説明

セルロース製品及びその製造方法

本発明は(i)セルロース繊維、及び任意のてん料を含む水性懸濁液を得、(ii)その懸濁液に3R2スタッキングを有するクレーを添加し、そして(iii)得られた懸濁液を脱水することを特徴とするセルロース製品の製造方法に関する。また、本発明は(i)セルロース繊維、及び任意のてん料を含む水性懸濁液を得、(ii)その懸濁液にカチオン性クレーを添加し、(iii)その懸濁液に少なくとも一種のカチオン性ポリマーを含む一種以上の脱水兼歩留まり助剤を添加し、そして(iv)得られた懸濁液を脱水することを特徴とするセルロース製品の製造方法に関する。更に、本発明は3R2スタッキングを有するクレーを含むセルロース製品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセルロース繊維を3R2スタッキング(stacking)を有するクレーで処理することを含むセルロース製品の製造方法、及びセルロース繊維をカチオン性クレーで処理することを含むセルロース製品の製造方法に関する。また、本発明は3R2スタッキングを有するクレーを含むセルロース製品に関する。
【背景技術】
【0002】
パルプ懸濁液はセルロース製品、例えば、パルプ及び紙をつくるのに広く使用され、セルロース繊維は別にして、製造方法に負の影響を有する化合物をまた含む。このような化合物はバージンパルプに由来するセルロース懸濁液及びリサイクルされたパルプに由来するセルロース懸濁液の両方に見られる。
【0003】
バージンパルプ懸濁液では、このような妨害/有害物質は主としてヘミセルロース、リグニンだけでなく、親油性抽出物及び親水性抽出物である。セルロースは別にして、これらの物質はパルプ化操作及び漂白操作中にプロセス水に種々の程度で溶解され、又はコロイド分散される。パルプ化操作及び漂白操作中に放出される化合物は普通ピッチと称される。ピッチの例として、木材樹脂、例えば、親油性抽出物(脂肪酸及び樹脂酸、ステロール、ステアリルエステル、トリグリセリド)、そしてまた脂肪、テルペン、テルペノイド、ワックス等が挙げられる。
【0004】
リサイクルされたパルプ懸濁液では、製紙方法に負の影響を有する化合物は、二三の化合物を挙げると、主として接着剤、ホットメルトプラスチック、インキ及びラテックスからなり、これらは普通粘着物と称される。ピッチ及び粘着物は別にして、懸濁液はまた塩及び種々の木材ポリマーのような荷電された汚染物を含み、そのうちの荷電化合物、低荷電化合物又は非荷電化合物が吸着及び添加された性能薬品、例えば、脱水兼歩留り助剤、サイジング剤等との相互作用に関してセルロースと競合する。通常、このような妨害化合物はアニオン性くずと称される。
【0005】
上記化合物の全てがパルプ及び紙をつくる方法を種々の様式で妨害する。例えば、それらの幾つかはパルプ懸濁液の性質の変化のために沈殿し、最終的に抄紙機の種々の機械部分、例えば、スクリーン及びフェルトに付着される。やがて、付着物はしばしば紙ウェブの分解の形態で抄紙機上で分解をもたらし、それにより抄紙機が洗浄のために停止されるべきである。更に、製紙工場は白水を従来よりも大きな程度まで循環する傾向があり、これが懸濁液中の妨害物質及び有害物質の存在を増大する。
【0006】
種々の添加剤が上記有害/妨害物質の負の影響を低減するために使用されていた。例えば、タルクがピッチ及び粘着物を吸着するために広く使用されていた。また、種々の型のクレーが有害化合物の影響を低減するために使用されていた。
【0007】
特開昭第60-94687号はハイドロタルサイトを含むピッチ吸着剤に関する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は一般にセルロース繊維が3R2スタッキングを有するクレーで処理される方法に関する。また、本発明は一般にセルロース繊維がカチオン性クレーで処理される方法に関する。更に、本発明は3R2スタッキングを有するクレーをセルロース繊維を含む水性懸濁液に添加することを含むセルロース製品の製造方法に関する。更に、本発明は一般に3R2スタッキングを有するクレーを含むセルロース製品に関する。
【0009】
更に、本発明は(i) セルロース繊維を含む水性懸濁液を得、(ii)3R2スタッキングを有するクレー及び必要により一種以上の脱水兼歩留まり助剤を懸濁液に添加し、そして(iii) 得られた懸濁液を脱水することを特徴とするセルロース製品の製造方法に関する。更に、本発明は(i) セルロース繊維を含む水性懸濁液を得、(ii)カチオン性クレーを懸濁液に添加し、(iii) 少なくとも一種のカチオン性ポリマーを含む一種以上の脱水兼歩留まり助剤を懸濁液に添加し、そして(iv)得られた懸濁液を脱水することを含むセルロース製品の製造方法に関する。製造されるセルロース製品はパルプ及び/又は紙であることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
驚くことに、水性セルロースパルプ懸濁液中の妨害物質及び有害物質の存在によるパルプ及び紙をつくる方法に関する負の影響、特にピッチ及び粘着物により生じる問題が、本発明に従ってセルロース繊維をクレーで処理することにより軽減し得ることがわかった。
【0011】
また驚くことに、パルプ及び紙の製造に使用される添加剤と連係して、本発明のクレー、特にカチオン性クレー及び/又は3R2クレーのセルロース懸濁液への添加が妨害物質の吸着及び除去を可能にするだけでなく、クレーが添加されない状況と較べて、それがその方法に使用される添加剤の性能を改良することがわかった。改良された性能が観察されるこのような添加剤の例として、歩留り兼脱水助剤、サイジング剤等が挙げられ、クレーが少なくとも一種のカチオン性ポリマーを含む一種以上の脱水兼歩留まり助剤と一緒に使用されることが好ましい。こうして、本発明はパルプ及び紙の製造方法における改良された脱水及び歩留りだけでなく、製紙方法における改良されたサイジングを提供すると同時に、更にセルロース懸濁液中の妨害物質及び有害物質の含量を低減する。
【0012】
本発明のクレーは天然産クレー、化学的かつ/又は物理的に変性された天然産クレー、及び合成クレーに由来し得る。天然産クレーは通常実質的に結晶性の構造を有する。しかしながら、合成により得られたクレーはまた更に結晶構造と実質的に同じ化学組成を有する無定形材料を含んでもよい。合成クレー中に存在する無定形材料の量は主として使用される反応パラメーターに依存する。本明細書に使用される“クレー”という用語は、実質的に結晶性の構造を有するクレーそしてまた結晶構造及び無定形構造の両方を含むクレーを表す。
【0013】
クレーは層(ラメラ)が化学結合により架橋されているが、隣接層の原子が主として物理的力により相互作用する層状構造により特徴づけられる。このクレーの層は層中に存在する原子の型に応じて荷電されなくてもよく、又は荷電されてもよい。これらの層が荷電される場合、これらの層間のスペース(また中間層スペースと称される)は、これらの層の電荷に対し反対の電荷を有するイオンを含む。本明細書に使用される“カチオン性クレー”という用語は、正に荷電された層及び中間層スペース中に存在するアニオンを有するクレーを表す。本明細書に使用される用語“アニオン性クレー”は、負に荷電された層及び中間層スペース中に存在するカチオンを有するクレーを表す。通常、中間層スペース中のイオンは交換可能である。
【0014】
本発明のクレーは実際には中間層スペース中に存在する、あらゆるアニオン、必要によりまた水分子を有し得る。この中間層スペース中に存在し得る普通のアニオンの例として、NO3-、OH-、Cl-、Br-、I-、CO32-、SO42-、SiO32-、CrO42-、BO32-、MnO4-、HGaO32-、HVO4-、及びClO4-だけでなく、ピラリング(pillaring)アニオンもしくはインターカレーティング(intercalating)アニオン、例えば、V10O286-及びMO7O246-、酢酸イオンのようなモノカルボン酸イオン、シュウ酸イオンの如きジカルボン酸イオン、及びラウリルスルホン酸イオンの如きアルキルスルホン酸イオン、通常水酸化物イオン及び炭酸イオンが挙げられる。本発明の天然産クレーは普通中間層スペース中に炭酸アニオンを有する。
【0015】
前記クレーの層又はラメラは異なる原子価を有する少なくとも2種の異なる金属原子を含むことが好適である。好適には、一種の金属原子が2価であり、その他の金属原子が3価であることが好適である。しかしながら、この層はまた2種より多い金属原子を含んでもよい。この層の電荷は異なる原子価を有する金属原子の比により支配される。例えば、多量の3価の金属は正電荷の増大された密度を有する層にするであろう。好適には、本発明のクレーは層の総電荷がカチオン性であり、中間層がアニオンを含むような比で2価の金属及び3価の金属を含む層を含む。これらの層は層の総電荷がカチオン性であるような比で2価の金属及び3価の金属から実質的になることが好ましい。
【0016】
本発明の合成により製造されたクレー及び天然産クレーは一般式:
〔Mm2+Mn3+(OH)2m+2n〕Xn/zZ- bH2O
