説明

セラミックス焼成体及びその製造方法

【課題】円筒形状部の中空部に、円筒形状部の内径より外形寸法が僅かに小さい物体を容易に挿入可能な中空で有底の円筒形状を呈するセラミックス焼成体を提供する。
【解決手段】乾式CIP成形法を用い、開口した円筒形状部4を有し、その円筒形状部は、開口端近傍が奥側(開口端から離れた内部の側)より厚く、且つ、開口端近傍の内面側が拡開しているセラミックス成形体を得、焼成した後に、AA鎖線部分で切除して第2の厚肉部2を取り除く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口した円筒形状部を有するセラミックス焼成体と、それを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒形状のセラミック焼成体は、炉用管、加熱部品支持具をはじめとして、種々の用途に用いられている。このようなセラミック焼成体は、成形手段によって、セラミックス材料を成形し、円筒形状のセラミック成形体を得て、それを焼成することにより製造される。
【0003】
本発明は、このような円筒形状のセラミック焼成体にかかる技術を背景にするものである。同じ技術を背景とする先行文献としては、例えば、特許文献1が挙げられる。
【0004】
【特許文献1】特開平4−108670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
円筒形状のセラミックス焼成体を得るための焼成過程においては、一般に、同形状のセラミック成形体を得て、それの開口端を下にした状態で垂直に立てて焼成する方法が採用されている。しかしながら、この方法では、セラミック成形体の焼成中における変形によって、開口が狭くなり、問題が発生する場合がある。
【0006】
図2A及び図2Bは、ムライト管(従来のセラミックス焼成体)の一例を表す図である。図2Bは、焼成されたセラミック焼成体20b(焼結体)であるムライト管20の開口端を含む円筒形状部分を表す断面図であり、図2Aは、従来のセラミックス焼成体の製造方法において、そのムライト管20の焼成前におけるセラミック成形体20aの段階を表す断面図である。ムライト管20では、製品に必要な強度を確保するために、開口径を同一にしつつ、開口端近傍の肉厚(実体部分の厚さ)を厚く(好ましくは2段階で厚く)する態様を採る場合があり、図2A及び図2Bでは、その態様のムライト管が表されている。
【0007】
図2Aに示されるように、セラミック成形体20aの段階で、第1の厚肉部21及び第2の厚肉部22に相当する開口端近傍と、第1の厚肉部21及び第2の厚肉部22に対し実体部分の厚さが相対的に薄い薄肉部23に相当する奥側とにおいて、内径D21を同じにしていても、図2Bに示されるように、焼成して得られるセラミック焼成体20bでは、開口端近傍において、奥側の内径D31より小さい内径D32となる部分が形成されてしまう。ムライト管20(セラミック焼成体20b)では、BB鎖線部分で切除して第2の厚肉部22を除くことが可能であるが(図2Bを参照)、製品に必要な強度を確保するために設けた第1の厚肉部21を除くことは出来ないので、内径D32となる部分は残り、開口端近傍の圧肉部の内径が奥の薄肉部の内径と比べ小さくなるという問題は解消されない。
【0008】
ムライト管のような内部が中空で有底の円筒形状を呈するセラミック焼成体のみならず、開口した中空部分を有し、肉厚が厚い領域を有するセラミックス焼成体であれば、上記の問題に直面するおそれがあると考えられる。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、円筒形状部の中空部に、円筒形状部の内径より外形寸法が僅かに小さい物体を容易に挿入可能な、開口した円筒形状部を有するセラミックス焼成体を提供することにある。研究が重ねられた結果、以下の手段によって、上記課題が解決されることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、先ず、本発明によれば、開口した円筒形状部を有し、その円筒形状部は、開口端近傍が奥側(開口端から離れた内部の側)より厚く、且つ、開口端近傍の内面側が拡開しているセラミックス焼成体が提供される。
【0010】
次に、本発明によれば、開口した円筒形状部を有しその円筒形状部の開口端近傍の内面側を拡開させたセラミックス成形体を得た後に、そのセラミックス成形体を焼成して、円筒形状部の開口端近傍が奥側より厚いセラミックス焼成体を得るセラミックス焼成体の製造方法が提供される。
【0011】
