをホイストで吊り上げ、セグメントを吊り上げたホイストをホイストレールに沿ってエレクター側へ走行させることにより、セグメントをエレクターもしくはその近傍へと供給するようにしたセグメント供給装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1の「セグメント搬送装置及びその方法」は、シールドトンネル、特に小口径のシールドトンネルにおいて、セグメント台車がシールドトンネルの中心線よりも平面的に側方にずれて配置される場合であっても、セグメント台車からエレクターの近傍までのセグメントの搬送を安全に行えるようにする課題を挙げ、シールドトンネルを構築する際に、セグメントを積載するセグメント台車がシールドトンネルの中心線より平面的に側方にずれて配置されている。セグメント搬送装置は、前記セグメント台車から前記エレクターの近傍まで延びるホイストレールと、セグメントを吊り下げて前記ホイストレールに沿って走行可能なホイストとを備える。前記ホイストレールは、平面的に、前端部がシールドトンネルの中心線上に位置し、中間部がS字状に曲がって、後端部が前記セグメント台車の中心線上に位置する。
【0004】
具体的には、吊り下げられたセグメントを、ホイストレールに沿って、ローラーコンベヤの上方まで移動させるとき、S字状に曲げられたホイストレールの中間部において、ホイストがセグメント台車の中心線上からトンネルの中心線上へ移動してセグメントを搬送することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−231560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1にあっては、相当の長さを有するホイストレールをシールドトンネル内でS字状に設置する必要があり、特に小口径のシールドトンネル内にこのようなS字状のホイストレールを設置することは、当該ホイストレールのために相当の幅のスペースをトンネル内に確保する必要があって、また他の設備との干渉についても配慮しなければならず、煩雑なものであった。
【0007】
また、ホイストがホイストレールのS字状の中間部を通過する際、その曲がりのためにホイストで吊り下げているセグメントが振れ動いてしまうおそれがあって、安全性が懸念されるという課題があった。
【0008】
他方、図3に示すように、シールドトンネルaの上下方向中心線位置Xとは異なる偏った吊り上げ位置Yに搬入されたセグメントbを、トンネルa内に設置したホイストレールcに沿って走行するホイストdに吊り下げ支持した吊り具eにより吊り上げる場合がある。吊り具eの中心は自然な状態で、トンネルaの中心線位置Xに設定されていることが好ましいことから、セグメントbを吊るときに吊り上げ位置Yにずらされる。
【0009】
このようなセグメントbの吊り上げ操作でも、積載されているセグメントbを吊り上げた瞬間から、セグメントbはトンネルaの横断面に沿って左右に振れ動くこととなり、安全性が懸念されるという課題があった。
【0010】
いずれにしても、トンネルの上下方向中心線位置に対し、セグメントの吊り上げ位置が異なる偏った位置となっているため、吊り上げ時にあっても、また搬送時にあっても、この偏りのためにセグメントが大きく振れ動いてしまうという問題があった。
【0011】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、吊り上げ位置からエレクター側へ供給されるセグメントの振れ動きを極力抑えることが可能なセグメント供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかるセグメント供給装置は、シールドトンネル内で、該トンネルの横断面の上下方向中心線位置とは異なる偏った吊り上げ位置に搬入されたセグメントを、該トンネル内に設置したホイストレールに沿って走行するホイストにより吊り上げてエレクターもしくはその近傍へ供給するためのセグメント供給装置において、上記ホイストに昇降自在に吊り下げられ、上記トンネルの横断面に沿って水平に支持されるレールと、該レールに往復移動自在に設けられ、上記セグメントを係止する吊りフックと、該吊りフックを上記セグメントの吊り上げ位置及び上記トンネルの上下方向中心線位置それぞれでロックするロック手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
