説明

セラミックグリーンシート用帯電防止剤組成物

【課題】帯電の発生を抑制できるセラミックグリーンシート用帯電防止剤組成物、セラミックスラリー組成物及びセラミックグリーンシート、並びにセラミックグリーンシート用帯電防止剤組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(I):
【化1】


(式中、Rは炭素数8〜22のアルキル基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数であり、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を示し、少なくとも1つは炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基である。)で表される化合物と有機溶媒とを含有し、前記一般式(I)で表される化合物100重量部に対して、鉄イオンの含有量が0.010重量部以下である、セラミックグリーンシート用帯電防止剤組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックグリーンシート用帯電防止剤組成物、セラミックスラリー組成物及びセラミックグリーンシート、並びにセラミックグリーンシート用帯電防止剤組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層コンデンサ、積層インダクタ、積層LCフィルター、多層基板等に代表される積層セラミック電子部品は、回路塗膜を形成したセラミックグリーンシートを積層し、焼成したものである。セラミックグリーンシートは、チタン酸バリウム等の誘電体、フェライト等の磁性体、絶縁体等のセラミック粉末とバインダー等とを水や有機溶剤とともにボールミル等で混練して得られるセラミックスラリーを、例えば、離型剤処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムともいう)上でドクターブレード法等により10〜50μmの厚さのシート状に成形されたものである。
【0003】
このようにして形成されたセラミックグリーンシートは炉内で乾燥され、さらにその上に回路塗膜が印刷され、乾燥される。次に、これらセラミックグリーンシートを前記PETフィルムから剥がし、その複数枚を積層した後、例えば50℃に加熱した加圧装置(金型)により圧着する。そして、得られた積層体をチップ状に切断し、1200〜1400℃で焼成した後、得られた焼結物の両端面に金属ペーストを塗布し、700〜900℃で焼成して外部電極を形成し、積層セラミックコンデンサを得る。
【0004】
ところで、上記セラミックグリーンシートをPETフィルムから剥がす際、PETフィルムは絶縁体であるので、PETフィルムとセラミックグリーンシートとに反対電荷の静電気が発生することによって、セラミックグリーンシートが帯電する。セラミックグリーンシートが帯電すると、周辺のゴミやセラミックグリーンシートの破片等を異物として吸着し、セラミックグリーンシートを積層するときにこれらも一緒に入り込むため、得られた積層セラミックコンデンサの静電容量が変動し、規格外の不良品を発生することがある。
【0005】
上記セラミックグリーンシートをPETフィルムから剥がす際の静電気発生を抑制するために、下記特許文献1では、静電防止処理した離型性フィルムにセラミックグリーンシート用組成物を塗布する工程を有するセラミックグリーンシートの製造方法が提案されている。また、特許文献1には、上記静電防止処理に使用される静電防止剤として、高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩等が例示されている。
【0006】
また、下記特許文献2では、焼成前のセラミック成形品への帯電防止性と平滑性の付与の目的で、セラミックスラリーに、アミジニウムカチオンを構成成分とする有機酸塩からなる分散剤を加えることが提案されている。
【0007】
更に、下記特許文献3では、セラミックグリーンシート成形用の添加剤として、アニオン性の官能基にノニオン性の官能基を併せ持った界面活性剤やアミン系のノニオン系界面活性剤等が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−253913号公報
【特許文献2】特開2002−321981号公報
【特許文献3】特開平7−33533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来のセラミックグリーンシート成形用の帯電防止剤をセラミックスラリーに加えてセラミックグリーンシートを成形しても、帯電防止効果は未だ不充分であり、セラミック電子部品としての電気特性を損なうことが問題となっていた。
【0010】
本発明は、帯電の発生を抑制できるセラミックグリーンシート用帯電防止剤組成物、セ
ラミックスラリー組成物及びセラミックグリーンシート、並びにセラミックグリーンシー
ト用帯電防止剤組成物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のセラミックグリーンシート用帯電防止剤組成物は、下記一般式(I):
【化1】

(式中、Rは炭素数8〜22のアルキル基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数であり、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を示し、少なくとも1つは炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基である。)で表される化合物と有機溶媒とを含有する、セラミックグリーンシート用帯電防止剤組成物であって、 該組成物中、前記一般式(I)で表される化合物100重量部に対して、鉄イオンの含有量が0.010重量部以下である、セラミックグリーンシート用帯電防止剤組成物である。
【0012】
本発明のセラミックスラリー組成物は、前記本発明のセラミックグリーンシート用帯電防止剤組成物とセラミック材料とを含有する、セラミックスラリー組成物である。
【0013】