本発明に係るセラミックス焼成体の製造方法においては、(セラミックス成形体の)開口端近傍を拡開させるに際し、乾式CIP(Cold Isostatic Pressing、冷間等方圧)成形法を用いることが好ましい。
【0012】
本発明に係るセラミックス焼成体及びセラミックス焼成体の製造方法において、セラミック焼成体を構成するセラミックス材料として、特に好ましいものはムライトやアルミナである。他に、セラミック焼成体を構成するセラミックス材料として、例えば、ジルコニア、チタニア、シリカ、マグネシア、フェライト、コージェライト、イットリア等の希土類元素の酸化物を含む酸化物系セラミックス、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸ジルコン酸鉛、希土類元素のマンガナイト、希土類元素のクロマイト等、窒化アルミニウム、窒化珪素,サイアロン、炭化珪素、炭化ホウ素、炭化タングステン等を挙げることが出来る。
【0013】
本明細書において、(開口した円筒形状部における)開口端近傍が奥側より厚いとは、円筒形状部の実体部分が、開口端近傍の方が奥側より厚いことを意味する。又、本明細書において、開口端近傍の内面側が拡開しているとは、(実体部分で形成される)円筒形状部における中空部(内部の空間部分)が、奥側に比べて開口端近傍(開口(中空部が外部の空間とつながる部分)を含み開口に近い部分)で拡がっていることを意味し、そうなるように円筒形状部の実体部分が形成されていることを指す。内面とは、円筒形状部における中空部(空間部分)と対する実体部分の面を指す。本明細書において、開口端近傍の内面側が拡開していることを、単に開口端近傍が拡開しているともいう。即ち、本発明に係るセラミックス焼成体においては、円筒形状部は、開口端近傍が奥側より厚く且つ拡開している。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るセラミックス焼成体は、(内部が中空で)開口した円筒形状部を有し、その円筒形状部は、開口端近傍が奥側より厚く且つ拡開しているので、円筒形状部(の中空部)に、円筒形状部の内径より外形寸法が僅かに小さい物体を容易に挿入することが出来る。奥側の内径より小さい内径となる部分が開口端近傍に形成されると、仮にその小さい内径が物体の外形寸法よりは大きく、物体を円筒形状部の中空部に収容可能であるとしても、挿入には困難が伴う。セラミックスは脆性材料であるため、挿入する物体が金属製品である場合には、セラミックス焼成体の一部である円筒形状部の内面に金属製品が衝突することによって、円筒形状部に欠損(カケ)が発生し、セラミックス焼成体が製品として使用出来なくなるおそれがある。特に、開口端面の角部に外力が作用すると、容易に欠損が生じてしまう。又、そうならないように、大変気を使った慎重な挿入作業を行わざるを得ない。本発明に係るセラミックス焼成体によれば、挿入時に円筒形状部の端面に物体が衝突し難く、欠損も生じ難く、加えて、その作業は従来よりも格段に容易なものとなる。
【0015】
本発明に係るセラミックス焼成体の製造方法は、(内部が中空で)開口した円筒形状部を有しその円筒形状部の開口端近傍を拡開させたセラミックス成形体を得た後に、そのセラミックス成形体を焼成して、円筒形状部の開口端近傍が奥側より厚いセラミックス焼成体を得るので、開口端近傍が奥側より厚いが故に、その開口端近傍の厚肉部の焼成による焼成収縮率が、他の部分(円筒形状部の奥側の薄肉部)と比べて大きくても、焼成後の内径を、少なくとも円筒形状部の奥側の内径と同等又はそれより大きくすることが可能である。従って、得られたセラミックス焼成体では、その円筒形状部の中空部に、円筒形状部の内径より外形寸法が僅かに小さい物体を、容易に挿入することが出来る。得られるセラミックス焼成体は製品として使用不可能にならないから、歩留まりが向上する(不良率の発生が抑制される)。
【0016】
既述のように、従来、開口端を下にした状態で垂直に立ててセラミックス成形体を焼成する方法が採られているが、こうすると、開口端近傍の強度を確保するために円筒形状部の開口端近傍を奥側より厚くしたセラミックス焼成体を得ようとする場合には、焼台等に直に接する部分の焼成収縮率(又は焼成時の収縮による変形量)は小さくなって内径は大きくなり、一方、焼台等に直に接していないが開口端近傍である厚肉部の焼成収縮率は大きくなって内径は小さくなる。そして、焼成収縮率は、開口端から離れ、奥側へ行くに従って、徐々に小さくなって内径は大きくなる。そのため、得られたセラミックス焼成体の円筒形状部の内径は一様でなくなり、円筒形状部の内径より外形寸法が僅かに小さい物体を円筒形状部の中空部に容易に挿入することは困難となる。本発明に係るセラミックス焼成体の製造方法によれば、このような問題を回避することが可能である。
