説明

セグメント式固定子

【課題】コイルエンド部分における絶縁性を改善したセグメント式固定子の提供。
【解決手段】複数のスロット12を備える固定子コア20と、スロット12に挿入される略U字状のセグメントSgと、セグメントSgのリード側が捻られて接合されることで環状に形成されるセグメントコイルSCとを備えるセグメント式固定子において、セグメントSgのコイルエンド部分に挿入される相間絶縁紙25を備え、相間絶縁紙25は長方形であり、固定子コア20の内周側に配置されている内周側端部と固定子コア20の外周側に配置されている外周側端部とを有し、内周側端部と外周側端部とが重ねられて、固定子コア20端面に対して同心円状に配置され、内周側端部の端面は固定子コア20内周側に隣接するセグメントSgの端部の捻り方向に向けられ、外周側端部の端面は固定子コア20外周側に隣接するセグメントSgの端部の捻り方向に向けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セグメントコイルを用いた固定子に関するものであり、詳しくはセグメントコイルのコイルエンドに挿入する相間絶縁紙の挿入方法を工夫することで固定子のコイルエンドでの絶縁を確保する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に鑑みて自動車に駆動用のモータを搭載するケースが多くなってきている。車載される駆動用のモータは、車両を動かす為に大出力でかつ車載されるために省スペースであることが望ましい。出力を向上させるためにはモータに用いるコイルの断面積を増やし、固定子の占積率を高める方法が模索されている。
【0003】
固定子の占積率を向上させる1つの手法として、平角導体を用いたセグメントコイルを固定子に使用する方法が提案されている。セグメントコイルは、略U字形状に平角導体を曲げ加工したものであり、このセグメントコイルを固定子コアの備えるスロットに挿入した後、リード側で捻りを加えて、セグメントコイル同士を結線することで、固定子の電気回路を形成することができる。平角導体を用いることでスロット内の占積率を高めると共に、導体の断面積を増やすことが出来るため、導体に流す電流量を増やすことができる。この結果、小型化と高出力化を実現可能なモータを提供することが可能となる。しかしながら、このような平角導体を用いたセグメントコイルを用いる場合には、コイルエンドでの絶縁方法が問題となる。
【0004】
特許文献1には、固定子コアの絶縁紙に関する技術が開示されている。また、特許文献2には、電動機用絶縁紙及び電動機に関する技術が開示されている。特許文献1は丸線を用いて巻回してコイルを形成しており、特許文献2は平角線と思われる導体を用いてコイルを形成していると思われるが、どちらも相間絶縁紙とスロット紙が一体となったタイプの絶縁紙を用いている。
【0005】
しかしながら、このようなタイプの絶縁紙はセグメントコイルを用いる場合には不向きであると考えられる。これは、セグメントコイルをコイルエンドにて捻る必要があるためで、捻った際に絶縁紙を破損するなどの虞があり、絶縁確保の観点から一体型の絶縁紙は適当ではないと考えられる。また、特許文献2に記載されるように、U相コイルを挿入した後に絶縁紙を挿入し、その上からV相コイルを挿入するといった相毎にコイルを組み付けていく手法は、コイルのターン数を増やしてモータの高出力化を図りたい場合には適さないと考えられる。そこで、別の絶縁方法が必要であると考えられる。
【0006】
特許文献3に、セグメント式固定子構造に関する技術が開示されている。固定子コアにセグメントを挿入した後に、捻ってコイルを形成し、その後に相間絶縁紙を環状にコイルエンドに配置することで、相間絶縁を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−322177号公報
【特許文献2】特開2004−289930号公報
【特許文献3】特開2006−166592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3に記載の技術を適用してセグメント式固定子の相間絶縁をするにあたっては、以下に説明する課題があると考えられる。
【0009】
