説明

セラミック焼結体とその製造方法及びセラミック焼結体を用いた装飾用部材

【課題】軽量であるとともに、湿式下での耐摩耗性が良好であり、しかも安価なセラミック焼結体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】当該セラミック焼結体は、窒化チタンからなる第1の硬質相と、アルミナまたはジルコニアの少なくとも1種を含む第2の硬質相と、ニッケルを含む結合相と、から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブローチ、ネックレス、メダル、ボタン、壁材、各種キッチン部材等の耐摩耗性部品に用いられるセラミック焼結体及びその製造方法に関する。本発明は、美しい色調を有する釣糸用の案内部材や時計用ケース、時計用窓部材等の装飾用部材に特に好適なセラミック焼結体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
釣具用部品、例えば釣糸用の案内部材には、従来からプラスチックまたはステンレス等金属から作られたものが一般的に用いられている。プラスチックまたは金属製の案内部材は、使用時に岩やコンクリートにぶつけても破損することはないが、硬度が低いために、糸に付着した細かい砂等で擦られることにより、その表面に傷が付いてしまって摩耗してしまうという問題があった。
【0003】
そこで、このような問題を解決するために、特許文献1では周期律表第4a族金属元素、第5a族金属元素から選ばれる少なくとも1種の炭化物、窒化物あるいは炭窒化物を釣具用部品との容量比で50%以上含有するとともに、気孔率が5%以下である焼結体を用いた釣糸用の案内部材が提案されている。
【0004】
また、特許文献2では、周期律表第4a族金属元素、第5a族金属元素および第6a族金属元素の炭化物、窒化物および炭窒化物からなる60体積%以上の硬質相と、鉄族金属元素からなる40体積%以下の結合相とからなる釣糸用の案内部材が提案されている。
【0005】
また、特許文献3では、チタンの酸窒化物からなる硬質相と、ジルコニアからなる強化相と、さらにモリブデンを主体とする金属の結合相とから構成される釣糸用の案内部材が提案されている。
【0006】
これらの釣糸用案内部材をはじめ、装飾用に使用される金色を呈する装飾用部材としては、純金やこれらの合金、黄銅等の各種金属、または金属表面に金メッキを施したものが使用されていたが、これらはいずれも硬度が低いことから、硬質物質との接触により表面に傷が発生したり、割れ等が発生したりするという問題がある。
【0007】
そこで、このような問題を解決するために、特許文献4では、金属の表面に、Cuが70乃至85原子%、Znが15乃至25原子%、Niが1乃至10原子%の合金メッキによる被膜を形成し、この被膜の色調がCIE1976空間L*a*b*における表示でL*=80乃至95、a*=−5乃至0、b*=15乃至25の範囲にある金色調の鏡面製品が提案されている。
【0008】
また、特許文献5では、チタンが全量中55乃至70質量%、鉄族金属元素および少なくともクロムを含む周期律表第6a族元素が全量中10乃至30質量%、残部が炭素、窒素により構成される焼結合金であって、全量中における炭素の割合が0.7質量%以下、チタンを除く金属元素中におけるクロムの占める割合が35質量%以上であり、かつ、JIS Z8730に規定するL*a*b*表色系における明度指数L*≧10、クロマティクネス指数a*≦+0.4、b*≧+8.0である金色焼結合金が提案されている。
【0009】
また、特許文献6では、硬質相として窒化チタンを45乃至75質量%、炭化チタンを7.5乃至25質量%、結合相としてクロムを全量中炭化物に換算して1乃至10質量%、モリブデンを全量中炭化物に換算して0.1乃至5質量%、及びニッケルを全量中5乃至20質量%含有するとともに、測色計にて得られるL*a*b*表色系の明度指数がL*=65乃至69、a*=4乃至9、b*=5乃至16である焼結合金が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平4−271739号公報
【特許文献2】特開平4−281730号公報
【特許文献3】特開平11−71626号公報
【特許文献4】特公平7−62274号公報
【特許文献5】特開平5−311311号公報
【特許文献6】特開2003−13154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示された釣糸用の案内部材は、乾式下で釣り糸と摺動させた場合には、耐摩耗性に優れた良好な特性を示すものの、例えば、窒化チタン焼結体を用いた釣糸用の案内部材を湿式下で釣り糸と摺動させた場合、摺動した部分の窒化チタンは酸化されて酸化チタンとなってしまう。この酸化作用により、摺動した部分の窒化チタン粒子が1.5倍に体積膨張するため、酸化チタン粒子が脱落しやすい状態となり、釣糸用の案内部材が短期間で摩耗するという問題がある。また、超硬焼結体を用いた釣糸用の案内部材では、魚が釣り針に掛かったとしても、超硬焼結体自体の比重が大きくて感度が悪いため、釣り上げるタイミングを逸し、魚を逃がしてしまうという問題がある。
【0012】
また、特許文献3に開示された釣糸用の案内部材は、次のような工程を経て作製されている。先ず、窒化チタン粉末、酸化チタン粉末、窒化ジルコニウム粉末及びモリブデン粉末を混合、粉砕し、所望の成形手段により成形する。次に、得られた成形体を非酸化性雰囲気中で所定温度で脱脂し、真空あるいは非酸化性雰囲気中、無加圧で焼成した後、熱間静水圧(HIP)で焼成することにより所望の釣糸用の案内部材が得られる。しかしながら、特許文献3の釣糸用の案内部材には、無加圧の焼成及び熱間静水圧(HIP)の焼成という2回の焼成を行う必要があるので、焼成コストがかかるという問題がある。
【0013】
さらに、釣糸用の案内部材に金色の色調が求められる場合、特許文献4に開示された金色調の鏡面製品を上記案内部材に用いたとしても、銅、亜鉛、ニッケルの合金メッキによる被膜を金属上に形成して金色の色調を表現したものであるために、被膜がいずれ剥がれてしまうという本質的な問題を回避することはできない。
【0014】
また、特許文献5に開示された金色焼結合金は、焼結体そのものが金色の色調を呈しているので、被膜形成が不要となり、剥離という問題は解消されるものの、彩度を示すクロマティクネス指数a*が+0.4以下であるため、鈍い色彩を呈し、装飾的価値を求める所有者が必ずしも満足できるものではない。
【0015】
また、特許文献6に開示された焼結合金も、被膜が剥がれるという問題は解消されるものの、色相を示すクロマティクネス指数b*が5乃至16と小さいため、色相はやや緑色の傾向が強いものとなり、装飾的価値を求める所有者が必ずしも満足できるものではない。
【0016】
