説明

セルフクライミング工事用リフト

【課題】構成を簡素化し、主として高層RC建築物の建設工事現場での型枠など資材の盛替え作業を合理的に効率よく実施することのできるセルフクライミング型工事用リフトを提供する。
【解決手段】マスト2の上部に、突出時に上部に位置するマスト支持案内手段20の支持アーム22上に保持される一対のマスト支持脚5を設け、搬器10の荷台17上部両側に、クライミング時に建築物の階層床上に載って搬器10を固定する左右一対のクライミング用受支梁18を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として高層建築物の躯体内部での構築作業に使用されて作業の進捗に応じ順次高層階へセルフクライミングが行えるようにユニット化されたセルフクライミング型工事用リフトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高層RC建築物の建設工事では、躯体工事における構築資材(鉄筋や型枠など)の荷揚げはタワークレーンでもって行われることが多い。このタワークレーンの負荷を軽減するのに、型枠やサポートなどの機材の運搬をタワークレーンとは別に設置される工事用リフトによって行う場合がある。この工事用リフトは、躯体工事において下階から上階へ順次仕上げ作業が行われることから、型枠解体を行う階と型枠建て込みを行う階との間で、その型枠などの盛替えを行うのに使用される。そこで前記工事用リフトは、建物のコア部の階段室やエレベータの昇降路となる個所を利用して設置されたマストに沿って搬器を昇降させて型枠やサポートなどの資材を揚重するようにされる。
【0003】
また、高層RC建築物の建設工事では、躯体工事と並行して下階から上階へと順次仕上げ工事が行われるので、その仕上げ材の揚重や作業員の昇降のためのエレベータが用いられる。構築される躯体内にそれらクレーンやエレベータ・リフトなどの揚重装置を効果的に設置しようとすると、建物内部の空きスペースが多くないため、不都合を来すことになる。しかも、工事用リフトや工事用エレベータにおいては、作業の進捗に応じて搬器を案内支持するマストを上方へ延長させる必要がある。そのために、設備コストが増加するのが避けられない。
【0004】
そこで、揚重装置の設置スペースを確保するために、特許文献1においては、例えば工事用リフトとエレベータとを一軸上に組み合わせて、上部に工事用リフトを配し、下部にエレベータを配して上下で使い分けるように構成され、かつ上下の工事用リフトとエレベータとが、躯体工事の進捗に応じてそれぞれの機能を維持してクライミングできる構造とされる揚重装置が提案されている。
【0005】
一方、型枠や支保工などの機材を上部階への揚重するのに使用されるクライミング型工事用エレベータ(リフト)については、建築中の躯体の壁面に沿って設置される装置として、例えば特許文献2によって知られるものがある。
【0006】
また、構築される建築物の躯体内部で開口部を利用して資材を揚重する工事用リフトのマストを支持しクライミングさせる案内手段については、建物の躯体側に配置するブラケットに、前記工事用リフトのマストの両側に配される縦部材を両側から抱えるように当接する複数のガイドローラを付設し、それらのガイドローラによりマストの縦部材を案内する構成について、例えばエレベータもしくはクライミング作業足場に採用されたものが特許文献3あるいは特許文献4によって提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−284179号公報
【特許文献2】特開平9−302938号公報
【特許文献3】特開平8−231161号公報
【特許文献4】特許第3112650号公報
【0008】
しかしながら、前記特許文献1によって知られる揚重装置では、エレベータとリフト装置とを組み合わせた特定構造とされるので、構造的に複雑化してコストアップになるという問題点がある。しかもエレベータマストを基準にとするという使用条件が特定され、作業現場の事情に合わせて設置する自由度が認められず一般的でない。
【0009】
