セラミック成形体、セラミック部品、セラミック成形体の製造方法及びセラミック部品の製造方法
【課題】導体パターンの剥がれや崩れがなく、しかも、導体パターンの厚みを厚くでき、抵抗値の低減化、高周波特性の向上を容易に図ることができるセラミック成形体を提供する。
【解決手段】第1セラミック成形体10Aは、樹脂と銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)系の金属の少なくとも1種類の粉末を含む導体ペースト15を所定の形状に成形硬化して導体成形部12とした後に、該導体成形部12の表面全面に焼成収縮率調整膜14を形成する。その後、表面に焼成収縮率調整膜14が形成された導体成形部12を鋳込み型16内に設置し、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶媒を含むゲルキャスト用のスラリー18を鋳込み型16内に鋳込んだ後に、硬化してセラミック成形部13とすることによって得られる。
【解決手段】第1セラミック成形体10Aは、樹脂と銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)系の金属の少なくとも1種類の粉末を含む導体ペースト15を所定の形状に成形硬化して導体成形部12とした後に、該導体成形部12の表面全面に焼成収縮率調整膜14を形成する。その後、表面に焼成収縮率調整膜14が形成された導体成形部12を鋳込み型16内に設置し、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶媒を含むゲルキャスト用のスラリー18を鋳込み型16内に鋳込んだ後に、硬化してセラミック成形部13とすることによって得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に導体が埋設されたセラミック成形体、セラミック部品、セラミック成形体の製造方法及びセラミック部品の製造方法に関し、例えば高周波特性に優れた受動部品等を構成することができるセラミック成形体、セラミック部品、セラミック成形体の製造方法及びセラミック部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体基板を用いた受動部品等を作製する場合、セラミック粉末と樹脂を含むグリーンシート上に導体パターンを印刷によって形成したものを積層一体化した後に、成形加工した後、焼成するようにしている(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
この場合、導体パターンがグリーンシート上において凸形状に形成されるため、グリーンシートを積層する際に、導体パターンの周縁近傍に圧力がかからず、積層した後に、剥がれが生じたり、導体パターンの端部がつぶれてしまい、導体パターンの電気的特性を劣化させる。また、これらの問題のために、導体パターンの厚みを厚くできないため、抵抗値を下げるのに限界があり、また、高周波特性の向上にも限界があった。
【0004】
そこで、従来では、上述の欠点を解決するために、樹脂フィルムのような基体やグリーンシート上に、導体ペーストを印刷形成した後、セラミック粉末と樹脂からなるスラリーを塗布し、その後、カチオン性凝固浴に浸漬して前記スラリーをゲル化したグリーンシートにすることで、導体パターンをグリーンシート内に埋設する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
また、他の従来例では、導体パターンの変形を抑制するために、導体ペーストに熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂あるいは紫外線硬化性樹脂を混入させる方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0006】
さらに他の従来例では、鋳込み型内にコイル形状の金属線を設置し、さらに、鋳込み型内にセラミックスラリーを充填して、セラミックスラリーで金属線を内包させる。その後、乾燥することによって、セラミック成形体内に金属線によるコイルが内包された電子部品を得るようにしている(例えば特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2005−1279号公報
【特許文献2】特開平8−167537号公報
【特許文献3】特開平11−126724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、セラミック粉末と熱可塑性樹脂を含むスラリーと、熱可塑性樹脂を含む導体ペーストとを使用した場合、スラリーが乾燥する際に生ずる大きな収縮により、セラミック成形体のうち、導体近傍に亀裂が発生したりして、セラミック成形体と導体との一体化に問題が生じたり、導体の凸形状の影響でグリーンシートが凹凸形状になったりする。また、導体ペーストに含まれる熱可塑性樹脂は溶剤に溶解し易いため、セラミック成形体とする際に、導体がセラミック中に溶けて導体のパターン形状が崩れるという問題がある。
【0009】
また、特許文献1では、グリーンシート上への導体パターンの形成、スラリーの塗布、カチオン性凝固浴への浸漬、乾燥を1層ごとに行う必要があり、導体パターンの多層化に伴って工数が増加するという問題がある。
【0010】
特許文献2では、グリーンシート上に導体パターンを印刷によって形成したものを積層一体化した後に、プレス加工するようにしているため、特許文献1や2と同様に、導体パターンの周縁近傍に圧力がかからず、積層した後に、剥がれが生じるおそれがある。
【0011】
なお、特許文献3に記載された提案例は、抵抗やコイル等の素子をセラミック成形体に埋設するには好都合であるが、導体パターンの多層化には適用することができないという問題がある。
【0012】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、導体パターンの剥がれや崩れがなく、しかも、導体パターンの厚みを厚くでき、抵抗値の低減化、高周波特性の向上を容易に図ることができるセラミック成形体、セラミック部品、セラミック成形体の製造方法及びセラミック部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
先ず、本発明者らは、本発明に係るセラミック成形体を得る前に以下の構成を有するセラミック成形体(参考例に係るセラミック成形体)を作製した。
【0014】
すなわち、金属粉末とバインダ(熱硬化性樹脂前駆体)を含む導体ペーストをパターン形成し、その後、硬化してなる導体成形部と、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリーを、導体成形部を被覆するように供給した後に硬化して得られるセラミック成形部とを有する参考例に係るセラミック成形体を得た。
【0015】
しかし、この参考例に係るセラミック成形体は、以下のような問題点を有することが判明した。
【0016】
参考例に係るセラミック成形体は、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリーを導体成形部を被覆するように供給しているが、スラリーの溶剤の種類によっては、導体成形部のバインダが溶解する場合がある。これを抑制するために、熱硬化性樹脂前駆体(例えばレゾール型フェノール樹脂)をバインダとした導体ペーストを硬化させて導体成形部としているが、導体ペーストによる印刷物(導体パターン)の厚み制御、外形寸法制御、版抜け性制御が困難であるという問題がある。
【0017】
また、導体ペーストに含まれるバインダとして、熱硬化性樹脂前駆体、熱可塑性樹脂前駆体のいずれを用いた場合であっても、焼成後のセラミック部品のクラックや電極−セラミック界面での剥がれを抑制するために、導体成形部の焼成収縮率をセラミック成形部と合わせる必要がある。例えば高周波回路部品(フィルタ、カプラ、バラン、アンテナ等)を作製する場合、高周波での導体損失低減を目的として、内層導体を厚く、且つ、内層導体のエッジを矩形又は半円形とすることが望ましいが、このような内層導体を得るためには、導体ペーストの印刷膜厚が厚く、また、印刷パターンのエッジを矩形又は半円形とする必要がある。
【0018】
導体ペーストの印刷膜厚を厚く、また、印刷パターンのエッジを矩形又は半円形とするためには、印刷パターンの流動性を抑制するために、導体ペースト中のバインダの量を極力少なくする必要がある一方、導体ペースト中のバインダの量を削減すると、導体成形部の焼成収縮率が小さくなり、セラミック成形部との焼成収縮率を一致させるのが困難になる。
【0019】
さらに、導体成形部に低融点金属(Ag、Cu、Au等)を使用すると、導体成形部の焼成収縮開始温度がセラミック成形部の焼成収縮開始温度よりも低温になり易くなるため、焼成収縮開始温度を上げることを狙って、導体ペーストに含まれる金属粉末として、凝集粉や粗粒粉を使用するが、この場合、導体成形部とセラミック成形部の界面が粗くなり易く、結果として、高周波回路部品として使用する場合、導体損失が悪化するという問題があった。
【0020】
そこで、第1の本発明に係るセラミック成形体は、金属粉末とバインダを含む導体ペーストをパターン形成し、その後、硬化してなる導体成形部と、樹脂とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリーを、前記導体成形部を被覆するように供給した後に硬化して得られるセラミック成形部とを有するセラミック成形体であって、前記導体成形部と前記セラミック成形部との界面に焼成収縮率調整膜が形成されていることを特徴とする。
【0021】
そして、第1の本発明において、前記焼成収縮率調整膜は、有機膜(CVD又は印刷)又は無機膜(CVD又はスパッタ)であってもよい。この場合、前記焼成収縮率調整層に含まれる前記有機膜は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂又はポリパラキシリレン樹脂であってもよい。あるいは、前記焼成収縮率調整層に含まれる前記無機膜は、シリカ膜であってもよい。
【0022】
また、第1の本発明において、前記セラミック成形部は、前記スラリーを、基体上に成形された前記導体成形部を被覆するように塗布した後に硬化して得るようにしてもよい。
【0023】
また、第1の本発明において、前記導体ペーストに含まれる金属粉末は、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)系の金属の少なくとも1種類の粉末であり、前記導体ペーストに含まれるバインダは、熱可塑性樹脂前駆体又は熱硬化性樹脂前駆体であってもよい。この場合、前記導体ペーストに含まれる前記熱硬化性樹脂前駆体は、フェノール樹脂であってもよい。
【0024】
また、第1の本発明において、前記スラリーに含まれる前記樹脂は、熱硬化性樹脂前駆体であって、ポリウレタン樹脂前駆体であってもよい。
【0025】
次に、第2の本発明に係るセラミック部品は、上述した第1の本発明に係るセラミック成形体を焼成してなることを特徴とする。
【0026】
次に、第3の本発明に係るセラミック成形体の製造方法は、金属粉末とバインダを含む導体ペーストをパターン形成し、その後、硬化してなる導体成形部を形成する導体形成工程と、前記導体成形部の表面の一部又は全部に焼成収縮率調整膜を形成する焼成収縮率調整膜形成工程と、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリーを、前記焼成収縮率調整層と共に前記導体成形部を被覆するように供給するスラリー供給工程と、前記スラリーを硬化してセラミック成形部にすることにより、セラミック成形体を作製するスラリー硬化工程とを有することを特徴とする。
【0027】
そして、第3の本発明において、前記焼成収縮率調整膜は、有機膜(CVD又は印刷)又は無機膜(CVD又はスパッタ)であってもよい。この場合、焼成収縮率調整膜形成工程は、前記導体成形部の表面の一部又は全部に前記有機膜をCVD法又は印刷法にて形成するようにしてもよい。あるいは、前記導体成形部の表面の一部又は全部に前記無機膜をCVD法又はスパッタ法にて形成するようにしてもよい。
【0028】
また、第3の本発明において、前記スラリーに使用される前記熱硬化性樹脂前駆体がポリウレタン樹脂前駆体であってもよい。
【0029】
また、第3の本発明において、前記導体形成工程は、基体上に前記導体成形部を形成し、前記焼成収縮率調整膜形成工程は、前記基体上に形成された前記導体成形部上に、前記焼成収縮率調整膜を形成し、前記スラリー供給工程は、前記スラリーを、前記焼成収縮率調整層と共に前記導体成形部を被覆するように前記基体上に塗布するようにしてもよい。
【0030】
また、第3の本発明において、前記導体形成工程は、フィルム上に導体成形部を形成し、前記焼成収縮率調整膜形成工程は、前記フィルム上に形成された前記導体成形部上に、前記焼成収縮率調整膜を形成し、前記スラリー供給工程は、前記導体成形部及び前記焼成収縮率調整膜が形成された前記フィルムを鋳込み型内に設置し、前記スラリーを前記鋳込み型内に鋳込むようにしてもよい。
【0031】
この場合、前記スラリー供給工程は、前記フィルムを前記鋳込み型内に設置する際に、前記フィルムと他のフィルムとを前記導体成形部及び前記焼成収縮率調整膜が形成された面と前記他のフィルムとを対向させ、さらに、前記フィルムと前記他のフィルムの間にスペーサを挟んで設置し、前記スペーサにて形成される空間内に前記スラリーを流し込むようにしてもよい。さらに、前記フィルムの表面に塗布された剥離剤の剥離力と、前記他のフィルムの表面に塗布された剥離剤の剥離力とが異なるようにしてもよい。
【0032】
また、第3の本発明において、前記導体ペーストに含まれる金属粉末は、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)系の金属の少なくとも1種類の粉末であり、前記導体ペーストに含まれるバインダは、熱可塑性樹脂前駆体又は熱硬化性樹脂前駆体であってもよい。この場合、前記導体ペーストに含まれる前記熱硬化性樹脂前駆体がフェノール樹脂であってもよい。さらには、自己反応性のレゾール樹脂であってもよい。
【0033】
次に、第4の本発明に係るセラミック部品の製造方法は、セラミック成形体を作製する工程と、作製された前記セラミック成形体を焼成する工程とを有するセラミック部品の製造方法であって、前記セラミック成形体を作製する工程は、金属粉末とバインダを含む導体ペーストをパターン形成し、その後、硬化してなる導体成形部を形成する導体形成工程と、前記導体成形部の表面の一部又は全部に焼成収縮率調整膜を形成する焼成収縮率調整膜形成工程と、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリーを、前記焼成収縮率調整層と共に前記導体成形部を被覆するように供給するスラリー供給工程と、前記スラリーを硬化してセラミック成形部にすることにより、セラミック成形体を作製するスラリー硬化工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したように、本発明に係るセラミック成形体、セラミック部品、セラミック成形体の製造方法及びセラミック部品の製造方法によれば、導体パターンの剥がれや崩れがなく、しかも、導体パターンの厚みを厚くでき、抵抗値の低減化、高周波特性の向上を容易に図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明に係るセラミック成形体、セラミック部品、セラミック成形体の製造方法及びセラミック部品の製造方法の実施の形態例を図1〜図15を参照しながら説明する。
【0036】
[第1の実施の形態]
先ず、第1の実施の形態に係るセラミック成形体(以下、第1セラミック成形体10Aと記す)は、図1に示すように、導体成形部12と、該導体成形部12を被覆するように形成されたセラミック成形部13と、導体成形部12とセラミック成形部13との界面に形成された焼成収縮率調整膜14とを有する。
【0037】
この第1セラミック成形体10Aは、以下のように作製することができる。すなわち、図2Aに示すように、樹脂と銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)系の金属の少なくとも1種類の粉末を含む導体ペースト15を所定の形状に成形硬化して導体成形部12とした後に、該導体成形部12の表面全面に焼成収縮率調整膜14を形成する。
【0038】
その後、図2Bに示すように、表面に焼成収縮率調整膜14が形成された導体成形部12を鋳込み型16内に設置し、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶媒を含むゲルキャスト用スラリー(以下、スラリー18と記す)を鋳込み型16内に鋳込んだ後に、硬化してセラミック成形部13とすることによって第1セラミック成形体10Aが得られる(図2C参照)。なお、鋳込み型16は断面で示す構造の一部が開放されていてもスラリー18の漏洩がなければ問題ない。
【0039】
導体ペースト15に使用される樹脂は、熱可塑性樹脂前駆体又は熱硬化性樹脂前駆体のどちらでもよいが、熱硬化性樹脂前駆体であることが好ましい。この場合、熱硬化性樹脂前駆体は、自己反応性のレゾール型フェノール樹脂であることがこのましい。
【0040】
スラリー18に使用される熱硬化性樹脂前駆体は、ポリウレタン樹脂前駆体であることが好ましい。
【0041】
また、焼成収縮率調整膜14として、有機膜又は無機膜を用いることができる。
【0042】
導体成形部12は、導体ペースト15を印刷法によってパターン形成した後、硬化することによって得られる。
【0043】
