説明

セメント系組成物の製造方法、並びに、セメント系組成物

【課題】 石炭灰や再生骨材をセメント系組成物の原料として有効利用可能なセメント系組成物の製造方法と、コンクリートの提供を目的とする。
【解決手段】 石炭灰103は、生コン工場102等において混水攪拌され、スラリー化される。石炭灰103に含まれている未燃カーボンは、界面活性剤の添加により発生した泡に捕捉され、回収される。また、石炭灰103中に含まれている鉄分についても、安定化処理石炭灰104(石炭灰スラリー)から除去される。石炭灰コンクリート111は、安定化処理石炭灰104とされた石炭灰103を混和材107やセメント109、骨材110と共にミキサー108で攪拌することにより製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント系組成物の製造方法、並びに、当該製造方法によって製造されたセメント系組成物を用いて形成されたセメント系組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビルや工場等のコンクリート構造物の解体に伴い発生するおびただしい量のコンクリート廃材の処理についても社会問題となっている。コンクリート廃材は、粗骨材や細骨材といった骨材成分を多く含んでいる。そのため、環境問題の観点からすると、これらの骨材成分を回収し、再利用することが望ましい。
【0003】
上記したコンクリート廃材は、ただ単に破砕処理を行うだけでは、これに含まれている粗骨材や細骨材の表面にモルタル成分が付着した状態である。そのため、コンクリート廃材を破砕しただけの再生骨材は、吸水率が高く、骨材として再利用するには品質が極めて悪いものである。そこで、本発明者らは、下記特許文献1に開示されているようにコンクリート廃材の破砕物を上下方向への水流が発生している水中に投入し、比重の差に基づいてモルタル成分が付着していない骨材成分を選択的に取り出す方策を見いだし、実用化している。
【0004】
【特許文献1】特開平10−25140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、従来より、コンクリート等のセメント系組成物は、いわゆるアルカリ骨材反応を起こして膨張し、ひび割れ等が起こることがあることが確認されている。アルカリ骨材反応は、骨材中に含まれているシリカ鉱物や火山ガラス等の骨材構成物質と、セメントなどに含まれるアルカリ分とが長期にわたって化学反応を起こす現象であり、アルカリ骨材反応の有無や反応速度は、骨材の特性に大きく依存しているものと考えられる。
【0006】
アルカリ骨材反応は、当該反応を示す反応性物質の割合を変化させると反応速度が変化する。アルカリ骨材反応の反応速度の変化は、前記反応性物質の量と共に増加するのではなく、反応性物質がある特定の割合で存在する場合に最大になる(ペシマム現象)。アルカリ骨材反応の反応速度が最大となる場合の反応性物質の割合は、骨材中に含まれている反応性物質の種類や組成比等によって異なる。そのため、再生骨材のように、建築現場等において発生する廃材から回収されたものを骨材として使用する場合は、アルカリ骨材反応の原因の一翼を担う反応性物質の種類等を特定しにくいものと想定される。そこで、再生骨材の使用をより一層促進するためには、再生骨材中に含まれている反応性物質の種類や組成比等によらずアルカリ骨材反応を抑制可能なセメント系組成物の製造方法の提供が求められている。
【0007】
そこで、本発明は、再生骨材を使用しつつ、アルカリ骨材反応を最小限に抑制可能なセメント系組成物の製造方法と、当該製造方法によって製造されたセメント系組成物を用いたコンクリートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、上記した課題を解決すべく提供される請求項1に記載の発明は、石炭灰、セメント、水及び骨材とモルタルを含む原料を調合したセメント系組成物の製造方法であって、前記骨材の一部又は全部として、コンクリートおよび/又はアスファルトの廃材を破砕した破砕物を磨鉱してモルタル成分及び/又はアスファルト成分を剥離した再生骨材を用い、当該再生骨材と他の原料とを混合することを特徴とするセメント系組成物の製造方法である。
【0009】
本発明の製造方法によれば、再生骨材を使用したセメント系組成物の流動性を向上することができる。そのため、本発明の製造方法によれば、セメント系組成物のワーカビリティ、コンシステンシー、プラスティシティー、フィニッシャビリティ等のセメント系組成物の未硬化時の性状(フレッシュ性状)を改善することができる。
【0010】
また、本発明の製造方法によれば、再生骨材に含まれているアルカリ骨材反応の原因となる反応性物質の量や種類等によらず、アルカリ骨材反応が起こりにくいセメント系組成物を提供することができる。
【0011】
また、石炭灰に含まれる可溶性シリカは、セメントの水和反応の際に発生する可溶性水酸化カルシウムとポゾラン反応して珪酸カルシウムを生成し、コンクリートの硬化組織を緻密化する性質を有する。そのため、本発明のセメント系組成物は、石炭灰を加えない場合に比べて長期強度の増大や、水密性の向上、化学薬品に対する抵抗性の向上、更には、水和熱の低減など、硬化時又は硬化後のセメント系組成物の性状を改善することができる。
【0012】
ここで、本発明者らがさらに研究を重ねたところ、石炭火力発電所等において副産物として得られるものの多くは未燃カーボンが含まれていることが多いことが判明した。未燃カーボンは、セメント系組成物の原料として化学混和剤(AE剤、減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤)を吸着する性質を有する。そのため、コンクリートの製造時に原料の一部に石炭灰を添加すると、石炭灰中に残存している未燃カーボンがAE剤等の化学混和剤を吸着してしまう。従って、石炭灰を原料の一部として添加すると、例えば、石炭灰を含まないコンクリートと同一量のAE剤(空気連行剤)を調合した場合であってもコンクリートの目標空気量を所望の如く達成し難いといった不具合が発生する可能性があることが判明した。
【0013】
また、セメント系組成物の原料として石炭灰を混入させる場合、石炭灰の種類や組成によっては、初期の流動性を確保すべく、減水剤又は高性能AE減水剤等の化学混和剤を大量に添加しなければならない場合があることが判明した。このような事態が発生すると、化学混和剤の添加量の増加に伴うセメント系組成物の製造コスト増大や、凝結時間の遅延、コンクリートの施工性、強度低下等の問題が発生することが懸念される。
【0014】
さらに、石炭灰は、酸化カルシウム(CaO)及び二酸化硫黄(SO3) 等の膨張成分を比較的多量に含有している。そのため、石炭灰を混合したコンクリートにおいては、膨張ひび割れに起因するコンクリート組織の部分破壊が、硬化時又は硬化後に発生する懸念がある。
【0015】
一方、石炭灰は、石炭火力発電所等で大量に発生し、その大部分が廃棄されている。そのため、石炭灰をセメント系組成物の原料として有効利用するためには、上記したような石炭灰の添加に伴う不具合を解消しつつ、石炭灰をセメント系組成物の原料として容易に有効利用可能なセメント系組成物の製造方法を提供する必要がある。
【0016】
そこで、かかる知見に基づいて提供される請求項2に記載の発明は、石炭灰、セメント、水及び骨材とモルタルを含む原料を調合したセメント系組成物の製造方法であって、
前記骨材の一部又は全部として、コンクリートおよび/又はアスファルトの廃材を破砕した破砕物を磨鉱してモルタル成分及び/又はアスファルト成分を剥離した再生骨材を用い、前記石炭灰を、所定時間、混水攪拌してスラリー化した石炭灰スラリーの状態で他の原料と調合することを特徴とするセメント系組成物の製造方法である。
【0017】
石炭灰スラリーを調合したセメント系組成物は、乾燥状態の石炭灰や、単に加水後静置した石炭灰を調合したセメント系組成物に比べて、著しく高い流動性を示す。そのため、本発明のセメント系組成物の製造方法によれば、化学混和剤(AE剤、減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤)の使用量を増大することなく、コンクリートの所望の流動性を達成し得る。また、本発明に係る製造方法によれば、乾燥状態の石炭灰をセメント、水及び骨材と混合する従来の製造方法における問題点、即ち、石炭灰を調合したセメント系組成物の膨張性及び強度低下の問題を解消できる。
