説明

セラミドキナーゼループ

配列番号1の単離ポリヌクレオチド、例えば配列番号1のポリヌクレオチドによりコード化される配列番号2の単離ポリペプチド、かかるポリヌクレオチドを含むベクター、かかるポリヌクレオチドを含む発現系、かかる発現系を含む宿主細胞、診断用試薬としてのかかるポリペプチドまたはポリヌクレオチドの使用、かかるポリペプチドまたはポリヌクレオチドの使用によりセラミドキナーゼのアゴニストまたはアンタゴニストを同定するためのスクリーニングアッセイおよび方法、ならびにかかるスクリーニングおよびそれらの使用により得られたセラミドキナーゼのアゴニストまたはアンタゴニスト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミドキナーゼ配列内のループに関する。
【背景技術】
【0002】
セラミドは、スフィンゴ脂質である。スフィンゴ脂質は、細胞膜の主な構成成分の1つであると考えられている。最近の証拠は、それらの構造的役割よりも、それらが生物学的に活性な脂質として働き、グリセロリン脂質で起こることと似た態様でシグナル伝達に影響を与えることを示している。
【0003】
スフィンゴ脂質代謝産物の生理学的活性は、例えばアポトーシスの誘導および細胞増殖の刺激を含み、スフィンゴ脂質を代謝する酵素は、様々な疾患の誘導に関与すると想定されることが示唆されている。
【0004】
例えば、下記のことが報告されている。
−細胞メカニズムを制御するセラミドは、上記の酵素反応のレギュレーターであることが示唆されており、セラミドは、TNF−αおよびIL−1βのような炎症性サイトカインのセカンドメッセンジャーとして働き、ホスホリパーゼAのようなアラキドン酸経路を活性化することが報告されている。故に、セラミドは、炎症性障害における増悪因子と見なされ得る;
−セラミドは、CD4T細胞のアポトーシスを伴う減少およびHIV罹患患者における脳細胞のHIV感染をもたらす;
−Begum N. et al, Eur.J.Biochem, 238, 214−220 (1996)およびHotamsligil, G.S. et al, Science, 271, 665−668 (1996)において、TNF−αが、トリガーとして2型真性糖尿病、および肥満においてインスリン耐性をもたらし得ること、ならびにセラミドが、TNF−αの下方制御に関与することが報告されている;
−セラミドは、リポ多糖類によってもたらされる敗血症を誘発する;
−セラミドの増加は、アテローム性動脈硬化性損傷を誘発するLDLの凝集反応においてスフィンゴミエリナーゼを活性化する;
−セラミドは、放射線治療および化学療法において癌細胞のアポトーシスを促進する;
−セラミド制御は、白血病細胞の薬剤耐性に関与する:セラミドレベルの減少は、白血病における化学療法剤耐性に関与する。
【0005】
また、セラミドキナーゼ(CerK)の作用により、例えばN−ヘキサノイル−、N−オクタノイル−、N−パルミトイル−D−エリスロ−スフィンゴシンのようなN−アシル化−D−エリスロ−スフィンゴシンを含む様々なセラミド誘導体の、例えば1位のヒドロキシル基のリン酸化により、セラミドから生成されるセラミド−1−ホスフェート(Cer−1−P)は、下記の生理学的活性を示す。例えば
−カルシウム刺激によりセラミドキナーゼによって生成されるCer−1−Pは、脳シナプスからの神経伝達物質の放出を制御し、故に、セラミドキナーゼの作用の調節は、例えばアルツハイマー病を含む様々な神経障害の処置に有効であると期待される;
−Cer−1−Pは、酸性スフィンゴミエリナーゼの阻害により様々な正常なセラミド活性を阻害するだろうと考えられ、故に、Cer−1−Pは、様々な障害、例えば慢性関節炎を含む炎症性障害、HIV感染、トリガーとしてインスリン耐性によって引き起こされる2型真性糖尿病、肥満、敗血症およびアテローム性動脈硬化症を調節する、例えば抑制すると期待される;すなわち、セラミドキナーゼの活性化により、かかる疾患を処置し得ると考えられている;
−Cer−1−Pは、主として細胞内で作用し、そこで小胞輸送を促進すると考えられている。それは食作用に関与し、故に、炎症過程において重要な役割を果たすと期待され得る;
−また、細胞外に添加したCer−1−Pのマイトジェン活性が示されている。故に、このスフィンゴ脂質代謝産物は、癌および乾癬を含むが、それらに限定されない細胞増殖障害に関係し得る。
−Cer−1−Pは、サイトカイン−およびカルシウムイオノフォア−誘導アラキドン酸遊離を仲介することが報告されており、C−1−Pは、細胞質のPLA2を直接活性化し得る;このことはさらに、炎症性障害におけるCer−1−Pの関与の可能性を証明する;
−Cer−1−Pレベルはまた、視覚系の病態生理学(例えば網膜色素変性症の罹りやすさ)に関係し得る。
【発明の開示】
【0006】
セラミドキナーゼ(CerK)は、セラミド代謝に重要な役割を果たす。
驚くことに、今回、セラミドキナーゼのN末端ドメインが、疑いなく、膜結合および立体構造の安定性に必要なプレクストリン相同(PH)ドメインに相当し得ること、および例えば下記の結果から、同定されたβ6およびβ7鎖のループ相互作用がかかる過程に重要であることが見出された。
【0007】
CerK PHドメインの電荷アミノ酸残基は、ループβ1−β2、β3−β4、β5−β6、およびβ6−β7に提示される。全ての残基を、単独または組み合わせて、各ループの重要性を調べるために変異導入した。最も重要な残基が、ループβ6−β7上のクラスターに発見される。このループは、最も周知のPHドメインのそれらと比較した時ユニークである。それは高度に正電荷であり、電荷残基によって囲まれる疎水性残基を提示する。100個の無作為に作製されたループモデルの分析は、低い二次構造含量を明らかにするが、少なくとも2個の可能性のあるパターン:疎水性残基は、該ループのアンカーとして作用し得るか、または多くの電荷残基間のバッファとして作用し得る、が示唆される。
【0008】
その役割がβ6−β7ループの変異によって分析されるCerKのPHドメインは、酵素の局在化および触媒活性の両方に作用する。故に、CerKのPHドメインは、アロステリックな調節因子として作用する。また、膜結合能力を低下させた全ての変異が低下した活性を示すことから、CerKの膜に結合する能力と活性化する能力との直接的相関関係が明らかにされている。しかしながら、ATP結合部位G198D変異体のようないくつかの無傷のCerK変異体がWT酵素と同じく局在するため、逆は真ではないと考えられる。結果として、触媒能が膜結合の必要条件ではないことが明らかであると考えられる。機能的PHドメインの不存在において、トライトン抽出可能な膜成分からの回収が減ることが示され得る。
【0009】
1つの局面において、本発明は、配列番号2のポリペプチドをコード化する単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0010】
配列番号2のポリペプチドは、配列番号1のポリヌクレオチドによりコード化され得る。
【0011】
他の局面において、本発明は、配列番号1の単離ポリヌクレオチド;および、
配列番号1のポリヌクレオチドによりコード化される単離ポリペプチドを提供する。
【0012】
本発明により提供されるポリヌクレオチドは、本明細書中、“本発明のポリヌクレオチド”とも記載される。
本発明により提供されるポリペプチドは、本明細書中、“本発明のポリペプチド”とも記載される。
【0013】
他の局面において、本発明は、配列番号2の単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0014】
配列番号2のポリペプチドのアミノ酸配列は、全体で537アミノ酸を含む、The Journal of Biological Chemistry , Vol. 277, No. 26, pp. 23294−23300 (2002)に記載のセラミドキナーゼ(CerK)配列のアミノ酸配列の一部である。本発明のポリペプチドから構成されるループは、CerK配列中、CerK配列内のアミノ酸88位と101位の間に位置する。
【0015】
本明細書で用いる“ポリヌクレオチド”は、一本鎖および二本鎖RNA、ならびに一本鎖および二本鎖領域の混合物であるRNAを限定することなく含む、非修飾RNAもしくはDNA、または修飾RNAもしくはDNAであり得る、何れかのポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドを含む。
【0016】
本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1のポリヌクレオチドおよび配列番号1のアレル変異体を含む。本発明のポリヌクレオチドは、本発明のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列に、例えばストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む。“ストリンジェントな条件”とは、ハイブリダイゼーションが、本発明のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列と、ハイブリダイズする対応するポリヌクレオチドとの間に少なくとも80%、例えば90%、例えば95%、97%または99%の同一性がある場合に限り起こり得ることを含む。
【0017】
本発明のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、例えば遺伝コードの冗長(縮重)の結果、配列番号1とは異なるが、本発明のポリペプチドをコードするか、または例えば配列番号2のアミノ酸配列を有する対応する本発明のポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性、例えば75%ないし100%、例えば85%ないし100%、例えば(約)78%、85%、93%または100%の同一性を有するアミノ酸配列の本発明のポリペプチドをコードする配列を含む;該同一性は、n=x−(xa.y)〔式中、nは、アミノ酸変化の数であり、Xは、該対応するアミノ酸配列中のアミノ酸の総数であり、yは、100で割った同一性パーセントである。〕により計算される。
【0018】
本発明のポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列のポリペプチドを含み、例えば配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性、例えば75%ないし100%、例えば85%ないし100%、例えば(約)78%、85%、93%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む;該同一性は、上記の通りに計算される。配列番号2と少なくとも75%ないし100%までの同一性を有するアミノ酸配列が、本発明のポリペプチドと同程度の、好ましくは同じ生物学的活性を有する。
【0019】
本発明のポリペプチドは、“成熟”ポリペプチドの形態であり得るか、またはより大きなポリペプチドの一部、例えば融合タンパク質形態であり得る;例えば、分泌もしくはリーダー配列、プロ配列、多数のヒスチジン残基のような精製目的の配列、または組換え作製中の安定化のために本発明のポリペプチド中に付加される配列を含む付加アミノ酸配列を含むことが都合よいであろう。
