セラミックファイバーブロック及びその取付け方法
【課題】工業炉の炉壁の内側面への取付け作業性に優れ、安価で長期間に亘ってセラミック粒子の飛散を防止することが可能なセラミックファイバーブロック及びその取付け方法を提供する。
【解決手段】帯状のセラミックファイバーブランケット11を葛折り状に折畳んで形成した直方体状のブロック体12と、ブロック体12の折目部16を有する裏面に装着された取付け金物13とを備え、使用にあっては取付け手段31、44で固定される取付け金物13を介して工業炉の炉壁29の内側面に並べて取付けられるセラミックファイバーブロック10であって、使用時に炉内側となるブロック体12の表面側を、ブロック体12の表面から途中位置まで、結晶セラミックファイバーブランケットで形成された箱状のキャップ部材15で覆った。
【解決手段】帯状のセラミックファイバーブランケット11を葛折り状に折畳んで形成した直方体状のブロック体12と、ブロック体12の折目部16を有する裏面に装着された取付け金物13とを備え、使用にあっては取付け手段31、44で固定される取付け金物13を介して工業炉の炉壁29の内側面に並べて取付けられるセラミックファイバーブロック10であって、使用時に炉内側となるブロック体12の表面側を、ブロック体12の表面から途中位置まで、結晶セラミックファイバーブランケットで形成された箱状のキャップ部材15で覆った。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業炉の炉壁の内側面に並べて取付けるセラミックファイバーブロック及びその取付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミックファイバーブロック(以下、「CFブロック」ともいう)を工業炉(例えば熱処理炉)の炉壁の内側面に取付ける場合、CFブロックからセラミック粒(ショット)が炉内に飛散することを防止するため、例えば、特許文献1には、図11に示すように、セラミックファイバーブランケット(以下、「CFブランケット」ともいう)100の長尺物を順次に折り曲げ加工してその複数枚を積層して積層体101を形成し、積層体101を工業炉の炉壁(鉄皮)102の内側面に対して積層体101のCFブランケット100の積層面が平行になるように取付ける際に、炉内側に現れる積層体101の面をセラミック粒子の含有量が積層体を形成しているCFブランケット100よりも少ないCFブランケット103で被覆したCFブロック104が提案されている。ここで、符号105は、CFブロック104を工業炉の炉壁102の内側面に取付ける保持金物である。
【0003】
また、特許文献2には、図11に示すように、長尺の結晶アルミナファイバーマット106と長尺の結晶アルミナファイバーブランケット107を重ね合せたものを、嵩密度が低い結晶アルミナファイバーマット106が内層体、嵩密度の高い結晶アルミナファイバーブランケット107が外層体となるように葛折り状に折畳んで形成した積層体108と、積層体108に装着した図示しない取付け金物(チャンネル)とを有するCFブロック109を形成し、取付け金物を介して工業炉の炉壁102の内側面に固定することが提案されている。
【0004】
更に、CFブロックに含まれるセラミック粒の炉内への脱落を防止するCFブロックの取付け方法として、図11に示すように、長尺の非晶質CFブランケット110を葛折り状に折畳んでCFブロック111を形成し、CFブロック111に装着した図示しない取付け金物を介して工業炉の炉壁102の内側面に取付け、炉内に露出した面に結晶質ブランケット又はアルミナクロスからなるカバー部材112を、アルミナロープ又はセラミックファイバーロープからなる糸部材113を用いて縫合することが提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−152277号公報
【特許文献2】特開2004−190864号公報
【特許文献3】特開2005−55010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、保持金物105が炉壁102の内側面より炉内側に突出しているため加熱され、耐熱性に優れた素材で形成する必要があり高価になるという問題がある。また、炉内側に突出した保持金物105が炉内の熱を炉壁102の内側面に伝え、省エネルギー効果が期待できないという問題がある。更に、CFブロック104の密度が不足すると、CFブロック104間の目地の炉内側(先端から厚み方向に厚みの約半分に相当する距離の範囲)に目地開きが生じるという問題がある。そして、積層体101を被覆しているCFブランケット103が外的要因で破損すると、積層体101を構成しているCFブランケット100の炉内側が垂れ下がり、CFブランケット100に含まれるセラミック粒子が炉内に飛散し、例えば、工業炉内を通板する鋼板の表面に疵をつけるという問題が生じる。なお、CFブロック104を工業炉の炉壁102の内側面に取付ける作業は、炉内でCFブロック104を製造しながら炉壁102の内側面に取付けるという熟練かつ煩雑な作業となるため、工期短縮ができない要因になっている。また、事前に製造したCFブロックを取付ける工法を採用しても、炉壁102の内側面に取付ける最終1列又は最終1個は、炉内でCFブロックを製造して取付けなければならず、取付け作業が煩雑になるという問題がある。
【0007】
特許文献2のCFブロック109の工業炉の炉壁102の内側面への取付は、炉壁102の内側面に予め立設しておいたボルト114を取付け金物を介してCFブロック109内に挿入し座付きナット(図示せず)を螺合して取付け金物を炉壁102の内側面に固着する方法で行うので、炉内の熱が炉壁102の内側面に伝わり難く省エネルギー効果に優れているが、CFブロック109を炉内に取付けた際に、内層体の結晶アルミナファイバーマット106が部分的に炉内に露出した場合、結晶アルミナファイバーマット106の繊維が炉内に飛散する虞がある。そして、結晶アルミナファイバーマット106の繊維が炉内に飛散すると、例えば、工業炉内を通板する鋼板の表面に疵をつけるという問題が生じる。なお、符号115は、座付きナットをCFブロック109内に挿入するためのナット挿入部である。
【0008】
特許文献3に基づいたCFブロック111の取付け方法では、工業炉の炉壁102の内側面にCFブロック111を取付けた後(炉壁102の内側面への取付けは、特許文献2のCFブロック109の取付けと同様の方法で行う)、炉内に露出した面にカバー部材112を縫合する作業を炉内で行う必要があるため、工期短縮が困難であるという問題がある。また、糸部材113としてアルミナロープを使用すると、アルミナロープは約700〜850℃でアルカリと反応して劣化し糸部材113としての信頼性が低下するという虞があり、アルミナロープが切れてカバー部材112が剥がれてCFブロック111が露出すると、CFブロック111を形成している非晶質CFブランケット110からセラミック粒子が飛散するという問題が生じる。一方、糸部材113としてCFロープを使用すると、CFロープに巻き込んだ耐熱芯線が炉内に飛散する虞があり、耐熱芯線が炉内に飛散すると、例えば、工業炉内を通板する鋼板の表面に疵をつける原因となる。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、工業炉の炉壁の内側面への取付け作業性に優れ、安価で長期間に亘ってセラミック粒子の飛散を防止することが可能なセラミックファイバーブロック及びその取付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的に沿う本発明に係るセラミックファイバーブロックは、帯状のセラミックファイバーブランケットを葛折り状に折畳んで形成した直方体状のブロック体と、該ブロック体の折目部を有する裏面に装着された取付け金物とを備え、使用にあっては取付け手段で固定される前記取付け金物を介して工業炉の炉壁の内側面に並べて取付けられるセラミックファイバーブロックであって、
使用時に炉内側となる前記ブロック体の表面側を、該ブロック体の表面から途中位置まで、結晶セラミックファイバーブランケットで形成された箱状のキャップ部材で覆っている。
ここで、直方体状には、縦、横、高さの寸法が全て同一の直方体状である立方体状を含む。
【0011】
本発明に係るセラミックファイバーブロックにおいて、前記箱状のキャップ部材の開口側端部は、前記ブロック体にアルミナロープを用いて縫い付けられていることが好ましい。
【0012】
