説明

セシウムを吸着するための複合吸着剤、フィルター及びカラム

【課題】取り扱い性に優れ、放射性セシウムに対する高い吸着除去能力を有する複合吸着剤、前記複合吸着剤からなるフィルター、及び前記複合吸着剤を充填してなるカラムを提供する。
【解決手段】(a)ダイヤモンド微粒子にフェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を担持してなる複合ダイヤモンド微粒子、及び/又は(b)カーボンナノチューブにフェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を担持してなる複合カーボンナノチューブと、多孔質材料とからなる、セシウムを吸着するための複合吸着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中又は気体中のセシウム、特に放射性廃液中又は気体中の放射性セシウムを除去するための複合吸着剤、フィルター及びカラムに関し、詳しくは、水中又は気体中のセシウムを吸着除去するための、フェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を担持したダイヤモンド微粒子、及び/又はフェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を担持したカーボンナノチューブと、多孔質材料とからなる複合吸着剤、前記複合吸着剤からなるフィルター、及び前記複合吸着剤を充填してなるカラムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所、使用済み核燃料の再処理工場等の原子力施設では、種々の放射性物質(放射性元素、放射性元素が付着した粉塵等)を含む廃液又は気体が発生する。放射性廃液は、蒸発濃縮、イオン交換、凝集沈殿等の操作によって放射性物質と水に分けられ、放射性物質が充分に除去された水は放出され、濃縮された放射性物質はガラス固化、アスフアルト固化等の方法によって固定され、保管される。また放射性物質を含む気体についても同様にフィルター濾過、吸着等の操作により除去される。
【0003】
これらの方法の中で、蒸発濃縮法は水と放射性物質を分離する効率、すなわち、除染効率は非常に高いが、蒸発設備の建設コスト及び運転コストが高く、また、蒸発缶の材料が腐食しやすい等の欠点がある。一方、イオン交換樹脂法や凝集沈殿法は、設備の建設コスト及び運転コストは小さいが、除染効率が低いといった欠点がある。特にイオン交換樹脂法の場合、イオン交換樹脂が放射線で徐々に劣化するため、繰り返し使用するには耐久性の点で問題がある。
【0004】
また放射性廃液には通常、核燃料物質の抽出剤の洗浄に用いられたナトリウム塩が混入するため、蒸発濃縮法では硝酸ナトリウム等のナトリウム塩が釜残中に析出して濃縮倍率が上がらないといった問題があり、イオン交換樹脂法では、硝酸ソーダの濃度が高くなることによりセシウム等の一価の陽イオンの吸着量が低下し、除染効率が低下するといった問題があり、凝集沈殿法では硝酸ソーダの存在により除染係数が低下するといった問題がある。
【0005】
廃液中の放射性物質には、水酸化物として溶解度の小さいルテニウム、ジルコニウム等の重金属、及び水酸化物として溶解度の高いセシウム、ストロンチウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属等、種々の元素が含まれている。これらの中でルテニウム、ジルコニウム等の重金属は、液性をアルカリ性にすることによって水酸化物として、また、水酸化鉄等との共沈によって析出させ、除去する凝集沈殿法が有効だが、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の除去は非常に困難である。
【0006】
アルカリ金属、アルカリ土類金属等の除去法としては、イオン交換体による方法が広く検討されている。ストロンチウム等のアルカリ土類金属及びウラン等の吸着体としては、チタン酸が知られており、例えば、特開昭57-140644号(特許文献1)に示されるような、チタン酸の表面積を非常に大きくして吸着能力を向上させると同時に吸着体としての取り扱い性等を改良した、チタン酸とアクリロニトリル系重合体の複合吸着体成型物が有効である。
【0007】
また、セシウム等のアルカリ金属を吸着除去するためには、ゼオライト、フェロシアン化金属塩等が知られており、特にフェロシアン化金属塩はゼオライトと比較して吸着能力が高く、セシウムに対する選択性が高い点で優れた吸着剤である。しかしながら、フェロシアン化金属塩は、コロイド状物又はスライム(泥状物)となったり、非常に微細な粒子となったりするため、極めて沈降し難く、濾過性が悪い。このため、セシウムを吸着させた後に、吸着物を分離することが困難であり除去効率の低下を招いてしまう。
【0008】
これらの問題を解決するために、特開昭63-130137号(特許文献2)は、フェロシアン化金属塩をチタン酸に担持してなるフェロシアン化金属塩・チタン酸複合吸着体を開示しており、特開平1-15134号(特許文献3)は、アクリル繊維に一般式 K2M(II)[Fe(CN)6] [ただし、M(II)は2価の金属を表す。]で表されるフェロシアン酸塩化合物を担持してなる吸着材及び粒状又は繊維状のキレート樹脂の組合せからなる放射性核種等重金属捕集材を開示しており、さらに特開平2-207839号(特許文献4)は、水に難溶なフェロシアン化金属化合物を活性炭の細孔内に沈着させた可燃性セシウム吸着剤を開示している。
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載のフェロシアン化金属塩・チタン酸複合吸着体、及び特許文献3に記載のフェロシアン酸塩化合物を担持してなる吸着材及び粒状又は繊維状のキレート樹脂は、フェロシアン化金属塩の担持量が少ないため、十分なセシウムの除去能力が得られないという問題があり、特許文献4に記載の吸着剤は、セシウムの除去能力を高めるため担体として使用している活性炭を微粒子化してゆくと処理後の担体の回収効率が低下するといった問題があり、いずれも放射性物質の処理に使用する吸着剤としては改良が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭57-140644号公報
【特許文献2】特開昭63-130137号公報
【特許文献3】特開平1-15134号公報
【特許文献4】特開平2-207839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、取り扱い性に優れ、放射性セシウムに対する高い吸着除去能力を有する複合吸着剤、前記複合吸着剤からなるフィルター、及び前記複合吸着剤を充填してなるカラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、(a)フェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を担持させたダイヤモンド微粒子、及び/又は(b)フェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を担持させたカーボンナノチューブと、多孔質材料とからなる複合吸着剤が、取り扱い性に優れ、かつ放射性セシウムの吸着除去能力に優れていることを見出し、本発明に想到した。
【0013】
すなわち、本発明のセシウムを吸着するための複合吸着剤は、(a)ダイヤモンド微粒子に、フェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を担持してなる複合ダイヤモンド微粒子、及び/又は(b)カーボンナノチューブにフェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を担持してなる複合カーボンナノチューブと、多孔質材料とからなることを特徴とする。
【0014】
本発明の複合吸着剤は、前記複合ダイヤモンド微粒子及び/又は前記複合カーボンナノチューブを、前記多孔質材料に担持してなるのが好ましい。
【0015】
本発明の複合吸着剤は、前記複合ダイヤモンド微粒子及び/又は前記複合カーボンナノチューブを、前記多孔質材料に含有してなるのが好ましい。
【0016】
前記多孔質材料が有機高分子からなるのが好ましい。
【0017】
前記多孔質材料が、不織布又は発泡プラスチックからなるのが好ましい。
【0018】
前記ダイヤモンド微粒子は、爆射法で得られたものであるのが好ましい。
【0019】
