説明

セメント硬化体の破砕方法および静的破砕剤注入用容器

【課題】静的破砕剤を用いてセメント硬化体を破砕するに際し、静的破砕剤の漏洩による臭気発生を防止し、同時に静的破砕剤を無駄なくセメント硬化体中へ注入することを一の課題とする。
【解決手段】アルカリ加水分解反応によりカルボン酸を生成し、該カルボン酸のカルシウム塩が少なくとも結晶性である有機エステル化合物を有効成分とする液状の静的破砕剤を用いてセメント硬化体を破砕するセメント硬化体の破砕方法であって、容器内に前記静的破砕剤を収容するとともにセメント硬化体に孔を形成し、前記容器の少なくとも一部を該孔に挿入し、該容器に備えられた加圧手段により該静的破砕剤を加圧して前記孔の内部に静的破砕剤を徐々に吐出することにより、該セメント硬化体中に静的破砕剤を注入することを特徴とするセメント硬化体の破砕方法による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント硬化体を静的破砕剤を用いて破砕するセメント硬化体の破砕方法、およびセメント硬化体へ静的破砕剤を注入するために使用する静的破砕剤注入用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートやモルタル等のセメント硬化体を破砕する方法として、従来、下記特許文献1には静的破砕剤が開示されている。具体的には、該静的破砕剤は、アルカリ加水分解反応によりカルボン酸を生成するものであり、該カルボン酸とセメント水和物中のカルシウムとを反応させることによりカルボン酸カルシウム塩を生成させ、コンクリートを膨張破壊するという方法である。
【特許文献1】特開2000−254541号公報
【0003】
しかるに、該公報には、前記静的破砕剤を塗布又は注入するとしか記載されておらず、具体的な注入手段は開示されていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような静的破砕剤を用いてセメント硬化体を破砕する場合、静的破砕剤が臭気を発生し、作業環境が悪化しやすいという問題がある。
また、セメント硬化体中へ注入されずに周囲に漏れ出してしまい、セメント硬化体の破砕に作用せずに浪費される静的破砕剤が多い、という問題もある。
【0005】
本発明は上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、静的破砕剤を用いてセメント硬化体を破砕するに際し、静的破砕剤の漏洩による臭気発生を防止し、同時に静的破砕剤を無駄なくセメント硬化体中へ注入することを一の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明は、アルカリ加水分解反応によりカルボン酸を生成し、該カルボン酸のカルシウム塩が少なくとも結晶性である有機エステル化合物を有効成分とする液状の静的破砕剤を用いてセメント硬化体を破砕するセメント硬化体の破砕方法であって、容器内に前記静的破砕剤を収容するとともにセメント硬化体に孔を形成し、前記容器の少なくとも一部を該孔に挿入し、該容器に備えられた加圧手段により該静的破砕剤を加圧して前記孔の内部に静的破砕剤を徐々に吐出することにより、該セメント硬化体中に静的破砕剤を注入することを特徴とするセメント硬化体の破砕方法を提供する。
尚、本発明において、セメント硬化体とは、コンクリート、モルタル、セメントペースト等に例示される如く、セメント成分を含み、該セメント成分が水和反応によって硬化してなるものをいう。
【0007】
本発明に係るセメント硬化体の破砕方法によれば、セメント硬化体に孔を形成して前記容器の少なくとも一部を該孔に挿入するとともに加圧手段によって静的破砕剤を吐出口から徐々に吐出させるため、孔の開口部から静的破砕剤が漏出して空気中へ揮散し作業環境を悪化させるのを防止することができる。また、孔の開口部からの漏洩を防止することにより無駄なく静的破砕剤をセメント硬化体の内部に注入することができる。
そして、該静的破砕剤の有効成分である有機エステル化合物がアルカリ加水分解反応によりカルボン酸を生成し、さらに該カルボン酸が結晶性のカルシウム塩を生成することにより、セメント硬化体を膨張破壊することができる。
【0008】
また、本発明は、アルカリ加水分解反応によりカルボン酸を生成し、該カルボン酸のカルシウム塩が少なくとも結晶性である有機エステル化合物を有効成分とする液状の静的破砕剤を、セメント硬化体に注入するための静的破砕剤注入用容器であって、前記静的破砕剤を収容しうる胴部と、該胴部から突出して設けられ、先端付近に静的破砕剤を吐出するための吐出口が形成された突出部とを備え、さらに、胴部に収容した静的破砕剤を加圧しうる加圧手段を備えたことを特徴とする静的破砕剤注入用容器を提供する。
