セラミックフィルタ
セラミックフィルタ(1)を構成するハニカムセグメント(2)の排ガスの入口側端面において、中央部分の目封じ率が、追加目封じ(13)により周辺部分の目封じ率よりも大きい。これにより各ハニカムセグメント(2)の中央部分の流通孔(5)に堆積するスート量が周辺部分よりも相対的に少なくなる。これは、中央部分ではスートの燃焼によって発生する熱量を小さくし、再生時の温度上昇を低くし、ひいてはセラミックフィルタ1の最高温度を抑制する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ、diesel particulate filter)、その他の捕集フィルタに用いられるセラミックフィルタに関する。このフィルタは、ディーゼルエンジン等からの排ガスに含まれているスート(soot)等のパティキュレート(particulate)を捕捉して除去する。
【背景技術】
【0002】
DPFは、特開昭56−129020号公報に記載される。炭化珪素等のセラミックからなる多孔質のハニカムセグメントがセメントからなる接合層によって複数接合されて、ハニカム組付体となる。このハニカム組付体は、円形断面等の所定の形状に成形された後、その周囲がコート材層により被覆される。このDPFは、ディーゼルエンジンの排気系内に配置され、排ガスを浄化するために使用される。
【0003】
各ハニカムセグメントは、多孔質の隔壁によって仕切られ、且つ軸方向に貫通する多数の流通孔を有している。隣接する流通孔は、交互に目封じされた一端部を有する。一の流通孔は、一側の端部で開口している一方、他側の端部で目封じされる。この流通孔と隣接する他の流通孔は、他側の端部で目封じされる一方、一側の端部で開口している。
【0004】
このような構造のDPFでは、排ガスが、開口している流通孔の端部から排ガスが流入し、多孔質の隔壁を通過して他の流通孔から流出する。排ガスが隔壁を通過する間に、排ガス中のスートに代表されるパティキュレートが隔壁に捕捉される。これにより、排ガスが浄化される。
【0005】
このようなDPFでは、排ガスの浄化を継続することにより、スートが流通孔内に堆積する。これにより、経時的に圧力損失が増大し、浄化効率が低下する。このため、スートを燃焼して除去する再生を行う必要がある。この再生において、スートの燃焼熱によってそれぞれのハニカムセグメントの温度が上昇する。再生時における温度分布は、各ハニカムセグメントにおける排ガスの出口側の中央部分で最も高くなる(刊行物「SAE Technical Paper Series 870010」(1983年2月刊行)参照)。
【0006】
このようなハニカムセグメントの再生中に、出口側の最高温度がハニカムセグメントの耐久温度以上となったとする。この場合、ハニカムセグメントにクラックが発生し、また、担持された触媒の劣化を招くことがある。
【0007】
次は、かかる再生時における最高温度を抑制するための従来の方法である。再生時におけるDPFの入口温度が一定以下となるように温度を調整し、又は、再生時に供給する空気内の酸素濃度や空気流量を制御する。ハニカムセグメントに堆積するスートの量が一定以上とならないように再生時期を調整する。
【発明の開示】
【0008】
従来の入口の温度調整や酸素濃度、空気量の制御、さらには再生時期の調整は、そのための情報を逐一監視、収集してそれぞれの条件に基づいて制御する必要がある。このため、情報検出のためのセンサ等が必要であり、この構造は、複雑であると共に、難しい制御、汎用性に欠ける問題を有している。
【0009】
本発明の目的は、これらの煩雑な制御を行うことなく、しかも再生時の最高温度を簡単に抑制するセラミックフィルタを提供することである。
【0010】
本発明の特徴は、以下のセラミックフィルタを提供する。セラミックフィルタは、互いに接合した複数のハニカムセグメントを含む。ハミカムセグメントは、多孔質の隔壁によって仕切られる。ハニカムセグメントは、排ガスが長手方向に入口から出口へ流通する複数の流通孔を有する。各ハニカムセグメントは、交互に配置された第1の流通孔と第2の流通孔とを含む。前記第1の流通孔は、前記入口で目封じされる共に、前記出口で開放される。前記第2の流通孔は、前記入口で開放されると共に、前記出口で目封じされる。各ハニカムセグメントは、前記入口に中央部分とこの中央部分を囲む周辺部分とを有した端面を有する。前記中央部分の前記第2の流通孔は、前記入口で、追加目封じされる。前記中央部分は、前記入口における流通孔の目封じ率について、前記周辺部分よりも大きい。
【0011】
この発明によれば、各ハニカムセグメントの入口に流入する排ガスの量は、周辺部分よりも中央部分で少なくなる。このため、各ハニカムセグメントの流通孔に堆積するスート量は、周辺部分よりも中央部分で相対的に少なくなり、中央部分ではスートの燃焼によって発生する熱量が小さくなる。これにより、再生時の温度上昇を低くし、ひいてはセラミックフィルタの最高温度を抑制する。
【0012】
したがって、このセラミックフィルタは、再生中にクラックや触媒劣化が発生する可能性を低減できる。セラミックフィルタは、簡単な構造で最高温度を抑制可能になるため、センサ等の周辺機器ばかりでなく、煩雑な制御を必要としない。
【0013】
前記中央部分の追加目封じ率は、追加目封じ量によって増加するフィルタ全体の圧力損失上昇率が所定値以下であり、且つフィルタに堆積したスート燃焼時の最高温度の低減率が所定値以上であることを前提として設定してもよい。
【0014】
この発明によれば、追加目封じ率を圧力損失と最高温度との相関によって設定するため、前記中央部分の追加目封じによる圧力損失を一定以下に抑制したままで各ハニカムセグメントの最高温度を抑制する。
【0015】
前記中央部分の追加目封じ率は、各ハニカムセグメントの入口端面の全面積に対して0.1〜10%の範囲にしてもよい。