【0020】
本発明のポリペプチドはまた、本発明のポリペプチドのポリペプチド断片を含む。かかるポリペプチド断片は、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列と、全部ではないが一部分が完全に同じアミノ酸配列を有するポリペプチドである。かかるポリペプチド断片は、“独立構造(free−standing)”であり得るか、またはかかるポリペプチド断片が、最も好ましくは単一の連続領域として、部分または領域を形成するより大きなポリペプチドの一部分であり得る。好ましくは、かかるポリペプチド断片は、本発明のポリペプチドの生物学的活性を有する。
【0021】
本発明の定義したポリペプチド(断片)の変異体はまた、本発明の一部を形成する。好ましい変異体は、保存的アミノ酸置換により参照配列とは異なるものであり、例えば同じ特性の別の残基で置換するものである。典型的には、かかる置換は、AlaとVal、および塩基性残基であるLysとArgである。特に好ましいのは、1ないし2個のアミノ酸が何れかの組合せで置換、欠失、または付加される変異体である。
【0022】
本発明のポリペプチドは、単離した天然に生じる本発明のポリペプチド、組換え的に作製したポリペプチド、合成的に作製したポリペプチド、またはこれらの方法の組合せにより作製したポリペプチドを含む。本発明のポリペプチドまたはその断片は、適当な方法、例えば常套方法、または本明細書に記載の方法で作製され得る。本明細書中他に記載がなければ、“単離した”は、“共存物質から分離した”、例えば天然状態から“人間によって変化した”という意味を含む。
【0023】
本発明のポリヌクレオチドは、対応する本発明のポリペプチドの組換え製品に用いられ得る。本発明のポリヌクレオチドが、本発明のポリペプチドの組換え製品に用いられるとき、該ポリヌクレオチド配列は、それ自体で成熟ポリペプチドのコーディング配列;リーダーもしくは分泌配列、プレ−もしくはプロ−もしくはプレプロ−タンパク質配列、または他の融合ペプチド部分をコードするもののような、他のコーディング配列を含むリーディングフレーム中の成熟ポリペプチドのコーディング配列を含み得る。例えば、融合ポリペプチドの精製を容易にするマーカー配列が、コード化され得る。マーカー配列は、例えば常套のマーカー配列、例えばpQEベクター(Qiagen, Inc.)にて供され、Gentz et al., Proc Natl Acad Sci USA (1989)86:821−824に記載されるヘキサ−ヒスチジンペプチド、またはHAtagを含む、適当なマーカー配列であり得る。本発明の何れかのポリヌクレオチドはまた、非コーディング5’および3’配列、例えば転写配列、非翻訳配列、スプライシングおよびポリアデニル化シグナル、リボソーム結合部位、ならびにmRNAを安定にする配列を含み得る。
【0024】
本発明のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列と同一または十分に同一であるヌクレオチド配列は、セラミドキナーゼをコード化する完全長cDNAおよび遺伝子クローンを単離するため;ならびに、例えば、本発明のポリヌクレオチドと高い配列類似性を有する他のポリヌクレオチド(ヒト以外の種由来のホモログおよびオーソログをコード化するポリヌクレオチドを含む)のcDNAおよび遺伝子クローンを単離するために、cDNAおよびゲノムDNA用のハイブリダイゼーションプローブとして用い得る。例えばストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、対応するポリヌクレオチド配列を有する標識プローブ、またはそのスプライス変異体もしくはその断片の標識プローブを用いて適当なライブラリーをスクリーニングする工程、および該ポリヌクレオチド配列を含む完全長cDNAおよび遺伝子クローンを単離する工程を含む、何らかの適当なハイブリダイゼーション技術を用いることができる。例えばストリンジェントなハイブリダイゼーション技術はよく知られている。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、例えば上記に記載の通りであるか、あるいは例えば、ホルムアミド、SSC、リン酸ナトリウム、デンハルト溶液、デキストラン、サケ精子DNAを含む溶液、例えば50%ホルムアミド、5×SSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%硫酸デキストランおよび20マイクログラム/mlの変性し、せん断したサケ精子DNAを含む溶液のような適当な溶液中、約40℃にて一晩インキュベーションし、次いで約65℃にて0.1×SSC中でフィルターを洗浄する条件である。本明細書に記載のセラミドキナーゼをコード化するポリヌクレオチドをかかる方法で単離するとき、本発明のポリヌクレオチドは、例えば常套方法のような適当な方法の使用により得られる。
【0025】
他の局面において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0026】
本発明のポリヌクレオチドを含むベクターは、適当に、例えば適当なベクターを用いて、例えば常套方法に従い作製され得る。該適当なベクターとは、適当に、例えば常套方法に従い提供され得る。本発明のポリヌクレオチドを含むベクターは、例えば宿主細胞中、例えば適合性宿主細胞中で組換え的に本発明のポリヌクレオチドをコード化するポリペプチドを作製し得る発現系を得るのに有用であり得る。例えば、本発明のポリペプチドの組換え作製のため、宿主細胞を、本発明のポリペプチド(断片)を発現させるために、例えば、本発明のポリヌクレオチド、例えばその一部分を含むベクターを用いて宿主細胞の発現系に挿入することにより遺伝子組換え的に作製することができる。無細胞翻訳系もまた、例えば常套方法に従い、例えば本発明のDNA構築物由来のRNAを用いて、本発明のポリヌクレオチドを作製するために用いることができる。
【0027】
他の局面において、本発明は、本発明のポリヌクレオチド、例えば天然環境から単離したDNAまたはRNA分子、例えば前もって単離した本発明のポリヌクレオチドを含む発現系であって、該発現系またはその一部が、該発現系またはその一部が適合性宿主細胞中に存在するとき、本発明のポリペプチドを作製し得る発現系を提供する。
【0028】
他の局面において、本発明は下記のものを提供する。
−例えば、単離した、本発明の発現系を含む宿主細胞;
−培養中、本発明のポリペプチドの作製に十分な条件下で本発明の発現系を含む宿主細胞を培養し、培養物から本発明のポリペプチドを回収することを含む、本発明のポリペプチドの作製方法;
−宿主細胞が、適当な培養条件下で本発明のポリペプチドを作製するように、本発明の発現系を用いて宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトすることを含む、本発明のポリペプチドを作製する組換え宿主細胞の作製方法;および、
−適当な培養条件下で宿主細胞が本発明のポリペプチドを作製するように、本発明の発現系を用いて宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトすることにより作製される組換え宿主細胞。
【0029】
組換え体作製のため、宿主細胞を、発現系またはその一部に本発明の遺伝子を挿入して遺伝子組換え的に作製し得る。宿主細胞へのポリヌクレオチドの導入は、適当に、例えば常套方法に従い、例えばリン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン介在トランスフェクション、トランスベクション、マイクロインジェクション、陽イオン性脂質介在トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質転換、スクレイプローディング(scrape loading)、バリスティック導入(ballistic introduction)または感染のような、例えばDavis et al., BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY (1986); Sambrook et al., MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)に記載の通りに、達成し得る。宿主細胞は容易に見出され得る。適当な宿主細胞の例には、例えば、連鎖球菌、ブドウ球菌、大腸菌細胞、放線菌細胞および枯草菌細胞のような細菌細胞;酵母細胞およびアスペルギルス細胞のような真菌細胞;ショウジョウバエS2およびスポドプテラSf9細胞のような昆虫細胞;CHO、COS、HeLa、C127、CCL39、3T3、BHK、HEK293およびボウズ黒色腫細胞のような単離動物細胞;ならびに、植物細胞が含まれる。
【0030】
適当な発現系には、例えば、染色体、エピソームおよびウイルス由来の系、例えば、細菌プラスミド、バクテリオファージ、トランスポゾン、酵母エピソーム、挿入因子、酵母染色体因子、例えばバキュロウイルス、パポバウイルス、SV40、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、家禽ポックスウイルス、仮性狂犬病ウイルスおよびレトロウイルスのようなウイルス由来のベクター、ならびにその組合せに由来するベクター、例えばコスミドおよびファージミドのようなプラスミドおよびバクテリオファージ遺伝子因子由来のベクターが含まれる。発現系は、発現を調節し、ならびに誘導する制御領域を含み得る。一般的に、何らかの系またはベクターは、用いられ得る宿主中でポリペプチドを作製するためにポリヌクレオチドを維持、伝播または発現するのに適する。適当なヌクレオチド配列は、適当に、例えば常套方法に従い、例えばSambrook et al., MOLECULAR CLONING A LABORATORY MANUAL(上記)の通りに、発現系に挿入され得る。
【0031】
本発明のポリペプチドは、適当に、例えば界面活性剤抽出、超遠心分離、硫酸アンモニウムもしくはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンもしくは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、レクチンクロマトグラフィー、例えば高速液体クロマトグラフィーを含む常套方法に従い、組換え細胞培養物から回収および精製され得る。本発明のポリペプチドが、単離および/または精製中に変性するとき、活性な立体構造の再構築、例えば変性した本発明のポリペプチドのリフォールディングは、適当に、例えば常套方法に従い行われ得る。
【0032】
本発明のポリヌクレオチドまたは本発明のポリペプチドは、研究用反応剤として、ならびに動物およびヒトの疾患の処置剤および診断剤の発見ツールとして用いられ得る。
【0033】
他の局面において、本発明は、診断用試薬としての本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの使用を提供する。
【0034】