ここで、第1セラミック成形体10Aのこの好ましい製造方法について図3A〜図10を参照しながら説明する。
【0044】
先ず、図3Aに示すように、フィルム20上に導体ペースト15を印刷法によってパターン形成した後、硬化してフィルム20上に導体成形部12を形成する。その後、フィルム20上の導体成形部12の表面(この場合、上面及び側面)に、焼成収縮率調整膜14をコーティングする。焼成収縮率調整膜14として有機膜を使用する場合は、例えばCVD(化学気相成長)、印刷によって形成することができ、無機膜を使用する場合は、例えばスパッタによって形成することができる。なお、CVD、スパッタによる成膜の際は、導体成形部12の存在しないフィルム20上の部分をマスキングする等して、導体成形部12以外への焼成収縮率調整膜14の形成を阻害することが好ましい。
【0045】
その後、図3Bに示すように、フィルム20を鋳込み型16内に設置し、スラリー18を鋳込み型16内に鋳込んだ後に、硬化してセラミック成形部13とする。これによって、第1セラミック成形体10Aが得られる(図3C参照)。この場合、図4Aに示すように、フィルム20上に第1セラミック成形体10A(導体成形体12が埋設されている)が設置された状態になっているため、第1セラミック成形体10Aをフィルム20から離型することによって、図4Bに示すように、セラミック成形部13内に導体成形部12が埋設された第1セラミック成形体10Aが得られる。
【0046】
第1セラミック成形体10Aは、全体の形状がテープ状であってもよい。この場合、図5に示すように、第1セラミック成形体10Aを複数積層して第1積層体60とし、複数の導体成形部12が三次元構造に埋設されるようにしてもよい。
【0047】
なお、前記第1セラミック成形体10Aを積層する際に、有機バインダーとセラミック粉末と可塑剤と溶剤からなる接着ペーストが塗布・乾燥されていてもよい。
【0048】
また、複数の第1セラミック成形体10Aは、スラリー18に含まれる溶剤の一部が残存していてもよい。この場合、硬化後の第1セラミック成形体10Aは柔軟性を有する。従って、一般に硬くて脆い熱硬化性樹脂前駆体をバインダに使用しても、柔軟性のあるテープ成形体として工程間を搬送させることができ、複数の第1セラミック成形体10Aを積層しても、積層間に空隙が生じる等の不具合は生じない(積層性の向上)。なお、積層の際の圧力、温度は、デラミネーションや積層体の変形、積層ずれを勘案して適宜設定される。
【0049】
第1セラミック成形体10Aの鋳込み型16からの離型性を良好にするために、図6A〜図7Bに示すようにしてもよい。すなわち、図6Aに示すように、フィルム20上に導体ペースト15を印刷法によってパターン形成した後、硬化してフィルム20上に導体成形部12を形成し、さらに導体成形部12の表面に焼成収縮率調整膜14を形成する。
【0050】
その後、図6Bに示すように、導体成形部12及び焼成収縮率調整膜14が形成されたフィルム20を鋳込み型16内に設置する際に、フィルム20と他のフィルム22とを導体成形部12が形成された面と他のフィルム22とを対向させ、さらに、フィルム20と他のフィルム22の間にスペーサ24を挟んで設置する。そして、スペーサ24にて形成される空間内にスラリー18を流し込んだ後に、硬化してセラミック成形部13とすることによって第1セラミック成形体10Aを得るようにしてもよい(図6C参照)。この場合、図7Aに示すように、第1セラミック成形体10Aがフィルム20、他のフィルム22及びスペーサ24にて囲まれた状態となっているため、第1セラミック成形体10Aが鋳込み型16に不要に付着することなく、簡単に鋳込み型16から離型することができる。
【0051】
さらに、導体成形部12が形成されるフィルム20の表面に塗布された剥離剤の剥離力と、他のフィルム22の表面に塗布された剥離剤の剥離力とを異なるようにすれば、必ずどちらかのフィルム20(又は22)が剥がれ易くなり、フィルム20(又は22)からの離型も容易になる。図7Bに、フィルム20、他のフィルム22及びスペーサ24から第1セラミック成形体10Aを離型した状態を示す。
【0052】
そして、第1の実施の形態に係るセラミック部品(以下、第1セラミック部品と記す)は、上述した第1セラミック成形体10Aを乾燥し、その後、焼成することによって得ることができる。
【0053】
上述した第1セラミック成形体10A(及び第1積層体60)及び第1セラミック部品は、導体ペースト15による導体成形部12(電極パターン等)の剥がれや崩れがなく、しかも、電極パターン等の厚みを厚くでき、抵抗値の低減化、高周波特性の向上を容易に図ることができる。
【0054】
特に、導体成形部12とセラミック成形部13との界面に焼成収縮率調整膜14を介在させるようにしたので、以下のような効果を奏する。
【0055】
(1)第1セラミック成形体10Aは、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリー18を導体成形部12を被覆するように供給しているが、導体成形部12の表面に焼成収縮率調整膜14を形成するようにしたので、スラリー18の溶剤の種類に関係なく、導体成形部12のバインダが溶解することがない。そのため、導体成形部12の形状(印刷時の形状)を維持させることができ、導体ペースト15による印刷物(導体パターン)の厚み制御、外形寸法制御、版抜け性制御が容易になる。
【0056】
(2)導体ペースト15に含まれるバインダとして、熱硬化性樹脂前駆体、熱可塑性樹脂前駆体のいずれを用いた場合であっても、焼成後のセラミック部品のクラックや電極−セラミック界面での剥がれを抑制するために、通常、導体成形部12の焼成収縮率をセラミック成形部13と合わせる必要があるが、第1セラミック成形体10Aでは、導体成形部12の表面に焼成収縮率調整膜14を形成するようにしたので、この焼成収縮率調整膜14が導体成形部12の焼成収縮率とセラミック成形部13の焼成収縮率の違いを吸収し、焼成後のセラミック部品のクラックや電極−セラミック界面での剥がれを抑制することができる。そのため、導体成形部12とセラミック成形部13の焼成収縮率の違いを気にすることなく、導体ペースト15の印刷膜厚を厚く、また、印刷パターンのエッジを矩形又は半円形とする目的で、印刷パターンの流動性を抑制(導体ペースト中のバインダの量を極力少なく)することができ、例えば高周波での導体損失低減を図った高周波回路部品(フィルタ、カプラ、バラン等)を容易に作製することができる。
【0057】
(3)導体成形部12に低融点金属(Ag、Cu、Au等)を使用すると、導体成形部12の焼成収縮開始温度がセラミック成形部13の焼成収縮開始温度よりも低温になり易くなるため、焼成収縮開始温度を上げることを狙って、導体ペースト15に含まれる金属粉末として、凝集粉や粗粒粉を使用するが、この場合、導体成形部12とセラミック成形部13の界面が粗くなり易い。しかし、第1セラミック成形体10Aでは、導体成形部12とセラミック成形部13との間に焼成収縮率調整膜14が介在しているため、該界面の粗さが焼成収縮率調整膜14によって吸収され、高周波回路部品として使用する場合においても、導体損失が悪化するということはない。
【0058】
(4)第1セラミック成形体10Aでは、導体成形部12に含まれる樹脂として熱硬化性樹脂前駆体を用いたが、前記樹脂として、熱可塑性樹脂前駆体を用いたとしても、上述した(1)〜(3)の効果を得ることができる。
【0059】
次に、上述した第1セラミック成形体10A及び第1セラミック部品並びに第1セラミック成形体10Aの製造方法及び第1セラミック部品の製造方法の実施例について図8〜図10を参照しながら説明する。
【0060】
この実施例では、図8に示す鋳込み型16が使用される。
【0061】
鋳込み型16は、一度に複数枚(例えば3枚)の第1セラミック成形体10Aを作製することができるようになっている。
【0062】
鋳込み型16は、図8に示すように、1つの基台30と、基台30上に載置される複数枚の板部材(第1板部材32a〜第4板部材32d)と、第4板部材32d上に載置される上板34とを有する。
【0063】
さらに、基台30は、その上面のうち、第1側面に近接する部分と第2側面(第1側面と対向する側面)に近接する部分にそれぞれ数本(例えば3本)の棒部材36が設けられている。各棒部材36は、軸方向が基台30の上面の法線方向となるように基台30の上面に設けられている。
【0064】
第1板部材32a〜第4板部材32d並びに上板34は、基台30の棒部材36と対応する部分にそれぞれ位置決め用の貫通孔(以下、位置決め孔38と記す)が設けられ、第1板部材32a〜第4板部材32d並びに上板34を基台30上に順番に載置した際に、各位置決め孔38を通じて基台30の棒部材36が挿通されるようになっている。
【0065】
そして、第1板部材32aと第2板部材32b間、第2板部材32bと第3板部材32c間、第3板部材32cと第4板部材32d間に、第1フィルム20と、スペーサ24と、第2フィルム22の積層体が挿入される。第1フィルム20には、その上面に導体ペースト15の形成硬化によって複数の電極パターン40が形成され、さらに電極パターン40の表面に焼成収縮率調整膜14が形成されている。
【0066】
これら第1フィルム20、第2フィルム22及びスペーサ24は、鋳込み型16内で作製された第1セラミック成形体10Aが鋳込み型16の第1板部材32a〜第4板部材32d等に不要に付着するのを防止するためのものであり、特に、第1フィルム20は、作製される第1セラミック成形体10Aの下面の形状を決定づけ、第2フィルム22は、作製される第1セラミック成形体10Aの上面の形状を決定づけるようになっている。スペーサ24は、開口部を有するほぼ枠状に形成され、第1セラミック成形体10Aの面積と高さを決定づける。図8の例では、第1フィルム20上に形成された電極パターン40の群を三方から囲むようにほぼ枠状に形成されている。このスペーサ24は、例えば第1フィルム20や第2フィルム22と同様の材質で構成してもよい。また、これら第1フィルム20、第2フィルム22及びスペーサ24は、各表面に、離型剤がコートされており、作製された第1セラミック成形体10Aが容易に離れるようになっている。
【0067】
これら第1フィルム20、第2フィルム22及びスペーサ24には、基台30の棒部材36と対応する部分にそれぞれ位置決め孔42、46及び44が設けられている。
【0068】
さらに、上板34には、スラリー18を注入するためのU字状の切欠き48が形成され、第2板部材32b〜第4板部材32dにも、それぞれU字状の切欠き48に対応した部分に、スラリー18を注入するための貫通孔(以下、注入孔50と記す)が形成されている。
【0069】
第1フィルム20、第2フィルム22及びスペーサ24にも、第2板部材32b〜第4板部材32dの注入孔50に対応した部分にそれぞれ切欠き52や注入孔(図示せず)が形成されている。
【0070】
従って、鋳込み型16を組み立てる場合は、例えば以下のようにして行われる。
【0071】
先ず、基台30の上面に第1板部材32aを載置する。このとき、基台30の棒部材36を第1板部材32aの位置決め孔38にそれぞれ挿通させて載置する。その後、第1板部材32a上に第1フィルム20、スペーサ24、第2フィルム22を重ねて載置する。このとき、第1フィルム20、スペーサ24、第2フィルム22の各位置決め孔42、44及び46にそれぞれ基台30の棒部材36を挿通させて載置する。以下、同様に、第2板部材32bを載置し、該第2板部材32b上に、第1フィルム20、スペーサ24、第2フィルム22を重ねて載置し、さらに、第3板部材32cを載置し、該第3板部材32c上に、第1フィルム20、スペーサ24、第2フィルム22を重ねて載置し、さらに、第4板部材32dを載置し、そして、最後に上板34を載置する。これによって、鋳込み型16が完成する。
【0072】
鋳込み型16内には、第1板部材32aと第2板部材32b間、第2板部材32bと第3板部材32c間、第3板部材32cと第4板部材32d間に、それぞれ第1フィルム20、スペーサ24及び第2フィルム22によって囲まれた中空部が形成される。
【0073】
次に、鋳込み型16を使用して第1セラミック成形体10A並びに第1セラミック部品を作製する方法について図9及び図10を参照しながら説明する。
【0074】
先ず、図9のステップS1において、第1フィルム20上に導体ペースト15を印刷して複数の電極パターン40を形成する。
【0075】
具体的には、第1フィルム20は、表面にシリコーン離型剤がコートされたPET(ポリエチレンテレフタレート)である。導体ペースト15の加熱硬化時における収縮、歪を抑制するために、予め第1フィルム20に温度150℃で10分以上のアニール処理を施す。
【0076】
その後、鋳込み型16への積層時の位置決めを行えるように、第1フィルム20に位置決め孔42を形成する。次いで、第1フィルム20の上面のうち、位置決め孔42を基準した所定領域に導体ペースト15を印刷して、複数の電極パターン40を形成する。この導体ペースト15は、例えばレゾール型フェノール樹脂を含有した熱硬化型の銀(Ag)ペーストである。導体ペースト15中のAg粉末は、誘電体との同時焼成の際の焼成収縮温度特性を近づけるため、粒度調整された粉末を使用している。
【0077】
次に、図9のステップS2において、第1フィルム20上に形成された電極パターン40を加熱硬化する。すなわち、熱硬化型のAgペーストを硬化させるために、120℃×1時間の熱処理を施す。
【0078】
その後、ステップS3において、第1フィルム20上に形成された電極パターンの表面(この場合、上面及び側面)に、焼成収縮率調整膜14をコーティングする。焼成収縮率調整膜14として有機膜を使用する場合は、例えばCVD(化学気相成長)、印刷によって形成することができ、無機膜を使用する場合は、例えばスパッタによって形成することができる。
【0079】
その後、図9のステップS4において、鋳込み型16を組み立てて、電極パターン40と焼成収縮率調整膜14が形成された第1フィルム20を第2フィルム22及びスペーサ24と共に鋳込み型16内に設置する。図8の鋳込み型16では、第1板部材32aと第2板部材32b間、第2板部材32bと第3板部材32c間、第3板部材32cと第4板部材32d間にそれぞれ第1フィルム20が設置される。もちろん、スペーサ24及び第2フィルム22も第1フィルム20上に積層されて設置される。
【0080】
一方、図9のステップS5及びステップS6において、鋳込み型16に注入されるスラリー18を調製する。
【0081】
先ず、ステップS5において、セラミックスラリーを調製する。セラミックスラリーは、酸化チタン、酸化バリウム系粉末と焼結助剤としてのボロシリケートガラスとを混合したセラミック粉末を有する。すなわち、セラミックスラリーは、上述のセラミック粉末を100重量部と、脂肪族二塩基酸エステルを15〜40重量部、トリアセチンを0.5〜10重量部及びポリカルボン酸共重合体を0.5〜10重量部からなる有機分散媒(ポリカルボン酸は有機分散剤として作用)との混合物からなる。
【0082】
その後、ステップS6において、上述のセラミックスラリーに、ゲル化剤としてポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの変性物1〜10重量部とエチレングリコール0.05〜2.7重量部、反応触媒として6−ジメチルアミノ−1−ヘキサノールを0.03〜0.3重量部添加した後、攪拌して、スラリー18、すなわち、ゲルキャスト用のスラリー18を調製する。
【0083】
次に、ステップS7において、鋳込み型16内にスラリー18を注入(注型)する。具体的には、鋳込み型16における上板34のU字状の切欠き48から露出する第4板部材32dの注入孔50(図8、図10参照)を介してスラリー18を注入する。この注入によって、鋳込み型16内の複数の中空部にスラリー18がそれぞれ充填される。スラリー18は、ゲルキャスト用スラリーであることから、中空部に充填された状態でそのまま硬化されてセラミック成形部13となる。これによって、鋳込み型16内に例えば3つの第1セラミック成形体10Aが作製されることになる。
【0084】
その後、ステップS8において、鋳込み型16を分解し、第1フィルム20、スペーサ24及び第2フィルム22から第1セラミック成形体10Aを剥がす。これによって、第1セラミック成形体10A、すなわち、導体成形部12(表面に焼成収縮率調整膜14が形成されている)を埋設した第1セラミック成形体10A(セラミックテープ10Aとも記す)が完成する(図10参照)。
【0085】
次に、図9のステップS9において、複数枚のセラミックテープ10Aを積層して第1積層体60を作製する(図10参照)。このとき、セラミックテープ10Aの反応性官能基が完全に反応しない状態(室温において、注型後、1時間〜48時間経過後)で、5〜100kgf/cm2の圧力で加圧積層する。加圧力は、セラミックテープ10Aの強度と許容される積層ずれに応じて適宜選択される。
【0086】
積層時の加圧力が小さい場合は、積層ずれは小さいものの、積層時の接着不良による焼成体のデラミネーションが発生し易くなる一方、積層時の加圧力が大きい場合は、上述のデラミネーションの発生を抑制できるものの、セラミックテープ10Aの積層圧力による変形及び破損が発生し易くなる。しかし、上述した加圧力の範囲であれば、積層ずれとデラミネーションを抑制することができ、好ましい。また、必要に応じて、上記5〜100kgf/cm2の加圧に引き続き、50〜400kgf/cm2の加圧力で一体性を高めてもよい。また、60℃〜80℃に加温しながら積層することが好ましい。
【0087】
あるいは、セラミックテープ10Aを十分に硬化したものや、さらに乾燥した後に、セラミックテープ10Aと同一の無機粉末、ブチラール樹脂、アクリル樹脂、ブチルカルビトールアセテート溶剤及び/又は脂肪族二塩基酸エステル等の有機溶剤を混合した接着ペーストをセラミックテープ10A上に塗布又は印刷した後、積層することも好ましい。