(式中、m及びnは、互いに独立に、m/nが1から10まで、好ましくは1から6まで、更に好ましくは2から4までの範囲、最も好ましくは3付近の値であるような値を有する整数であり、bは0から10までの範囲の値、好適には2から6までの値、しばしば約4の値を有する整数であり、Xn/zZ-はzが1から10まで、好ましくは1から6までの整数であるアニオンであり、好適にはXn/zz-がNO3-、OH-、Cl-、Br-、I-、CO32-、SO42-、SiO32-、CrO42-、BO32-、MnO4-、HGaO32-、HVO4-、ClO4-、ピラリングアニオン及びインターカレーティングアニオン、例えば、V10O286-及びMO7O246-、酢酸イオンのようなモノカルボン酸イオン、シュウ酸イオンの如きジカルボン酸イオン、及びラウリルスルホン酸イオンの如きアルキルスルホン酸イオンを含み、M2+は2価の金属原子、好適にはBe、Mg、Cu、Ni、Co、Zn、Fe、Mn、Cd、及びCa、好ましくはMgを含む2価の金属原子であり、かつM3+は3価の金属原子、好適にはAl、Ga、Ni、Co、Fe、Mn、Cr、V、Ti及びIn、好ましくはAlを含む3価の金属原子である)
により特徴づけられる。2価の金属原子がマグネシウムであり、かつ3価の金属がアルミニウムであり、一般式:
〔Mgm2+Aln3+(OH)2m+2n〕Xn/zz-・bH2O
にすることが好ましい。
【0017】
本発明の一つの好ましい実施態様によれば、前記クレーがカチオン性である。本発明の好適なカチオン性クレーの例として、ハイドロタルサイト、マナセアイト、パイロオーロ石、ショグレン石、スティチタイト、バーバートン石、タコバイト、リーブス石、デゾーテルス石、モトコーリアイト、ウェームランドアイト、メイキセネライト(meixnerite)、コーリング石、クロロマガルマイト(chloromagalumite)、カルボイダイト(carrboydite)、ホネサイト、ウッドワード石、イオワ鉱、ハイドロホネス石、マウントケイサイト等が挙げられる。これらのクレーを記載するのにまた使用される用語の例として、ハイドロタルサイトのような化合物及び層状二重水酸化物化合物が挙げられる。
【0018】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、クレーが特別なスタッキング、即ち、3R2スタッキングを有する。この型のクレーは本明細書中でまた“3R2クレー”と称される。この3R2クレーはカチオン性であることが好ましく、このクレーは上記のもののいずれかであってもよい。このクレーはマグネシウム-アルミニウム含有3R2クレーであることが好ましい。この3R2クレーは3層反復を有することが好適である。このクレーの3R2スタッキングポリタイプは3R1スタッキングポリタイプ(本明細書中でまた“3R1クレー”と称される)ではなく異なる層配置/スタッキングを有する。この3R1クレー及び3R2は107dhkl反射及び108dhkl反射の強さによりX線回折/反射パターンにより互いに区別し得る。この3R2クレーは45°2シータ(Drits及びBookinによる)に近い強いdhkl 107反射を有し、一方、3R1クレーは47°2シータに近い強いdhkl反射(dhkl108反射)を有する。45°2シータ及び47°2シータの両方におけるピークの存在は3R1クレー及び3R2クレーの混合物の存在を示す。107dhkl反射及び108dhkl反射の正確な2シータ値はクレー、例えば、Mg-Alクレーに関する格子“a”及び“c”構造パラメーターに依存することが理解される。勿論、同様にX線回折パターンに幾つかのその他の相違があるが、これはこのような区別をするのに最良のdhkl反射の範囲であると考えられる。更に、3R2スタッキングを有するクレーはSEM試験により検出し得るように、通常の3R1クレーの形態と較べて異なる形態を有する。この3R2クレーはランダムに凝集される不規則なフレークのような小板状体を含む構造を有することが明らかであり、一方、通常の従来技術の3R1クレーは通常のブック積み重ね形態で配置される小板状体の規則的な良く形成された層を有する。
【0019】
本発明の3R2スタッキングを有するクレーはアルミニウム源及びマグネシウム源を含むスラリーの水熱処理(ソルボ・サーマル)により調製し得る。本発明の3R2を有する好適なクレー、例えば、Mg-Alクレー及びそれらの調製方法の例として、国際特許出願公開番号WO 01/12550に開示されたものが挙げられ、その開示が参考として本明細書に含まれる。
【0020】
本発明の一つの好ましい実施態様によれば、3R2スタッキングを有するクレーがパルプ及び紙のようなセルロース製品の製造方法においてセルロース繊維を含む水性懸濁液に添加される。この3R2クレーがこのような懸濁液に添加される場合、妨害物質、例えば、ピッチ及び粘着物の改良された除去が3R1スタッキングを有する通常のクレーの添加に対し得られることが観察された。
【0021】
前記クレーはスラリー(懸濁液)又は粉末(これは水中に容易に分散し得る)としてセルロース繊維を含む水性懸濁液(本明細書中、また“水性セルロース懸濁液”及び“セルロース懸濁液”と称される)に添加されることによりセルロース繊維と混合されることが好適である。このクレーの懸濁液又は粉末は更にまたその他の成分、例えば、分散及び/又は保護剤(これらはクレーの総合効果に寄与し得る)を含んでもよい。このような薬剤はノニオン特性、アニオン特性又はカチオン特性を有し得る。好適な保護剤又はコロイドの例として、水溶性セルロース誘導体、例えば、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース及びエチルヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロース、ゼラチン、澱粉、グアーガム、キサンタンガム、ポリビニルアルコール等が挙げられる。好適な分散剤の例として、ノニオン薬剤、例えば、エトキシル化脂肪酸、脂肪酸、アルキルフェノール又は脂肪酸アミド、エトキシル化グリセロールエステル及び非エトキシル化グリセロールエステル、脂肪酸のソルビタンエステル、ノニオン性表面活性剤、ポリオール及び/又はそれらの誘導体、アニオン薬剤、例えば、アルキルスルフェート又はアルキルアリールスルフェート、スルホネート、エーテルスルホネート、ポリアクリル酸、及びカチオン薬剤、例えば、アルカノールアミンを脂肪酸及びジカルボン酸の混合物と反応させ、必要により得られるエステルをアルコキシル化し、生成物を四級化することにより得られたエステルクオート、四級化脂肪酸アミド、ベタイン、ジメチルアンモニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩又はジアルキルアリールアンモニウム塩、及びカチオン性ジェミニ(gemini)分散剤が挙げられる。
【0022】
前記クレーは木材チップが崩壊される時点から始まってセルロース懸濁液の脱水が行なわれる方法の時点までのセルロース製品製造方法のあらゆる時点で添加し得る。このセルロース製品はあらゆる形態、例えば、ウェブ又はシート、例えば、パルプシート及び紙シートの形態であってもよい。
【0023】
本発明の好ましい実施態様によれば、前記クレーがパルプ製造方法のセルロース懸濁液に添加される。このクレーはパルプ化方法(これはクラフトパルプ化方法、メカニカルパルプ化方法、サーモメカニカルパルプ化方法、ケモメカニカルパルプ化方法、ケモサーモメカニカルパルプ化方法であってもよい)の前又は後に添加し得る。このクレーはパルプ化方法の直前又はパルプ化方法に直接に、例えば、ダイジェスタに添加し得る。しかしながら、このクレーは化学的蒸解に続いて、例えば、褐色の紙料ウォッシャー後、又は(ケモ)メカニカルパルプの精製後にセルロース懸濁液に添加されることが好ましい。通常、このセルロースパルプは異なる漂白段階を含む多段階漂白方法で漂白され、クレーがあらゆる漂白順序に添加し得る。好適な漂白段階の例として、塩素漂白段階、例えば、元素状塩素漂白段階及び二酸化塩素漂白段階、非塩素漂白段階、例えば、オゾン、過酸化水素及び過酢酸のような過酸化物段階、並びに、必要によりジチオニトによる処理のような還元段階と組み合わせて、塩素漂白及び非塩素漂白と酸化段階の組み合わせが挙げられる。前記クレーは漂白段階と洗浄段階の間のあらゆる時点で、直接漂白段階に、好ましくは漂白タワーの前のミキサーに、そしてまたクレーが、例えば、置換部分中で、部分的又は完全に除去される洗浄段階にセルロース懸濁液に添加し得る。
【0024】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、前記クレーが製紙方法のセルロース懸濁液に添加される。このクレーは製紙方法のあらゆる時点でセルロース懸濁液、例えば、濃厚紙料、希薄紙料、又は白水が循環される前、例えば、希薄紙料供給ボックスの前の白水に添加し得る。このクレーは濃厚紙料に添加されることが好ましい。カチオン性クレーはまたパルプ及び/又は紙を製造する方法の一つより多い位置に添加し得る。例えば、統合されたパルプ及び紙工場では、クレーがパルプ製造方法、必要によりまた紙製造方法において添加でき、一種以上の脱水兼歩留まり助剤が紙製造方法において添加し得る。このような方法はクレーを含むセルロース懸濁液を脱水し、得られた懸濁液を希釈し、希釈された懸濁液に一種以上の脱水兼歩留まり助剤を添加し、この脱水兼歩留まり助剤を含む懸濁液を脱水することを含み得る。