本発明は、上記課題に鑑み、軽量であって、湿式下での耐摩耗性が良好であるとともに、自動外観検査機による検査精度を高められ、装飾的価値を求める所有者に美的満足感、高級感、精神的安らぎ等を与えて、しかも金色の色調を呈するセラミック焼結体と、このセラミック焼結体を安価に製造できる方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のセラミック焼結体は、窒化チタンからなる第1の硬質相と、アルミナまたはジルコニアの少なくとも1種からなる第2の硬質相と、ニッケルからなる結合相と、から構成されることを特徴とする。
【0018】
また、上記第2の硬質相を2乃至25質量%、結合相を4乃至10質量%含有するとともに、残部が第1の硬質相であることを特徴とする。
【0019】
さらに、炭化クロムを3乃至7.4質量%含有することを特徴とする。
【0020】
さらに、上記第1の硬質相および第2の硬質相の平均粒径が、0.6乃至2.6μmであることを特徴とする。
【0021】
さらにまた、CIE1976空間L*a*b*の表色系で、表面の明度指数L*が60乃至70であり、表面のクロマティクネス指数a*、b*がそれぞれ7.0乃至8.2,16.5乃至24.5であることを特徴とする。
【0022】
また、セラミック焼結体の可視光領域における表面反射率の最大値と最小値との差が、27.7%以上であることを特徴とする。
【0023】
さらに、セラミック焼結体の表面の算術平均高さRaが0.2μm以下であることを特徴とする。
【0024】
さらにまた、セラミック焼結体の気孔率が2%以下であることを特徴とする。
【0025】
さらにまた、セラミック焼結体の表面の気孔の孔径が50μm以下であることを特徴とする。
【0026】
また、セラミック焼結体の破壊靱性K1cが7MPa・m0.5以上であることを特徴とする。
【0027】
さらに、本発明のセラミック焼結体の製造方法は、窒化チタンの粉末、アルミナまたはジルコニアの少なくとも1種からなる粉末及びニッケルの粉末を混合して調合原料を作成する工程と、該調合原料を加圧成形して所望形状の成形体を作成する工程と、窒素及び不活性ガスの中から選択される少なくとも1種のガス雰囲気中あるいは真空中で該成形体を加熱焼結して焼結体を作成する工程と、を具備することを特徴とする。
【0028】
さらにまた、本発明のセラミック焼結体の製造方法は、調合原料の粉砕粒度(D50)が0.5μm以下であることを特徴とする。
【0029】
さらにまた、本発明のセラミック焼結体の製造方法は、成形圧力が49乃至196MPaであることを特徴とする。
【0030】
さらにまた、本発明のセラミック焼結体の製造方法は、真空中での加熱焼結は、1.33Pa以下の真空度で行うことを特徴とする。
【0031】
また、本発明のセラミック焼結体の製造方法は、加熱焼結温度が1200乃至1800℃であることを特徴とする。
【0032】
さらに、上記セラミック焼結体が装飾用部材として用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明は、上述の通り、窒化チタンからなる第1の硬質相と、アルミナまたはジルコニアの少なくとも1種からなる第2の硬質相と、ニッケルからなる結合相とから構成されたセラミック焼結体とすることで、湿式下の摺動ではチタンの窒化物からなる第1の硬質相はその表層が酸化物となって体積膨張するものの、前記第2の硬質相によって第1の硬質相が保護されて第1の硬質相が脱離することがないので、優れた耐摩耗性を示すことができる。
【0034】
さらに、上記第2の硬質相を2乃至25質量%、結合相を4乃至10重量%とすることで、湿式下での耐摩耗性が良好であるとともに装飾的価値の高いセラミック焼結体とすることができ、このようなセラミック焼結体を低コストで容易に得ることができる。
【0035】
さらにまた、炭化クロムを3乃至7.4質量%含有することで、装飾的価値や硬度が高いことに加え、破壊靱性も高いセラミック焼結体とすることができる。
【0036】
また、第1の硬質相および第2の硬質相の平均粒径を0.6乃至2.6μmとすることで、脱粒のおそれのない耐摩耗性の優れたセラミック焼結体とすることができる。
【0037】
さらに、表面のCIE1976空間L*a*b*における明度指数L*が60乃至70であって、クロマティクネス指数a*、クロマティクネス指数b*をそれぞれ7.0乃至8.2、16.5乃至24.5とすることで、軽量であることは勿論、気孔内に含まれてセラミック焼結体とは外観色の異なる異物を検査工程で識別することが容易となり、自動外観検査機による検査精度を高めることができるとともに、その色調は優れた相乗効果を生んで、所有者に美的満足感、高級感、精神的安らぎ等を与えることができる。
【0038】
さらにまた、可視光線領域における表面反射率の最大値と最小値との差を27.7%以上とすることで、ある光源の下で見たセラミック焼結体の色調と、別の種類の光源の下で見たセラミック焼結体の色調とが同一にならなかったり、同一光源の下でも見る角度によって色調が異なって見えたりするメタメリズム現象を発現させることができ、本発明のセラミック焼結体の所有者は、多様な色調を楽しむことができる。
【0039】
さらにまた、表面の算術平均高さRaを0.2μm以下とすることで、表面の光沢度、艶やかさが増し、高級感溢れたものとすることができる。
【0040】
また、上記表面の気孔率を2%以下あるいは気孔の孔径を50μm以下とすることで、自動外観検査機による検査精度をさらに高められるとともに、例えばセラミック焼結体が円環体であって、この円環体を釣糸用の案内部材として用いた場合、円環体の内周面上に存在する気孔のエッジから受ける釣糸の損傷や糸切れを低減させることができる。
【0041】
さらに、破壊靱性K1cを7MPa・m0.5以上とすることで、例えばセラミック焼結体を釣糸用の案内部材に適用した場合、この案内部材を釣り場の岩礁や暗礁に衝撃的に打ち当ててもマイクロクラックが入らないため、装飾的価値が長期間維持される。
【0042】
さらにまた、窒化チタンの粉末、アルミナまたはジルコニアの少なくとも1種からなる粉末及びニッケルの粉末を混合して調合原料を作成する工程と、該調合原料を加圧成形して所望形状の成形体を作成する工程と、窒素及び不活性ガスの中から選択される少なくとも1種のガス雰囲気中あるいは真空中で該成形体を加熱焼結して焼結体を作成する工程とを具備するセラミック焼結体の製造方法とすることで、軽量であるとともに耐摩耗性の良好な金色のセラミック焼結体が得られる。
【0043】
さらにまた、調合原料の粉砕粒度(D50)を0.5μm以下とすることで、焼成における安定性が高まり、異常な粒成長の発生を防ぐことができる。
【0044】
さらにまた、成形圧力を49MPa乃至196MPaとすることで、加圧成形に用いる金型等の寿命を長くできるとともに、セラミック焼結体の気孔率を2%以下、あるいは気孔の孔径を50μm以下にすることができ、セラミック焼結体が円環体であって、釣糸用の案内部材として用いた場合、円環体の内周面上に存在する気孔のエッジから受ける釣糸の損傷や糸切れが低減される。
【0045】
真空中で加熱焼結して上記焼結体を得る場合、真空度を1.33Pa以下にすると、チタンの窒化物を含む第1の硬質相が焼成中に酸化することがなくなるので、金色のセラミック焼結体が得られる。
【0046】
