説明

セルロース誘導体の製造方法

【課題】 セルロース誘導体を製造する際、セルロースを溶解させるためには、強酸や強アルカリ下で前処理を行う必要があり、着色したセルロースの脱色、中和、生成した塩の除去等工程が煩雑であり、ビスコース溶液、銅アンモニア溶液等で溶解した場合には、溶剤の安全性や溶媒の除去工程が必要となる等の問題があり、これら工程を必要としないセルロース誘導体の製造方法を提供する。
【解決手段】 セルロース(A)を圧縮性流体(B)中でエーテル化剤(C1)又はエステル化剤(C2)と反応させるセルロース誘導体の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセルロース誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セルロース誘導体は錠剤、顆粒剤、丸薬等の腸溶性コーティング剤、防湿皮膜基剤、徐放性コーティング剤、苦味マスキング剤、化粧品、pH依存性農薬、電子材料用バインダー、建材等に使用されている。セルロース誘導体の製造方法としては、セルロースを溶解させ反応させる方法(特許文献1、特許文献2)や、セルロースを溶解後、貧溶媒中に懸濁して反応させる方法(特許文献3)等が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−339301号公報
【特許文献2】特開平9−296001号公報
【特許文献3】特開平10−152502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、セルロースを溶解させるためには、強酸や強アルカリ下で前処理を行う必要があり、着色したセルロースの脱色、中和、生成した塩の除去等工程が煩雑になる等の課題があった。また、セルロースの前処理なしで溶解可能な溶媒としては、ビスコース溶液、銅アンモニア溶液等が挙げられるが、環境上好ましくない溶媒であり、安全性の低さ及び溶媒の除去工程が必要となる等の課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、セルロース(A)を圧縮性流体(B)中でエーテル化剤(C1)又はエステル化剤(C2)と反応させることを特徴とするセルロース誘導体の製造方法;その製造法で製造されたセルロース誘導体;である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のセルロース誘導体の製造方法は、溶融、溶解が困難なセルロース(A)を圧縮性流体(B)中にて溶融後、反応させてセルロース誘導体を製造するため、セルロースを溶解させるための前処理や、着色したセルロースの脱色、中和、生成した塩の除去等の工程が不要となり、特殊な溶媒等を使用しない。したがって、本発明の製造方法を用いると、効率よく高純度なセルロース誘導体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明はセルロース(A)を圧縮性流体(B)中でエーテル化剤(C1)又はエステル化剤(C2)と反応させるセルロース誘導体の製造する方法である。
【0008】
本発明において、セルロース(A)としては特に制限はなく、水酸基が未置換のセルロースでも置換された水酸基を含むセルロースでも構わない。
【0009】
未置換セルロースとしては、例えば、天然多糖類(例えば木綿、木材由来のパルプ、バクテリアセルロース、リグノセルロース、微生物産生多糖類、キチン、キトサン等)、再生セルロース(例えばセロハン、再生繊維等)等が挙げられる。
【0010】
置換セルロースとしては、セルロースエーテル(例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、等)、セルロースエステル(例えば、セルロースアセテート、セルロースラクテート、セルロースブチレート、セルロースアセトブチレート、セルロースカプロネート等)、セルロースエーテルエステル(例えば、ヒドロキシプロピルセルロースラクテート、ヒドロキシエチルセルロースブチレート等)等が挙げられる。
【0011】
