説明

セメント中のクロム(VI)を還元するための、投与効率が良く、貯蔵安定性をもった組成物

金属をベースにしたクロム(VI)還元剤および非リグノスルフォネート・ベースの錯化剤から液体の環境の中でつくられる会合錯体を、セメントクリンカーまたは水和可能なセメント粒子の中に導入する。好適具体化例においては、会合錯体が生成することによりセメント内部においてクロム還元剤に対し貯蔵安定性が賦与され、セメントに水を加えた後のクロム(VI)の濃度は水を添加した後の一定期間2ppmよりも少ないレベルに留まり、この期間中(例えば添加後26〜84日またはそれ以上の間)クロム還元剤を追加して加える必要はない。会合錯体を含む組成物についても説明されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント中の6価クロム(VI)に対する還元剤の使用に関し、特に水和可能なセメント粒子中においてクロム酸塩(VI)還元用の添加物の貯蔵安定性を増加させるための非リグノスルフォネート・ベースの錯化剤の使用、および特に水和可能なセメント粒子を製造するのに用いられる、インターグラインドする工程(intergrinding process)の前またはその途中において、セメント・クリンカーと組み合わせて用いるためのセメント添加剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
クロムは、摩砕してセメントをつくるセメントクリンカーの製造に使用される原料中に存在する避けられない痕跡元素である。特に、6価のクロム(「クロムVI」)はセメントキルンの酸化性およびアルカリ性の燃焼条件の中で生成する。クロムVI化合物は、高度の酸化能力および人間の組織の中に侵入し得る能力をもち、従って皮膚に対する増感作用、アレルギー反応、および湿疹を起こすために、極めて毒性をもつものとして分類されている。クロムVI化合物は高い溶解度をもち、またセメントと水を互いに混合した場合放出されるから、湿ったセメントおよびモルタルを取り扱う際に人の皮膚と接触する傾向がある。従って水溶性の6価クロムを3価のクロムの形に還元することが望ましい。3価の形は安定な錯体として溶液から沈澱する傾向があり、そのため重大な皮膚刺激剤としての危険性が小さいからである。実際、いくつかの還元剤が知られている。しかしこれらの還元剤は、セメント組成物の高いpH環境におけるよりはむしろ低いpHにおいて効果をもっている傾向がある。
【0003】
硫酸第一錫(錫II)はセメントに対するクロム(VI)の還元剤として使用することができる。硫酸第一錫は水溶性であるが、水溶液としてセメントの中に加えた場合、時間が経つと共に迅速に投与効率(dosage efficiency)を喪失する。使用する際の溶液中の硫酸第一錫の実際の量は、硫酸第一錫を粉末として加えた場合時間が経過した際に必要な量の少なくとも2倍である。何故なら、セメントに加えた場合、可溶化された硫酸第一錫は非常に高い表面積をもっており、これによって酸化に対する感受性が増加するからである。このような不均衡性のために経済的な問題として硫酸第一錫を溶液の形で使用することがしばしば妨げられている。
【0004】
特許文献1には、1種またはそれ以上の粘度調節剤を使用することにより、液体担体の内部に高濃度で実質的に均一に分散した固体の硫酸錫を含む水性分散液を使用することが記載されている。液体水性分散液を使用する基礎となる原理は、高い粒子の充填量が得られることであり、硫酸錫は恐らくは分散した固体および可溶化された成分の両方の形で存在していると思われる。また液体を使用すると、人が化学物質を含む埃を吸い込む機会が除去されるので、環境による健康および安全性に関して大きな利点が得られる。さらに、液体担体を用いると、硫酸錫をポンプで移送し同時に計量できるので、投与の際の精度および効率が得られる。
【0005】
本発明は、使用し得るクロム(IV)還元用の添加物の効率を改善し、これに加えて経済的かつ便利な方法で該添加物の貯蔵安定性を増加させることに焦点が当てられているという点で同様な目的をもっている。また本発明は、このようなクロム(VI)還元用添加物に関する欧州連合諸国における新しい法律の目的に応えるのに特に適していると考えられる。
【0006】
例えば2005年1月17日にクロム(VI)規正法(2003/53/EC)として知られる法律が欧州連合で施行され、セメントおよびセメント含有組成物に対して適用された。この法律は、セメントの使用により生じるクロム酸塩に関連したアレルギー性皮膚炎の発生を最低限度に抑制することを目的としたものである。この要請に合わせるためには、必要に応じ少量の還元剤、例えば硫酸第二鉄または硫酸第一錫を加えることにより、すべての塊状になったセメントおよび袋詰めのセメント中の可溶性のクロム(VI)の量を抑制する必要がある。欧州連合では、セメントに水を加えた場合、可溶性クロム(VI)の濃度は乾燥したセメントの質量に関し2ppm(0.0002%)以下でなければならないことが示唆されている。
【0007】
温度、空気および水分の条件がクロム還元剤の効率を低下させ得るようなセメントの粉砕を行う環境の苛酷さを考えれば、セメント製造産業に対してはこれらの目的はむしろ楽観的であるように思われる。セメントクリンカーを粉砕してセメントをつくるのに必要とされる大部分のエネルギーは熱の形になり、その結果粉砕機を出て行く材料の温度が上昇する。粉砕機のこのような高い温度のために、セメント粒子は凝集する傾向が増加するから、粉砕効率が低下する。すべての粉砕機はその中に強制的に空気を流すことによって若干の冷却を行っており、またさらに冷却を行うために水の注入装置を備えている。通常セメントは空気またはスクリューシステムを用いて運ばれるが、これによってセメント粒子は空気と接触する。その後、セメント製品は紙の袋または貯蔵用のサイロに入れられるが、これらはその殆どが空気または水分に対する不透過性をもっていない。このように、セメントの製造には温度、空気および水分に対する極端な条件が含まれ、これらはセメント製品の製造および貯蔵中にクロム還元剤を劣化させるように作用する。
【0008】
セメント粉砕機の中におけるこれらの厳しい条件を考えれば、製造中セメントに添加される硫酸第二鉄または硫酸第一錫のようなクロム還元剤の効果が持続する期間は限られている。この期間(また「貯蔵寿命」とも呼ばれる)が切れた後、セメントが水と接触した場合、このようなクロム還元剤が可溶性のクロム(VI)の濃度を確実に2ppmより少ないレベルに維持することはもはや不可能である。したがって従来法においてはクロム還元剤を最初に大量に投与するか、或いは周期的に再投与してセメント中のクロム(VI)を確実に低い濃度に保つ必要があり、そのためコストが上昇する。
【0009】
本発明の発明者は、セメントの製造中およびその後におけるクロム(VI)の還元剤のセメント中における貯蔵安定性を達成し、クロム(VI)の還元剤が水和可能なセメントの中に導入されてから数カ月後になっても、クロム(VI)の濃度を確実に2ppmより低く保ち得る新規方法および組成物が必要であると考えている。
【0010】
【特許文献1】Jardine等の2004年7月13日出願の米国特許出願第10/890,476号。
【発明の開示】
【0011】
本発明の概要
セメントに対する従来法のクロム(VI)還元剤の欠点を克服することにおいて、本発明ではクロム還元剤の効力を長時間に亙って維持する新規方法および組成物が提供される。水和可能なセメントにクロム還元剤を導入する前に、該クロム(VI)還元剤、例えば硫酸第一錫(錫II)を非リグノスルフォネート・ベースの錯化剤、例えばグルコン酸ナトリウムと組み合わせて結合させ分子会合体または配位化合物(以後「会合錯体(association comolex)」と言う)をつくり、これによって貯蔵中水和可能なセメントの中のクロム(VI)還元剤を安定化し、セメントが偶然水と接触して水和が始まった場合でも、クロム(VI)還元剤は水溶性のクロムVIを還元してクロムIIIにする活性を維持した状態を保つようにする。
【0012】
会合錯体は、水和可能なセメントを水と混合する前、その際またはその後で水和可能なセメントに加えることが意図された、コンクリートまたは石造建築材との混合物の形で使用することができる。
【0013】
会合錯体は液体(好ましくは水性の液体)または乾燥した(例えば粒子の)形で使用することができるが、利便性からすると水性液体の形が好適である。会合錯体の量は組成物の全重量に関して10〜100%が好適であり、さらに好ましくは20〜100%でなければならない。
【0014】
会合錯体は、さらに好ましくはセメント添加物として製造工程の前またはその途中でセメントクリンカーに加えられ、クリンカーは水和可能なセメント粒子の中にインターグラインドされる。特にこの後者の場合、本発明においては先ず会合錯体(例えばグルコン酸第一錫或は第一錫グルコン酸(stannous gluconic acid))をつくり、次いでインターグラインド工程の前またはその際にセメントクリンカーと組み合わせることにより、得られたセメント粒子は数カ月貯蔵した後でも、クロム還元剤をこのような非リグノスルフォネート・ベースの錯化剤と共に使用しない場合に比べ、クロム(VI)を低濃度で含んでいることが見出された。会合錯体を使用することにより還元剤は効果をもった状態に保たれるからである。会合錯体はセメント製造工程の後に加えられてもよい。
【0015】
このことは、本発明の方法および組成物によりセメント製造業者並びにコンクリート生産業者がコストを節約し得ることを意味する。何故ならこれらの業者は、セメント製品のクロム(VI)の濃度を許容し得る最低の値に保つために多量の初期投与を行う必要がないか、或いは同じセメントの経過期間において再投与を行う必要がないからである。
【0016】
本発明の好適な会合錯体は硫酸第一錫(錫II)およびグルコン酸ナトリウムを水性環境で組み合わせて結合させ、「硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体」をつくることによって製造される。この言葉は、例えば水中において第一錫イオンがグルコン酸の配位子と会合しているばかりではなく、この会合は硫酸第一錫をグルコン酸ナトリウムと組み合わせて結合させることによってつくられるという事実を意味している。本明細書の下記において説明するように、「硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体」と塩化第一錫をグルコン酸ナトリウムと組み合わせて結合させて得られる「塩化第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体」は、これらの会合錯体が両方とも第一錫グルコン酸の形成を含んでいるにも拘わらず、異なった核磁気共鳴の特性をもっている。本発明においては、「硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体」は「塩化第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体」に比べ、クロム(VI)を還元する錫の能力に関して良好な安定性を与えることが見出された。
【0017】
本発明の例示的な方法は次のような方法である:金属をベースにしたクロム(VI)還元剤および非リグノスルフネート・ベースの錯化剤からつくられた会合錯体を内部に含む液体組成物をセメントクリンカーまたは水和可能なセメント粒子に導入する。好ましくは水和可能なセメント粒子の製造に用いられるインターグラインド工程の前およびその途中において、液体環境の中の会合錯体をセメントクリンカーに加えることが好適である。
【0018】
本発明の一例示的な方法においては、セメントクリンカーまたは水和可能なセメント粒子に含まれるクロム(VI)それぞれ5ppmに対し20〜5000ppm、さらに好ましくは30〜2000ppm、最も好ましくは40〜400ppmのクロム還元剤が存在するような量で、非リグノスルフォネート・ベースの錯化剤を使用してつくられた会合錯体の中において、金属をベースにしたクロム(VI)還元剤をセメントクリンカーと一緒
にする(または水和可能なセメント粒子に加える)。次いで、クリンカーをインターグラインドして錯化したクロム(VI)還元剤を含む水和可能なセメント粒子をつくる。この例示的な方法により、得られる本発明の水和可能なセメント粒子は、クロム(VI)の平均濃度がセメントの重量に関し2ppmより低くなり、インターグラインドした後に引き続く次の26日間、さらに好ましくはインターグラインドした後に引き続く次の56日間、最も好ましくはインターグラインドした後に引き続く次の84日間の間クロム(VI)還元剤をさらに添加する必要はない。
【0019】
本発明の会合錯体をつくる場合、クロム(VI)還元性の金属塩、例えば硫酸第一錫(錫II)、硫酸鉄、酢酸鉄等を非リグノスルフォネート・ベースの錯化剤、例えばグルコン酸ナトリウムと組み合わせることが好適であるが、カルボン酸、ポリヒドロキシアルコール、またはそれらの塩から他の非リグノスルフォネート・ベースの錯化剤を選ぶことができると思われる。非リグノスルフォネート・ベースの錯化剤は金属にキレート化するかまたは他の方法で金属塩に結合して沈澱または酸化を最低限度に抑制し、その結果処理されたセメントが後で水と結合してセメントの水和が始まった場合でも、クロム(VI)の還元剤を効果をもった状態に保つと考えられている。
【0020】
従って本発明の例示的な方法および組成物においては、会合錯体をつくるために非リグノスルフォネート・ベースの錯化剤と組み合わせて結合させた金属をベースにしたクロム(VI)の還元剤を、セメントクリンカーまたは水和可能なセメント粒子中に含まれるクロム(IV)各5ppmに対しクロムの還元剤が20〜5000ppm、さらに好ましくは30〜2000ppm加えられるような量でセメントクリンカーまたは水和可能なセメント粒子と一緒にする。
【0021】
本発明のさらに他の例示的なセメント添加物および/またはコンクリート/石造材混合物の液体組成物は、水の他に、クロム(VI)の還元剤(例えば硫酸第一錫)および錯化剤(例えばグルコン酸ナトリウム)、並びに随時加えられる粘度調節剤、セメント添加物、またはこれらの混合物を含んで成っており、クロム(VI)の還元剤および錯化剤は両方とも該液体組成物の全重量に関し少なくとも1.0重量%〜90重量%の量で含まれている。
【0022】
本発明の例示的な一液体組成物は、液体(例えば水性)環境中に含まれた会合錯体を含んで成り、該会合錯体は金属をベースにしたクロム(VI)の還元剤と非リグノスルフォネート・ベースの錯化剤を組み合わせてつくられ、該会合錯体は該液体組成物の全重量に関し少なくとも10〜100%そしてより好ましくは20〜80%の量で存在している。
【0023】
本発明の好適な一方法においては、水和可能なセメント粒子の製造に用いられるインターグラインド工程の前またはその際に第一錫グルコン酸(または塩)をセメントクリンカーに導入するか、或は直接セメント粒子の中に導入する。
【0024】
このような会合錯体を含む液体組成物の他に、本発明の会合錯体、例えば好適な硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体を含んで成る固体粒子を使用することができると考えられている。
【0025】
本発明の好適な具体化例においては、硫酸第一錫:グルコン酸ナトリウムの比が4:1〜1:4、さらに好ましくは1;2〜2:1、最も好ましくは1:1の割合で硫酸第一錫をグルコン酸ナトリウムと組み合わせて結合させることにより硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体(これは第一錫グルコン酸を含む)をつくる。
【0026】
本発明のさらに他の利点および特徴は下記の詳細な説明に記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
例示的な具体化例の詳細な説明