また、前記特許文献2によって知られるクライミング型工事用エレベータでは、クライミング操作を行わせるために、通常時には、建物の躯体に設置される支持脚と昇降支持体(ガイドレール)とを着脱可能な固定金具によって締結支持する構造とされ、昇降支持体をクライミングする際には駆動機を備える搬器の昇降フレームと支持脚とを別途固定金具によって結合して昇降支持体をフリーな状態に切り替えて作動させる構成である。そのために、このクライミング型工事用エレベータでは、昇降支持体と搬器とが支持脚に対してクライミング時に異なる固定金具を用いて切り替え固定操作しなければならない。したがって、部品点数が多くなり、構造的にも複雑になるほか、固定金具と昇降支持体または固定金具と昇降フレームおよび支持脚とを選択してボルト締結するという煩雑な作業が必要になるという問題点がある。
【0010】
また、前記特許文献3,4によって知られる工事用エレベータのマストの支持案内手段では、マストを構成する縦部材(ガイドレール)に外側の二方または三方からガイドローラをあてがって、上下に移動自在に支持する構造とされている。しかしながら、その開示構成では構造が複雑であるので高価になるのが避けられないという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、構成を簡素化し、主として高層RC建築物の建設工事現場での型枠など資材の盛替え作業を合理的に効率よく実施することのできるセルフクライミング型工事用リフトを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明によるセルフクライミング型工事用リフトは、
前面にラックとその両側にガイドレールとが配され、後面両側に支持案内レールが配されて枠組み形成され、建築物の階層床に設けられた開口を通じて上下方向に少なくとも複数階に跨り延びるマストと、
前記建築物の階層床上に配置され、左右一対の突梁先端部に前記マストの両支持案内レールに外側から当接するガイドローラをそれぞれ備えて、マストを上下移動可能に抱持する複数のマスト支持案内手段と、
前記マストの前面に昇降自在に架設されて前記ラックに噛合するピニオンおよびそのピニオンを回転駆動させるモータを搭載した駆動フレームと、この駆動フレームに連結されて前記マストに沿って昇降自在な荷台とを備える搬器とで構成され、
前記マストの上部には、両側に伸縮可能に設けられ突出時に上部に位置する前記マスト支持案内手段の突梁上に保持される一対のマスト支持脚が設けられ、
前記搬器の荷台上部両側には、伸縮可能に設けられクライミング時に前記建築物の階層床上に載って搬器を固定する左右一対の受支梁が設けられている
ことを特徴とするものである。
【0013】
本発明において、前記マスト支持脚は、鞘管に形成されてなる主部材と、この主部材の内部に収まって外向きに出入りする受支脚とで構成され、前記受支脚は前端部または後端部に操作ハンドルが付設され、前記主部材に対し受支脚の突出限と収縮限とが規制されるとともに、その定位置に固定できる構成であるのが好ましい。
【0014】
また、前記マストの上頂部および下端部には、該マストの前面方向に搬器の抜け止め部材がそれぞれ突設され、下部の抜け止め部材にはバッファが付設されているのが良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、リフト装置全体をユニット化して省スペースで設置でき、別途部品を使用することなく装置の一部を出し入れしてマストあるいは搬器を躯体側に保持させることによりクライミング操作が簡便に行えるので、例えば構築中の建物内に設置して上下階での資材の運搬作業に用いて効果的である。
また、クライミング操作を実施する際には、搬器の荷台上や建物の作業階床上にて支持手段の切り替え操作が行えるので、安全で簡便に作業できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るセルフクライミング工事用リフトの全体正面図
【図2】図1のA−A視側面図
【図3】セルフクライミング工事用リフトの平面図
【図4】マストとマスト支持案内手段との関係を表わす平面図(a)および(a)のB−B視図(b)
【図5】マスト支持要部を表わす側面図
【図6】図5のC−C視図
【図7】マスト支持脚の要部断面図
【図8】クライミング操作手順を表わす図