本発明のセラミックグリーンシートは、前記本発明のセラミックスラリー組成物を用いて得られる、セラミックグリーンシートである。
【0014】
本発明のセラミックグリーンシート用帯電防止剤組成物の製造方法は、前記一般式(I)で表わされる化合物と前記有機溶媒とを含む混合物を吸着剤で吸着処理する、セラミックグリーンシート用帯電防止剤組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のセラミックグリーンシート用帯電防止剤組成物を用いてセラミックグリーンシートを作製すると、離型性フィルム等からセラミックグリーンシートを離型する際の帯電を抑制することができる。また、本発明のセラミックスラリー組成物及びセラミックグリーンシートによれば、帯電が抑制されたセラミックグリーンシートを提供できる。また、本発明のセラミックグリーンシート用帯電防止剤組成物の製造方法によれば、上記本発明のセラミックグリーンシート用帯電防止剤組成物を容易に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[セラミックグリーンシート用帯電防止剤組成物]
本発明のセラミックグリーンシート用帯電防止剤組成物(以下、帯電防止剤組成物ともいう)は、前記一般式(I)で表される化合物(以下、化合物(I)ともいう)と有機溶媒とを含有し、化合物(I)100重量部に対して、鉄イオンの含有量が0.010重量部以下である、帯電防止剤組成物である。上記構成により、セラミックグリーンシートを離型する際の帯電を抑制することができる。その理由は不明であるが、化合物(I)が特定のヒドロキシアルキル基を有するアミンで中和されたものであり、かつ鉄イオンの含有量を一定以下にし、セラミックスラリー組成物中において化合物(I)中のアニオンと鉄イオンとのコンプレックス形成を抑制することで、該スラリー組成物を用いて得られたグリーンシートの帯電防止性が向上すると推察される。また、ヒドロキシアルキル基は、鉄イオンとのコンプレックス形成の抑制だけでなく、化合物(I)の親水性を高めることでも帯電防止性を高めていると考えられる。以下、本発明の帯電防止剤組成物を詳細に説明する。
【0017】
(化合物(I))
化合物(I)は、セラミックグリーンシートの帯電防止の観点から用いられる。化合物(I)において、帯電防止性及び化合物(I)の有機溶媒に対する溶解性の観点から、Rは炭素数8〜22のアルキル基を示すが、好ましくは炭素数8〜18のアルキル基であり、より好ましくは炭素数8〜14のアルキル基である。
【0018】
化合物(I)において、帯電防止性及び化合物(I)の有機溶媒に対する溶解性の観点から、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示すが、帯電防止性の向上の観点から好ましくはエチレン基である。
【0019】
化合物(I)において、帯電防止性及び化合物(I)の有機溶媒に対する溶解性の観点から、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数であるが、好ましくは1〜20の数であり、より好ましくは1〜10の数であり、更に好ましくは1〜5の数であり、より更に好ましくは1〜4の数であり、更により好ましくは2〜4の数である。
【0020】
化合物(I)において、帯電防止性及び化合物(I)の有機溶媒に対する溶解性の観点から、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を示し、少なくとも1つは炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基である。前記炭素数1〜18のアルキル基の炭素数は、同様の観点から、1〜12が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜3が更に好ましい。炭素数1〜18のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。前記ヒドロキシアルキル基としては、同様の観点から、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシイソプロピル基等が挙げられ、好ましくはヒドロキシエチル基である。帯電防止性及び化合物(I)の有機溶媒に対する溶解性の観点から、R、R及びRは、2つ以上が炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であることがより好ましく、全てが炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であることが更により好ましく、2つ以上がヒドロキシエチル基であることがより更に好ましく、全てがヒドロキシエチル基であることが更により好ましい。
【0021】
化合物(I)の含有量は、帯電防止性及び化合物(I)の有機溶媒に対する溶解性の観点から、帯電防止剤組成物中、10〜90重量%が好ましく、20〜80重量%がより好ましく、30〜70重量%が更に好ましい。一般式(I)は、後述する一般式(II)と一般式(IV)との中和物を表すものであり、帯電防止剤組成物中において、化合物(I)の一部又は全部が、下記式(I’)の通り、アニオンとカチオンとに電離していてもよい。なお、下記式(I’)中、R、A、n、R、R、Rは前記化合物(I)の場合と同様である。なお、本明細書において、「化合物(I)」は、前記式(I)で表わされる化合物及び/又は下記式(I’)で表される化合物を表すものとする。
【化2】

【0022】
本発明では、化合物(I)を帯電防止剤として単独で使用しても良く、帯電防止性を有する他の化合物と混合して使用しても良い。ただし、帯電防止剤組成物の帯電防止性の観点から、帯電防止性を有する化合物の合計100重量部に対し、化合物(I)の割合は、好ましくは50重量部以上であり、より好ましくは70重量部以上であり、更に好ましくは90重量部以上であり、より更に好ましくは95重量部以上である。帯電防止性を有する他の化合物としては、非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0023】
(有機溶媒)