これらのうち取り扱いやすさの観点からセルロースエーテルが好ましく、さらに好ましくはカルボキシメチルセルロースである。また本発明の製造法で得られたセルロース誘導体を原料として、さらにエーテル化反応又はエステル化反応を行い、他のセルロース誘導体を製造することもできる。
【0012】
本発明において、圧縮性流体(B)としては、例えば、二酸化炭素(31.0,7.4)、メタン(−82.5,4.6)、エタン(31.1,4.9)、プロパン(96.7,4.2)、ヘキサン(234.2,3.0)、メタノール(239.4,8.2)、エタノール(240.7,6.1)、水(374.2,22.1)等で、臨界点以上の温度及び圧力における流体が挙げられる。尚、カッコ内は順に臨界温度(℃)及び臨界圧力(MPa)である。超臨界流体は物質に固有の気液臨界温度、圧力を超えた非凝縮性流体と定義される。臨界温度を超えているために分子の熱運動が激しく、かつ密度を理想気体に近い希薄な状態から液体に対応するような高密度な状態まで圧力を変えることによって連続的に変化させることができる。
【0013】
本発明における圧縮性流体(B)は超臨界流体で使用するのが好ましい。
これらのうち取扱い易さの観点等から、二酸化炭素、メタン、エタンが好ましく、さらに好ましくは二酸化炭素である。
重合反応中における(B)の使用量は、セルロースの100重量部に対して10〜1000重量部が好ましく、さらに好ましくは30〜800重量部,特に好ましくは50〜500重量部である。
【0014】
本発明の製造方法における反応は(1)脱水エーテル化反応、(2)付加エーテル化反応、(3)脱水エステル化反応、(4)付加エステル化反応等が挙げられ、各反応において、脱水剤(D)を使用することができる。
【0015】
方法(1)の脱水エーテル化反応について説明する。
セルロースを耐圧容器内に投入後、圧縮性流体(B)中にて脱水エーテル化剤(C1a)を仕込み、撹拌反応させることにより、脱水エーテル化反応を行うことが出来る。
セルロースの投入方法としては、連続滴下、分割、一括等が挙げられ、生産性の観点から一括にて投入する方法が好ましい。
(C1a)の投入方法としては、連続滴下、分割、一括等が挙げられ、反応率制御の観点から連続滴下して投入する方法が好ましい。
例えば、撹拌装置及び測温装置を有し、槽内圧力70MPa、槽内温度290℃まで設定可能な反応槽500にカルボキシメチルセルロースを所定量仕込み、温度150℃、圧力10MPaに調整する。二酸化炭素を所定量仕込み、撹拌下、温度150℃、圧力10MPaを保ちながらエタノール所定量を溶解させた温度150℃、圧力10MPaの超臨界二酸化炭素を滴下する。滴下後、0.5〜5時間エーテル化反応を行う。反応終了後、超臨界二酸化炭素を除去し、カルボキシメチルエチルセルロースを得ることができる。
【0016】
脱水エーテル化剤(C1a)としては、特に限定されないが、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール等)等が挙げられる。目的とするセルロース誘導体にあわせて、選択すればよいが、反応性の観点から、メタノール、エタノールが好ましい。
【0017】
脱水エーテル化反応の際に、必要により反応を促進させる目的で脱水エーテル化触媒(D1)を使用してもよく、無機脱水剤(例えば、シリカゲル、モレキュラーシーブス等)、有機脱水剤(アセタール類、例えば、アセトンジメチルアセタール、アセトンジエチルアセタール等)、有機触媒(例えば、p−ドデシルベンゼンスルホン酸、1−デシル−3−メチルイミダゾリウム四フッ化ホウ素塩等)、無機触媒(例えば、硫酸、イッテルビウムトリフレート、スカンジウムトリフレート等)が挙げられる。反応性の観点からモレキュラーシーブス、アセトンジメチルアセタール、硫酸、1−デシル−3−メチルイミダゾリウム四フッ化ホウ素塩が好ましい。
(D1)を使用する場合の使用量(重量部)は、セルロースの100重量部に対して、10〜1000が好ましく、さらに好ましくは20〜800,特に好ましくは30〜600である。
【0018】