【0018】
さらに、本発明のセメント系組成物の製造方法によれば、仮に再生骨材中にアルカリ骨材反応の原因となる物質が含まれていたとしても、アルカリ骨材反応が起こりにくいセメント系組成物を提供できる。従って、本発明の製造方法によれば、セメント系組成物の原料として再生骨材や石炭灰の利用を促進することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、石炭灰、セメント、水及び骨材とモルタルを含む原料を調合したセメント系組成物の製造方法であって、前記骨材の一部又は全部として、コンクリートおよび/又はアスファルトの廃材を破砕した破砕物を磨鉱してモルタル成分及び/又はアスファルト成分を剥離した再生骨材を用い、界面活性剤を含み当該界面活性剤を起泡させた液中において石炭灰に含まれる未燃カーボンの一部又は全部を除去する工程を経た石炭灰と他の原料とを調合することを特徴とするセメント系組成物の製造方法である。
【0020】
かかる製造方法によれば、石炭灰中に含まれている未燃成分を分離することができ、アルカリ骨材反応の原因となり得る化学混和剤の使用量を最小限に抑制できる。また、本発明の製造方法によれば、再生骨材にアルカリ骨材反応の原因となりうる物質が含まれていたとしてもアルカリ骨材反応が起こりにくいセメント系組成物を提供できる。
【0021】
本発明によれば、特別な処理や試験を行うことなく、再生骨材を骨材の一部又は全部として使用することができ、再生骨材の利用を促進し、資源の有効利用に資することができる。
【0022】
また、本発明の製造方法によれば、化学混和剤の使用量を抑制しつつ、コンクリートの所望の流動性を確保できる。また、本発明に係る製造方法によれば、石炭灰を調合したセメント系組成物の膨張性及び強度低下の問題を解消できる。
【0023】
請求項4に記載の発明は、石炭灰、セメント、水及び骨材とモルタルを含む原料を調合したセメント系組成物の製造方法であって、前記骨材の一部又は全部が、コンクリートおよび/又はアスファルトの廃材を破砕した破砕物を磨鉱してモルタル成分及び/又はアスファルト成分を剥離した再生骨材を用い、前記石炭灰を、所定時間、混水攪拌してスラリー化したものに空気を吹き込んでpH7前後に中和された石炭灰スラリーの状態で他の原料と調合することを有することを特徴とするセメント系組成物の製造方法である。
【0024】
本発明のセメント系組成物の製造方法では、石炭灰スラリーに空気を吹き込むことにより、空気中の二酸化炭素を用いて石炭灰中に含まれている高アルカリ成分を中和することができる。そのため、本発明のセメント系組成物の製造方法によれば、セメント系組成物の硬化中あるいは硬化後における膨張ひび割れが起こりにくいセメント系組成物を提供できる。
【0025】
また、本発明のセメント系組成物の製造方法では、石炭灰中に含まれているアルカリ分の中和に、空気中に含まれている二酸化炭素を用いる。そのため、本発明の製造方法によれば、容易かつ安価に石炭灰中に含まれるアルカリ分を中和することができる。
【0026】
本発明の製造方法によれば、化学混和剤の使用量を増大することなく、コンクリートの所望の流動性を確保できる。また、本発明の製造方法によれば、セメント系組成物の膨張を抑制し、石炭灰の添加に伴う強度低下を抑制できる。さらに、本発明の製造方法によれば、従来は産業廃棄物として処理されることが多かった石炭灰やコンクリート、アスファルトといった廃材を有効利用できる。
【0027】
本発明のセメント系組成物の製造方法によれば、いかなる再生骨材が使用されてもアルカリ骨材反応の起こりにくいセメント系組成物を提供できる。
【0028】
請求項5に記載の発明は、石炭灰と、セメントと、水と、粗骨材と細骨材とを所定の割合で調合した骨材と、モルタルを含む原料を調合したセメント系組成物の製造方法であって、前記骨材の一部又は全部として、コンクリートおよび/又はアスファルトの廃材を破砕した破砕物を磨鉱してモルタル成分及び/又はアスファルト成分を剥離した再生骨材を用い、前記石炭灰を、単位セメント量に対して、外割調合により調合し、前記細骨材を、石炭灰量に相当する質量だけ減量して調合することを特徴とすることをセメント系組成物の製造方法である。
【0029】
上記したように、セメント及び水に対して石炭灰を外割で混合する外割調合によりセメント系組成物の製造を行うことにより、セメント系組成物の硬化後における目標圧縮強度及び耐久性等を確保することができる。また、上記した製造方法によれば、石炭灰の混合による組織の緻密化が起こり、若材齢から強度及び耐久性を向上させることができる。さらに、本発明によれば、再生骨材の組成等によらずアルカリ骨材反応の起こりにくいセメント系組成物の製造方法を提供できる。
【0030】
本発明のセメント系組成物の製造方法では、従来は産業廃棄物として廃棄されることの多かった石炭灰やコンクリートやアスファルトの廃材を有効利用できる。
【0031】
請求項6に記載の発明は、石炭灰、セメント、水及び骨材とモルタルを含む原料を調合したセメント系組成物の製造方法であって、前記骨材の一部又は全部として、コンクリートおよび/又はアスファルトの廃材を破砕した破砕物を磨鉱してモルタル成分及び/又はアスファルト成分を剥離した再生骨材を用い、石炭灰及び骨材の量、並びに、単位セメント量及び水セメント比を、セメント系組成物の硬化時における目標強度に基づいて調整することにより、セメント系組成物の未硬化時の性状、強度及び中性化速度のいずれか一つ又は複数を調整可能であることを特徴とするセメント系組成物の製造方法である。
【0032】
かかる製造方法によれば、セメント系組成物の未硬化時の性状や強度、中性化速度を任意に調整可能なセメント系組成物を提供できる。
【0033】
また、本発明のセメント系組成物の製造方法は、産業廃棄物として廃棄されることの多かった石炭灰やコンクリートやアスファルトの廃材から作られる再生骨材を使用するものであるため、資源の有効利用に資することができる。
【0034】
上記請求項1乃至6のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法において、石炭灰は、24時間以上混水攪拌されることが望ましい(請求項7)。
【0035】
また、上記請求項1乃至6のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法において、石炭灰は、72時間以上混水攪拌されることがより一層望ましい(請求項8)。
【0036】
石炭灰を24時間以上混水攪拌して得られる石炭灰スラリーは、スラリーの分散性又は安定性がよく、乾燥状態の石炭灰や、単に加水後静置した石炭灰を調合したセメント系組成物に比べて、著しく高い流動性を示す。また、本発明のように長時間にわたって混水攪拌して得られる石炭灰スラリーは、混水攪拌の完了後、静置しておいても、セメント系組成物の流動性を高レベルに維持できる。
【0037】
さらに、本発明のように24時間以上の長時間にわたって混水攪拌した石炭灰スラリーを用いることにより、乾燥状態の石炭灰を用いた場合のようにセメント系組成物の硬化時に膨張したり圧縮強度が低下するといったような不具合を解消することができる。これは、石炭灰の混水攪拌により、石炭灰中に含まれている遊離石灰(CaO)が概ね消化し尽くしたことに起因すると考えられる。
【0038】
また、上記請求項1乃至8のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法において、石炭灰は、混水攪拌を連続的に実行されることによりスラリー化されることが望ましい(請求項9)。
【0039】
かかる構成によれば、分散性や安定性に優れた石炭灰スラリーを用いてセメント系組成物を製造できる。従って、本発明の製造方法によれば、流動性が高く、硬化時や硬化後に膨張や圧縮強度の低下等の不具合が起こりにくいセメント系組成物を提供できる。
【0040】
また、上記請求項1乃至9のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法において、石炭灰は、混水攪拌により石炭灰スラリーとされ、半日以上静置された後、セメント、水及び骨材と混合されることが望ましい(請求項10)。
【0041】