【0025】
本明細書に使用される“紙”という用語は紙及びその製品だけでなく、その他のセルロース繊維を含むシート又はウェブのような製品、例えば、ボード及び板紙、並びにこれらの製品を含む。その方法はセルロース(セルロース含有)繊維の水性懸濁液の異なる型からの紙の製造に使用でき、この懸濁液は乾燥物質を基準として、少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも50重量%のこのような繊維を含むことが好適である。このセルロース繊維はバージン繊維及び/又はリサイクルされた繊維をベースとすることができ、この懸濁液は広葉樹及び針葉樹の両方からの、ケミカルパルプ、例えば、硫酸パルプ、亜硫酸パルプ及び有機溶剤パルプ、メカニカプパルプ、例えば、サーモメカニカルパルプ、ケモサーモメカニカルパルプ、リファイナパルプ及び砕木パルプからの繊維をベースとすることができ、また必要により脱インキパルプからの、リサイクルされた繊維、及びこれらの混合物をベースとすることができる。リサイクルされた繊維が使用される場合、懸濁され、リサイクルされた繊維は非繊維成分、例えば、印刷インキ及び種々の紙表面処理化合物、例えば、ラテックスを繊維から分離するために普通処理される。好ましい実施態様において、前記クレーがこのような脱インキ処理方法に添加されることが好適である。
【0026】
本発明によれば、前記クレーは乾燥セルロース懸濁液に対し乾燥クレーとして計算して、約0.01重量%から約5重量%まで、好ましくは約0.05重量%から約2重量%までの量でセルロース懸濁液に添加されることが好適である。
【0027】
また、本発明はセルロース製品、例えば、パルプ及び紙の製造方法に関するものであり、この方法は懸濁液に3R2スタッキングを有するクレー及び必要により一種以上の脱水兼歩留まり助剤を添加することを含む。好ましい実施態様において、前記脱水兼歩留り助剤は少なくとも一種のカチオン性ポリマーを含む。別の好ましい実施態様において、この脱水兼歩留り助剤はカチオン性ポリマー及びアニオン性材料を含む。好適なアニオン性材料の例として、アニオン性微粒状材料、例えば、アニオン性の無機粒子及び有機粒子、並びにアニオン性有機ポリマー、例えば、アニオン性ビニル付加ポリマー、例えば、アニオン性のアクリルアミドをベースとするポリマーが挙げられる。前記クレー及び脱水兼歩留り助剤が紙の製造方法に使用されることが好ましい。
【0028】
本明細書に使用される“脱水兼歩留り助剤”という用語は、水性セルロース懸濁液に添加される場合に、成分を添加しない場合に得られるよりも良好な脱水及び/又は歩留りを生じる成分(薬剤、添加剤)を表す。
【0029】
本明細書に使用される“カチオン性ポリマー”という用語は、一つ以上のカチオン性基、好ましくは総合のカチオン電荷を有する有機ポリマーを表す。このカチオン性ポリマーはまたアニオン性基を含んでもよく、このようなポリマーはまた両性ポリマーと普通称される。
【0030】
本発明のカチオン性ポリマーは天然源及び合成源に由来し得る。天然源に由来する好適なカチオン性ポリマーの例として、多糖、例えば、澱粉、グアーガム、セルロース、キチン、キトサン、グリカン、ガラクタン、グルカン、キサンタンガム、ペクチン、マンナン、デキストリン、好ましくは澱粉及びグアーガムが挙げられる。好適な澱粉の例として、ジャガイモ、トウモロコシ、小麦、タピオカ、米、ワックス状トウモロコシ、大麦等が挙げられる。好適な合成のカチオン性ポリマーの例として、鎖成長ポリマー、例えば、アクリレートをベースとするポリマー、アクリルアミドをベースとするポリマー及びビニルアミドをベースとするポリマーのようなビニル付加ポリマー、並びに段階成長ポリマー、例えば、ポリウレタンが挙げられる。前記カチオン性ポリマーは多糖、例えば、澱粉、及びビニル付加ポリマー、例えば、アクリルアミドをベースとするポリマー、並びにこれらの混合物から選ばれることが好適である。
【0031】
前記カチオン性ポリマー、特にカチオン性の多糖及びビニル付加ポリマーはまたポリマー主鎖中に存在し得る芳香族基を含んでもよく、又は、好ましくは、芳香族基がポリマー主鎖に結合され、もしくはポリマー主鎖から延びるペンダント基であってもよく、又はポリマー主鎖に結合され、もしくはポリマー主鎖から延びるペンダント基中に存在し得る。好適な芳香族基の例として、アリール基、アラルキル基及びアルカリール基、例えば、フェニル、フェニレン、ナフチル、フェニレン、キシリレン、ベンジル及びフェニルエチル;窒素含有芳香族(アリール)基、例えば、ピリジニウム及びキノリニウムだけでなく、これらの基の誘導体、好ましくはベンジルが挙げられる。本発明に従って使用し得る芳香族基を有する好適なカチオン性有機ポリマーの例として、国際特許出願公開番号WO 99/55964、WO 99/55965、WO 99/67310及びWO 02/12626(これらは参考として本明細書に含まれる)に記載されたものが挙げられる。カチオン性ポリマーだけでなく、カチオン性ポリマーを調製するのに使用されるモノマー中に存在し得るカチオンに荷電された基の例として、四級アンモニウム基、三級アミノ基及びこれらの酸付加塩が挙げられる。
【0032】
本明細書に使用される“鎖成長ポリマー”という用語は、鎖成長重合により得られたポリマーを表し、また夫々連鎖反応ポリマー及び連鎖反応重合と称される。好適なカチオン性鎖成長ポリマーの例として、ビニル基又はエチレン性不飽和結合を有する一種以上のモノマーの重合により調製されたビニル付加ポリマー、例えば、カチオン性モノマー又はカチオン性モノマーを含むモノマー混合物を重合することにより得られたポリマーが挙げられる。
【0033】
好適なカチオン性モノマーの例として、ジアリルジアルキルアンモニウムハライド、例えば、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアルキルアミノアルキルアクリレート、ジアルキルアミノアルキルメタクリレートの酸付加塩及び四級塩、例えば、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、及びジメチルアミノヒドロキシプロピルアクリレート、ジメチルアミノヒドロキシプロピルメタクリレート、並びにジアルキルアミノアルキルアクリルアミド、ジアルキルアミノアルキルメタクリルアミド、例えば、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、ジエチルアミノエチルアクリルアミド、ジエチルアミノエチルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、及びジエチルアミノプロピルアクリルアミド、ジエチルアミノプロピルメタクリルアミドを酸、例えば、有機酸及び無機酸、アルキルハライド、例えば、塩化メチル、及びアリールハライド、例えば、塩化ベンジルで処理することにより得られた四級モノマーが挙げられる。好ましいカチオン性モノマーとして、ジメチルアミノエチルアクリレート塩化ベンジル四級塩及びジメチルアミノエチルメタクリレート塩化ベンジル四級塩が挙げられる。カチオン性モノマーは一種以上のノニオン性モノマー及び/又はアニオン性モノマーと共重合し得る。好適な共重合性ノニオン性モノマーとして、アクリルアミド、メタクリルアミド;N-アルキルアクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミド、N,N-ジアルキルアクリルアミド、N,N-ジアルキルメタクリルアミド及びジアルキルアミノアルキルアクリルアミド、ジアルキルアミノアルキルメタクリルアミドのようなアクリルアミドをベースとするモノマー;ジアルキルアミノアルキルアクリレート、ジアルキルアミノアルキルメタクリレートのようなアクリレートをベースとするモノマー、並びにビニルアミドが挙げられる。好適な共重合性アニオン性モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸及び種々のスルホン化ビニル性モノマー、例えば、スチレンスルホネートが挙げられる。好ましい共重合性モノマーとして、アクリルアミド及びメタクリルアミド、即ち、(メタ)アクリルアミドが挙げられ、カチオン性又は両性有機ポリマーはアクリルアミドをベースとするポリマーであることが好ましい。
【0034】
このカチオン性ポリマーの重量平均分子量は、とりわけ、使用されるポリマーの型に応じて広い制限内で変化でき、通常それは少なくとも約5,000、しばしば少なくとも10,000である。更にしばしば、それは150,000以上、通常500,000以上、好適には約700,000以上、好ましくは約1,000,000以上、最も好ましくは約2,000,000以上である。この上限は重要ではなく、それは約200,000,000、通常150,000,000、好適には100,000,000であってもよい。
【0035】
