説明

セルロース−熱可塑性樹脂複合材料及びその製造法

脂肪酸ビスアミド、軽石などの無機粒子、セルロース粒子、熱可塑性樹脂、及び無水マレイン酸グラフトポリオレフィンを含む組成物が提供される。エチレンビス−アミド及び少量の軽石の組み合わせは、従来のステアリン酸金属塩/エチレンビス−ステアリン酸アミド(EBS)組成物を超えた優れた押出特性、及び改良された曲げ強度及び耐吸水性などの特性を有するセルロース−熱可塑性樹脂複合材料を作り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願のクロスリファレンス)
本出願は、2005年7月28日出願の米国仮特許出願番号60/704,227に関する優先権を主張する。この仮出願を参考文献として本明細書に援用する。
【0002】
良質木材が不足するにつれて、木材に置換できる代替材料の探索がとても望ましくなった。木材の代替物としては、プラスティックと天然繊維から製造された複合材料が、広く使用されている。商業製品としてこれらの複合材料の使用は、急激に増加している。これらの複合材料は、建築に関わる構造的、装飾的用途、及び自動車用の種々の製品に使用することができる。これらの複合材料は、天然木材と同様な手段で、切断、成形、ペーパー仕上げ、穴あけ、及び固定することができる。
【背景技術】
【0003】
プラスティックと天然繊維から製造されたこれらの複合材料を含む建材は、しばしば押出機により製造される。これらの複合材料を含む建材は、住宅用途及び産業用途の両用途で使用できる。このような用途の例には、敷板、手すり、垣、柱、化粧縁、成形品、羽目板、屋根板、格子、敷居、及びたて枠などがある、木材と比較した時、購買者は、このような複合材料に、低メンテナンスで大きな耐久性及び耐候性を期待する。一般的に、プラスティックと天然繊維から製造されたこれらの複合材料は、耐食性であり、虫の攻撃にも耐性がある。
【0004】
プラスティックと天然繊維から製造されたこれらの複合材の耐久性を最大にすることが、購買者及び製造者に一致して、きわめて重要である。一般的に、これらの複合材料は、天然木材に比較してよりコストが高い。更に、これらは、通常は木材より重く、これらは、施工者にとって潜在的な苦労であり、かつ建築技術者に構造的な問題を提供している。これらの欠点を克服するためには、複合材料は、耐久性及び低メンテナンスに関する優れた利点を提供すべきである。
【0005】
また、プラスティックと天然繊維から製造された複合材は、自動車用途の物品の製造に用いることができる。ノブ、車内ドアーハンドル、及び車内装飾計器盤など種々の部品、並びに消音パネル、トランクライナー、タイヤカバー、蓋付き箱、及びカーペット裏地などの隠し部品が製造されてきた。このような部品は、しばしばプレス加工、又は成形加工される。
【0006】
プラスティックと天然繊維から製造された複合材のその他の用途には、ファイバーボード、パーテイクルボード、及び合板用のシート代替物がある。複合材料は、プランター、たらい、ポット、及び額縁などの雑小物の製造に用いることができる。
【0007】
有用な複合材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びコポリエチレン−ビニルアセテートを含む種々のプラスティックから製造することができる。コストを低減するために再生プラスティックがよく使用される。高密度ポリエチレン(HDPE)は、敷板、手すり、垣、及び類似用途に特によく適する。
【0008】
複合材料のコスト及び重量を低減するために、かつ物理的特性、特に剛性及び抗張力を改良するために、天然繊維が複合材料に用いられる。天然繊維は、低コストである故に、炭素及びガラス繊維のような合成繊維に比べて優れている。天然繊維は、軽量複合材料を形成する故に、タルク、雲母などの鉱物充填材に比べて好ましい。天然繊維は、通常は、他のプロセスからの廃棄物である。木材、新聞紙、板紙、わら、農業及び植物残分などを含む、殆ど任意のセルロース粒子が使用できる。
【0009】
プラスティックと天然繊維から製造された複合材料の形成でよく知られた難題は、繊維とプラスティックとの不混和性である。天然繊維は、その表面に多くの遊離水酸基をもつために親水性である。プラスティックは疎水性である。したがって、プラスティックは、天然繊維の表面を容易に濡らさず、その表面に容易に密着しない。これは、得られた複合材料に強度ロスをもたらす原因になる。
【0010】
この問題は、複合材料にカップリング剤を添加することにより克服できる。カップリング剤は、反応性無水物又は酸成分と繊維表面の水酸基との反応により、エステル結合を形成するように機能すると考えられる。疎水性ポリマー鎖が、繊維表面から外側に伸長し、このポリマー鎖が、ポリマーマトリックスの大部分と相互作用することができる。相互作用の実際の内容は、カップリング剤及びポリマーの選択、及びポリマーの結晶化の程度に依存するであろう。一般的に、カップリング剤は、天然繊維表面に対するプラスティックの密着性を改善する暫定架橋の役割をする。改善された密着性は、プラスティックと天然繊維から製造された複合材料に対して、改善された物理特性、特に、引張り強度及び曲げ強度、耐吸水性(resistance to water absorption)、及び耐クリープ性、並びに線熱膨脹係数(LCTE)の減少をもたらすことができる。
【0011】
プラスティックと天然繊維材料から製造された複合材料を押出加工する場合、複合材料のダイ通過を援助するために、通常は潤滑剤が添加される。不適切に潤滑された系は、異なる速度で押し出される複合材料を生み出すであろう。
これは、鱗片状サメ肌外観から鋸歯状縁端引裂にわたる、複合材料の種々の容認できない物理的欠陥を生む恐れがある。
【0012】
通常用いられる潤滑系は、ステアリン酸亜鉛とN,N’−エチレンビス−ステアリン酸アミド(EBS)ワックスの混合物である。その他の潤滑剤には、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、非金属性ステアリン酸塩、パラフィンワックス、ポリエステルワックス、ポリプロピレンワックス、脂肪酸誘導ビスアミド、エチレンビス−オレイン酸アミド、エステル類:ステアリルステアレート、ジステアリルフタレート、ペンタエリトリットアジペートステアレート、エチレングリコールジステアレート、ペンタエリトリットテトラステアレート、グリセロールトリステアレート、ポリエチレングリコール400モノステアレート、グリセロールモノオレエート、グリセロールジステアレート、及び混合された複合変性脂肪酸エステルなどがある。
【0013】
不幸なことに、通常使用されるステアリン酸亜鉛−EBS潤滑系がカップリング剤を妨害することが判明した。ステアリン酸亜鉛が、無水マレイン酸グラフトオレフィンカップリング剤を妨害する原因であることが示唆された。ステアレート環が開き、かつ無水物基をエステル化し、その間に、亜鉛が、生じたカルボキシレートをキレート化合物にする。その結果、このカップリング剤は、プラスティックと天然繊維から製造された複合材料の物理特性を期待するほどには改善しない。
【0014】
