説明

セルロース強化樹脂組成物

【課題】本発明は、塑性流動が可能な樹脂;強化材;ならびに酸化ポリエチレンワックス、エステルワックス、およびステアリン酸亜鉛を含んだ潤滑組成物;を含む、強化樹脂を含有する成形可能な組成物を提供する。さらに、潤滑組成物、ならびに本発明の組成物に基いた成形法と成形品も提供する。
【解決手段】 (a) 熱可塑性樹脂;(b) 強化材;および(c) エステルワックス;を含む成形可能な組成物であって、エステルワックスが、前記樹脂100重量部当たり少なくとも約0.1重量部(PHR)の量で組成物中に存在する前記組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本仮出願は、2004年3月15日付け出願の米国仮出願第60/553,432号と2004年6月30日付け出願の米国仮出願第60/584,546号(これらの仮出願を参照により本明細書に含める)に関連しており、これらの仮出願の優先権を請求する。
【0002】
技術分野
本発明は、強化樹脂含有組成物、このような組成物の製造において使用するための潤滑組成物、このような組成物から製造される成形品、およびこのような成形品の製造法に関する。
【背景技術】
【0003】
セルロース繊維(たとえば木質繊維)と樹脂(たとえば、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂)を含んだ成形可能な組成物(押出可能な組成物等)はよく知られている。このような組成物の例が、Zehnerによる米国特許第6,103,791号(特許文献1)と第6,248,813号(特許文献2)、およびSeethamrajuらによる米国特許第6,210,792号(特許文献3)(これらの特許を参照により本明細書に含める)に記載されている。これらのタイプの組成物を押し出して成形品(たとえば、エクステリア構造物用のデッキボードやガードレール)を得ることができる。ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)をベースとする押出組成物は、他のタイプの樹脂組成物より耐候性が優れているので、このような用途に対して好ましい場合が多い。このような用途向けに意図された押出品は、構造特性だけでなく、こうした用途にしばしば使用される天然木製品に匹敵するか又はそれを凌ぐ耐候性と外観を示すのが一般には望ましい。
【0004】
一般には、強化材を含んだ熱可塑性樹脂組成物(たとえば、セルロース/ポリ塩化ビニル樹脂組成物)の押出は、押出可能な混合物を、塑性流動を受けることができる温度に加熱すること;次いで、出てくる押出物に輪郭形状を付与する1つ以上の開口(ここでは“ダイ”)を有するプレートに混合物を強制的に通すこと;を必要とする。その後、比較的堅めの所望の輪郭が達成されるまで押出物を冷却する。成形された押出物は、押し出された形態にて使用されるか(たとえば、デッキボードやガードレールとして)、あるいは適切な長さにカットし、後続の処理において使用できるように(たとえば、射出成形プロセスやブロー成形プロセスのための供給原料として)包装することもできる。
【0005】
成形可能な供給原料組成物(shapeable feedstock compositions)〔本明細書では便宜上、“成形可能な組成物(shapeable compositions)”とも呼ぶ〕は、セルロース繊維、樹脂、および組成物と組成物から製造される物品の特性に影響を及ぼす他の成分(添加剤とも呼ばれる)を混合することによって製造されることが多い。いったん混合したら、成形可能な組成物の成分を“溶融させる(fused)”(すなわち、加熱し、実質的に均一な可塑性組成物が形成されるまで混合する)のが一般的である。このプロセスに対して“溶融(fusion)”という用語が適用されているが、これは、加熱や混合において、成分の個々の顆粒の境界が見分けられなくなる(したがって“溶融させる(fused)”)からである。
【0006】
寸法安定性と表面の外観(表面粗さ)は、成形品(特に押出品)の商品価値に、したがって成形品を製造するのに使用される方法と成分にしばしば影響を及ぼす特性である。寸法安定性は、成形品が成形装置(たとえば、押出機のダイ)から出てきた後の固化時に成形品が膨張する量を観察することによって評価する。膨張の量は、膨潤またはダイ膨潤と呼ばれることがある。表面光沢は、公知の測定基準(たとえば、ASTM基準D2523-95やD2457-97)にしたがって測定する。表面粗さは、目視評価と触感評価によって決定する。表面粗さはさらに、表面が‘シールする(seals)’程度、すなわち、ASTM D570-98による測定にて、成形品が水の浸入に抵抗する程度においても示される。
【0007】
成形品(特に押出品)の商品価値にとって重要なのはさらに、成形品の機械的特性(たとえば、引張強度、曲げ強度、破壊係数、および見かけの弾性係数)である。これらの機械的特性は、成形品を製造する前の成形可能な組成物中に組み込まれている潤滑剤の種類と量によって影響されることがある。これらの機械的特性は、公知の測定基準(たとえば、引張強度の測定に対してはASTM D638、構造材の見かけの弾性係数と破壊係数に適用される曲げ強度の評価に対してはASTM D6109-e1またはASTM D6109-03、そして構造材の耐力特性の試験に対してはASTM D4761-02a)にしたがって評価することができる。
【0008】
任意の成形可能な組成物に対しては、一般には、成形装置の操作パラメーターを調整して、材料が成形される速度を変えることができる。しかしながら、成形速度をできるだけ高くすることは、実際には限界がある。たとえば、押出の場合、より高い温度および/またはより高いヘッド圧力にて押出機を操作することによって押出速度の増大を果たすことができる。しかしながら、押出機の温度を上げていくある時点で、押出可能な組成物が一般にはスコーチを生じ始め、押出品の表面特性と構造特性が悪化し始める。さらに、ヘッド圧力または押出機トルクが増大するにつれて、一般には、押出品の寸法安定性および/または表面状態が許容しえないレベルに達する。
【0009】
これまで、成形可能で押出可能な組成物中に組み込まれる潤滑剤の量を増大させることによって、より高い成形速度を達成できることが知られている。しかしながら、特定のケースにおいては、より多い量の潤滑剤を使用すると、一般には、樹脂の凝集能力の低下を引き起こし、そしてさらには、成形可能な組成物から製造される成形品の引張強度の低下をきたすことがある。他のケースにおいては、潤滑剤の量を増やすと、樹脂と繊維との間の結合相互作用が低下し、これによりこのような成形可能な物質から製造される物品の強度と耐力特性が低下する。
【0010】
したがって、成形可能な組成物の成形適性を潜在的に向上させつつ、潤滑剤の量を増大させること又は潤滑剤の種類を変えることは、成形品の機械的特性に有害な影響を及ぼすことがある。特定のケースにおいては、特定の種類の潤滑剤をかなり多い割合で使用すると、処理のパラメーター(たとえば、成形可能な組成物を製造するのに必要とされる溶融時間)に悪影響を及ぼすことがある。
【0011】
上記の説明からわかるように、成形可能な組成物の成形適性(shapeability)(一般には
押出適性)、カレンダー適性、およびモールド成形適性(moldability)、ならびに成形可能な組成物から製造される成形品の機械的特性と外観特性は相互に関係しており、組成物が変わることによる、これらの関連特性に及ぼす全ての影響の組み合わせは、簡単には予測できない。
【0012】
したがって本出願者らは、強化された成形可能な組成物、特に、望ましい処理特性を有していて、望ましい外観特性および/または改良された機械的特性を有する成形品をもたらすのが好ましい、押出可能で、カレンダー可能で、射出成形可能で、且つ圧縮成形可能な組成物の必要性を認識するようになった。本出願者らは特に、従来使用されている組成物と同等であるか又は改良された成形適性特性を有する、成形PVCをベースとする組成物を提供する必要性、および好ましくは、同等以上の外観と機械的特性を有する成形品を提供する必要性を認識した。これらのニーズと他のニーズが、本発明の1つ以上の態様によって取り組まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第6,103,791号
【特許文献2】米国特許第6,248,813号
【特許文献3】米国特許第6,210,792号
【発明の概要】
【0014】
本発明の1つの態様は、比較的高い処理速度(特に押出速度)を示し、そして好ましい実施態様においては、望ましい外観特性および/または機械的特性を有する成形品を製造するのに使用することができる、成形可能な、好ましくは押出可能な組成物を提供する。本発明の成形可能な組成物の1つの好ましい実施態様は、
(a) 少なくとも1種の熱可塑性樹脂;
(b) 少なくとも1種の強化材;および
(c) 少なくとも1種のエステルワックス;
を含む。
【0015】
このような実施態様におけるエステルワックス成分は、組成物の成形適性を、そして好ましくは押出適性、カレンダー適性、またはモールド成形適性を向上させるのに有効な量にて存在するのが好ましい。このような成形可能な組成物において改良される処理特性は、所定の成形圧力もしくは他の成形パラメーター(たとえば、押出の場合にはトルクセッティング)にて同程度の成形速度を含むのが好ましい。
【0016】
本発明の他の態様は、成形組成物およびこのような組成物を含んだ成形品を含む。本発明の成形可能な組成物は、本発明の成形可能な組成物を成形することによって(好ましくは押し出すことによって)形成されるのが好ましく、またエステルワックスを含有せず、実質的に同じ成形プロセスによって形成される同じ組成物と比較して、成形組成物の1つ以上の機械的特性および/または外観特性に対して実質的な悪影響を示さないのが好ましい(成形組成物の1つ以上の機械的特性および/または外観特性に対して向上を、そしてさらに好ましくは大幅な向上を示すのが好ましい)。特定の好ましい実施態様における顕著な機械的特性は、破壊係数と見かけの弾性係数を含む。特定の好ましい実施態様における顕著な外観特性は表面粗さ(目視による測定、および/または、ASTM D570-98基準による、水の浸入量の増大にて示される)を含む。
【0017】
本発明の他の態様は、本発明の成形可能な組成物と共に使用するのに特に適したエステルワックスを含む潤滑組成物を提供する。幾つかの好ましい実施態様においては、本発明の潤滑組成物は、本発明の潤滑組成物の1種以上の必須成分が存在しないこと以外は同じ潤滑剤を組み込んだ成形可能な組成物と比較して、成形可能な組成物の加工性に対して、または成形可能な組成物から製造される成形品の外観特性に対して悪影響を及ぼすことなく、潤滑組成物を含有する成形可能な組成物から形成される成形品の機械的特性に向上をもたらす。特定の好ましい実施態様においては、本発明の成形可能な組成物は、組成物の処理特性に関して一般には有利である、および/または、望ましい1つ以上の特性を示しつつ、望ましい特性(たとえば、比較的高い引張強度、および/または、比較的高度の寸法安定性)を有する固体形態物に成形することができる。
【0018】
本発明の他の態様は、
(a) (i) 塑性流動を受けることを特徴とする少なくとも1種の樹脂;
(ii) 少なくとも1種の強化材;
(iii) エステルワックスを含む潤滑剤、および好ましくはさらに酸化ポリエチレン
とステアリン酸亜鉛;ならびに
(iv) 必要に応じた他の添加剤;
を含んだ成形可能な組成物を得ること;および
(b) 前記成形可能な組成物を、好ましくは前記成形可能な組成物を剪断応力にさらすことによって、そして好ましくは前記成形可能な組成物を、射出成形機のノズル、カレンダーロールのニップ、または押出機のダイに強制的に通すことによって成形して、成形品を形成させること;
を含む、成形組成物(shaped compositions)を製造する方法を含む。
【0019】
本発明の特定の好ましい実施態様は、押出ダイのオリフィス、カレンダーロールのニップ、およびモールドキャビティ等の1つ以上の比較的硬い表面(たとえば金属表面)と組成物との間に比較的高い圧力もしくは高い剪断接触を伴う物品の成形に関して優れた操作性をもたらす組成物と方法に関する。このようなプロセスは、カレンダープロセスにおける樹脂性シート材料や押出による形材などの成形品の製造においてしばしば行われる。当業者には周知のことであるが、金属離れ特性(metal release characteristics)は、このようなプロセスにおけるこうした成形品の形成/押出において重要となることがある。なぜなら、このようなプロセスにおいては、成形可能な組成物を製造するプロセスにおいて、および/または成形可能な物品を成形する際において(たとえば、種々の構造の押出ダイやカレンダーロールの使用時において)、高剪断下および/または高圧力下にて組成物と接触する1つ以上の金属部品を使用するのが一般的だからである。このような方法は、成形PVC物品の作製と共に使用する上で有利であることが多い。したがって、多くの実施態様においては、成形品に良好な物理的特性を付与しつつ、良好な金属離れ特性を有するような組成物と方法を提供することが特に重要である。したがって本発明の1つの態様は、
(a) 1つ以上の比較的硬い金属表面を有する成形用部品(a shaping part)を得ること;