本明細書に使用される「セメント」という言葉は、建築用に使用されるポルトランドセメント、およびASTM型I,II,III,IV,またはV(またはEN197のような他のタイプ)のインターグラインドする添加物としての通常1種またはそれ以上の形の硫酸カルシウムを含む珪酸カルシウムから成るセメントクリンカーを粉末化またはインターグラインドしてつくられる水和可能なセメントを意味するものとする。「セメント性」材料とは、水の存在下において固定し硬化する水和したまたは水和可能なセントの性質を単独で有する材料である。摩砕された粒状の溶鉱炉のスラグ(しかし若干の空気で冷却されたスラグもセメント性と考えることができる)、および天然セメント(例えば通常のポルトランドセメント)もセメント性材料に含まれる。また「セメント性」材料には石膏(例えば硫酸カルシウム半水和物)、アルミナ性セメント、セラミックセメント、油井掘削セメント、およびその他が含まれる。
【0028】
本発明に使用される「セメント」という言葉はポゾランを含んでいることができる。これは珪素性またはアルミノ珪素性材料であり、セメント的な価値(即ち結合材としての)はほとんどまたは全くもたないが、微粉末の形において水が存在するとポルトランドセメントの水和により放出される水酸化カルシウムと化学的に反応し、セメント性をもった材料を生じる。例えばDodson,V.著,Concrete Admixtures(Van Nostrand Reinhold,New York 1990年),159頁参照。珪藻土、石灰、粘土(例えばメタカオリン)、頁岩、フライアッシュ、煙霧状シリカ、溶鉱炉のスラグは公知のポゾランのいくつかの例である。或る種の粒状の摩砕された溶鉱炉スラグおよび高カルシウム・フライアッシュはポゾランとセメントの両方の性質をもっている。
【0029】
クリンカーを摩砕してセメントをつくる本発明の方法においては、ボールミルおよびロール(またはローラ)ミルを含む任意のタイプの公知の粉砕機を使用することができる。上部に回転するローラをもった円板の上でセメントクリンカー(またはスラグまたはフライアッシュ)が破砕されるようなロール付きのミル(例えばロール・プレスミル)を使用することができる。他のタイプのローラミルは共にニップされた2個以上のローラを使用し、ニップされたローラの間に材料を垂直に落下させてクリンカーまたは他のセメント、或はセメント前駆体を破砕する。このように本発明の方法および組成物は前駆体材料(例えばクリンカー)を粉砕して水和可能なセメント粒子をつくるボールミルおよびローラミルの両方に使用することができる。
【0030】
本発明においては、クリンカーとインターグラインドして水和可能なセメントにするクロム(VI)還元用添加物の貯蔵安定性を維持する方法が見出された。これは、先ず第一錫(錫II)イオンおよび非リグノスルフォネート・ベースの錯化剤を結合させて液体環境(好ましくは水性)内で分子会合体または配位化合物をつくり;しかる後クリンカーを粉砕する前および/またはその途中において錯化した第一錫(錫II)/錯化剤を含んで成るこの「会合錯体」をセメントクリンカーに導入し、水和可能なセメント粒子をつくることによって達成される。
【0031】
この場合「会合」、「錯体」および「会合錯体」という言葉は互いに入れ替えて使用され、錫塩および/またはイオン、および非リグノスルフォネート・ベースの錯化剤の間の結合を意味するものとする。この結合は、共有結合または単なる静電気的な結合ではなく、この二つのタイプの中間的な性質であると考えられる。
【0032】
本明細書に使用される「会合」という言葉は標準的な辞書での定義と一致している。H
awleyのCondensed Chemical Dictionary(11版)に従えば、「会合」という言葉は「何らかの弱い種類の化学結合の力に基づく可逆的な化学的結合」を意味している。「会合」という言葉は、水分子同士、あるいは酢酸分子と水分子との結合体において「会合」と呼ばれているように、水素結合による2個またはそれ以上の分子の結合を意味することができ、また「水または溶媒分子と溶質分子またはイオンとの結合、即ち水和物の生成または溶媒和」を意味する。また「会合」という言葉は、「錯イオンまたはキレートの生成、例えば銅イオンとアンモニアとのキレート、または銅イオンと8−ヒドロキシキノリン....、その他におけるようなキレートの生成」を含むことができる。例えばHawley’s Condensed Chemical Dictionary(11版)、N.Irving SaxおよびRichard J.Lewis,Sr.による改訂版、(Van Nostrand Reinhold Company,Inc.,New York、1987年発行),103頁参照。
【0033】
また、「配位化合物」と言う言葉は第一錫イオンおよび錯化剤によってつくられる化合物を記述するのにも適切に用いられ、これは「錯化合物」と同義語であり、HawleyのCondensed Chemical Dictionary(11版)には「金属イオン(通常は遷移金属)と配位子または錯化剤と呼ばれる非金属イオンまたは分子との結合によってつくられる化合物」と定義されている。またHawleyの辞書には「すべての配位子は配位する原子上に電子対を有し....、これらの電子対は金属イオンに供与されるか金属イオンにより共有されていることができる」と説明されている。またHawleyの辞書には、「金属イオンはルイス酸(電子受容体)として作用し、配位子はルイス塩基(電子供与体)として作用する」と説明されており、従って「結合は共有結合でも静電的でもなく、二つのタイプの間の中間的なものと考えることができる」と説明されている。Hawley’s Condensed Chemical Dictionary(11版),上記と同じ出典、307頁参照。
【0034】
このように、セメントクリンカーと組み合わされそれとインターグラインドされて水和可能なセメント粒子を生じる際およびその後において、錫(II)のようなクロム(VI)を還元し得る金属のクロム還元能力を保護するために、該金属を非スルフォネート・ベースの錯化剤と組み合わせて結合させることによりつくられる化合物を記述するためには「会合錯体」という言葉が好適であると思われる。
【0035】
理論に拘束されるわけではないが、錫(II)のような金属と錯化剤との間につくられる「会合錯体」は、金属イオンが配位結合によって配位子と呼ばれる同じ分子の中の2個またはそれ以上の非金属原子と結合し、これによって金属原子と一つまたはそれ以上の複素環をつくっている「キレート」化合物と類似しているかまたは同じである。(Hawley’s Dictionary,上記と同じ出典.249頁参照)。
【0036】
本発明に使用される「錯化剤」という言葉は、第一錫および/または第一鉄(II)イオンおよび/またはその塩の形のような金属をベースにしたクロム(VI)の還元剤と会合錯体をつくる作用をする配位子、キレート、および/またはキレート化剤を意味し、これらを含んでいる。
【0037】
本明細書において金属をベースにしたクロム(VI)の還元剤と結合する錯化剤を意味するのに使用される「非リグノスルフォネート・ベースの錯化剤」という言葉は、リグノスルフォネートまたはその誘導体ではない錯化剤を意味し、それに言及する。リグノスルフォネートは紙をパルプ化するのに使用される製造工程から誘導される。例えばリグノスルフォネート誘導体はChemische Werke Zell−Wildshausen GmbHの国際公開第99/37593号パンフレットに記載されており、コンクリート複合体の中のクロムを還元するのに使用される。リグノスルフォネートが不規則な
構造をもち、セメント構造物に使用する場合このような不規則な分子は予測できない効果を示すために、本発明の発明者は、リグノスルフォネートまたはリグノスルフォネートから誘導される分子を錯化剤として使用することを望まない。さらにリグノスルフォネートは高濃度で不純物を含み、セメント組成物に使用した場合、これがまた予測できない効果、例えば過度の遅滞を生じる原因となる。
【0038】
従って本発明はセメントクリンカーからセメントを製造する方法および組成物において、非リグノスルフォネート・ベースの錯化剤を使用して水性液体担体中で金属をベースにしたクロム(VI)の還元剤(例えば第一錫(錫II)イオン、第一鉄イオン、マンガンイオン)との会合錯体をつくり、次いで液体担体中でつくられるこの会合錯体を一緒に粉砕する工程に導入し、ここでクリンカーを水和可能なセメント粒子に変える方法および組成物に関する。
【0039】
本発明の好適な非リグノスルフォネート・ベースの錯化剤はグルコン酸またはその塩、例えばグルコン酸ナトリウムである。本明細書において使用される水性環境中のグルコン酸塩と言う言葉はまたグルコン酸の形を含み、従ってこれらの二つの言葉は互いに入れ替えて使用することができる。他の例示的な錯化剤はモノカルボン酸またはその塩(式HOCH(CHOH)COOHで表され、ここで式中「n」は3〜8の整数であり、さらに好ましくは4である(またこれにはグルコン酸、キシロン酸等が含まれる));ジカルボン酸またはその塩(式HOOC(CHOH)COOHで表され、ここに「n」は3〜8の整数、さらに好ましくは4である(またこれにはサッカリン酸としても知られているグルカリン酸が含まれる));ポリヒドロキシアルコールまたはその塩(式HOCH(CHOH)CHOHで表され、ここに「n」は3〜8の整数、さらに好ましくは4である(またこれにはソルビトールとしても知られているグリシトールが含まれる));およびアルデヒド酸またはその塩(式HOOC(CHOH)CHOで表され、ここに「n」は3〜8の整数、さらに好ましくは4である(またこれにはグルクロン酸が含まれる))を含むことができる。
【0040】
本発明の方法および組成物においては通常のキレート化剤はまた非リグノスルフォネート・ベースの錯化剤として使用できると考えられる。このようなキレート化剤には次のものが含まれる:
エチレンジアミン四酢酸(EDTA);
ニトリロ酢酸(N(CHCOOH));
エチレングリコール−ビス(β−アミノエチルエーテル)−N,N−四酢酸、これは式(NOOCCHNCHCHOCHCHOCHCHN(CHCOOH)
で表される。
【0041】
他の例示的な非リグノスルフォネート・ベースのキレート化剤にはエチレングリコール、グリセリン、グルコース、デキストロース、およびスクロースが含まれる。キレートの生成は多数のヒドロキシル基をもった2〜6個の炭素原子構造が存在することに基づいている。好ましくはヒドロキシル基は隣接した炭素原子上になければならない。これによって5員環の中で錫に対するキレート化が起こる。
【0042】
さらに他の例示的な非リグノスルフォネート・ベースの錫に対する錯化剤またはキレート化剤は次のものを含んでいる:ポリビニルアルコール、トリポリ燐酸塩、ビニルメチルエーテル共重合体、マレイン酸無水物、N−ベンゾイル−N−フェニルヒドロキシラミン、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、サリチルアルデヒド、8−ヒドロキシヒドロキノン、および8−キノリノール。
【0043】
本発明の目的に使用するのに適した会合錯体はまたGalperinの米国特許第6,872,300号明細書に見出すことができると本発明の発明者は考えている。該特許にはリフォーミング触媒の用途に使用するための特定のキレート化配位子と錯体をつくる或る種の錫化合物が記載されている。従って本明細書の中にGalpwerinの特許の明細書の第7欄第2〜33行に記載された錫化合物について引用することにする。ここでGalpwerinは「促進剤の金属キレート錯体を与えるためにつくられた」キレート化配位子および少なくとも1種の可溶性の分解可能な金属促進剤化合物の水溶液について述べている。従って本発明の目的に適した錫化合物には、何ら制限なく、臭化第一錫、塩化第一錫、塩化第二錫、塩化第二錫五水和物、塩化第二錫四水和物、塩化第二錫三水和物、塩化第二錫ジアミン、三塩化臭化第二錫、クロム酸第二錫、フッ化第一錫、フッ化第二錫、ヨー化第二錫、硫酸第二錫、酒石酸第二錫、蓚酸第二錫、酢酸第二錫等が含まれる。(塩化物の形の錫塩、例えば塩化第一錫または第二錫を使用すると、錫成分および少なくとも少量のハロゲン成分の両方を一段階で混入することが容易になる)。Galperinは+2の酸化状態の錫の塩について記載している。
【0044】
またGalperinは、上記の錫化合物とキレート錯体をつくると考えられるキレート化配位子について記載しているが、本発明の発明者もこれらは本発明に使用するのに適したこれらのおよび他の金属をベースにしたクロム(VI)の還元剤と組み合わせるのに適していると考えている。従って例示的なキレート用配位子はアミノ酸を含んでいる。これらのアミノ酸の特定の例にはエチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、N−メチルアミノ二酢酸、イミノ二酢酸、グリシン、アラニン、サルコシン、α−アミノイソ酪酸、N,N−ジメチルグリシン、α,β−ジアミノプロピオン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、ヒスチジン、およびメチオニンが含まれる。米国特許第6,872,300B1号明細書、第7欄、第18〜26行参照。Galperinによれば、キレート−金属錯体溶液(キレート−錫錯体溶液を含む)は約5分〜5時間の間約40〜約100℃の温度においてまたはその沸点において加熱することができる。キレート用配位子対金属塩の比は約1〜約8、好ましくは約1.5〜約4の範囲で変えることができる。米国特許第6,872,300B1号明細書、第7欄、第27〜32行参照。
【0045】
例示的な非リグノスルフォネート・ベースの錯化剤はセメントの乾燥重量に関し0.00005〜0.2%、さらに好ましくは0.0005〜0.10%、最も好ましくは0.001〜0.02%の量でセメントに加えることが好適である。
【0046】
会合錯体は溶解した錫を使用してつくることができるが、固体の硫酸錫粒子の形で錫を提供することもできる。何故なら、これらの粒子は部分的に溶解して水溶液の中で会合錯体をつくることができるが、水溶液中において不連続的な固体粒子の相として高濃度で均一に分散させることもできるからである。固体の硫酸錫粒子は、酸素の効果による分解を受けにくいと考えられており、水性溶媒の中で錫を可溶化する(例えば温度を上昇させて行うことができる)と単に会合錯体が生成し、溶解した錫イオンのクロム還元能力を維持することができる。
【0047】
本発明者の考えによれば、本発明に使用するのに適した会合錯体は歯磨き剤の製造に関連したいくつかの特許に記載されている。例えばL.Edwardsの米国特許第3,225,076号明細書には、グルコン酸およびグルコノラクトンから成る群から選ばれる酸の水溶液を水酸化第一錫と混合して「スタノグルコン酸(stannogluconic acid)」と名付けられた化合物の水溶液をつくる方法が記載されている。このようなスタノグルコン酸またはその塩は、水和可能なセメント粒子またはセメントクリンカーと組み合わせ、セメントクリンカーとインターグラインドされて得られるセメントおよびセメント粒子に対し貯蔵安定性をもったクロム(VI)還元性を賦与するために本発明に使用するのに適した例示的な会合錯体として機能できると考えられる。Edwards
の上記米国特許には、スタノグルコン酸の塩はスタノグルコン酸を塩基と反応させることにより得られ(第2欄、第12〜50行)、これによってスタノグルコン酸の塩の水溶液が生じることが記載されている。
【0048】
従って、本発明の他の例示的な方法および組成物は「スタノグルコン酸」(および/またはその塩)をセメントまたはセメントクリンカーと組み合わせて安定化されたクロム(VI)の還元剤にする方法および組成物を含んでいる。本発明の目的に対しては、特記しない限り、特定の酸またはその塩に対して言及がなされた場合、特定の会合錯体の酸および塩の両方を言及することを意図していると了解されたい。
【0049】
本発明においては、本発明に使用するのに適した他の例示的な会合錯体は、モノカルボン酸、ジカルボン酸、ポリヒドロキシアルコール、アルデヒド酸、またはそれらの塩を含んで成る他の非リグノスルフォネート・ベースの錯化剤を使用するものを含んでいる。
【0050】
一例としてSamuel Hochの米国特許第3,426,051号明細書には、少量のアルキルヒドロキノンで安定化された、ポリウレタン樹脂の製造の触媒として広く使用されている錫塩が記載されている。該アルキルヒドロキノンは炭素の6員環構造をもち、2個のヒドロキシ基と2個の側鎖をもっている。即ち
【0051】
【化1】