本発明に従って使用し得るアニオン性無機微粒状材料として、アニオン性のシリカをベースとする粒子及びスメクタイト型のアニオン性クレーが挙げられる。このアニオン性無機粒子は粒子サイズのコロイド範囲であることが好ましい。アニオン性のシリカをベースとする粒子、即ち、SiO2又はケイ酸をベースとする粒子が使用されることが好ましく、このような粒子は通常水性コロイド分散液、所謂ゾルの形態で供給される。好適なシリカをベースとする粒子の例として、コロイドシリカ及びホモ重合又は共重合された、異なる型のポリケイ酸が挙げられる。このシリカをベースとするゾルは変性でき、その他の元素、例えば、アルミニウム、ホウ素、窒素、ジルコニウム、ガリウム、チタン等を含み、これらは水相及び/又はシリカをベースとする粒子中に存在し得る。この型の好適なシリカをベースとする粒子として、コロイドのアルミニウム変性シリカ及びケイ酸アルミニウムが挙げられる。また、このような好適なシリカをベースとする粒子の混合物が使用し得る。好適なアニオン性のシリカをベースとする粒子を含む脱水兼歩留り助剤が米国特許第4,388,150号、同第4,927,498号、同第4,954,220号、同第4,961,825号、同第4,980,025号、同第5,127,994号、同第5,176,891号、同第5,368,833号、同第5,447,604号、同第5,470,435号、同第5,543,014号、同第5,571,494号、同第5,573,674号、同第5,584,966号、同第5,603,805号、同第5,688,482号、及び同第5,707,493号(これらが参考として本明細書に含まれる)に開示されたものが挙げられる。
【0036】
アニオン性のシリカをベースとする粒子は好適には約100nm以下、好ましくは約20nm以下、更に好ましくは約1nmから約10nmまでの範囲の平均粒子サイズを有する。シリカ化学で通常のように、この粒子サイズは一次粒子(これらは凝集されてもよく、又は凝集されなくてもよい)の平均サイズを表す。このシリカをベースとする粒子の比表面積は好適には50m2/g以上、好ましくは100m2/g以上である。一般に、比表面積は約1700m2/gまで、好ましくは1000m2/gまでであってもよい。この比表面積は公知の様式で、例えば、G.W. Sears著Analytical Chemistry 28(1956): 12, 1981-1983及び米国特許第5,176,891号に記載されたようにNaOHによる滴定により測定される。こうして得られた面積は粒子の平均比表面積を表す。
【0037】
本発明の好ましい実施態様によれば、前記アニオン性のシリカをベースとする粒子は50〜1000m2/g、好ましくは100〜950m2/gの範囲内の比表面積を有する。これらの型のシリカをベースとする粒子のゾルはまた、例えば、上記元素のいずれかによる変性を含む。好ましくは、シリカをベースとする粒子は300〜1000m2/g、好適には500〜950m2/g、好ましくは750〜950m2/gの範囲の比表面積を有するシリカをベースとする粒子を含む、8〜50%、好ましくは10〜40%の範囲のS値を有するゾル中に存在し、これらのゾルは上記のように変性し得る。このS値はIler&Dalton著J. Phys. Chem. 60(1956), 955-957により記載されたように測定され、計算し得る。このS値は凝集又はミクロゲル形成の程度を示し、低いS値は高度の凝集を示す。
【0038】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、前記シリカをベースとする粒子が好適には約1000m2/g以上の、高い比表面積を有する、ホモ重合又は共重合された、ポリケイ酸から選ばれる。この比表面積は1000〜1700m2/g、好ましくは1050〜1600m2/gの範囲内であってもよい。変性又は共重合されたポリケイ酸のゾルは上記のようなその他の元素を含み得る。当業界では、ポリケイ酸はまたポリマーケイ酸、ポリケイ酸ミクロゲル、ポリシリケート及びポリシリケートミクロゲルと称され、これらの全てが本明細書に使用されるポリケイ酸という用語により包含される。この型のアルミニウム含有化合物はまた普通ポリアルミノシリケート及びポリアルミノシリケートミクロゲルと称され、これらの両方が本明細書に使用されるコロイドのアルミニウム変性シリカ及びケイ酸アルミニウムという用語により包含される。
【0039】
本発明の更に別の好ましい実施態様によれば、前記脱水兼歩留り助剤はスメクタイト型のアニオン性クレーを含む。好適なスメクタイトクレーの例として、天然クレー、例えば、モンモリロナイト/ベントナイト、ヘクトライト、ベイデライト、ノントロナイト及びサポナイトだけでなく、合成のスメクタイトのようなクレー、例えば、ラポナイト等、好ましくはベントナイト、特に膨潤後に好ましくは200〜800m2/gの表面積を有するこのようなベントナイトが挙げられる。好適なアニオン性クレーとして、米国特許第4,753,710号、同第5,071,512号及び同第5,607,552号(これらは参考として本明細書に含まれる)に開示されたものが挙げられる。また、アニオン性のシリカをベースとする粒子及びスメクタイト型のアニオン性クレーの混合物が使用し得る。
【0040】
本発明のアニオン性有機ポリマーは一つ以上の負に荷電された(アニオン性)基を含む。このポリマーだけでなく、このポリマーを調製するのに使用されたモノマー中に存在し得る基の例として、水に溶解又は分散された場合にアニオン電荷を有する基及びアニオン電荷を有する酸基(これらの基が本明細書にアニオン性基と総称される)、例えば、ホスフェート基、ホスホネート基、スルフェート基、スルホン酸基、スルホネート基、カルボン酸基、カルボキシレート基、アルコキシド基及びフェノール基、即ち、ヒドロキシ置換フェニル及びナフチルが挙げられる。アニオン電荷を有する基は通常アルカリ金属、アルカリ土類又はアンモニアの塩である。
【0041】
本発明に従って使用し得るアニオン性有機粒子として、架橋されたアニオン性ビニル付加ポリマー、好適には通常アクリルアミド、メタクリルアミド、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート等のようなノニオン性モノマーと共重合された、アクリル酸、メタクリル酸及びスルホン化又はホスホン化ビニル付加モノマーのようなアニオン性モノマーを含むコポリマーが挙げられる。有益なアニオン性有機粒子として、またアニオン性縮合ポリマー、例えば、メラミン-スルホン酸ゾルが挙げられる。
【0042】
前記脱水兼歩留り系の一部を形成し得る更なるアニオン性ポリマーとして、アニオン性の段階成長ポリマー、鎖成長ポリマー、多糖、天然産芳香族ポリマー及びこれらの変性物が挙げられる。本明細書に使用される“段階成長ポリマー”という用語は、段階成長重合により得られたポリマーを表し、また段階反応ポリマー及び段階反応重合と夫々称される。このアニオン性有機ポリマーは線状、分岐又は架橋であってもよい。前記アニオン性ポリマーは水溶性又は水分散性であることが好ましい。好ましい実施態様において、前記アニオン性有機ポリマーはまた一つ以上の芳香族基を含む。前記アニオン性ポリマーの芳香族基はポリマー主鎖又はポリマー主鎖に結合されている置換基中に存在し得る。好適な芳香族基の例として、アリール基、アラルキル基及びアルカリール基並びにこれらの誘導体、例えば、フェニル、トリル、ナフチル、フェニレン、キシリレン、ベンジル、フェニルエチル及びこれらの基の誘導体が挙げられる。
【0043】
好適なアニオン性鎖成長ポリマーの例として、通常アクリルアミド、アルキルアクリレート等のようなノニオン性モノマーと共重合された、アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸及び以上のいずれかの塩、ジ酸の酸無水物のようなカルボキシレート基を有するアニオン性モノマー、及びスルホン化ビニル付加モノマー、例えば、スルホン化スチレンを含むビニル付加ポリマー、例えば、米国特許第5,098,520号及び同第5,185,062号(これらの教示が参考として本明細書に含まれる)に開示されたものが挙げられる。
【0044】
好適なアニオン性芳香族段階成長ポリマーの例として、縮合ポリマー、即ち、段階成長縮合重合により得られたポリマー、例えば、アニオン性のポリウレタン及びホルムアルデヒドの如きアルデヒドと一つ以上のアニオン性基を含む一種以上の(芳香族)化合物、及び縮合重合に有益な任意のその他のコモノマー、例えば、尿素及びメラミンとの縮合物が挙げられる。本発明の好ましいアニオン性段階成長ポリマーの例として、アニオン性のベンゼンをベースとする縮合ポリマー及びナフタレンをベースとする縮合ポリマー、好ましくはナフタレン-スルホン酸をベースとする縮合ポリマー及びナフタレン-スルホネートをベースとする縮合ポリマーが挙げられる。
【0045】
好適なアニオン性多糖の例として、澱粉、グアーガム、セルロース、キチン、キトサン、グリカン、ガラクタン、グルカン、キサンタンガム、ペクチン、マンナン、デキストリン、好ましくは澱粉、グアーガム及びセルロース誘導体が挙げられ、好適な澱粉として、ジャガイモ、トウモロコシ、小麦、タピオカ、米、ワックス状トウモロコシ及び大麦、好ましくはジャガイモが挙げられる。
【0046】
好適なアニオン性有機ポリマーの例として、米国特許第4,070,236号及び同第5,755,930号、並びに国際特許出願公開番号WO 95/21295、WO 95/21296、WO 99/67310、WO 00/49227及びWO 02/12626(これらが参考として本明細書に含まれる)に記載されたものが挙げられる。