(b) (i) 塑性流動を受けることができることを特徴とする少なくとも1種の樹脂;
(ii) エステルワックスと酸化ポリエチレンを含んだ潤滑組成物;および
(iii) 必要に応じた他の添加剤;
を含む組成物を得ること;ならびに
(c) 前記組成物と前記1つ以上の比較的硬い金属表面とを、組成物の少なくとも1つの物理的特性、組成物の形状、またはこれらのいずれか2つ以上を変えるのに有効な条件下にて充分に接触させること;
を含む、樹脂性成形品(好ましくはPVCシート)を製造する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に記載の詳細な説明は、押出操作の形での成形に関する。しかしながら、この方式での説明は、主として便宜上のために行うのであって、当業者であれば、本明細書に記載の特定および一般的な開示内容を考慮して、上記のプロセスを含めた他の成形プロセスと関連させて本発明を容易に理解して使用することができ、こうしたプロセスは全て本発明の範囲内に含まれる。
【0021】
本発明の潤滑組成物の有効量を、少なくとも1種の樹脂と少なくとも1種の強化用材料を含む押出可能な組成物中に組み込むことによって、押出可能な組成物から製造される成形品の外観特性を維持もしくは向上させることができ、また実質的に同じ押出プロセスと、実質的な量の本発明の潤滑組成物が存在しないこと以外は同じ押出可能な組成物を使用して製造される成形品と比較して、前記成形品の機械的特性を維持もしくは向上させることができる、ということを本出願者らは驚くべきことに見出した。
【0022】
本発明の組成物と方法は、有利な製品(たとえば、デッキボード、ガードレール、およびサイディングボードなど)を製造するのによく適合している、ということを本出願者らは見出した。本発明のこれら物品の機械的特性は、これまで一般的に使用されている物品(特にデッキボード)と比べて遜色がない。
【0023】
本発明は、セルロース材料(好ましくは木質繊維)で強化した熱可塑性ポリマー〔たとえば、PVCポリマー(ここでは便宜上、PVC樹脂と呼ぶこともある)〕の押出に対して広範囲の応用可能性を有すると思われる。本発明は、セルロース強化PVC押出可能組成物に関して下記に説明しているけれども、本発明の潤滑組成物は、他の樹脂および/または強化材を含有する他の押出可能な組成物に対しても応用可能である、と考えられる。たとえば、厳密には熱可塑性ではない1種以上のポリマー〔たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)〕を含有する強化材入りポリマー組成物のラム押出は、本発明によって好影響を受けることがある。したがって、“押出可能な組成物”という用語は、熱可塑性を有するポリマーを含有した、セルロース強化材で強化された組成物を表わすだけでなく、容易に押出可能であって、および/または、押出プロセスに関して熱可塑性ポリマーと同様に挙動し、セルロース強化材と同様の特性を有する強化材と組み合わせることができるポリマーを表わすのにも使用されている。組成物が熱可塑性であろうとなかろうと、またこのような強化材がセルロース材料であろうとなかろうと、便宜上、強化樹脂と呼ぶことがある。
【0024】
定義
特定の用語についての下記の定義は、本発明の組成物および本発明の組成物から製造される押出品に関する。
【0025】
寸法安定性は、押出品が押し出されて通るダイに従う形状にて押出品が固化する傾向を表わしている。特定の理論に拘束されるつもりはないが、一般には、押出品を作製するときに使用される押出温度が低下するにつれて、押出品は、ダイを出た後により早く固化すると考えられる。さらに、押出品をダイから追い出すのに使用される圧力が低下するにつれて、一般には、押出品にはより少ない残留性弾性力(residual elastic force)が付与され、この残留性弾性力が、押出品の固化時に散逸される。さらに、再び特定の理論に拘束されるつもりはないが、他の全ての押出条件を一定に保持した状態で、2つの押出可能な組成物を同じ押出量にて比較すると、一般には、より低い温度で(あるいは、温度が一定に保持される場合は、より低い圧力で)押し出された組成物は、ダイ膨潤(die swell)が少ない、したがって寸法安定性が向上した押出品をもたらす。
【0026】
特定の理論に拘束されるつもりはないが、押出可能な組成物中に使用するための潤滑剤は、内部潤滑特性および/または外部潤滑特性を有すると考えられる。一般には、“内部潤滑”特性は、組成物に粘度を付与する凝集力を低下させることによって、押出可能な組成物の加工性に影響を及ぼすと考えられる。凝集力を低下させることによって、組成物のマスの殆どを構成しているポリマー分子は、圧力が加えられたときに、より容易に互いに“スリップ”して動きあうことができる、と考えられる。このように、内部潤滑剤は一般に、押出可能な組成物の見かけ粘度の低下をもたらし、このため、他の全てのファクターを不変のままにして、より低い圧力で組成物を押し出すことが可能となる。
【0027】
特定の理論に拘束されるつもりはないが、一般には、外部潤滑剤は、押出可能な組成物のマスからにじみ出て、組成物と、組成物に接触している表面との界面において(たとえば、金属表面との接触箇所において)作用すると考えられる。本発明の方法は、一般には、成形品が形成されるよう、供給された組成物を成形すること〔好ましくは組成物を成形剪断力(shaping sheer forces)にさらすことによって〕を必要とする。成形工程は、本発明の成形可能な組成物を、塑性流動を受けることができる温度にすることを含むのが好ましい。好ましい実施態様においては、成形工程は、組成物を加熱すること、および加圧状態の成形可能な組成物を、少なくとも1つの固体物体によって造られた比較的狭くて小さい開口に強制的に通すことを含む。たとえば押出の場合、開口は、出てくる押出品に輪郭形状を付与する1つ以上のオリフィス開口などを有するダイの形態をとっているのが好ましい。カレンダリングの場合、開口は、2つのロール間のニップによって、あるいは1つのロールとブレードやナイフ等との間のニップによって形成させるのが好ましい。射出成形においては、開口は一般に、ノズル、および/または、チャンネル/ランナー、および/または、モールドキャビティとフィーチャー、の形態をとっている。圧縮成形においては、成形可能な組成物のマスを適切なモールドキャビティ中に入れ、比較的高い圧力にて圧縮することによって成形し、次いで当然ながら、組成物が、モールドキャビティとモールドの他のフィーチャーの中と周囲に流れ込むように、成形可能な組成物に剪断力を加える。
【0028】
これは、組成物中に外部潤滑剤を含むことで得られる所望の結果であるので、これらの潤滑剤は一般に、組成物中への組み込みによって“金属離れ(metal releasing)”特性が得られるように選択される。この“金属離れ”特性は、導管やオリフィスを通る際の流れ抵抗に打ち勝つのに必要な力を減少させる。さらに、こうした潤滑は、いったん作製された後の押出品の品質の実質的な低下を引き起こすことなくなされること、そして特定の実施態様においては、押出品の表面特性が、たとえば押出品の表面の平滑さを高めることによって比較的改良されることが好ましい。
【0029】
本明細書に説明されているように、本発明の好ましい押出可能な組成物における特定の組成物、および好ましい成形品における特定の成形品は、改良された特性を有することを特徴としている。この場合、これらの改良特性は、実質的に同等の潤滑剤を組み込んでいるが、本発明の潤滑組成物を含有していない押出可能な組成物と比較して測定される。言うまでもないが、組成物に潤滑特性をもたらす多種類の材料や組成物を押出可能な組成物中に組み込むことができる。一般には、押出可能な組成物は、組成物中に組み込まれている樹脂の重量に対する組成物の成分の重量比で表わされる。本明細書で使用している、押出可能な組成物中への特定成分の“組み込み(loading)”(たとえば、押出可能な組成物中への潤滑組成物の“組み込み”)とは、押出可能な組成物中に組み込まれる樹脂の重量部に対する、押出可能な組成物中に組み込まれる潤滑組成物の重量パーセントを表わしている。
【0030】
押出品
本発明は、1つの態様においては、PVC樹脂、強化材、およびエステルワックスを含んだ押出品の製造に関する。本発明のこの態様による押出品は、同等の組み込み量の強化材を含んでいて、エステルワックスが実質的に存在しない押出品と同等以上の外観特性と機械的特性を有しており、少なくとも1つの特性が優れているのが好ましい。本発明に潜在的に関連した外観特性は、押出品の寸法安定性、表面粗さ、および表面光沢を含む。向上させることができる、潜在的に関連した機械的特性は、押出品の固有の曲げ強度と引張強度、ならびに押出品の見かけの弾性係数と破壊係数を含む。
【0031】
外観特性の向上は、エステルワックスが実質的に存在しない押出品と比較して、目視にて同等以上である表面外観を含む。機械的特性は、強化材の分散の向上(下記に記載の手順によって測定)、ならびに成形品の破壊係数の増大および/または見かけの弾性係数の増大〔Acceptance Criteria for Deck Board Span Rating and Guardrail Systems(2002年5月1日,ICBO Evaluation Services,Inc.から出版)〕(該文献を参照により本明細書に含める)を含む。
【0032】
強化材が、押出品の全体にわたって均一に分散されている程度は、押出品の断面を切り取り、断面部分を凝集した材料(表面の不均一な外観からわかる)に関して目視検査することによって決定することができる。さらに、断面部分を多孔性(押出品のポリマーマトリックス中のボイド)の外観に関して調べる。一般には、本発明の好ましい押出品は、このような検査にかけたときに、押出可能な組成物の1種以上の必須成分(単独であろうと、潤滑組成物の形態であろうと)が存在しない押出可能な組成物から製造された押出品と比較して、強化材の改良された分散のためにより均一な断面を示す。一般に、本発明の好ましい押出品は、多孔性の減少もしくは消失を示す。
【0033】
強化押出品のさらなる例、および押出品を製造する際に考慮すべき押出のメリットと態様の特性が、添付の補遺Aの29ページに“Formulating to Enhance the Flexural Strength of PVC/Wood Composites”と題して、そして添付の補遺Bの16ページに“Formulating to Enhance the Flexural Properties of PVC/Wood Composites”と題して説明されている。
【0034】
方法
本発明は、1つの態様においては、好ましくは、エステルワックス(好ましくは、本発明の潤滑組成物の成分としての)、樹脂(好ましくはPVC樹脂)、および多くの実施態様においては強化材を含んだ押出可能な組成物から成形品を製造する方法に関する。本明細書に詳細に説明されているように、本発明の組成物は、組成物から製造される押出品の機械的特性の向上だけでなく、押出可能な組成物の押出適性特性(extrudability properties)の1つ以上、および押出品の外観特性の向上をもたらす。本発明による向上は、実質的に同等の重量%の潤滑剤を含有するものの、本発明の組成物の必須成分の1種以上が実質的に存在しない押出可能な組成物と比較して、標準的な条件下で測定するのが好ましい。このような記載での押出可能な組成物を、ここでは便宜上、比較上の押出可能な組成物と呼ぶ。幾つかの好ましい方法においては、本発明の成形品は、比較上の押出可能な組成物から製造される成形品が有する機械的特性より優れた機械的特性を有し、本発明の成形品が製造される押出可能な組成物は、少なくとも実質的には、比較上の押出可能な組成物と同等であるような、そして好ましくは比較上の押出可能な組成物より優れた押出適性特性を有するのが好ましい。幾つかの好ましい実施態様においては、本発明の成形品は、比較上の押出可能な組成物から製造される押出品と少なくとも同じ機械的特性を有しており、本発明の成形品が製造される押出可能な組成物の押出適性特性の少なくとも1つが、比較上の押出可能な組成物の押出適性特性より優れている。
【0035】
本明細書で使用している、比較上の潤滑組成物(単一の潤滑性化学種だけを含有する)は、本発明の潤滑組成物の必須成分の1種以上が全く存在しないか、または実質的な程度では存在しないような潤滑組成物である。
【0036】
本発明の方法は、本発明の組成物を得ること、および組成物に物理的特性〔たとえば、均質性、内部化学構造(溶融など)、および形状(たとえば、押出可能な組成物を押し出すこと)〕の1つ以上を変化させる剪断力に組成物をさらすことを含むのが好ましい。当業界には公知のことであるが、押出可能な組成物の要件は、成形可能な組成物を成形するのに使用される装置、これによって作製される押出品の所望の特性、および他のファクターに依存して広範囲に変わる。そしてこのような要件はいずれも、本発明の範囲内の組成物によって満たすことができると考えられる。便宜上、押出可能な組成物の特性を、押出可能な組成物の“押出適性特性(extrudability properties)”と呼ぶ。
【0037】