【図9】図8(a)のD視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明によるセルフクライミング型工事用リフトの具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1には、本発明の一実施形態に係るセルフクライミング型工事用リフトの全体正面図が示されている。図2には、図1のA−A視側面図が、図3には、平面図が、図4には、マストとマスト支持案内手段との関係を表わす平面図(a)および(a)のB−B視図(b)が、図5には、マスト支持要部を表わす側面図が、図6には、図5のC−C視図が、図7には、マスト支持脚の要部断面図が、それぞれ示されている。
【0019】
本実施形態のセルフクライミング型工事用リフト1は、図1および図2に示されるように、構築する建物の複数階層N〜Nに跨る高さ寸法のマスト2と、このマスト2の前面に沿って昇降自在に架設されて自走する搬器10と、建物の床に設けられた開口部40の縁部床上に配置されて前記マスト2を上下動可能に支持する複数基のマスト支持案内手段20とで構成されている。
【0020】
前記マスト2は、四隅部に主部材として丸パイプ材よりなる縦部材2a,2bがそれぞれ配置されて、上下端部と中間部とに枠体が配され、かつ側面部が斜材で繋がれて溶接構造により一体枠組み形成されている。そして、このマスト2は、所定長さに形成されたマストセグメントが上下両端面に設けられている取付座に設けた接続孔部でボルト締結されて、複数個直列に接続して一体構成されている。前記四隅の縦部材2a,2bは、前側の縦部材2aが搬器10のガイドレールとなり、後側の縦部材2bがマスト支持案内手段20により上下動可能に支持される支持案内レールとなる。そして、前面側には前記縦部材(ガイドレール)2aに並行してラック3が全長にわたり付設されている。
【0021】
また、マスト2の頂部と下端部とには、取付座を利用してそれぞれ抜け止め部材4,4′が取付けられている。この抜け止め部材4,4′は、マスト2の前面側へ所要寸法突出して取付けられ、その突出部分によって前記搬器10のフレームの移動を阻止して上下各限界での搬器10の逸走防止(抜け止め)となるようにされている。なお、下部の抜け止め部材4′の突出部上面にはバッファ4aが取付けられて、搬器10移動時の下限における緩衝機能を構成している。
【0022】
さらに、前記マスト2の上部に配される支持マストセグメント2Aには、左右両側面からマスト軸線に直交して外向きに突き出し伸縮可能なマスト支持脚5が付設されている。このマスト支持脚5は、断面角形鞘管に形成されてなる主部材51と,この主部材51内部に収まって外向きに出入りする受支脚52、52とを備えている。主部材51は、支持マストセグメント2Aの中間部に取付部材53を介して水平状態で一体に取付け形成されている。したがって、このマスト支持脚5を備える支持マストセグメント2Aは、外形的に他のマストセグメントと同様であるが通常時にマスト支持脚5を介してマスト2全体を建物に支持する機能を備えている。なお、この支持マストセグメント2Aは、必要に応じてマスト2の中間部に組み込まれるようにしてもよい。
【0023】
前記マスト支持脚5における主部材51には、側面中間位置に前記受支脚52を貫通してボルト54が取付けられている。一方、この主部材51にスライド可能に挿入される受支脚52は、前記マスト2に組み込まれている取付部材53の幅方向の約1/2の長さ寸法に形成され、前端部に上向きに突設する操作ハンドル56を有している。したがって、この受支脚52を主部材51から突き出し操作するときには、操作ハンドル56を持ってスライドさせる。その操作ハンドル56は上方に突出され、建物の床側から操作が容易なようにされている。また、前記受支脚52には、側面に所要区間前記ボルト54の貫通する個所から長手方向に長孔55が設けられ、この長孔55によって受支脚52のスライドが規制されるようになっている。また、前記主部材51の上面には、図7に示されるように、外寄りの位置にロックピン孔56が設けられ、受支脚52側には最大突出し時に主部材51側のロックピン孔56に対応する個所と収縮時の対応個所にそれぞれピン孔57,57´が設けられ、受支脚52が突出した際には主部材51のロックピン孔56と受支脚52の後端側ピン孔57とを通じてロックピン58を挿入することにより受支脚52を固定するようにされている。また、受支脚52を収縮させた際には主部材51のロックピン孔56と受支脚52の前端側のピン孔57′を合致させてロックピン58を挿入することにより受支脚52を固定するようにされている。なお、前記操作ハンドル56は、必要に応じて受支脚52の後端に取付けることもできる。この場合、主部材51の上面中間部は開口して操作ハンドルの配置を妨げないようにする。
