説明

セメント組成物用添加剤

【課題】加水分解されにくいセメント組成物用添加剤を提供することである。
【解決手段】式(1)で表されるビニルモノマーを必須構成単量体としてなるビニルポリマーを含有してなることを特徴とするセメント組成物用添加剤を用いる。
【化1】


OAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nは1〜200の整数、Xは−CO2H、−CO2R’、−CO2M、−CO2NR’4、−CONR’2又は−CNで表される基、Mは金属原子、R及びR’は水素原子又は炭素数1〜6の有機基を示す。
Xが−CO2H、−CO2M、−CO2NR4、−CONH2又は−CNで表される基であることが好ましい。さらに(メタ)アクリル酸(塩)を必須構成単量体としてなるビニルポリマーが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセメント組成物用添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオキシアルキレン鎖をもつビニルモノマーを構成単量体とした共重合体を含むセメント組成物用添加剤が知られている(特許文献1等)。
【特許文献1】特公昭59−18338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のセメント組成物用添加剤は、容易に加水分解されるという問題がある。したがって、保管後に使用しようとしても所定の性能が得られない場合があった。そこで、本発明の目的は、加水分解されにくいセメント組成物用添加剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のセメント組成物用添加剤は、式(1)で表されるビニルモノマーを必須構成単量体としてなるビニルポリマーを含有してなる点を要旨とする。
【化1】

OAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nは1〜200の整数、Xは−CO2H、−CO2R’、−CO2M、−CO2NR’4、−CONR’2又は−CNで表される基、Mは金属原子、R及びR’は水素原子又は炭素数1〜6の有機基を示す。
【発明の効果】
【0005】
本発明のセメント組成物用添加剤は、加水分解されにくい。その結果、本発明のセメント組成物用添加剤は、長期間、極めて安定に所定の性能を発揮し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
一般式(1)において、炭素数2〜4のオキシアルキレン基(OA)としては、オキシエチレン、オキシプロピレン及びオキシブチレンが挙げられる。
これらのうち、製造しやすさの観点等から、オキシエチレン及びオキシプロピレンが好ましい。
これらのオキシアルキレン基は、1種類でも2種類以上の混合でもよい。2種類以上の混合のとき、結合様式はブロック、ランダム及びこれらの組合せのいずれでもよい。
【0007】
また、nは、1〜200の整数が好ましいが、この範囲を超えてもよい。
また、R(炭素数1〜6の有機基)としては、アルキル、アルケニル及びアシル等が含まれる。
アルキルとしては、メチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル及びn−ヘキシル等が挙げられる。
アルケニルとしては、ビニル、1−プロペニル、2−ブテニル及び2,2−ジメチル−3−ブテニル等が挙げられる。
アシルとしては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル、アクリロイル、メタクリロイル、クロトノイル及びプロピオロイル等が挙げられる。
Rのうち、製造しやすさの観点等からは、水素原子及びアシルが好ましいが、加水分解性の観点等からは、水素原子、アルキル及びアルケニルが好ましく、さらに好ましくは水素原子及びアルキルである。
【0008】
また、R’(炭素数1〜6の有機基)としては、アルキル及びアルケニル等が含まれる。
R’のうち、水素原子及びアルキルが好ましく、さらに好ましくは加水分解性の観点等から水素原子である。
また、M(金属原子)としてはカルボン酸金属を形成し得るものでれば制限がないが、塩を形成し得る金属{アルカリ金属(リチウム、カリウム及びナトリウム等)、アルカリ土類金属(マグネシウム及びカルシウム等)及び遷移金属(銅及び亜鉛等)}等が好ましい。
Xのうち、−CO2H、−CO2M、−CO2NR’4、−CONR’2又は−CNで表される基が好ましく、さらに好ましくは−CO2H、−CO2M、−CO2NH4、−CONH2又は−CNで表される基である。
【0009】
一般式(1)で表されるビニルモノマーとしては、以下の、(1)カルボン酸(Xが−CO2H)、(2)カルボン酸エステル(Xが−CO2R’)、(3)カルボン酸金属塩(Xが−CO2M)、(4)カルボン酸アンモニウム塩(Xが−CO2NR’4)、(5)アミド(Xが−CONR’2)及び(6)カルボン酸ニトリル(Xが−CN)等が好ましく例示される。
【0010】
(1)カルボン酸(Xが−CO2H)