本発明の押出可能な組成物は、当業界に公知のいかなる手段によっても得ることができると考えられるけれども、一般には、得られる押出可能な組成物が、少なくとも樹脂、強化材、および押出可能な組成物に有益な潤滑効果を及ぼす1種以上の成分を含んだ潤滑組成物を混合することによって形成されるのが好ましい。潤滑組成物が2種以上の成分を含む場合、押出可能な組成物を得るための成分の混合は、個別の成分として逐次に行ってもよいし、あるいは同時に行ってもよい。これとは別に、本発明の特定の態様によれば、潤滑組成分の混合は、別個の潤滑組成物の形態での成分の混合物として行うこともできる。
【0038】
一般には、押出可能な組成物は、樹脂、強化材、他の任意成分(使用する場合)、および本発明の潤滑剤成分の組み合わせ物を混合することを含むブレンディング工程において、押出可能な組成物の成分を混合することによって得られる。押出可能な組成物を製造する際には、混合物を外部的に加熱してブレンドするのが好ましい。ブレンディング工程は、組成物中にさらなる剪断加熱を引き起こす。剪断加熱と外部熱源からの熱との組み合わせが、組成物の個々の粒子の軟化・溶融を引き起こし、これによって実質的に均質なマスが得られる。溶融の時点(溶融点)において、組成物中の個々の粒状物のアイデンティティが実質的に失われるのが好ましい。
【0039】
本発明の組成物の押出適性特性は、このような加熱操作とブレンディング操作を一定の条件下で行い、得られるマスの特定の態様を測定することによって評価することができる。言うまでもないことであるが、このような試験は、試験装置(たとえばトルク・レオメーター)の作動能力(operating capabilities)を考慮して適切であるような、そして試験しようとする組成物に関して選択される特定の成分に対して適合するようないかなるセットの条件下でも行なうことができる。便宜上、押出可能な組成物の比較評価のために選択されるいかなるセットの条件も、ここでは標準条件と呼ぶ。標準条件が使用される場合、溶融点に達するのに必要とされるブレンディングの時間を“溶融時間(fusion time)”と呼ぶ。標準条件下では、一般には溶融点において組成物の粘度が最大であり、マスをブレンドするのに必要とされるトルクの最大値が生じるのはほぼこの同じ時点である。最大トルクは溶融粘度に関係しており、溶融トルクとして記録することができる〔これら特性のどちらも、押出可能な組成物の長所特性(properties of merits)である〕。
【0040】
標準条件下でブレンディングを続けると、組成物の粘度および組成物をブレンドするのに必要とされるトルクは、比較的一定の状態にまで低下する、と考えられる。定常状態の値を平衡粘度と呼び、この時点における組成物の温度を平衡温度と呼び、そして組成物を平衡温度にてブレンドするのに必要とされるトルクを平衡トルクと呼ぶ。特定の温度においては、平衡トルクと平衡粘度のどちらも押出可能な組成物の長所特性(properties of merits)であり、適切な状況下では、種々の押出可能な組成物の押出適性を比較するのに使用される。押出可能な組成物の上記測定可能な特性はいずれも、適切な状況下においては、2種の異なった押出可能な組成物を比較する上での基礎として使用することができる。
【0041】
標準条件下でのブレンディングをさらに続けると、本発明の少なくとも特定の組成物が架橋を起こし始め、組成物の粘度が、したがってブレンドを続けるのに必要なトルクが増大し始めると考えられる。標準条件下では、溶融点と、架橋による測定可能な粘度上昇の始まりとの間の経過時間を安定性時間(stability time)と呼ぶ。標準条件下では、安定性時間はさらに、押出可能な組成物の長所特性であり、適切な状況下においては、2種の異なった押出可能な組成物の押出適性特性を比較するのに使用することができる。
【0042】
したがって、標準条件下にて測定される押出可能な組成物の上記特性は、押出可能な組成物の押出適性特性を示すことが可能である。これらの特性を標準条件下で測定することによって、種々の押出可能な組成物の押出適性に関して、定性的および定量的な比較を行うことができる。他の押出適性特性は、実質的に同じ条件下にて同じ押出機から押出された組成物を比較することによって測定することができる。これらの押出適性特性の例としては、所定の押出機トルク設定またはヘッド圧力値に対する組成物の押出速度がある。
【0043】
本発明の方法はさらに、供給された成形可能な組成物を押出または成形して、成形品を形成させることを含む。当業界には、多くの特定の成形/押出法がよく知られており、このような方法はいずれも、本発明にしたがって使用するのに適合していると考えられる。特定の好ましい実施態様においては、組成物を押出す工程は、少なくとも2つの金属製カレンダーロールを有するカレンダリング・オペレーション(a calendaring operation)中に組成物を導入することを含む。押出工程は、本発明の押出可能な組成物の温度を、塑性流動を受けることができる温度にまで上げることを含むのが好ましい。
【0044】
特定の好ましい実施態様においては、押出工程は、押出可能な組成物を加熱すること、押出可能な組成物を、1つ以上の開口を有するダイに強制的に通すことによって組成物の形状を変えること、および/または、少なくとも2つの金属製ロール間で組成物をカレンダリングすることを含む。ダイが使用される実施態様の場合、ダイ中の開口により、出てくる押出品に輪郭形状が付与される。いずれのケースにおいても、このようにして得られる押出品を外観特性〔前述したように、寸法安定性(ダイ膨潤)と表面外観(粗さやシーリング性)を含む〕に関して評価することができる。したがって一定の条件下においては、異なった押出可能な組成物はさらに、単位時間当たり所定量の押出可能な組成物をダイやカレンダーロール等に強制的に通すのに必要とされる力の量に基づいて評価・比較することができ、また異なった押出組成物から製造される押出品は、寸法安定性と外観特性に基づいて比較することができる。本発明の押出可能な組成物とこれらの組成物から製造される押出品の他の特徴的な長所価値(value of merit)は、押出可能な組成物を押出すのに必要とされる圧力もしくは力、および/または、組成物の金属離れ特性である。これらの量は、他の全ての押出変数を一定に保持した状態で決定される。この力は、押出の条件により、上記の外観特性が実質的に同等である、比較しようとする押出可能な組成物からの押出品が得られるときに測定される。
【0045】
前述したように、本発明の1つの態様は、押出可能な組成物中への(そしてこれに付随して、組成物から製造される押出品中への)強化材の分散を向上させることである。周知のように、組成物中への強化材の分散を向上させると、このような押出可能な組成物から製造される押出品の機械的特性を改良することができ、強化材のよりコスト効率の高い使用がなされる。さらに周知のように、強化材の分散向上は、組成物の測定可能な他の特性を変えることがある。たとえば、他の全てのファクターが同等であるとして、押出可能なPVC組成物中への強化材分散の程度を高めると、所定の温度における組成物の見かけ粘度を増大させることができ、この結果、組成物を所定の速度にて押出すのに必要な押出機トルクがより高くなる。
【0046】
本発明の方法はさらに、実質的に同じ組み込み量の比較上の潤滑剤を有する比較上の押出可能な組成物から実質的に同等の押出条件下にて製造される成形品と比較して(標準的な比較条件)、改良された機械的特性を有する成形品を提供することを含む。周知のように、また前述したように、たとえば、引張強度を測定するためのASTM D638、構造材の見かけの弾性係数と破壊係数に適用される曲げ強度を評価するためのASTM D6109-031、および構造材の耐力特性を試験するためのASTM D4761-02aを含めて、成形品の種々の機械的特性を評価するための種々の基準がある。
【0047】
前述の長所特性(properties of merit)と標準的な比較条件にしたがって、幾つかの好ましい実施態様においては、本発明の押出可能な組成物は、引張強度、曲げ強度、破壊係数、および見かけの弾性係数(ASTM D6109-03またはASTM D4761-02aにしたがって測定、どちらも参照により本明細書に含める)のうちの1つ以上の増大を示す押出品をもたらしつつ、押出可能な標準的組成物の押出適性特性と少なくとも同等の押出適性特性を有する押出可能な組成物をもたらすように選択されたある割合の成分を含むある量の潤滑組成物を含有する。より好ましいのは、改良された機械的特性を有する押出品を提供し、改良された押出適性を有する押出可能な組成物である。さらに好ましいのは、これらの改良された押出適性特性を示す押出品をもたらす本発明の押出可能な組成物であり、これらの組成物は、少なくとも1つの改良された機械的特性と少なくとも1つの改良された外観特性(すなわち、表面粗さ及び/又は表面シーリング、光沢、ならびに寸法安定性)を有する押出品をもたらす。
【0048】
幾つかの実施態様においては、前述の長所特性と標準的な比較条件にしたがって本発明の潤滑組成物の成分とそれらの重量比が選択され、潤滑組成物が本発明の組成物中に、溶融温度、溶融時間、単位時間当たりに所定量の押出可能な組成物を押出すのに必要とされる力(押出機のヘッド圧力またはトルクによって測定)、および幾つかの実施態様においては必要に応じて金属離れ特性等の押出適性特性の1つ以上の低下もしくは減少を有する組成物(好ましくは押出可能な組成物)をもたらす量にて組み込まれる。押出可能な組成物の成分とそれらの相対量は、引張強度、曲げ強度、破壊係数、見かけの弾性係数〔ASTM D6109-03またはASTM D4761-02a(共に参照により本明細書に含める)にしたがって測定〕の1つ以上に向上を示す押出品をもたらしつつ、上記押出適性特性の少なくとも1つに少なくとも約3%の向上、好ましくは少なくとも約5%の向上、さらに好ましくは少なくとも約10%の向上、そしてさらに好ましくは少なくとも約20%の向上をもたらすように選定するのがさらに好ましい。さらに好ましいのは、これらの改良された押出適性特性を有する押出品であり、これにより、所定の機械的特性に少なくとも約5%の、好ましくは少なくとも約10%の、さらに好ましくは少なくとも約15%の、そしてさらに好ましくは少なくとも約20%の向上を示す押出品が得られる。
【0049】
幾つかの好ましい実施態様においては、前述の長所特性と標準的な比較条件にしたがって本発明の潤滑組成物の成分とそれらの重量比が選択され、潤滑組成物が本発明の押出可能な組成物中に、表面粗さ、表面光沢、および寸法安定性のいずれか1つに向上を、そして引張強度、曲げ強度、破壊係数、および見かけの弾性係数(ASTM D6109-03またはASTM D4761-02aにしたがって測定)の1つ以上に増大を示す押出品をもたらしつつ、標準的な押出可能な組成物の押出適性特性と少なくとも同等(好ましくは、上記の押出適性特性の少なくとも1つに少なくとも約2%の、好ましくは少なくとも約5%の、さらに好ましくは少なくとも約10%の向上をもたらす)の押出適性特性を有する押出可能な組成物をもたらす量にて組み込まれる。さらに好ましいのは、1つ以上の改良された押出適性特性を示す押出品であり、これにより、少なくとも1つの外観特性に少なくとも約2%の、好ましくは少なくとも約5%の、さらに好ましくは少なくとも約10%の向上を、そして上記機械的特性の1つ以上に増大をもたらす押出品が得られる。さらに好ましいのは、上記の改良された押出適性特性を有し、上記の改良された外観特性を有する押出品をもたらし、そして上記機械的特性の1つ以上に少なくとも約5%の、好ましくは少なくとも約10%の、さらに好ましくは少なくとも約20%の向上もたらす押出可能な組成物である。
【0050】
幾つかの実施態様においては、前述の長所特性と標準的な比較条件にしたがって本発明の潤滑組成物の成分と割合が選択され、潤滑組成物が本発明の押出可能な組成物中に、引張強度、曲げ強度、破壊係数、および見かけの弾性係数(ASTM D6109-03またはASTM D4761-02aにしたがって測定)の1つ以上に少なくとも約10%の、好ましくは少なくとも約15%の、さらに好ましくは少なくとも約20%の、そしてさらに好ましくは30%を超える増大をもたらす成形品を製造することができる押出可能な組成物が得られるような量にて組み込まれる。
【0051】
本発明の幾つかの実施態様においては、引張強度、曲げ強度、破壊係数、および見かけの弾性係数(ASTM D6109-03またはASTM D4761-02aにしたがって測定)の1つ以上に、好ましくは少なくとも約5%の、さらに好ましくは少なくとも約10%の、さらに好ましくは少なくとも約20%の増大をもたらす、押出可能な組成物から製造される押出品を提供しつつ、標準的な比較条件下にて、単位時間当たり所定量の押出可能な組成物をダイに強制的に通すのに必要とされる力を、少なくとも約2%だけ、好ましくは少なくとも約5%だけ、さらに好ましくは少なくとも約10%だけ減少させるのに効果的な量の本発明の潤滑組成物を使用するのが好ましい。このような実施態様においては、一般には、本発明の押出可能な組成物の他の押出適性特性が、比較上の押出可能な組成物と比較して実質的に低下しないことが好ましい。このような実施態様においてはさらに、一般には、本発明の押出可能な組成物から標準的な条件下で製造される押出品の外観と機械的特性(詳細については後述)が、同等の潤滑剤組み込み量の比較上の押出可能な組成物から標準的な条件下で製造される押出品と比較して改良されるのが好ましい。