プラスティックと天然繊維から製造された、かなりな種類の商業的複合材料は、カップリング剤を使用することなく、ステアリン酸亜鉛/エチレンビス−ステアリン酸アミド潤滑系を用いている。これらの配合物は、かなり容易に押出され、優れた外観の製品を提供する。これらの複合材料の物理的特性は、天然木材の特性に比較した時、不十分である。
【0015】
米国特許第6,632,863号は、2−ステップ法を特許請求し、この特許では、無機充填剤及び潤滑剤の群から選ばれた、0から35%の添加剤を含むことができる、木材−プラスティック複合材料(WPC)ペレットが製造される。潤滑剤が、ステアリン酸亜鉛及びエチレンビス−ステアリン酸アミドの群から続いて選ばれる。無機充填剤が、タルク及び雲母の群から続いて選ばれる。WPCペレットが、追加のプラスティック及び添加剤とともに引き続いて再押出される。
【0016】
米国特許第6,498,205号及び第6,344,504号は、木材繊維/木粉、プラスティック、及びステアリン酸亜鉛及びワックスから選ばれた潤滑剤の粉末混合物から製造したWPCを特許請求している。本明細書は、ワックスの例としてエチレンビス−ステアリン酸アミドを示している。
【0017】
米国特許第6,682,789号及び第6,265,037号、並びに米国特許出願2001/0051243は、ポリマー/繊維複合材料組成物、WPC製造法を教示し、かつ構成比(Mw/Mn)が3から6であり、メルトインデックスが2mg/10分未満である、最近のメタロセン触媒を用いて製造されたポリエチレンをベースとした押出物の特徴を開示している。その際、水分含有量が、配合物の5,000ppm未満であり、繊維寸法は100から2,000マイクロメーター(μm)で、アスペクト比が1:2から約1:5である。無水マレイン酸グラフトオレフィンカップリング剤が用いられ、かつこの組成物は、潤滑剤及び無機充填剤を含むことができる。
【0018】
米国特許出願2003/0229160は、6から10個の炭素を有するカルボン酸から作成されたエチレンビス−アミドが、現在木材に使用されているEBS/ステアリン酸亜鉛混合物に比べて優れた潤滑剤であることを教示している。この出願は、約30から約70重量%のポリマー、約70から約30重量%の農業廃棄物繊維、及びアミド、アルキレンビスアミド、又はそれらの組み合わせからなる約1から7重量%の潤滑剤を含む複合材料を更に教示する。
【0019】
米国特許第4,791,020号は、WPC中に40重量%までの無機充填剤の使用を教示しており、その際、充填剤は、雲母、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、ガラス繊維、アスベスト、及びウォラストナイトからなる群から選ばれる。
【0020】
米国特許第5,326,513号は、発泡ガラス球、発泡クレー、軽石粒体、及び雲母から選ばれた材料を、発泡性かつ硬化性の有機及び無機バインダーと混合して用いて、プラスティック繊維ボードを製造する方法を教示しており、その際、有機バインダーは、エポキシ樹脂又はポリウレタンフェノール樹脂である。
【0021】
米国特許第5,516,472号は、広く実施許諾され、WPC業界で使用されている方法「Strandex法」を説明している。この特許は、前記の方法で用いられる好ましい配合が、100部の木粉当たり、3.0部のステアリン酸亜鉛及び2.0部の外部(パラフィン型)ワックスを含むことを教示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
先行技術は、複合材料配合からステアリン酸金属を取り除くことが望ましいことを包含している。先行技術は、これが、既知の、安価な、かつ広く用いられたエチレンビス−ステアリン酸アミドを配合中に保持しながら達成できることを教示していない。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、セルロース−熱可塑性樹脂複合材料の製造及び加工に役立つ組成物に関係する。本組成物は、構造:
【化1】


(式中、R1及びR2は、独立して、約11から約35個の炭素原子を含む飽和又は不飽和の直鎖ヒドロカルビル基である)を有する脂肪酸ビス−アミド(a)、無機粒子(b)、セルロース粒子(c)、熱可塑性樹脂(d)、及び熱可塑性樹脂(d)にセルロース粒子(c)をカップリングするためのカップリング剤(e)からなる、予想外の、かつ相乗効果がある組み合わせである。
【0024】
本発明は、セルロース−熱可塑性樹脂の複合材料を提供するために、脂肪酸ビス−アミド(a)、無機粒子(b)、セルロース粒子(c)、熱可塑性樹脂(d)、とカップリング剤(e)の組み合わせたものを、押出機を通して押出す方法に関係する。
【0025】
セルロース−熱可塑性樹脂複合材料の配合にカップリング剤を使用できることが最も望まれている。カップリング剤は、セルロース−熱可塑性樹脂複合材料の物理的特性に有意義な改善をもたらすことができる。一方、カップリング剤含有するセルロース−熱可塑性樹脂複合材料の押出は、難しさが増すので、この材料には、追加の添加剤を使用する必要がある。追加の潤滑剤は、物理的特性の期待された改善をかなり低下させる恐れがある。
【0026】
我々が、予想に反して発見したことは、カップリング剤(e)を脂肪酸ビスアミド(a)及び軽微な量の微細粉末状軽石と組み合わせて用いることが、これらの加工上の問題を克服して、ステリン酸亜鉛/エチレンビス−ステアリン酸アミドを含有し、カップリング剤を含有しない比較配合で得られた速度に匹敵する速度で押出しすることで、十分に満足できる外観を有するセルロース−熱可塑性樹脂複合材料を可能にすることであった。
【0027】
脂肪酸ビスアミド(a)は、存在するカップリング剤(e)の機能を損なわない潤滑剤として作用する。脂肪酸ビスアミド(a)構造は、前記のごとくであり、式中、R1及びR2は、独立して、11から35個の炭素原子を含む飽和又は不飽和の直鎖ヒドロカルビル基である。好ましくは、R1及びR2は、独立して、15から22個の炭素原子を含む飽和又は不飽和の直鎖ヒドロカルビル基である。脂肪酸ビスアミド(a)の幾つかの例は、N,N’−エチレンビス−ステアリン酸アミド(N,N’−エチレンビス−オクタデカン酸アミド)、N,N’−エチレンビス−オレイン酸アミド(N,N’−エチレンビス−シス−9−オクタデセン酸アミド)、N,N’−エチレンビス−ドデカン酸アミド、N,N’−エチレンビス−テトラデカン酸アミド、N,N’−エチレンビス−ヘキサデカン酸アミド、N,N’−エチレンビス−ヘプタデカン酸アミド、N,N’−エチレンビス−牛脂アミド、N,N’−エチレンビス−エイコサン酸アミド、N,N’−エチレンビス−ドコサン酸アミド、N,N’−エチレンビス−テトラコサン酸アミド、N,N’−エチレンビス−4−ドデセン酸アミド、N,N’−エチレンビス−9−ドデセン酸アミド、N,N’−エチレンビス−4−テトラデセン酸アミド、N,N’−エチレンビス−5−テトラデセン酸アミド、N,N’−エチレンビス−シス−6−オクタデセン酸アミド、N,N’−エチレンビス−トランス−6−オクタデセン酸アミド、N,N’−エチレンビス−シス−9−オクタデセン酸アミド、N,N’−エチレンビス−トランス−9−オクタデセン酸アミド、N,N’−エチレンビス−トランス−11−オクタデセン酸アミド、N,N’−エチレンビス−シス−9−エイコセン酸アミド、N,N’−エチレンビス−シス−11−エイコセン酸アミド、N,N’−エチレンビス−トランス−11−エイコセン酸アミド、N,N’−エチレンビス−シス−11−ドコセン酸アミド、N,N’−エチレンビス−シス−13−ドコセン酸アミド、N,N’−エチレンビス−トランス−13−ドコセン酸アミド、N,N’−エチレンビス−シス−15−テトラコセン酸アミド、及びそれらの組み合わせであることができる。