【0052】
の構造をもち、ここでRはC〜Cアルキル基、R’は水素またはC〜Cアルキル基である。このようなアルキルヒドロキノンの例には次のものがある:トルヒドロキノン、エチルヒドロキノン、イソプロピルヒドロキノン、t−ブチルヒドロキノン、t−アミルヒドロキノン、n−ヘキシルヒドロキノン、ジメチルヒドロキノン、ジ−n−プロピルヒドロキノン、ジ−t−ブチルルヒドロキノン、ジ−t−アミルヒドロキノン、ジヘキシルヒドロキノン、およびこれらの混合物。このようなアルキルヒドロキノンは本発明の目的に対する適切な錯化剤として機能できると考えられている。
【0053】
またHochの上記米国‘051特許には、上記のアルキルヒドロキノンを加えることにより安定化させ得る種々の第一錫塩が記載されている。これらには炭素数6〜18の脂肪族モノカルボン酸の第一錫塩、および炭素数4〜10の脂肪族ジカルボン酸の第一錫塩、例えばヘキサン酸第一錫、2−エチルヘキサン酸第一錫、n−オクタン酸第一錫、デカン酸第一錫、ラウリン酸第一錫、第一錫ヒドリステート(hydristate)、第一錫エレエート(eleate)、琥珀酸第一錫、グルタル酸第一錫、アジピン酸第一錫、アゼライン酸第一錫、およびセバチン酸第一錫が含まれる。安定性を改善するためには少量のアルキルヒドロキノンを第一錫塩に加えることだけが必要であり、塩の重量に関し0.1%程度の少量で第二錫塩の形への酸化を抑止できるが、アルキルヒドロキノン塩の重量に関し1.0〜1.5%を使用することが好適であるとHochは述べている(第2欄、第32〜50行)。塩にアルキルヒドロキノンを加え、均一な溶液が得られるまで撹拌するだけで安定化された第一錫塩が得られる。或る場合には、該混合物を加熱してアルキルヒドロキノンを溶解することが必要である。
【0054】
Hochによれば、彼のつくった第二錫塩はt−アミンと相溶性があり(第2欄、第50〜51行)、従ってこのような安定化された第一錫塩とトリt−アミン、例えばトリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、またはこれらの混合物との組み合わせは、クリンカーからのセメントとインターグラインドするのに使用するための予備混合されたセメント添加物としてHochの安定化された第一錫塩と組み合わせることができる例
示的な本発明のセメント添加物であると思われる。
【0055】
本発明の例示的な液体組成物は、1種またはそれ以上の粘土調節剤(VMA)を使用して高濃度の固体粒子懸濁液を得ることができる。換言すれば、VMAを水性液体担体に混入した場合、これによって多量の固体の硫酸錫粒子を水性液体担体の内部に分散させることができる。好適なVMAはキサンタンゴムである。本発明に使用するのに適した他のVMAは2005年5月26日付けのJardineの米国特許出願第10/890,476号(公告番号US2005−0109243 A1)に記載されている。本発明の目的に対しては、VMAの使用は随意であり、必ずしも好適ではないこともある。何故なら錯化剤を使用すると、どのような充填量が望ましい場合でも、特に水溶性の状態においては、クロム還元剤の効果が増加するからである。
【0056】
硫酸第一錫および硫酸第一鉄の他に、これらの金属の他の形の水溶性の塩、例えば塩化物、臭化物、酢酸塩、酸化物および硫化物の形の塩、並びに水酸化錫をクロム(VI)の還元剤として使用することができる。好ましくは金属は、(水溶性の)クロム(VI)5ppmに対しセメントの乾燥重量に関して少なくとも20ppm、もっと好ましくは少なくとも60ppm、最も好ましくは少なくとも100ppmの量で使用しなければならない。
【0057】
本発明の一つの例示的なクロム酸塩還元用の液体組成物は、第一錫(錫II)イオン、および好ましくは該液体組成物の全量に関し10〜80%、さらに好ましくは20〜50%の量の固体の錫塩の粒子;1〜80%、さらに好ましくは2〜50%の量の非リグノスルフォネート・ベースの錯化剤;10〜80%、さらに好ましくは35〜70%の量の液体担体としての水;および0.01〜10%、さらに好ましくは0.2〜1.0%の量の随時加えられる1種またはそれ以上のVMAを含んで成っている。ここですべての%の値は全重量に関する値である。
【0058】
本発明のさらに他の例示的な方法および組成物は、アルカノールアミン(例えばトリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン)、グリコール、糖、および塩化物から成る群から選ばれる、予め錫イオンと混合した或は別に加えられる少なくとも1種のセメント添加物を含んで成っている。このセメント添加物は液体組成物の全重量に関し5〜80%、さらに好ましくは5〜50%の量で使用することができる。
【0059】
本発明の好適な組成物および方法は、会合錯体の中における硫酸第一錫およびグルコン酸ナトリウムの使用を含んで成っている。硫酸第一錫とグルコン酸ナトリウムを結合させる両者のモル比は好ましくは4:1〜1:4、さらに好ましくは2:1〜1:2であり、最も好ましくは1:1のモル比である。
【0060】
理論で拘束されるつもりはないが、好適な「硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体」がセメント性組成物の中でどのような機構で動作すると考えられるかを強調するために、本発明においては下記のような説明が提供される。即ち硫酸第一錫は第一錫イオン源(SnII)であり、これは下記の式(I)に従ってクロム(VI)をクロム(III)に還元する活性試薬である。
【0061】
【数1】