【0017】
セラミックス焼成体は、焼成によって真円度を低下させる場合が多く、内径が一様ではないセラミックス焼成体に対して、機械加工等の手段によって内径を拡げることは困難である。本発明に係るセラミックス焼成体の製造方法では、焼成後に内径を拡げる加工を行なわなくても、端面に向かって内径が拡がった形状を得ることが出来るので、この点でも優位である。
【0018】
本発明に係るセラミックス焼成体の製造方法は、その好ましい態様において、(セラミックス成形体の)開口端近傍を拡開させるに際し、乾式CIP成形法を用いる。乾式CIP成形法では、成形用マンドレルの形状をセラミックス成形体に転写させることによって、セラミックス成形体の中空部を形成する面を成形することが出来る。従って、成形用マンドレルを所望の形状に製作しさえすれば、開口端近傍を精度よく拡開させることが可能である。セラミックス成形体を焼成する前において、開口端近傍の内径を拡げる方法として、乾式CIP成形法以外には、機械加工によって研摩する方法があるが、セラミックス成形体の内径より直径が小さい研削砥石を内挿して研磨する必要があることから、加工時間が長くなり、生産性は低くなる。加えて、同軸度よく機械加工することは困難である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について、適宜、図面を参酌しながら、実施形態を説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではない。本発明に係る要旨を損なわない範囲で、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良、置換を加え得るものである。例えば、図面は、好適な本発明に係る実施形態を表すものであるが、本発明は図面に表される態様や図面に示される情報により制限されない。本発明を実施し又は検証する上では、本明細書中に記述されたものと同様の手段若しくは均等な手段が適用され得るが、好適な手段は、以下に記述される手段である。
【0020】
図1A及び図1Bは、本発明に係るセラミックス焼成体の製造方法の一の実施形態を説明するための図であり、そのうち図1Bは、本発明に係るセラミックス焼成体の一の実施形態を表す図である。図1A及び図1Bは、図2A及び図2Bに対応した図であり、有底の円筒形状を呈するムライト5の、開口端を含む円筒形状部分を表した断面図である。図1Aは、焼成前のセラミック成形体5aの段階を表し、図1Bは、焼成後のセラミック焼成体5b(焼結体)の段階を表している。図1A及び図1Bでは、図2A及び図2Bと同様に、開口端を下にした状態で垂直に立てて焼成される状態が示されている。
【0021】
図1Bに示されるように、焼成後のムライト管5(セラミック焼成体5b)は、開口した円筒形状部4を有し、その円筒形状部4は、第1の厚肉部1、第2の厚肉部2で構成される開口端近傍が、薄肉部3で構成される奥側より厚くなっている。又、ムライト管5は、第1の厚肉部1、第2の厚肉部2で構成される開口端近傍において拡開している。第2の厚肉部2は、開口端面から(円筒形状部4の軸方向に(図1Bにおいて上下方向に))10〜30mm程度を占め、好ましくは20mm程度の範囲を占めて存在する。第1の厚肉部1は、第2の厚肉部2に続いて10〜30mm程度を占め、好ましくは20mm程度の範囲を占めて存在する。
【0022】
ムライト管5は、通常、炉用管や加熱部品支持具等に製品として使用されるときには、AA鎖線部分で切除し第2の厚肉部2は取り除かれるが(図1Bを参照)、製品に必要な強度を確保するために第1の厚肉部1は残される。第2の厚肉部2は取り除かれた後のムライト管5においても、開口した円筒形状部4は、第1の厚肉部1で構成される開口端近傍の内径をが、薄肉部3で構成される奥側より大きくすることが出来る。
【0023】
このようなムライト管5を製造する方法は、以下の通りである。先ず、例えば、α−Al粉末原料、SiOを、ムライトが生成し得る比率で調合し、均一に混合してスラリーを得る。次いで、そのスラリーを乾燥させ、顆粒状の造粒物を得た後、乾式CIP成形装置及び成形用マンドレルを使用して、所望の大きさ及び肉厚のチューブ状(有底の円筒形状)のセラミックス成形体5aを得る。
【0024】
この際に、円筒形状部4の開口端近傍に、第1の厚肉部1及び第2の厚肉部2を設け、2段階で肉厚を厚くする。第1の厚肉部1は、得られるムライト管を炉用管や加熱部品支持具等に製品として使用に耐えるようにセラミックス製品として必要な強度を付与するために設けるものであり、第2の厚肉部2は、後の焼成時の収縮変形を軽減するために設けるものである。