【0024】
前記マスト支持案内手段20は、図4(a),(b)および図5にて示されるように、建物に対するリフト設置個所のリフト支持部(梁部材)上面に架設する受け梁21と、先端部に前記マスト2の後側の縦部材2b(支持案内レール)を外側から抱持するように当接する三個のガイドローラ25a,25b,25bを備えて、基部22aを前記受け梁21の上面に取付けられる左右一対の支持アーム22,22(本発明の突梁に相当する)とで構成されている。したがって、マスト2はこのマスト支持案内手段20の両支持アーム22,22間に、その支持アーム22下内側に付設のガイドローラ25a,25b,25bを介して上下方向移動可能に支持される。そして、揚重作業態勢での最上部のマスト支持案内手段20における支持アーム22,22先端上部には、前記マスト2のマスト支持脚5が受支されてマスト2が支持されるように構成されている。
【0025】
前記受け梁21は、前記マスト2の幅寸法より長い寸法のH型鋼で形成され、その両端部には下側に建物に設けてあるアンカーボルトとの取付孔が設けられ、上側には支持アーム22の取付孔が設けられている。この受け梁21は、リフトが設置される構築中の建物における階床の開口部40の縁上面に沿って並行するように配置される。なお、マスト支持案内手段20は、少なくとも3基各階床に配置される。また、このマスト支持案内手段20は、さらに1基を予備として、クライミング作業時に最上位階に配置される。
【0026】
前記支持アーム22は、前記受け梁21の上面に基部22aを取付孔部でボルト締結されて受け梁21と直交する向きで水平状態に所要長さ突出し、その先端部22b側面に付設されたガイドローラ25a,25b,25bでマストの縦部材(支持案内レール)2bを抱持することができるように形成されている。したがって、前記ガイドローラは、支持アーム22から垂下付設されるブラケットにて軸線に直交する向きで回転自在に配置される1個のローラ25aと、前記ブラケット26にて回転自在に支持されて前記縦部材2aを前後方向から抱持するように配設される2個のローラ25b,25bとよりなり、これら3個のガイドローラ25a,25b,25bにてマスト2の片側の縦部材(支持案内レール)2bを抱持するようにされ、これらガイドローラ25a,25b,25bが左右対称に2組配されている。
【0027】
前記搬器10は、駆動モータ12を備えてこの駆動モータ12に繋がる駆動軸上のピニオンとマスト2に付設のラック3とが噛み合って、そのマスト2のガイドレール2aに案内されて昇降する駆動フレーム11と、この駆動フレーム11に連結されて昇降する搬器フレーム15と、この搬器フレーム15の前面にて水平に張出し架設される所要面積に形成された荷台17とで構成されている。
【0028】
前記駆動フレーム11は、上下両側にブラケットを介して付設されたガイドローラ13,13′が前記マスト2の左右ガイドレール2aを前後および外側から抱持するようにして装架されている。マスト2に付設のラック3と噛み合うピニオンは、駆動モータ12に繋がる駆動軸上に取付いている。なお、この駆動モータ12は制動機構を備えている。
【0029】
前記搬器フレーム15は、上下両側にブラケットを介して付設のガイドローラ16,16′が前記マスト2の左右ガイドレール2aを前後および外側から抱持するようにして装架され、前面に荷台17が一体的に取付けられ、下端部で前記駆動フレーム11の頂部と連結されて駆動フレーム11に従動する構成である。
【0030】
前記荷台17は、所要面積(例えば構築中の建物に設けられた各階床を上下方向に連通する開口部40内で昇降容易な外形)の荷台床17Aを備え、一側部に起倒可能に踏み板17aを備え、周囲を手摺17bで囲った構成とされ、上面左右両端部の搬器フレーム15寄りの位置に搬器フレーム15に並行してクライミング用受支梁18が付設されている。
【0031】