前記ダイヤモンド微粒子は、酸化処理により表面を親水化したものであるのが好ましい。
【0020】
前記ダイヤモンド微粒子は、2.55〜3.48 g/cm3の比重を有するのが好ましい。
【0021】
前記カーボンナノチューブは、カップスタック型であるのが好ましい。
【0022】
前記フェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物は、フェロシアン化物イオン及び/又はフェリシアン化物イオンと、遷移金属又は典型金属とを含む塩であるのが好ましい。
【0023】
前記遷移金属又は典型金属は、Co、Ni、Zn、Cu、Cd、Fe、Ti及びZrからなる群から選ばれた少なくとも一種であるのが好ましい。
【0024】
前記フェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物は、アルカリ金属を含んでもよい。
【0025】
前記アルカリ金属はLi、Na及びKからなる群から選ばれた少なくとも一種であるのが好ましい。
【0026】
本発明のセシウムを吸着するためのフィルターは、前記複合吸着剤からなる。
【0027】
本発明のセシウムを吸着するためのカラムは、前記複合吸着剤を充填してなる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の複合吸着剤は、水中又は気体中のセシウムを選択的に吸着することができ、かつ廃液又は気体を連続的に処理できるので、本発明の複合吸着剤、前記複合吸着剤からなるフィルター及び前記複合吸着剤を充填してなるカラムは、放射性物質を含有する廃液又は気体から放射性セシウムを除去するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】爆射法によりダイヤモンド微粒子を合成する際に使用する氷の容器の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[1] 複合吸着剤
(1)構成
本発明の複合吸着剤は、(a)ダイヤモンド微粒子にフェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を担持してなる複合ダイヤモンド微粒子、及び/又は(b)カーボンナノチューブにフェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を担持してなる複合カーボンナノチューブと、多孔質材料とからなる。本発明の複合吸着剤は、セシウムに対して選択的な吸着力を有するフェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を、高い比表面積を有し、その表面に多くの官能基を有するダイヤモンド微粒子又はカーボンナノチューブに担持させてなる複合粒子を、多孔質材料に担持又は含有させたものであり、例えば、放射性物質を含有する廃水(放射性廃水)及び放射性物質を含有する気体から放射性セシウム(134Cs、137Cs等)を効率よく吸着し除去することができる。
【0031】
多孔質材料に対する複合ダイヤモンド微粒子及び複合カーボンナノチューブは、多孔質材料の材質、構造等にもよるが、複合ダイヤモンド微粒子及び複合カーボンナノチューブが前記多孔質材料にできるだけ多く担持又は含有されているのが好ましい。具体的に、複合ダイヤモンド微粒子及び複合カーボンナノチューブの合計量は、前記多孔質材料が有機樹脂からなる不織布の場合、多孔質材料1 kg当たり0.1 g以上であるのが好ましく、1 g以上であるのがより好ましく、10 g以上であるのが最も好ましい。0.1 g未満では、放射性セシウム除去効率が不十分となる場合がある。
【0032】
(2)フェロシアン化金属化合物及びフェリシアン化金属化合物
フェロシアン化金属化合物及びフェリシアン化金属化合物は、それぞれフェロシアン化物イオン([Fe(II)(CN)6]4-)と金属との塩及びフェリシアン化物イオン([Fe(III)(CN)6]3-)と金属との塩であり、前記金属としてはアルカリ土類金属以外の金属を含むのが好ましく、遷移金属又は典型金属を含むのが好ましい。遷移金属及び典型金属以外の金属としてアルカリ金属を含んでいてもよい。
【0033】
前記金属としては、Ag、Zn、Cd、Cu、Co、Ni、Mn、Fe、Ti、Zr、V、Mo、W、Uからなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましく、特にCo、Ni、Zn、Cu、Cd、Fe、Ti及びZrからなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。アルカリ金属としては、Li、K又はNaが好ましい。好ましいフェロシアン化金属化合物としては、K2Co[Fe(CN)6]、Na2Ni[Fe(CN)6]、K2Zn3[Fe(CN)6]2、K2Cu3[Fe(CN)6]2、Cu2[Fe(CN)6]、Zn2[Fe(CN)6]、Cd2[Fe(CN)6]、Ni2[Fe(CN)6]、Fe4[Fe(CN)6]3、Ti[Fe(CN)6]等を挙げることができ、好ましいフェリシアン化金属化合物としては、Zn3[Fe(CN)6]2、Fe[Fe(CN)6]、Ni3[Fe(CN)6]2、Cu3[Fe(CN)6]2等を挙げることができる。
【0034】
ダイヤモンド微粒子又はカーボンナノチューブに対するフェロシアン化金属化合物及びフェリシアン化金属化合物の合計の担持量は、ダイヤモンド微粒子又はカーボンナノチューブ1g当たり0.001 mmol以上であるのが好ましく、0.01 mmol以上であるのがより好ましい。0.001 mmol未満では、放射性セシウムを十分に吸着させることができず、十分な除去効率が得られない。担持量の上限は特に規定する必要はなく、十分に担持されていればできるだけ多い方が好ましいが、通常、ダイヤモンド微粒子又はカーボンナノチューブ1g当たり1 mmol以下である。
【0035】
(3)ダイヤモンド微粒子又はカーボンナノチューブ
フェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物は、ダイヤモンド微粒子及び/又はカーボンナノチューブ表面のカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基に担持されるので、より多くのフェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物をダイヤモンド微粒子及び/又はカーボンナノチューブ表面に担持させるためには、酸化処理等の方法により表面をより多くのカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基で修飾し親水化したダイヤモンド微粒子又はカーボンナノチューブを用いるのが好ましい。
【0036】
ダイヤモンド微粒子にフェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を担持させてなる複合ダイヤモンド微粒子、及びカーボンナノチューブにフェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を担持させてなる複合カーボンナノチューブは、それぞれ単独で使用しても良いし、混合して使用しても良い。混合して使用する場合は、それらの混合比率はどのような値でも良いが、複合ダイヤモンド微粒子を過剰にするのが好ましい。
【0037】
(a) ダイヤモンド微粒子
ダイヤモンド微粒子としては、表面積が大きいこと、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基が粒子表面に比較的多く存在すること、及び前記化学修飾の容易さから、爆射法で得られたナノダイヤモンドを用いるのが好ましい。爆射法で得られた未精製のナノダイヤモンドは、ナノサイズのダイヤモンド粒子の表面をグラファイト系炭素が覆ったコア/シェル構造を有しており、このまま使用することも可能であるが、酸化処理を施すことにより粒子表面のグラファイトを一部除去するとともに、その表面をカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基で修飾して使用するのが好ましい。
【0038】