【0016】
この発明によれば、セラミックフィルタの圧力損失を一定値以下にしたままでスート燃焼時の最高温度を抑制し、また、中央部分の追加目封じ率を簡単に設定することができる。中央部分の追加目封じ率は、排ガスの入口側端面の全面積に対して0.1〜5%の範囲、さらに、0.1〜3%の範囲にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の一実施形態が適用されるセラミックフィルタの斜視図である。
【図2】図2は、追加目封じ前の図1のセラミックフィルタを構成するハニカムセグメントの一例を示す斜視図である。
【図3】図3は、図2におけるIII−IIIに沿った断面図である。
【図4】図4は、追加目封じ後のハニカムセグメントの排ガスの入口側端面における目封じパターンを示す正面図である。
【図5】図5は、スート燃焼によってハニカムセグメントに発生する温度分布を示す特性図である。
【図6】図6は、中央部分の追加目封じ率に対する最高温度低減率及び圧力損失の変化を示すグラフである。
【図7】図7は、実施例に用いたハニカムセグメントの排ガスの入口側端面の第1の目封じパターンを示す正面図である。
【図8】図8は、実施例に用いたハニカムセグメントの排ガスの入口側端面の第2の目封じパターンを示す正面図である。
【図9】図9は、実施例に用いたハニカムセグメントの排ガスの入口側端面の第3の目封じパターンを示す正面図である。
【図10】図10は、実施例に用いたハニカムセグメントの排ガスの入口側端面の第4の目封じパターンを示す正面図である。
【図11】図11は、実施例に用いたハニカムセグメントの排ガスの入口側端面の第5の目封じパターンを示す正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1において、本発明の実施形態のセラミックフィルタ1は、互いに組みつけられた複数のハニカムセグメント2で構成される。
【0019】
セラミックフィルタ1は、円柱形のハニカム3と、ハニカム3の周りに配置されたコート剤層4とを含む。ハミカム3は、互いに接合された複数のハニカムセグメント2を含む。ハニカムセグメント2は、接合層9によって互いに接合される。ハニカムセグメント2の接合の後、ハミカム3は、外周部分で研削加工され、円形断面、楕円断面、三角断面その他の断面となる。ハミカム3の周囲は、コート剤層4によって被覆され、セラミックフィルタ1になる。DPFとしてのこのセラミックフィルタ1は、ディーゼルエンジンの排ガスの流路に配置されて、ディーゼルエンジンから排出されるスートを含むパティキュレートを捕捉する。
【0020】
図2及び図3において、単一のハニカムセグメント2は、多孔質の隔壁6によって仕切られた多数の流通孔5を有している。流通孔5はハニカムセグメント2を長手方向に貫通する。隣接する流通孔5a、5bは、一端において充填材7によって交互に目封じされている。すなわち、一の流通孔5aは、左端で開放する一方、右端で充填材7によって目封じされる。流通孔5aと隣接する流通孔5bは、左端で充填材7によって目封じされる一方、右端で開放する。
【0021】
図3を参照して、ハニカムセグメント2が組み付けられたセラミックフィルタ1を排ガスの流路内に配置する。排ガスGは、図3の左側から各ハニカムセグメント2の流通孔5内に流入して右側へ向かって移動する。すなわち、図3においてはハニカムセグメント2の左側端面が排ガスの入口側となり、その右側端面が出口側となる。排ガスGは、目封じせずに開放している流通孔5a(出口側が目封じされている)からハニカムセグメント2内に流入する。この排ガスGは、多孔質の隔壁6を通過して他の流通孔5b(出口側が開放されている)に移行し、右側端面から流出する。排ガスGが隔壁6を通過する間に、隔壁6は、排ガスG中のスートを含むパティキュレートを捕捉して、排ガスGを浄化する。この捕捉により、ハニカムセグメント2の内部にスートを経時的に堆積させ、圧力損失を増大させる。このため、スートを燃焼して再生する。
【0022】
ハニカムセグメント2は、正方形断面の他に、三角形断面、六角形断面等の適宜の断面形状としてもよい。流通孔5は、断面形状において、三角形、六角形、円形、楕円形、その他の形状としてもよい。
【0023】
ハニカムセグメント2は、材料として強度、耐熱性の観点から、コージェライト(cordierite)、ムライト(mullite)、アルミナ(alumina)、スピネル(spinel)、炭化珪素、炭化珪素−コージェライト系複合材、珪素−炭化珪素複合材、窒化珪素、リチウムアルミニウムシリケート(lithium aluminum silicate)、チタン酸アルミニウム、Fe−Cr−Al系金属からなる群から選択される1種もしくは複数種を組み合わせた材料を使用する。
【0024】
ハニカムセグメント2の製造では、上述した中から選択された材料にバインダ、界面活性剤や水等を添加して、可塑性の坏土とする。バインダは、例えば、メチルセルロース(methylcellulose)、ヒドロキシプロポキシルセルロース(hydroxypropoxylcellulose)、ヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethylcellulose)、カルボキシメチルセルロース(carboxylmethylcellulose)、ポリビニルアルコール(polyvinylalcohol)を使用する。この坏土は押出成形されて、隔壁6によって仕切られ且つ長手方向に貫通する多数の流通孔5を有するハニカム構造になる。このハニカム構造は、マイクロ波、熱風等によって乾燥された後、焼結されて、ハニカムセグメント2を作製する。
【0025】