α−(ヒドロキシエチルオキシメチル)アクリル酸、α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸、α−(ヒドロキシプロピルオキシメチル)アクリル酸、α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシプロピレン)オキシメチル)アクリル酸、α−(ヒドロキシエチルオキシプロピルオキシメチル)アクリル酸、α−(ヒドロキシプロピルオキシエチルオキシプロピルオキシメチル)アクリル酸、α−(ヒドロキシエチルオキシエチルオキシプロピルオキシメチル)アクリル酸、α−(ヒドロキシエチルオキシプロピルオキシプロピルオキシメチル)アクリル酸、α−(ヒドロキシエチルオキシエチルオキシプロピルオキシエチルオキシメチル)アクリル酸及びα−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン)オキシメチル)アクリル酸等。
【0011】
(2)カルボン酸エステル(Xが−CO2R’)
α−(ヒドロキシエチルオキシメチル)アクリル酸メチル、α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸メチル、α−(ヒドロキシプロピルオキシメチル)アクリル酸メチル、α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシプロピレン)オキシメチル)アクリル酸メチル、α−(ヒドロキシプロピルオキシエチルオキシメチル)アクリル酸メチル及びα−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレンオキシプロピレン)オキシメチル)アクリル酸メチル等。
【0012】
(3)カルボン酸金属塩(Xが−CO2M)
α−(ヒドロキシエチルオキシメチル)アクリル酸ナトリウム塩、α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸カリウム塩、α−(ヒドロキシプロピルオキシメチル)アクリル酸ナトリウム塩、α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシプロピレン)オキシメチル)アクリル酸ナトリウム塩、α−(ヒドロキシエチルオキプロピルオキシシメチル)アクリル酸ナトリウム塩及びα−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン)オキシメチル)アクリル酸ナトリウム塩等。
【0013】
(4)カルボン酸アンモニウム塩(Xが−CO2NR’4
α−(ヒドロキシエチルオキシメチル)アクリル酸アンモニウム塩、α−(ヒドロキシエチルオキシメチル)アクリル酸テトラメチルアンモニウム塩、α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸アンモニウム塩、α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸テトラメチルアンモニウム塩、α−(ヒドロキシプロピルオキシメチル)アクリル酸アンモニウム塩、α−(ヒドロキシプロピルオキシメチル)アクリル酸テトラメチルアンモニウム塩、α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシプロピレン)オキシメチル)アクリル酸アンモニウム塩、α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシプロピレン)オキシメチル)アクリル酸テトラメチルアンモニウム塩、α−(ヒドロキシプロピルオキシエチルオキシメチル)アクリル酸アンモニウム塩、α−(ヒドロキシエチルオキシプロピルオキシメチル)アクリル酸テトラメチルアンモニウム塩、α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン)オキシメチル)アクリル酸アンモニウム塩及びα−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン)オキシメチル)アクリル酸テトラメチルアンモニウム塩等。
【0014】
(5)アミド(Xが−CONR’2
α−(ヒドロキシエチルオキシメチル)アクリル酸アミド、N,N−ジメチル−α−(ヒドロキシエチルオキシメチル)アクリル酸アミド、α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸アミド、N,N−ジメチル−α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸アミド、α−(ヒドロキシプロピルオキシメチル)アクリル酸アミド、N,N−ジメチル−α−(ヒドロキシプロピルオキシメチル)アクリル酸アミド、α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシプロピレン)オキシメチル)アクリル酸アミド、N,N−ジメチル−α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシプロピレン)オキシメチル)アクリル酸アミド、α−(ヒドロキシプロピルオキシエチルオキシメチル)アクリル酸アミド、N,N−ジメチル−α−(ヒドロキシエチルオキシプロピルオキシメチル)アクリル酸アミド、α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン)オキシメチル)アクリル酸アミド及びN,N−ジメチル−α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン)オキシメチル)アクリル酸アミド等。
【0015】
(6)カルボン酸ニトリル(Xが−CN)