未精製のナノダイヤモンドは、約2.55 g/cm3の比重を有し、200〜250 nm程度のメジアン径(動的光散乱法)を有する。この未精製のナノダイヤモンドを酸化処理することにより、粒子表面のグラファイト系炭素が除去され、ダイヤモンド含率の高いダイヤモンド微粒子が得られる。酸化処理することにより精製したダイヤモンド微粒子は2〜10 nm程度のダイヤモンドの一次粒子からなるメジアン径150〜250 nm程度の二次粒子である。本発明で使用するダイヤモンド微粒子は、その表面積を大きくするため、さらにメディア分散等の方法によりできるだけ凝集を解いて使用するのが好ましく、そのメジアン径は10〜200 nmであるのが好ましく、20〜150 nmであるのがより好ましい。
【0039】
ダイヤモンド微粒子は、2.55〜3.48 g/cm3の比重を有するのが好ましい。ダイヤモンド微粒子の比重は、ナノダイヤモンドの精製度(グラファイト系炭素の除去率)に伴って増加するので、比重から粒子中のダイヤモンド含率(粒子表面に存在するグラファイト系炭素の量)を求めることができる。すなわち、比重が2.55 g/cm3の場合のダイヤモンド含率は24体積%、比重が3.48 g/cm3の場合のダイヤモンド含率は98体積%である。
【0040】
ダイヤモンド微粒子の比重が2.55 g/cm3未満、すなわち酸化処理を行わない場合であっても、その表面にカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基を有しているが、さらに酸化処理を施すことによって、それらの数を増加させることができる。また過剰に酸化処理を施した場合、ナノダイヤモンドのシェル部分のグラファイト系炭素がほとんど除去されるため、逆にカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基が少なくなってしまう。その結果、担持できるフェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物の数が少なくなり、セシウムを吸着する能力が不十分となる。従って比重は3.48 g/cm3を越えない程度であるのが好ましい。前記比重は、3.0 g/cm3(ダイヤモンド84体積%)以上3.46 g/cm3(ダイヤモンド97体積%)以下であるのがより好ましく、3.38 g/cm3(ダイヤモンド90体積%)以上3.45 g/cm3(ダイヤモンド96体積%)以下であるのが最も好ましい。なおナノダイヤモンド中のダイヤモンドの体積%は、ダイヤモンドの比重3.50 g/cm3及びグラファイトの比重2.25 g/cm3を用いて、ナノダイヤモンドの比重から算出した値である。
【0041】
(b)カーボンナノチューブ
カーボンナノチューブは、グラファイトを筒状に巻いた形状で、1〜1500 nmの直径、及び数nmから1 mm程度の長さを有する炭素材料である。本発明で用いるカーボンナノチューブの形状は、特に限定されないが、直径1〜1000 nmが好ましく、5〜500 nmがより好ましく、10〜300 nmが最も好ましく、長さは10 nmから5 μmが好ましく、20 nmから1 μmがより好ましい。カーボンナノチューブには単層のもの、多層構造になったもの、カップスタック状のもの等があるが、本発明に使用するカーボンナノチューブは、表面積が大きいこと、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基が粒子表面に比較的多く存在すること、及び前記化学修飾の容易さから、カップスタック型のものを用いるのが好ましい。
【0042】
カップスタック型カーボンナノチューブは、底のないカップ形状をなす炭素網層が数個〜数百個積層した炭素繊維であり、繊維の内外壁に炭素網層の端面が露出した構造を有している。炭素網層の端面はカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基が多く活性度が高いと考えられるため、カップスタック型カーボンナノチューブは多くのフェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を担持することができる。
【0043】
(4)多孔質材料
複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブを担持又は含有させる多孔質材料としては、活性炭、ゼオライト、結晶性アルミノリン酸塩型モレキュラーシーブ、シリカゲル、珪藻土、パリゴスカイト、セピオライト、金属(ステンレス、銅等)等の粒子内に微孔を有する多孔質無機粒子、天然又は合成のパルプ、ナイロン(登録商標)、ポリエステル、ポリオレフィン、アラミド等の有機繊維、又はガラス質、炭素質、アルミナ質及び/又はシリカ質、金属(ステンレス、銅等)等の無機繊維で構成された紙、不織布、織布、編地等、及び綿、羊毛、パルプ、ナイロン(登録商標)、ポリエステル、ポリオレフィン、アラミド、ビニロン、ビスコースレーヨン、キュプラレーヨン等の樹脂を発泡、相分離、延伸等の方法で多孔質化した材料が挙げられる。特に取り扱いの簡便さ、前記複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブの担持又は含有させやすさから、有機繊維からなる紙、不織布、織布、編地が好ましく、機械的強度の点で不織布が好ましく、特にポリオレフィン、ポリエステル、レーヨン等の繊維を単独又は組合せて構成されたメルトブロー不織布が好ましい。これらの繊維を組合せる場合、繊維そのものを混合して不織布を形成しても良いし、それぞれの繊維で形成した不織布を重ねて使用しても良い。
【0044】
本発明に用いる多孔質材料は、単一層からなるメルトブロー不織布を複数枚重ねて使用するのが好ましく、重ねる枚数は目的に応じてどのような枚数でもよいが、好ましくは10〜1000枚、より好ましくは20〜500枚である。各不織布は、目付が20〜140 g/m2であるのが好ましく、40〜120 g/m2であるのがより好ましく、60〜120 g/m2であるのが最も好ましい。厚みは0.5〜1.5 mmであるのが好ましく、0.5〜1.0 mmであるのがより好ましい。また各単一層は充填率勾配を有しているのが好ましい。
【0045】
不織布の目付が20 g/m2未満の場合は、不織布の強度が不十分となる場合があり、一方目付が140 g/m2を超える場合は、不織布の強度や剛性は十分であるものの、通気性、透過性が低下する傾向があり、さらには製造コスト面でも好ましくない方向である。なお目付は、JIS L1096「一般織物試験方法」の8.4に準じて測定することができる。
【0046】
不織布は、平均繊維径が2〜30μmであるのが望ましい。不織布の平均繊維径が2μm未満では、ダストの目詰まりが速くなり、一方、30μmを超えると、比表面積が小さくなるため、複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブの有効含有量(繊維表面に存在する量)が小さくなる。不織布を気体のフィルターとして用いる場合、通気度が10〜250 cc/cm2/secであるのが好ましい。不織布の通気度が10 cc/cm2/sec未満では目詰まりが速く、一方、250 cc/cm2/secを超えると捕集効果が低くなる。
【0047】
多孔質材料が、粒子状の場合は複合ダイヤモンド微粒子、及び/又は複合カーボンナノチューブを担持又は含有させた後、カラム等に充填して用いるのが好ましい。無機又は有機繊維からなる紙、不織布、織布、編地等、及び有機高分子を発泡、相分離、延伸等の方法で多孔質化した材料の場合は、そのままフィルターとして使用することができる。
【0048】
[2]製造方法
(1)ダイヤモンド微粒子
(a) 爆射法
爆射法によるダイヤモンド微粒子の合成は、水及び/又は氷の存在下で爆薬を爆発させて行うウエット法、水及び/又は氷を使用しないで空冷するドライ法等があるが、本発明では爆射法であればどの方法を採用しても良い。
【0049】
爆薬としては公知の有機系爆薬を用いることができる。有機系爆薬としては、トリニトロトルエン(TNT)、トリニトロベンゼン(TNB)、シクロトリメチレントリニトラミン(RDX)、シクロテトラメチレンテトラニトラミン(HMX)、テトラニトロメチルアニリン(テトリル)、トリアミノトリニトロベンゼン(TATB)、ジアミノトリニトロベンゼン(DATB)、ヘキサニトロスチルベン(HNS)、ヘキサニトロアゾベンゼン(HNAB)、ヘキサニトロジフェニルアミン(HNDP)、ピクリン酸、ピクリン酸アンモニウム、ベンゾトリアゾール(TACOT)、エチレンジニトラミン(EDNA)、ニトログアニジン(NQ)、ペンタエリスリトールテトラナイトレート(ペンスリット)、ベンゾトリフルオキサン(BTF)等が挙げられ、これらを単独又は混合して使用する。特に、RDX(60%)とTNT(40%)との混合爆薬として知られているコンポジションB等を使用するのが好ましい。