【0088】
このようにすることで、セラミックテープ10A相互の接着性が向上し、上述のデラミネーションを抑制することができる。なお、接着ペーストを使用する場合は、反応硬化テープ中の溶剤が残っていてもよいし、60℃〜100℃の温度で予め溶剤を乾燥させてもよい。溶剤を乾燥させた反応硬化テープは可塑性が著しく低下し、ハンドリングに困難をきたすため、乾燥後のセラミックテープ10Aに可塑性を付与する目的で、反応硬化前のスラリーに可塑剤(DOPあるいはDBP)を1〜10重量部添加することがさらに好ましい。
【0089】
次に、図9のステップS10において、第1積層体60を乾燥した後、ステップS11において、積層体を複数のチップ62に分割する(図10参照)。
【0090】
その後、ステップS12において、各チップ62の表面や側面に端子電極を印刷により形成する。
【0091】
そして、ステップS13において、各チップ62を焼成することで、実施例に係るセラミック部品が完成する。
【0092】
ここで、各構成部材の好ましい態様について説明する。
【0093】
[導体ペースト15:第1の実施の形態]
導体ペースト15としては、バインダとしてエポキシ、フェノール等の未硬化物を含有するものが好ましいが、とりわけ、レゾール型フェノール樹脂を含有するものが好ましい。また、金属粉末については、Ag、Pd、Au、Pt、Cu、Ni、Rhといった金属の単体又は合金、金属間化合物を用いることができるが、同時焼成されるセラミック部材に要求される特性、すなわち、焼成時の酸素分圧、温度、焼成収縮温度特性を考慮し、適宜選択される。焼成収縮温度特性については金属粉末組成だけではなく、金属粉末の粒径、比表面積、凝集度によっても適宜制御される。導体ペースト15中のバインダ分量については、例えば、Ag粉末の場合、金属粉末重量の1%〜10%の範囲を使用するが、セラミック部材の焼成収縮率、スクリーン印刷時の印刷性を考慮し、3〜6%の範囲が好ましい。
【0094】
導体ペースト15は、上述したように、印刷後、加熱硬化させるが、硬化条件は、硬化剤の種類により異なり、例えば、第1の実施の形態で使用するレゾール型フェノール樹脂の場合、120℃で10分〜60分硬化させる。
【0095】
導体ペースト15による電極パターン40を硬化した後、硬化した電極パターン40の表面に焼成収縮率調整膜14をコーティングし、その後、第1フィルム20(この場合、PETフィルム)を鋳込み型16に設置するが、PETフィルムを鋳込み型に設置する際、PETフィルムのうねりを抑制するため、所望の平行度、平坦度を有する型板(第1板部材32a〜第3板部材32c)に真空吸着、糊付け、静電吸着等の手段により吸着させる。
【0096】
[焼成収縮率調整膜14]
上述したように、焼成収縮率調整膜14として有機膜又は無機膜を用いることができる。有機膜の場合は、熱硬化性樹脂前駆体であることが好ましく、例えば自己反応性のレゾール型フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリパラキシリレン樹脂を用いることができる。無機膜の場合は、シリカ膜を用いることができる。
【0097】
[鋳込み型16(金型):第1の実施の形態]
型板(第1板部材32a〜第3板部材32c)は、吸着手段に応じた板部材を使用する。例えば真空吸着の場合は、金属、セラミック、樹脂等の材質は関係なく、多孔質板や吸着用孔を多数あけた板を使用し、糊付けの場合は、糊との反応性がなく、後に溶剤等で糊を拭き取る際にも変質を起こさない材質の板を使用し、静電吸着の場合は、PETと静電吸着し易い材料でできた板を使用することが好ましい。
【0098】
鋳込み型16は、内部にスラリー18が流通する経路を有し、鋳込み硬化後のスラリー18が所望の厚みの板状となるように、型板間に、電極パターン40が形成された第1フィルム20、第2フィルム22(電極パターンが形成されていても、されていなくてもよい)及びスペーサ24を設置して、第1フィルム20及び第2フィルム22を平行に対向した形態を有し、且つ、第1フィルム20と第2フィルム22との間に適当な間隔が設定されるようにすることが好ましい。
【0099】
第1フィルム20、第2フィルム22、スペーサ24は、PETフィルム、離型剤をコートした金属板・セラミック板、あるいはテフロン(登録商標)樹脂板等を用いることができる。
【0100】
そして、この鋳込み型16に、反応硬化する樹脂を含有するスラリー18を流し込み、硬化させる。
【0101】
[スラリー18:第1の実施の形態]
スラリー18は、用途に応じ、アルミナ、安定化ジルコニア、各種圧電セラミック材料、各種誘電セラミック材料、といった酸化物セラミックスをはじめ、シリコンナイトライド、アルミナイトライドといった窒化物セラミックス、シリコンカーバイド、タングステンカーバイドといった炭化物セラミックス粉末やバインダとしてのガラス成分を含んだセラミックス粉末といった無機成分と、例えば分散剤とゲル化剤もしくはゲル化剤相互の化学反応が誘起される有機化合物とからなる。
【0102】
このスラリー18は、無機成分粉末の他、有機分散媒、ゲル化剤を含み、粘性や固化反応調整のための分散剤、触媒を含んでもよい。有機分散媒は反応性官能基を有していてよく、あるいは有していなくともよい。しかし、この有機分散媒は、反応性官能基を有することが特に好ましい。
【0103】
反応性官能基を有する有機分散媒としては、以下を例示することができる。
【0104】
すなわち、反応性官能基を有する有機分散媒は、ゲル化剤と化学結合し、スラリー18を固化可能な液状物質であること、及び鋳込みが容易な高流動性のスラリー18を形成できる液状物質であることの2つを満足する必要がある。
【0105】
ゲル化剤と化学結合し、スラリー18を固化するためには、反応性官能基、すなわち、水酸基、カルボキシル基、アミノ基のようなゲル化剤と化学結合を形成し得る官能基を分子内に有していることが必要である。分散媒は少なくとも1の反応性官能基を有するものであれば足りるが、より十分な固化状態を得るためには、2以上の反応性官能基を有する有機分散媒を使用することが好ましい。2以上の反応性官能基を有する液状物質としては、例えば多価アルコール、多塩基酸が考えられる。なお、分子内の反応性官能基は必ずしも同種の官能基である必要はなく、異なる官能基であってもよい。また、反応性官能基はポリグリセリンのように多数あってもよい。
【0106】
一方、注型が容易な高流動性のスラリー18を形成するためには、可能な限り粘性の低い液状物質を使用することが好ましく、特に、20℃における粘度が20cps以下の物質を使用することが好ましい。既述の多価アルコールや多塩基酸は水素結合の形成により粘性が高い場合があるため、たとえスラリー18を固化することが可能であっても反応性分散媒として好ましくない場合がある。従って、多塩基酸エステル、多価アルコールの酸エステル等の2以上のエステル基を有するエステル類を前記有機分散媒として使用することが好ましい。また、多価アルコールや多塩基酸も、スラリー18を大きく増粘させない程度の量であれば、強度補強のために使用することは有効である。エステル類は比較的安定ではあるものの、反応性が高いゲル化剤とであれば十分反応可能であり、粘性も低いため、上記2条件を満たすからである。特に、全体の炭素数が20以下のエステルは低粘性であるため、反応性分散媒として好適に用いることができる。
【0107】
スラリー18に含有されていてもよい反応性官能基を有する有機分散媒としては、具体的には、エステル系ノニオン、アルコールエチレンオキサイド、アミン縮合物、ノニオン系特殊アミド化合物、変性ポリエステル系化合物、カルボキシル基含有ポリマー、マレイン系ポリアニオン、ポリカルボン酸エステル、多鎖型高分子非イオン系、リン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸Na、マレイン酸系化合物を例示できる。また、非反応性分散媒としては、炭化水素、エーテル、トルエン等を例示できる。
【0108】
[ゲル化剤:第1の実施の形態]
スラリー18中に含有されるゲル化剤は、分散媒に含まれる反応性官能基と反応して固化反応を引き起こすものであり、以下を例示することができる。
【0109】
すなわち、ゲル化剤の20℃における粘度が3000cps以下であることが好ましい。具体的には、2以上のエステル基を有する有機分散媒と、イソシアナート基、及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤とを化学結合させることによりスラリー18を固化することが好ましい。
【0110】
具体的には、この反応性のゲル化剤は、分散媒と化学結合し、スラリー18を固化可能な物質である。従って、ゲル化剤は、分子内に、分散媒と化学反応し得る反応性官能基を有するものであればよく、例えば、モノマー、オリゴマー、架橋剤の添加により三次元的に架橋するプレポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等)等のいずれであってもよい。
【0111】
但し、反応性ゲル化剤は、スラリー18の流動性を確保する観点から、粘性が低いもの、具体的には20℃における粘度が3000cps以下の物質を使用することが好ましい。
【0112】
一般に、平均分子量が大きなプレポリマー及びポリマーは、粘性が高いため、本実施例では、これらより分子量が小さいもの、具体的には平均分子量(GPC法による)が2000以下のモノマー又はオリゴマーを使用することが好ましい。なお、ここでの「粘度」とは、ゲル化剤自体の粘度(ゲル化剤が100%の時の粘度)を意味し、市販のゲル化剤希釈溶液(例えば、ゲル化剤の水溶液等)の粘度を意味するものではない。
【0113】
ゲル化剤の反応性官能基は、反応性分散媒との反応性を考慮して適宜選択することが好ましい。例えば反応性分散媒として比較的反応性が低いエステル類を用いる場合は、反応性が高いイソシアナート基(−N=C=O)、及び/又はイソチオシアナート基(−N=C=S)を有するゲル化剤を選択することが好ましい。
【0114】
イソシアナート類は、ジオール類やジアミン類と反応させることが一般的であるが、ジオール類は既述の如く高粘性のものが多く、ジアミン類は反応性が高すぎて注型前にスラリー18が固化してしまう場合がある。
【0115】
このような観点からも、エステルからなる反応性分散媒と、イソシアナート基及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤との反応によりスラリー18を固化することが好ましく、より充分な固化状態を得るためには、2以上のエステル基を有する反応性分散媒と、イソシアナート基、及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤との反応によりスラリー18を固化することが好ましい。また、ジオール類、ジアミン類も、スラリー18を大きく増粘させない程度の量であれば、強度補強のために使用することは有効である。
【0116】
イソシアナート基及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤としては、例えば、MDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート)系イソシアナート(樹脂)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアナート)系イソシアネート(樹脂)、TDI(トリレンジイソシアナート)系イソシアナート(樹脂)、IPDI(イソホロンジイソシアナート)系イソシアナート(樹脂)、イソチオシアナート(樹脂)等を挙げることができる。
【0117】
また、反応性分散媒との相溶性等の化学的特性を考慮して、前述した基本化学構造中に他の官能基を導入することが好ましい。例えば、エステルからなる反応性分散媒と反応させる場合には、エステルとの相溶性を高めて、混合時の均質性を向上させる点から、親水性の官能基を導入することが好ましい。
【0118】
なお、ゲル化剤分子内に、イソシアナート基又はイソチオシアナート基以外の反応性官能基を含有させてもよく、イソシアナート基とイソチオシアナート基が混在してもよい。さらには、ポリイソシアナートのように、反応性官能基が多数存在してもよい。
【0119】
スラリー18には、上述した成分以外に、消泡剤、界面活性剤、焼結助剤、触媒、可塑剤、特性向上剤等の各種添加剤を添加してもよい。
【0120】
上述したスラリー18は、以下のように作製することができる。
【0121】
(a)分散媒に無機物粉体を分散してスラリー18とした後、ゲル化剤を添加する。
【0122】
(b)分散媒に無機物粉体及びゲル化剤を同時に添加して分散することによりスラリー18を製造する。
【0123】
注型時及び塗布時の作業性を考慮すると、20℃におけるスラリー18の粘度は30000cps以下であることが好ましく、20000cps以下であることがより好ましい。スラリー18の粘度は、既述した反応性分散媒やゲル化剤の粘度の他、粉体の種類、分散剤の量、スラリー18の濃度(スラリー18全体の体積に対する粉体体積%)によっても調整することができる。
【0124】
但し、スラリー18の濃度は、通常は、25〜75体積%のものが好ましく、乾燥収縮によるクラックを少なくすることを考慮すると、35〜75体積%のものがさらに好ましい。有機成分として分散媒、分散剤、反応硬化物、反応触媒を有する。このうち、例えば分散媒とゲル化剤もしくはゲル化剤相互の化学反応により固化する。
【0125】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態に係るセラミック成形体(以下、第2セラミック成形体10Bと記す)について図11〜図15を参照しながら説明する。
【0126】
この第2セラミック成形体10Bは、図11に示すように、導体成形部12の表面(上面及び側面)に焼成収縮率調整膜14を形成し、さらに、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリー18を、導体成形部12(表面に焼成収縮率調整膜14が形成されている)の上面及び側面を被覆するように塗布した後に硬化してセラミック成形部13とすることによって得られる。なお、第2セラミック成形体10Bの厚みが0.05mm以下のように薄い場合には、型に鋳込むような方法では困難が伴うため、基体上へ塗布する方法が好ましい。
【0127】
ここで、具体的に、第2セラミック成形体10B及び第2セラミック部品の製造方法について図12A〜図14Cを参照しながら説明する。
【0128】
先ず、図12Aに示すように、フィルム等の基体64の上面に剥離剤(図示せず)を塗布し、その後、基体64の上面に導体ペースト15を例えば印刷法によってパターン形成し、さらに、このパターン形成された導体ペースト15を加熱硬化して、基体64上に導体成形部12を形成する。
【0129】
その後、基体64上に形成された導体成形部12の表面(この場合、上面及び側面)に、焼成収縮率調整膜14をコーティングする。焼成収縮率調整膜14として有機膜を使用する場合は、例えばCVD(化学気相成長)、印刷によって形成することができ、無機膜を使用する場合は、例えばCVD、スパッタによって形成することができる。
【0130】
その後、図12Bに示すように、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリー18を、導体成形部12を被覆するように基体64上に塗布する。塗布方法としては、ディスペンサー法や、図13A及び図13Bに示す方法やスピンコート法等がある。図13A及び図13Bに示す方法は、一対のガイド板66a及び66bの間に基体64(導体成形部12が形成された基体64)を設置し、その後、スラリー18を、導体成形部12を被覆するように基体64上に塗布した後、ブレード状の治具68を一対のガイド板66a及び66bの上面を滑らせて(摺り切って)、余分なスラリー18を取り除く方法である。一対のガイド板66a及び66bの高さを調整することによって、スラリー18の厚みを容易に調整することができる。
【0131】
その後、図14Aに示すように、基体64上に塗布されたスラリー18を硬化(室温硬化や乾燥硬化等)させてセラミック成形部13とする。
【0132】
その後、図14Bに示すように、基体64を剥離、除去することによって第2セラミック成形体10Bが完成する。
【0133】
さらに、図14Cに示すように、第2セラミック成形体10Bを焼成することによって、導体成形部12が埋め込まれたセラミック焼成体70を有する第2セラミック部品72が完成する。
【0134】
ここで、各構成部材の好ましい態様について説明する。
【0135】
[導体ペースト15:第2の実施の形態]
第1の実施の形態と同様であるため、重複する記載を省略するが、第2の実施の形態における導体ペースト15は、樹脂と銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)系の金属の少なくとも1種類の粉末を含む。導体ペースト15に使用される樹脂は、熱硬化性樹脂前駆体であることが好ましい。この場合、熱硬化性樹脂前駆体は、自己反応性のレゾール型フェノール樹脂であることが好ましい。
【0136】
導体ペースト15は、上述したように、印刷後、加熱硬化されるが、硬化条件は、硬化剤の種類により異なり、例えば、第2の実施の形態で使用するレゾール型フェノール樹脂の場合、温度80〜150℃、時間10分〜60分で硬化させることができる。
【0137】
[焼成収縮率調整膜14:第2の実施の形態]
