説明

セパレート型エンコーダ、及び、その取付方法

【課題】スケールと検出器の相対的な位置関係を簡単に把握でき、取付調整が容易にできるようにする。
【解決手段】スケール10と検出器20が別体とされ、測定対象への取付時に位置合わせが必要なセパレート型エンコーダにおいて、検出器20に、測定方向と直交するラテラル方向のずれを検出するためのずれ量検出センサ31、32を設けて、スケール10と検出器20のずれを表示できるようにする。前記ずれ量検出センサ31、32で検出され、表示されるスケール10と検出器20のずれが解消されるように、スケール10と検出器20の位置合わせを行なうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレート型エンコーダ、及び、その取付方法に係り、特に、複数のトラックを持つアブソリュートエンコーダに用いるのに好適な、スケールと検出器の位置合わせを容易に行なうことが可能な、セパレート型エンコーダ、及びその取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械などで使用されるフィードバック用リニアエンコーダでは、電源投入時に絶対位置の検出が可能なアブソリュートエンコーダが一般的である。
【0003】
このアブソリュートエンコーダは、測定方向と垂直なラテラル方向に配置された2トラック以上の複数のトラックを有するスケールを組合せて絶対位置を検出する方式が主流であり、スケールと検出器の位置関係を正確に調整する必要がある。
【0004】
即ち、例えば2トラック構成のアブソリュートエンコーダの場合、図1に示すように、スケール10と検出器20の検出センサそれぞれに、対応するトラック11、12と検出センサ21、22があり、正常な位置検出を行なうためには、図2のように、トラック11及び12の検出センサ21、22とスケール10が正しい状態で向き合うことが必要である。これに対して、図3に示すように、スケール10と検出器20の位置関係が例えばラテラル方向(図3は上方向)にずれていると、検出センサ21、22が正しい位置を検出することができない。
【0005】
そこで、特にスケールと検出器が別々の構成のセパレート型エンコーダにおいては、装置に組み付ける際にスケールと検出器の位置関係を正しく設定するため、検出器の取付面の加工精度を上げたり、或いは、特許文献1に記載されているように、検出器の傾きによるトラック毎に設けられた位置検出用トラック検出センサ間の読取値の違いを検出して、スケールに対する検出器の傾き(ヨーイング)による誤差を補正することが提案されている。
【0006】
又、出願人は、特許文献2で、スケール側にも傾き検出用コイルを配置することにより、検出器の傾き方向を検出して補正することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−324948号公報
【特許文献2】特開2008−64498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、検出器取付面の加工精度を上げても、取付調整を容易にすることはできず、各トラックで検出される信号を見ながら、機械的に最適な位置に合わせる必要があり、正しい状態になっているか、又、どちらにずらせば良いか不明であるため、手間がかかっていた。
【0009】
一方、特許文献1、2の技術は、いずれも、検出器の位置関係(角度)が変動しても検出器側で補正を行い、厳密な位置関係の調整を不要とすることを目的としている。従って、いずれの技術も、取付調整を容易とするものではなく、更に、スケールに対する検出器のヨーイングによる誤差を補正することはできるかも知れないが、ラテラル方向のずれによる誤差を補正することはできないという問題点を有していた。
【0010】
又、特許文献2に記載の技術では、スケール側にも位置検出とは別の傾き検出用コイルを配置しなければならないという問題もあった。
【0011】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、スケールと検出器の相対的な位置関係を簡単に把握して、取付調整を容易にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、スケールと検出器が別体とされ、測定対象への取付時に位置合わせが必要なセパレート型エンコーダにおいて、検出器に、測定方向と直交するラテラル方向のずれを検出するためのずれ量検出センサを設け、スケールと検出器のずれを表示できるようにして、前記課題を解決したものである。
【0013】
ここで、前記ずれ量検出センサを、検出器の測定方向両端に設けて、ヨーイング方向のずれの表示を可能とすることができる。
【0014】
又、前記ずれ量検出センサを、ラインセンサとすることができる。
【0015】
又、前記エンコーダを、複数のトラックを持つアブソリュートエンコーダとすることができる。
【0016】
本発明は、又、前記のセパレート型エンコーダの取付に際して、前記ずれ量検出センサで検出され、表示されるスケールと検出器のずれが解消されるように、スケールと検出器の位置合わせを行なうようにしたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、スケールと検出器のずれを表示できるので、相対的な位置関係を簡単に把握でき、取付調整を容易に行うことができる。特に、ずれ量検出センサを、検出器の測定方向両端に設けた場合には、ヨーイング方向のずれも把握することができる。
【0018】
更に、スケールと検出器の相対的な位置関係が定量的にわかるので、スケールと検出器の機械的な取付許容に対するマージンがわかり、取付調整が容易になる。
【0019】
又、機械的な取付許容に対するマージンが確認出来るため、図4に示す如く、装置のスケール走り方向の変動分に影響するスケール取付面の相対的な加工精度を緩めることもできる。
【0020】