接合層9は、材料として、無機粒子または繊維とコロイダルゾルの混合物を使用する。無機粒子は、例えば、セメントを始めとして、炭化珪素、窒化珪素、コージェライト、アルミナ、ムライトである。コロイダルゾルは、例えば、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナである。接合層9は、この混合物に、必要に応じて金属繊維等の金属、造孔材、各種セラミックスの粒子などを添加した材料を使用する。
【0026】
図4において、ハニカムセグメント2は、排ガスの入口側の端面において、充填材7によって目封じされた入口を有する流通孔5bと、開放した入口を有する流通孔5aとを含む。目封じした及び開放した流通孔5a、5bは、交互に配置されている。流通孔5bは、ハッチングで示すように、充填材によって目封じされた入口11を有する。流通孔5aは、目封じなしに開放した入口12である。
【0027】
この実施形態において、排ガスの入口側端面における中央部分の目封じ率が周辺部分の目封じ率よりも大きくなるように設定される。ここで、「目封じ率」は、ハニカムセグメント1個当たりの排ガスの入口側端面における所定の面積(中央部分と周辺部分)に対して同面積内に存在する目封じした入口の面積の比率をいう。「中央部分又は内側部分」とは、ハニカムセグメントの端面の外形内にあって、前記端面の外形に対して相似比70%の相似形の内部領域である。中央部分は、前記端面の外形内で任意に設定してもよい。相似の中心は、前条件の下、任意に選択され、例えば、前記外形の幾何中心に設定してもよい。「幾何中心」とは、前記外形の面積モーメントの代表となる点である。「周辺部分又は外側部分」とは、前記端面の外形及び前記相似形の間の領域である。
【0028】
このように排ガスの入口側端面における中央部分は、目封じ率について周辺部分のよりも大きくする。このために、図4において、クロスハッチングで示す入口13を充填材によって追加目封じする。これにより、中央部分Cに対して目封じした入口11、13を多く配置する。ここで、周辺部分P1とは、例えば、ハニカムセグメント2の端面の外形において、それぞれ辺から内部へ向かってそれぞれ横及び縦寸法の15%以内の領域である。中央部分C1とは、例えば、前記周辺部分よりも内部の領域である。別言すれば、中央部分C1は、幾何学的中心C2を相似の中心として、相似比70%の相似形の内側の領域であり、周辺部分P1は、前記端面の外形及び前記相似形の間の領域である。
【0029】
具体的には、中央部分C1は、5箇所の追加目封じした入口13を有する。これにより、中央部分C1には、9箇所の目封じした入口11及び13を集中的に配置する。この配置により、中央部分C1は、目封じ率について周辺部分P1よりも大きい。
【0030】
追加目封じした入口13を有した流通孔5cは、入口および出口の両側で目封じされるので、排ガスが流通孔5c内に流入しない。これにより、流通孔5cにスートが堆積せず、スート燃焼による発熱が発生しない。よって、追加目封じは、その周囲のスート再生中に温度を下げる冷却効果をもたらす。
【0031】
図5において、セラミックフィルタ1の再生のためにスートを燃焼させた場合、ハニカムセグメント2の出口部分での温度分布を説明する。
【0032】
図5は、ハニカムセグメントの軸方向に沿った断面を示している。ディーゼルエンジンからの排ガスGは、矢印方向からハニカムセグメント2へ流入する。すなわち、矢印G側(図5における上側)が排ガスの入口側であり、反対側(図5における下側)が排ガスの出口側である。
【0033】
追加目封じされた入口を中央部分に多く配置していない場合には、特性曲線Jで示すように、出口側での最高温度が高くなる。これに対し、追加目封じした入口13を中央部分に配置した場合、特性曲線Mで示すように、出口側での最高温度が高くならない。
【0034】
特性曲線Mにおいては、ハニカムセグメント2の断面における周辺が最高温度となる。一方、ハニカムセグメント2は、外側に、熱容量が大きな接合層9(図1参照)を有し、接合層9が熱を吸収するため、特性曲線Jのように最高温度が高くならない。
【0035】
すなわち、特性曲線Jで示す再生時の温度分布では、温度は、各ハニカムセグメント2の入口側よりも出口側で高くなる。出口側での温度分布は、破線の特性曲線Jで示すように、略放物線を描く分布となる。すなわち、温度は、ハニカムセグメントの断面の中央で最高温度となり、周辺に向かうにつれて低くなる。入口側に比べて出口側で温度が高くなるのは、再生では、入口側のスートから燃焼を開始し、この燃焼熱の出口側への熱伝導と共に出口側に向かってスートの燃焼が移動するためである。出口側の中央が最高温度となるのは、ハニカムセグメント2は、その周辺に大きな熱容量のセメント等の接合層を有し、この接合層が熱を吸収されるためである。
【0036】
このように再生時のセラミックフィルタの最高温度を抑制するので、再生の際にハニカムセグメント2にクラックや触媒劣化を発生させない。排ガス流入側における中央部分の目封じ率を周辺部分のそれよりも大きくし、具体的には目封じされた入口を中央部分に多く配置する。これは、再生時のセラミックフィルタの最高温度を抑制可能であるので、センサ等の周辺機器が不要で簡単な構造となり、煩雑な制御を不要とする。
【0037】
以上のハニカムセグメント1個当たりの排ガス入口側端面における中央部分の目封じ率は、目封じ量によって増加するフィルタ全体の圧力損失上昇率が所定値以下であり、且つフィルタに堆積したスート燃焼時の最高温度の低減率が所定値以上であることを前提として設定される。
【0038】