加熱焼結温度を1200乃至1800℃とすることで、セラミック焼結体の気孔率を2%以下あるいは気孔の孔径を50μm以下にできるとともに、焼成コストも削減することができる。
【0047】
さらにまた、上記セラミック焼結体からなる装飾用部材は、所有者に美的満足感、高級感、精神的安らぎ等を与えるので、釣糸用の案内部材、時計用ケースとして好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係るセラミック焼結体の耐摩耗性を評価する装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
【0050】
本発明に係るセラミック焼結体は、チタンの窒化物を含む第1の硬質相と、アルミナまたはジルコニアの少なくとも1種を含む第2の硬質相と、ニッケルを含む結合相とから構成されている。
【0051】
チタンの窒化物を含む第1の硬質相は、金色という色調の呈示に寄与する。また、湿式下の摺動では第1の硬質相の表層が酸化物となって体積膨張が発生して、脱離しやすい状態となるので、アルミナまたはジルコニアの少なくとも1種を含む第2の硬質相は、その脱離防止に寄与する。ニッケルを含む結合相は、第1の硬質相同士や第1の硬質相と第2の硬質相の結合に寄与する。また、第2の硬質相、結合相ともに、セラミック焼結体の色調を調整するものである。
【0052】
また、上記第2の硬質相は2乃至25質量%であることが好適である。ここで、第2の硬質相が2乃至25質量%が好適であるのは、2質量%未満であると湿式下での耐摩耗性が低下するからであり、25質量%を超えると、セラミック焼結体の金色の色調が曇ったものになり、装飾的価値が低くなるからである。上記第2の硬質相を2乃至25重量%とすることで、湿式下での耐摩耗性が良好であるとともに装飾的価値の高いセラミック焼結体とすることができる。
【0053】
さらに、上記結合相は4乃至10質量%であることが好適である。ここで、4乃至10質量%が好適であるのは、4質量%未満では、装飾用部材としての緻密体が得られないからであり、10質量%を超えると、セラミック焼結体の金色の色調が曇ったものになり、装飾的価値が低くなるからである。
【0054】
なお、上記セラミック焼結体の不可避の不純物としては、珪素、リン、イオウ、マンガン、鉄、コバルト、ニオブ、モリブデンが挙げられ、各々1質量%以下であることが好適である。
【0055】
また、上記第1の硬質相は炭素を固溶し、かつ分子式TiC(1−x)(0.01≦x≦0.08)で示されることが好適である。
【0056】
硬度は、TiN、TiCN、TiCの順序で高くなり、この順序で耐摩耗性も向上するが、装飾的価値も変化する。チタンの窒化物を含む第1の硬質相に、炭素を固溶し、かつ分子式TiC(1−x)(0.01≦x≦0.08)とすることで、耐摩耗性も向上し、装飾的価値も兼ね備えたセラミック焼結体とすることができる。
【0057】
また、セラミック焼結体に対して、炭化クロムを3乃至7.4質量%含有することが好適であり、炭化クロムを3質量%以上にすることで破壊靱性K1cを高くすることができ、7.4質量%以下にすることで赤みがかった色調を抑えることができ、装飾的価値を維持することができる。この炭化クロムは、主として結合相に含まれ、第1の硬質相同士や第1の硬質相と第2の硬質相との結合にも寄与する。また、結合相には亜鉛を含んでいてもよく、セラミック焼結体に対し、1質量%以下とすることが好適である。
【0058】
また、セラミック焼結体の平均結晶粒径は、0.6乃至2.6μmとすることが好適である。
【0059】
セラミック焼結体の平均結晶粒径を0.6乃至2.6μmとしたのは、セラミック焼結体を釣糸用の案内部材に用いた場合、平均結晶粒径が0.6μmより小さいと、粒界が過度に多くなるため、汚泥を多く含む海水が付着する釣糸が摺接すると、粒界が浸食されて耐摩耗性が不十分となるおそれがあるからであり、平均結晶粒径が2.6μmを超えると、第1の硬質相あるいは第2の硬質相から脱粒するおそれが高くなるからである。平均結晶粒径を0.6乃至2.6μmとすることで、脱粒のおそれのない耐摩耗性の優れたセラミック焼結体とすることができる。
【0060】
なお、上記セラミック焼結体の平均結晶粒径は、例えば倍率4000乃至6000倍の走査型電子顕微鏡(以下、走査型電子顕微鏡をSEMという。)写真を用い、セラミック焼結体の断面をコード法により測定するか、あるいはSEMで得られた倍率4000乃至6000倍の観察画像を数値解析することで求めることができる。コード法を用いる場合、具体的には、SEM写真より一定長さの直線上にある結晶粒界の個数から粒径を測定し、その平均を算出する。ここで、直線は、平均結晶粒径の測定値に片寄りが出ないようにするため、5本以上にすることが好適である。なお、結合相は、粒界相を形成するために結晶質となることなく非晶質となるので、粒径の算出対象から必然的に除外される。
【0061】
また、上記セラミック焼結体の形状が円環体であって、円環体の内周面に水分が付着したナイロンまたはポリエチレンからなる糸を摺接させ、500gの荷重を付加して速度70m/分、走行距離1000mとなるように前記糸を摺動させたとき、第1の硬質相、第2の硬質相及び結合相の比率によっては、前記円環体に発生する摩耗の深さを2μm以下にすることができ、釣糸用の案内部材としてこの円環体を用いた場合、その寿命は向上する。上記第2の硬質相が形成されていない円環体は、水分が付着したナイロンまたはポリエチレン糸を上述の条件で摺動させたとき、第1の硬質相の表面が酸化されて体積膨張が発生するが、前記第2の硬質相による保護がないため、摩耗の進行が著しく、その深さは2μmを超え、釣糸用の案内部材としての長寿命化を期待できない。
【0062】
なお、耐摩耗性の評価については、概略構成が例えば図1に示されるような耐摩耗性評価装置を用いればよい。この耐摩耗性評価装置は、ナイロンまたはポリエチレン製の糸6を駆動して走行させるモーター3と、所定位置で糸6に張力を与えるプーリー5と、糸6に水分を付着させる水槽2とからなり、所定位置に治具(不図示)等で固定された円環体1にワイヤー7を介して糸6の張力を調整する荷重4が与えられ、水分が付着した糸6が円環体1の内周面を摺動する構造となっている。
【0063】
この耐摩耗性の評価条件としては、荷重4として500g、糸6が円環体1の内周面を摺動する速度70m/分、走行距離1000m以上になるように設定すればよい。また、糸6に付着させる水分は海水が好適であるが、純水、非イオン化水であってもよい。
【0064】
さらに、本発明のセラミック焼結体は、表面のCIE1976空間L*a*b*における明度指数L*を60乃至70とし、クロマティクネス指数a*を7.0乃至8.2とし、クロマティクネス指数b*を16.5乃至24.5とすることが好適である。
【0065】
ここで、明度指数L*を60乃至70としたのは、60未満では黒っぽい色合いが強くなるため、黒っぽく観察される金属異物がセラミック焼結体の表面にあった場合、検査工程での識別が難しくなるからである。一方、明度指数L*を70より大きくすると、白っぽい色合いが強くなるため、白っぽく観察される異物がセラミック焼結体の表面にあった場合も、検査工程での識別が難しくなるからである。
