説明

セメント系プレキャスト部材の塗装方法とその方法により塗装されたセメント系プレキャスト部材

【課題】セメント系プレキャスト部材の物性を損なうことなく、その表面に、ピンホール、クレーター状凹凸といった欠陥のない塗膜を形成できる粉体塗装方法を提供する。
【解決手段】セメント系プレキャスト部材1の表面を電熱ヒーター7aで加熱することにより、表層部だけを160〜190℃に予熱する工程と、この予熱されたセメント系プレキャスト部材の表面に静電粉体方式の塗装ガン8により粉体塗料4を吹き付け、セメント系プレキャスト部材自身が保持する熱により粉体塗料を引き寄せ溶融密着させてペースト状の塗膜2を形成する工程と、ペースト状の塗膜2を電熱ヒーター7bで170〜185℃に再加熱することにより塗膜2の焼付けを行う工程と、冷却工程を経て、セメント系プレキャスト部材の表面を静電粉体塗装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、押出成形セメント板、軽量気泡コンクリート板(ALC板)、無筋のプレキャストコンクリート板、鉄筋で補強されたプレキャストコンクリート板、中空孔を持ちPC鋼線によってプレストレストを加えたプレキャストコンクリート板などに代表されるセメント系プレキャスト部材の表面を粉体塗装する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体塗装は、液状塗料のように有機溶剤や水等を用いず、塗膜形成成分のみで配合された粉体塗料(粉末状の粒子)を用いて塗装する方法であるから、環境汚染の要因であるVOC(揮発性有機化合物)の放出がなく、生態系と環境にやさしい塗装方法である。
【0003】
それ故、近年では、鉄筋や鋼板、アルミ建材等の金属の塗装に広く用いられている。押出成形セメント板や軽量気泡コンクリート板等のセメント系プレキャスト部材にも粉体塗装の応用が試みられているが、セメント系プレキャスト部材の粉体塗装に関しては、未だ工業的な成功を見るに至っていない。
【0004】
例えば、特許文献1には、軽量気泡コンクリート板のパネル原材に粉体塗料を塗布した後、このパネル原材をオートクレーブ養生して、粉体塗料を加熱硬化させることによって粉体塗装された軽量気泡コンクリート板を得る塗装方法が提案されている。
【0005】
しかし、この方法では、軽量気泡コンクリート板の製造ラインの途中で粉体塗装を施すので、予め製造された軽量気泡コンクリート板を塗装できないし、製造途中のパネル原材に関しても、オートクレーブ養生における蒸気やパネル原材の含有水分によって塗膜に気泡の破裂によるクレーター状の凹凸が生じることが予想される。
【0006】
また、特許文献2には、切削面を有する軽量気泡コンクリート板の切削面に静電塗装を施し、切削面に露出している窪みを塗料で覆い隠す方法が提案されている。
【0007】
しかし、この方法では、特許文献2の図4に記載されている通り、コロナ帯電方式の塗装ガンで高粘度の塗料を軽量気泡コンクリート板に吹き付けている。従って、塗料としては、液体と所定の含有率にすることによって粘度調整された粉体塗料(粉末状の粒子)との混合物となり、液体成分の蒸発が問題となる。また、塗料をマイナスに、被塗物(軽量気泡コンクリート板)をプラスに帯電させるための高電圧発生装置やそれらの電気関連の設定が必要である。しかも、ファラデーケージ効果による凹部内側へのいり込み性の低下やフリーイオンの発生に伴う逆電離現象による塗着効率の低下、ピンホール、クレーター状凹凸の発生といったコロナ帯電特有の問題が発生する。そのため、現状では、金属以外の被塗物への適用は困難とされており、少なくとも、軽量気泡コンクリート板を含めてセメント系プレキャスト部材についての実績は、これまで全く報告されていない。
【0008】
尚、特許文献2には、被塗物である軽量気泡コンクリート板の加熱、温度制御について何も記載されていないが、塗装ガンで高粘度の塗料を軽量気泡コンクリート板に吹き付けた後、炉内で軽量気泡コンクリート板の全体を塗膜の焼付けに必要な温度にまで加熱昇温すると、軽量気泡コンクリート板の物性が損なわれ、強度が低下してボロボロになることが予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−194868号公報
