説明

セルフラーニング機能を有する音響システム

【課題】 ユーザ自身で操作の学習を進められるセルフラーニング機能を有する音響システムを提供する。
【解決手段】 制御部2においてラーニングコンテンツ2cが実行されるとラーニングモードとされ、エンジン部4および音声I/O部5はバス6,7から切り離される。制御部2において仮想的な信号処理手段がエミュレートされ、制御部2はラーニングコンテンツに基づいて所定の操作の指示をバス6,7を介してコンソール部3に送る。コンソール部3では、指示に応じてユーザが操作したパネル操作子からの操作制御信号を、バス6,7を介して制御部2が受け取る。制御部2では、受け取った操作制御信号を記録すると共に分析して操作の指示が正しく行われたかの照合を行い、照合結果を提示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、音響機器の操作を実機を使用して学習することのできるセルフラーニング機能を有する音響システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミキサー等の音響システムにおいては、製品の性質上、そもそも概念が難しかったり操作が難しいものが多い。このため、メーカーは、定期的にセミナーを開催するなどしたり、メーカーのウェブサイトに、機器ごとの基本的な使い方を紹介したムービーを公開するなどしている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】ヤマハ株式会社 M7CL オンラインセミナー(日本語字幕版) Part 1: M7CLの概要 [online], [平成21年10月20日検索],インターネット<URL:http://proaudio.yamaha.co.jp/training/self_training/m7cl_seminar_01/index.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、セミナーは日程を合わせなければならないため、ユーザにとって常に参加できるわけではなく、ムービーの視聴では、使い方の映像を流すだけで、ユーザにとってはインタラクティブなシステムではないと共に、いずれも、ユーザが自身の好きなタイミングでインタラクティブに使い方を学べるものではない云う問題点があった。
特に、ミキサーでは、例えばハウリング等に対するリアルタイムな操作が要求されるが、昨今のミキサーにおいては操作メニューが階層化されており、階層化された操作メニュー上において操作する際には、これらの操作に慣れていないと即応することが難しいと云う問題点があった。
そこで、本発明は、ユーザ自身で操作の学習を進められるセルフラーニング機能を有する音響システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明のセルフラーニング機能を有する音響システムは、複数の入力信号系列と、複数の出力信号系列とを有し、前記複数の入力信号系列を信号処理して前記複数の出力信号系列に出力する音響システムであって、前記信号処理の設定操作を少なくとも行えるパネル操作子と、通信バスに接続可能な通信インタフェースとを備え、前記パネル操作子の操作に応じた操作制御信号を前記通信インタフェースを介して前記通信バスに出力するコンソール部と、該コンソール部から供給される前記制御信号により設定操作が可能とされ、前記複数の入力信号系列からの入力信号に信号処理を施して前記複数の出力信号系列から出力する信号処理手段と、通信バスに接続可能な通信インタフェースとを備えるエンジン部と、格納されているラーニングコンテンツを実行可能な処理手段と、通信バスに接続可能な通信インタフェースとを備える制御部とを備え、通常モード時においては、前記コンソール部から前記通信バスに出力された前記操作制御信号を、前記エンジン部が前記通信バスから前記通信インタフェースを介して受け取り、受け取った前記操作制御信号に基づいて前記信号処理手段が設定操作され、前記制御部において前記ラーニングコンテンツが実行された際にラーニングモードとされ、ラーニングモード時においては、前記エンジン部は停止されて、前記制御部において仮想的な信号処理手段がエミュレートされ、前記制御部は前記ラーニングコンテンツに基づいて所定の操作の指示を前記通信バスを介して前記コンソール部に送り、前記コンソール部において前記制御部からの指示に応じて操作された前記パネル操作子からの操作制御信号を、前記通信バスを介して前記仮想的な信号処理手段が受け取り、受け取った操作制御信号を記録すると共に分析して前記所定の操作の指示が正しく行われたか前記所定の操作の指示の内容との照合を行い、照合結果を提示するようにしたことを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ユーザが実際に実機を操作しながら、実機の使い方を習得することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例にかかる音響システムの構成を示す図である。