【0066】
また、クロマティクネス指数a*を7.0乃至8.2としたのは、7.0未満では低色相となって鮮やかさに欠け、8.2より大きくすると赤っぽい色合いが強くなり、派手な感じとなり、高級感を与えにくくなるからである。
【0067】
また、クロマティクネス指数b*を16.5乃至24.5としたのは、16.5未満では低色相となって鮮やかさに欠け、24.5より大きくすると黄色っぽい色合いが強くなって、所有者の自律神経を活性化させ、精神的安らぎを与えにくくなるからである。
【0068】
窒化チタンを主成分とするとともに、表面のCIE1976空間L*a*b*における明度指数L*が60乃至70であって、クロマティクネス指数a*を7.0乃至8.2とし、クロマティクネス指数b*を16.5乃至24.5とすることで、軽量であることは勿論、気孔内に含まれてセラミック焼結体とは外観色の異なる異物の識別が検査工程で容易となり、自動外観検査機による検査精度を高めることができる。それとともに、その色調は優れた相乗効果を生んで、所有者に美的満足感、高級感、精神的安らぎ等を与えることができる。
【0069】
なお、本発明での表面という表現は、装飾的価値が要求されない面を含まず、装飾的価値が要求される面のみを指し、全ての面を指すものではない。この表面のCIE1976空間L*a*b*における明度指数L*、クロマティクネス指数a*、クロマティクネス指数b*は、JIS 8722−2000に準拠して測定することで求められ、例えば分光測色計(コニカミノルタホールディングス社(製)CM−3700d)を用い、光源をCIE標準光源D65、視野角を10°に設定して色調を測定することができる。
【0070】
さらに、本発明のセラミック焼結体は、前記第1の硬質相を76乃至91質量%、第2の硬質相を2乃至18質量%、結合相を5乃至9質量%とすれば、表面のCIE1976空間L*a*b*における明度指数L*を60乃至70、クロマティクネス指数a*を7.0乃至8.2、b*を16.5乃至24.5にすることができ、製造上条件設定も容易になり好適である。特に、上記明度指数L*を63乃至67に、クロマティクネス指数a*を7.50乃至7.85に、b*を16.5乃至19にすることにより、装飾的価値が高くなって好適である。
【0071】
なお、上述のようなセラミック焼結体を得るための製造方法については、詳細を後述する。
【0072】
また、セラミック焼結体の可視光線領域における表面反射率の最大値と最小値との差を27.7%以上とすることが好ましい。このようにすることで、ある光源の下で見たセラミック焼結体の色調と、別の種類の光源の下で見たセラミック焼結体の色調とが同一にならなかったり、同一光源の下でも見る角度によって色調が異なって見えたりするメタメリズム現象を感じることができる。したがって、本発明のセラミック焼結体の所有者は、色調を楽しむことができる。
【0073】
また、可視光線領域における表面反射率の最大値と最小値の差を27.7%以上とするには、セラミック焼結体の装飾性が求められる面をバレル研磨あるいはダイヤモンドペースト等を用いてラップ加工して、算術平均高さRa0.05乃至0.22μmの表面にすればよい。
【0074】
なお、可視光線領域における表面反射率は、JIS Z 8722−2000に準拠し、例えば分光測色計(コニカミノルタホールディングス(株)社製のCM−3700d)を用い、光源をCIE標準光源D65、視野角を10°に設定して、この領域における表面反射率の最大値及び最小値を測定し、両者の差を算出すればよい。
【0075】
特に、表面反射率の最大値と最小値との差を33%以上にすると、メタメリズム現象をより強く出現するのに好適であり、さらに表面の算術平均高さRaを0.2μm以下とすることで、表面の光沢度、艶やかさが増し、高級感溢れたものとすることができる。表面の算術平均高さRaを0.2μm以下とするには、セラミック焼結体の任意の一面をバレル研磨あるいは平均粒径1μm以下のダイヤモンドペーストを用いてラップ加工すればよい。
【0076】
なお、算術平均高さRaは、JIS B 0601−2000に準拠して測定される。特に、表面を算術平均高さRa0.15μm以下とすることで、より高級感溢れたものとすることができる。
【0077】
さらにまた、上記表面の気孔率を2%以下に、あるいは気孔の孔径を50μm以下にすることで、自動外観検査機による検査精度をさらに高められるとともに、例えばセラミック焼結体が円環体であって、この円環体を釣糸用の案内部材として用いた場合、釣糸は円環体の内周面上に存在する気孔のエッジから受ける損傷や糸切れを低減させることができる。
【0078】
なお、セラミック焼結体の表面の気孔率を2%以下または気孔の孔径を50μm以下とするためには、成形圧力を49MPa以上とし、加熱焼結温度を1200℃以上にすればよい。
【0079】
上記気孔率については、アルキメデス法を用いて測定される。特に、セラミック焼結体の気孔率を1%以下とすることで糸切れの発生をより低減させることができる。
【0080】
また、気孔の孔径についてはセラミック焼結体をバレル研磨あるいはダイヤモンドペースト等を用いてラップ加工して、算術平均高さRa0.05乃至0.2μmの表面を形成した後、金属顕微鏡を用い、例えば倍率400倍で表面を写真撮影して、最も大きな気孔の孔径を測定すればよい。
【0081】
さらにまた、破壊靱性K1cを7MPa・m0.5以上とすることで、例えばセラミック焼結体を釣糸用の案内部材に適用し、この案内部材を釣り場の岩礁や暗礁に衝撃的に打ち当ててもマイクロクラックが入らないため、装飾的価値は長期間維持される。破壊靱性K1cを7MPa・m0.5以上とするには、第2の硬質相をジルコニアとし、その比率を4質量%以上とすることで得られる。特に、破壊靱性K1cを9.2MPa・m0.5以上とすることが好ましい。
【0082】
なお、破壊靱性K1cについては、JIS R 1607−1995に準拠して求めればよい。
【0083】
以上、詳述したセラミック焼結体を釣糸用の案内部材に用いると、軽量であるとともに、湿式下での耐摩耗性が向上するので、魚が釣り針に掛かったときの当たりを容易に感知することができ、魚を逃がしにくくする。
【0084】
次に、本発明のセラミック焼結体の製造方法について説明する。
【0085】
本発明に係るセラミック焼結体を得るには、先ず、第1の硬質相を形成するための窒化チタンの粉末、第2の硬質相を形成するためのアルミナまたはジルコニアの少なくとも1種を含む粉末、結合相を形成するためのニッケルの粉末を所定量秤量、混合して調合原料とする。より具体的には、平均粒径15乃至30μmの窒化チタンの粉末、平均粒径1乃至2μmのアルミナまたはジルコニアの少なくとも1種を含む粉末、平均粒径5乃至20μmのニッケルの粉末を準備し、窒化チタンの粉末が65乃至94質量%、アルミナまたはジルコニアの少なくとも1種を含む粉末が2乃至25質量%、ニッケルの粉末が4乃至10質量%となるように秤量、混合することが好適である。
【0086】