本発明はまた、診断用試薬としての本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの使用を提供する。機能障害と関係のある本発明のポリヌクレオチド(ポリペプチド)の変異形の検出は、本発明のポリヌクレオチドの対応する変異形の減少した発現、過剰発現または変化した発現に起因する疾患または疾患の罹りやすさの診断を付加または明確にし得る、例えば診断用アッセイにおける診断用ツールを提供し得る。変異形において、アミノ酸88位と101位の間のCerKをコード化するポリヌクレオチドの対応する位置に個々に起こる変異は、例えば常套方法と同様に、DNAレベルで検出することができる。診断のための核酸は、血液、尿、唾液、組織生検または解剖検体由来のような対象細胞から得ることができる。ゲノムDNAは、検出に直接用い得るか、またはPCRもしくは他の増幅技術を用いて分析前に酵素的に増幅し得る。RNAまたはcDNAもまた、同様の分析に用いることができる。欠失および挿入は、通常の遺伝子型と比較して増幅産物のサイズの変化により検出し得る。点変異は、増幅したDNAと本発明の標識したヌクレオチド配列をハイブリダイズすることにより同定し得る。完全に一致した配列は、リボヌクレアーゼ(RNase)消化によるか、または融解温度の違いによりミスマッチの二本鎖と区別できる。DNA配列の相違はまた、変性剤の有無におけるゲル中のDNA断片の電気泳動移動の変化によるか、または例えばMyers et al, Science (1985) 230:1242に記載の通りの直接的DNA配列決定により検出できる。特定の位置での配列変化はまた、RNaseおよびS1保護のようなヌクレアーゼ保護アッセイによるか、または例えばCotton et al, Proc Natl Acad Sci USA (1985) 85: 4397−4401に記載の通りの化学的切断方法により明らかにされ得る。本発明のヌクレオチド配列またはその断片を含むオリゴヌクレオチドプローブのアレイを、例えば遺伝子変異の効率的スクリーニングを行うために構築することができる。例えばアレイ技術方法は、例えばM. Chee et al, Science, Vol 274, pp 610−613,1996に記載の、遺伝子発現、遺伝子的つながり、および遺伝的多様性を含む分子遺伝学における様々な疑問に取り組むために用いられ得る。
【0035】
本発明のポリペプチドは、いくつかの局面において、CerK活性により仲介される障害のような様々な障害に対する薬剤の標的を提供する。
【0036】
CerK活性により仲介され、CerKの調節剤で成功裏に処置される傾向がある障害には、CerKの活性が、原因または一因である障害、例えばセラミドキナーゼのセラミドへの結合と関係する、例えばセラミドキナーゼによるセラミドのリン酸化を遅延または促進することに関係する障害が含まれる。
【0037】
CerK活性により仲介される傾向がある障害には、例えば下記のものが含まれる。
−例えば(慢性)炎症性障害を含む炎症と関係する障害、例えば気管支炎を含む気管支の炎症と関係する障害、例えば子宮頚炎を含む頚部障害、例えば結膜炎を含む結膜障害、例えば食道炎を含む食道障害、例えば心筋炎を含む心筋障害、例えば直腸炎を含む直腸障害、例えば強膜炎を含む強膜障害、歯茎の障害、骨の障害、肺炎症(肺胞炎)、気道障害、例えば気管支喘息のような喘息、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、接触過敏症のような炎症性皮膚障害、アトピー性皮膚炎;線維症(例えば、肺線維症)、脳炎、炎症性骨溶解症、
−免疫系の状態と関係する障害、
例えばグレイブス疾患を含む自己免疫性障害のような免疫障害、ハシモト疾患(慢性甲状腺炎)、多発性硬化症、リウマチ性関節炎、関節炎、痛風、骨関節症、強皮症、狼瘡症候群、体系的紅斑性狼瘡、シェーグレン症候群、乾癬、クローン病を含む炎症性腸疾患、大腸炎、例えば潰瘍性大腸炎;敗血症、敗血症性ショック、自己免疫性溶血性貧血(AHA)、自己抗体誘発性蕁麻疹、天疱瘡、腎炎、糸球体腎炎、グットパスチャー症候群、強直性脊椎炎、ライター症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎、サイトカイン介在毒性、インターロイキン−2毒性、円形脱毛症、ブドウ膜炎、扁平苔癬、類天疱瘡、重症筋無力症、I型真性糖尿病、早期閉経のような免疫介在不妊症、多内分泌線損傷(polyglandular failure)、甲状腺機能低下症、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、腫瘍随伴性天疱瘡、B型肝炎ウイルス(HBV)およびC型肝炎ウイルス(HCV)と関係するものを含む自己免疫性肝炎、アジソン疾患、乾癬のような自己免疫性皮膚疾患、疱疹状皮膚炎、表皮水疱症、線状IgA水疱症、後天性表皮水疱症、小児慢性水疱疾患、悪性貧血、溶血性貧血、白斑症、I型、II型およびIII型自己免疫性多内分泌腺症候群、自己免疫性副甲状腺機能低下、自己免疫性下垂体炎、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性精巣炎、類妊娠性天疱瘡、瘢痕性類天疱瘡、混合性本態性クリオグロブリン血症、免疫性血小板減少性紫斑病、グッドパスチャー症候群、自己免疫性好中球減少症、イートン・ランバート無力症候群、スティッフマン症候群、脳脊髄炎、急性播種性脳脊髄炎、ギランバレー症候群、小脳変性、網膜症、原発性胆汁性肝硬変、硬化性胆管炎、自己免疫性肝炎、グルテン過敏性腸疾患、反応性関節症(関節症(arthritides))、多発性筋炎/皮膚筋炎、混合性結合組織疾患、ベーチェット症候群、結節性多発性動脈炎、アレルギー性血管炎(anguitis)および肉芽腫症(チャーグ・ストラウス疾患)、多発性重複症候群、(過敏性)脈管炎、ウェゲナー肉芽腫症、側頭動脈炎、川崎疾患、サルコイドーシス、寒冷症、セリアック疾患、
【0038】
−サイトカイン介在毒性と関係する障害、
例えばインターロイキン−2毒性、
−骨と関係する障害
例えば骨粗鬆症、骨関節症、
−脳および神経と関係する障害、
−例えば中枢神経系の障害ならびに末梢神経系の障害を含む神経変性障害、例えば中枢神経系感染、脳損傷、脳血管障害およびそれらの結果を含むCNS障害、パーキンソン病、大脳皮質基底核変性症、運動ニューロン疾患、ALSを含む認知症、多発性硬化症、トラウマの外傷性および炎症性影響を含む外傷性障害、外傷性脳傷害、卒中、卒中後、外傷後脳傷害、
小血管脳血管疾患、摂食障害;例えばアルツハイマー病、血管性認知症、レヴィー小体認知症、前頭側頭骨性認知症および17番染色体と関係するパーキンソン症候群を含むさらなる認知症、ピック疾患、進行性核麻痺、大脳皮質基底核変性症、ハンチントン病、視床変性、クロイツフェルト・ヤコブ認知症、HIV認知症、認知症併発統合失調症、コルサコフ精神病を含む前頭側頭骨性認知症、
中度認知障害、加齢による記憶障害、加齢関連認知低下、血管の認知障害,注意欠陥障害、注意欠陥過活動性障害および学習障害を有する小児の記憶障害のような認知関連障害;視床下部・下垂体・副腎系軸と関係する状態、
−神経障害、例えばニューロン移動障害、低血圧症(低下した筋緊張)、筋力低下、発作、発育遅延(身体的または精神的な発達障害)、精神遅滞、成長障害、採餌困難、リンパ浮腫、小頭症、頭部および脳を侵す症状、運動機能障害;
−目と関係する障害、
例えば、ぶどう膜網膜炎、ガラス体網膜症、角膜疾患、虹彩炎、虹彩毛様体炎、白内障、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症、結膜炎、角膜炎、
−胃腸管と関係する障害
例えば、大腸炎、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、消化性潰瘍、胃炎、食道炎、
【0039】
−心臓および血管状態と関係する障害
例えば、心血管障害、例えば心不全、心筋梗塞、心肥大、例えば高排出および低排出、急性および慢性、右側または左側、収縮期または拡張期、根本原因に非依存のような心臓ポンプ機能障害の全ての形態を含む心不全;心筋梗塞(MI)、MI予防(一次および二次予防)、MIの急性処置、合併症対策;心臓障害、増殖性脈官障害、脈管炎、結節性多発性動脈炎、虚血の結果の炎症、虚血性心臓疾患、心筋梗塞、卒中、抹消血管疾患、肺高血圧、
例えば心筋虚血を含む虚血性障害、例えば安定狭心症、不安定狭心症、狭心症、気管支炎;心房性および心室性不整脈の全ての形態のような無症候性不整脈、心房性頻脈、心房粗動、心房細動、房室リエントリー性頻拍、早期興奮症候群、心室頻拍、心室粗動、心室細動、不整脈の除脈形態;不整脈、慢性閉塞性肺疾患、
収縮期または拡張期の高血圧のような高血圧、例えば原発性ならびに全ての種類の続発性動脈性高血圧、腎性、内分泌性、神経性高血圧などのような高血圧性血管障害を含む、原発性および続発性高血圧;
例えばアテローム性動脈硬化症、慢性閉塞性抹消動脈疾患(PAOD)、急性動脈血栓症および塞栓症を含む、動脈および/または静脈還流が減少し、結果として血液供給と組織の酸素需要との不均衡となる抹消血管障害、炎症性血管障害、レイノー現象および静脈障害;アテローム性動脈硬化症、例えば血管壁の内膜への平滑筋細胞および単球/マクロファージ炎症性細胞の両方の細胞の蓄積を含む、血管壁が再構築される疾患;
低血圧、
−肝臓および腎臓と関係する障害、
例えば腎性(renal)障害、腎臓(kidney)障害、例えば急性腎臓損傷、急性腎性疾患、肝臓障害、例えば硬変、肝炎、肝臓損傷、胆汁うっ滞、急性/慢性肝炎、硬化性胆管炎、原発性胆汁性肝硬変、急性/慢性間質性/糸球体腎炎、肉芽腫性疾患、
【0040】
−胃または膵臓状態と関係する障害
例えば、胃障害、例えば胃潰瘍、消化器潰瘍、膵臓障害、膵臓疲労、
−呼吸管および肺と関係する障害
例えば、肺障害、慢性肺疾患、急性(成人)呼吸窮迫症候群(ARDS)、喘息、喘息気管支炎、気管支拡張症、びまん性間質性肺障害、塵肺症、線維化性肺胞炎、肺線維症、
−皮膚および結合組織状態と関係する障害
例えば、湿疹、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、乾癬、アクネ、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、チャーグストラウス症候群、日焼け、皮膚癌、創傷治癒、蕁麻疹、中毒性表皮壊死症、
−アレルギー性状態と関係する障害
例えば、遅延型過敏症、アレルギー性結膜炎、薬物アレルギー、鼻炎、アレルギー性鼻炎、脈管炎、接触性皮膚炎;
−血管形成と関係する障害
例えば、血液供給を回復するのに不十分な能力、変性した血管形成により特徴付けられる障害、腫瘍関連血管形成、
−癌および細胞過剰増殖と関係する障害
例えば、前癌状態、過増殖性障害、原発性または転移性のどちらかの癌、頚部および転移癌、制御されていない細胞増殖を原因とする癌、固形腫瘍、例えば非小細胞肺癌、子宮頸癌を含むWO02066019に記載の癌;腫瘍増殖、リンパ腫、B細胞またはT細胞リンパ腫、良性腫瘍、良性増殖性障害、腎臓癌腫、食道癌、胃癌、腎臓癌腫、膀胱癌、乳癌、結腸癌、肺癌、黒色腫、鼻咽頭癌、骨癌腫、卵巣癌、子宮癌;前立腺癌、皮膚癌、白血病、腫瘍血管新生、血管腫、骨髄異形成障害、正常な死誘導シグナルに非応答(不死化)、増加した細胞の運動性および侵襲性、遺伝的不安定性、無調節な遺伝子発現、(神経)内分泌癌(カルチノイド)、血液癌、リンパ球性白血病、神経芽腫;軟部組織癌、転移の予防