α−(ヒドロキシエチルオキシメチル)アクリル酸ニトリル、α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸ニトリル、α−(ヒドロキシプロピルオキシメチル)アクリル酸ニトリル、α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシプロピレン)オキシメチル)アクリル酸ニトリル、α−(ヒドロキシプロピルオキシエチルオキシメチル)アクリル酸ニトリル及びα−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン)オキシメチル)アクリル酸ニトリル等。
【0016】
本発明で使用するビニルモノマーは、以下の公知の製造方法を組み合わせて得ることができる。
(1)α−ヒドロキシメチルアクリル酸エステル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸ニトリル又はN,N−ジアルキル−α−ヒドロキシメチルアクリルアミドの製造
アクリル酸エステル、アクリロニトリル又はN,N−ジアルキルアクリルアミドとホルムアルデヒドとを三級アミンの存在下に反応させることにより、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エステル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸ニトリル又はN,N−ジアルキル−α−ヒドロキシメチルアクリルアミドを得る(たとえば、特開昭61−134353号、USP4654432号、特開平5−70408号)。
【0017】
(2)α−ヒドロキシメチル基へオキシアルキレン基の導入
α−ヒドロキシメチルアクリル酸エステル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸ニトリル又はN,N−ジアルキル−α−ヒドロキシメチルアクリルアミドと、炭素数2〜4のアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシド等)とを反応させる(公知の反応触媒が使用できる)。
または、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エステル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸ニトリル又はN,N−ジアルキル−α−ヒドロキシメチルアクリルアミドと、脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加体とをアルカリ存在下で反応させる(ウイリアムソン合成)。
脂肪族アルコールとしては、アルカノール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール及びn−ヘキサノール等)及びアルケノール(プロペノール、ブテノール及び2,2−ジメチル−3−ブテノール等)等が挙げられる。
【0018】
(3)必要により加水分解により、カルボン酸(Xが−CO2H)、カルボン酸金属塩(Xが−CO2M)、カルボン酸アンモニウム塩(Xが−CO2NR’4)へ誘導
α−ヒドロキシメチルアクリル酸エステル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸ニトリル又はN,N−ジアルキル−α−ヒドロキシメチルアクリルアミドにオキシアルキレン基を導入したオキシアルキレン化合物を、加水分解しカルボン酸、カルボン酸金属塩又はカルボン酸アンモニウム塩とする(たとえば、第4版実験化学講座22、有機合成IV−酸・アミノ酸・ペプチド−、平成4年11月30日、(財)日本化学会編、丸善株式会社発行)。
また、カルボン酸ニトリル(Xが−CN)から、アミド(Xが−CONR’2)へ加水分解することもできる(たとえば、上記の実験化学講座22、151〜156頁)。
また、カルボン酸エステル(Xが−CO2R’)から、アミド(Xが−CONR’2)へ変換することもできる(たとえば、上記の実験化学講座22、148〜151頁)。

また、カルボン酸ニトリル(Xが−CN)から、カルボン酸エステル(Xが−CO2R’)へ変換することができる(たとえば、上記の実験化学講座22、53頁)。
【0019】
本発明のセメント組成物用添加剤は、式(1)で表されるビニルモノマーを必須構成単量体としてなるビニルポリマーを含有してなれば、このビニルモノマーの他に、他の構成単量体を含んでもよい。
他の構成単量体としては、たとえば、特許文献1に記載された単量体ロ及び単量体ハ等が挙げられる。
他の構成単量体として、(メタ)アクリル酸(塩)を含むことが好ましい。なお、(メタ)アクリル酸(塩)とは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸塩、メタクリル酸塩を意味する。塩としては、アルカリ金属(カリウム、ナトリウム等)塩、アンモニウム塩、アミン(アルキル基の炭素数が1〜4のアルキルアミン等:たとえば、トリメチルアミン、トリエタノールアミン、モノブチルアミン)塩、第4級アンモニウム塩(アルキル基の炭素数が1〜4のテトラアルキルアンモニウム塩:たとえば、テトラメチルアンモニウム塩、トリメチルエチルアンモニウム塩)等が含まれる。
【0020】
他の構成単量体を用いる場合、ビニルモノマーの使用量(重量%)は、ビニルモノマー及び他の構成単量体の合計重量に基づいて、10〜95が好ましく、さらに好ましくは20〜85、特に好ましくは30〜75、次に好ましくは40〜65、最も好ましくは50〜65である。
また、この場合、他の構成単量体の使用量(重量%)は、ビニルモノマー及び他の構成単量体の合計重量に基づいて、5〜90が好ましく、さらに好ましくは15〜80、特に好ましくは25〜70、次に好ましくは35〜60、最も好ましくは35〜50である。