この第2の実施の形態においても、焼成収縮率調整膜14として有機膜又は無機膜を用いることができる。有機膜の場合は、熱硬化性樹脂前駆体であることが好ましく、例えば自己反応性のレゾール型フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリパラキシリレン樹脂を用いることができる。無機膜の場合は、シリカ膜を用いることができる。
【0138】
[スラリー18:第2の実施の形態]
第1の実施の形態と同様であるため、重複する記載を省略するが、第2の実施の形態におけるスラリー18に含まれるセラミック粉末は、用途に応じて、アルミナ、安定化ジルコニア、各種圧電セラミック材料、各種誘電セラミック材料、といった酸化物セラミックスをはじめ、シリコンナイトライド、アルミナイトライドといった窒化物セラミックス、シリコンカーバイド、タングステンカーバイドといった炭化物セラミックス粉末やバインダとしてのガラス成分を含む。
【0139】
スラリー18に含まれる熱硬化性樹脂前駆体は、イソシアネート基又はイソチオシアネート基を有するゲル化剤と、水酸基を有する高分子とを有する。
【0140】
上述した塗布方法のうち、ディスペンサー法や図13A及び図13Bに示す方法にてスラリー18を基体64上に塗布する場合、スラリー18の粘度は比較的高いことが好ましい。スラリー18の粘度は第1の実施の形態と同様でもよいが、スラリー18が低粘度だと、塗布した後の保形性が低く、流動による厚みバラつきが発生し易い。そのため、スラリー18の粘度は200cps〜2000cpsが好ましい。
【0141】
そこで、水酸基を有する高分子として分子量の大きい樹脂を用いることで、スラリー18の粘度を高くできる。一例としてブチラール樹脂は分子量が大きいため、スラリー18の粘度を高くするには好適である。もちろん、高分子の分子量でスラリー18の粘度の制御が可能となることから、塗布方法に応じて、高分子として使用する樹脂を適宜選択すればよい。
【0142】
上述したブチラール樹脂は、一般に、ポリビニルアセタール樹脂であるが、その中には原料のポリビニルアルコール樹脂に由来するOH基が残るので、このOH基がゲル化剤のイソシアネート基又はイソチオシアネート基と反応するものと考えられる。
【0143】
特に、イソシアネート基又はイソチオシアネート基と反応に必要な量を超えてブチラール樹脂を添加すると、反応後に残ったブチラール樹脂は熱可塑性樹脂として作用するので、熱硬化性樹脂の欠点である、硬化後の接着性が悪くなるという特性を改善することができる。その結果、例えば図15に示すように、第2セラミック成形体10Bを複数積層して第2積層体74を構成する場合に、各第2セラミック成形体10Bの接着性が良好となることから、製造過程において第2セラミック成形体10Bが剥離するという不都合を回避でき、複数の第2セラミック成形体10Bの第2積層体74によるセラミック部品72の歩留まりを向上させることができる。
【0144】
水酸基を有する高分子としては、その他、エチルセルロース系樹脂、ポリエチレングリコール系樹脂、あるいはポリエーテル系樹脂を好ましく用いることができる。
【0145】
上述した第2セラミック成形体10B(及び第2積層体74)及び第2セラミック部品72においても、導体成形部12とセラミック成形部13との間に焼成収縮率調整膜14が介在しているため、上述した第1セラミック成形体10Aにおける(1)〜(4)と同じ効果を奏する。従って、導体ペースト15による導体成形部12(電極パターン等)の剥がれや崩れがなく、しかも、導体成形部12(電極パターン等)の厚みを厚くでき、抵抗値の低減化、高周波特性の向上を容易に図ることができる。
【0146】
ここで、スラリー18に含まれる樹脂として、熱可塑性樹脂前駆体を用いた従来のセラミック成形体の問題点と、第1セラミック成形体10A及び第2セラミック成形体10B(以下、まとめて本実施の形態とも記す)による問題解決について説明する。
【0147】
従来においては、熱可塑性樹脂前駆体を含むスラリーの乾燥収縮時に導体成形部との界面で隙間やクラックが発生したり、グリーンシートが凹凸形状になったりする。
【0148】
一方、本実施の形態では、スラリー18に熱硬化性樹脂前駆体を含ませて、乾燥時に熱硬化性樹脂前駆体を硬化させて三次元網目構造を生成させ、収縮を小さくすることで前記問題は解決される。
【0149】
この場合、スラリー18に使用する溶剤に、熱硬化性樹脂前駆体が硬化する温度での蒸気圧が小さいものを選定し、熱硬化時の溶剤乾燥による収縮を小さくすることが望ましい。室温で硬化する樹脂を用いた場合は、特に作業や装置が簡単になる。
【0150】
ポリウレタン樹脂は、硬化後の弾性を制御し易く、柔軟な成形体も可能となる等の利点を有する。後工程での取り扱いを考えると、あまり硬い成形体は適さない場合があり、熱硬化性樹脂は三次元網目構造をとるので一般に硬いが、ポリウレタン樹脂は、柔軟性のある成形体も可能で、特にテープ状の成形体は、柔軟性が要求される場合が多いため望ましい。また、スラリー性状の制御のため、熱可塑性樹脂を含ませてもよい。
【0151】
従来においては、熱可塑性樹脂を含む導体ペーストが、スラリーを塗布する際に、スラリーの溶剤に溶解して、パターン形状が崩れる。
【0152】
一方、本実施の形態においては、導体成形部12の表面に焼成収縮率調整膜14を形成するようにしたので、導体ペースト15に熱可塑性樹脂前駆体が含まれていたとしても、耐溶剤性が向上し、パターン形状の崩れは生じない。
【0153】
従来において、熱可塑性樹脂をバインダとするセラミック成形部は、該セラミック成形部の密度ばらつきが発生し易く、そのために、焼成後のセラミック焼成体の寸法ばらつきが大きく、埋設された導体成形部の焼成寸法のばらつきも大きくなる。電子部品には、導体の寸法が部品の特性、性能を決めるものが多い。例えば導体内蔵のストリップラインフィルタは、その共振電極の寸法でフィルタの中心周波数が決まる。
【0154】
一方、本実施の形態においては、導体成形部12の表面に焼成収縮率調整膜14を形成し、スラリー18に熱硬化性樹脂前駆体を含めるようにしたので、焼成ばらつきを小さくすることができる。
【0155】
例えば第2セラミック成形体10Bの焼成後の寸法は、第2セラミック成形体10Bのうち、導体成形部12を除く部分(セラミック成形部13)の生密度により主に決まる。これは第2セラミック部品72のセラミック焼成体70の構造は空隙が非常に少ないのに対し、セラミック成形部13は空隙が多いため、その空隙量の多少が、焼成中の収縮量を決めるからである。
【0156】
熱可塑性樹脂前駆体をバインダとして含むスラリーは、溶媒を乾燥してセラミック成形体を得るが、乾燥する際の塗工比(スラリー体積と成形後の成形体体積の比)が大きく、この大きな塗工比が成形体密度のばらつきの原因となる。
【0157】
しかし、本実施の形態のように、熱硬化性樹脂前駆体をスラリー18のバインダとして使用した場合は、溶剤を含んだままでも硬化するため、塗工比を小さくすることができ、生密度のばらつきを小さくすることができる。その結果、焼成後の寸法ばらつきが小さくなり、埋設した導体成形部12の寸法ばらつきも小さくすることができる。
【0158】
なお、セラミック成形体、セラミック部品、セラミック成形体の製造方法及びセラミック部品の製造方法は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】第1セラミック成形体を示す断面図である。
【図2】図2Aは導体ペーストによる導体成形部のパターンの表面に焼成収縮率調整膜を形成した状態を示す断面図であり、図2Bは鋳込み型内にパターンを設置した後、鋳込み型内にスラリーを注入した状態を示す断面図であり、図2Cは鋳込み型内に注入されたスラリーを硬化して第1セラミック成形体とした状態を示す断面図である。
【図3】図3Aはフィルム上に導体ペーストによる導体成形部のパターンの表面に焼成収縮率調整膜を形成した状態を示す断面図であり、図3Bは鋳込み型内にフィルムを設置した後、鋳込み型内にスラリーを注入した状態を示す断面図であり、図3Cは鋳込み型内に注入されたスラリーを硬化して第1セラミック成形体とした状態を示す断面図である。
【図4】図4Aは鋳込み型から第1セラミック成形体をフィルムごと離型した状態を示す断面図であり、図4Bはフィルムから第1セラミック成形体を離型した状態を示す断面図である。
【図5】第1セラミック成形体を積層して第1積層体を構成した状態を示す断面図である。
【図6】図6Aはフィルム上に導体ペーストによる導体成形部のパターンの表面に焼成収縮率調整膜を形成した状態を示す断面図であり、図6Bは鋳込み型内にフィルムを他のフィルム及びスペーサと共に設置した、鋳込み型内にスラリーを注入した状態を示す断面図であり、図6Cは鋳込み型内に注入されたスラリーを硬化して第1セラミック成形体とした状態を示す断面図である。
【図7】図7Aは鋳込み型から第1セラミック成形体をフィルム、他のフィルム及びスペーサごと離型した状態を示す断面図であり、図7Bはフィルム、他のフィルム及びスペーサから第1セラミック成形体を離型した状態を示す断面図である。
【図8】第1セラミック成形体を作製する場合に使用される鋳込み型を示す分解斜視図である。
【図9】第1セラミック成形体及び第1セラミック部品を作製する手順を示す工程ブロック図である。
【図10】図9のステップS7〜ステップS11までの手順を示す説明図である。
【図11】第2セラミック成形体を示す断面図である。
【図12】図12Aは基体上に導体ペーストによる導体成形部のパターンの表面に焼成収縮率調整膜を形成した状態を示す工程図であり、図12Bは導体成形部を被覆するように基体上にスラリーを塗布した状態を示す工程図である。
【図13】図13Aは基体上にスラリーを塗布する方法の一例を示す斜視図であり、図13Bはその側面図である。
【図14】図14Aは基体上に塗布したスラリーを硬化した状態を示す工程図であり、図14Bは基体を剥離して第2セラミック成形体とした状態を示す工程図であり、図14Cは第2セラミック成形体を焼成して第2セラミック部品とした状態を示す工程図である。
【図15】第2セラミック成形体を積層して第2積層体を構成した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0160】
10A…第1セラミック成形体
10B…第2セラミック成形体
12…導体成形体
13…セラミック成形部
14…焼成収縮率調整膜
15…導体ペースト
16…鋳込み型
18…スラリー
20…フィルム(第1フィルム)
22…他のフィルム(第2フィルム)
24…スペーサ
40…電極パターン
60…第1積層体
64…基体
70…セラミック焼成体
72…セラミック部品
74…第2積層体
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に導体が埋設されたセラミック成形体、セラミック部品、セラミック成形体の製造方法及びセラミック部品の製造方法に関し、例えば高周波特性に優れた受動部品等を構成することができるセラミック成形体、セラミック部品、セラミック成形体の製造方法及びセラミック部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体基板を用いた受動部品等を作製する場合、セラミック粉末と樹脂を含むグリーンシート上に導体パターンを印刷によって形成したものを積層一体化した後に、成形加工した後、焼成するようにしている(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
この場合、導体パターンがグリーンシート上において凸形状に形成されるため、グリーンシートを積層する際に、導体パターンの周縁近傍に圧力がかからず、積層した後に、剥がれが生じたり、導体パターンの端部がつぶれてしまい、導体パターンの電気的特性を劣化させる。また、これらの問題のために、導体パターンの厚みを厚くできないため、抵抗値を下げるのに限界があり、また、高周波特性の向上にも限界があった。
【0004】
そこで、従来では、上述の欠点を解決するために、樹脂フィルムのような基体やグリーンシート上に、導体ペーストを印刷形成した後、セラミック粉末と樹脂からなるスラリーを塗布し、その後、カチオン性凝固浴に浸漬して前記スラリーをゲル化したグリーンシートにすることで、導体パターンをグリーンシート内に埋設する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
また、他の従来例では、導体パターンの変形を抑制するために、導体ペーストに熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂あるいは紫外線硬化性樹脂を混入させる方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0006】
さらに他の従来例では、鋳込み型内にコイル形状の金属線を設置し、さらに、鋳込み型内にセラミックスラリーを充填して、セラミックスラリーで金属線を内包させる。その後、乾燥することによって、セラミック成形体内に金属線によるコイルが内包された電子部品を得るようにしている(例えば特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2005−1279号公報
【特許文献2】特開平8−167537号公報
【特許文献3】特開平11−126724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、セラミック粉末と熱可塑性樹脂を含むスラリーと、熱可塑性樹脂を含む導体ペーストとを使用した場合、スラリーが乾燥する際に生ずる大きな収縮により、セラミック成形体のうち、導体近傍に亀裂が発生したりして、セラミック成形体と導体との一体化に問題が生じたり、導体の凸形状の影響でグリーンシートが凹凸形状になったりする。また、導体ペーストに含まれる熱可塑性樹脂は溶剤に溶解し易いため、セラミック成形体とする際に、導体がセラミック中に溶けて導体のパターン形状が崩れるという問題がある。
【0009】
また、特許文献1では、グリーンシート上への導体パターンの形成、スラリーの塗布、カチオン性凝固浴への浸漬、乾燥を1層ごとに行う必要があり、導体パターンの多層化に伴って工数が増加するという問題がある。
【0010】
特許文献2では、グリーンシート上に導体パターンを印刷によって形成したものを積層一体化した後に、プレス加工するようにしているため、特許文献1や2と同様に、導体パターンの周縁近傍に圧力がかからず、積層した後に、剥がれが生じるおそれがある。
【0011】
なお、特許文献3に記載された提案例は、抵抗やコイル等の素子をセラミック成形体に埋設するには好都合であるが、導体パターンの多層化には適用することができないという問題がある。
【0012】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、導体パターンの剥がれや崩れがなく、しかも、導体パターンの厚みを厚くでき、抵抗値の低減化、高周波特性の向上を容易に図ることができるセラミック成形体、セラミック部品、セラミック成形体の製造方法及びセラミック部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
先ず、本発明者らは、本発明に係るセラミック成形体を得る前に以下の構成を有するセラミック成形体(参考例に係るセラミック成形体)を作製した。
【0014】
すなわち、金属粉末とバインダ(熱硬化性樹脂前駆体)を含む導体ペーストをパターン形成し、その後、硬化してなる導体成形部と、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリーを、導体成形部を被覆するように供給した後に硬化して得られるセラミック成形部とを有する参考例に係るセラミック成形体を得た。
【0015】
しかし、この参考例に係るセラミック成形体は、以下のような問題点を有することが判明した。
【0016】
参考例に係るセラミック成形体は、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリーを導体成形部を被覆するように供給しているが、スラリーの溶剤の種類によっては、導体成形部のバインダが溶解する場合がある。これを抑制するために、熱硬化性樹脂前駆体(例えばレゾール型フェノール樹脂)をバインダとした導体ペーストを硬化させて導体成形部としているが、導体ペーストによる印刷物(導体パターン)の厚み制御、外形寸法制御、版抜け性制御が困難であるという問題がある。
【0017】
また、導体ペーストに含まれるバインダとして、熱硬化性樹脂前駆体、熱可塑性樹脂前駆体のいずれを用いた場合であっても、焼成後のセラミック部品のクラックや電極−セラミック界面での剥がれを抑制するために、導体成形部の焼成収縮率をセラミック成形部と合わせる必要がある。例えば高周波回路部品(フィルタ、カプラ、バラン、アンテナ等)を作製する場合、高周波での導体損失低減を目的として、内層導体を厚く、且つ、内層導体のエッジを矩形又は半円形とすることが望ましいが、このような内層導体を得るためには、導体ペーストの印刷膜厚が厚く、また、印刷パターンのエッジを矩形又は半円形とする必要がある。
【0018】
導体ペーストの印刷膜厚を厚く、また、印刷パターンのエッジを矩形又は半円形とするためには、印刷パターンの流動性を抑制するために、導体ペースト中のバインダの量を極力少なくする必要がある一方、導体ペースト中のバインダの量を削減すると、導体成形部の焼成収縮率が小さくなり、セラミック成形部との焼成収縮率を一致させるのが困難になる。
【0019】
さらに、導体成形部に低融点金属(Ag、Cu、Au等)を使用すると、導体成形部の焼成収縮開始温度がセラミック成形部の焼成収縮開始温度よりも低温になり易くなるため、焼成収縮開始温度を上げることを狙って、導体ペーストに含まれる金属粉末として、凝集粉や粗粒粉を使用するが、この場合、導体成形部とセラミック成形部の界面が粗くなり易く、結果として、高周波回路部品として使用する場合、導体損失が悪化するという問題があった。