【0050】
これらの有機系爆薬は、炭素原子含有率が15質量%以上、好ましくは20〜35質量%、密度が1.5 g/cc以上、好ましくは1.6 g/cc以上、爆速は7000 m/s以上、好ましくは7500 m/s以上であり、酸素バランスが負、好ましくは-0.2〜-0.6であり、爆射圧が18 GPa以上、好ましくは20〜30 GPa、爆射温度が3000 K以上、好ましくは3000〜4000 Kである。そのため、爆薬中の炭素原子を効率よくダイヤモンドに転換することができる。
【0051】
前記爆射法は、Science, Vol. 133, No.3467(1961), pp1821-1822、特開平1-234311号、特開平2-141414号、Bull. Soc. Chem. Fr. Vol. 134(1997), pp. 875-890、Diamond and Related materials Vol. 9(2000), pp861-865、Chemical Physics Letters, 222(1994), pp. 343-346、Carbon, Vol. 33, No. 12(1995), pp. 1663-1671、Physics of the Solid State, Vol. 42, No. 8 (2000), pp. 1575-1578、K. Xu. Z. Jin, F. Wei and T. Jiang, Energetic Materials, 1, 19(1993)、特開昭63-303806号、特開昭56-26711報、英国特許第1154633号、特開平3-271109号、特表平6-505694号(WO93/13016号)、炭素, 第22巻, No. 2, 189〜191頁(1984)、Van Thiei. M. & Rec., F. H., J. Appl. Phys. 62, pp. 1761〜1767 (1987)、特表平7-505831号 (WO94/18123号)、米国特許第5861349号、特開2006-239511号及び特開2003-146637号等に記載の方法を用いることができる。
【0052】
(b)酸化処理
未精製のダイヤモンドの酸化処理方法としては、(i) 過塩素酸、重クロム酸、硝酸等の酸化剤共存下で高温高圧処理する方法(酸化処理A)、(ii)水及び/又はアルコールからなる超臨界流体中で処理する方法(酸化処理B)、(iii)水及び/又はアルコールからなる溶媒に酸素を共存させて、前記溶媒の標準沸点以上の温度及び0.1 MPa(ゲージ圧)以上の圧力で処理する方法(酸化処理C)、又は(iv)375〜630℃で酸素を含む気体により処理する方法(酸化処理D)が挙げられる。これらの酸化処理は、単独で行ってもよいし、組合せて行っても良い。酸化処理を組合せる場合は、爆射法で得られた未精製のダイヤモンドにまず酸化処理Aを施し、さらに再度酸化処理A、又は酸化処理B〜Dのいずれかを施すのが好ましい。
【0053】
爆射法で得られた未精製のダイヤモンドに酸化処理Aを施すことによりグラファイト相の一部が除去されたナノダイヤモンド(グラファイト-ダイヤモンド粒子)が得られ、このグラファイト-ダイヤモンド粒子にさらに酸化処理A〜Dのいずれかの処理を施すことにより前記グラファイト相をさらに除去することができる。粒子表面をカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基で修飾するために、酸化処理Aで使用する酸化剤としては高い酸化力を有するものが好ましい。具体的には、過塩素酸、重クロム酸又は硝酸が好ましい。酸化処理B及びCとしては、例えば、特開2011-37693号に記載の方法を用いることができ、酸化処理Dとしては、例えば、国際公開第2007/133765号に記載の方法を用いることができる。
【0054】
(c)メディア分散処理
爆射法により得られた未精製のダイヤモンド、及び前記酸化処理を施したナノダイヤモンドの動的光散乱法で求めたメジアン径は150〜250 nmである。これらの粒子は、前述したように、メジアン径2〜10 nm程度のダイヤモンド一次粒子が強固に凝集した凝集体である。凝集がより少ないダイヤモンド微粒子を得るために、ダイヤモンド微粒子をビーズミル等の公知のメディア分散法により粉砕するのが好ましい。ダイヤモンド微粒子に酸化処理を施す場合、酸化処理の前にメディア分散を行っても良いし、酸化処理の後にメディア分散を行っても良い。本発明の目的には、酸化処理の前にメディア分散を行った方が、微細化し粒子表面積を増加させた状態で酸化処理を施すことができ、より多くのカルボキシル基等の官能基をダイヤモンド表面に導入することができるので好ましい。ビーズミルによる分散は、ジルコニアビーズを使用するのが好ましい。未精製又は前記酸化処理を施したダイヤモンド微粒子をメディア分散することにより、メジアン径を100 nm以下にするのが好ましく、50 nm以下にするのがより好ましく、30 nm以下にするのが最も好ましい。
【0055】
ビーズミルによる分散は市販の装置を用いて行うことができる。連続的に分散液を供給しながら、ビーズによる粉砕を行うことができる装置を使用するのが好ましく、例えば0.1 mm径のジルコニアビーズを0.15 Lのベッセルに充填し、10 m/s程度の周速で回転子を回転させながら、5%程度の前記ダイヤモンド微粒子の水分散物を0.12 L/minで供給し粉砕する。さらに細かく分散させたいときは、0.05 mm径や0.03 mm径のジルコニアビーズを用いてもよい。
【0056】
(2)カーボンナノチューブ
カップスタック型カーボンナノチューブは、市販のもの、国際公開第2008/004347号、特開2003-147644号、Qingfeng Liu et al. “Synthesis, Purification and Opening of Short Cup-Stacked Carbon Nanotubes”, Journal of Nanoscience and Nanotechnology, vol. 9, 4554-4560, 2009等に記載のものを用いることができる。カップスタック型カーボンナノチューブの製造法の一例を以下に説明するが、本発明はこの方法に限定されるものではない。
【0057】
カップスタック型カーボンナノチューブは、CoO-A1203系の触媒を用いて合成することができる。CoO-A1203系の触媒は、硝酸コバルトと硝酸アルミニウムとを加熱して熱分解し、得られた反応物を粉砕して作製する。合成触媒の組成はCoO:A1203=80:20〜40:60(質量比)であるのが好ましい。カップスタック型カーボンナノチューブは、前記合成触媒を銅製の容器に配置し、約650℃で、触媒に向けてプロパン/ブタンの混合ガスを流すことによって合成することができる。得られたカップスタック型カーボンナノチューブは、塩酸処理によってアモルファスカーボン及び合成触媒を溶解除去し、さらに前述のダイヤモンド微粒子と同様にして酸化処理を施し、その表面に親水基を修飾するのが好ましい。
【0058】
(3)フェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物の担持
フェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物が担持してなる複合ダイヤモンド微粒子又は複合カーボンナノチューブは、ダイヤモンド微粒子又はカーボンナノチューブを分散した分散液に、水溶性の金属塩(例えば、FeCl3等の金属の塩化物)を混合し、ダイヤモンド微粒子又はカーボンナノチューブと前記金属との塩を形成した後、水溶性フェロシアン化物及び/又は水溶性フェリシアン化物を添加することによって作製することができる。このような方法により、ダイヤモンド微粒子又はカーボンナノチューブ表面のカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基に金属を介してフェロシアン化物及び/又はフェリシアン化物が担持される。
【0059】
前記水溶性の金属塩は、遷移金属又は典型金属の塩化物、硫酸塩、硝酸塩等の化合物であり、特に塩化物が好ましい。これらの水溶性の金属塩を添加することにより、ダイヤモンド微粒子又はカーボンナノチューブ表面のカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基と遷移金属又は典型金属との塩を形成する。前記遷移金属又は典型金属としては、Ag、Zn、Cd、Cu、Co、Ni、Mn、Fe、Ti、Zr、V、Mo、W、U等が好ましく、特にCo、Ni、Zn、Cu、Cd、Fe、Ti及びZrが好ましい。前記水溶性の金属塩としては、FeCl3、CoCl2、ZnCl2、CuCl2、NiCl2等が好ましい。
