説明

セルロース繊維を含む不織布及びその製造方法並びにセパレータ

【課題】薄肉であっても、透気性と機械的強度とを両立できる不織布を提供する。
【解決手段】平均繊維径0.1〜50μmのセルロース繊維と平均繊維径1.5μm以下のポリオレフィン繊維とを含み、かつ厚み20μm以下の不織布を調製する。前記ポリオレフィン繊維は、平均繊維径10〜1000nm、平均繊維長1〜1000μmのポリエチレン繊維であってもよい。セルロース繊維とポリオレフィン繊維との割合(重量比)は、前者/後者=99.9/0.1〜10/90(特に70/30〜20/80)であってもよい。本発明の不織布は、蓄電素子用セパレータであってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース繊維及びポリオレフィン繊維で構成された不織布及びその製造方法並びにこの不織布で形成されたセパレータ(蓄電素子用セパレータなど)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、セルロース繊維で構成された不織布は、サイズ剤や紙力増強剤などを添加し、紙として印刷用紙や書籍などに利用されてきたが、気体や液体などに対する透過性を利用して、フィルターや蓄電素子のセパレータなどにも利用されている。特に、セルロース繊維が耐熱性に優れ、電気化学的に安定であるため、電池、コンデンサ、キャパシタなどの蓄電素子のセパレータとしての利用も活発化している。さらに、近年では、電気・電子機器の小型化や長寿命化などにより、電池やキャパシタのセパレータにも高度な性能が要求されており、薄肉化しても内部抵抗を小さくしても強度を保持できるセパレータが必要とされている。さらに、電池セパレータのうち、例えば、リチウム二次電池のセパレータには、電解液(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチロラクトン、ジメチルカーボネートなど)を保持し、電極間を絶縁するとともに、高温で融解して微細孔を閉塞し、イオン導電性を遮断する機能(シャットダウン)なども要求される。
【0003】
例えば、特開2006−49797号公報(特許文献1)には、最大繊維太さが1000nm以下であるセルロース繊維からなり、通気度が5〜700秒/100mlであるセパレータであって、このセパレータに0.8モル/リットルのテトラエチルアンモニウム・BF塩/プロピレンカーボネート溶液を含浸させた状態での膜の交流2端子法によって算出される20℃における電気抵抗値が1.0Ωcm以下である蓄電デバイス用セパレータが開示されている。この文献には、セパレータの厚みは5〜50μm、好ましくは10〜30μmと記載されている。
【0004】
しかし、このセパレータは、セルロース繊維単独で構成されているため、強度が低く、シャットダウン機能も有していない。
【0005】
また、特開平8−171893号公報(特許文献2)には、正極と、リチウム又はリチウム合金からなる負極と、セパレータと、電解液とで構成されたリチウム電池において、前記セパレータが天然パルプ20〜70重量%と微細合成繊維80〜30重量%の配合割合で混合抄紙したシートであり、かつ前記微細合成繊維の繊維径が5μm以下であるリチウム電池用セパレータが開示されている。この文献では、微細合成繊維としてはポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド繊維が例示されており、繊維径は2μm以下が好ましいと記載され、実施例では平均繊維径2μmのポリエチレン微細繊維が使用されている。また、セパレータは、坪量15〜30g/mの範囲に抄紙することが記載され、実施例では坪量約30g/mのセパレータが製造されている。さらに、バインダー繊維として、ビニロン繊維を20%程度配合してもよいことが記載されている。実施例では、天然パルプ及び微細合成繊維に加えて、熱溶融温度70℃のビニロン繊維を10%配合して80℃で処理することにより、厚み50μm程度のセパレータを製造している。
【0006】
しかし、このセパレータは、天然パルプのミクロフィブリル化が小さく、合成繊維の繊維径も大きく、肉厚であるため、内部抵抗が大きい。さらに、融点が低い親水性バインダー繊維を含むため、耐熱性が低く、電気化学的に不安定である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−49797号公報(特許請求の範囲、段落[0042]、実施例)
【特許文献2】特開平8−171893号公報(請求項1、段落[0007][0009][0010]、実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、薄肉であっても、透気性と機械的強度とを両立できる不織布及びその製造方法並びに前記不織布で形成された蓄電素子用セパレータを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、内部抵抗が小さく、かつ電気化学的に安定な不織布及びその製造方法並びに前記不織布で形成された蓄電素子用セパレータを提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、耐熱性が高く、かつシャットダウン機能も有している不織布及びその製造方法並びに前記不織布で形成された蓄電素子用セパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、平均繊維径0.1〜50μmのセルロース繊維と平均繊維径1.5μm以下のポリオレフィン繊維とを組み合わせることにより、厚み20μm以下の不織布であっても、透気性と機械的強度とを両立できることを見いだし、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明の不織布は、平均繊維径0.1〜50μmのセルロース繊維と平均繊維径1.5μm以下のポリオレフィン繊維とを含み、かつ厚みが20μm以下であってもよい。前記ポリオレフィン繊維の平均繊維径は10〜1000nmであってもよい。前記ポリオレフィン繊維の平均繊維長は1〜1000μmであってもよい。前記ポリオレフィン繊維はポリエチレン繊維であってもよい。前記ポリオレフィン繊維は、原料ポリオレフィン繊維を溶媒に分散させて分散液を調製する分散液調製工程、破砕型ホモバルブシートを備えたホモジナイザーで前記分散液をホモジナイズ処理するホモジナイズ工程を含む製造方法で得られる繊維であってもよい。前記セルロース繊維の平均繊維径は0.2〜1μmであってもよい。前記セルロース繊維とポリオレフィン繊維との割合(重量比)は、前者/後者=99.9/0.1〜10/90程度である。本発明の不織布は、親水性バインダー繊維を実質的に含まないのが好ましい。また、本発明の不織布は、融点100℃未満の合成樹脂を実質的に含まないのが好ましい。本発明の不織布は、強度と透気性とを両立でき、坪量10g/mにおける引張強度が12N/15mm以上であり、坪量10g/mにおける透気度が10秒/100ml以上である。本発明の不織布は、厚みが10〜18μmであってもよい。