【特許文献2】特開平6−172061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の現状に鑑み、本発明は、セメント系プレキャスト部材の物性を損なうことなく、その表面に、ピンホール、クレーター状凹凸といった欠陥のない塗膜を形成できる粉体塗装方法と、その方法により表面が塗装仕上げされたセメント系プレキャスト部材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために本発明が講じた技術的手段は、次の通りである。即ち、本発明によるセメント系プレキャスト部材の塗装方法は、セメント系プレキャスト部材の表層部だけを所要温度に予熱する工程と、この予熱されたセメント系プレキャスト部材の表面に静電粉体方式の塗装ガンにより粉体塗料を吹き付け、セメント系プレキャスト部材自身が保持する熱により粉体塗料を引き寄せ溶融密着させてペースト状の塗膜を形成する工程と、ペースト状の塗膜を所要温度に再加熱することにより塗膜の焼付けを行う工程と、冷却工程を経て、セメント系プレキャスト部材の表面を静電粉体塗装することを特徴としている。
【0012】
詳しくは、請求項2に記載の通り、セメント系プレキャスト部材の表面を電熱ヒーターで加熱することにより、表層部だけを160〜190℃に予熱する工程と、この予熱されたセメント系プレキャスト部材の表面に静電粉体方式の塗装ガンにより粉体塗料を吹き付け、セメント系プレキャスト部材自身が保持する熱により粉体塗料を引き寄せ溶融密着させてペースト状の塗膜を形成する工程と、ペースト状の塗膜を電熱ヒーターで170〜185℃に再加熱することにより塗膜の焼付けを行う工程と、冷却工程を経て、セメント系プレキャスト部材の表面を静電粉体塗装することを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のセメント系プレキャスト部材の塗装方法であって、静電粉体方式の塗装ガンにより粉体塗料を吹き付け、セメント系プレキャスト部材自身が保持する熱により粉体塗料を引き寄せ溶融密着させてペースト状の塗膜を形成する工程が複数回繰り返されることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載のセメント系プレキャスト部材の塗装方法であって、予熱工程の前に、セメント系プレキャスト部材の表面に熱風を吹き付けて表面のゴミやホコリを除去すると同時に表面温度を上昇させる前処理工程を有することを特徴としている。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載のセメント系プレキャスト部材の塗装方法であって、冷却工程では、自然冷却にて表面温度を低下させた後、冷風で強制冷却することを特徴としている。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れかに記載の方法によって塗装されたセメント系プレキャスト部材を特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、セメント系プレキャスト部材の表面に、当該セメント系プレキャスト部材の物性を損なうことなく、ピンホールやクレーター状凹凸といった欠陥のない塗膜を形成できる。即ち、所要温度に予熱されたセメント系プレキャスト部材の表面に、静電粉体方式の塗装ガンにより粉体塗料のみを帯電させた状態で吹き付け、セメント系プレキャスト部材自身が保持する熱により粉体塗料を引き寄せ溶融密着させてペースト状の塗膜を形成するので、塗着効率の低下、ピンホール、クレーター状凹凸の発生といった欠陥が生じない。
【0018】
殊に、セメント系プレキャスト部材の表層部だけを所要温度に予熱するので、表層部ではセメント系プレキャスト部材の含有水分をゼロ近くまで少なくして、水分の蒸発による塗膜の局部的な押し上げ(気泡)を防止できると共に、気泡の破裂によるクレーター状凹凸の発生を防止でき、それでいて、セメント系プレキャスト部材の肉厚内部や裏面側がさほど高温にならないので、セメント系プレキャスト部材の物性が損なわれず、セメント系プレキャスト部材としての強度を確保できる。
【0019】
請求項2に記載の発明では、セメント系プレキャスト部材の表面を電熱ヒーターで加熱するので、電熱ヒーターからの輻射熱が熱伝導率の低いセメント系プレキャスト部材で遮られて、表層部だけを160〜190℃に予熱することができ、セメント系プレキャスト部材の裏面側では素手で触れることができる程度の温度までしか上昇しないように制御できる。
【0020】
そして、セメント系プレキャスト部材の表面に吹き付けられた粉体塗料は、セメント系プレキャスト部材自身の熱で溶融し、ペースト状となって、セメント系プレキャスト部材表層部に存在する微細な気泡や凹部に浸透し、密着することになる。