本発明の帯電防止剤組成物に用いられる有機溶媒としては、セラミックグリーンシート作製時における溶媒の除去性の観点から、1013hPaにおける沸点が250℃以下のものが好ましく、200℃以下のものがより好ましい。
【0024】
また、化合物(I)の溶解性、及びセラミックスラリー組成物への混合性の観点から、溶解度パラメータ(POLYMER HANDBOOK THIRD EDITION 1989 by John Wiley & Sons, Incに記載のSP値)が、15.0〜30.0(MPa)1/2である有機溶媒が好ましく、20.0〜30.0(MPa)1/2である有機溶媒がより好ましく、22.0〜30.0(MPa)1/2である有機溶媒が更に好ましい。
【0025】
上記物性を満足する有機溶媒としては、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、アルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類等が挙げられる。以下に、有機溶媒の具体例を例示するが、括弧内の数値は、溶解度パラメータ(単位:(MPa)1/2)を示す。帯電防止性及び化合物(I)の溶解性の観点から、好ましくはエタノール(26.0)、イソプロパノール(23.5)、イソブタノール(21.5)、ベンジルアルコール(24.8)等のアルコール系溶媒;アセトン(20.3)、メチルエチルケトン(19.0)、メチルイソブチルケトン(17.2)、ジエチルケトン(18.0)等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル(15.4)、テトラヒドロフラン(18.6)、ジオキサン(20.5)等のエーテル系溶媒:エチレングリコール(29.9)、ジエチレングリコール(24.8)等のグリコール系溶媒;ジエチレングリコールモノエチルエーテル(23.5)、エチレングリコールモノブチルエーテル(20.2)等のグリコールエーテル系溶媒;その他、トルエン(18.3)、n−ヘキサン(15.0)、酢酸n−ブチル(17.4)、酢酸エチル(18.6)等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。より好ましくは、化合物(I)の溶解性の観点から、エタノール(26.0)、イソプロパノール(23.5)、エチレングリコール(29.9)、ジエチレングリコール(24.8)である。
【0026】
有機溶媒の含有量は、化合物(I)の溶解性の観点から、帯電防止剤組成物中、10〜90重量%が好ましく、20〜80重量%がより好ましく、30〜70重量%が更に好ましい。同様の観点から、有機溶媒の含有量は、化合物(I)100重量部に対して、10〜900重量部が好ましく、25〜400重量部がより好ましく、40〜250重量部が更に好ましい。
【0027】
本発明の帯電防止剤組成物は、帯電防止性の観点から、化合物(I)100重量部に対して、鉄イオンの含有量が0.010重量部以下であり、好ましくは0.008重量部以下であり、より好ましくは0.006重量部以下であり、より更に好ましくは0.004重量部以下であり、生産性の観点から下限は0.0001重量部が好ましい。なお、鉄イオンは2価と3価の鉄イオンの合計を表す。
【0028】
また、本発明の帯電防止剤組成物は、帯電防止性の観点から、化合物(I)100重量部に対して、ナトリウムイオンの含有量が好ましくは0.020重量部以下であり、より好ましくは0.015重量部以下であり、更に好ましくは0.010重量部以下であり、より更に好ましくは0.007重量部以下であり、生産性の観点から下限は0.0001重量部が好ましい。ナトリウムイオンの含有量を一定以下にすることで、化合物(I)の電離を抑制し、化合物(I)のアニオンとナトリウムイオンとのコンプレックス形成を抑制することで、セラミックグリーンシートにした際の帯電防止効果が向上すると考えられる。
【0029】
本発明の帯電防止剤組成物は、帯電防止性の観点から、化合物(I)100重量部に対して、好ましくは鉄イオンの含有量が0.010重量部以下であり、かつナトリウムイオンの含有量が0.020重量部以下であり、より好ましくは鉄イオンの含有量が0.008重量部以下であり、かつナトリウムイオンの含有量が0.015重量部以下であり、更に好ましくは鉄イオンの含有量が0.006重量部以下であり、かつナトリウムイオンの含有量が0.010重量部以下であり、より更に好ましくは鉄イオンの含有量が0.004重量部以下であり、かつナトリウムイオンの含有量が0.007重量部以下である。
【0030】
本発明の帯電防止剤組成物は、帯電防止性の観点から、組成物中の鉄イオンの含有量が、好ましくは50ppm以下であり、より好ましくは40ppm以下であり、更に好ましくは30ppm以下であり、より更に好ましくは20ppm以下であり、生産性の観点から下限は1ppmである。同様の観点から、組成物中のナトリウムイオンの含有量が好ましくは100ppm以下であり、より好ましくは75ppm以下であり、更に好ましくは50ppm以下であり、より更に好ましくは30ppm以下であり、生産性の観点から下限は1ppmである。なお、ナトリウムイオン及び鉄イオンは、後述する式(II)〜(IV)で表される原料由来のものと推定され、例えば、式(II)〜(IV)の化合物を製造する際の原料、製造装置、容器などから混入するためと推定される。
【0031】
本発明の帯電防止剤組成物のpHは、帯電防止性の観点から、3〜9が好ましく、4〜8がより好ましい。
【0032】
[帯電防止剤組成物の製造方法]
本発明の帯電防止剤組成物の製造方法は、特に限定されないが、化合物(I)と有機溶媒との混合物(以下、単に混合物ともいう)を吸着剤で吸着処理する方法や、前記混合物をイオン交換樹脂で処理する方法が例示できる。これにより、ナトリウムイオンや鉄イオンの含有量を上記範囲内に低減することができる。
【0033】
化合物(I)は、例えば下記式(II)で表される化合物(以下、単に化合物(II)ともいう)を中和して得られる。なお、下記式(II)中、R、A及びnは前記化合物(I)の場合と同様である。
【化3】

【0034】