【0009】
本発明に係る静的破砕剤注入用容器によれば、胴部に収容した静的破砕剤を、該胴部から突出して設けられた突出部の先端付近にある吐出口から吐出させることができるため、該突出部をセメント硬化体の穴に挿入することによって外気と静的破砕剤との接触を防止しつつ該静的破砕剤をセメント硬化体の内部へ注入することができる。そして、静的破砕剤がセメント硬化体中へと注入されるとそれに応じて前記加圧手段によって新たな静的破砕剤が吐出されるため、静的破砕剤が漏洩することなくセメント硬化体の破砕を行うことができる。
【0010】
また、本発明は、前記静的破砕剤注入用容器において、前記胴部の先端部に、セメント硬化体と接するように該胴部の径方向外方へと延びた張出部を備え、該張出部をセメント硬化体に固定する固定手段を備えたことを特徴とする静的破砕剤注入用容器を提供する。さらに、該張出部は、好ましくは弾性部材によって構成される。
【0011】
斯かる構成の静的破砕剤注入用容器によれば、静的破砕剤の注入によってセメント硬化体にひび割れが生じた場合でも、固定手段によって張出部がセメント硬化体表面に固定されているため、注入用容器の転倒や脱落を防止し、静的破砕剤の注入をより確実に行うことができる。また、セメント硬化体と張出部とが密着固定されれば、孔からの静的破砕剤の漏洩を防止しうるという効果もある。
【0012】
特に、該張出部が弾性部材によって構成されていれば、静的破砕剤の注入によってセメント硬化体が膨張した場合でも、該張出部がその膨張に追従して変形するため、注入用容器の転倒及び脱落、並びに静的破砕剤の漏洩を防止できるという顕著な効果がある。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明に係るセメント硬化体の破砕方法、及び静的破砕剤注入用容器によれば、静的破砕剤の漏洩による臭気発生を防止し、同時に静的破砕剤を無駄なくセメント硬化体中へ注入することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る静的破砕剤注入用容器につき、図面を参照しつつ具体的に説明する。
図1は、静的破砕剤注入用容器の第一実施形態を示した断面図である。図1に示す如く、注入用容器1は、静的破砕剤Aを収容しうる胴部10と、該胴部10から突出して設けられ、先端付近に静的破砕剤Aを吐出するための吐出口11が形成された突出部12とを備え、さらに、胴部10に収容した静的破砕剤Aを加圧しうる加圧手段20とを備えてなる。
【0015】
具体的には、前記胴部10は有底の円筒形状に形成されており、その底面中央部には突出部12が該底面より略垂直に突出するように設けられている。また、底面に対向する位置には、筒状の胴部10に内接するピストン15が備えられており、該ピストン15は、胴部10に収容された静的破砕剤Aを密閉するとともに、前記筒状の胴部10内を軸方向に往復移動可能に取り付けられている。
【0016】
前記突出部12は、例えば、胴部10の底面(先端ともいう)から高さ1〜5cmとなるように構成され、好ましくは高さ2〜4cmとなるように構成される。
【0017】
また、前記吐出口11は、突出部12の先端に設けられており、具体的には、その直径が0.1〜10mm、好ましくは0.2〜0.5mmの孔として形成されている。
【0018】
前記加圧手段20としては、本実施形態ではバネ機構を用いた例が記載されている。
具体的には、加圧手段20は、前記胴部10より径方向外側へ張り出した第一鍔部21と、前記ピストン15より径方向外側へ張り出した第二鍔部22と、該第一鍔部21と第二鍔部22とを連結するバネ23とを備えて構成されている。
即ち、本実施形態における加圧手段20は、静的破砕剤Aが胴部10内に収容されると前記第一鍔部21と第二鍔部22との間でバネ23が伸びた状態となり、第一鍔部21と第二鍔部22とを近づける方向に応力を発揮するよう構成されている。
【0019】
該加圧手段20による静的破砕剤Aの加圧力は、該液の圧力が、0.001〜5N/mm2となるものが好ましく、0.005〜1N/mm2となるものがより好ましい。
【0020】
胴部10内に収容される静的破砕剤Aは、アルカリ加水分解反応によりカルボン酸を生成し、該カルボン酸のカルシウム塩が少なくとも結晶性である有機エステル化合物を有効成分とする液状のものである。
【0021】