【0047】
芳香族基を有するアニオン性ポリマーの重量平均分子量は、とりわけ、使用されるポリマーの型に応じて広い制限内で変化でき、通常それは少なくとも約500、好適には約2,000以上、好ましくは約5,000以上である。その上限は重要ではなく、それは約200,000,000、通常約150,000,000、好適には約100,000,000、好ましくは約10,000,000であってもよい。
【0048】
上記カチオン性ポリマー、アニオン性の無機粒子及び有機粒子並びにアニオン性有機ポリマーに加えて、前記脱水兼歩留り助剤はまた低分子量の、高度にカチオンに荷電された、有機ポリマー及び/又は無機アルミニウム化合物を含み得る。
【0049】
本発明の一つの好ましい実施態様によれば、前記脱水兼歩留まり助剤はカチオン性ポリマー及びアニオン性無機微粒状材料、好適にはアニオン性のシリカをベースとする粒子又はスメクタイト型のアニオン性クレーを含む。本発明の別の好ましい実施態様によれば、前記脱水兼歩留り助剤はカチオン性ポリマー及びアニオン性ビニル付加ポリマー、好適にはアニオン性のアクリルアミドをベースとするポリマーを含む。本発明の更に別の好ましい実施態様によれば、前記脱水兼歩留り助剤は芳香族基を含むカチオン性ポリマーを含む。本発明の更に別の好ましい実施態様によれば、前記脱水兼歩留り助剤は芳香族基を含むカチオン性ポリマー及び芳香族基を含むアニオン性ポリマーを含む。
【0050】
前記脱水兼歩留り助剤の成分は通常の様式であらゆる順序でセルロース懸濁液に添加し得る。アニオン性微粒状材料を使用する場合、たとえ、添加の反対の順序が使用されるとしても、微粒状材料を添加する前にカチオン性ポリマーを懸濁液に添加することが好ましい。カチオン性ポリマーをせん断段階(これはポンプ輸送、混合、洗浄等から選ばれる)の前に添加し、アニオン性化合物をそのせん断段階後に添加することが更に好ましい。LMWカチオン性有機ポリマー及び/又はアルミニウム化合物を使用する場合、このような成分はカチオン性ポリマー及びアニオン性成分(使用される場合)を導入する前に懸濁液に導入されることが好ましい。また、このLMWカチオン性有機ポリマー及びカチオン性ポリマーは、例えば、米国特許第5,858,174号(これは参考として本明細書に含まれる)に開示されたように、実質的に同時に、別々に、又は混合して懸濁液に導入し得る。
【0051】
本発明のクレーが脱水兼歩留り助剤と一緒に使用される場合、このクレーは脱水兼歩留り助剤の添加の前又は後に懸濁液に添加し得る。しかしながら、カチオン性クレーは脱水兼歩留り助剤及びその他の性能薬品の添加の前に添加されることが好ましい。好適には、このクレーが濃厚紙料、又は希薄紙料に添加され、前記脱水兼歩留り助剤が希薄紙料に添加される。このクレーはまたリサイクルされた白水に添加し得る。2種以上の脱水兼歩留り助剤が使用され、即ち、カチオン性ポリマーがアニオン性材料、例えば、シリカをベースとする粒子、又はアニオン性有機ポリマーと一緒に使用される場合、クレーは脱水兼歩留り助剤の添加の前、後又は間に、或いは脱水兼歩留り助剤のいずれかと一緒に懸濁液(紙料)に添加されてもよい。このクレーはまたその方法における幾つかの位置で、例えば、濃厚紙料に、そして脱水兼歩留り助剤の添加の前に再度希薄紙料に添加されてもよい。
【0052】
本発明の一種以上の脱水兼歩留まり助剤は、とりわけ、成分の型及び数、セルロース懸濁液の型、塩含量、塩の型、てん料含量、てん料の型、添加の時点、白水密閉の程度等に応じて広い制限内で変化し得る量で脱水すべき紙料に添加し得る。一般に、一種以上の歩留り兼脱水助剤は成分を添加しない場合に得られるよりも良好な脱水及び/又は歩留りを生じる量で添加される。前記カチオン性ポリマーは通常乾燥セルロース懸濁物を基準として、少なくとも約0.001重量%、しばしば少なくとも約0.005重量%の量で添加され、その上限は通常約3重量%、好適には約1.5重量%である。このカチオン性ポリマーの普通に適用される添加量は約0.01重量%から約0.5重量%までである。アニオン性材料、例えば、アニオン性のシリカをベースとする粒子、スメクタイト型のアニオン性クレー及びアニオン性有機ポリマーは、通常乾燥セルロース懸濁物を基準として、少なくとも約0.001重量%、しばしば少なくとも約0.005重量%の量で添加され、その上限は通常約1.0重量%、好適には約0.6重量%である。
【0053】
その方法にLMWカチオン性有機ポリマーを使用する場合、それらは乾燥セルロース懸濁物を基準として、少なくとも約0.001重量%の量で添加し得る。好適には、その量は約0.07%から約0.5%までの範囲、好ましくは約0.1%から約0.35%までの範囲である。その方法にアルミニウム化合物を使用する場合、脱水すべき紙料に導入される合計量は使用されるアルミニウム化合物の型及びそれから所望されるその他の効果に依存する。例えば、アルミニウム化合物をロジンをベースとするサイジング剤のための沈殿剤として利用することが当業界で公知である。添加される合計量は乾燥セルロース懸濁物を基準としてAl2O3として計算して、通常少なくとも約0.05重量%である。好適には、その量は約0.5%から約3.0%までの範囲、好ましくは約0.1%から約2.0%までの範囲である。
【0054】
製紙に通常である更なる添加剤、例えば、乾燥強度増強剤、湿潤強度増強剤、蛍光増白剤、染料、ロジンをベースとするサイジング剤及びセルロース反応性サイジング剤のようなサイジング剤、例えば、ケテン二量体及び無水コハク酸等が勿論本発明の一種以上の添加剤と組み合わせて使用し得る。前記セルロース懸濁液、又は紙料はまた通常の型の無機てん料、例えば、カオリン、チャイナクレー、二酸化チタン、石膏、タルク並びに天然及び合成の炭酸カルシウム、例えば、チョーク、粉砕大理石及び沈降炭酸カルシウムを含み得る。
【0055】
更に、その方法はまた高導電率を有するセルロース懸濁液からの紙の製造に有益であり得る。このような場合、ワイヤ上で脱水される懸濁液の導電率は通常少なくとも1.0mS/cm、好適には少なくとも2.0mS/cm、好ましくは少なくとも3.5mS/cmである。導電率は通常の装置、例えば、クリスチャン・バーナーにより供給されるWTW LF 539装置により測定し得る。上記値は好適には抄紙機のヘッドボックスに供給され、又はその中に存在するセルロース懸濁液の導電率を測定することにより、又は懸濁液を脱水することにより得られた白水の導電率を測定することにより測定される。
【0056】
更に、本発明は白水が徹底的に、即ち、高度の白水密閉でリサイクル又は循環される製紙方法、例えば、生水0〜30トンが製造される乾燥紙1トン当り使用され、通常20トン以下、好適には15トン以下、好ましくは10トン以下、特に5トン以下の生水が紙1トン当り使用される製紙方法を含む。
【0057】
本発明が以下の実施例で更に説明されるが、これらは本発明を限定することを目的とするものではない。部数および%は、特にことわらない限り、夫々重量部及び重量%に関する。
【実施例1】
【0058】
前記3R2スタッキングを有するAl-Mgクレー(CC-14、アクゾ・ノーブル・キャタリストB.V.)をピッチ吸着に関して市販のタルク(オムヤからのフィンタルクP05)と比較した。無機粉末のピッチ吸着の評価の方法はTappi(1977年7月、60巻、7号、144-146頁)にD.A. Hughesにより概説された操作の変化であった。最初に、ケン化が生じるまで水酸化カリウム(1M)をガムロジン0.65g及びオレイン酸0.35gの混合物に添加することにより、合成ピッチのサンプルを調製した。続いて変性エタノールを添加して合成ピッチを溶解した。
【0059】
ピッチ吸着試験操作:蒸留水35mlを最初にガラス遠心分離管に添加し、続いて合成ピッチ溶液1ml及び3R2スタッキングを有するクレー10ml(乾燥含量2.5%)を添加した。合成ピッチスラリーのpHを硫酸で6.5に調節した。続いてその混合物を2分間撹拌し、4500rpmで20分間にわたって遠心分離した。その後に上澄みを注ぎ出し、捨て、管を60℃で一夜乾燥させた。乾燥後、クロロホルム-無水酢酸(1:1)試薬10mlを管に添加し、撹拌して吸着されたピッチを放出した。次いで管を20分間にわたって遠心分離して、透明な試薬が管の上部に残ることを行なった。その後に試薬を小ビーカーに注ぎ、濃硫酸10滴を添加した。4分の期間後に、液体を400nmにセットしたUV-visスペクトロフォトメーターで測定し、それにより吸収値を既知の量のピッチの吸収値と比較した。同様の試験をまたフィンタルクP05のサンプルについて行なった。ピッチ吸着結果を表1に要約し、表中、“ピッチ添加”は吸着剤1グラム当りに添加されたピッチの量(mg)を表し、“ピッチ吸着”は吸着剤;タルク又はクレー1グラム当りに吸着されたピッチの量(mg)を表す。
【0060】
【表1】

【0061】
表1により示されるように、3R2スタッキングを有するクレーはタルクと較べて有意に改良された吸着能を有する。
【実施例2】
【0062】
この実施例では、前記3R1スタッキングを有するAl-Mgカチオン性クレー(CC-8、スード・ケミイ)のピッチ吸着特性を前記3R2スタッキングを有するAl-Mgカチオン性クレー(CC-17、アクゾ・ノーブル・キャタリストB.V.)と比較した。