【0013】
本発明には、前記不織布で構成された蓄電素子用セパレータも含まれる。このセパレータにおいて、セルロース繊維とポリオレフィン繊維との割合(重量比)が、前者/後者=70/30〜20/80であってもよい。本発明のセパレータは、電池又はコンデンサのセパレータであってもよい。
【0014】
本発明には、セルロース繊維とポリオレフィン繊維とを抄紙する前記の不織布の製造方法も含まれる。この方法において、セルロース繊維とポリオレフィン繊維との割合(重量比)が、前者/後者=70/30〜20/80であり、かつポリオレフィン繊維の融点又は軟化点よりも低い温度で処理してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、平均繊維径0.1〜50μmのセルロース繊維と平均繊維径1.5μm以下のポリオレフィン繊維とを組み合わせることにより、厚み20μm以下の不織布であっても、透気性と機械的強度とを両立できる。また、薄肉であるため、内部抵抗が小さい上に、親水性バインダー繊維や低融点の合成樹脂を含んでいないため、電気化学的にも安定である。さらに、ポリオレフィン繊維の割合を大きくすることにより、耐熱性が高く、かつ電池セパレータにおけるシャットダウン機能も付与できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、ホモジナイザーを用いて繊維を含む分散液をホモジナイズ処理する工程を示す概略断面図である。
【図2】図2は、破砕型ホモバルブシートとホモバルブとの対向部分の拡大断面図である。
【図3】図3は、破砕型ホモバルブシートの斜視図である。
【図4】図4は、非破砕型ホモバルブシートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の不織布は、平均繊維径0.1〜50μmのセルロース繊維と平均繊維径1.5μm以下のポリオレフィン繊維とを含む。
【0018】
[セルロース繊維]
セルロース繊維としては、β−1,4−グルカン構造を有する多糖類である限り、特に制限されず、高等植物由来のセルロース繊維[例えば、木材繊維(針葉樹、広葉樹などの木材パルプなど)、竹繊維、サトウキビ繊維、種子毛繊維(コットンリンター、ボンバックス綿、カポックなど)、ジン皮繊維(例えば、麻、コウゾ、ミツマタなど)、葉繊維(例えば、マニラ麻、ニュージーランド麻など)などの天然セルロース繊維(パルプ繊維)など]、動物由来のセルロース繊維(ホヤセルロースなど)、バクテリア由来のセルロース繊維、化学的に合成されたセルロース繊維[セルロースアセテート(酢酸セルロース)、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどの有機酸エステル;硝酸セルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロースなどの無機酸エステル;硝酸酢酸セルロースなどの混酸エステル;ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロースなど);カルボキシアルキルセルロース(カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロースなど);アルキルセルロース(メチルセルロース、エチルセルロースなど);再生セルロース(レーヨン、セロファンなど)などのセルロース誘導体など]などが挙げられる。これらのセルロース繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0019】
さらに、セルロース繊維は、用途に応じて、α−セルロース含有量の高い高純度セルロース、例えば、α−セルロース含有量70〜100重量%(例えば、95〜100重量%)、好ましくは98〜100重量%程度であってもよい。さらに、本発明では、リグニンやヘミセルロース含量の少ない高純度セルロースを使用することにより、木材繊維や種子毛繊維を使用しても、均一な繊維径を有するセルロース繊維を調製できる。リグニンやヘミセルロース含量の少ないセルロースは、特に、カッパー価(κ価)が30以下(例えば、0〜30)、好ましくは0〜20、さらに好ましくは0〜10(特に0〜5)程度のセルロースであってもよい。なお、カッパー価は、JIS P8211の「パルプ−カッパー価試験方法」に準拠した方法で測定できる。
【0020】
これらのセルロース繊維のうち、ミクロフィブリル化により適度な繊維径に調整し易いため、植物由来のセルロース、例えば、木材繊維(針葉樹、広葉樹などの木材パルプなど)や種子毛繊維(コットンリンターパルプなど)などのパルプ由来のセルロースが好ましい。パルプとしては、前記セルロース繊維と同様の方法で得られたパルプを使用できるが、セルロース繊維としては、原料繊維同士の絡まりを抑制し、叩解処理やホモジナイズ処理による効率的なミクロフィブリル化を実現し、均一な繊維径を有する繊維を得る観点から、ネバードライパルプ、すなわち乾燥履歴のないパルプ(乾燥することなく、湿潤状態を保持したパルプ)が特に好ましい。
【0021】
なお、セルロース繊維として、パルプを用いる場合、パルプは、機械的方法で得られたパルプ(砕木パルプ、リファイナ・グランド・パルプ、サーモメカニカルパルプ、セミケミカルパルプ、ケミグランドパルプなど)、又は化学的方法で得られたパルプ(クラフトパルプ、亜硫酸パルプなど)などであってもよく、必要に応じて、後述するような叩解(予備叩解)処理された叩解繊維(叩解パルプなど)であってもよい。また、セルロース繊維は、慣用の精製処理、例えば、脱脂処理などが施された繊維(例えば、脱脂綿など)であってもよい。