【0041】
−糖尿病状態と関係する障害
例えば、糖尿病(I型糖尿病、II型糖尿病)、糖尿病網膜症、インスリン依存性糖尿病、真性糖尿病、妊娠性糖尿病、インスリン分泌不全、肥満;
−子宮内膜症、精巣機能障害と関係する障害
−例えば慢性感染状態と関係する、感染性障害と関係する障害
例えば、細菌性障害、中耳炎、ライム疾患、甲状腺炎、ウイルス性障害、寄生性障害、真菌性障害、マラリア、例えばマラリア貧血、敗血症、重度敗血症、敗血症性ショック、例えば内毒素誘発性敗血症性ショック、外毒素誘発性毒素ショック、伝染性(真の敗血症性)ショック、グラム陰性菌により引き起こされる敗血症性ショック、骨盤炎症性疾患、エイズ、腸炎、肺炎、髄膜炎、脳炎、
−重症筋無力症と関係する障害
−腎炎と関係する障害
例えば、糸球体腎炎、間質性腎炎、ウェゲナー肉芽腫症、線維症、
−疼痛と関係する障害
例えばCNS障害と関係する障害、例えば、多発性硬化症、脊髄傷害、坐骨神経痛、外科手術の予後不良、外傷性脳傷害、癲癇、パーキンソン病、卒中後の障害、ならびに脳および脊髄の血管病変(例えば、閉塞、出血、血管奇形);
非中枢神経障害性疼痛、例えば乳房切除術後の疼痛と関係する痛み、幻肢痛、反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)、三叉神経性神経根障害、外科手術後の痛み、HIV/エイズ関連疼痛、癌性疼痛、代謝性神経障害(例えば、糖尿病性神経障害、結合組織疾患に伴う脈管性神経障害)、例えば肺の癌腫、または白血病、またはリンパ腫、または前立腺、結腸もしくは胃の癌腫と関係する腫瘍随伴性多発性神経障害、三叉神経痛、頭蓋神経痛、およびヘルペス後神経痛;
【0042】
末梢神経損傷と関係する疼痛、中枢神経痛(すなわち、脳虚血による)および様々な慢性疼痛、すなわち腰痛、背痛(腰痛)、炎症性および/またはリウマチ性疼痛;
頭痛(例えば、前兆を伴う偏頭痛、前兆なしの偏頭痛、および他の偏頭痛障害)、一過性および慢性の緊張性頭痛、緊張性様頭痛、群発性頭痛、および慢性発作性偏頭痛;
内臓痛、例えば膵臓炎、腸膀胱炎、月経困難症、過敏性腸症候群、クローン病、胆道仙痛、尿管疝痛、心筋梗塞、および骨盤腔の疼痛症候群、例えば、外陰部痛、精巣痛、尿道症候群15および前立腺痛;
急性疼痛、例えば術後疼痛、および外傷後疼痛;
−リウマチ性障害と関係する障害
例えば、関節炎、リウマチ性関節炎、骨関節症、乾癬性関節炎、結晶性関節症、痛風、偽痛風、ピロリン酸カルシウム沈着疾患、狼瘡症候群、全身性エリテマトーデス、硬化症、強皮症、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、脊椎関節症、全身性硬化症、反応性関節炎、ライター症候群、強直性脊椎炎、多発性筋炎
−サルコイドーシスと関係する障害
−移植と関係する障害
例えば、移植による拒絶反応および移植後の他の障害、例えば心臓、肺、心臓−肺複合、肝臓、腎臓、膵臓、皮膚、角膜移植片の需要側を処置するための器官または組織(異種)移植拒絶、例えば骨髄移植後のような移植片対宿主疾患、虚血性再かん流傷害。
【0043】
本明細書で用いる障害は疾患を含む。
本発明の化合物のようなCerKアゴニストを用いて成功裏に処置される傾向にあるCerK活性により仲介される障害には、好ましくは、炎症と関係する障害、免疫系の状態と関係する障害、例えば自己免疫性障害、例えばリウマチ性関節炎、炎症性腸疾患、全身性狼瘡エリトマトーシス、多発性硬化症、アレルギー性状態と関係する障害、癌および細胞過剰増殖と関係する障害、移植と関係する障害、例えばトリガーとしてインスリン耐性により引き起こされる糖尿病状態と関係する障害、例えば2型真性糖尿病、肥満;感染性障害と関係する障害、例えばHIV感染、脳および神経系と関係する障害(神経性障害)、疼痛と関係する障害、目と関係する障害、例えば網膜色素変性症;
【0044】
より好ましくは、リウマチ性関節炎、炎症性腸疾患、全身性狼瘡エリトマトーシス、多発性硬化症、移植片拒絶、乾癬、癌およびエイズ、より好ましくは、リウマチ性関節炎、炎症性腸疾患、全身性狼瘡エリトマトーシス、多発性硬化症、乾癬が含まれる。
【0045】
本明細書で用いる処置は、処置および予防(防止)を含む。
本明細書で用いる障害は、疾患を含む。
【0046】
診断アッセイは、CerKの作用により仲介される障害への罹りやすさを診断または決定するための方法を提供する。
障害を、例えば対象由来のサンプルから
a)本明細書に記載のCerKのアミノ酸88位と101位の間の変異、および
b)(i)CerKタンパク質、
(ii)セラミド−1−ホスフェートのような、かかるCerKタンパク質の二次代謝産物、もしくは関係するリン脂質代謝産物、および/または
(iii)CerKをコード化するmRNA
の異常に減少または増加したレベル
を決定することにより、例えば常套方法と同様に診断することができる。
【0047】
CerKのアミノ酸88位と101位の間の変異を、かかるCerKを単離し、CerKのアミノ酸88位と101位の間のアミノ酸配列を決定することにより決定し得る。減少または増加した発現レベルを、例えばPCR、RT−PCR、RNase保護、ノーザンブロッティングおよび他のハイブリダイゼーション法のような、例えばポリヌクレオチドの定量のための常套方法に従って、RNAレベルで決定し得る。アミノ酸88位と101位の間のアミノ酸配列中に変異を含むCerKタンパク質のようなタンパク質のレベルを決定するため、または宿主由来のサンプル中のかかるセラミドキナーゼタンパク質の二次代謝産物を決定するために用い得るアッセイ技術を、適当に、例えば常套方法と同様に行うことができる。かかるアッセイ技術には、放射性免疫アッセイ、競合的結合アッセイ、ウエスタンブロット分析、ELISA、ならびに例えば蛍光法、質量分析およびクロマトグラフィーを含む、二次代謝産物、例えばセラミド−1−ホスフェートの量を検出するための方法が含まれる。
【0048】
他の局面において、本発明は、本明細書に記載のセラミドキナーゼのアミノ酸88位と101位の間のアミノ酸配列中に変異が存在する場合に、主な構成成分として下記を含む、上記のような障害または障害への罹りやすさの診断キットを提供する。
a)セラミドキナーゼポリヌクレオチド、または
b)a)のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列、または
c)セラミドキナーゼタンパク質、または
d)セラミドキナーゼタンパク質に対する抗体、および
e)CerKのアミノ酸88位と101位の間のアミノ酸配列中の変異を検出するための手段、
例えば、何らかのかかるキットが存在するとすれば、(a)、(b)、(c)および/または(d)は、実質的な構成成分、例えば、下記
−サンプルの適当な環境
−(a)、(b)、(c)または(d)の何れかの作用を決定するための適当な手段
を試験すべきサンプル中に含み得る。
【0049】
本明細書に記載のセラミドキナーゼのアミノ酸88位と101位の間のアミノ酸配列は、多くの病的状態、例えば上記のような障害を含む多くの生物学的機能に関与し得る。従って、
−セラミドキナーゼを、例えば二次代謝産物を産するために
−セラミドキナーゼをコード化するポリヌクレオチドの発現を、例えばセラミドキナーゼ発現を刺激するために、刺激する(アゴニスト)か、
または、
−セラミドキナーゼの作用を、例えば二次代謝産物の産生を減ずるまたは阻害するために、
−セラミドキナーゼをコード化するポリヌクレオチドの発現を、減ずるまたは阻害する(アンタゴニスト)
化合物/薬物を発見することが望まれる。
【0050】
故に、本発明のポリペプチド、または例えばColigan et al, Current Protocols in Immunology 1(2):Chapter 5 (1991)に記載のその機能的模倣体を、例えば細胞、無細胞調製物、化学的ライブラリー、および天然産物混合物において、例えばスクリーニングアッセイにて、本発明のポリペプチドの受容体部分に対するアゴニストまたはアンタゴニストの結合を評価するために用い得る。
【0051】
かかるアゴニストおよびアンタゴニスト(モジュレーター)を、上記の障害の処置に用いることができる。
【0052】
スクリーニング方法は、本発明のポリペプチドを発現する適当な細胞の作製を伴い得る。適当な細胞には、例えば哺乳動物、酵母、ショウジョウバエ由来の細胞が含まれる。ポリペプチドを発現する細胞(または、発現された本発明のポリペプチドを含む細胞膜)を、結合、または機能的反応の刺激もしくは阻害を観察するために、候補化合物(可能性のあるモジュレーター)と接触させ得る。
【0053】
スクリーニングアッセイを、候補化合物と本発明のポリペプチドの結合を試験するために用いることができ、該結合を、候補化合物を直接的または間接的に標識することによるか、またはアッセイ中、標識した競合物質との競合により検出することができる。
活性化のモジュレーターを、公知の(アンタゴニスト)アゴニストの存在下および不存在下にてアッセイし得る。
【0054】
機能的スクリーニングアッセイは、本発明のポリペプチドと結合することが決定されている候補化合物を、セラミドキナーゼを含む溶液と混合して混合物を形成する工程、該混合物中のセラミドキナーゼの活性を決定する工程、および該混合物の活性と標準物質の活性を比較する工程を含み得る。セラミドキナーゼ(cDNA)、セラミドキナーゼのポリペプチド、およびセラミドキナーゼに対する抗体もまた、本発明のポリペプチドと結合することが決定されている候補化合物の、細胞中における該セラミドキナーゼ(mRNA)および該セラミドキナーゼポリペプチドの産生に対する作用を検出するためのスクリーニングアッセイを提供するために用い得る。例えば、ELISAを、例えば常套方法によりモノクローナルおよびポリクローナル抗体を用いて、該ポリペプチドの細胞結合レベルを決定するために構築することができ、そのELISAを、本発明のポリペプチドと結合することが決定され、適切に遺伝子組換えした細胞または組織からのセラミドキナーゼの産生またはセラミドキナーゼの活性を増加または阻害し得る物質(モジュレーター)を発見するために用い得る。スクリーニングのためのアッセイを、例えば常套方法に従って行うことができる。
【0055】
本発明のポリペプチドと結合し得る、可能性のある(アンタゴニスト)アゴニストの例には、例えばオリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、模倣物質、小分子、例えば低分子量化合物(LMW)が含まれる。
【0056】
故に、他の局面において、本発明は、本明細書に記載のセラミドキナーゼのアゴニストまたはアンタゴニストを同定するためのスクリーニングアッセイを提供し、該アッセイは、下記を主な構成成分として含む。
a)本発明のポリペプチド、または
b)a)のポリペプチドを発現する組換え細胞、または
c)a)のポリペプチドを発現する細胞膜、および
d)候補化合物の本発明のポリペプチドとの結合作用を決定するための手段、
例えば、候補化合物と接触させるための手段;例えば、候補化合物の、a)、b)またはc)およびd)の何れかへの作用を決定するための手段;
例えば、候補化合物の存在下で、本明細書に記載のセラミドキナーゼの産生および/または生物学的活性を減少または増加するかどうかを決定する手段;