ここで、窒化チタンの粉末は、化学量論的組成のTiNであっても、また非化学量論的組成のTiNであってもよいが、耐摩耗性及び装飾的価値の高い色調という観点から、上記各粉末の純度は99%以上であることが好ましい。
【0087】
次いで、前記調合原料にイソプロピルアルコール等の有機溶媒を加え、ミルを用いて混合粉砕した後、パラフィンワックス等の結合剤を所定量添加し、所望の成形手段、例えば、乾式加圧、冷間静水圧加圧、押し出し等により所望形状に成形する。
【0088】
また、第1の硬質相が炭素を固溶し、かつ分子式TiC(1−x)(0.01≦x≦0.08)で示されるセラミック焼結体を得るには、上記の比率で調合した窒化チタン、アルミナ、ジルコニア及びニッケルの粉末に加え、窒化チタンの粉末に対し、炭素粉末を0.2乃至1.6質量%添加したものを調合原料としてもよい。あるいは、同じく上記の比率で調合した窒化チタン、アルミナ、ジルコニア及びニッケルの粉末に対し、TiCを主成分とするボールで、例えば、90乃至150時間混合粉砕して、ボールから摩耗したTiCを含むものを調合原料としてもよい。なお、混合粉砕で用いるボールは、ビッカース硬度Hvが16GPa以上、破壊靱性K1cが8.5MPa・m0.5以上、相対密度97%以上の緻密質なセラミックスを用いることが好適である。
【0089】
特に、上記調合原料の粉砕粒度(D50)を0.5μm以下にすることが好適であり、このようにすることで、焼成における安定性が高まり、異常粒成長の発生を防ぐことができる。
【0090】
粉砕粒度(D50)を0.5μm以下にするには、上記調合原料を90時間以上混合粉砕すればよく、粉砕粒度(D50)の測定についてはレーザー散乱回折法により、例えば、マイクロトラック粒度分布測定装置を用いて求めることができる。
【0091】
そして、必要に応じ、窒素雰囲気等の非酸化性雰囲気中で得られた成形体を脱脂した後、窒素及び不活性ガスから選択される少なくとも1種のガス雰囲気中あるいは真空中で加熱焼結させることで本発明のセラミック焼結体が得られる。さらに、セラミック焼結体をダイヤモンドペースト等研磨砥粒やバレルを用いて研磨することでより光沢のある金色の色調を得ることができる。
【0092】
ここで、可視光線領域における表面反射率の最大値と最小値との差を27.7%以上とするには、セラミック焼結体の任意の一面をバレル研磨あるいはダイヤモンドペースト等を用いてラップ加工して、算術平均高さRaが0.05乃至0.2μmである表面にすればよい。算術平均高さRaを0.2μm以下とするには平均粒径の小さいダイヤモンドペーストを用いてラップ加工すればよく、例えば平均粒径1μm以下のダイヤモンドペーストを用いればよい。
【0093】
ここで、上記成形体を窒素及び不活性ガスから選択される少なくとも1種のガス雰囲気中あるいは真空中で加熱焼結させたのは、酸化性雰囲気中で加熱焼結させると、窒化チタンが酸化して酸化チタンとなり、酸化チタンが本質的に備えている白色の色調の影響を受け、セラミック焼結体全体が白っぽくくすんだ色調になるからである。
また、成形手段として乾式加圧を選択した場合、成形圧力を49乃至196MPaとすることが好適である。成形圧力を49MPa以上としたのは、成形圧力を49MPa未満にすると、セラミック焼結体の気孔率は2%より高くなるか表面の気孔の孔径が50μmを超えたりするからである。さらに、このセラミック焼結体が円環体であって、釣糸用の案内部材として用いた場合、円環体の内周面上に存在する気孔のエッジにより釣糸が損傷を受けやすく、糸切れが発生するおそれがあるからである。
【0094】
また、成形圧力を196MPa以下としたのは、196MPaを超えると成形に用いる金型の寿命が短くなるからである。成形圧力を49MPa乃至196MPaとすることで、金型の寿命を長くできるとともに、円環体の気孔率を2%以下、また表面の気孔の孔径を50μm以下にすることができ、釣糸が受ける損傷や糸切れを低減することができる。
【0095】
また、破壊靱性K1cを7MPa・m0.5以上とするには、秤量、混合時に第2の硬質相となる原料としてジルコニア又はアルミナの少なくとも一つを選択し、その混合量を4質量%以上とすればよい。
【0096】
また、真空中で加熱焼結して上記焼結体を得る場合、その真空度が1.33Pa以下であることが好適である。真空度を1.33Pa以下としたのは、1.33Paを超えるとチタンの窒化物からなる第1の硬質相が酸化して金色のセラミック焼結体が得られないからである。一方、真空度を1.33Pa以下にすると、チタンの窒化物からなる第1の硬質相が焼成中に酸化することなく、金色の円環体が得られる。
【0097】
また、加熱焼結温度を1200乃至1800℃とすることが好適である。加熱焼結温度を1200℃以上としたのは、この温度が1200℃より低いと、セラミック焼結体の気孔率が2%を超えたり、あるいは気孔の孔径が50μmを超えたりするからであり、1800℃以下としたのは、この温度が1800℃を超えると焼成コストが高くなるからである。加熱焼結温度を1200乃至1800℃とすることで、セラミック焼結体の気孔率が2%以下であって、気孔の孔径も50μm以下にできるとともに、焼成コストも下げられる。
【0098】
特に、ジルコニアの粉末を15乃至18質量%、加熱焼結温度を1575乃至1650℃とすることで、セラミック焼結体の平均結晶粒径を0.6乃至2.6μmとすることができる。
【0099】
上述のようにして得られたセラミック焼結体は、所有者に美的満足感、高級感、精神的安らぎ等を与えられるとともに、強度や摺動性が優れるため、特に釣糸用の案内部材や、時計用ケース、時計用窓部材等の装飾用部材として好適に用いることができる。
【0100】
その他、ネックレス、ネクタイピン、ブローチ、ボタン、メダル、壁材、各種キッチン部品等種々の部材としても用いることができる。
【実施例】
【0101】
以下に、本発明に係る実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0102】
(実施例1)
先ず、窒化チタン粉末(純度99%以上、平均粒径22.3μm)、ニッケル粉末(純度99.5%以上、平均粒径12.8μm)、ジルコニア粉末(純度99.5%以上、平均粒径1.5μm)またはアルミナ粉末(純度99.0%以上、平均粒径1.5μm)をセラミック焼結体(以下、焼結体という。)が表1の比率になるように秤量、混合して調合原料とした。次に、得られた調合原料にイソプロピルアルコール溶液を加え、振動ミルを用いて72時間粉砕混合した後、パラフィンワックス等のバインダーを上記調合原料に対し、3質量%添加し、乾燥させて粉体とした。そして、得られた粉体を表1に示す圧力で加圧成形して、実施例に応じて、所望の円環形状の成形体を作製した。
【0103】
上記成形体を600℃の窒素雰囲気中で脱脂した後、保持時間2時間として、表1に示す温度、雰囲気で焼成した。
【0104】
なお、真空中で焼成した場合の真空度は、表1に示す通りである。
【0105】
【表1】

(*を付けた試料は本発明の範囲外の試料である。)
【0106】