【0022】
特に、セルロース繊維は、木材繊維及び/又は種子毛繊維で構成され、かつカッパー価が30以下(特に0〜10程度)のネバードライパルプ由来の繊維であってもよい。このようなパルプは、木材繊維及び/又は種子毛繊維を塩素で漂白処理することにより調製してもよい。
【0023】
本発明では、セルロース繊維の平均繊維径はミクロンオーダー以下である。すなわち、平均繊維径は0.1〜50μmであり、例えば、0.15〜30μm、好ましくは0.2〜10μm、さらに好ましくは0.25〜5μm(特に0.25〜1μm)程度である。本発明では、セルロース繊維がこのような繊維径を有するため、抄紙し易く生産性に優れるとともに、電池やコンデンサなどの蓄電素子やフィルターに適した不織布を調製できる。
【0024】
さらに、繊維径分布の標準偏差は、例えば、1μm以下(例えば、5〜1000nm)、好ましくは8〜500nm、さらに好ましくは10〜100nm程度である。本発明では、不織布を構成するセルロース繊維の繊維径が均一であるため、不織布の孔径を均一化できる。
【0025】
セルロース繊維の平均繊維長は、特に限定されないが、繊維同士が適度に交絡して不織布の強度を確保できる点から、0.01mm以上であるのが好ましく、例えば、0.05〜10mm、好ましくは0.1〜5mm、さらに好ましくは0.2〜3mm(特に0.3〜1mm)程度である。セルロース繊維の平均繊維径に対する平均繊維長(平均アスペクト比)は、例えば、100〜10000、好ましくは200〜5000、さらに好ましくは300〜3000(特に、400〜2000)程度であってもよい。
【0026】
なお、本発明において、前記平均繊維径、繊維径分布の標準偏差、最小繊維径は、電子顕微鏡写真に基づいて測定した繊維径(n=20程度)から算出した値である。
【0027】
セルロース繊維の脱水時間は、API規格の脱水量に関する試験方法に準拠して、0.5重量%濃度の繊維スラリーを用いて測定したとき、例えば、1000秒以上であり、好ましくは1200〜10000秒、さらに好ましくは1500〜8000秒(特に1800〜7000秒)程度である。脱水時間が大きいほど、平均繊維長/平均繊維径比の高い繊維形状となり、保水力が高く、少量で機械的特性を向上できる。
【0028】
セルロース繊維は、水に対する分散性が高く、安定な分散液(又は懸濁液)を形成することができる。例えば、セルロースナノファイバーを水に懸濁させて、2重量%濃度にした懸濁液の粘度は、2000mPa・s以上であり、好ましくは3000〜15000mPa・s、さらに好ましくは5000〜10000mPa・s程度である。粘度は、B型粘度計を用いて、ロータNo.4を使用し、60rpmの回転数で、25℃における見かけ粘度として測定される値である。なお、フィブリル化の程度が小さかったり、繊維径が大きいと、水への分散性が低下し、均一な懸濁液が得られず、粘度を測定することができない。
【0029】
[セルロース繊維の製造方法]
セルロース繊維は、天然パルプなどをそのまま使用してもよいが、通常、原料セルロース繊維をミクロフィブリル化することにより得られ、詳細には、原料セルロース繊維を溶媒に分散させて分散液を調製する分散液調製工程、原料セルロース繊維を叩解してミクロフィブリル化するリファイナー工程を経て製造してもよい。
【0030】
(分散液調製工程)
原料繊維の平均繊維長は、例えば、0.01〜20mm、好ましくは0.05〜10mm、さらに好ましくは0.06〜8mm程度であり、通常0.1〜5mm程度である。また、原料繊維の平均繊維径は、0.01〜500μm、好ましくは0.05〜400μm、さらに好ましくは0.1〜300μm(特に0.2〜250μm)程度である。
【0031】
溶媒としては、原料繊維に化学的又は物理的損傷を与えない限り特に制限されず、例えば、水、有機溶媒[アルコール類(メタノール、エタノール、2−プロパノール、イソプロパノールなどC1−4アルカノールなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのジC1−4アルキルエーテル、テトラヒドロフランなどの環状エーテル(環状C4−6エーテルなど))、エステル類(酢酸エチルなどアルカン酸エステル)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトンなどのジC1−5アルキルケトン、シクロヘキサノンなどのC4−10シクロアルカノンなど)、芳香族炭化水素(トルエン、キシレンなど)、ハロゲン系炭化水素類(塩化メチル、フッ化メチルなど)など]などが挙げられる。
【0032】
これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。また、これらの溶媒のうち、生産性、コストの点から、水が好適であり、必要により、水と水性有機溶媒(C1−4アルカノール、アセトンなど)との混合溶媒を用いてもよい。
【0033】
リファイナー処理に供する原料繊維は、溶媒中に少なくとも共存した状態であればよく、リファイナー処理に先だって、原料繊維を溶媒中に分散(又は懸濁)させてもよい。分散は、例えば、慣用の分散機(超音波分散機、ホモディスパー、スリーワンモーターなど)などを用いて行ってもよい。なお、前記分散機は、機械的撹拌手段(撹拌棒、撹拌子など)を備えていてもよい。
【0034】
原料繊維の溶媒中における濃度は、例えば、0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜10重量%、さらに好ましくは0.1〜5重量%(特に0.5〜3重量%)程度であってもよい。
【0035】
(リファイナー工程)
リファイナー処理では、ディスクリファイナー(シングルディスクリファイナー、ダブルディスクリファイナーなど)を使用することができる。前記ディスクリファイナーのディスククリアランスは、0.1〜0.3mm、好ましくは0.12〜0.28mm、さらに好ましくは0.13〜0.25mm(例えば、0.14〜0.23mm)程度であってもよい。
【0036】
ディスクの回転数は、特に制限されず、1,000〜10,000rpmの広い範囲から選択でき、例えば、1,000〜8,000rpm、好ましくは1,300〜6,000rpm、さらに好ましくは1,600〜4,000rpm程度であってもよい。
【0037】