【0052】
特定の理論に拘束されるつもりはないが、本発明の潤滑組成物の成分は、後述の割合と量にて混合すると、押出可能な組成物に必要とされる内部潤滑特性と外部潤滑特性をもたらし、このとき押出可能な組成物から製造される押出品の機械的特性と外観特性に悪影響を及ぼすことはない。
【0053】
幾つかの好ましい実施態様においては、本発明の潤滑組成物は、上記押出適性特性の少なくとも1つの向上を、および/または、強化材が分散される程度(本明細書に記載の目視手順にしたがって測定)の向上をもたらす量にて使用される。潤滑剤が組成物の押出適性の向上をもたらす場合、潤滑組成物は、押出可能な組成物が塑性流動を起こす抵抗性に関して(押出の条件が同じで、同等量の比較上の潤滑剤を使用している押出可能な組成物と比較して)少なくとも約2%の、好ましくは少なくとも約5%の、さらに好ましくは少なくとも約10%の減少をもたらすだけでなく、本発明の押出可能な組成物から製造される押出品の破壊係数、見かけの弾性係数、曲げ強度、および/または引張強度(ASTM D6109-03またはASTM D4761-02aにしたがって測定)の1つ以上に関して少なくとも約5%の、好ましくは少なくとも約10%の、さらに好ましくは少なくとも約20%の増大をもたらすような量にて使用するのが好ましい。したがって本発明の好ましい方法は、比較的低いヘッド圧力と、押出プロセスを果たすのに必要な比較的低いトルク(どちらも、押出可能な組成物の押出適性を評価できる特徴となる)を使用する押出工程をもたらすことができる。特定の実施態様においては、潤滑組成物は、本発明の潤滑組成物が存在しないこと以外は、他の全ての条件が実質的に同じである場合に必要とされるヘッド圧力と比較して、ヘッド圧力を少なくとも約5%だけ、さらに好ましくは少なくとも約10%だけ減少させるのに効果的な量にて、そして同時に、本発明の押出可能な組成物から製造される押出品の破壊係数、見かけの弾性係数、引張強度、および/または曲げ強度に関して少なくとも約5%の、さらに好ましくは少なくとも約10%の増大をもたらすのに効果的な量にて、押出可能な組成物中に存在するのが好ましい。特定の実施態様においてはさらに、潤滑組成物は、本発明の潤滑組成物が存在しないこと意外は、他の全ての条件が実質的に同じである場合に必要とされる押出トルクと比較して、押出トルクを少なくとも約2%だけ、さらに好ましくは少なくとも約5%だけ、さらに好ましくは少なくとも約10%だけ減少させるのに効果的な量にて、そして同時に、本発明の押出可能な組成物から製造される押出品の破壊係数、および/または見かけの弾性係数、および/または引張強度、および/または曲げ強度(ASTM D6109-03またはASTM D4761-02aにしたがって測定)の1つ以上に関して少なくとも約5%の、さらに好ましくは少なくとも約10%の増大をもたらすのに効果的な量にて、押出可能な組成物中に存在するのが好ましい。
【0054】
したがって、本発明の特定の好ましい方法は、寸法安定性が大幅に改良された押出品(押出製品)をもたらすことができる。本発明の潤滑組成物は、押出品の寸法安定性を増大させるのに効果的な量にて、そして同時に、押出可能な組成物から製造される押出品の破壊係数、見かけの弾性係数、引張強度、および/または曲げ強度の1つ以上の増大をもたらすのに効果的な量にて、押出可能な組成物中に存在するのが好ましい。押出可能な組成物中に使用される潤滑組成物の量は、比較上の押出可能な組成物から同じ押出機条件にて得られる押出品の寸法安定性と比較して、少なくとも約2%の、さらに好ましくは少なくとも約5%の、さらに好ましくは少なくとも約10%の寸法安定性向上をもたらす量であるのが好ましい。これに付随して、比較上の押出可能な組成物から製造される押出品と比較して、本発明の押出可能な組成物から製造される押出品の機械的特性が、破壊係数、見かけの弾性係数、引張強度、および/または曲げ強度(ASTM D6109-03またはASTM D4761-02aにしたがって測定)の少なくとも1つに関して少なくとも約5%、さらに好ましくは少なくとも約10%増大するのが好ましい。
【0055】
前述したように、特定の理論に拘束されるつもりはないが、外部潤滑剤は、押出可能な組成物に接触している表面と押出可能な組成物との間の接着力を低下させる。押出可能な組成物が強化材を含有する場合、樹脂(組成物のバルクを相当程度に構成する)が押出時にダイに接着する傾向は、押出可能な組成物がダイを出つつあるときに、押出可能な組成物から強化材を引っ張るように作用することがある。この傾向は、押出品上にザラザラした又はくぼみのある〔“コーン・コッブ(corn cobb)”〕外観を有する表面を生じ、押出品の商品価値を低下させる。押出品表面の品質は、一般には、表面の粗さおよび/または表面の反射率(光沢)を測定することによって評価される。光沢の測定は、たとえばASTM D2523-95およびD2457-97にしたがって行う。表面粗さの変化は、2つの表面の目視比較および/または触感比較によって決定される。表面粗さはさらに、押出品中への水の浸入の程度で示される。表面粗さが増大するにつれて、表面はシールされにくくなり、試験しようとする押出品の本体中に水が浸入する程度が増大する。本発明の潤滑成分は、一緒にしたときに、本発明の潤滑組成物が存在しないこと以外は他の全ての条件が実質的に同じである状態で、押出品に対して観察される水の浸入と比較して、水の浸入を少なくとも約2%だけ、さらに好ましくは少なくとも約5%だけ、さらに好ましくは少なくとも約10%だけ減少させるのに効果的な量にて、そして同時に、押出可能な組成物から製造される押出品の破壊係数、および/または見かけの弾性係数、および/または引張強度、および/または曲げ強度の1つ以上に少なくとも約5%の、さらに好ましくは少なくとも約10%の増大をもたらすのに効果的な量にて、押出可能な組成物中に存在するのが好ましい。
【0056】
本発明の特定の潤滑組成物はさらに、強化材と本発明の樹脂成分との間の湿潤(およびこれによる接着力)を向上させることで界面活性剤として作用することがある、ということが見出されている。このことは、破壊係数、および/または見かけの弾性係数、および/または引張強度、および/または曲げ強度、および/または耐力から選択される1つ以上の機械的特性の増大によって実証されている。
【0057】
成形品がオリフィス開口やカレンダーロール間などから出てくるときに、成形品を冷却して、ダイもしくはロールによって付与される基本的な形状を有する比較的剛性の物品を得るのが好ましい。こうした成形押出品はいずれも、その押出された形態にて使用することができ(たとえば、化粧成形品、フェンシング部材、建造物用の羽目板、窓用部材、ドア枠、ベースボード、およびフラッシング等として)、本発明の方法によって、もしくは本発明の組成物を使用することによって得られるこのような物品は全て本発明の範囲内に含まれる。押出品はさらに、適切な長さの部品にカットし、そのあとの処理において使用すべく(たとえば、射出成形プロセスやブロー成形プロセス用の供給原料として)包装することができる。
【0058】
したがって本発明の方法は、好ましい実施態様においては、少なくとも1種のポリ塩化ビニル樹脂、セロルース強化材成分、および本発明の潤滑組成物を含んだ押出可能な組成物を得ることを含む。本発明の潤滑組成物は、望ましくて好ましい優れた押出適性特性を有する押出可能な組成物をもたらしつつ、押出可能な組成物から製造される押出品の少なくとも1つの機械的特性を向上させるのに効果的な量にて、押出可能な組成物中に存在するのが好ましい。したがって、実質的に同等の潤滑剤組み込み量を有するが、本発明の潤滑組成物の1種以上の成分が実質的に存在しない比較上の押出可能な組成物と比較すると、本発明の押出可能な組成物の押出適性特性は少なくとも同等であり、そして少なくとも1つの処理特性が改良されるのが好ましい。これに付随して、本発明の押出可能な組成物から製造される押出品の機械的特性が、比較上の押出可能な組成物から製造される押出品と比較して改良される。
【0059】
本発明の方法は、押出性能の少なくとも1つの基準に、そして押出品外観特性の少なくとも1つの基準に改良をもたらすのが好ましい。本発明の方法は、下記の基準のそれぞれに対して改良された性能を示すのがさらに好ましい:押出適性基準(たとえば、押出トルク、ヘッド圧力、および処理安定性);押出可能な組成物から製造される押出品の外観特性(たとえば、表面粗さ、光沢、および寸法安定性);および押出可能な組成物から製造される押出品の機械的特性(たとえば、引張強度、曲げ強度、破壊係数、および見かけの弾性係数)。
【0060】
組成物
本発明は、押出可能な組成物、押出可能な組成物の配合において有用な添加組成物、および本発明の押出可能な組成物から作製される押出組成物(成形品を含む)を提供する。
【0061】
押出可能な組成物
本発明の押出可能な組成物は、樹脂、強化材、エステルワックスと酸化ポリエチレンワックトとの組み合わせ物、およびステアリン酸亜鉛を含む。特定の実施態様においては、組成物は、追加の熱安定剤(たとえばステアリン酸カルシウム)や追加の潤滑剤(たとえばパラフィンワックス)を必要に応じて含んでよい。エステルワックスと酸化ポリエチレンワックスとの組み合わせ物、ステアリン酸亜鉛成分、および必要に応じた他の成分(たとえば、ステアリン酸カルシウムやパラフィンワックス)は、別個の組成物として作製することができる。押出可能な組成物に個々の成分として加えられようと、別個の組成物として作製して、押出可能な組成物に成分の混合物として加えられようと、本明細書で便宜上、これらの成分を“潤滑組成物(lubricant composition)”と呼ぶことがある。樹脂、強化材、および潤滑組成物のほかに、本発明の好ましい押出可能な組成物は、押出可能な組成物において同一もしくは類似の機能の幾つかを果たすことがある他の成分を含めた他の添加剤〔たとえば、他の潤滑成分、耐衝撃性改良剤、充填剤(たとえば炭酸カルシウム)、熱安定剤(たとえば、ローム&ハース社から市販のTM281(登録商標)等の錫ベースの安定剤)、加工助剤(たとえばアクリルコポリマー)、結合剤、着色剤、ならびに他の物質、たとえば、「Handbook of Plastic Materials and Technology,Ed.I.Rubin,Wiley-Interscience,John Wiley & Sons,Inc.New York,1990」に記載の物資や「Plastics Additives and Modifires Handbook.Ed.J.Edenbaum,Van Nostrand Reinhold,New York 1992,Chapter 3」に記載の物質(これら2つの文献を参照により本明細書に含める)〕を必要に応じて含んでよい。
【0062】
樹脂、強化材、少なくとも1種のエステルワックス、および少なくとも1種の酸化ポリエチレンワックスを含有する本発明の押出可能な組成物を製造することができるけれども、さらなる考察により、他の成分の含ませることが必要となる場合があることは言うまでもない。これらの考察としては、種々の加工装置が必要となること、特定の輪郭形状で押出すことで課される要件、および当業界に公知の他の考察などがある。幾つかの好ましい実施態様においては、押出可能な組成物は、パラフィンワックス、エステルワックス、酸化ポリエチレンワックス、ステアリン酸亜鉛、および必要に応じたステアリン酸カルシウムを含んだ潤滑組成物を含む。
【0063】
好ましくは、本発明の押出可能な組成物の成分の種類と量は、組成物が下記の特性(標準的な試験条件にて測定される)の1つ以上を示すように選定される:より低い溶融トルク、より低い平衡トルク、溶融時間の減少、平衡温度の低下、および加工安定性(動的熱安定性)の増大、および/または寸法安定性、および/または表面粗さ、および/または押出可能な組成物を押出すことによって製造される押出品(押出製品)の表面光沢、および/または金属離れ特性の改良。前述したように、これらの特性は一般に、押出プロセス、外観、および有用性の向上もたらし、したがって押出品の商品価値が向上する。上記特性の1つ以上に向上がもたらされることに付随して、本発明の押出可能な組成物中に使用される潤滑組成物を構成している成分の種類と量はさらに、押出可能な組成物から製造される押出品に、改良された機械的特性をもたらすのが好ましい。改良された機械的特性の例としては、曲げ強度、引張強度、破壊係数、および見かけの弾性係数の1つ以上の増大がある。言い換えると、強化材入りの押出可能な組成物(好ましくは、PVCとセルロース強化材を含んだ組成物)中に本発明による潤滑組成物(本明細書において詳細に説明されている)を組み込むと、改良された押出適性特性を示す組成物を得ることができ、こうした組成物から、実質的に同等量の潤滑組成物を組み込んでいるが、本発明の潤滑組成物の成分の1種以上が実質的な程度にて存在しない押出可能な組成物(比較上の押出可能な組成物)と上記の標準的な条件下にて比較して、改良された寸法安定性、および/または改良された表面粗さ、および/または改良された表面光沢を有する押出品を得ることができる、ということを本発明者らは見出した。これに付随して、本発明の押出可能な組成物から製造される押出品は、比較上の押出可能な組成物から製造される押出品と標準的な条件下にて比較すると、改良された機械的特性を有する。