例えば、該候補化合物の存在下および不存在下におけるa)、b)またはc)およびd)の何れかの活性の比較手段。
ならびに、他の局面において
かかるスクリーニングアッセイにおける、(アンタゴニスト)アゴニストを同定するための本発明のポリペプチドの使用を提供する。
【0057】
他の局面において、本発明は、
セラミドキナーゼの産生および/または生物学的活性を増加または減少するアゴニストまたはアンタゴニストを同定する方法を提供し、該方法は下記を含む。
A)A1)本発明のポリペプチド、または
A2)A1)のポリペプチドを発現する組換え細胞、または
A3)A1)のポリペプチドを発現する細胞膜
を候補化合物と接触させる工程、
B)候補化合物とA1)、A2)またはA3)の何れかのポリペプチドとの結合作用を決定するための工程、
C)工程B)にてA1)、A2)またはA3)の何れかへの結合作用が決定された候補化合物の、
C1)セラミドキナーゼタンパク質、または
C2)セラミドキナーゼタンパク質を発現する組換え細胞、または
C3)セラミドキナーゼタンパク質を発現する細胞膜、または
C4)C1)のポリペプチドに対する抗体
への作用を決定するための工程;
例えば、候補化合物の存在下で、セラミドキナーゼの産生および/または生物学的活性を減少または増加するかどうかを決定する工程;
例えば、該候補化合物の存在下および不存在下におけるC1)、C2)、C3)またはC4)の何れかの活性の比較工程、および
D)工程C)にて決定されたアゴニストまたはアンタゴニストを選択する工程
例えば、アゴニスト/アンタゴニスト作用が工程C)で最終的に決定される適当な候補化合物を選択する工程。
ならびに、他の局面において
(アンタゴニスト)アゴニストを同定するためのかかる方法における本発明のポリペプチドの使用を提供する。
【0058】
(アンタゴニスト)アゴニスト(モジュレーター)は、C1)、C2)、C3)またはC4)の何れかへの作用が、上記のスクリーニングアッセイまたは(アンタゴニスト)アゴニストの同定方法にて発見されている候補化合物である。(アンタゴニスト)アゴニストは、セラミドキナーゼの産生および/または生物学的活性を減少または増加し得る。かかる(アンタゴニスト)アゴニストをまた、本発明の(アンタゴニスト)アゴニストとして本明細書中に記載する。
【0059】
他の局面において、本発明は、セラミドキナーゼタンパク質のポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストを提供し、それは、該アゴニストまたはアンタゴニストが、本発明のアゴニストまたはアンタゴニストを同定するための方法により提供され得ることを特徴とする。
【0060】
本発明のポリペプチドの(アンタゴニスト)アゴニストは、例えば本明細書に記載のような障害の処置に用いることができる。本発明のポリペプチドの(アンタゴニスト)アゴニストは、医薬として有用であり得る。
【0061】
他の局面において、本発明は、例えば本明細書に記載のような障害の処置のための医薬としての使用のためのセラミドキナーゼのポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストを提供する。
【0062】
本発明のセラミドキナーゼタンパク質の(アンタゴニスト)アゴニストは、医薬組成物の形態で投与され得る。
【0063】
他の局面において、本発明は、
−活性成分として本発明のアゴニストまたはアンタゴニストを薬学的に許容される賦形剤(複数可)と組み合わせて含む医薬組成物であって、例えば該アンタゴニストまたはアゴニストが、本発明のアゴニストまたはアンタゴニストの同定方法により提供され得ることを特徴とする医薬組成物を提供する。
【0064】
かかる医薬組成物を、適当に、例えば常套方法により、例えばそれと同様に、例えば工程A)、B)およびC)により提供される(アンタゴニスト)アゴニストを賦形剤と混合し、例えばさらに、得られた混合物を加工し、投与に適する医薬組成物を得ることにより製造することができる。
【0065】
さらなる局面において、本発明は、セラミドキナーゼ活性により仲介される障害を処置する方法であって、例えば上記の工程A)、B)、C)およびD)により提供され得る本発明のアゴニストまたはアンタゴニストの治療的有効量を、例えば薬学的に許容される賦形剤(複数可)と組み合わせて、例えば医薬組成物の形態で、かかる処置の必要な対象に投与することを含む方法を提供する。
【0066】
かかる処置に関して、適当な投与量はもちろん、例えば用いられる本発明の化合物の化学的特性および薬物動態データ、個々の宿主、投与方法ならびに処置される状態の性状および重症度に依存して変化してよい。しかしながら、一般的に、より大きな哺乳動物、例えばヒトにおいて満足のいく結果を得るために、示した1日投与量には、例えば、1日4回までの分割用量で投与される、下記の範囲
−約0.0001gないし約1.5g、例えば0.001gないし1.5g;
−体重1kgあたり約0.001mgないし約20mg、例えば体重1kgあたり0.01mgないし20mgが含まれる。
【0067】
本発明の(アンタゴニスト)アゴニストを、何らかの常套経路で、例えば経腸的に、例えば経鼻的、口腔内、経直腸、経口投与により;非経腸的に、例えば静脈内、動脈内、筋肉内、心臓内、皮下、骨内注入、経皮的(無傷の皮膚を介する拡散)、経粘膜的(粘膜を介する拡散)、吸入投与により;局所的に、例えば経皮的、経鼻的、気管内投与により;腹腔内(腹腔への導入または注入);硬膜外(epidural)(硬膜外(peridural))(硬膜外腔への導入または注入);髄腔内(髄液中への導入または注入);硝子体内(眼からの投与);または、例えば局所送達のための医療デバイス、例えばステントにより;
例えば、被覆または非被覆錠剤、カプセル、(注射)溶液、注入溶液、固体溶液、懸濁液、分散液、固体分散液の形態で;例えばアンプル、バイアルの形態で、クリーム、ゲル、ペースト、吸入粉末、泡状、チンキ剤、リップスティック、ドロップ、スプレーの形態で、または坐剤の形態で、投与することができる。
【0068】
例えば眼への投与を含む局所的使用について、満足のいく結果は、1日数回、例えば1日2ないし5回、0.5−10%、例えば1−3%濃度の活性物質を局所投与して得られ得る。
【0069】
図面の説明
図1
GFP標識したCerK WT(野生型)およびPHドメイン変異タンパク質の細胞内局在
COS−1細胞を、N末端をGFPと融合したCerK野生型および変異体アレルをコード化するプラスミドを用いて一過性にトランスフェクトする。トランスフェクションの24時間後、細胞を実験方法部分に記載の蛍光顕微鏡を用いて分析する。示した写真は、数回の実験で観察された、大多数の細胞集団の代表である。
【0070】
図2および図3
図2−CerK PHドメイン変異体のインビトロ活性アッセイ
CerKの異なる変異体アレルをCOS細胞中で発現させ、粗細胞溶解物としてインビトロで、野生型CerK(100%に標準化された活性)と比較してアッセイする。データは、トリプリケートで行った少なくとも2回の実験の平均(SD)を示す。
図3−CERK PHドメイン変異体の細胞内活性
細胞内キナーゼアッセイを、N末端をGFPで標識したWT CerKおよび重要な変異体を、32標識を用い、その後脂質抽出して行う(上部パネル、WT−CerKと比較した濃度測定%を下に示す。)。対照トランスフェクションからの溶解物を、GFPタグに対する抗体を用いてウエスタンブロット分析する(下部パネル)。
【0071】
図4および図5
図4−COS−1細胞中で発現されるβ6−β7ループ変異体のSDS−PAGE泳動
N末端をGFP標識したCerKおよび変異体アレルを、COS−1細胞中で過剰発現させる。SDS−PAGEをその溶解物に行い、次いでGFPタグに対する抗体を用いてウエスタンブロット分析する。下側の非特異的バンド(ns)はmock対照にも存在する(データ不掲載)。
【0072】
図5−インビトロで発現されるβ6−β7ループ変異体のSDS−PAGE泳動結果
インビトロで翻訳された35Sメチオニン標識したCerK WTおよび変異体を、SDS−PAGEし、次いでオートラジオグラフィーして分析する。
【0073】
図6および図7
β6−β7ループ変異体は、不安定なタンパク質である。
図6−β6−β7ループ変異体は、増加した熱安定性を示す。
左側、WTまたはCerK 90/91変異体のC末端をFLAG−6×Hisで標識したタンパク質を過剰発現するCOS−1細胞の全細胞溶解物を、30℃にて示した時間プレインキュベートし、その後、残った活性をアッセイする。右側、20%グリセロールの存在が、90/91 CerK変異体タンパク質の不活性化を阻害する。これは、同じ結果の2つの実験のうちの1つである。
【0074】
図7−β6−β7ループ変異体は、トリプシンにより感受性である。
両方ともC末端を6×His−FLAG標識した野生型および変異体CerKを、COS−1細胞で過剰発現させ、溶解緩衝液中に採集する。溶解物を異なる量(0;0.001;0.01;1μg/ml)のトリプシンと共にインキュベートする。30分のインキュベーション後、サンプルをPAGE分析用に処理する。ウエスタンブロッティングを、抗FLAG抗体を用いて行った。これは、同じ結果の2つの実験のうちの1つである。
【0075】
図8
β6−β7ループ変異体は、凝集しやすい。
ウエスタンブロッティング分析を、図8のように行った。白抜き矢印は、90/91/96/98変異体の多量体形態を示す。
【0076】
図9
β6−β7ループ変異体は、トライトン可溶性膜成分から回収されない。
野生型CerKの細胞画分を、PHドメインを欠失したCerKアレル、本発明の90/91/96/98変異体、ならびにキナーゼ作用を欠くCerK G198D変異体と比較した。全ての構築物は、C末端で6×His−FLAG標識されている。細胞分画を実験方法部分に記載の方法で行い、得られた画分をSDS−PAGEし、次いで抗FLAG抗体を用いてウエスタンブロットして解析する。
【0077】
配列表
配列番号1(ポリヌクレオチド)
tgtgtaaagagagcacgacggcaccgctggaagtgggcgcag
配列番号2(ポリペプチド)
CVKRARRHRWKWAQ
配列番号3(ポリヌクレオチド Δ2−7)
gggcgacgggggccatggagccgctgcaatcc
配列番号4(ポリヌクレオチド Δ2−13)
gagccgctgcaatccatggtgtgggtgaagcagc
配列番号5(ポリヌクレオチド;K17A)
ccgtgctgtgggtggcacagcagcgctgcgcc
配列番号6(ポリヌクレオチド R20A)
gtgggtgaagcagcaggcctgcgccgtgagcctg
配列番号7(ポリヌクレオチド K17A、R20A)
gtgggtggcacagcaggcctgcgcc
配列番号8(ポリヌクレオチド K33A)
gcgggctctgctggcctggtggcggagccc
配列番号9(ポリヌクレオチド R36A)
ctgctgcgctggtgggcgagcccggggccc
【0078】
配列番号10(ポリヌクレオチド R29、33、36A)
gcggccgctctgctggcctggtgggcgagcccggggccc
配列番号11(ポリヌクレオチド K74A)