前記クライミング用受支梁18は、荷台枠17Aに固着する鞘筒状の支持部材18aと、この支持部材18a内で外向きにスライド自在な受け梁18bとで構成され、前記マスト2に設けられたマスト支持脚5と同様の構造を有している。なお、このクライミング用受支梁18は、クライミング操作時以外は荷台17から突出さないようにされている。
【0032】
前記踏み板17aは、荷台床17Aの下面左右両側に付設された電動シリンダー19によって起倒可能に構成されている。なお、この踏み板17aの起倒操作は作業階に配置した操作スイッチ(例えばペンダントスイッチ)によって行われ、搬器10が昇降する時には必ず起立状態でのみ昇降運転できるようにされている。
【0033】
このように構成されるセルフクライミング工事用リフト1は、図1で示されるように、例えば構築中の建物の階段室やエレベータの昇降路などの上下方向に連通開口する個所に設置して使用される。具体的には建物の各階床N、N、Nの各開口部40の床縁上に、それぞれマスト支持案内手段20を配設し、これらマスト支持案内手段20の各支持アーム22に付属するガイドローラ25a,25b,25bで縦部材(支持案内レール)2bを抱持させてマスト2を開口部40に設置する。なお、このマスト2は、前述のように、最上部に位置するマスト支持案内手段20の左右両支持アーム22,22の先端上部に、マスト2上部の支持マストセグメント2Aに付設されたマスト支持脚5を受支させることによりマスト2全体の質量が受支され、各マスト支持案内手段20のガイドローラ25a,25b,25bによって後部の縦部材(支持案内レール)2bが抱持されて直立状態に安定支持される。したがって、駆動モータ12を運転することにより搬器10がマスト2に沿って昇降され、例えば高層RC建築物の建設工事における下部階床で解体された型枠など上部階床に盛替え作業などに使用して、開口部を有効に利用して建物内部での資材等の揚重作業を容易にすることができる。
【0034】
次に、本実施形態のセルフクライミング工事用リフト1におけるクライミング操作について、図8(a),(b)〜図9により説明する。
【0035】
まず所要作業が終了した階層から上層階にセルフクライミング工事用リフト1をクライミングさせるには、作業開始前に、別途予備として用意してあるマスト支持案内手段20をN階の開口部40縁上に設置する。次いで、搬器10をN階まで上昇させる(図8(a)で示す)。この位置で荷台17上に設けられている両側の各クライミング用受支梁18の受け梁18bを、荷台床17A上から建物の開口部40縁上位置まで引き出す。こうして搬器10をやや下降させて前記各クライミング用受支梁18の受け梁18bが階床の開口部40縁上に接するまで移動させて運転を停止させる。こうすることにより、クライミング用受支梁18および荷台17を介して搬器10が階床に静止し受支される。
【0036】
次に、マスト2付設のマスト支持脚5をマスト2内部に引き込んで後、搬器10の駆動モータ12を下げ方向に駆動させる。すると、搬器10は前述のようにクライミング用受支梁18によって建物の開口部40の縁部に受支されて静止状態になっているので、搬器10とは逆にマスト2がピニオンの回転でラック3を介して上向きに駆動され、図8(b)で示されるように、マスト2を上昇させることができる。
【0037】
マスト2が上昇されると、予め上階床(N)に配置してあるマスト支持案内手段20のガイドローラ25a,25b,25bによってマスト2の支持案内レール2b上部がマスト支持案内手段20の内側に受入れられて案内される。したがって、マスト2が無理なく直立状態を保って上昇でき、マスト支持脚5が図8(b)で示すように、上部階Nのマスト支持案内手段20位置上まで上昇した後、駆動モータ12による駆動を停止させる。次いで、マスト支持脚5の受支脚52を外側へ突出させる(図7参照)。この受支脚52の突き出し操作は、作業階床上でマスト支持案内手段20の設置位置側から操作ハンドル56を持って操作できるので安全に操作できる。
【0038】
こうしてマスト支持脚5がマスト2の両外側に突出された後、駆動モータ12を逆転させてマスト2を少し下降させることにより、前記マスト支持脚5が当該位置のマスト支持案内手段20の支持アーム22上に当接して支持され、マスト2のクライミング操作が終了する。したがって、クライミング作業によって使用済みになったN階のマスト支持案内手段20を取り外し、次に上昇移動する上の階に運んで前記要領で設置使用する。