本発明の製造法において、圧縮性流体(B)中に公知の溶剤(例えば、特開2002−284881号公報に記載)等を添加することもでき、例えば、エステル溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、ケトン溶剤(アセトン、メチルエチルケトン等)、アルコール溶剤(メタノール、エタノール等)、アルカン溶剤(ヘキサン、シクロヘキサン)等が挙げられる。
溶剤を使用する場合の使用量(重量部)は、セルロースの100重量部に対して、0.1〜50が好ましく、さらに好ましくは0.5〜20,特に好ましくは1〜10である。
【0019】
本発明の製造法において、圧縮性流体(B)中に公知の界面活性剤(例えば、特表2001−504752号公報、特開平10−102088号公報、特開2004−315675号公報、特表平10−504602号公報等に記載)を添加することができ、例えば、アセチレンアルコール、アセチレンジオール、フルオロ基やポリシロキサン基を有するアクリルポリマー、ポリパーフルオロエーテル(商品名:KRYTOX157FSL、デュポン(株)製)等が挙げられる。
界面活性剤を使用する場合の使用量(重量部)は、生産性の観点からセルロースの100重量部に対して、0.01〜500が好ましく、さらに好ましくは0.05〜300,特に好ましくは0.1〜200である。
【0020】
反応時の温度(℃)は圧縮性流体(B)の超臨界領域温度の範囲であり、分子量制御の観点から二酸化炭素の場合31〜250が好ましく、さらに好ましくは50〜230、特に好ましくは70〜220℃である。
反応時の圧力(MPa)は(B)の超臨界領域圧力の範囲であり、分子量制御の観点から二酸化炭素の場合7〜70が好ましく、さらに好ましくは8〜50,特に好ましくは9〜30である。
反応時間(時間)は反応温度に応じて調整すればよいが、生産性の観点から0.1〜10が好ましく、さらに好ましくは0.3〜8、特に好ましくは0.5〜5である。
【0021】
方法(2)の付加エーテル化反応について説明する。
セルロースを耐圧容器内に投入後、圧縮性流体(B)中にて付加エーテル化剤(C1b)を仕込み、撹拌反応させることにより、付加エーテル化反応を行うことが出来る。
(C1b)の投入方法としては、連続滴下、分割、一括等が挙げられ、反応率制御の観点から連続滴下にて投入する方法が好ましい。
【0022】
付加エーテル化剤(C1b)としては、特に限定されないが、アルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等)等が挙げられる。目的とするセルロース誘導体にあわせて、選択すればよいが、反応性の観点から、エチレンオキシド、プロピレンオキシドが好ましい。
【0023】
付加エーテル化反応の際に、必要により反応を促進させる目的で付加エーテル化反応触媒(D2)(例えば、特開2004−323760号公報に記載のアルカリ性触媒及び酸性触媒等)を使用してもよく、例えば、アルカリ性触媒(水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエチルアミン等)、酸性触媒(三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素エーテラート等)が挙げられる。
【0024】
付加エーテル化反応触媒(D2)を使用する場合の使用量(重量部)は、反応速度と経済性の観点から、セルロース(A)の100重量部に対して、0.001〜1が好ましく、さらに好ましくは0.003〜0.8、特に好ましくは0.005〜0.5である。
【0025】
セルロース(A)の仕込み方法、反応時の温度、圧力、時間、溶剤、界面活性剤の種類及び好ましい範囲については上記の方法(1)と同様である。
【0026】
方法(3)の脱水エステル化反応について説明する。
セルロースを耐圧容器内に投入後、圧縮性流体(B)中にて脱水エステル化剤(C2a)を仕込み、撹拌反応させることにより、脱水エステル化反応を行うことが出来る。
(C2a)の投入方法としては、連続滴下、分割、一括等が挙げられ、反応率制御の観点から連続滴下にて投入する方法が好ましい。
【0027】
脱水エステル化剤(C2a)としては、特に限定されないが、無機酸(例えば、硝酸、硫酸、リン酸等)、有機酸(ギ酸、酢酸等)等が挙げられる。目的とするセルロース誘導体にあわせて、選択すればよいが、反応性の観点から硝酸が好ましい。