前記リファイナー処理では、処理回数(パス回数)は、1〜20回、好ましくは2〜15回、さらに好ましくは3〜10回(例えば、4〜9回)程度であってもよい。
【0038】
原料繊維の叩解処理の度合いは、例えば、カナディアンフリーネス値(CSF)が前記範囲となるような度合いであってもよい。なお、叩解処理の度合いは、ディスククリアランス及びリファイナー処理回数で調節することができる。ディスククリアランスが狭すぎたり、処理回数が多すぎると、原料繊維が大きな剪断力を受け、フィブリル化が進行し、ねじれや表面の荒れが生じ、繊維同士が絡まりやすくなり、リファイナー処理して得られたフィブリル化繊維の分散性が低下する。また、ディスククリアランスが広すぎると、原料繊維に加わる剪断力が小さくなり、未分割部分が残存する。
【0039】
さらに、セルロース繊維は、ナノメータサイズの繊維とする場合には、後述するポリオレフィン繊維と同様に、リファイナー工程の後に、さらに非破砕型ホモバルブシートを用いたホモジナイズ工程を経てもよい。
【0040】
[ポリオレフィン繊維]
本発明では、ポリオレフィン繊維は、バインダー繊維(又は紙力増強剤)としての役割を有するとともに、配合割合を増加することにより、不織布に対してシャットダウン機能も付与する役割も有する。
【0041】
ポリオレフィン繊維を構成するポリオレフィンは、エチレンやプロピレンなどのC2−6オレフィン単位を含む重合体であればよい。ポリオレフィンとしては、例えば、C2−6オレフィンの単独又は共重合体(ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体などのポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体などのポリプロピレン系樹脂、ポリ(メチルペンテン−1)、プロピレン−メチルペンテン共重合体など)、C2−6オレフィンと共重合性単量体との共重合体(エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体又はその塩(例えば、アイオノマー樹脂)、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などの共重合体が挙げられる。これらのポリオレフィンは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0042】
これらのポリオレフィンのうち、適度な耐熱性を有するとともに、電池やコンデンサのセパレータとして利用した場合にシャットダウン機能を付与できる点から、ポリエチレン系樹脂が好ましい。
【0043】
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、低、中又は高密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン(例えば、直鎖状低密度ポリエチレンなど)、分岐鎖状ポリエチレン、低分子量ポリエチレン、アイオノマー、塩素化ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−(4−メチルペンテン−1)共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体又はそのアイオノマー、エチレン−アクリル酸エチル共重合体などのエチレン−(メタ)アクリレート共重合体などが挙げられる。これらのポリエチレン系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのポリエチレン系樹脂において、エチレン含量(重合体の全単位におけるエチレン単位の割合)は、例えば、85〜100モル%、好ましくは90〜100モル%、さらに好ましくは95〜100モル%(特に98〜100モル%)程度であってもよい。特に、これらのポリエチレン系樹脂のうち、低、中又は高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどが好ましく、中又は高密度ポリエチレン(特に、高密度ポリエチレン)が特に好ましい。
【0044】
ポリオレフィン(特にポリエチレン系樹脂)の融点又は軟化点は、耐熱性の点から、100℃以上であればよく、例えば、100〜150℃、好ましくは110〜145℃、さらに好ましくは120〜140℃(特に130〜138℃)程度である。ポリオレフィンの融点又は軟化点がこの範囲にあると、適度な耐熱性を有し、電池やコンデンサのセパレータとして利用した場合、電気化学的に安定であり、かつシャットダウン機能を発現できる。
【0045】
ポリオレフィン繊維の平均繊維径は1.5μm以下(例えば、10〜1500nm)であり、例えば、10〜1000nm、好ましくは100〜900nm、さらに好ましくは300〜800nm(特に500〜700nm)程度である。繊維径分布の標準偏差は、例えば、1μm以下(例えば、10〜1000nm)、好ましくは50〜800nm、さらに好ましくは100〜500nm程度である。本発明では、不織布を構成するポリオレフィン繊維の繊維径が均一であるため、不織布の孔径を均一化できる。
【0046】
セルロース繊維の平均繊維径とポリオレフィン繊維の平均繊維径との比は、前者/後者=1000/1〜1/1000程度の範囲から選択でき、例えば、100/1〜1/100、好ましくは10/1〜1/10、さらに好ましくは5/1〜1/5(特に1/1〜1/3)程度であってもよい。両者の繊維径比がこの範囲にあると、両繊維を混抄し易く、均一な孔径を形成し易い。
【0047】
ポリオレフィン繊維の平均繊維長は1〜1000μm程度の範囲から選択できるが、不織布の機械的特性を向上できる点から、例えば、10〜500μm、好ましくは50〜400μm、さらに好ましくは100〜300μm(特に150〜200μm)程度であってもよい。さらに、平均繊維径に対する平均繊維長の比(平均繊維長/平均繊維径)(平均アスペクト比)は10以上であり、例えば、10〜10000、好ましくは50〜5000、さらに好ましくは100〜3000(特に200〜1000)程度である。本発明では、このよう繊維長及びアスペクト比を有するため、セルロース繊維とポリオレフィン繊維又はポリオレフィン繊維同士が適度に絡み合うためか、不織布の強度を向上できる。
【0048】
なお、本発明において、前記平均繊維径、繊維径分布の標準偏差、最大繊維径は、電子顕微鏡写真に基づいて測定した繊維径(n=20程度)から算出した値である。