また、N,N’−エチレンジアミンと前記ビスアミドを作成するために用いる2種以上の親脂肪酸との多様な混合された交差反応(cross reaction)生成物、例えばN−オレイル−N’−ステアリル−エチレン−ビス−アミドが使用できることを、当業者は理解するであろう。このような交差反応生成物が、N,N’−エチレンジアミンを天然に存在する脂肪酸混合物(牛脂から誘導される酸など)と反応させることにより製造できることを、当業者は理解するであろう。単一種の脂肪酸ビスアミド(a)が使用できること、又は2種以上の脂肪酸ビスアミド(a)が使用できることを、当業者は理解するであろう。
【0028】
無機粒子(b)は、組成物に潤滑性を与えることができる任意の無機粒子であることができる。この潤滑は、カップリング剤(e)を用いない、従来のステアリン酸亜鉛/EBSの潤滑組成物に匹敵する同等の速度で、セルロース−熱可塑性樹脂複合材料の押出を円滑に実施することができるような潤滑性をいう。適切な無機粒子(b)の例は、軽石、火山灰、アルミナ、ケイソウ土、ガラス、シリカ、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、セラミック物質、ケイ酸カルシウム水和物、微小球、パーライト、シルア玄武岩、ゼオライト、クレー、カオリン、メタカオリン、雲母、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ポリアクリレート、ヒル石、フライアッシュ、微小球、セッコウ、アルミン酸カルシウム、ゾノトラ石、マグネシア及びそれらの組み合わせであることができる。好ましい無機粒子(b)は、軽石であることができる。最も好ましい無機粒子(b)は、微細粉末状軽石であることができ、例えば、Vitro社(Vitrolite(登録商標))、Elkem社(Sidistar(登録商標))、Hess社が製造したもの、及びそれらの組み合わせである。単一種の無機粒子(b)が使用でき、又は2種以上のこのような無機粒子(b)が使用できることを当業者は理解するであろう。無機粒子(b)は、一般的に、50μm以下、好ましくは35μm以下、より好ましくは20μm以下の粒径であることができる。
【0029】
セルロース粒子(c)は、セルロース−熱可塑性樹脂複合材料に使用することができる、任意の、既知の、在来の、又は商業的に用いられたセルロース粒子であることができる。適切なセルロース粒子(c)の例は、木材繊維、木材粒子、木材チップ、粉砕木材、木粉、木材フレーク、木材ベニヤ、木材積層板、のこ屑、紙、新聞紙、板紙、ウッドパルプ繊維、ケミカルパルプ、再生紙繊維、再生ボックス、再生ボックス繊維、再生新聞紙、再生新聞紙繊維、再生コンピュータ印刷物、再生コンピュータ印刷物繊維、粉砕屑、広葉樹繊維、針葉樹繊維、新聞用紙、粉砕新聞用紙、雑誌、粉砕雑誌、書籍、粉砕書籍、粉砕板紙、小麦籾殻、竹繊維、ポンドスラッジ、コルク及びそれらの組み合わせであることができる。好ましくは、セルロース粒子(c)は、木材繊維、木粉、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。ウッドパルプは、任意の既知のウッドパルプ材料であることができ、例えば、サーモメカニカルウッドパルプ、ケミカルサーモメカニカルウッドパルプ、及びそれらの組み合わせであることができることを、当業者は理解するであろう。単一種のセルロース粒子(c)が使用でき、又は2種以上のこのようなセルロース粒子(c)が使用できることを、当業者は理解するであろう。セルロース粒子(c)は、一般的に、約3mmから約100μmの長さ、かつ約1mmから約100μmの巾であることができる。好ましくは、セルロース粒子(c)は、約1mmから約400μmの長さ、かつ約500μmから約100μmの巾であることができる。より好ましくは、セルロース粒子(c)は、約800μmから約200μmの長さ、かつ約400μmから約100μmの巾であることができる。セルロース粒子(c)は、一般的に、約20:1から約1:1のアスペクト比をもつことができる。好ましくは、セルロース粒子(c)は、約10:1から約1:1のアスペクト比をもつことができる。より好ましくは、セルロース粒子(c)は、約5:1から約2:1のアスペクト比をもつことができる。
【0030】
熱可塑性樹脂(d)は、任意のポリマー、好ましくはポリオレフィンであり、より好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンのコポリマー、ポリエチレンとビニルアセテートのコポリマー、及びそれらの組み合わせであることができる。より好ましくは、熱可塑性樹脂(d)は、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンのコポリマー、コポリエチレン−ビニルアセテート及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0031】
上記したように、天然繊維−熱可塑性樹脂複合材料の配合で、カップリング剤(e)を使用できることが最も望ましい。カップリング剤は、セルロース−熱可塑性樹脂複合材料の物理的特性において、著しい改善を提供することができる。改善は、セルロース−熱可塑性樹脂複合材料の曲げ強度、及び耐吸水性に最も顕著に現れる。
【0032】
天然木材が、ポリマーマトリックスより非常に高い曲げ強度を有するので、改善された曲げ強度は重要であり、かつセルロース−熱可塑性樹脂複合材料が、建築用途で使用される場合には、この複合材料は、天然木材に類似した強度特性をもたなければならない。改善された耐水性は、耐食性と相関関係を示し、したがって屋外用途を目的とする製品にとってきわめて重要である。クリープ及びLCTEの減少は、セルロース−熱可塑性樹脂複合材料の寸法安定性を改善し、したがって建築用途に対する適性を向上させる。
【0033】
物理的特性の改善は、成型試験片で容易に観察される。カップリング剤を含有するセルロース−熱可塑性樹脂複合材料の押出成型で、更に高い難しさに直面する。この押出成型には、潤滑剤の添加が必要であり、上記したように、添加剤は、物理的特性の期待された改善を著しく低下させる。
【0034】
我々が、予想に反して発見したことは、カップリング剤(e)を脂肪酸ビスアミド(a)及び軽微な量の微細粉末状軽石と組み合わせて用いることが、これらの加工上の問題を克服して、ステリン酸亜鉛/エチレンビス−ステアリン酸アミドを含有し、カップリング剤を含有しない比較配合で得られた速度に匹敵する速度で押出しすることで、十分に満足できる外観を有するセルロース−熱可塑性樹脂複合材料を可能にすることであった。本発明のセルロース−熱可塑性樹脂複合材料の曲げ強度、及び耐吸水性は、この比較配合より著しく良好である。