catcaaggcagtggagcatggcagaaaatggaaaagc
配列番号12(ポリヌクレオチド K68V、K74A)
gaaacagacgttcacggggtgcatcaaggcagtggaaaatg
配列番号13(ポリヌクレオチド K77A)
cagtggaaaatggcaggcaatggaaaagccttacg
配列番号14(ポリヌクレオチド K80V)
ggcagaaaatggaagtgccttacgcttttacag
配列番号15(ポリヌクレオチド K74、77A)
cagtggagcatggcaggcaatggaaaagc
配列番号16(ポリヌクレオチド K77、80A)
【0079】
配列番号17(ポリヌクレオチド)
ggcaggcaatggaagtgccttacgcttttacag
配列番号18(ポリヌクレオチド K90V)
gcttttacagttcactgtgtagtgagagcacgacggcac
配列番号19(ポリヌクレオチド R91A)
cagttcactgtgtaaaggcagcacgacggcaccg
配列番号20(ポリヌクレオチド K90V、R91A)
gcttttacagttcactgtgtagtggcagcacgacggcaccg
配列番号21(ポリヌクレオチド R93、94A)
ctgtgtaaagagagcagcagtgcaccgctggaagtg
配列番号22(ポリヌクレオチド R96A)
gagagcacgacggcacgcctggaagtgggcgc
配列番号23(ポリヌクレオチド K98V)
gacggcaccgctgggtgtgggcgcaggtgac
【0080】
配列番号24(ポリヌクレオチド R96A、K98V)
配列番号25(ポリヌクレオチド)
gagagcacgacggcacgcctgggtgtgggcgcaggtgac
配列番号26(ポリヌクレオチド K90V、R91A、R96A、K98V)
acgacggcacgcctgggtgtgggcgcaggtgac
配列番号27(ポリヌクレオチド L116G)
gctgtgtcacttgtgggggcagaccctgcgg
配列番号28(ポリヌクレオチド L119G)
cttgtggctgcagaccgggcgggagatgctgg
配列番号29(ポリヌクレオチド R120P)
ggctgcagaccctgcccgagatgctggagaagc
配列番号30(ポリペプチド)
KRARRHRWKW
【0081】
下記の実施例において、全ての温度は摂氏である。下記の略語を用いる。
【表1】

【0082】
実験方法
材料
C8−セラミドをCaymanから入手し、カルジオリピンをSigmaから入手し、オクチル−D−ベータ−グルコピラノシドをFlukaから入手する。[ガンマ−32P]ATP(10mCi/ml、3000Ci/mmol)、[32P]オルトホスフェート(10mCi/ml)および[35S]メチオニンを、Amersham Biosciencesから入手する。トリプシンシークエンシング等級およびコンプリート(商標)プロテアーゼ阻害剤錠剤をRoche Molecular Biochemicalsから入手する。変異導入を、QuickChange Site Directed Mutagenesis IIキット(Stratagene)を用いて行い、SDS−PAGEを、NuPAGEポリアクリルアミドゲル(Invitrogen)上にて還元条件下で行う。NBD標識したC6−セラミドを、Molecular Probesから入手する。他の全ての試薬は特記しない限りSigmaから入手する。プラスミドベクターならびにTOP10大腸菌コンピテント細胞をInvitrogenから入手する。オリゴヌクレオチド合成およびDNA配列決定を、VBC−genomicsで行う。
【0083】
ヒトCerKコンストラクト
Genebank(商標)受託番号AB079066に対応するCerK cDNAを入手し、例えばBillich, A., Bornancin, F., Devay, P., Mechtcheriakova, D., Urtz, N., and Baumruker, T, J. Biol. Chem. 278, 47408−47415, (2003)、またはCarre, A., Graf, C., Stora, S., Mechtcheriakova, D., Csonga, R., Urtz, N., Billich, A., Baumruker, T., and Bornancin, F., Biochem. Biophys. Res. Commun. 324,1215−1219, (2004)に記載の通りに、Gateway(商標)適合性エントリーベクター中にサブクローニングする。これらのプラスミドを変異導入に用いる。部位特異的変異導入を、下記のプライマーを用いて行う(フォワードプライマーのみを示し、変更した塩基に下線をする。)。変異体の組み合わせを、同じプライマーを既に構築した変異体に用いて行う。
【0084】
Δ2−7:gggcgacgggggccatggagccgctgcaatcc;
Δ2−13:gagccgctgcaatcctgtgtgggtgaagcagc;
K17A:ccgtgctgtgggtggcacagcagcgctgcgcc;
R20A:gtgggtgaagcagcaggcctgcgccgtgagcctg;
K17A、R20A:gtgggtggcacagcaggcctgcgcc;
K33A:gcgggctctgctggcctggtggcggagccc;
R36A:ctgctgcgctggtgggcgagcccggggccc;
R29、33、36A:gcggccgctctgctggcctggtgggcgagcccggggccc;
K74A:catcaaggcagtggagcatggcagaaaatggaaaagc;
K68V、K74A:gaaacagacgttcacggggtgcatcaaggcagtggaaaatg;
K77A:cagtggaaaatggcaggcaatggaaaagccttacg;
K80V:ggcagaaaatggaagtgccttacgcttttacag;
K74、77A:cagtggagcatggcaggcaatggaaaagc;
K77、80A:ggcaggcaatggaagtgccttacgcttttacag;
K90V:gcttttacagttcactgtgtagtgagagcacgacggcac;
R91A:cagttcactgtgtaaaggcagcacgacggcaccg;
【0085】
K90V、R91A:gcttttacagttcactgtgtagtgcagcacgacggcaccg;
R93、94A:ctgtgtaaagagagcagcgtgcaccgctggaagtg;
R96A:gagagcacgacggcacgcctggaagtgggcgc;
K98V:gacggcaccgctgggtgtgggcgcaggtgac;
R96A、K98V:gagagcacgacggcacgcctgggtgtgggcgcaggtgac;
K90V、R91A、R96A、K98V:cacgacggcacgcctgggtgtgggcgcaggtgac;
L116G:gctgtgtcacttgtgggggcagaccctgcgg;
L119G:cttgtggctgcagaccgggcgggagatgctgg;
R120P:ggctgcagaccctgcccgagatgctggagaagc
全ての構築物を、標識していないタンパク質を発現させるためにpcDNA6.2DESTに導入するか、またはN末端GFP融合構築物を発現させるためにpcDNA−DEST53に導入する。
【0086】
野生型(wt)CerKおよび変異体タンパク質の過剰発現
COS−1細胞をDSMZから入手し、加湿雰囲気中、DMEM/10% FCS中で37℃/5% COにて培養する。細胞を6ウェルプレートに10細胞/ウェルで播種する。24時間後、細胞を、FuGENE6(Roche Molecular Biochemicals)を用いて、異なるCerKアレルの発現構築物を含むベクター3μgを用いてトランスフェクトする。細胞をトランスフェクション後24ないし48時間インキュベートする。採集については、細胞を氷冷洗浄緩衝液(トライトンX−100およびコンプリートプロテアーゼ阻害剤を含まない溶解緩衝液)で洗浄し、溶解緩衝液(10mM MOPS pH7,2;2mM EGTA、150mM KCl、2%トライトンX−100、1mM DTTおよびプロテアーゼ阻害剤)中に擦り取る。得られた懸濁液を、Potter−Elvejhemホモジナイザーで20ストロークホモジナイズする。キナーゼ活性アッセイ用にアリコートを直接用いる。ウエスタンブロッティング分析のためにアリコートを下記の通りに処理する。インビトロ翻訳を、既述の通りに(例えばCarre, A., Graf, C., Stora, S., Mechtcheriakova, D., Csonga, R., Urtz, N., Billich, A., Baumruker, T., and Bornancin, F., ib.を参照のこと)、TNT coupled reticulocyte lysateシステム(Promega)を用いて行う。
【0087】
キナーゼ活性のアッセイ−セラミドキナーゼ活性を、既述の通りの(例えばCarre, A., Graf, C., Stora, S., Mechtcheriakova, D., Csonga, R., Urtz, N., Billich, A., Baumruker, T., and Bornancin, F., ib.を参照のこと)公開されたプロトコールに従って粗細胞溶解物中で測定した。32またはNBD−C6−セラミドのどちらかを用いる細胞内アッセイ後に、脂質抽出およびTLC分析を既述の通りに(例えば、Bornancin, F., Mechtcheriakova, D., Stora, S., Graf, C., Wlachos, A., Devay, P., Urtz, N., Baumruker, T., and Billich, A., Biochim. Biophys. Acta 1687, 31−43(2005)を参照のこと)行う。
【0088】
トリプシンタンパク質分解
トリプシンを、1mM HCl中に10μg/mlで溶解し、溶解緩衝液(上記参照)で0.004μg/ml;0.04μg/mlおよび4μg/mlに希釈する。COS−1細胞溶解液を、トリプシン希釈液と3:1で混合し、0.001;0.01および1μg/mlの最終トリプシン濃度とする。サンプルを30℃にて30分間インキュベートし、その後、下記の通りウエスタンブロッティングのために処理する。
【0089】
細胞分画
溶解を、500μlの緩衝液1(20mM Tris pH7.5;1mM DTT)中で行う。ホモジネーション後、溶解物をTL−100超遠心機(Beckman)を用いてTLA120.2ローターで55,000rpmにて遠心する。上清は画分1に相当する。ペレットを500μlの緩衝液2(20mM Tris pH7.5;DTT 1mM;NaCl 250mM)中に溶解し、サンプルを前記のように遠心する。上清(画分2)を保存し、ペレットを500μlの緩衝液3(Tris pH7.5 20mM;DTT 1mM;トライトンX−100 1%)中に溶解する。サンプルを再び遠心し、最後の上清を集める(画分3)。最後のペレットを500μlの緩衝液1に再び溶解し、保存する(画分4)。