【0064】
一般には、押出可能な組成物の加工適性特性に関して、押出可能な組成物の処理に関連した以下の特性は、他の押出パラメーターが一定であるとして、押出可能な組成物中に本発明の潤滑組成物を組み込むことによって下記のように改良される:(a)組成物中への強化材の分散の向上;(b)より低いヘッド圧力;(c)より低い溶融トルク;(d)より低い押出温度;(e)より低い見かけ粘度;および金属離れ特性。一般には、本発明の押出可能な組成物から、他の条件を一定にして押出によって製造される押出品の外観特性に関して、上記処理特性の向上の代わりに、あるいは上記処理特性の向上に加えて、押出品の寸法安定性の向上、および/または表面粗さの向上、および/または表面光沢の向上を観察することができる。押出可能な組成物の上記処理特性および本発明の押出可能な組成物を標準的な条件下で押出すことによって製造される押出品の外観特性のいずれか1つ又は全ての向上に加えて、本発明の組成物から製造される押出品は、曲げ強度、および/または引張強度、および/または破壊係数、および/または見かけの弾性係数等の機械的特性の1つ以上に対する向上も示す(これらの機械的特性は、上記の基準にしたがって評価する)。
【0065】
樹脂
本発明の押出可能な組成物は、熱可塑性を示すか、またはそうでなければ押出可能であるような熱可塑性樹脂を含んでよい。したがって、ポリカーボネート、ABSプラスチック、およびハイ・エンジニアリングプラスチック(high engineering plastics)等の樹脂を使用することができると考えられる。しかしながら一般には、本発明の樹脂は、ビニルベースの樹脂〔すなわち、ビニル基(CH2=CH)を出発構造単位として共有する、ホモポリマー、コポリマー、およびターポリマー等を含めた1種以上のポリマー〕を含むのが、そして好ましくは、本質的にこのようなビニルベース樹脂からなるのが好ましい。好ましいのはポリ塩化ビニル(PVC)であり、とりわけバルクPVCの懸濁液、分散液、またはエマルジョンが好ましく、バルクPVC樹脂の懸濁液が特に好ましい。好ましい実施態様においては、本発明のPVC樹脂は、約50〜約70(さらに好ましくは約55〜約65)のフィレンチャーK値(Filentscher K-value)を有する。
【0066】
強化材
本発明の押出可能な組成物および前記組成物から製造される押出品は、主として樹脂(本明細書に詳細に説明されている)を含み、好ましい実施態様においては、実質的に均一に分散された強化材(便宜上“強化剤”とも呼ぶことがある)が混合されている。言うまでもないが、強化剤は、さまざまな形状を有してよい(たとえば、繊維、チップ、および粒状物)。さまざまな強化材(たとえば、ガラス繊維、タルク、およびアラミド繊維等)を組み込むことができるけれども、強化材はセルロース材料(便宜上“セルロース強化成分”と呼ぶことがある)を含むのが好ましい。適切なセルロース強化成分の例としては、のこ屑、木材チップ、木粉、バイサル(bisal)、麻繊維、および亜麻繊維などがある。市販されているセルロース系強化繊維は、たとえばアメリカン・ウッド・ファイバー社(American Wood Fiber Co.)からの、60メッシュのサザン・イエロー・パイン(southern yellow pine)である。
【0067】
好ましい潤滑組成物の種々の成分、本発明の押出可能な組成物と潤滑組成物を製造するための好ましい方法、および潤滑組成物とそれらの使用の例を以下に記載する。
潤滑組成物
本発明の押出可能な組成物に使用するための、および本発明の添加組成物の製造において使用するための好ましい潤滑組成物は、(i)エステルワックス;(ii)酸化ポリエチレンワックス;および好ましくは(iii)ステアリン酸亜鉛;を含む。幾つかの好ましい潤滑組成物においては、ステアリン酸カルシウム成分とパラフィンワックス成分も組み込まれている。
【0068】
幾つかの好ましい実施態様においては、潤滑組成物の成分の重量比は、前記潤滑組成物が、樹脂100重量部当たり約2重量部〜約5重量部の潤滑組成物をもたらす量にて押出可能な組成物中に組み込まれたときに、同じ潤滑剤組み込み量を有するが、本発明の潤滑組成物の1種以上の必須成分が実質的に存在しない潤滑組成物を含んだ押出可能な組成物から製造される押出品の破壊係数を超える破壊係数(ASTM D6109-97e1にしたがって測定)を有する押出品を生じる押出可能な組成物が得られるように選定される。少なくとも約20%の破壊係数の増大をもたらすような比を選定するのがさらに好ましい。
【0069】
1つの好ましい実施態様においては、出願人らの潤滑組成物は、(a)エステルワックス;(b)ポリエチレンワックス;(c)ステアリン酸亜鉛;(d)パラフィンワックス;および(e)ステアリン酸カルシウム;を含み、潤滑組成物の成分の相対量は、ステアリン酸亜鉛成分、エステルワックス成分、または酸化ポリエチレンワックス成分の1種以上が実質的に存在しない押出可能な組成物から製造される押出品と比較して、前記組成物から製造される押出品の引張強度の有利な増大をもたらすように選定される。特定の理論に拘束されるつもりはないが、潤滑組成物の成分が強化材入りの押出可能な組成物の一部を形成する場合、これらの成分は、押出可能な組成物に潤滑特性と熱安定性を付与しつつ、組成物中の強化剤に対する樹脂の親和性を向上させる、と出願者らは考えている。
【0070】
エステルワックス成分
本発明の潤滑組成物と押出可能な組成物に使用するのに適したエステルワックスの例としては、単官能の脂肪酸(たとえばステアリン酸)もしくは他の単官能の親油性有機酸の存在下にて、二官能カルボン酸もしくは多官能カルボン酸(たとえばアジピン酸)と二官能もしくは多官能アルコール(たとえばペンタエリスリトール)との縮合によって製造することができるポリマー化合物がある。上記の反応物はいずれも市販品である。
【0071】
種々のエステルワックスの製造と使用法が、たとえば、Nakamachiらによる米国特許第6,485,804号、Lindnerによる米国特許第5,621,033号、Andersonらによる米国特許第5,039,740号、Hasegawaらによる米国特許第4,681,975号、Okitsuらによる米国特許第4,454,313号、およびWilliamsらによる米国特許第3,972,962号に記載されている(これら全ての特許を参照により本明細書に含める)。特定の好ましい実施態様においては、本発明の潤滑組成物に使用するのに適したエステルワックスは以下の特性を有する:エステルワックス1g当たり約1mgKOH〜約25mgKOHの酸価;および100℃にて約30センチポイズ〜176℃にて約160センチポイズの粘度。
【0072】
本発明の潤滑組成物に使用するためには、エステルワックスが、ワックス1g当たり約10mgKOH〜約18mgKOHの酸価、および115℃にて約50センチポイズの粘度を有するのが好ましい。さらに好ましいのは、ペンタエリスリトールとアジピン酸とステアリン酸とが約16:14:70の重量比である縮合物を含み、エステルワックス1g当たり約12mgKOHの残留酸価と約116℃にて約50センチポイズの粘度を有するエステルワックスである。
【0073】
本発明の潤滑組成物に使用するのに適したエステルワックスは、ハネウェル社からレオラブ(Rheolub)(商標)スペシャルティエステル(たとえば、レオラブ710、レオラブ830、およびレオラブ1800を含む)の商品名で市販されている。
【0074】
本発明の潤滑組成物において上記エステルワックスの代わりに使用できる他の化合物としては、ペンタエリスリトール-アジペート-オレエート、ペンタエリスリトール-テトラステアレート、ペンタエリスリトール-モノステアレート、ペンタエリスリトール-ジステアレート、およびこれらの2種以上の混合物がある。これらの多くは市販されている〔たとえば、コグニス社(Cognis)から市販のペンテステル(Pentesters))〕。
【0075】
酸化ポリエチレンワックス成分
酸化ポリエチレンポリマー(以後、酸化ポリエチレンまたはOPEと呼ぶ)は、長年にわたって表面活性物質として知られている。これらの物質は一般に、オレフィンポリマー(たとえばポリエチレン)または“ポリエチレンワックス”オレフィンコポリマー(たとえば、ポリエチレン/ポリブタジエンやポリエチレン/ポリメタクリル酸)から、酸素官能価(oxygen functionality)(たとえば、カルボニル官能基の形の)がポリマー中に導入されて、これによって疎水性がより低くなるように、ポリマーまたはコポリマーを酸化処理することによって製造される。多くの出版物〔たとえば、Deckersらによる米国特許第6,060,565号、Hettcheらによる米国特許第4,459,388号、Bushらによる米国特許第3,322,711号、およびBauumによる米国特許第3,234,197号(これら特許の開示内容を参照により本明細書に含める)〕に、これらの物質の製造法と種々の用途が記載されている。
【0076】
これらの物質の例としては、ハネウェル・インタナショナル社(“Honeywell”)から市販の、酸化ポリエチレン物質のA-C(登録商標)ワックスシリーズがある。
本発明の潤滑組成物に使用するためには、最も有用な酸化ポリエチレン物質は、以下のような特性を有する:(i)140℃にて約200cps(センチポイズ)〜150℃にて約85,000cpsの範囲のブルックフィールド粘度;および(ii)物質1g当たり約5mgKOH〜物質1g当たり約19gKOHの範囲の、ASTM D-1386、305-OR-1、またはTMP-QCL-006にしたがって測定される酸価。酸価ポリエチレンワックス成分が、少なくとも150℃にて6000cpsのブルックフィールド粘度、およびワックス1g当たり20mgKOH以下の酸価を有するのがさらに好ましい。OPE成分が、150℃にて約8,500cps〜約85,000cpsのブルックフィールド粘度、および物質1g当たり約7mgKOH〜物質1g当たり約20mgKOHの酸価(ASTM D638およびD6109にしたがって測定)を有するのがさらに好ましい。この範囲内である市販の物質は、AC316酸化ポリエチレンとAC307酸化ポリエチレンであり、どちらもハネウェル社から入手することができる。
【0077】
ステアリン酸亜鉛成分
本発明の潤滑組成物に使用するのに適したステアリン酸亜鉛は、“ステアリン酸”として一般的に認識されている脂肪酸の亜鉛塩(市販されている)のいずれかを表わしている。ここで言うステアリン酸亜鉛は、本質的にオクタデカン酸亜鉛からなる高純度の塩だけでなく、該物質が製造される脂肪酸源のある範囲の脂肪酸亜鉛塩成分を含んだ食品用グレードと工業用グレードの塩も含む。これらのバリエーションは、当業者にはよく知られている。一般に、押出可能な組成物における熱安定剤として使用するのに許容可能なグレードと純度を有するいかなるステアリン酸亜鉛も、本発明の組成物中に使用することができる。適切なステアリン酸亜鉛の例としては、ノラック社(NORAC)から市販のCOAD(登録商標)ステアリン酸亜鉛がある。
【0078】
任意のパラフィンワックス成分
本発明の潤滑組成物のパラフィンワックス成分(存在する場合)は、十分な分子量を有する直鎖脂肪族炭化水素と分岐鎖脂肪族炭化水素との混合物を含む。このような炭化水素は一般に、約60℃未満の温度にて固体物質であり、100℃にて5センチストークスより高い粘度を有する。周知のように、パラフィンワックスは炭化水素潤滑剤と呼ばれることもある。押出可能な組成物に使用するのに適したパラフィンワックスが、「Handbook of Plastic Materials and Technology,Ed.I.Rubin,Wiley-Interscience,John Wiley & Sons,Inc.New York,1990」(該文献を参照により本明細書に含める)に記載されている。
【0079】
本発明の組成物に使用するのに適したパラフィンワックスの例としては、ハネウェル社から市販のレオケム(Rheochem)(商標)シリーズの潤滑剤(たとえば、レオケムRL-145、RL-165、およびRL-185)がある。他の適切なパラフィンワックス潤滑剤は明らかであろう。
【0080】
任意のステアリン酸カルシウム成分
本発明の組成物に使用するための適切なステアリン酸カルシウム(存在する場合)は、予備形成された塩の形態であっても、あるいは潤滑組成物の調製時において、ステアリン酸を含有する組成物成分の混合物をカルシウム塩基(a calcium base)で処理することによって、その場で形成させてもよい。たとえば、遊離のステアリン酸を酸化カルシウムで中和してカルシウム塩を形成させる。
【0081】
ステアリン酸カルシウムのその場調製の第2の例は、組成物に水酸化カルシウムと脂肪酸を加えるという方法である。一般に、組成物が脂肪酸成分と水酸化カルシウム成分を含有する場合、組成物は、液体形態のワックスと脂肪酸をブレンドし、脂肪酸の少なくとも一部が中和されるような条件下(仕上げの添加組成物がブレンドされる押出可能なPVC組成物に求められる特性に関する当業界に公知の変数によって決定される)にて反応を行うことによって製造するのが好ましい。脂肪酸と水酸化カルシウムを含んだ添加組成物の成分のブレンディング時におけるミキシング条件と温度条件は、水酸化カルシウムと脂肪酸との間の中和反応が実質的に完全に進行するように調整されるのが好ましい。ステアリン酸カルシウムを得る他の方法は明らかであろう。