【0063】
合成ピッチの2種の混合物を調製し、一方は実施例1のオレイン酸及びガムロジンを含み、更に別の合成ピッチ混合物はアビエチン酸を含んでいた。ケン化が生じるまで、アビエチン酸1g及び1Mの水酸化カリウムを混合することにより、そのアビエチン酸含有ピッチ(ピッチ番号2)を調製した。変性エタノール(250ml)を添加して合成ピッチを溶解した。実施例1に概説したのと同じピッチ吸着試験操作を使用した。結果を表1及び表2に要約する。
【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
表2及び表3により示されるように、3R2スタッキングを有するクレーは3R1スタッキングを有するカチオン性クレーよりもアビエチン酸及びガムロジンだけでなく、オレイン酸混合物を有意に高い程度まで吸着した。
【実施例3】
【0067】
TOC装置(ドーマンDC190)を使用して、前記3R2スタッキングを有するAl-Mgカチオン性クレー(CC-14、アクゾ・ノーブル・キャタリストB.V.)の粘着物(ホットメルト)の吸着をタルク(フィンタルクP05、オムヤ)と比較した。TOC(全有機炭素)を800℃における燃焼により測定し、それにより炭素を二酸化炭素に酸化し、次いでIR分光分析方法により分析した。結果を表4に要約し、表中、“粘着物添加”は吸着剤;クレー又はタルク1グラム当りに添加された粘着物の量(mg)を表し、“粘着物吸着”は吸着剤;タルク又はクレー1グラム当りに吸着された粘着物の量(mg)を表す。
【0068】
【表4】

【実施例4】
【0069】
脱水兼歩留り助剤中の前記3R2スタッキングを有するクレーの混入による脱水性能をアクリビ・ケミコンサルターAB、スウェーデンから入手し得る動的脱水アナライザー(DDA)により評価し、この装置は栓を除去し、真空(0.35バール)を紙料が存在する側と反対であるワイヤのその側に適用する場合に一定容積の紙料をワイヤにより脱水する時間を測定する。1回目の通過保持を濾液、懸濁液を脱水することにより得られた、白水の濁度を比濁計により測定することにより評価した。
【0070】
使用した完成紙料は30g/リットルのコンシステンシー、1500μS/cm付近の導電率及び7のpHを有する新聞紙工場からの脱インキパルプをベースとした。前記3R2スタッキングを有するAl-Mgカチオン性クレー(CC-9、アクゾ・ノーブル・キャタリストB.V.)のサンプルをパルプ懸濁液に添加した。次いで完成紙料をマグネチックスターラーで混合し、紙料及びカチオン性クレーの滞留/接触時間は30分から1時間までであった。その後、完成紙料を水で希釈し(約1:10)、その後にDDA試験を行なった。
【0071】
紙料/完成紙料サンプルを0時にじゃま板付きDDA-ジャーに入れた。次に歩留り/脱水薬品を以下の順序で添加した:i)15秒後に、乾燥パルプ1トン当り0.8kgのポリアクリルアミド(Eka PL 1510)、ii)更に15秒後(開始から30秒後)に、乾燥パルプ1トン当り0.4kgのアニオン性のシリカをベースとする粒子(Eka NP 780)、iii)更に15秒後に、脱水時間を自動的に記録しながらの懸濁液の脱水。
【0072】
脱水試験からの濾液サンプルをピッチ吸着に関して評価した。吸着を濾液の280nmにおけるUV-visスペクトロフォトメーター吸収に相関関係があると推定し、UV-vis吸収の減少をピッチ減少と称した。結果を表5に示す。
【0073】
【表5】

【0074】
表5は懸濁液へのCC-9の添加が脱水時間を減少すること及びCC-9が懸濁液に添加されるにつれて濾液が一層少ないピッチを含むことを示す。
【実施例5】
【0075】
この実施例では、前記3R1スタッキングを有するAl-Mgカチオン性クレー(CC-12)を脱水に関して前記3R2スタッキングを有するAl-Mgカチオン性クレー(CC-18)と比較した。実施例4に記載されたのと同じ完成紙料及び操作を使用した。表6は結果を要約した。
【0076】
【表6】

【0077】
表6から、3R2スタッキングを有するクレーの添加が3R1スタッキングを有するカチオン性クレーと較べて脱水を更に改良することが明らかである。
【実施例6】
【0078】
前記3R2スタッキングを有するAl-Mgカチオン性クレー(CC-22)の脱水増進効果をここで評価した。異なる脱水兼歩留り助剤を使用した以外は、実施例4に記載されたのと同じ完成紙料及び操作を使用した。この実施例では、乾燥パルプ1トン当り0.4kgのパーコール63(CIBAからのカチオン性ポリアクリルアミド)及び乾燥パルプ1トン当り2kgのハイドロコールSW(CIBAからのスメクタイト型のベントナイトクレー)を同様の様式で添加した。
【0079】
【表7】

【0080】
表7は懸濁液へのカチオン性PAM及びベントナイトクレーの添加を含む脱水兼歩留まり助剤の性能が3R2型のAl-Mgカチオン性クレーの添加により改良されることを実証する。
【実施例7】
【0081】
前記3R2スタッキングを有するAl-Mgカチオン性クレー(CC-17、アクゾ・ノーブル・キャタリストB.V.)の感圧接着剤粘着物の吸着を評価し、タルク(フィンタルクP05、オムヤ)と比較した。感圧接着剤粘着物は事務所廃完成紙料中にラベル、テープ、自己シール性封筒及びポスト-イット(登録商標)ノートとして見られる。
【0082】
一面で接着剤で完全に覆われたポスト-イット(登録商標)ノート(Tappi journal 79巻7号、1996年7月)60gを小さい正方形に切断し、24時間にわたって冷水道水1.5リットル中で浸軟した。CaCl2・2H2O、Na2SO4・10H2O及び水道水を含む塩溶液0.5リットルを水-紙混合物に添加して製紙工場条件、例えば、pH及び導電率を模擬した。次いでその混合物を標準パルプ離解機中で30000回転にわたって離解した。25μmより大きい繊維及び微細分を濾過により除去した。濾液を水浴中で60℃に加熱した。そのpHは6.8から7.4の間で変化した。濾液サンプルに、3R2スタッキングを有するAl-Mgクレー及びタルク(P05)を添加した。CC-17及びタルクの添加後に、濾液をマグネチックスターラーで混合し、CC-17及びタルクの滞留時間は60分であった。吸着試験を遠心分離により4500rpmで30分間行なった。次いで上澄みを注ぎ出し、TOCを測定した。表8は感圧接着剤の吸着の結果を示す。
【0083】
【表8】

【0084】
表8により示されるように、感圧接着剤の吸着はタルクと較べてCC-17を添加する場合に有意に改良される。
【実施例8】
【0085】
この実施例では、サイジング性能を評価した。液体包装板紙工場からの完成紙料を夫々前記3R2スタッキングを有するAl-Mgカチオン性クレー(CC-22、アクゾ・ノーブル・キャタリストB.V.)及びタルク(フィンタルクP05、オムヤ)で処理した。サイズ及び歩留り薬品を添加し、ハンドシートをつくった(SCAN-C 26:76)。シートのサイジングをCobb 60値(SCAN-P 12:64)として測定した。
【0086】
使用した完成紙料は漂白された針葉樹パルプ及び広葉樹パルプを含む、LPB工場からの濃厚紙料であった。この完成紙料を撹拌し、50℃に加熱した。薬品を添加し、完成紙料を30分間処理した。次いでその濃厚紙料を水道水で5g/Lのコンシステンシーに希釈した。この完成紙料は8のpH及び0.7mS/cmの導電率を有していた。シート製造の前に、乾燥パルプ1トン当り0.3kgのAKD(キーダイムC223、エカ・ケミカルズ)、乾燥パルプ1トン当り8kgのカチオン性澱粉(パールボンド970)及び乾燥パルプ1トン当り0.5kgのシリカをベースとする粒子(Eka NP 590、エカ・ケミカルズ)を添加した。シートは約73g/m2の基本重量を有していた。表9は液体包装板紙完成紙料への異なる量のタルク及びCC-22の添加により得られたサイジング結果を示す。
【0087】
【表9】

【0088】
CC-22をタルクに対し使用した場合に、サイジング性能が改良した。
【実施例9】
【0089】
サイジング性能を前記3R2スタッキングを有する高添加のAl-Mgカチオン性クレー(CC-22、アクゾ・ノーブル・キャタリストB.V.)及びタルク(フィンタルクP05、オムヤ)で夫々評価した。ハンドシートをつくり、サイジングをCobb 60(SCAN-P 12:64)値として測定した。
【0090】
使用した完成紙料は約4%のコンシステンシーで過酸化水素漂白された針葉樹硫酸パルプ及び広葉樹硫酸パルプを含むLPB工場からの濃厚紙料であった。この完成紙料を撹拌し、50℃に加熱した。カチオン性クレー又はタルクを添加し、完成紙料を20分間処理した。次いで濃厚紙料を漂白濾液で約3.9g/lのコンシステンシーに希釈した。その完成紙料に、AKD、1.6kg/tのロジンサイズ、1.6kg/tのミョウバン、5.0kg/tのカチオン性澱粉及び0.35kg/tのシリカをベースとする粒子(Eka NP 590、エカ・ケミカルズ)を添加し、その後にハンドシートをつくった(ラピッド-ケテン・フォーマー)。これらのシートは約100g/m2の基本重量を有していた。表10は液体包装板紙完成紙料をサイジングすることにより得られたサイジング結果を要約した。