【図2】本発明にかかる音響システムのラーニングモード時の等価的な構成を示す図である。
【図3】本発明にかかる音響システムの等価的なハードウェアの構成を示すブロック図である。
【図4】本発明にかかる音響システムがラーニングモードとされた際に、制御部とコンソール部で行われる処理を示すシーケンス図である。
【図5】本発明にかかる音響システムがラーニングモードとされた際に、制御部で実行される記録処理のフローチャートである。
【図6】本発明にかかる音響システムがラーニングモードとされた際に、制御部で実行される分析/確認処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施例にかかる音響システムの構成を示す図を図1に示す。
図1に示す音響システム1は、コンソール部3とエンジン部4と音声I/O部5とに分離されており、さらに制御部2として動作するパーソナルコンピュータ(PC)を備えている。制御部2とコンソール部3は、UI画面を表示するディスプレイとUI画面上で入力する操作子からなるユーザインタフェース(UI)を備えている。制御部2ないし音声I/O部5は、それぞれ通信インタフェースを有しており各部はコマンドバス6とデータバス7の2本の通信バスにそれぞれ接続されて、相互に制御信号およびディジタルオーディオ信号の授受を行っている。コンソール部3はCPU(Central Processing Unit)3aとメモリ3bとを備えており、コンソール部3を操作するオペレータは、観客が聴取する音を聴きながらコンソールパネル上のフェーダや操作子をミキシング操作している。エンジン部4はCPU4aとメモリ4bを備え音響信号を信号処理するDSP(ディジタル信号処理装置:Digital Signal Processor)として機能している。音声I/O部5はCPU5aとメモリ5bと図示しないアナログオーディオ信号やディジタルオーディオ信号を入出力する複数のユニットを備えている。このユニットには、アナログ入力信号をディジタル信号に変換するアナログ信号入力用のADユニットと、ディジタルオーディオ信号を入出力するDIOユニットと、信号処理されたディジタルオーディオ信号をアナログオーディオ信号に変換して出力するアナログ信号出力用のDAユニットとが用意されている。音声I/O部5からのディジタルオーディオ信号は、エンジン部4にデータバス7を介して送出されており、エンジン部4から出力されるディジタルオーディオ信号はデータバス7を介して音声I/O部5に送出されている。
【0009】
本発明の実施例にかかる音響システム1では、制御部2ないし音声I/O部5の各機器間においてはコマンド(イベント)の送受信で通信を行っており、マイク/ラインから音声I/O部5に入力されるアナログオーディオ信号はディジタルオーディオ信号に変換されてデータバス7に送出され、ディジタルオーディオ信号はそのままデータバス7に送出されてエンジン部4に供給されるようになる。そして、コンソール部3において、ディスプレイに表示されたUI画面を見ながらディジタルオーディオ信号の音量や音色を、コンソール部3のコンソールパネルに備えられた各種パネル操作子をオペレータが操作することにより、演奏を最もふさわしく表現していると思われる状態になるように操作制御している。この操作制御では、ミキシングバスに出力される複数の入力チャンネル毎の周波数特性やミキシングバスへの送り出しレベルの調整、ミキシングバスにおいてミキシングされる入力チャンネルのプログラム、ミキシングバスから出力される出力チャンネルの周波数特性や出力レベルの調整等が行われる。
【0010】