【0082】
本発明の組成物に使用するのに適した市販のステアリン酸カルシウムの例としては、ノラック社(Norac)からのCOAD10ステアリン酸カルシウムである。言うまでもないが、ステアリン酸カルシウム成分の純度レベルとグレードは、工業用グレードから、食品用グレード、あるいは高純度グレードまで広範囲に変わってよく、これらのグレード品も本発明の範囲内である。
【0083】
ほとんどの押出可能な組成物において使用する上で、本発明の潤滑組成物は、約50重量%〜約80重量%の、さらに好ましくは約60重量%〜約80重量%の、さらに好ましくは約50重量%〜約70重量%の、さらに好ましくは約60重量%〜約70重量%のエステルワックス;約10重量%〜約30重量%の、さらに好ましくは約10重量%〜約20重量%の酸化ポリエチレンワックス;およびある少量〜約25重量%の、さらに好ましくは約1重量%〜約25重量%の、さらに好ましくは約1重量%〜約20重量%の、そしてさらに好ましくは約1重量%〜約10重量%のステアリン酸亜鉛;を含む。1つの好ましい実施態様においては、本発明の潤滑組成物は、最大で10重量%までの少なくとも1種のパラフィンワックス、および最大で25重量%までのステアリン酸カルシウムをさらに含む。これらの範囲をはずれた量を有する組成物は、本発明の潤滑組成物が組み込まれる押出可能な組成物による要求に応じて使用することができる。
【0084】
幾つかの実施態様においては、出願者らの潤滑組成物は、(a)エステルワックス;(b)ポリエチレンワックス;(c)ステアリン酸亜鉛;(d)パラフィンワックス;および(e)ステアリン酸カルシウム;を含み、潤滑組成物の成分の相対量は、ステアリン酸亜鉛成分、エステルワックス成分、または酸化ポリエチレンワックス成分の1種以上が実質的に存在しない押出可能な組成物から製造される押出品と比較して、前記組成物から製造される押出品の引張強度の有利な増大をもたらすように選定される。
【0085】
1つの実施態様においては、出願者らの潤滑組成物は、
(a)約1重量%〜約10重量%のパラフィンワックス;
(b)約10重量%〜約60重量%のエステルワックス;
(c)約5重量%〜約30重量%の酸化ポリエチレンワックス;
(d)約5重量%〜約25重量%のステアリン酸カルシウム;および
(e)約1重量%〜約25重量%のステアリン酸亜鉛;
を含む。言うまでもないが、これらの好ましい範囲をはずれた値の成分も公知の原則にしたがって使用することができ、本発明の範囲内に含まれる。
【0086】
添加剤
前述したように、本発明の押出可能な組成物はさらに、熱安定化特性を有する添加剤、ならびに内部潤滑特性や外部潤滑特性を有する添加剤を含めて、押出可能な組成物中に一般的に組み込まれる他の添加剤(好ましくは、前述したようなPVC樹脂)を含んでよい。ここでは、潤滑化特性と熱安定化特性を有する本発明の潤滑組成物と区別するために、これらの添加剤を“補足添加剤(supplemental)”と呼ぶ。したがって、使用する潤滑組成物の量と潤滑組成物を構成する成分の量は、組成物中の補足潤滑剤や安定剤等の量に応じて、公知の原則にしたがって調整することができる。
【0087】
補足熱安定剤の例は、押出可能なPVC組成物に加えると、動的な熱安定化効果をもたらすことが知られているあらゆる補足添加剤を含む。本発明において使用するのに適した補足熱安定剤の例としては、押出可能なPVC組成物中に熱安定化用添加剤として一般的に使用されているもの〔たとえば錫を含有する化合物(たとえば錫メルカプチド)〕がある。当業界に公知の他の熱安定剤としては、たとえば「Plastics Additives and Modifiers Handbook,Ed.J.Edenbaum,Van Nostrand Reinhold,New York 1992」(該文献を参照により本明細書に含める)に一般的に記載されているもの、たとえば鉛ベースの化合物(たとえば、中性のステアリン酸鉛や二塩基性のリン酸鉛)をベースにしたものがある。さらなる例としては、“金属”石けん(たとえば、種々の脂肪酸のカルシウム塩)、および“混合金属(mixed-metal)”石けん(たとえば、ステアリン酸カルシウム/ステアリン酸亜鉛)がある。さらに、重金属塩をベースとしない熱安定剤〔たとえば、クロンプトン社(Crompton Corporation)から市販の有機ベースの安定剤(organic-based stabilizer;OBS)〕も使用することができる。
【0088】
補足潤滑剤の例としては、ポリエチレンワックスホモポリマーがある。このような物質は公知であり、ハネウェル社からAC(登録商標)シリーズの商品名のワックスホモポリマーとして市販されている。
【0089】
押出可能な組成物の製造
本発明の潤滑組成物は、固体、半固体、もしくは液体物質と、他の固体、他の半固体、もしくは他の液体物質とをブレンドするいかなる公知の方法によっても製造することができる。
【0090】
押出可能な組成物は、ある量の樹脂〔好ましくはポリ塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)〕をブレンディング装置中に入れ、次いで強化用成分、所望の補足添加剤成分(たとえば、安定剤、充填剤、加工助剤、着色剤、および顔料)、および組成物中に必要とされる他の成分を加え、そして本発明による潤滑成分の組み合わせ物をマスに加えることによって製造することができる。前述したように、本発明の組み合わせ物を構成する潤滑成分は、好ましくは前述の割合にしたがって個別にブレンドすることができ、そして上記の樹脂含有混合物に、本明細書に記載の量にて、一回の付加にて、潤滑成分のブレンド物として加えることができる。これとは別に、本発明の組み合わせ物を構成する個々の成分は、押出可能な組成物の他の成分の1種以上に、別々に加えてもよいし、同時に加えてもよいし、あるいは異なった時間にて加えてもよい。
【0091】
マニュアル・ラボラトリー・ベンチトップスケールの加工装置(たとえば、ハンドヘルドのモーター付きミキサーと容器)からモーター作動式の工業スケールの加工装置までのスケールにわたる、いかなるタイプのミキシングもしくはブレンディング装置も使用することができる。後者のタイプの装置の例としては、ヘンシェルミキサー(Henschel mixer)、リボンブレンダー、および温度制御式の攪拌ブレンドタンクがある。
【0092】
言うまでもないが、成分をミキシングする順序は重要なことではない。たとえば、本発明の潤滑剤組み合わせ物を構成するいずれか2種以上の潤滑成分(潤滑成分の全てを含めて)を、上記タイプの押出可能な組成物中に加える混合物として調製することもできるし、あるいはそれぞれの成分を、上記タイプの押出可能な組成物の他の成分の1種以上に、同時または逐次に加えることもできる。これとは別に、押出可能な組成物の樹脂と種々の成分は、本発明の潤滑剤組み合わせ物の潤滑成分の1種以上(全てを含めて)に加えることもできる。したがって、本発明の押出可能な組成物の成分を一緒にするこのような方法は全て、ここでは“加える(adding to)”という用語で考えることとする。
【0093】
一般には、本発明の組み合わせ物の潤滑成分は、潤滑成分の量が、前述の比較条件下にて、(a)より低い平衡トルク;および(b)より低い平衡温度;という押出適性特性の1つ以上を示すような押出可能な組成物をもたらすのに十分であるように、および/または(a)表面粗さの減少(より平滑な表面);(b)水の浸入の減少;(c)表面光沢の増大;および(d)寸法安定性の向上;という外観特性の1つ以上が改良された押出品が得られるように、そして同時に、実質的に同等の潤滑剤組み込み量を有する、前述の比較上の押出可能な組成物から製造される押出品と比較して、本発明の押出可能な組成物から製造される押出品に、(a)引張強度;(b)曲げ強度;(c)破壊係数;および(d)見かけの弾性係数;という機械的特性の1つ以上に増大が得られるように、凝集体の状態で押出可能な組成物中に存在する。潤滑剤組み合わせ物は押出可能な組成物中に、平衡トルクおよび/または平衡温度(トルクレオメーターによって測定)という押出適性特性を減少させると同時に、押出可能な組成物から製造される押出品の機械的特性〔引張強度、曲げ強度、破壊係数、および見かけの弾性係数(ASTM D6109-03またはASTM D4761-02aにしたがって測定)を含めて〕の1つ以上を増大させるような量にて使用するのが好ましい。押出適性特性の少なくとも一方を少なくとも約3%だけ減少させ、機械的特性の1つ以上を少なくとも約10%だけ増大させるような量の潤滑剤組み合わせ物を使用するのが好ましい。
【0094】
この量はいろいろ変わるけれども、一般には、改良された組成物が、押出可能な組成物中の押出可能な樹脂(好ましくはPVC樹脂)100重量部に対して、約0.1重量部(PHR)〜約0.5重量部(PHR)の酸化ポリエチレン、約0.5重量部(PHR)〜約4.0重量部(PHR)のエステルワックス、および約0.1重量部(PHR)〜約2.0重量部(PHR)のステアリン酸亜鉛を含有するのが好ましい。
【0095】
一般には、潤滑組成物における所望量の種々の成分は、押出可能な組成物中の樹脂100
重量部当たり約0.5重量部(PHR)〜約6重量部(PHR)の上記潤滑組成物を加えることによって押出可能な組成物に供給され、約1PHR〜約5.5PHRの潤滑組成物を押出可能な組成物に加えるのが好ましく、約2.0PHR〜約5.0PHRの潤滑組成物を押出可能な組成物に加えるのが最も好ましい。公知の原則にしたがって、また押出可能な組成物の所望の特性、および押出可能な組成物中に存在してよい補足添加剤を考慮して、より多くの量またはより少ない量も使用することができる。たとえば、本発明の潤滑組成物が加えられる押出可能な組成物は、他の内部潤滑剤や外部潤滑剤をさらに含んでよい。したがって、潤滑組成物の使用量は、他の潤滑成分の組み込みまたは除外に応じて、より多い量またはより少ない量に調整される。
【0096】
1つの実施態様においては、本発明の押出可能な組成物は、可塑性組成物と強化材とのブレンド物を含むのが好ましく、前記可塑性組成物は、
(a) 100重量%の1種以上の押出可能な樹脂、PVC樹脂を含むのが好ましく、実質的にPVC樹脂からなるのがさらに好ましい;
(b) 約0.1PHR〜約5.0PHRの、さらに好ましくは約0.1PHR〜約3.5PHRの、そしてさらに好ましくは約0.1PHR〜約2.0PHRのエステルワックス;
(c) 約0.05PHR〜約1.4PHRの、さらに好ましくは約0.05PHR〜約1.4PHRの、そしてさらに好ましくは約0.05PHR〜約0.6PHRの酸化ポリエチレンワックス;
(d) 約0.1PHR〜約0.6PHRの、さらに好ましくは約0.1PHR〜約0.5PHRの、そしてさらに好ましくは約0.1PHR〜約0.4PHRのステアリン酸亜鉛;
(e) 必要に応じて約0.4PHR〜約2PHRの、そしてさらに好ましくは約0.6PHR〜約1.0PHRのパラフィンワックス;
(f) 必要に応じて約0.3PHR〜約2.0PHRの、好ましくは約0.4PHR〜約1.5PHRの、そしてさらに好ましくは約0.5PHR〜約1.0PHRのステアリン酸カルシウム;
(g) 必要に応じて約0.4PHR〜約1.6PHRの、好ましくは約0.5PHR〜約1.5PHRの、そしてさらに好ましくは約0.6PHR〜約1.4PHRの1種以上の錫安定剤;
(h) 必要に応じて最大約10PHRまでの、好ましくは約0.5PHR〜約7.0PHRの、そしてさらに好ましくは約0.5PHR〜約5.0PHRの1種以上の加工助剤;
(i) 必要に応じて最大約15PHRまでの、好ましくは最大約10PHRまでの、そしてさらに好ましくは最大約7PHRまでの1種以上の改質剤;
(j) 必要に応じて最大約15PHRまでの、好ましくは約1PHR〜約10PHRの、そしてさらに好ましくは約2PHR〜約7PHRの炭酸カルシウム;および
(k) 必要に応じて最大約1PHRまでの、好ましくは最大約0.5PHRまでの、そしてさらに好ましくは最大約0.1PHRまでの1種以上のポリエチレンワックスホモポリマー;
を含み、このとき強化材が、組成物の約20重量%〜約70重量%を構成し、好ましくは組成物の約30重量%〜約60重量%を構成し、さらに好ましくは組成物の約30重量%〜約50重量%を構成し、そしてさらに好ましくは組成物の約40重量%〜約50重量%を構成し、強化材が、セルロース強化材を含むのが好ましく、実質的にセルロース強化材からなるのがさらに好ましく、狭い範囲のメッシュサイズから選択される木粉であるのがさらに好ましい。
【0097】
特定の好ましい実施態様においては、本発明の押出可能な組成物は、可塑性組成物と強化材とのブレンド物を含むのが好ましく、このとき前記可塑性組成物は、
(a) 100重量部の1種以上のPVC樹脂成分;
(b) (i) 約50重量%〜約80重量%のエステルワックス;
(ii) 約5重量%〜約50重量%の酸化ポリエチレンワックス;
(iii) 約1重量%〜約20重量%のステアリン酸亜鉛;
(iv) 必要に応じて約10重量%〜約20重量%のステアリン酸カルシウム;および
(v) 必要に応じて約3重量%〜約7重量%のパラフィンワックス;