本発明に係るセラミックファイバーブロックにおいて、前記取付け金物は、前記ブロック体の裏面側から突出する金具が係合する係合孔を有すると共に、前記取付け手段となる前記工業炉の炉壁に設けられた挿通孔に嵌入する取付けボルトを有することができる。
【0013】
本発明に係るセラミックファイバーブロックにおいて、前記取付け金物は、前記ブロック体の裏面側から突出する金具が係合する係合孔を有すると共に、前記取付け手段となる前記工業炉の炉壁の内側面から突出する取付けボルトが嵌入する第1の挿通孔を有することもできる。
ここで、前記箱状のキャップ部材は、前記取付けボルトが挿通する部位で2分割され、前記ブロック体には前記取付けボルトが挿通する第2の挿通孔が設けられていることが好ましい。
【0014】
前記目的に沿う本発明に係るセラミックファイバーブロックの取付け方法は、本発明に係るセラミックファイバーブランケットを工業炉の炉壁の内面側に並べて取付けるセラミックファイバーブロックの取付け方法であって、
予め前記セラミックファイバーブロックの圧縮率を考慮して、前記炉壁に前記取付け金物を固定する前記取付け手段を設け、前記セラミックファイバーブロックを前記圧縮率で圧縮して、前記炉壁の内面側に並べ、前記取付け金物を前記取付け手段で前記炉壁の内面側に固定する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るセラミックファイバーブロックにおいては、使用時に炉内側となるブロック体の表面側を、ブロック体の表面から途中位置まで、結晶セラミックファイバーブランケットで形成された箱状のキャップ部材で覆っているので、セラミックファイバーブロックを工業炉の炉壁の内側面に並べて取付けた際、炉内側は結晶セラミックファイバーブランケットで覆われることになって、ブロック体を構成しているセラミックファイバーブランケットに含まれるセラミック粒子が工業炉の炉内に飛散することを防止できる。これにより、例えば、工業炉内に鋼板を通板した際、鋼板の表面に疵が発生するのを防止できる。
また、ブロック体の表面側をキャップ部材で覆うことにより、セラミックファイバーブロックの炉内側部分の密度と耐熱性を向上させることができ、セラミックファイバーブロック間の目地開きを防止することができる。
更に、高価な結晶セラミックファイバーブランケットをキャップ部材にだけ限定使用するので、結晶セラミックファイバーブランケットの使用量を少なくすることができ、セラミックファイバーブロックの製造コストの上昇を抑制できる。
そして、ブロック体へのキャップ部材の取付けは、ブロック体の製造に引き続いて工場内で行うことができるので、工業炉の炉壁の内側面へのセラミックファイバーブロックの取付け作業が簡便になる。このため、セラミックファイバーブロックの取付け作業の作業性が向上し、工期短縮が可能になる。
【0016】
本発明に係るセラミックファイバーブロックにおいて、箱状のキャップ部材の開口側端部が、ブロック体にアルミナロープを用いて縫い付けられている場合、工業炉の炉壁の内面側にセラミックファイバーブロックを並べて取付けると、隣り合うセラミックファイバーブロックのキャップ部材の側部に現れるアルミナロープをキャップ部材同士で覆うことができる。このため、アルミナロープは工業炉の炉内雰囲気に直接曝されることがなくなり、アルミナロープの劣化を防止することができる。
【0017】
本発明に係るセラミックファイバーブロックにおいて、取付け金物が、ブロック体の裏面側から突出する金具が係合する係合孔を有すると共に、取付け手段となる工業炉の炉壁に設けられた挿通孔に嵌入する取付けボルトを有する場合、挿通孔を挿通して工業炉の炉壁の外側面から突出する取付けボルトにナットを螺合することにより、取付け金物を工業炉の炉壁の内側面に固着することができる。これにより、セラミックファイバーブロックを、取付け金物を介して工業炉の炉壁の内側面に並べて容易に取付けることができる。
【0018】
本発明に係るセラミックファイバーブロックにおいて、取付け金物が、ブロック体の裏面側から突出する金具が係合する係合孔を有すると共に、取付け手段となる工業炉の炉壁の内側面から突出する取付けボルトが嵌入する第1の挿通孔を有する場合、第1の挿通孔を挿通してブロック体内に突出する取付けボルトにナットを螺合することで取付け金物を工業炉の炉壁の内側面に固着することができ、セラミックファイバーブロックの取付け作業が炉内作業のみとなる。これにより、セラミックファイバーブロックを、取付け金物を介して工業炉の炉壁の内側面に並べて取付ける際の作業性が向上する。
【0019】
本発明に係るセラミックファイバーブロックにおいて、箱状のキャップ部材が、取付けボルトが挿通する部位で2分割されている場合、2分割された箱状のキャップ部材の目地に沿ってナットをブロック体内に容易に挿入することができる。また、ブロック体に取付けボルトが挿通する第2の挿通孔が設けられている場合、第1の挿通孔を挿通する取付けボルトを第2の挿通孔を介してブロック体内に容易に突出させることができる。その結果、セラミックファイバーブロックの取付け作業の作業性が更に向上する。
【0020】
本発明に係るセラミックファイバーブロックの取付け方法においては、予めセラミックファイバーブロックの圧縮率を考慮して、炉壁に取付け手段を設け、セラミックファイバーブロックを圧縮率で圧縮して炉壁の内面側に並べ、取付け金物を取付け手段で炉壁の内面側に固定するので、セラミックファイバーブロックの固定が完了した後、圧縮状態を解除すると、隣り合うセラミックファイバーブロック同士は当接状態となって、例えば、キャップ部材の開口側端部がアルミナロープでブロック体に縫い付けられている場合、キャップ部材の側部に現れるアルミナロープをキャップ部材同士で覆って工業炉の炉内雰囲気から遮断することができる。これにより、アルミナロープの劣化を防止でき、ブロック体の表面側にキャップ部材を長期間に亘って安定して取付けることができる。その結果、セラミックファイバーブランケットに含まれるセラミック粒子が工業炉の炉内に飛散することを長期間に亘って防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(A)は本発明の第1の実施の形態に係るセラミックファイバーブロックの斜視図、(B)は同断面図である。
【図2】(A)〜(F)は、それぞれ同セラミックファイバーブロックの正面図、左側面図、右側面図、平面図、底面図、背面図である。
【図3】(A)はブロック体の作製方法を示す説明図、(B)はブロック体に取付け金物を装着した状態を示す説明図である。
【図4】同セラミックファイバーブロックの工業炉の炉壁の内側面への取付け方法を示す説明図である。
【図5】同セラミックファイバーブロックが工業炉の炉壁の内側面に取付けられた状態を示す説明図である。
【図6】同セラミックファイバーブロックが工業炉の炉壁の内側面に取付けられた状態を示す説明図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係るセラミックファイバーブロックの斜視図である。
【図8】(A)〜(F)は、それぞれ同セラミックファイバーブロックの正面図、左側面図、右側面図、平面図、底面図、背面図である。
【図9】同セラミックファイバーブロックの工業炉の炉壁の内側面への取付け方法を示す説明図である。
【図10】同セラミックファイバーブロックが工業炉の炉壁の内側面に取付けられた状態を示す説明図である。
【図11】従来のセラミックファイバーブロックの工業炉の炉壁の内側面への取付け状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1(A)、(B)、図2(A)〜(F)に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るセラミックファイバーブロック(以下、「CFブロック」ともいう)10は、帯状のセラミックファイバーブランケット(以下、「CFブランケット」ともいう)11を葛折り状(即ち、ジグザク状)に折畳んで形成した、立方体状(直方体状の一例)のブロック体12と、ブロック体12の折目部16を有する裏面に装着された、短帯状の取付け金物(取付け金具)13とを有している。
そして、使用時に炉内側となるブロック体12の表面側は、ブロック体12の表面から途中位置(例えば、表面から厚み方向に厚みの約半分に相当する距離)まで、結晶セラミックファイバーブランケットで形成された箱状のキャップ部材15で覆われている。以下、詳細に説明する。キャップ部材15はこの実施の形態では、同一形状の第1、第2の分割キャップ部材26、27を有している。
【0023】