【0021】
ビニルポリマーを得るための重合方法としては公知の重合方法等が適用でき、たとえば、溶液重合、懸濁重合、塊状重合、逆相懸濁重合又は乳化重合のいずれでもよい。
これらの重合方法のうち、溶液重合、懸濁重合、逆相懸濁重合又は乳化重合が好ましく、さらに好ましくは溶液重合、逆相懸濁重合又は乳化重合、特に好ましくは溶液重合又は乳化重合、最も好ましくは溶液重合である。
この重合には、公知の、重合開始剤、連鎖移動剤又は溶媒等が使用できる。
【0022】
本発明のセメント組成物用添加剤には、ビニルポリマー以外に、公知の他の成分等を含んでもよい。
他の成分としては、溶媒(水、アルコール)、収縮低減剤、空気連行剤、湿潤剤、防水剤、硬化促進剤又は消泡剤等が含まれる。
【0023】
本発明のセメント組成物用添加剤は、ポルトランドセメント、アルミナセメント、各種混合セメント等の公知の水硬セメント等に適用できる。
本発明のセメント組成物用添加剤の添加量(重量%)は、セメントの重量に基づいて、0.001〜5が好ましく、さらに好ましくは0.005〜2、特に好ましくは0.01〜1、最も好ましくは0.02〜0.7である。
【実施例】
【0024】
実施例において、部及び%は、特記しない限り、重量部及び重量%を意味する。
<合成例1>
アクリル酸メチルエステル86部(1モル部)、37%ホルムアルデヒド水溶液(メタノール含有量7%)122部(1.5モル部)、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)7部(63ミリモル部)、メトキシハイドロキノン0.03部及びアセトニトリル100部を均一混合した後、80〜82℃で1時間反応させた。この反応液を40℃に冷却し、濃塩酸でpH5.0に調整した後、トルエン200部で抽出した。ついで、抽出物からトルエンを留去して、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチルエステル(MHMA)の粗生成体を得た。
MHMAの粗生成体30部を水150部に溶解した後、石油エーテル60部を用いて不純物を3回抽出除去した。ついで、MHMA水溶液に食塩を飽和になるまで溶解させた後、トルエン抽出し、MHMAを精製した(純度98.5%)。
MHMA116部(1モル部)及び水酸化カリウム2部を混合し、100℃に調整した後、100℃でエチレンオキシド440部(10モル部)を滴下して反応させることにより、α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸メチル(MHPEMA)を得た。
【0025】
<合成例2>
アクリル酸メチルエステル86部(1モル部)をアクリル酸ニトリル50部(1モル部)に変更した以外、合成例1と同様にして、α−ヒドロキシメチルアクリル酸ニトリル(HMAN)を得た後、α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸ニトリル(HPEMAN)を得た。
【0026】
<合成例3>
アクリル酸メチルエステル86部(1モル部)をN,N−ジメチルアクリル酸アミド99部(1モル部)に変更した以外、合成例1と同様にして、N,N−ジメチル−α−ヒドロキシメチルアクリル酸アミド(HMAA)を得た後、N,N−ジメチル−α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸アミド(HPEMAA)を得た。
【0027】
<合成例4>
合成例1で得た(MHMA)116部(1モル部)及びTHF200部を混合し、5℃に調整した後、5℃で三臭化リン135部(0.5モル部)を滴下して反応させることにより、α−臭化メチルアクリル酸メチルエステル(MBMA)を得た。
ブタノールのエチレンオキシド8モル付加物426部(1モル部)及び水酸化カリウム112部(2モル部)を混合し、100℃に調整した後、上記で得た(MBMA)を滴下して反応させて、反応生成物を得た。その後、反応生成物を塩酸で中和し、析出した塩化カリウムを濾別することにより、α−ブトキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸メチル(MBPEMA)を得た。
【0028】
<合成例5>
合成例1で得た(MHMA)116部(1モル部)を合成例2で得た(HMAN)83部(1モル部)に変更した以外、合成例4と同様にして、α−ブトキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸ニトリル(BPEMAN)を得た。
【0029】
<合成例6>
合成例1で得た(MHMA)116部(1モル部)を合成例3で得た(HMAA)129部(1モル部)に変更した以外、合成例4と同様にして、N,N−ジメチル−α−ブトキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸アミド(BPEMAA)を得た。
【0030】
<合成例7>
合成例1で得たα−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸メチル(MHPEMA)556部(1モル部)と10%水酸化ナトリウム水溶液440部とを混合した後、60℃で8時間反応させて、α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸ナトリウム(SHPEMA)を得た。
【0031】
<合成例8>