【0049】
ポリオレフィン繊維の横断面形状(繊維の長手方向に垂直な断面形状)は、等方形状(例えば、真円形状、正多角形状など)であってもよく、異方形状(扁平形状、楕円形状など)であってもよい。等方形状の場合、短径に対する長径の比(平均アスペクト比)は、例えば、1〜2、好ましくは1〜1.5、さらに好ましくは1〜1.3(特に1〜1.2)程度であってもよい。
【0050】
ポリオレフィン繊維のカナダ標準濾水度(CSF)は、例えば、100〜600ml、好ましくは150〜500ml、さらに好ましくは200〜400ml程度であってもよい。
【0051】
[ポリオレフィン繊維の製造方法]
ポリオレフィン繊維としては、通常、原料ポリオレフィン繊維をミクロフィブリル化することにより得られる。原料ポリオレフィン繊維の平均繊維長は、0.01〜5mm、好ましくは0.03〜4mm、さらに好ましくは0.05〜3mm(特に、0.1〜2mm)程度であり、通常0.1〜5mm程度である。また、原料ポリオレフィン繊維の平均繊維径は、0.01〜50μm、好ましくは0.05〜40μm、さらに好ましくは0.1〜30μm(例えば、0.2〜25μm)程度である。
【0052】
ミクロフィブリル化の方法は、詳細には、原料繊維を溶媒に分散させて分散液を調製する分散液調製工程、破砕型ホモバルブシートを備えたホモジナイザーで前記分散液をホモジナイズ処理するホモジナイズ工程を含む製造方法により得られる。本発明では、特に、以下に示す製造方法により原料繊維をミクロフィブリル化することにより、平均繊維径1.5μm以下のポリオレフィン繊維を調製できる。
【0053】
分散液調製工程は、前記セルロース繊維と同様の方法で分散液を調製できる。
【0054】
ホモジナイズ工程について、図面を参照して説明する。図1は、破砕型ホモバルブシートを備えたホモジナイザーで前記分散液をホモジナイズ処理する工程を示す概略図であり、図2は、破砕型ホモバルブシートとホモバルブとの対向部分の拡大断面図であり、図3は、破砕型ホモバルブシートの斜視図である。一方、図4は、非破砕型ホモバルブシートの斜視図である。
【0055】
ホモジナイザーは、中空円筒状インパクトリング6と、このインパクトリング6の上流側に挿入して配設されたホモバルブシート2の中空円筒状凸部2bと、前記インパクトリング6の下流側に、前記中空円筒状凸部2bと対向して挿入された円柱状ホモバルブ5とを備えており、前記中空円筒状凸部2bと前記円柱状ホモバルブ5とは同じ外径を有している。また、中空円筒状凸部2bの下流側の内壁は、下流方向に向かって拡がるテーパー部(傾斜面)2dを有し、中空円筒状凸部2bの下流端は、内径d及び端面の厚みtを有する薄肉のリング状端面2cを形成している。さらに、このリング状端面2cと前記ホモバルブ5と前記インパクトリング6とで小径オリフィス(間隙)4を形成している。
【0056】
本発明では、破砕型ホモバルブシート2を使用することが大きな特徴である。破砕型ホモバルブシート2は、内部に円筒状流路3を有する中空部材であり、流入口3aを有する中空円盤状本体部2aと、この円盤状本体部2aの内壁から下流方向に延出し、かつ流出口3bを有する中空円筒状凸部2bとで構成されている。さらに、破砕型ホモバルブシート2は、前述のように、内径が拡大するテーパー部2dを形成することにより、図4に示す一般的な(通常の)非破砕型ホモバルブシート12と比べて、流出口3bを形成するリング状端面2cの厚みを薄く形成している。
【0057】
このようなホモジナイザーによるホモジナイズ処理では、図1に示すように、原料繊維1を含む分散液は、破砕型ホモバルブシート2の流入口3aからホモバルブシート内の流路3に流入し、流路3を通過した後、小径オリフィス4を通過して、ポリオレフィン繊維7を含む分散液となる。詳しくは、ホモジナイザーによる処理では、高圧でホモジナイザー内を圧送される原料繊維1が、狭い間隙である小径オリフィス4を通過する際に、小径オリフィス4の壁面(特にインパクトリング6の壁面)と衝突することにより、剪断応力又は切断作用を受けて分割され、均一な繊維径を有するポリオレフィン繊維7となる。特に、ホモバルブシート内の流路3を通過した分散液がホモバルブシート2とホモバルブ5とで形成された間隙を通過する際に、分散液の流速が急激に上昇するのに伴って、流速の上昇に反比例して分散液の圧送圧力が急激に低下する。そのため、分散液の圧力差を大きくでき、前記間隙を通過した分散液のキャビテーションが激しくなり、小径オリフィス4内での壁面との衝突力の上昇や気泡の崩壊により原料繊維1の均一なミクロフィブリル化を実現していると推測できる。
【0058】
このようなミクロフィブリル化を効果的に行うために、破砕型ホモバルブシートの流出口を形成する壁部の端面の厚み(中空円筒状凸部の下流端のリング状端面)を薄くすることが重要であるが、具体的には、破砕型ホモバルブシートにおける中空円筒状凸部の下流端の内径dと、下流端のリング状端面の厚みtとの比を、前者/後者=100/1〜5/1、好ましくは80/1〜6/1(例えば、50/1〜8/1)、さらに好ましくは30/1〜10/1(特に20/1〜12/1)程度に調整する。両者の比率がこの範囲にあると、ホモバルブシートとホモバルブとの間隙を通過する分散液の圧力の急激な低下を実現でき、原料繊維をナノメータサイズで均一な繊維径に分割できる。流出口を形成する壁部の端面の厚みは、流出口の口径に応じて選択できるが、通常、0.01〜2mm、好ましくは0.05〜1.5mm、さらに好ましくは0.1〜1mm(特に0.2〜0.8mm)程度である。
【0059】
小径オリフィスの間隔又はクリアランス(特に、ホモバルブシート凸部の端面とホモバルブとの間隔)は、例えば、5〜50μm、好ましくは10〜40μm、さらに好ましくは15〜35μm(特に20〜30μm)程度である。
【0060】
このようなホモジナイザーにおいて、小径オリフィスを通過させるための圧力(又はホモジナイザーへ分散液を圧送する圧力(又は処理圧力))は、例えば、30〜200MPa程度の範囲から選択でき、好ましくは35〜150MPa、さらに好ましくは40〜140MPa程度であってもよい。本発明では、破砕型ホモバルブシートを備えたホモジナイザーに対して、このような高い圧力で分散液を圧送することにより、極細で均一な繊維径に分割できる。
【0061】