【0025】
そして、円筒形状部4の形状を直筒の形状ではなく、開口端側で拡開した形状にすることが肝要である。即ち、円筒形状部4の第1の第1の厚肉部1、第2の厚肉部2で構成される開口端近傍の内径D2を、奥側の内径D1より大きくする。図1Aに示されるセラミックス成形体5aでは、第1の厚肉部1の概ね中央から開口端側(第2の厚肉部2を含む)の内径D2を、奥側の内径D1より大きくしている(拡げている)。内径の差d(図1Aを参照、=D2−D1)は、0.5〜2.5mmであることが好ましく、1.0〜2.0mmであることがより好ましく、1.5mmであることが特に好ましい。又、内径の差dは、奥側の内径D1の1〜4%の寸法であることが好ましく、2〜3%の寸法であることがより好ましく、2.5%の寸法であることが特に好ましい。
【0026】
次に、セラミックス成形体5aを1500℃で60分焼成し、セラミックス焼成体5bを得る(図1Bを参照)。そして、ダイヤモンド製刃具を用いた研削装置を用い、AA鎖線部分で切除して第2の厚肉部2は取り除けば、炉用管や加熱部品支持具等に製品として使用可能なムライト管5が得られる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明について実施例を用いて、詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
【0028】
(実施例1)先ず、乾式CIP成形装置及び成形用マンドレルを使用して、図1Aに示されるセラミックス成形体5aを得た。
【0029】
図1Cは、成形に使用した成形用マンドレルを表す断面図である。図1Cに示される成形用マンドレル35において、長さL1(高さ)を570mmとした。そして、頂部(図1Cにおいて最上部)から、底部(図1Cにおいて最下部)を基準として46mmの位置までは(L2=46mm)、直径d41をφ64.45mmとし、底部に向かって徐々に直径を大きくし、底部から23mmの位置で(L3=23mm)、直径d42を、それより0.75mm大きいφ65.20mmとし、その位置から底部まではφ65.20mmのままとした。
【0030】
CIP成形時の弾性回復量が足されるので、成形用マンドレル35の直径(外径)に対し、セラミックス成形体5aの内径は、少し大きくなる。具体的には、セラミックス成形体5aの内径は、成形用マンドレル35の直径と比較して0.4〜0.5%程度大きくなる。本例では、0.45%(約0.3mm)大きくなり、成形用マンドレルの直径d41(=φ64.45mm)に対して、セラミックス成形体5aの内径D1は、0.3mm大きいφ64.75mmとなり、成形用マンドレルの直径d42(=φ65.20mm)に対して、セラミックス成形体5aの内径D2は、0.3mm大きいφ65.50mmとなった。
【0031】
セラミックス成形体5aの薄肉部3の厚さは、2.05mm(=(外径φ68.85mm−内径D1φ64.75mm)/2)であり、第1の厚肉部1の厚さは、3.65mm(=(外径φ72.8mm−内径D2φ65.50mm)/2)であり、第2の厚肉部2の厚さは、6.75mm(=(外径φ79.0mm−内径D2φ65.50mm)/2)であった。第1の厚肉部1の長さは12mmであり、第2の厚肉部2の長さは18mmであった。
【0032】
次に、上記の寸法のセラミックス成形体5aを焼成して、ムライト管(図1Bに示されるセラミックス焼成体5b)を得た。得られたムライト管(セラミックス焼成体5b)の薄肉部3の内径はφ56.00mmであり、第1の厚肉部1の内径はφ56.30mmであった。薄肉部3の内径D11より、第1の厚肉部1の内径D12の方を大きくすることが出来た。
【0033】
(比較例1)実施例1に準じて、乾式CIP成形装置及び成形用マンドレルを使用して、図2Aに示されるセラミックス成形体20aを得た。
【0034】
図2Cは、成形に使用した成形用マンドレルを表す断面図である。図2Cに示される成形用マンドレル45において、長さ(高さ)を570mmとし、直径d51をφ64.45mmとした。
【0035】
CIP成形時の弾性回復量が足されるので、成形用マンドレル45の直径(外径)に対し、セラミックス成形体20aの内径は、少し大きくなる。具体的には、セラミックス成形体20aの内径は、成形用マンドレル45の直径と比較して0.4〜0.5%程度大きくなる。本例では、0.45%(約0.3mm)大きくなり、成形用マンドレルの直径d51(=φ64.45mm)に対して、セラミックス成形体20aの内径D21は、一律に0.3mm大きいφ64.75mmとなった。