化合物(II)を得る方法としては、例えば下記式(III)で表される化合物をクロロスルホン酸や無水硫酸(SOガス)と反応させて硫酸化する方法が挙げられる。なお、下記式(III)中、R、A及びnは前記化合物(I)の場合と同様である。
【化4】

【0035】
化合物(II)の具体例としては、ポリ(1〜30)オキシエチレンオクチルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜30)オキシエチレンノニルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜30)オキシエチレンデシルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜30)オキシエチレンウンデシルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜30)オキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜30)オキシエチレンミリスチルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜30)オキシエチレンセシルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜30)オキシエチレンステアリルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜30)オキシエチレンオレイルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜30)オキシエチレンベヘニルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜30)オキシプロピレンデシルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜30)オキシプロピレンウンデシルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜30)オキシプロピレンラウリルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜30)オキシプロピレンミリスチルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜30)オキシブテンデシルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜30)オキシプロピレンウンデシルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜30)オキシブテンラウリルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜30)オキシブテンミリスチルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜15)オキシエチレンポリ(1〜15)オキシプロピレンデシルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜15)オキシエチレンポリ(1〜15)オキシプロピレンウンデシルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜15)オキシエチレンポリ(1〜15)オキシプロピレンラウリルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜15)オキシエチレンポリ(1〜15)オキシプロピレンミリスチルエーテル硫酸エステル等が挙げられる。なかでも、化合物(I)の帯電防止性及び有機溶媒に対する溶解性の観点から、ポリ(1〜20)オキシエチレンオクチルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜20)オキシエチレンノニルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜20)オキシエチレンデシルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜20)オキシエチレンウンデシルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜20)オキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜20)オキシエチレンミリスチルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜20)オキシエチレンセシルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜20)オキシエチレンステアリルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜20)オキシエチレンオレイルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜15)オキシエチレンポリ(1〜15)オキシプロピレンデシルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜15)オキシエチレンポリ(1〜15)オキシプロピレンウンデシルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜15)オキシエチレンポリ(1〜15)オキシプロピレンラウリルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜15)オキシエチレンポリ(1〜15)オキシプロピレンミリスチルエーテル硫酸エステルが好ましく、ポリ(1〜15)オキシエチレンオクチルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜5)オキシエチレンノニルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜5)オキシエチレンデシルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜5)オキシエチレンウンデシルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜5)オキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル、ポリ(1〜5)オキシエチレンミリスチルエーテル硫酸エステルがより好ましい。なお、上記括弧内の数値はオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。