CFブランケット11は、アルミナ含有量が30〜50%であるアルミナ−シリカ系のセラミックファイバーで形成された、厚みが6〜50mm、幅が100〜1200mmの帯状の長尺物である。ここで、セラミックファイバーは、溶融状態の原料を綿状に吹き出し急冷して製造されるため完全に結晶化しておらず、吹き出し急冷時に副次的に形成されるセラミック粒子を多く含んでいる。このため、CFブランケット11を断熱材として工業炉の炉壁の内側面に取付けて使用すると、使用中の加熱によりCFブランケット11は徐々に熱収縮を起し、CFブランケットからはセラミック粒子が炉内に徐々に飛散する。
【0024】
一方、結晶セラミックファイバーブランケットは、アルミナ含有量が70〜95%であるアルミナ−シリカ系のセラミックファイバーで形成された、厚みが6〜25mm、幅が100〜1200mmの巻物である。ここで、セラミックファイバーは紡糸したセラミックファイバー前駆体を熱処理して製造されるため結晶化している。そして、溶融状態の原料を綿状に吹き出し急冷して製造しないため、結晶セラミックファイバーブランケットにはセラミック粒子は存在しない。このため、結晶セラミックファイバーブランケットを断熱材として工業炉の炉壁の内側面に取付けても、使用中に熱収縮を起こさず、炉内へのセラミック粒子の飛散もない。
【0025】
ブロック体12の形成は、図3(A)に示すように、CFブランケット11を葛折り状に折り曲げて形成した折目部16の複数箇所にそれぞれビーム17を差し込み、ビーム17の長手方向中央部に予め立設しておいた金具の一例であるタブ18の先側を折目部16から貫通させ、そして、葛折り状に折り曲げたCFブランケット11を積層方向に沿って押圧して折畳むことにより行う。次いで、図3(B)に示すように、CFブランケット11の折目部16から突出しているタブ18の先側が取付け金物13に予め設けた係合孔19から挿通するように位置合せした取付け金物13をブロック体12に当接させ、係合孔19から突出している各タブ18の先部を折り曲げて取付け金物13に係合する。これにより、ブロック体12の裏面(図3では、折目部16とCFブランケット11の両端部が層状に現れている面)に取付け金物13が装着される。なお、取付け金物13は、耐熱性金属で形成されたチャンネル材から形成され、ビーム17、タブ18は耐熱性金属で形成されている。
【0026】
また、図3(A)に示すように、短帯状の取付け金物13の長手方向の中央部には第1の挿通孔20が形成され、ブロック体12に取付け金物13を装着した際に、取付け金物13に形成した第1の挿通孔20に対向する折目部16の部位には、第2の挿通孔21が形成されている。これによって、ブロック体12に取付け金物13を装着すると、第1、第2の挿通孔20、21は重なり合って連通状態となる。
【0027】
キャップ部材15は、前述のように、取付け金物13を固定する取付け手段の一部である取付けボルト31が挿通する部位で、即ち、ブロック体12をCFブランケット11の積層方向に沿って2等分して形成された分割部22、23の目地(境界)位置で2分割され、分割部22の表面側が嵌入する第1小開口部24を備えた箱状の第1の分割キャップ部材26と、分割部23の表面側が嵌入する第2小開口部25を備えた箱状の第2の分割キャップ部材27を有している(図1、図4参照)。そして、第1、第2の分割キャップ部材26、27の開口側端部(第1、第2の小開口部24、25が形成された側の端部)は、ブロック体12の側部に配置されたCFブランケット11にアルミナロープ28(アルミナ含有率は70〜80%)を用いて縫い付けられている。これによって、ブロック体12を分割部22、23に2分割して、分割部22、23の表面側をそれぞれ第1、第2の分割キャップ部材26、27で覆うことができる。
【0028】
次に、本発明の第1の実施の形態に係るCFブロック10の作用について説明する。
帯状のCFブランケット11を葛折り状に折畳んで形成したブロック体12の使用時に炉内側となるブロック体12の表面側を、結晶セラミックファイバーブランケットで形成したキャップ部材15(第1、第2の分割キャップ部材26、27)で覆ったので、CFブランケット11に含まれるセラミック粒子が工業炉の炉内に飛散することを防止できる。これにより、例えば、工業炉内に鋼板を通板した際、鋼板と移送ロールとの間にセラミック粒子が噛み込まれることがなく、鋼板の表面に疵が発生しない。更に、高価な結晶セラミックファイバーブランケットを、キャップ部材15の作製にのみ使用するので、結晶セラミックファイバーブランケットの使用量が少なくなって、CFブロック10の製造コストの上昇を抑制できる。
【0029】
また、ブロック体12の表面側がキャップ部材15で覆われているので、CFブロック10の表面側の密度と耐熱性が向上し、CFブランケット11で形成されたブロック体12の熱収縮を抑制できる。このため、CFブロック10間(キャップ部材15間)の目地開きを防止することができる。また、各CFブロック10においては、キャップ部材15を構成している第1、第2の分割キャップ部材26、27同士の目地開きも防止できる。このため、CFブランケット11のセラミック粒子が、第1、第2の分割キャップ部材26、27間の目地を通って炉内に飛散することを防止できる。
【0030】
更に、工業炉の炉壁29(図5参照)の内側面にCFブロック10を並べて取付けた際、キャップ部材15の開口側端部をブロック体12に縫い付けているアルミナロープ28は、隣り合うCFブロック10のキャップ部材15同士で覆われる。このため、アルミナロープ28は工業炉の炉内雰囲気に直接曝されることがなくなり、アルミナロープ28の劣化を防止することができる。これによって、ブロック体12の表面側にキャップ部材15を長期間に亘って安定して取付けることができ、CFブランケット11に含まれるセラミック粒子が工業炉の炉内に飛散することを長期間に亘って防止できる。
【0031】
続いて、本発明の第1の実施の形態に係るCFブロック10の工業炉の炉壁29の内側面への取付け方法について説明する。
ブロック体12を形成する際、第2の挿通孔21が形成された折目部16の内側に紙製の管30(以下、紙管30という、図4、図5参照)を挿入し、紙管30の一端と第2の挿通孔21を連通させると共に、紙管30の他端をブロック体12の表面側に露出させる。即ち、紙管30は、ブロック体12をCFブランケット11の積層方向に2分割した分割部22、23の目地に配置されることになる。
次いで、図4に示すように、ブロック体12をCFブランケット11の積層方向に沿って2等分した分割部22、23の表面側を、第1、第2の分割キャップ部材26、27の第1、第2の小開口部24、25にそれぞれ嵌入させて、第1、第2の分割キャップ部材26、27を分割部22、23の表面側に被せ、第1、第2の分割キャップ部材26、27の開口側端部(第1、第2の小開口部24、25が形成された側の端部)をブロック体12の側部にアルミナロープ28を用いて縫い付ける。これによりCFブロック10が完成する。なお、紙管30の他側(ブロック体12内では表面側)は、第1、第2の分割キャップ部材26、27の目地に挿入された状態となる。
そして、紙管30が挿入された状態のCFブロック10を、CFブランケット11の積層方向に沿って押圧して圧縮状態とし、図示しない締結部材(例えばPPバンド)で固定する。
【0032】
図4〜図6に示すように、CFブロック10の圧縮率を考慮して、炉壁29に取付け金物13を取付ける取付け手段の一部である取付けボルト31を炉壁29の内側面から突出させて設け、取付けボルト31に対してCFブロック10を位置合せして、取付けボルト31を取付け金物13の第1の挿通孔20からブロック体12の折目部16に設けた第2の挿通孔21を介して紙管30内の一側に突出させる。次いで、取付け金物13を取付ける取付け手段の残部である座付きナット44を装着したボックスレンチ32を紙管30の他端から紙管30内に挿入し、取付けボルト31に締結する。これにより、取付け金物13を炉壁29の内側面に固定することができ、CFブロック10を取付け金物13を介して炉壁29の内側面に取付けることができる。同様の方法で、CFブロック10を順次炉壁29の内側面に並べて取付ける。なお、CFブロック10を取付ける場合、隣り同士のCFブロック10では、CFブランケット11の積層方向は直交するように配置する。
【0033】
そして、工業炉の炉壁29の内側面へのCFブロック10の取付けが全て終了すると、CFブロック10から紙管30を引き抜く。次いで、CFブロック10に取付けた締結部材を取り外す。締結部材を取り外すことにより、圧縮状態のCFブロック10は弾性回復し、隣り合うCFブロック11は互いに当接して、キャップ部材15の側部に現れているアルミナロープ28はキャップ部材15で覆われる。また、隣り合うCFブロック11が互いに当接しているので、キャップ部材15を構成している第1、第2の分割キャップ部材26、27同士も当接状態になって、紙管30が挿入されていた第1、第2の分割キャップ部材26、27間の目地も圧着する(図6参照)。これにより、炉内側を、キャップ部材15(第1、第2の分割キャップ部材26、27)のみで覆うことができる。