特許文献3に記載の技術では、長方形の相間絶縁紙を固定子のコイルエンドに円環状に配置しているが、絶縁を確保するためには一部で必ず重なる部分が必要となる。出願人が調査した結果、リード側のセグメントを捻る際に、平角導体が相間絶縁紙を押すことで相間絶縁紙が変形してしまい、絶縁が確保出来なくなる虞があることが分かった。
【0010】
そこで、本発明はこのような課題を解決するために、コイルエンド部分における絶縁性を改善したセグメント式固定子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の一態様によるセグメント式固定子は以下のような特徴を有する。
【0012】
(1)複数のスロットを放射線状に備える固定子コアと、前記スロットにリード側が前記固定子コアの端面から突出するよう挿入される略U字状のセグメントと、前記セグメントのリード側が捻られて接合されることで環状に形成されるセグメントコイルとを備えるセグメント式固定子において、前記固定子コア端面より突出する前記セグメントのコイルエンド部分に挿入される相間絶縁紙を備え、前記相間絶縁紙は、前記固定子コア端面の円周方向に長い形状であり、前記固定子コアの内周側に配置されている内周側端部と前記固定子コアの外周側に配置されている外周側端部とを有し、前記内周側端部と前記外周側端部とが重ねられて、前記固定子コア端面に対して同心円状に配置され、前記内周側端部の端面は前記固定子コア内周側に隣接する前記セグメントの端部の捻り方向に向けられ、前記外周側端部の端面は前記固定子コア外周側に隣接する前記セグメントの端部の捻り方向に向けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
このような特徴を有する本発明の一態様によるセグメント式固定子により、以下のような作用、効果が得られる。
【0014】
上記(1)に記載のセグメント式固定子の態様は、複数のスロットを放射線状に備える固定子コアと、スロットにリード側が固定子コアの端面から突出するよう挿入される略U字状のセグメントと、セグメントのリード側が捻られて接合されることで環状に形成されるセグメントコイルとを備えるセグメント式固定子において、固定子コア端面より突出するセグメントのコイルエンド部分に挿入される相間絶縁紙を備え、相間絶縁紙は、固定子コア端面の円周方向に長い形状であり、固定子コアの内周側に配置されている内周側端部と固定子コアの外周側に配置されている外周側端部とを有し、内周側端部と外周側端部とが重ねられて、固定子コア端面に対して同心円状に配置され、内周側端部の端面は固定子コア内周側に隣接するセグメントの端部の捻り方向に向けられ、外周側端部の端面は固定子コア外周側に隣接するセグメントの端部の捻り方向に向けられているものである。
【0015】
相間絶縁紙は、内周側端部と外周側端部を重ねて円環状に形成されて、固定子コアのコイルエンドに配置される。そして、この相間絶縁紙はセグメントを捻る前に配置する必要がある。出願人が調査した結果、固定子コアのリード側の端部に突出するセグメントは捻られた後に相間絶縁紙を配置することが難しい。これは、セグメントを捻る際にガイドする方法が無いため、捻った後にはセグメント同士の間隔が狭くなってしまう為である。これは、セグメントを捻る際に、セグメントは最も曲がり易い方向に曲がろうとすることに起因する。
【0016】
そして、先に相間絶縁紙を挿入してセグメントを捻ることで、相間絶縁紙に干渉しながらセグメントは曲げられることになる。そこで、本発明では、相間絶縁紙の内周側端部と外周側端部を重ねた部分において、内周側端部の端面が固定子コアの内周側に隣接するセグメントの端部の捻り方向に向けられ、外周側端部の端面が固定子コアの外周側に隣接するセグメントの端部の捻り方向に向けられる構成となっている。このことで、セグメントが捻られた際に、相間絶縁紙の内周側端部又は外周側端部に対してセグメントが干渉して捲れてしまうようなことが無く、相間絶縁紙によってセグメント同士の相間の絶縁を確保することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態の、固定子の平面図である。
【図2】第1実施形態の、固定子の平面の部分拡大図である。
【図3】第1実施形態の、セグメントの平面図である。