を含んだ約0.5PHR〜約6.0PHRの、さらに好ましくは約1.0PHR〜約5.5PHRの、さらに好ましくは約2.0PHR〜約5.0PHRの潤滑組成物;
(c) 最大約15PHRまでの、好ましくは約1PHR〜約10PHRの、そしてさらに好ましくは約2PHR〜約7PHRの炭酸カルシウム;
(d) 約0.4PHR〜約1.6PHRの、好ましくは約0.5PHR〜約1.5PHRの、そしてさらに好ましくは約0.6PHR〜約1.4PHRの1種以上の錫安定剤;
(e) 最大約10PHRまでの、好ましくは約0.5PHR〜約7.0PHRの、そしてさらに好ましくは約0.5PHR〜約5.0PHRの1種以上の加工助剤;
(f) 最大約15PHRまでの、好ましくは最大約10PHRまでの、そしてさらに好ましくは最大約7PHRまでの1種以上の改質剤;
(g) 約0.3PHR〜約2.0PHRの、好ましくは約0.4PHR〜約1.5PHRの、そしてさらに好ましくは約0.5PHR〜約1.0PHRのステアリン酸カルシウム;および
(h) 最大約1PHRまでの、好ましくは最大約0.5PHRまでの、そしてさらに好ましくは最大約0.1PHRまでの1種以上のポリエチレンワックスホモポリマー成分;
を含み、このとき強化材が、組成物の約20重量%〜約70重量%を構成し、好ましくは組成物の約30重量%〜約60重量%を構成し、さらに好ましくは組成物の約30重量%〜約50重量%を構成し、そしてさらに好ましくは組成物の約40重量%〜約50重量%を構成し、強化材が、セルロース強化材を含むのが好ましく、実質的にセルロース強化材からなるのがさらに好ましく、狭い範囲のメッシュサイズから選択される木粉であるのがさらに好ましい。
【0098】
添加組成物
本発明の潤滑組成物に種々の補足成分、強化用成分、および樹脂成分を加えて、押出可能な樹脂組成物を得ることができる。これらの潤滑組成物は、現行の押出可能な樹脂組成物(たとえばPVC組成物)と組み合わせて、組成物から製造される押出品に改良された押出適性特性と改良された物理的・機械的特性をもたらすことができる潤滑添加剤として使用することができる。本発明の潤滑組成物を加えて本発明の押出可能な組成物を得ることができる、PVCを含有するセルロース強化の押出可能な組成物の例が、Zehnerによる米国特許第6,248,813号と第6,103,791号(これらの特許を参照により本明細書に含める)に記載されている。
【0099】
上記の潤滑組成物は、潤滑剤成分のほかに、1種以上の補足添加剤(たとえば、補足の内部潤滑剤と外部潤滑剤、熱安定剤、および押出可能なPVC組成物の他の成分)を含有する添加組成物のベースを形成することができる。押出可能なPVC組成物に使用されるこれら補足添加剤の選定と量を規定する変数が、「Plastic Additives and Modifiers Handbook,Ed.J.Edenbaum,Van Nostrand Reinhold,New York 1992」(該文献を参照により本明細書に含める)に一般的に記載されている。好ましい添加組成物は、本発明の上記潤滑組成物、および相溶性の補足潤滑剤と相溶性の補足熱安定剤からなる群の少なくとも1種の物質を含む。
【0100】
たとえば、1つの実施態様においては、本発明の添加組成物は、押出可能な樹脂以外の、押出可能な組成物の成分の実質的に全てを含むように配合することができる。このタイプの添加組成物は、押出可能な樹脂(たとえば、押出可能なPVC樹脂)のみと混ぜ合わせるように、そしてこれにより押出可能なPVC組成物が得られるように配合処理するのが好ましい。別の実施態様においては、添加組成物は、押出可能な組成物を製造するのに使用される多くの添加成分のうちの1つとして、押出可能なPVC組成物に加えるように配合処理することもできる。このような実施態様においては、本発明の添加組成物が、押出可能なPVC組成物の最も一般的な成分の少なくとも幾らかをさらに含むのが好ましく、これによって、押出可能なPVC組成物を製造するのに必要な追加プロセスの数を減らしつつ、多くの異なった押出可能なPVC組成物に使用することができる単一の添加組成物が得られる。
【0101】
本明細書に記載の開示内容を考慮して、さまざまな成分が、広範囲の相対割合にわたって本発明に使用可能であると考えられる。
押出可能な組成物に関して前述したように、本発明の添加組成物は、固体、半固体、または液体物質と、他の固体、半固体、または液体物質とを混合するためのいかなる公知の方法によっても製造することができる。こうした方法としては、混和性物質の混合物(たとえば、単一の相を形成する2種以上の成分の混合物)に対して使用される方法があるが、これに限定されない。さらに、2種以上の不混和性もしくはある程度不混和性のドメイン分離領域(domain-separated regions)を有する密な相互貫入構造物を形成するよう、相分離した物質をブレンドするのに使用される方法もある。さらに、周知のように、2成分間の反応が、組成物の成分をその場で生成させるように行われる実施態様(たとえば、金属石けん潤滑剤の供給)を除いて、添加組成物の種々の成分は、いかなる順序でもブレンドすることができ、こうしたことも本発明の範囲内に含まれる。
【0102】
言うまでもないが、本発明の潤滑組成物を加えることによって改良することができる押出可能なセルロース強化PVC組成物は、種々の量にて存在する広範囲の成分を公知の原則にしたがって含んでよい。これらの組成物の処理特性は、本発明の潤滑組成物のアリコートを加えることで種々の程度にて改良される。さらに、これらの組成物から形成される物品の物理的特性は、押出可能な組成物を物品に成形する前に、押出可能な組成物に本発明の潤滑組成物を加えることで改良される。
【0103】
組成物からのアミドワックスの除外
本発明の潤滑組成物を含んだ押出可能な組成物から製造される押出品に付与される機械的特性の向上が、本発明の潤滑剤が存在している押出可能な組成物中にアミドワックスが含まれている場合は、少なくともある程度は打ち消されることがある、ということを本発明者らは驚くべきことに見出した。
【0104】
ここで使用している“アミドワックス”とは、1つ以上のアミド官能基を有する潤滑剤を表わしている。アミドワックスとしては、1種以上のアミン化学種と1種以上の脂肪酸化学種との縮合によって得られるものがある。言うまでもないが、ビスアミドワックス、および特にエチレンビス-ステアルアミドワックス(EBSワックス)もこのカテゴリーに含まれる。
【0105】
したがって、幾つかの好ましい実施態様においては、組成物から製造される押出品の機械的特性に及ぼす有用な効果を保持させるために、本発明の潤滑組成物と押出可能な組成物を製造する際にアミドワックス成分の使用は避ける。他の好ましい実施態様においては、アミドワックス成分は組成物から実質的に完全に除外される。
【0106】
幾つかの好ましい実施態様においては、出願者らの発明は、アミドワックスを実質的にまたは完全に含有しない押出可能な組成物を含む。他の好ましい実施態様においては、出願者らの発明は、(a)実質的な量のアミドワックスを含有しないこと、またはアミドワックスを完全に含有しないことをさらに特徴とする、本発明にしたがって製造される押出可能な組成物を得ること;および(b)前記押出可能な組成物を押出すこと;を含んだ押出法を含む。他の好ましい実施態様においては、出願者らの発明は、アミドワックス成分が実質的に存在しないか又は完全に存在しない、本発明の押出可能な組成物を押出すことによって製造される押出品を含む。他の実施態様においては、出願者らの発明は、実質的な量のアミドワックス成分を含有しないか又はアミドワックス成分を全く含有しない本発明の添加潤滑組成物(an additive lubricant composition)を含む。
【実施例】
【0107】
下記の実施例は、押出可能な組成物(実施例1)と潤滑組成物(実施例3)を説明しており、それぞれ出願者らの発明にしたがって製造される。実施例2はさらに、出願者らの組成物から出願者らの方法によって押出品を作製することによって得られる改良された機械的特性について説明している。下記の実施例は、上記の説明を実証するためのものであり、これらの実施例によって本発明の特許請求の範囲が限定されることはない。
【0108】
実施例1-押出可能な組成物
下記の表1に示す成分を、樹脂100重量部当たりの重量部(PHR)にて含有する、セルロース強化したPVC樹脂を含有する押出可能な組成物を製造した。表1には、比較例A(PVC樹脂の潤滑用に市販されている特許潤滑組成物を含有する押出可能な組成物)と比較例B(ビスアミドワックス成分を含有し、ステアリン酸亜鉛を実質的に含有しない押出可能な組成物)が記載されている。表1にはさらに、本発明の潤滑組成物を含有する押出可能な組成物(実施例1)も記載されている。
【0109】
実施例と比較例の組成物を製造するのに使用した物質は以下のとおりであった。PVC樹脂含有強化材は、下記の物質を使用して製造した:シンテック社(Shintech)から市販のSE650(登録商標)ポリ塩化ビニル樹脂(K=57);シンテック社(Shintech)から市販のSE950(登録商標)ポリ塩化ビニル樹脂(K=65);クロンプトン社(Crompton)から市販のマーク1993(Mark1993)(登録商標)錫ベース熱安定剤;イメリス社(Imerys)から市販のキャメルCal-ST(Camel Cal-ST)(登録商標)炭酸カルシウム;ローム&ハース社から市販のアクリロイドKM334(登録商標)アクリル耐衝撃性改良剤;アルケマ社(Arkema)から市販のデュラストレンクスD-510(Durastrength D-510)(登録商標);ハネウェル社から市販のレオラブ(Rheolub)(登録商標)RL1800ワックス(パラフィンワックス20重量%/エステルワックス20重量%/ステアリン酸カルシウム60重量%のブレンド物)、ノラック社(Norac)から市販のCOAD21(登録商標)ステアリン酸亜鉛(亜鉛潤滑剤);ハネウェル社から市販の酸化ポリエチレンワックス(OPE)AC(登録商標)316A;ローム&ハース社から市販のエチレンビス-ステアルアミド(ビスアミドワックス)アドバワックス(Advawax)280;セルロース強化成分としての40メッシュの木粉(商品);およびアクメ-ハーデストリー社(Acme-Hardestry Co.)から市販のジェンキノール(Jenkinol)L-260(ジステアリルフタレート);いずれも受け入れたままの状態で使用される。
【0110】
PVC組成物の構成成分を、スチームジャケット加熱システムを備えたパペンマイヤー・ミキサー(Papenmeier Mixer)(強力ミキサー)中に仕込み、ミキシングブレードを作動させながら、110℃超える温度に過熱することによって組成物を作製した。成分を実質的に均一にブレンドした後、PVC組成物を取り出し、周囲温度に冷却し、そして24時間放置した(エージング時間)。
【0111】
エージング時間の終了後、PVC組成物の一部を所定の割合の乾燥木粉(表1を参照)とブレンドしてセルロース繊維強化された押出可能な組成物を形成させ、押出用に保存した。実施例1の押出可能な組成物の押出適性特性は、比較例の組成物と実質的に同等であることが観察された。すなわち、実施例1と比較例の押出可能な組成物を押出すのに必要とされる押出機の設定は、実質的に同じであることが見出された。2種の組成物から製造された押出品の試験から、実施例1の組成物から製造した物品は、物品の断面が比較例の組成物から製造される物品の断面と同等であるときは木粉のより均一な分散を示す、ということがわかった。
【0112】
【表1】

【0113】
実施例2-押出品の製造
上記にて製造したそれぞれの押出可能な組成物(実施例1および比較例AとBの組成物)のアリコートから押出品を製造した。それぞれの押出可能な組成物に対し、組成物のアリコートを、0.3インチ×1.3インチの公称寸法を有する長方形プロフィールのダイを取り付けた28mmのパラレル二軸スクリューラボ押出機中に入れた。押出機を一定の条件下で操作し、それぞれの押出可能な組成物から長方形プロフィールの押出品を形成させた。押出品を水のスプレーによって冷却し、3フィートの長さに切断して機械的試験に供した。
【0114】
それぞれの押出可能な組成物からの押出形状物を特定の長さに切断して、ASTM基準にしたがった試験片を作製した。次いでこれらの試験片を、ASTM D6109-97にしたがって、曲げ特性、見かけの弾性係数、および破壊係数の試験に付した。さらに、これらの試験片を、表面粗さと外観に関して目視にて評価し、ASTM D638にしたがって光沢に関して試験した。
【0115】
試験片の寸法、破壊係数、および見かけの弾性係数の試験結果を表2に示す。これらのデータから、実施例1の押出可能な組成物から作製された押出品は、破壊係数と見かけの弾性係数の両方が増大した(すなわち、一般には曲げ強度も増大)ことがわかる。前述のデータと合わせて考察すると、これらのデータは、本発明の潤滑組成物が押出可能な組成物に潤滑特性の向上をもたらすこと(組成物の押出適性の向上によって示される)、および組成物中における強化材とPVC樹脂との間の相互作用を高める(曲げ特性の向上によって示される)、ということを示している。本発明の組成物から製造された押出品は、受け入れ可能の平滑な表面外観を有した。
【0116】
【表2】

【0117】
実施例3-添加組成物の製造