【0062】
グルコン酸ナトリウムは貯蔵および使用の際に第一錫塩組成物を安定化すると考えられる。何故なら、グルコン酸ナトリウムが存在しない場合、第一錫(錫II)のクロム還元
剤は、活性成分SnIIが大気中の外来の酸素と望ましくない反応をするために、時間の経過と共にその効果を失うからである。第一錫イオンが存在しない場合、グルコン酸ナトリウムはクロム(VI)を還元してクロム(III)にすることはない。
【0063】
組成物の中におけるグルコン酸ナトリウムの保護作用の正確な機構は知られていないが、硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウムの付加物が生成するか、またはセメントの中に混入された場合硫酸第一錫粒子と緊密に混合するかおよび/または該粒子を被覆するか、或いはこれらの機構の組み合わせまたは他の機構によりグルコン酸ナトリウムが第一錫組成物を安定化するものと考えてられる。
【0064】
この生成する付加物の正確な性質は推測の域を出ないが、H、13C、および119Sn NMRの実験は、SnSOとグルコン酸ナトリウムとの間には下記式2に示されるような何らかの相互作用が存在することを示していることが本発明において見出された。この平衡式の中の化学種の平衡濃度は温度、pHおよび混合物の個々の成分の濃度に依存するであろう。
【0065】
【数2】