【0035】
カップリング剤(e)は、無水マレイン酸グラフトポリオレフィン、アクリル酸グラフトポリオレフィン、ビニルアセテートグラフトポリオレフィン及びそれらの組み合わせであることができる。好ましくは、カップリング剤(e)は、無水マレイン酸グラフト高密度ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト低密度ポリエチレン、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン、アクリル酸グラフト高密度ポリエチレン、アクリル酸グラフト低密度ポリエチレン、アクリル酸グラフトポリプロピレン、コポリエチレン−ビニルアセテート及びそれらの組み合わせであることができる。
【0036】
最も好ましくは、カップリング剤(e)は、無水マレイン酸グラフト(「マレエーテッド」)高密度ポリエチレン(ポリボンド(登録商標)3009、ポリボンド(登録商標)3029、ポリボンド(登録商標)3039)、無水マレイン酸グラフト直鎖低密度ポリエチレン(ポリボンド(登録商標)3109)、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン(ポリボンド(登録商標)3000、ポリボンド(登録商標)3200)、アクリル酸グラフト高密度ポリエチレン(ポリボンド(登録商標)1009)、アクリル酸グラフトポリプロピレン(ポリボンド(登録商標)1001、ポリボンド(登録商標)1002)、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。これらの全ては、Chemtura社から入手できる。
【0037】
また、この組成物は、少なくとも一種の追加の成分を含むことができる。適切な追加の成分は、酸化防止剤、UV安定剤、発泡剤、染料、顔料、架橋剤、禁止剤及び促進剤であることができる。更に加えて、充填剤として、無機粒子を用いることができる。無機充填剤が押出を妨害しないならば、任意の更なる無機充填剤を用いることができる。酸化防止剤は、加工中にポリマーの劣化を防ぐために添加される。一つの例は、Chemtura社のNaugard B25(トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトとテトラキスメチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)メタンの混合物)である。発泡剤は、発泡によりセルロース−熱可塑性樹脂複合材料の密度を低減させるために加えられる。発泡剤の例は、Chemtura社のCelogen(登録商標)TSH(トルエンスルホニルヒドラジド)、Celogen AZ(アゾジカルボン酸アミド)、Celogen OT(p−p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド))、Celogen RA(p−トルエンスルホニルセミカルバジド)、Opex(登録商標)80(ジニトロソペンタメチレンテトラミン)、及びExpandex(登録商標)5−PT(5−フェニルテトラゾール)である。
【0038】
着色剤は、顔料又は染料である。染料は、通常は、熱可塑性樹脂に溶解し中性分子溶液を形成する有機化合物である。染料は、明るい高濃度な色を生成し、透明である。顔料は、一般的に、熱可塑性樹脂に不溶解である。顔料色は、熱可塑性樹脂(d)全体に分散した微細粒子(約0.01から約1μmの範囲)から生まれる。顔料は、セルロース−熱可塑性樹脂複合材料中で、不透明又は少なくとも幾らか半透明を生み出す。顔料は、有機又は無機化合物であることができ、乾燥粉末、濃厚顔料、液体、及び着色樹脂ペレットを含む種々の形態で存在できる。最も普通の無機顔料は、酸化物、硫化物、クロム酸塩、及びカドミウム、亜鉛、チタン、鉛、モリブデン、鉄、及びそれらの組み合わせなどの重金属に基づくその他の錯体を含む。群青は、典型的には、ナトリウム及びアルミニウムを含有する硫化物−ケイ酸塩錯体である。しばしば、顔料は、鉄、バリウム、チタン、アンチモン、ニッケル、クロム、鉛、及びその他の金属の2種以上の酸化物を既知の割合で含む。二酸化チタンは、広く用いられる、広く知られた明るい白色の、熱的に安定な無機顔料である。有機顔料も知られており、アゾ又はジアゾ顔料、ピラゾロン顔料、並びにパーマネントレッド2B、ニッケルアゾイエロー、リソレッド、及びピグメントスカーレットを含むその他の顔料を含む。
【0039】
架橋剤は、上記したように、セルロース粒子(c)間の結合を強化して、均質な最終製品を得るために、任意選択で添加することができる。架橋剤は、セルロース分子鎖上のペンダントヒドロキシル基を横断して結合する。架橋剤は、比較的低温度で、張力な結合を形成する特性をもたなければならない。使用できる架橋剤の例は、イソシアネートなどのポリウレタン、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、及びそれらの組み合わせを含む。フェノール樹脂は、任意の、好ましくは低ヘキサン含有量の、一段法又は二段法樹脂であることができる。
【0040】
禁止剤は、架橋反応速度を遅延させるために添加される。既知の禁止剤の例は、クエン酸などの有機酸を含む。
【0041】
促進剤は、架橋反応速度を促進させるために添加される。促進剤の例は、Dabco(登録商標)BDO(エアープロダクツ社)及びDEH40(登録商標)(ダウケミカル社)などのアミン触媒を含む。
【0042】
当業者は、使用される特殊な材料及び材料の使用目的次第で、この組成物の種々の成分の量を調節することができる。一実施形態では、本発明は、約1から約8重量%の量で存在する脂肪酸ビス−アミド(a)、約0.25から約1.5重量%の量で存在する無機粒子(b)、約10から約90重量%の量で存在するセルロース粒子(c)、約90から約10重量%の量で存在する熱可塑性樹脂(d)、約0.2から約10重量%の量で存在するカップリング剤(e)を含む組成物を対象とする。
【0043】
別の実施形態では、本発明は、約1から約8重量%の量で存在する脂肪酸ビス−アミド(a)、約0.25から約1.5重量%の量で存在する無機粒子(b)、約20から約80重量%の量で存在するセルロース粒子(c)、約80から約20重量%の量で存在する熱可塑性樹脂(d)、並びに約0.5から約5重量%の量で存在する無水マレイン酸グラフトポリオレフィンカップリング剤、及び約1から約7重量%の量で存在するアクリル酸グラフトポリオレフィンカップリング剤、並びにそれらの組み合わせからなる群から選ばれたカップリング剤(e)を含む組成物を対象とする。
【0044】
更に別の実施形態では、本発明は、約2から約6重量%の量で存在する脂肪酸ビス−アミド(a)、約0.25から約1.0重量%の量で存在する無機粒子(b)、約40から約70重量%の量で存在するセルロース粒子(c)、約50から約30重量%の量で存在する熱可塑性樹脂(d)、及び約1.0から約3重量%の量で存在する無水マレイン酸グラフト高密度ポリエチレンカップリング剤であるカップリング剤(e)を含む組成物を対象とする。