【0036】
セラミックス成形体20aの薄肉部23の厚さは、2.05mm(=(外径φ68.85−内径D21φ64.75)/2)であり、第1の厚肉部21の厚さは、4.025mm(=(外径φ72.8mm−内径D21φ64.75mm)/2)であり、第2の厚肉部22の厚さは、7.125mm(=(外径φ79.0mm−内径D21φ64.75mm)/2)であった。
【0037】
次に、上記の寸法のセラミックス成形体20aを焼成して、ムライト管(図2Bに示されるセラミックス焼成体20b)を得た。得られたムライト管(セラミックス焼成体20b)の薄肉部23の内径D31はφ56.00mmであり、第1の厚肉部21の内径D32はφ55.75mmであった。薄肉部23の内径D31より、第1の厚肉部21の内径D32の方が、0.25mm小さく(狭く)なってしまった。
【0038】
(考察)比較例1において、セラミックス成形体20aを焼成すると、第2の厚肉部22は薄肉部23に比べて、肉厚が厚い(大きい)ので、焼成による収縮率が大きくなり、第2の厚肉部22の内径D33は、薄肉部23の内径D31より小さくなると思われるが、実際にはそうはならない。これは、焼台との摩擦抵抗によって収縮が阻害されるためと考えられ、実際には、第2の厚肉部22の内径D33は、薄肉部23の内径D31よりも、大きくなる(図2Bを参照)。即ち、外見上は、ムライト管(セラミックス焼成体20b)の開口は拡がっているように見えるのである。
【0039】
ところが、上記の摩擦抵抗による収縮を阻害する影響は、焼台から離れるに従って薄れるので、第1の厚肉部21では、その影響がなくなり、肉厚が厚い(大きい)ことに起因する収縮率が大きくなる影響の方が寄与するようになる。そのため、第1の厚肉部21の内径D32は、薄肉部23の内径D31よりも、小さくなったと考えられる(図2Bを参照)。
【0040】
これに対し、実施例1では、セラミックス成形体5aの段階で、奥側より開口端近傍を拡開しているので、ムライト管(セラミックス焼成体5b)において、第1の厚肉部1の内径D12は、薄肉部3の内径D11よりも、小さくはならなかったと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係るセラミックス焼成体は、例えば、炉用管や加熱部品支持具等に製品として、利用することが出来る。本発明に係るセラミックス焼成体の製造方法は、これらの本発明に係るセラミックス焼成体を製造する手段として、好適に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1A】本発明に係るセラミックス焼成体の製造方法の一の実施形態を説明するための図であり、焼成前のセラミック成形体の段階を表す断面図である。
【図1B】本発明に係るセラミックス焼成体の一の実施形態を表す断面図である。
【図1C】実施例(実施例1)で使用した成形用マンドレルを表す断面図である。
【図2A】従来のセラミックス焼成体の製造方法の一例を説明するための図であり、焼成前のセラミック成形体の段階を表す断面図である。
【図2B】従来のセラミックス焼成体の一例を表す断面図である。
【図2C】実施例(比較例1)で使用した成形用マンドレルを表す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1,21:第1の厚肉部、2,22:第2の厚肉部、3,23;薄肉部、4:円筒形状部、5,10,20:ムライト管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口した円筒形状部を有し、その円筒形状部は、開口端近傍が奥側より厚く、且つ、開口端近傍の内面側が拡開しているセラミックス焼成体。
【請求項2】
開口した円筒形状部を有しその円筒形状部の開口端近傍の内面側を拡開させたセラミックス成形体を得た後に、そのセラミックス成形体を焼成して、円筒形状部の開口端近傍が奥側より厚いセラミックス焼成体を得るセラミックス焼成体の製造方法。
【請求項3】
前記開口端近傍を拡開させるに際し、乾式CIP成形法を用いる請求項2に記載のセラミックス焼成体の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【公開番号】特開2009−241400(P2009−241400A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90462(P2008−90462)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】