図6を参照して、中央部分の追加目封じ率と、フィルタ全体の圧力損失の上昇率と、再生におけるスート燃焼時の最高温度の低減率とをプロットしたグラフを説明する。「中央部分の追加目封じ率」とは、ハニカムセグメントの入口における端面の全面積(中央部分及び周辺部分)に対して、前記端面の中央部分で追加目封じされた流通孔の総面積の割合である。特性曲線Xは、フィルタ1を構成する各ハニカムセグメント2の中央部分の追加目封じ率に対するスート燃焼時の最高温度の低減率を示す。特性曲線Yは、フィルタ1を構成する各ハニカムセグメント2の中央部分の追加目封じ率に対するフィルタ1全体の圧力損失を示す。
【0039】
特性曲線Yは、放物線に近似したカーブを示し、圧力損失はハニカムセグメント2の中央部分の目封じ率が大きくなるのにつれて増加する。一方、スート燃焼時の最高温度は、特性曲線Xで示すように、ハニカムセグメント2の中央部分の追加目封じ率が大きくなるのにつれて低下する。一方、目封じ率が一定値を超えると、中央部分を囲む周辺部分の単位体積当りのスート堆積量が増加する。これにより、再生時に前記周辺部分の温度が上昇し、結果として前記中央部分の最高温度が上がっていく(最高温度低減率が低下する)。
【0040】
この実施形態では、以上の関係を考慮し、フィルタを構成する各ハニカムセグメントの中央部分の追加目封じ率を圧力損失の上昇率が所定値以下で、且つ最高温度の低減率が所定値以上となるように設定する。これにより、前記中央部分の追加目封じによる圧力損失を一定以下に抑制したままで最高温度を抑制可能となる。
【0041】
かかる関係を考慮した場合、前記中央部分の追加目封じ率は、ハニカムセグメント1個当たりの排ガスの入口側端面の全面積に対して0.1〜10%の範囲に設定する。この中央部分の追加目封じ率は、さらに実用的には、入口側端面の全面積に対して0.1〜5%の範囲が良好であり、0.1〜3%の範囲が最も良好である。
【実施例】
【0042】
一辺が35mmの正方形断面のハニカムセグメントを作製した。このハニカムセグメントを複数本接合して図1に示す円筒形状のセラミックフィルタ(DPF)を作製した。組み込んだハニカムセグメントの長さ及び数、セラミックフィルタ(DPF)の外径サイズを表1に示す。
【0043】
表1における「セル構造」は、用いたハニカムセグメントに形成した流通孔の入口サイズである。10/300は、隔壁の厚さ/セル密度を示す。隔壁の厚さ10は、10mill(1mill=0.0254mm)を示す。セル密度300は、300cpsi(cell per square inch)を示す。
【0044】
「中央部分の追加目封じ数」とは、目封じした入口と目封じしないで開放している入口が隣接するように交互に配置した市松パターンにおける中央部分で、追加目封じされた流通孔の入口の数を示す。「中央部分の追加目封じ面積」は、中央部分において追加目封じされた流通孔の入口に相当する目封じ面積である。「中央部分の追加目封じ率」は、ハニカムセグメントの排ガスの入口側端面の全面積に対する前記中央部分の追加目封じ面積の割合である。
【0045】
この実施例では、表1のセラミックフィルタ(DPF)のそれぞれに対し、スートを10g/L堆積した。その後、エンジンのポストインジェクションによってセラミックフィルタ(DPF)における排ガス流入側の温度を650℃まで上昇させた。DPFの長手方向における圧力差が低下した時点でポストインジェクションを停止し、アイドル状態とした。そのときの最高温度の低減率及び圧力損失の上昇率を測定した。
【0046】
図7〜図11は、ハニカムセグメント2A、2B、2C、2D、2Eにおける排ガス流入側の目封じパターンであり、符号は図4の符号に対応している。図7〜図11の目封じパターンは、表1における「その他」欄に対応する図番を付して表示した。
【0047】
表1から判るように、目封じの追加割合が0.1〜10%の範囲において、スート捕集率への悪影響がない圧力損失の状態で、セラミックフィルタ(DPF)の最高温度を確実に低減させる。
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のセラミックフィルタは、排ガス中のパティキュレートを捕捉するフィルタとして用いるものであり、DPF、ボイラー等に対して良好に適用される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、DPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ、diesel particulate filter)、その他の捕集フィルタに用いられるセラミックフィルタに関する。このフィルタは、ディーゼルエンジン等からの排ガスに含まれているスート(soot)等のパティキュレート(particulate)を捕捉して除去する。
【背景技術】
【0002】
DPFは、特開昭56−129020号公報に記載される。炭化珪素等のセラミックからなる多孔質のハニカムセグメントがセメントからなる接合層によって複数接合されて、ハニカム組付体となる。このハニカム組付体は、円形断面等の所定の形状に成形された後、その周囲がコート材層により被覆される。このDPFは、ディーゼルエンジンの排気系内に配置され、排ガスを浄化するために使用される。
【0003】
各ハニカムセグメントは、多孔質の隔壁によって仕切られ、且つ軸方向に貫通する多数の流通孔を有している。隣接する流通孔は、交互に目封じされた一端部を有する。一の流通孔は、一側の端部で開口している一方、他側の端部で目封じされる。この流通孔と隣接する他の流通孔は、他側の端部で目封じされる一方、一側の端部で開口している。
【0004】
このような構造のDPFでは、排ガスが、開口している流通孔の端部から排ガスが流入し、多孔質の隔壁を通過して他の流通孔から流出する。排ガスが隔壁を通過する間に、排ガス中のスートに代表されるパティキュレートが隔壁に捕捉される。これにより、排ガスが浄化される。
【0005】