【0045】
更に別の実施形態では、本発明は、N,N’−エチレンビス−ステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビス−オレイン酸アミド、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれた、約1から約8重量%の量で存在する脂肪酸ビス−アミド(a)、微細粉末状軽石であり、約0.25から約1.5重量%の量で存在する無機粒子(b)、木粉、木材繊維、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれた、約10から約90重量%の量で存在するセルロース粒子(c)、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンのコポリマー、ポリエチレンとビニルアセテートのコポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれた、約90から約10重量%の量で存在する熱可塑性樹脂(d)、並びに無水マレイン酸グラフト高密度ポリエチレンであり、約0.2から約10重量%の量で存在するカップリング剤(e)を含む組成物を対象とする。
【0046】
好ましい実施形態では、本発明は、N,N’−エチレンビス−ステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビス−オレイン酸アミド、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれた、約1から約8重量%の量で存在する脂肪酸ビス−アミド(a)、微細粉末状軽石であり、約0.25から約1.5重量%の量で存在する無機粒子(b)、木粉、木材繊維、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれた、約20から約80重量%の量で存在するセルロース粒子(c)、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンのコポリマー、ポリエチレンとビニルアセテートのコポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれた、約80から約20重量%の量で存在する熱可塑性樹脂(d)、並びに無水マレイン酸グラフト高密度ポリエチレンであり、約0.5から約5重量%の量で存在するカップリング剤(e)を含む組成物を対象とする。
【0047】
より好ましい実施形態では、本発明は、N,N’−エチレンビス−ステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビス−オレイン酸アミド、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれた、約2から約6重量%の量で存在する脂肪酸ビス−アミド(a)、微細粉末状軽石であり、約0.25から約1.0重量%の量で存在する無機粒子(b)、木粉、木材繊維、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれた、約40から約70重量%の量で存在するセルロース粒子(c)、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンのコポリマー、ポリエチレンとビニルアセテートのコポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれた、約50から約30重量%の量で存在する熱可塑性樹脂(d)、並びに無水マレイン酸グラフト高密度ポリエチレンであり、約1.0から約3重量%の量で存在するカップリング剤(e)を含む組成物を対象とする。
【0048】
本発明の最も好ましい実施形態は、エチレンビス−ステアリン酸アミドであり、約2から約6重量%の量で存在する脂肪酸ビス−アミド(a)、微細粉末状軽石であり、約0.5から約1.0重量%の量で存在する無機粒子(b)、40メッシュの松材粉であり、約45から約65重量%の量で存在するセルロース粒子(c)、高密度ポリエチレンであり、約40から約31重量%の量で存在する熱可塑性樹脂(d)、無水マレイン酸グラフト高密度ポリエチレンであり、約1.5から約2.5重量%の量で存在し、その際に、前記グラフト高密度ポリエチレンが約0.5から約2.0重量%の無水コハク酸成分を含有するカップリング剤(e)を含む組成物を対象とする。
【0049】
本組成物は、物品を製造するために用いることができる。この物品は、中空でない又は中空の、セルロース−熱可塑性樹脂複合材料の異型材(profile)、板、棒、ストランド、ペッレット、羽目板、シート又はそれらの組み合わせであることができる。
【0050】
本組成物は、当業者に明らかな任意の標準的手段により調合し、混合することができる。一つの方法では、脂肪酸ビス−アミド(a)、無機粒子(b)、セルロース粒子(c)、熱可塑性樹脂(d)、及びカップリング剤(e)を、押出機を通して押出し、セルロース−熱可塑性樹脂複合材料を提供することができる。本組成物は、熱可塑性樹脂(d)を十分に溶融する温度で押出し、かつダイを通して押出し、セルロース−熱可塑性樹脂複合材料を形成することができる。本組成物は、約145℃から約200℃の温度で押出機を通して加工することができる。
【0051】
多くの押出加工法が、当業者により実施されている。実務者は、しばしば、繊維と熱可塑性樹脂、特に木材と熱可塑性樹脂をプレブレンドすることを選択し、かつこれらの混合物を押出してプレブレンド材料を作成するか、又は供給業者からこのようなプレブレンド材料を購入して、かつこのプレブレンド材料を最終製品工程に供給する。本明細書の組成物は、このような2パス加工法で用いることができ、その際、セルロース粒子(c)及び熱可塑性樹脂(d)が、コンパラブルレシオ(comparable ratio)で組み合わされプレブレンド材料とする。セルロース粒子(c)の熱可塑性樹脂(d)に対するコンパラブルレシオのある例は、約80:20から約10:90であり、好ましくは約70:30から約20:80であり、より好ましくは約60:40から約30:70である。セルロース粒子(c)の熱可塑性樹脂(d)に対するコンパラブルレシオを有する組成物は、約60:40から約40:60であることができ、これが最も好ましい。セルロース粒子(c)と熱可塑性樹脂(d)のプレブレンド材料は、混合物、ペレット、フレーク、チップ、トローチ、顆粒の形態及びそれらの組み合わせであることができる。同様に、脂肪酸ビス−アミド(a)及び無機粒子(b)は、コンパラブルレシオで組み合わされプレブレンド材料とすることができる。脂肪酸ビス−アミド(a)の無機粒子(b)に対するコンパラブルレシオのある例は、約40:60から約97:3であり、好ましくは約67:33から約96:4であり、より好ましくは約67:33から約92:8であることができる。約67:33から約92:8である、脂肪酸ビス−アミド(a)の無機粒子(b)に対するコンパラブルレシオを有する組成物が最も好ましい。また、脂肪酸ビス−アミド(a)と無機粒子(b)のプレブレンド材料は、混合物、ペレット、フレーク、チップ、トローチ、顆粒の形態及びそれらの組み合わせであることができる。当業者は、セルロース粒子(c)と熱可塑性樹脂(d)のプレブレンド材料、及び脂肪酸ビス−アミド(a)と無機粒子(b)のプレブレンド材料が、本明細書に提供された任意の他の成分を含むことができることを理解するであろう。このような追加成分は、求められる加工及び/又は貯蔵のユーザーニーズに基づいて、選択されたプレブレンド材料に添加することができる。