【0039】
マストのクライミング後は、搬器10における各クライミング用受支梁18の受け梁18bを収縮させ、搬器10の移動が自由に行える状態に復帰させれば、駆動モータ12を起動して昇降自在な状態とすることができる。以後、クライミング作業時には前記操作を繰り返し行うことによりリフト装置全体を順次上昇移動させることができる。
【0040】
この実施形態では、リフト装置を建物の上下に貫通した開口部にマストを設置することにより、別途機材を使用することなく順次クライミング操作を行って作業の進捗に応じて上部階層への資材等の運搬作業が容易に行え、作業効率を高めることができる。また、クライミング操作に際しては、別途部材を使用することなく、搬器の荷台上や建物の作業階床上にて支持手段の切り替え操作が行えるので、安全で簡便に作業できる利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のセルフクライミング型工事用リフトは、高層建築物の躯体内部での構築作業に際して作業の進捗に応じ順次高層階へセルフクライミングが容易に行えるので、上下階での資材の運搬作業に用いて好適である。
【符号の説明】
【0042】
1 セルフクライミング型工事用リフト
2 マスト
2A 支持マストセグメント
2a 縦部材(ガイドレール)
2b 縦部材(支持案内レール)
3 ラック
4,4′ 抜け止め部材
5 マスト支持脚
10 搬器
11 駆動フレーム
12 駆動モータ
13,13′ ガイドローラ
15 搬器フレーム
16,16′ ガイドローラ
17 荷台
18 クライミング用受支梁
18a 支持部材
18b 受け梁
20 マスト支持案内手段
21 受け梁
22 支持アーム(突梁)
25a,25b ガイドローラ
40 開口部
51 主部材
52 受支脚
53 取付部材
56 操作ハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面にラックとその両側にガイドレールとが配され、後面両側に支持案内レールが配されて枠組み形成され、建築物の階層床に設けられた開口を通じて上下方向に少なくとも複数階に跨り延びるマストと、
前記建築物の階層床上に配置され、左右一対の突梁先端部に前記マストの両支持案内レールに外側から当接するガイドローラをそれぞれ備えて、マストを上下移動可能に抱持する複数のマスト支持案内手段と、
前記マストの前面に昇降自在に架設されて前記ラックに噛合するピニオンおよびそのピニオンを回転駆動させるモータを搭載した駆動フレームと、この駆動フレームに連結されて前記マストに沿って昇降自在な荷台とを備える搬器とで構成され、
前記マストの上部には、両側に伸縮可能に設けられ突出時に上部に位置する前記マスト支持案内手段の突梁上に保持される一対のマスト支持脚が設けられ、
前記搬器の荷台上部両側には、伸縮可能に設けられクライミング時に前記建築物の階層床上に載って搬器を固定する左右一対の受支梁が設けられている
ことを特徴とするセルフクライミング工事用リフト。
【請求項2】
前記マスト支持脚は、鞘管に形成されてなる主部材と、この主部材の内部に収まって外向きに出入りする受支脚とで構成され、前記受支脚は前端部または後端部に操作ハンドルが付設され、前記主部材に対し受支脚の突出限と収縮限とが規制されるとともに、その定位置に固定できる構成である請求項1に記載のセルフクライミング工事用リフト。
【請求項3】
前記マストの上頂部および下端部には、該マストの前面方向に搬器の抜け止め部材がそれぞれ突設され、下部の抜け止め部材にはバッファが付設されている請求項1または2に記載のセルフクライミング工事用リフト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−222083(P2010−222083A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69355(P2009−69355)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(599016110)株式会社エスシー・マシーナリ (2)
【出願人】(390022611)株式会社コシハラ (15)
【Fターム(参考)】