【0066】
上記の議論が根拠とするNMRスペクトルは本明細書の実施例の中に示されており、また図面に添付されている。
【0067】
本明細書において本発明は限定された数の具体化例を用いて説明されているが、これらの特定の具体化例は特記しない限り本発明の範囲および特許請求の範囲を限定するものではない。ここに記載された具体化例の変更および修正は可能である。さらに特定的には、下記の実施例は本発明の特許請求の範囲の特定の具体化例を示すものである。本発明は各実施例に記載された特定の詳細な点に限定されるものではない。特記しない限り実施例並びに本明細書の他の部分の中のすべての割合は重量によるものとする。
【0068】
さらに、本明細書および特許請求の範囲に挙げられた数の範囲、例えば特定の性質の組、測定単位、条件、物理的状態および百分率を示す数値は、参照によりまたは他の方法で、ここに引用された任意の範囲内の任意の部分集合の数を含む範囲内に入る任意の数を字義通りに明白に表すことを意図したものである。例えば、下限、即ちRL、および上限、即ちRUを用いて数値の範囲が与えられている場合、この範囲内に入る任意の数Rが特定的に記載されているものとする。特に、この範囲に入る下記の数Rは特定的に次のように記載される:R=RL+k(RU−RL)。ここでkは1%の増分をもつ1%〜100%の範囲の変数である。例えばkは1%,2%,3%,4%,5%....50%,51%,52%,...95%,96%,97%,98%,99%,または100%である。さらに上記のように計算された任意の二つの値Rによって表される数値範囲もまた特定的に記載されている。
【実施例1】
【0069】
セメントに対し硫酸第一錫100ppmが確実に分配されるような投与量で第一錫を含むクロム(VI)の還元剤を摩砕してセメントの中に混入する。セメント中のクロムの量は波長375nmの紫外線(UV)を用いてセメントの細孔水を分析することによって決定することができる。次いでセメントを種々の時間の間紙袋の中に貯蔵し、次にクロムの含量を再び測定する。
【0070】
この場合セメントは、予め混合した硫酸第一錫およびグルコン酸ナトリウムの混合物(
水性懸濁液の中で本発明の硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体をつくる)を用いて一緒に摩砕し、セメントを粉末の形で別々に加えた硫酸第一錫およびグルコン酸ナトリウムと一緒に摩砕した場合(従って錯化しなかった場合)と比較する。硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体は全固体分含量が56%(硫酸第一錫28%、グルコン酸ナトリウム28%)であり、従ってセメント中には100ppmの硫酸第一錫および100ppmのグルコン酸ナトリウムが導入され混入されている。セメントおよび硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体を一緒に摩砕した後、クロム含量は8.0ppmから2.5ppmに減少したことが確認され、その差は5.5ppmであった。84日後クロム含量は2.9ppmであり、0.4ppm増加した。56日後では、クロム含量は2.5ppmに留まっていた。26日目にはクロム含量は3.4ppmであり、これは0.9ppmの増加を表している。
【0071】
硫酸第一錫とグルコン酸ナトリウムとを別々に粉末の形で用いて(従って錯化していない)セメントと一緒に摩砕した場合、クロム含量は11.8ppmから4.5ppmに減少した。即ち7.3ppmだけ減少した。56日後にはクロム含量は6.8ppmであり、2.3ppmの増加を示した。26日目にはクロム含量は7.6ppmであり、3.1ppmの増加を示した。
【0072】
従って、予め混合した本発明の硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体を用いてセメントを一緒に摩砕した場合、予め混合せず錯化させず成分を別々に加えた場合に比べ、クロム含量は時間の経過に対し安定であることが確認された。
【0073】
結果を下記表1にまとめる。
【0074】
【表1】

【実施例2】
【0075】
この実施例においては、水性懸濁液中で予め混合された硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体を用いてセメントと一緒に摩砕し、この生成物のクロム(VI)含量を、56%の硫酸第一錫懸濁液(錯化していない)を用いて一緒に摩砕したセメントと比較した。両方の場合、セメントに100ppmの硫酸第一錫を加え、前者の場合(水性懸濁液中に会合錯体を含む場合)にはセメントにさらに100ppmのグルコン酸ナトリウムを加えた。
【0076】
会合錯体と一緒に摩砕したセメントのクロム(VI)含量は8.0ppmから2.5ppmに減少したことが見出され、5.5ppmの減少を示した。84日後クロム(VI)
含量は2.9ppmになり、0.4ppmの増加を示した。56日後にはクロム含量は2.5ppmになり、26日後にはクロム含量は3.4ppmであって、0.9ppmの増加を示した。
【0077】
硫酸第一錫だけの懸濁液と一緒に摩砕したセメントのクロム(VI)の含量は8.0ppmから2.6ppmに減少することが見出され、5.4ppmの減少を示した。84日後にはクロムの含量は4.6ppmであることが見出され、2.0ppmの増加を示した。56日後にはクロムの含量は5.1ppmであることが見出され、2.5ppmの増加を示した。26日後にはクロムの含量は5.3ppmであり、2.7ppmの増加を示した。それぞれ26、56、および84日に亙って測定されたクロムの増加は2.7、2.5および2.0ppmであり、従ってこの関係は時間の経過に関して直線的ではないことが観測された。また26、56、および84日目においてクロム(VI)に対して測定された未処理のセメントの例も含ませた。クロムの濃度は26日において当然8.0から9.5に増加し、次いで56日には7.1に減少し、次に84日までに5.2までにさらに減少した。セメントが老化するにつれて、当然のことながらクロムは少量しか可溶化されない。
【0078】
クロム(VI)の初期含量が高い異なったセメントクリンカーを用い、硫酸錫だけを含む懸濁液を使用した場合、クロム(VI)の含量は11.8ppmから0.7ppmに減少することが見出され、11.1ppmの減少を示した。84日後にはクロムの含量は4.2ppmであることが見出され、3.5ppmの変化を示した。56日後にはクロムの含量は4.8ppmであることが見出され、4.1ppmの変化を示した。
【0079】
このように、水性懸濁液中において本発明の予め混合した硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体を用いセメントと一緒に摩砕した場合、懸濁液中にグルコン酸ナトリウムを加えずに硫酸錫だけを使用した時に比べ、クロム(VI)の含量ははるかに安定であることが確認された。
【0080】
結果を表2にまとめる。
【0081】
【表2】