このようなDPFでは、排ガスの浄化を継続することにより、スートが流通孔内に堆積する。これにより、経時的に圧力損失が増大し、浄化効率が低下する。このため、スートを燃焼して除去する再生を行う必要がある。この再生において、スートの燃焼熱によってそれぞれのハニカムセグメントの温度が上昇する。再生時における温度分布は、各ハニカムセグメントにおける排ガスの出口側の中央部分で最も高くなる(刊行物「SAE Technical Paper Series 870010」(1983年2月刊行)参照)。
【0006】
このようなハニカムセグメントの再生中に、出口側の最高温度がハニカムセグメントの耐久温度以上となったとする。この場合、ハニカムセグメントにクラックが発生し、また、担持された触媒の劣化を招くことがある。
【0007】
次は、かかる再生時における最高温度を抑制するための従来の方法である。再生時におけるDPFの入口温度が一定以下となるように温度を調整し、又は、再生時に供給する空気内の酸素濃度や空気流量を制御する。ハニカムセグメントに堆積するスートの量が一定以上とならないように再生時期を調整する。
【発明の開示】
【0008】
従来の入口の温度調整や酸素濃度、空気量の制御、さらには再生時期の調整は、そのための情報を逐一監視、収集してそれぞれの条件に基づいて制御する必要がある。このため、情報検出のためのセンサ等が必要であり、この構造は、複雑であると共に、難しい制御、汎用性に欠ける問題を有している。
【0009】
本発明の目的は、これらの煩雑な制御を行うことなく、しかも再生時の最高温度を簡単に抑制するセラミックフィルタを提供することである。
【0010】
本発明の特徴は、以下のセラミックフィルタを提供する。セラミックフィルタは、互いに接合した複数のハニカムセグメントを含む。ハミカムセグメントは、多孔質の隔壁によって仕切られる。ハニカムセグメントは、排ガスが長手方向に入口から出口へ流通する複数の流通孔を有する。各ハニカムセグメントは、交互に配置された第1の流通孔と第2の流通孔とを含む。前記第1の流通孔は、前記入口で目封じされる共に、前記出口で開放される。前記第2の流通孔は、前記入口で開放されると共に、前記出口で目封じされる。各ハニカムセグメントは、前記入口に中央部分とこの中央部分を囲む周辺部分とを有した端面を有する。前記中央部分の前記第2の流通孔は、前記入口で、追加目封じされる。前記中央部分は、前記入口における流通孔の目封じ率について、前記周辺部分よりも大きい。
【0011】
この発明によれば、各ハニカムセグメントの入口に流入する排ガスの量は、周辺部分よりも中央部分で少なくなる。このため、各ハニカムセグメントの流通孔に堆積するスート量は、周辺部分よりも中央部分で相対的に少なくなり、中央部分ではスートの燃焼によって発生する熱量が小さくなる。これにより、再生時の温度上昇を低くし、ひいてはセラミックフィルタの最高温度を抑制する。
【0012】
したがって、このセラミックフィルタは、再生中にクラックや触媒劣化が発生する可能性を低減できる。セラミックフィルタは、簡単な構造で最高温度を抑制可能になるため、センサ等の周辺機器ばかりでなく、煩雑な制御を必要としない。
【0013】
前記中央部分の追加目封じ率は、追加目封じ量によって増加するフィルタ全体の圧力損失上昇率が所定値以下であり、且つフィルタに堆積したスート燃焼時の最高温度の低減率が所定値以上であることを前提として設定してもよい。
【0014】
この発明によれば、追加目封じ率を圧力損失と最高温度との相関によって設定するため、前記中央部分の追加目封じによる圧力損失を一定以下に抑制したままで各ハニカムセグメントの最高温度を抑制する。
【0015】
前記中央部分の追加目封じ率は、各ハニカムセグメントの入口端面の全面積に対して0.1〜10%の範囲にしてもよい。
【0016】
この発明によれば、セラミックフィルタの圧力損失を一定値以下にしたままでスート燃焼時の最高温度を抑制し、また、中央部分の追加目封じ率を簡単に設定することができる。中央部分の追加目封じ率は、排ガスの入口側端面の全面積に対して0.1〜5%の範囲、さらに、0.1〜3%の範囲にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の一実施形態が適用されるセラミックフィルタの斜視図である。
【図2】図2は、追加目封じ前の図1のセラミックフィルタを構成するハニカムセグメントの一例を示す斜視図である。
【図3】図3は、図2におけるIII−IIIに沿った断面図である。
【図4】図4は、追加目封じ後のハニカムセグメントの排ガスの入口側端面における目封じパターンを示す正面図である。
【図5】図5は、スート燃焼によってハニカムセグメントに発生する温度分布を示す特性図である。
【図6】図6は、中央部分の追加目封じ率に対する最高温度低減率及び圧力損失の変化を示すグラフである。
【図7】図7は、実施例に用いたハニカムセグメントの排ガスの入口側端面の第1の目封じパターンを示す正面図である。
【図8】図8は、実施例に用いたハニカムセグメントの排ガスの入口側端面の第2の目封じパターンを示す正面図である。
【図9】図9は、実施例に用いたハニカムセグメントの排ガスの入口側端面の第3の目封じパターンを示す正面図である。
【図10】図10は、実施例に用いたハニカムセグメントの排ガスの入口側端面の第4の目封じパターンを示す正面図である。
【図11】図11は、実施例に用いたハニカムセグメントの排ガスの入口側端面の第5の目封じパターンを示す正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1において、本発明の実施形態のセラミックフィルタ1は、互いに組みつけられた複数のハニカムセグメント2で構成される。
【0019】