【図4】(a)第1実施形態の、固定子コアの概略斜視図である。(b)第1実施形態の、固定子コアにインシュレータを挿入した様子を示す概略斜視図である。(c)第1実施形態の、セグメントの概略斜視図である。(d)第1実施形態の、固定子コアにセグメントを挿入した様子を示す概略断面図である。(e)第1実施形態の、固定子コアにセグメントを挿入し、セグメントの端部を溶接した様子を示す概略断面図である。
【図5】第1実施形態の、セグメントを捻る前の固定子のリード側の平面図である。
【図6】第1実施形態の、相間絶縁紙をリード側に配置した模式斜視図である。
【図7】比較のために用意した比較例の、固定子のリード側コイルエンドの側面拡大図である。
【図8】第1比較例の、固定子のリード側コイルエンドの側面拡大図である。
【図9】比較のために用意した比較例の、リード側突出部と相間絶縁紙の干渉の様子を示す部分斜視図である。
【図10】比較のために用意した比較例の、リード側突出部が相間絶縁紙に干渉している様子を示す部分斜視図である。
【図11】第2実施形態の、リード側突出部と相間絶縁紙の干渉の様子を示した部分斜視図である。
【図12】第2実施形態の、リード側突出部を捻り終わった様子を示した部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、本発明の第1の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0019】
図1に、第1実施形態の固定子10の平面図を示す。図2に、固定子10の平面の部分拡大図を示す。図2は図1に示される部分Yを拡大したものである。固定子10は、固定子コア20にセグメントSgと呼ばれるU字状に形成された平角導体Dを配置して形成されている。固定子10はU相V相W相を有する3相のモータを形成する48極の固定子10である。平角導体Dは矩形断面の導電率の高い銅等の金属で形成されており、その周囲に絶縁被覆が施されている。絶縁被覆は、絶縁性の高いエナメル等の樹脂が用いられている。
【0020】
固定子コア20は多数の電磁鋼板を積層して図1に示されるように略円筒状に形成されており、内周側に向けて突出する形状にティース11が形成され、隣り合うティース11の間にはスロット12が形成されている。本実施形態では固定子コア20の有するティース11は48本で、スロット12は48スロットとなっている。スロット12には、インシュレータ26を配してセグメントSgが複数本ずつ挿入されており、インシュレータ26は樹脂製で固定子コア20とセグメントSgとの絶縁性を確保している。また固定子コア20には外周側に凸となるリブ21が3カ所用意されており、このリブ21にボルト孔22が用意されている。ボルト孔22には図示しないボルトが通されて、図示しないカバーの取り付けや固定子コア20をトランスアクスルケースなどへの取り付ける事に用いられる。
【0021】
固定子コア20に挿入されるセグメントSgは、平角導体DをU字状に曲げられ、複数重ねられて形成されている。図3に、セグメントSgの平面図を示す。セグメントSgは、便宜的に第1リード部Sga1及び第2リード部Sga2、第1スロット内導体部Sgb1及び第2スロット内導体部Sgb2、第1斜辺部Sgd1及び第2斜辺部Sgd2、レーンチェンジ部Sgeと呼び分けることとする。また、固定子コア20との関係からリード側突出部Sga、スロット内導体部Sgb、及び反リード側突出部Sgcと呼び分ける場合もある。
【0022】
リード側突出部Sgaは固定子コア20にセグメントSgが挿入された際に、固定子10のリード側に突出する部分であり、第1リード部Sga1及び第2リード部Sga2を含む。スロット内導体部Sgbは固定子コア20にセグメントSgが挿入された際に、固定子コア20のスロット12に収まる部分であり、第1スロット内導体部Sgb1及び第2スロット内導体部Sgb2を含む。反リード側突出部Sgcは固定子コア20にセグメントSgが挿入された際に、固定子10の反リード側に突出する部分であり、第1斜辺部Sgd1、第2斜辺部Sgd2、及びレーンチェンジ部Sgeを含む。
【0023】
なお、図3に示したセグメントSgは一例であり、実際には10種類以上のセグメントSgを必要とし、形状も部分的に異なる。例えば、固定子コア20の最外周に配置されるセグメントSgは、レーンチェンジ部Sgeの部分が形成されないものも用いられる。ただし、発明の要旨との関連性が薄いので詳細な説明を省略する。
【0024】