【実施例3】
【0082】
本実施例においては、本発明の予め混合された硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウムを含む水性懸濁液と一緒に摩砕したセメントを、硫酸錫の粉末だけ(従って会合錯体を含まな
い)と一緒に摩砕したセメントと比較する。
【0083】
両方の場合とも100ppmの硫酸錫をセメントに加え、会合錯体を有する予め混合された懸濁液の場合にはさらにセメントの中にグルコン酸ナトリウム100ppmを加える。
【0084】
硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体(水性懸濁液中に生成)と一緒に摩砕したセメントでは、クロム(VI)含量は8.0ppmから2.5ppmに減少したことが見出され、5.5ppmの減少を示した。84日後クロム(VI)含量は2.9ppmになり、0.4ppmの増加を示した。56日後クロム含量は2.5ppmに留まり、26日後にはクロム含量は3.4ppmになり、0.9ppmの増加を示した。
【0085】
硫酸錫粉末(会合錯体が生じていない)と一緒に摩砕したセメントでは、クロム(VI)の含量は8.0ppmから1.3ppmに減少することが見出され、6.7ppmの減少を示した。84日後にはクロムの含量は4.6ppmであり、3.3ppmの増加を示した。56日後にはクロムの含量は5.8ppmであり、4.5ppmの増加を示した。
【0086】
硫酸錫の粉末と一緒に摩砕したセメントに対し2回目の試験を行った場合、クロム(VI)の含量は11.8ppmから3.6ppmに減少し、8.2ppmの減少を示した。84日後にはクロムの含量は6.9ppmであることが見出され、3.3ppmの増加を示した。56日後にはクロムの含量は7.6ppmであり、4ppmの増加を示した。
【0087】
この試験では、本発明の予め混合した硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体と一緒に摩砕したセメントのクロム(VI)含量は、硫酸錫だけ(会合錯体なし)と一緒に摩砕したセメントのクロム含量に比べ、はるかに安定であることが確認された。
【0088】
結果を下記表3にまとめる。
【0089】
【表3】

【0090】
上記実施例1〜3のデータは図1にグラフによって示されている。
【実施例4】
【0091】
第一錫を含むクロムの還元剤を、セメントに対し硫酸錫150ppmの量を導入することを保証する投与量で一緒に摩砕してセメントの中に混入した。実施例1で述べたように、375nmにおいてセメントの細孔水を紫外線で測定することによりセメントのクロム
含量を測定する。このセメントを種々の期間の間紙袋の中に貯蔵した後、クロム含量を再び測定する。
【0092】
本実施例においては、本発明の硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体を含む予め混合された水溶液と一緒に摩砕したセメントのクロム(VI)含量を、硫酸錫およびグルコン酸ナトリウムを粉末として別々に加えたもの(従って本発明に記載されているような会合錯体は存在しない)と一緒に摩砕したセメントのクロム含量と比較する。
【0093】
会合錯体を有する予め混合された懸濁液は全固体分含量が56%(硫酸第一錫28%、グルコン酸ナトリウム28%)であった。両方の場合、150ppmの硫酸第一錫および150ppmのグルコン酸ナトリウムをセメントと一緒にした。
【0094】
会合錯体を有する予め混合された懸濁液と一緒に摩砕したセメントの試料においては、クロム(VI)含量は8.0ppmから0ppmに減少したことが見出された。84日後のクロム(VI)含量は1.2ppmであり、56日後にはクロム含量は0.16ppmであることが見出された。
【0095】
硫酸錫およびグルコン酸ナトリウムの粉末を別々に加えて(従って中に本発明の会合錯体は生じていない)一緒に摩砕したセメントの試料においては、クロム(VI)含量は11.8ppmから0.3ppmに減少し、差は11.5ppmであった。84日後のクロム(VI)含量は5.1ppmであり、差は4.8ppmであった。56日後のクロム(VI)含量は5.8ppmであり、差は5.5ppmであった。
【0096】
このデータは、本発明の硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体を有する予め混合された水性懸濁液と一緒に摩砕したセメントは、クロム(VI)含量を低下させる上で良好な性能を有していることを確め、また会合錯体が硫酸第一錫を安定化させ、セメント中のクロム(VI)の濃度を低下させる上でいっそう効果的であることを確めているように思われる。
【0097】
データを下記表4にまとめる。
【0098】
【表4】

【実施例5】
【0099】
この実施例においては、本発明の硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体が中に生じている予め混合された水性懸濁液と一緒に摩砕したセメントのクロム(VI)含量を、
56%の硫酸錫懸濁液と一緒に摩砕したセメントのクロム(VI)含量と比較する。それぞれの場合において、150ppmの硫酸錫をセメントに加えた。硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体が生成している予め混合された水性懸濁液を含む試料においては、150ppmのグルコン酸ナトリウムがセメントに導入されている。
【0100】
予め混合された水性懸濁液の中に含まれる硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体と一緒に摩砕したセメントのクロム(VI)含量は8.0ppmから0ppmに減少した。84日後のクロム(VI)含量は1.2ppmであり、56日後のクロム含量は0.16ppmであることが見出された。
【0101】
硫酸錫だけを含む懸濁液(錯化していない)と一緒に摩砕したセメントのクロム(VI)含量は8.0ppmから1.4ppmに減少し、差は6.6ppmであった。84日後のクロム(VI)含量は4.5ppmであり、差は3.1ppmの増加であった。また56日後のクロム含量は5.4ppmであり、4ppmの増加を示した。
【0102】
本発明の硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体が生成している予め混合された水性懸濁液と一緒に摩砕したセメントのクロム(VI)含量は、硫酸錫だけと一緒に摩砕したセメントのクロム(VI)含量に比べて安定であることが見出された。
【0103】
データを下記表5にまとめる。
【0104】
【表5】

【実施例6】
【0105】
この実施例においては、本発明の硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体が中に生じている予め混合された水性懸濁液と一緒に摩砕したセメントのクロム(VI)含量を、硫酸錫粉末懸濁液(単独、錯化していない)と一緒に摩砕したセメントのクロム(VI)含量と比較する。それぞれの場合において、150ppmの硫酸錫をセメントに加えた。本発明の硫酸第一錫錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体を含む予め混合された水性懸濁液を含む試料においては、150ppmのグルコン酸ナトリウムをセメントに導入さている。
【0106】
予め混合された硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体の水性懸濁液と一緒に摩砕したセメントのクロム(VI)含量は8.0ppmから0ppmに減少した。84日後、クロム含量は1.2ppmになり、56日後、クロム含量は0.16ppmであることが見出された。
【0107】
硫酸錫粉末だけ(錯化していない)と一緒に摩砕したセメントのクロム(VI)含量は
8.0ppmから0ppmに減少した。84日後クロム含量は4.3ppmに増加し、56日後クロム含量は4.6ppmに増加した。
【0108】
硫酸錫粉末だけと一緒に摩砕したセメントの第2の試料のクロム(VI)含量は11.8ppmから0ppmに減少した。84日後のクロム含量は6.9ppmであり、56日後のクロム含量は4.5ppmであり、4.5ppmの増加を示した。
【0109】
このデータにより、本発明の硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体が生成している予め混合された水性懸濁液と一緒に摩砕したセメントのクロム(VI)含量は、硫酸錫粉末だけ(錯化していない)の場合に比べ、摩砕されたセメントのクロム(VI)含量を減少させる上において効果が大きいことを示していることが確認された。
【0110】
データを下記表6にまとめる。
【0111】
【表6】

【0112】
実施例4〜6のデータは図2に示されている。
【実施例7】
【0113】
クロム(VI)の還元剤の貯蔵安定性を維持する作用をする、予め混合された水性懸濁液中に生成した硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体を含む本発明の例示的な組成物は、次のようにしてつくられる。43.3部の水を混合容器に加える。14部の硫酸錫をこの水の中に分散または溶解させる。次に0.68部のキサンタンゴムを加えて分散物を濃化させる(粘度調節剤としてのこのゴムの使用は随意的であると思われる)。この分散物が目で見て濃化した後に、この混合物の中にさらに14部の硫酸錫を分散させる。また28部のグルコン酸ナトリウムをこの混合物の中に分散させる。最終的な生成物の粘度は、Brookfield粘度計(スピンドル#4)を用い6rpmで測定して13000〜16000である。生成物の最終的な比重は1.50〜1.80であり、生成物の最終的なpHは0.5〜2.0である。
【実施例8】
【0114】
セメントまたはセメントクリンカー中においてクロム(VI)の還元剤の貯蔵安定性を保持するのに使用される他の例示的な組成物は次のようにしてつくられる。混合容器に30部の水を加える。この水の中に35部のグルコン酸ナトリウムを溶解する。この水に35部の硫酸錫を加える。粘度は225cps(Brookfield粘度計、6rpm、
スピンドル#4で測定)である。比重は1.64、生成物の最終的なpHは0.5〜2.0である。
【実施例9】
【0115】
クロム(VI)の還元剤の貯蔵安定性を維持する作用をする、予め混合された水性懸濁液中に硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体を含むさらに他の本発明の例示的な組成物は、次のようにしてつくられる。43.3部の水を混合容器に加える。14部の硫酸錫をこの水の中に分散または溶解させる。次に0.6部のキサンタンゴムを加えて分散物を濃化させる。目で見てこの分散物が濃化した後に、この混合物の中にさらに23.3部の硫酸錫を分散させる。次に18.7部のグルコン酸ナトリウムをこの混合物の中に分散させる。最終的な生成物の粘度は、10,000〜14,000である(Brookfield粘度計、スピンドル#4、6rpmにおいて測定)。生成物の最終的な比重は1.50〜1.80であり、最終的な生成物のpHは0.5〜2.0である。
【実施例10】
【0116】
工業用セメントを本発明の硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体と一緒に摩砕し、この生成物のクロム(VI)含量を、56%の硫酸錫を使用して(会合錯体は存在しない)一緒に摩砕したセメントと比較する。両方の場合とも、種々の量の硫酸錫をセメントに加え、前者の場合(水性懸濁液中に会合錯体を含む)にはセメントにさらに同じ量のグルコン酸ナトリウムを加える。次にセメントを貯蔵し、最高84日までの種々の間隔でクロム含量を再測定した。
【0117】
84日の貯蔵後、会合錯体の形で加えられた第一錫は、硫酸第一錫懸濁液の形で第一錫だけを加えられた第一錫に比べ、クロム(VI)濃度を減少させるのに効果が大きかった。例えば、会合錯体の形で75または95ppmの第一錫を加えられたセメントはクロム(VI)含量が3.2または1.4ppmであった。硫酸第一錫懸濁液の形で77または92ppmの第一錫を加えられたセメントはクロム(VI)含量が8.4または8.2ppmであった。
【0118】
本発明の硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム錯体と一緒に摩砕したセメントのクロム(VI)含量を測定し、データを下記表7に示した。他方56%の硫酸錫懸濁液(硫酸錫だけ)を用いて一緒に摩砕したセメントのクロム(VI)含量を下記表8に示し、図3にグラフで示す。
【0119】
【表7】