【0020】
そこで、第1の本発明に係るセラミック成形体は、金属粉末とバインダを含む導体ペーストをパターン形成し、その後、硬化してなる導体成形部と、樹脂とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリーを、前記導体成形部を被覆するように供給した後に硬化して得られるセラミック成形部とを有するセラミック成形体であって、前記導体成形部と前記セラミック成形部との界面に焼成収縮率調整膜が形成されていることを特徴とする。
【0021】
そして、第1の本発明において、前記焼成収縮率調整膜は、有機膜(CVD又は印刷)又は無機膜(CVD又はスパッタ)であってもよい。この場合、前記焼成収縮率調整層に含まれる前記有機膜は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂又はポリパラキシリレン樹脂であってもよい。あるいは、前記焼成収縮率調整層に含まれる前記無機膜は、シリカ膜であってもよい。
【0022】
また、第1の本発明において、前記セラミック成形部は、前記スラリーを、基体上に成形された前記導体成形部を被覆するように塗布した後に硬化して得るようにしてもよい。
【0023】
また、第1の本発明において、前記導体ペーストに含まれる金属粉末は、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)系の金属の少なくとも1種類の粉末であり、前記導体ペーストに含まれるバインダは、熱可塑性樹脂前駆体又は熱硬化性樹脂前駆体であってもよい。この場合、前記導体ペーストに含まれる前記熱硬化性樹脂前駆体は、フェノール樹脂であってもよい。
【0024】
また、第1の本発明において、前記スラリーに含まれる前記樹脂は、熱硬化性樹脂前駆体であって、ポリウレタン樹脂前駆体であってもよい。
【0025】
次に、第2の本発明に係るセラミック部品は、上述した第1の本発明に係るセラミック成形体を焼成してなることを特徴とする。
【0026】
次に、第3の本発明に係るセラミック成形体の製造方法は、金属粉末とバインダを含む導体ペーストをパターン形成し、その後、硬化してなる導体成形部を形成する導体形成工程と、前記導体成形部の表面の一部又は全部に焼成収縮率調整膜を形成する焼成収縮率調整膜形成工程と、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリーを、前記焼成収縮率調整層と共に前記導体成形部を被覆するように供給するスラリー供給工程と、前記スラリーを硬化してセラミック成形部にすることにより、セラミック成形体を作製するスラリー硬化工程とを有することを特徴とする。
【0027】
そして、第3の本発明において、前記焼成収縮率調整膜は、有機膜(CVD又は印刷)又は無機膜(CVD又はスパッタ)であってもよい。この場合、焼成収縮率調整膜形成工程は、前記導体成形部の表面の一部又は全部に前記有機膜をCVD法又は印刷法にて形成するようにしてもよい。あるいは、前記導体成形部の表面の一部又は全部に前記無機膜をCVD法又はスパッタ法にて形成するようにしてもよい。
【0028】
また、第3の本発明において、前記スラリーに使用される前記熱硬化性樹脂前駆体がポリウレタン樹脂前駆体であってもよい。
【0029】
また、第3の本発明において、前記導体形成工程は、基体上に前記導体成形部を形成し、前記焼成収縮率調整膜形成工程は、前記基体上に形成された前記導体成形部上に、前記焼成収縮率調整膜を形成し、前記スラリー供給工程は、前記スラリーを、前記焼成収縮率調整層と共に前記導体成形部を被覆するように前記基体上に塗布するようにしてもよい。
【0030】
また、第3の本発明において、前記導体形成工程は、フィルム上に導体成形部を形成し、前記焼成収縮率調整膜形成工程は、前記フィルム上に形成された前記導体成形部上に、前記焼成収縮率調整膜を形成し、前記スラリー供給工程は、前記導体成形部及び前記焼成収縮率調整膜が形成された前記フィルムを鋳込み型内に設置し、前記スラリーを前記鋳込み型内に鋳込むようにしてもよい。
【0031】
この場合、前記スラリー供給工程は、前記フィルムを前記鋳込み型内に設置する際に、前記フィルムと他のフィルムとを前記導体成形部及び前記焼成収縮率調整膜が形成された面と前記他のフィルムとを対向させ、さらに、前記フィルムと前記他のフィルムの間にスペーサを挟んで設置し、前記スペーサにて形成される空間内に前記スラリーを流し込むようにしてもよい。さらに、前記フィルムの表面に塗布された剥離剤の剥離力と、前記他のフィルムの表面に塗布された剥離剤の剥離力とが異なるようにしてもよい。
【0032】
また、第3の本発明において、前記導体ペーストに含まれる金属粉末は、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)系の金属の少なくとも1種類の粉末であり、前記導体ペーストに含まれるバインダは、熱可塑性樹脂前駆体又は熱硬化性樹脂前駆体であってもよい。この場合、前記導体ペーストに含まれる前記熱硬化性樹脂前駆体がフェノール樹脂であってもよい。さらには、自己反応性のレゾール樹脂であってもよい。
【0033】
次に、第4の本発明に係るセラミック部品の製造方法は、セラミック成形体を作製する工程と、作製された前記セラミック成形体を焼成する工程とを有するセラミック部品の製造方法であって、前記セラミック成形体を作製する工程は、金属粉末とバインダを含む導体ペーストをパターン形成し、その後、硬化してなる導体成形部を形成する導体形成工程と、前記導体成形部の表面の一部又は全部に焼成収縮率調整膜を形成する焼成収縮率調整膜形成工程と、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリーを、前記焼成収縮率調整層と共に前記導体成形部を被覆するように供給するスラリー供給工程と、前記スラリーを硬化してセラミック成形部にすることにより、セラミック成形体を作製するスラリー硬化工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したように、本発明に係るセラミック成形体、セラミック部品、セラミック成形体の製造方法及びセラミック部品の製造方法によれば、導体パターンの剥がれや崩れがなく、しかも、導体パターンの厚みを厚くでき、抵抗値の低減化、高周波特性の向上を容易に図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明に係るセラミック成形体、セラミック部品、セラミック成形体の製造方法及びセラミック部品の製造方法の実施の形態例を図1〜図15を参照しながら説明する。
【0036】
[第1の実施の形態]
先ず、第1の実施の形態に係るセラミック成形体(以下、第1セラミック成形体10Aと記す)は、図1に示すように、導体成形部12と、該導体成形部12を被覆するように形成されたセラミック成形部13と、導体成形部12とセラミック成形部13との界面に形成された焼成収縮率調整膜14とを有する。
【0037】
この第1セラミック成形体10Aは、以下のように作製することができる。すなわち、図2Aに示すように、樹脂と銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)系の金属の少なくとも1種類の粉末を含む導体ペースト15を所定の形状に成形硬化して導体成形部12とした後に、該導体成形部12の表面全面に焼成収縮率調整膜14を形成する。
【0038】
その後、図2Bに示すように、表面に焼成収縮率調整膜14が形成された導体成形部12を鋳込み型16内に設置し、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶媒を含むゲルキャスト用スラリー(以下、スラリー18と記す)を鋳込み型16内に鋳込んだ後に、硬化してセラミック成形部13とすることによって第1セラミック成形体10Aが得られる(図2C参照)。なお、鋳込み型16は断面で示す構造の一部が開放されていてもスラリー18の漏洩がなければ問題ない。
【0039】
導体ペースト15に使用される樹脂は、熱可塑性樹脂前駆体又は熱硬化性樹脂前駆体のどちらでもよいが、熱硬化性樹脂前駆体であることが好ましい。この場合、熱硬化性樹脂前駆体は、自己反応性のレゾール型フェノール樹脂であることがこのましい。
【0040】
スラリー18に使用される熱硬化性樹脂前駆体は、ポリウレタン樹脂前駆体であることが好ましい。
【0041】
また、焼成収縮率調整膜14として、有機膜又は無機膜を用いることができる。
【0042】
導体成形部12は、導体ペースト15を印刷法によってパターン形成した後、硬化することによって得られる。
【0043】
ここで、第1セラミック成形体10Aのこの好ましい製造方法について図3A〜図10を参照しながら説明する。
【0044】
先ず、図3Aに示すように、フィルム20上に導体ペースト15を印刷法によってパターン形成した後、硬化してフィルム20上に導体成形部12を形成する。その後、フィルム20上の導体成形部12の表面(この場合、上面及び側面)に、焼成収縮率調整膜14をコーティングする。焼成収縮率調整膜14として有機膜を使用する場合は、例えばCVD(化学気相成長)、印刷によって形成することができ、無機膜を使用する場合は、例えばスパッタによって形成することができる。なお、CVD、スパッタによる成膜の際は、導体成形部12の存在しないフィルム20上の部分をマスキングする等して、導体成形部12以外への焼成収縮率調整膜14の形成を阻害することが好ましい。
【0045】
その後、図3Bに示すように、フィルム20を鋳込み型16内に設置し、スラリー18を鋳込み型16内に鋳込んだ後に、硬化してセラミック成形部13とする。これによって、第1セラミック成形体10Aが得られる(図3C参照)。この場合、図4Aに示すように、フィルム20上に第1セラミック成形体10A(導体成形体12が埋設されている)が設置された状態になっているため、第1セラミック成形体10Aをフィルム20から離型することによって、図4Bに示すように、セラミック成形部13内に導体成形部12が埋設された第1セラミック成形体10Aが得られる。
【0046】
第1セラミック成形体10Aは、全体の形状がテープ状であってもよい。この場合、図5に示すように、第1セラミック成形体10Aを複数積層して第1積層体60とし、複数の導体成形部12が三次元構造に埋設されるようにしてもよい。
【0047】
なお、前記第1セラミック成形体10Aを積層する際に、有機バインダーとセラミック粉末と可塑剤と溶剤からなる接着ペーストが塗布・乾燥されていてもよい。
【0048】
また、複数の第1セラミック成形体10Aは、スラリー18に含まれる溶剤の一部が残存していてもよい。この場合、硬化後の第1セラミック成形体10Aは柔軟性を有する。従って、一般に硬くて脆い熱硬化性樹脂前駆体をバインダに使用しても、柔軟性のあるテープ成形体として工程間を搬送させることができ、複数の第1セラミック成形体10Aを積層しても、積層間に空隙が生じる等の不具合は生じない(積層性の向上)。なお、積層の際の圧力、温度は、デラミネーションや積層体の変形、積層ずれを勘案して適宜設定される。
【0049】
第1セラミック成形体10Aの鋳込み型16からの離型性を良好にするために、図6A〜図7Bに示すようにしてもよい。すなわち、図6Aに示すように、フィルム20上に導体ペースト15を印刷法によってパターン形成した後、硬化してフィルム20上に導体成形部12を形成し、さらに導体成形部12の表面に焼成収縮率調整膜14を形成する。
【0050】
その後、図6Bに示すように、導体成形部12及び焼成収縮率調整膜14が形成されたフィルム20を鋳込み型16内に設置する際に、フィルム20と他のフィルム22とを導体成形部12が形成された面と他のフィルム22とを対向させ、さらに、フィルム20と他のフィルム22の間にスペーサ24を挟んで設置する。そして、スペーサ24にて形成される空間内にスラリー18を流し込んだ後に、硬化してセラミック成形部13とすることによって第1セラミック成形体10Aを得るようにしてもよい(図6C参照)。この場合、図7Aに示すように、第1セラミック成形体10Aがフィルム20、他のフィルム22及びスペーサ24にて囲まれた状態となっているため、第1セラミック成形体10Aが鋳込み型16に不要に付着することなく、簡単に鋳込み型16から離型することができる。
【0051】
さらに、導体成形部12が形成されるフィルム20の表面に塗布された剥離剤の剥離力と、他のフィルム22の表面に塗布された剥離剤の剥離力とを異なるようにすれば、必ずどちらかのフィルム20(又は22)が剥がれ易くなり、フィルム20(又は22)からの離型も容易になる。図7Bに、フィルム20、他のフィルム22及びスペーサ24から第1セラミック成形体10Aを離型した状態を示す。
【0052】
そして、第1の実施の形態に係るセラミック部品(以下、第1セラミック部品と記す)は、上述した第1セラミック成形体10Aを乾燥し、その後、焼成することによって得ることができる。
【0053】
上述した第1セラミック成形体10A(及び第1積層体60)及び第1セラミック部品は、導体ペースト15による導体成形部12(電極パターン等)の剥がれや崩れがなく、しかも、電極パターン等の厚みを厚くでき、抵抗値の低減化、高周波特性の向上を容易に図ることができる。
【0054】
特に、導体成形部12とセラミック成形部13との界面に焼成収縮率調整膜14を介在させるようにしたので、以下のような効果を奏する。
【0055】
(1)第1セラミック成形体10Aは、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリー18を導体成形部12を被覆するように供給しているが、導体成形部12の表面に焼成収縮率調整膜14を形成するようにしたので、スラリー18の溶剤の種類に関係なく、導体成形部12のバインダが溶解することがない。そのため、導体成形部12の形状(印刷時の形状)を維持させることができ、導体ペースト15による印刷物(導体パターン)の厚み制御、外形寸法制御、版抜け性制御が容易になる。
【0056】
(2)導体ペースト15に含まれるバインダとして、熱硬化性樹脂前駆体、熱可塑性樹脂前駆体のいずれを用いた場合であっても、焼成後のセラミック部品のクラックや電極−セラミック界面での剥がれを抑制するために、通常、導体成形部12の焼成収縮率をセラミック成形部13と合わせる必要があるが、第1セラミック成形体10Aでは、導体成形部12の表面に焼成収縮率調整膜14を形成するようにしたので、この焼成収縮率調整膜14が導体成形部12の焼成収縮率とセラミック成形部13の焼成収縮率の違いを吸収し、焼成後のセラミック部品のクラックや電極−セラミック界面での剥がれを抑制することができる。そのため、導体成形部12とセラミック成形部13の焼成収縮率の違いを気にすることなく、導体ペースト15の印刷膜厚を厚く、また、印刷パターンのエッジを矩形又は半円形とする目的で、印刷パターンの流動性を抑制(導体ペースト中のバインダの量を極力少なく)することができ、例えば高周波での導体損失低減を図った高周波回路部品(フィルタ、カプラ、バラン等)を容易に作製することができる。
【0057】
(3)導体成形部12に低融点金属(Ag、Cu、Au等)を使用すると、導体成形部12の焼成収縮開始温度がセラミック成形部13の焼成収縮開始温度よりも低温になり易くなるため、焼成収縮開始温度を上げることを狙って、導体ペースト15に含まれる金属粉末として、凝集粉や粗粒粉を使用するが、この場合、導体成形部12とセラミック成形部13の界面が粗くなり易い。しかし、第1セラミック成形体10Aでは、導体成形部12とセラミック成形部13との間に焼成収縮率調整膜14が介在しているため、該界面の粗さが焼成収縮率調整膜14によって吸収され、高周波回路部品として使用する場合においても、導体損失が悪化するということはない。
【0058】
(4)第1セラミック成形体10Aでは、導体成形部12に含まれる樹脂として熱硬化性樹脂前駆体を用いたが、前記樹脂として、熱可塑性樹脂前駆体を用いたとしても、上述した(1)〜(3)の効果を得ることができる。
【0059】
次に、上述した第1セラミック成形体10A及び第1セラミック部品並びに第1セラミック成形体10Aの製造方法及び第1セラミック部品の製造方法の実施例について図8〜図10を参照しながら説明する。
【0060】
この実施例では、図8に示す鋳込み型16が使用される。
【0061】
鋳込み型16は、一度に複数枚(例えば3枚)の第1セラミック成形体10Aを作製することができるようになっている。
【0062】
鋳込み型16は、図8に示すように、1つの基台30と、基台30上に載置される複数枚の板部材(第1板部材32a〜第4板部材32d)と、第4板部材32d上に載置される上板34とを有する。
【0063】
さらに、基台30は、その上面のうち、第1側面に近接する部分と第2側面(第1側面と対向する側面)に近接する部分にそれぞれ数本(例えば3本)の棒部材36が設けられている。各棒部材36は、軸方向が基台30の上面の法線方向となるように基台30の上面に設けられている。
【0064】
第1板部材32a〜第4板部材32d並びに上板34は、基台30の棒部材36と対応する部分にそれぞれ位置決め用の貫通孔(以下、位置決め孔38と記す)が設けられ、第1板部材32a〜第4板部材32d並びに上板34を基台30上に順番に載置した際に、各位置決め孔38を通じて基台30の棒部材36が挿通されるようになっている。
【0065】