図4に、セグメントを固定子コアに挿入する様子の模式図を示す。図4(a)は、固定子コアの概略斜視図であり、図4(b)は、固定子コアにインシュレータを挿入した様子の概略斜視図であり、図4(c)は、セグメントの概略斜視図であり、図4(d)は、固定子コアにセグメントを挿入した様子の概略断面図であり、図4(e)は、固定子コアにセグメントを挿入し、セグメントの端部を溶接した様子の概略断面図である。なお、図4に示す固定子コアは説明のために簡略化してあり、スロット12の数等詳細部分が異なる。また、セグメントSgの形状も省略している。また、セグメントSgを挿入するスロット12の位置関係も実際とは異なる。そして、実際には異なるセグメントSg同士が接合され、同じセグメントSg同士は接合されない。
【0025】
セグメントSgは、固定子コア20に対して、図4(a)〜(d)に示すような手順で挿入される。すなわち、固定子コア20の反リード側となる方向から、セグメントSgの有する第1リード部Sga1及び第2リード部Sga2をスロット12に対して挿入し、図4(d)に示すような状態とする。この際には、図4(b)に示されるようにインシュレータ26がスロット12に挿入されているものとする。固定子コア20にセグメントSgが挿入された後、セグメントSgのリード側突出部Sgaに捻りを加える。
【0026】
図5に、セグメントを捻る前の固定子のリード側から見た平面図を示す。なお、図5では相間絶縁紙25は省略している。固定子コア20のリード側に突出するセグメントSgのリード側突出部Sgaは、セグメントSgを捻る前において、図5に示すような状態となっている。この状態で、固定子コア20の径方向に隣り合う第1リード部Sga1又は第2リード部Sga2の間に相間絶縁紙25を挿入する。その後、治具を用いてセグメントSgのリード側突出部Sgaに対して捻りを加える。
【0027】
なお、第1リード部Sga1又は第2リード部Sga2については、図5においては、U1A1S1等という様に6桁又は7桁の符号がつけられている。符号の命名ルールは、最初の2つが相を示し、U1相、U2相、V1相、V2相、W1相、及びW2相というように分けられている。次の2つが組を示し、Aの次に示される文字は組みの番号である。第1実施形態の固定子10は、3相の固定子10であり、48スロットを有する固定子コア20を用いているので、U1相乃至W2相までの6つを1組として、8組まで存在する。次の2つ又は3つがスロット12に挿入される第1リード部Sga1又は第2リード部Sga2の外周側からの順番である。すなわちスロット12には10本の平角導体Dが挿入されるので、S1は最外周に配置される平角導体Dであり、S10は最内周に配置される平角導体Dである。
【0028】
また、ティース11及びスロット12についても、説明のために便宜上呼び分けている。ティース11は、第1ティースT1から第8ティースT8まで順番に配置されている。また、スロット12は第1ティースT1と第2ティースT2の間に第1スロットTS1が配置され、順に第2スロットTS2乃至第7スロットTS7まで順番に配置されている。
【0029】
第1リード部Sga1又は第2リード部Sga2の捻り方向に関しては図5に示す矢印A1及び矢印A2の示す方向となり、固定子コア20の径方向に隣り合う第1リード部Sga1又は第2リード部Sga2で逆方向に捻りが加えられることになる。セグメントSgの第1リード部Sga1又は第2リード部Sga2に対する捻りは、大半が3スロット分だけ捻られるものとなる。すなわち、図5で示される第1スロットTS1に挿入されたU1A1S1は、第7スロットTS7に挿入されたU1A2S2と隣り合う位置に来るように、第4スロットTS4の真上まで捻られることとなる。
【0030】
そして、U1A1S1とU1A2S2とは図4(e)に示されるように溶接されて溶接部Sgfが形成される。溶接の方法はTIG溶接が考えられており、第1リード部Sga1又は第2リード部Sga2の先端が被覆されていない状態で、溶接されることで電気的にも接合されることになる。同様にして、U1A1S3とU1A2S4とが接合され、U1A1S5とU1A2S6とが接合させ、U1A1S7とU1A2S8とが接合され、U1A1S9とU1A2S10とが接合される。同様にして、第1スロットTS1に挿入されるU1A1S2、U1A1S4、U1A1S6、U1A1S8、及びU1A1S10は、第8組のU1相と接合される。また、第7スロットTS7に挿入されるU1A2S1、U1A2S3、U1A2S5、U1A2S7、及びU1A2S9は、第2組のU1相と接合される。