また、小径オリフィスへの通過と壁面への衝突とを繰り返して行うことにより、前記原料繊維のミクロフィブリル化の程度を適宜調整することができる。小径オリフィスを通過させる処理回数(又はパス回数)は、例えば、5〜100回程度の範囲から選択でき、好ましくは10〜80回、さらに好ましくは12〜60回程度であってもよい。
【0062】
さらに、前記処理圧力は、処理回数に応じて選択してもよく、例えば、処理圧力が高圧処理(例えば、60〜200MPa、好ましくは80〜150MPa、さらに好ましくは100〜130MPa程度)の場合、処理回数は、例えば、3〜50回、好ましくは5〜20回、さらに好ましくは7〜15回程度である。一方、処理圧力が低圧処理(例えば、20〜80MPa、好ましくは30〜70MPa、さらに好ましくは40〜60MPa程度)の場合、処理回数は、例えば、5〜100回、好ましくは10〜50回、さらに好ましくは15〜30回程度である。
【0063】
一般的にホモジナイズ処理において、処理圧力が高すぎたり、処理回数が多すぎると、繊維が大きな剪断力を受け、繊維の切断、ねじれなどが生じ、繊維の特性が失われたり、フィブリル化が進行し、繊維同士の強固な絡み合いが生じるため、繊維の分散性が低下し易い。これに対して、本発明では、破砕型ホモバルブシートを用いることにより、これらの問題を解消できる。
【0064】
ホモジナイズ工程では、非破砕型ホモバルブシートを備えたホモジナイザーを用いたホモジナイズ処理を組み合わせてもよい。特に、前記破砕型ホモバルブシートを備えたホモジナイザーによるホモジナイズ処理(特に60MPa以上の高圧処理)の前工程(予備工程)として、非破砕型ホモジナイザーを備えたホモジナイザーを用いてホモジナイズ処理してもよい。ホモジナイズ工程において、非破砕型ホモバルブシートを備えたホモジナイザーで前処理することにより、破砕型ホモバルブシートを備えたホモジナイザーでの処理効率を向上できる。
【0065】
非破砕型ホモバルブシートでは、図4に示されるように、通常、ホモバルブシート12の中空円盤状本体部12aから延出する中空円筒状凸部12bの内壁にはテーパ部が形成されておらず、ホモバルブシートにおける中空円筒状凸部の下流端の内径と、下流端のリング状端面の厚みとの比は、通常、前者/後者=3/1〜1/1(特に2.5/1〜1.5/1)程度である。
【0066】
非破砕型ホモバルブシートを備えたホモジナイザーにおいて、小径オリフィスを通過させるための圧力(又はホモジナイザーへ分散液を圧送する圧力(又は処理圧力))は、例えば、30〜100MPa、好ましくは35〜80MPa、さらに好ましくは40〜70MPa程度であってもよい。パス回数は、例えば、10〜40回、好ましくは12〜30回、さらに好ましくは15〜25回程度であってもよい。
【0067】
ポリオレフィン繊維の製造方法においても、前記ホモジナイズ工程の前工程(予備工程)として、分散液をリファイナー処理してもよい。リファイナー処理としては、前記セルロース繊維の製造方法と同様のリファイナー処理を行ってもよい。
【0068】
なお、セルロース繊維及びポリオレフィン繊維のいずれもミクロフィブリル化を行う場合、両繊維のミクロフィブリル化はそれぞれ別個に処理する方法、同時に処理する方法のいずれの方法であってもよい。
【0069】
[不織布及びその製造方法]
本発明の不織布において、セルロース繊維とポリオレフィン繊維との割合(重量比)は、前者/後者=99.9/0.1〜10/90程度の範囲から選択でき、例えば、99/1〜20/80、好ましくは98/2〜30/70、さらに好ましくは97/3〜40/60程度である。
【0070】
さらに、両者の割合は用途に応じて適宜選択でき、シャットダウン機能が必要な蓄電素子用セパレータ(特に、電池、コンデンサのセパレータ)では、セルロース繊維とポリオレフィン繊維との割合(重量比)が、前者/後者=70/30〜20/80、好ましくは65/35〜25/75、さらに好ましくは60/40〜30/70(特に55/45〜40/60)程度である。このような割合では、高温で溶融したポリオレフィン繊維がセパレータの孔を塞ぐことによりシャットダウン機能が発現する。
【0071】
一方、親水性が必要な用途(例えば、水系フィルターなど)では、前者/後者=99.9/0.1〜50/50、好ましくは99.5/0.5〜70/30、さらに好ましくは99/1〜80/20(特に97/3〜10/90)程度である。
【0072】
本発明の不織布は、用途に応じて、慣用の添加剤、例えば、サイズ剤、ワックス、無機充填剤、着色剤、安定化剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤など)、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤などを含有していてもよい。なお、本発明の不織布は、前述のように、バインダー繊維としても機能するポリオレフィン繊維を含むため、他の合成樹脂、ビニロン繊維などのバインダー繊維、ポリアクリルアミド、デンプン、天然ゴムなどの紙力増強剤を含んでいなくてもよい。特に、本発明の不織布は、ビニロン繊維など、親水性でかつ融点の低いバインダー繊維を含まないため、耐熱性が高く、電気化学的にも安定である。すなわち、本発明の不織布は、親水性バインダー繊維を実質的に含まないのが好ましい。また、本発明の不織布は、融点100℃未満の合成樹脂を実質的に含まないのが好ましい。なお、本発明の不織布は、紙力増強剤として、発ガン性の虞があるポリアクリルアミドを実質的に含まないため、安全性も高い。
【0073】
本発明の不織布は、機械的特性に優れ、薄肉であっても強度が高く、坪量10g/mにおける引張強度が12N/15mm以上であり、例えば、12〜30N/15mm、好ましくは13〜25N/15mm、さらに好ましくは14〜20N/15mm(特に15〜18N/15mm)程度である。
【0074】
本発明の不織布は、前記引張強度を有しているにも拘わらず、透気性にも優れており、坪量10g/mにおける透気が10秒/100ml以上であり、例えば、10〜300秒/100ml、好ましくは30〜200秒/100ml、さらに好ましくは50〜100秒/100ml(特に60〜80秒/100ml)程度である。
【0075】