【0028】
脱水エステル化反応の際に、必要により反応を促進させる目的で脱水エステル化触媒(D3)を使用してもよい。(D3)の種類及び使用量の好ましい範囲については、方法(1)と同様である。
【0029】
セルロースの仕込み方法、反応時の温度、圧力、時間、溶剤、界面活性剤の種類及び好ましい範囲については上記の方法(1)と同様である。
【0030】
方法(4)の付加エステル化反応についてに説明する。
セルロースを耐圧容器内に投入後、圧縮性流体(B)中にて付加エステル化剤(C2b)を仕込み、撹拌反応させることにより、付加エステル化反応を行うことが出来る。
【0031】
付加エステル化剤(C2b)としては、特に限定されないが、無水有機酸(例えば、無水酢酸、無水マレイン酸等)が挙げられる。目的とするセルロース誘導体にあわせて、選択すればよいが、反応性の観点から無水酢酸が好ましい。
【0032】
セルロース(A)の仕込み方法、付加エステル化剤の投入方法、反応時の温度、圧力、時間、溶剤、界面活性剤の種類及び好ましい範囲については上記の方法(1)と同様である。
【0033】
付加エステル化反応の際に、必要により反応を促進させる目的で付加エステル化触媒(D4)を使用してもよい。(D4)の種類及び使用量の好ましい範囲については、方法(3)と同様である。
【0034】
セルロース(A)の仕込み方法、反応時の温度、圧力、時間、溶剤、界面活性剤の種類及び好ましい範囲については上記の方法(1)と同様である。
【0035】
得られた反応物から反応に使用した圧縮性流体(B)を除去し、新たに(B)を供給することにより未反応原料、触媒等の不純物を抽出除去して、目的のセルロース誘導体を得ることが出来る。
【0036】
また、セルロース誘導体中の塩類及び有機溶剤の含有量は、100ppm以下であり、反応後の超臨界流体での抽出回数を増やすことで50ppm以下にすることも可能である。
【0037】
本発明のセルロース誘導体は、セルロース(A)を圧縮性流体(B)中でエーテル化剤(C1)又はエステル化剤(C2)と反応させるこ製造方法により製造される。
【0038】
本発明の製造法で製造されるセルロース誘導体は特に制限されないが、セルロースエーテル(例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース等)、セルロースエステル(例えば、セルロースアセテート、セルロースラクテート、セルロースブチレート、セルロースアセトブチレート、セルロースカプロネート等)、セルロースエーテルエステル(例えば、ヒドロキシプロピルセルロースラクテート、ヒドロキシエチルセルロースブチレート等)等が挙げられる。
【0039】
本発明のセルロース誘導体の置換度は0〜2.5である。尚、腸溶性セルロースとして使用する際には、カルボキシルメチル基を含有することが好ましく、さらに好ましくはカルボキシメチルエチルセルロースであり、特に好ましくはカルボキシメチル基の置換度を0〜1.0、エトキシル基の置換度を1.5〜2.5含有するカルボキシメチルエチルセルロースである。
これらの化合物はエステル結合をもたないため、通常の保存条件下では加水分解することがほとんどなく、腸溶性セルロース誘導体としては最適である。
【0040】
本発明において、セルロース(A)及びセルロース誘導体の置換度はグルコース環の3個の水酸基の内、反応により置換された置換基の個数である。
なお、置換度は、JIS K0070:1992「化学製品の酸価,けん化価,エステル価,よう素価,水酸基価及び不けん化物の試験方法」の7.3ピリジン−塩化アセチル化法に準拠して反応前後の水酸基価を測定して、次式から求められる。
(置換度)=3−(メチル化後の水酸基価/メチル化前の水酸基価)×3
【0041】
また、上記のようにセルロース誘導体中の塩類及び有機溶剤の含有量は、100ppm以下であり、高純度のセルロース誘導体である。また、反応後の超臨界流体での抽出回数を増やすことで50ppm以下にすることも可能である
【0042】
本発明のセルロース誘導体は高純度であるため、医薬品に極めて有用である。
また、化粧品、pH依存性農薬、電子材料用バインダー、建材等もに利用できる。