【0021】
粉体塗料は一般に140℃程度の温度でも溶融するが、セメント系プレキャスト部材表面の予熱温度が160℃以下であると、セメント系プレキャスト部材の表層部の水分が抜け切らないので、水分の蒸発により、塗膜に気泡ができ、これがクレーター状凹凸の発生原因となる。セメント系プレキャスト部材表面の予熱温度が190℃以上であると、これに接した塗料が焼け焦げ、塗膜を形成できない。
【0022】
また、160〜190℃に予熱されたセメント系プレキャスト部材の熱で粉体塗料を溶融密着させてペースト状の塗膜を形成しただけでは、セメント系プレキャスト部材の表面と接する塗膜の最下層が焼付けられた状態まで進行しても、塗膜の表層部はペースト状である。たとえ、表層部に焼付けられた状態まで進行する領域があっても、ペースト状の領域と混在することになる。
【0023】
この点、請求項2に記載の発明では、ペースト状の塗膜を電熱ヒーターで170〜185℃に再加熱することにより、塗膜の表層部まで焼付けを行うことができ、均一な塗膜形成が可能である。この工程において、再加熱温度が170℃以下であると、所謂「焼き甘」の状態となり、塗膜の強度が不足するので、ひび割れ、剥離の原因となる。また、焼き付け用の再加熱はセメント系プレキャスト部材ではなく、ペースト状の塗膜を直接の対象として行われるから、再加熱温度が185℃以上であると、塗料が焼け焦げ、塗膜を形成できない。
【0024】
請求項3に記載の発明によれば、静電粉体方式の塗装ガンにより粉体塗料を吹き付け、セメント系プレキャスト部材自身が保持する熱により粉体塗料を引き寄せ溶融密着させてペースト状の塗膜を形成する工程が複数回繰り返されるので、複数層の塗膜を形成できる。即ち、一層目の粉体塗料がセメント系プレキャスト部材の熱で溶融密着した状態で、二層目の粉体塗料を吹き付けると、この粉体塗料が一層目のペースト状の塗膜に溶け込み、一層目の塗膜と強固に結合した二層目の塗膜を形成することが出来る。
【0025】
従って、例えば、一層目の塗膜で下地を形成し、二層目の塗膜でメタリック調やその他の色に仕上げたり、更に、その上に、三層目の透明な保護塗膜を形成して、耐候性を高めたりすることが可能である。
【0026】
請求項4に記載の発明によれば、前処理工程として、セメント系プレキャスト部材の表面に熱風を吹き付けて表面のゴミやホコリを除去するので、セメント系プレキャスト部材の表面温度を予め適度に上昇させておくことができ、後続する予熱工程において、セメント系プレキャスト部材の表層部を所定温度にまで速やかに上昇させることができ、塗装処理の迅速化を図り得る。
【0027】
請求項5に記載の発明によれば、冷却工程では、自然冷却にて表面温度を低下させた後、冷風で強制冷却するので、急激な温度低下による塗膜への悪影響を回避しつつ塗装処理の迅速化を図り得る。
【0028】
請求項6に記載の発明によれば、表面がピンホール、クレーター状凹凸といった欠陥のない塗膜で覆われた頑丈なセメント系プレキャスト部材を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るセメント系プレキャスト部材を例示する斜視図である。
【図2】セメント系プレキャスト部材の塗装方法の説明図である。
【図3】要部の拡大縦断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態を示す塗装方法の説明図である。
【図5】要部の拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係るセメント系プレキャスト部材1の一例を示す。セメント系プレキャスト部材1としては、押出成形セメント板、軽量気泡コンクリート板(ALC板)、無筋のプレキャストコンクリート板、鉄筋で補強されたプレキャストコンクリート板、中空孔を持ちPC鋼線によってプレストレストを加えたプレキャストコンクリート板などの何れであってもよいが、この実施形態においては、セメント系プレキャスト部材1として押出成形セメント板が採用されている。そして、セメント系プレキャスト部材1の表面には、静電粉体塗装による塗膜2が形成されている。
【0031】