【0060】
前記水溶性フェロシアン化物としては、フェロシアン化リチウム(Li4[Fe(CN)6])、フェロシアン化カリウム(K4[Fe(CN)6])、フェロシアン化ナトリウム(Na4[Fe(CN)6])等を用いるのが好ましく、水溶性フェリシアン化物としては、フェリシアン化リチウム(Li3[Fe(CN)6])、フェリシアン化カリウム(K3[Fe(CN)6])、フェリシアン化ナトリウム(Na3[Fe(CN)6])等を用いるのが好ましい。
【0061】
フェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を担持してなる複合ダイヤモンド微粒子又は複合カーボンナノチューブに、さらに前述のメディア分散処理を施すのが好ましい。メディア分散処理により、フェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を担持するための処理過程で凝集した複合ダイヤモンド微粒子又は複合カーボンナノチューブを再分散させ、その表面積を増やし、セシウムの吸着能を増加させることができる。さらに超音波による分散、ホモジナイザー、アトライター、ボールミル等を併用しても良い。
【0062】
(4)多孔質材料の作製
多孔質材料は、公知の方法で製造することができる。特に不織布は、湿式法(サーマルボンド法、ケミカルボンド法、スパンレース法(水流絡合法)等)、乾式法(サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法、ステッチボンド法等)、スパンボンド法、メルトブロー法等で製造する。以下、高分子樹脂からなる不織布をメルトブロー法によって製造する方法について説明する。
【0063】
メルトブロー法とは、ダイス先端に一定のピッチをおいて多数設置された一定の孔径を有するノズルから溶融ポリマーを吐出し、ジェット気流中で紡糸し、紡糸した溶融ポリマーを、移動するネット上で捕集して、比較的均一な直径を有する極細繊維からなる不織布を形成する方法である。得られる繊維径は比較的均一であり、繊維径の分布は狭いのがメルトブロー法の特徴である。前記繊維径は、メルトブロー法の製造条件、例えばポリマー吐出温度、吐出量、エアー量等を変更することによって任意に調節できる。
【0064】
前記溶融ポリマーとなる原料の熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン、ポリエステル、レーヨン等を用いるのが好ましい。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン及びポリプロピレンが好ましく、特にポリプロピレンが好ましい。ポリプロピレンとしては、プロピレン単独重合体、又はプロピレンと他のα-オレフィン(エチレン、ブテン、ヘキセン、4-メチルペンテン、オクテン等)、不飽和カルボン酸又はその誘導体(アクリル酸、無水マレイン酸等)、芳香族ビニル単量体(スチレン等)等とのランダム、ブロック又はグラフト共重合体である。プロピレンと他の単量体との共重合体を用いる場合は、プロピレンを50質量%以上含有するものが好ましい。ポリプロピレンのメルトフローレート(MFR)は、10〜1200 g/10分、特に15〜400 g/10分のものが好ましい。これらポリプロピレンは、単独で使用しても良いし、複数種類の重合体の混合物として使用しても良いし、ポリプロピレンと他のポリマーとからなる混合樹脂として使用しても良い。
【0065】
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート又はポリトリメチレンテレフタレートを含むものが挙げられ、これらのいずれかが主成分であるのが望ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートが好ましい。具体的には、これらのいずれかが50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが最も好ましい。ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート又はポリトリメチレンテレフタレートからなるメルトブロー不織布は、融点が比較的高いため、耐熱性に優れており、かつ熱による寸法安定性も優れている。
【0066】
前記メルトブロー不織布の原料樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、結晶核剤や艶消し剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、難燃剤、親水剤、光安定剤等を添加してもよい。
【0067】
前述のように、不織布は充填率勾配を有しているのが好ましい。エアフィルターに用いた場合に、エアーの流れに対して、充填率の低い側を上流とし、充填率の高い側を下流として用いる。具体的には、低い側の充填率が4〜10%であり、高い側の充填率が12〜20%であるのが望ましい。充填率勾配は、例えば、メルトブロー法によって、高温のジェット気流中で紡糸された繊維を捕集する際、回転するドラムコンベアー、又はベルトコンベアーに設けたネット上に捕集することによって形成することができる。
【0068】
すなわち、溶融ポリマーを紡糸するジェット気流は、ノズルから離れるほど広がるので、例えば、溶融ポリマーがドラムコンベアーの上半分にのみ吹き付けられるように、ドラムコンベアーを配置して捕集面を下から上に移動させながら不織布を形成すると、形成の開始時はノズルからの距離が短いため、ジェット気流の強い風圧によって押し付けられ充填率が高くなるのに対し、形成の後期ではノズルからの距離が比較的長くなるため、ジェット気流の風圧が弱くなり充填率が比較的小さくなる。その結果、ネット側の面は充填率が高く、反対の面は充填率が低い充填率勾配を有する不織布が得られる。
【0069】
溶融ポリマーと高温ジェット気流を水平に吹き出してベルトコンベアーを使用する場合は、ベルトコンベアーの捕集面を鉛直方向に対して、角度を持たせることによっても同様の効果が得られる。
【0070】
(5)複合吸着剤の作製
複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブを担持してなる多孔質材料は、(a)複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブを多孔質材料に担持させる方法、又は(b)ダイヤモンド微粒子及び/又はカーボンナノチューブを多孔質材料に担持させた後に、前記担持されたダイヤモンド微粒子及び/又はカーボンナノチューブにフェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を作用させる方法により製造する。
【0071】
複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブを含有してなる多孔質材料は、(c)複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブを多孔質材料に含有させる方法、又は(d)ダイヤモンド微粒子及び/又はカーボンナノチューブを多孔質材料に含有させた後に、前記担持されたダイヤモンド微粒子及び/又はカーボンナノチューブにフェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を作用させる方法により製造する。
【0072】
ここで、「複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブを含有させる」とは「多孔質材料の中に複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブを練り込む」ことである。複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブを多孔質材料に含有させる場合は、必要に応じて、複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブが多孔質材料の表面に存在するような処理を施すのが好ましい。
【0073】
(a) 複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブを担持させる方法