前記ホイストレールは、上記トンネルの上下方向中心線位置に合わせて設置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかるセグメント供給装置にあっては、吊り上げ位置からエレクター側へ供給されるセグメントの振れ動きを極力抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るセグメント供給装置の好適な一実施形態を説明するためのシールドトンネルの縦断面図である。
【図2】図1中、A−A線矢視横断面図である。
【図3】従来のセグメント供給装置の一例を示すシールドトンネルの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係るセグメント供給装置の好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。シールドトンネルは周知のように、小口径の電力、ガス、通信用のものから、その他、上下水道、鉄道、道路、共同溝など、各種のものが知られている。
【0017】
シールドトンネル1は図1に示すように、シールド機2で掘進しつつ、スクリューコンベア3により搬出される掘削土を排土用コンベア4で送り出すとともに、エレクター5によってセグメント6を順次組み立てていくことで構築されていく。シールドトンネル1の上下方向中心線位置(図2中、C参照)にその中心を合わせて設置されたエレクター5には、ローラーコンベア7からセグメント6が送り込まれる。
【0018】
セグメント6は、シールドトンネル1内に敷設された走行レール8上を走行するセグメント台車9に積載されて、シールドトンネル1内に搬入される。セグメント台車9は、ホイスト10,10によるセグメント6の吊り上げ位置Dに停止される。吊り上げ位置Dからエレクター5近傍のローラーコンベア7までのセグメント6の供給操作は、ホイスト10,10と当該ホイスト10,10を走行させる左右一対のホイストレール11,11によって行われる。
【0019】
ホイストレール11,11は、シールドトンネル1の天井部に、当該シールドトンネル1の長さ方向に沿って設けられる。左右一対で一組のホイストレール11,11は、セグメント台車9側からローラーコンベア7側に向かって、エレクター5の中心、すなわちシールドトンネル1の上下方向中心線位置Cに合わせて真っ直ぐに設けられる。ホイストレール11の本数は、左右一対に限らず何本であってもよく、いずれにあっても、設置されるホイストレール11の中央となる位置が、シールドトンネル1の横断面の上下方向中心線位置Cに合わせて真っ直ぐに設定される。
【0020】
図2には、シールドトンネル1の横断面が示されている。シールドトンネル1内部の下方には、セグメント台車9が走行する走行レール8とシールド機1の後続台車用走行レール12が並設されている。
【0021】
例えばこのように、後続台車用走行レール12などの他の必要な設備を設置するスペースを確保するために、セグメント6の吊り上げ位置Dまでセグメント6を搬入するセグメント台車9用の走行レール12がトンネル1の横断面において水平方向に偏って配置され、これにより、シールドトンネル1内で、搬入されたセグメント6の吊り上げ位置Dがシールドトンネル1の横断面の上下方向中心線Cに対し、これより水平方向左側に偏った、異なる位置となっている。
【0022】
シールドトンネル1内部の天井部には、排土用コンベア4を挟んで左右一対でホイストレール11,11が配設されている。各ホイストレール11,11にはそれぞれ、これに沿って走行するホイスト10,10が横並びで左右一対設けられている。これら横並びのホイスト10,10は、平行状態を保って走行され、停止される。ホイスト10,10は、セグメント6を吊り上げて、ローラーコンベア7へと供給するようになっている。ホイスト10,10からエレクター5に直接供給しても良いことはもちろんである。
【0023】
左右一対のホイスト10,10はそれぞれ、吊り上げ用のチェーン13,13を有し、これらチェーン13,13の端末には、チェーン13,13間に掛け渡して、C型チャンネル材などで成るレール14が連結される。これにより、レール14は、チェーン13,13を介して、ホイスト10,10に昇降自在に吊り下げられる。
【0024】
またレール14は、各ホイスト10,10による吊り下げ高さを一致させることで、シールドトンネル1の横断面に沿って、水平に支持される。レール14の重心は、ホイスト10,10間の中央に設定することが好ましい。チェーン13,13に代えて、ワイヤーや圧縮力を支持することが可能なロッド状部材で吊り下げるようにしても良い。
【0025】