コンソール部3においてUIを利用してコンソール部3に設けられている多数のパネル操作子を操作すると、その操作に応じた操作制御信号がコンソール部3からコマンドバス6を介して送出され、エンジン部4に供給される。エンジン部4では、操作制御信号に基づいて設定された信号処理が行われ、信号処理されたディジタルオーディオ信号がデータバス7に送出される。このディジタルオーディオ信号は、音声I/O部5に供給されアナログオーディオ信号に変換されて出力される。出力されたアナログオーディオ信号は、パワーアンプに送られてスピーカから放音されるようになる。なお、音響システム1における制御部2ないし音声I/O部5の各機器は、それぞれメモリ2bないしメモリ5bを有しているが、音響システム1の全体で各機器におけるメモリ上のデータ値を共有している。また、コンソール部3にはモニタ・スピーカが設けられており、オペレータはモニタ・スピーカから流されるモニタ音を聴きながらミキシング操作を行うことができるようにされている。さらに、制御部2においてミキシング制御プログラムを起動することにより、UIを利用してコンソール部3と同様に制御部2が有する操作子の操作に応じた操作制御信号を制御部2からコマンドバス6を介して送出して、エンジン部4に供給することができる。このように、制御部2においてもミキシング制御を行うことができる。
【0011】
図1に示す音響システム1の等価的なハードウェア構成を図3に示す。
図3に示す音響システム1は、CPU(Central Processing Unit)10が管理プログラム(OS:Operating System)を実行しており、音響システム1の全体の動作をOS上で制御している。ROM(Read Only Member)11には、各種データやCPU10が実行する制御処理等の動作ソフトウェアが格納されている。ROM11を書き換え可能なメモリとすることにより、動作ソフトウェアを書き換え可能となり動作ソフトウェアのバージョンアップを容易に行うことができる。RAM(Random Access Memory)12には、CPU10のワークエリアや各種データ等の記憶エリアが設定されている。CPU10は、ミキシング制御プログラムを実行することにより、入力された複数の音響信号に信号処理をDSP(ディジタル信号処理装置:Digital Signal Processor)20により施すと共に混合処理を行っている。
【0012】
表示IF13は、表示器14に音響システム1に関する設定を行うメニュー等の表示画面を表示させる表示インタフェースである。表示器14は、タッチパネル機能を有するLCD(Liquid Crystal Display)からなるディスプレイである。検出IF15は、操作子16をスキャンして、操作子16に対する操作を検出してCPU10に送出している。操作子16は、制御部2やコンソール部3のパネルに設けられている各種操作を行うノブ、フェーダやボタン等の操作子やキーボードやマウス等の操作子である。通信IF17は、通信I/O18を介して外部機器と通信を行うための通信インタフェースである。DSP20はCPU10の制御の基で、入力された音響信号の音量レベルや周波数特性を設定されたパラメータに基づいて調整してミキシングし、音量、パン、効果などの音響特性をそのパラメータに基づいて制御する信号処理を行っている。エフェクタ(EFX)19はCPU10の制御の基で、ミキシングされたオーディオ信号にリバーブ、エコーやコーラス等のエフェクトを付加している。CPU10、ROM11、RAM12、表示IF13、検出IF15、通信IF17、EFX19、DSP20はコマンドバス6およびデータバス7からなる通信バス21を介して制御信号やディジタルオーディオ信号の授受を行っている。
【0013】
EFX19およびDSP20は音声バス25を介して音声I/O部5が備えるAD22、DA23、DD24とデータ等の授受を行っている。AD22は、音響システム1にアナログ信号を入力する複数のアナログ入力ポートであり、AD22において入力されたアナログ入力信号はディジタル信号に変換されて音声バス25に送出される。DA23は、音響システム1から外部へ出力する複数のアナログ出力ポートであり、DA23において音声バス25を介して受け取ったディジタル出力信号はアナログ信号に変換されて、会場やステージに配置されたスピーカから出力される。DD24は、音響システム1にディジタル信号を入力すると共に、外部にディジタル信号を出力する複数のディジタル入力/出力ポートであり、DD24において入力されたディジタル入力信号は音声バス25に送出され、音声バス25を介して受け取ったディジタル出力信号はディジタルレコーダ等に出力される。なお、AD22およびDD24から音声バス25へ送出されたディジタル信号はDSP20が受け取って上記したディジタル信号処理が施される。また、DSP20から音声バス25に送出された楽音波形やディジタル信号はDA23あるいはDD24が受け取るようになる。