【0052】
本明細書の特別な実施形態では、脂肪酸ビス−アミド(a)、無機粒子(b)、セルロース粒子(c)、熱可塑性樹脂(d)、及びカップリング剤(e)は、カルボン酸金属塩などの金属石鹸が実質的に存在しない状態で組み合わされ、更に具体的に言えば、ステアリン酸亜鉛などのステアリン酸金属塩が実質的に存在しない状態で組み合わされる。セルロース−熱可塑性樹脂複合材料は、敷板、手すり、垣、柱、化粧縁、羽目板、屋根板などの、居住用及び商業用建築のための構造及び装飾製品用材料として有用である。また、セルロース−熱可塑性樹脂複合材料は、ノブ、ハンドル、車内計器盤、消音板、及びカーペット裏地などの自動車用物品の製造のために用いることができる。前記した組成物を含む、セルロース−熱可塑性樹脂複合材料から製造された物品は、通常使用される天然繊維−熱可塑性樹脂複合材料と比較した時、改善された曲げ強度、及び改善された耐吸水性などの改善された性能を有する。
【0053】
実施例で判るように、セルロース−熱可塑性樹脂複合材料において、カップリング剤(e)と組み合わせてEBS及び軽石を用いることにより、曲げ強度が、ステアリン酸亜鉛/EBS系より、38%改善されることが判る。更に、24時間の水吸収量で、28%の減少が観察される。
【実施例】
【0054】
American Wood Fibers 4020松材粉(40メッシュ)を用いて試験配合を作成した。木材を、循環オーブン内で、121℃で24時間乾燥した。得られた水分含有量は、1%に満たなかった。熱可塑性樹脂(d)は、BP Solvay B54−60の分別溶融形高密度ポリエチレン(0.5g/10分、メルトフロー)を用い、受け入れた状態で使用した。Chemtura Polybond(登録商標)3029の無水マレイン酸グラフトHDPEカップリング剤(1.3%無水コハク酸、メルトフローレート=4g/10分、190℃、2.16kg)、Naugard(登録商標)B−25酸化防止剤、Lubrazinc(登録商標)W(ステアリン酸亜鉛)潤滑剤、及びKemamide(登録商標)EBS(エチレンビス−ステアリン酸アミド)は、全て受け入れた状態で使用した。Vitro社のVitrolite(登録商標)XPの粉末状軽石は受け入れた状態で使用した。Luzenac America Silverline(登録商標)403のタルクは、受け入れた状態で使用した。
【0055】
共回転式#403コニカルツインスクリュウー構造をもったBrabender(登録商標)Intelli−Torque Plasti−Corder(登録商標)、及びBrabender7150駆動装置を用いて全てのサンプルを押出した。ゾーン温度を以下のように設定した:ゾーン1(150℃)、ゾーン2(160℃)、ゾーン3(160℃)、ゾーン4(ダイ)(150℃)。ダイは、連続した平滑試験片1.0”巾及び0.080”厚さを作成する。Multi Valuation、バージョン3.2.1を備えたBrabender Measuring Extruder Basic Programを用いてデータを得た。K−Tron K2VT20定量供給器から、混合された配合物を押出機に供給した。60rpm、ある場合には、80rpm、100rpmでも試験片を押出した。
【0056】
カップリング剤を沸騰トルエンに溶解し、かつ標準的な0.3規定メタノール性KOH溶液を用いてブロモチモールブルー終点まで滴定することにより、カップリング剤の無水マレイン酸含有量を測定した。KOH滴定液は、安息香酸を用いて標準化した。100gのカップリング剤を中和するために必要なKOH滴定液のミリ当量数を測定した。1モルのKOHが1モルの無水マレイン酸を中和すると仮定して、カップリング剤中の無水マレイン酸%を計算した。この仮定は、カップリング剤を試験したときと同じ条件下で、純粋な無水マレイン酸を滴定することにより確認した。カップリング剤100g当たりの官能基ミリモル数は、無水マレイン酸%をその化学物質の分子量、98g/molで割り、1,000倍して計算した。
【0057】
ASTM D1238に概略記載された処方に従って、Tinius Olsen Extrusion Plastometer Model MP600を用いて、カップリング剤のメルトフロー指数を測定した。
【0058】
修正したASTM D790試験法を用いて、曲げ強度及び曲げモジュラスのデータを得た。この修正法では、標準の0.05インチ/分に代わり、0.5インチ/分のクロスヘッド速度を用いた。
【0059】
水吸収性は、1.0インチ×2.0インチの押出片を水道水に室温で24時間浸漬し、重量増加を測定した。
【0060】
表1に、試験配合を示す。表2に、60rpmで押出した試験片から得たデータを示す。図1及び2は、MINITAB(登録商標)V.14.13(Minitab社)を用いてプロットした。
【表1】


PB3029は、Chemtura社製のマレエーテッド高密度ポリエチレンである。
WP2200は、Lonza社製のエチレンビス−ラウリン酸アミドである。
TPWは、登録商標権を有する、Ferro社製のステアリン酸金属塩を含有しない物質である。
SXTは、Stuktol社製の非金属ステアリン酸塩である。
B−25は、Naugard(登録商標)B−25酸化防止剤である。
全ての%は、重量%である。
【表2】

【0061】
ステアリン酸亜鉛の不在下で、無水マレイン酸グラフトカップリング剤を用いて得られる性能の長所は飛躍的である。Polybond(登録商標)3029を用い、しかもステアリン酸亜鉛を用いない8種の配合(1、2、A、E、F、G、I、J)に対する平均曲げ強度は、30.3MPaであり、一方ステアリン酸亜鉛を含有する3種の配合(B、C、D)は、平均22.7MPaに過ぎない。同様に、ステアリン酸亜鉛を含有する3種の配合に対する水吸収性9.4%に比較して、カップリング剤を用い、しかもステアリン酸亜鉛を用いない8種の配合に対する24時間の水吸収性は、6.2%である。B、C及びDとの比較は、カップリング剤を用いる利点が、ステアリン酸亜鉛から受ける妨害に負けたことを示している。
【0062】
エステル又は非金属ステアリン酸塩潤滑剤と比較した時に、エチレンビス−脂肪酸アミド潤滑剤と組み合わせてカップリング剤を用いる、さらなる利点は、カップリング剤/エチレンビス−アミド配合1、2、A、G、I、Jの平均値(31.6MPa)、とカップリング剤/他の潤滑剤配合E及びFの平均値(26.6MPa)の間の曲げ強度の比較で判明する。
【0063】
配合に軽石を加える利点を、図1及び2に示す。それぞれの場合、添加された潤滑剤によって、製品押出量が15から20%増加する。
【0064】