【0036】
化合物(II)を中和するための中和剤としては、下記式(IV)で表わされる化合物(以下、化合物(IV)ともいう)を用いる。なお、下記式(IV)中、R、R及びRは前記化合物(I)の場合と同様である。
【化5】

【0037】
化合物(IV)としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノメチルモノエタノールアミン、及びモノメチルジエタノールアミンから選ばれる1種以上が好ましいが、有機溶媒への溶解性の観点から、より好ましくはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミンであり、更に好ましくは、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンである。
【0038】
化合物(II)を中和する工程は、化合物(II)と、化合物(IV)とを混合することにより行うことが好ましい。混合方法は、特に限定がなく、例えば、前記有機溶媒中で化合物(II)と化合物(IV)とを混合すればよい。化合物(II)と化合物(IV)とを混合する際は、帯電防止性の観点から、中和する対象物である化合物(II)1molに対して、化合物(IV)を0.95〜1.4molの割合で混合することが好ましく、より好ましくは0.97〜1.4mol、更に好ましくは0.98〜1.3mol、更により好ましくは0.98〜1.2molの割合で混合する。
【0039】
化合物(I)と有機溶媒との混合物を吸着剤で吸着処理する際の吸着剤は、ナトリウムイオン及び鉄イオンの除去性の観点から、酸化アルミニウム含有量が25〜70重量%の吸着剤が好ましく、40〜65重量%の吸着剤がより好ましく、50〜65重量%の吸着剤が更に好ましい。前記吸着剤は、酸化アルミニウム以外に、二酸化ケイ素、酸化マグネシウムなどを含んでいてもよい。なお、吸着処理は、化合物(I)及び有機溶媒を含む混合物(以下、被吸着処理物ともいう)と、吸着剤とを混合することにより行われるが、その方法に特に制限はなく、上記被吸着処理物に一度に吸着剤を添加する方法や、徐々に吸着剤を添加する方法などが挙げられる。
【0040】
前記吸着剤の具体例としては、協和化学社製キョーワード200S(酸化アルミニウム含有量:54重量%)、協和化学社製キョーワード300(酸化アルミニウム含有量:26重量%)等が挙げられる。
【0041】
前記吸着剤の添加量は、コスト低減と吸着効率の観点から、前記化合物(I)100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.7〜7重量部であり、更に好ましくは0.8〜5重量部であり、より更に好ましくは1〜5重量部であり、より更に好ましくは1〜3重量部である。
【0042】
吸着処理の際、着色を抑制する観点から、被吸着処理物及び吸着剤の温度は、いずれも10〜100℃が好ましく、より好ましくは30〜100℃であり、更に好ましくは40〜90℃である。同様の観点から、特に被吸着処理物に吸着剤を添加する場合、被吸着処理物の温度は10〜80℃が好ましく、より好ましくは10〜70℃、更に好ましくは10〜50℃である。また、被吸着処理物と吸着剤の混合時間は、生産性と吸着除去性の観点から、0.5〜5時間が好ましく、0.5〜3時間がより好ましい。
【0043】
本発明では、前記のようにして得られた吸着処理物から、ろ過工程等により吸着剤を除去して、化合物(I)の有機溶媒溶液(帯電防止剤組成物)を得ることができる。ろ過工程を行う場合は、ろ過効率と着色抑制の観点から、吸着処理物をろ過工程に供する前に、吸着処理物の温度を0〜40℃にすることが好ましい。
【0044】
また、化合物(I)及び有機溶媒を含む混合物中の鉄イオンやナトリウムイオンは、イオン交換樹脂によっても低減することができる。イオン交換樹脂としては、カチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂、又はカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を混合したものが挙げられるが、具体例としてはカチオン交換樹脂では、三菱化学社製ダイヤイオンSK1B、ダイヤイオンWK10等が挙げられ、アニオン交換樹脂では、三菱化学社製ダイヤイオンSA10A、ダイヤイオンWA10等が挙げられる。
【0045】
[セラミックスラリー組成物]
本発明のセラミックスラリー組成物は、本発明の帯電防止剤組成物と、セラミック材料と、有機溶剤とを含む。その他にも必要に応じて、バインダー、高分子分散剤等の分散剤、可塑剤、消泡剤等の助剤などを含むことができる。
【0046】
セラミックスラリー組成物中の化合物(I)の含有量は、セラミック材料の微分散性と帯電防止性の観点から、セラミック材料100重量部に対して0.05〜2.5重量部が好ましく、0.1〜2.3重量部がより好ましく、0.15〜2.0重量部が更に好ましく、0.5〜1.0重量部がより更に好ましい。同様の観点から、化合物(I)の含有量は、セラミックスラリー組成物中、0.01〜1重量%が好ましく、0.05〜0.5重量%がより好ましい。
【0047】
(セラミック材料)
セラミック材料は、金属酸化物又は複合金属酸化物等からなる粉体であり、具体的には、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、酸化チタン、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、フェライト、二酸化ケイ素、炭化ケイ素等が挙げられる。帯電防止性の観点からは、チタン酸バリウムを主成分として含むセラミック材料が好ましく、チタン酸バリウムを5〜100重量%の含有量で含むセラミック材料がより好ましく、チタン酸バリウムを60〜100重量%の含有量で含むセラミック材料が更に好ましく、チタン酸バリウムを実質100重量%の含有量で含むセラミック材料がより更に好ましい。