【0014】
図3に示す音響システム1において、紙面上において通信バス21より下のCPU10ないし通信I/O18は、図1に示す制御部2およびコンソール部3に相当し、通信バス21を除くEFX19ないしDD24はエンジン部4および音声I/O部5に相当している。また、通信バス21および音声バス25はコマンドバス6およびデータバス7からなる通信バスに相当している。
このように構成された音響システム1において、制御部2にはユーザが音響システム1の設定操作に関してセルフラーニングを行うためのラーニングコンテンツが格納されている。このラーニングコンテンツを制御部2で起動すると、ラーニングモードに切り換えられて、ユーザ自身で進められる音響システム1のセルフラーニングを実行することができる。ラーニングコンテンツには、例えばビデオ教材とラーニングプログラムが含まれており、ラーニングプログラムはビデオ教材の再生制御を行い、再生の進行の要所要所でユーザに対してコンソール部3上において操作を行うよう操作指示を出力してビデオ教材の再生を「操作待ち」状態とする。この指示は、制御部2上のディスプレイに表示されたり音声で指示され、ユーザは指示に応じた操作をコンソール部3上のパネル操作子を操作して行う。この時、制御部2で実行されているラーニングプログラム側とコンソール部3とされる実機側で通信を行うことにより、ユーザが行った操作が検知されて当該操作が確認されて、ビデオ教材の続きが再生されていくようになる。
【0015】
本発明にかかる音響システム1は、通常モードからラーニングモードに切り換えられた際に見かけ上の構成が変更される。すなわち、図1に示す音響システム1は通常モード時の構成であり、図2に示す音響システム1はラーニングモード時の構成とされる。
ここで、音響システム1においてラーニングコンテンツ2cが起動されると、図2に示すラーニングモード時の構成とされる。このラーニングモードにおいては、制御部2においてラーニングプログラムが実行されることにより、DSP20がエミュレートされて制御部2が仮想的なエンジン部として動作するようになる。併せて、エンジン部4および音声I/O部5の通信インタフェースがコマンドバス6およびデータバス7から仮想的に切り離され、実機における音声I/O部5およびエンジン部4のDSP20による信号処理は停止される。また、コンソール部3は制御部2からのモード切換のコマンドにより操作制御信号を制御部2に送るようにされる。さらに、制御部2およびコンソール部3のUI部分は完全動作する。この場合、制御部2の仮想的なエンジン部で生成されたダミーのメータ情報をコンソール部3に送り、コンソール部3に設けられているレベルメータ等のメータが駆動表示される。ラーニングモード時に使用されるコマンドは、セルフラーニング用の専用コマンドとされる。
【0016】
設定操作の一例を挙げると、入力チャンネルのヘッドアンプの設定がコンソール部3において、次の手順で行われるとする。
(1)ヘッドアンプを操作したい入力チャンネルを含むオーバビュー画面を表示させる。オーバビュー画面は、コンソール部3のほぼセンターに設けられた8チャンネル分のチャンネルストリップに現在割り当てられている8チャンネル分の主要パラメータを同時に表示する画面である。
(2)オーバビュー画面におけるヘッドアンプを操作したい入力チャンネルのヘッドアンプの領域にタッチして、ヘッドアンプのポップアップウィンドウを表示させる。
(3)ポップアップ画面内のボタンやパネルに設けられているエンコーダを使って、ヘッドアンプのゲイン、フェイズ、電源のオン/オフを設定する。
(4)設定が終了したら、ポップアップウィンドウを閉じる。
このように、上の階層のメニューから下の階層のメニューへ進んでいくことにより設定操作を行えるようになる。
【0017】
ラーニングコンテンツであるビデオ教材を再生している制御部2は、ビデオ教材における入力チャンネルのヘッドアンプの設定に関しての再生が行われた際に、例えば、「入力チャンネル1のヘッドアンプのゲインを−10dBに設定しなさい」との指示を表示あるいは音声によりユーザに出力して「操作待ち」状態になる。ユーザは指示を受けて、コンソール部3において上記(1)から(4)の操作を行っていくと、ユーザが行った操作の操作制御信号がコマンドバス6を介して制御部2が受け取り、受け取った操作制御信号が分析されて正しく設定操作が行われたかが確認される。正しく設定操作が行われた場合は、設定されたヘッドアンプのゲインが−10dBに設定されることになる。そして、−10dBに設定されたダミーのレベルメータ情報が、制御部2からコンソール部3にデータバス7を介して送られ、コンソール部3のレベルメータの表示が−10dBになるよう駆動される。そして、ビデオ教材の再生が再開されて次の設定操作を行う部分になると、その設定操作の指示が上記と同様にしてユーザに出力されるようになる。このようにして、本発明の音響システム1はラーニングコンテンツを実行することによりセルフラーニングが実現されるようになる。なお、制御部2は指示した設定操作の処理以外の処理は受け付けず、エラーを出す。