セラミックフィルタ1は、円柱形のハニカム3と、ハニカム3の周りに配置されたコート剤層4とを含む。ハミカム3は、互いに接合された複数のハニカムセグメント2を含む。ハニカムセグメント2は、接合層9によって互いに接合される。ハニカムセグメント2の接合の後、ハミカム3は、外周部分で研削加工され、円形断面、楕円断面、三角断面その他の断面となる。ハミカム3の周囲は、コート剤層4によって被覆され、セラミックフィルタ1になる。DPFとしてのこのセラミックフィルタ1は、ディーゼルエンジンの排ガスの流路に配置されて、ディーゼルエンジンから排出されるスートを含むパティキュレートを捕捉する。
【0020】
図2及び図3において、単一のハニカムセグメント2は、多孔質の隔壁6によって仕切られた多数の流通孔5を有している。流通孔5はハニカムセグメント2を長手方向に貫通する。隣接する流通孔5a、5bは、一端において充填材7によって交互に目封じされている。すなわち、一の流通孔5aは、左端で開放する一方、右端で充填材7によって目封じされる。流通孔5aと隣接する流通孔5bは、左端で充填材7によって目封じされる一方、右端で開放する。
【0021】
図3を参照して、ハニカムセグメント2が組み付けられたセラミックフィルタ1を排ガスの流路内に配置する。排ガスGは、図3の左側から各ハニカムセグメント2の流通孔5内に流入して右側へ向かって移動する。すなわち、図3においてはハニカムセグメント2の左側端面が排ガスの入口側となり、その右側端面が出口側となる。排ガスGは、目封じせずに開放している流通孔5a(出口側が目封じされている)からハニカムセグメント2内に流入する。この排ガスGは、多孔質の隔壁6を通過して他の流通孔5b(出口側が開放されている)に移行し、右側端面から流出する。排ガスGが隔壁6を通過する間に、隔壁6は、排ガスG中のスートを含むパティキュレートを捕捉して、排ガスGを浄化する。この捕捉により、ハニカムセグメント2の内部にスートを経時的に堆積させ、圧力損失を増大させる。このため、スートを燃焼して再生する。
【0022】
ハニカムセグメント2は、正方形断面の他に、三角形断面、六角形断面等の適宜の断面形状としてもよい。流通孔5は、断面形状において、三角形、六角形、円形、楕円形、その他の形状としてもよい。
【0023】
ハニカムセグメント2は、材料として強度、耐熱性の観点から、コージェライト(cordierite)、ムライト(mullite)、アルミナ(alumina)、スピネル(spinel)、炭化珪素、炭化珪素−コージェライト系複合材、珪素−炭化珪素複合材、窒化珪素、リチウムアルミニウムシリケート(lithium aluminum silicate)、チタン酸アルミニウム、Fe−Cr−Al系金属からなる群から選択される1種もしくは複数種を組み合わせた材料を使用する。
【0024】
ハニカムセグメント2の製造では、上述した中から選択された材料にバインダ、界面活性剤や水等を添加して、可塑性の坏土とする。バインダは、例えば、メチルセルロース(methylcellulose)、ヒドロキシプロポキシルセルロース(hydroxypropoxylcellulose)、ヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethylcellulose)、カルボキシメチルセルロース(carboxylmethylcellulose)、ポリビニルアルコール(polyvinylalcohol)を使用する。この坏土は押出成形されて、隔壁6によって仕切られ且つ長手方向に貫通する多数の流通孔5を有するハニカム構造になる。このハニカム構造は、マイクロ波、熱風等によって乾燥された後、焼結されて、ハニカムセグメント2を作製する。
【0025】
接合層9は、材料として、無機粒子または繊維とコロイダルゾルの混合物を使用する。無機粒子は、例えば、セメントを始めとして、炭化珪素、窒化珪素、コージェライト、アルミナ、ムライトである。コロイダルゾルは、例えば、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナである。接合層9は、この混合物に、必要に応じて金属繊維等の金属、造孔材、各種セラミックスの粒子などを添加した材料を使用する。
【0026】
図4において、ハニカムセグメント2は、排ガスの入口側の端面において、充填材7によって目封じされた入口を有する流通孔5bと、開放した入口を有する流通孔5aとを含む。目封じした及び開放した流通孔5a、5bは、交互に配置されている。流通孔5bは、ハッチングで示すように、充填材によって目封じされた入口11を有する。流通孔5aは、目封じなしに開放した入口12である。
【0027】
この実施形態において、排ガスの入口側端面における中央部分の目封じ率が周辺部分の目封じ率よりも大きくなるように設定される。ここで、「目封じ率」は、ハニカムセグメント1個当たりの排ガスの入口側端面における所定の面積(中央部分と周辺部分)に対して同面積内に存在する目封じした入口の面積の比率をいう。「中央部分又は内側部分」とは、ハニカムセグメントの端面の外形内にあって、前記端面の外形に対して相似比70%の相似形の内部領域である。中央部分は、前記端面の外形内で任意に設定してもよい。相似の中心は、前条件の下、任意に選択され、例えば、前記外形の幾何中心に設定してもよい。「幾何中心」とは、前記外形の面積モーメントの代表となる点である。「周辺部分又は外側部分」とは、前記端面の外形及び前記相似形の間の領域である。
【0028】
このように排ガスの入口側端面における中央部分は、目封じ率について周辺部分のよりも大きくする。このために、図4において、クロスハッチングで示す入口13を充填材によって追加目封じする。これにより、中央部分Cに対して目封じした入口11、13を多く配置する。ここで、周辺部分P1とは、例えば、ハニカムセグメント2の端面の外形において、それぞれ辺から内部へ向かってそれぞれ横及び縦寸法の15%以内の領域である。中央部分C1とは、例えば、前記周辺部分よりも内部の領域である。別言すれば、中央部分C1は、幾何学的中心C2を相似の中心として、相似比70%の相似形の内側の領域であり、周辺部分P1は、前記端面の外形及び前記相似形の間の領域である。