【0048】
セラミックスラリー組成物中のセラミック材料の含有量は、帯電防止性及びセラミック材料の分散性の観点から、5〜60重量%が好ましく、10〜50重量%がより好ましく、15〜40重量%が更に好ましい。
【0049】
(有機溶剤)
本発明のセラミックスラリー組成物は、帯電防止剤組成物中の化合物(I)の溶解性とセラミック材料の分散性の観点から、有機溶剤を含有する。有機溶剤としては、帯電防止剤組成物の化合物(I)の溶解性、セラミック材料の微分散性及び必要に応じて添加される高分子分散剤との相溶性の観点から、前述の溶解度パラメータが15.0〜30.0(MPa)1/2であるものが好ましい。なかでも、セラミック材料の微分散性及び必要に応じて添加される高分子分散剤との相溶性の観点から15.0(MPa)1/2以上20.0(MPa)1/2未満の有機溶剤と、帯電防止剤組成物の化合物(I)の溶解性の観点から20.0〜30.0(MPa)1/2の有機溶剤とを併用することがより好ましい。この場合、全有機溶剤中、15.0(MPa)1/2以上20.0(MPa)1/2未満の有機溶剤の含有量は、10〜90重量%が好ましく、20〜80重量%がより好ましい。また、全有機溶剤中、20.0〜30.0(MPa)1/2の有機溶剤の含有量は、10〜90重量%が好ましく、20〜80重量%がより好ましい。
【0050】
具体的には、キシレン(18.0)、酢酸エチル(18.6)、トルエン(18.3)、テトラヒドロフラン(18.6)、メチルエチルケトン(19.0)、アセトン(20.3)、ブチルセロソルブ(20.2)、ジメチルホルムアミド(24.8)、n−プロパノール(24.3)、エタノール(26.0)、ジメチルスルホキシド(24.6)、n−ブタノール(23.3)、メタノール(29.7)などの有機溶剤が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、上述した帯電防止剤組成物に含まれる有機溶媒と同じものを用いても良い。なお、上記括弧内は、溶解度パラメータ(単位:(MPa)1/2)を示す。
【0051】
セラミックスラリー組成物中の有機溶剤の含有量は、化合物(I)の均一分散性の観点からセラミック材料100重量部に対して80〜500重量部が好ましく、100〜400重量部がより好ましく、120〜380重量部が更に好ましい。同様の観点から、有機溶剤の含有量は、セラミックスラリー組成物中、35〜80重量%が好ましく、40〜70重量%がより好ましい。なお、上記セラミックスラリー組成物中の有機溶剤の含有量は、帯電防止剤組成物中の有機溶媒の量を含む。
【0052】
(バインダー)
本発明のセラミックスラリー組成物は、グリーンシートの成形性、及び乾燥後のシートの強度維持の観点からバインダーを含有することが好ましい。バインダーとしては、ポリビニルアルコール、カチオン化デンプン、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等のブチラール樹脂、あるいは(メタ)アクリルアミド重合体、(メタ)アクリル酸重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体等の(メタ)アクリル系樹脂などが挙げられるが、グリーンシートの成形性向上の観点から、好ましくはエチルセルロース、ポリビニルブチラール等のブチラール樹脂、(メタ)アクリル系樹脂であり、より好ましくはポリビニルブチラール等のブチラール樹脂である。
【0053】
セラミックスラリー組成物中のバインダーの含有量は、グリーンシートの強度維持及びバインダー機能を発揮させる観点から、セラミック材料100重量部に対して0.5〜20重量部が好ましく、1〜15重量部がより好ましい。
【0054】
(分散剤)
本発明のセラミックスラリー組成物に使用できる分散剤としては、界面活性剤、オリゴマー型の分散剤等が挙げられるが、化合物(I)との相互作用を抑制する観点から、ノニオン系分散剤、アニオン系分散剤、両性イオン系分散剤が好ましい。
【0055】
(可塑剤)
本発明のセラミックスラリー組成物に使用できる可塑剤としては、通常のエステル系可塑剤が挙げられるが、グリーンシートの強度向上の観点から、フタレート系エステル、トリメリテート系エステルが好ましい。
【0056】
本発明のセラミックスラリー組成物中のナトリウムイオンの含有量は、帯電防止性の観点から、1ppm以下が好ましく、0.5ppm以下がより好ましく、0.3ppm以下が更に好ましい。同様の観点から、セラミックスラリー組成物中の鉄イオンの含有量は、0.5ppm以下が好ましく、0.3ppm以下がより好ましく、0.1ppm以下が更に好ましい。
【0057】
本発明のセラミックスラリー組成物のpHは、帯電防止性の観点から、4〜10が好ましく、5〜9がより好ましい。
【0058】
[セラミックスラリー組成物の製造方法]
本発明のセラミックスラリー組成物は、例えば分散剤を用いてセラミック材料を有機溶剤に分散させる工程を含む製造方法によって製造できる。前記の分散工程は、例えば、分散剤、セラミック材料及び有機溶剤を、好ましくはジルコニアビーズと共に、ボールミル等で混合することを含む。分散工程後、本発明の帯電防止剤組成物、及び必要に応じて使用されるバインダー等のその他の成分を混合して、本発明のセラミックスラリー組成物を得ることができる。
【0059】
[セラミックグリーンシートの製造方法]
本発明のセラミックグリーンシートは、上述したセラミックスラリー組成物を、アプリケーターやドクターブレード等を使用して、例えばシリコーン処理されたポリエステルフィルム等のフィルム上に均一に塗布し、加熱・乾燥して得ることができる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を、その実施例及び比較例により、さらに具体的に説明する。なお、以下において、「%」は、特に断らない限り「重量%」を示す。
【0061】
[実施例1]