複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブの多孔質材料表面への担持は、フィルターに複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブを分散した液をスプレー、パディング、プリント、コーティング、浸漬等の方法で多孔質材料又はあらかじめ作製した多孔質材料からなるフィルターに付着させて、常温又は加熱して乾燥することによって行う。これらの方法から、多孔質材料の形態、材質、サイズ、空隙率等によって最適なものを選択して行う。また多孔質材料がメルトブロー不織布の場合、メルトブロー法によって紡糸する際に、前記分散液をジェット気流中に同時に吹き付けることによって行うことができる。前記分散液中の複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブの濃度は、特に限定されないが、2%以下であるのが好ましく、1%以下であるのがより好ましく、0.5%以下であるのが最も好ましい。
【0074】
複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブはナノサイズの粒子を含んでいるため、上記の方法により多孔質材料の表面に付着させた場合、複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブが多孔質材料表面に強固に付着する。従って、複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブを付着させるために、後述のバインダーを使用しなくても脱落等の問題はほとんど生じない。
【0075】
複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブを多孔質材料に付着させた場合、複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブは多孔質材料の表面に局在するため後述の複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブを多孔質材料中に含有させる方法に比べてより少量の複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブで高い放射性セシウムの除去効果を得ることができる。
【0076】
複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブの分散媒は、水、アルコール等の親水的な溶剤が好ましい。前記分散液には、必要に応じて分散剤、バインダー、増粘剤等を加えても良いが、複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブ以外の物質を含むと放射性セシウムの除去効果を妨げる場合があるので、これらの添加量はできるだけ少ないのが好ましい。バインダーとしては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。分散剤としては、ポリアクリル酸系のポリマーや、無機系の分散剤が使用できる。増粘剤としては、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等が使用できる。
【0077】
(b)ダイヤモンド微粒子及び/又はカーボンナノチューブを担持させた後、フェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を作用させる方法
複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブが担持した多孔質材料は、ダイヤモンド微粒子及び/又はカーボンナノチューブを多孔質材料に担持させた後、水溶性の金属塩(例えば、FeCl3等の金属の塩化物)の溶液に接触させ、ダイヤモンド微粒子又はカーボンナノチューブと前記金属との塩を形成した後、水溶性フェロシアン化物及び/又は水溶性フェリシアン化物の溶液を接触させることによっても作製できる。ダイヤモンド微粒子及び/又はカーボンナノチューブの多孔質材料への担持は、前述の複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブを多孔質材料に担持させる方法と同様にして行うことができる。また水溶性の金属塩溶液への接触、及び水溶性フェロシアン化物及び/又は水溶性フェリシアン化物の溶液への接触は、前述のダイヤモンド微粒子又はカーボンナノチューブに、フェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を担持させる方法と同様にして行うことができる。
【0078】
(c)複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブを多孔質材料に含有させる方法
複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブを多孔質材料中に含有させる場合は、多孔質材料を作製する際に原料に複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブ混合し練り込むことによって行う。例えば、有機高分子からなる多孔質材料の場合、紡糸する前の紡糸原液中に複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブを混合し、常法に従いこの原液を紡糸することによって得られる。
【0079】
例えば、熱可塑性樹脂に複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブを含有させる場合、複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブの熱可塑性樹脂中への分散は、二軸混練機等の混練機で溶融混練して行うのが好ましい。混練物は、金属フィルターや焼結金属フィルターで濾過するのが好ましい。複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブと樹脂とのマスターチップを作成しておくのが好ましい。
【0080】
溶融紡糸し、延伸、捲き取ることによって得られた繊維は熱処理を施すのが好ましい。熱処理は使用する樹脂によってそれぞれ最適な温度で行う。溶融紡糸、延伸、捲き取りの方法については特に限定されるものではなく、未延伸糸を一旦捲き取った後に延伸を行う二工程法でも、一旦捲き取ることなく連続して延伸を行う一工程法のどちらであってもよい。
【0081】
延伸は、冷延伸、熱延伸のどちらでもよく、熱延伸の場合は、加熱ローラ、ヒートプレート、スチームジェット装置等を用いて熱処理を行えばよい。これらの装置を適宜併用して多段延伸を行ったり、延伸された糸条にさらに熱処理したり、弛緩処理を行ってもよい。
【0082】
熱処理は、ヒータを利用した乾熱処理やレーザー光線を照射する方法で行うことができ、糸条の状態で行っても、製編織した後に布帛の状態で行ってもよい。熱処理時間は適宜調整すればよいが、約15秒〜5分間程度である。前述の延伸後、熱処理及び巻取りを連続で行うのが好ましい。
【0083】
複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブを、溶融ポリマーに練り込んで紡糸した場合、紡糸後の繊維に、複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブを繊維表面に露出させる処理を施すのが好ましい。繊維表面に露出させる処理としては、低温(樹脂のガラス転移温度程度)での延伸処理、樹脂表面を溶解又は分解する処理等が有効である。
【0084】
(d)ダイヤモンド微粒子及び/又はカーボンナノチューブを含有させた後、フェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を作用させる方法