請求項1乃至10のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法において、石炭灰の混水攪拌時間を制御することにより、フレッシュ性状を制御することも可能である(請求項11)。
【0042】
ここで、本明細書において、「フレッシュ性状」とは、ワーカビリティ、コンシステンシー、プラスティシティー、フィニッシャビリティ等に代表されるものであり、セメント系組成物が未硬化状態である時の物性を指し示すものである。
【0043】
本発明のセメント系組成物の製造方法によれば、混水攪拌時間を制御することによりフレッシュ性状を制御でき、化学混和材の使用量を最小限に抑制できる。そのため、本発明の製造方法によれば、容易かつ安価に品質が高く安定したセメント系組成物を提供できる。
【0044】
また、請求項1乃至11のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法において、石炭灰の混水攪拌時間を制御することにより、硬化時又は硬化後におけるセメント系組成物の物性を制御することも可能である(請求項12)。
【0045】
かかる製造方法によれば、品質が高く安定したセメント系組成物を容易かつ安価に提供できる。
【0046】
請求項13に記載の発明は、石炭灰、セメント、水及びモルタルを含む原料の流動性が最適となる調合を、原料の間隙比より求めることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法である。
【0047】
ここで、本明細書において、「間隙比」とは、粒子群を容器に充填した際の空隙量を全粒子群体積で除した値であり、空隙量の大小を表す指標である。
【0048】
本発明のセメント系組成物の製造方法では、理論上又は実測した間隙比に基づいてセメント系組成物の流動性(フロー値等)が最適となる調合を理論的かつ定量的に決定することができる。そのため、本発明のセメント系組成物の製造方法によれば、品質が安定したセメント系組成物を提供することができる。
【0049】
また、本発明のセメント系組成物の製造方法によれば、粒度分布が相違する石炭灰を比較的容易に調合し得る。そのため、本発明によれば、従来技術において利用可能性が比較的低いとされてきた石炭灰の粗粉を有効に活用することが可能となる。
【0050】
請求項14に記載の発明は、調合すべき原料の固有の間隙比より理論最密間隙比及び理論最密組成を求め、流動性が最適となる調合を理論最密間隙比及び理論最密組成に基づいて決定することを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法である。
【0051】
ここで、本明細書において、「理論最密間隙比」及び「理論最密組成」とは、セメント系組成物の各構成材料固有の間隙比に基づいて理論的に求められるものである。また、「理論最密組成」および「理論最密間隙比」は、最密充填理論において、理論上の間隙比の最小値を与える組成および間隙比を指す。
【0052】
本発明のセメント系組成物の製造方法によれば、流動性に優れ、化学混和剤添加量を最小限に抑制できる。
【0053】
請求項15に記載の発明は、石炭灰が、粗粉と粗粉よりも微細な細粉とを含むものであり、粗粉及び細粉の混合割合を調整することにより、石炭灰、セメント、水及び骨材とモルタルを含むセメント系組成物の流動性を調節することを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法である。
【0054】
かかる製造方法によれば、従来技術において利用可能性が比較的低いとされてきた石炭灰の粗粉を有効に活用することが可能となる。
【0055】
上記請求項1乃至15のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法は、コンクリートの圧縮強度が、モルタル又はセメント単味の場合に得られる圧縮強度に対して、石炭灰混合による強度増大値を加算することにより求められ、当該強度増大値が、単位石炭灰量及び材齢の関数として定義されるものであってもよい(請求項16)。
【0056】
また、上記請求項1乃至16のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法は、調合後のセメント組成物の空隙量を因子として、セメント系組成物を用いて形成されるコンクリートの圧縮強度を設定可能であってもよい(請求項17)。
【0057】
かかる製造方法によれば、コンクリートの圧縮強度を的確に把握でき、所望の圧縮強度を発現するようにセメント系組成物の原料の調合比を調整することができる。
【0058】
ここで、本発明者らが鋭意研究した結果、上記した製造方法によって製造されるセメント系組成物を用いて形成されるコンクリートの圧縮強度は、空隙径が50nm以上の空隙の量と高い相関関係があることを見いだした。
【0059】
そこで、かかる知見に基づいて提供される請求項18に記載の発明は、空隙径の50nm以上の空隙量を求め、当該空隙量の増大に相応して、セメント系組成物を用いて形成されるセメント系組成物の圧縮強度を設定可能であることを特徴とする請求項1乃至17のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法である。
【0060】
かかる製造方法によれば、コンクリートの圧縮強度をより一層的確に把握でき、コンクリートの圧縮強度を調整することができる。
【0061】
請求項1乃至18のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法において、単位石炭灰量の増大に相応して、セメント系組成物を用いて形成されるコンクリートが中性化する速度の指標となる中性化速度係数を低減することも可能である(請求項19)。
【0062】
かかる製造方法によれば、コンクリートが中性化する速度を的確に把握でき、コンクリートの中性化の抑制に適した調合比でセメント系組成物の原料を調合することができる。
【0063】
請求項20に記載の発明は、再生骨材が、コンクリートおよび/又はアスファルトの廃材を破砕した破砕物を磨鉱した磨鉱物を水中に浸し、当該水に下から上に向かう間欠的な水流を発生させることにより下層に集まる砂利・砕石層を取り出すことにより用意されることを特徴とする請求項1乃至19のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法である。
【0064】
コンクリートやアスファルトの廃材を破砕しただけの破砕物は、表面にモルタル分やアスファルトが残存しており、骨材として利用するのに十分な品質を有していない可能性が高い。また、コンクリートやアスファルトの破砕物を磨鉱してモルタル分やアスファルト分を剥離した磨鉱物には、骨材成分(砂利・砕石)に加えて、剥離されたモルタル分やアスファルト分が混入しており、骨材として利用するには不十分である。そのため、コンクリートやアスファルトの廃材から回収される回収物を骨材として利用するためには、モルタル分やアスファルト分等の剥離物や、コンクリート廃材中に含まれている夾雑物を除去する必要がある。しかし、骨材成分と、モルタル分やアスファルト分等とを分離するのは困難であり、特にモルタル分は骨材成分に外見が類似しているため除去が困難である。
【0065】
しかし、本発明では、磨鉱物を下から上に向かう間欠的な水流が発生する水中に浸すことにより、比重の差を利用して骨材成分と、モルタル分やアスファルト分等とを分離し、モルタル分やアスファルト分よりも重く下層側に集まる砂利・砕石層を取り出し、これを再生骨材として利用している。そのため、本発明において使用される再生骨材は、表面にモルタル分やアスファルト分の付着量が少なく、夾雑物等も殆ど含まれていない高品質なものである。
【0066】
本発明のセメント系組成物の製造方法において使用される再生骨材は、上記したように高品質であるため、いわゆるバージンの骨材と同等の条件で使用できる。そのため、本発明によれば、コンクリートやアスファルトの廃材から回収された再生骨材を使用しつつ、高品質なセメント系組成物を提供できる。
【0067】
上記請求項1乃至20のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法では、吸水率が5%以下の再生骨材が使用されることが望ましい(請求項21)。
【0068】