【0018】
次に、ラーニングモード時における制御部2とコンソール部3との間で行われる通信のシーケンス図を図4に示す。
図4において、制御部2においてラーニングコンテンツが起動されるとラーニングモードとされて、セルフ・ラーニングが開始される(ステップS20)。これにより、制御部2においてラーニングプログラムが起動されてDSP20がエミュレートされ仮想的なエンジン部としても機能すると共に、モード切換のコマンドがコマンドバス6を介してコンソール部3に送られる。モード切換コマンドを受け取ったコンソール部3は通常モードからラーニングモードに切り換えられて、コンソール部3は操作制御信号を実機のエンジン部4に替えて制御部2の仮想的なエンジン部に送るようになる(ステップS30)。次いで、制御部2ではラーニングコンテンツのビデオ教材等が読み込まれ(ステップS21)、読み込まれたビデオ教材が再生されて制御部2のディスプレイに表示される。そして、再生が操作指示を出力する箇所に達すると、操作指示の内容が表示されると共にその説明が表示されたり音声出力される(ステップS22)。例えば、「チャンネルaをパンさせなさい」、とか、「入力チャンネルbを混合バスへydBで送りなさい」とかの操作指示の表示/説明が行われる。制御部2においては、ビデオ教材の再生は操作待ちとなって一時停止される。
【0019】
ユーザは指示に応じた操作をコンソール部3のUIを使用して行う(ステップS31)と、コンソール部3は操作に応じた操作制御信号を出力する。この操作制御信号は、コマンドバス6を介して制御部2の仮想的なエンジン部に送られ、ラーニングプログラムは受け取った操作制御信号を記録する(ステップS24)と共に、操作制御信号を分析して模範解答との照合および確認を行う(ステップS25)。これにより、ビデオ教材の再生が再開され、ビデオ教材が終了するまでステップS21ないしステップS25の処理が繰り返し行われる。そして、ビデオ教材が終了したりセルフラーニングの終了が指示されると(ステップS26)、制御部2はラーニングモードから通常モードに戻ると共に、モード切換のコマンドがコマンドバス6を介してコンソール部3に送られる。モード切換コマンドを受け取ったコンソール部3はラーニングモードから通常モードに戻り、コンソール部3は操作制御信号を実機のエンジン部4に送るようになる(ステップS32)。
【0020】
次に、上記ステップS24にて実行される記録処理のフローチャートを図5に示す。図5に示す記録処理が開始されると、ステップS40にてユーザが行った操作により操作完了コマンドが出力されたか否かが判断される。ここで、操作完了コマンドが出力されたと判断されると記録処理は終了してステップS25の処理に進む。また、操作完了コマンドではないコマンドが出力されたと判断されるとステップS41に進み、操作内容および操作指示してから操作するまでの反応時間などの情報がメモリに記録される。ステップS41の処理が終了するとステップS40に戻り、ユーザが操作完了コマンドを出力する操作を行うまでステップS40およびステップS41の処理が繰り返し行われる。このように、記録処理では操作完了コマンドが出力されるまでにユーザが行った操作内容および反応時間が記録される。
【0021】
次に、上記ステップS25にて実行される分析/確認処理のフローチャートを図6に示す。
図6に示す分析/確認処理が起動されるとステップS50にて、メモリから操作内容および反応時間データを取得する。このメモリには上記したステップS24にてユーザが行った各操作に関する操作内容および反応時間データが記録されている。そして、ステップS51にて取得した操作の操作内容と模範解答とが照合されて正しい操作が行われたかあるいは誤った操作が行われたかが確認される。次いで、ステップS52の照合結果から誤操作率が算出されることにより、ユーザの熟達度レベル(ランク)がどのくらいであるかが算出ステップS53にてされる。また、ユーザビリティーの評価および問題箇所などの把握を行うために、ステップS54にて照合結果はメーカに送信されて、開発側へフィードバックされる。ステップS53およびステップS54の処理が終了すると分析/確認処理は終了してステップS22あるいはステップS26に進む。