セメント系プレキャスト部材1の表面の静電粉体塗装は、図2に示すように、既知の製造工程を経て予め製造された塗装されていないセメント系プレキャスト部材1をローラコンベア3で連続的又は断続的に水平方向へ移送しつつ行われる。そして、静電粉体塗装は、図2及び図3の(A)に示す前処理工程、図2及び図3の(B)に示す予熱工程、図2及び図3の(C)、(D)に示す粉体塗料4の吹付けからペースト状の塗膜2を形成するまでの工程、図2及び図3の(E)に示す再加熱による塗膜2の焼付け工程、図2及び図3の(F)に示す冷却工程を、この順に経て行われる。
【0032】
前処理工程では、セメント系プレキャスト部材1の表面に熱風5を吹き付けて表面のゴミ、ホコリ等6を除去すると同時に表面温度を適当な範囲(例えば、40〜100℃)に上昇させる。このように表面のゴミ、ホコリ等6の除去に熱風を用いることでセメント系プレキャスト部材1の表面温度を予め適度に上昇させておくことができ、後続する予熱工程において、セメント系プレキャスト部材1の表層部を所定温度にまで速やかに上昇させることができ、塗装処理のスピードアップを図り得る。
【0033】
予熱工程では、セメント系プレキャスト部材1の移送径路の上方に設けられた複数の電熱ヒーター7aでセメント系プレキャスト部材1の表面を加熱することにより、表層部だけを160〜190℃に予熱する。これにより、セメント系プレキャスト部材1の表面部では含有水分がゼロ近くまで低下するが、電熱ヒーター7aからの輻射熱が熱伝導率の低いセメント系プレキャスト部材1で遮られるので、セメント系プレキャスト部材1の肉厚内部や裏面側はさほど高温にならず、セメント系プレキャスト部材1の物性が変化しない。因みに、セメント系プレキャスト部材1の板厚にもよるが、セメント系プレキャスト部材1の裏面側は素手で触れることができる程度の温度までしか上昇しない。
【0034】
そして、次の工程では、図2の(C)、図3の(C)に示すように、所定の表面温度(160〜190℃)に予熱されたセメント系プレキャスト部材1の表面に静電粉体方式の塗装ガン8により粉体塗料3を吹き付け、図2の(D)、図3の(D)に示すように、セメント系プレキャスト部材1自身が保持する熱により粉体塗料4を引き寄せ溶融密着させてペースト状の塗膜2を形成する。即ち、粉体塗料4はセメント系プレキャスト部材1に蓄えられた熱によって溶融し、ペースト状となって自重によりセメント系プレキャスト部材1表面に平坦に広がる。そして、セメント系プレキャスト部材1表層部に存在する微細な気泡や凹部に浸透し、密着して、ペースト状の塗膜2を形成することになる。粉体塗料4としては、フッ素、超高耐候ポリエステル、高耐候ポリエステル、ポリエステル、エポキシポリエステル等が用いられる。
【0035】
再加熱による塗膜2の焼付け工程では、セメント系プレキャスト部材1の移送径路の上方に設けられた複数の電熱ヒーター7bでペースト状の塗膜2を、170〜185℃に、再加熱することにより塗膜2の焼付けを行う。再加熱の時間は、粉体塗料4の種類、目的とする塗膜厚に応じて調整する。セメント系プレキャスト部材1自身が保持する熱で粉体塗料4を引き寄せ溶融密着させてペースト状の塗膜2を形成しただけでは、セメント系プレキャスト部材1の表面と接する塗膜2の最下層が焼付けられた状態まで進行しても、塗膜2の表層部はペースト状であり、たとえ、表層部に焼付けられた状態まで進行する領域があっても、ペースト状の領域と混在することになる。この状態において、ペースト状の塗膜2を直接、電熱ヒーター7bで直接170〜185℃に再加熱することにより、塗膜2の表層部までむらなく焼付けを行うことができ、全面にわたって均一な硬質の塗膜2が形成されることになる。
【0036】
冷却工程では、室温の空気9aで自然冷却して表面温度を低下させた後、冷風9bで強制冷却する。従って、急激な温度低下による塗膜2への悪影響を回避しつつ塗装処理を迅速化することができる。
【0037】
図4、図5は、本発明の他の実施形態を示す。この実施形態は、図4の(B)に示す予熱工程と図4の(G)に示す再加熱による塗膜2の焼付け工程との間で、静電粉体方式の塗装ガン8により粉体塗料4を吹き付け、セメント系プレキャスト部材1自身が保持する熱により粉体塗料4を引き寄せ溶融密着させてペースト状の塗膜2を形成する工程を、図4の(C)〜(F)に示すように、複数回繰り返す点に特徴がある。
【0038】