かかる構成によれば、再生骨材をバージンの骨材と同様の条件で使用でき、資源の有効利用に資することができる。
【0069】
一般的に、セメント系組成物は、吸水率が大きいと凍結融解を繰り返すなどすると強度の劣化や中性化が進みやすい傾向にある。本発明の製造方法により得られるセメント系組成物は、骨材の吸水率が5%以下であるため、凍結融解を繰り返すなどしても劣化や中性化が起こりにくい。
【0070】
上記請求項1乃至21のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法において採用される再生骨材は、全重量中におけるモルタル成分の割合が20%以下であることが望ましい(請求項22)。
【0071】
ここで、一般的に、モルタル成分は吸水率が高い。そのため、モルタル成分が多く付着した再生骨材を骨材の一部又は全部に使用したセメント系組成物は、凍結融解を繰り返すなどして強度の劣化や中性化が進みやすい傾向にある。本発明の製造方法により得られるセメント系組成物は、骨材の吸水率が20%以下であるため、凍結融解を繰り返すなどしても劣化や中性化が起こりにくい。
【0072】
また同様に、請求項1乃至22のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法において採用される再生骨材は、全重量中におけるアスファルト成分の割合が、5%以下であることが望ましい(請求項23)。
【0073】
請求項24に記載の発明は、請求項1乃至23のいずれかに記載の製造方法によって製造されたセメント系組成物である。
【0074】
本発明のセメント系組成物は、上記した製造方法で作成されたものであるため、強度が高く、アルカリ骨材反応や中性化に伴う劣化等の不具合が起こりにくい。
【発明の効果】
【0075】
本発明によれば、石炭灰や再生骨材をセメント系組成物の原料として有効利用でき、セメント系組成物の原料に石炭灰を採用することによって起こる諸問題を解決可能なセメント系組成物の製造方法、並びに、当該セメント系組成物を用いたコンクリートを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0076】
続いて、本発明の一実施形態であるセメント系組成物たるコンクリートの製造方法、並びに、当該製造方法によって製造されるコンクリートによって形成されるコンクリートについて説明する。本実施形態のコンクリートの製造方法では、原料として石炭灰および再生骨材が使用される。
【0077】
石炭灰は、石炭火力発電所の微粉炭燃焼ボイラ等から副産物として多量に発生するものである。本実施形態のコンクリートの製造方法では、石炭灰は、24時間(1日)以上、更に好ましくは、72時間(3日)以上の間、連続的に混水攪拌される。24時間(1日)以上の連続混水攪拌により生成した石炭灰スラリーは、安定したスラリー性状を示す。本実施形態の製造方法では、攪拌停止後に半日以上静置した石炭灰スラリーがコンクリートの調合に使用される。
【0078】
さらに具体的には、石炭灰は、水と共に強制練りパン型の混合攪拌機(ミキサー)に投入される。混合攪拌機は、24時間(1日)以上の所定時間、連続的に作動される。これにより、混合攪拌機に投入された石炭灰がスラリー化する。石炭灰のスラリー化の際、コンクリートを構成する他の混和剤や骨材は、混合攪拌機内に添加又は投入されない。すなわち、本実施形態の製造方法では、石炭灰をスラリー化する段階では、石炭灰と水のみが混練され、混和材等の他の原料は一緒に混練されない。また、混合攪拌機に石炭灰と共に投入される混練水には、上水道水、地下水、工業用水等のような一般的に練混ぜ水として使用されるものが採用される。
【0079】
上記したようにして石炭灰と水とが24時間にわたって混練されると、混合攪拌機内に石炭灰が均等に分散した石炭灰スラリーが生成する。このようにしてスラリー化された石炭灰は、そのままコンクリートの原料として使用することもできるが、半日以上の時間にわたって混合攪拌機内等に静置しておくことが望ましい。
【0080】
この様にして製造された石炭灰スラリーは、所定の調合に従って、セメント、水、化学混和剤及び骨材と更に混合され、セメントモルタル又はコンクリートが調合される。ここで添加される化学混和剤には、従来公知のAE剤や減水剤、AE減水剤及び/又は高性能AE減水剤等、所望の化学混和剤を任意に選択して採用することができる。また、ここで添加されるセメントには、普通ポルトランドセメント(JIS R 5210)を好適に使用し得るが、他の種類のセメント、例えば、早強セメント等を使用することも可能である。
【0081】
本実施形態では、骨材として一般的に使用される粗骨材及び細骨材の一部あるいは全部として、いわゆる再生骨材が採用される。ここで使用される再生骨材は、従来公知のものと同様にコンクリートやアスファルトの廃材を破砕した破砕物を磨鉱してモルタル成分やアスファルト成分を剥離したものである。本実施形態で使用される再生骨材は、例えば後述する製造方法によって製造することができるものであり、その吸水率が5%以下であることが望ましい。
【0082】
本実施形態のコンクリートの製造方法において採用される再生骨材は、再生骨材の全重量中におけるモルタル成分の割合が20%以下のものであることが望ましい。再生骨材は、製造時にモルタルを完全除去するのが困難であるが、モルタルの残留量が再生骨材の全重量に対して3%以上20%以下の範囲内となるまでモルタル分が剥離できていれば、好適にコンクリートの製造に好適に使用することができる。また、本実施形態において採用される再生骨材は、全重量中におけるアスファルト成分の割合が、再生骨材の全重量に対して5%以下であることが望ましい。アスファルトを含む廃材から再生骨材を作製する場合についてもアスファルト成分を完全除去するのが困難であるが、アスファルト成分が再生骨材の全重量に対して1%以上5%以下の範囲内となるまでアスファルト成分が除去できていれば、コンクリートの製造に好適に使用することができる。
【0083】
本実施形態のコンクリートの製造方法では、高性能AE減水剤に代表される化学混和剤の添加量あるいは添加率が、従来の調合の1/2以下に調合設計することができる。さらに具体的には、本実施形態の製造方法によれば、例えば化学混和剤の添加量を2kg/m3下回る程度まで減量することが可能である。また、本実施形態の製造方法によれば、例えば化学混和剤の添加量を、重量比で0.5% 以下程度まで減量することができる。
【0084】
続いて、本実施形態において採用される再生骨材の製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施形態のコンクリートの製造方法において原料として採用される再生骨材の製造方法を模式的に示した概念図である。図1に示す再生骨材の製造方法は、大別して前処理フロー、粗骨材回収フロー、細骨材回収フローの3つのフローにより構成されている。前処理フロー、粗骨材回収フローおよび細骨材回収フローは、いずれも複数の工程により構成されている。以下、図面を参照しながら再生骨材の製造方法について順を追って説明する。
【0085】
図1に示す再生骨材の製造方法では、先ず前処理フローの第1段階である破砕工程において建築物の解体現場等において発生したコンクリート廃材の塊(以下、必要に応じてコンクリート塊Bと称す)がトラック等により搬送されてきて、ホッパー1内に投入される。
【0086】
ホッパー1に投入されたコンクリート塊Bは、往復動しているレシプロフィーダ2によって移送され、ジョークラッシャー3(破砕機)に投入される。コンクリート塊Bが投入されると、ジョークラッシャー3は、固定板5と、回転体7の回転に伴い固定板5に対して近接離反する方向に往復動する可動板6とを有する。ジョークラッシャー3は、固定板5と可動板6との間に投入されたコンクリート塊Bを破砕してコンクリート破砕物Vとする。コンクリート塊Bを破砕する破砕工程が完了すると、コンクリート破砕物Vが磨鉱機10に投入され、製造工程が磨鉱工程に移行する。
【0087】