【0034】
図7、図8(A)〜(F)に示すように、本発明の第2の実施の形態に係るCFブロック33は、本発明の第1の実施の形態に係るCFブロック10と比較して、ブロック体34の構造が異なること、ブロック体34の使用時に炉内側となるブロック体34の表面側を、ブロック体34の表面から途中位置まで覆う結晶セラミックファイバーブランケットで形成したキャップ部材35の構造が異なること、ブロック体34に装着された取付け金物(取付け金具)36の構造が異なっていることが特徴となっている。このため、ブロック体34、キャップ部材35、及び取付け金物36について説明し、CFブロック10と同一の構成部材には同一の符号を付して説明は省略する。
【0035】
ブロック体34は、例えばCFブランケット11と同一材質のCFブランケット37を用いて、ブロック体12と同様の方法で形成される。なお、CFブランケット37には、CFブランケット11に形成した第2の挿通孔21は形成されていない。
また、CFブランケット37の折目部38から突出したタブ18の先部を係合孔に挿通して折り曲げることにより係合して、ブロック体34の裏面(折目部38とCFブランケット37の両端部が層状に現れている面)に装着される短帯状の取付け金物36の長手方向の中央部には、取付けボルト39が立設されている。なお、取付け金物36は、耐熱性金属で形成されたチャンネル材から形成されている。
キャップ部材35は、例えばキャップ部材15と同材質の結晶セラミックファイバーブランケットで形成され、ブロック体34の表面側が嵌入する開口部40を有する箱状となっている。そして、キャップ部材35は、キャップ部材35の側部の一部を、ブロック体34の側部に配置されたCFブランケット37にアルミナロープ28を用いて縫い付けられている。
【0036】
次に、本発明の第2の実施の形態に係るCFブロック33の作用について説明する。
CFブロック33では、キャップ部材35により、ブロック体34の表面側が完全に覆われているので、CFブランケット37に含まれるセラミック粒子が工業炉の炉内に飛散することを防止できる。これにより、例えば、工業炉内に鋼板を通板した際、鋼板と移送ロールとの間にセラミック粒子が噛み込まれることがなく、鋼板の表面に疵が発生しない。更に、高価な結晶セラミックファイバーブランケットを、キャップ部材35の作製にのみ使用するので、結晶セラミックファイバーブランケットの使用量が少なくなって、CFブロック33の製造コストの上昇を抑制できる。
【0037】
更に、キャップ部材35の側部をブロック体34の側部に縫い付けているアルミナロープ28は、工業炉の炉壁41(図10参照)の内側面にCFブロック33を並べて取付けた際、隣り合うCFブロック33のキャップ部材35同士で覆われる。このため、アルミナロープ28は工業炉の炉内雰囲気に直接曝されることがなくなり、アルミナロープ28の劣化を防止することができる。これによって、ブロック体34の表面側にキャップ部材35を長期間に亘って安定して取付けることができ、CFブランケット37に含まれるセラミック粒子が工業炉の炉内に飛散することを長期間に亘って防止できる。
【0038】
続いて、本発明の第2の実施の形態に係るCFブロック33の工業炉の炉壁41の内側面への取付け方法について説明する。
先ず、キャップ部材35によりブロック体34の表面側が完全に覆われているCFブロック33を、CFブランケット37の積層方向に沿って押圧して圧縮状態とし、図示しない締結部材(例えばPPバンド)で固定する。
次いで、図9に示すように、CFブロック33の圧縮率を考慮して、工業炉の炉壁41に予め設けられた挿通孔(取付け手段の一例)42に工業炉の炉壁41の外側面からガイドパイプ43を挿し込み、炉壁41の内側面から突出したガイドパイプ43の先部にCFブロック33の取付け金物36に立設した取付けボルト39を挿入する。そして、CFブロック33を炉壁41の内側面に向けて移動させると、CFブロック33(取付け金物36)はガイドパイプ43に案内されながら炉壁41の内側面に当接し、ガイドパイプ43の先部に挿入された状態で取付けボルト39を挿通孔42に挿通させることができる。
【0039】
取付け金物36を炉壁41の内側面に当接させた状態で挿通孔42からガイドパイプ43を引き抜くと、取付けボルト39の先側が工業炉の炉壁41の外側面から外部に突出した状態となるので、図示しないナットを取付けボルト39に締結することで、取付け金物36を炉壁41の内側面に固定することができ、CFブロック33を取付け金物36を介して炉壁41の内側面に取付けることができる。同様の方法で、CFブロック33を順次炉壁41の内側面に並べて取付ける。なお、CFブロック33を取付ける場合、隣り同士のCFブロック33では、CFブランケット37の積層方向は直交するように配置する。
【0040】
そして、炉壁41の内側面へのCFブロック33の取付けが全て終了すると、CFブロック33に取付けた締結部材を取り外す。締結部材を取り外すことにより、圧縮状態のCFブロック33は弾性回復し、隣り合うCFブロック33は互いに当接して、キャップ部材35の側部に現れているアルミナロープ28はキャップ部材35で覆われる。これにより、炉内側を、キャップ部材35のみで覆うことができる。
【0041】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
更に、本実施の形態とその他の実施の形態や変形例にそれぞれ含まれる構成要素を組合わせたものも、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
10:セラミックファイバーブロック、11:セラミックファイバーブランケット、12:ブロック体、13:取付け金物、15:キャップ部材、16:折目部、17:ビーム、18:タブ、19:係合孔、20:第1の挿通孔、21:第2の挿通孔、22、23:分割部、24:第1の小開口部、25:第2の小開口部、26:第1の分割キャップ部材、27:第2の分割キャップ部材、28:アルミナロープ、29:炉壁、30:紙製の管(紙管)、31:取付けボルト、32:ボックスレンチ、33:セラミックファイバーブロック、34:ブロック体、35:キャップ部材、36:取付け金物、37:セラミックファイバーブランケット、38:折目部、39:取付けボルト、40:開口部、41:炉壁、42:挿通孔、43:ガイドパイプ、44:座付きナット
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業炉の炉壁の内側面に並べて取付けるセラミックファイバーブロック及びその取付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミックファイバーブロック(以下、「CFブロック」ともいう)を工業炉(例えば熱処理炉)の炉壁の内側面に取付ける場合、CFブロックからセラミック粒(ショット)が炉内に飛散することを防止するため、例えば、特許文献1には、図11に示すように、セラミックファイバーブランケット(以下、「CFブランケット」ともいう)100の長尺物を順次に折り曲げ加工してその複数枚を積層して積層体101を形成し、積層体101を工業炉の炉壁(鉄皮)102の内側面に対して積層体101のCFブランケット100の積層面が平行になるように取付ける際に、炉内側に現れる積層体101の面をセラミック粒子の含有量が積層体を形成しているCFブランケット100よりも少ないCFブランケット103で被覆したCFブロック104が提案されている。ここで、符号105は、CFブロック104を工業炉の炉壁102の内側面に取付ける保持金物である。
【0003】
また、特許文献2には、図11に示すように、長尺の結晶アルミナファイバーマット106と長尺の結晶アルミナファイバーブランケット107を重ね合せたものを、嵩密度が低い結晶アルミナファイバーマット106が内層体、嵩密度の高い結晶アルミナファイバーブランケット107が外層体となるように葛折り状に折畳んで形成した積層体108と、積層体108に装着した図示しない取付け金物(チャンネル)とを有するCFブロック109を形成し、取付け金物を介して工業炉の炉壁102の内側面に固定することが提案されている。
【0004】