実施例1の帯電防止剤(化合物(I))としては、POE(3)ラウリルエーテル硫酸エステルのトリエタノールアミン塩を用いた。なお、POE(3)とは、上記式(I)において、Aがエチレン基であり(即ち、AOがオキシエチレン基であり)、オキシエチレン基の平均付加モル数nが3であることを意味する。以下に、POE(3)ラウリルエーテル硫酸エステルのトリエタノールアミン塩を含む帯電防止剤組成物の調製方法を示す。
【0062】
(実施例1の帯電防止剤組成物の調製方法)
薄膜式硫酸化反応装置によりSOガスを用いてPOE(3)ラウリルエーテル(花王社製エマルゲン103)の硫酸化を行い、POE(3)ラウリルエーテル硫酸エステルを得た。次に、攪拌羽根を設置した容量500mlの四つ口フラスコにイソプロパノール162.3g、及びトリエタノールアミン47.0g(日本触媒社製トリエタノールアミン、POE(3)ラウリルエーテル硫酸エステル1molに対して1.05mol)を仕込み、POE(3)ラウリルエーテル硫酸エステル116.7gを室温(25℃)下で滴下ロートを用いて30分かけて滴下した。滴下終了後、協和化学社製キョーワード200Sを3g(前記化合物(I)100重量部に対して吸着剤を1.8重量部使用)添加した後、25℃で、30分間攪拌し、アドバンテック社製No.2定性濾紙にてキョーワード200Sを濾別し、POE(3)ラウリルエーテル硫酸エステルのトリエタノールアミン塩及びイソプロパノールを含む帯電防止剤組成物(POE(3)ラウリルエーテル硫酸エステルのトリエタノールアミン塩の含有量50%)を得た。
【0063】
[実施例2〜10及び比較例1〜10]
実施例2〜10及び比較例3〜10
については、帯電防止剤及び有機溶媒を表1に記載のものに変更し、帯電防止剤の濃度を表1に記載の数値に変更したこと以外は、実施例1と同様にして帯電防止剤組成物を得た。尚、中和する対象物である化合物(II)1molに対して、化合物(IV)は1.05molの割合で用い、化合物(I)100重量部に対して吸着剤であるキョーワード200Sは1.8重量部の割合で用いた。比較例1については、協和化学社製キョーワード200Sの添加量を1g(化合物(I)100重量部に対して吸着剤であるキョーワード200Sは0.6重量部)とし、その後の攪拌時間を10分間としたこと以外は、実施例1と同様にして帯電防止剤組成物を得た。比較例2については、協和化学社製キョーワード200Sで処理しなかったこと以外は、実施例1と同様にして帯電防止剤組成物を得た。使用した帯電防止剤の詳細について以下に示す。
【0064】
(実施例2〜10で使用した帯電防止剤の詳細)
実施例2:POE(10)ラウリルエーテル(花王社製エマルゲン110)とトリエタノールアミン(日本触媒社製トリエタノールアミン)を用いて実施例1と同様に調製した。
実施例3:POE(3)ステアリルエーテル(花王社製エマルゲン303)とトリエタノールアミン(日本触媒社製トリエタノールアミン)を用いて実施例1と同様に調製した。
実施例4:POE(20)デシルエーテル(花王社研究所合成品)とトリエタノールアミン(日本触媒社製トリエタノールアミン)を用いて実施例1と同様に調製した。
実施例5:POE(5)オレイルエーテル(花王社製エマルゲン405)とトリエタノールアミン(日本触媒社製トリエタノールアミン)を用いて実施例1と同様に調製した。
実施例6:POE(15)ラウリルエーテル(花王社製エマルゲン115)とトリエタノールアミン(日本触媒社製トリエタノールアミン)を用いて実施例1と同様に調製した。
実施例7:実施例1と同じものを用いた。
実施例8:POE(17)デシルエーテル(花王社研究所合成品)とトリエタノールアミン(日本触媒社製トリエタノールアミン)を用いて実施例1と同様に調製した。
実施例9:POE(3)ラウリルエーテル(花王社製エマルゲン103)とジエタノールアミン(日本触媒社製ジエタノールアミン)を用いて実施例1と同様に調製した。
実施例10:POE(3)ラウリルエーテル(花王社製エマルゲン103)とモノエタノールアミン(日本触媒社製モノエタノールアミン)を用いて実施例1と同様に調製した。
【0065】
(比較例1〜10で使用した帯電防止剤の詳細)
比較例1:実施例1と同様のものを用いた。
比較例2:実施例1と同様のものを用いた。
比較例3:POE(16)ジスチリルフェニルエーテル(ライオン社製レオコール)とアンモニア水(昭和電工社製アンモニア水)を用いて実施例1と同様に調製した。
比較例4:重量平均分子量10000のポリエチレングリコール(東邦化学工業社製トーホーポリエチレングリコール)を用いた。
比較例5:ラウリルトリメチルアンモニウム塩(花王社製コータミン24P)を用いた。
比較例6:マレイン酸1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム塩(日油社製ニッサンアノン)を用いた。
比較例7:オルガノシロキサン(信越化学社製オルガノシロキサン)を用いた。
比較例8:POE(3)ラウリルエーテル(花王社製エマルゲン103)と水酸化ナトリウム(昭和電工社製水酸化ナトリウム)を用いて実施例1と同様に調製した。
比較例9:POE(3)ラウリルエーテル(花王社製エマルゲン103)とアンモニア水(昭和電工社製アンモニア水)を用いて実施例1と同様に調製した。
比較例10:POE(3)ラウリルエーテル(花王社製エマルゲン103)とトリメチルアミン(三井化学社製トリメチルアミン)を用いて実施例1と同様に調製した。
【0066】
[帯電防止剤組成物中のナトリウムイオン含有量の測定方法]
上記各帯電防止剤組成物について、島津製作所社製のICPM−8500(誘導結合プラズマ質量分析:ICP−MS)により、ナトリウムイオン含有量を測定した。結果を表1に示す。なお、ICP−MSとは、ICPによってイオン化された原子を質量分析計に導入することで、元素の同定・定量を行う方法である。73種類の元素の測定が可能であり、pptレベルの超高感度分析を行うことができる。
【0067】
[帯電防止剤組成物中の鉄イオン含有量の測定方法]
上記各帯電防止剤組成物について、島津製作所社製のICPM−8500により、鉄イオン含有量を測定した。結果を表1に示す。
【0068】
[セラミックスラリー組成物の調製方法]