【0043】
[実施例]
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り部は重量部、%は重量%を意味する。
<実施例1>
撹拌装置、循環槽、及び測温装置を有し、槽内圧力70MPa、槽内温度290℃まで設定可能な反応槽500mlにセルロース(品名:コットンリンタパルプ、ダイバッカイ・テクノロジーズ(株)製)100部仕込み、循環槽にモレキュラーシーブス(3Aタイプ)を100部充填し、温度35℃、圧力8MPaに調整した。二酸化炭素を300部仕込み、循環槽を循環させながら、撹拌下、温度100℃、圧力10MPaを保ちグリコール酸20部を30分間かけて滴下した。滴下後、3時間反応を行った。
反応終了後、80℃にて、超臨界二酸化炭素を50部/分の流量で連続供給し、1時間、未反応物や不純物の抽出を行い、超臨界二酸化炭素を除去し、カルボキシメチル基置換度0.6のセルロース誘導体(1)を得た。
【0044】
<実施例2>
撹拌装置、循環槽、及び測温装置を有し、槽内圧力70MPa、槽内温度290℃まで設定可能な反応槽に実施例1で得たセルロース誘導体(1)100部仕込み、循環槽にモレキュラーシーブス(3Aタイプ)を100部充填し、温度35℃、圧力8MPaに調整した。二酸化炭素を300部仕込み、循環槽を循環させながら、撹拌下、温度100℃、圧力10MPaを保ちエタノール50部を30分間滴下した。滴下後、3時間反応を行った。
反応終了後、80℃にて、超臨界二酸化炭素を50部/分の流量で連続供給し、1時間、未反応物や不純物の抽出を行い、超臨界二酸化炭素を除去し、カルボキシメチル基置換度0.6、エチルエーテル基置換度2.0のセルロース誘導体(2)を得た。
【0045】
<実施例3>
反応温度100℃から50℃に変える以外は実施例2と同様にして、カルボキシメチル基置換度0.6、エチルエーテル基置換度1.5のセルロース誘導体(3)を得た。
【0046】
<実施例4>
反応温度100℃から150℃に変える以外は実施例2と同様にして、カルボキシメチル基置換度0.6、エチルエーテル基置換度2.2のセルロース誘導体(4)を得た。
【0047】
<実施例5>
反応圧力を10MPaから25MPaに変える以外は実施例2と同様にして、カルボキシメチル基置換度0.6、エチルエーテル基置換度2.1のセルロース誘導体(5)を得た。
【0048】
<実施例6>
反応圧力を10MPaから50MPaに変える以外は実施例2と同様にして、カルボキシメチル基置換度0.6、エチルエーテル基置換度2.3のセルロース誘導体(6)を得た。
【0049】
<実施例7>
超臨界二酸化炭素を超臨界流体(二酸化炭素80%、シクロヘキサン20%)に変更する以外は実施例2と同様にして、カルボキシメチル基置換度0.6、エチルエーテル基置換度2.3のセルロース誘導体(7)を得た。
【0050】
<実施例8>
反応時に界面活性剤としてポリパーフルオロエーテル(商品名:KRYTOX157FSL、デュポン(株)製)5部を追加する以外は実施例2と同様にして、カルボキシメチル基置換度0.6、エチルエーテル基置換度2.2のセルロース誘導体(8)を得た。
【0051】
<実施例9>
エタノール50部の代りにメタノール50部を使用する以外は実施例2と同様にして、カルボキシメチル基置換度0.6、メチルエーテル基置換度2.2のセルロース誘導体(9)を得た。
【0052】
<実施例10>
モレキュラーシーブス100部の代りにアセトンジメチルアセタール30部を使用する以外は実施例2と同様にして、カルボキシメチル基置換度0.6、エチルエーテル基置換度2.2のセルロース誘導体(10)を得た。
【0053】
<実施例11>
モレキュラーシーブス100部の代りに硫酸5部を使用する以外は実施例2と同様にして、カルボキシメチル基置換度0.6、エチルエーテル基置換度2.2のセルロース誘導体(11)を得た。
【0054】
<実施例12>
撹拌装置、及び測温装置を有し、槽内圧力70MPa、槽内温度290℃まで設定可能な反応槽にセルロース(品名:コットンリンタパルプ、ダイバッカイ・テクノロジーズ(株)製)100部、トリエチルアミン1部仕込み、、温度80℃、圧力10MPaに調整した。二酸化炭素を300部仕込み、撹拌下、温度80℃、圧力10MPaを保ちエチレンオキシド50部を30分間かけて滴下した。滴下後、3時間反応を行った。