本発明は、複数のトラックを持ち、精密な位置調整が容易なアブソリュートエンコーダに有効なものであるが、インクリメンタルエンコーダにも同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】2トラックのアブソリュートエンコーダのスケールと検出器の構成を模式的に示す平面図
【図2】同じくスケールに対して検出器が正しく調整されている状態を示す平面図
【図3】同じくスケールと検出器の位置関係がラテラル方向にずれた状態を示す平面図
【図4】本発明の効果を説明する図
【図5】本発明の第1実施形態の構成を示す(A)平面図及び(B)ずれ量検出センサの出力の例を示す図
【図6】第1実施形態の表示例を示す図
【図7】本発明の第2実施形態の構成を示す(A)平面図及び(B)ずれ量検出センサの出力の例を示す図
【図8】第2実施形態における検出回路の構成を示すブロック図
【図9】同じく(A)ヨーイング方向にずれた状態と(B)ずれを解消した状態の棒グラフによる表示例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下図面を参照して、本発明の第1実施形態を詳細に説明する。
【0023】
本発明の第1実施形態は、図5に示す如く、位置検出用のトラック1、2検出センサ21、22とは別に、検出器20の一端(図では右端)部に、ラテラル方向のずれ量を検出するためのずれ量検出センサ31を設けたものである。
【0024】
該ずれ量検出センサ31は、例えばCMOSイメージセンサなどのラインセンサを用いて、スケールトラック11、12の有無を検出するようにしておき、図5(B)に例示するように位置検出用のトラック1、2検出センサ21、22の位置と、スケールトラック11、12のラテラル方向位置との照合を行なわせ、スケール10と検出器20の位置関係が正しいかどうかを判断する。図5の場合、トラック1のピークは検出できるが、トラック2のピークは検出できない。
【0025】
検出センサの位置とスケールトラックとの照合結果を表示用LEDやパソコンなどの表示部に出力し、例えば図6(A)に示す如く、(1)トラック1、2のピークが両方とも完全にとれるOKの場合、(2)図5のように検出器20が上へずれて下のトラック2のピークがとれず、検出器20を下方に移動すべき場合、(3)逆に検出器20が下へずれて上のトラック1のピークがとれず、検出器20を上方に移動すべき場合の3つの表示灯で表示すれば、検出センサとスケールトラックの位置関係が正しいか、視覚的に判断でき、且つずれの方向(従って検出器の移動方向)もわかるので、調整を容易に行うことができる。
【0026】
又、図6(B)に示すように、バーグラフで表示すれば、ずれ量も把握でき、取付調整が更に容易になる。
【0027】
この第1実施形態によれば、ラテラル方向のずれを検出できる。
【0028】
次に、ずれ量検出センサを一つ追加して、ヨーイング方向のずれも検出できるようにした本発明の第2実施形態を説明する。
【0029】
本実施形態は、図7に示すように、検出器20の測定方向両端にずれ量検出センサ31と32を設けたものである。
【0030】
本実施形態における検出回路の構成例を図8に示す。図において、40は、トラック1検出センサ21とトラック2検出センサ22の出力を処理して変位信号を得るための処理回路、42は、ずれ量検出センサ31と32の出力を処理して、ずれ量検出センサ31及びずれ量検出センサ32の位置におけるずれをそれぞれ計算するマイコン、44は、パソコン46と、表示用LEDや、例えばパソコン46のモニタ上に表示されるバーグラフ48を備えた表示部である。
【0031】
バーグラフの表示例を図9に示す。ヨーイング方向にずれた状態を図9(A)、ヨーイング方向に調整された正しい状態を図9(B)に示す。
【0032】
このようにして、本実施形態によれば、ずれ量検出センサ31と32のセンサ出力でスケールトラックの位置が異なる場合に、ヨーイング方向のずれが発生していることを容易に確認できる。
【0033】
なお、前記実施形態においては、本発明がアブソリュート型のリニアエンコーダに適用されていたが、本発明の適用対象は、これに限定されず、インクリメンタル型のリニアエンコーダや、円弧エンコーダ、ロータリエンコーダにも同様に適用できる。トラックの数も2つに限定されず、1つ又は3つ以上でも構わない。
【符号の説明】
【0034】
10…スケール
11、12…スケールトラック
20…検出器
21、22…トラック検出センサ
31、32…ずれ量検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スケールと検出器が別体とされ、測定対象への取付時に位置合わせが必要なセパレート型エンコーダにおいて、
検出器に、測定方向と直交するラテラル方向のずれを検出するためのずれ量検出センサを設けて、
スケールと検出器のずれを表示できるようにしたことを特徴とするセパレート型エンコーダ。
【請求項2】
前記ずれ量検出センサが、検出器の測定方向両端に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のセパレート型エンコーダ。
【請求項3】
前記ずれ量検出センサが、ラインセンサであることを特徴とする請求項1又は2に記載のセパレート型エンコーダ。
【請求項4】
前記エンコーダが、複数のトラックを持つアブソリュートエンコーダであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のセパレート型エンコーダ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のセパレート型エンコーダの取付に際して、
前記ずれ量検出センサで検出され、表示されるスケールと検出器のずれが解消されるように、スケールと検出器の位置合わせを行なうことを特徴とするセパレート型エンコーダの取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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