【0090】
タンパク質定量
10μlの全細胞溶解物を1mlのEtOH中に希釈し、ドライアイス上で15分間インキュベートする。遠心(卓上遠心機の最大スピードで15分間)後、上清を捨て、10μlの0.1N NaOHおよび200μlのマイクロBCA(Pierce)希釈標準溶液を加える。激しいボルテックスの後、37℃にて45分間インキュベートする。100μlを、Molecular Device SpectraMax 340 PC 384プレートリーダーで562nmにて読み出す。BSAを標準として用いる。図1および表1に用いたCerKタンパク質容量の標準化を、Molecular Devices SpectraMax Gemini XS(Ex/em:395/507nm;カットオフ値:495nm)を用いて溶解物のGFP蛍光を測定することにより得る。
【0091】
ウエスタンブロット分析
全ての画分を、200mMのDTTを添加した4×NuPAGE LDSサンプル緩衝液中に3:1で希釈し、75℃にて10分間インキュベートし、その後瞬間冷凍し、−80℃で保存する。PAGE分析を、NuPAGEを用いて115Vで2時間、MOPS緩衝液中Bis−Tris 4−12%泳動で行う。ゲルを、BioRad Trans−Blot SD Semi−Dry Transfer cell(膜あたり25Vおよび100mA、2時間)中でHybond−ECLニトロセルロース膜(Amersham Biosciences)に転写し、抗GFP抗体(Abcam ab290ウサギポリクローナル)でプローブし、次いでホースラディッシュ・ペルオキシダーゼに結合したウサギIg抗体(# NA9340V、Amersham Biosciences)でプローブするか、または抗FLAG抗体(Sigma、M2)でプローブし、次いでホースラディッシュ・ペルオキシダーゼに結合した抗マウスIg抗体(# NA9310V、Amersham Biosciences)でプローブする。検出を、Hyperfilms ECL(Amersham Biosciences)またはFujifilm Intelligent Dark Box LAS 3000 imagerのどちらかを用いて、ECL(Amersham Biosciences)またはLumiglo(Cell signaling)を用いて行う。バンド強度を、ImageJ 1.33u(Wayne Rasband NIH http://rsb.info.nih.gov/ij/Java 1.3.1_03)を用いて測定する。
【0092】
蛍光顕微鏡
COS−1細胞を、4チャンバーのカバースリップ(LabTEK II−Nalge Nunc)に1チャンバーあたり2.2×10細胞で播種する。24時間後、播種した細胞を、FuGENE6を用いてチャンバーあたり0.6μgのプラスミドでトランスフェクトする。生細胞蛍光顕微鏡法を、トランスフェクションの24時間後に、高解像度顕微鏡カメラAxioCam MRc(Zeiss)ならびに対物Plan−Neofluar 40×/1.30 oil DICおよびPlan−Apochromat 63×/1.40 oil DICを備える倒立顕微鏡Axiovert 200Mを用いて行う。該フィルターシステムは、野生型GFPおよびEGFPの両方を検出するのに適する(Ex 470/40nm、BS 495nm、Em 525/50nm)。
【0093】
結果
CerK PHドメイン変異体の細胞内局在および活性
組換えCerKが構成的にゴルジ複合体および細胞質ビヒクルに局在することが、COS−1細胞または初代HUVEC(例えば、Carre, A., Graf, C., Stora, S., Mechtcheriakova, D., Csonga, R., Urtz, N., Billich, A., Baumruker, T., and Bornancin, F., ib.を参照のこと)の両方にて既に報告された。この局在パターンは、PHドメインを取り除くとき完全に失われる;一方、ΔPH−CerKは、HUVECにて拡散した細胞質局在を示す(例えば、Carre, A., Graf, C., Stora, S., Mechtcheriakova, D., Csonga, R., Urtz, N., Billich, A., Baumruker, T., and Bornancin, F., ib.を参照のこと)。この明確な結果を、本発明のCerK PHドメイン変異体タンパク質を特性化するために用いる。図1に示すように、GFP−CerKタンパク質の局在は、β1−β2ループ(17/20:K17AおよびR20A)、β3−β4ループ(29/33/36:R29、33、36A)、またはβ5−β6ループ(68/74/80:K68、74、80A)の何れかの正電荷の残基の変異導入によりほとんど変化しない。対照的に、一部(90/91:K90A、R91Aおよび96/98:R96A、K98V)の、またはこれらの2つの二重変異が複合した全体(90/91/96/98)のどちらかのβ6−β7ループの変異導入は、CerKのゴルジ複合体への局在能を阻止した。後者の変異体は、細胞内でΔPH−CerKと同じように局在した。C末端アルファへリックスを損傷されるとき(R120P)、得られる変異体タンパク質は、同様に局在を損なう(図1)。
【0094】
これらの結果からβ6−β7ループを、野生型タンパク質の局在を可能にする正電荷アミノ酸の重要な供給源として同定する。β1−β2ならびにβ3−β4ループの重要でない役割は、一部を損傷した(compromised)β6−β7ループを提示する変異体で確認できる(表1)。一方、長いβ5−β6ループ内の正電荷は、それらの置換が、かかる一部を損傷した変異体の表現型を変えないため、関係しているとは考えられない(表1)。
【0095】
CerK活性を、上記の変異体についてインビトロで測定する(図2、表1)。野生型局在を示す全ての変異体はまた、野生型の触媒活性を示す(29/33/36、68/74/80);局在の部分的喪失を有する変異体は、より低い活性を有する(例えば90/91、90/98);最後に、最も異常な局在の変異体は、最も弱い活性を有する(90/91/96/98、R120P)。故に、局在の喪失は、活性の消失と類似する。細胞に基づくCerKアッセイを、より直接的に損傷した変異体を試験するために行う。インビトロアッセイと一致して、90/91変異体は一部の活性を示すが、一方、90/91/96/98は、活性を全て欠く(図3)。
故に、CerKのPHドメインは、基質認識を伴わない機構を介して酵素活性に影響を与える。
【0096】
β6−β7ループの損傷した変異体は、増大したSDS−PAGE移動度を有する全長タンパク質である。
図3で明らかなように、90/91/96/98変異体は、野生型とΔPH CerKの間のほぼ中間の、SDS−PAGEゲルでの著しく異なる泳動結果を示す。本発明のために作製された様々な変異体の調査を、90/91/96/98変異体で見られる泳動パターンが他の変異体にも共通かどうかを調べるために行う。図4で明らかなように、アミノ酸90および91の変異は、残基96および98の変異を含む何れか他の変異体では見られない、少し下方への移動度シフトをもたらす(表1参照)。しかしながら、残基96および98の変異は残基90および91の変異と同様に、記載のようにより下方へのシフトをもたらす。故に、速い泳動結果は、損傷したβ6−β7ループを有する変異体を示す。変化した泳動結果のさらなる証拠が、標識してないタンパク質のインビトロ翻訳によりインビトロで得られる。インビトロで翻訳されたβ6−β7ループ変異体は、不定量の、速い泳動タンパク質物質ならびに野生型に近い泳動物質を示す、汚れたパターンを示す(図5)。このことは、移動度シフトが見られたβ6−β7ループ変異体が、変異導入がβ6−β7ループ変異体の増大した移動のメカニズムになるとは考えられないため、単なる正電荷の正味の喪失の結果ではないことを示す。観察された泳動結果の大きな変化ならびに検出されたβ6−β7ループ変異体タンパク質の拡散した出現を鑑みて、次に、糖化が、β6−β7ループ変異体タンパク質の影響を弱め、故に観察された速い泳動物質をもたらし得るかどうかを調べる。しかしながら、野生型または90/91/96/98変異体タンパク質のどちらにも糖化は検出されない(データ不掲載)。故に、これらの実験は、β6−β7ループ変異体に観察された移動度シフトが、タンパク質分解のため、または糖化のような修飾の欠失のためではないことを証明する。
【0097】
CerK PHドメインβ6−β7ループ特性
上記の実験は、β6−β7ループが重要な構造特性を示すことを示唆する。このループの変異導入は、実際に、変性後に未だ見られる変化、すなわち変異タンパク質が高度な球状を示し、故に外見上減少した分子量を示すことになる。CerK PHドメインのβ6−β7ループは、既知の構造のPHドメインと比較したとき、最も長いβ6−β7ループに入る。もちろん、このループは高度に変化しており、挿入した正電荷および疎水性残基のモチーフ(KRARRHRWKW)によって連結された2つのさらなる鎖β6’およびβ6”を示す。この領域中のトリプトファンの存在は、既知の構造の全てのPHドメインと比較してユニークである。プログラムモデラーを用いて、100個の可能性のあるβ6−β7ループ構造(データ不掲載)をサンプル採取する。もたらされたループの二次構造分析およびマニュアル検査によれば、好ましい構造は作製されたサンプルからは得られない。しかしながら、該サンプルは、上記のモチーフの少なくとも2つの機能:
(i)疎水性残基は、電荷残基をタンパク質の中心に位置するのを助けるアンカーとしての機能を果たす;
(ii)あるいは、それらは、電荷残基間のバッファとして用いられ得る、
を提案し得る
【0098】
β6−β7ループ変異体は、不安定な構造を示す。
CerK酵素活性の半減期は、90/91変異体と野生型タンパク質を比較するとき2倍減少する(図6)。実際、30℃にて20分で、野生型タンパク質の活性が50%減少するが、一方、同様の還元が、変異体について10分未満で起こる。従って、グリセロールの包含は、不活性化過程をかなり遅延し、変異体を野生型の活性レベルに近づける(図6、右側)。故に、PHドメインは、構造安定化を可能にするように思われ、β6−β7ループは、この過程において役割を果たす。このことはまた、野生型タンパク質と比較して90/91/96/98変異体のトリプシン感受性から判断するとき示される。図7に示すとおり、0.001μg/mlほどの低いトリプシン濃度が、全長90/91/96/98変異体タンパク質をほぼ完全に消失させるが、野生型CerKは、1μg/mlトリプシンで同じ時間インキュベートしたとき分解されずに残る。さらに、β6−β7ループ変異体は、SDS−PAGE分析による高分子量の多重バンドの高頻度な検出を考えると凝集しやすいと考えられる(図8)。このことは、このループ内の正電荷残基の不存在が、タンパク質内のサイトを露出し、多量体形成をもたらすことを示す。β6−β7ループ自体のAla、Val、CysおよびTrp残基の露出は、増大した疎水性表面を介して多量体形成を誘導し得る。凝集は、無傷のβ6−β7ループを有するが、C末端ループ内で不安定なR120P変異体で起こらない(図8)。該して、損傷したβ6−β7ループを有する変異体は、増強した不活性化、タンパク質分解、および凝集を受ける不安定構造を示す。