反応終了後、80℃にて、超臨界二酸化炭素を50部/分の流量で連続供給し、1時間、未反応物や不純物の抽出を行い、超臨界二酸化炭素を除去し、ヒドロキシエチル基置換度2.5のセルロース誘導体(12)を得た。
【0055】
<実施例13>
撹拌装置、循環槽、及び測温装置を有し、槽内圧力70MPa、槽内温度290℃まで設定可能な反応槽にセルロース(品名:コットンリンタパルプ、ダイバッカイ・テクノロジーズ(株)製)100部仕込み、循環槽にモレキュラーシーブス(3Aタイプ)を100部充填し、温度35℃、圧力8MPaに調整した。二酸化炭素を300部仕込み、循環槽を循環させながら、撹拌下、温度35℃、圧力10MPaを保ち濃硝酸(70%)50部を30分間滴下した。滴下後、3時間反応を行った。
反応終了後、80℃にて、超臨界二酸化炭素を50部/分の流量で連続供給し、1時間、未反応物や不純物の抽出を行い、超臨界二酸化炭素を除去し、ニトロ基置換度2.3のセルロース誘導体(13)を得た。
【0056】
<実施例14>
撹拌装置、及び測温装置を有し、槽内圧力70MPa、槽内温度290℃まで設定可能な反応槽にセルロース(品名:コットンリンタパルプ、ダイバッカイ・テクノロジーズ(株)製)100部仕込み、、温度80℃、圧力10MPaに調整した。二酸化炭素を300部仕込み、撹拌下、温度100℃、圧力10MPaを保ち無水酢酸100部、二酸化炭素50部の混合液を30分間滴下した。滴下後、3時間反応を行った。
反応終了後、80℃にて、超臨界二酸化炭素を50部/分の流量で連続供給し、1時間、未反応物や不純物の抽出を行い、超臨界二酸化炭素を除去し、アセチル基置換度2.2のセルロース誘導体(14)を得た。
【0057】
<比較例1>
オートクレーブ反応容器にtert−ブタノール151部、水6.5部、カルボキシメチルセルロース (品名:CMCダイセル1105、ダイセル化学工業(株)製、カルボキシメチル基置換度:0.6)85.8部、水酸化ナトリウム39.0部、テトラメチルアンモニウムクロライド3.3部を投じ、窒素置換後、第1段目のアルキルエーテル化として110℃でエチルクロライド62.8部を加え、8時間反応した後、第2段目のアルキルエーテル化として、水14.3部、48%水酸化ナトリウム水溶液128.1部、エチルクロライド99.1部を加え、110℃で24時間反応させアルキルエーテル化を終了した。反応物をグラス容器に移し、水405部と硫酸25部を加え、析出した粒子を連続遠心分離機で水洗及び脱水し、70℃で減圧乾燥して、カルボキシメチル基置換度0.6、エチルエーテル基置換度2.2のセルロース誘導体(15)を得た。
【0058】
<比較例2>
オートクレーブ反応容器にメチルエチルケトン850部、セルロース(品名:コットンリンタパルプ、ダイバッカイ・テクノロジーズ(株)製)30部、水酸化ナトリウム水溶液(20wt%)60部、を投じ、窒素置換後、80℃に昇温、エチレンオキシド18部、t−ブチルアルコール50部を30分かけて滴下し、80℃で3時間反応させた。反応物をろ過し、酢酸30部、水405部を加え、連続遠心分離機で水洗及び脱水し、70℃で減圧乾燥して、ヒドロキシエチルエーテル基置換度1.8のセルロース誘導体(16)を得た。
【0059】
<比較例3>
オートクレーブ反応容器に濃硫酸(95wt%)50部、濃硝酸(90wt%)45部、水5部を混合し、セルロース(品名:コットンリンタパルプ、ダイバッカイ・テクノロジーズ(株)製)100部を加え、室温で30分間反応した。ろ過後、水500部を使用し、3回洗浄した後、100℃の熱水中に30分間浸析した。連続遠心分離機で水洗及び脱水し、70℃で減圧乾燥して、ニトロ基置換度2.0のセルロース誘導体(17)を得た。
【0060】
<比較例4>