【0031】
U2相乃至W2相も同様に接合され、U1相とU2相は図1に示される結合バスバ31を用いて電気的に接続される。V1相とV2相、W1相とW2相に関しても同様に結合バスバ31を用いて電気的に接続される。図1に示される外部接続端子30は、それぞれU相V相W相の一方の端部と接続されており、他方の端部は中性点として結合バスバ31で結合される。そして、最終的にセグメントSgが電気的に接続されたセグメントコイルSCを形成する。なお、部分的に接合ルールや捻りルールが異なる部分もある。
【0032】
図6に相間絶縁紙をリード側に配置した模式斜視図を示す。図6に示すように相間絶縁紙25は固定子コア20の径方向に隣り合うリード側突出部Sgaの間に配置された状態となる。なお、図6では相間絶縁紙25は1枚しか描かれていないが、他は説明の都合で省略している。実際には図1に示すように、隣り合うリード側突出部Sgaの間、すなわち、スロット12には平角導体Dが10本入るため、相間絶縁紙25は9枚必要となる。一方、図示しない反リード側には相間絶縁紙25が11枚必要となる。相間絶縁紙25は図示されていないが、絶縁性の高い素材で作られた長方形の紙であり、固定子コア20のリード側及び反リード側に円環状に配置されている。相間絶縁紙25はセグメントSgのリード側突出部Sgaが捻られる前に所定の位置に配置され、その後、図4(e)に示すようにリード側突出部Sgaが捻られて、端部が接合される。
【0033】
なお、相間絶縁紙25の配置には一定のルールに基づいて配置されている。図2ではU相V相W相の区別無く、リード側突出部Sgaが固定子コア20の外周側に配置される平角導体DからS1、S2、S3…と符号がふられている。同様に、相間絶縁紙25は外周側に配置されるものから、25A、25B、25C……と符号がふられている。第1端子S1と第2端子S2の間に配置される相間絶縁紙25は第1相間絶縁紙25Aであり、第1端部25aが外周側に配置され第2端部25bが内周側に配置されている。これは、第1端子S1の捻り方向の矢印A1とあわせ、切断面が矢印A1方向を向いている。一方、第1相間絶縁紙25Aの第2端部25bは内周側に接する第2端子S2の捻り方向が矢印A2であるため、切断面が矢印A2方向を向いている。
【0034】
第2端子S2と第3端子S3の間に配置される第2相間絶縁紙25Bは、第1端部25aが内周側に配置され第2端部25bが外周側に配置されている。これは、第2端子S2の捻り方向が矢印A2であり、第3端子S3の捻り方向が矢印A1であるので、これらにあわせて切断面が配置されているためである。第3端子S3と第4端子S4の間に配置される第3相間絶縁紙25Cは、第1端部25aが外周側に配置され、第2端部25bが内周側に配置されている。このように、相間絶縁紙25の第1端部25a及び第2端部25bは交互になるように配置されることになる。
【0035】
第1実施形態のセグメント式固定子10は上記構成であるので、以下に説明する作用及び効果を奏する。
【0036】
まず、第1実施形態の発明の効果として、固定子10のコイルエンドにおいて相間絶縁紙25を用いて相間の絶縁を確保することが可能である点が挙げられる。第1実施形態の固定子10は、複数のスロット12を放射線状に備える固定子コア20と、スロット12にリード側が固定子コア20の端面から突出するよう挿入される略U字状のセグメントSgと、セグメントSgのリード側が捻られて接合されることで環状に形成されるセグメントコイルSCとを備えるセグメント式固定子において、固定子コア20端面より突出するセグメントSgのコイルエンド部分に挿入される相間絶縁紙25を備え、相間絶縁紙25は、固定子コア20端面の円周方向に長い形状であり、固定子コア20の内周側に配置されている内周側端部と固定子コア20の外周側に配置されている外周側端部とを有し、内周側端部と外周側端部とが重ねられて、固定子コア20端面に対して同心円状に配置さ
れ、内周側端部の端面は固定子コア20内周側に隣接するセグメントSgの端部の捻り方向に向けられ、外周側端部の端面は固定子コア20外周側に隣接するセグメントSgの端部の捻り方向に向けられているものである。