更に、CFブロックに含まれるセラミック粒の炉内への脱落を防止するCFブロックの取付け方法として、図11に示すように、長尺の非晶質CFブランケット110を葛折り状に折畳んでCFブロック111を形成し、CFブロック111に装着した図示しない取付け金物を介して工業炉の炉壁102の内側面に取付け、炉内に露出した面に結晶質ブランケット又はアルミナクロスからなるカバー部材112を、アルミナロープ又はセラミックファイバーロープからなる糸部材113を用いて縫合することが提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−152277号公報
【特許文献2】特開2004−190864号公報
【特許文献3】特開2005−55010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、保持金物105が炉壁102の内側面より炉内側に突出しているため加熱され、耐熱性に優れた素材で形成する必要があり高価になるという問題がある。また、炉内側に突出した保持金物105が炉内の熱を炉壁102の内側面に伝え、省エネルギー効果が期待できないという問題がある。更に、CFブロック104の密度が不足すると、CFブロック104間の目地の炉内側(先端から厚み方向に厚みの約半分に相当する距離の範囲)に目地開きが生じるという問題がある。そして、積層体101を被覆しているCFブランケット103が外的要因で破損すると、積層体101を構成しているCFブランケット100の炉内側が垂れ下がり、CFブランケット100に含まれるセラミック粒子が炉内に飛散し、例えば、工業炉内を通板する鋼板の表面に疵をつけるという問題が生じる。なお、CFブロック104を工業炉の炉壁102の内側面に取付ける作業は、炉内でCFブロック104を製造しながら炉壁102の内側面に取付けるという熟練かつ煩雑な作業となるため、工期短縮ができない要因になっている。また、事前に製造したCFブロックを取付ける工法を採用しても、炉壁102の内側面に取付ける最終1列又は最終1個は、炉内でCFブロックを製造して取付けなければならず、取付け作業が煩雑になるという問題がある。
【0007】
特許文献2のCFブロック109の工業炉の炉壁102の内側面への取付は、炉壁102の内側面に予め立設しておいたボルト114を取付け金物を介してCFブロック109内に挿入し座付きナット(図示せず)を螺合して取付け金物を炉壁102の内側面に固着する方法で行うので、炉内の熱が炉壁102の内側面に伝わり難く省エネルギー効果に優れているが、CFブロック109を炉内に取付けた際に、内層体の結晶アルミナファイバーマット106が部分的に炉内に露出した場合、結晶アルミナファイバーマット106の繊維が炉内に飛散する虞がある。そして、結晶アルミナファイバーマット106の繊維が炉内に飛散すると、例えば、工業炉内を通板する鋼板の表面に疵をつけるという問題が生じる。なお、符号115は、座付きナットをCFブロック109内に挿入するためのナット挿入部である。
【0008】
特許文献3に基づいたCFブロック111の取付け方法では、工業炉の炉壁102の内側面にCFブロック111を取付けた後(炉壁102の内側面への取付けは、特許文献2のCFブロック109の取付けと同様の方法で行う)、炉内に露出した面にカバー部材112を縫合する作業を炉内で行う必要があるため、工期短縮が困難であるという問題がある。また、糸部材113としてアルミナロープを使用すると、アルミナロープは約700〜850℃でアルカリと反応して劣化し糸部材113としての信頼性が低下するという虞があり、アルミナロープが切れてカバー部材112が剥がれてCFブロック111が露出すると、CFブロック111を形成している非晶質CFブランケット110からセラミック粒子が飛散するという問題が生じる。一方、糸部材113としてCFロープを使用すると、CFロープに巻き込んだ耐熱芯線が炉内に飛散する虞があり、耐熱芯線が炉内に飛散すると、例えば、工業炉内を通板する鋼板の表面に疵をつける原因となる。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、工業炉の炉壁の内側面への取付け作業性に優れ、安価で長期間に亘ってセラミック粒子の飛散を防止することが可能なセラミックファイバーブロック及びその取付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的に沿う本発明に係るセラミックファイバーブロックは、帯状のセラミックファイバーブランケットを葛折り状に折畳んで形成した直方体状のブロック体と、該ブロック体の折目部を有する裏面に装着された取付け金物とを備え、使用にあっては取付け手段で固定される前記取付け金物を介して工業炉の炉壁の内側面に並べて取付けられるセラミックファイバーブロックであって、
使用時に炉内側となる前記ブロック体の表面側を、該ブロック体の表面から途中位置まで、結晶セラミックファイバーブランケットで形成された箱状のキャップ部材で覆っている。
ここで、直方体状には、縦、横、高さの寸法が全て同一の直方体状である立方体状を含む。
【0011】
本発明に係るセラミックファイバーブロックにおいて、前記箱状のキャップ部材の開口側端部は、前記ブロック体にアルミナロープを用いて縫い付けられていることが好ましい。
【0012】
本発明に係るセラミックファイバーブロックにおいて、前記取付け金物は、前記ブロック体の裏面側から突出する金具が係合する係合孔を有すると共に、前記取付け手段となる前記工業炉の炉壁に設けられた挿通孔に嵌入する取付けボルトを有することができる。
【0013】
本発明に係るセラミックファイバーブロックにおいて、前記取付け金物は、前記ブロック体の裏面側から突出する金具が係合する係合孔を有すると共に、前記取付け手段となる前記工業炉の炉壁の内側面から突出する取付けボルトが嵌入する第1の挿通孔を有することもできる。
ここで、前記箱状のキャップ部材は、前記取付けボルトが挿通する部位で2分割され、前記ブロック体には前記取付けボルトが挿通する第2の挿通孔が設けられていることが好ましい。
【0014】
前記目的に沿う本発明に係るセラミックファイバーブロックの取付け方法は、本発明に係るセラミックファイバーブランケットを工業炉の炉壁の内面側に並べて取付けるセラミックファイバーブロックの取付け方法であって、
予め前記セラミックファイバーブロックの圧縮率を考慮して、前記炉壁に前記取付け金物を固定する前記取付け手段を設け、前記セラミックファイバーブロックを前記圧縮率で圧縮して、前記炉壁の内面側に並べ、前記取付け金物を前記取付け手段で前記炉壁の内面側に固定する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るセラミックファイバーブロックにおいては、使用時に炉内側となるブロック体の表面側を、ブロック体の表面から途中位置まで、結晶セラミックファイバーブランケットで形成された箱状のキャップ部材で覆っているので、セラミックファイバーブロックを工業炉の炉壁の内側面に並べて取付けた際、炉内側は結晶セラミックファイバーブランケットで覆われることになって、ブロック体を構成しているセラミックファイバーブランケットに含まれるセラミック粒子が工業炉の炉内に飛散することを防止できる。これにより、例えば、工業炉内に鋼板を通板した際、鋼板の表面に疵が発生するのを防止できる。
また、ブロック体の表面側をキャップ部材で覆うことにより、セラミックファイバーブロックの炉内側部分の密度と耐熱性を向上させることができ、セラミックファイバーブロック間の目地開きを防止することができる。
更に、高価な結晶セラミックファイバーブランケットをキャップ部材にだけ限定使用するので、結晶セラミックファイバーブランケットの使用量を少なくすることができ、セラミックファイバーブロックの製造コストの上昇を抑制できる。
そして、ブロック体へのキャップ部材の取付けは、ブロック体の製造に引き続いて工場内で行うことができるので、工業炉の炉壁の内側面へのセラミックファイバーブロックの取付け作業が簡便になる。このため、セラミックファイバーブロックの取付け作業の作業性が向上し、工期短縮が可能になる。
【0016】
本発明に係るセラミックファイバーブロックにおいて、箱状のキャップ部材の開口側端部が、ブロック体にアルミナロープを用いて縫い付けられている場合、工業炉の炉壁の内面側にセラミックファイバーブロックを並べて取付けると、隣り合うセラミックファイバーブロックのキャップ部材の側部に現れるアルミナロープをキャップ部材同士で覆うことができる。このため、アルミナロープは工業炉の炉内雰囲気に直接曝されることがなくなり、アルミナロープの劣化を防止することができる。
【0017】