この構成によれば、静電粉体方式の塗装ガン8により粉体塗料4を吹き付け、セメント系プレキャスト部材1自身が保持する熱により粉体塗料4を引き寄せ溶融密着させてペースト状の塗膜2を形成する工程が複数回繰り返されるので、複数層の塗膜2を形成できる。即ち、図4の(E)、図5の(A)、(B)に示すように、一層目の粉体塗料4がセメント系プレキャスト部材1の熱で溶融密着した状態で、二層目の粉体塗料4を吹き付けると、この粉体塗料4が一層目のペースト状の塗膜2に溶け込み、図4の(F)に示すように、一層目の塗膜2と強固に結合した二層目の塗膜2を形成することが出来る。尚、図5の(C)、(D)、(E)に示す2aは、一層目の塗膜2と二層目の塗膜2とが溶融密着した部分である。
【0039】
従って、例えば、一層目の塗膜2で下地を形成し、二層目の塗膜2でメタリック調やその他の色に仕上げたり、更に、その上に、三層目の透明な保護用の塗膜を形成して、耐候性を高めたりすることが可能である。
【0040】
図4の(A)に示す前処理工程、図4の(B)に示す予熱工程、図4の(G)に示す再加熱による塗膜2の焼付け工程、図4の(H)に示す冷却工程は、先に述べた実施形態と実質的に同じであるため、同一構成部材に同一符号を付し、説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の静電粉体塗装されたセメント系プレキャスト部材1は、鉄骨造の多層建築物、工場建屋、戸建住宅等の外壁に適用されることが多いが、内装仕上げ壁、間仕切り壁、床板等にも利用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 セメント系プレキャスト部材
2 塗膜
3 ローラコンベア
4 粉体塗料
5 熱風
6 ゴミ、ホコリ等
7a 電熱ヒーター
7b 電熱ヒーター
8 静電粉体方式の塗装ガン
9a 室温の空気
9b 冷風


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント系プレキャスト部材の表層部だけを所要温度に予熱する工程と、この予熱されたセメント系プレキャスト部材の表面に静電粉体方式の塗装ガンにより粉体塗料を吹き付け、セメント系プレキャスト部材自身が保持する熱により粉体塗料を引き寄せ溶融密着させてペースト状の塗膜を形成する工程と、ペースト状の塗膜を所要温度に再加熱することにより塗膜の焼付けを行う工程と、冷却工程を経て、セメント系プレキャスト部材の表面を静電粉体塗装することを特徴とするセメント系プレキャスト部材の塗装方法。
【請求項2】
セメント系プレキャスト部材の表面を電熱ヒーターで加熱することにより、表層部だけを160〜190℃に予熱する工程と、この予熱されたセメント系プレキャスト部材の表面に静電粉体方式の塗装ガンにより粉体塗料を吹き付け、セメント系プレキャスト部材自身が保持する熱により粉体塗料を引き寄せ溶融密着させてペースト状の塗膜を形成する工程と、ペースト状の塗膜を電熱ヒーターで170〜185℃に再加熱することにより塗膜の焼付けを行う工程と、冷却工程を経て、セメント系プレキャスト部材の表面を静電粉体塗装することを特徴とするセメント系プレキャスト部材の塗装方法。
【請求項3】
静電粉体方式の塗装ガンにより粉体塗料を吹き付け、セメント系プレキャスト部材自身が保持する熱により粉体塗料を引き寄せ溶融密着させてペースト状の塗膜を形成する工程が複数回繰り返されることを特徴とする請求項1又は2に記載のセメント系プレキャスト部材の塗装方法。
【請求項4】
予熱工程の前に、セメント系プレキャスト部材の表面に熱風を吹き付けて表面のゴミやホコリを除去すると同時に表面温度を上昇させる前処理工程を有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のセメント系プレキャスト部材の塗装方法。
【請求項5】
冷却工程では、自然冷却にて表面温度を低下させた後、冷風で強制冷却することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のセメント系プレキャスト部材の塗装方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の方法によって塗装されたセメント系プレキャスト部材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−247148(P2010−247148A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57199(P2010−57199)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(503312848)株式会社明希 (2)
【出願人】(599175200)株式会社エム・ケイ・ケイ (2)
【Fターム(参考)】