【0037】
相間絶縁紙25は、内周側端部又は外周型端部となる第1端部25aと第2端部25bとが重ねられて円環状に形成され、固定子コア20のコイルエンドに配置される。この相間絶縁紙25はセグメントSgを捻る前に配置されているので、相間絶縁紙25とセグメントSgのリード側突出部Sgaとが干渉した場合であっても、相間絶縁紙25によって、セグメントSg同士の相間の絶縁を確保することが可能である。
【0038】
図7に、比較のために用意した比較例の、固定子のリード側コイルエンドの様子を側面拡大図に示す。図8に、第1比較例の、固定子のリード側コイルエンドの様子を側面拡大図に示す。図7と図8とは、相間絶縁紙25の第1端部25a及び第2端部25bの配置が異なる。図7の場合は、第1端部25aが固定子コア20の内周側に配置されている。この結果、リード側突出部Sgaを捻った影響でセグメントSgが相間絶縁紙25に対して干渉し、第1端部25aが捲れてしまっている。
【0039】
図9に、比較のために用意した比較例の、リード側突出部と相間絶縁紙の干渉の様子を部分斜視図に示す。図10に、比較のために用意した比較例の、リード側突出部が相間絶縁紙に干渉している様子を部分斜視図に示す。セグメントSgのリード側突出部Sgaは、相間絶縁紙25が存在することで、固定子コア20から遠いリード側突出部Sgaの先端側と、固定子コア20の端面付近に配置されるリード側突出部Sgaの根本側の2カ所しか保持する事が出来ない。したがって、図9の状態から図10の状態にリード側突出部Sgaが変形される場合に、固定子コア20の内径側に倒れるように変形する。これは、リード側突出部Sgaが最も倒れ易い方向に変形しようとする為である。
【0040】
このため、相間絶縁紙25の第1端部25aがリード側突出部Sgaに干渉して、図10に示すように第1端部25aが内周側に配置される相間絶縁紙25側に倒れてしまっている。これでは径方向に隣り合うリード側突出部Sga同士で相間絶縁紙25による絶縁を発揮することが出来ない。しかしながら、第1実施形態では、図8の場合は、第1端部25aが固定子コア20の外周側に配置されている。すなわち、リード側突出部Sgaが倒れる方向に向かい合うように第1端部25aの端辺edが配置されず、第1端部25aの端辺edはリード側突出部Sgaの倒れる矢印A1の方向に向いている。このため、リード側突出部Sgaが捻られた時にも、第1端部25a及び第2端部25bは図9及び図10に示すように干渉することがなくリード側突出部Sga同士の相間絶縁が相間絶縁紙25によって可能となる。
【0041】
このような第1端部25a又は第2端部25bの端部が捲れると言った状態は、第1端部25aと第2端部25bとが接合されて環状の相間絶縁紙25が形成されている場合には発生しにくいが、相間絶縁紙25を組み付け前に円環状にすることは、固定子コア20の端部に同心円状に配置が必要な、複数種類の相間絶縁紙25を用意することを意味するので、部品点数の増加に繋がり好ましくない。また、第1端部25aと第2端部25bとが結合されていないことで、セグメントSgのリード側突出部Sgaを捻る際に発生する相間絶縁紙25とリード側突出部Sgaとの接触により、相間絶縁紙25が動く余地があり、結果的に相間絶縁紙25に皺や破れを生じにくくするメリットもある。したがって、相間絶縁紙25の第1端部25aと第2端部25bとは接合されないことで、絶縁性を確保すると共に、コストダウンに貢献することが出来る。
【0042】
そのうえで、相間絶縁紙25の第1端部25aの端辺edと第2端部25bの端辺edとが、それぞれが接するリード側突出部Sgaの捻り方向と同じ方向に向けられていることで、セグメントSgのリード側突出部Sgaを捻る際に、相間絶縁紙25がリード側突出部Sgaと干渉することによって、捲れ、折れ曲がりなどが生じにくくなるため、結果的に固定子10のコイルエンドにおける相間絶縁を相間絶縁紙25によって確保することが可能となる。又、固定子10の歩留まりの向上に貢献することができ、コストダウンに貢献することが可能である。
【0043】
次に、本発明の第2の実施形態について、図面を用いて説明を行う。なお、第2実施形態の固定子10の製造方法は、第1実施形態の固定子10の製造方法と、その構成が類似しているが、相間絶縁紙25の形状が若干異なる。以下、異なる点について説明を行う。