複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブが含有した多孔質材料は、ダイヤモンド微粒子及び/又はカーボンナノチューブを多孔質材料に含有させ、必要に応じて、ダイヤモンド微粒子及び/又はカーボンナノチューブを多孔質材料の表面に露出させる処理を行った後、水溶性の金属塩(例えば、FeCl3等の金属の塩化物)の溶液に接触させ、ダイヤモンド微粒子又はカーボンナノチューブと前記金属との塩を形成し、水溶性フェロシアン化物及び/又は水溶性フェリシアン化物の溶液を接触させることによっても作製できる。ダイヤモンド微粒子及び/又はカーボンナノチューブを多孔質材料へ含有させる処理、及びダイヤモンド微粒子及び/又はカーボンナノチューブを多孔質材料の表面に露出させる処理は、前述の複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブを多孔質材料に含有させる方法と同様にして行うことができる。また水溶性の金属塩溶液への接触、及び水溶性フェロシアン化物及び/又は水溶性フェリシアン化物の溶液への接触は、前述のダイヤモンド微粒子又はカーボンナノチューブに、フェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を含有させる方法と同様にして行うことができる。
【0085】
[3] 放射性物質を含む廃液又は気体から放射性セシウムを除去する方法
放射性物質を含む廃液又は気体からの放射性セシウムの除去は、前記廃液又は気体を本発明の複合吸着剤からなるフィルター、又は本発明の複合吸着剤を充填したカラムに通すことによって行う。また廃液の処理においては、本発明の複合吸着剤を廃液に浸漬し、放射性セシウムを複合吸着剤に吸着させた後、複合吸着剤を濾過、デカンテーション等の方法により除去することによっても可能である。濾過速度、浸漬時間、複合吸着剤の使用量等は、廃液中の放射性セシウムの量や複合吸着剤中の複合ダイヤモンド微粒子及び/又は複合カーボンナノチューブの量によって適宜調節する。
【0086】
本発明の複合吸着剤、フィルター及びカラムは、放射性セシウムの除去能力に優れているので、特に微量の放射性物質を含む廃液から放射性セシウムを除去することが可能である。また廃液中の放射性セシウムの濃度が高い場合には、あらかじめゼオライト等の既存の吸着剤で前処理し、放射性セシウムをある程度除去した後、微量に残った放射性セシウムを本発明の複合吸着剤、フィルター及びカラムを用いて除去する二段階での処理が有効である。
【0087】
前記放射性廃液又は気体から放射性セシウムを除去した後の複合吸着剤、フィルター及びカラムは、燃焼させることによりダイヤモンド微粒子、カーボンナノチューブ、有機高分子等の多孔質材料を除去し、ガラス等で固めて保存するのが好ましい。
【実施例】
【0088】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0089】
実施例1
(1)ナノダイヤモンドの作製
TNT(トリニトロトルエン)とRDX(シクロトリメチレントリニトラミン)を40/60の比で含む0.65 kgの爆薬1を、脱気した水を凍らせて形成した氷の容器2aに充填し(図1(a))、同じく脱気した水を凍らせて形成した氷の容器2bで蓋をした(図1(b))。前記爆薬1には、起爆用爆薬及び電気雷管を取り付けた。氷の重さは容器2a,2b合わせて15 kgであった。
【0090】
この爆薬1を充填した氷の容器2a,2bを、3 m3の耐圧性容器内に銅線で吊り下げ、耐圧性容器内の空気を窒素と置換した。爆薬を起爆するための電気雷管への電流は前記銅線を通して供給した。耐圧性容器内は1気圧であり、酸素濃度は4容量%であった。耐圧性容器の上部から内壁全体に水をかけながら氷の容器2a,2bに充填した爆薬1を爆発させた。
【0091】
5分間静置した後、前記氷の容器2a,2bに充填した爆薬1を再度同様にして設置し、耐圧性容器内の窒素置換の操作は行わないで二度目の爆発を行った。ただし、氷の容器2a,2bに充填した爆薬1を設置する際には、窒素を耐圧性容器に供給しながら素早く作業を行った。
【0092】
二度目の爆発後、耐圧性容器の上蓋を開け、水で耐圧性容器の内壁面を洗浄しながら黒色液状の爆発生成物(未精製のナノダイヤモンド)を回収し、加熱乾燥し、未精製のナノダイヤモンド粉末を得た。この未精製のナノダイヤモンドの収率は使用した爆薬量に対して11質量%であり、比重は2.55 g/cm3、メジアン径(動的光散乱法)は220 nmであった。この未精製のナノダイヤモンドは、比重から計算して、76体積%のグラファイト系炭素と24体積%のダイヤモンドからなっていると推定された。この未精製のナノダイヤモンドは、ラマンスペクトルにおける1,330±10 cm-1のピーク強度Iaと、1,610±100 cm-1のピーク強度Ibとの比が0.86であった。
【0093】
得られた未精製のナノダイヤモンドを60質量%硝酸水溶液と混合し、160℃、14気圧、20分の条件で酸化性分解処理を行った後、130℃、13気圧、1時間で酸化性エッチング処理を行った。酸化性エッチング処理により、未精製のナノダイヤモンドからグラファイトが一部除去された粒子が得られた。この粒子を、アンモニアを用いて、210℃、20気圧、20分還流し中和処理した後、自然沈降させデカンテーションにより35質量%硝酸での洗浄を行い、さらにデカンテーションにより3回水洗し、遠心分離により脱水し、120℃で加熱乾燥し、酸化処理したナノダイヤモンドの粉末を得た。この酸化処理したナノダイヤモンドの粉末の比重は3.38 g/cm3であり、メジアン径は130 nm(動的光散乱法)であった。比重から計算して、90体積%のダイヤモンドと10体積%のグラファイト系炭素からなっていると推定された。
【0094】
(2) フェロシアン化金属化合物及びフェリシアン化金属化合物の担持
酸化処理したナノダイヤモンドの水分散液(5質量%)に、ナノダイヤモンド1g当たり1 mmolのFeCl3を添加し、ナノダイヤモンドと鉄との塩を形成した。このナノダイヤモンドと鉄との塩の分散液に、ナノダイヤモンド1g当たり0.5 mmolのフェロシアン化カリウム(K4[Fe(CN)6])及び0.5 mmolのフェリシアン化カリウム(K3[Fe(CN)6])を添加し、ナノダイヤモンド表面にフェロシアン化金属化合物及びフェリシアン化金属化合物を担持させた。得られた分散物に対してビーズミルによる分散処理を行い、遠心分離によりフェロシアン化金属化合物及びフェリシアン化金属化合物を担持してなる複合ダイヤモンド微粒子を得た。ビーズミルによる分散は、アシザワファインテック株式会社製スターミルLMZを用いて、0.1 mm径のジルコニアビーズを0.15 Lのベッセルに充填し、10 m/sの周速で回転子を回転させながら、前記複合ダイヤモンド微粒子の分散液を0.12 L/minで供給し、連続的に行った。約2時間分散処理した後の複合ダイヤモンド微粒子のメジアン径は25 nmであった。
【0095】
(3)不織布の作製
メルトブロー法(メルトフローレート(MFR)が15g/10分の条件)により、ポリプロピレンの溶融樹脂及び高温ジェット気流を水平方向に吹き出し、ドラムコンベアーの上方で繊維を捕集するようドラムコンベアーの高さを設定し、片面部の充填率が17%で、他の片面部の充填率が8%、目付120 g/m2、厚み1.1 mm、通気度65 cc/cm2/sec、平均繊維径15μmの不織布を得た。
【0096】
(4)複合吸着剤からなるフィルターの作製
得られた不織布を、3質量%の前記複合ダイヤモンド微粒子の水分散液中(35℃)に10分間浸漬し80℃で乾燥することにより、複合ダイヤモンド微粒子を付着させた複合吸着剤からなるフィルターを得た。得られたフィルターは、繊維1 kgあたり1.7 gの複合ダイヤモンド微粒子が付着していた。
【0097】
(5)セシウム吸着除去
作製したフィルター(20 mmφ)を5枚重ねて、500 ppmの塩化セシウムを含有する水溶液50 mlを自然落下により濾過した。濾過後の水に含まれるセシウムを原子吸光により定量したところ、99%以上のセシウムが除去されていた。
【0098】
実施例2
(1) カーボンナノチューブの合成
24gの蒸留水に溶解した14.6 gの硝酸コバルト6水和物と9.4 gの硝酸アルミニウム9水和物とを650℃±10℃に維持したマッフル炉内で加熱して1時間熱分解させ、空気中で放冷し、得られた樹枝状の生成物を粉砕してカップスタック型カーボンナノチューブを合成するためのCoO-A1203系触媒を得た。得られた触媒の組成はCoO:A1203=60:40(質量比)であった。
【0099】
この合成触媒O.4 gを直径60 mmの銅製皿上に均等に配置し、650±5℃に維持したパイロット炉中で、上方から触媒に向けてプロパン:ブタン=1:1の混合ガスを120 L/hrの流量で供給し、30分間反応させ39%の収率でグラファイト化合物を得た。得られたグラファイト化合物は、走査型電子顕微鏡での観測から、カップスタック型カーボンナノチューブを含有することが確認できた。X線回折により、このカーボンナノチューブは74%の結晶化炭素を含有していることが分かった。このようにして作製したカップスタック型カーボンナノチューブを含むグラファイト化合物を塩酸処理し、アモルファスカーボン及び合成触媒を溶解除去した後、60質量%硝酸水溶液と混合し酸化処理を施し、粒子表面をカルボキシル基、水酸基等の官能基で修飾した。