【0099】
β6−β7ループ変異体は、トライトン可溶性膜画分から回収されない。
組換え野生型CerKは、HEK293(例えば、Sugiura, M. et al, J. Biol. Chem. 277, 23294−23300, (2002)を参照のこと)およびCOS−1細胞(例えば、Carre, A., Graf, C., Stora, S., Mechtcheriakova, D., Csonga, R., Urtz, N., Billich, A., Baumruker, T., and Bornancin, F. Biochem. Biophys. Res. Commun. 324,1215−1219, (2004)を参照のこと)中で発現されるとき、ほとんど顆粒画分に付随する。特定のタンパク質の分離には、界面活性剤、塩およびキレート剤の組み合わせでの長期処理が必要であることが分かっている(図7A)。このことは、既報の脳膜からのセラミドキナーゼ活性の可溶化に一致する(例えば、Bajjalieh, S., and Batchelor, R. Methods Enzymol. 311, 207−215, (2000)を参照のこと)。未だに、いくつかのCerKタンパク質が、細胞質および膜画分から容易に採集され得る(図9)。
【0100】
同様に、機能的PHドメインを有し、GFPと結合したとき野生型酵素として局在する(データ不掲載)CerKのG198D触媒不活性変異体は、いくつかの細胞質および膜抽出可能物も示す(図9)。対照的に、CerK ΔPHタンパク質もCerK 90/91/96/98タンパク質も、膜抽出可能画分から回収されない。このことは、インビトロで翻訳されたタンパク質およびリポソームを用いて既に示した通り(例えば、Carre, A., Graf, C., Stora, S., Mechtcheriakova, D., Csonga, R., Urtz, N., Billich, A., Baumruker, T., and Bornancin, ib.を参照のこと)、PHドメインと膜との結合が必要とされることを裏付け、そしてこの過程においてβ6−β7ループが重要な役割を果たすことを証明する。重要なことに、機能的PHドメインの不存在において、変異体タンパク質は未だに、顆粒画分に多く存在する。
【0101】
CerK変異体
CerK変異体は、変異導入領域によって分類分けされる。局在を、3つの黒い丸型:(●●●)野生型、(●●○)一部損傷した型、(●○○)重度に損傷した型、(○○○)ΔPH CerK型の局在を用いて示す。活性を、CerKタンパク質量の標準化後、WT−CerKの活性の割合として表す。データは、トリプリケートで行った少なくとも2つの実験の平均+/−SDとして表す。SDS−PAGE泳動結果から見られる見掛けの分子量の表現型を、最も右のカラムに示す。残基番号8から始まるPHドメインと一致する、CerKの最初の7アミノ酸残基の欠失(Δ2−7 CerK)は、観察されたタンパク質の表現型に影響を及ぼさなかった(Carre, A., Graf, C., Stora, S., Mechtcheriakova, D., Csonga, R., Urtz, N., Billich, A., Baumruker, T., and Bornancin, F. Biochem. Biophys. Res. Commun. 324,1215−1219, (2004)、図2)。さらなる欠失(Δ2−13 CerK)は、最初のβ鎖のほとんどを除去し、野生型局在および活性を完全に無効にする。そのような強い表現型はまた、W15D CerK変異体でも得られる(データ不掲載)。既述のL10A変異(Kim, T.J. et alFEBS Lett. 579, 4383−4388,.(2005)を参照のこと)は、該アッセイにおいて一部有効である。
【0102】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】GFP標識したCerK WT(野生型)およびPHドメイン変異タンパク質の細胞内局在 COS−1細胞を、N末端をGFPと融合したCerK野生型および変異体アレルをコード化するプラスミドを用いて一過性にトランスフェクトする。トランスフェクションの24時間後、細胞を実験方法部分に記載の蛍光顕微鏡を用いて分析する。示した写真は、数回の実験で観察された、大多数の細胞集団の代表である。
【図2】CerK PHドメイン変異体のインビトロ活性アッセイ CerKの異なる変異体アレルをCOS細胞中で発現させ、粗細胞溶解物としてインビトロで、野生型CerK(100%に標準化された活性)と比較してアッセイする。データは、トリプリケートで行った少なくとも2回の実験の平均(SD)を示す。
【図3】CERK PHドメイン変異体の細胞内活性 細胞内キナーゼアッセイを、N末端をGFPで標識したWT CerKおよび重要な変異体を、32標識を用い、その後脂質抽出して行う(上部パネル、WT−CerKと比較した濃度測定%を下に示す。)。対照トランスフェクションからの溶解物を、GFPタグに対する抗体を用いてウエスタンブロット分析する(下部パネル)。
【図4】COS−1細胞中で発現されるβ6−β7ループ変異体のSDS−PAGE泳動結果 N末端をGFP標識したCerKおよび変異体アレルを、COS−1細胞中で過剰発現させる。SDS−PAGEをその溶解物に行い、次いでGFPタグに対する抗体を用いてウエスタンブロット分析する。下側の非特異的バンド(ns)はmock対照にも存在する(データ不掲載)。
【図5】インビトロで発現されるβ6−β7ループ変異体のSDS−PAGE泳動 インビトロで翻訳された35Sメチオニン標識したCerK WTおよび変異体を、SDS−PAGEし、次いでオートラジオグラフィーして分析する。
【図6】β6−β7ループ変異体は、増加した熱安定性を示す。 左側、WTまたはCerK 90/91変異体のC末端をFLAG−6×Hisで標識したタンパク質を過剰発現するCOS−1細胞の全細胞溶解物を、30℃にて示した時間プレインキュベートし、その後、残った活性をアッセイする。右側、20%グリセロールの存在が、90/91 CerK変異体タンパク質の不活性化を阻害する。これは、同じ結果の2つの実験のうちの1つである。
【図7】β6−β7ループ変異体は、トリプシンにより感受性である。 両方ともC末端を6×His−FLAG標識した野生型および変異体CerKを、COS−1細胞で過剰発現させ、溶解緩衝液中に採集する。溶解物を異なる量(0;0.001;0.01;1μg/ml)のトリプシンと共にインキュベートする。30分のインキュベーション後、サンプルをPAGE分析用に処理する。ウエスタンブロッティングを、抗FLAG抗体を用いて行った。これは、同じ結果の2つの実験のうちの1つである。
【図8】β6−β7ループ変異体は、凝集しやすい。 ウエスタンブロッティング分析を、図8のように行った。白抜き矢印は、90/91/96/98変異体の多量体形態を示す。
【図9】β6−β7ループ変異体は、トライトン可溶性膜成分から回収されない。 野生型CerKの細胞画分を、PHドメインを欠失したCerKアレル、本発明の90/91/96/98変異体、ならびにキナーゼ作用を欠くCerK G198D変異体と比較した。全ての構築物は、C末端で6×His−FLAG標識されている。細胞分画を実験方法部分に記載の方法で行い、得られた画分をSDS−PAGEし、次いで抗FLAG抗体を用いてウエスタンブロットして解析する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2のポリペプチドをコード化する単離ポリヌクレオチド。
【請求項2】
配列番号1の単離ポリヌクレオチド。
【請求項3】
配列番号2の単離ポリペプチド。
【請求項4】
配列番号1のポリヌクレオチドによりコード化される単離ポリペプチド。
【請求項5】
請求項1または2のいずれか一項記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項6】
請求項1または2のいずれか一項記載のポリヌクレオチドを含む発現系であって、該発現系またはその一部が適合性宿主細胞中に存在するとき、請求項1記載のポリペプチドを産生し得る、発現系。
【請求項7】
請求項4記載の発現系を含む宿主細胞。
【請求項8】
培養物中にて請求項3または4のいずれか一項記載のポリペプチドの産生に十分な条件下で請求項7記載の宿主細胞を培養すること、および該培養物から請求項3または4のいずれか一項記載のポリペプチドを回収することを含む、請求項3または4のいずれか一項記載のポリペプチドの製造方法。
【請求項9】
適当な培養条件下で請求項3または4のいずれか一項記載のポリペプチドを産生する宿主細胞を、請求項6記載の発現系を用いて形質転換またはトランスフェクションすることを含む、請求項3または4のいずれか一項記載のポリペプチドを産生する組換え宿主細胞の製造方法。
【請求項10】
診断用試薬としての、請求項1または2のいずれか一項記載のポリヌクレオチド、または請求項3または4のいずれか一項記載のポリペプチドの使用。
【請求項11】
セラミドキナーゼのアゴニストまたはアンタゴニストを同定するためのスクリーニングアッセイであって、該アッセイが、主な構成成分として、
a)請求項3または4のいずれか一項記載のポリペプチド、または
b)a)のポリペプチドを発現する組換え細胞、または
c)a)のポリペプチドを発現する細胞膜、および
d)候補化合物と請求項3または4のいずれか一項記載のポリペプチドの結合作用を決定する手段
を含む、スクリーニングアッセイ。
【請求項12】
セラミドキナーゼの産生および/または生物学的活性を増加または減少するアゴニストまたはアンタゴニストを同定するための方法であって、該方法が、
A)
A1)請求項3または4のいずれか一項記載のポリペプチド、または
A2)A1)のポリペプチドを発現する組換え細胞、または
A3)A1)のポリペプチドを発現する細胞膜
を候補化合物と接触させる工程、
B)
候補化合物とA1)、A2)またはA3)のいずれか1つのポリペプチドとの結合作用を決定する工程、
C)
工程B)で決定されたA1)、A2)またはA3)との結合作用から、候補化合物の;
C1)セラミドキナーゼタンパク質、または
C2)セラミドキナーゼタンパク質を発現する組換え細胞、または
C3)セラミドキナーゼタンパク質を発現する細胞膜、または
C4)C1)のポリペプチドに対する抗体
に対する作用を決定する工程、
D)
工程C)で決定されたアゴニストまたはアンタゴニストを選択する工程、
を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−525034(P2009−525034A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552797(P2008−552797)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050920
【国際公開番号】WO2007/088171
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】