そして、第1板部材32aと第2板部材32b間、第2板部材32bと第3板部材32c間、第3板部材32cと第4板部材32d間に、第1フィルム20と、スペーサ24と、第2フィルム22の積層体が挿入される。第1フィルム20には、その上面に導体ペースト15の形成硬化によって複数の電極パターン40が形成され、さらに電極パターン40の表面に焼成収縮率調整膜14が形成されている。
【0066】
これら第1フィルム20、第2フィルム22及びスペーサ24は、鋳込み型16内で作製された第1セラミック成形体10Aが鋳込み型16の第1板部材32a〜第4板部材32d等に不要に付着するのを防止するためのものであり、特に、第1フィルム20は、作製される第1セラミック成形体10Aの下面の形状を決定づけ、第2フィルム22は、作製される第1セラミック成形体10Aの上面の形状を決定づけるようになっている。スペーサ24は、開口部を有するほぼ枠状に形成され、第1セラミック成形体10Aの面積と高さを決定づける。図8の例では、第1フィルム20上に形成された電極パターン40の群を三方から囲むようにほぼ枠状に形成されている。このスペーサ24は、例えば第1フィルム20や第2フィルム22と同様の材質で構成してもよい。また、これら第1フィルム20、第2フィルム22及びスペーサ24は、各表面に、離型剤がコートされており、作製された第1セラミック成形体10Aが容易に離れるようになっている。
【0067】
これら第1フィルム20、第2フィルム22及びスペーサ24には、基台30の棒部材36と対応する部分にそれぞれ位置決め孔42、46及び44が設けられている。
【0068】
さらに、上板34には、スラリー18を注入するためのU字状の切欠き48が形成され、第2板部材32b〜第4板部材32dにも、それぞれU字状の切欠き48に対応した部分に、スラリー18を注入するための貫通孔(以下、注入孔50と記す)が形成されている。
【0069】
第1フィルム20、第2フィルム22及びスペーサ24にも、第2板部材32b〜第4板部材32dの注入孔50に対応した部分にそれぞれ切欠き52や注入孔(図示せず)が形成されている。
【0070】
従って、鋳込み型16を組み立てる場合は、例えば以下のようにして行われる。
【0071】
先ず、基台30の上面に第1板部材32aを載置する。このとき、基台30の棒部材36を第1板部材32aの位置決め孔38にそれぞれ挿通させて載置する。その後、第1板部材32a上に第1フィルム20、スペーサ24、第2フィルム22を重ねて載置する。このとき、第1フィルム20、スペーサ24、第2フィルム22の各位置決め孔42、44及び46にそれぞれ基台30の棒部材36を挿通させて載置する。以下、同様に、第2板部材32bを載置し、該第2板部材32b上に、第1フィルム20、スペーサ24、第2フィルム22を重ねて載置し、さらに、第3板部材32cを載置し、該第3板部材32c上に、第1フィルム20、スペーサ24、第2フィルム22を重ねて載置し、さらに、第4板部材32dを載置し、そして、最後に上板34を載置する。これによって、鋳込み型16が完成する。
【0072】
鋳込み型16内には、第1板部材32aと第2板部材32b間、第2板部材32bと第3板部材32c間、第3板部材32cと第4板部材32d間に、それぞれ第1フィルム20、スペーサ24及び第2フィルム22によって囲まれた中空部が形成される。
【0073】
次に、鋳込み型16を使用して第1セラミック成形体10A並びに第1セラミック部品を作製する方法について図9及び図10を参照しながら説明する。
【0074】
先ず、図9のステップS1において、第1フィルム20上に導体ペースト15を印刷して複数の電極パターン40を形成する。
【0075】
具体的には、第1フィルム20は、表面にシリコーン離型剤がコートされたPET(ポリエチレンテレフタレート)である。導体ペースト15の加熱硬化時における収縮、歪を抑制するために、予め第1フィルム20に温度150℃で10分以上のアニール処理を施す。
【0076】
その後、鋳込み型16への積層時の位置決めを行えるように、第1フィルム20に位置決め孔42を形成する。次いで、第1フィルム20の上面のうち、位置決め孔42を基準した所定領域に導体ペースト15を印刷して、複数の電極パターン40を形成する。この導体ペースト15は、例えばレゾール型フェノール樹脂を含有した熱硬化型の銀(Ag)ペーストである。導体ペースト15中のAg粉末は、誘電体との同時焼成の際の焼成収縮温度特性を近づけるため、粒度調整された粉末を使用している。
【0077】
次に、図9のステップS2において、第1フィルム20上に形成された電極パターン40を加熱硬化する。すなわち、熱硬化型のAgペーストを硬化させるために、120℃×1時間の熱処理を施す。
【0078】
その後、ステップS3において、第1フィルム20上に形成された電極パターンの表面(この場合、上面及び側面)に、焼成収縮率調整膜14をコーティングする。焼成収縮率調整膜14として有機膜を使用する場合は、例えばCVD(化学気相成長)、印刷によって形成することができ、無機膜を使用する場合は、例えばスパッタによって形成することができる。
【0079】
その後、図9のステップS4において、鋳込み型16を組み立てて、電極パターン40と焼成収縮率調整膜14が形成された第1フィルム20を第2フィルム22及びスペーサ24と共に鋳込み型16内に設置する。図8の鋳込み型16では、第1板部材32aと第2板部材32b間、第2板部材32bと第3板部材32c間、第3板部材32cと第4板部材32d間にそれぞれ第1フィルム20が設置される。もちろん、スペーサ24及び第2フィルム22も第1フィルム20上に積層されて設置される。
【0080】
一方、図9のステップS5及びステップS6において、鋳込み型16に注入されるスラリー18を調製する。
【0081】
先ず、ステップS5において、セラミックスラリーを調製する。セラミックスラリーは、酸化チタン、酸化バリウム系粉末と焼結助剤としてのボロシリケートガラスとを混合したセラミック粉末を有する。すなわち、セラミックスラリーは、上述のセラミック粉末を100重量部と、脂肪族二塩基酸エステルを15〜40重量部、トリアセチンを0.5〜10重量部及びポリカルボン酸共重合体を0.5〜10重量部からなる有機分散媒(ポリカルボン酸は有機分散剤として作用)との混合物からなる。
【0082】
その後、ステップS6において、上述のセラミックスラリーに、ゲル化剤としてポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの変性物1〜10重量部とエチレングリコール0.05〜2.7重量部、反応触媒として6−ジメチルアミノ−1−ヘキサノールを0.03〜0.3重量部添加した後、攪拌して、スラリー18、すなわち、ゲルキャスト用のスラリー18を調製する。
【0083】
次に、ステップS7において、鋳込み型16内にスラリー18を注入(注型)する。具体的には、鋳込み型16における上板34のU字状の切欠き48から露出する第4板部材32dの注入孔50(図8、図10参照)を介してスラリー18を注入する。この注入によって、鋳込み型16内の複数の中空部にスラリー18がそれぞれ充填される。スラリー18は、ゲルキャスト用スラリーであることから、中空部に充填された状態でそのまま硬化されてセラミック成形部13となる。これによって、鋳込み型16内に例えば3つの第1セラミック成形体10Aが作製されることになる。
【0084】
その後、ステップS8において、鋳込み型16を分解し、第1フィルム20、スペーサ24及び第2フィルム22から第1セラミック成形体10Aを剥がす。これによって、第1セラミック成形体10A、すなわち、導体成形部12(表面に焼成収縮率調整膜14が形成されている)を埋設した第1セラミック成形体10A(セラミックテープ10Aとも記す)が完成する(図10参照)。
【0085】
次に、図9のステップS9において、複数枚のセラミックテープ10Aを積層して第1積層体60を作製する(図10参照)。このとき、セラミックテープ10Aの反応性官能基が完全に反応しない状態(室温において、注型後、1時間〜48時間経過後)で、5〜100kgf/cm2の圧力で加圧積層する。加圧力は、セラミックテープ10Aの強度と許容される積層ずれに応じて適宜選択される。
【0086】
積層時の加圧力が小さい場合は、積層ずれは小さいものの、積層時の接着不良による焼成体のデラミネーションが発生し易くなる一方、積層時の加圧力が大きい場合は、上述のデラミネーションの発生を抑制できるものの、セラミックテープ10Aの積層圧力による変形及び破損が発生し易くなる。しかし、上述した加圧力の範囲であれば、積層ずれとデラミネーションを抑制することができ、好ましい。また、必要に応じて、上記5〜100kgf/cm2の加圧に引き続き、50〜400kgf/cm2の加圧力で一体性を高めてもよい。また、60℃〜80℃に加温しながら積層することが好ましい。
【0087】
あるいは、セラミックテープ10Aを十分に硬化したものや、さらに乾燥した後に、セラミックテープ10Aと同一の無機粉末、ブチラール樹脂、アクリル樹脂、ブチルカルビトールアセテート溶剤及び/又は脂肪族二塩基酸エステル等の有機溶剤を混合した接着ペーストをセラミックテープ10A上に塗布又は印刷した後、積層することも好ましい。
【0088】
このようにすることで、セラミックテープ10A相互の接着性が向上し、上述のデラミネーションを抑制することができる。なお、接着ペーストを使用する場合は、反応硬化テープ中の溶剤が残っていてもよいし、60℃〜100℃の温度で予め溶剤を乾燥させてもよい。溶剤を乾燥させた反応硬化テープは可塑性が著しく低下し、ハンドリングに困難をきたすため、乾燥後のセラミックテープ10Aに可塑性を付与する目的で、反応硬化前のスラリーに可塑剤(DOPあるいはDBP)を1〜10重量部添加することがさらに好ましい。
【0089】
次に、図9のステップS10において、第1積層体60を乾燥した後、ステップS11において、積層体を複数のチップ62に分割する(図10参照)。
【0090】
その後、ステップS12において、各チップ62の表面や側面に端子電極を印刷により形成する。
【0091】
そして、ステップS13において、各チップ62を焼成することで、実施例に係るセラミック部品が完成する。
【0092】
ここで、各構成部材の好ましい態様について説明する。
【0093】
[導体ペースト15:第1の実施の形態]
導体ペースト15としては、バインダとしてエポキシ、フェノール等の未硬化物を含有するものが好ましいが、とりわけ、レゾール型フェノール樹脂を含有するものが好ましい。また、金属粉末については、Ag、Pd、Au、Pt、Cu、Ni、Rhといった金属の単体又は合金、金属間化合物を用いることができるが、同時焼成されるセラミック部材に要求される特性、すなわち、焼成時の酸素分圧、温度、焼成収縮温度特性を考慮し、適宜選択される。焼成収縮温度特性については金属粉末組成だけではなく、金属粉末の粒径、比表面積、凝集度によっても適宜制御される。導体ペースト15中のバインダ分量については、例えば、Ag粉末の場合、金属粉末重量の1%〜10%の範囲を使用するが、セラミック部材の焼成収縮率、スクリーン印刷時の印刷性を考慮し、3〜6%の範囲が好ましい。
【0094】
導体ペースト15は、上述したように、印刷後、加熱硬化させるが、硬化条件は、硬化剤の種類により異なり、例えば、第1の実施の形態で使用するレゾール型フェノール樹脂の場合、120℃で10分〜60分硬化させる。
【0095】
導体ペースト15による電極パターン40を硬化した後、硬化した電極パターン40の表面に焼成収縮率調整膜14をコーティングし、その後、第1フィルム20(この場合、PETフィルム)を鋳込み型16に設置するが、PETフィルムを鋳込み型に設置する際、PETフィルムのうねりを抑制するため、所望の平行度、平坦度を有する型板(第1板部材32a〜第3板部材32c)に真空吸着、糊付け、静電吸着等の手段により吸着させる。
【0096】
[焼成収縮率調整膜14]
上述したように、焼成収縮率調整膜14として有機膜又は無機膜を用いることができる。有機膜の場合は、熱硬化性樹脂前駆体であることが好ましく、例えば自己反応性のレゾール型フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリパラキシリレン樹脂を用いることができる。無機膜の場合は、シリカ膜を用いることができる。
【0097】
[鋳込み型16(金型):第1の実施の形態]
型板(第1板部材32a〜第3板部材32c)は、吸着手段に応じた板部材を使用する。例えば真空吸着の場合は、金属、セラミック、樹脂等の材質は関係なく、多孔質板や吸着用孔を多数あけた板を使用し、糊付けの場合は、糊との反応性がなく、後に溶剤等で糊を拭き取る際にも変質を起こさない材質の板を使用し、静電吸着の場合は、PETと静電吸着し易い材料でできた板を使用することが好ましい。
【0098】
鋳込み型16は、内部にスラリー18が流通する経路を有し、鋳込み硬化後のスラリー18が所望の厚みの板状となるように、型板間に、電極パターン40が形成された第1フィルム20、第2フィルム22(電極パターンが形成されていても、されていなくてもよい)及びスペーサ24を設置して、第1フィルム20及び第2フィルム22を平行に対向した形態を有し、且つ、第1フィルム20と第2フィルム22との間に適当な間隔が設定されるようにすることが好ましい。
【0099】
第1フィルム20、第2フィルム22、スペーサ24は、PETフィルム、離型剤をコートした金属板・セラミック板、あるいはテフロン(登録商標)樹脂板等を用いることができる。
【0100】
そして、この鋳込み型16に、反応硬化する樹脂を含有するスラリー18を流し込み、硬化させる。
【0101】
[スラリー18:第1の実施の形態]
スラリー18は、用途に応じ、アルミナ、安定化ジルコニア、各種圧電セラミック材料、各種誘電セラミック材料、といった酸化物セラミックスをはじめ、シリコンナイトライド、アルミナイトライドといった窒化物セラミックス、シリコンカーバイド、タングステンカーバイドといった炭化物セラミックス粉末やバインダとしてのガラス成分を含んだセラミックス粉末といった無機成分と、例えば分散剤とゲル化剤もしくはゲル化剤相互の化学反応が誘起される有機化合物とからなる。
【0102】
このスラリー18は、無機成分粉末の他、有機分散媒、ゲル化剤を含み、粘性や固化反応調整のための分散剤、触媒を含んでもよい。有機分散媒は反応性官能基を有していてよく、あるいは有していなくともよい。しかし、この有機分散媒は、反応性官能基を有することが特に好ましい。
【0103】
反応性官能基を有する有機分散媒としては、以下を例示することができる。
【0104】
すなわち、反応性官能基を有する有機分散媒は、ゲル化剤と化学結合し、スラリー18を固化可能な液状物質であること、及び鋳込みが容易な高流動性のスラリー18を形成できる液状物質であることの2つを満足する必要がある。
【0105】
ゲル化剤と化学結合し、スラリー18を固化するためには、反応性官能基、すなわち、水酸基、カルボキシル基、アミノ基のようなゲル化剤と化学結合を形成し得る官能基を分子内に有していることが必要である。分散媒は少なくとも1の反応性官能基を有するものであれば足りるが、より十分な固化状態を得るためには、2以上の反応性官能基を有する有機分散媒を使用することが好ましい。2以上の反応性官能基を有する液状物質としては、例えば多価アルコール、多塩基酸が考えられる。なお、分子内の反応性官能基は必ずしも同種の官能基である必要はなく、異なる官能基であってもよい。また、反応性官能基はポリグリセリンのように多数あってもよい。
【0106】
一方、注型が容易な高流動性のスラリー18を形成するためには、可能な限り粘性の低い液状物質を使用することが好ましく、特に、20℃における粘度が20cps以下の物質を使用することが好ましい。既述の多価アルコールや多塩基酸は水素結合の形成により粘性が高い場合があるため、たとえスラリー18を固化することが可能であっても反応性分散媒として好ましくない場合がある。従って、多塩基酸エステル、多価アルコールの酸エステル等の2以上のエステル基を有するエステル類を前記有機分散媒として使用することが好ましい。また、多価アルコールや多塩基酸も、スラリー18を大きく増粘させない程度の量であれば、強度補強のために使用することは有効である。エステル類は比較的安定ではあるものの、反応性が高いゲル化剤とであれば十分反応可能であり、粘性も低いため、上記2条件を満たすからである。特に、全体の炭素数が20以下のエステルは低粘性であるため、反応性分散媒として好適に用いることができる。
【0107】
スラリー18に含有されていてもよい反応性官能基を有する有機分散媒としては、具体的には、エステル系ノニオン、アルコールエチレンオキサイド、アミン縮合物、ノニオン系特殊アミド化合物、変性ポリエステル系化合物、カルボキシル基含有ポリマー、マレイン系ポリアニオン、ポリカルボン酸エステル、多鎖型高分子非イオン系、リン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸Na、マレイン酸系化合物を例示できる。また、非反応性分散媒としては、炭化水素、エーテル、トルエン等を例示できる。
【0108】
[ゲル化剤:第1の実施の形態]
スラリー18中に含有されるゲル化剤は、分散媒に含まれる反応性官能基と反応して固化反応を引き起こすものであり、以下を例示することができる。
【0109】
すなわち、ゲル化剤の20℃における粘度が3000cps以下であることが好ましい。具体的には、2以上のエステル基を有する有機分散媒と、イソシアナート基、及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤とを化学結合させることによりスラリー18を固化することが好ましい。
【0110】