前記有機エステル化合物としては、セメント硬化体中においてアルカリ加水分解反応によってカルボン酸を生成し、該カルボン酸のカルシウム塩が結晶性であるものならば、何れも使用することができる。中でも、カルボン酸カルシウム塩の結晶が生成した際に、膨張圧の高いものが好ましい。
該有機エステル化合物の具体例としては、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、アジピン酸ジエチル、セバシン酸2−エチルオキシル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソプロピル等を挙げることができる。
【0022】
中でも、酢酸エチルや酢酸メチルを好適に使用することができ、酢酸エチルや酢酸メチルを用いた場合、静的破砕剤の浸透性が高くなるとともに、生成したカルボン酸カルシウム塩が水溶性で且つ結晶性のものであり、しかも生成時の膨張圧が高いという優れた効果がある。
【0023】
また、セメント硬化体中へ含浸させやすいという観点から、本発明の付着コンクリート洗浄液は粘度が低いものが好ましく、具体的には、100cp以下が好ましい。
【0024】
また、該有機エステル化合物は、そのまま静的破砕剤として使用することも可能であるが、水との混合液として用いることが好ましい。水との混合液とすることにより、セメント硬化体の全体に行きわたりやすくなり、効率よくセメント硬化体を破砕することができる。また、水との混合液であれば、セメント硬化体内部に有機エステル化合物が残留し難くなるため、破砕後に該セメント硬化体を再使用する際にも新たな生コンクリートに悪影響を及ぼさないという効果がある。
【0025】
該静的破砕剤の配合は、通常、水100重量部に対して前記有機エステル化合物10〜200重量部が好ましく、水100重量部に対して前記有機エステル化合物20〜100重量部がより好ましい。
水100重量部に対して前記有機エステル化合物が10重量部未満であると、該有機エステル化合物による破砕作用が発揮され難くなる虞がある。
【0026】
該第一実施形態に係る静的破砕剤注入用容器を用いたセメント硬化体の破砕方法は、破砕対象であるセメント硬化体に、前記容器の突出部12を挿入しうる深さ2〜4cmの孔30を穿ち、静的破砕剤Aを充填した注入用容器1の突出部12を該孔30に挿入する。
そして、バネ23による圧力を作用させることにより、静的破砕剤Aをセメント硬化体B中へと注入する。
【0027】
次に、本発明に係る注入用容器の第二実施形態について説明する。
図2は、静的破砕剤注入用容器の第二実施形態を示した断面図である。図2に示す如く、該注入用容器1は、静的破砕剤Aを収容しうる胴部10と、該胴部10から突出して設けられ、先端付近に静的破砕剤Aを吐出するための吐出口11が形成された突出部12とを備え、さらに、胴部10に収容した静的破砕剤Aを加圧しうる加圧手段20とを備えてなる。
【0028】
具体的には、前記胴部10は第一実施形態と同じく有底の円筒形状に形成されており、その底面中央部には突出部12が該底面より略垂直に突出するように設けられている。また、底面に対向する位置には、筒状の胴部10に内接するピストン15が備えられており、該ピストン15は、胴部10に収容された静的破砕剤Aを密閉するとともに、前記筒状の胴部10内を軸方向に往復移動可能に取り付けられている。
【0029】
本実施形態では、加圧手段20は、前記ピストン15の外側に連結されたバネ23と、該バネ23の他端側に設けられた押圧板24と、該押圧板24を押圧するための有底筒状の蓋体25とを備えて構成されている。具体的には、前記胴部10の外周面および前記蓋体25の内周面にはそれぞれネジ山が形成されることによって両者は螺合可能に構成されている。そして、該蓋体25を回転させて胴部10と蓋体25とを近づけることにより、押圧板24が蓋体25の底面によって押圧され、その押圧力がバネ23へと作用し、さらにピストン15を押圧する。即ち、蓋体25を締め付けていくことにより、ピストン15への圧力を作用させ、静的破砕剤Aを吐出させることが可能となる。
【0030】
即ち、本実施形態における加圧手段20は、静的破砕剤Aが胴部10内に収容されると前記第一鍔部21と第二鍔部22との間でバネ23が伸びた状態となり、第一鍔部21と第二鍔部22とを近づける方向に応力を発揮するよう構成されている。
【0031】
斯かる構成の静的破砕剤注入用容器1によれば、使用前には、静的破砕剤Aに圧力を加えない状態で取り扱うことができ、使用する際に、螺子を回して胴部10と蓋体25とを近接させるだけで静的破砕剤Aに圧力を加えることができ、静的破砕剤Aを容易に吐出させることができる。