【0044】
図11に、第2実施形態の、リード側突出部と相間絶縁紙の干渉の様子を部分斜視図に示す。図12に、リード側突出部を捻り終わった様子を部分斜視図に示す。なお、図11は、図9に対応し、図12は図10に対応させた図面となっている。このように、第2実施形態の相間絶縁紙25は、第1端部25a及び第2端部25bの角部が面取りされている点で第1実施形態とは異なる。また、相間絶縁紙25の第1端部25a及び第2端部25bの位置関係については第1実施形態のように限定する必要は無い。相間絶縁紙25の第1端部25a及び第2端部25bには、面取部25cが設けられている。この面取部25cは少なくとも2カ所、すなわち、図11及び図12において図面上側に面取部25cが設けられていれば良いが、4カ所すなわち第1端部25aに2カ所、第2端部25bに2カ所設ける構成であっても良い。
【0045】
このように相間絶縁紙25に面取部25cを設けておくことで、リード側突出部Sgaを捻る際においても、図12に示すように相間絶縁紙25とリード側突出部Sgaが干渉しにくくなり、図11の状態から図12の状態に捻ることができ、結果的に図10に示したような相間絶縁紙25の捲れが発生せず、相間絶縁紙25を適正な位置のままに保持する事が可能である。この結果、固定子10のコイルエンドにおける相間の絶縁を確保すると共に、歩留まりの向上に貢献しコストダウンに繋げることが可能である。
【0046】
以上、本実施形態に則して発明を説明したが、この発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更することにより実施することもできる。
【0047】
例えば、固定子コア20のスロット12内に挿入する平角導体Dの数を変更することを妨げない。構造上、固定子コア20のスロット12内に挿入する平角導体Dの数は偶数となるが、固定子10の設計思想によって増減される必要がある。そして、本発明の手法は固定子コア20のスロット12内に挿入する平角導体Dの数の増減に対応してその効果を得ることが可能である。
【0048】
また、固定子コア20のスロット12の数や固定子コア20の構成、その他の構成について発明の趣旨を妨げない範囲内での変更を妨げない。例えば、固定子コア20のスロット12の数は設計思想により適宜変更されるべきものである。また、固定子コア20は分割コア形式であろうと一体コア形式であろうと適用可能であり、これを限定するものではない。
【符号の説明】
【0049】
10 固定子
11 ティース
12 スロット
20 固定子コア
21 リブ
22 ボルト孔
25 相間絶縁紙
25a 第1端部
25b 第2端部
26 インシュレータ
30 外部接続端子
31 結合バスバ
SC セグメントコイル
Sg セグメント
Sgf 溶接部
ed 端辺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスロットを放射線状に備える固定子コアと、前記スロットにリード側が前記固定子コアの端面から突出するよう挿入される略U字状のセグメントと、前記セグメントのリード側が捻られて接合されることで環状に形成されるセグメントコイルとを備えるセグメント式固定子において、
前記固定子コア端面より突出する前記セグメントのコイルエンド部分に挿入される相間絶縁紙を備え、
前記相間絶縁紙は、前記固定子コア端面の円周方向に長い形状であり、前記固定子コアの内周側に配置されている内周側端部と前記固定子コアの外周側に配置されている外周側端部とを有し、前記内周側端部と前記外周側端部とが重ねられて、前記固定子コア端面対して同心円状に配置され、
前記内周側端部の端面は前記固定子コア内周側に隣接する前記セグメントの端部の捻り方向に向けられ、
前記外周側端部の端面は前記固定子コア外周側に隣接する前記セグメントの端部の捻り方向に向けられていることを特徴とするセグメント式固定子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−244887(P2012−244887A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116199(P2011−116199)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】