【0120】
【表8】

【実施例11】
【0121】
第一錫を含むクロム(VI)還元剤を、セメントに対し28または55ppmの添加を保証する投与量において一緒に摩砕してセメントの中に混入した。波長375nmにおいて紫外線を用いセメントの細孔水を分析することにより、セメント中におけるクロム(VI)の量を決定した。次にセメントを紙袋の中に種々の期間貯蔵した後、再びクロム(VI)含量を測定した。
【0122】
この場合、水性懸濁液中に生成した予め混合された本発明の硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体を用いてセメントと一緒に摩砕し、これを予め混合された塩化第一錫およびグルコン酸ナトリウム(本発明の他の会合錯体をつくる)と一緒に摩砕したセメントと比較した。
【0123】
硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体は、全固体分含量が56%(硫酸第一錫28%、グルコン酸ナトリウム28%)であることが確かめられた。塩化第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体は、塩化第一錫21%、グルコン酸ナトリウム41%、水35%を含んでいることが確かめられた。
【0124】
下記表9に示されているように、両方の生成物は新しいセメントの初期Cr(VI)濃度を、未処理のCr(VI)の濃度よりも8ppm低下させた。
【0125】
硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体を含むセメントのクロム(VI)含量は、各投与量において、60日間貯蔵した後0.5ppmだけ増加した。しかし塩化第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体を含むセメントのクロム含量は60日貯蔵後に1.6〜1.7ppmだけ増加した。
【0126】
従って、予め混合された硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体を用いてセメントを一緒に摩砕した場合、クロム(VI)含量を低下させる第一錫(錫II)成分の時間の経過に関する安定性は,塩化第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体に比べて大きいことが本発明において見出だされた。
【0127】
従って、硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体が最も好適である。結果を下記表9にまとめる。
【0128】
【表9】