【0032】
次に、図3乃至図5に、静的破砕剤注入用容器1をセメント硬化体Bに固定するための構成に関して、具体的な実施形態を示す。
図3に示した注入用容器1は、胴部10の先端に、セメント硬化体Bと接するように該胴部10から径方向外方へと直線状に延びた張出部13と、該張出部13を貫通しセメント硬化体Bに嵌入される固定手段40とを備えたものである。本実施形態では、該張出部13は、図3(b)に示すように、胴部10の中心軸に対して90度間隔で4本形成されている。
該張出部13としては、図3に示す如く胴部10と同一部材により一体的に形成してもよく、また、胴部10に固定した別部材によって構成してもよい。さらに、該張出部13は、好ましくは弾性部材によって構成される。
一方、固定手段40としては、例えば、釘やボルト等が用いられる。
【0033】
斯かる構成の注入用容器1によれば、静的破砕剤Aの注入によってセメント硬化体Bの孔30にひび割れが生じた場合でも、固定手段40を介して張出部13がセメント硬化体B表面に密着固定されているため、注入用容器1の転倒や脱落を防止し、静的破砕剤Aの注入をより確実に行うことができる。
また、セメント硬化体Bと張出部13との密着により、孔30からの静的破砕剤Aの漏洩を防止しうるという効果もある。
特に、該張出部13が弾性部材によって構成されており、該胴部10から径方向外方へと直線状に延びた形状であれば、静的破砕剤Aの注入によってセメント硬化体Bが膨張した場合でも、該張出部13がその膨張に追従するように径方向外方へと伸張し、又は円周方向(左右)に変形されやすいため、注入用容器1の転倒及び脱落、並びに静的破砕剤Aの漏洩を防止できるという顕著な効果がある。
【0034】
図4に示した注入用容器1は、突出部12の外周面に、該突出部12の径方向外方へと環状に張り出した断面山型の鍔部が軸方向に連続して形成された襞状部材18を備えたものである。該襞状部材18は、弾性を有する部材により構成されており、また、前記鍔部の直径はセメント硬化体Bの孔30よりも大径に形成されており、図4に示すように、該襞状部材18は、収縮させた状態で孔30に嵌入されるように構成されている。
【0035】
斯かる構成の注入用容器1によれば、襞状部材18によって孔30と突出部12とがより強固に接合した状態となるため、孔30からの静的破砕剤Aの漏洩が、より確実に防止されることとなる。
また、該襞状部材18が弾性を有する部材により構成され、収縮させた状態で孔30に嵌入されているため、孔30にひび割れが生じて孔の径が僅かに広がった場合でも、襞状部材18がこれに追従して膨張するため、孔30と突出部12との接合状態を維持でき、静的破砕剤Aの漏洩防止をより確実なものとし、注入用容器1の転倒及び脱落の防止にも寄与しうるという顕著な効果がある。
【0036】
図5に示した注入用容器1は、突出部12の周囲、及び胴部10の先端面に粘着材層19が設けられており、該粘着材層19を介して注入用容器1がセメント硬化体Bに固定されるものである。
【0037】
該粘着材層19を構成する材料としては、セメントとの粘着性が良好であり、静的破砕剤Aの有効成分である有機エステル化合物とは反応せず、しかも、高弾性を有するものが好ましい。具体的には、例えば、シリコンゴム、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体等を挙げることができる。
【0038】
斯かる構成の注入用容器1によれば、粘着材層19によって注入用容器1とセメント硬化体Bとが密着状態に保たれるため、セメント硬化体Bの膨張による注入用容器1の転倒及び脱落、並びに静的破砕剤Aの漏洩を防止できるという顕著な効果がある。
【0039】
次に、本発明に係るセメント硬化体の破砕方法について、上記のような注入用容器を用いた場合について説明する。
即ち、本実施形態のセメント硬化体の破砕方法は、加圧手段20を備えた上記の如き注入用容器1内に静的破砕剤Aを充填するとともに、破砕対象となるセメント硬化体Bには、容器1の吐出部12を挿入するための孔30を形成する。
そして、該吐出口11を孔30に挿入した状態で注入用容器1をセメント硬化体Bに固定した後、加圧手段20による加圧力を作用させ、静的破砕剤Aを吐出口11から徐々に吐出させる。
【0040】
斯かる方法により、静的破砕剤Aがセメント硬化体B中へと含浸されてゆくにつれて容器1からは新たな静的破砕剤Aが徐々に吐出されることとなり、容器内に充填された静的破砕剤Aの全量をセメント硬化体B中へと含浸させ、セメント硬化体Bを破砕することができる。