本発明の不織布の厚みは20μm以下の薄肉であり、例えば、1〜20μm、好ましくは5〜19μm(例えば、10〜18μm)、さらに好ましくは12〜17μm(特に13〜16μm)程度であってもよい。不織布は、目的に応じて複数の不織布を積層してもよい。
【0076】
本発明の不織布の平均孔径は0.1〜50μmであり、例えば、0.15〜30μm、好ましくは0.2〜10μm、さらに好ましくは0.25〜5μm(特に0.25〜1μm)程度である。
【0077】
不織布の坪量は、例えば、0.1〜50g/m、好ましくは1〜30g/m、さらに好ましくは3〜20g/m(特に5〜15g/m)程度であってもよい。不織布の空隙率は50%以上であってもよく、好ましくは50〜90%、さらに好ましくは60〜80%程度であってもよい。
【0078】
本発明の不織布の製造方法は、特に限定されず、慣用の方法、例えば、セルロース繊維とポリオレフィン繊維とを混合し、湿式抄紙又は乾式抄紙などの抄紙により製造できる。また、セルロース繊維とポリオレフィン繊維とを一括してミクロフィブリル化した場合には、両者の混綿繊維を抄紙することにより製造してもよい。湿式抄紙は、慣用の方法で行うことができ、例えば、手抄き抄紙器や多孔板などを備えた湿式抄紙機などを用いて抄紙してもよい。乾式抄紙も、慣用の方法、例えば、エアレイド製法、カード製法などを用いて抄紙することができる。さらに、電池などの蓄電デバイスにおけるセパレータとして利用される場合、例えば、0.1〜100MPa、好ましくは0.3〜50MPa、さらに好ましくは0.5〜30MPa(特に1〜10MPa)程度の圧力でプレス加工してもよい。プレス加工の温度は、特に限定されず、例えば、60〜250℃程度の範囲から選択でき、例えば、80〜200℃、好ましくは100〜180℃程度であるが、シャットダウン機能を有する電池又はコンデンサのセパレータとする場合、ポリオレフィン繊維の融点(又は軟化点)よりも低い温度、例えば、80〜150℃、好ましくは90〜140℃、さらに好ましくは100〜130℃(特に110〜130℃)程度であってもよい。
【0079】
本発明では、100nm以上の適度に大きな繊維径を有するセルロース繊維に対して、適度な繊維径を有するポリオレフィン繊維を含むため、簡便に抄紙でき、生産性も高い。
【実施例】
【0080】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例及び比較例で使用した硬化性樹脂の各成分の略号は下記の通りであり、実施例及び比較例で得られた不織布の評価は以下の方法で測定した。
【0081】
[繊維径]
実施例及び比較例で得られたセルロース繊維又はセルロースナノファイバーについて50000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮影し、撮影した写真上において、写真を横切る任意の位置に2本の線を引き、線と交差する全ての繊維径をカウントして平均繊維径(n=20以上)を算出した。線の引き方は、線と交差する繊維の数が20以上となれば、特に限定されない。さらに、繊維径の測定値から、繊維径分布の標準偏差及び最大繊維径を求めた。なお、最大繊維径が1μmを超えるセルロース繊維の場合には、5000倍のSEM写真を用いて算出した。
【0082】
[繊維長]
繊維長は、繊維長測定器(カヤーニ社製「FS−200」)を用いて測定した。
【0083】
[平均孔径]
実施例及び比較例で得られた不織布を5000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮影し、最表面の孔径のみを50点抽出し、平均孔径を求めた。
【0084】
[透気度]
JIS P8117に準拠して、ガーレー法で空気100mlが透気する時間を測定した。
【0085】
[引張強度]
JIS P8113に準じて、得られた不織布を幅15mm、長さ250mmの短冊状に裁断してサンプルとし、可変速引張試験機((株)東洋精機製作所製)により、チャック間隔100mm、引張速度20mm/分で、引張強度を測定した。引張強度の測定は、長さ方向(又は縦方向)について行った。
【0086】
実施例1
原料ポリオレフィン繊維として、ポリオレフィン繊維(三井化学(株)製「SWP E400」、平均繊維長0.9mm、CSF580ml)を用いて、原料ポリオレフィン繊維を1重量%の割合で含有するスラリー液を100リットル調製した。このスラリー液を、破砕型ホモバルブシート(中空円筒状凸部の下流端の内径/リング状端面の厚み=16.8/1)を備えたホモジナイザー(ゴーリン社製、15M8AT)を用いて、処理圧50MPaで20回処理した。得られたポリオレフィン繊維の平均繊維径は0.6μm、繊維径分布の標準偏差は253nm、平均繊維長は182μm、アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は303であった。
【0087】
さらに、得られたポリオレフィン繊維5重量部及びセルロース繊維(ダイセル化学工業(株)製「セリッシュKY100G」、平均繊維径0.3μm、平均繊維長420μm)95重量部を混合したスラリーを0.2重量%に希釈し、減圧装置付き抄紙マシーン((株)東洋精機製作所製「標準角型マシン」)を用いて、No.5C濾紙を濾布として抄紙を行った。得られた湿潤状態の湿紙の両面に、吸い取り紙としてNo.5C濾紙を重ねた。次いで、抄紙体を超音波処理しながらイソプロピルアルコールに10分間浸漬して溶媒置換した。さらに、新しいNo.5C濾紙で両面を挟み、180℃、5MPaの圧力で5分間プレスした。その後、表面温度が100℃に設定されたドラムドライヤ(熊谷理機工業(株)製)に貼り付けて120秒間乾燥した。得られた不織布の坪量、厚み、平均孔径、透気度、引張強度を表1に示す。
【0088】
実施例2
実施例1において、ポリオレフィン繊維とセルロース繊維との割合を、ポリオレフィン繊維50重量部及びセルロース50重量部に変更した混合スラリーを0.2重量%に希釈し、減圧装置付き抄紙マシーン((株)東洋精機製作所製「標準角型マシン」)を用いて、No.5C濾紙を濾布として抄紙を行った。得られた湿潤状態の湿紙の両面に、吸い取り紙としてNo.5C濾紙を重ねた。次いで、抄紙体を超音波処理しながらイソプロピルアルコールに10分間浸漬して溶媒置換した。さらに、新しいNo.5C濾紙で両面を挟み、120℃、1MPaの圧力で1分間プレスした。その後、表面温度が100℃に設定されたドラムドライヤ(熊谷理機工業(株)製)に貼り付けて120秒間乾燥した。得られた不織布の坪量、厚み、平均孔径、透気度、引張強度を表1に示す。