上記したように、照合結果をメーカに送信して開発側へフィードバックすることにより、ある課題に対しての照合結果を見て誤操作率から操作し易いか操作が難しいかの判断を行い、使いやすい製品に改良することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
以上説明した本発明のセルフラーニング機能を有する音響システムにおいては、ユーザが行った設定操作の内容がメーカ側にフィードバックされることから、誤操作率の高い設定操作については問題箇所として把握することができるようになる。また、本発明においては、設定操作を模範解答のシーケンスの順で操作しないとエラーを出すようにしている。しかし、シーケンスの順が異なっていても正しい結果が得られる場合はエラーを出さなくてもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 音響システム、2 制御部、2a CPU、2b メモリ、2c ラーニングコンテンツ、3 コンソール部、3a CPU、3b メモリ、4 エンジン部、4a CPU、4b メモリ、5 音声I/O部、5a CPU、5b メモリ、6 コマンドバス、7 データバス、10 CPU、11 ROM、12 RAM、13 表示IF、14 表示器、15 検出IF、16 操作子、17 通信IF、18 通信I/O、19 EFX、20 DSP、21 通信バス、22 AD、23 DA、24 DD、25 音声バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の入力信号系列と、複数の出力信号系列とを有し、前記複数の入力信号系列を信号処理して前記複数の出力信号系列に出力する音響システムであって、
前記信号処理の設定操作を少なくとも行えるパネル操作子と、通信バスに接続可能な通信インタフェースとを備え、前記パネル操作子の操作に応じた操作制御信号を前記通信インタフェースを介して前記通信バスに出力するコンソール部と、
該コンソール部から供給される前記制御信号により設定操作が可能とされ、前記複数の入力信号系列からの入力信号に信号処理を施して前記複数の出力信号系列から出力する信号処理手段と、通信バスに接続可能な通信インタフェースとを備えるエンジン部と、
格納されているラーニングコンテンツを実行可能な処理手段と、通信バスに接続可能な通信インタフェースとを備える制御部とを備え、
通常モード時においては、前記コンソール部から前記通信バスに出力された前記操作制御信号を、前記エンジン部が前記通信バスから前記通信インタフェースを介して受け取り、受け取った前記操作制御信号に基づいて前記信号処理手段が設定操作され、
前記制御部において前記ラーニングコンテンツが実行された際にラーニングモードとされ、ラーニングモード時においては、前記エンジン部は停止されて、前記制御部において仮想的な信号処理手段がエミュレートされ、前記制御部は前記ラーニングコンテンツに基づいて所定の操作の指示を前記通信バスを介して前記コンソール部に送り、前記コンソール部において前記制御部からの指示に応じて操作された前記パネル操作子からの操作制御信号を、前記通信バスを介して前記仮想的な信号処理手段が受け取り、受け取った操作制御信号を記録すると共に分析して前記所定の操作の指示が正しく行われたか前記所定の操作の指示の内容との照合を行い、照合結果を提示するようにしたことを特徴とするセルフラーニング機能を有する音響システム。
【請求項2】
ラーニングモード時において、前記エミュレートされた信号処理手段は、前記所定の操作の指示に対する前記コンソール部からの操作制御信号を受け取るまでの応答時間を取得すると共に、前記照合結果における誤操作率と前記応答時間から習熟度レベルを算出して、算出した習熟度レベルを提示するようにしたことを特徴とする請求項1記載のセルフラーニング機能を有する音響システム。
【請求項3】
前記コンソール部に備えられているメータ手段は、前記仮想的な信号処理手段で生成された設定に応じたダミーのメータ情報により駆動表示されることを特徴とする請求項1記載のセルフラーニング機能を有する音響システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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