合成例5で得たα−ブトキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸ニトリル(BPEMAN)491部(1モル部)と10%水酸化ナトリウム水溶液440部とを混合した後、60℃で8時間反応させて、α−ブトキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸ナトリウム(SBPEMA)を得た。
【0032】
<実施例1>
重合反応容器に、水2000部を仕込み、攪拌しながら、反応容器内を窒素ガスで置換し、窒素雰囲気下で水の温度を80℃まで加熱した。
次いで、合成例1で得たα−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸メチル(MHPEMA)556部、アクリル酸360部、水90部及びメルカプトプロピオン酸5.4部からなるモノマー溶液を4時間かけて重合反応容器内に滴下した。この滴下開始と同時に過硫酸アンモニウム6.5部及び水130部からなる触媒水溶液を5時間かけて滴下した。触媒水溶液の滴下終了後、さらに80℃で1時間反応させて、重合溶液を得た。
次いで、25℃に冷却した重合溶液に50%水酸化ナトリウム水溶液をpH7になるように添加して、水溶性ビニルポリマー(P1)の水溶液からなるセメント組成物用添加剤(1)を得た。このポリマー(P1)の重量平均分子量(Mw)は33000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.2であった。
【0033】
なお、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、次の条件のGPC測定により得た。
装置:Waters社製 GPCシステム[ポンプ;Model510]
カラム:TSKgel G3000PWXLと、TSKGel G50000PWXL7.8mlI.D×30cmとの直列に結合したカラム
カラム温度:40℃
展開溶媒:水/メタノール(容積比=70:30)+酢酸ナトリウム(0.5%)
流速: 1.0(ml/min)
検出器:waters410
標準物質:ポリエチレングリコール
【0034】
<実施例2>
合成例1で得たα−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸メチル(MHPEMA)556部を、合成例2で得たα−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸ニトリル(HPEMAN)523部に変更した以外実施例1と同様にして、水溶性ビニルポリマー(P2)の水溶液からなるセメント組成物用添加剤(2)を得た。このポリマー(P2)の重量平均分子量(Mw)は31000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.1であった。
【0035】
<実施例3>
合成例1で得たα−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸メチル(MHPEMA)556部を、合成例3で得たN,N−ジメチル−α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸アミド(HPEMAA)569部に変更した以外実施例1と同様にして、水溶性ビニルポリマー(P3)の水溶液からなるセメント組成物用添加剤(3)を得た。このポリマー(P3)の重量平均分子量(Mw)は45200であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.2であった。
【0036】
<実施例4>
合成例1で得たα−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸メチル(MHPEMA)556部を、合成例4で得たα−ブトキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸メチル(MBPEMA)524部に変更した以外実施例1と同様にして、水溶性ビニルポリマー(P4)の水溶液からなるセメント組成物用添加剤(4)を得た。このポリマー(P4)の重量平均分子量(Mw)は47000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.2であった。
【0037】
<実施例5>
合成例1で得たα−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸メチル(MHPEMA)556部を、合成例5で得たα−ブトキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸ニトリル(BPEMAN)491部に変更した以外実施例1と同様にして、水溶性ビニルポリマー(P5)の水溶液からなるセメント組成物用添加剤(5)を得た。このポリマー(P5)の重量平均分子量(Mw)は28000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.2であった。
【0038】
<実施例6>
合成例1で得たα−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸メチル(MHPEMA)556部を、合成例6で得たN,N−ジメチル−α−ブトキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸アミド(BPEMAA)537部に変更した以外実施例1と同様にして、水溶性ビニルポリマー(P6)の水溶液からなるセメント組成物用添加剤(6)を得た。このポリマー(P6)の重量平均分子量(Mw)は30000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.1であった。