【0091】
【表10】

【0092】
表10はタルクに較べてCC-22を使用して、サイジング性能が改良されたこと(低いCobb 60値)を示す。
【実施例10】
【0093】
この実施例をパルプ工場で行なった。パルプ機械の脱水ヘッドボックスからのケミカルパルプを前記3R2スタッキングを有するAl-Mgカチオン性クレー(CC-22、アクゾ・ノーブル・キャタリストB.V.)で処理した。次いでパルプ濾液の濁度を測定した(表11を参照のこと)。
【0094】
使用したパルプは約1.2%のコンシステンシーの漂白ユーカリ類繊維懸濁液であった。このパルプを撹拌し、60℃で加熱した。カチオン性クレーを添加し、パルプを30分間処理した。次いでパルプを200メッシュワイヤ(76.2μmの孔直径)を有するブリット-ジャーで濾過した。濾液をハッチ2100P濁度計で濁度について分析した。表11は濾液の濁度に関する結果を示す。
【0095】
【表11】

【0096】
ケミカルパルプをCC-22で処理した場合、濾液の濁度が改良した(減少した)。
【実施例11】
【0097】
この実施例をTMPパルプ工場で行なった。サーモメカニカルパルプ(TMP)を過酸化水素漂白後に脱水又は洗浄した。濾液はしばしば漂白濾液と称される。TMP漂白濾液水を撹拌し、50℃で加熱した。TMP漂白濾液水を前記3R2スタッキングを有するAl-Mgカチオン性クレー(CC-22、アクゾ・ノーブル・キャタリストB.V.)で30分間処理した。この水を遠心分離し、700nm波長でラサ10スペクトロフォトメーター中で吸収について分析することにより、透明な相を濁度について測定した。
【0098】
【表12】

【0099】
TMP漂白水をCC-22で処理した場合、透明な相中の吸収は改良した(減少した)。
【実施例12】
【0100】
この実施例を脱インキパルプ(DIP)工場で行なった。DIPプラントからのパルプを前記3R2スタッキングを有するAl-Mgカチオン性クレー(CC-22、アクゾ・ノーブル・キャタリストB.V.)で処理した。次いでパルプ濾液の濁度を測定した(表13を参照のこと)。
【0101】
使用したパルプをDIPプラント中のディスクフィルターとスクリュープレスの間から採取した。パルプは約7%のコンシステンシーを有し、これを水道水で約4.2%に希釈した。このパルプを撹拌し、50℃で加熱した。クレーを添加し、パルプを30分間処理した。次いでパルプをGF/Aガラス繊維フィルター(約2μmの孔直径)で濾過した。濾液をハッチ2100P濁度計中で濁度について分析した。表13は結果を示す。
【0102】
【表13】

【0103】
脱インキパルプを濾過前にCC-22と混合した場合、濾液の濁度が改良した(減少した)。
【実施例13】
【0104】
脱インキパルプ(DIP)工場からのパルプを実施例12と同様の様式で前記3R2スタッキングを有するAl-Mgカチオン性クレー(CC-22、アクゾ・ノーブル・キャタリストB.V.)で処理した。次いでパルプ濾液の濁度を測定し、表14に要約する。
【0105】
【表14】

【0106】
CC-22を濾過の前に脱インキパルプに添加することによりそれを処理した場合に、濾液の濁度が改良する(減少する)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) セルロース繊維、及び任意のてん料を含む水性懸濁液を得、
(ii) 3R2スタッキングを有するクレーを前記懸濁液に添加し、そして
(iii) 得られた懸濁液を脱水することを含むことを特徴とするセルロース製品の製造方法。
【請求項2】
(i) セルロース繊維、及び任意のてん料を含む水性懸濁液を得、
(ii) カチオン性クレーを前記懸濁液に添加し、
(iii) 少なくとも一種のカチオン性ポリマーを含む一種以上の脱水兼歩留まり助剤を前記懸濁液に添加し、そして
(iv) 得られた懸濁液を脱水することをふくむことを特徴とするセルロース製品の製造方法。
【請求項3】
3R2スタッキングを有するクレーを含むことを特徴とするセルロース製品。
【請求項4】
前記セルロース製品が紙である、請求項1又は2記載の方法、又は請求項3記載の製品。
【請求項5】
前記セルロース製品がパルプである、請求項1又は2記載の方法、又は請求項3記載の製品。
【請求項6】
前記クレーがカチオン性である、請求項1、4及び5のいずれか1項記載の方法、又は請求項3から5のいずれか1項記載の製品。
【請求項7】
前記クレーが各層及び中間層を含み、前記中間層がアニオンを含み、かつ前記各層は前記各層の総電荷がカチオン性であるような比で2価の金属原子及び3価の金属原子を含む、請求項1、2及び4から6のいずれか1項記載の方法、又は請求項3から6のいずれか1項記載の製品。
【請求項8】
前記クレーがマグネシウムである2価の金属原子(M2+)及びアルミニウムである3価の金属イオン(M3+)を含む、請求項1、2及び4から7のいずれか1項記載の方法、又は請求項3から7のいずれか1項記載の製品。
【請求項9】
前記クレーがNO3-、OH-、Cl-、Br-、I-、CO32-、SO42-、SiO32-、CrO42-、BO32-、MnO4-、HGaO32-、HVO4-、ClO4-、ピラリングアニオンもしくはインターカレーティングアニオン、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン又はこれらの混合物を含むアニオンを含む中間層を有する、請求項1、2及び4から8のいずれか1項記載の方法、又は請求項3から8のいずれか1項記載の製品。
【請求項10】
前記クレーが水酸化物、炭酸塩又はこれらの混合物を含む中間層を有する、請求項1、2及び4から9のいずれか1項記載の方法、又は請求項3から9のいずれか1項記載の製品。
【請求項11】
前記クレーが一般式:
〔Mm2+Mn3+(OH)2m+2n〕Xn/zZ- bH2O
(式中、m及びnは、互いに独立に、m/nが1から10までの範囲であるような値を有する整数であり、bは0から10までの範囲の値を有する整数であり、zは1から10までの整数であり、Xn/zZ-はzが1から10までの整数であるアニオンであり、M2+はBe、Mg、Cu、Ni、Co、Zn、Fe、Mn、Cd、Ca及びこれらの混合物からなる群から選ばれた2価の金属原子であり、かつM3+はAl、Ga、Ni、Co、Fe、Mn、Cr、V、Ti、In及びこれらの混合物からなる群から選ばれた3価の金属原子である)
により特徴づけられる、請求項1、2及び4から10までのいずれか1項記載の方法、又は請求項3から10のいずれか1項記載の製品。
【請求項12】
前記クレーがハイドロタルサイト、マナセアイト、パイロオーロ石、ショグレン石、スティチタイト、バーバートン石、タコバイト、リーブス石、デゾーテルス石、モトコーリアイト、ウェームランドアイト、メイキセネライト、コーリング石、クロロマガルマイト、カルボイダイト、ホネサイト、ウッドワード石、イオワ鉱、ハイドロホネス石、マウントケイサイト又はこれらの混合物である、請求項1、2及び4から11のいずれか1項記載の方法、又は請求項3から11のいずれか1項記載の製品。
【請求項13】
前記クレーがハイドロタルサイトである、請求項1、2及び4から12のいずれか1項記載の方法、又は請求項3から12のいずれか1項記載の製品。
【請求項14】
一種以上の脱水兼歩留まり助剤を懸濁液に添加することを更に含む、請求項1及び4から13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記脱水兼歩留り助剤が少なくとも一種のカチオン性ポリマーを含む、請求項15記載の方法。
【請求項16】
前記脱水兼歩留り助剤がカチオン性ポリマー及びアニオン性材料を含む、請求項2、14及び15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記脱水兼歩留り助剤がカチオン性ポリマー及びアニオン性のシリカをベースとする粒子を含む、請求項2及び14から16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記脱水兼歩留り助剤がカチオン性ポリマー及び100m2/g以上の比表面積を有するアニオン性のシリカをベースとする粒子を含む、請求項2及び14から17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記脱水兼歩留り助剤がカチオン性ポリマー及び8〜50%の範囲のS値を有するゾル中に存在するアニオン性のシリカをベースとする粒子を含む、請求項2及び14から18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記脱水兼歩留り助剤がカチオン性ポリマー及びスメクタイト型のアニオン性クレーを含む、請求項2及び14から19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記脱水兼歩留り助剤がカチオン性ポリマー及びベントナイトを含む、請求項2及び14から20のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