【0041】
尚、本発明に係る静的破砕剤注入用容器は、上述のような実施形態に限定されるものではない。
例えば、前記実施形態では、加圧手段20としてバネを用いた例を説明したが、バネ以外にも、ゴム等の弾性体を用いて構成することも可能であり、また、気体の圧力を利用した構成を採用することも可能である。さらに、バネやゴム等の弾性体を用いることなくピストン自体の自重を利用して静的破砕剤を加圧する加圧手段であってもよい。
【0042】
また、注入用容器1をセメント硬化体Bに固定する構成としては、上記実施形態を組み合わせて採用することも可能である。即ち、例えば、粘着材層19を備えるとともに張出部13を備え、固定手段40によって固定する構成としてもよい。
斯かる構成によれば、固定手段40によって張出部13がセメント硬化体Bへと押圧され、それによって粘着材層19が圧縮されるため、注入用容器1とセメント硬化体Bとの隙間を略完全に塞ぎ、静的破砕剤Aの漏洩をより確実に防止することができる。
【0043】
また、前記実施形態では、張出部13が胴部10から径方向外方へと直線状に延びた形状を有する場合について説明したが、これ以外にも、例えば図3(c)に示すように、胴部10と同心円である円形平板状に形成してもよい。
【0044】
さらに、前記実施形態では、張出部をセメント硬化体へと固定する固定手段として釘やボルト等を用いる場合について説明したが、これ以外にも、例えば、張出部とセメント硬化体とを接着させる接着剤を用いてもよい。該接着剤としては、エポキシ樹脂系接着剤を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る静的破砕剤注入用容器の第一実施形態を示した断面図である。
【図2】本発明に係る静的破砕剤注入用容器の第二実施形態を示した断面図である。
【図3】(a)は本発明に係る静的破砕剤注入用容器の先端形状につき、一実施形態を示した断面図であり、(b)は(a)の平面図であり、(c)は他の実施形態を示した平面図である。
【図4】本発明に係る静的破砕剤注入用容器の先端形状につき、他の実施形態を示した断面図である。
【図5】本発明に係る静的破砕剤注入用容器の先端形状につき、更なる他の実施形態を示した断面図である。
【符号の説明】
【0046】
A 静的破砕剤
B セメント硬化体
1 静的破砕剤注入用容器
10 胴部
11 吐出口
12 突出部
15 ピストン
18 襞状部材
19 粘着材層
20 加圧手段
23 バネ
30 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ加水分解反応によりカルボン酸を生成し、該カルボン酸のカルシウム塩が少なくとも結晶性である有機エステル化合物を有効成分とする液状の静的破砕剤を用いてセメント硬化体を破砕するセメント硬化体の破砕方法であって、
容器内に前記静的破砕剤を収容するとともにセメント硬化体に孔を形成し、前記容器の少なくとも一部を該孔に挿入し、該容器に備えられた加圧手段により該静的破砕剤を加圧して前記孔の内部に静的破砕剤を徐々に吐出することにより、該セメント硬化体中に静的破砕剤を注入することを特徴とするセメント硬化体の破砕方法。
【請求項2】
アルカリ加水分解反応によりカルボン酸を生成し、該カルボン酸のカルシウム塩が少なくとも結晶性である有機エステル化合物を有効成分とする液状の静的破砕剤を、セメント硬化体に注入するための静的破砕剤注入用容器であって、
前記静的破砕剤を収容しうる胴部と、該胴部から突出して設けられ、先端付近に静的破砕剤を吐出するための吐出口が形成された突出部とを備え、さらに、胴部に収容した静的破砕剤を加圧しうる加圧手段を備えたことを特徴とする静的破砕剤注入用容器。
【請求項3】
前記胴部の先端に、セメント硬化体と接するように該胴部の径方向外方へと延びた張出部を備え、該張出部をセメント硬化体に固定する固定手段を備えたことを特徴とする請求項2記載の静的破砕剤注入用容器。
【請求項4】
前記張出部が、弾性部材によって構成されていることを特徴とする請求項3記載の静的破砕剤注入用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−144336(P2007−144336A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−344108(P2005−344108)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】