磨鉱工程では、磨鉱機10によってコンクリート破砕物Vが磨鉱される。ここで使用される磨鉱機10は、図2のように中空体状の本体15(攪拌室)内に複数本のロッド棒18(磨鉱処理部材)を配したロッドミル状のものであり、本体15が回転する構成となっている。磨鉱機10は、円筒形の本体15の一端側にコンクリート破砕物Vを投入するための投入口16が設けられており、他方側に排出口17を設けた構成となっている。排出口17には、開口径を変化させるように移動可能な自在調整板20が設けられている。排出口17は、この自在調整板20の固定位置を調整することにより排出する砂利砕石の直径を選択可能にしている。また、排出口17の外側には、金網状の篩21でなるトロンメル式分級機22を設けている。なお、本実施形態では、磨鉱処理部材としてロッド棒18を使用しているが、これを鉄製等の球状態に代えてもよく、また、上記ロッド棒18や球状態等の磨鉱処理部材を使用せずに、砂利砕石分同士を磨鉱させるようにしてもよい。
【0088】
磨鉱機10の投入口16にコンクリート破砕物Vが水と共に投入され、本体15が所定の回転数で回転を開始するとコンクリート破砕物Vの磨鉱が開始される。磨鉱工程では、本体15内でコンクリート破砕物Vとロッド棒18とがぶつかりあって粉砕され、コンクリート破砕物Vの表面に付着しているモルタル分が剥離され磨鉱される。本体15の回転時間が所定時間に達すると、本体15の回転が停止し、排出口17からコンクリート破砕物Vとこれに付着していたモルタル分の混合物が排出され磨鉱工程が完了する。
【0089】
磨鉱工程において磨鉱機10の排出口17から排出されたコンクリート破砕物Vは、振動篩8に供給され、処理工程が分離工程に移行する。分離工程では、コンクリート破砕物Vが振動篩8において直径が30mm以上である砂利砕石分(以下、過大砕石分Uと称す)と、直径が5mm〜30mm程度である大径の砂利砕石分(以下、粗砂利砕石分Sと称す)と、直径が5mmよりも小さい砂礫分Gとに分類される。即ち、粗砂利砕石分Sは、コンクリート破砕物Vのうち粗骨材に相当する大きさに粉砕されたものであり、砂礫分Gは、細骨材に相当する大きさに粉砕されたものである。過大砕石分Uは、ジョークラッシャー3に供給されるコンクリート破砕物Vと同等あるいはこれより僅かに小さい程度であり、コンクリート破砕物Vが磨鉱機10において十分に破砕されずに排出されたものである。そのため、過大砕石分Uは、図1に矢印で示すように磨鉱機10の投入口16に戻され、再度破砕される。
【0090】
また、粗砂利砕石分Sは、粗骨材として利用可能な粗骨材成分を主成分とし、これらの表面に付着するなどしたモルタル分や夾雑物を含むものである。また、砂礫分Gは、細骨材として利用可能な細骨材成分を主成分とするものであり、これらの表面に付着するなどしたモルタル分や夾雑物を含んでいる。コンクリート破砕物Vが振動篩8において粒径に応じて3種類に分離する分離工程が終了すると、処理フローが前処理フローから細骨材回収フローおよび粗骨材回収フローに移行する。
【0091】
処理フローが細骨材回収フローに進行すると、上記した分離工程において振動篩8によって選別された砂礫分Gの混合物(混合破砕物P)が磨鉱機11に投入され、磨鉱される。磨鉱機11は、上記した磨鉱機10と同一の構造である。混合破砕物Pは、磨鉱機11において磨鉱されることにより、モルタル分Mの付着量が少ない再生細骨材Nとなる。磨鉱機11から取り出される再生細骨材Nには、混合破砕物Pから剥離され、微粒化されたモルタル分Mや木屑等の夾雑物が混在している。そのため、磨鉱機11から取り出された再生細骨材Nやモルタル分M等の混合物は、スパイラル分級機25に投入され、再生細骨材N(砂)とモルタル分Mや夾雑物を含む廃棄物とに分離される。モルタルM等の廃棄物は、シックナー26によって水と分離され、廃棄される。
【0092】
一方、処理フローが粗骨材回収フローに進行すると、上記した分離工程において振動篩8によって選別された粗砂利砕石分Sは、図1に示すように比重選別装置30に投入され、処理工程が粗砂利分離工程に進行する。
【0093】
ここで、粗砂利砕石分Sは、磨鉱機10による破砕および磨鉱により表面に付着していたモルタル分Mが除去された再生粗骨材Rを主成分とすると共に、振動篩8において除去しきれなかった幾分の微粉状のモルタル分Mや夾雑物等が混在している。また、粗砂利砕石分Sには、再生粗骨材Rと同様の粒径に固まり、磨鉱機10では破砕しきれなかった粗骨材状のモルタル分Mも含まれている。そこで、これらを選別して再生粗骨材Rを回収すべく、粗砂利砕石分Sは、比重選別装置30に投入される。
【0094】
粗砂利砕石分Sが比重選別装置30に投入されると、処理工程が粗砂利分離工程に移行する。比重選別装置30は、図3に示すように、分離用水が貯留された水槽31を備えている。水槽31には、多数の通孔32を有する網目状のスクリーンプレート33が分離用水に浸されるようにほぼ水平に設置されている。スクリーンプレート33の上方は、粗砂利砕石分Sを分離するための分離室34として機能する。また、スクリーンプレート33の下方は、3つの区画に分割され、第1槽36a、第2槽36b及び第3槽36cが形成されている。各槽の下端部は開口されており、スクリーンプレート33の通孔32から落下する比重の重い骨材を排出可能な構成とされている。
【0095】
第1,2,3槽36a,36b,36cのそれぞれには、下方に向けて開口した気室37a,37b,37cが設けられている。気室37a,37b,37cは、それぞれ独立的に外部から空気を強制的に導入するとともに、この内部にある空気を吸引して排出可能な構成とされている。比重選別装置30は、気室37a,37b,37cへの空気の給排気が所定の周期で繰り返される構成となっている。また、各気室37a,37b,37cにおける空気の給排気のタイミングは、上流側(第1槽36a側)から下流側(第3槽36c側)に向けて徐々にずらされている。そのため、比重選別装置30が作動すると、水槽31内の水位は、気室37a,37b,37cにおける空気の給排気に伴って上下動し、上流側から下流側に向けて水槽31の分離用水が波打つ。
【0096】
水槽31の下流端、即ち第3槽36cよりも下流側には、シューター41が設けられており、シューター41の上端には、分離室34に向けて開口した入口43(取り入れ部)が設けられている。入口43の内部には、モータによって回転するロータリゲート45が設けられている。シューター41の入口43は、スクリーンプレート33の上面から所定の高さにわたって開口されており、その開口上端は、水槽31内の分離用水の水位よりも低い位置となされている。また、シューター41の入口43には、上下方向に移動し、入口43の開度を調整するためのカットゲート46が配設されている。
【0097】
シューター41の入口43の上方には、分離室34内に蓄積された粗砂利砕石分Sのうち、上部側に蓄積された比重の軽いものを排出するための取り出し部47が設けられている。この取り出し部47と入口43とは隔壁48(境界部)により仕切られている。隔壁48は、水槽31からオーバーフローした比重の小さい骨材原料を水槽31外へ円滑に自然流下させるために、外方へしたがって下方に傾斜されている。
【0098】
水槽31内に投入された粗砂利砕石分Sは、比重選別装置30の作動に伴い水槽31内に発生する分離用水の脈動に乗って水槽31内を浮遊、沈降しながら徐々に下流側に流れる。粗砂利砕石分S中のモルタルや夾雑物は、再生粗骨材Rに比べて水流発生時の浮遊力が大きく、水流停止時の沈降量が少ない。そのため、粗砂利砕石分Sの投入後、比重選別装置30が動作を継続させると、水中での浮遊力および沈降量の差に基づいて下方に再生粗骨材Rが層状に沈降し、その上方に粗骨材状に固まったモルタル分Mが積もる。また、砂礫分Gや微粒状のモルタル分Mのような軽重量なものは、一部が上方に積もり残部が分離用水中の上方を漂う。実際は、再生粗骨材Rについても、磨鉱機10における破砕、磨鉱の程度により表面に付着しているモルタル分の量は均一ではない。そのため、再生粗骨材Rの層についても、モルタル分の付着量が多いものが上方に移動し、モルタル分の付着が少ないものが下方に潜ることとなる。
【0099】
水槽31の下流側に層状に蓄積された粗砂利砕石分Sのうち、比重の大きな再生粗骨材Rは、カットゲート46を通過し、ロータリーゲート45によってシューター41内に強制的に取り入れられる。シューター41に取り入れられた粗砂利砕石分Sは、シューター41の下方の開口50から排出され回収される。
【0100】
一方、水槽31の上方側に蓄積された層は、モルタル分Mの付着量が多い軽比重の骨材や微粒状のモルタル分M、木屑等の夾雑物等の混合物である。これらの混合物は、利用価値の低い廃棄物であるため、シックナー26において水分を取り去った後に廃棄される。