本発明に係るセラミックファイバーブロックにおいて、取付け金物が、ブロック体の裏面側から突出する金具が係合する係合孔を有すると共に、取付け手段となる工業炉の炉壁に設けられた挿通孔に嵌入する取付けボルトを有する場合、挿通孔を挿通して工業炉の炉壁の外側面から突出する取付けボルトにナットを螺合することにより、取付け金物を工業炉の炉壁の内側面に固着することができる。これにより、セラミックファイバーブロックを、取付け金物を介して工業炉の炉壁の内側面に並べて容易に取付けることができる。
【0018】
本発明に係るセラミックファイバーブロックにおいて、取付け金物が、ブロック体の裏面側から突出する金具が係合する係合孔を有すると共に、取付け手段となる工業炉の炉壁の内側面から突出する取付けボルトが嵌入する第1の挿通孔を有する場合、第1の挿通孔を挿通してブロック体内に突出する取付けボルトにナットを螺合することで取付け金物を工業炉の炉壁の内側面に固着することができ、セラミックファイバーブロックの取付け作業が炉内作業のみとなる。これにより、セラミックファイバーブロックを、取付け金物を介して工業炉の炉壁の内側面に並べて取付ける際の作業性が向上する。
【0019】
本発明に係るセラミックファイバーブロックにおいて、箱状のキャップ部材が、取付けボルトが挿通する部位で2分割されている場合、2分割された箱状のキャップ部材の目地に沿ってナットをブロック体内に容易に挿入することができる。また、ブロック体に取付けボルトが挿通する第2の挿通孔が設けられている場合、第1の挿通孔を挿通する取付けボルトを第2の挿通孔を介してブロック体内に容易に突出させることができる。その結果、セラミックファイバーブロックの取付け作業の作業性が更に向上する。
【0020】
本発明に係るセラミックファイバーブロックの取付け方法においては、予めセラミックファイバーブロックの圧縮率を考慮して、炉壁に取付け手段を設け、セラミックファイバーブロックを圧縮率で圧縮して炉壁の内面側に並べ、取付け金物を取付け手段で炉壁の内面側に固定するので、セラミックファイバーブロックの固定が完了した後、圧縮状態を解除すると、隣り合うセラミックファイバーブロック同士は当接状態となって、例えば、キャップ部材の開口側端部がアルミナロープでブロック体に縫い付けられている場合、キャップ部材の側部に現れるアルミナロープをキャップ部材同士で覆って工業炉の炉内雰囲気から遮断することができる。これにより、アルミナロープの劣化を防止でき、ブロック体の表面側にキャップ部材を長期間に亘って安定して取付けることができる。その結果、セラミックファイバーブランケットに含まれるセラミック粒子が工業炉の炉内に飛散することを長期間に亘って防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(A)は本発明の第1の実施の形態に係るセラミックファイバーブロックの斜視図、(B)は同断面図である。
【図2】(A)〜(F)は、それぞれ同セラミックファイバーブロックの正面図、左側面図、右側面図、平面図、底面図、背面図である。
【図3】(A)はブロック体の作製方法を示す説明図、(B)はブロック体に取付け金物を装着した状態を示す説明図である。
【図4】同セラミックファイバーブロックの工業炉の炉壁の内側面への取付け方法を示す説明図である。
【図5】同セラミックファイバーブロックが工業炉の炉壁の内側面に取付けられた状態を示す説明図である。
【図6】同セラミックファイバーブロックが工業炉の炉壁の内側面に取付けられた状態を示す説明図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係るセラミックファイバーブロックの斜視図である。
【図8】(A)〜(F)は、それぞれ同セラミックファイバーブロックの正面図、左側面図、右側面図、平面図、底面図、背面図である。
【図9】同セラミックファイバーブロックの工業炉の炉壁の内側面への取付け方法を示す説明図である。
【図10】同セラミックファイバーブロックが工業炉の炉壁の内側面に取付けられた状態を示す説明図である。
【図11】従来のセラミックファイバーブロックの工業炉の炉壁の内側面への取付け状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1(A)、(B)、図2(A)〜(F)に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るセラミックファイバーブロック(以下、「CFブロック」ともいう)10は、帯状のセラミックファイバーブランケット(以下、「CFブランケット」ともいう)11を葛折り状(即ち、ジグザク状)に折畳んで形成した、立方体状(直方体状の一例)のブロック体12と、ブロック体12の折目部16を有する裏面に装着された、短帯状の取付け金物(取付け金具)13とを有している。
そして、使用時に炉内側となるブロック体12の表面側は、ブロック体12の表面から途中位置(例えば、表面から厚み方向に厚みの約半分に相当する距離)まで、結晶セラミックファイバーブランケットで形成された箱状のキャップ部材15で覆われている。以下、詳細に説明する。キャップ部材15はこの実施の形態では、同一形状の第1、第2の分割キャップ部材26、27を有している。
【0023】
CFブランケット11は、アルミナ含有量が30〜50%であるアルミナ−シリカ系のセラミックファイバーで形成された、厚みが6〜50mm、幅が100〜1200mmの帯状の長尺物である。ここで、セラミックファイバーは、溶融状態の原料を綿状に吹き出し急冷して製造されるため完全に結晶化しておらず、吹き出し急冷時に副次的に形成されるセラミック粒子を多く含んでいる。このため、CFブランケット11を断熱材として工業炉の炉壁の内側面に取付けて使用すると、使用中の加熱によりCFブランケット11は徐々に熱収縮を起し、CFブランケットからはセラミック粒子が炉内に徐々に飛散する。
【0024】
一方、結晶セラミックファイバーブランケットは、アルミナ含有量が70〜95%であるアルミナ−シリカ系のセラミックファイバーで形成された、厚みが6〜25mm、幅が100〜1200mmの巻物である。ここで、セラミックファイバーは紡糸したセラミックファイバー前駆体を熱処理して製造されるため結晶化している。そして、溶融状態の原料を綿状に吹き出し急冷して製造しないため、結晶セラミックファイバーブランケットにはセラミック粒子は存在しない。このため、結晶セラミックファイバーブランケットを断熱材として工業炉の炉壁の内側面に取付けても、使用中に熱収縮を起こさず、炉内へのセラミック粒子の飛散もない。
【0025】
ブロック体12の形成は、図3(A)に示すように、CFブランケット11を葛折り状に折り曲げて形成した折目部16の複数箇所にそれぞれビーム17を差し込み、ビーム17の長手方向中央部に予め立設しておいた金具の一例であるタブ18の先側を折目部16から貫通させ、そして、葛折り状に折り曲げたCFブランケット11を積層方向に沿って押圧して折畳むことにより行う。次いで、図3(B)に示すように、CFブランケット11の折目部16から突出しているタブ18の先側が取付け金物13に予め設けた係合孔19から挿通するように位置合せした取付け金物13をブロック体12に当接させ、係合孔19から突出している各タブ18の先部を折り曲げて取付け金物13に係合する。これにより、ブロック体12の裏面(図3では、折目部16とCFブランケット11の両端部が層状に現れている面)に取付け金物13が装着される。なお、取付け金物13は、耐熱性金属で形成されたチャンネル材から形成され、ビーム17、タブ18は耐熱性金属で形成されている。
【0026】
また、図3(A)に示すように、短帯状の取付け金物13の長手方向の中央部には第1の挿通孔20が形成され、ブロック体12に取付け金物13を装着した際に、取付け金物13に形成した第1の挿通孔20に対向する折目部16の部位には、第2の挿通孔21が形成されている。これによって、ブロック体12に取付け金物13を装着すると、第1、第2の挿通孔20、21は重なり合って連通状態となる。
【0027】
キャップ部材15は、前述のように、取付け金物13を固定する取付け手段の一部である取付けボルト31が挿通する部位で、即ち、ブロック体12をCFブランケット11の積層方向に沿って2等分して形成された分割部22、23の目地(境界)位置で2分割され、分割部22の表面側が嵌入する第1小開口部24を備えた箱状の第1の分割キャップ部材26と、分割部23の表面側が嵌入する第2小開口部25を備えた箱状の第2の分割キャップ部材27を有している(図1、図4参照)。そして、第1、第2の分割キャップ部材26、27の開口側端部(第1、第2の小開口部24、25が形成された側の端部)は、ブロック体12の側部に配置されたCFブランケット11にアルミナロープ28(アルミナ含有率は70〜80%)を用いて縫い付けられている。これによって、ブロック体12を分割部22、23に2分割して、分割部22、23の表面側をそれぞれ第1、第2の分割キャップ部材26、27で覆うことができる。