【0100】
(2) フェロシアン化金属化合物及びフェリシアン化金属化合物の担持
酸化処理したカーボンナノチューブの水分散液(3質量%)に、カーボンナノチューブ1g当たり1 mmolのFeCl3を添加し、カーボンナノチューブと鉄との塩を形成した。カーボンナノチューブと鉄との塩の分散液に、カーボンナノチューブ1g当たり0.5 mmolのフェロシアン化カリウム(K4[Fe(CN)6])及び0.5 mmolのフェリシアン化カリウム(K3[Fe(CN)6])を添加し、カーボンナノチューブ表面にフェロシアン化金属化合物及びフェリシアン化金属化合物を形成した。得られた分散物に対して実施例1と同様にしてビーズミルによる分散処理を行い、遠心分離によりフェロシアン化金属化合物及びフェリシアン化金属化合物を担持してなる複合カーボンナノチューブを得た。
【0101】
(3)複合吸着剤からなるフィルターの作製
実施例1で作製した不織布を、3質量%の前記複合カーボンナノチューブの水分散液中(35℃)に10分間浸漬し80℃で乾燥することにより、複合カーボンナノチューブを付着させた複合吸着剤からなるフィルターを得た。得られたフィルターは、繊維1 kgあたり1.2 gの複合カーボンナノチューブが付着していた。
【0102】
(4)セシウム吸着除去
作製したフィルター(20 mmφ)を5枚重ねて、500 ppmの塩化セシウムを含有する水溶液50 mlを自然落下により濾過した。濾過後の水に含まれるセシウムを原子吸光により定量したところ、99%以上のセシウムが除去されていた。
【0103】
実施例3
(1)複合吸着剤からなるフィルターの作製
実施例1で作製した複合ダイヤモンド微粒子を付着させてなるフィルターを、3質量%の実施例2で作製した複合カーボンナノチューブの水分散液中(35℃)に10分間浸漬し80℃で乾燥することにより、さらにカーボンナノチューブを付着させた。得られたフィルターは、繊維1 kgあたり1.7 gの複合ダイヤモンド微粒子及び1.3 gの複合カーボンナノチューブが付着していた。
【0104】
(2)セシウム吸着除去
作製したフィルター(20 mmφ)を5枚重ねて、500 ppmの塩化セシウムを含有する水溶液50 mlを自然落下により濾過した。濾過後の水に含まれるセシウムを原子吸光により定量したところ、99%以上のセシウムが除去されていた。
【0105】
実施例4
(1)複合ダイヤモンド微粒子を含有する不織布からなるフィルターの作製
99質量部のポリエステルと、1質量部の実施例1で作製した複合ダイヤモンド微粒子とを溶融混練して、複合ダイヤモンド微粒子含有量1質量%のマスターチップを作製した。このマスターチップを100倍希釈したポリエステルからなる繊維(3デニール、51 mm)とレーヨンからなる繊維(1.5デニール、40 mm)との20/80(質量比)の混綿を用い、ウォーターニードル法により複合ダイヤモンド微粒子を含有する目付60 g/m2の不織布からなるフィルターを得た。
【0106】
(2)セシウム吸着除去
作製したフィルター(20 mmφ)を5枚重ねて、500 ppmの塩化セシウムを含有する水溶液50 mlを自然落下により濾過した。濾過後の水に含まれるセシウムを原子吸光により定量したところ、99%以上のセシウムが除去されていた。
【0107】
実施例5
99質量部のポリエステルと、0.7質量部の実施例1で作製した複合ダイヤモンド微粒子及び0.3質量部の実施例2で作製した複合カーボンナノチューブとの溶融混練して、複合ダイヤモンド微粒子含有量0.7質量%及び複合カーボンナノチューブ0.3質量%のマスターチップを作製した以外は実施例4と同様にしてフィルターを作製し、実施例4と同様にしてセシウム吸着除去率の測定を行ったところ、99%以上のセシウムが除去された。
【符号の説明】
【0108】
1・・・爆薬
2a,2b・・・容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ダイヤモンド微粒子にフェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を担持してなる複合ダイヤモンド微粒子、及び/又は(b)カーボンナノチューブにフェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を担持してなる複合カーボンナノチューブと、多孔質材料とからなる、セシウムを吸着するための複合吸着剤。
【請求項2】
請求項1に記載の複合吸着剤において、前記複合ダイヤモンド微粒子及び/又は前記複合カーボンナノチューブを、前記多孔質材料に担持してなることを特徴とする複合吸着剤。
【請求項3】
請求項1に記載の複合吸着剤において、前記複合ダイヤモンド微粒子及び/又は前記複合カーボンナノチューブを、前記多孔質材料に含有してなることを特徴とする複合吸着剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の複合吸着剤において、前記多孔質材料が有機高分子からなることを特徴とする複合吸着剤。
【請求項5】
請求項4に記載の複合吸着剤において、前記多孔質材料が、不織布又は発泡プラスチックからなることを特徴とする複合吸着剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の複合吸着剤において、前記ダイヤモンド微粒子が、爆射法で得られたものであることを特徴とする複合吸着剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の複合吸着剤において、前記ダイヤモンド微粒子が、酸化処理により表面を親水化したものであることを特徴とする複合吸着剤。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の複合吸着剤において、前記ダイヤモンド微粒子が、2.55〜3.48 g/cm3の比重を有することを特徴とする複合吸着剤。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の複合吸着剤において、前記カーボンナノチューブが、カップスタック型であることを特徴とする複合吸着剤。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の複合吸着剤において、前記フェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物が、フェロシアン化物イオン及び/又はフェリシアン化物イオンと、遷移金属又は典型金属とを含む塩であることを特徴とする複合吸着剤。
【請求項11】
請求項10に記載の複合吸着剤において、前記遷移金属又は典型金属が、Co、Ni、Zn、Cu、Cd、Fe、Ti及びZrからなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする複合吸着剤。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の複合吸着剤において、前記フェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物が、アルカリ金属を含む塩であることを特徴とする複合吸着剤。
【請求項13】
請求項12に記載の複合吸着剤において、前記アルカリ金属がLi、Na及びKからなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする複合吸着剤。
【請求項14】
請求項1〜13に記載の複合吸着剤からなるセシウムを吸着するためのフィルター。
【請求項15】
請求項1〜13に記載の複合吸着剤を充填してなるセシウムを吸着するためのカラム。

【図1】
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【公開番号】特開2013−2818(P2013−2818A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130695(P2011−130695)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(500462834)ビジョン開発株式会社 (51)
【Fターム(参考)】