【0101】
上記したようにして回収された再生粗骨材Rや再生細骨材Nは、再生粗骨材Rや再生細骨材Nの全重量中におけるモルタル成分の割合が20%以下、アスファルト成分の割合が5%以下であり、本実施形態のコンクリートの製造方法において原料である粗骨材の一部又は全部として混合される。
【0102】
上記したようにしてスラリー化された石炭灰を骨材等の他の原料に対して添加すると、乾燥状態の石炭灰を添加する場合に比べて流動性が向上する。そのため、上記した本実施形態のコンクリートの製造方法によれば、高性能AE減水剤に代表される化学混和剤の添加量あるいは添加率を最小限に抑制できる。また、上記したように石炭灰を調合して形成されたセメントは、再生骨材の種類や組成によらずアルカリ骨材反応が進行しにくい。
【0103】
本実施形態のコンクリートの製造方法では、石炭灰の混水攪拌時間を24時間としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばさらに長時間にわたって混水攪拌する構成としてもよい。さらに具体的には、例えば、石炭灰の混水時間を24時間〜72時間の範囲内で任意に設定することも可能である。
【0104】
また、石炭灰の混水攪拌時間は、コンクリートのフレッシュ性状、或いは、硬化時又は硬化後の物性を考慮して適宜調整することが可能である。すなわち、本実施形態のコンクリートの製造方法では、石炭灰の混水攪拌時間に基づき、コンクリートのフレッシュ性状や、硬化時又は硬化後の物性を制御することができる。さらに具体的には、例えば、石炭灰の混水時間を24時間〜72時間の範囲内で適切に設定することにより、石炭灰スラリーを混合したセメントモルタルやコンクリートのフロー値、コンクリートの膨張性及び強度等を調整することができる。
【0105】
ここで、上記実施形態では、石炭灰と水とをそのまま混合攪拌機に投入して攪拌する例を例示した。上記実施形態の製造方法によりコンクリートを製造すれば、流動性を向上させることができ、化学混和材の使用量を抑制することができる。しかし、火力発電所等において使用されている石炭の品質次第では、石炭灰中に未燃カーボン量が多く含まれていることがある。未燃カーボンを多く含む石炭灰がコンクリートの原料として使用されると、コンクリートへの空気連行性が阻害されたり、石炭灰に含まれている酸化カルシウムに起因してコンクリートの水素イオン濃度(pH)が高くなり、コンクリートの膨張ひび割れ等の不具合が起こる可能性がある。
【0106】
そこで、かかる事態が懸念される場合、上記した石炭灰スラリーは、セメント等と混合される前に後述する安定化処理を施すことが望ましい。以下、石炭灰スラリーの調整方法について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0107】
石炭灰スラリーの調整方法は、大別して次の(1),(2)に示す工程を有する。本実施形態では、さらに(3)に示す工程において、鉄分の除去がなされる。
(1)スラリー化した石炭灰に界面活性剤を添加して起泡させることにより、未燃カーボンを多く含有する石炭灰から、未燃カーボン含有程度の低い石炭灰を分離する。
(2)pHが11〜12の高アルカリ性石炭灰をスラリー化して空気を吹き込み、pH7前後に中和する。
(3)スラリー状石炭灰から、磁石を用いて、鉄分を酸化鉄として分離する。
【0108】
さらに具体的に説明すると、図4に示すように、石炭灰103は、石炭火力発電所等101等から生コン工場102等に粉体のまま輸送される。石炭灰103は、図4のステップS1に示されるように生コン工場102でスラリー化される。ステップS1における石炭灰103のスラリー化は、上記実施形態と同様にして実施される。
【0109】
ステップS2においては、未燃カーボンの濃縮と、濃縮に伴って高pHとなったスラリーの中和と、鉄分(マグネタイト)の回収とが実施される。ステップS2の処理で生成されたスラリー状の安定化処理石炭灰104は、一般的な生コン工場102に存在する既存設備105で水106と混和剤107を加えてミキサー108に搬送され、ここでセメント109及び骨材110と混練されて、石炭灰コンクリート111として出荷される。
【0110】
続いて、石炭灰スラリーの調整設備の一例と、当該石炭灰スラリーの調整設備を用いた石炭灰スラリーの製造方法について図面を参照しながら詳細に説明する。図5は本実施形態の調整設備の概略図であり、図6は図5に示す調整設備において採用される円筒形スラリーミキサーの概略構成図である。
【0111】
石炭火力発電所より排出された石炭灰103は、粉体輸送車112等により工場102に運搬され、ストックヤード113に積載される。ストックヤード113に積載された石炭灰103は、ベルトコンベア114で粉体容器115に投入される。粉体容器115内の石炭灰103は、その下に設置された円筒型スラリーミキサー108に排出される。
【0112】
図6に示すように、ミキサー108は、粉体容器115からの石炭灰をミキサー108内に供給する供給管116と、ミキサー108内に注水する注水管117と、泡状の排出灰分をコンクリートミキサーへ排出する泡排出管118と、ミキサー108内に空気を圧送する空気圧送管119と、残留灰分を排出する灰分排出管120と、鉄分を排出する鉄分排出管121と、電磁石を内蔵した有孔回転板からなる攪拌板123を備えている。各管には、それぞれ制御弁122A〜122Fが設けられている。
【0113】
図5および図6に示す石炭灰スラリーの調整設備では、下記(1)〜(4)の工程を経て石炭灰スラリーが調整される。
(1)制御弁122A,122Cのみを開放し、石炭灰と水(界面活性剤を含む)をミキサー8内に注入する。
(2)制御弁122Dのみを開放し、空気を圧送しながら電磁石オンの状態で、攪拌板123を回転させる。中和を確認後、制御弁122Bをあけて泡状灰分を排出する。
(3)制御弁122B,122Dを閉鎖後、電磁石オンのまま制御弁122Eを開け、石炭灰スラリーを排出する。
(4)制御弁122Eを閉鎖後、電磁石をオフにして制御弁122Fを開け、鉄分を排出する。
【0114】
上記したようにして石炭灰スラリーの調整を実施すると、攪拌板23の回転に伴って石炭灰に水と共に添加された界面活性剤が起泡する。石炭灰中に含まれている未燃カーボンの大部分は、起泡した界面活性剤に回収される。そのため、上記した(2)の工程において電磁弁122Bを開いて界面活性剤を排出すると、これと共に未燃カーボンがミキサー108の外部に排出され、未燃カーボンを殆ど含まない石炭灰103が残る。石炭灰103は、上記実施形態に示したように、例えば24時間以上の長時間にわたって混水攪拌され、スラリー化される。このスラリー化された石炭灰は、混水攪拌の途中で吹き込まれている空気中にあるCO2によってpH7前後に中和される。石炭灰スラリーがpH7前後に中和されたことが確認されると、電磁石をオン状態にしたまま制御弁122Eが開けられ、石炭灰スラリーが排出される。これにより、石炭灰スラリー中に含まれている鉄分が電磁石により回収される。石炭灰スラリーの排出が完了すると、電磁石がオフ状態とされると共に、制御弁122Fを開けられる。これにより、電磁石によって回収された鉄分が鉄分排出管121から排出される。
【0115】
上記したようにして石炭灰スラリーから未燃カーボンを除去することにより、未燃カーボンを多く含む低品質の石炭灰についても、コンクリートの原料として十分利用することができる。すなわち、上記した調整方法によれば、石炭灰の品質によらず、コンクリートへの空気連行性がよく、中性あるいはこれに近い状態の石炭灰スラリーを調整することができ、膨張ひび割れ等の不具合の起こりにくいコンクリートを提供できる。
【0116】
また、上記した調整方法により石炭灰スラリーを調整すれば、石炭灰中に含まれている未燃カーボンや鉄分などの資源を回収し、これらを窯業や鉄鋼業等の原料として再利用することができる。さらに、上記した調整方法では、空気を吹き込み、これに含まれている二酸化炭素(CO2)によって石炭灰を含む水あるいはスラリーを中和することができる。そのため、上記した調整方法によれば、空気中に含まれている二酸化炭素(CO2)についても有効利用でき、いわゆるCO2対策に資することができる。
【0117】