チタン酸バリウム(和光純薬工業、試薬特級、BET比表面積より算出した平均粒径:80nm)20g、及び高分子分散剤であるカオーセラ8000(花王社製)0.4g(固形分換算)を直径1mmのジルコニアビーズ50gと共に100mlの容器に入れ、チタン酸バリウムの固形分濃度が50%になるようにトルエン(和光純薬工業、試薬特級)/エタノール(和光純薬工業、試薬特級)=48/52(容量比)の混合有機溶剤を加え、卓上型ボールミルにて、96時間、25℃で、分散処理を行った。次いで、該分散処理液に、ブチラール樹脂(積水化学社製BM−2)1.6g、可塑剤としてジオクチルフタレート(花王社製ビニサイザー80)0.32g、及び上記各帯電防止剤組成物0.16g(固形分換算)を加え、更にチタン酸バリウムの固形分濃度が35%になるようにトルエン/エタノール=48/52(容量比)の混合有機溶剤を加えて、卓上型ボールミルにて、2時間混合し、セラミックスラリー組成物(チタン酸バリウムの固形分濃度35%)
を得た。
【0069】
[セラミックグリーンシートの成形方法]
上記各セラミックスラリー組成物を、塗工厚50μmのアプリケーターによりシリコーン処理された離型フィルム(帝人デュポン社製ピューレックス)に塗工(温度25℃、湿度50%)し、60℃にて16時間乾燥し、セラミックグリーンシートを得た。
【0070】
[帯電防止性の評価方法]
上記各セラミックグリーンシートを前記離型フィルムとともに4cm×10cmの寸法の試験片に裁断し、塗工面と反対側(フィルム側)を下にして、90度剥離試験用治具を装着した卓上型精密試験機(島津製作所社製オートグラフAGS−X)の台座に両面テープ(ニチバン社製ナイスタックNWBB−20)を用いて固定した。次に、セラミックグリーンシートの片端を離型フィルムから少し剥離した後、1cm/秒の速度にて90度剥離し、セラミックグリーンシートの剥離面側の帯電量の最大値を、剥離面から3cm離れた場所に設置した静電気センサー(キーエンス社製SK−200)にて測定した。結果を表1に示す。帯電量の最大値が小さいほど、帯電防止性が良好であることを示す。
【0071】
【表1】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I):
【化1】

(式中、Rは炭素数8〜22のアルキル基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数であり、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を示し、少なくとも1つは炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基である。)で表される化合物と有機溶媒とを含有する、セラミックグリーンシート用帯電防止剤組成物であって、
該組成物中、前記一般式(I)で表される化合物100重量部に対して、鉄イオンの含有量が0.010重量部以下である、セラミックグリーンシート用帯電防止剤組成物。
【請求項2】
帯電防止剤組成物中、前記一般式(I)で表される化合物100重量部に対して、ナトリウムイオンの含有量が0.020重量部以下である、請求項1記載のセラミックグリーンシート用帯電防止剤組成物。
【請求項3】
前記有機溶媒は、溶解度パラメータが15.0〜30.0(MPa)1/2である、請求項1又は2記載のセラミックグリーンシート用帯電防止剤組成物。
【請求項4】
前記有機溶媒が、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、グリコール系溶媒及びグリコールエーテル系溶媒からなる群から選ばれる一種以上である、請求項1〜3いずれか記載のセラミックグリーンシート用帯電防止剤組成物。
【請求項5】
、R及びRが、ヒドロキシエチル基である、請求項1〜4いずれか記載のセラミックグリーンシート用帯電防止剤組成物。
【請求項6】
Aが、エチレン基である、請求項1〜5いずれか記載のセラミックグリーンシート用帯電防止剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか記載のセラミックグリーンシート用帯電防止剤組成物とセラミック材料と有機溶剤とを含有する、セラミックスラリー組成物。
【請求項8】
前記セラミック材料がチタン酸バリウムを含む、請求項7記載のセラミックスラリー組成物。
【請求項9】
前記セラミック材料100重量部に対して、セラミックスラリー組成物中、前記一般式(I)で表される化合物の含有量が0.05〜2.5重量部である、請求項7又は8記載のセラミックスラリー組成物。
【請求項10】
請求項7〜9いずれか記載のセラミックスラリー組成物を用いて得られる、セラミックグリーンシート。
【請求項11】
請求項1〜6いずれか記載のセラミックグリーンシート用帯電防止剤組成物の製造方法であって、前記一般式(I)で表わされる化合物と前記有機溶媒とを含む混合物を吸着剤で吸着処理する、セラミックグリーンシート用帯電防止剤組成物の製造方法。
【請求項12】
前記一般式(I)で表わされる化合物が、下記一般式(II):

【化2】


(式中、R、A及びnは前記化合物(I)の場合と同様である。)で表わされる化合物と下記一般式(IV):

【化3】


(式中、R、R及びRは前記化合物(I)の場合と同様である。)で表わされる化合物とを混合して得られる、請求項11記載のセラミックグリーンシート用帯電防止剤組成物の製造方法。
【請求項13】
前記吸着剤中の酸化アルミニウム含有量が25〜70重量%である、請求項11又は12記載のセラミックグリーンシート用帯電防止剤組成物の製造方法。
【請求項14】
前記一般式(I)で表わされる化合物100重量部に対して、前記吸着剤の添加量が0.7〜7重量部である、請求項11〜13いずれか記載のセラミックグリーンシート用帯電防止剤組成物の製造方法。



【公開番号】特開2012−36373(P2012−36373A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105223(P2011−105223)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】