前記脱水兼歩留り助剤がカチオン性ポリマー及びアニオン性有機ポリマーを含む、請求項2及び14から21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
前記カチオン性ポリマーがカチオン性澱粉又はカチオン性のアクリルアミドをベースとするポリマーである、請求項2及び14から22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
前記カチオン性ポリマーが一つ以上の芳香族基を含む、請求項2及び14から23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記カチオン性ポリマーが乾燥セルロース懸濁物を基準として少なくとも0.001重量%の量で添加される、請求項2及び14から24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
一種以上のサイジング剤を懸濁液に添加することを更に含む、請求項1、2及び4から24のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
前記クレーが乾燥セルロース懸濁物に対し乾燥クレーとして計算して、少なくとも0.01重量%の量で添加される、請求項1、2及び4から26のいずれか1項記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) セルロース繊維、及び任意のてん料を含む水性懸濁液を得、
(ii) 3R2スタッキングを有するクレーを前記懸濁液に添加し、そして
(iii) 得られた懸濁液を脱水することを含むことを特徴とするセルロース製品の製造方法。
【請求項2】
(i) セルロース繊維、及び任意のてん料を含む水性懸濁液を得、
(ii) カチオン性クレーを前記懸濁液に添加し、そして少なくとも一種のカチオン性ポリマーを含む一種以上の脱水兼歩留まり助剤を懸濁液に添加し、そして
(iii) 得られた懸濁液を脱水することを特徴とするセルロース製品の製造方法。
【請求項3】
3R2スタッキングを有するクレーを含むことを特徴とするセルロース製品。
【請求項4】
前記セルロース製品が紙である、請求項1又は2記載の方法、又は請求項3記載の製品。
【請求項5】
前記セルロース製品がパルプである、請求項1又は2記載の方法、又は請求項3記載の製品。
【請求項6】
前記クレーがカチオン性である、請求項1、4及び5のいずれか1項記載の方法、又は請求項3から5のいずれか1項記載の製品。
【請求項7】
前記クレーが各層及び中間層を含み、前記中間層がアニオンを含み、かつ前記各層は前記各層の総電荷がカチオン性であるような比で2価の金属原子及び3価の金属原子を含む、請求項1、2及び4から6のいずれか1項記載の方法、又は請求項3から6のいずれか1項記載の製品。
【請求項8】
前記クレーがマグネシウムである2価の金属原子(M2+)及びアルミニウムである3価の金属イオン(M3+)を含む、請求項1、2及び4から7のいずれか1項記載の方法、又は請求項3から7のいずれか1項記載の製品。
【請求項9】
前記クレーがNO3-、OH-、Cl-、Br-、I-、CO32-、SO42-、SiO32-、CrO42-、BO32-、MnO4-、HGaO32-、HVO4-、ClO4-、ピラリングアニオンもしくはインターカレーティングアニオン、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン又はこれらの混合物を含むアニオンを含む中間層を有する、請求項1、2及び4から8のいずれか1項記載の方法、又は請求項3から8のいずれか1項記載の製品。
【請求項10】
前記クレーが水酸化物、炭酸塩又はこれらの混合物を含む中間層を有する、請求項1、2及び4から9のいずれか1項記載の方法、又は請求項3から9のいずれか1項記載の製品。
【請求項11】
前記クレーが一般式:
〔Mm2+Mn3+(OH)2m+2n〕Xn/zZ- bH2O
(式中、m及びnは、互いに独立に、m/nが1から10までの範囲であるような値を有する整数であり、bは0から10までの範囲の値を有する整数であり、zは1から10までの整数であり、Xn/zZ-はzが1から10までの整数であるアニオンであり、M2+はBe、Mg、Cu、Ni、Co、Zn、Fe、Mn、Cd、Ca及びこれらの混合物からなる群から選ばれた2価の金属原子であり、かつM3+はAl、Ga、Ni、Co、Fe、Mn、Cr、V、Ti、In及びこれらの混合物からなる群から選ばれた3価の金属原子である)
により特徴づけられる、請求項1、2及び4から10までのいずれか1項記載の方法、又は請求項3から10のいずれか1項記載の製品。
【請求項12】
前記クレーがハイドロタルサイト、マナセアイト、パイロオーロ石、ショグレン石、スティチタイト、バーバートン石、タコバイト、リーブス石、デゾーテルス石、モトコーリアイト、ウェームランドアイト、メイキセネライト、コーリング石、クロロマガルマイト、カルボイダイト、ホネサイト、ウッドワード石、イオワ鉱、ハイドロホネス石、マウントケイサイト又はこれらの混合物である、請求項1、2及び4から11のいずれか1項記載の方法、又は請求項3から11のいずれか1項記載の製品。
【請求項13】
前記クレーがハイドロタルサイトである、請求項1、2及び4から12のいずれか1項記載の方法、又は請求項3から12のいずれか1項記載の製品。
【請求項14】
一種以上の脱水兼歩留まり助剤を懸濁液に添加することを更に含む、請求項1及び4から13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記脱水兼歩留り助剤が少なくとも一種のカチオン性ポリマーを含む、請求項15記載の方法。
【請求項16】
前記脱水兼歩留り助剤がカチオン性ポリマー及びアニオン性材料を含む、請求項2、14及び15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記脱水兼歩留り助剤がカチオン性ポリマー及びアニオン性のシリカをベースとする粒子を含む、請求項2及び14から16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記脱水兼歩留り助剤がカチオン性ポリマー及び100m2/g以上の比表面積を有するアニオン性のシリカをベースとする粒子を含む、請求項2及び14から17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記脱水兼歩留り助剤がカチオン性ポリマー及び8〜50%の範囲のS値を有するゾル中に存在するアニオン性のシリカをベースとする粒子を含む、請求項2及び14から18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記脱水兼歩留り助剤がカチオン性ポリマー及びスメクタイト型のアニオン性クレーを含む、請求項2及び14から19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記脱水兼歩留り助剤がカチオン性ポリマー及びベントナイトを含む、請求項2及び14から20のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
前記脱水兼歩留り助剤がカチオン性ポリマー及びアニオン性有機ポリマーを含む、請求項2及び14から21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
前記カチオン性ポリマーがカチオン性澱粉又はカチオン性のアクリルアミドをベースとするポリマーである、請求項2及び14から22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
前記カチオン性ポリマーが一つ以上の芳香族基を含む、請求項2及び14から23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記カチオン性ポリマーが乾燥セルロース懸濁物を基準として少なくとも0.001重量%の量で添加される、請求項2及び14から24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
一種以上のサイジング剤を懸濁液に添加することを更に含む、請求項1、2及び4から24のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
前記クレーが乾燥セルロース懸濁物に対し乾燥クレーとして計算して、少なくとも0.01重量%の量で添加される、請求項1、2及び4から26のいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2006−506549(P2006−506549A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553339(P2004−553339)
【出願日】平成15年11月7日(2003.11.7)
【国際出願番号】PCT/SE2003/001727
【国際公開番号】WO2004/046464
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(595024087)アクゾ ノーベル エヌ.ブイ. (38)
【Fターム(参考)】