【0089】
さらに、得られた不織布を厚み1mmのステンレス製板に挟み、140℃の乾燥機に入れ、1時間放置した。放置後の不織布の透気度は測定不能(無限大)であった。すなわち、この不織布はシャットダウン機能を有するセルロース系不織布であることが判明した。
【0090】
実施例3
通常の非破砕型ホモバルブシート(中空円筒状凸部の下流端の内径/リング状端面の厚み=1.9/1)を備えたホモジナイザー(ゴーリン社製、15M8AT)を用いて、処理圧50MPaで20回処理し、平均繊維径0.9μm、繊維径分布の標準偏差488nm、平均繊維長537μm、アスペクト比597のポリオレフィン繊維を得る以外は実施例2と同様にして不織布を得た。得られた不織布の坪量、厚み、平均孔径、透気度、引張強度を表1に示す。
【0091】
比較例1
原料ポリオレフィン繊維として、ポリオレフィン繊維(三井化学(株)製「SWP E400」、平均繊維長0.9mm、CSF580ml)を用いて、原料ポリオレフィン繊維を1重量%の割合で含有するスラリー液を100リットル調製した。このスラリー液を、通常の非破砕型ホモバルブシート(中空円筒状凸部の下流端の内径/リング状端面の厚み=1.9/1)を備えたホモジナイザー(ゴーリン社製、15M8AT)を用いて、処理圧50MPaで3回処理した。得られたポリオレフィン繊維の平均繊維径は2.1μm、繊維径分布の標準偏差は2.5μm、平均繊維長は1.2mm、アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は571であった。
【0092】
さらに、得られたポリオレフィン繊維5重量部及びセルロース繊維(セリッシュKY100G)95重量部を混合したスラリーを用いて、実施例1と同様にして不織布を得た。得られた不織布の坪量、厚み、平均孔径、透気度、引張強度を表1に示す。
【0093】
比較例2
ポリオレフィン繊維とセルロース繊維との割合を、ポリオレフィン繊維70重量部及びセルロース30重量部に変更した混合スラリーを用いる以外は、比較例1と同様にして不織布を得た。得られた不織布の坪量、厚み、平均孔径、透気度、引張強度を表1に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
表1の結果から明らかなように、実施例の不織布は、透気度及び引張強度が高い。一方、比較例の不織布は、引張強度が低い。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の不織布は、各種のセパレータやフィルターに利用できるが、電気化学的に安定性が高いため、電池(リチウム電池、リチウム二次電池、燃料電池、アルカリ二次電池、ニッケル水素二次電池、ニッケル−カドミウム電池、鉛蓄電池など)、コンデンサ、キャパシタなどの蓄電素子のセパレータに有用である。特に、所定量のポリオレフィン繊維で不織布を構成することにより、シャットダウン機能を付与できるため、電池やコンデンサのセパレータに有用である。
【符号の説明】
【0097】
1…原料繊維
2…破砕型ホモバルブシート
3…破砕型ホモバルブシートの流路
4…小径オリフィス
5…ホモバルブ
6…インパクトリング
7…ポリオレフィン繊維
12…非破砕型ホモバルブシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均繊維径0.1〜50μmのセルロース繊維と平均繊維径1.5μm以下のポリオレフィン繊維とを含み、かつ厚みが20μm以下である不織布。
【請求項2】
ポリオレフィン繊維の平均繊維径が10〜1000nmである請求項1記載の不織布。
【請求項3】
ポリオレフィン繊維の平均繊維長が1〜1000μmである請求項1又は2記載の不織布。
【請求項4】
ポリオレフィン繊維がポリエチレン繊維である請求項1〜3のいずれかに記載の不織布。
【請求項5】
ポリオレフィン繊維が、原料ポリオレフィン繊維を溶媒に分散させて分散液を調製する分散液調製工程、破砕型ホモバルブシートを備えたホモジナイザーで前記分散液をホモジナイズ処理するホモジナイズ工程を含む製造方法で得られる請求項1〜4のいずれかに記載の不織布。
【請求項6】
セルロース繊維の平均繊維径が0.2〜1μmである請求項1〜5のいずれかに記載の不織布。
【請求項7】
セルロース繊維とポリオレフィン繊維との割合(重量比)が、前者/後者=99.9/0.1〜10/90である請求項1〜6のいずれかに記載の不織布。
【請求項8】
親水性バインダー繊維を実質的に含まない請求項1〜7のいずれかに記載の不織布。
【請求項9】
融点100℃未満の合成樹脂を実質的に含まない請求項1〜8のいずれかに記載の不織布。
【請求項10】
坪量10g/mにおける引張強度が12N/15mm以上である請求項1〜9のいずれかに記載の不織布。
【請求項11】
坪量10g/mにおける透気度が10秒/100ml以上である請求項1〜10のいずれかに記載の不織布。
【請求項12】
厚みが10〜18μmである請求項1〜11のいずれかに記載の不織布。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の不織布で構成された蓄電素子用セパレータ。
【請求項14】
セルロース繊維とポリオレフィン繊維との割合(重量比)が、前者/後者=70/30〜20/80である請求項13記載のセパレータ。
【請求項15】
電池又はコンデンサのセパレータである請求項13又は14記載のセパレータ。
【請求項16】
セルロース繊維とポリオレフィン繊維とを抄紙する請求項1記載の不織布の製造方法。
【請求項17】
セルロース繊維とポリオレフィン繊維との割合(重量比)が、前者/後者=70/30〜20/80であり、かつポリオレフィン繊維の融点又は軟化点よりも低い温度で処理する請求項16記載の不織布の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−36518(P2012−36518A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175658(P2010−175658)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】