具体的には、この反応性のゲル化剤は、分散媒と化学結合し、スラリー18を固化可能な物質である。従って、ゲル化剤は、分子内に、分散媒と化学反応し得る反応性官能基を有するものであればよく、例えば、モノマー、オリゴマー、架橋剤の添加により三次元的に架橋するプレポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等)等のいずれであってもよい。
【0111】
但し、反応性ゲル化剤は、スラリー18の流動性を確保する観点から、粘性が低いもの、具体的には20℃における粘度が3000cps以下の物質を使用することが好ましい。
【0112】
一般に、平均分子量が大きなプレポリマー及びポリマーは、粘性が高いため、本実施例では、これらより分子量が小さいもの、具体的には平均分子量(GPC法による)が2000以下のモノマー又はオリゴマーを使用することが好ましい。なお、ここでの「粘度」とは、ゲル化剤自体の粘度(ゲル化剤が100%の時の粘度)を意味し、市販のゲル化剤希釈溶液(例えば、ゲル化剤の水溶液等)の粘度を意味するものではない。
【0113】
ゲル化剤の反応性官能基は、反応性分散媒との反応性を考慮して適宜選択することが好ましい。例えば反応性分散媒として比較的反応性が低いエステル類を用いる場合は、反応性が高いイソシアナート基(−N=C=O)、及び/又はイソチオシアナート基(−N=C=S)を有するゲル化剤を選択することが好ましい。
【0114】
イソシアナート類は、ジオール類やジアミン類と反応させることが一般的であるが、ジオール類は既述の如く高粘性のものが多く、ジアミン類は反応性が高すぎて注型前にスラリー18が固化してしまう場合がある。
【0115】
このような観点からも、エステルからなる反応性分散媒と、イソシアナート基及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤との反応によりスラリー18を固化することが好ましく、より充分な固化状態を得るためには、2以上のエステル基を有する反応性分散媒と、イソシアナート基、及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤との反応によりスラリー18を固化することが好ましい。また、ジオール類、ジアミン類も、スラリー18を大きく増粘させない程度の量であれば、強度補強のために使用することは有効である。
【0116】
イソシアナート基及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤としては、例えば、MDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート)系イソシアナート(樹脂)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアナート)系イソシアネート(樹脂)、TDI(トリレンジイソシアナート)系イソシアナート(樹脂)、IPDI(イソホロンジイソシアナート)系イソシアナート(樹脂)、イソチオシアナート(樹脂)等を挙げることができる。
【0117】
また、反応性分散媒との相溶性等の化学的特性を考慮して、前述した基本化学構造中に他の官能基を導入することが好ましい。例えば、エステルからなる反応性分散媒と反応させる場合には、エステルとの相溶性を高めて、混合時の均質性を向上させる点から、親水性の官能基を導入することが好ましい。
【0118】
なお、ゲル化剤分子内に、イソシアナート基又はイソチオシアナート基以外の反応性官能基を含有させてもよく、イソシアナート基とイソチオシアナート基が混在してもよい。さらには、ポリイソシアナートのように、反応性官能基が多数存在してもよい。
【0119】
スラリー18には、上述した成分以外に、消泡剤、界面活性剤、焼結助剤、触媒、可塑剤、特性向上剤等の各種添加剤を添加してもよい。
【0120】
上述したスラリー18は、以下のように作製することができる。
【0121】
(a)分散媒に無機物粉体を分散してスラリー18とした後、ゲル化剤を添加する。
【0122】
(b)分散媒に無機物粉体及びゲル化剤を同時に添加して分散することによりスラリー18を製造する。
【0123】
注型時及び塗布時の作業性を考慮すると、20℃におけるスラリー18の粘度は30000cps以下であることが好ましく、20000cps以下であることがより好ましい。スラリー18の粘度は、既述した反応性分散媒やゲル化剤の粘度の他、粉体の種類、分散剤の量、スラリー18の濃度(スラリー18全体の体積に対する粉体体積%)によっても調整することができる。
【0124】
但し、スラリー18の濃度は、通常は、25〜75体積%のものが好ましく、乾燥収縮によるクラックを少なくすることを考慮すると、35〜75体積%のものがさらに好ましい。有機成分として分散媒、分散剤、反応硬化物、反応触媒を有する。このうち、例えば分散媒とゲル化剤もしくはゲル化剤相互の化学反応により固化する。
【0125】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態に係るセラミック成形体(以下、第2セラミック成形体10Bと記す)について図11〜図15を参照しながら説明する。
【0126】
この第2セラミック成形体10Bは、図11に示すように、導体成形部12の表面(上面及び側面)に焼成収縮率調整膜14を形成し、さらに、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリー18を、導体成形部12(表面に焼成収縮率調整膜14が形成されている)の上面及び側面を被覆するように塗布した後に硬化してセラミック成形部13とすることによって得られる。なお、第2セラミック成形体10Bの厚みが0.05mm以下のように薄い場合には、型に鋳込むような方法では困難が伴うため、基体上へ塗布する方法が好ましい。
【0127】
ここで、具体的に、第2セラミック成形体10B及び第2セラミック部品の製造方法について図12A〜図14Cを参照しながら説明する。
【0128】
先ず、図12Aに示すように、フィルム等の基体64の上面に剥離剤(図示せず)を塗布し、その後、基体64の上面に導体ペースト15を例えば印刷法によってパターン形成し、さらに、このパターン形成された導体ペースト15を加熱硬化して、基体64上に導体成形部12を形成する。
【0129】
その後、基体64上に形成された導体成形部12の表面(この場合、上面及び側面)に、焼成収縮率調整膜14をコーティングする。焼成収縮率調整膜14として有機膜を使用する場合は、例えばCVD(化学気相成長)、印刷によって形成することができ、無機膜を使用する場合は、例えばCVD、スパッタによって形成することができる。
【0130】
その後、図12Bに示すように、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリー18を、導体成形部12を被覆するように基体64上に塗布する。塗布方法としては、ディスペンサー法や、図13A及び図13Bに示す方法やスピンコート法等がある。図13A及び図13Bに示す方法は、一対のガイド板66a及び66bの間に基体64(導体成形部12が形成された基体64)を設置し、その後、スラリー18を、導体成形部12を被覆するように基体64上に塗布した後、ブレード状の治具68を一対のガイド板66a及び66bの上面を滑らせて(摺り切って)、余分なスラリー18を取り除く方法である。一対のガイド板66a及び66bの高さを調整することによって、スラリー18の厚みを容易に調整することができる。
【0131】
その後、図14Aに示すように、基体64上に塗布されたスラリー18を硬化(室温硬化や乾燥硬化等)させてセラミック成形部13とする。
【0132】
その後、図14Bに示すように、基体64を剥離、除去することによって第2セラミック成形体10Bが完成する。
【0133】
さらに、図14Cに示すように、第2セラミック成形体10Bを焼成することによって、導体成形部12が埋め込まれたセラミック焼成体70を有する第2セラミック部品72が完成する。
【0134】
ここで、各構成部材の好ましい態様について説明する。
【0135】
[導体ペースト15:第2の実施の形態]
第1の実施の形態と同様であるため、重複する記載を省略するが、第2の実施の形態における導体ペースト15は、樹脂と銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)系の金属の少なくとも1種類の粉末を含む。導体ペースト15に使用される樹脂は、熱硬化性樹脂前駆体であることが好ましい。この場合、熱硬化性樹脂前駆体は、自己反応性のレゾール型フェノール樹脂であることが好ましい。
【0136】
導体ペースト15は、上述したように、印刷後、加熱硬化されるが、硬化条件は、硬化剤の種類により異なり、例えば、第2の実施の形態で使用するレゾール型フェノール樹脂の場合、温度80〜150℃、時間10分〜60分で硬化させることができる。
【0137】
[焼成収縮率調整膜14:第2の実施の形態]
この第2の実施の形態においても、焼成収縮率調整膜14として有機膜又は無機膜を用いることができる。有機膜の場合は、熱硬化性樹脂前駆体であることが好ましく、例えば自己反応性のレゾール型フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリパラキシリレン樹脂を用いることができる。無機膜の場合は、シリカ膜を用いることができる。
【0138】
[スラリー18:第2の実施の形態]
第1の実施の形態と同様であるため、重複する記載を省略するが、第2の実施の形態におけるスラリー18に含まれるセラミック粉末は、用途に応じて、アルミナ、安定化ジルコニア、各種圧電セラミック材料、各種誘電セラミック材料、といった酸化物セラミックスをはじめ、シリコンナイトライド、アルミナイトライドといった窒化物セラミックス、シリコンカーバイド、タングステンカーバイドといった炭化物セラミックス粉末やバインダとしてのガラス成分を含む。
【0139】
スラリー18に含まれる熱硬化性樹脂前駆体は、イソシアネート基又はイソチオシアネート基を有するゲル化剤と、水酸基を有する高分子とを有する。
【0140】
上述した塗布方法のうち、ディスペンサー法や図13A及び図13Bに示す方法にてスラリー18を基体64上に塗布する場合、スラリー18の粘度は比較的高いことが好ましい。スラリー18の粘度は第1の実施の形態と同様でもよいが、スラリー18が低粘度だと、塗布した後の保形性が低く、流動による厚みバラつきが発生し易い。そのため、スラリー18の粘度は200cps〜2000cpsが好ましい。
【0141】
そこで、水酸基を有する高分子として分子量の大きい樹脂を用いることで、スラリー18の粘度を高くできる。一例としてブチラール樹脂は分子量が大きいため、スラリー18の粘度を高くするには好適である。もちろん、高分子の分子量でスラリー18の粘度の制御が可能となることから、塗布方法に応じて、高分子として使用する樹脂を適宜選択すればよい。
【0142】
上述したブチラール樹脂は、一般に、ポリビニルアセタール樹脂であるが、その中には原料のポリビニルアルコール樹脂に由来するOH基が残るので、このOH基がゲル化剤のイソシアネート基又はイソチオシアネート基と反応するものと考えられる。
【0143】
特に、イソシアネート基又はイソチオシアネート基と反応に必要な量を超えてブチラール樹脂を添加すると、反応後に残ったブチラール樹脂は熱可塑性樹脂として作用するので、熱硬化性樹脂の欠点である、硬化後の接着性が悪くなるという特性を改善することができる。その結果、例えば図15に示すように、第2セラミック成形体10Bを複数積層して第2積層体74を構成する場合に、各第2セラミック成形体10Bの接着性が良好となることから、製造過程において第2セラミック成形体10Bが剥離するという不都合を回避でき、複数の第2セラミック成形体10Bの第2積層体74によるセラミック部品72の歩留まりを向上させることができる。
【0144】
水酸基を有する高分子としては、その他、エチルセルロース系樹脂、ポリエチレングリコール系樹脂、あるいはポリエーテル系樹脂を好ましく用いることができる。
【0145】
上述した第2セラミック成形体10B(及び第2積層体74)及び第2セラミック部品72においても、導体成形部12とセラミック成形部13との間に焼成収縮率調整膜14が介在しているため、上述した第1セラミック成形体10Aにおける(1)〜(4)と同じ効果を奏する。従って、導体ペースト15による導体成形部12(電極パターン等)の剥がれや崩れがなく、しかも、導体成形部12(電極パターン等)の厚みを厚くでき、抵抗値の低減化、高周波特性の向上を容易に図ることができる。
【0146】
ここで、スラリー18に含まれる樹脂として、熱可塑性樹脂前駆体を用いた従来のセラミック成形体の問題点と、第1セラミック成形体10A及び第2セラミック成形体10B(以下、まとめて本実施の形態とも記す)による問題解決について説明する。
【0147】
従来においては、熱可塑性樹脂前駆体を含むスラリーの乾燥収縮時に導体成形部との界面で隙間やクラックが発生したり、グリーンシートが凹凸形状になったりする。
【0148】
一方、本実施の形態では、スラリー18に熱硬化性樹脂前駆体を含ませて、乾燥時に熱硬化性樹脂前駆体を硬化させて三次元網目構造を生成させ、収縮を小さくすることで前記問題は解決される。
【0149】
この場合、スラリー18に使用する溶剤に、熱硬化性樹脂前駆体が硬化する温度での蒸気圧が小さいものを選定し、熱硬化時の溶剤乾燥による収縮を小さくすることが望ましい。室温で硬化する樹脂を用いた場合は、特に作業や装置が簡単になる。
【0150】
ポリウレタン樹脂は、硬化後の弾性を制御し易く、柔軟な成形体も可能となる等の利点を有する。後工程での取り扱いを考えると、あまり硬い成形体は適さない場合があり、熱硬化性樹脂は三次元網目構造をとるので一般に硬いが、ポリウレタン樹脂は、柔軟性のある成形体も可能で、特にテープ状の成形体は、柔軟性が要求される場合が多いため望ましい。また、スラリー性状の制御のため、熱可塑性樹脂を含ませてもよい。
【0151】
従来においては、熱可塑性樹脂を含む導体ペーストが、スラリーを塗布する際に、スラリーの溶剤に溶解して、パターン形状が崩れる。
【0152】
一方、本実施の形態においては、導体成形部12の表面に焼成収縮率調整膜14を形成するようにしたので、導体ペースト15に熱可塑性樹脂前駆体が含まれていたとしても、耐溶剤性が向上し、パターン形状の崩れは生じない。
【0153】
従来において、熱可塑性樹脂をバインダとするセラミック成形部は、該セラミック成形部の密度ばらつきが発生し易く、そのために、焼成後のセラミック焼成体の寸法ばらつきが大きく、埋設された導体成形部の焼成寸法のばらつきも大きくなる。電子部品には、導体の寸法が部品の特性、性能を決めるものが多い。例えば導体内蔵のストリップラインフィルタは、その共振電極の寸法でフィルタの中心周波数が決まる。
【0154】
一方、本実施の形態においては、導体成形部12の表面に焼成収縮率調整膜14を形成し、スラリー18に熱硬化性樹脂前駆体を含めるようにしたので、焼成ばらつきを小さくすることができる。
【0155】
例えば第2セラミック成形体10Bの焼成後の寸法は、第2セラミック成形体10Bのうち、導体成形部12を除く部分(セラミック成形部13)の生密度により主に決まる。これは第2セラミック部品72のセラミック焼成体70の構造は空隙が非常に少ないのに対し、セラミック成形部13は空隙が多いため、その空隙量の多少が、焼成中の収縮量を決めるからである。
【0156】
熱可塑性樹脂前駆体をバインダとして含むスラリーは、溶媒を乾燥してセラミック成形体を得るが、乾燥する際の塗工比(スラリー体積と成形後の成形体体積の比)が大きく、この大きな塗工比が成形体密度のばらつきの原因となる。
【0157】
しかし、本実施の形態のように、熱硬化性樹脂前駆体をスラリー18のバインダとして使用した場合は、溶剤を含んだままでも硬化するため、塗工比を小さくすることができ、生密度のばらつきを小さくすることができる。その結果、焼成後の寸法ばらつきが小さくなり、埋設した導体成形部12の寸法ばらつきも小さくすることができる。
【0158】
なお、セラミック成形体、セラミック部品、セラミック成形体の製造方法及びセラミック部品の製造方法は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】第1セラミック成形体を示す断面図である。
【図2】図2Aは導体ペーストによる導体成形部のパターンの表面に焼成収縮率調整膜を形成した状態を示す断面図であり、図2Bは鋳込み型内にパターンを設置した後、鋳込み型内にスラリーを注入した状態を示す断面図であり、図2Cは鋳込み型内に注入されたスラリーを硬化して第1セラミック成形体とした状態を示す断面図である。
【図3】図3Aはフィルム上に導体ペーストによる導体成形部のパターンの表面に焼成収縮率調整膜を形成した状態を示す断面図であり、図3Bは鋳込み型内にフィルムを設置した後、鋳込み型内にスラリーを注入した状態を示す断面図であり、図3Cは鋳込み型内に注入されたスラリーを硬化して第1セラミック成形体とした状態を示す断面図である。
【図4】図4Aは鋳込み型から第1セラミック成形体をフィルムごと離型した状態を示す断面図であり、図4Bはフィルムから第1セラミック成形体を離型した状態を示す断面図である。
【図5】第1セラミック成形体を積層して第1積層体を構成した状態を示す断面図である。
【図6】図6Aはフィルム上に導体ペーストによる導体成形部のパターンの表面に焼成収縮率調整膜を形成した状態を示す断面図であり、図6Bは鋳込み型内にフィルムを他のフィルム及びスペーサと共に設置した、鋳込み型内にスラリーを注入した状態を示す断面図であり、図6Cは鋳込み型内に注入されたスラリーを硬化して第1セラミック成形体とした状態を示す断面図である。
【図7】図7Aは鋳込み型から第1セラミック成形体をフィルム、他のフィルム及びスペーサごと離型した状態を示す断面図であり、図7Bはフィルム、他のフィルム及びスペーサから第1セラミック成形体を離型した状態を示す断面図である。