【実施例12】
【0129】
本発明においては、本発明によるいくつかの会合錯体がつくられたが、これらの会合錯体の核磁気共鳴(NMR)スペクトル(119Sn NMR,13C NMR,およびH NMR)をそれぞれ図4〜7に示す。
【0130】
NMRスペクトルは、H核に対しては399.8MHz、13C核に対しては100.5MHz、119Sn核に対しては149.1MHzで動作する9.4TeslaのVarian社製のUNITYINOVA分光光度計で得た。試料には化学的または物理的な摂動をかけないで実験を行った。酸化ジューテリウム(重水)を含む毛細管のインサートを使用して磁場−周波数のロックを行った。炭素およびプロトンのスペクトルはDO中にトリメチルシリルプロピオン酸ナトリウムを含む10mMの溶液を外部基準として用いた。119Sn NMR分光法に対しては外部基準としてCDCl中にテトラメチル錫を含む10mMの溶液を用いた。本明細書においてすべてのNMRスペクトルは27℃の一定の温度で測定した。
【0131】
硫酸第一錫、および硫酸第一錫または塩化第一錫とグルコン酸ナトリウムとの混合物の119Sn NMRスペクトルを図4に示す。スペクトルAは硫酸第一錫(SnSO)に対して一本の鋭い共鳴線を示す。グルコン酸ナトリウムを1当量(スペクトルB)または3当量(スペクトルC)加えると,共鳴線は線幅が広くなり、低磁場へとシフトする。このことは2種またはそれ以上の遷移状態の錫含有化学種の間で、例えば硫酸第一錫と硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム付加物(会合錯体)との間で化学交換が起こっていることを示唆している。この組成物は、NMRの時間的尺度(μ秒)内において迅速な交換をしていると考えられる。この交換は、錫イオンが同時に関与する任意のまたはすべての配位子、即ちグルコン酸イオン、硫酸イオン、および水を含むと考えられる。
【0132】
従って本発明の例示的な組成物は、水性の環境(例えば懸濁液)の中でクロム(VI)の還元剤(例えば硫酸第一錫)が錯化剤(例えばグルコン酸ナトリウム)と会合している
組成物を含んで成り、クロム(VI)の還元剤に対するNMRスペクトルは、クロム(VI)の還元剤だけの場合に比べて線幅が広がっている。
【0133】
スペクトルDはグルコン酸ナトリウムと塩化第一錫(SnCl)とのモル比1:1の混合物を示す。スペクトルBおよびCに比べスペクトルDでは共鳴線がさらに低磁場側にあり、その線幅が狭いことは、グルコン酸ナトリウムと塩化第一錫との1:1混合物ではグルコン酸イオン、塩化物、または水を含む会合が迅速な交換を行っていないことを示している。
【0134】
13C NMRのデータは、硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム錯体が遊離のグルコン酸ナトリウムと平衡状態にあるという仮定を支持している。図5はグルコン酸ナトリウム組成物のC(炭素1)の共鳴線が低磁場側にシフトしていることを示しており、このことはC核の磁気的環境が変化していることを示唆している。δ−およびγ−グルコノラクトンに対するCの共鳴線が存在することおよびその強度は遊離のグルコン酸塩の存在を示し、従って硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウムの混合物中における遊離の硫酸第一錫の存在を強く示唆している。この混合物においてグルコン酸ナトリウムが完全に硫酸第一錫に配位していれば、ラクトンのピークは劇的に減少するか消失することが期待されよう。
【0135】
従って本発明の例示的な組成物は、水性の環境の中でクロム(VI)の還元剤(例えば硫酸第一錫)が炭素含有錯化剤(例えばグルコン酸ナトリウム)と会合している組成物を含んで成り、錯化剤のCに対する13C NMRスペクトルは錯化剤単独の場合のCのスペクトルに比べ、低磁場側へシフトしている。
【0136】
H NMRのデータは、本発明の硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体が遊離の水と平衡状態にあるという仮定を支持している。図6はH NMRスペクトルにおいて水の共鳴線の線幅が広がっていることを示しており、水分子(H)と第一錫(錫II)イオンとの会合/解離が活発に行われていることを示唆している。
【0137】
従って本発明の例示的な組成物は、水性の環境の中でクロム(VI)の還元剤(例えば硫酸第一錫)が炭素含有錯化剤(例えばグルコン酸ナトリウム)と会合している組成物を含んで成り、錯化剤のCに対するH NMRスペクトルは水分子(H)と第一錫(錫II)イオンとの会合/解離が活発に行われていることを示している。
【0138】
硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウムの1:1会合錯体および塩化第一錫/グルコン酸ナトリウムの1:1会合錯体は両方とも実施例11において考察され、硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウムの1:1会合錯体が最も安定であり、クロム(VI)の濃度を減少する上で効果的な性能を示すことが観測されている。
【0139】
性能のデータおよびNMRのデータから、水性環境の中で硫酸第一錫およびグルコン酸ナトリウムを一緒に予め混合することによりつくられた会合錯体は硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウムの動き易く弱く会合した付加物をつくり、また遊離の第一錫イオンおよびグルコン酸基も存在し得ることが示唆されており、この会合錯体の方が好適である。他方、塩化第一錫とグルコン酸ナトリウムとを組み合わせることによって生じる会合錯体は、遊離の塩化第一錫およびグルコン酸ナトリウムとが平衡状態にあるという証拠を示さず、従ってこれはあまり好適ではない。
【0140】
上記の実施例および例示的な具体化例は本発明を例示することだけが目的であり、本明細書に含まれた記述を考えれば、当業界の専門家にとってその修正および変更は明らかであるから、これらの実施例および具体化例は本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】セメントを本発明による硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体と一緒に摩砕した本発明の例示的な具体化例を含む種々のセメント試料について、時間経過(日単位の貯蔵時間に関する老化)と共に測定されたクロム(VI)のppm単位の含量を示すグラフ(実施例1〜3参照)。
【図2】セメントを本発明による硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体と一緒に摩砕した本発明の例示的な具体化例を含む種々のセメント試料について、時間経過(日単位の貯蔵時間に関する老化)と共に測定されたクロム(VI)のppm単位の含量を示すグラフ(実施例4〜6参照)。
【図3】セメントを本発明による硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体と一緒に摩砕したセメントの表7に含まれるデータに基づいたクロム(VI)含量、および56%の硫酸錫懸濁液(従来法、会合錯体が存在しない)を用いて一緒に摩砕したセメントの表8に含まれるデータに基づいたクロム(VI)含量を示すグラフ。
【図4】種々の119Sn核磁気共鳴スペクトル(119Sn NMR)を示す図:(A)硫酸第一錫だけ;(B)本発明の硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体;(C)本発明の他の硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体;(D)本発明の塩化第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体。
【図5】13C核磁気共鳴スペクトルを示す図。グルコン酸ナトリウムだけの13C核磁気共鳴スペクトル(B)と比較すれば分かるように、本発明の硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体の13C核磁気共鳴スペクトル(A)は炭素1(C)の共鳴線が低磁場シフトをしていることを示している。
【図6】硫酸第一錫とグルコン酸ナトリウムとを好適な1:1の割合で水性組成物中で組み合わせた本発明の硫酸第一錫/グルコン酸ナトリウム会合錯体のH核磁気共鳴スペクトルの図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属をベースにしたクロム(VI)の還元剤および非リグノスルフォネート・ベースの錯化剤から形成される会合錯体を含む組成物を、セメントクリンカーまたは水和可能なセメント粒子に導入することを含む方法。
【請求項2】
該会合錯体中の該金属をベースにしたクロム(VI)の還元剤を、該セメントクリンカーまたは水和可能なセメント粒子の中に含まれるクロム(VI)の各5ppm当たりクロム還元剤が20〜2000ppmになるような量で該セメントクリンカーまたは水和可能なセメント粒子と組み合わせることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
セメントクリンカーから水和可能なセメント粒子を製造するのに用いられるインターグラインドを行う工程の前またはその際に、該会合錯体をセメントクリンカーに加え、該クリンカーとインターグラインドして該クロム(VI)還元剤と組み合わされた水和可能なセメント粒子をつくることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
該水和可能なセメント粒子は、該金属をベースにしたクロム(VI)の還元剤を含む該会合錯体と組み合わされた後において、クロム(VI)の還元剤をさらに加えることをせずに、インターグラインドした後に引き続く次の28日間の間、平均のクロム濃度がセメントの重量の2ppmより少ないことを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
該水和可能なセメント粒子は、該金属をベースにしたクロム(VI)の還元剤を含む該会合錯体と組み合わされた後において、クロム(VI)の還元剤をさらに加えることをせずに、インターグラインドした後に引き続く次の56日間の間、平均のクロム濃度がセメントの重量の2ppmより少ないことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項6】
該水和可能なセメント粒子は、該金属をベースにしたクロム(VI)の還元剤を含む該会合錯体と組み合わされた後において、クロム(VI)の還元剤をさらに加えることをせずに、インターグラインドした後に引き続く次の84日間の間、平均のクロム濃度がセメントの重量の2ppmより少ないことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項7】
水を該セメント粒子に導入して水和工程を開始する前、その途中または後において、水和可能なセメント粒子に該会合錯体を導入することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
該金属をベースにしたクロム(VI)の還元剤は金属塩であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
該金属塩は塩化物、臭化物、酢酸塩、酸化物、硫化物、水酸化物、または硫酸塩から形成されることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
該クロム(VI)の還元剤は硫酸第一錫(錫II)であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項11】
該クロム(VI)の還元剤は硫酸第一錫、塩化第一錫、硫酸第一鉄、塩化第一鉄、硫酸マンガン、および塩化マンガンから成る群から選ばれることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項12】
該会合錯体は、塩化第一錫、硫酸第一錫、またはそれらの混合物をグルコン酸カルシウム、グルコン酸ナトリウム、またはそれらの混合物と組み合わせて形成されるグルコン酸第一錫であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項13】
非リグノスルフォネート・ベースの錯化剤はグルコン酸またはその塩であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項14】
該非リグノスルフォネート・ベースの錯化剤はグルコン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項15】
該非リグノスルフォネート・ベースの錯化剤はモノカルボン酸、ジカルボン酸、ポリヒドロキシアルコール、アルデヒド酸、またはそれらの塩であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項16】
該非リグノスルフォネート・ベースの錯化剤は金属イオンキレート化剤であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項17】
該非リグノスルフォネート・ベースの錯化剤はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸[N(CHCOOH)]、およびエチレングリコール−ビス(β−アミノエチルエーテル)−N,N−四酢酸[(NOOCCHNCHCHOCHCHOCHCHN(CHCOOH)]、エチレングリコール、グリセリン、グルコース,デキストロース、スクロース、ポリビニルアルコール、トリポリ燐酸塩、ビニルメチルエーテルの共重合体、マレイン酸無水物、N−ベンゾイル−N−フェニルヒドロキシラミン、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、サリチルアルデヒド、8−ヒドロキシヒドロキノン、および8−キノリノールから成る群から選ばれることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項18】
該非リグノスルフォネート・ベースの錯化剤はインターグラインドするセメントの乾燥重量に関し0.0005〜0.1%の量で用いられることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項19】
該非リグノスルフォネート・ベースの錯化剤はインターグラインドするセメントの乾燥重量に関し0.001〜0.02%の量で用いられることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項20】
該組成物は水性液体であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項21】
さらに、セメントクリンカーまたは水和可能なセメント粒子に少なくとも1種のセメント添加物を導入することを含んで成ることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項22】
該少なくとも1種のセメント添加物はトリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、グリコール、糖、および塩化物塩から成る群から選ばれることを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項23】
請求項1記載の方法によって得られるセメント組成物。
【請求項24】
水和可能なセメント粒子ならびに金属をベースにしたクロム(VI)の還元剤および非リグノスルフォネート・ベースの錯化剤とを組み合わせることにより形成された会合錯体の形で該セメント粒子に導入された金属をベースにしたクロム(VI)の還元剤を含んで成ることを特徴とするセメント組成物。
【請求項25】
該セメントは、該会合錯体を該セメントと組み合わせた後に引き続く26日の間平均のクロム(VI)の濃度がセメントの重量の2ppmより少ないことを特徴とする請求項2
4記載の組成物。
【請求項26】
該セメントは、該会合錯体を該セメントと組み合わせた後に引き続く56日の間平均のクロム(VI)の濃度がセメントの重量の2ppmより少ないことを特徴とする請求項24記載の組成物。
【請求項27】
該セメントは、該会合錯体を該セメントと組み合わせた後に引き続く84日の間平均のクロム(VI)の濃度がセメントの重量の2ppmより少ないことを特徴とする請求項24記載の組成物。
【請求項28】
第一錫グルコン酸またはその塩を含んで成る組成物をセメントクリンカーまたは水和可能なセメント粒子に導入することを含んで成ることを特徴とする方法。
【請求項29】
金属をベースにしたクロム(VI)還元剤および非リグノスルフォネート・ベースの錯化剤を組み合わせることにより形成される会合錯体を含んで成る組成物であって、該会合錯体は該組成物の全重量に関し10%以上の量で存在することを特徴とする組成物。
【請求項30】
該会合錯体は水性環境の中で硫酸第一錫とグルコン酸ナトリウムとを1:2〜2:1のモル比で組み合わせることにより形成されることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項31】
該会合錯体は水性液環境の中で硫酸第一錫とグルコン酸ナトリウムとを1:1のモル比で組み合わせることにより形成され、該会合錯体は全重量に関し該液体環境の少なくとも20%をなしていることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項32】
該会合錯体は硫酸第一錫とグルコン酸ナトリウムとを1:1のモル比で組み合わせることにより形成され、該会合錯体はグルコン酸ナトリウム単独の場合と比較して次のような13C NMRスペクトル

を有していることを特徴とする請求項1記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−504554(P2009−504554A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526094(P2008−526094)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/030577
【国際公開番号】WO2007/021617
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(399016927)ダブリュー・アール・グレイス・アンド・カンパニー−コネチカット (63)
【Fターム(参考)】