レール14には、その長さ方向、すなわちシールドトンネル1の横断面において左右方向に往復移動自在に1つの吊りフック15が設けられる。吊りフック15は、レール14に沿って走行する2つの車輪16と、車輪16から吊り下げられたブラケット17と、ブラケット17にピン18を介して回動自在に連結されたフック部19とから構成される。車輪16は、手動で転動させても、自走式としても良い。
【0026】
自走式の場合には、セグメント6に大きな加速度が加わらないように、極低速度で移動させるようにすることが好ましい。フック部19がセグメント6の係止部(図示せず)に係脱自在に係止される。従って、セグメント6をフック部19に係止し、レール14をホイスト10,10で上昇させることにより、セグメント6を吊り上げることができ、またレール14を下降させてフック部19を離脱させることで、セグメント6を降ろすことができる。
【0027】
また、吊りフック15をレール14に沿って移動させることで、セグメント6の吊り位置を、シールドトンネル1内の右方向もしくは左方向へ移動することができる。
【0028】
レール14には、吊りフック15を、セグメント台車9の停止位置に対応するセグメントの吊り上げ位置D及びシールドトンネル1の上下方向中心線位置Cそれぞれでロックするロック手段20が設けられる。本実施形態にあっては、レール14の左側端部が吊り上げ位置D、レール14の長さ方向ほぼ中央が中心線位置Cに設定されている。
【0029】
レール14の左側端部には、C型チャンネルの端部を封鎖して、車輪16が当接して制止するプレート21が設けられている。レール14の中央には、C型チャンネルの上片及び下片間にわたってレール14を貫通させて、車輪16が当接して制止する通しボルト22が締結されている。また、レール14には、車輪16の移動経路に向かって下降する上下動自在なストッパ23が設けられる。ロック手段20は、これらプレート21、通しボルト22、並びにストッパ23によって構成される。
【0030】
車輪16がセグメント6の吊り上げ位置Dであるレール14の左側端部に移動したときに、ストッパ23を下降させることにより、プレート21とストッパ23で車輪16を挟んで、吊りフック15を吊り上げ位置Dに固定することができる。また、車輪16がシールドトンネル1の上下方向中心線位置Cであるレール14の中央に移動したときに、ストッパ23を下降させることにより、通しボルト22とストッパ23で車輪16を挟んで、吊りフック15を当該中心線位置Cに固定することができる。
【0031】
次に、本実施形態にかかるセグメント供給装置の作用について説明する。まず、セグメント台車9により、セグメント6を吊り上げ位置Dへ搬入する。また、ホイストレール11,11に沿って走行するホイスト10,10は、吊り上げ位置Dに合わせて停止させておく。
【0032】
次に、ロック手段20を解除して、吊りフック15を吊り上げ位置Dへ移動させ、停止させる。次に、ロック手段20により、吊りフック15を吊り上げ位置Dに固定する。次に、ホイスト10,10によりレール14を下降させ、吊りフック15のフック部19にセグメント6を係止する。これにより、吊り上げ準備が完了する。
【0033】
次に、ホイスト10,10によりレール14を上昇させ、吊りフック15を介してセグメント6を吊り上げ位置Dでその直上に向かって吊り上げる。必要高さまで吊り上げたら、ホイスト10,10によるレール14の上昇を止める。次に、ロック手段20を解除して、吊りフック15を移動可能とする。この際、レール14は、左右一対のホイスト10,10に吊り下げ支持されているので、ほとんど傾斜することはない。
【0034】
次に、吊りフック15をレール14の中央、すなわちシールドトンネル1の上下方向中心線位置Cへ移動し、これにより、セグメント6を当該中心線位置Cに移す。この際も、左右一対のホイスト10,10に吊り下げ支持されているレール14は、水平状態を維持する。吊りフック15の移動は、極力緩やかに行うことが望ましく、これによりセグメント6の左右の揺れを押さえることができる。
【0035】
吊りフック15がレール14の中央に達したら、ロック手段20により、吊りフック15を中心線位置Cに固定する。これにより、セグメント6の移動が完了する。
【0036】
その後、ホイスト10,10をホイストレール11,11に沿って走行させることにより、セグメント6を、エレクター5もしくはその近傍のローラーコンベア7へと供給することができる。ローラーコンベア7上では、ロック手段20で吊りフック15の位置を固定したまま、ホイスト10,10によりレール14をその直下へ向かって吊り降ろす。セグメント6をローラーコンベア7に移し替えたら、吊りフック15のフック部19によるセグメント6の係止を離脱させる。