【0028】
次に、本発明の第1の実施の形態に係るCFブロック10の作用について説明する。
帯状のCFブランケット11を葛折り状に折畳んで形成したブロック体12の使用時に炉内側となるブロック体12の表面側を、結晶セラミックファイバーブランケットで形成したキャップ部材15(第1、第2の分割キャップ部材26、27)で覆ったので、CFブランケット11に含まれるセラミック粒子が工業炉の炉内に飛散することを防止できる。これにより、例えば、工業炉内に鋼板を通板した際、鋼板と移送ロールとの間にセラミック粒子が噛み込まれることがなく、鋼板の表面に疵が発生しない。更に、高価な結晶セラミックファイバーブランケットを、キャップ部材15の作製にのみ使用するので、結晶セラミックファイバーブランケットの使用量が少なくなって、CFブロック10の製造コストの上昇を抑制できる。
【0029】
また、ブロック体12の表面側がキャップ部材15で覆われているので、CFブロック10の表面側の密度と耐熱性が向上し、CFブランケット11で形成されたブロック体12の熱収縮を抑制できる。このため、CFブロック10間(キャップ部材15間)の目地開きを防止することができる。また、各CFブロック10においては、キャップ部材15を構成している第1、第2の分割キャップ部材26、27同士の目地開きも防止できる。このため、CFブランケット11のセラミック粒子が、第1、第2の分割キャップ部材26、27間の目地を通って炉内に飛散することを防止できる。
【0030】
更に、工業炉の炉壁29(図5参照)の内側面にCFブロック10を並べて取付けた際、キャップ部材15の開口側端部をブロック体12に縫い付けているアルミナロープ28は、隣り合うCFブロック10のキャップ部材15同士で覆われる。このため、アルミナロープ28は工業炉の炉内雰囲気に直接曝されることがなくなり、アルミナロープ28の劣化を防止することができる。これによって、ブロック体12の表面側にキャップ部材15を長期間に亘って安定して取付けることができ、CFブランケット11に含まれるセラミック粒子が工業炉の炉内に飛散することを長期間に亘って防止できる。
【0031】
続いて、本発明の第1の実施の形態に係るCFブロック10の工業炉の炉壁29の内側面への取付け方法について説明する。
ブロック体12を形成する際、第2の挿通孔21が形成された折目部16の内側に紙製の管30(以下、紙管30という、図4、図5参照)を挿入し、紙管30の一端と第2の挿通孔21を連通させると共に、紙管30の他端をブロック体12の表面側に露出させる。即ち、紙管30は、ブロック体12をCFブランケット11の積層方向に2分割した分割部22、23の目地に配置されることになる。
次いで、図4に示すように、ブロック体12をCFブランケット11の積層方向に沿って2等分した分割部22、23の表面側を、第1、第2の分割キャップ部材26、27の第1、第2の小開口部24、25にそれぞれ嵌入させて、第1、第2の分割キャップ部材26、27を分割部22、23の表面側に被せ、第1、第2の分割キャップ部材26、27の開口側端部(第1、第2の小開口部24、25が形成された側の端部)をブロック体12の側部にアルミナロープ28を用いて縫い付ける。これによりCFブロック10が完成する。なお、紙管30の他側(ブロック体12内では表面側)は、第1、第2の分割キャップ部材26、27の目地に挿入された状態となる。
そして、紙管30が挿入された状態のCFブロック10を、CFブランケット11の積層方向に沿って押圧して圧縮状態とし、図示しない締結部材(例えばPPバンド)で固定する。
【0032】
図4〜図6に示すように、CFブロック10の圧縮率を考慮して、炉壁29に取付け金物13を取付ける取付け手段の一部である取付けボルト31を炉壁29の内側面から突出させて設け、取付けボルト31に対してCFブロック10を位置合せして、取付けボルト31を取付け金物13の第1の挿通孔20からブロック体12の折目部16に設けた第2の挿通孔21を介して紙管30内の一側に突出させる。次いで、取付け金物13を取付ける取付け手段の残部である座付きナット44を装着したボックスレンチ32を紙管30の他端から紙管30内に挿入し、取付けボルト31に締結する。これにより、取付け金物13を炉壁29の内側面に固定することができ、CFブロック10を取付け金物13を介して炉壁29の内側面に取付けることができる。同様の方法で、CFブロック10を順次炉壁29の内側面に並べて取付ける。なお、CFブロック10を取付ける場合、隣り同士のCFブロック10では、CFブランケット11の積層方向は直交するように配置する。
【0033】
そして、工業炉の炉壁29の内側面へのCFブロック10の取付けが全て終了すると、CFブロック10から紙管30を引き抜く。次いで、CFブロック10に取付けた締結部材を取り外す。締結部材を取り外すことにより、圧縮状態のCFブロック10は弾性回復し、隣り合うCFブロック11は互いに当接して、キャップ部材15の側部に現れているアルミナロープ28はキャップ部材15で覆われる。また、隣り合うCFブロック11が互いに当接しているので、キャップ部材15を構成している第1、第2の分割キャップ部材26、27同士も当接状態になって、紙管30が挿入されていた第1、第2の分割キャップ部材26、27間の目地も圧着する(図6参照)。これにより、炉内側を、キャップ部材15(第1、第2の分割キャップ部材26、27)のみで覆うことができる。
【0034】
図7、図8(A)〜(F)に示すように、本発明の第2の実施の形態に係るCFブロック33は、本発明の第1の実施の形態に係るCFブロック10と比較して、ブロック体34の構造が異なること、ブロック体34の使用時に炉内側となるブロック体34の表面側を、ブロック体34の表面から途中位置まで覆う結晶セラミックファイバーブランケットで形成したキャップ部材35の構造が異なること、ブロック体34に装着された取付け金物(取付け金具)36の構造が異なっていることが特徴となっている。このため、ブロック体34、キャップ部材35、及び取付け金物36について説明し、CFブロック10と同一の構成部材には同一の符号を付して説明は省略する。
【0035】
ブロック体34は、例えばCFブランケット11と同一材質のCFブランケット37を用いて、ブロック体12と同様の方法で形成される。なお、CFブランケット37には、CFブランケット11に形成した第2の挿通孔21は形成されていない。
また、CFブランケット37の折目部38から突出したタブ18の先部を係合孔に挿通して折り曲げることにより係合して、ブロック体34の裏面(折目部38とCFブランケット37の両端部が層状に現れている面)に装着される短帯状の取付け金物36の長手方向の中央部には、取付けボルト39が立設されている。なお、取付け金物36は、耐熱性金属で形成されたチャンネル材から形成されている。
キャップ部材35は、例えばキャップ部材15と同材質の結晶セラミックファイバーブランケットで形成され、ブロック体34の表面側が嵌入する開口部40を有する箱状となっている。そして、キャップ部材35は、キャップ部材35の側部の一部を、ブロック体34の側部に配置されたCFブランケット37にアルミナロープ28を用いて縫い付けられている。
【0036】
次に、本発明の第2の実施の形態に係るCFブロック33の作用について説明する。
CFブロック33では、キャップ部材35により、ブロック体34の表面側が完全に覆われているので、CFブランケット37に含まれるセラミック粒子が工業炉の炉内に飛散することを防止できる。これにより、例えば、工業炉内に鋼板を通板した際、鋼板と移送ロールとの間にセラミック粒子が噛み込まれることがなく、鋼板の表面に疵が発生しない。更に、高価な結晶セラミックファイバーブランケットを、キャップ部材35の作製にのみ使用するので、結晶セラミックファイバーブランケットの使用量が少なくなって、CFブロック33の製造コストの上昇を抑制できる。
【0037】
更に、キャップ部材35の側部をブロック体34の側部に縫い付けているアルミナロープ28は、工業炉の炉壁41(図10参照)の内側面にCFブロック33を並べて取付けた際、隣り合うCFブロック33のキャップ部材35同士で覆われる。このため、アルミナロープ28は工業炉の炉内雰囲気に直接曝されることがなくなり、アルミナロープ28の劣化を防止することができる。これによって、ブロック体34の表面側にキャップ部材35を長期間に亘って安定して取付けることができ、CFブランケット37に含まれるセラミック粒子が工業炉の炉内に飛散することを長期間に亘って防止できる。