【0029】
具体的には、中央部分C1は、5箇所の追加目封じした入口13を有する。これにより、中央部分C1には、9箇所の目封じした入口11及び13を集中的に配置する。この配置により、中央部分C1は、目封じ率について周辺部分P1よりも大きい。
【0030】
追加目封じした入口13を有した流通孔5cは、入口および出口の両側で目封じされるので、排ガスが流通孔5c内に流入しない。これにより、流通孔5cにスートが堆積せず、スート燃焼による発熱が発生しない。よって、追加目封じは、その周囲のスート再生中に温度を下げる冷却効果をもたらす。
【0031】
図5において、セラミックフィルタ1の再生のためにスートを燃焼させた場合、ハニカムセグメント2の出口部分での温度分布を説明する。
【0032】
図5は、ハニカムセグメントの軸方向に沿った断面を示している。ディーゼルエンジンからの排ガスGは、矢印方向からハニカムセグメント2へ流入する。すなわち、矢印G側(図5における上側)が排ガスの入口側であり、反対側(図5における下側)が排ガスの出口側である。
【0033】
追加目封じされた入口を中央部分に多く配置していない場合には、特性曲線Jで示すように、出口側での最高温度が高くなる。これに対し、追加目封じした入口13を中央部分に配置した場合、特性曲線Mで示すように、出口側での最高温度が高くならない。
【0034】
特性曲線Mにおいては、ハニカムセグメント2の断面における周辺が最高温度となる。一方、ハニカムセグメント2は、外側に、熱容量が大きな接合層9(図1参照)を有し、接合層9が熱を吸収するため、特性曲線Jのように最高温度が高くならない。
【0035】
すなわち、特性曲線Jで示す再生時の温度分布では、温度は、各ハニカムセグメント2の入口側よりも出口側で高くなる。出口側での温度分布は、破線の特性曲線Jで示すように、略放物線を描く分布となる。すなわち、温度は、ハニカムセグメントの断面の中央で最高温度となり、周辺に向かうにつれて低くなる。入口側に比べて出口側で温度が高くなるのは、再生では、入口側のスートから燃焼を開始し、この燃焼熱の出口側への熱伝導と共に出口側に向かってスートの燃焼が移動するためである。出口側の中央が最高温度となるのは、ハニカムセグメント2は、その周辺に大きな熱容量のセメント等の接合層を有し、この接合層が熱を吸収されるためである。
【0036】
このように再生時のセラミックフィルタの最高温度を抑制するので、再生の際にハニカムセグメント2にクラックや触媒劣化を発生させない。排ガス流入側における中央部分の目封じ率を周辺部分のそれよりも大きくし、具体的には目封じされた入口を中央部分に多く配置する。これは、再生時のセラミックフィルタの最高温度を抑制可能であるので、センサ等の周辺機器が不要で簡単な構造となり、煩雑な制御を不要とする。
【0037】
以上のハニカムセグメント1個当たりの排ガス入口側端面における中央部分の目封じ率は、目封じ量によって増加するフィルタ全体の圧力損失上昇率が所定値以下であり、且つフィルタに堆積したスート燃焼時の最高温度の低減率が所定値以上であることを前提として設定される。
【0038】
図6を参照して、中央部分の追加目封じ率と、フィルタ全体の圧力損失の上昇率と、再生におけるスート燃焼時の最高温度の低減率とをプロットしたグラフを説明する。「中央部分の追加目封じ率」とは、ハニカムセグメントの入口における端面の全面積(中央部分及び周辺部分)に対して、前記端面の中央部分で追加目封じされた流通孔の総面積の割合である。特性曲線Xは、フィルタ1を構成する各ハニカムセグメント2の中央部分の追加目封じ率に対するスート燃焼時の最高温度の低減率を示す。特性曲線Yは、フィルタ1を構成する各ハニカムセグメント2の中央部分の追加目封じ率に対するフィルタ1全体の圧力損失を示す。
【0039】
特性曲線Yは、放物線に近似したカーブを示し、圧力損失はハニカムセグメント2の中央部分の目封じ率が大きくなるのにつれて増加する。一方、スート燃焼時の最高温度は、特性曲線Xで示すように、ハニカムセグメント2の中央部分の追加目封じ率が大きくなるのにつれて低下する。一方、目封じ率が一定値を超えると、中央部分を囲む周辺部分の単位体積当りのスート堆積量が増加する。これにより、再生時に前記周辺部分の温度が上昇し、結果として前記中央部分の最高温度が上がっていく(最高温度低減率が低下する)。
【0040】
この実施形態では、以上の関係を考慮し、フィルタを構成する各ハニカムセグメントの中央部分の追加目封じ率を圧力損失の上昇率が所定値以下で、且つ最高温度の低減率が所定値以上となるように設定する。これにより、前記中央部分の追加目封じによる圧力損失を一定以下に抑制したままで最高温度を抑制可能となる。
【0041】
かかる関係を考慮した場合、前記中央部分の追加目封じ率は、ハニカムセグメント1個当たりの排ガスの入口側端面の全面積に対して0.1〜10%の範囲に設定する。この中央部分の追加目封じ率は、さらに実用的には、入口側端面の全面積に対して0.1〜5%の範囲が良好であり、0.1〜3%の範囲が最も良好である。
【実施例】
【0042】
一辺が35mmの正方形断面のハニカムセグメントを作製した。このハニカムセグメントを複数本接合して図1に示す円筒形状のセラミックフィルタ(DPF)を作製した。組み込んだハニカムセグメントの長さ及び数、セラミックフィルタ(DPF)の外径サイズを表1に示す。
【0043】
表1における「セル構造」は、用いたハニカムセグメントに形成した流通孔の入口サイズである。10/300は、隔壁の厚さ/セル密度を示す。隔壁の厚さ10は、10mill(1mill=0.0254mm)を示す。セル密度300は、300cpsi(cell per square inch)を示す。