本発明の添加潤滑組成物は、表3に示す量の成分を、それほど強力ではないミキシングブレードとスチーム加熱ジャケットを装備した容器中に入れ、ミキサーのミキシングブレードを作動させながら、成分を110℃より高い温度に加熱することによって製造される。これらの添加潤滑組成物を、PVC樹脂と木材強化材とを含んだ押出可能な組成物に、許容されうる押出適性特性をもたらすような量にて加えると、こうした組成物から製造される押出品は改良された機械的特性を有する、ということが見出されるであろう。
【0118】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 熱可塑性樹脂;
(b) 強化材;および
(c) エステルワックス;
を含む成形可能な組成物であって、エステルワックスが、前記樹脂100重量部当たり少なくとも約0.1重量部(PHR)の量で組成物中に存在する前記組成物。
【請求項2】
エステルワックスが約0.1PHR〜約5.0PHRの量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
酸化ポリエチレンワックスとステアリン酸亜鉛をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
(a) 熱可塑性樹脂;
(b) 強化材;
(c) エステルワックス;
(d) 酸化ポリエチレン;
(e) ステアリン酸亜鉛;
(f) 必要に応じてパラフィンワックス;および
(g) 必要に応じてステアリン酸カルシウム;
を含む押出可能な組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂がポリ塩化ビニル樹脂(PVC)を含み、前記強化材がセルロース強化材である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記(c)成分、(d)成分、および(e)成分の相対量が、前記(c)成分、(d)成分、および(e)成分の1種以上が実質的に存在しない押出可能な組成物から製造される押出品と比較して、前記組成物から製造される押出品において、破壊係数、見かけの弾性係数、引張強度、および曲げ強度からなる群から選択される、ASTM D6109-97e1またはASTM D4761-02aにしたがって測定される機械的特性の1つ以上に有利な増大が得られるように選定される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記(c)成分、(d)成分、および(e)成分が、(c)成分、(d)成分、および(e)成分の前記組み合わせ物が存在しないこと以外は同じ組成物と比較して、組成物の1つ以上の成形適性特性を改善するのに有効な量にて一緒に存在し、前記1つ以上の改善される成形適性特性が、
i. 所定の成形条件に対する成形圧力の減少;
ii. 平衡温度の低下;および
iii. 溶融トルクの減少;
からなる群から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
組成物が押出可能な組成物であり、前記(c)成分、(d)成分、および(e)成分が、(c)成分、(d)成分、および(e)成分の前記組み合わせ物が存在しないこと以外は同じ組成物と比較して、組成物の1つ以上の押出適性特性を改善するのに有効な量にて一緒に存在し、前記1つ以上の改善される押出適性特性が、
i. 所定のダイ速度と押出速度に対する押出圧力の減少;
ii. 所定のダイ速度と押出速度に対する押出機ヘッド圧力の減少;
iii. 所定のダイ速度と押出速度に対する押出トルクの減少;
iv. 平衡温度の低下;および
v. 溶融トルクの減少;
からなる群から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
(c)成分、(d)成分、および(e)成分の前記組み合わせ物が、(c)成分、(d)成分、および(e)成分の前記組み合わせ物が存在しないこと以外は同じ組成物と比較して、前記押出可能な組成物から製造される押出品の1つ以上の見かけの特性を改善するのに有効な量にて一緒に存在し、前記1つ以上の改善される特性が、
a) 水の浸入の減少;
b) 表面粗さの減少;
c) 表面光沢の増大;および
d) 寸法安定性の向上;
からなる群から選択される、請求項8に記載の押出可能な組成物。
【請求項10】
(c)成分、(d)成分、および(e)成分の種類と量が、破壊係数と見かけの弾性係数の両方の増大をもたらすように選定される、請求項8に記載の押出可能な組成物。
【請求項11】
前記改善される押出適性特性の少なくとも1つが少なくとも約5%だけ改善される、請求項8に記載の押出可能な組成物。
【請求項12】
前記強化材が組成物の約30重量%〜約60重量%の量にて存在し、残部が、
(a) 100重量部のPVC樹脂;
(b) 樹脂100重量部当たり約0.1重量部〜約5.0重量部(PHR)のエステルワックス;
(c) 約0.05PHR〜約1.4PHRの酸化ポリエチレン;および
(d) 約0.1PHR〜約0.6PHRのステアリン酸亜鉛;
を含んだ可塑性組成物である、請求項5に記載の組成物。
【請求項13】
約0.5PHR〜約1.5PHRのパラフィンワックスと約0.3PHR〜約2.0PHRのステアリン酸カルシウムをさらに含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
実質的な量のアミドワックスを含まないことをさらに特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が押出可能な組成物であり、(c)成分、(d)成分、および(e)成分の組み合わせ物が、(c)成分、(d)成分、および(e)成分の前記組み合わせ物が実質的に存在しないこと以外は同じ組成物と比較して、前記押出可能な組成物の見かけ粘度を低下させるのに有効な量にて存在する、請求項6に記載の組成物。
【請求項16】
約0.1PHR〜約3.5PHRのエステルワックス、約0.05PHR〜約1.4PHRの酸化ポリエチレンワックスホモポリマー、および約0.1PHR〜約0.5PHRのステアリン酸亜鉛を含む、請求項15に記載の押出可能な組成物。
【請求項17】
前記酸化ポリエチレンが、約7mgKOH/g〜約20mgKOH/gの酸価と150℃にて約8,500cP〜約85,000cPの粘度を有する酸化ポリエチレンを過半量にて含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項18】
酸化ポリエチレン成分が、約10mgKOH/g〜約20mgKOH/gの酸価と140℃にて約200cps〜約1,000cpsの粘度を有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項19】
エステルワックスが、約10mgKOH/g〜約14mgKOH/gの酸価と240°Fにて50cStの粘度を有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項20】
(c)成分、(d)成分、および(e)成分の前記組み合わせ物が、合わせて約0.25PHR〜約7.0PHRを構成する、請求項5に記載の組成物。
【請求項21】
請求項6に記載の組成物を得ること、および前記組成物を押出すことを含む、押出品の製造法。
【請求項22】
a. (a)塑性流動を受けることを特徴とする少なくとも1種の樹脂;(b)少なくとも1種の強化材;(c)エステルワックス;(d)酸化ポリエチレンワックス;(e)ステアリン酸亜鉛;(f)必要に応じたパラフィンワックス;および(g)必要に応じたステアリン酸カルシウム;を含む成形可能な組成物を得ること;ならびに
b. 前記成形可能な組成物を成形すること;
を含む、成形可能な物品の製造法。
【請求項23】
前記成形可能な組成物が、実質的な量のアミドワックスを含有しないことをさらに特徴とする、請求項22に記載の製造法。
【請求項24】
前記強化材がセルロース強化材を含み、前記樹脂がPVC樹脂を含む、請求項22に記載の製造法。
【請求項25】
前記(c)成分、(d)成分、および(e)成分の1つ以上が実質的に存在しないこと以外は同じ組成物から製造される物品と比較して、増大した破壊係数および/または見かけの弾性係数を有する、請求項4に記載の組成物から製造される物品。
【請求項26】
実質的な量のアミドワックスを含まないことをさらに特徴とする、請求項25に記載の物品。
【請求項27】
請求項6に記載の成形可能な組成物から製造される押出品。
【請求項28】
機械的特性の前記増大が少なくとも約10%の増大である、請求項27に記載の押出品。
【請求項29】
a. 約50重量%〜約80重量%のエステルワックス;
b. 約10重量%〜約30重量%の酸化ポリエチレンワックス;および
c. 約1重量%〜約25重量%のステアリン酸亜鉛;
を含む、添加用潤滑組成物。
【請求項30】
実質的な量のアミドワックスを含まず、(i)約1重量%〜約10重量%のパラフィンワックス;および(ii)約5重量%〜約25重量%のステアリン酸カルシウム;を追加的に含むことをさらに特徴とする、請求項29に記載の潤滑組成物。
【請求項31】
前記酸化ポリエチレンが、140℃にて少なくとも約6000cpsのブルックフィールド粘度を有する酸化ポリエチレンを少なくとも過半量にて含む、請求項29に記載の潤滑組成物。
【請求項32】
酸化ポリエチレンワックスが、約7mgKOH/g〜約20mgKOH/gの酸価と150℃にて約8,500cps〜約85,000cpsの粘度を有する、請求項31に記載の潤滑組成物。
【請求項33】
エステルワックスが、ジステアリルフタレート、ペンタエリスリトール-アジペート-ステアレート、ペンタエリスリトール-アジペート-オレエート、ペンタエリスリトール-テトラステアレート、ペンタエリスリトール-モノステアレート、ペンタエリスリトール-ジステアレート、およびこれらのいずれか2種以上の混合物からなる群から選択される、請求項31に記載の潤滑組成物。
【請求項34】
PVC樹脂、強化材、および請求項31に記載の潤滑組成物を含んだ成形可能な組成物であって、前記潤滑組成物が、成形可能な組成物中に、前記のエステルワックス成分、酸化ポリエチレンワックス成分、およびステアリン酸亜鉛成分の1種以上が実質的に存在しない成形可能な組成物から製造される成形品と比較して、前記組成物から製造される成形品において、破壊係数、見かけの弾性係数、引張強度、および曲げ強度からなる群から選択される、ASTM D6109-97e1またはASTM D4761-02aにしたがって測定される機械的特性の1つ以上に有利な増大がもたらされるに足る量にて存在する、前記成形可能な組成物。
【請求項35】
前記潤滑組成物が、組成物から製造される成形品の平滑な外観についての測定にて、強化材の湿潤を促進するに足る量にて存在する、請求項34に記載の成形可能な組成物。
【請求項36】
組成物が押出可能な組成物であって、前記潤滑組成物が、前記(c)成分、(d)成分、および(e)成分の1種以上が実質的に存在しない押出可能な組成物から製造される押出品と比較して、前記組成物から製造される押出品において、破壊係数、見かけの弾性係数、引張強度、および曲げ強度からなる群から選択される、ASTM D6109-97e1またはASTM D4761-02aにしたがって測定される1種以上の機械的特性の増大による測定にて、強化材の湿潤を促進するに足る量にて存在する、請求項45に記載の成形可能な組成物。
【請求項37】
木粉を含んだ強化材と、
(a) 100重量部のPVC樹脂;
(b) 約1.0PHR〜約5.5PHRの、請求項37に記載の潤滑組成物;
(c) 約1PHR〜約10PHRの炭酸カルシウム;
(d) 約0.5PHR〜約1.5PHRのスズ安定剤;
(e) 約0.5PHR〜約5.0PHRの、少なくとも1種の加工助剤;および
(f) 必要に応じた、最大で約10PHRまでの耐衝撃性改良剤;
を含んだ可塑性組成物とのブレンド物を含み、強化材が組成物中に、組成物の約20重量%〜約60重量%の量にて存在する、押出可能な組成物。
【請求項38】
(a) 熱可塑性樹脂;
(b) 強化材;および
(c) エステルワックス;
を含み、ASTM D6109-03による測定にて、少なくとも約780,000psiの見かけの弾性係数を有することをさらに特徴とする物品。
【請求項39】
押出によって製造される請求項38に記載の物品。
【請求項40】
ASTM D6109-03による測定にて少なくとも約7,000psiの破壊係数を有することをさらに特徴とする、請求項38に記載の物品。
【請求項41】
酸化ポリエチレンワックスとステアリン酸亜鉛をさらに含む、請求項40に記載の物品。
【請求項42】
ASTM D570-98による測定にて、水の浸入の可能性が低いことをさらに特徴とする、請求項41に記載の物品。

【公開番号】特開2011−12276(P2011−12276A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−210430(P2010−210430)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【分割の表示】特願2007−504016(P2007−504016)の分割
【原出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】