【0038】
続いて、本発明の第2の実施の形態に係るCFブロック33の工業炉の炉壁41の内側面への取付け方法について説明する。
先ず、キャップ部材35によりブロック体34の表面側が完全に覆われているCFブロック33を、CFブランケット37の積層方向に沿って押圧して圧縮状態とし、図示しない締結部材(例えばPPバンド)で固定する。
次いで、図9に示すように、CFブロック33の圧縮率を考慮して、工業炉の炉壁41に予め設けられた挿通孔(取付け手段の一例)42に工業炉の炉壁41の外側面からガイドパイプ43を挿し込み、炉壁41の内側面から突出したガイドパイプ43の先部にCFブロック33の取付け金物36に立設した取付けボルト39を挿入する。そして、CFブロック33を炉壁41の内側面に向けて移動させると、CFブロック33(取付け金物36)はガイドパイプ43に案内されながら炉壁41の内側面に当接し、ガイドパイプ43の先部に挿入された状態で取付けボルト39を挿通孔42に挿通させることができる。
【0039】
取付け金物36を炉壁41の内側面に当接させた状態で挿通孔42からガイドパイプ43を引き抜くと、取付けボルト39の先側が工業炉の炉壁41の外側面から外部に突出した状態となるので、図示しないナットを取付けボルト39に締結することで、取付け金物36を炉壁41の内側面に固定することができ、CFブロック33を取付け金物36を介して炉壁41の内側面に取付けることができる。同様の方法で、CFブロック33を順次炉壁41の内側面に並べて取付ける。なお、CFブロック33を取付ける場合、隣り同士のCFブロック33では、CFブランケット37の積層方向は直交するように配置する。
【0040】
そして、炉壁41の内側面へのCFブロック33の取付けが全て終了すると、CFブロック33に取付けた締結部材を取り外す。締結部材を取り外すことにより、圧縮状態のCFブロック33は弾性回復し、隣り合うCFブロック33は互いに当接して、キャップ部材35の側部に現れているアルミナロープ28はキャップ部材35で覆われる。これにより、炉内側を、キャップ部材35のみで覆うことができる。
【0041】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
更に、本実施の形態とその他の実施の形態や変形例にそれぞれ含まれる構成要素を組合わせたものも、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
10:セラミックファイバーブロック、11:セラミックファイバーブランケット、12:ブロック体、13:取付け金物、15:キャップ部材、16:折目部、17:ビーム、18:タブ、19:係合孔、20:第1の挿通孔、21:第2の挿通孔、22、23:分割部、24:第1の小開口部、25:第2の小開口部、26:第1の分割キャップ部材、27:第2の分割キャップ部材、28:アルミナロープ、29:炉壁、30:紙製の管(紙管)、31:取付けボルト、32:ボックスレンチ、33:セラミックファイバーブロック、34:ブロック体、35:キャップ部材、36:取付け金物、37:セラミックファイバーブランケット、38:折目部、39:取付けボルト、40:開口部、41:炉壁、42:挿通孔、43:ガイドパイプ、44:座付きナット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のセラミックファイバーブランケットを葛折り状に折畳んで形成した直方体状のブロック体と、該ブロック体の折目部を有する裏面に装着された取付け金物とを備え、使用にあっては取付け手段で固定される前記取付け金物を介して工業炉の炉壁の内側面に並べて取付けられるセラミックファイバーブロックであって、
使用時に炉内側となる前記ブロック体の表面側を、該ブロック体の表面から途中位置まで、結晶セラミックファイバーブランケットで形成された箱状のキャップ部材で覆ったことを特徴とするセラミックファイバーブロック。
【請求項2】
請求項1記載のセラミックファイバーブロックにおいて、前記箱状のキャップ部材の開口側端部は、前記ブロック体にアルミナロープを用いて縫い付けられていることを特徴とするセラミックファイバーブロック。
【請求項3】
請求項1又は2記載のセラミックファイバーブロックにおいて、前記取付け金物は、前記ブロック体の裏面側から突出する金具が係合する係合孔を有すると共に、前記取付け手段となる前記工業炉の炉壁に設けられた挿通孔に嵌入する取付けボルトを有することを特徴とするセラミックファイバーブロック。
【請求項4】
請求項1又は2記載のセラミックファイバーブロックにおいて、前記取付け金物は、前記ブロック体の裏面側から突出する金具が係合する係合孔を有すると共に、前記取付け手段となる前記工業炉の炉壁の内側面から突出する取付けボルトが嵌入する第1の挿通孔を有することを特徴とするセラミックファイバーブロック。
【請求項5】
請求項4記載のセラミックファイバーブロックにおいて、前記箱状のキャップ部材は、前記取付けボルトが挿通する部位で2分割され、前記ブロック体には前記取付けボルトが挿通する第2の挿通孔が設けられていることを特徴とするセラミックファイバーブロック。
【請求項6】
請求項1又は2記載のセラミックファイバーブランケットを工業炉の炉壁の内面側に並べて取付けるセラミックファイバーブロックの取付け方法であって、
予め前記セラミックファイバーブロックの圧縮率を考慮して、前記炉壁に前記取付け手段を設け、前記セラミックファイバーブロックを前記圧縮率で圧縮して、前記炉壁の内面側に並べ、前記取付け金物を前記取付け手段で前記炉壁の内面側に固定することを特徴とするセラミックファイバーブロックの取付け方法。
【請求項1】
帯状のセラミックファイバーブランケットを葛折り状に折畳んで形成した直方体状のブロック体と、該ブロック体の折目部を有する裏面に装着された取付け金物とを備え、使用にあっては取付け手段で固定される前記取付け金物を介して工業炉の炉壁の内側面に並べて取付けられるセラミックファイバーブロックであって、
使用時に炉内側となる前記ブロック体の表面側を、該ブロック体の表面から途中位置まで、結晶セラミックファイバーブランケットで形成された箱状のキャップ部材で覆ったことを特徴とするセラミックファイバーブロック。
【請求項2】
請求項1記載のセラミックファイバーブロックにおいて、前記箱状のキャップ部材の開口側端部は、前記ブロック体にアルミナロープを用いて縫い付けられていることを特徴とするセラミックファイバーブロック。
【請求項3】
請求項1又は2記載のセラミックファイバーブロックにおいて、前記取付け金物は、前記ブロック体の裏面側から突出する金具が係合する係合孔を有すると共に、前記取付け手段となる前記工業炉の炉壁に設けられた挿通孔に嵌入する取付けボルトを有することを特徴とするセラミックファイバーブロック。
【請求項4】
請求項1又は2記載のセラミックファイバーブロックにおいて、前記取付け金物は、前記ブロック体の裏面側から突出する金具が係合する係合孔を有すると共に、前記取付け手段となる前記工業炉の炉壁の内側面から突出する取付けボルトが嵌入する第1の挿通孔を有することを特徴とするセラミックファイバーブロック。
【請求項5】
請求項4記載のセラミックファイバーブロックにおいて、前記箱状のキャップ部材は、前記取付けボルトが挿通する部位で2分割され、前記ブロック体には前記取付けボルトが挿通する第2の挿通孔が設けられていることを特徴とするセラミックファイバーブロック。
【請求項6】
請求項1又は2記載のセラミックファイバーブランケットを工業炉の炉壁の内面側に並べて取付けるセラミックファイバーブロックの取付け方法であって、
予め前記セラミックファイバーブロックの圧縮率を考慮して、前記炉壁に前記取付け手段を設け、前記セラミックファイバーブロックを前記圧縮率で圧縮して、前記炉壁の内面側に並べ、前記取付け金物を前記取付け手段で前記炉壁の内面側に固定することを特徴とするセラミックファイバーブロックの取付け方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−225633(P2012−225633A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137613(P2011−137613)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]