【図8】第1セラミック成形体を作製する場合に使用される鋳込み型を示す分解斜視図である。
【図9】第1セラミック成形体及び第1セラミック部品を作製する手順を示す工程ブロック図である。
【図10】図9のステップS7〜ステップS11までの手順を示す説明図である。
【図11】第2セラミック成形体を示す断面図である。
【図12】図12Aは基体上に導体ペーストによる導体成形部のパターンの表面に焼成収縮率調整膜を形成した状態を示す工程図であり、図12Bは導体成形部を被覆するように基体上にスラリーを塗布した状態を示す工程図である。
【図13】図13Aは基体上にスラリーを塗布する方法の一例を示す斜視図であり、図13Bはその側面図である。
【図14】図14Aは基体上に塗布したスラリーを硬化した状態を示す工程図であり、図14Bは基体を剥離して第2セラミック成形体とした状態を示す工程図であり、図14Cは第2セラミック成形体を焼成して第2セラミック部品とした状態を示す工程図である。
【図15】第2セラミック成形体を積層して第2積層体を構成した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0160】
10A…第1セラミック成形体
10B…第2セラミック成形体
12…導体成形体
13…セラミック成形部
14…焼成収縮率調整膜
15…導体ペースト
16…鋳込み型
18…スラリー
20…フィルム(第1フィルム)
22…他のフィルム(第2フィルム)
24…スペーサ
40…電極パターン
60…第1積層体
64…基体
70…セラミック焼成体
72…セラミック部品
74…第2積層体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末とバインダを含む導体ペーストをパターン形成し、その後、硬化してなる導体成形部と、
樹脂とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリーを、前記導体成形部を被覆するように供給した後に硬化して得られるセラミック成形部とを有するセラミック成形体であって、
前記導体成形部と前記セラミック成形部との界面に焼成収縮率調整膜が形成されていることを特徴とするセラミック成形体。
【請求項2】
請求項1記載のセラミック成形体において、
前記焼成収縮率調整膜は、有機膜(CVD又は印刷)又は無機膜(CVD又はスパッタ)であることを特徴とするセラミック成形体。
【請求項3】
請求項2記載のセラミック成形体において、
前記焼成収縮率調整膜に含まれる前記有機膜は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂又はポリパラキシリレン樹脂であることを特徴とするセラミック成形体。
【請求項4】
請求項2記載のセラミック成形体において、
前記焼成収縮率調整層に含まれる前記無機膜は、シリカ膜であることを特徴とするセラミック成形体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のセラミック成形体において、
前記セラミック成形部は、前記スラリーを、基体上に成形された前記導体成形部を被覆するように塗布した後に硬化して得られることを特徴とするセラミック成形体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のセラミック成形体において、
前記導体ペーストに含まれる金属粉末は、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)系の金属の少なくとも1種類の粉末であり、
前記導体ペーストに含まれるバインダは、熱可塑性樹脂前駆体又は熱硬化性樹脂前駆体であることを特徴とするセラミック成形体。
【請求項7】
請求項6記載のセラミック成形体において、
前記導体ペーストに含まれる前記熱硬化性樹脂前駆体は、フェノール樹脂であることを特徴とするセラミック成形体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のセラミック成形体において、
前記スラリーに含まれる前記樹脂は、熱硬化性樹脂前駆体であって、ポリウレタン樹脂前駆体であることを特徴とするセラミック成形体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のセラミック成形体を焼成してなるセラミック部品。
【請求項10】
金属粉末とバインダを含む導体ペーストをパターン形成し、その後、硬化してなる導体成形部を形成する導体形成工程と、
前記導体成形部の表面の一部又は全部に焼成収縮率調整膜を形成する焼成収縮率調整膜形成工程と、
熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリーを、前記焼成収縮率調整層と共に前記導体成形部を被覆するように供給するスラリー供給工程と、
前記スラリーを硬化してセラミック成形部にすることにより、セラミック成形体を作製するスラリー硬化工程とを有するセラミック成形体の製造方法。
【請求項11】
請求項10記載のセラミック成形体の製造方法において、
前記焼成収縮率調整膜は、有機膜(CVD又は印刷)又は無機膜(CVD又はスパッタ)であることを特徴とするセラミック成形体の製造方法。
【請求項12】
請求項11記載のセラミック成形体の製造方法において、
焼成収縮率調整膜形成工程は、前記導体成形部の表面の一部又は全部に前記有機膜をCVD法又は印刷法にて形成することを特徴とするセラミック成形体の製造方法。
【請求項13】
請求項11記載のセラミック成形体の製造方法において、
焼成収縮率調整膜形成工程は、前記導体成形部の表面の一部又は全部に前記無機膜をCVD法又はスパッタ法にて形成することを特徴とするセラミック成形体の製造方法。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれか1項に記載のセラミック成形体の製造方法において、
前記スラリーに使用される前記熱硬化性樹脂前駆体がポリウレタン樹脂前駆体であることを特徴とするセラミック成形体の製造方法。
【請求項15】
請求項10記載のセラミック成形体の製造方法において、
前記導体形成工程は、基体上に前記導体成形部を形成し、
前記焼成収縮率調整膜形成工程は、前記基体上に形成された前記導体成形部上に、前記焼成収縮率調整膜を形成し、
前記スラリー供給工程は、前記スラリーを、前記焼成収縮率調整層と共に前記導体成形部を被覆するように前記基体上に塗布することを特徴とするセラミック成形体の製造方法。
【請求項16】
請求項10記載のセラミック成形体の製造方法において、
前記導体形成工程は、フィルム上に導体成形部を形成し、
前記焼成収縮率調整膜形成工程は、前記フィルム上に形成された前記導体成形部上に、前記焼成収縮率調整膜を形成し、
前記スラリー供給工程は、前記導体成形部及び前記焼成収縮率調整膜が形成された前記フィルムを鋳込み型内に設置し、前記スラリーを前記鋳込み型内に鋳込むことを特徴とするセラミック成形体の製造方法。
【請求項17】
請求項16記載のセラミック成形体の製造方法において、
前記スラリー供給工程は、前記フィルムを前記鋳込み型内に設置する際に、
前記フィルムと他のフィルムとを前記導体成形部及び前記焼成収縮率調整膜が形成された面と前記他のフィルムとを対向させ、さらに、前記フィルムと前記他のフィルムの間にスペーサを挟んで設置し、
前記スペーサにて形成される空間内に前記スラリーを流し込むことを特徴とするセラミック成形体の製造方法。
【請求項18】
請求項17記載のセラミック成形体の製造方法において、
前記フィルムの表面に塗布された剥離剤の剥離力と、前記他のフィルムの表面に塗布された剥離剤の剥離力とが異なることを特徴とするセラミック成形体の製造方法。
【請求項19】
請求項10〜18のいずれか1項に記載のセラミック成形体の製造方法において、
前記導体ペーストに含まれる金属粉末は、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)系の金属の少なくとも1種類の粉末であり、
前記導体ペーストに含まれるバインダは、熱可塑性樹脂前駆体又は熱硬化性樹脂前駆体であることを特徴とするセラミック成形体の製造方法。
【請求項20】
請求項19記載のセラミック成形体の製造方法において、
前記導体ペーストに含まれる前記熱硬化性樹脂前駆体がフェノール樹脂であることを特徴とするセラミック成形体の製造方法。
【請求項21】
請求項20記載のセラミック成形体の製造方法において、
前記導体ペーストに含まれる前記熱硬化性樹脂前駆体が自己反応性のレゾール樹脂であることを特徴とするセラミック成形体の製造方法。
【請求項22】
セラミック成形体を作製する工程と、
作製された前記セラミック成形体を焼成する工程とを有するセラミック部品の製造方法であって、
前記セラミック成形体を作製する工程は、
金属粉末とバインダを含む導体ペーストをパターン形成し、その後、硬化してなる導体成形部を形成する導体形成工程と、
前記導体成形部の表面の一部又は全部に焼成収縮率調整膜を形成する焼成収縮率調整膜形成工程と、
熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリーを、前記焼成収縮率調整層と共に前記導体成形部を被覆するように供給するスラリー供給工程と、
前記スラリーを硬化してセラミック成形部にすることにより、セラミック成形体を作製するスラリー硬化工程とを有することを特徴とするセラミック部品の製造方法。
【請求項1】
金属粉末とバインダを含む導体ペーストをパターン形成し、その後、硬化してなる導体成形部と、
樹脂とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリーを、前記導体成形部を被覆するように供給した後に硬化して得られるセラミック成形部とを有するセラミック成形体であって、
前記導体成形部と前記セラミック成形部との界面に焼成収縮率調整膜が形成されていることを特徴とするセラミック成形体。
【請求項2】
請求項1記載のセラミック成形体において、
前記焼成収縮率調整膜は、有機膜(CVD又は印刷)又は無機膜(CVD又はスパッタ)であることを特徴とするセラミック成形体。
【請求項3】
請求項2記載のセラミック成形体において、
前記焼成収縮率調整膜に含まれる前記有機膜は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂又はポリパラキシリレン樹脂であることを特徴とするセラミック成形体。
【請求項4】
請求項2記載のセラミック成形体において、
前記焼成収縮率調整層に含まれる前記無機膜は、シリカ膜であることを特徴とするセラミック成形体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のセラミック成形体において、
前記セラミック成形部は、前記スラリーを、基体上に成形された前記導体成形部を被覆するように塗布した後に硬化して得られることを特徴とするセラミック成形体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のセラミック成形体において、
前記導体ペーストに含まれる金属粉末は、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)系の金属の少なくとも1種類の粉末であり、
前記導体ペーストに含まれるバインダは、熱可塑性樹脂前駆体又は熱硬化性樹脂前駆体であることを特徴とするセラミック成形体。
【請求項7】
請求項6記載のセラミック成形体において、
前記導体ペーストに含まれる前記熱硬化性樹脂前駆体は、フェノール樹脂であることを特徴とするセラミック成形体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のセラミック成形体において、
前記スラリーに含まれる前記樹脂は、熱硬化性樹脂前駆体であって、ポリウレタン樹脂前駆体であることを特徴とするセラミック成形体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のセラミック成形体を焼成してなるセラミック部品。
【請求項10】
金属粉末とバインダを含む導体ペーストをパターン形成し、その後、硬化してなる導体成形部を形成する導体形成工程と、
前記導体成形部の表面の一部又は全部に焼成収縮率調整膜を形成する焼成収縮率調整膜形成工程と、
熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリーを、前記焼成収縮率調整層と共に前記導体成形部を被覆するように供給するスラリー供給工程と、
前記スラリーを硬化してセラミック成形部にすることにより、セラミック成形体を作製するスラリー硬化工程とを有するセラミック成形体の製造方法。
【請求項11】
請求項10記載のセラミック成形体の製造方法において、
前記焼成収縮率調整膜は、有機膜(CVD又は印刷)又は無機膜(CVD又はスパッタ)であることを特徴とするセラミック成形体の製造方法。
【請求項12】
請求項11記載のセラミック成形体の製造方法において、
焼成収縮率調整膜形成工程は、前記導体成形部の表面の一部又は全部に前記有機膜をCVD法又は印刷法にて形成することを特徴とするセラミック成形体の製造方法。
【請求項13】
請求項11記載のセラミック成形体の製造方法において、
焼成収縮率調整膜形成工程は、前記導体成形部の表面の一部又は全部に前記無機膜をCVD法又はスパッタ法にて形成することを特徴とするセラミック成形体の製造方法。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれか1項に記載のセラミック成形体の製造方法において、
前記スラリーに使用される前記熱硬化性樹脂前駆体がポリウレタン樹脂前駆体であることを特徴とするセラミック成形体の製造方法。
【請求項15】
請求項10記載のセラミック成形体の製造方法において、
前記導体形成工程は、基体上に前記導体成形部を形成し、
前記焼成収縮率調整膜形成工程は、前記基体上に形成された前記導体成形部上に、前記焼成収縮率調整膜を形成し、
前記スラリー供給工程は、前記スラリーを、前記焼成収縮率調整層と共に前記導体成形部を被覆するように前記基体上に塗布することを特徴とするセラミック成形体の製造方法。
【請求項16】
請求項10記載のセラミック成形体の製造方法において、
前記導体形成工程は、フィルム上に導体成形部を形成し、
前記焼成収縮率調整膜形成工程は、前記フィルム上に形成された前記導体成形部上に、前記焼成収縮率調整膜を形成し、
前記スラリー供給工程は、前記導体成形部及び前記焼成収縮率調整膜が形成された前記フィルムを鋳込み型内に設置し、前記スラリーを前記鋳込み型内に鋳込むことを特徴とするセラミック成形体の製造方法。
【請求項17】
請求項16記載のセラミック成形体の製造方法において、
前記スラリー供給工程は、前記フィルムを前記鋳込み型内に設置する際に、
前記フィルムと他のフィルムとを前記導体成形部及び前記焼成収縮率調整膜が形成された面と前記他のフィルムとを対向させ、さらに、前記フィルムと前記他のフィルムの間にスペーサを挟んで設置し、
前記スペーサにて形成される空間内に前記スラリーを流し込むことを特徴とするセラミック成形体の製造方法。
【請求項18】
請求項17記載のセラミック成形体の製造方法において、
前記フィルムの表面に塗布された剥離剤の剥離力と、前記他のフィルムの表面に塗布された剥離剤の剥離力とが異なることを特徴とするセラミック成形体の製造方法。
【請求項19】
請求項10〜18のいずれか1項に記載のセラミック成形体の製造方法において、
前記導体ペーストに含まれる金属粉末は、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)系の金属の少なくとも1種類の粉末であり、
前記導体ペーストに含まれるバインダは、熱可塑性樹脂前駆体又は熱硬化性樹脂前駆体であることを特徴とするセラミック成形体の製造方法。
【請求項20】
請求項19記載のセラミック成形体の製造方法において、
前記導体ペーストに含まれる前記熱硬化性樹脂前駆体がフェノール樹脂であることを特徴とするセラミック成形体の製造方法。
【請求項21】
請求項20記載のセラミック成形体の製造方法において、
前記導体ペーストに含まれる前記熱硬化性樹脂前駆体が自己反応性のレゾール樹脂であることを特徴とするセラミック成形体の製造方法。
【請求項22】
セラミック成形体を作製する工程と、
作製された前記セラミック成形体を焼成する工程とを有するセラミック部品の製造方法であって、
前記セラミック成形体を作製する工程は、
金属粉末とバインダを含む導体ペーストをパターン形成し、その後、硬化してなる導体成形部を形成する導体形成工程と、
前記導体成形部の表面の一部又は全部に焼成収縮率調整膜を形成する焼成収縮率調整膜形成工程と、
熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリーを、前記焼成収縮率調整層と共に前記導体成形部を被覆するように供給するスラリー供給工程と、
前記スラリーを硬化してセラミック成形部にすることにより、セラミック成形体を作製するスラリー硬化工程とを有することを特徴とするセラミック部品の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−241472(P2009−241472A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92063(P2008−92063)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
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