【0044】
「中央部分の追加目封じ数」とは、目封じした入口と目封じしないで開放している入口が隣接するように交互に配置した市松パターンにおける中央部分で、追加目封じされた流通孔の入口の数を示す。「中央部分の追加目封じ面積」は、中央部分において追加目封じされた流通孔の入口に相当する目封じ面積である。「中央部分の追加目封じ率」は、ハニカムセグメントの排ガスの入口側端面の全面積に対する前記中央部分の追加目封じ面積の割合である。
【0045】
この実施例では、表1のセラミックフィルタ(DPF)のそれぞれに対し、スートを10g/L堆積した。その後、エンジンのポストインジェクションによってセラミックフィルタ(DPF)における排ガス流入側の温度を650℃まで上昇させた。DPFの長手方向における圧力差が低下した時点でポストインジェクションを停止し、アイドル状態とした。そのときの最高温度の低減率及び圧力損失の上昇率を測定した。
【0046】
図7〜図11は、ハニカムセグメント2A、2B、2C、2D、2Eにおける排ガス流入側の目封じパターンであり、符号は図4の符号に対応している。図7〜図11の目封じパターンは、表1における「その他」欄に対応する図番を付して表示した。
【0047】
表1から判るように、目封じの追加割合が0.1〜10%の範囲において、スート捕集率への悪影響がない圧力損失の状態で、セラミックフィルタ(DPF)の最高温度を確実に低減させる。
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のセラミックフィルタは、排ガス中のパティキュレートを捕捉するフィルタとして用いるものであり、DPF、ボイラー等に対して良好に適用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質の隔壁によって仕切られると共に排ガスが長手方向に入口から出口へ流通する複数の流通孔を有し、互いに接合した複数のハニカムセグメントを含み、
各ハニカムセグメントは、交互に配置された第1の流通孔と第2の流通孔とを含み、
前記第1の流通孔は、前記入口で目封じされる共に、前記出口で開放され、
前記第2の流通孔は、前記入口で開放されると共に、前記出口で目封じされ、
各ハニカムセグメントは、前記入口に中央部分とこの中央部分を囲む周辺部分とを有した端面を有し、
前記中央部分の前記第2の流通孔は、前記入口で、追加目封じされ、
前記中央部分は、前記入口における流通孔の目封じ率について、前記周辺部分よりも大きい、セラミックフィルタ。
【請求項2】
前記中央部分の追加目封じ率は、追加目封じ量によって増加するフィルタ全体の圧力損失上昇率が所定値以下であり、且つフィルタに堆積したスート燃焼時の最高温度の低減率が所定値以上であることを前提として設定されている、クレーム1のセラミックフィルタ。
【請求項3】
前記中央部分の追加目封じ率は、前記入口における各ハニカムセグメントの端面の全面積に対して0.1〜10%の範囲である、クレーム1のセラミックフィルタ。
【請求項4】
前記中央部分の追加目封じ率は、前記入口における各ハニカムセグメントの端面の全面積に対して0.1〜10%の範囲である、クレーム2のセラミックフィルタ。
【請求項1】
多孔質の隔壁によって仕切られると共に排ガスが長手方向に入口から出口へ流通する複数の流通孔を有し、互いに接合した複数のハニカムセグメントを含み、
各ハニカムセグメントは、交互に配置された第1の流通孔と第2の流通孔とを含み、
前記第1の流通孔は、前記入口で目封じされる共に、前記出口で開放され、
前記第2の流通孔は、前記入口で開放されると共に、前記出口で目封じされ、
各ハニカムセグメントは、前記入口に中央部分とこの中央部分を囲む周辺部分とを有した端面を有し、
前記中央部分の前記第2の流通孔は、前記入口で、追加目封じされ、
前記中央部分は、前記入口における流通孔の目封じ率について、前記周辺部分よりも大きい、セラミックフィルタ。
【請求項2】
前記中央部分の追加目封じ率は、追加目封じ量によって増加するフィルタ全体の圧力損失上昇率が所定値以下であり、且つフィルタに堆積したスート燃焼時の最高温度の低減率が所定値以上であることを前提として設定されている、クレーム1のセラミックフィルタ。
【請求項3】
前記中央部分の追加目封じ率は、前記入口における各ハニカムセグメントの端面の全面積に対して0.1〜10%の範囲である、クレーム1のセラミックフィルタ。
【請求項4】
前記中央部分の追加目封じ率は、前記入口における各ハニカムセグメントの端面の全面積に対して0.1〜10%の範囲である、クレーム2のセラミックフィルタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【国際公開番号】WO2005/014142
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【発行日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513007(P2005−513007)
【国際出願番号】PCT/JP2004/011552
【国際出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【発行日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2004/011552
【国際出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
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