別の無機粒子(b)であるタルクに対する軽石の利点は、比較例I及びJに示される。タルク0.75%の比較例Iは、良好な物理特性を有したが、一方で適切に押出が行われず、厳しい縁引裂を示した。タルク3.0%の比較例Jは、全てのサンプル中で押出速度が最も低く、中程度に低下した曲げ強度28.2MPaを有した。
【0065】
上記の説明は、多くの仕様を含んでいるが、これらの仕様が、発明を限定するものではなく、発明の好ましい実施形態を例証するに過ぎないものと解釈されるべきである。当業者は、本明細書に添付された特許請求の範囲により限定される、本発明の範囲と精神の内で多くの他の実施形態を想定するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】配合製品の押出量を示した説明図である。
【図2】配合製品の押出量を示した説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
(a)構造:
【化1】


(式中、R1及びR2は、独立して、11から35個の炭素原子を含む飽和又は不飽和の直鎖ヒドロカルビル基である)を有する脂肪酸ビス−アミドと、
(b)無機粒子と、
(c)セルロース粒子と、
(d)熱可塑性樹脂と、
(e)熱可塑性樹脂(d)にセルロース粒子(c)をカップリングするためのカップリング剤とを含む組成物。
【請求項2】
脂肪酸ビス−アミド(a)が、N,N’−エチレンビス−ステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビス−オレイン酸アミド、N,N’−エチレンビス−ドデカン酸アミド、N,N’−エチレンビス−テトラデカン酸アミド、N,N’−エチレンビス−ヘキサデカン酸アミド、N,N’−エチレンビス−ヘプタデカン酸アミド、N,N’−エチレンビス−牛脂アミド、N,N’−エチレンビス−エイコサン酸アミド、N,N’−エチレンビス−ドコサン酸アミド、N,N’−エチレンビス−テトラコサン酸アミド、N,N’−エチレンビス−4−ドデセン酸アミド、N,N’−エチレンビス−9−ドデセン酸アミド、N,N’−エチレンビス−4−テトラデセン酸アミド、N,N’−エチレンビス−5−テトラデセン酸アミド、N,N’−エチレンビス−シス−6−オクタデセン酸アミド、N,N’−エチレンビス−トランス−6−オクタデセン酸アミド、N,N’−エチレンビス−シス−9−オクタデセン酸アミド、N,N’−エチレンビス−トランス−9−オクタデセン酸アミド、N,N’−エチレンビス−トランス−11−オクタデセン酸アミド、N,N’−エチレンビス−シス−9−エイコセン酸アミド、N,N’−エチレンビス−シス−11−エイコセン酸アミド、N,N’−エチレンビス−トランス−11−エイコセン酸アミド、N,N’−エチレンビス−シス−11−ドコセン酸アミド、N,N’−エチレンビス−シス−13−ドコセン酸アミド、N,N’−エチレンビス−トランス−13−ドコセン酸アミド、N,N’−エチレンビス−シス−15−テトラコセン酸アミド、N−オレイル−N’−ステアリル−エチレン−ビス−アミド及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
脂肪酸ビス−アミド(a)が、N,N’−エチレンジアミンと2個以上の脂肪酸との交差反応生成物である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
無機粒子(b)が、軽石、火山灰、アルミナ、ケイソウ土、ガラス、シリカ、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、セラミック物質、ケイ酸カルシウム水和物、微小球、パーライト、シルア玄武岩、ゼオライト、クレイ、カオリン、メタカオリン、雲母、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ポリアクリレート、ヒル石、フライアッシュ、微小球、セッコウ、アルミン酸カルシウム、ゾノトラ石、マグネシア及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
セルロース粒子(c)が、木材繊維、木材粒子、木材チップ、粉砕木材、木粉、木材フレーク、木材ベニヤ、木材積層板、のこ屑、紙、新聞紙、板紙、ウッドパルプ繊維、ケミカルパルプ、再生紙繊維、再生ボックス、再生ボックス繊維、再生新聞紙、再生新聞紙繊維、再生コンピュータ印刷物、再生コンピュータ印刷物繊維、粉砕屑、広葉樹繊維、針葉樹繊維、新聞用紙、粉砕新聞用紙、雑誌、粉砕雑誌、書籍、粉砕書籍、粉砕板紙、小麦籾殻、竹繊維、ポンドスラッジ、コルク及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
熱可塑性樹脂(d)が、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンのコポリマー、コポリエチレン−ビニルアセテート及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
カップリング剤(e)が、無水マレイン酸グラフトポリオレフィン、アクリル酸グラフトポリオレフィン、ビニルアセテートグラフトポリオレフィン及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
カップリング剤(e)が、無水マレイン酸グラフト高密度ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト低密度ポリエチレン、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン、アクリル酸グラフト高密度ポリエチレン、アクリル酸グラフト低密度ポリエチレン、アクリル酸グラフトポリプロピレン、コポリエチレン−ビニルアセテート及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料、架橋剤、禁止剤及び促進剤からなる群から選ばれた少なくとも一種の追加成分を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
脂肪酸ビス−アミド(a)が約1から約8重量%の量で存在し、無機粒子(b)が約0.25から約1.5重量%の量で存在し、セルロース粒子(c)が約10から約90重量%の量で存在し、熱可塑性樹脂(d)が約90から約10重量%の量で存在し、かつカップリング剤(e)が約0.2から約10重量%の量で存在する請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
脂肪酸ビス−アミド(a)が約1から約8重量%の量で存在し、無機粒子(b)が約0.25から約1.5重量%の量で存在し、セルロース粒子(c)が約20から約80重量%の量で存在し、熱可塑性樹脂(d)が約80から約20重量%の量で存在し、かつカップリング剤(e)が、約0.5から約5重量%の量で存在する無水マレイン酸グラフトポリオレフィン、約1から約7重量%の量で存在するアクリル酸グラフトポリオレフィン、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