【0039】
<実施例7>
合成例1で得たα−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸メチル(MHPEMA)556部を、合成例7で得たα−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸ナトリウム(SHPEMA)564部に変更した以外実施例1と同様にして、水溶性ビニルポリマー(P7)の水溶液からなるセメント組成物用添加剤(7)を得た。このポリマー(P7)の重量平均分子量(Mw)は34000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.1であった。
【0040】
<実施例8>
合成例1で得たα−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸メチル(MHPEMA)556部を、合成例8で得たα−ブトキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸ナトリウム(SBPEMA)532部に変更した以外実施例1と同様にして、水溶性ビニルポリマー(P8)の水溶液からなるセメント組成物用添加剤(8)を得た。このポリマー(P8)の重量平均分子量(Mw)は33000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.2であった。
【0041】
<比較例1>
合成例1で得たα−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸メチル(MHPEMA)556部を、ポリエチレングリコール(重合度10)モノメタクリレート526部に変更した以外実施例1と同様にして、水溶性ビニルポリマー(HP1)の水溶液からなる比較用のセメント組成物用添加剤(H1)を得た。このポリマー(HP1)の重量平均分子量(Mw)は33000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.2であった。
【0042】
<比較例2>
合成例1で得たα−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸メチル(MHPEMA)556部を、ブチルポリオキシエチレン(重合度8)メタクリレート494部に変更した以外実施例1と同様にして、水溶性ビニルポリマー(HP2)の水溶液からなる比較用のセメント組成物用添加剤(H2)を得た。このポリマー(HP2)の重量平均分子量(Mw)は31000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.1であった。
【0043】
<安定性評価>
セメント組成物用添加剤(1)〜(8)、(H1)又は(H2)を140mlガラス瓶に、それぞれ100gずつ小分けして、密閉下50℃で2月間放置した。
以下の方法により、放置前後について評価し、その結果を表2に示した。
(1)評価用モルタルの調製
表1に示す組成で、JIS R5201−1997の10.4.3練混ぜ方法に準拠して、評価用モルタルを調製した。
【0044】
【表1】

【0045】
(2)フロー試験
JIS R5201−1997「11.フロー試験」に準拠して、フロー試験によりフロー値(mm)を得た。なお、数値が大きい程、分散性能が良好であることを意味する。
(3)分散状態
フロー試験において、フローコーンを上の方に取り去りったときのセルフレベリング性を目視観察し、次の基準により分散状態を評価した。
○:形状が崩れ始めた(レベリングした⇒分散性が良好)
×:形状が保たれたまま(レベリングせず⇒分散性が不良)
【0046】
【表2】

【0047】
本発明のセメント組成物用添加剤は、比較用のセメント組成物用添加剤に比較して、50℃で2月間放置しても優れたフロー値及び分散状態を維持できるため、モルタルに対して優れた分散性を発現していることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるビニルモノマーを必須構成単量体としてなるビニルポリマーを含有してなることを特徴とするセメント組成物用添加剤。
【化1】

OAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nは1〜200の整数、Xは−CO2H、−CO2R’、−CO2M、−CO2NR’4、−CONR’2又は−CNで表される基、Mは金属原子、R及びR’は水素原子又は炭素数1〜6の有機基を示す。
【請求項2】
Xが−CO2H、−CO2M、−CO2NR’4、−CONH2又は−CNで表される基である請求項1に記載のセメント組成物用添加剤。
【請求項3】
ビニルポリマーがさらに(メタ)アクリル酸(塩)を必須構成単量体としてなる請求項1又は2に記載のセメント組成物用添加剤。

【公開番号】特開2006−56757(P2006−56757A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−242109(P2004−242109)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】