オートクレーブ反応容器にセルロース(品名:コットンリンタパルプ、ダイバッカイ・テクノロジーズ(株)製)10部に水100部を加え1時間浸漬、水をろ過し、氷酢酸150部を加え、30分間振とうし、脱水した。得られた処理パルプに酢酸200部、硫酸2部、無水酢酸25部を加え、30℃で60分間反応させた。、水10部、酢酸20部を加えさらに30分間反応を行った。水を500部加えたのち、連続遠心分離機で水洗及び脱水し、70℃で減圧乾燥して、アセチル基置換度2.9のセルロース誘導体(18)を得た。
【0061】
<残存有機物評価>
得られたセルロース誘導体(1)〜(18)を10gをアセトン10g中に浸析させ、1時間撹拌した。得られたアセトン抽出液1gをアセトニトリルと水の6:4混合溶液10gに溶かし、その5μlをカラムに注入した。液体クロマトグラフィー(カラム:野村化学(株)製Develosil ODS−7 300mm×4mmφ、カラム温度:40℃、検出器:UV−260nm、流速: 1mL/min)を用いて測定することで、有機物含量を評価した。結果を表1に示す。
【0062】
<残存塩評価>
得られたセルロース誘導体(1)〜(18)を10gアセトン10g中に浸析させ、1時間撹拌した。得られたアセトン抽出液を200℃の順風乾燥機で乾燥後、重量を測定することで、塩含量を評価した。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
以上の評価結果から、本発明のセルロース誘導体の製造方法により得られたセルロース誘導体は比較例と比較して、非常に純度が高いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のセルロース誘導体は高純度であるため、医薬品に極めて有用である。
医薬品用途としては、錠剤、顆粒剤、丸薬等の腸溶性コーティング剤、防湿皮膜基剤、徐放性コーティング剤、苦味マスキング剤等に利用できる。
また、化粧品、pH依存性農薬、電子材料用バインダー、建材等もに利用できる。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース(A)を圧縮性流体(B)中でエーテル化剤(C1)又はエステル化剤(C2)と反応させることを特徴とするセルロース誘導体の製造方法。
【請求項2】
前記(B)中にさらに脱水剤(D)を添加して反応させる請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記(B)が超臨界状態の二酸化炭素である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
セルロース誘導体がセルロースエーテル、セルロースエステル及びセルロースエーテルエステルからなる群より選ばれる1種である請求項1〜3のいずれか記載の製造方法。
【請求項5】
セルロースエーテルがカルボキシアルキルセルロース 、ヒドロキシアルキルセルロース 及びアルキルセルロース からなる群より選ばれる1種である請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
セルロースエーテルのカルボキシアルキル基又はヒドロキシアルキル基の置換度が0〜2.5のセルロース誘導体である請求項4又は5記載の製造方法。
【請求項7】
カルボキシアルキルセルロースが、カルボキシメチルエチルセルロースである請求項5又は6記載の製造方法。
【請求項8】
カルボキシメチルエチルセルロースのカルボキシメチル基の置換度が0.2〜1.0 である請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
重合反応が圧力7〜70MPa、温度31〜250℃である請求項1〜8のいずれか記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか記載の製造法で製造したセルロース誘導体。
【請求項11】
セルロース誘導体中の塩及び有機物の含有量が100ppm以下であることを特徴とする請求項10記載のセルロース誘導体。




【公開番号】特開2006−233144(P2006−233144A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−53675(P2005−53675)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】