得られた試料番号1乃至31の一面をバレル研磨にて鏡面にした後、これらの試料の気孔率をアルキメデス法で測定し、外観を目視で評価した。なお、外観評価において、○が綺麗な金色、△が白っぽくくすんだ金色、×が金色ではない色であることをそれぞれ示している。
【0107】
耐摩耗性試験は、概略の構成が図1に示した耐摩耗性評価装置を用い、糸6としてはナイロン3号製の釣り糸を用い、上記焼結体を所定位置に治具で固定する方法で行った。また、その他の評価条件としては、荷重4として500gの負荷を与え、糸6の走行速度として70m/分、糸6の走行距離として1000mという条件で試験した。
【0108】
その結果を表2に示す。
【0109】
【表2】

(*を付けた試料は本発明の範囲外の試料である。)
【0110】
表2からわかるように、第2の硬質相が存在しない試料番号1,11は、耐摩耗性試験後において、摩耗部の深さが4.6μm以上と大きかった。一方、ジルコニアまたはアルミナからなる第2の硬質相を含む本発明に係る試料番号2乃至6、8乃至12は、摩耗部の深さが2.4μm以下と小さく、特に第2の硬質相が2質量%以上である試料番号3乃至6、9乃至12は、摩耗部の深さは1μm以下とより小さく、耐摩耗性が良好であった。
【0111】
また、外観については、第2の硬質相が25質量%を超える試料番号6,12はくすんだ金色を示していたが、第2の硬質相が25質量%以下の試料番号2乃至5,8乃至11は、綺麗な金色を示していた。
【0112】
さらに、表2からわかるように、ニッケルを含む結合相が存在しない試料番号13は、焼成温度を1800℃と高くしても気孔率が20%と高く、外観も金色にはならなかった。
【0113】
また、試料番号14は、結合相が4質量%未満であるため、焼成温度を1700℃と高くしても気孔率が2.5%と高く、外観も白っぽくくすんだ金色を示していた。但し、このような気孔率の高い試料番号14を釣糸用の案内部材として用いる場合、それ自体の耐摩耗性が損なわれることはないが、円環体の内周面状に存在する気孔のエッジにより、釣り糸が損傷する危険性がある。
【0114】
また、試料番号18は、気孔率を1%未満と低くすることができるものの、結合相が10質量%を超えているため、白っぽくくすんだ金色を示していた。一方、試料番号15乃至17はニッケルからなる結合相が4乃至10質量%であるため、気孔率は2%以下となって、耐摩耗性も維持することができ、綺麗な金色を示していた。
【0115】
さらに、表2からわかるように、窒素、アルゴン、または真空雰囲気中で焼成した試料番号19乃至23では、摩耗部の深さが1μm以下と小さく、外観も金色を示した。特に、窒素、アルゴンまたは真空度1.33Pa以下の真空雰囲気中で焼成した試料番号21,22の外観は、綺麗な金色であった。一方、大気雰囲気中で焼成した試料番号24と酸素雰囲気で焼成した試料番号25は、いずれも気孔率が高く、緻密な焼結体にはならなかったために、バレル研磨工程中に破損した。
【0116】
さらに、表2からわかるように、成形圧力が49MPa未満である試料番号26では、気孔率が2%を超えており、外観は綺麗な金色ではなかった。このような気孔率の高い試料番号26を釣糸用の案内部材として用いた場合、それ自体の耐摩耗性が損なわれることはないが、円環体の内周面上に存在する気孔のエッジにより、釣り糸が損傷する危険性がある。また、成形圧力が196MPaを超える試料番号31では、気孔率が1%未満と小さく、外観も綺麗な金色を示して良好であるが、これ以上の成形圧力では金型が破損するおそれがある。一方、成形圧力が49乃至196MPaである試料番号27乃至30では、気孔率が1.5%以下と小さい上に、外観も綺麗な金色を示しており、好適である。
【0117】
(実施例2)
実施例1と同様に、窒化チタン粉末(純度99%以上、平均粒径22.3μm)、ニッケル粉末(純度99.5%以上、平均粒径12.8μm)、ジルコニア粉末(純度99.5%以上、平均粒径1.5μm)またはアルミナ粉末(純度99.0%以上、平均粒径1.5μm)をセラミック焼結体(以下、焼結体と称す。)が表3の比率になるように秤量、混合して調合原料とした。また、表3に示すように、五酸化バナジウム、酸化コバルト、三酸化鉄、酸化エルビニウム、炭化チタンの粉末を着色成分として添加した調合原料も準備した。次に、得られた調合原料にイソプロピルアルコール溶液を加え、振動ミルを用いて72時間粉砕混合した後、パラフィンワックス等のバインダーを上記調合原料に対し、3質量%添加し、乾燥させて粉体とした。そして、得られた粉体を表3に示す圧力で加圧成形して、実施例に応じて、所望の円板形状の成形体を作製した。
【0118】
上記成形体を600℃の窒素雰囲気中で脱脂した後、保持時間2時間として、表3に示す焼成温度、雰囲気で焼成した。
【0119】
【表3】

(*を付けた試料は本発明の範囲外の試料である。)
【0120】
表3に示した試料番号32乃至52の一面をダイヤモンドペーストを用いたラップ加工により、算術平均高さRaが0.05乃至0.23μmである表面に仕上げた。そして、JIS Z 8722−2000に準拠して、分光測色計(コニカミノルタ(株)社製のCM−3700d)を用い、光源をCIE標準光源D65、視野角を10°に設定して、上記表面の色調を測定した。
【0121】
なお、算術平均高さRaについては、JIS B 0601−2000に準拠して測定した。
【0122】
また、この色調に関して、20歳代乃至50歳代の各年代の男女5名ずつの計40名のモニターに美的満足感、高級感、精神的安らぎ及び艶やかさの4項目についてアンケート調査を実施し、これらの項目に対して、「感じる」と回答したモニターの割合を表4に示す。
【0123】
【表4】

【0124】
表4からわかるように、明度指数L*60乃至70、クロマティクネス指数a*7.0乃至8.2、クロマティクネス指数b*16.5乃至24.5のいずれかの範囲外となっている試料番号32,35,38,42,44,47は、モニターを充分満足させることはできなかった。
【0125】
一方、明度指数L*が60乃至70であって、クロマティクネス指数a*、b*がそれぞれ7.0乃至8.2,16.5乃至24.5である試料番号33,34,36,37,39乃至41,43,45,46,48乃至52は、殆どのモニターに美的満足感、高級感、精神的安らぎを与えて、充分満足させることができた。
【0126】
特に、明度指数L*が63乃至67であって、クロマティクネス指数a*、クロマティクネス指数b*が、それぞれ7.50乃至7.85、16.5乃至19である試料番号34,36,37,39乃至40,45、48乃至52は、すべてのモニターに美的満足感、高級感、精神的安らぎを与えて、高い評価を得ることができた。
【0127】
さらに、試料番号33,34,36,37,39乃至41,43,45,46,48乃至50,52については、分光測色計(コニカミノルタ(株)社製のCM−3700d)を用い、光源をCIE標準光源D65、視野角を10°に設定して、波長域360乃至740nmにおける表面反射率を測定(JIS Z 8722−2000準拠)した。より具体的には、この波長域における最小の表面反射率Rmin,最大の表面反射率Rmaxを測定し、最小の表面反射率Rminと最大の表面反射率Rmaxとの差ΔR(=Rmax−Rmin)を算出し、その結果を表4に示す。また、これら各試料にCIE標準光源D65及び標準光源Aをそれぞれ照射し、メタメリズム現象を感じて多様な色調を楽しめるかどうか、モニターにアンケート調査を実施した。このアンケート調査に対し、肯定的な回答をしたモニターの割合を表4に示す。