ここで、上記実施形態においてコンクリートの原料として調合される石炭灰の量は、従来技術のようにいわゆる内割調合で調合することが可能である。すなわち、石炭灰によるセメントの置換率に基づいて石炭灰の調合量を調整することが可能である。換言すれば、表1に示すように、石炭灰の量とセメントの量の和が一定となるように石炭灰とセメントとの混合比率を調整することが可能である。この調合方法によれば、高額なセメントの使用量を相対的に減少できるだけでなく、良質の石炭灰を使用すれば、コンクリートの流動性を向上することができるという利点を有する。さらに、上記したいわゆる内割調合を実施すると、高粉体系のコンクリートにおいて、水和発熱を低減し得るなどの利点がある。
【0118】
【表1】

【0119】
その反面、上記した内割調合により石炭灰の調合量を調整すると、石炭灰によるセメントの置換率の増大に伴って強度が低下したり、耐久性が低下するなどの不具合が発生しやすい。また、石炭灰によるセメントの置換率を上昇させると、中性化に伴う耐久性低下が懸念される。このため、内割調合により石炭灰の調合量を調整する場合、コンクリート強度や耐久性によって単位石炭灰量の上限値が規制されてしまう傾向にある。従って、内割調合を採用すると、石炭灰の調合量が抑制される分だけ化学混和材の調合量が増え、石炭灰の消費量を増大できないばかりか、化学混和材が原因でアルカリ骨材反応等が起こったり、反応速度が速くなる可能性がある。
【0120】
そこで、かかる知見に基づき、上記したコンクリートの製造方法は、石炭灰の調合量をいわゆる外割調合により調整してもよい。すなわち、上記実施形態のコンクリートの製造方法は、単位セメント量に対する石炭灰の調合量を外割調合法により設定し、これに見合った量の石炭灰スラリーを調合してセメント等に添加する構成としてもよい。
【0121】
さらに具体的に説明すると、上記したようにしてセメント、水、骨材及び石炭灰の調合比を決定する場合は、まず単位セメント量が決定され、この単位セメント量に基づいて石炭灰の調合量が外割調合により決定される。そして、ここで決定された石炭灰の調合量に相当する質量に相当する分だけ、細骨材の調合量が減量される。
【0122】
上記したようにして外割調合を行うと、コンクリートの構成材料に占める石炭灰量の割合が、内割調合による調合設計を行う場合よりも大きくなる。そのため、外割調合により石炭灰の調合量を調整すると、構成材料の粉末度、石炭灰の種類の相違等がコンクリートの流動性に比較的大きく影響する。外割調合により石炭灰の調合量を調整すれば、理論上導出される間隙比や実測により求められる間隙比、あるいは、各構成材料固有の間隙比から理論的に求められる理論最密間隙比や理論最密組成に基づいて、コンクリートの流動性(フロー値等)が最適となる調合や、化学混和剤添加量を最小にすることができる調合を理論的かつ定量的に決定することができる。
【0123】
また、上記したように、外割調合により石炭灰の調合量を調整すれば、粒度分布が相違する石炭灰を比較的容易に調合できる。そのため、従来は利用可能性が比較的低いと認識されてきた石炭灰粗粉を有効に活用することが可能となる。
【0124】
ここで、コンクリートにおいて石炭灰の細粉と粗粉の混合割合を変化させると、フロー値が極大値となる組成がある。すなわち、コンクリートの製造において、石炭灰の細粉と粗粉との混合比を調整すれば、コンクリートの流動性を最適化することができる。さらに詳細に説明すると、各調合における単位水量に相当する間隙比(水が充填することのできる最大間隙比)と混合粉体の間隙比との関係より、単位水量に相当する余剰水量を予測し、コンクリートの流動性を調節することができる。そのため、外割調合を実施する際に石炭灰の細粉と粗粉との混合比を調整することによりコンクリートの流動性を調節することができる。また、高性能AE減水剤等の添加が不可欠となる限界を間隙比及び単位水量より設定することも可能である。
【0125】
また、本実施形態の製造方法により製造されるコンクリートを用いて構成されるコンクリートの圧縮強度は、セメント単味の場合に得られる圧縮強度に対して、石炭灰混合による強度増大値を加算することにより求められる。ここで、強度増大値は、単位石炭灰量及びコンクリート材齢の関数として定義される。すなわち、本実施形態の製造方法により得られるコンクリートの空隙量に基づき、当該コンクリートを用いて作られるコンクリートの圧縮強度を設定することができる。すなわち、本実施形態のコンクリートの製造方法によれば、コンクリートの空隙量を因子としてコンクリートの圧縮強度を設定することができる。また、コンクリートの圧縮強度の高低は、コンクリート中に含まれる空隙のうち、空隙径が50nm以上の空隙の量による影響が大きい。そのため、空隙径が50nm以上の空隙の量を因子としてコンクリートの圧縮強度を設定することができる。
【0126】
本実施形態のコンクリートのように、原料に石炭灰を採用する場合、単位石炭灰量の増大に相応して、中性化速度係数が低減される。本実施形態のように外割調合により石炭灰の調合量を調整する場合、中性化速度係数は、単位石炭灰量の関数として示すことができる。外割調合により調合比を調整した場合は、石炭灰の使用量が増大するにつれて、中性化速度係数が常に低下する。そのため、石炭灰を大量に使用すれば、水セメント比に関わらずコンクリートの中性化を抑制できる。
【0127】
上記したコンクリートの製造方法により、原料の一部に石炭灰を使用して作成されたコンクリートと、石炭灰を用いずに作成されたコンクリートについて、アルカリシリカ反応性試験を実施すると、石炭灰を混入したコンクリートは、石炭灰を混入していないコンクリートよりも高い動弾性係数を示す傾向にある。また、石炭灰を混入したコンクリートは、材齢が伸びるにつれ、動弾性係数が漸増するのに対し、石炭灰を混入しないコンクリートは、動弾性係数がある程度の材齢まで増加したのち、材齢が伸びるにつれて低下する傾向にある。従って、コンクリートに対して石炭灰を混入することにより、アルカリ骨材反応の抑制に一定の効果が得られる。
【0128】
また、コンクリートの圧縮強度は、コンクリートの原料として使用される再生骨材の吸水率が高いほど高くなる傾向にある。また、コンクリートの圧縮強度は、再生骨材の吸水率の高低にかかわらず、単位石炭灰量(Kg/m3)が大きいほど高くなる傾向にある。従って、上記したように石炭灰をスラリー化したり、外割調合により調合することにより高強度のコンクリートを提供できる。
【0129】
また、上記実施形態に示した方法によりコンクリートの水/セメント比を所定比としてコンクリートを作製した場合、原料として使用される再生骨材の吸水率によらず、単位石炭灰量を増加することにより、中性加速度係数が減少する傾向にある。
【0130】
上記したコンクリートの製造方法により原料の一部に石炭灰を使用して作成されたコンクリートと、石炭灰を用いずに作成されたコンクリートについて、コンクリートの凍結融解試験を実施すると、再生骨材中に含まれているシリカ分(SiO2)の含有量が比較的多いコンクリートは、シリカ分の含有量が少ないコンクリートよりもサイクル数を重ねる毎に相対動弾性係数が大幅に低下する傾向がある。また、石炭灰の調合量の少ないコンクリートは、シリカ分の含有量が同一の条件において、石炭灰の調合量の多いサンプルコンクリートよりもサイクル数を重ねる毎に相対動弾性係数が低下する傾向がある。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明の一実施形態において使用される再生骨材の製造方法を模式的に示した概念図である。
【図2】図1に示す再生骨材の製造方法において使用される磨鉱機を示す断面図である。
【図3】図1に示す再生骨材の製造方法において使用される比重選別装置を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態であるコンクリートの製造方法において実施される石炭灰の安定化処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】図4に示す石炭灰の安定化処理において使用される石炭灰スラリーの調整設備の一例を示す概略図である。
【図6】図5に示す石炭灰スラリーの調整設備において採用されるスラリーミキサーの概略構成図である。
【符号の説明】
【0132】
103 石炭灰
104 安定化処理石炭灰
106 水
110 骨材
111 石炭灰コンクリート
R 再生粗骨材