【0037】
その後、ホイスト10,10によりレール14を吊り上げるとともに、ホイスト10,10をホイストレール11,11に沿ってセグメント台車9側へ向かって走行させる。
【0038】
以上説明した本実施形態にかかるセグメント供給装置にあっては、ホイスト10,10に昇降自在に吊り下げられ、シールドトンネル1の横断面に沿って水平に支持されるレール14と、レール14に往復移動自在に設けられ、セグメント6を係止する吊りフック15と、レール14に設けられ、吊りフック15をセグメント6の吊り上げ位置D及びシールドトンネル1の上下方向中心線位置Cそれぞれでロックするロック手段20とを備えたので、セグメント6の吊り上げを、吊り上げ位置Dにおける直上への吊り上げ操作とすることができ、その後、レール14を利用してセグメント6をシールドトンネル1の中心線位置Cに移すことができて、背景技術のようにエレクター側への搬送途中でセグメントが振れ動くこともなくて、従って、吊り上げ位置Dからエレクター5側への供給操作の中で、セグメント6が振れ動くことを極力押さえることができて、安全性を向上することができる。
【0039】
本実施形態にあっては、吊りフック15をロックするロック手段20を備えているので、セグメント6の吊り上げ時や吊り降ろし時、さらにはホイストレール11,11でセグメント6を移送している途中でも、セグメント6がレール14に沿って徒に遊動したり、揺れたりすることも防止することができる。
【0040】
また、本実施形態では、ホイストレール11,11をシールドトンネル1の上下方向中心線位置Cに合わせて設置することが可能なので、背景技術のようにホイストレールをS字状にする場合に比べて、ホイストレール11,11の必要設置スペースを狭めることができ、特に小口径のシールドトンネル1に使用すれば、スペース効率を向上できるとともに、排土用コンベア4などの他の設備との干渉も適切に防止できる。
【0041】
また、ホイストレール11,11を真っ直ぐに設置することが可能で、エレクター5側への供給途中でセグメント6が無駄に振れ動くことも防止できる。
【0042】
また、チェーン13,13を介してレール14を吊ることにより、ワイヤーで吊る場合に比べ、セグメント6の振れ動きを押さえることができる。
【0043】
レール14の中央でセグメント6を吊り上げている状態で、当該セグメント6を水平回転させることにより、エレクター5への供給姿勢を確保するようにしても良い。
【0044】
吊りフック15の移動やロック手段20のロック及びその解除は、自動制御によっても良いことはもちろんである。また、吊りフック15の移動は、車輪16によらず、その他スライド方式などで行うようにしても良い。さらに、上記実施形態では、ロック手段20をレール14に備えるようにしたが、これに代えて、吊りフック15に備えるようにし、当該吊りフック15を各位置でレール14に対しロックするようにしても良い。
【符号の説明】
【0045】
1 シールドトンネル
5 エレクター
6 セグメント
10 ホイスト
11 ホイストレール
13 チェーン
14 レール
15 吊りフック
20 ロック手段
C シールドトンネルの上下方向中心線位置
D セグメントの吊り上げ位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールドトンネル内で、該トンネルの横断面の上下方向中心線位置とは異なる偏った吊り上げ位置に搬入されたセグメントを、該トンネル内に設置したホイストレールに沿って走行するホイストにより吊り上げてエレクターもしくはその近傍へ供給するためのセグメント供給装置において、
上記ホイストに昇降自在に吊り下げられ、上記トンネルの横断面に沿って水平に支持されるレールと、
該レールに往復移動自在に設けられ、上記セグメントを係止する吊りフックと、
該吊りフックを上記セグメントの吊り上げ位置及び上記トンネルの上下方向中心線位置それぞれでロックするロック手段とを備えたことを特徴とするセグメント供給装置。
【請求項2】
前記ホイストレールは、上記トンネルの上下方向中心線位置に合わせて設置されることを特徴とする請求項1に記載のセグメント供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−216167(P2010−216167A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65506(P2009−65506)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】