【0128】
表4の結果からわかるように、最大表面反射率と最小表面反射率との差が27.7%未満である試料番号52は、モニターの評価が分かれたが、その差が27.7%以上の試料番号33,34,36,37,39乃至41,43,45,46,48乃至50は、モニターに対して好印象を与えていることがわかる。
【0129】
また、表4からわかるように、表面の算術平均高さRaが0.2μmを超える試料番号52は、モニター全員に美的満足感、高級感及び精神的安らぎを与えることはできたが、艶やかさを全員に感じさせることはできなかった。一方、表面の算術平均高さRaが0.2μm以下の試料番号33,34,36,37,39,40,41,43,45,46,48乃至51は、モニター全員に美的満足感、高級感、精神的安らぎ及び艶やかさを与えることができた。
【0130】
(実施例3)
表3に示した試料番号53乃至59の一面をバレル研磨にて算術平均高さRa0.05乃至0.2μmの表面に加工した後、前記焼結体の気孔率をアルキメデス法にて測定した。また、気孔の孔径については、金属顕微鏡を用い、倍率400倍で表面を写真撮影して、最も大きな気孔の孔径を測定した。外観は目視で確認した。これらの結果を表5に示す。
【0131】
表5において、○が綺麗な金色、△が白っぽくくすんだ金色、×が金色ではない色であることをそれぞれ示している。
【0132】
【表5】

【0133】
表5からわかるように、焼成温度1200乃至1800℃でそれぞれ焼成した試料番号53,54,57乃至59では、気孔率が1%未満、孔径も50μm以下であり、外観も綺麗な金色であった。一方、焼成温度1900℃で焼成した試料番号55では、気孔率が2.5%と高く、釣糸用の案内部材として用いた場合、それ自体の耐摩耗性が損なわれることはなかったが、円環体の内周面上に存在する気孔のエッジにより、釣り糸が損傷した。また、焼成温度1100℃で焼成した試料番号56では、焼結が十分進んでいなかったため、気孔率が3.5%であり、孔径63μmであることから気孔の多い焼結体であり、釣糸用の案内部材として用いた場合、試料番号55と同様に、それ自体耐摩耗性が損なわれることはなかったが、円環体の内周面上に存在する気孔のエッジにより、釣り糸が損傷した。
【0134】
(実施例4)
表3に示す円板体状の試料番号41,60,61の一面をラップ加工にて算術平均高さRaが0.05乃至0.2μmである表面に加工した後、JIS R 1607−1995の圧子圧入法(IF法:Indetation−Fracture法)に準拠して破壊靱性K1cを測定した。
【0135】
また、バレル研磨により円環形状の試料番号41,60,61の表面を算術平均高さRa0.05乃至0.2μmに加工し、それを釣糸用の案内部材として釣具に取り付けた。そして、この釣具を釣り場の岩礁に衝撃的に打ち当てるという実機試験を行った。そして、実機試験後の試料におけるマイクロクラックの発生の有無を金属顕微鏡により倍率100倍で観察した。表6において、×印はマイクロクラックが観察されたものを示しており、○印はマイクロクラックが観察されなかったものを示している。
【0136】
【表6】

(*を付けた試料は本発明の範囲外の試料である。)
【0137】
表6から、破壊靱性K1cが7MPa・m0.5未満である試料番号61は、釣り場の岩礁に衝撃的に打ち当てると、マイクロクラックが発生することが観察されたことから、装飾的価値を長期間維持することは困難であることがわかる。
【0138】
一方、本発明に係る試料番号41,60は、いずれも破壊靱性K1cが7MPa・m0.5以上であり、釣り場の岩礁に衝撃的に打ち当ててもマイクロクラックは観察されなかったため、装飾的価値を長期間維持できることがわかる。
【0139】
(実施例5)
先ず、第1の硬質相としての窒化チタン粉末(純度99%以上、平均粒径22.3μm)、第2の硬質相としてのジルコニア粉末(純度99.5%以上、平均粒径1.5μm)、結合相としてのニッケル粉末(純度99.5%以上、平均粒径12.8μm)の各比率が、79,15,6質量%となるように秤量、混合して調合原料とした。
【0140】
次に、メタノール溶液を加えた調合原料をビッカース硬度Hv16GPa、破壊靱性K1c8.5MPa・m0.5、相対密度97%のTiC製ボールとともに、振動ミルに投入して表7に示す時間で粉砕混合した後、所定のバインダーを上記調合原料に対し、3質量%添加し、噴霧乾燥法により顆粒を得た。そして、得られた顆粒の粉砕粒度をマイクロトラック粒度分布測定装置を用いて測定した後、顆粒を圧力98MPaで加圧成形して、円板体形状の成形体を作製した。
【0141】
そして、上記成形体を600℃の窒素雰囲気中で脱脂した後、保持時間2時間として、1575℃、窒素雰囲気にて焼成した。
【0142】
得られた試料番号62乃至67の一面をダイヤモンドペーストを用いたラップ加工にて鏡面にし、JIS R 1610−2003に準拠して、鏡面のビッカース硬度Hv(以下、硬度という。)測定後、試料を粉砕し、X線回折より炭素固溶量、即ち分子式TiC(1−x)のxの値をJCPDSカードと照合して算出した。
【0143】
【表7】

【0144】
表7より、xが0.01未満である試料番号62は、硬度が12.9GPaとやや低いのに対して、xが0.01〜0.08である試料番号63〜66はいずれも硬度が13.4GPa以上と高く、耐摩耗性も良好である。但し、xが0.08を超える試料番号67は硬度が13.7GPaと高いものの、目視レベルで装飾的価値がやや劣っていることが確認された。
【0145】
(実施例6)
先ず、窒化チタン粉末(純度99%以上、平均粒径22.3μm)、ニッケル粉末(純度99.5%以上、平均粒径12.8μm)、ジルコニア粉末(純度99.5%以上、平均粒径1.5μm)、また一部の試料に炭化クロム粉末を焼結体が表8の比率になるように秤量、混合して調合原料とした。
【0146】
次に、メタノール溶液を加えた調合原料をビッカース硬度Hv16GPa、破壊靱性K1c8.5MPa・m0.5、相対密度97%のTiC製ボールとともに、振動ミルに投入して90時間かけて粉砕混合した後、所定のバインダーを上記調合原料に対して、3質量%添加し、噴霧乾燥法により顆粒を得た。そして、得られた顆粒を圧力98MPaで加圧成形して、円板体状の成形体を作製した。
【0147】
そして、上記成形体を600℃の窒素雰囲気中で脱脂した後、保持時間2時間として、1575℃、窒素雰囲気にて焼成した。
【0148】
得られた試料番号68乃至73の一面をダイヤモンドペーストを用いたラップ加工にて鏡面にした後、それぞれJIS R 1610−2003、JIS R 1607−1995に準拠してビッカース硬度Hv、破壊靱性を測定した。
【0149】
【表8】