脂肪酸ビス−アミド(a)が約2から約6重量%の量で存在し、無機粒子(b)が約0.25から約1.0重量%の量で存在し、セルロース粒子(c)が約40から約70重量%の量で存在し、熱可塑性樹脂(d)が約50から約30重量%の量で存在し、かつカップリング剤(e)が約1.0から約3重量%の量で存在する無水マレイン酸グラフト高密度ポリエチレンである請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
脂肪酸ビス−アミド(a)が、N,N’−エチレンビス−ステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビス−オレイン酸アミド、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれ、かつ約1から約8重量%の量で存在し、無機粒子(b)が、微細粉末状軽石であり、かつ約0.25から約1.5重量%の量で存在し、セルロース粒子(c)が、木粉、木材繊維、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれ、かつ約10から約90重量%の量で存在し、熱可塑性樹脂(d)が、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンのコポリマー、ポリエチレンとビニルアセテートのコポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれ、かつ約90から約10重量%の量で存在し、並びにカップリング剤(e)が、無水マレイン酸グラフト高密度ポリエチレンであり、かつ約0.2から約10重量%の量で存在する請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
脂肪酸ビス−アミド(a)が、N,N’−エチレンビス−ステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビス−オレイン酸アミド、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれ、かつ約1から約8重量%の量で存在し、無機粒子(b)が、微細粉末状軽石であり、かつ約0.25から約1.5重量%の量で存在し、セルロース粒子(c)が、木粉、木材繊維、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれ、かつ約20から約80重量%の量で存在し、熱可塑性樹脂(d)が、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンのコポリマー、ポリエチレンとビニルアセテートのコポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれ、かつ約80から約20重量%の量で存在し、並びにカップリング剤(e)が、無水マレイン酸グラフト高密度ポリエチレンであり、かつ約0.5から約5重量%の量で存在する請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
脂肪酸ビス−アミド(a)が、N,N’−エチレンビス−ステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビス−オレイン酸アミド、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれ、かつ約2から約6重量%の量で存在し、無機粒子(b)が、微細粉末状軽石であり、かつ約0.25から約1.0重量%の量で存在し、セルロース粒子(c)が、木粉、木材繊維、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれ、かつ約40から約70重量%の量で存在し、熱可塑性樹脂(d)が、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンのコポリマー、ポリエチレンとビニルアセテートのコポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれ、かつ約50から約30重量%の量で存在し、並びにカップリング剤(e)が、無水マレイン酸グラフト高密度ポリエチレンであり、かつ約1.0から約3重量%の量で存在する請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
脂肪酸ビス−アミド(a)が、約2から約6重量%の量で存在するエチレンビス−ステアリン酸アミドであり、無機粒子(b)が、約0.5から約1.0重量%の量で存在する微細粉末状軽石であり、セルロース粒子(c)が、約45から約65重量%の量で存在する40メッシュの松材粉であり、熱可塑性樹脂(d)が、約40から約31重量%の量で存在する高密度ポリエチレンであり、並びにカップリング剤(e)が、約0.5から約2.0重量%の無水コハク酸成分を含み、かつ約1.5から約2.5重量%の量で存在する無水マレイン酸グラフト高密度ポリエチレンである請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
中空でない、又は中空のセルロース−熱可塑性複合材料の異形材、ボード、ロッド、ストランド、ペレット、羽目板、シート、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれた、請求項1に記載の組成物から作成された物品。
【請求項18】
ステアリン酸亜鉛又はカルボン酸金属塩を実質的に含まない請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
(i)(a)構造:
【化2】


(式中、R1及びR2は、独立して、11から35個の炭素原子を含む飽和又は不飽和の直鎖ヒドロカルビル基である)を有する脂肪酸ビス−アミドと、
(b)無機粒子と、
(c)セルロース粒子と、
(d)熱可塑性樹脂と、
(e)熱可塑性樹脂(d)にセルロース粒子(c)をカップリングするためのカップリング剤とを組み合わせることを含んでなる組成物の形成法であって、
(ii)この組成物を、押出機を用いて押出し、セルロース−熱可塑性樹脂複合材料を供給することを含む形成法。
【請求項20】
セルロース粒子(c)及び熱可塑性樹脂(d)が、任意選択で少なくとも一種の他の成分とともに、プレブレンド材料中で実質的に均一に混合されている請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−503197(P2009−503197A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524157(P2008−524157)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【国際出願番号】PCT/US2006/029255
【国際公開番号】WO2007/016277
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(505365356)ケムチュア コーポレイション (50)
【Fターム(参考)】