N 再生細骨材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭灰、セメント、水及び骨材とモルタルを含む原料を調合したセメント系組成物の製造方法であって、
前記骨材の一部又は全部として、コンクリートおよび/又はアスファルトの廃材を破砕した破砕物を磨鉱してモルタル成分及び/又はアスファルト成分を剥離した再生骨材を用い、
当該再生骨材と他の原料とを混合することを特徴とするセメント系組成物の製造方法。
【請求項2】
石炭灰、セメント、水及び骨材とモルタルを含む原料を調合したセメント系組成物の製造方法であって、
前記骨材の一部又は全部として、コンクリートおよび/又はアスファルトの廃材を破砕した破砕物を磨鉱してモルタル成分及び/又はアスファルト成分を剥離した再生骨材を用い、
前記石炭灰を、所定時間、混水攪拌してスラリー化した石炭灰スラリーの状態で他の原料と調合することを有することを特徴とするセメント系組成物の製造方法。
【請求項3】
石炭灰、セメント、水及び骨材とモルタルを含む原料を調合したセメント系組成物の製造方法であって、
前記骨材の一部又は全部として、コンクリートおよび/又はアスファルトの廃材を破砕した破砕物を磨鉱してモルタル成分及び/又はアスファルト成分を剥離した再生骨材を用い、
界面活性剤を含み当該界面活性剤を起泡させた液中において石炭灰に含まれる未燃カーボンの一部又は全部を除去する工程を経た石炭灰と他の原料とを調合することを特徴とするセメント系組成物の製造方法。
【請求項4】
石炭灰、セメント、水及び骨材とモルタルを含む原料を調合したセメント系組成物の製造方法であって、
前記骨材の一部又は全部が、コンクリートおよび/又はアスファルトの廃材を破砕した破砕物を磨鉱してモルタル成分及び/又はアスファルト成分を剥離した再生骨材を用い、
前記石炭灰を、所定時間、混水攪拌してスラリー化したものに空気を吹き込んでpH7前後に中和された石炭灰スラリーの状態で他の原料と調合することを有することを特徴とするセメント系組成物の製造方法。
【請求項5】
石炭灰と、セメントと、水と、粗骨材と細骨材とを所定の割合で調合した骨材と、モルタルを含む原料を調合したセメント系組成物の製造方法であって、
前記骨材の一部又は全部として、コンクリートおよび/又はアスファルトの廃材を破砕した破砕物を磨鉱してモルタル成分及び/又はアスファルト成分を剥離した再生骨材を用い、
前記石炭灰を、単位セメント量に対して、外割調合により調合し、
前記細骨材を、石炭灰量に相当する質量だけ減量して調合することを特徴とするセメント系組成物の製造方法。
【請求項6】
石炭灰、セメント、水及び骨材とモルタルを含む原料を調合したセメント系組成物の製造方法であって、
前記骨材の一部又は全部として、コンクリートおよび/又はアスファルトの廃材を破砕した破砕物を磨鉱してモルタル成分及び/又はアスファルト成分を剥離した再生骨材を用い、
石炭灰及び骨材の量、並びに、単位セメント量及び水セメント比を、セメント系組成物の硬化時における目標強度に基づいて調整することにより、セメント系組成物の未硬化時の性状、強度及び中性化速度のいずれか一つ又は複数を調整可能であることを特徴とするセメント系組成物の製造方法。
【請求項7】
石炭灰が、24時間以上混水攪拌することによってスラリー化されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法。
【請求項8】
石炭灰が、72時間以上混水攪拌することによってスラリー化されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法。
【請求項9】
石炭灰が、混水攪拌を連続的に実行されることによりスラリー化されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法。
【請求項10】
石炭灰を混水攪拌により石炭灰スラリーとし、当該石炭灰スラリーを半日以上静置した後、セメント、水及び骨材と混合することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法。
【請求項11】
石炭灰の混水攪拌時間を制御することにより、フレッシュ性状を制御すること特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法。
【請求項12】
石炭灰の混水攪拌時間を制御することにより、硬化時又は硬化後におけるセメント系組成物の物性を制御することを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法。
【請求項13】
石炭灰、セメント、水及び骨材とセメントモルタル又はコンクリートを含む原料の流動性が最適となる調合を、原料の間隙比より求めることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法。
【請求項14】
調合すべき原料の固有の間隙比より理論最密間隙比及び理論最密組成を求め、流動性が最適となる調合を理論最密間隙比及び理論最密組成に基づいて決定することを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法。
【請求項15】
石炭灰は、粗粉と粗粉よりも微細な細粉とを含むものであり、
粗粉及び細粉の混合割合を調整することにより、石炭灰、セメント、水及び骨材とセメントモルタル又はコンクリートを含むセメント系組成物の流動性を調節することを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法。
【請求項16】
モルタル又はセメント単味の場合に得られる圧縮強度に対して、単位石炭灰量及び材齢の関数として定義される強度増大値を加算することにより導出されるセメント系組成物の圧縮強度に基づいて石炭灰の調合量を調整することを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法。
【請求項17】
調合後のセメント組成物の空隙量を因子として、セメント系組成物を用いて形成されるセメント系組成物の圧縮強度を設定可能であることを特徴とする請求項1乃至16のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法。
【請求項18】
空隙径の50nm以上の空隙量を求め、当該空隙量の増大に相応して、セメント系組成物を用いて形成されるセメント系組成物の圧縮強度を設定可能であることを特徴とする請求項1乃至17のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法。
【請求項19】
単位石炭灰量の増大に相応して、セメント系組成物の中性化速度係数を低減することを特徴とする請求項1乃至18のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法。
【請求項20】
再生骨材が、コンクリートおよび/又はアスファルトの廃材を破砕した破砕物を磨鉱した磨鉱物を水中に浸し、当該水に下から上に向かう間欠的な水流を発生させることにより下層に集まる砂利・砕石層を取り出すことによって用意されるものであることを特徴とする請求項1乃至19のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法。
【請求項21】
吸水率が5%以下の再生骨材が使用されることを特徴とする請求項1乃至20のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法。
【請求項22】
全重量中におけるモルタル成分の割合が20%以下である再生骨材が使用されることを特徴とする請求項1乃至21のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法。
【請求項23】
全重量中におけるアスファルト成分の割合が、5%以下である再生骨材が使用されることを特徴とする請求項1乃至22のいずれかに記載のセメント系組成物の製造方法。
【請求項24】
請求項1乃至23のいずれかに記載の製造方法によって製造されたことを特徴とするセメント系組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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