【0150】
表8より、炭化クロムが3質量%未満である試料番号68は、硬度、破壊靱性ともやや低くなっているのに対して、炭化クロムが3〜7.4質量%である試料番号69乃至72は、硬度、破壊靱性とも高く、良好である。但し、炭化クロムが7.4質量%を超える試料番号73は硬度、破壊靱性とも高いが、色調が赤味を帯びており、目視レベルで装飾的価値が劣化していることが確認された。
【0151】
(実施例7)
先ず、窒化チタン粉末(純度99%以上、平均粒径22.3μm)、ニッケル粉末(純度99.5%以上、平均粒径12.8μm)、ジルコニア粉末(純度99.5%以上、平均粒径1.5μm)を焼結体が表9の比率になるように秤量、混合して調合原料とした。
【0152】
次に、メタノール溶液を加えた調合原料をビッカース硬度Hv16GPa、破壊靱性K1c8.5MPa・m0.5、相対密度97%のTiC製ボールとともに、振動ミルに投入して90時間かけて粉砕混合した後、所定のバインダーを上記調合原料に対し、3質量%添加し、乾燥させて粉体とした。そして、得られた顆粒を圧力98MPaで加圧成形して、円環体形状の成形体を作製した。
【0153】
そして、上記成形体を600℃の窒素雰囲気中で脱脂した後、保持時間2時間として、窒素雰囲気中、表9に示す温度で焼成した。
【0154】
得られた試料番号74乃至82の一面をバレル研磨にて鏡面にした後、耐摩耗性試験を実施した。
【0155】
耐摩耗性試験については、図1に示した耐摩耗性評価装置を用い、糸6には泥が付着した釣り糸(銀鱗Σ3号)を用い、試料番号74乃至82を所定位置に治具で固定した。また、その他の評価条件としては、荷重4:700gの負荷を与え、糸6の走行速度:60m/分、糸6の走行距離:3000mとして試験した。
【0156】
その結果を表9に示す。
【0157】
【表9】

【0158】
表9より、平均結晶粒径が0.6μm未満である試料番号76及び2.6μmを超える試料番号74,80,82は、いすれも、摩耗部の深さが20μm以上と大きかった。平均結晶粒径が0.6乃至2.6μmである試料番号75乃至81は、摩耗部の深さが16μm以下と小さく、良好であった。
【0159】
なお、第2の硬質相として、アルミナ又はジルコニアのいずれか一方を含む代わりに、アルミナ及びジルコニアの両方を含むものも、上記と同様の結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明に係るセラミック焼結体は、軽量であって、湿式下での耐摩耗性が良好であるとともに、自動外観検査機による検査精度を高められ、装飾的価値を求める所有者に美的満足感、高級感、精神的安らぎ等を与えて、しかも金色の色調を呈するので、ブローチ、ネックレス、メダル、ボタン、壁材、各種キッチン部材等の耐摩耗性部品に適用することができることに加えて、釣糸用の案内部材や時計用ケース、時計用窓部材等の装飾用部材にも適用することができる。
【符号の説明】
【0161】
1 円環体
2 水槽
3 モーター
4 荷重
5 プーリー
6 糸
7 ワイヤー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化チタンからなる第1の硬質相と、
アルミナまたはジルコニアの少なくとも1種からなる第2の硬質相と、
ニッケルからなる結合相と、から構成されるとともに、
表面の算術平均高さ(Ra)が0.2μm以下であり、且つ、気孔率が3.7%以下であることを特徴とするセラミック焼結体。
【請求項2】
上記第2の硬質相を2乃至25質量%、結合相を4乃至10質量%含有するとともに、残部が第1の硬質相であることを特徴とする、請求項1に記載のセラミック焼結体。
【請求項3】
炭化クロムを3乃至7.4質量%含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のセラミック焼結体。
【請求項4】
上記第1の硬質相および第2の硬質相の平均粒径が、0.6乃至2.6μmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のセラミック焼結体。
【請求項5】
CIE1976空間L*a*b*の表色系で、表面の明度指数L*が60乃至70であり、表面のクロマティクネス指数a*、b*がそれぞれ7.0乃至8.2,16.5乃至24.5であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載のセラミック焼結体。
【請求項6】
気孔率が2%以下であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載のセラミック焼結体。
【請求項7】
表面の気孔の孔径が50μm以下であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載のセラミック焼結体。
【請求項8】
破壊靱性(K1c)が7MPa・m0.5以上であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載のセラミック焼結体。
【請求項9】
請求項1に記載のセラミック焼結体の製造方法であって、平均粒径が15乃至30μmの窒化チタンの粉末、平均粒径が1乃至2μmのアルミナまたはジルコニアの少なくとも1種からなる粉末及び平均粒径が5乃至20μmのニッケルの粉末を混合して調合原料を作製する工程と、
該調合原料を加圧成形して所望形状の成形体を作製する工程と、
窒素及び不活性ガスの中から選択される少なくとも1種のガス雰囲気中あるいは真空中で該成形体を加熱焼結して焼結体を作製する工程と、
を具備することを特徴とするセラミック焼結体の製造方法。
【請求項10】
上記調合原料の粉砕粒度(D50)が0.5μm以下であることを特徴とする、請求項9に記載のセラミック焼結体の製造方法。
【請求項11】
成形圧力が49乃至196MPaであることを特徴とする、請求項9または10に記載のセラミック焼結体の製造方法。
【請求項12】
真空中での加熱焼結は、1.33Pa以下の真空度で行うことを特徴とする、請求項9乃至11のいずれかに記載のセラミック焼結体の製造方法。
【請求項13】
加熱焼結の温度が、1200乃至1800℃であることを特徴とする、請求項9乃至12のいずれかに記載のセラミック焼結体の製造方法。
【請求項14】
請求項1乃至8のいずれかに記載のセラミック焼結体からなることを特徴とする装飾用部材。

【図1】
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【公開番号】特開2012−62574(P2012−62574A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224220(P2011−224220)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【分割の表示】特願2006−511556(P2006−511556)の分割
【原出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】